(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161700
(43)【公開日】2024-11-20
(54)【発明の名称】バーリング加工方法、バーリング加工装置、及びバーリング加工部品
(51)【国際特許分類】
B21D 19/08 20060101AFI20241113BHJP
B21D 39/00 20060101ALI20241113BHJP
B21D 39/02 20060101ALI20241113BHJP
B60G 7/00 20060101ALN20241113BHJP
【FI】
B21D19/08 D
B21D39/00 D
B21D39/02 D
B60G7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076622
(22)【出願日】2023-05-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】山形 光晴
【テーマコード(参考)】
3D301
【Fターム(参考)】
3D301AA79
3D301AA83
3D301DA92
3D301DB13
(57)【要約】
【課題】閉断面形状の被加工材に対しても生産性を損なうことなく加工精度の高いバーリング加工を行えるバーリング加工方法及びバーリング加工装置と、このバーリング加工方法によって製造されたバーリング加工部品との提供を目的とする。
【解決手段】このバーリング加工方法は、中子10を拘束リング20と共に中間部品Wの閉断面内まで挿入し、拘束リング20と、第1下穴または第2下穴とが同軸になる位置に位置決めする工程と;バーリングパンチ31,32を打ち込むことで、第1壁部w1及び第2壁部w2を、拘束リング20で支持しながらバーリング縦壁p1,p2を形成すると同時に、バーリング縦壁p1,p2の外周面p1a,p2aを拘束リング20の内周面21に塑性締結させる工程と;塑性締結後の拘束リング20を閉断面内に残したまま、中子10を中間部品Wから引き抜いてバーリング加工部品を得る工程と、を有する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1壁部及び第2壁部を閉断面の一部として含む中間部品に対し、前記第1壁部に形成された第1下穴、及び、前記第2壁部に形成されて前記第1下穴と同軸をなす第2下穴のうち、前記第1下穴のみ、又は、前記第1下穴及び前記第2下穴の両方、に対してバーリング加工穴を形成する方法であって、
挿抜方向の端部において開口した凹部が形成された中子の前記凹部内に拘束リングを配置する工程と、
前記中子を、前記凹部内の前記拘束リングと共に前記中間部品の前記閉断面内まで挿入し、前記拘束リングと、前記第1下穴または前記第2下穴とが同軸になる位置に位置決めする工程と、
前記第1下穴のみ、又は前記第1下穴及び前記第2下穴の両方に、バーリングパンチを打ち込むことで、前記第1壁部のみ、又は、前記第1壁部及び前記第2壁部の両方を、前記拘束リングで支持しながらバーリング縦壁を形成すると同時に、前記バーリング縦壁の外周面を前記拘束リングの内周面に塑性締結させる工程と、
塑性締結後の前記拘束リングを前記閉断面内に残したまま、前記中子を前記中間部品から引き抜いてバーリング加工部品を得る工程と、
を有することを特徴とするバーリング加工方法。
【請求項2】
前記塑性締結させる工程で、前記拘束リングの内周面に対して前記バーリング縦壁の外周面が係止するように前記塑性締結させる
ことを特徴とする請求項1に記載のバーリング加工方法。
【請求項3】
前記拘束リングを配置する工程で、一対の前記拘束リングを互いに同軸に配置し、
前記位置決めする工程で、一対の前記拘束リングの一方を前記第1下穴と同軸に位置決めすると共に一対の前記拘束リングの他方を前記第2下穴と同軸でかつ一方の前記拘束リングから離間した位置に位置決めし、
前記塑性締結させる工程で、一対の前記拘束リングが互いに離間したまま前記塑性締結を行う、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のバーリング加工方法。
【請求項4】
前記拘束リングを配置する工程で、前記拘束リングを磁力により前記中子に仮固定する
ことを特徴とする請求項1または2に記載のバーリング加工方法。
【請求項5】
互いに対向する第1壁部及び第2壁部を閉断面の一部として含む中間部品に対し、前記第1壁部に形成された第1下穴、及び、前記第2壁部に形成されて前記第1下穴と同軸をなす第2下穴のうち、前記第1下穴のみ、又は、前記第1下穴及び前記第2下穴の両方、に対してバーリング加工穴を形成する装置であって、
前記中間部品の前記閉断面に対する挿抜方向に沿って進退自在に配置され、前記挿抜方向の端部が開口してかつ拘束リングを配置する底面が形成された凹部を有する中子と、
前記中子及び前記中間部品間を前記挿抜方向に沿って接近離間させる駆動機構と、
前記凹部に対し、前記挿抜方向と直交する方向に沿って進退するバーリングパンチと、
を備えることを特徴とするバーリング加工装置。
【請求項6】
前記凹部が、
前記開口に通じてかつ前記挿抜方向に沿って長い溝と、
前記溝を間に挟んで前記開口と対向する内壁面と、
を有することを特徴とする請求項5に記載のバーリング加工装置。
【請求項7】
前記凹部が、前記中子の表裏面の両方に形成されている
ことを特徴とする請求項5または6に記載のバーリング加工装置。
【請求項8】
前記中子が、磁力を有する
ことを特徴とする請求項5または6に記載のバーリング加工装置。
【請求項9】
閉断面の一部をなす第1壁部及び第2壁部と、
前記第1壁部及び前記第2壁部の一方または両方に形成されたバーリング加工穴を有するバーリング縦壁と、
前記バーリング縦壁の外周囲に同軸配置され、前記バーリング縦壁が塑性締結された拘束リングと、
を備えることを特徴とするバーリング加工部品。
【請求項10】
前記バーリング加工穴の軸線を含む断面で見たときに、前記バーリング縦壁の外周面と前記拘束リングの内周面との間に、係止部が形成されている
ことを特徴とする請求項9に記載のバーリング加工部品。
【請求項11】
前記拘束リングが磁力を有する
ことを特徴とする請求項9または10に記載のバーリング加工部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーリング加工方法と、バーリング加工装置と、バーリング加工部品とに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、複数の対象物を連結する構造部品として、その端部や中間位置に結合部が形成されたリンク構造部品が実用化されている。これらリンク構造部品は、例えば、建築構造用や自動車のサスペンション用など、種々の用途に用いられている。
