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特開2024-161686介護事業所経営支援装置及びプログラム
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  • 特開-介護事業所経営支援装置及びプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161686
(43)【公開日】2024-11-20
(54)【発明の名称】介護事業所経営支援装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 40/00 20180101AFI20241113BHJP
【FI】
G16H40/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076575
(22)【出願日】2023-05-08
(71)【出願人】
【識別番号】501089313
【氏名又は名称】QLCプロデュース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】川口 大輔
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA11
(57)【要約】
【課題】より適切な介護事業運営に貢献できる介護事業者支援装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】介護事業所経営支援装置10は、一の介護事業所の経営に関する基本情報を取得する取得部(制御部11)と、基本情報に基づいて経営を評価するための評価値を算出する算出部(制御部11)と、評価値と、当該評価値に対応する比較値とを比較する比較部(制御部11)と、前記比較部による比較結果を出力する出力部(制御部11)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の介護事業所の経営に関する基本情報を取得する取得部と、
前記基本情報に基づいて経営を評価するための評価値を算出する算出部と、
前記評価値と、当該評価値に対応する比較値とを比較する比較部と、
前記比較部による比較結果を出力する出力部と、
を備える介護事業所経営支援装置。
【請求項2】
前記算出部は、前記一の介護事業所の所定の資格者の人数と当該資格者によるサービス提供時間から算定可能な加算報酬総額を前記評価値として算出し、
前記比較部は、前記一の介護事業所における実際の加算報酬総額を前記比較値として前記算出部により算出された加算報酬総額と比較する請求項1記載の介護事業所経営支援装置。
【請求項3】
前記算出部は、前記一の介護事業所の所定の資格者の人数と当該資格者によるサービス提供時間から資格者が配置されているだけで算定可能な第1の加算報酬額を算出するとともに、資格者がサービス提供することによって算定可能な第2の加算報酬額を算出し、
前記比較部は、前記第1の加算報酬額及び前記第2の加算報酬額のうち、何れか一方を前記評価値とし、他方を前記比較値とする請求項1記載の介護事業所経営支援装置。
【請求項4】
前記算出部は、前記一の介護事業所において利用者を紹介しているケアマネージャーからの紹介率を前記評価値として算出し、
前記比較部は、他の介護事業所の紹介率を比較値として前記算出部により算出された紹介率と比較する請求項1記載の介護事業所経営支援装置。
【請求項5】
前記算出部は、利用者の利用開始からの期間別の解約数を利用者総数で除した期間別解約率を前記評価値として算出し、
前記比較部は、他の介護事業所の期間別解約率を比較値として前記算出部により算出された期間別解約率と比較する請求項1記載の介護事業所経営支援装置。
【請求項6】
前記算出部は、全利用者の月間利用回数を、日別で算定した加算の月間総算定回数で除した事業所加算算定率を前記評価値として算出し、
前記比較部は、他の介護事業所の事業所加算算定率を比較値として前記算出部により算出された事業所加算算定率と比較する請求項1記載の介護事業所経営支援装置。
【請求項7】
前記算出部は、機能訓練室の床面積を利用者一人当たりの法定床面積で除した最大利用可能定員数を前記評価値として算出し、
前記比較部は、前記一の介護事業所における実際の利用定員数を前記比較値として前記算出部により算出された前記最大利用可能定員数と比較する請求項1記載の介護事業所経営支援装置。
【請求項8】
コンピュータを、
一の介護事業所の経営に関する基本情報を取得する取得部、
前記基本情報に基づいて経営を評価するための評価値を算出する算出部、
前記評価値と、当該評価値に対応する比較値とを比較する比較部、
