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  • 特開-接地端子装置および接地端子盤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161694
(43)【公開日】2024-11-20
(54)【発明の名称】接地端子装置および接地端子盤
(51)【国際特許分類】
   H02B 1/16 20060101AFI20241113BHJP
   H01R 4/66 20060101ALI20241113BHJP
   H02B 1/40 20060101ALI20241113BHJP
   H02B 3/00 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
H02B1/16 Z
H01R4/66 E
H02B1/40 D
H02B3/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076606
(22)【出願日】2023-05-08
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (その1) ウェブサイトの掲載日 2022年12月5日 ウェブサイトのアドレス 経済産業省:https://www.meti.go.jp/press/2022/12/20221205002/20221205002.html 文部科学省:https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/mext_01170.html 農林水産省:https://www.maff.go.jp/j/press/nousin/sekkei/221205.html 国土交通省:https://www.mlit.go.jp/report/press/sogo03_hh_000286.html (その2) 開催日 2023年1月13日 集会名、開催場所 第6回インフラメンテナンス大賞 表彰式 中央合同庁舎3号館10階共用会議室(東京都千代田区霞が関2丁目1-3) (その3) ウェブサイトの掲載日 2023年1月19日 ウェブサイトのアドレス https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/maintenance/03activity/pdf/06maintenanceaward.pdf
(71)【出願人】
【識別番号】504177284
【氏名又は名称】国立大学法人滋賀医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】出口 裕司
【テーマコード(参考)】
5G016
5G211
【Fターム(参考)】
5G016CE07
5G211AA12
5G211EE09
(57)【要約】
【課題】安全かつ効率的な接地抵抗値の測定を実現する。
【解決手段】接地端子装置1は、大地に電気的に接続される接地端子3aと、一端および他端の間の電流経路の開閉を行う第1の開閉部材4aと、を備え、前記一端が接地端子3aに電気的に接続され、前記他端が電源系統および大地に電気的に接続される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大地に電気的に接続される接地端子と、
一端および他端の間の電流経路の開閉を行う第1の開閉部材と、
を備え、
前記一端が前記接地端子に電気的に接続され、
前記他端が電源系統および大地に電気的に接続される、接地端子装置。
【請求項2】
前記電源系統からの電流経路を、前記他端への経路と前記大地への経路とに分岐させる分岐部材をさらに備える、請求項1に記載の接地端子装置。
【請求項3】
前記他端と前記大地との間に設けられた第2の開閉部材をさらに備える、請求項1に記載の接地端子装置。
【請求項4】
前記電源系統は、商用電源と発電電源とを含む、請求項1~3のいずれかに記載の接地端子装置。
【請求項5】
請求項1に記載の接地端子装置を備えた接地端子盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接地端子盤等に設けられる接地端子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
接地(アース)とは、電気設備機器(洗濯機・電子レンジ等)と大地を電気的に接続し、人体を感電災害から守る役割や、電気設備機器の故障による火災を防止する役割を担っている。地面に埋設された接地極の接地抵抗値は、大地抵抗率や接地極の経年劣化等により変動するため、年に一度の定期点検により、地面に埋設された接地極の接地抵抗値が基準値以下であることを確認する必要がある。接地抵抗値を測定するための接地端子は、接地端子盤やキュービクル筐体の内部に設けられている(例えば、非特許文献1)。
【0003】
図4は、一般的な接地端子盤B10の構成を示す概略図である。接地端子盤B10は、内部に1つ又は複数の接地端子装置11と、2つの補助端子12とを備えている。接地端子装置11は、接地の種別(A種、B種、C種、D種)毎に設けられており、接地端子13と、ショートバー14と、接続端子15とを備えている。接地端子13には、接地線16が接続されており、接地線16は、大地Eに埋設された接地極(銅板)18に接続されている。接続端子15には、接続線17が接続されており、接続線17は、機器類(コンセント等)に接続されている。ショートバー14は、ボルト・ナットによって接地端子13と接続端子15との間を電気的に開閉可能となっている。
【0004】
接地抵抗値の測定時には、機器側の電源系統を停電させた後、ショートバー14を開くことにより、接地端子13を電源系統と電気的に切り離す。その状態で、補助端子12および接地端子13にプローブを取り付け、専用の機器を用いてプローブ間の抵抗値を測定する。
【0005】
ここで、医療機関等のように、電源系統として商用系と発電系(非常系)とを備えた施設では、定期点検時であっても、両方の電源系統を同時に停電させることはできない。しかし、一方の電源系統を停電させても、2つの電源系統は連系点で接続されているため、他方の電源系統で漏洩電流が発生した場合、一方の電源系統に漏洩電流が回り込む場合がある。したがって、通常の方法で接地抵抗値の測定を行うと、点検従事者が感電するリスクがある。
【0006】
そのような施設では、図5に示すように、測定対象の接地端子を電源系統から切り離す前に、ジャンパー線によって接続端子を他の接地端子装置の接続端子に接続する。これにより、図6に示すように、接続線に漏洩電流が流れても、ジャンパー線によって漏洩電流を他の接地端子装置を介して大地に逃がすことができる。また、ショートバーの開閉時等にジャンパー線が外れてしまうリスクがあるため、複数のジャンパー線を接続することが望ましい。なお、ジャンパー線を設けずにショートバーを開けると、漏洩電流の逃げ道がなくなるため、漏洩電流が発生した機器類のユーザが感電するリスクがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「接地端子盤とは?役割と施工上の注意点、測定方法を解説!」、電気工事ノウハウ大全集、インターネット〈URL:https://denkou-nouhau.com/settitansiban-yakuwari/〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図5に示す方法では、ジャンパー線を接続する手間がかかるため、作業効率が低下する。しかし、例えば出願人が管理する滋賀医科大学附属病院では、停電可能な時間が僅か4時間である。そのため、点検従事者は、短時間で多数の接地端子盤の点検を行う必要があり、点検従事者の負担が大きいという問題があった。
【0009】
また、ジャンパー線を接続するための工具類(スパナ、ラチェット等)や保護具類(絶縁手袋、絶縁クリップ、絶縁シート等)を準備する必要があるため、それらの紛失リスクがあった。さらに、近年は点検従事者の高齢化が進む一方、若年の点検従事者の技術力が低下しているため、点検作業の事故発生がより一層懸念されていた。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、安全かつ効率的な接地抵抗値の測定を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は以下の態様を含む。
項1.