例えば、自動車のサスペンション装置においては、ロアリンク、アッパーリンク、ラテラルリンク等のサスペンションリンクが用いられている。これらリンク構造部品は、他の構造部品との結合のためにバーリング加工穴を有するものがある。このバーリング加工穴によれば、単純な打ち抜き穴の場合と比べて、例えばブッシュ等の他の構造部品を保持する保持面積を大きく確保することができる。
【0003】
この種のバーリング加工の一例として、下記特許文献1に車両用サスペンションアームの製造方法が開示されている。この車両用サスペンションアームの製造方法では、離隔をあけて互いに向かい合う第1平板部と第2平板部とが少なくとも先端領域に形成された筒状体であるアーム本体を備え、前記アーム本体の先端領域に形成された第1平板部と第2平板部とを貫通して連結部材を固定するための円孔および前記円孔の周囲に円筒状フランジが形成された車両用サスペンションアームを製造する。具体的には、この車両用サスペンションアームの製造方法は、前記第1平板部と前記第2平板部とを、U字開口が前記アーム本体の先端側に向くように、互いに同じ形状であるU字形状にカットする第1工程と、前記アーム本体における前記U字状にカットされた部分の両側に存在する両側端部を円弧状に曲げる曲げ加工を行って前記両側端部の先端を互いに突き合わせ、前記突き合わされた部分を溶接することにより、前記第1平板部と前記第2平板部とに互いに向かい合う円孔を形成する第2工程と、前記第1平板部と前記第2平板部とに形成された円孔の周囲をバーリング加工して、前記円筒状フランジを形成する第3工程と、を有する。
【0004】
また、バーリング加工の他の例として、下記特許文献2に、サスペンションアームにおけるブッシュ取付部の加工方法が開示されている。このブッシュ取付部の加工方法では、ハット形の断面を有するサスペンションアーム1の一対の壁部間にカラーを嵌合させた後、カラーの内周面に当接する一対の突出部を前記一対の壁部にバーリングにより形成し、一対の突出部の内周にブッシュを圧入して固定している。このブッシュ取付部の加工方法によれば、カラーの作用で一対の突出部の同軸性が確保されるとともに剛性が向上し、しかもバーリング加工時の荷重の一部をカラーに受止させることにより、バーリングダイの耐久性向上を図ることができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-087985号公報
【特許文献2】特開平6-312227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の車両用サスペンションアームの製造方法では、まず部品端部にU字開口を形成し、U字開口の両側に隣接する両側端部を円弧状に曲げて互いに突き合わせ、さらに突き合わせた部分同士を溶接固定することで、円孔を形成している。バーリング加工はこの円孔を形成した後の第3工程で行われるが、バーリング加工穴の形成に至るまでの工数が多く複雑であるため、生産性向上の観点で課題があった。加えて、バーリング加工の前に、その下穴である円孔を曲げ加工及び溶接加工の組み合わせにより形成しているため、加工精度向上の点においても課題があった。
【0007】
また、上記特許文献2に記載のブッシュ取付部の加工方法では、バーリング加工の前に、カラーをバーリングダイで挟持し、このカラーが被加工材(サスペンションアーム)に形成された下穴である小孔と同軸をなすように固定した上で、バーリング加工を実施している。ここで、バーリングダイは、一対の開閉するダイ半体間にカラーを挟持する構成であるが、上述のようにハット形の開断面を有する被加工材であれば、その大きく開いた開口部からカラーを挟持したバーリングダイを差し込める。しかし、閉断面の被加工材に対しては適用できないという加工上の制限があった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、閉断面形状の被加工材に対しても生産性を損なうことなく加工精度の高いバーリング加工を行えるバーリング加工方法及びバーリング加工装置と、このバーリング加工方法によって製造されたバーリング加工部品との提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明は以下の態様を採用した。
(1)本発明の一態様に係るバーリング加工方法は、
互いに対向する第1壁部及び第2壁部を閉断面の一部として含む中間部品に対し、前記第1壁部に形成された第1下穴、及び、前記第2壁部に形成されて前記第1下穴と同軸をなす第2下穴のうち、前記第1下穴のみ、又は、前記第1下穴及び前記第2下穴の両方、に対してバーリング加工穴を形成する方法であって、
挿抜方向の端部において開口した凹部が形成された中子の前記凹部内に拘束リングを配置する工程と、
前記中子を、前記凹部内の前記拘束リングと共に前記中間部品の前記閉断面内まで挿入し、前記拘束リングと、前記第1下穴または前記第2下穴とが同軸になる位置に位置決めする工程と、
前記第1下穴のみ、又は前記第1下穴及び前記第2下穴の両方に、バーリングパンチを打ち込むことで、前記第1壁部のみ、又は、前記第1壁部及び前記第2壁部の両方を、前記拘束リングで支持しながらバーリング縦壁を形成すると同時に、前記バーリング縦壁の外周面を前記拘束リングの内周面に塑性締結させる工程と、
塑性締結後の前記拘束リングを前記閉断面内に残したまま、前記中子を前記中間部品から引き抜いてバーリング加工部品を得る工程と、
を有する。
【0010】
上記(1)に記載のバーリング加工方法によれば、中子の凹部内に拘束リングを配置する工程と、中間部品に中子を挿入して位置決めする工程と、バーリング縦壁の形成と同時にバーリング縦壁を拘束リングに塑性締結させる工程と、中子を中間部品から引き抜く工程と、を行うだけで、拘束リングにより補強されたバーリング加工穴を有するバーリング加工部品を得ることができる。このように、閉断面形状の中間部品に対し、シンプルな構造の中子を用いて僅かな工程数でバーリング加工穴を形成できるので、生産性が高い。加えて、バーリング加工中は、第1壁部及び第2壁部を拘束リングで支持しながらバーリング縦壁を形成できる上に、バーリング縦壁の形状をその周囲から常に拘束リングで拘束するので、バーリング加工穴の加工精度も高い。
【0011】
(2)上記(1)に記載のバーリング加工方法において、
前記塑性締結させる工程で、前記拘束リングの内周面に対して前記バーリング縦壁の外周面が係止するように前記塑性締結させてもよい。
上記(2)の場合、拘束リングがその内周面においてバーリング縦壁の外周面に対して係止した状態に塑性締結されるので、拘束リングの固定強度を高め、その脱落をより確実に防ぐことができる。
【0012】
(3)上記(1)または(2)に記載のバーリング加工方法において、以下の様にしてもよい:
前記拘束リングを配置する工程で、一対の前記拘束リングを互いに同軸に配置し、
