(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161689
(43)【公開日】2024-11-20
(54)【発明の名称】コーヒー含有飲料
(51)【国際特許分類】
A23F 5/24 20060101AFI20241113BHJP
【FI】
A23F5/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076582
(22)【出願日】2023-05-08
(71)【出願人】
【識別番号】391026058
【氏名又は名称】ザ コカ・コーラ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Coca‐Cola Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小原 美紀
(72)【発明者】
【氏名】松本 啓
(72)【発明者】
【氏名】横山 明幸
(72)【発明者】
【氏名】米山 正芳
【テーマコード(参考)】
4B027
【Fターム(参考)】
4B027FB24
4B027FC10
4B027FE06
4B027FK04
4B027FK06
4B027FK08
4B027FK10
4B027FQ06
4B027FQ19
(57)【要約】
【課題】 新規な液色を有するコーヒー含有飲料を提供する。
【解決手段】 ハンターLab表色系において、L:46~65、a:-10~10、b:0~25を満たす、コーヒー含有飲料。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンターLab表色系において、L:46~65、a:-10~10、b:0~25を満たす、コーヒー含有飲料。
【請求項2】
(A)コーヒー分と、(B)脂質と、を含むコーヒー飲料であって、
前記(A)コーヒー分が、焙煎度が24以上のコーヒー豆の抽出液を含み、
前記(A)コーヒー分の含有量が、コーヒー生豆換算で、前記飲料100mLあたり0.4g以上であり、
前記(B)脂質の含有量が、前記飲料100mLあたり1.8~3.6gである、前記コーヒー含有飲料。
【請求項3】
前記(B)脂質が、植物油脂組成物及び動物油脂からなる群から選択される1以上を含む、請求項2記載の飲料。
【請求項4】
さらに、(C)色素を含み、
前記(C)色素が、ベニバナ、クチナシ、コチニール、リコピン、カロテン類、マリーゴールド、及びカラメルから選択される少なくとも1種以上を含む、請求項2又は3記載の飲料。
【請求項5】
前記(C)成分が、
ベニバナを含む場合は、前記飲料100mLあたりベニバナを20~200mg含み、
クチナシを含む場合は、前記飲料100mLあたりクチナシを10~50mg含み、
ベニバナとクチナシを含む場合は、前記飲料100mLあたりベニバナとクチナシとを合計20~200mg含み、
クチナシとカラメルとを含む場合は、前記飲料100mLあたりクチナシとカラメルとを合計20~200mg含む、請求項4記載の飲料。
【請求項6】
焙煎度が24以上のコーヒー豆から抽出液を抽出する工程と、
前記抽出液を含む(A)コーヒー分に、(B)脂質を混合し、前記(A)コーヒー分の含有量が、コーヒー生豆換算で、前記飲料100mLあたり0.4g以上であり、前記(B)脂質の含有量が、前記飲料100mLあたり1.8~3.6gであるコーヒー含有飲料を調製する工程と、を含む、コーヒー含有飲料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒー含有飲料に関する。具体的には、従来のコーヒーとは異なる新規な液色を有するコーヒー含有飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒーは、コーヒー豆と呼ばれるコーヒーノキの種子を焙煎して砕いた粉末から、湯又は水で成分を抽出した飲料であり、嗜好飲料として世界各地で飲用されている。コーヒーは、コーヒー豆を焙煎する際に生じる褐色色素により、通常、褐色の液色を呈する。
【0003】
