(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161705
(43)【公開日】2024-11-20
(54)【発明の名称】バーリング加工装置及びバーリング加工方法
(51)【国際特許分類】
B21D 19/08 20060101AFI20241113BHJP
【FI】
B21D19/08 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076629
(22)【出願日】2023-05-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】山形 光晴
(57)【要約】
【課題】幅寸法が狭く閉断面形状を有する被加工材であっても、必要十分な加工精度を維持しながら生産性が高いバーリング加工を行えるバーリング加工方法及びバーリング加工装置の提供を目的とする。
【解決手段】このバーリング加工装置を用いたバーリング加工方法は、バーリング加工穴を区画するバーリング縦壁の周方向半分に対応する形状を有する第1凹部25aと、第1凹部25aに連なり挿抜方向に沿って開口した第2凹部25bとを有してかつ、第1凹部25a及び第2凹部25bを含む凹部25の挿抜方向に沿った寸法が挿抜方向に沿ったバーリング縦壁の寸法よりも長い中子10を、挿抜方向に沿って中間部品Wの閉断面内に挿入して位置決めする工程と、バーリングパンチを打ち込むことでバーリング縦壁を形成する工程と、バーリング縦壁が第2凹部25b内を通過するように中子10を中間部品Wから引き抜いてバーリング加工部品を得る工程と、を有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1壁部及び第2壁部を、閉断面を区画する壁部の一部として含む中間部品に対し、前記第1壁部に形成された第1下穴、及び、前記第2壁部に形成されて前記第1下穴と同軸をなす第2下穴のうち、前記第1下穴のみ、又は、前記第1下穴及び前記第2下穴の両方、に対してバーリング加工穴を形成する方法であって、
前記バーリング加工穴を区画するバーリング縦壁の周方向半分に対応する形状を有する第1凹部と、前記第1凹部に連なり挿抜方向に沿って開口した第2凹部とを有してかつ、前記第1凹部及び前記第2凹部を含む凹部の前記挿抜方向に沿った寸法が前記挿抜方向に沿った前記バーリング縦壁の寸法よりも長い中子を、前記挿抜方向に沿って前記中間部品の前記閉断面内に挿入し、前記第1凹部と、前記第1下穴または前記第2下穴とが同軸になる位置に位置決めする工程と、
前記第1下穴のみ、又は前記第1下穴及び前記第2下穴の両方に、バーリングパンチを打ち込むことで、前記第1壁部のみ、又は、前記第1壁部及び前記第2壁部の両方を、前記中子で支持しながら前記バーリング縦壁を形成する工程と、
前記バーリング縦壁が前記第2凹部内を通過するように前記中子を前記中間部品から引き抜いてバーリング加工部品を得る工程と、
を有することを特徴とするバーリング加工方法。
【請求項2】
前記バーリング縦壁を形成する工程の前に、前記中子のうち、前記第2凹部を区画する部位の少なくとも一部に外力を加えて屈曲させてから固定することで、前記第1下穴の外周囲部分のみ、又は、前記第1下穴及び前記第2下穴の両方の外周囲部分、における支持範囲を拡張する工程と、
前記バーリング縦壁を形成する工程の後でかつ前記バーリング加工部品を得る工程の前に、前記中子の前記固定を解く工程と、
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載のバーリング加工方法。
【請求項3】
前記支持範囲を拡張する工程で、前記中子のうち、前記第2凹部を間に挟む一対の部位の両方に前記外力を加えることで互いに接近させるように屈曲させてから固定し、
前記固定を解く工程で、前記一対の部位の両方に対する前記固定を解除する
ことを特徴とする請求項2に記載のバーリング加工方法。
