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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161688
(43)【公開日】2024-11-20
(54)【発明の名称】ホール素子
(51)【国際特許分類】
   H10N 52/00 20230101AFI20241113BHJP
【FI】
H10N52/00 P
H10N52/00 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076581
(22)【出願日】2023-05-08
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100133514
【弁理士】
【氏名又は名称】寺山 啓進
(74)【代理人】
【識別番号】100135714
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 一生
(74)【代理人】
【識別番号】100167612
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 直行
(72)【発明者】
【氏名】吉宗 聖司
(72)【発明者】
【氏名】湯地 洋行
【テーマコード(参考)】
5F092
【Fターム(参考)】
5F092AA15
5F092AB01
5F092AC02
5F092BA03
5F092BA06
5F092BA07
5F092BA12
5F092BA15
5F092BA19
5F092BA21
5F092BA25
5F092BA33
(57)【要約】
【課題】基板に対して平行に通過する磁場を検知するホール素子を提供する。
【解決手段】ホール素子1は、相互に対向する第1面201と第2面202で両面が定義された導電性の第1半導体層20と、メサ形状の導電性半導体の第1感磁層301および第2感磁層302A、302Bを備える。第1感磁層301は、第1半導体層20の第1面201の上方に配置され、底面が第1面201に対向する。第2感磁層302A、302Bは、第1感磁層301から離隔した位置で第1面201の上方に配置され、底面が第1面201に対向する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に対向する第1面と第2面で両面が定義された導電性の第1半導体層と、
前記第1半導体層の前記第1面の上方に配置され、底面が前記第1面に対向するメサ形状の導電性半導体の第1感磁層と、
前記第1感磁層から離隔した位置で前記第1面の上方に配置され、底面が前記第1面に対向するメサ形状の導電性半導体の第2感磁層と
を備える、ホール素子。
【請求項2】
前記第1感磁層および前記第2感磁層のそれぞれにおいて、前記底面から前記底面に対向する上面に向かう方向が前記第1面と交差する、請求項1に記載のホール素子。
【請求項3】
前記第1感磁層の上面に配置された第1主電極と、
前記第2感磁層の上面に配置された第2主電極と
を更に備える、請求項1に記載のホール素子。
【請求項4】
前記第1主電極を挟んで前記第1感磁層の前記上面に配置された一対のホール電極を更に備え、
前記第1半導体層の前記第1面と平行な向きの磁場と、前記第1感磁層および前記第2感磁層を流れる検知電流とにより発生するローレンツ力に起因するホール出力電圧を、前記ホール電極により検知可能に構成されている、請求項3に記載のホール素子。
【請求項5】
前記第1感磁層を挟んで2つの前記第2感磁層が配置されている、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のホール素子。
【請求項6】
前記第1感磁層および前記第2感磁層のそれぞれの前記底面が、前記第1半導体層の前記第1面と接触する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のホール素子。
【請求項7】
前記第1半導体層の前記第1面に形成された凸形状部の頂面に前記第1感磁層および前記第2感磁層が配置されている、請求項6に記載のホール素子。
【請求項8】
前記第1感磁層および前記第2感磁層と前記第1半導体層の前記第1面との間に配置された、前記第1感磁層および前記第2感磁層と組成の異なる第2半導体層を更に備える、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のホール素子。
【請求項9】
前記第2半導体層が、前記第1感磁層および前記第2感磁層よりもエッチングレートが低い、請求項8に記載のホール素子。
【請求項10】
前記第1感磁層および前記第2感磁層のそれぞれの側面が、前記第1半導体層の前記第1面に対して垂直方向に延伸する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のホール素子。
【請求項11】
前記第1感磁層および前記第2感磁層の材料が化合物半導体を含む、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のホール素子。
【請求項12】
前記第1感磁層および前記第2感磁層の材料がガリウム砒素を含む、請求項11に記載のホール素子。
【請求項13】
前記第1半導体層の前記第2面と接続する絶縁性の基板を更に備える、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のホール素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホール素子に関する。
【背景技術】
【0002】