容器詰め飲料、いわゆるRTD(Ready to drink)飲料は、携帯や保存に便利であることから消費者に好まれ、市場には数多くの商品が流通している。近年では、プラスチックボトル等の透明又は半透明の容器に充填され、飲料が消費者に視認できる状態で販売されているものが上市されている。このような製品では、飲料の外観が消費者の購買意欲に与える影響は大きいと考えられ、コーヒーの外観に着目した検討が行われている。例えば、特許文献1には、コーヒーの保存時や流通過程において生じやすい濁りや沈殿を抑制する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、飲料の外観を構成する要素として、液色に着目し、鋭意検討した結果、従来のコーヒーとは異なる新規な液色を有するコーヒー含有飲料を開発し、本発明を完成するに至った。
本発明の目的は、従来のコーヒーとは異なる新規な液色を有するコーヒー含有飲料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下のコーヒー含有飲料等を提供できる。
1.ハンターLab表色系において、L:46~65、a:-10~10、b:0~25を満たす、コーヒー含有飲料。
2.(A)コーヒー分と、(B)脂質と、を含むコーヒー飲料であって、
前記(A)コーヒー分が、焙煎度が24以上のコーヒー豆の抽出液を含み、
前記(A)コーヒー分の含有量が、コーヒー生豆換算で、前記飲料100mLあたり0.4g以上であり、
前記(B)脂質の含有量が、前記飲料100mLあたり1.8~3.6gである、前記コーヒー含有飲料。
3.前記(B)脂質が、植物油脂組成物及び動物油脂からなる群から選択される1以上を含む、2記載の飲料。
4.さらに、(C)色素を含み、
前記(C)色素が、ベニバナ、クチナシ、コチニール、リコピン、カロテン類、マリーゴールド、及びカラメルから選択される少なくとも1種以上を含む、2又は3記載の飲料。
5.前記(C)成分が、
ベニバナを含む場合は、前記飲料100mLあたりベニバナを20~200mg含み、
クチナシを含む場合は、前記飲料100mLあたりクチナシを10~50mg含み、
ベニバナとクチナシを含む場合は、前記飲料100mLあたりベニバナとクチナシとを合計20~200mg含み、
クチナシとカラメルとを含む場合は、前記飲料100mLあたりクチナシとカラメルとを合計20~200mg含む、4記載の飲料。
6.焙煎度が24以上のコーヒー豆から抽出液を抽出する工程と、
前記抽出液を含む(A)コーヒー分に、(B)脂質を混合し、前記(A)コーヒー分の含有量が、コーヒー生豆換算で、前記飲料100mLあたり0.4g以上であり、前記(B)脂質の含有量が、前記飲料100mLあたり1.8~3.6gであるコーヒー含有飲料を調製する工程と、を含む、コーヒー含有飲料の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、従来のコーヒーとは異なる新規な液色を有するコーヒー含有飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本明細書中において、一の特徴についての好ましい実施形態を、他の一又はそれより多い特徴の好ましい実施形態と任意に組み合わせることができる。
また、本明細書中において、パラメータの数値範囲を示す「X~Y」の記載は、「X以上、Y以下」であることを意味し、各パラメータについて、下限値と上限値を任意に組み合わせて数値範囲とすることができる。
【0009】
[コーヒー含有飲料]
本発明の一態様にかかるコーヒー含有飲料(以下、「本発明のコーヒー含有飲料」ともいい、後述する「第1のコーヒー含有飲料」と、「第2のコーヒー含有飲料」を含む。)は、従来のコーヒーとは異なる新規な液色を有する。
本発明において、「コーヒー含有飲料」とは、「コーヒー豆を原料とした飲料及びこれに糖類、乳製品、乳化された食用油脂その他の可食物を加えた飲料」をいうものとする。
コーヒー含有飲料中に含まれるコーヒー分の量やその他の成分及び量は特に限定されない。例えば、本発明における「コーヒー含有飲料」は、日本国の「コーヒー飲料等の表示に関する公正競争規約」(昭和52年12月24日公正取引委員会告示第50号、令和1年8月19日改正施行)に基づく「コーヒー(内容量100グラム中にコーヒー生豆換算で5グラム以上のコーヒー豆から抽出又は溶出したコーヒー分を含む)」、「コーヒー飲料(内容量100グラム中にコーヒー生豆換算で2.5グラム以上5グラム未満のコーヒー豆から抽出又は溶出したコーヒー分を含む)」、「コーヒー入り清涼飲料(内容量100グラム中にコーヒー生豆換算で1グラム以上2.5グラム未満のコーヒー豆から抽出又は溶出したコーヒー分を含む)」、「コーヒー入り炭酸飲料(内容量100グラム中にコーヒー生豆換算で1グラム以上のコーヒー豆から抽出又は溶出したコーヒー分を含むものに二酸化炭素を圧入したもの)」、及び「カフェインレスコーヒー(カフェインを90パーセント以上除去したコーヒー)」等をすべて含む。