【請求項4】
互いに対向する第1壁部及び第2壁部を、閉断面を区画する壁部の一部として含む中間部品に対し、前記第1壁部に形成された第1下穴、及び、前記第2壁部に形成されて前記第1下穴と同軸をなす第2下穴のうち、前記第1下穴のみ、又は、前記第1下穴及び前記第2下穴の両方、に対してバーリング加工穴を形成する装置であって、
前記中間部品の前記閉断面に対する挿抜方向に沿って進退自在に配置され、前記バーリング加工穴を区画するバーリング縦壁の周方向半分に対応する形状を有する第1凹部と、前記第1凹部に連なり前記挿抜方向に沿って開口した第2凹部と、前記閉断面に挿入した際に前記第1凹部が所定位置を超えるのを規制する位置決め部とを有してかつ、前記第1凹部及び前記第2凹部を含む凹部の前記挿抜方向に沿った寸法が前記挿抜方向に沿った前記バーリング縦壁の寸法よりも長い中子と、
前記中子及び前記中間部品間を前記挿抜方向に沿って接近離間させる駆動機構と、
前記凹部に対し、前記挿抜方向と直交する方向に沿って進退するバーリングパンチと、
を備えることを特徴とするバーリング加工装置。
【請求項5】
前記中子が、
前記第1凹部を区画する第1支持部と、
前記第2凹部を区画し、前記第1凹部に対して接近離間する方向に屈曲自在である第2支持部と、
を有することを特徴とする請求項4に記載のバーリング加工装置。
【請求項6】
前記中子が、
前記第1支持部、前記第2支持部、及び前記位置決め部、を有する中子固定部と、
前記中子固定部と共に前記閉断面に挿入され、前記中子固定部が前記所定位置に位置決めされた後も前記閉断面内に進入して前記第2支持部に外力を加えて前記第1凹部に接近させてから固定する中子主軸部と、
を有することを特徴とする請求項5に記載のバーリング加工装置。
【請求項7】
前記第1支持部及び前記第2支持部が、前記中子固定部の表裏面の両方に設けられている
ことを特徴とする請求項6に記載のバーリング加工装置。
【請求項8】
前記第2支持部が一対、前記第2凹部を間に挟んで互いに接近離間自在に配置されている
ことを特徴とする請求項5~7の何れか1項に記載のバーリング加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーリング加工装置及びバーリング加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、複数の対象物を連結する構造部品として、その端部や中間位置に結合部が形成されたリンク構造部品が実用化されている。これらリンク構造部品は、例えば、建築構造用や自動車のサスペンション用など、種々の用途に用いられている。
例えば、自動車のサスペンション装置においては、ロアリンク、アッパーリンク、ラテラルリンク等のサスペンションリンクが用いられている。これらリンク構造部品は、他の構造部品との結合のためにバーリング加工穴を有するものがある。このバーリング加工穴によれば、単純な打ち抜き穴の場合と比べて、例えばブッシュ等の他の構造部品を保持する保持面積を大きく確保することができる。
【0003】
この種のバーリング加工方法の一例が、下記特許文献1に開示されている。
すなわち、特許文献1には、互いに対向する第1壁部及び第2壁部のそれぞれに対し、第1軸線を中心軸線として共有するバーリング加工孔を形成するバーリング加工方法であって、前記第1壁部と前記第2壁部との間にバーリング加工装置の内部ユニットを配置し、前記第1壁部の外側に前記バーリング加工装置の第1外部ユニットを配置し、且つ前記第2壁部の外側に前記バーリング加工装置の第2外部ユニットを配置する第1工程と;前記内部ユニット、前記第1外部ユニット、及び前記第2外部ユニット、のうちの少なくとも1つに設けられた、前記第1軸線を中心軸線として共有する軸部材であって且つ前記第1軸線に沿って移動自在に設けられたピアスパンチ及びバーリングパンチのうち、まず前記ピアスパンチを用いて、前記第1壁部及び第2壁部のそれぞれに対し、前記第1軸線を中心軸線として共有する下孔を形成した後、前記第1壁部及び前記第2壁部のそれぞれに対し、前記バーリングパンチを用いて、前記第1軸線を中心軸線として共有するバーリング加工孔を形成する第2工程と;前記第1壁部及び前記第2壁部から、前記内部ユニット、前記第1外部ユニット、及び前記第2外部ユニットを取り外す第3工程と;を有するバーリング加工方法が開示されている。