ホール素子は、ホール効果を利用して磁場を検知する。ホール素子が形成された基板に対して垂直方向に通過する磁場を検知する平面型ホール素子と、基板に対して平行に通過する磁場を検知する縦型ホール素子が用いられている。例えば、縦型ホール素子として、磁場を検知するための検知電流を流すn型の半導体領域をp型のシリコン(Si)基板に形成した構成が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-16863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、平行に通過する磁場を検知するホール素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、相互に対向する第1面と第2面で両面が定義された導電性の第1半導体層と、メサ形状の導電性半導体の第1感磁層および第2感磁層を備えるホール素子である。第1感磁層は、第1半導体層の第1面の上方に配置され、底面が第1面に対向する。第2感磁層は、第1感磁層から離隔した位置で第1面の上方に配置され、底面が第1面に対向する。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様によれば、基板に対して平行に通過する磁場を検知するホール素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態に係るホール素子の構造を示す模式的な断面図である。
図2図2は、第1の実施形態に係るホール素子の動作を説明するための模式的な斜視図である。
図3図3は、第1の実施形態に係るホール素子による磁場の誤った検知の防止を説明するための模式図である。
図4図4は、感磁層モデルの構造を示す模式的な斜視図である。
図5図5は、第1の実施形態に係るホール素子の他の構造を示す模式的な断面図である。
図6A図6Aは、第1の実施形態に係るホール素子の製造方法を説明するための模式的な平面図である(その1)。
図6B図6Bは、第1の実施形態に係るホール素子の製造方法を説明するための模式的な断面図である(その1)。
図7A図7Aは、第1の実施形態に係るホール素子の製造方法を説明するための模式的な平面図である(その2)。
図7B図7Bは、第1の実施形態に係るホール素子の製造方法を説明するための模式的な断面図である(その2)。
図8A図8Aは、第1の実施形態に係るホール素子の製造方法を説明するための模式的な平面図である(その3)。
図8B図8Bは、第1の実施形態に係るホール素子の製造方法を説明するための模式的な断面図である(その3)。
図9A図9Aは、第1の実施形態に係るホール素子の製造方法を説明するための模式的な平面図である(その4)。
図9B図9Bは、第1の実施形態に係るホール素子の製造方法を説明するための模式的な断面図である(その4)。
図10A図10Aは、第1の実施形態に係るホール素子の製造方法を説明するための模式的な平面図である(その5)。
図10B図10Bは、第1の実施形態に係るホール素子の製造方法を説明するための模式的な断面図である(その5)。
図11A図11Aは、第1の実施形態に係るホール素子の製造方法を説明するための模式的な平面図である(その6)。
図11B図11Bは、第1の実施形態に係るホール素子の製造方法を説明するための模式的な断面図である(その6)。
図12A図12Aは、第1の実施形態に係るホール素子の製造方法を説明するための模式的な平面図である(その7)。
図12B図12Bは、第1の実施形態に係るホール素子の製造方法を説明するための模式的な断面図である(その7)。
図13A図13Aは、第1の実施形態に係るホール素子の製造方法を説明するための模式的な平面図である(その8)。
図13B図13Bは、第1の実施形態に係るホール素子の製造方法を説明するための模式的な断面図である(その8)。
図14A図14Aは、第1の実施形態に係るホール素子の製造方法を説明するための模式的な平面図である(その9)。
図14B図14Bは、第1の実施形態に係るホール素子の製造方法を説明するための模式的な断面図である(その9)。
図15A図15Aは、第1の実施形態に係るホール素子の製造方法を説明するための模式的な平面図である(その10)。
図15B図15Bは、第1の実施形態に係るホール素子の製造方法を説明するための模式的な断面図である(その10)。
図16A図16Aは、第1の実施形態に係るホール素子の製造方法を説明するための模式的な平面図である(その11)。
図16B図16Bは、第1の実施形態に係るホール素子の製造方法を説明するための模式的な断面図である(その11)。
図17図17は、第1の実施形態に係るホール素子の感磁層の形状の例を示す模式的な断面図である。
図18図18は、検知電流の広がりを説明するための模式図である。
図19A図19Aは、第1の実施形態の変形例に係るホール素子の構造を示す模式的な平面図である。
図19B図19Bは、第1の実施形態の変形例に係るホール素子の他の構造を示す模式的な平面図である。
図20図20は、第2の実施形態に係るホール素子の構造を示す模式的な断面図である。
図21図21は、第2の実施形態に係るホール素子の製造方法を説明するための模式的な断面図である。
図22図22は、その他の実施形態に係るホール素子の動作を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、図面を参照して実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各部の厚みの比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係又は比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0009】
また、以下に示す実施形態は、技術的思想を具体化するための装置又は方法を例示するものであって、構成部品の形状、構造、配置などを下記のものに特定するものでない。この実施形態は、特許請求の範囲において種々の変更を加えることができる。
【0010】
