(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161682
(43)【公開日】2024-11-20
(54)【発明の名称】表面処理装置
(51)【国際特許分類】
E04G 21/16 20060101AFI20241113BHJP
E04F 21/08 20060101ALI20241113BHJP
E04D 15/04 20060101ALI20241113BHJP
B05B 13/02 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
E04G21/16
E04F21/08 X
E04F21/08 Z
E04D15/04 Z
B05B13/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076565
(22)【出願日】2023-05-08
(71)【出願人】
【識別番号】506430026
【氏名又は名称】株式会社トヨコー
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 温
(72)【発明者】
【氏名】豊澤 一晃
(72)【発明者】
【氏名】勝又 憲史
(72)【発明者】
【氏名】吉平 悠紀
【テーマコード(参考)】
2E174
4F035
【Fターム(参考)】
2E174BA01
2E174DA18
2E174DA31
4F035AA03
4F035CA01
4F035CA05
4F035CC02
4F035CD05
4F035CD11
(57)【要約】
【課題】表面処理が行われる領域を側方にオフセットしつつ軽量化を可能とした表面処理装置を提供する。
【解決手段】周期的な凹凸が設けられた屋根1の表面に沿って所定の移動方向に移動可能な移動体110,120と、移動体に設けられ、屋根の表面を処理する処理部180とを備える表面処理装置100であって、移動体は、屋根の表面に沿って転動する第1の転動体130と、屋根の凹凸形状と係合しながら転動し移動体を案内する第2の転動体150とを有し、処理部は移動体が屋根の表面に当接する領域に対して移動方向と直交する方向に離間した領域に対して処理を行い、屋根の少なくとも一部が磁性体によって構成され、第2の転動体を、磁力により屋根に吸着するマグネット車輪とした構成とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期的な凹凸が設けられた屋根の表面に沿って所定の移動方向に移動可能な移動体と、
前記移動体に設けられ、前記屋根の表面を処理する処理部と
を備える表面処理装置であって、
前記移動体は、前記屋根の表面に沿って転動する第1の転動体と、前記屋根の凹凸形状と係合しながら転動し前記移動体を案内する第2の転動体とを有し、
前記処理部は前記移動体が前記屋根の表面に当接する領域に対して前記移動方向と直交する方向に離間した領域に対して処理を行い、
前記屋根の少なくとも一部が磁性体によって構成され、
前記第2の転動体を、磁力により前記屋根に吸着するマグネット車輪としたこと
を特徴とする表面処理装置。
【請求項2】
前記移動体を前記移動方向に沿って所定の速度範囲内で移動するよう駆動する駆動装置と、
前記移動体に設けられ、作業者が把持する把持部と
を備え、
前記把持部は、前記作業者が前記移動体に対して前記移動方向の一方側に位置する第1の状態と、他方側に位置する第2の状態とにおいて作業者が操作可能な前記駆動装置の操作部を有すること
を特徴とする請求項1に記載の表面処理装置。
【請求項3】
前記処理部は、流動性を有する材料を前記屋根の表面に噴霧する噴霧部を有すること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の表面処理装置。
【請求項4】
前記材料は、前記屋根の表面に塗布された後発泡する発泡性を有すること
を特徴とする請求項3に記載の表面処理装置。
【請求項5】
前記材料の噴霧範囲を屋根の表面に表示する噴霧範囲表示部を有すること
を特徴とする請求項3に記載の表面処理装置。
【請求項6】
前記屋根は、ウェブ部によって接続された上底部と下底部とが周期的に配列された折板屋根であって、
前記第1の転動体は前記下底部と当接した状態で前記下底部の長手方向に沿って転動し、
前記第2の転動体は前記ウェブ部と当接した状態で転動すること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の表面処理装置。
【請求項7】
前記第2の転動体は、前記上底部の両側に設けられた一対のウェブ部とそれぞれ当接するよう複数設けられること
を特徴とする請求項6に記載の表面処理装置。
【請求項8】
前記把持部は、作業者が前記第1の状態及び前記第2の状態において、それぞれ前記処理部の操作を行うことが可能な第1の処理部操作部と第2の処理部操作部とを有すること
を特徴とする請求項2に記載の表面処理装置。
【請求項9】
前記噴霧部が形成する噴霧の周囲に設けられ前記材料の飛沫の飛散を防止する飛散防止手段を備えること
を特徴とする請求項3に記載の表面処理装置。
【請求項10】
前記飛散防止手段は、前記噴霧の周囲に配置された飛散防止部材を有すること
を特徴とする請求項9に記載の表面処理装置。
【請求項11】
前記飛散防止手段は、前記噴霧の周囲にエアカーテンを形成する気体噴射装置を有すること
を特徴とする請求項9に記載の表面処理装置。
【請求項12】
前記移動体は、物体との接触を検出する接触検出部と、前記接触検出部が前記物体との接触を検出した場合に前記移動体を停止させる自動停止部とを備えること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の表面処理装置。
【請求項13】
