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  • 特開-動力切断機 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161701
(43)【公開日】2024-11-20
(54)【発明の名称】動力切断機
(51)【国際特許分類】
   B23D 59/00 20060101AFI20241113BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20241113BHJP
   B23D 47/00 20060101ALI20241113BHJP
   B23Q 5/54 20060101ALI20241113BHJP
   B28D 1/04 20060101ALI20241113BHJP
   B27B 9/00 20060101ALI20241113BHJP
   B27G 19/04 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
B23D59/00
B23Q11/00 D
B23D47/00 C
B23Q5/54 A
B28D1/04 Z
B27B9/00 F
B27G19/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076623
(22)【出願日】2023-05-08
(71)【出願人】
【識別番号】509264132
【氏名又は名称】株式会社やまびこ
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅谷 和弘
(72)【発明者】
【氏名】宮本 帝史
【テーマコード(参考)】
3C011
3C040
3C069
【Fターム(参考)】
3C011AA15
3C040GG41
3C069AA01
3C069BA04
3C069BC02
3C069BC04
3C069CA07
3C069DA01
(57)【要約】
【課題】動力切断機のキックバックに対して、有効な抑制対策を講じる。
【解決手段】動力切断機は、原動機を備える本体と、本体に基端側が接続され、原動機の駆動力を伝達するベルト伝動機構を備えたアームと、アームの先端側に接続され、ベルト伝動機構を介して伝達された動力で回転駆動される切断刃を備える作業部とを備え、作業部は、切断刃に加わる過負荷に対して作動し、切断刃に制動を加えるブレーキ機構を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機を備える本体と、前記本体に基端側が接続され、前記原動機の駆動力を伝達するベルト伝動機構を備えたアームと、前記アームの先端側に接続され、前記ベルト伝動機構を介して伝達された動力で回転駆動される切断刃を具備する作業部とを備える動力切断機であって、
前記作業部は、前記切断刃に加わる過負荷に対して作動し、前記切断刃に制動を加えるブレーキ機構を備えることを特徴とする動力切断機。
【請求項2】
前記本体は、手持ちで作業を行うためのハンドル部を備えることを特徴とする請求項1記載の動力切断機。
【請求項3】
前記ブレーキ機構は、前記作業部の跳ね上がりを検出する検出機構と前記検出機構の検出によって作動して、前記ベルト伝動機構の従動プーリーに巻きまわされた締め付け帯を締め付ける締め付け機構とを有することを特徴とする請求項1記載の動力切断機。
【請求項4】
前記ブレーキ機構は、前記切断刃の回転軸と前記ベルト伝動機構における従動プーリーの伝動軸との間に設けられるトルクリミッタによって構成されることを特徴とする請求項1記載の動力切断機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力切断機に関する。
【背景技術】
【0002】
動力切断機は、エンジンや電動モータなどの原動機の動力を切断刃(ブレード)に伝達し、切断刃を駆動させて切断対象物を切断する作業機である。コンクリートやアスファルトなどを切断するコンクリートカッタや、木材や樹木を切断するチェーンソーなどは、動力切断機の対象例である。
【0003】
従来の動力切断機は、エンジンなどの原動機を備える本体部と、原動機の動力を先端側に伝えるベルト伝動機構などを備えるアーム部と、アーム部の先端側で伝達された動力により駆動する切断刃を備える作業部を有する。また、手持ち式の動力切断機は、一般に前述した本体部の手元側にリアハンドルが設けられ、本体部の先端側にフロントハンドルが設けられる。
【0004】