前記比較部による比較結果を出力する出力部、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、介護事業所経営支援装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、介護保険サービスにおける通所介護(デイサービス)を提供する介護事業所の経営は、コロナ感染予防による利用控えや燃料光熱費および人件費の高騰により悪化している。介護事業所の多くは中小企業のため体力に乏しく、事業継続が厳しい状況となっている。
経営状況の悪化は、外部環境の変化による課題も大きいが、多くの介護事業所が適正な事業運営をしていないという課題がある。
【0003】
特許文献1には、介護事業所における経営状態に関する経営レポートを作成するレポート作成装置について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2022-548793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のレポート作成装置で作成される経営リポートでは、現状分析はできるものの、具体的な問題点の提示はされない。したがって、介護事業所を運営する介護事業者は当該経営リポートを用いても適切な介護事業運営をすることが依然として難しい。
【0006】
本発明の課題は、より適切な介護事業運営に貢献できる介護事業者支援装置及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の介護事業所経営支援装置は、
一の介護事業所の経営に関する基本情報を取得する取得部と、
前記基本情報に基づいて経営を評価するための評価値を算出する算出部と、
前記評価値と、当該評価値に対応する比較値とを比較する比較部と、
前記比較部による比較結果を出力する出力部と、を備える。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の介護事業所経営支援装置において、
前記算出部は、前記一の介護事業所の所定の資格者の人数と当該資格者によるサービス提供時間から算定可能な加算報酬総額を前記評価値として算出し、
前記比較部は、前記一の介護事業所における実際の加算報酬総額を前記比較値として前記算出部により算出された加算報酬総額と比較する。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の介護事業所経営支援装置において、
前記算出部は、前記一の介護事業所の所定の資格者の人数と当該資格者によるサービス提供時間から資格者が配置されているだけで算定可能な第1の加算報酬額を算出するとともに、資格者がサービス提供することによって算定可能な第2の加算報酬額を算出し、
前記比較部は、前記第1の加算報酬額及び前記第2の加算報酬額のうち、何れか一方を前記評価値とし、他方を前記比較値とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の介護事業所経営支援装置において、
前記算出部は、前記一の介護事業所において利用者を紹介しているケアマネージャーからの紹介率を前記評価値として算出し、
前記比較部は、他の介護事業所の紹介率を比較値として前記算出部により算出された紹介率と比較する。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の介護事業所経営支援装置において、
前記算出部は、利用者の利用開始からの期間別の解約数を利用者総数で除した期間別解約率を前記評価値として算出し、
前記比較部は、他の介護事業所の期間別解約率を比較値として前記算出部により算出された期間別解約率と比較する。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の介護事業所経営支援装置において、
前記算出部は、全利用者の月間利用回数を、日別で算定した加算の月間総算定回数で除した事業所加算算定率を前記評価値として算出し、
前記比較部は、他の介護事業所の事業所加算算定率を比較値として前記算出部により算出された事業所加算算定率と比較する。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1に記載の介護事業所経営支援装置において、
前記算出部は、機能訓練室の床面積を利用者一人当たりの法定床面積で除した最大利用可能定員数を前記評価値として算出し、
前記比較部は、前記一の介護事業所における実際の利用定員数を前記比較値として前記算出部により算出された前記最大利用可能定員数と比較する。
【0014】
請求項8に記載の発明は、コンピュータを、
一の介護事業所の経営に関する基本情報を取得する取得部、
前記基本情報に基づいて経営を評価するための評価値を算出する算出部、
前記評価値と、当該評価値に対応する比較値とを比較する比較部、
前記比較部による比較結果を出力する出力部、