第1の実施形態に係るホール素子1は、図1に示すように、相互に対向する第1面201と第2面202で両面が定義された第1半導体層20と、第1面201の上方に配置された第1感磁層301および第2感磁層302A、302Bを備える。以下において、第2感磁層302Aと第2感磁層302Bのそれぞれを限定しない場合は「第2感磁層302」と表記する。第2感磁層302は、第1感磁層301から離隔した位置で第1面201の上方に配置されている。また、第1感磁層301と第2感磁層302のそれぞれを限定しない場合は、「感磁層30」と表記する。感磁層30と第1半導体層20は電気的に接続されている。
【0011】
感磁層30は、底面が第1面201に対向し、側面が第1面201と交差する方向に延伸するメサ形状である。図1に示した感磁層30は、側面が露出している。感磁層30の底面から底面に対向する上面に向かう方向は、第1面201と交差する。例えば、感磁層30の底面から上面に向かう方向が第1面201に対して垂直であってもよい。
【0012】
第1半導体層20と感磁層30の材料は導電性半導体である。例えば、第1半導体層20と感磁層30の材料が、Si半導体、又はGaAs、InP、InSb、AlGaAsなどの化合物半導体であってよい。以下では、第1半導体層20と感磁層30の材料がGaAsを含む場合を例示的に説明する。
【0013】
図1に示すように、第1半導体層20の厚さ方向(第2面202から第1面201に向かう方向)をZ方向とする。図1において、Z方向は紙面の上下方向である。また、Z方向に垂直な平面を、X方向とY方向により定義されるXY平面とする。図1において、X方向は紙面の左右方向、Y方向は紙面の奥行方向である。本開示では、Z方向において、第1半導体層20から見て感磁層30が位置している方向を上方向、感磁層30から見て第1半導体層20が位置している方向を下方向とする。ホール素子1の各層について、上方向を向いた面を上面、下方向を向いた面を下面又は底面とも称する。例えば、第1面201は第1半導体層20の上面であり、第2面202は第1半導体層20の下面である。
【0014】
図1に示したホール素子1は、第1感磁層301を挟んで、2つの第2感磁層302が配置された構成である。言い換えると、X方向に沿って、第2感磁層302A、第1感磁層301、第2感磁層302Bがこの順に配列されている。
【0015】
第1半導体層20は、例えばn型不純物がドーピングされたGaAs半導体層であってもよい。第1半導体層20の不純物濃度は、例えば1E17cm-3~1E19cm-3である。感磁層30は、例えばn型不純物がドーピングされたGaAs半導体層であってもよい。感磁層30の不純物濃度は、例えば1E16cm-3~1E17cm-3である。n型不純物は、例えばSi、Te、Zn、Mg、Beであってよい。
【0016】
図1に示すホール素子1は、第1半導体層20の第2面202と接続する基板10を更に備える。基板10には、例えば半絶縁性基板又は絶縁性基板が使用されてよい。基板10は、例えばGaAs基板、InP基板、InSb基板、Si基板などであってよい。
【0017】
ホール素子1は、図1に示すように、第1感磁層301の上面に配置された第1主電極401と、第2感磁層302Aの上面に配置された第2主電極402Aおよび第2感磁層302Bの上面に配置された第2主電極402Bを備える。以下において、第2主電極402Aと第2主電極402Bのそれぞれを限定しない場合は「第2主電極402」と表記する。また、第1主電極401と第2主電極402のそれぞれを限定しない場合は「主電極40」と表記する。主電極40の材料は、例えばAu、AuGe/Ni、Ti/Au、Ti/Pt/Auなどであってよい。
【0018】
第1主電極401は、第1半導体層20を経由して第1感磁層301と第2感磁層302の間を流れる検知電流Isの電流経路の第1の端部である。第2主電極402は、検知電流Isの電流経路の第2の端部である。以下では、第1感磁層301から第2感磁層302に検知電流Isが流れる場合を例示的に説明する。例えば、第1主電極401から第2主電極402に検知電流Isを流す電源が、ホール素子1の外部に用意される。
【0019】
ホール素子1では、第1主電極401と第2主電極402の間を流れる検知電流Isは、第1感磁層301と第2感磁層302において第1半導体層20の第1面201の面法線方向であるZ方向に沿って流れる。言い換えると、検知電流Isが基板10の主面と垂直な方向に流れる。検知電流Isが基板10の主面と垂直な方向に流れることにより、後述するように、ホール素子1により、基板10の主面に対して平行な向きの磁場を検知することができる。
【0020】
ホール素子1は、第1主電極401を挟んで第1感磁層301の上面にそれぞれ配置された、一対となる第1ホール電極501と第2ホール電極502を更に備える。以下において、第1ホール電極501と第2ホール電極502のそれぞれを限定しない場合は「ホール電極50」と表記する。ホール電極50の材料は、上記の主電極40と同様である。
【0021】
第1半導体層20の第1面201に対して平行な向きの磁場と、第1面201に対して垂直な向きに感磁層30を流れる検知電流Isにより、ホール素子1にローレンツ力が発生する。以下に説明するように、ホール素子1は、ローレンツ力に起因するホール出力電圧をホール電極50により検知する。
【0022】
以下に、図2を参照してホール素子1の動作例を説明する。図2では、感磁層30を透過して第1半導体層20を表示し、感磁層30の側面を第1半導体層20の第1面201に対して垂直に記載している。
【0023】
ホール素子1により磁場を検知するために、第1主電極401と第2主電極402の間を検知電流Isが第1半導体層20を介して流れる。既述のように、検知電流Isは、感磁層30を第1半導体層20の第1面201に対して垂直方向に流れ、第1半導体層20を第1面201に対して平行方向に流れる。基板10を検知電流Isが流れないように、第1半導体層20に対して基板10の電気的な絶縁性が確保されている。