前記移動体は、前記屋根の端部を検出する屋根端部検出部と、前記屋根端部検出部が前記屋根の端部を検出した場合に前記移動体を停止させる自動停止部とを備えること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の表面処理装置。
【請求項14】
前記処理部は、前記移動体に対して、前記移動体の移動方向と直交する軸回りに回動可能であること
を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の表面処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建築物の屋根の表面を処理する表面処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば工場、倉庫、商業施設等の大型建築物の金属製屋根においては、金属部分を保護して防水性、防錆性、断熱性などを確保するため、所定の期間ごとに塗装を行うことが必要となる。
近年、発泡性を有する樹脂材料を屋根に吹き付けて、屋根の表面上で断熱発泡層を形成することが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、屋根等の表面に樹脂製発泡剤で構成された断熱発泡層を吹付により形成し、この断熱発泡層の表面に防水性等を有する高強度樹脂製の補強防水層を吹付により形成することが記載されている。
また、特許文献2には、発泡性を有する材料を用いた表面処理の施工品質を改善するため、処理対象物の表面に沿って移動可能な移動体と、発泡性を有する第1の材料を噴射する第1の噴射装置と、第1の材料が発泡した後の領域に第2の材料を噴射する第2の噴射装置とを備える表面処理装置が記載されている。第1、第2の噴射装置は、移動体の進行方向に対して横方向に突出して設けられ、塗装面に車輪等が接触しないよう構成されている。
また、屋根の塗装に関する技術として、例えば特許文献3には、簡素な構成で動力や複雑な制御を必要とせず、凸条部(山部)と平坦部(谷部)が交互に連続して形成された折板屋根の外表面の塗装を短時間で効率的に行うため、平坦部上で転動する移動手段を有し、隣り合う少なくとも2つの凸条部に跨って折板屋根上を凸条部の長手方向に沿って移動可能な台車と、台車に取り付けられて凸条部及び平坦部の表面を塗装する塗装手段とを備える折板屋根用塗装機が記載されている。また、塗装機には前後一対の把手部が設けられ、作業者が手押しして移動しながら塗装することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-168878号公報
【特許文献2】特開2020-193476号公報
【特許文献3】実用新案登録第3233190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載された表面処理装置は、施工品質、施工速度、省力化などの点で、作業者の手作業による施工に対して有利であるが、装置の構成が複雑であり、サイズ、重量が大きいことから、移動や現場での取り扱いが煩雑であり、小型化、軽量化することが要望されている。
これに対し、特許文献3に記載された技術は、装置構成が簡素ではあるものの、折板屋根の塗装面と、車輪や作業者の足が折板屋根に接触する領域とが分離されていないことから、装置の移動方向や作業者の歩行などに制約が生じ(塗装面を歩けない)、作業性の悪化が懸念される。
そこで、作業性、品質を確保するため、例えば特許文献2のように表面処理が行われる領域を移動体(表面処理装置の本体部)の側方にオフセットした構成としつつ、移動体本体を小型、軽量化することが求められるが、この場合塗装装置等の表面処理に必要な機器の重量によって装置全体の重量バランスが崩れ、転倒などの問題が生じることが懸念される。
これに対し、塗装装置等の反対側にカウンターウェイトを設けることも考えらえるが、この場合装置のサイズ、重量が大きくなってしまう。
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、表面処理が行われる領域を移動体の側方にオフセットしつつ軽量化を可能とした表面処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、本発明の一態様に係る表面処理装置は、周期的な凹凸が設けられた屋根の表面に沿って所定の移動方向に移動可能な移動体と、前記移動体に設けられ、前記屋根の表面を処理する処理部とを備える表面処理装置であって、前記移動体は、前記屋根の表面に沿って転動する第1の転動体と、前記屋根の凹凸形状と係合しながら転動し前記移動体を案内する第2の転動体とを有し、前記処理部は前記移動体が前記屋根の表面に当接する領域に対して前記移動方向と直交する方向に離間した領域に対して処理を行い、前記屋根の少なくとも一部が磁性体によって構成され、前記第2の転動体を、磁力により前記屋根に吸着するマグネット車輪としたことを特徴とする。
これによれば、移動体から処理部を移動方向に対して側方にオーバハングして設けた場合であっても、処理部及びその支持構造などの重量によって生じる表面処理装置を転倒させる方向のモーメントに抗して、マグネット車輪が発生する吸着力により移動体の転倒を防止することができる。
これにより、表面処理装置の転倒を防止するためのカウンターウェイト等が必要ないことから、表面処理装置の小型化、軽量化を図ることができる。
また、マグネット車輪を用いることにより、簡単な構成により表面処理装置の転倒を防止するのに必要な吸着力を発生させることができる。
【0007】
本発明において、前記移動体を前記移動方向に沿って所定の速度範囲内で移動するよう駆動する駆動装置と、前記移動体に設けられ、作業者が把持する把持部とを備え、前記把持部は、前記作業者が前記移動体に対して前記移動方向の一方側に位置する第1の状態と、他方側に位置する第2の状態とにおいて作業者が操作可能な前記駆動装置の操作部を有する構成とすることができる。