として機能させるプログラムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、より適切な介護事業運営に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】介護事業所経営支援システムの構成を示すブロック図である。
図2】基本情報の一例を示す図である。
図3】経営診断処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1から図3に基づいて、本発明の実施形態である介護事業所経営支援システム100について説明する。
[システムの構成]
図1に示すように、介護事業所経営支援システム100は、介護事業所経営支援装置(以下、支援装置という。)10と、端末装置20・・・と、を備える。
本実施形態において、端末装置20は、介護事業所において使用される端末装置であるがこれに限らない。端末装置20は、ユーザーである介護事業所を運営する介護事業者が使用する端末装置であればよい。
介護事業所としては、例えば、いわゆるデイサービスを提供する施設が含まれる。
【0018】
介護事業所経営支援システム100において、支援装置10と端末装置20は、通信ネットワークNを介して通信可能に接続されている。かかる通信ネットワークNの一態様としては、有線又は無線を問わず、LAN(Local Area Network)やVPN(Virtual Private Network)、移動体通信網などの任意の種類の通信網を採用できる。
【0019】
[支援装置の構成]
支援装置10は、図1に示すように、制御部11と、通信部12と、記憶部13、表示部14を備える。
【0020】
制御部11は、支援装置10の動作を制御する部分であり、具体的には、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えて構成され、RAMの作業領域に展開されたROMや記憶部13に記憶されたコンピュータプログラムとCPUとの協働により、支援装置10の各部を統括制御する。
【0021】
また、制御部11は、端末装置20から介護事業所の経営に関する基本情報(図2参照)を、通信ネットワークNを介して取得する。よって、制御部11は、取得部として機能する。なお、制御部11は、基本情報を全て取得する必要はなく、少なくとも評価値の算出に必要な基本情報だけ取得できればよい。
【0022】
ここで、介護事業所の経営に関する基本情報について、一の介護事業所としてのA介護事業所を例にして説明する。
基本情報には、A介護事業所に関する事業者情報と、A介護事業所に利用者を紹介したケアマネージャーに関するケアマネ情報と、A介護事業所の売上に関する売上情報と、A介護事業所の経費に関する経費情報が含まれる。
【0023】
事業者情報には、開業年月日、住所、商圏、機能訓練室の床面積、定員、サービス内容(サービス提供時間、取得加算)、設備、車両などの一般情報と所員情報が含まれる。
所員情報には、員数、所員ごとの、所有する資格情報が含まれる。
資格情報は、例えば、生活相談員、介護職員、機能訓練指導員としての資格である。
生活相談員の資格としては、社会福祉士の資格等である。
機能訓練指導員の資格としては、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護職員、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、はり師・きゅう師の資格等である。
【0024】
ケアマネ情報には、ケアマネージャーごとのA介護事業所に紹介した人数が含まれる。
【0025】
売上情報には、A介護事業所の利用者に関する利用者情報と、売上単価に関する単価情報、利用者の利用状況に関する利用状況情報が含まれる。
利用者情報には、利用者の利用開始日および解約日に関する解約情報が含まれる。
介護報酬には、基本報酬と加算報酬があり、単価情報には、基本報酬及び加算報酬に関する情報が含まれる。
加算報酬としては、入浴介助加算、機能訓練加算、LIFE加算、介護職員処遇改善加算、その他加算がある。
機能訓練加算には、個別機能訓練加算、口腔機能向上加算、栄養改善加算、生活機能向上連携加算、運動器機能向上加算などがある。
LIFE加算には、科学的介護推進体制加算などがある。
その他加算には、事業所評価加算、口腔栄養加算、若年性認知症加算などがある。
利用状況情報には、A介護事業所の利用者ごとの、利用した日付、利用時間、利用内容などが含まれる。
【0026】
経費情報には、人件費、設備費、サービス費などが含まれる。
【0027】
また、制御部11は、取得した複数の基本情報に基づいて評価値を算出する算出部として機能する。
また、制御部11は、算出された評価値と、評価値に対応する比較値とを比較する比較部として機能する。
また、制御部11は、比較結果を端末装置20などに出力する出力部として機能する。
【0028】