動力切断機は、コンクリートカッタのように、固い切断対象に対して慣性力が大きい切断刃を用いるものがある。このような動力切断機には、原動機の停止後速やかに切断刃の回転を停止するために、前述した本体側に、ブレーキ制御手段を設けたものが知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-251348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
先述した動力切断機は、切断作業中に、切断刃が切断痕に挟まれるなどして、切断刃に対して急に大きな負荷が加わった場合に、負荷の反力が切断刃に作用して、動力切断機の先端側に装備された切断刃が切断対象から弾き返されてしまう現象(所謂、キックバック)が生じることがある。このキックバックは、特に、手持ち式の動力切断機では、ハンドルを持った作業者に向かって切断刃が迫ってくる現象になるため、安全な作業を行う上では、キックバックを抑制するための対策が必要になる。
【0007】
しかしながら、前述した従来技術は、エンジンの駆動軸に直結した遠心クラッチのクラッチドラムにブレーキ機構を設けるものであり、クラッチドラムを必要としない電動製品や、クラッチドラムを備えたものであってもその配置によっては、適用することができない。また、その作動タイミングについて、スロットルレバーの非操作を検出するなどして、エンジンの停止後の切断刃の回転を停止させるものであるため、切断作業中(原動機の動作中)に突然生じるキックバックに対しては、有効な抑制策になり得ない問題があった。
【0008】
本発明は、このような問題に対処するために提案されたものである。すなわち、動力切断機における原動機の種類を問わず適用可能であり、キックバックに対する有効な抑制策を講じることなどが、本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために、本発明は、以下の構成を具備するものである。
原動機を備える本体と、前記本体に基端側が接続され、前記原動機の駆動力を伝達するベルト伝動機構を備えたアームと、前記アームの先端側に接続され、前記ベルト伝動機構を介して伝達された動力で回転駆動される切断刃を具備する作業部とを備える動力切断機であって、前記作業部は、前記切断刃に加わる過負荷に対して作動し、前記切断刃を制動するブレーキ機構を備えることを特徴とする動力切断機。
【発明の効果】
【0010】
このような特徴を有する本発明によると、原動機が駆動中であっても、切断刃に制動を加えることができるので、切断作業中に起こるキックバックに対して、効果的な抑制が可能になる。また、キックバックによって跳ね上がる作業部にブレーキ機構を設けることで、作業部の跳ね上がりを検知してブレーキ機構を作動させることができるため、有効なキックバック対策が可能になる。また、このブレーキ機構は、作業部側に設けられるので、本体の原動機の種類に関係なく適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る動力切断機を示した説明図。
図2】ブレーキ機構の説明図(ブレーキ非作動状態)。
図3】ブレーキ機構の説明図(ブレーキ作動状態)。
図4】ブレーキ機構の変形例を示す説明図(断面図)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0013】
動力切断機1は、本体2とアーム3と作業部4を備える。本体2は、エンジンや電動モータなどの原動機10を備えている。アーム3は、基端側が本体2に、先端側が作業部4に接続され、原動機10の駆動力を伝達するベルト伝動機構20を備えている。作業部4は、アーム3の先端側に接続され、ベルト伝動機構20を介して伝達された動力で回転駆動される切断刃5を備えている。
【0014】
本体2に装備された原動機10の出力軸は、周知のクラッチ機構を介して、ベルト伝動機構20における駆動プーリー21に接続されている。ベルト伝動機構20は、前述した駆動プーリー21と、アーム3の先端側に設けられる従動プーリー22と、これらに掛けまわされる無端ベルト23によって構成されている。従動プーリー22には、切断刃5の被駆動軸5Aが接続されており、原動機10の動力が、ベルト伝動機構20を介して切断刃5に伝達される。
【0015】
本体2は、ハンドル部として、リアハンドル11とフロントハンドル12を備える。リアハンドル11は、本体2の手元側に設けられ、その内側に原動機10の作動レバー13が装備されている。作動レバー13は、原動機10がエンジンの場合は、スロットルレバーである。フロントハンドル12は、本体の先端側に設けられ、アーム3の長手方向に交差する方向に沿って架け渡されている。作業部4は、保護枠14を備えている。保護枠14は、切断刃5の略半周部分を覆いながら、アーム3の先端側に固定されている。このような動力切断機1は、機体の先端側である作業部4に、ブレーキ機構30が設けられている。