前記位置決めする工程で、一対の前記拘束リングの一方を前記第1下穴と同軸に位置決めすると共に一対の前記拘束リングの他方を前記第2下穴と同軸でかつ一方の前記拘束リングから離間した位置に位置決めし、
前記塑性締結させる工程で、一対の前記拘束リングが互いに離間したまま前記塑性締結を行う。
上記(3)の場合、第1下穴に形成するバーリング加工穴と第2下穴に形成するバーリング加工穴との両方を1つの拘束リングで補強する場合に比べて、拘束リングの軸線方向の合計長さを短くできる。すなわち、前記軸線方向で見たときに一対の拘束リングの間には拘束リングが存在せず、この空間の長さ分、拘束リングの合計長さを短縮できる。拘束リングの短縮化により、バーリング加工部品を軽量できる。加えて、この短縮化によって拘束リングの軸線方向における座屈強度を高めることもできる。よって、軽量化と高強度化をより高度に両立させることができる。
【0013】
(4)上記(1)~(3)の何れか1項に記載のバーリング加工方法において、
前記拘束リングを配置する工程で、前記拘束リングを磁力により前記中子に仮固定してもよい。
上記(4)の場合、中子の凹部に拘束リングを置くだけで、拘束リングを仮固定できる。よって、中子からの拘束リングの脱落を防止できる上に、中子に対する拘束リングの位置決めをより精度良く行うことができる。
【0014】
(5)本発明の一態様に係るバーリング加工装置は、
互いに対向する第1壁部及び第2壁部を閉断面の一部として含む中間部品に対し、前記第1壁部に形成された第1下穴、及び、前記第2壁部に形成されて前記第1下穴と同軸をなす第2下穴のうち、前記第1下穴のみ、又は、前記第1下穴及び前記第2下穴の両方、に対してバーリング加工穴を形成する装置であって、
前記中間部品の前記閉断面に対する挿抜方向に沿って進退自在に配置され、前記挿抜方向の端部が開口してかつ拘束リングを配置する底面が形成された凹部を有する中子と、
前記中子及び前記中間部品間を前記挿抜方向に沿って接近離間させる駆動機構と、
前記凹部に対し、前記挿抜方向と直交する方向に沿って進退するバーリングパンチと、
を備える。
【0015】
上記(5)に記載のバーリング加工装置によれば、まず、拘束リングを凹部の底面に配置する。続いて、駆動機構により、中子を、凹部内の拘束リングと共に中間部品の閉断面内まで挿入し、拘束リングと、第1下穴または第2下穴とが同軸になる位置に位置決めする。続いて、第1下穴のみ、又は第1下穴及び第2下穴の両方に、バーリングパンチを打ち込むことで、第1壁部のみ、又は、第1壁部及び第2壁部の両方を拘束リングで支持しながらバーリング縦壁を形成すると同時に、バーリング縦壁の外周面を拘束リングの内周面に対して塑性締結させる。続いて、塑性締結後の拘束リングを閉断面内に残したまま中子を中間部品から引き抜くことで、バーリング加工部品を得ることができる。このように、閉断面形状の中間部品に対し、シンプルな構造の中子を用いた僅かな工数でバーリング加工穴を形成できるので、生産性が高い。加えて、バーリング加工中は、第1壁部及び第2壁部を拘束リングで支持しながらバーリング縦壁を形成する上に、バーリング縦壁の形状をその周囲から拘束リングにより拘束するので、バーリング加工穴の加工精度も高い。
【0016】
(6)上記(5)に記載のバーリング加工装置において、
前記凹部が、
前記開口に通じてかつ前記挿抜方向に沿って長い溝と、
前記溝を間に挟んで前記開口と対向する内壁面と、
を有してもよい。
上記(6)の場合、内壁面に拘束リングの外周面が当たるように凹部内に拘束リングを配置することで、挿抜方向における中子内での拘束リングの位置決めを行える。また、バーリング加工後の中子を中間部品から引き抜く際に、塑性締結で固定された拘束リングを、中子の開口を通して凹部から外すことができる。よって、塑性締結後の拘束リングと干渉することなく、中子を引き抜くことができる。
【0017】
(7)上記(5)または(6)に記載のバーリング加工装置において、
前記凹部が、前記中子の表裏面の両方に形成されていてもよい。
上記(7)の場合、一対の拘束リングを用いて、第1壁部及び第2壁部の両方に、互いに同軸をなすバーリング加工穴を形成できる。
【0018】
(8)上記(5)~(7)の何れか1項に記載のバーリング加工装置において、
前記中子が、磁力を有してもよい。
上記(8)の場合、中子の凹部に金属製の拘束リングを載置した際に、凹部内から脱落することなく、また凹部内で位置ずれが生じないように、拘束リングを仮配置することができる。
【0019】
(9)本発明の一態様に係るバーリング加工部品は、
閉断面の一部をなす第1壁部及び第2壁部と、
前記第1壁部及び前記第2壁部の一方または両方に形成されたバーリング加工穴を有するバーリング縦壁と、
前記バーリング縦壁の外周囲に同軸配置され、前記バーリング縦壁が塑性締結された拘束リングと、
を備える。
【0020】
上記(9)に記載のバーリング加工部品は、上記(5)~(8)の何れか1項に記載のバーリング加工装置を用いて、上記(1)~(6)の何れか1項に記載のバーリング加工方法によって製造されたものであるので、生産性が高くて低コストである上に、加工精度も高い部品となっている。
【0021】
(10)上記(9)に記載のバーリング加工部品において、
前記バーリング加工穴の軸線を含む断面で見たときに、前記バーリング縦壁の外周面と前記拘束リングの内周面との間に、係止部が形成されていてもよい。
上記(10)に記載の場合、拘束リングの内周面が係止部においてバーリング縦壁の外周面に対して係止した状態に塑性締結されるので、拘束リングの固定強度をより高め、その脱落をより確実に防ぐことができる。
【0022】
(11)上記(9)または(10)に記載のバーリング加工部品において、
前記拘束リングが磁力を有してもよい。
上記(11)に記載の場合、上記(4)に記載の仮固定が行われたものと考えられる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の上記各態様によれば、閉断面形状の被加工材に対しても生産性を損なうことなく加工精度の高いバーリング加工を行えるバーリング加工方法及びバーリング加工装置を提供できる。また、このバーリング加工方法により製造されたバーリング加工部品も提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係るバーリング加工装置の要部を示す斜視図である。
【
図2】同実施形態で用いられる拘束リングの一部を示す図であって、その中心軸線CLを含む断面で見た縦断面図である。
【
図3】同拘束リングの変形例を示す図であって、その中心軸線CLを含む断面で見た縦断面図である。
【
図4】同拘束リングの他の変形例を示す図であって、その中心軸線CLに沿った方向から見た平面図である。
【
図5】同実施形態のバーリング加工方法の工程を説明するフローチャートである。
【
図6】同実施形態のバーリング加工方法におけるバーリング加工前の被加工材を示す縦断面図である。
【