【0010】
[第1のコーヒー含有飲料]
本発明の第1の実施形態にかかるコーヒー含有飲料(以下、「第1のコーヒー含有飲料」ともいう。)は、ハンターLab表色系において、L:46~65、a:-10~10、b:0~25を満たす。
【0011】
ハンターLab表色系は、R.S.Hunterが1948年に提案した表色系であり、Hunter 1948 L,a,b色空間の座標軸L、a、bで色を表現する。Lは明度であり、aとbは、補色軸である。補色軸のうち、a軸は、赤(正)と緑(負)に対応し、b軸は黄色(正)と青(負)に対応している。
L値、a値、及びb値は、それぞれ実施例に記載の方法で測定できる。
【0012】
本発明の第1のコーヒー含有飲料において、L値は、46~65であり、好ましくは47~65、より好ましくは50~65、より好ましくは50~64、より好ましくは52~64、より好ましくは52~63、より好ましくは54~63である。
L値の下限値は、例えば、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、又は56であってもよい。
L値の上限値は、例えば、65、64、63、62、61、又は60であってもよい。
【0013】
本発明の第1のコーヒー含有飲料において、a値は、-10~10であり、好ましくは-9~9、より好ましくは-8~8、より好ましくは-7~7である。
a値の下限値は、例えば、-10、-9、-8、-7、-6、-5、-4、-3、-2、-1、0、1、2、3、4、又は5であってもよい。
a値の上限値は、例えば、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0、-1、-2、-3、-4、又は-5であってもよい。
【0014】
本発明の第1のコーヒー含有飲料において、b値は、0~25であり、好ましくは5~24、より好ましくは10~24、より好ましくは10~23である。
b値の下限値は、例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15であってもよい。
b値の上限値は、例えば、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、又は13であってもよい。
【0015】
一実施形態において、第1のコーヒー含有飲料は、ハンターLab表色系において、L:46~65、a:-10~0、b:0~25を満たす。
一実施形態において、a値は、例えば、-9~-1、-9~-2、-8~-2、-8~-3、-7~-3、又は-7~-4であってもよい。
これにより、緑色の液色を有するコーヒー含有飲料を提供することができる。
【0016】
一実施形態において、第1のコーヒー含有飲料は、ハンターLab表色系において、L:46~65、a:0~10、b:0~25を満たす。
一実施形態において、a値は、例えば、1~9、2~9、2~8、3~8、3~7、又は4~7であってもよい。
これにより、赤色の液色を有するコーヒー含有飲料を提供することができる。
【0017】
一実施形態において、第1のコーヒー含有飲料は、ハンターLab表色系において、L:46~65、a:-5~5、b:5~15を満たす。
これにより、灰色の液色を有するコーヒー含有飲料を提供することができる。
【0018】
一実施形態において、第1のコーヒー含有飲料は、ハンターLab表色系において、L:46~65、a:-5~5、b:10~25を満たす。
一実施形態において、b値は、例えば、11~25、13~25、13~24、15~24、18~24、18~23、又は20~23であってもよい。
これにより、黄色の液色を有するコーヒー含有飲料を提供することができる。
【0019】
一実施形態において、第1のコーヒー含有飲料は、ハンターLab表色系において、L:55~65、a:-1~5、b:15~20を満たす。
これにより、白色の液色を有するコーヒー含有飲料を提供することができる。
【0020】
[第2のコーヒー含有飲料]
本発明の第2の実施形態にかかるコーヒー含有飲料(以下、「第2のコーヒー含有飲料」ともいう。)は、(A)コーヒー分と、(B)脂質と、を含むコーヒー飲料であって、
前記(A)コーヒー分が、焙煎度が24以上のコーヒー豆の抽出液を含み、