【0024】
感磁層30を第1面201に対して垂直方向に検知電流Isが流れている状態で、基板10の主面と平行な向きで磁場Bxが通過すると、検知電流Isと磁場Bxとによりフレミングの左手の法則に従ってローレンツ力fが発生する。ローレンツ力fの向かう先に荷電粒子(キャリア)が溜まり、荷電粒子の偏りによりホール出力電圧が生じる。
【0025】
ホール素子1では、第1ホール電極501から第2ホール電極502に向かうローレンツ力fに起因して発生するホール出力電圧が、ホール電極50により検知される。上記のようにして、ホール素子1により磁場Bxが検知される。
【0026】
ホール素子1では、第1感磁層301の両側に第2感磁層302がそれぞれ配置されている。このため、検知電流Isは、第1感磁層301を流れた後に、第2感磁層302Aに流れる成分と第2感磁層302Bに流れる成分に分流される。言い換えると、ホール素子1では、第1感磁層301から第1半導体層20を経由して第2感磁層302Aに流れる電流経路と、第1感磁層301から第1半導体層20を経由して第2感磁層302Bに流れる電流経路が形成される。
【0027】
検知電流Isの電流経路が2つあることにより、基板10の主面に対して垂直方向に通過する磁場(以下、「垂直磁場」とも称する。)をホール素子1が誤って検知することが防止される。例えば図3に示すように、第1面201に対して垂直方向に磁場Bzが通過すると、検知電流Isの第2感磁層302Aに流れる成分に対するローレンツ力faと検知電流Isの第2感磁層302Bに流れる成分に対するローレンツ力fbが発生する。このとき、図3に示すように、ローレンツ力faとローレンツ力fbの方向は逆向きである。このため、ローレンツ力faとローレンツ力fbにそれぞれ起因するホール出力電圧の向きは対称であり、打ち消し合ってホール出力電圧は発生しない。したがって、基板10の主面と平行な向きで通過する磁場Bxのみが、ホール素子1により検知される。
【0028】
ホール素子1の感度を上げるためには、感磁層30において検知電流Isが流れる距離を長くすることが有効である。つまり、感磁層30の膜厚を厚くすることが、感度を上げるために有効である。感磁層30の膜厚は、上面から底面までの、第1半導体層20の第1面201の面法線方向(Z方向)に沿った長さである。
【0029】
しかし、後述するように半導体膜をメサ形状にエッチングして感磁層30を形成する場合には、感磁層30の膜厚を厚くするには限界がある。これは、感磁層30の膜厚が成膜装置の制限を受けるためである。例えば、感磁層30をエピタキシャル成長法により形成する場合に、エピタキシャル成長装置に成長膜厚の上限が存在する。このため、感磁層30の膜厚を厚くする以外の方法によっても、ホール素子1の感度を上げることが好ましい。
【0030】
以下に、図4に示す感磁層モデル30Mを参照して、ホール素子1の感度について検討する。感磁層モデル30Mのサイズは、電流Iの流れるZ方向に沿った厚さL、磁場Bの向かうX方向に沿った長さt、厚さLと長さtに垂直なY方向に沿った幅Wである。厚さLは、感磁層30の膜厚に相当する。長さtおよび幅Wは、主電極40のサイズに依存する。
【0031】
感磁層モデル30Mに電流Iと磁場Bが印加されると、キャリアはf=q×v×Bのローレンツ力を受ける。qは電子の電荷、vはドリフト速度である。ローレンツ力fに起因するキャリアの偏りによって生じる電場から受ける力Fとローレンツ力fが釣り合うところで定常状態に達する。電場から受ける力Fは、以下の式(1)で表される:

F=q×(Vh/W) ・・・(1)

式(1)で、Vhはホール出力電圧である。一方、電流Iは式(2)で表される:

I=q×n×v×W×t ・・・(2)

式(2)で、nはキャリア濃度である。
【0032】
f=Fから式(2)のドリフト速度vを除去して、感磁層モデル30Mを定電流駆動する場合のホール出力電圧Vhは、以下の式(3)で表される:

Vh=I×B/(q×n×t) ・・・(3)
【0033】
ホール素子を定電圧駆動する場合のホール出力電圧Vhは、感磁層モデル30Mのシート抵抗をRsとしたときの入力電圧Vin=Rs×(L/W)×Iを式(3)に代入して得られる式(4)で表される:

Vh=μ×(W/L)×Vin×B ・・・(4)

式(4)で、μはキャリアの移動度である。ここで、シート抵抗Rs=1/(q×n×μ×t)である。
【0034】
感磁層モデル30Mの感度Khは、抵抗率ρを用いて以下の式(5)で表される:

Kh=1/(q×n×t)=Rs×μ=ρ×μ/t ・・・(5)
【0035】
なお、感磁層30の幅Wに対して厚さLが短い場合の感度Khは、式(5)で示した感度Khに形状効果係数Kを乗じた式(6)で表される:

Kh=1/(q×n×t)×K ・・・(6)

例えば、L>>Wの場合はK=1であり、L<Wの場合はK=0.74×L/Wである。
【0036】
長さtと幅Wは主電極40のサイズに依存し、厚さLは感磁層30の膜厚に相当する。厚さLが短くなるホール素子1において、感度Khに形状効果係数Kが掛からないようにすることが好ましい。以下に、ホール素子1の感度Khの向上について検討する。
【0037】
式(5)から、感度Khを上げるためには、キャリア濃度nと長さtを小さくすればよいことが分かる。このため、感磁層30の材料にSiを使用してキャリア濃度nを下げることが、感度Khを上げるために有効である。
【0038】
一方、GaAsなどの化合物半導体は、Siと比較して移動度μが高いため、長さtを小さくできる。このため、感磁層30の材料に化合物半導体を使用することにより、長さtを小さくして感度Khを高くしてもよい。例えば、感磁層30の抵抗値が決まっている場合に、感度Khを上げるために長さtを小さくしてもよい。
【0039】