図7】同実施形態のバーリング加工方法におけるバーリング加工中の被加工材を示す縦断面図である。
【
図8】同実施形態のバーリング加工方法におけるバーリング加工後の被加工材を示す縦断面図である。
【
図10】同実施形態の第1変形例を示す図であって、
図7に対応する縦断面図である。
【
図11】同実施形態の第2変形例を示す図であって、
図7に対応する縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の一実施形態に係るバーリング加工方法と、バーリング加工装置と、バーリング加工部品とについて、図面を参照しながら以下に説明を行う。
以下の説明では、まず、
図1を参照しながら被加工材である中間部品Wを説明する。続いて、
図1~
図4を参照しながら本実施形態のバーリング加工装置及びその変形例を説明する。続いて、
図5~
図9を参照しながら本実施形態のバーリング加工方法及びバーリング加工部品を説明する。そして最後に、
図10及び
図11を参照しながら、本実施形態の変形例を説明する。
なお、各図において、XYZを用いて方向を説明する場合がある。ここで、X方向は、後述する中子10を挿抜する方向を示し、挿入時の方向が+X方向であり、抜出時の方向が-X方向である。また、Y方向は、水平面内においてX方向に対し直角な方向を示し、+X方向に沿って見たときに右方向が+Y方向であり、+X方向に沿って見たときに左方向が-Y方向である。また、Z方向は、XY平面(水平面)に対して直角な方向であり、後述するバーリングパンチ31の打ち抜き方向が-Z方向であり、引き抜き方向が+Z方向である。
【0026】
[中間部品W]
図1に示す中間部品Wは、X方向に垂直な断面が横長の矩形をなす鋼管であり、上壁である第1壁部w1と、下壁である第2壁部w2と、側壁である第3壁部w3,第4壁部w4とを有する。
第1壁部w1及び第2壁部w2は、X方向に沿って長い板部であり、互いに平行に配置されている。同様に、第3壁部w3及び第4壁部w4も、X方向に沿って長い板部であり、互いに平行に配置されている。第1壁部w1,第2壁部w2,第3壁部w3,第4壁部w4は、互いに同じ板厚を有する。
第1壁部w1には、これからバーリング加工を受ける第1下穴h1が形成されている。第2壁部w2にも、これからバーリング加工を受ける第2下穴h2が形成されている。第1下穴h1及び第2下穴h2は、互いに同軸に配置され、また、互いに同じ内径寸法を有する。これら第1下穴h1及び第2下穴h2は、Z方向に沿った共通の軸線を有する。
【0027】
第3壁部w3及び第4壁部w4のZ方向に沿った幅寸法は、第1壁部w1及び第2壁部w2のY方向に沿った幅寸法よりも小さい。従って、これら第1壁部w1,第2壁部w2,第3壁部w3,第4壁部w4によって区画された内部空間は、X方向に沿って長く、かつZ方向の高さ寸法がY方向の幅寸法よりも小さい扁平空間となっている。この扁平空間に対し、中間部品Wの一端側からは、横長の矩形開口を介して治具等を挿入可能であるが、他端側からは治具等を挿入できない部品構造となっている。通常、このように一方側からしか内部にアクセスできず、しかも長手方向に垂直な断面形状が扁平である部品の場合、バーリング加工を施すのは容易ではない。これに対し、本実施形態では、以下に説明する装置及び方法により、生産性を下げることなく精度の高いバーリング加工を実施可能としている。
【0028】
[バーリング加工装置]
図1に、本実施形態に係るバーリング加工装置100の要部を示す。
このバーリング加工装置100は、中間部品Wに予め形成された第1下穴h1及び第2下穴h2に対してバーリング加工を施す。バーリング加工装置100は、中間部品Wを収容保持する金型(不図示)と、中間部品W内に対して挿抜される中子10と、中子10をX方向に沿って進退させる中子駆動機構(軸押し機構。不図示)と、一対のバーリングパンチ31,32と、バーリングパンチ31,32のそれぞれを第1下穴h1及び第2下穴h2に向かって進退させるパンチ駆動機構(不図示)と、拘束リング20を中子10にセットする拘束リング供給装置(不図示)と、前記金型への中間部品Wの収容及び前記金型からの中間部品Wの払い下げを行う部品供給機構(不図示)と、全体動作を司る制御部(不図示)と、を備える。
【0029】
前記金型は、その内部に、中間部品Wを収容する収容空間を有している。この収容空間内に保持された中間部品Wは、第1壁部w1の上面と、第2壁部w2の下面と、第3壁部w3の外側面と、第4壁部w4の外側面との4面が支持され、その結果、定位置に固定配置される。前記金型のうち、第1壁部w1の上面を支える面には、バーリングパンチ31を挿通させる貫通孔(不図示)がZ方向に沿って形成されている。同様に、第2壁部w2の下面を支える面には、バーリングパンチ32を挿通させる貫通孔(不図示)がZ方向に沿って形成されている。そして、前記金型内に中間部品Wを収容して固定した状態では、第1下穴h1及び第2下穴h2の軸線がバーリングパンチ31,32の軸線と一致するように設定されている。
【0030】
バーリングパンチ31,32は、先端が円形の円柱であり、前記パンチ駆動機構の駆動を受けることで第1下穴h1及び第2下穴h2に対して進退する。バーリングパンチ31,32の先端外径は、第1下穴h1及び第2下穴h2よりも大きく、これから加工するバーリング加工穴の内径と略同じである。バーリングパンチ31,32は、第1下穴h1及び第2下穴h2と同軸でかつ第1下穴h1及び第2下穴h2よりも大きい外径を有するので、バーリング加工の際には、バーリングパンチ31,32の各先端面が、第1下穴h1及び第2下穴h2のそれぞれの外周囲部分を、中間部品Wの内側に向かって加圧して折り曲げる。このときの加圧力及び加圧ストロークは、前記パンチ駆動機構の動作によって調整される。より具体的には、前記制御部からの指示により設定された加圧ストロークと加圧力に従って、前記パンチ駆動機構がバーリングパンチ31,32を進退させる。
【0031】
中子10は、概略四角柱形状の部品であり、X軸方向に沿って長い。中子10の上面には、X方向に沿って長い凹部11が形成されている。中子10は、少なくとも凹部11の部分に磁力が付与されている。この磁力により、後述の拘束リング20の素材を鋼製とした場合に、拘束リング20を凹部11内に吸着可能としている。なお、中子10の方に磁力を持たせる代わりに、拘束リング20の方に磁力を持たせてもよい。
【0032】
凹部11は、中子10の先端位置に形成された開口11aと、この開口11aに通じて中子10の後端側に向かって直線的に延在する溝11bと、溝11bの後端側に繋がる内壁面11cとを有する。開口11aと内壁面11cは、溝11bの延在方向(X方向)において互いに対向して配置されている。開口11aは、-X方向に沿って対向視した場合に、横長の矩形を有する。内壁面11cは、Z方向に起立した壁面であり、-Z方向に沿って見た場合に半円形状を有する。内壁面の11cを-Z方向に向かって平面視した場合の曲率半径は、後述する拘束リング20をがたつき無く収容してかつスムーズに+Z方向への取り出しができるよう、拘束リング20の外形の半径よりも若干大きめに設定されている。