前記(A)コーヒー分の含有量が、コーヒー生豆換算で、前記飲料100mLあたり0.4g以上であり、
前記(B)脂質の含有量が、前記飲料100mLあたり1.8~3.6gである。
【0021】
本発明の第2のコーヒー含有飲料は、上記の構成とすることにより、従来のコーヒーとは異なる新規な液色を有する。
【0022】
[(A)コーヒー分]
本明細書において、コーヒー分とは、コーヒー豆から抽出又は溶出したものをいう。
本発明の第2のコーヒー含有飲料は、(A)コーヒー分(以下、「(A)成分」又は「(A)」ともいう。)が、焙煎度が24以上のコーヒー豆の抽出液を含む。
コーヒー豆の焙煎度は、実施例に記載の方法で測定できる。
【0023】
コーヒー豆の焙煎度の下限は、特に限定されないが、例えば、25、26、27、又は28であってもよい。
コーヒー豆の焙煎度の上限は、特に限定されないが、例えば、35、32、又は30であってもよい。
【0024】
本発明の第2のコーヒー含有飲料は、(A)コーヒー分の含有量が、コーヒー生豆換算で、飲料100mLあたり0.4g以上である。
コーヒー豆の抽出液中のコーヒー分の含有量は、実施例に記載の方法で測定できる。
【0025】
(A)コーヒー分の含有量の下限は、特に限定されないが、例えば、コーヒー生豆換算で、飲料100mLあたり0.5g、0.6g、0.7g、0.8g、0.9g、1.0g、1.2g、1.5g、1.8g、2.0g、又は2.5gであってもよい。
(A)コーヒー分の含有量の上限は、特に限定されないが、例えば、コーヒー生豆換算で、飲料100mLあたり10.0g、8.0g、5.0g、又は3.0gであってもよい。
【0026】
[(B)脂質]
本発明の第2のコーヒー含有飲料は、(B)脂質(以下、「(B)成分」又は「(B)」ともいう。)の含有量が、飲料100mLあたり1.8~3.6gである。(B)脂質の含有量は、好ましくは1.9~3.5g/100ml、より好ましくは2.0~3.5g/100ml、より好ましくは2.2~3.5g/100ml、より好ましくは2.5~3.3g/100mlである。
脂質の含有量の下限は、例えば、1.8g/100ml、1.9g/100ml、2.0g/100ml、2.1g/100ml、2.2g/100ml、2.3g/100ml、2.4g/100ml、2.5g/100mlである。
脂質の含有量の上限は、例えば、3.6g/100ml以下、3.5g/100ml、3.4g/100ml、3.3g/100ml以下である。
これにより、(A)コーヒー分に由来する褐色が抑えられ、本発明の第2のコーヒー含有飲料は、コーヒーが通常呈する褐色の液色ではなく、白色の液色を呈する。さらに、後述する(C)色素を加えると、従来のコーヒーとは異なる新規な液色を有することができる。
【0027】
本発明において、脂質を構成する原料は、特に限定されず、植物油脂、動物油脂、これらのうち二種以上の組合せ、等を使用することができる。植物油脂としては、例えば、ヤシ油、パーム油、パーム核油、大豆油、サフラワー油、菜種油、オリーブ油、コーン油、等が挙げられる。動物油脂としては、例えば、バター、バターミルクパウダー、バターオイル、クリーム、牛乳、濃縮乳、れん乳、全粉乳、バター調製品、クリームチーズ、等が挙げられる。
【0028】
一実施形態において、(B)脂質は、植物油脂組成物及び動物油脂からなる群から選択される1以上を含む。
一実施形態において、(B)脂質は、植物油脂組成物及び動物油脂を含む。
動物油脂としては、上述したものを使用できる。
【0029】
植物油脂組成物は、植物油脂を含む。以下、植物油脂組成物において使用する成分について説明する。
【0030】
(植物油脂)
植物油脂は、植物から得られる油脂であれば特に限定されず、上述したとおりヤシ油、パーム油、パーム核油、大豆油、サフラワー油、菜種油、オリーブ油、コーン油等が挙げられ、好ましくは、ヤシ油である。
【0031】
植物油脂組成物における植物油脂の含有量は、植物油脂組成物がエマルションを形成することを条件として、適宜決定することができる。植物油脂組成物における植物油脂の含有量は、植物油脂組成物の重量を基準として、例えば、15~60%、20~50%、又は、30~45%である。
【0032】
植物油脂組成物における植物油脂の含有量は、公知の手法により測定できる。使用する植物油脂の種類により脂肪酸組成比率が異なるため、例えば、脂肪酸分析を行うことにより植物油脂中に含まれる一種又は複数種の特徴的な脂肪酸成分の含有割合を測定し、かかる含有割合から脂質量を逆算することにより、植物油脂量として算出できる。