通信部12は、制御部11の制御の下、所定の通信プロトコルを用いて、端末装置20と通信ネットワークNを介したデータ通信を行う。具体的には、通信部12は、通信用IC(Integrated Circuit)と通信コネクタなどを有する通信インターフェイスである。
例えば、通信部12は、制御部11の制御により、端末装置20から基本情報を受信する。
また、通信部12は、制御部11の制御により、出力された比較結果を端末装置20に送信する。
【0029】
記憶部13は、支援装置10の運用に必要となる各種情報が記憶される部分であり、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、半導体メモリなどにより構成され、コンピュータプログラムデータ、各種設定データ等のデータを、制御部11から読み書き可能に記憶する。
記憶部13には、後述する経営診断処理を実行するための支援プログラム131が記憶されている。
また、記憶部13には、評価値と比較するための各種の比較値データ132が記憶されている。
比較値としては、例えば、算出された評価値に対応する他の介護事業所の値である。
比較値は、具体的には、特定の地域(A介護事業所が所属する商圏、市町村、県)の平均値、或いは、予め設定したモデル(ベンチマーク)となる介護事業所の評価値に対応する値などであるが、比較値としては、これらに限らず、経営判断の指標となり得る値であればよい。
また、記憶部13には、比較結果に対応した改善案テーブル(図示省略)が記憶されている。制御部11は、比較結果に該当する改善案を改善案テーブルから抽出して端末装置20に送信する。
【0030】
表示部14は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)等のディスプレイを備え、制御部11から出力された表示制御信号に基づいた画像を表示画面に表示する。
[端末装置の構成]
端末装置20は、各介護事業所が所有する装置であり、例えば、PC(Personal Computer)やスマートフォン等である。
【0031】
[経営診断処理]
以下、支援装置10による経営診断処理の流れについて、図3に示す経営診断処理のフローチャートに基づいて説明する。かかる経営診断処理は、制御部11と記憶部13に記憶されている支援プログラム131の協働により実行される。
【0032】
まず、制御部11は、端末装置20からの経営診断処理の実行指示に基づいて、端末装置20から基本情報を取得する(ステップS1)。
次に、制御部11は、端末装置20から評価項目の選択を受け付ける(ステップS2)。具体的には、制御部11は、例えば、加算報酬額適正評価、加算報酬選択評価、事業所加算算定率評価、ケアマネ紹介率評価、期間別解約率評価、定員数評価の何れから選択された評価項目を受け付ける。
なお、ステップS1とステップS2を逆にして、評価項目に応じた基本情報を取得するようにしてもよい。
次に、制御部11は、選択された評価項目に対する評価値を算出する(ステップS3)。
次に、制御部11は、記憶部13に記憶された、評価項目に対する比較値を抽出する(ステップS4)。
【0033】
次に、制御部11は、ステップS3で算出された評価値と、ステップS4で抽出された比較値とに基づいて比較を行う(ステップS5)。
【0034】
次に、制御部11は、ステップS5の比較結果を端末装置20に送信する(ステップS6)。
また、制御部11は、比較結果に基づいて、記憶部13に記憶された改善案に合致するものがあれば、当該改善案を比較結果とともに端末装置に送信する(ステップS7)。
制御部11は、ステップS7の処理が終わると、経営診断処理を終了する。
【0035】
ここで、各評価項目に対するステップS3~ステップS7の処理について詳細に説明する。
【0036】
<加算報酬額適正評価>
制御部11は、A介護事業所の所定の資格者の人数と当該資格者によるサービス提供時間から算定可能な加算報酬総額を評価値として算出する(ステップS3)。
具体的には、以下の例で説明する。
・定員10名、要介護利用者数31人、延べ利用回数300回のケース
人員配置要件として必要最低限となる職種は、管理者、生活相談員(社会福祉士等)、介護職員(介護士等)、機能訓練指導員(運動系の国家資格または看護職員)である。
本ケースでは、算定可能な機能訓練加算報酬総額は、個別機能訓練加算168,000円、口腔機能向上加算93,000円、栄養改善加算124,000円であり、LIFE加算報酬額では43,400円となる。
なお、介護事業所が属する市町村によって算定式が異なるため、介護事業所の住所から属する市町村の算定式により金額を算出する。
これに対して、A介護事業所における実際の機能訓練加算報酬総額は、個別機能訓練加算で120,400円、口腔機能向上加算78,000円、栄養改善加算85,900円であり、LIFE加算報酬総額では35,300円であったとする。