【0033】
凹部11は、XY平面に平行な底面11dを有する。底面11dを形成する一対の側縁11d1は、X方向に沿って延在する直線形状を有する。また、底面11dを形成する先端縁11d2は、開口11aに繋がる直線形状を有する。一方、底面11dを形成する後端縁11d3は、平面視で半円形状となっている。そして、底面11dの後端縁11d3からZ方向に向かって前記内壁面11cが形成されている。
【0034】
以上説明のように、凹部11は、-Z方向においては底面11dによって閉塞され、+Y方向及び-Y方向においては溝11bの両側面によって閉塞され、そして-X方向においては内壁面11cによって閉塞されている。したがって、凹部11内に拘束リング20を配置した場合、-Z方向への動きは底面11dによって規制され、また-X方向への動きは、内壁面11cによって規制される。拘束リング20を凹部11内に配置する際、その外周面において内壁面11cに面接触するように配置することで、平面視における、拘束リング20の中心と内壁面11cの半円中心とを一致させることができる。
一方、凹部11は、+Z方向及び+X方向においては、凹部11の外部に向かって開放されている。したがって、拘束リング20を-Z方向に沿って凹部11内に収容することと、拘束リング20を凹部11内から+X方向に移動させて開口11aを介して凹部11の外部に外すこととが、可能となっている。
【0035】
中子10は、その上下面が鏡面対象な形状となっている。よって、中子10の下面にも、X方向に沿って長い他の凹部11が形成されている。他の凹部11も、中子10の上面に形成された凹部11と同じ形状寸法を有し、その上下向きのみが異なっている。以下、
図1では、視線方向の関係で符号の図示を省略している場合がある。
【0036】
中子10の下面に形成された他の凹部11は、中子10の先端位置に形成された開口11aと、この開口11aに通じて中子10の後端側に向かって直線的に延在する溝11bと、溝11bの後端側に繋がる内壁面11cとを有する。開口11aと内壁面11cは、溝11bの延在方向(X方向)において互いに対向して配置されている。開口11aは、-X方向に沿って対向視した場合に、横長の矩形を有する。内壁面11cは、-Z方向に起立した壁面であり、+Z方向に沿って見た場合に半円形状を有する。内壁面の11cを+Z方向に向かって底面視した場合の曲率半径は、拘束リング20をがたつき無く収容してかつスムーズにZ方向への取り出しができるよう、拘束リング20の外形の半径よりも若干大きめに設定されている。
【0037】
凹部11は、XY平面に平行な底面11dを有する。底面11dを形成する一対の側縁11d1は、X方向に沿って延在する直線形状を有する。また、底面11dを形成する先端縁11d2は、開口11aに繋がる直線形状を有する。一方、底面11dを形成する後端縁11d3は、底面視で半円形状となっている。そして、底面11dの後端縁11d3から-Z方向に向かって前記内壁面11cが形成されている。
【0038】
以上説明のように、他の凹部11は、+Z方向においては底面11dによって閉塞され、+Y方向及び-Y方向においては溝11bの両側面によって閉塞され、そして-X方向においては内壁面11cによって閉塞されている。したがって、他の凹部11内に拘束リング20を配置した場合、+Z方向への動きは底面11dによって規制され、また-X方向への動きは、内壁面11cによって規制される。拘束リング20を凹部11内に配置する際、その外周面において内壁面11cに面接触するように配置することで、底面視における、拘束リング20の中心と内壁面11cの半円中心とを一致させることができる。
一方、凹部11は、-Z方向及び+X方向においては、凹部11の外部に向かって開放されている。したがって、拘束リング20を+Z方向に沿って凹部11内に収容することと、拘束リング20を凹部11内から+X方向に移動させて開口11aを介して凹部11の外部に外すこととが、可能となっている。
【0039】
拘束リング20の一例を、
図2に示す。この
図2は、拘束リング20を、その中心軸線を含む断面で見た半分部分の縦断面図である。
拘束リング20は、バーリング加工時の治具あるいは金型の一部としての機能と、後述するバーリング加工穴の補強部材としての機能とを併せ持つ。拘束リング20は、環状の内周面21と、環状の外周面22と、環状のリング上面23と、環状のリング下面24とを有する。拘束リング20の材質は、目的に応じて任意に選定可能であるが、中間部品Wの材質と等しいか、あるいはより高い機械強度のものを用いる。拘束リング20の材質の機械強度を中間部品Wの材質の機械強度よりも高くする場合には、強度差として降伏応力で100MPa程度を付与しておくことが好ましい。
【0040】
内周面21には、中心軸線CLを中心とする周方向に沿って形成された突条部21aが複数本、Z方向に沿って並んで配置されている。各突条部21aは、拘束リング20の中心軸線CLを含む断面で見たときに、中心軸線CLに向かって突出するように形成されている。一方、各溝部21bは、拘束リング20の中心軸線CLを含む断面で見たときに、中心軸線CLから離れる方向に向かって凹むように形成されている。従って、
図2に示すように、内周面21には、Z方向に沿って凸部と凹部が交互に並んで形成されている。これにより、Z方向に沿った係止箇所が多数形成された構造となっている。
【0041】
外周面22は、内周面21と同軸をなす環状面であり、中心軸線CLを含む縦断面で見たときには直線形状を有している。外周面22は、中心軸線CLを含む断面で見たときに内周面21と平行である。よって、拘束リング20の径方向の幅寸法は、その周方向の何れの位置においても同じである。
リング上面23は、中心軸線CLに沿って-Z方向に平面視したときに環状をなす平面である。リング上面23は、その内周縁において内周面21と繋がっており、また、その外周縁において外周面22と繋がっている。
リング下面24は、中心軸線CLに沿って+Z方向に底面視したときに環状をなす平面である。リング下面24は、その内周縁において内周面21と繋がっており、また、その外周縁において外周面22と繋がっている。リング下面24は、リング上面23と平行である。よって、拘束リング20の厚みは、その周方向の何れの位置においても同じである。
【0042】
なお、拘束リング20の変形例として、
図3または
図4の構成も採用可能である。
図3は、拘束リング20の変形例を示す図であって、その中心軸線CLを含む断面で見た縦断面図であり、
図2に対応する図である。また、
図4は、拘束リング20の他の変形例を示す図であって、その中心軸線CLに沿った方向から見た平面図である。