【0033】
植物油脂組成物は、安定剤を含んでもよい。安定剤としては、カゼインナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル(有機酸モノグリセライド、ポリグリセリン脂肪酸エステル)が挙げられるが、これらには限定されない。
【0034】
ショ糖脂肪酸エステルとしては、例えば、ショ糖カプリン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖ベヘン酸エステル、ショ糖エルカ酸エステル等が挙げられる。
【0035】
グリセリン脂肪酸エステルとしては、グリセリンに結合した脂肪酸の数が異なる、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドが挙げられる。モノグリセリドとしては、例えば、グリセリンカプリル酸エステル、グリセリンカプリン酸エステル、グリセリンラウリン酸エステル、グリセリンステアリン酸エステル、グリセリンオレイン酸エステル、グリセリンベヘン酸エステル等が挙げられる。ジグリセリド又はトリグリセリドとしては、これらのモノグリセリドの同一若しくは異なる脂肪酸が2つ又は3つ結合したものが挙げられる。
また、グリセリン有機酸脂肪酸エステル(又は有機酸モノグリセリド)、ポリグリセリン脂肪酸エステルであってもよい。
グリセリン有機酸脂肪酸エステルは、グリセリンに脂肪酸が1つ結合したモノグリセリドの水酸基にさらに有機酸(例えば、酢酸、乳酸、クエン酸、コハク酸、ジアセチル酒石酸)が結合したものである。
ポリグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリン重合度が、例えば、2~9であり、脂肪酸残基は一種又は複数種であってもよい。
【0036】
その他に、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、等が挙げられる。また、カラギナンやデキストリン、セルロース製剤、等の使用も可能である。
【0037】
一実施形態において、植物油脂組成物は、デカグリセリン脂肪酸エステルを含まない。
【0038】
一実施形態において、植物油脂組成物は、カゼインナトリウムを含む。
【0039】
(植物油脂組成物の製造方法)
植物油脂組成物は、植物油脂に対して、使用する場合には安定剤を混合した後、水を混合し、乳化させることにより製造することができる。このとき、植物油脂組成物を水中油型エマルションとすることが好ましい。
【0040】
植物油脂は、あらかじめ加温して融解しておくことが好ましい。植物油脂を融解する際の温度は、それぞれの油脂の融点を超える温度が好ましい。
また、水は加温したものが好ましい。具体的には、使用する安定剤が溶解しやすい温度に水を加温することが好ましい。
乳化のためには、既知の手段・方法を用いることができ、例えば、高速ホモゲナイザー、高圧ホモゲナイザー等を使用することができる。乳化強度は、せん断力が強いほど、乳化粒子径が細かくなるため、安定性の向上が期待できる。
【0041】
[(C)色素]
一実施形態において、本発明の第2のコーヒー含有飲料は、(C)色素(以下、「(C)成分」又は「(C)」ともいう。)を含む。(C)色素は、ベニバナ、クチナシ、コチニール、リコピン、カロテン類、マリーゴールド、及びカラメルから選択される少なくとも1種以上を含む。
(C)成分は、1種の色素のみを含んでもよく、2種以上の色素を含んでもよい。
【0042】
(C)色素の具体例としては、油溶性の色素、及び水溶性の色素が挙げられる。
油溶性の色素としては、リコピン、カロテン類、マリーゴールド等が挙げられる。
水溶性の色素としては、ベニバナ、クチナシ、コチニール、カラメル等が挙げられる。
【0043】
一実施形態において、(C)成分は、水溶性の色素を含む。
【0044】
一実施形態において、(C)成分は、
ベニバナを含む場合は、前記飲料100mLあたりベニバナを20~200mg含み、
クチナシを含む場合は、前記飲料100mLあたりクチナシを10~50mg含み、
ベニバナとクチナシを含む場合は、前記飲料100mLあたりベニバナとクチナシとを合計20~200mg含み、
クチナシとカラメルとを含む場合は、前記飲料100mLあたりクチナシとカラメルとを合計20~200mg含む。