このバーリング加工方法によれば、互いに対向する第1壁部及び第2壁部のそれぞれに、中心軸線と同じ軸線を共有するバーリング孔を精度よくかつ効率的に形成することができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載のバーリング加工方法では、予備成形、スリット成形、プレス成形、下穴形成、バーリング加工の順序で加工を実施している。ここで、バーリング加工の前に、端部の拡大及びスリット形成を行っているので、バーリング加工穴の加工対象である一対の壁面間に、ある程度の幅寸法が事前に確保されている。また、スリット形成によって開断面形状が事前に得られている。
このように幅寸法が広くしかも開断面を有する被加工材が加工対象である場合は、加工の自由度が高いため、バーリング加工を比較的行いやすい。一方、昨今ではより多種多様な形状の被加工材への加工が求められていることもあり、例えば幅寸法が狭くて閉断面形状を有する被加工材であったとしても、効率良くかつ精度良くバーリング加工を行えることが必要とされる。しかしながら、リンク部が薄くて閉断面形状を有するバーリング加工部品を、必要とされる加工精度を維持しながらも生産性を高くすることは、決して容易ではない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、幅寸法が狭く閉断面形状を有する被加工材であっても、必要十分な加工精度を維持しながら生産性が高いバーリング加工を行えるバーリング加工方法及びバーリング加工装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明は以下の態様を採用した。
(1)本発明の一態様に係るバーリング加工方法は、
互いに対向する第1壁部及び第2壁部を、閉断面を区画する壁部の一部として含む中間部品に対し、前記第1壁部に形成された第1下穴、及び、前記第2壁部に形成されて前記第1下穴と同軸をなす第2下穴のうち、前記第1下穴のみ、又は、前記第1下穴及び前記第2下穴の両方、に対してバーリング加工穴を形成する方法であって、
前記バーリング加工穴を区画するバーリング縦壁の周方向半分に対応する形状を有する第1凹部と、前記第1凹部に連なり挿抜方向に沿って開口した第2凹部とを有してかつ、前記第1凹部及び前記第2凹部を含む凹部の前記挿抜方向に沿った寸法が前記挿抜方向に沿った前記バーリング縦壁の寸法よりも長い中子を、前記挿抜方向に沿って前記中間部品の前記閉断面内に挿入し、前記第1凹部と、前記第1下穴または前記第2下穴とが同軸になる位置に位置決めする工程と、
前記第1下穴のみ、又は前記第1下穴及び前記第2下穴の両方に、バーリングパンチを打ち込むことで、前記第1壁部のみ、又は、前記第1壁部及び前記第2壁部の両方を、前記中子で支持しながら前記バーリング縦壁を形成する工程と、
前記バーリング縦壁が前記第2凹部内を通過するように前記中子を前記中間部品から引き抜いてバーリング加工部品を得る工程と、
を有する。
【0008】
上記(1)に記載のバーリング加工方法によれば、中子を挿入して位置決めする工程と、バーリング縦壁を形成する工程と、中子を引き抜いてバーリング加工部品を得る工程とを行うことによってバーリング加工を実施できる。このように少ない工程数でバーリング加工を行えるので、生産性が高い。しかも、一方向に沿った中子の動作のみで、中子の位置決めと抜出とを行えるので、第1壁部及び第2壁部間の幅寸法が狭くて閉断面形状を有する中間部品が被加工材であっても、容易にバーリング加工を実施できる。加えて、中子の凹部の挿抜方向に沿った寸法を、同挿抜方向におけるバーリング縦壁の寸法よりも長くしているので、バーリング縦壁の形成に際し、中間部品をその内側から支持する範囲を十分に確保できる。よって、形成するバーリング縦壁に対し、必要十分な加工精度を与えることができる。