大地に電気的に接続される接地端子と、
一端および他端の間の電流経路の開閉を行う第1の開閉部材と、
を備え、
前記一端が前記接地端子に電気的に接続され、
前記他端が電源系統および大地に電気的に接続される、接地端子装置。
項2.
前記電源系統からの電流経路を、前記他端への経路と前記大地への経路とに分岐させる分岐部材をさらに備える、項1に記載の接地端子装置。
項3.
前記他端と前記大地との間に設けられた第2の開閉部材をさらに備える、項1または2に記載の接地端子装置。
項4.
前記電源系統は、商用電源と発電電源とを含む、項1~3のいずれかに記載の接地端子装置。
項5.
項1~4のいずれかに記載の接地端子装置を備えた接地端子盤。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、安全かつ効率的な接地抵抗値の測定を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る接地端子盤の構成を示す概略図である。
図2】接地端子装置の構成を示す平面図である。
図3】変形例に係る接地端子盤の構成を示す概略図である。
図4】一般的な接地端子盤の構成を示す概略図である。
図5】ジャンパー線を用いて点検を行っている状態を示す写真である。
図6図5において、漏洩電流の経路を付加した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。なお、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【0015】
(全体構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る接地端子盤B1の構成を示す概略図である。接地端子盤B1は、5つの接地端子装置1(1A~1E)と、2つの補助端子2A,2Bとを備えている。接地端子装置1A~1Eはそれぞれ、A種、B種、C種、D種、およびELB動作用D種の接地抵抗値を測定するための接地端子装置である。接地端子装置1A~1Eの各構成は同一であるため、これらを区別しない場合は、接地端子装置1と称する。補助端子2Aは、商用電源系統用のP端子およびC端子を含み、補助端子2Bは、発電電源系統用のP端子およびC端子を含む。
【0016】
(接地端子装置の構成)
図2は、接地端子装置1の構成を示す平面図である。接地端子装置1は、2つの接地端子3a、3bと、第1の開閉器(第1の開閉部材)4aと、第2の開閉器(第2の開閉部材)4bと、分岐部材5とを備えている。第1の開閉器4aおよび第2の開閉器4bの各構成は同一であり、これらを区別しない場合は、開閉器4と称する。
【0017】
開閉器4は、一端T1および他端T2の間の電流経路の開閉を行う機能を有している。本実施形態では、図示しないレバーを「入」側に傾けることで開閉器4の電流経路が閉状態(導通状態)となり、「切」側に傾けることで開閉器4の電流経路が開状態(非導通状態)となる。レバーは、開閉操作棒によって操作することができる。
【0018】
第1の開閉器4aの一端T1は、接地端子3aに電気的に接続されている。接地端子3aは、接地線6aを介して大地に電気的に接続されている。
【0019】
第1の開閉器4aの他端T2は、機器側の電源系統および大地に電気的に接続されている。より正確には、第1の開閉器4aの他端T2は、分岐部材5および接続線7を介して電源系統に電気的に接続されており、分岐部材5、第2の開閉器4b、接地端子3bおよび接地線6bを介して大地に電気的に接続されている。
【0020】
分岐部材5は、コ字形状の導電部材であり、本体部51および2つ脚部52,53を備えている。本体部51の中央部には接続線7が接続されており、接続線7は、電源系統に接続されている。本実施形態では、電源系統は商用電源と発電電源とを含む。すなわち、分岐部材5には、商用電源と発電電源との両方からの漏洩電流が流れ込む。
【0021】
分岐部材5の一方の脚部52は、第1の開閉器4aの他端T2に接続され、他方の脚部53は、第2の開閉器4bの他端T2に接続されている。第2の開閉器4bの一端T1は接地端子3bに接続されており、接地端子3bは接地線6bを介して大地に接続されている。すなわち、分岐部材5は、電源系統からの電流経路を、第1の開閉器4aの他端T2への経路と、(第2の開閉器4b、接地端子3bおよび接地線6bを介した)大地への経路とに分岐させる。
【0022】