【0045】
ベニバナとしては、ベニバナ黄色素及びベニバナ赤色素が挙げられる。
クチナシとしては、クチナシ赤色素、クチナシ黄色素、及びクチナシ青色素が挙げられる。
各色の色素は、所望の液色に合わせて適宜組み合わせることができる。
【0046】
一実施形態において、第2のコーヒー含有飲料は、ベニバナ黄色素と、クチナシ青色素と、を含む。
これにより、緑色の液色を有するコーヒー含有飲料を提供することができる。
一実施形態において、ベニバナ黄色素の含有量は、飲料100mLあたり10~100mgであり、20~90mg、40~80mg、又は50~80mgであってもよい。
一実施形態において、クチナシ青色素の含有量は、飲料100mLあたり10~50mgであり、15~40mg、15~35mg、又は20~35mgであってもよい。
一実施形態において、ベニバナ黄色素の含有量と、クチナシ青色素の含有量の比([ベニバナ黄色素の含有量]/[クチナシ青色素の含有量])は、0.1~10.0であり、0.5~8.0、1.0~5.0であってもよい。
【0047】
一実施形態において、第2のコーヒー含有飲料は、クチナシ赤色素を含む。
これにより、赤色の液色を有するコーヒー含有飲料を提供することができる。
一実施形態において、クチナシ赤色素の含有量は、飲料100mLあたり10~50mgであり、15~40mg、15~35mg、又は20~35mgであってもよい。
【0048】
一実施形態において、第2のコーヒー含有飲料は、クチナシ青色素と、カラメルと、を含む。クチナシ青色素と、カラメルとは、別々に調製して含有させてもよく、市販の合剤製剤を含有させてもよい。
これにより、灰色の液色を有するコーヒー含有飲料を提供することができる。
一実施形態において、クチナシ青色素の含有量は、飲料100mLあたり10~50mgであり、10~40mg、10~35mg、又は12~35mgであってもよい。
一実施形態において、カラメルの含有量は、飲料100mLあたり10~100mgであり、20~80mg、又は20~70mgであってもよい。
一実施形態において、クチナシ青色素の含有量と、カラメルの含有量の合計は、飲料100mLあたり10~150mgであり、30~120mg、又は40~100mgであってもよい。
【0049】
一実施形態において、第2のコーヒー含有飲料は、ベニバナ黄色素を含む。
これにより、黄色の液色を有するコーヒー含有飲料を提供することができる。
一実施形態において、ベニバナ黄色素の含有量は、飲料100mLあたり10~250mgであり、20~200mg、40~180mg、又は80~150mgであってもよい。
【0050】
一実施形態において、第2のコーヒー含有飲料は、(C)色素を実質的に含まない。
これにより、白色の液色を有するコーヒー含有飲料を提供することができる。
「実質的に含まない」とは、第2のコーヒー含有飲料中に(C)色素が全く含まれないか、又は、(C)色素がコーヒー含有飲料の色に影響を及ぼさない範囲で微量含まれることを言う。例えば、不可避不純物として混入している場合は本状態である。
【0051】
第1のコーヒー含有飲料について説明した、L値、a値、b値等は、第2のコーヒー含有飲料にも適用できる。
第2のコーヒー含有飲料について説明した、(A)成分、(B)成分、(C)成分等は、第1のコーヒー含有飲料にも適用できる。
例えば、一実施形態において、本発明のコーヒー含有飲料は、
ハンターLab表色系において、L:46~65、a:-10~10、b:0~25を満たし、かつ
(A)コーヒー分と、(B)脂質と、を含むコーヒー飲料であって、
前記(A)コーヒー分が、焙煎度が24以上のコーヒー豆の抽出液を含み、
前記(A)コーヒー分の含有量が、コーヒー生豆換算で、前記飲料100mLあたり0.4g以上であり、
前記(B)脂質の含有量が、前記飲料100mLあたり1.8~3.6gである。
その他の特徴は、前述のとおりである。
【0052】
[その他の成分]
本発明のコーヒー含有飲料は、本発明の効果を抑制しない範囲で、上記成分以外に、飲料の製造に一般的に使用する成分を含んでもよい。例えば、食物繊維、乳化剤、pH調整剤、甘味料等、を含むことができる。
【0053】
食物繊維としては、飲料において通常使用されるものを使用することができ、例えば、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、グア豆分解物、ペクチン、イヌリン、グルコマンナン、アルギン酸、カラギナン、セルロース、等が挙げられる。これらは、一種を単独で使用してもよく、又は、二種以上を組合わせて使用してもよい。