これによれば、表面処理装置の移動方向が施工中に反転する場合であっても、良好な作業性を確保することができる。
【0008】
本発明において、前記処理部は、流動性を有する材料を前記屋根の表面に噴霧する噴霧部を有する構成とすることができる。
これによれば、屋根の表面における材料を噴霧した後の面部に、表面処理装置を支持する転動体や作業者の足などが接触することを防止し、表面処理の施工品質を向上することができる。
この場合、前記材料は、前記屋根の表面に塗布された後発泡する発泡性を有する構成とすることができる。
これによれば、材料が塗布された後に形成される発泡層が転動体や作業者の足によってダメージを受けることがなく、発泡層の施工品質を向上することができる。
本発明において、前記材料の噴霧範囲を屋根の表面に表示する噴霧範囲表示部を有する構成とすることができる。
これによれば、実際に材料を噴霧することに先立ち、噴霧範囲を屋根の表面に表示することにより、塗り残しや塗りむらがないように処理装置を調整することが可能となり、施工品質がより向上する。
【0009】
本発明において、前記屋根は、ウェブ部によって接続された上底部と下底部とが周期的に配列された折板屋根であって、前記第1の転動体は前記下底部と当接した状態で前記下底部の長手方向に沿って転動し、前記第2の転動体は前記ウェブ部と当接した状態で転動する構成とすることができる。
これによれば、第1の転動体によって表面処理装置の自重を主に支えつつ、第2の転動体がウェブ部に沿って転動することにより、表面処理装置の移動時の直進性を確保することができる。
この場合、前記第2の転動体は、前記上底部の両側に設けられた一対のウェブ部とそれぞれ当接するよう複数設けられる構成とすることができる。
これによれば、第2の転動体が折板屋根の山部を矜持しつつ転動することにより、上述した効果をより効果的に発揮できる。
【0010】
本発明において、前記把持部は、作業者が前記第1の状態及び前記第2の状態において、それぞれ前記処理部の操作を行うことが可能な第1の処理部操作部と第2の処理部操作部とを有する構成とすることができる。
これによれば、表面処理装置の移動方向に関わらず、作業者による処理部の操作性を確保することができる。
【0011】
本発明において、前記噴霧部が形成する噴霧の周囲に設けられ前記材料の飛沫の飛散を防止する飛散防止手段を備える構成とすることができる。
この場合、前記飛散防止手段は、前記噴霧の周囲に配置された飛散防止部材を有する構成とすることができる。
また、この場合、前記飛散防止手段は、前記噴霧の周囲にエアカーテンを形成する気体噴射装置を有する構成とすることができる。
これらの各発明によれば、噴霧部から噴出される塗布材料の飛沫が周囲に飛散することを効果的に防止できる。
【0012】
本発明において、前記移動体は、物体との接触を検出する接触検出部と、前記接触検出部が前記物体との接触を検出した場合に前記移動体を停止させる自動停止部とを備える構成とすることができる。
これによれば、移動体が物体との接触を検出した場合には移動体を停止させることにより、事故の発生を未然に防止することができる。
本発明において、前記移動体は、前記屋根の端部を検出する屋根端部検出部と、前記屋根端部検出部が前記屋根の端部を検出した場合に前記移動体を停止させる自動停止部とを備える構成とすることができる。
これによれば、屋根端部検出部が屋根の端部を検出した場合に移動体を停止させることにより、表面処理装置が屋根から転落することを防止できる。
本発明において、前記処理部は、前記移動体に対して、前記移動体の移動方向と直交する軸回りに回動可能である構成とすることができる。
これによれば、屋根の端部においても、適切に処理を行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、表面処理が行われる領域を移動体の側方にオフセットしつつ軽量化を可能とした表面処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明を適用した表面処理装置の第1実施形態の外観斜視図である。
【
図2】第1実施形態の表面処理装置を走行方向(前後方向)から見た正面図である。
【
図3】第1実施形態の表面処理装置の上面図(
図2のIII-III部矢視図)である。
【
図4】第1実施形態の表面処理装置の側面図(
図2のIV-IV部矢視図)である。
【
図5】本発明を適用した表面処理装置の第2実施形態の外観斜視図である。
【
図6】第3実施形態の表面処理装置の外観斜視図である。
【
図7】第3実施形態の表面処理装置の他の外観斜視図であって、
図6の反対側から見た状態を示す図である。
【
図8】第3実施形態の表面処理装置においてスプレイガンをステーの長手方向に沿った軸回りに回動(傾斜)させた状態を示す図である。
【
図9】第3実施形態の表面処理装置におけるスプレイガン周辺部の拡大図である。
【
図10】第3実施形態の表面処理装置を移動や収納等のためにコンパクト化した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
以下、本発明を適用した表面処理装置の第1実施形態について説明する。
第1実施形態の表面処理装置は、例えば、鋼製の折板屋根の上面を走行しながら折板屋根の表面に発泡性を有する樹脂系材料や、塗料を噴霧する表面処理を行うものである。
図1は、第1実施形態の表面処理装置の外観斜視図である。
図2は、第1実施形態の表面処理装置を走行方向(前後方向)から見た正面図である。
図3は、第1実施形態の表面処理装置の上面図(
図2のIII-III部矢視図)である。
図4は、第1実施形態の表面処理装置の側面図(
図2のIV-IV部矢視図)である。
【0016】
処理対象物である折板屋根1は、例えば工場や倉庫等の大型建物の屋根として用いられるものである。