図3に示す変形例では、外周面22、リング上面23、リング下面24は上述と同じ構成を有するが、内周面21のみ形状が異なっている。すなわち、内周面21には、上記突条部21a及び溝部21bの代わりに、雌ねじ21cが形成されている。雌ねじ21cは、拘束リング20の中心軸線CLを中心とする螺旋ねじであり、中心軸線CLを含む断面で見たときにZ方向に沿ってねじ山とねじ溝が交互に並んで形成されている。これにより、本変形例においても、Z方向に沿った係止箇所が多数形成された構造となっている。
【0043】
また、
図4に示す変形例では、外周面22、リング上面23、リング下面24は上述と同じ構成を有するが、内周面21のみ形状が異なっている。すなわち、内周面21には、上記突条部21a及び溝部21bの代わりに、複数本の縦溝21dが周方向に等角度間隔で形成されている。各縦溝21dは、拘束リング20の中心軸線CLと平行をなしており、平面視では略台形となっている。ただし、各縦溝21dの形状は略台形のみに限らず、矩形あるいは半円形等、その他の形状を採用してもよい。
図4の変形例では、縦溝21dの形成により、内周面21を単純な円形状とする場合に比べて、表面積が広くなっている。
なお、
図3及び
図4に示した変形例の他、図示を省略するが、内周面21にローレットを形成してもよい。あるいは、内周面21を凹凸のない面としてもよい。
【0044】
前記中子駆動機構は、
図1のX方向における中子10の進退動作を行う。すなわち、凹部11内に拘束リング20が固定配置された中子10を前記金型内に固定配置された中間部品Wの開口内に挿入する動作と、バーリング加工後の中子10を中間部品Wの開口から抜き出す動作とを、行うことができる。前記中子駆動機構により、前記金型内の中間部品Wに対する中子10の差し込み位置の位置決めも行われる。この位置決めは、前記金型を基準とする中子10の挿抜方向の位置を制御することで行われる。
また、変形例として、中子10の凹部11の形状寸法を拘束リング20の外形寸法よりも少し大きめにしておき、これに対して先端が先細りであるバーリングパンチ31,32を組み合わせて前記位置決めを行うようにしてもよい。この変形例の場合は、バーリング加工前においては大きめの凹部11内における拘束リング20の位置合わせが概ね出来た状態にある。そして、バーリング加工中は、先細りのバーリングパンチ31,32の打ち込みによって形成されていくバーリング縦壁p1,p2の外周面p1a,p2aに合致するように拘束リング20が前記底面11d上で動き、その結果としてバーリング縦壁p1,p2と各拘束リング20が同軸になって自動調芯される。
【0045】
前記拘束リング供給装置は、図示されない部品収容部に収容された複数の拘束リング20の中から2つを取り出して中子10の凹部11及び他の凹部11のそれぞれに一つずつ載置する。この載置の際、前記拘束リング供給装置は、各拘束リング20の各外周面が中子10の各内壁面11cに面接触するように配置する。これにより、凹部11及び他の凹部11内に各拘束リング20を位置ずれなく仮配置することができる。なお、前記拘束リング供給装置を配置する代わりに、手作業で拘束リング20を配置するようにしてもよい。
前記部品供給機構は、図示されない部品収容部に収容された複数の中間部品Wの中から1つを取り出し、型開きした前記金型内に配置する。中間部品Wの載置後、前記金型は閉じられるが、中間部品Wの開口のみが中子10に向かって開口した状態となる。
【0046】
前記制御部は、前記中子駆動機構、前記パンチ駆動機構、前記中子駆動機構、及び前記部品供給機構のそれぞれを連動して制御する。この制御部によれば、以下に続けて説明するバーリング加工方法を全自動で行うことができる。
【0047】
[バーリング加工方法及びバーリング加工部品]
本実施形態のバーリング加工方法は、
図5のフローチャートに示す各工程によって実行される。
即ち、開始後のステップS1では、前記制御部からの指示を受けた前記部品供給機構が前記部品収容部から中間部品Wを1つ取り出し、型開きした前記金型内に配置する。その後、前記金型を閉じる。これにより、中間部品Wが定位置に固定配置される。この時、中間部品Wの開口は、前記金型の外部に向かって開放され、なおかつ中子10の先端に向かって対向配置される。これにより、中子10と中間部品Wとが挿抜方向に沿って同軸配置される。
【0048】
続くステップS2では、前記制御部からの指示を受けた前記拘束リング供給装置が、部品収容部から拘束リング20を1つ取り出し、中子10の上面にある凹部11内に配置する。この時、凹部11の内壁面11cに対して拘束リング20の外周面が面接触するように配置する。また、中子10は磁力を帯びているので、鋼製の拘束リング20は、凹部11内に位置ずれなく固定配置される。
続いて、前記制御部からの指示を受けた前記拘束リング供給装置が、部品収容部から他の拘束リング20を1つ取り出し、中子10の下面にある凹部11内に配置する。この時も、凹部11の内壁面11cに対して拘束リング20の外周面が面接触するように配置する。また、中子10は磁力を帯びているので、他の拘束リング20も、凹部11内に位置ずれなく固定配置される。
上記ステップS2によれば、一対の拘束リング20が、中子10内に、上下方向の軸線を中心として同軸配置される。
【0049】
続くステップS3では、挿抜方向の+X方向に向かって中子10を移動させ、中間部品Wの開口内に挿入する。この中子10の移動動作は、各拘束リング20の中心軸線CLがバーリングパンチ31,32の中心軸線に一致した時点で停止させる。これにより、
図6に示す状態となり、各バーリングパンチ31,32と、これらバーリングパンチ31,32が通る前記金型の各開口と、中間部品Wの各下穴h1,h2と、中子10内の各拘束リング20とが、共通の軸線を有するように同軸配置される。
【0050】
続くステップS4(
図5)では、各バーリングパンチ31,32が共通の軸線に沿って互いに接近するように射出される。すると、前記金型の開口を通って射出された各バーリングパンチ31,32が中間部品Wの上下面に打ち付けられる。この時の第1壁部w1は、その下面が、中子10の上面に配置された拘束リング20によって支持されている。同時に、この時の第2壁部w2は、その上面が、中子10の下面に配置された拘束リング20によって支持されている。したがって、中間部品Wは、その第1壁部w1及び第2壁部w2の双方が拘束リング20によって支持された状態で、各バーリングパンチ31,32が第1壁部w1及び第2壁部w2に向かって打ちつけられる。
【0051】
その結果、中間部品Wの上面においては、下穴h1の周囲壁部のうち、拘束リング20により支持されていない環状の部分が下方に向けて折り曲げられる。同時に、中間部品Wの下面においては、下穴h2の周囲壁部のうち、拘束リング20により支持されていない環状の部分が上方に向けて折り曲げられる。このようにして行われたバーリング加工により、