制御部11は、評価値として算出された加算報酬総額と比較値であるA介護事業所における実際の加算報酬総額の差分を比較結果として端末装置20に出力する(ステップS4~6)。
本ケースにおいて、差分は、機能訓練加算報酬総額が、個別機能訓練加算47,600円、口腔機能向上加算15,000円、栄養改善加算38,100円であり、LIFE加算報酬額が8,100円となる。
これにより、加算報酬の取得の仕方が適切か否か判断できる。
【0037】
<加算報酬選択評価>
制御部11は、A介護事業所の所定の資格者の人数と当該資格者によるサービス提供時間から資格者が配置されているだけで算定可能な第1の加算報酬額(A)を算出するとともに、資格者がサービス提供することによって算定可能な第2の加算報酬額(B)を算出する(ステップS3)。
具体的には、制御部11は、介護事業所の単価構成の内、現在算定している加算報酬の一覧を取得する。
制御部11は、事業所情報にて、介護事業所の定員数・資格者数および同一資格者の累計勤務時間を取得する。
制御部11は、取得した情報に基づいて、第1の加算報酬額(A)と第2の加算報酬額(B)を算出する。
次いで、制御部11は、第1の加算報酬額(A)と第2の加算報酬額(B)の差分を比較結果として算出し(ステップS5)、端末装置20に送信する(ステップS6)。
【0038】
介護保険法および介護報酬には、複数の加算があるが、人員配置状況によっては、何れかの加算のみしか算定出来ないケースがある。したがって、介護事業所は、何の加算を算定するか決定し、都道府県ならびに市区町村に取得加算を申請/届け出を行う。しかし、何の加算算定することが望ましいか判断が難しい。
【0039】
具体的には、資格者が配置されているだけで算定可能な第1の加算報酬額(A)と資格者がサービスを提供することで算定できる第2の加算報酬額(B)がある。第1の加算報酬額(A)と第2の加算報酬額(B)では一般的に第2の加算報酬額(B)の方が加算算定額は大きくなるが、資格者がサービスを提供できない場合(日または回)は算定できないため、資格者によるサービス提供数(算定率)が一定以上ないと、第1の加算報酬額(A)の加算算定をした方が加算算定額は大きくなる。第2の加算報酬額(B)が第1の加算報酬額(A)を超過する分岐点の算定率を提示することで事業所(使用者)が第1の加算報酬額(A)と第2の加算報酬額(B)のどちらの加算を算定した方が良いか判断できようにする。
例えば、看護職員が一日配置されており、比較的重度者の利用者が利用していると、中重度ケア体制加算の算定が可能となる(第1の加算報酬額(A))。
一方、看護職員が個別機能訓練と口腔機能向上を個別にサービスした場合、個別加算(第2の加算報酬額(B))の算定が可能となる。
したがって、当該看護職員の勤務状況によって、どちらで加算請求した方が良いかが分かる。
【0040】
<事業所加算算定率評価>
制御部11は、基本情報に基づいて、事業所が取得している加算の内、月単位で算定する加算と日別で算定する加算を分類する。
制御部11は、事業所の全利用者の月間利用回数に対して、日別で算定した加算の月間総算定回数を除した事業所加算算定率(α)を評価値として算出する(ステップS3)。
制御部11は、記憶部13から他の介護事業所の事業所加算算定率(β)を比較値として取得し(ステップS4)、算出された事業所加算算定率と比較する(ステップS5)。
そして、制御部11は、比較結果を端末装置20に送信する(ステップS6)。
【0041】
具体的には、事業所加算算定率(α)が70%であるのに対し、事業所加算算定率(β)が85%だとする。すると、事業所加算算定率(α)-事業所加算算定率(β)=―15%となり、A介護事業所の加算算定率が他の事業所よりも低いことが分かる。
その理由としては、加算サービスを受ける本人への加算サービスの提案方法の課題や加算サービスの提供を効率的に行えないことによる時間的課題から算定率が低くなっていることが考えられ、それを改善するための改善案を提示することができる。
【0042】
また、制御部11は、利用者ごとの月間利用回数に対して、日別で算定した加算の算定回数を除して、「個別の加算算定率」および月間利用回数から日別で算定した加算の算定回数を引くことで「個別の加算未算定回数」を算出し、併せて「事業所全体の個別の加算未算定者数」を算出する。
また、制御部11は、利用者ごとの介護度に応じた利用限度額を把握し、個別の月間利用実績額を引き、「個別の限度額残額」を算出し、併せて「事業所全体の個別の限度額残額者数」を算出する。
【0043】
また、制御部11は、事業所全体の個別の限度残額者数」を「事業所全体の個別の加算未算定者数」の値を除して、「事業所の加算算定追加可能利用者率」を算出する。
また、制御部11は、「個別の限度残額額」を事業所全体で足した、「事業所加算算定限度額残」を算出する。