折板屋根1は、屋根の流れ方向(傾斜方向)に沿って延在する山部と谷部とが、周期的に配列して設けられている。
折板屋根1は、例えば、上底部10、第1ウェブ部30、下底部20、第2ウェブ部40を、例えば流れ方向に対して直交する方向(
図1における左右方向)に沿って、周期的に繰り返し配置して構成されている。
折板屋根1は、少なくとも一部が、例えば鋼板などの鉄系金属や、鉄系金属と他種の金属との合金など、磁石が吸着可能な磁性体によって構成されている。
【0017】
上底部10は、折板屋根1の山部の上端部を構成する平面部である。
上底部10の幅方向における中央部には、ハゼ部11が設けられている。
下底部20は、折板屋根1の谷部の下端部(底面部)を構成する平面部である。
第1ウェブ部30は、上底部10の一方の側端部と、隣接する下底部20の側端部とを接続する平面部である。
第1ウェブ部30の幅方向(面内において長手方向と直交する方向)は、上底部10及び下底部20の幅方向に対して傾斜して配置されている。
第2ウェブ部40は、上底部10の他方の側端部(第1ウェブ部30側とは反対側の側端部)と、隣接する下底部20の側端部とを接続する平面部である。
第2ウェブ部40の幅方向は、上底部10及び下底部20の幅方向に対して、第1ウェブ部30とは反対側の方向に傾斜して配置されている。
同一の上底部10と接する第1ウェブ部30と第2ウェブ部40とは、上底部10の長手方向から見たときに、下方側が広がるよう配置されている。
【0018】
表面処理装置100は、下枠部110、上枠部120、主車輪130、補助車輪140、ガイド車輪150、アシストユニット160、ハンドル170、スプレイガン180、スプレイガン保持部190、ステー200等を備えている。
【0019】
下枠部110、上枠部120は、表面処理装置100の本体部(本発明の移動体)を構成する枠体状の構造体である。
下枠部110は、構造体の下部を構成し、上枠部120は、構造体の上部を構成する。
下枠部110、上枠部120は、上方、前後方向(走行方向)、側方等から見た平面形が例えば矩形状となるように、柱状部材、梁状部材を組み合わせて構成されている。
下枠部110、上枠部120を構成する柱状部材、梁状部材は、例えば木材、金属材料、樹脂材料などによって形成することができる。
【0020】
下枠部110と上枠部120とは、下枠部110の上部に設けられたクランプ111と、上枠部120の下部に設けられた被係合部121とを結合することによって、着脱可能に取り付けられる。
クランプ111、被係合部121は、表面処理装置100を上方から見た平面形において、下枠部110、上枠部120の四隅に設けられる。
この場合、クランプ111、被係合部121は、着脱に際して工具を使用しないものとすることが好ましい。
【0021】
また、下枠部111の下部には、クランプ112が設けられる。
表面処理装置100の収納時や運搬時には、上枠部120を下枠部110から取り外し、被係合部121をクランプ112と結合することによって、上下方向の寸法を縮小し、取扱を容易化することができる。
【0022】
また、下枠部110には、クランプ113、ステーストッパ114等が設けられる。
クランプ113は、後述するステー200を保持する締結手段である。
クランプ113は、ステー200の長手方向に沿って複数(例えば一対)設けることができる。
ステー200は、クランプ113による締結箇所を調整することにより、下枠部110からの突出量(繰り出し量)を調整可能である。
ステーストッパ114は、下枠部110からスプレイガン180側とは反対側に突出して設けられた枠体状の部分である。
ステーストッパ114は、ステー200が下枠部110に最大限引き込まれた状態において、ステー200の突端部と当接するよう構成されている。
ステーストッパ114には、スプレイガン180に塗布材料を供給する図示しないホースを保持するホースホルダ115が設けられる。
【0023】
上枠部120の上部には、スプレイガン180に塗布材料を供給する図示しないホースを保持するホースホルダ122が設けられる。
また、上枠部120には、スプレイガン180に圧縮空気を供給するエアホース123が取り付けられている。
【0024】
主車輪130は、下枠部110の下部に取り付けられ、折板屋根1の下底部20に沿って転動する転動体である。
主車輪130は、折板屋根1の下底部20の長手方向に沿って、折板屋根1の流れ方向に走行する。
主車輪130は、例えば一対が車軸方向に離間して設けられる。
主車輪130は、表面処理装置100の走行方向における位置が、下枠部110の一方側の端部近傍に配置されている。
【0025】
一対の主車輪130の車軸方向における間隔は、処理対象となる折板屋根1の山部(上底部10周辺の部分)と谷部(下底部20周辺の部分)のピッチを考慮し、両方の車輪が下底部20と接触するよう設定される。
また、一対の主車輪130は、一つの上底部10を横方向に跨いで、異なった下底部20と当接するよう配置されている。
主車輪130は、アシストユニット160によって駆動される駆動輪となっている。
【0026】
補助車輪140は、下枠部110の下部に取り付けられ、折板屋根1の下底部20に沿って転動する転動体である。
補助車輪140は、例えば一対が車軸方向に離間して設けられる。
補助車輪140は、表面処理装置100の走行方向における位置が、下枠部110の他方側(主車輪130側とは反対側)の端部近傍に配置されている。
補助車輪140は、主車輪130と同様に、両方の車輪が下底部20と接触するよう配置されている。
補助車輪140は、下枠部110等が主車輪130の車軸回りに転倒することを防止する機能を有する。
また、補助車輪140には、表面処理装置100の非走行時に、折板屋根1に対する移動を防止する車輪止めを設けてもよい。