【0016】
図2及び図3に示すように、ブレーキ機構30は、作業部4の跳ね上がりを検出する検出機構31と、検出機構31の検出によって作動して、従動プーリー22に巻きまわされた締め付け帯32Aを締め付ける締め付け機構32とを有する。
【0017】
検出機構31は、質量部31Aを回転軸31B周りに軸支する揺動レバー31Cを備える。検出機構31は、図2に示す初期状態で、作業部4が跳ね上がると慣性力Fが質量部31Aに作用して、回転軸31Bに軸支された揺動レバー31Cが矢印R方向に揺動する。
【0018】
これに対して、締め付け機構32は、揺動レバー31Aの揺動に伴って、屈折して、締め付け帯32Aの一端側を引っ張る屈折部材32Bを備える。屈折部材32Bは、図2に示す揺動レバー31Cの初期位置では直線状になっていて、その一端がバネ32Cによって支持されている。そして、図3に示すように、揺動レバー31Cが揺動すると、他端が回転軸32Dに軸支された屈折部材32Bが屈折する。屈折部材32Bのリンクが屈折することによって、強固な圧縮バネであるバネ32Cに圧縮されたバネ力が解放されて瞬時に締め付け帯32Aが締まる。
【0019】
締め付け機構32の締め付け帯32Aは、一端が前述した屈折部材32Bに接続され、他端が作業部4の筐体で固定軸32Eに固定されている。これにより、屈折部材32Bが屈折することで締め付け帯32Aが締まると、締め付け帯32Aは、従動プーリー22の周囲を締め付けることになり、従動プーリー22に対して制動力を加える。
【0020】
このような動力切断機1によると、切断作業中に、キックバックにより作業部4の跳ね上がりが生じると、これを検出してブレーキ機構30が作動し、従動プーリー22に制動力が加わるので、原動機10の作動が停止しなくても、従動プーリー22に接続される切断刃5の回転を停止または減速することができる。これによると、動力切断機1の機体の先端側に設けられる作業部4にブレーキ機構30を設けていることで、キックバックによって跳ね上がる作業部4の動きを直接検出して、ブレーキ機構30を動作させることができ、より効果的なキックバック対策が可能になる。
【0021】
また、本発明の実施形態に係る動力切断機1は、先端部側に直接的にブレーキ機構30を備える構造である。この構造は、本体2側にクラッチドラムを備えない電動式であっても採用することができ、また、エンジン式であって、配置上クラッチドラム周囲にブレーキ機構を備えることができないものであっても、適用することができる。さらに、従来技術では、先端部と基端部との間にベルトが掛け回されているために、ベルトのスリップによる刃物停止の遅延が免れないのに対し、本発明の構造では、作業部4側に直接ブレーキ機構30が備えられてベルト等の駆動伝達機構を介さないため、中間部品による作動遅延も回避できる。
【0022】
動力切断機1のブレーキ機構30としては、前述した検出機構31と締め付け機構32を備えるものに限らない。他の例としては、図4に示すように、ブレーキ機構30は、切断刃5の回転軸5Aと従動プーリー22の伝動軸22Aとの間に設けられるトルクリミッタ33によって構成してもよい。トルクリミッタ33は、従動プーリー22側が軸受22Bに軸支された伝動軸22Aに接続され、切断刃5側が軸受5Bに軸支された回転軸5Aに接続されている。
【0023】
この場合、切断刃5が切断痕に挟まるなどして、切断刃5に過負荷が加わると、トルクリミッタ33が機能して切断刃5に伝達される動力が遮断される。これによると、キックバックが生じる前の切断刃5に対する過負荷の上昇でトルクリミッタ33が機能して切断刃5への動力が遮断されるので、キックバックを未然に抑止することができる。
【0024】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0025】
1:動力切断機,2:本体,3:アーム,4:作業部,
5:切断刃,5A:回転軸,5B:軸受,
10:原動機,11:リアハンドル,12:フロントハンドル,
13:作動レバー,14:保護枠,
20:ベルト伝動機構,
21:駆動プーリー,22:従動プーリー,22A:伝動軸,22B:軸受,
23:無端ベルト,30:ブレーキ機構,
31:検出機構,31A:質量部,31B:回転軸,31C:揺動レバー,
32:締め付け機構,32A:絞め付け帯,32B:屈折部材,
32C:バネ,32D:回転軸,32E:固定軸,33:トルクリミッタ
図1
図2
図3
図4