図7に示すバーリング縦壁p1,p2が形成される。
バーリング縦壁p1,p2は、互いに同じ軸線を共有する環状の壁である。バーリング縦壁p1は、環状の外周面p1aと環状の内周面p1bとを有する。同様に、バーリング縦壁p2も、環状の外周面p2aと環状の内周面p2bとを有する。外周面p1aと外周面p2aは、互いに同じ外径と同じ高さを有する。内周面p1bと内周面p2bも、互いに同じ外径と同じ高さを有する。よって、バーリング縦壁p1,p2は、互いに同じ形状寸法を有する。
【0052】
バーリング加工によって
図7の状態にあるバーリング縦壁p1,p2では、それらの外周面p1a,p2aが拘束リング20の内周面21対して塑性締結されている。すなわち、第2壁部w1の第1下穴h1の周囲部分は、その上側にあるバーリングパンチ31の打ち込みを受けて下方に向かって直角に折れ曲がると共に、拘束リング20の内周面21に対して強く押し付けられる。その結果、相対的な機械強度が高い拘束リング20の内周面に対して、相対的に機械強度が低い縦壁p1の外周面p1aが強く押し付けられて塑性変形するので、両者間が強固に一体化される。加えて、
図2に示したように、拘束リング20の内周面21には、複数本の突条部21a及び複数本の溝部21bによる凹凸が軸線方向に形成されているので、この凹凸に合致するようにバーリング縦壁p1,p2の外周面p1a,p2aが塑性変形する。よって、バーリング縦壁p1,p2の外周面p1aにおける凹凸と、拘束リング20の内周面21における凹凸とが互いに係止した状態で強固に一体化する。
【0053】
以上説明のステップS4において、拘束リング20は、当初、バーリング加工のための金型として機能するが、塑性締結後は、バーリング加工部品の一部として機能する。したがって、拘束リング20の材質(強度)、半径方向の幅寸法、軸線方向の高さ寸法を必要に応じて適宜設定することで、用途に応じた強度を持つバーリング加工穴をバーリング加工部品に付与することができる。すなわち、本実施形態のバーリング加工部品は、元々の素材を加工して形成される縦壁p1,p2に対し、別部品である拘束リング20を塑性締結で一体化させて補強するものであるので、拘束リング20の構成を調整するだけで、バリエーションに富んだバーリング加工穴を形成することが可能になる。
拘束リング20による補強が得られるので、バーリング縦壁p1,p2の板厚を薄くしたり、高さ寸法を低くしたり、あるいはその両方を実現することも来出る。例えば、中間部品Wの材質として高強度で加工性が低いものを採用する必要がある場合には、加工性の低下に伴ってバーリング縦壁p1,p2の高さが低めになるが、その分、拘束リング20により補強することが可能になる。
【0054】
続くステップS5では、各バーリングパンチ31,32を互いに離間させる方向に引き抜く。すなわち、バーリングパンチ31においてはこれを+Z方向に移動させ、バーリングパンチ32においてはこれを-Z方向に移動させる。以上により、各バーリングパンチ31,32を中間部品Wの外部に移動させる。
さらに続くステップS6では、前記制御部からの指示を受けた前記中子駆動機構の駆動により、中間部品Wの開口から中子10のみが引き抜かれる。すなわち、差し込み時には中子10及び拘束リング20を一緒にして中間部品W内に入れるが、引き抜き時には拘束リング20を中間部品W内に残したまま中子10のみを-X方向に出す。これにより、
図8に示す状態となる。
【0055】
続くステップS7では、前記金型を型開きし、中間部品Wをバーリング加工して得たバーリング加工部品Pを取り出す。以上により、バーリング加工方法の全工程が終了する。
出来上がったバーリング加工部品Pは、
図9に示すように、正面から見て閉断面の一部をなす第1壁部w1及び第2壁部w2と、第1壁部w1及び第2壁部w2の両方に形成されたバーリング加工穴を有するバーリング縦壁p1,p2と、バーリング縦壁p1,p2の外周囲に同軸配置され、バーリング縦壁p1,p2が塑性締結された一対の拘束リング20とを備えている。
【0056】
上記実施形態は一例であり、例えば、
図10あるいは
図11に示す変形例も採用可能である。
図10は、上記実施形態の第1変形例を示す図であって、
図7に対応する縦断面図である。上記実施形態では、中間部品Wの上下にバーリングパンチ31,32を同軸配置し、その上で中間部品Wの内部に向けて起立するバーリング縦壁p1,p2を形成した。これに対し、本第1変形例では、中間部品Wの上方のみに1本のバーリングパンチ33を配置し、その上で下方に向かって起立するバーリング縦壁p1,p2を形成するものとした。すなわち、バーリング縦壁p1は上記実施形態と同一構成を有するが、バーリング縦壁p2は上記実施形態とは逆の下方向に向かって形成されている。本第1変形例のバーリング縦壁p2は、その上下向きが逆であること以外は上記実施形態と同じであり、よって、内径寸法も外形寸法も高さ寸法も上記実施形態と同じである。
【0057】
本第1変形例のバーリング加工装置では、そのバーリングパンチ33が、上記バーリングパンチ31と同じ外径を有するものの、射出ストロークが上記バーリングパンチ31よりも長くなっている。また、前記金型の一部として、符号40に示す台座を有している。
この台座40には、パンチ33が挿通する上下方向の貫通孔41と、貫通孔41の上部に同軸に形成された環状の凹部42と、中間部品Wの下面が載置される載置面43とが形成されている。凹部42は、平面視で拘束リング20の外形寸法よりも少し大きめの内径寸法と、拘束リング20の厚みと同じ高さ寸法とを有している。
また、中子10においては、その上面のみに凹部11が形成され、下面は凹部11を備えずに水平面に沿って平行な底面となっている。
【0058】
本第1変形例のバーリング加工方法では、
図5で説明したステップS2の際に、上記実施形態では中子10の下方に配置していた拘束リング20を、台座40の凹部42内に同軸配置する。そして、ステップS4のバーリング加工の際には、1本のバーリングパンチ33を-Z方向である下方に向けて打ち込む。すると、中間部品Wの第1壁部w1においては、下穴h1の周囲壁部のうち、拘束リング20により支持されていない環状の部分が下方に向けて折り曲げられる。続いて、中間部品Wの第2壁部w2においても、下穴h2の周囲壁部のうち、拘束リング20により支持されていない環状の部分が下方に向けて折り曲げられる。
このようにして行われたバーリング加工により、
図10に示すように互いに同一方向に突出したバーリング縦壁p1,p2が形成される。これらバーリング縦壁p1,p2の両方とも、その外周囲に位置する拘束リング20の内周面21に対して塑性締結され、強固に固定される。なお、
図5におけるその他工程は、上記実施形態で説明した内容と同様であり、ここではその重複説明を省略する。
【0059】
図11は、上記実施形態の第2変形例を示す図であって、