【0009】
(2)上記(1)に記載に記載のバーリング加工方法において、
前記バーリング縦壁を形成する工程の前に、前記中子のうち、前記第2凹部を区画する部位の少なくとも一部に外力を加えて屈曲させてから固定することで、前記第1下穴の外周囲部分のみ、又は、前記第1下穴及び前記第2下穴の両方の外周囲部分、における支持範囲を拡張する工程と、
前記バーリング縦壁を形成する工程の後でかつ前記バーリング加工部品を得る工程の前に、前記中子の前記固定を解く工程と、
をさらに有してもよい。
上記(2)に記載の場合、第2凹部を区画する部位の少なくとも一部に外力を加えて屈曲させ、そしてその位置を固定する。これにより、形成するバーリング縦壁の周方向における支持範囲が拡張されるので、バーリング加工穴の加工精度をより高めることができる。また、屈曲した部位の固定を解いてから中子を抜出するので、中子の屈曲させた部位がバーリング縦壁に当たっても自然に元の位置に復元する。よって、バーリング縦壁との干渉によって中子が抜けなくなることがないので、生産性を損なうこともない。
【0010】
(3)上記(2)に記載に記載のバーリング加工方法において、
前記支持範囲を拡張する工程で、前記中子のうち、前記第2凹部を間に挟む一対の部位の両方に前記外力を加えることで互いに接近させるように屈曲させてから固定し、
前記固定を解く工程で、前記一対の部位の両方に対する前記固定を解除してもよい。
上記(3)に記載の場合、中子のうちで屈曲させる部位を、一箇所のみとする場合に比べて、一対に分割した分、小さくできる。また、屈曲動作も小さくできる。よって、幅寸法が狭く閉断面形状を有する被加工材に対し、より適した加工方法とすることができる。加えて、屈曲させる部位を一対に分割した分、バーリング縦壁の周方向に沿ってより均等に中間部品をその内側から支持できるので、形成されるバーリング縦壁の加工精度もより高いものとなる。
【0011】
(4)本発明の一態様に係るバーリング加工装置は、
互いに対向する第1壁部及び第2壁部を、閉断面を区画する壁部の一部として含む中間部品に対し、前記第1壁部に形成された第1下穴、及び、前記第2壁部に形成されて前記第1下穴と同軸をなす第2下穴のうち、前記第1下穴のみ、又は、前記第1下穴及び前記第2下穴の両方、に対してバーリング加工穴を形成する装置であって、
前記中間部品の前記閉断面に対する挿抜方向に沿って進退自在に配置され、前記バーリング加工穴を区画するバーリング縦壁の周方向半分に対応する形状を有する第1凹部と、前記第1凹部に連なり前記挿抜方向に沿って開口した第2凹部と、前記閉断面に挿入した際に前記第1凹部が所定位置を超えるのを規制する位置決め部とを有してかつ、前記第1凹部及び前記第2凹部を含む凹部の前記挿抜方向に沿った寸法が前記挿抜方向に沿った前記バーリング縦壁の寸法よりも長い中子と、
前記中子及び前記中間部品間を前記挿抜方向に沿って接近離間させる駆動機構と、
前記凹部に対し、前記挿抜方向と直交する方向に沿って進退するバーリングパンチと、
を備える。
【0012】
上記(4)に記載のバーリング加工装置によれば、駆動機構により中子及び中間部品間を接近させることで、中子が閉断面内に挿入されていく。そして、この挿入動作が位置決め部により規制を受けた時点で、中間部品内における第1凹部の位置決めが完了する。このようにして中子を位置決めした後、バーリングパンチを、第1下穴のみ、又は、第1下穴及び第2下穴の両方に向かって打ち込む。この時、第1下穴の外周囲部分、又は、第1下穴及び第2下穴の外周囲部分の両方のうち、中子によって中間部品の内側から支持されていない部分がバーリングパンチの打ち込みを受けて折れ曲がり、その結果としてバーリング縦壁が形成される。このとき、中子の凹部の挿抜方向に沿った寸法を、同挿抜方向におけるバーリング縦壁の寸法よりも長くしているので、バーリング縦壁の形成に際し、中間部品をその内側から支持する範囲を十分に確保できる。よって、形成するバーリング縦壁に対し、必要十分な加工精度を与えることができる。