【0044】
また、制御部11は、「事業所加算算定限度額残」を事業所が取得している日別で算定する加算の回数単価で除して、「事業所加算算定限度額残」が1未満となる加算算定回数を算出する。
そして、「事業所加算算定率」・「事業所の加算算定追加可能率」を事業書(使用者)のサービス提供時間(5時間未満・7時間未満・7時間以上)を基に類似する属性と比較を行うことで、現状の加算算定率に課題が生じている場合において、利用者限度額に達していることが要因にあるか、加算サービスの提供に伴う提案方法または機会に課題があるのかを把握できる。
加算サービスの提供に伴う提案方法または機会に課題がある場合、「事業所加算算定限度額残」を把握のうえ、課題改善に向けた対策を実行するか判断できるようにする。
【0045】
<ケアマネ紹介率評価>
制御部11は、ケアマネ情報から取得したA介護事業所において利用者を紹介しているケアマネージャーからの紹介率を評価値として算出する(ステップS3)。
【0046】
具体的には、まず、制御部11は、A介護事業所に利用者を紹介しているケアマネージャーの数が10人で、1人のケアマネージャーが紹介可能な最大人数が35人とした場合、10×35=350を最大紹介可能人数として算出する。
次いで、制御部11は、ケアマネ情報から取得した実際に紹介された利用者人数を取得し、最大紹介可能人数を実利用者人数で除した値である紹介率を評価値として算出する。
例えば、実利用者人数が100人だとすると、100÷350×100=29%となる。
次いで、制御部11は、記憶部に記憶された比較値である、他の介護事業所の紹介率を取得し(ステップS4)、算出した紹介率と比較する(ステップS5)。
具体的には、他の介護事業所の紹介率が60%とすると、29/60=0.5(比較結果)となり、他の介護事業所の紹介率と比べて、約半分程度であることが分かる。
よって、現在紹介してもらっているケアマネに対してもっと紹介してもらえるような改善提案を提示することができる。
そして、制御部11は、上記の比較結果および改善提案を端末装置20に送信する(ステップS6,ステップS7)。
【0047】
<期間別解約率評価>
制御部11は、利用者の利用開始からの期間別の解約数を利用者総数で除した期間別解約率を評価値として算出する(ステップS3)。
【0048】
具体的には、まず、制御部11は、利用者情報に含まれる利用者の利用開始日および解約日に関する解約情報を取得する。次いで、制御部11は、取得した解約情報に基づいて、例えば、3か月未満、3~6か月未満、6~12か月未満、12か月以上の4つの期間に分類して、全体の解約者数に占める各々の期間での解約者数の割合を算出する。
【0049】
具体的には、全解約者数が600人で、期間別の解約者数が、3か月未満は250人、3~6か月未満は150人、6~12か月未満は100人、12か月以上は100人であるとすると、期間別解約率は、3か月未満は41%、3~6か月未満は25%、6~12か月未満は17%、12か月以上は17%となる。
次いで、制御部11は、記憶部に記憶された比較値である、平均期間別解約率を取得し(ステップS4)、算出した期間別解約率と比較する(ステップS5)。
例えば、平均期間別解約率が、3か月未満は10%、3~6か月未満は20%、6~12か月未満は40%、12か月以上は30%とすると、平均期間別解約率と比べて、3か月未満、3~6か月未満の比較的利用開始から早い段階での早期解約が多いことが分かる(比較結果)。
よって、早期解約が多いということは、利用者がサービス利用に定着する前に利用意欲が低下していることが想定される。よって、利用期間の短い利用者に対しては積極的にコミュニケーションをとって、当該利用者の状況やニーズの聞き取りを強化することで、早期解約を抑制するような改善提案をすることができる。
そして、制御部11は、上記の比較結果および改善提案を端末装置20に送信する(ステップS6,ステップS7)。
【0050】
<定員数評価>
制御部11は、機能訓練室の床面積を利用者一人当たりの法定床面積で除した最大利用可能定員数を評価値として算出する(ステップS3)。
【0051】
具体的には、制御部11は、事業者情報に含まれるA介護事業所の床面積と市区町村に提出している機能訓練室の面積および利用可能定員に関する情報を取得する。
介護保険法における設備基準にて介護事業所の機能訓練室(食堂含む)の床面積の設定には一定の要件があり、その要件を満たした機能訓練室の床面積に3m2を除した値が利用可能上限定員数となる。例えば、機能訓練室の床面積が100m2の場合、利用可能上限定員33人となる。介護保険法にて当該定員の増加に応じて、職員の配置人数を多く求められることから、事業所の機能訓練室の面積に応じた最大利用可能定員に設定していない場合がある。
【0052】
制御部11は、比較値として、事業者情報に含まれる定員を取得する(ステップS4)。