図7に対応する縦断面図である。上記実施形態では、一対のバーリング加工穴の内径を互いに同じとした。これに対し、本第2変形例では、上方のバーリング加工穴よりも下方のバーリング加工穴の内径を小さめにした構成としている。
【0060】
本第2変形例のバーリング加工装置では、上方にあるバーリングパンチ31に変更はなく、下方にバーリングパンチ34の外径寸法をバーリングパンチ31の外径寸法よりも小さめにしている。また、中子10についても、その上面にある凹部11は上記実施形態からの変更はないが、下面にある凹部12は、凹部11と相似形でかつ凹部11よりも小さい形状寸法を有する。そして、中子10の凹部11内に配置される拘束リング20は上記実施形態から変更はないが、凹部12内に配置される拘束リング25は、拘束リング20よりも小さい内径と、小さい外径と、小さい厚みとを有する。ただし、拘束リング25は、拘束リング20と同軸に配置される。
【0061】
本第2変形例のバーリング加工方法は、
図5で説明したステップS1~S7と同一の工程が行われる。バーリング加工後のバーリング加工穴は、その形成方向が共に中間部品Wの内方に向かう内向きであるが、内径寸法が上下で互いに異なっている。
【0062】
上記第1変形例及び第2変形例以外にも、必要に応じて、工程や構成を適宜変更してもよい。上記実施形態及び変形例では、バーリング加工後に前記金型から取り出したものをバーリング加工品Pとしたが、このバーリング加工品Pを製品として用いても良いし、または、さらなる加工を施した上で製品としてもよい。このような製品としては、例えば自動車のアーム(リンク)がある。また、バーリング加工穴の形状を円形としたが、円形のみに限らず、正方形や長方形等の矩形、または多角形、あるいは楕円形等、他の形状としてもよい。
【0063】
以上説明の実施形態及び各変形例の骨子を以下の態様として纏める。
(1)すなわち、本態様のバーリング加工方法は、例えば
図7に示したように、互いに対向する第1壁部w1及び第2壁部w2を閉断面の一部として含む中間部品Wに対し、第1壁部w1に形成された第1下穴h1、及び、第2壁部w2に形成されて第1下穴h1と同軸をなす第2下穴h2の両方に対してバーリング加工穴を形成する方法である。なお、第1下穴h1のみにバーリング加工を行うようにしてもよい。
そして、本態様のバーリング加工方法は、挿抜方向であるX方向の端部において開口した凹部11が形成された中子10の凹部11内に拘束リング20を配置する工程と、中子10を、凹部11内の拘束リング20と共に中間部品Wの閉断面内まで挿入し、拘束リング20と、第1下穴h1または第2下穴h2とが同軸になる位置に位置決めする工程と、第1下穴h1及び第2下穴h2の両方に、バーリングパンチ31,32を打ち込むことで、第1壁部w1及び第2壁部w2の両方を、拘束リング20で支持しながらバーリング縦壁p1,p2を形成すると同時にバーリング縦壁p1,p2の外周面p1aを拘束リング20の内周面21に塑性締結させる工程と、塑性締結後の拘束リング20を閉断面内に残したまま、中子10を中間部品Wから引き抜いてバーリング加工部品Pを得る工程と、を有する。
【0064】
(2)上記(1)に記載のバーリング加工方法において、
図2に示したように、塑性締結させる工程で、拘束リング20の内周面21に対してバーリング縦壁p1,p2が係止するように塑性締結させてもよい。
(3)上記(1)または(2)に記載のバーリング加工方法において、
図7に示したように、拘束リング20を配置する工程で、一対の拘束リング20を互いに同軸に配置し、位置決めする工程で、一対の拘束リング20の一方を第1下穴h1と同軸に位置決めすると共に一対の拘束リング20の他方を第2下穴h2と同軸でかつ前記一方の拘束リング20から離間した位置に位置決めし、塑性締結させる工程で、一対の拘束リング20が互いに離間したまま塑性締結を行うようにしてもよい。
(4)上記(1)~(3)の何れか1項に記載のバーリング加工方法において、
図1に示したように、拘束リング20を配置する工程で、拘束リング20を磁力により中子10に仮固定してもよい。
【0065】
(5)また、本態様のバーリング加工装置は、例えば
図7に示したように、互いに対向する第1壁部w1及び第2壁部w2を閉断面の一部として含む中間部品Wに対し、第1壁部w1に形成された第1下穴h1、及び、第2壁部w2に形成されて第1下穴h1と同軸をなす第2下穴h2の両方に対してバーリング加工穴を形成する方法である。なお、第1下穴h1のみにバーリング加工を行うようにしてもよい。
そして、本態様のバーリング加工装置は、
図1に示したように、中間部品Wの閉断面に対する挿抜方向であるX方向に沿って進退自在に配置され、前記挿抜方向の端部が開口してかつ拘束リング20を配置する底面11dが形成された凹部11を有する中子10と、中子10及び中間部品W間を前記挿抜方向に沿って接近離間させる前記中子駆動機構(駆動機構)と、凹部11に対し、前記挿抜方向と直交する方向に沿って進退するバーリングパンチ31,32と、を備える。
【0066】
(6)上記(5)に記載のバーリング加工装置において、
図1に示したように、凹部11が、前記開口に通じてかつ前記挿抜方向に沿って長い溝部21bと、溝部21bを間に挟んで前記開口と対向する内壁面11cとを有してもよい。
(7)上記(5)または(6)に記載のバーリング加工装置において、凹部11が、中子10の表裏面の両方に形成されていてもよい。
(8)上記(5)~(7)の何れか1項に記載のバーリング加工装置において、中子10が、磁力を有してもよい。
【0067】
(9)また、本態様のバーリング加工部品Pは、
図9に示したように、閉断面の一部をなす第1壁部w1及び第2壁部w2と、第1壁部w1及び第2壁部w2の両方に形成されたバーリング加工穴を有するバーリング縦壁p1,p2と、バーリング縦壁p1,p2の外周囲に同軸配置され、バーリング縦壁p1,p2が塑性締結された拘束リング20とを備える。なお、バーリング縦壁p1のみを有してもよい。
(10)上記(9)に記載のバーリング加工部品Pにおいて、
図2に示したように、バーリング加工穴の軸線を含む断面で見たときに、バーリング縦壁p1,p2の外周面p1a,p2aと拘束リング20の内周面21との間に、係止部が形成されていてもよい。
(11)上記(9)または(10)に記載のバーリング加工部品において、拘束リング20が磁力を有してもよい。
【符号の説明】
【0068】
10 中子
11 凹部
11a 開口
11b 溝
11c 内壁面
11d 底面
20 拘束リング
21 内周面
21a 突条部(係止部)
21b 溝部(係止部)
31,32 バーリングパンチ
100 バーリング加工装置
h1 第1下穴
h2 第2下穴
H1,H2 バーリング加工穴
P バーリング加工部品
p1 バーリング縦壁
p1a バーリング縦壁の外周面
W 中間部品
w1 第1壁部
w2 第2壁部
X 挿抜方向