通常時は、各接地端子装置1A~1Eでは、第1の開閉器4aおよび第2の開閉器4bをいずれも閉状態にしておく。これにより、電源系統からの漏洩電流は、分岐部材5から第1の開閉器4a、接地端子3aおよび接地線6a、並びに、第2の開閉器4b、接地端子3bおよび接地線6bを介して大地に流れる。
【0023】
(接地抵抗値の測定)
定期点検時には、以下の手順で接地抵抗値の測定を行う。
【0024】
例えば、接地端子装置1Aの接地端子3aの接地抵抗値を測定する場合、第1の開閉器4aを開状態に切り替える。これにより、接地端子3aが電源系統から切り離される。続いて、接地端子3aおよび補助端子2A,2Bにプローブを取り付け、プローブ間の抵抗値を測定する。測定終了後、第1の開閉器4aを閉状態に切り替える。
【0025】
接地端子3bの接地抵抗値についても、第2の開閉器4bを同様に操作することにより測定することができるが、接地端子3aの接地抵抗値が正常値である場合、接地端子3bの接地抵抗値は測定してもよいし、測定しなくてもよい。同様の作業を他の接地端子装置1B~1Eについても行う。
【0026】
接地端子3aの接地抵抗値の測定中に接続線7から漏洩電流が流れたとしても、第2の開閉器4bが閉状態であるため、漏洩電流は、分岐部材5から第2の開閉器4b、接地端子3bおよび接地線6bを介して大地に流れる。よって、点検従事者は感電しない。また、第1の開閉器4aの操作中に接続線7から漏洩電流が流れたとしても、第1の開閉器4aのレバーと電流経路とは絶縁されているため、点検従事者は感電しない。
【0027】
以上のように、本実施形態に係る接地端子装置1では、接続線7から大地への電流経路を2つの経路に冗長化させているため、電源系統を停電させなくても、接地抵抗値を安全に測定することができる。また、開閉器4を開閉操作するだけで、接地端子3aまたは3bを電源系統から切り離すことができるので、図5に示すようにジャンパー線を接続する場合に比べ、大幅に作業時間を短縮することができる。したがって、安全かつ効率的な接地抵抗値の測定を実現することができる。また、ジャンパー線を接続するための工具類や保護具類を準備する必要がなく、高度な技術力も不要である。
【0028】
さらに、接地端子3aの接地抵抗値が異常値であったとしても、他方の接地端子3bの接地抵抗値が正常値であれば、第1の開閉器4aを開状態にして、第2の開閉器4bを閉状態とすることで、機器側を健全な状態で維持することができる。また、接地端子3aの接地抵抗値を是正する作業は時間を要するが、接地端子3bの接地抵抗値が正常値であるため、作業期間中の受変電設備の安全面の信頼性が担保される。
【0029】
(付記事項)
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0030】
上記実施形態では、接続線7から大地への2つの電流経路の両方に開閉器を設けているが、一方の電流経路のみに開閉器を設けてもよい。例えば、図3に示す接地端子盤B2のように、接地端子装置1’が1つの開閉器4(第1の開閉器4a)を備え、第1の開閉器4aの一端が、接地端子3aに電気的に接続され、第1の開閉器4aの他端が、分岐部材5および接地線6bを介して(すなわち第2の開閉器を介さず)大地に電気的に接続される構成であってもよい。当該構成であっても、第1の開閉器4aを開状態にしている間に発生した漏洩電流は、接地線6bを介して大地に流れるため、点検従事者は感電しない。
【0031】
また、上記実施形態では、電源系統が商用電源と発電電源との両方を含んでいるが、電源系統が商用電源および発電電源の一方のみであってもよい。その場合であっても、無停電状態で接地抵抗値を測定できるため、点検作業を効率化することができる。
【0032】
また、分岐部材5の形状は、電流経路を分岐させられるものであれば特に限定されない。さらに、分岐部材5を用いる代わりに、接続線7を分岐させてもよい。
【0033】
また、開閉器4は、電流の導通/非導通を切り替え可能な開閉部材であれば特に限定されない。
【符号の説明】
【0034】
1 接地端子装置
1A~1E 接地端子装置
1’ 接地端子装置
2A 補助端子
2B 補助端子
3a 接地端子
3b 接地端子
4 開閉器
4a 第1の開閉器(第1の開閉部材)
4b 第2の開閉器(第2の開閉部材)
5 分岐部材
51 本体部
52 脚部
53 脚部
6a 接地線
6b 接地線
7 接続線
B1 接地端子盤
B2 接地端子盤
T1 一端
T2 他端
図1
図2
図3
図4
図5
図6