また、バーリング縦壁の形成後は、第2凹部内をバーリング縦壁が通過するように中子を引き抜けるので、工程数が少なくて済む。このように少ない工程数でバーリング加工を行えるので、生産性が高い。しかも、一方向に沿った中子の移動のみで、中子の位置決めと抜出とを行えるので、第1壁部及び第2壁部間の幅寸法が狭くて閉断面形状を有する中間部品が被加工材であっても、容易にバーリング加工を実施できる。
【0013】
(5)上記(4)に記載に記載のバーリング加工装置において、
前記中子が、
前記第1凹部を区画する第1支持部と、
前記第2凹部を区画し、前記第1凹部に対して接近離間する方向に屈曲自在である第2支持部と、
を有してもよい。
上記(5)に記載の場合、第2支持部に外力を加えることで第1凹部に近付けるように屈曲させる。これにより、形成するバーリング縦壁の周方向における支持範囲を拡張してバーリング加工穴の加工精度をより高めることができる。また、第2支持部の位置固定を解いてから中子を抜出することで、屈曲した第2支持部がバーリング縦壁に当たって自然に元の位置に復元する。よって、バーリング縦壁との干渉によって中子が抜けなくなることがないので、生産性を損なうこともない。
【0014】
(6)上記(5)に記載に記載のバーリング加工装置において、
前記中子が、
前記第1支持部、前記第2支持部、及び前記位置決め部、を有する中子固定部と、
前記中子固定部と共に前記閉断面に挿入され、前記中子固定部が前記所定位置に位置決めされた後も前記閉断面内に進入して前記第2支持部に外力を加えて前記第1凹部に接近させてから固定する中子主軸部と、
を有してもよい。
上記(6)に記載の場合、中子を中間部品内に挿入していくと、まず位置決め部による規制を受けて中子固定部が位置決めした状態に固定される。その状態のまま続けて中子主軸部の挿入を継続して行うと、中子固定部の第2支持部に外力を加えて第1凹部に向かうように屈曲させ、そしてその位置を固定する。このように第2支持部を屈曲させることにより、形成するバーリング縦壁の周方向おける支持範囲を拡張できるので、バーリング加工穴の加工精度をより高めることができる。逆に、中子を抜出する際は、まず中子主軸部を引き抜くことで第2支持部の固定が解除される。その状態で中子固定部を引き抜くと、第2支持部がバーリング縦壁の外周面に摺接しながらその屈曲が解かれていき、中子固定部を引き抜くことができる。このように、第2支持部がバーリング縦壁に干渉して抜けなくなることがないので、生産性を損なうこともない。
【0015】
(7)上記(6)に記載に記載のバーリング加工装置において、
前記第1支持部及び前記第2支持部が、前記中子固定部の表裏面の両方に設けられていてもよい。
上記(7)に記載の場合、第1支持部及び第2支持部の両方に、互いに同軸をなす一対のバーリング加工穴を形成できる。
【0016】
(8)上記(5)~(7)の何れか1項に記載に記載のバーリング加工装置において、
前記第2支持部が一対、前記第2凹部を間に挟んで互いに接近離間自在に配置されていてもよい。