主車輪130及び補助車輪140は、本発明の第1の転動体として機能する。
【0027】
ガイド車輪150は、折板屋根1の山部(一つの上底部10及びその両側に配置された第1ウェブ部30、第2ウェブ部40)を矜持するよう複数設けられる。
複数のガイド車輪150の一部は第1ウェブ部30に当接した状態で転動し、他部は第2ウェブ部40に当接した状態で転動する。
例えば、ガイド車輪150は、第1ウェブ部30に一つ、第2ウェブ部40に二つが当接するよう構成することができる。
第2ウェブ部40に当接する一対のガイド車輪150は、表面処理装置100の走行方向に沿って配列される構成とすることができる。
【0028】
ガイド車輪150は、表面処理装置100が折板屋根1の山部に沿って直進するよう案内する機能を有する。
ガイド車輪150は、磁力によって折板屋根1に対して吸着するよう構成されている。
ガイド車輪150は、内部に図示しない永久磁石を有するいわゆるマグネット車輪となっている。
ガイド車輪150の折板屋根1への吸着力は、表面処理装置100が、スプレイガン180側が下がる方向へ転倒しないことを考慮して設定することができる。
ガイド車輪150は、本発明の第2の転動体、及び、吸着装置として機能する。
【0029】
アシストユニット160は、例えば電動モータ等のアクチュエータによって、主車輪130を回転駆動する駆動装置である。
アシストユニット160は、電動モータ、歯車機構などの減速装置、二次電池等の電源、及び、制御装置などを有して構成されている。
アシストユニット160は、表面処理装置100の走行方向に沿った移動速度が所定の速度範囲内となるように調速する調速手段としての機能を有する。
【0030】
ハンドル170は、作業者が把持して表面処理装置100の操作を行う部材である。
ハンドル170は、上枠部120の上部に取り付けられている。
ハンドル170は、例えば横方向(主車輪130等の車軸方向)に沿って延在するバー状に形成されている。
図3等に示すように、ハンドル170の両端部には、作業者により把持されるグリップ部171が設けられている。
アシストユニット160は、作業者がグリップ部171を走行方向に沿って前方側へ押圧することにより、表面処理装置100を前方へ走行させる駆動を開始する。
【0031】
また、折板屋根1の他の領域に塗布を行うため、表面処理装置100を、折板屋根1に対して山部、谷部の配列方向(
図2の左右方向)へ移動させる場合(山部を乗り越える場合・いわゆる山間移動)には、作業者は、ハンドル170を把持して表面処理装置100を折板屋根1から引き上げることが可能となっている。
これにより、作業者は、手動で表面処理装置1の山間移動を行うことができる。
【0032】
ハンドル170には、さらにトリガ172が設けられている。
トリガ172は、スプレイガン180への圧縮空気の供給をオンオフすることにより、スプレイガン180による噴霧のオンオフを操作するものである。
トリガ172は、本発明の処理部操作部として機能する。
トリガ172は、表面処理装置100を第1の方向(例えば
図3における下側)へ走行させる際に使用するものと、第2の方向(例えば
図3における上側)へ走行させる際に使用するものとが一対設けられている。
これらは本発明の第1の処理部操作部、第2の処理部動作部として機能する。
【0033】
トリガ172は、一例として、作業者がハンドル170のグリップ部171を把持した状態で手指により操作されるレバー状に構成することができる。
一対のトリガ172は、
図3に示すようにハンドル170を上方から見たときに、ハンドル170の中央部に対して実質的に点対称となるように配置されている。
ここで、一対のトリガ172のうちどちらを有効とするかは、例えばバルブ等の流路切替手段を用いて、表面処理装置100の走行方向に応じて切り替える構成とすることができる。
【0034】
実施形態の表面処理装置100は、折板屋根1の上に立った作業者が、ハンドル170を把持した状態でアシストユニット160を操作し、折板屋根1上を流れ方向に沿って走行するようになっている。
表面処理装置100は、
図4において左向き、右向きの双方向に走行しながら表面処理を行うことが可能となっている。
【0035】
通常、作業者Mは、表面処理装置100の進行方向に対し後方側で、表面処理装置100の走行に追従して歩行しながら施工を行う。
作業者Mは、ハンドル170周辺部の上記構成により、表面処理装置100が第1の方向(例えば
図4における左側)へ進行する場合、第2の方向(例えば
図4における右側)へ進行する場合のいずれにも、アシストユニット160及びスプレイガン180の操作を、同様に行うことが可能となっている。
【0036】
スプレイガン180は、エアホース123から供給される圧縮空気を用いて、図示しないホースから供給される塗布材料を、折板屋根1の表面に噴霧し塗布するものである。
スプレイガン180は、処理対象物である折板屋根1の表面を処理する本発明の処理部、及び、流動性を有する材料を噴霧する噴霧部として機能する。
【0037】
塗布材料として、例えば、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、又は、これらの混合物等の樹脂製発泡剤を用いることができる。
例えば、主剤としてポリオール、ポリプロピレングリコール(PPG)を主成分とする樹脂を用いることができる。
また、フェノール系樹脂、又は、ノボラック系熱可塑性樹脂を主成分としたフェノール系樹脂の主剤、又は、それらの混合物を主剤として用いることもできる。
これらの主剤に対し、イソシアネート等の架橋剤を、混合比略1:1で混合して発泡させ、充填剤、添加剤等を加えて噴射用の材料とする。
イソシアネートはノンフロン発泡剤の一種であり、水との反応により二酸化炭素ガスを発生し、材料を発泡させる機能を有する。
この材料が折板屋根1の表面に噴射されると、直ちに発泡を開始して、例えば数十秒程度で断熱発泡層が形成される。