【0054】
乳化剤としては、飲料において通常使用されるものを使用することができ、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、大豆レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、等が挙げられる。これらは、一種を単独で使用してもよく、又は、二種以上を組合わせて使用してもよい。
【0055】
pH調整剤としては、飲料において通常使用されるものを使用することができ、例えば、重曹、水酸化ナトリウム、リン酸ジカリウム、等が挙げられる。これらは、一種を単独で使用してもよく、又は、二種以上を組合わせて使用してもよい。
【0056】
甘味料としては、飲料において通常使用されるものを使用することができ、例えば、スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、ネオテーム、ステビア、エリスリトール、羅漢果抽出物、等が挙げられる。市販の砂糖やシュガーエステルを使用してもよい。これらは、一種を単独で使用してもよく、又は、二種以上を組合わせて使用してもよい。
【0057】
本発明のコーヒー含有飲料は、以下に説明する本発明のコーヒー含有飲料の製造方法により、製造することができる。
【0058】
[コーヒー含有飲料の製造方法]
本発明の一態様にかかるコーヒー含有飲料の製造方法(以下、「本発明のコーヒー含有飲料の製造方法」ともいう。)は、
焙煎度が24以上のコーヒー豆から抽出液を抽出する工程(抽出工程)と、
前記抽出液を含む(A)コーヒー分に、(B)脂質を混合し、前記(A)コーヒー分の含有量が、コーヒー生豆換算で、前記飲料100mLあたり0.4g以上であり、前記(B)脂質の含有量が、前記飲料100mLあたり1.8~3.6gであるコーヒー含有飲料を調製する工程(調製工程)と、を含む。
【0059】
コーヒー豆から抽出液を抽出する方法は、特に限定されず、コーヒーの分野において通常に使用される方法を採用することができる。例えば、コーヒー豆を焙煎した後、所定の温度の水を加えて抽出を行うことができる。焙煎した豆を粉砕し、粉砕した豆に所定の温度の水を加えて抽出を行ってもよい。
【0060】
本発明のコーヒー含有飲料の製造方法は、調製工程の前に、調製工程の間に、又は調製工程の後に、(C)色素を、(A)コーヒー分もしくは(B)脂質又はそれらの混合物に、配合する工程を含んでもよい。
【0061】
本発明のコーヒー含有飲料の製造方法は、ハンターLab表色系において、L:46~65、a:-10~10、b:0~25を満たすように液色を調整する工程(調色工程)を含んでもよい。
前記抽出工程及び前記調製工程を経て製造されるコーヒー含有飲料が、ハンターLab表色系において、L:46~65、a:-10~10、b:0~25を満たす場合には、前記調色工程を含まなくてもよい。
L値、a値、及びb値は、例えば、(A)コーヒー分もしくは(B)脂質又はそれらの混合物に、(C)色素を配合することで調整できる。
【0062】
本発明のコーヒー含有飲料の製造方法は、本発明の効果を抑制しない範囲で、調製工程の前に、調製工程の間に、又は調製工程の後に、飲料の製造に一般的に使用する成分を、(A)コーヒー分もしくは(B)脂質又はそれらの混合物に、配合する工程を含んでもよい。
その他、飲料の分野において通常に使用される方法や条件を採用してもよい。
【0063】
L値、a値、b値、(A)成分、(B)成分、(C)成分、その他の成分等は、前述のとおりである。
【0064】
[容器詰めコーヒー含有飲料]
本発明のコーヒー含有飲料は、容器詰めコーヒー含有飲料としてもよい。容器は、特に限定されないが、例えば、ペットボトル、缶、アルミパウチ、紙容器、プラスチックカップ、ビン等、シール性を有するものであり、液色を示す観点から、好ましくは、ペットボトルである。
【0065】
容器詰めコーヒー含有飲料は、容器詰め飲料の分野において通常に使用される方法によって、上述した本発明のコーヒー含有飲料を容器詰めして製造することができる。
【実施例0066】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0067】
実施例1~8、比較例1~2