ところで、感度Khはキャリア濃度nに対して依存性を有するため、化合物半導体を感磁層30に使用することにより、感度の温度に対する変化が少ないホール素子1が得られる。また、Siよりも抵抗値の低い化合物半導体を感磁層30に使用することにより、化合物半導体を使用した平面型ホール素子と同等の抵抗値および温度特性を有するホール素子1を実現してもよい。
【0040】
感磁層モデル30Mの感度を上げるためには、長さtを小さくし、L≧Wとすることが有効である。例えば、厚さLを大きく、幅Wを小さくすることにより、感磁層モデル30Mの感度を上げることができる。
【0041】
以上に説明したように、第1の実施形態に係るホール素子1によれば、メサ形状の感磁層30を有するホール素子を提供することができる。メサ形状の感磁層30を形成することにより、半導体基板又は半導体層に埋込領域として感磁層を形成することが困難な材料を用いてホール素子を構成することが容易である。また、ホール素子1は、例えばp型の半導体領域とn型の半導体領域が隣接するホール素子と比較して、リーク電流および浮遊容量の発生が抑制される。したがって、ホール素子1によれば、磁場を高い精度で検知することができる。
【0042】
ところで、半導体膜をエッチングしてメサ形状の感磁層30を形成する工程において、感磁層30を形成した領域を除いた残余の領域において第1半導体層20の第1面201に半導体膜が残る可能性がある。第1半導体層20の第1面201に半導体膜が残っていると、第1感磁層301と第2感磁層302の間で半導体膜を介して検知電流Isの一部が流れるおそれがある。半導体膜を検知電流Isが流れると、第1半導体層20の第1面201と平行に流れる検知電流Isの抵抗値が上昇したり、垂直磁場を検知したりするなど、ホール素子1の感度の精度が低下する。
【0043】
このため、図5に示すように、第1半導体層20の第1面201の上部をエッチングするオーバーエッチングにより感磁層30を形成してもよい。このオーバーエッチングにより、メサ形状の感磁層30と接触する領域を除いた第1面201の残余の領域に半導体膜が残らない。
【0044】
図5に示すホール素子1では、オーバーエッチングによって感磁層30を形成することにより、第1半導体層20の感磁層30の底面が接触する領域はエッチングされずに凸形状部が形成される。このため、ホール素子1は、第1半導体層20の第1面201に形成された凸形状部の頂面に第1感磁層301と第2感磁層302が配置された構成を有する。
【0045】
以下に、図6A図6B図16A図16Bを参照して、第1の実施形態に係るホール素子1の製造方法を説明する。図6A図16Aは、Z方向から見た平面図であり、図6B図16Bは、図6A図16AのB-B方向に沿った断面図である。なお、以下に述べるホール素子1の製造方法は一例であり、この変形例を含めて、これ以外の種々の製造方法により実現可能である。以下では、図5を参照して説明したオーバーエッチングにより感磁層30を形成する場合について説明する。
【0046】
まず、図6A図6Bに示すように、例えばエピタキシャル成長法などにより、基板10の主面に第1半導体層20、感磁層膜300を順に形成する。例えば、GaAs基板の基板10の主面に、n型不純物をドーピングしたGaAs(n-GaAs)層を第1半導体層20として形成する。そして、第1半導体層20の上面(第1面201)にn型不純物をドーピングしたGaAs(n-GaAs)膜を感磁層膜300として形成する。n型不純物は、例えばSiである。第1半導体層20の不純物濃度は例えば1E17cm-3~1E19cm-3であり、膜厚は例えば1~5μm程度である。感磁層膜300の不純物濃度は例えば1E16cm-3~1E17cm-3であり、膜厚は例えば15μm程度である。
【0047】
次に、図7A図7Bに示すように、感磁層膜300の一部を選択的にエッチング除去して、メサ形状の感磁層30を形成する。このとき、図7Bに示すように、メサ形状の間の溝(以下、「メサ溝310」と表記する。)をオーバーエッチングで形成することにより、第1面201から第1半導体層20の上部の一部がエッチングされる。感磁層膜300のエッチングには、反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching;RIE)などのドライエッチング法を用いてもよい。
【0048】
感磁層30を形成した後、図8A図8Bに示すように、感磁層30の上面に絶縁膜60を形成する。絶縁膜60は、例えばSiN膜であってよい。その後、図9A図9Bに示すように、主電極40とホール電極50が配置される領域の絶縁膜60を除去する。例えば、フォトリソグラフィ技術とドライエッチング法により、絶縁膜60に開口部600を設ける。
【0049】
その後、図10A図10Bに示すように、絶縁膜60の開口部600を埋め込むようにして、絶縁膜60の上面に第1の金属膜410を形成する。このとき、メサ溝310の壁面にも第1の金属膜410が形成される。例えば、AuGe膜とNi膜を順に積層して第1の金属膜410を形成してよい。
【0050】
第1の金属膜410を形成した後、図11A図11Bに示すように、主電極40とホール電極50となる領域のみ残るように第1の金属膜410を選択的に除去する。その後、熱処理による合金化によりAuGe膜とNi膜の積層膜をAuGe/Ni膜にしてよい。
【0051】
次いで、図12A図12Bに示すように、第1の金属膜410の上面を覆うように、絶縁膜60の上面とメサ溝310の壁面に第2の金属膜420を形成する。第2の金属膜420は、例えばTiAu膜であってよい。
【0052】
次に、図13A図13Bに示すように、第1の金属膜410の上方において第2の金属膜420の上面に第3の金属膜430を形成する。第3の金属膜430は、例えばAuメッキであってよい。その後、図14A図14Bに示すように、主電極40とホール電極50の領域を除いて第2の金属膜420を選択的に除去する。上記の工程により、例えばAuGe/Ni膜、TiAu膜、Auメッキの積層構造の主電極40とホール電極50が形成される。
【0053】