【0038】
また、塗布材料として、例えば、ポリオール、ポリプロピレングリコール(PPG)を主成分とするポリウレタン系樹脂を用いることができる。
この主剤に対し、イソシアネート等の架橋剤を、混合比略1:1で混合し、充填剤、添加剤等を加えて、コート剤とすることができる。
このような材料は、上述した断熱発泡層の表面に塗布することによって、補強性及び防水性を有する層を形成することができる。
【0039】
スプレイガン180は、
図2等に示すように、折板屋根1における主車輪130、補助車輪140、ガイド車輪150が当接する領域R1に対して、表面処理装置100の走行方向とは直交する方向(
図2における左右方向。以下、横方向と称する。)にオフセットして配置されている。
スプレイガン180は、下枠部110に対して、横方向にオーバハングした状態で、スプレイガン保持部190及びステー200によって片持ち梁状に支持されている。
スプレイガン180により塗布材料の塗布が行われる領域R2(表面処理が行われる領域)は、表面処理装置100が折板屋根1に当接する領域R1に対して、表面処理装置100の移動方向と直交する方向にオフセットして配置されている。
【0040】
スプレイガン保持部190は、スプレイガン180が取り付けられる基部となる部分である。
スプレイガン保持部190は、ステー200の突端部に取り付けられている。
スプレイガン保持部190は、スプレイガン180を、表面処理装置100の走行方向に沿った軸回りに揺動する方向に、スプレイガン180の取付角度を調整する機能を有する。
スプレイガン保持部190は、スプレイガン180が噴霧するスプレイSが第1ウェブ部30及びこれと隣接する上底部10、下底部20の半部を指向する第1の状態(
図2に破線で図示)と、スプレイSが第2ウェブ部40及びこれと隣接する上底部10、下底部20の半部を指向する第2の状態(
図2に実線で図示)との間で、スプレイSの方向を変化させることが可能となっている。
【0041】
表面処理装置100によって、折板屋根1に塗布材料を噴霧し、塗布する際には、先ず、スプレイSが第1の状態となるようにスプレイガン180の取付角度を設定する。
そして、スプレイガン180から塗布材料を噴霧した状態で、折板屋根1の一方の端部側から他方の端部側(典型的には軒側から棟側、あるいは、その反対方向)へ、山部の長手方向に沿って表面処理装置100を移動させる。
その後、表面処理装置100が折板屋根1の他方の端部側に到達した後に、表面処理装置100の走行及び塗布材料の噴霧を停止し、スプレイSが第2の状態となるようにスプレイガン180の取付角度を設定する。
そして、スプレイガン180から塗布材料を噴霧した状態で、表面処理装置100の走行方向を逆転させて走行させる。
【0042】
これにより、表面処理装置100を一往復走行させることで、折板屋根1の一本の谷部に塗布材料を塗布することができる。
その後、表面処理装置100は、作業者がハンドル170を把持し、引き上げることによって、折板屋根1に対して横方向へ移動(いわゆる山間移動)される。
【0043】
また、折板屋根1の端部付近における塗布を容易とするため、スプレイガン保持部190は、スプレイガン180を、ステー200の長手方向に沿った軸回りに揺動可能としてもよい。
この場合、スプレイSの指向方向を、表面処理装置100の走行方向における前方側又は後方側に傾斜させることにより、折板屋根1の端部近傍における塗り残しを低減することができる。
【0044】
ステー200は、下枠部110とスプレイガン保持部190とを連結する梁状の部材である。
ステー200における下枠部110側の部分は、下枠部110に設けられたクランプ113によって下枠部110に保持されている。
ステー200の突端部は、下枠部110から横方向へ突出して設けられている。
【0045】
ステー200の突端部の下枠部110からの突出量(繰り出し量)は、クランプ113を緩めることによって調節可能となっている。
ステー200の突出量は、例えば、
図4に示すように、スプレイガン180が噴霧するスプレイSが、主車輪130が接触している下底部20と隣接する他の下底部20(山部(上底部10)を一つ隔てた下底部20)を含む領域を指向するよう設定することができる。
なお、ステー200の繰り出し量の設定はこれに限らず、例えば山部を二つ以上隔てた下底部20を含む領域に処理を行うよう設定してもよい。
【0046】
また、表面処理装置100の収納時や移動時には、ステー200は、スプレイガン180側とは反対側の端部がステーストッパ114に当接するまで下枠部110側へ引き込んだ状態とすることができる。
これにより、表面処理装置100の横幅方向の寸法を小さくし、収納や移動を容易化することができる。
【0047】
以上説明した第1実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)下枠部110等からスプレイガン180を側方にオーバハングして設けた場合であっても、スプレイガン180及びその支持構造などの重量によって生じる表面処理装置100を転倒させる方向のモーメントに抗して、ガイド車輪150が発生しする吸着力により表面処理装置100の転倒を防止することができる。
これにより、表面処理装置100の転倒を防止するためのカウンターウェイト等が必要ないことから、表面処理装置100の小型化、軽量化を図ることができる。
(2)処理部として流動性を有する材料を折板屋根1の表面に塗布するスプレイガン180を有することにより、折板屋根1の表面における材料を噴霧した後の面部に、表面処理装置100を支持する主車輪130、補助車輪140、ガイド車輪150や作業者の足などが接触することを防止し、表面処理の施工品質を向上することができる。