制御部11は、最大利用可能定員数から定員を引くことで増加可能人数を比較結果として算出し(ステップS5)、比較結果を端末装置20に送信する(ステップS6)。
また、制御部11は、記憶部13から類似する床面積の他の介護事業所の定員を比較値として抽出し、適正な機能訓練室の申請が出来ているか検討する余地を提案する。
また、制御部11は、最大利用可能定員から現在の定員を引き、定員増加余地人数を算出する。そして、制御部11は、定員増加余地人数に月の営業日数・欠席率を乗じて、定員増加時の増加利用回数を算出する。更に、増加利用回数に平均利用単価を乗じた定員増加売上金額を算出する。
制御部11は、「増加利用回数」に「利用者一人当たりの職員数」と「一人当たりの人件費」を乗じて、「増加利用回数」を得るために必要となる「増加利用回数用の人件費」を算出する。
制御部は、「定員増加売上」から「増加利用回数用の人件費」を引いて、定員増加の収支シュミレーションを行う。
【0053】
以上、上記実施形態における介護事業所経営支援装置10は、一の介護事業所の経営に関する基本情報を取得する制御部(取得部)11と、基本情報に基づいて経営を評価するための評価値を算出する制御部(算出部)11と、評価値と、当該評価値に対応する比較値とを比較する制御部(比較部)11と、制御部11による比較結果を出力する制御部(出力部)11と、を備える。
したがって、介護事業経営にとって有益な情報を取得することができることとなって、より適切な介護事業運営に貢献できる。
【0054】
また、制御部11は、一の介護事業所の所定の資格者の人数と当該資格者によるサービス提供時間から算定可能な加算報酬額を評価値として算出し、制御部11は、一の介護事業所における実際の加算報酬額を比較値として制御部11により算出された加算報酬額と比較する。
これにより、現状での加算報酬額が妥当であるか判断できるので、より適切な介護事業運営に貢献できる。
【0055】
また、制御部11は、一の介護事業所の所定の資格者の人数と当該資格者によるサービス提供時間から資格者が配置されているだけで算定可能な第1の加算報酬額を算出するとともに、資格者がサービス提供することによって算定可能な第2の加算報酬額を算出し、制御部11は、第1の加算報酬額及び第2の加算報酬額のうち、何れか一方を評価値とし、他方を前記比較値とする。
これにより、現状での最適な加算報酬額が判断できるので、より適切な介護事業運営に貢献できる。
【0056】
また、制御部11は、一の介護事業所において利用者を紹介しているケアマネージャーの数と、1人のケアマネージャーが紹介可能な人数とに基づいて、最大紹介可能人数を評価値として算出し、制御部11は、一の介護事業所における実際の利用者数を比較値として制御部11により算出された最大紹介可能人数と比較する。
これにより、現状におけるケアマネージャーからの紹介人数が適切かどうか判断できるので、より適切な介護事業運営に貢献できる。
【0057】
また、制御部11は、利用者の利用開始からの期間別の解約数を利用者総数で除した期間別解約率を評価値として算出し、制御部11は、他の介護事業所の期間別解約率を比較値として前記算出部により算出された期間別解約率と比較する。
これにより、現状での期間別解約率が妥当であるかどうか判断できるので、より適切な介護事業運営に貢献できる。
【0058】
また、制御部11は、全利用者の月間利用回数を、日別で算定した加算の月間総算定回数で除した事業所加算算定率を評価値として算出し、制御部11は、他の介護事業所の事業所加算算定率を比較値として制御部11により算出された事業所加算算定率と比較する。
また、算出部は、機能訓練室の床面積を利用者一人当たりの法定床面積で除した最大利用可能定員数を前記評価値として算出し、制御部11は、一の介護事業所における実際の利用定員数を比較値として制御部11により算出された最大利用可能定員数と比較する。
これにより、現状での最大利用可能定員数が妥当であるかどうか判断できるので、より適切な介護事業運営に貢献できる。
【0059】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、支援装置10と端末装置20とをネットワークで接続した構成となっているが、各端末装置20に、支援プログラムと比較値データをインストールすることで、スタンドアロン型の介護事業所経営支援装置を構築してもよい。
【0060】
その他、上記実施の形態で示した具体的な構成、動作の内容や手順などは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0061】
100 介護事業所経営支援システム
10 介護事業所経営支援装置
11 制御部(取得部、算出部、比較部、出力部)
12 通信部
13 記憶部
131 支援プログラム
132 比較値データ
14 表示部
20 端末装置
図1
図2
図3