上記(8)に記載の場合、屈曲させる第2支持部を一箇所のみとする場合に比べて、一対に分割した分、第2支持部の大きさを小さくできる。また、第2支持部の屈曲動作も小さくすることができる。よって、幅寸法が狭く閉断面形状を有する被加工材に対して、より適した加工を行える。加えて、屈曲させる部位を一対に分割した分、バーリング縦壁の周方向に沿ってより均等に中間部品をその内側から支持できるので、形成されるバーリング縦壁の加工精度もより高いものとなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の上記各態様によれば、幅寸法が狭く閉断面形状を有する被加工材であっても、必要十分な加工精度を維持しながら生産性が高いバーリング加工を行えるバーリング加工方法及びバーリング加工装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係るバーリング加工装置の要部を示す分解斜視図である。
【
図2】同バーリング加工装置の中子を説明する分解斜視図であり、説明のために固定金型の図示を省略している。
【
図3】同バーリング加工装置の中子を説明する平面図である。
【
図4】同バーリング加工装置の中子を説明する図であって、
図3のA-A矢視図である。(A)は一対の第2支持部間を開いた状態を示し、(B)は一対の第2支持部間を閉じた状態を示す。
【
図5】同バーリング加工装置の中子を被加工材内に挿入して位置決めする際の状態を示す平断面図である。
【
図6】同バーリング加工装置の中子を被加工材内に位置決めした状態を示す平断面図である。
【
図7】同バーリング加工装置の中子を被加工材内から抜出する際の状態を示す平断面図である。
【
図8】同実施形態のバーリング加工方法の工程を説明するフローチャートである。
【
図9】同実施形態のバーリング加工方法によって形成されたバーリング縦壁を示す図であって、
図7のB-B矢視図である。
【
図10】同実施形態の中子の第1変形例を示す図であって、バーリング加工後の第1壁部を透過して中子を見た平面図である。なお、本図では、中子の幅方向半分のみを図示している。
【
図11】同実施形態の中子の第2変形例を示す図であって、バーリング加工後の第1壁部を透過して中子を見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態に係るバーリング加工装置及びバーリング加工方法について、図面を参照しながら以下に説明を行う。
以下の説明では、まず、
図1を参照して、被加工材である中間部品について説明する。その上で、
図1~
図7を参照しながら主にバーリング加工装置を説明する。続いて、
図8及び
図9を参照しながらバーリング加工方法を説明する。そして最後に、
図10~
図12を参照しながら、本実施形態の変形例を説明する。
なお、各図において、XYZを用いて方向を説明する場合がある。ここで、X方向は、後述する中子10を挿抜する方向を示し、挿入時の方向が+X方向であり、抜出時の方向が-X方向である。また、Y方向は、水平面内においてX方向に対し直角な方向を示し、+X方向に沿って見たときに右方向が+Y方向であり、+X方向に沿って見たときに左方向が-Y方向である。また、Z方向は、XY平面(水平面)に対して直角な方向であり、後述するバーリングパンチ60の打ち抜き方向あるいは引き抜き方向と平行である。
以下の説明において、中子10の挿入方向側を前方、抜出方向側を後方、挿抜方向に直交する左右方向を幅方向と呼ぶ場合がある。
【0020】
[中間部品W]
図1に示す中間部品Wは、X方向に垂直な断面が横長の矩形をなす鋼管であり、上壁である第1壁部w1と、下壁である第2壁部w2と、側壁である第3壁部w3,第4壁部w4,第5壁部w5とを有する。
第1壁部w1及び第2壁部w2は、X方向に沿って長い板部であり、互いに平行に配置されている。同様に、第3壁部w3及び第4壁部w4も、X方向に沿って長い板部であり、互いに平行に配置されている。第5壁部w5は、第1壁部w1~第4壁部w4によって区画された筒状体の長手方向の一端を閉塞する板部であり、Y方向に長くてZ方向に短い。一方、第1壁部w1~第4壁部w4によって区画された筒状体の長手方向の他端には、Y方向に広くてZ方向に狭い矩形開口m1が形成されている。第1壁部w1,第2壁部w2,第3壁部w3,第4壁部w4,第5壁部w5は、全て、同じ板厚を有する。