その後、図15A図15Bに示すように、ホール素子1の外縁部であるダイシングストリート部の絶縁膜60を除去する。次いで、図16A図16Bに示すように、基板10の下面を研磨する裏面ラッピングを行う。
【0054】
以上の工程により、メサ形状の第1感磁層301および第2感磁層302のそれぞれの底面が第1半導体層20の第1面201と接触するホール素子1が完成する。第1感磁層301および第2感磁層302が第1半導体層20と直接に接触していることにより、第1半導体層20の第1面201に対して垂直方向に流れる検知電流Isの電気抵抗を低減することができる。
【0055】
p型不純物を注入したp型半導体よりも、n型不純物を注入したn型半導体の方がキャリア移動度を高くできる。このため、ホール素子1では、磁場の感度を上げるために、半導体の不純物としてn型不純物を使用することが好ましい。また、第1面201と平行に流れる検知電流Isは、磁場Bの検知に直接は関与しない。このため、第1面201と平行に流れる検知電流Isの電気抵抗を低減するために、第1半導体層20の不純物濃度を感磁層30の不純物濃度よりも高くしている。
【0056】
既に説明したように、検知電流Isの第2感磁層302Aに流れる成分と第2感磁層302Bに流れる成分に対してそれぞれ発生するローレンツ力fの向きが反対であることにより、垂直磁場を誤って検知することが防止される。したがって、第2感磁層302Aと第2感磁層302Bをそれぞれ流れる検知電流Isの成分を同等にするために、第2感磁層302Aにおける電流経路と第2感磁層302Bにおける電流経路の電気抵抗が同等であることが好ましい。
【0057】
このため、第2感磁層302Aと第2感磁層302Bの高さおよび断面積が同等であるように、感磁層30が形成される。感磁層30の高さは第1半導体層20の第1面201に垂直な方向のサイズであり、断面積は高さ方向に垂直な断面の面積である。更に、第2感磁層302の電気抵抗に影響するその他のメサ形状のパラメータ、例えば第1面201に対する側面の傾き、底面および上面の幅など、についても第2感磁層302Aと第2感磁層302Bで同等にすることが好ましい。
【0058】
感磁層30の形成では、例えばフォトリソグラフィ技術によりパターニングしたシリコン酸化膜又はフォトレジスト膜などをエッチングマスクとして使用してもよい。フォトレジスト膜よりも硬度の高いシリコン酸化膜などをエッチングマスクとして使用することにより、エッチングマスクの形状の安定性を向上することができる。
【0059】
感磁層30のそれぞれの側面は、第1半導体層20の第1面201に対して垂直方向に延伸してもよいし、第1面201と斜めに交差する方向に延伸してもよい。例えば、図17に示すように、感磁層30の側面が第1半導体層20の第1面201に対して垂直に延伸することにより、Z方向から見てホール素子1のサイズを小さくすることができる。
【0060】
ところで、式(5)および式(6)に示すように、感度Khは磁場の向かう方向に沿った感磁層30の長さtおよび幅Wに依存する。したがって、ホール素子1に要求される感度に応じて感磁層30のサイズを設定してもよい。ただし、図18に示すように、主電極40から感磁層30に流れる検知電流Isは、上下方向(Z方向)に流れる間に感磁層30の内部で横方向(XY平面)に広がる。したがって、主電極40のサイズは、感磁層30の上面の面積よりも小さいことが好ましい。例えば、感磁層30の一辺の長さは、主電極40の対応する辺の長さの3倍程度に設定される。このため、主電極40のサイズは、要求される感度に応じた感磁層30のサイズに対して検知電流Isの広がりを考慮して設定することが好ましい。
【0061】
主電極40のサイズは、電極プロセス設計での製造限界の下限の制限を受ける。また、主電極40を外部の電源と例えばワイヤボンディングなどにより電気的に接続するために、主電極40には一定の面積が必要である。このため、図18に示すように、感磁層30の上面に形成した絶縁膜60の上面に必要な面積の主電極40を形成し、絶縁膜60の開口部600において主電極40と感磁層30を接触させている。言い換えると、絶縁膜60の開口部600のサイズ(以下、「目抜きサイズD」)が、要求される感度に応じた感磁層30のサイズに対応するように設計される。
【0062】
上記のように、感磁層30の上面に絶縁膜60を形成し、絶縁膜60に設けた開口部600を介して主電極40が感磁層30と電気的に接続することが好ましい。絶縁膜60の開口部600の目抜きサイズDは、ホール素子1の感度Khに影響する感磁層30のサイズ、感磁層30での検知電流Isの広がり、主電極40のサイズと目抜きサイズDの関係などを考慮して設定されることが好ましい。目抜きサイズDが、感度Khに影響するホール素子1の主電極40の実質的なサイズである。
【0063】
<変形例>
上記では、第1感磁層301を挟んで一対の第2感磁層302が配置された構成を示した。既に説明したように、垂直磁場を誤って検出しないように、検知電流Isの電流経路は磁場Bxの通過する方向に沿って2つの電流経路が対称に構成されていることが好ましい。このため、第1感磁層301に対して対称性を保って検知電流Isを2以上の複数に分岐してもよい。言い換えると、検知電流Isの対称性が保たれるならば、第2感磁層302の個数が2つ以外であってもよい。
【0064】
例えば図19Aに示すように、第1感磁層301の両側に配置される第2感磁層302の対が複数であってもよい。或いは、図19Bに示すように、第1感磁層301を挟んで一対の第2感磁層302を配置した構成の電磁層ユニット30Aを複数含んでもよい。
【0065】
図19Aおよび図19Bに示したホール素子1によれば、検知電流Isを多く流して感度を向上させることができる。また、検知電流Isの電流経路が増えることにより、電流経路の電気抵抗を低減することができる。このため、検知電流Isに関して設計自由度を上げることができる。
【0066】