表1に示す焙煎度合いL値を有するブラジル産コーヒー豆に、コーヒー豆の重量に対して8~10倍量の95~98℃の水を加え、抽出を行ってコーヒー分を得た。得られたコーヒー分を屈折式Brix計(ショ糖換算)に供し、Brixを測定した。抽出液量(g)にBrix値(5)を乗じて、抽出液中のコーヒー分(コーヒー生豆換算)(g)を算出した。
【0068】
コーヒー豆の焙煎度合いL値は、分光色彩計(「SE7700」、日本電色工業株式会社製)を用いて、以下の通り測定した。
測定するコーヒー豆を細挽きに粉砕した。粉砕した粉をJIS#30(500μm)の篩に掛け、粒度を均等にした。備え付けの丸セルに粒度を揃えた粉を詰め、25kgで3回加圧した。均等に加圧するために、1回加圧するごとにセルを長軸周りに120度回転させた。粉を詰めたセルの底面(測定面)を、アルコールを付けた布で拭き取り、測定ボタンを押して測定した。
【0069】
表1に示す配合に従い、コーヒー分、植物油脂クリーム(ヤシ油40質量%、水58質量%、カゼインナトリウム2質量%)、生クリーム(乳脂肪分47質量%)、ベニバナ黄色素、クチナシ青色素、砂糖、シュガーエステル(「ショ糖パルミチン酸エステルP-1670」、三菱ケミカル株式会社製)、及び重曹(pH調整剤)を配合し、水を用いてメスアップを行い、均一になるように充分に撹拌して溶解させ、コーヒー含有飲料を調製した。この飲料を、UHT殺菌機を用いて、140℃にて30秒間殺菌し、無菌環境下にてペットボトル容器に充填して、容器詰めコーヒー含有飲料を得た。表1における各成分の含有量は、飲料100mLあたりのg数(グラム数)で示す。
【0070】
・官能評価(色)
得られた容器詰めコーヒー含有飲料について、色を指標として、3名の専門パネルによる官能評価を行った。評価は、1~5点の5段階であり、3点に対応する試料を作成して、当該試料を基準にして以下のとおり評価した。
5点:従来のコーヒー含有飲料とはさらに大きく異なる色である。
4点:従来のコーヒー含有飲料とは大きく異なる色である。
3点:従来のコーヒー含有飲料とは異なる色である。
2点:従来のコーヒー含有飲料の色との違いがあるが、違いは大きくない。
1点:従来のコーヒー含有飲料の色と違いはない。
評価の前には、専門パネルの間で、3点に対応する試料と比較して色がどの程度変化したら加点又は減点するのかを共通にした。平均点を小数点以下第一位になるように四捨五入して評価点を算出した。結果を表1に示す。
【0071】
・L値、a値、及びb値の測定
得られた容器詰めコーヒー含有飲料について、分光色差計(「SE6000」、日本電色工業株式会社)を用いて、測定項目としてLab(ハンターLab)を選択し、反射モードでL値、a値、及びb値を測定した。測定は試料を入れ替えて2回行い、平均値を算出した。結果を表1に示す。
【0072】
【0073】
比較例1~2は、官能評価(色)の評価点が2.0点以下であるのに対して、実施例1~8は、評価点が2.7点~4.3点であり、従来のコーヒー含有飲料の色との違いが、比較例よりも大きかった。
また、L値、a値、及びb値からわかるように、実施例1~8では緑色のコーヒー含有飲料を製造することができた。
【0074】
実施例11~15
色素を表2に示す組成に変更した以外は、上述した実施例2と同様に、コーヒー含有飲料を製造し、評価した。
表2における各成分の含有量は、飲料100mLあたりのg数(グラム数)で示す。実施例11は、上述した実施例2と同じ組成である。
【0075】
比較例11
日本コカ・コーラ株式会社の「ジョージア 香るブラック」について、実施例11~15と同様に評価した。
【0076】
比較例12
日本コカ・コーラ株式会社の「ジョージア ラテニスタ カフェラテ」について、実施例11~15と同様に評価した。
【0077】
【0078】
比較例11~12は、従来のコーヒー含有飲料であり、官能評価(色)の評価点が1.0点であった。実施例11~15は、評価点が3.0点であり、従来のコーヒー含有飲料とは色が異なるコーヒー含有飲料であった。
また、L値、a値、及びb値からわかるように、実施例11では緑色、実施例12では赤色、実施例13では灰色、実施例14では黄色、実施例15では白色のコーヒー含有飲料を、それぞれ製造することができた。
本発明によれば、従来のコーヒーとは異なる新規な液色を有するコーヒー含有飲料を提供することができる。本発明のコーヒー含有飲料は、従来のコーヒーとは異なる新規な液色を有するため、産業上の利用可能性が高い。