(3)スプレイガン180から発泡性を有する樹脂材料を噴霧することにより、材料が塗布された後に形成される発泡断熱層が転動体や作業者の足によってダメージを受けることがなく、発泡層の施工品質を向上することができる。
(4)磁性体により構成された折板屋根1にマグネット車輪であるガイド車輪150を磁力で吸着させることにより、簡単な構成により表面処理装置100の転倒を防止するのに必要な吸着力を得ることができる。
(5)複数の主車輪130、補助車輪140が折板屋根1の下底部20に沿って転動し、複数のガイド車輪150が折板屋根1の第1ウェブ部30、第2ウェブ部40と当接し、山部を挟持した状態で転動することにより、主車輪130等によって表面処理装置100の自重を主に支えつつ、ガイド車輪150によって表面処理装置100の移動時の直進性を確保することができる。
(6)表面処理装置100の移動方向に関わらず作業者Mが把持して操作可能なハンドル170を設けたことにより、表面処理装置の移動方向が施工中に反転する場合であっても、良好な作業性を確保することができる。
(7)表面処理装置100が第1の方向、第2の方向に移動する際に作業者がスプレイガン180のオンオフ操作をすることが可能な一対のトリガ172を有することにより、表面処理装置の移動方向に関わらず、作業者Mによるスプレイガン180の操作性を確保することができる。
(8)表面処理装置100の移動方向に沿った移動速度が所定の速度範囲内となるように調速するアシストユニット160を備えることにより、折板屋根1への塗布材料の塗布量、塗布厚さを適切に管理し、施工品質を確保することができる。
また、表面処理装置100が自走することにより、作業者の労力を軽減することができる。
【0048】
<第2実施形態>
次に、本発明を適用した表面処理装置の第2実施形態について説明する。
以下説明する各実施形態において、上述した第1実施形態と共通する箇所には同じ符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
【0049】
図5は、第2実施形態の表面処理装置の外観斜視図である。
第2実施形態の表面処理装置100Aは、第1実施形態の表面処理装置100に対し、さらに以下説明する飛散防止部210を付加したものである。
飛散防止部210は、スプレイガン180がスプレイSを形成する領域を、前後方向及び横方向からそれぞれ覆うよう構成された矩形の枠体を有する。
これらの枠体には、例えばフィルムや不織布等の飛散防止幕が着脱可能に取り付けられる。
飛散防止部210は、飛散防止幕を設けられた状態において、スプレイSの周囲に飛散する塗布材料の飛沫を捕集し、周囲に飛散することを防止する。
【0050】
飛散防止部210の下端部は、折板屋根1の上底部10と微小な間隔を隔てて対向するよう配置されている。
飛散防止部210は、表面処理装置100Aの走行方向から見たときに、隣接する一対の山部(上底部10)にわたして設けられている。
【0051】
また、飛散防止部210には、例えば圧縮空気等の気体を噴出することでエアカーテンを形成する気体噴出部220が設けられる。
圧縮空気は、例えば、スプレイガン180に供給される圧縮空気の一部を分岐させて利用する構成とすることができる。
気体噴出部220は、飛散防止部210の上部に、スプレイガン180を囲うように配置されるとともに、下側に向けて圧縮空気をカーテン状に噴出する機能を有する。
【0052】
以上説明した第2実施形態によれば、上述した第1実施形態の効果と同様の効果に加えて、スプレイSの周囲から塗布材料の飛沫が飛散することを効果的に防止することができる。
【0053】
<第3実施形態>
次に、本発明を適用した表面処理装置の第3実施形態について説明する。
図6は、第3実施形態の表面処理装置の外観斜視図である。
図7は、第3実施形態の表面処理装置の他の外観斜視図であって、
図6の反対側から見た状態を示す図である。
【0054】
第3実施形態の表面処理装置100Bは、屋根端部の塗装を容易化するため、スプレイガン180及びスプレイガン保持部190を、ステー200の長手方向に沿った軸回りに回動可能としている。
図8は、第3実施形態の表面処理装置においてスプレイガンをステーの長手方向に沿った軸回りに回動(傾斜)させた状態を示す図である。
このように、スプレイガン180をステー200の軸回りに回動させることにより、折板屋根1の端部まで適切に塗装を行うことができる。
【0055】
また、第3実施形態の表面処理装置100Bは、レーザポインタ230、バンパ240、距離センサ250等を備えている。
図9は、第3実施形態の表面処理装置におけるスプレイガン周辺部の拡大図である。
レーザポインタ230は、スプレイガン保持部190に設けられ、スプレイガン180による材料の噴霧範囲の端部を折板屋根1の表面に示す機能を有する。
レーザポインタ230は、例えば1対が設けられ、各レーザポインタ220はスプレイSの両端部に相当する箇所をレーザ光Lによって指し示す。
レーザポインタ230は、スプレイガン180と連動してスプレイガン保持部190に対して相対変位し、スプレイガン180の噴霧方向を変更した場合にもスプレイガン180に追従するよう構成されている。
【0056】
バンパ240は、下枠部110から、表面処理装置100Bの移動方向(走行方向)における両側に張り出して形成されている。
バンパ240には、図示しない接触検出手段が設けられ、表面処理装置100Bの走行中に、何等かの物体がバンパ240に接触したことを検出した場合には、アシストユニット160による駆動が禁止され、表面処理装置100Bは緊急停止するようになっている。
バンパ240は、本発明の接触検出部として機能する。
【0057】
距離センサ250は、下枠部110から、表面処理装置100Bの移動方向(走行方向)における両側に突出して設けられている。
距離センサ250は、その直下にある物体までの距離を検出する。