図19Aでは、第1感磁層301を挟む第2感磁層302の対が2つである構成を示したが、第2感磁層302の対が3つ以上であってもよい。図19Bでは、2つの電磁層ユニット30Aを含む構成を示したが、電磁層ユニット30Aの個数が3つ以上であってもよい。
【0067】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係るホール素子1は、図20に示すように、第1感磁層301および第2感磁層302と第1半導体層20の第1面201との間に配置された第2半導体層70を更に備えることが、第1の実施形態に係るホール素子1と異なる点である。第2半導体層70は、感磁層30と組成の異なる材料の半導体層である。その他の構成については、第2の実施形態は図1に示す第1の実施形態と同様である。
【0068】
以下に、図面を参照して、第2の実施形態に係るホール素子1の製造方法を説明する。
【0069】
まず、基板10の上面に第1半導体層20を形成する。次いで、図21に示すように、例えばエピタキシャル成長法などにより、第1半導体層20の第1面201に第2半導体層70を形成し、更に、第2半導体層70の上面に感磁層膜300を形成する。第2半導体層70は、感磁層膜300よりもエッチングレートが低い材料である。言い換えると、第2半導体層70は、第1感磁層301および第2感磁層302よりもエッチングレートが低い。
【0070】
例えば、感磁層膜300がn型不純物をドーピングしたGaAs膜である場合に、第2半導体層70はn型不純物をドーピングしたInGaPなどのリン(P)系の化合物半導体であってもよい。第2半導体層70の膜厚は例えば10nm以下程度である。
【0071】
その後、図7A図7B図16A図16Bを参照して説明した上記の工程と同様にして、メサ形状の感磁層30、主電極40およびホール電極50を形成する。
【0072】
ただし、図7A図7Bを参照して説明した工程と異なり、感磁層膜300をエッチングしてメサ溝310を形成する工程において、第2半導体層70がエッチングストップ層として機能する。このため、図20に示すように、第1半導体層20の第1面201に第2半導体層70が配置された構成のホール素子1が完成する。第2半導体層70をエッチングストップ層とすることにより、感磁層膜300のオーバーエッチングにより第1半導体層20の上部がエッチングされることを考慮せずに、感磁層膜300を十分にエッチングすることができる。これにより、第1感磁層301と第2感磁層302の間で第1半導体層20の第1面201と平行に感磁層膜300が残ることを防止できる。
【0073】
図20に示したホール素子1の製造工程では、ドライエッチング法とウェットエッチング法の2段階でメサ溝310を形成してもよい。例えば、ドライエッチング法を用いて一定の深さまで感磁層膜300をエッチングした後、ウェットエッチング法を用いて第2半導体層70が露出するまで感磁層膜300をエッチングしてもよい。これにより、ドライエッチング法を用いてエッチング時間を短くすると共に、第2半導体層70をウェットエッチング法のエッチングストップ層として使用できる。
【0074】
第2半導体層70の膜厚は例えば10nm程度と薄くてもよい。このため、第1半導体層20の第1面201と平行に第2半導体層70を流れる電流の電気抵抗は高く、第2半導体層70を第1面201と平行に検知電流Isが流れることを抑制できる。その結果、第1感磁層301と第2感磁層302の間を流れる検知電流Isの電流経路を第1半導体層20に限定することができる。なお、感磁層30が形成された後に、第1半導体層20の第1面201を露出させるように一部の第2半導体層70を除去してもよい。
【0075】
上記では、感磁層30を形成する工程におけるエッチングストップ層として第2半導体層70を使用する場合を説明した。第2半導体層70は、ドライエッチング法によるエッチングにおける終点検出(End Point Detection;EPD)に利用してもよい。
【0076】
例えば、ドライエッチング法による感磁層膜300のエッチング工程において、感磁層膜300と第2半導体層70の組成元素の違いによる光の反射率の変化を検出することにより、エッチングの終点検出が可能である。感磁層膜300がGaAs膜である場合に、第2半導体層70をInGaP膜とすることにより、光の反射率の変化によりエッチング工程の終点検出を行うことができる。
【0077】
以上に説明したように、第2の実施形態に係るホール素子1によれば、メサ形状の感磁層30と接触する領域を除いた第1半導体層20の残余の領域に感磁層膜300が残らない。このため、第1半導体層20の表面に形成された感磁層膜300を検知電流Isが流れることが防止される。他は、第2の実施形態に係るホール素子1は、第1の実施形態と実質的に同様であり、重複した記載を省略する。
【0078】
(その他の実施形態)
上記では、第1感磁層301から第1感磁層301の両側にそれぞれ配置された2つの第2感磁層302に検知電流Isを流す場合を説明した。しかし、図22に示すように、第2感磁層302Aおよび第2感磁層302Bから第1感磁層301に検知電流Isを流してもよい。この場合、図22に示すように、ローレンツ力fの向きは図2に示す向きとは逆向きである。
【0079】
なお、上述の実施形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計などに応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【0080】
[付記]
本開示から把握できる技術的思想を以下に記載する。なお、限定する意図ではなく理解の補助のために、付記に記載される構成要素には、実施形態中の対応する構成要素の参照符号が付されている。参照符号は、理解の補助のために例として示すものであり、各付記に記載された構成要素は、参照符号で示される構成要素に限定されるべきではない。
【0081】