距離センサ250は、表面処理装置100Bの通常使用時においては、折板屋根1の表面を検出している。
距離センサ250は、本発明の屋根端部検出部として機能する。
距離センサ250が折板屋根1を検出しなくなった場合には、アシストユニット160による駆動が禁止され、表面処理装置100Bは緊急停止するようになっている。
アシストユニット160は、バンパ240又は距離センサ250により異常が検出された場合に、表面処理装置100Bの走行を自動的に停止させる自動停止部として機能する。
【0058】
図10は、第3実施形態の表面処理装置を移動や収納等のためにコンパクト化した状態を示す図である。
図10に示す状態では、上枠部120のクランプ121は、下枠部110の下部に設けられたクランプ112と係合した状態となっている。
このような状態とすることにより、表面処理装置100Bの全高を抑制し、取り扱いや収容を容易とすることができる。
【0059】
以上説明した第3実施形態によれば、上述した第1実施形態の効果と同様の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
(1)スプレイガン180をステー200の軸回りに回動可能としたことにより、折板屋根1の端部まで塗り残しなく表面処理を行うことができる。
(2)スプレイガン180によるスプレイSの噴霧範囲を指し示すレーザポインタ230を設けたことにより、実際に材料を噴霧することに先立ち、噴霧範囲を屋根の表面に表示することにより、塗り残しや塗りむらがないようにスプレイガン180を調整することが可能となり、施工品質がより向上する。
(3)下枠部110にバンパ240を設け、バンパ240に異物が接触した場合には表面処理装置100Bの走行を停止させることにより、事故の発生を未然に防止することができる。
(4)下枠部110に折板屋根1の端部を検出する距離センサ250を設け、折板屋根1の端部を検出した場合には表面処理装置100Bの走行を停止させることにより、表面処理装置100Bが折板屋根1から転落することを防止できる。
【0060】
(変形例)
本発明は、以上説明した各実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)表面処理装置及びこれを構成する各部材の構成は、適宜変更することができる。
例えば、各部材の形状、構造、材質、製法、配置、数量などは、適宜変更することができる。
(2)実施形態において、表面処理は一例として塗布材料の噴霧であるが、本発明はこれに限らず、他の表面処理を行う場合であっても適用することができる。
例えば、屋根の研磨やクリーニング等を行う構成としてもよい。
また、例えば塗料等の塗布材料を、ローラや刷毛を用いて塗布する構成としてもよい。
また、塗布材料の種類も実施形態のものに限定されず、適宜変更することができる。
(3)処理対象となる屋根は、実施形態のような折板屋根に限らず、他の屋根であってもよい。
例えば、本発明は、瓦棒葺き屋根の表面処理にも適用することが可能である。この場合は、ガイド用の転動体で瓦棒を矜持することにより、表面処理装置の走行の直進性を確保することができる。
(4)実施形態においては、表面処理装置が屋根の表面を走行するための転動体として車輪を用いているが、本発明はこれに限らず、例えば転動体としてクローラ(履帯)などの他種のものを用いてもよい。
(5)各実施形態では、処理部であるスプレイガンのオンオフをトリガによって操作しているが、処理部を操作する操作部材の形態はこれに限らず適宜変更することができる。
また、表面処理装置は遠隔操作によって操作可能な構成としてもよい。例えば、操作部材を本体から取り外してリモートコントローラとして用いたり、専用のリモートコントローラを用いて操作する構成としてもよい。
(6)アシストユニットのモータ、バッテリ等の具体的構成は、各実施形態の構成に限らず適宜変更することができる。例えば、モータの個数やバッテリの搭載位置などは適宜変更することができる。また、バッテリを搭載する構成に代えて、外部から給電を受けて作動するようにしてもよい。
(7)各実施形態においては、屋根に塗布する材料を、ホースを介して外部から供給しているが、このような材料を表面処理装置の移動体に搭載する構成としてもよい。
(8)第3実施形態においては、一対のレーザポインタによってスプレイの噴霧範囲の両端部を指し示すようにしているが、これに代えて、例えば単一のレーザポインタにより、噴霧範囲の中央を指し示すようにしてもよい。
(9)各実施形態におけるスプレイガンによる屋根への吹き付け角度は一例であって、適宜変更することができる。
(10)各実施形態において、表面処理装置は単一のスプレイガンを備える構成としているが、一つの表面処置装置が複数のスプレイガンを備える構成としてもよい。この場合、各スプレイガンは、異なった材料を噴射する構成としてもよい。例えば、一部のスプレイガンから発泡性材料を噴射するとともに、他のスプレイガンから防水用の塗料を噴射する構成としてもよい。また、各スプレイガンから同一の材料を噴射する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 折板屋根 10 上底部
11 ハゼ部 20 下底部
30 第1ウェブ部 40 第2ウェブ部
100,100A,100B 表面処理装置
110 下枠部
111~113 クランプ 114 ステーストッパ
115 ホースホルダ
120 上枠部 121 被係合部
122 ホースホルダ 123 エアホース
130 主車輪 140 補助車輪
150 ガイド車輪 160 アシストユニット
170 ハンドル 171 グリップ部
172 トリガ 180 スプレイガン
S スプレイ 190 スプレイガン保持部
200 ステー 210 飛散防止部
220 気体噴出部 230 レーザポインタ
L レーザ光 240 バンパ
250 距離センサ
M 作業者