(付記1:第1の実施形態、図1
ホール素子1は、相互に対向する第1面201と第2面202で両面が定義された導電性の第1半導体層20、メサ形状の導電性半導体である第1感磁層301および第2感磁層302を備える。第1感磁層301は、第1半導体層20の第1面201の上方に配置され、底面が第1面201に対向する。第2感磁層302は、第1感磁層301から離隔した位置で第1面201の上方に配置され、底面が第1面201に対向する。付記1に記載のホール素子1によれば、メサ形状の感磁層30を有するホール素子を提供することができる。
【0082】
(付記2:第1の実施形態、図1
付記1に記載のホール素子1において、第1感磁層301および第2感磁層302のそれぞれで、底面から底面に対向する上面に向かう方向が第1面201と交差する。付記2に記載のホール素子1によれば、検知電流Isが基板10の主面と垂直な方向に感磁層30を流れる。これにより、ホール素子1は、基板10の主面に対して平行な向きの磁場を検知することができる。
【0083】
(付記3:第1の実施形態、図1
付記1又は付記2に記載のホール素子1において、第1感磁層301の上面に配置された第1主電極401と、第2感磁層302の上面に配置された第2主電極402を更に備える。付記3に記載のホール素子1によれば、第1主電極401を検知電流Isの電流経路の第1の端部とし、第2主電極402を電流経路の第2の端部として、検知電流Isが基板10の主面と垂直な方向に流れる。
【0084】
(付記4:第1の実施形態、図2
付記1乃至3のいずれか1つに記載のホール素子1において、第1主電極401を挟んで第1感磁層301の上面に配置された一対のホール電極50を更に備える。付記4に記載のホール素子1は、第1面201と平行な向きの磁場と、第1感磁層301および第2感磁層302を流れる検知電流Isとにより発生するローレンツ力fに起因するホール出力電圧を、ホール電極50により検知可能に構成されている。
【0085】
(付記5:第1の実施形態、図1
付記1乃至4のいずれか1つに記載のホール素子1において、第1感磁層301を挟んで2つの第2感磁層302が配置されている。付記5に記載のホール素子1によれば、検知電流Isの電流経路が2つあることにより、基板10の主面に対して垂直方向に通過する磁場を誤って検知することが防止される。
【0086】
(付記6:第1の実施形態、図1
付記1乃至5のいずれか1つに記載のホール素子1において、第1感磁層301および第2感磁層302のそれぞれの底面が、第1半導体層20の第1面201と接触する。第1感磁層301および第2感磁層302が第1半導体層20と直接に接触していることにより、第1半導体層20の第1面201に対して垂直方向に流れる検知電流Isの電気抵抗を低減することができる。
【0087】
(付記7:第1の実施形態、図5
付記1乃至6いずれか1つに記載のホール素子1において、第1半導体層20の第1面201に形成された凸形状部の頂面に第1感磁層301および第2感磁層302が配置されている。第1半導体層20の第1面201に凸形状部が形成されるようにオーバーエッチングにより感磁層30を形成することにより、感磁層30と接触する領域を除いた第1面201の残余の領域に感磁層膜300が残らない。
【0088】
(付記8:第2の実施形態、図20
付記1乃至5のいずれか1つに記載のホール素子1において、第1感磁層301および第2感磁層302と第1半導体層20の第1面201との間に配置された、第1感磁層301および第2感磁層302と組成の異なる第2半導体層70を更に備える。付記8に記載のホール素子1によれば、第1感磁層301と第2感磁層302の間の領域に感磁層膜300が残らない。このため、第1半導体層20の表面に形成された感磁層膜300を検知電流Isが流れることが防止される。
【0089】
(付記9:第2の実施形態、図20
付記9に記載のホール素子1において、第2半導体層70が、第1感磁層301および第2感磁層302よりもエッチングレートが低い。付記9のホール素子1によれば、第2半導体層70をエッチングストップ層とすることにより、第1半導体層20の第1面201に感磁層膜300が残ることを防止できる。
【0090】
(付記10:第1の実施形態、図17
付記1乃至9のいずれか1つに記載のホール素子1において、第1感磁層301および第2感磁層302のそれぞれの側面が、第1半導体層20の第1面201に対して垂直方向に延伸する。付記10に記載のホール素子1によれば、ホール素子1のサイズを小さくすることができる。
【0091】
(付記11:第1の実施形態)
付記1乃至10のいずれか1つに記載のホール素子1において、感磁層30の材料が化合物半導体を含む。付記11に記載のホール素子1によれば、感磁層30の材料が化合物半導体であることにより、感磁層30の材料がシリコンの場合に比べて感度が高く、且つ、感度の温度に対する変化が少ない温度特性の良いホール素子1が得られる。
【0092】
(付記12:第1の実施形態)
付記11に記載のホール素子1において、感磁層30の材料がガリウム砒素を含む。感磁層30の材料が化合物半導体のガリウム砒素であることにより、感度が高く、且つ、温度特性の良いホール素子1が得られる。
【0093】
(付記13:第1の実施形態)
付記1乃至12のいずれか1つに記載のホール素子1において、第1半導体層20の第2面202と接続する絶縁性の基板を更に備える。
【符号の説明】
【0094】
1 ホール素子
10 基板
20 第1半導体層
60 絶縁膜
70 第2半導体層
201 第1面
202 第2面
301 第1感磁層
302A、302B 第2感磁層
401 第1主電極
402A、402B 第2主電極
501 第1ホール電極
502 第2ホール電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A
図16B
図17
図18
図19A
図19B
図20
図21
図22