第1壁部w1には、これからバーリング加工を受ける第1下穴h1が形成されている。第2壁部w2にも、これからバーリング加工を受ける第2下穴h2が形成されている。第1下穴h1及び第2下穴h2は、互いに同軸に配置され、また、互いに同じ内径寸法を有する。これら第1下穴h1及び第2下穴h2は、Z方向に沿った共通の軸線を有する。
【0021】
第3壁部w3及び第4壁部w4のZ方向に沿った幅寸法は、第1壁部w1及び第2壁部w2のY方向に沿った幅寸法よりも小さい。従って、これら第1壁部w1,第2壁部w2,第3壁部w3,第4壁部w4,第5壁部w5によって区画された内部空間は、X方向に沿って長く、かつZ方向の高さ寸法がY方向の幅寸法よりも小さい扁平空間となっている。この扁平空間に対し、中間部品Wの一端側からは第5壁部w5が有るため治具等を挿入できないが、他端側からは横長の矩形開口m1を介して治具等を挿入可能な部品構造となっている。通常、このように一方側からしか内部にアクセスできず、しかも長手方向に垂直な断面形状が扁平な閉断面である場合、バーリング加工を施すのは容易ではない。これに対し、本実施形態では、以下に説明する装置及び方法により、生産性を下げることなく精度の高いバーリング加工を実施可能としている。
【0022】
[バーリング加工装置]
図1に、本実施形態に係るバーリング加工装置100の要部を示す。
このバーリング加工装置100は、中間部品Wに予め形成された第1下穴h1及び第2下穴h2に対してバーリング加工を施す。バーリング加工装置100は、中間部品Wを収容保持する固定金型50と、中間部品W内に対して挿抜される中子10と、中子10をX方向に沿って進退させる軸押し機構(駆動機構。不図示)と、一対のバーリングパンチ60と、バーリングパンチ60のそれぞれを第1下穴h1及び第2下穴h2に向かって進退させるパンチ駆動機構(不図示)と、固定金型50への中間部品Wの収容及び固定金型50からの中間部品Wの払い下げを行う部品供給機構(不図示)と、全体動作を司る制御部(不図示)と、を備える。
【0023】
固定金型50は、その内部に、中間部品Wを収容する収容空間51を有している。この収容空間51内に保持された中間部品Wは、第1壁部w1の上面と、第2壁部w2の下面と、第3壁部w3の外側面と、第4壁部w4の外側面と、第5壁部w5の外側面と、の5面が支持され、その結果、定位置に固定配置される。
固定金型50のうち、第1壁部w1の上面を支える壁部には、上方からのバーリングパンチ60を挿通させる貫通孔52がZ方向に沿って形成されている。同様に、第2壁部w2の下面を支える壁部には、下方からの他のバーリングパンチ60を挿通させる貫通孔53がZ方向に沿って形成されている。そして、固定金型50内に中間部品Wを収容して固定した状態では、第1下穴h1及び第2下穴h2の軸線が一対のバーリングパンチ60の軸線と一致するように設定されている。貫通孔52,53の内径寸法は、バーリングパンチ60がスムーズに挿抜できるよう、バーリングパンチ60の先端外径よりも少し大きめに設定されている。
固定金型50は、第5壁部w5が開閉自在とされており、その内部に中間部品Wを挿入して配置することが可能である。すなわち、まず第5壁部w5を開いた状態で内部に中間部品Wを挿入し、その後に第5壁部w5を閉じることで、固定金型50の内部に中間部品Wを配置できる。なお、第5壁部w5の位置から挿入する代わりに、固定金型50の開口から中間部品Wを挿入してもよい。
【0024】
各バーリングパンチ60は、先端が円形の円柱であり、前記パンチ駆動機構の駆動を受けることで第1下穴h1及び第2下穴h2に対して進退する。各バーリングパンチ60の先端外径は、第1下穴h1及び第2下穴h2よりも大きく、これから加工するバーリング加工穴の内径と略同じである。各バーリングパンチ60は、第1下穴h1及び第2下穴h2と同軸でかつ第1下穴h1及び第2下穴h2よりも大きい外径を有するので、バーリング加工の際には、各バーリングパンチ60の各先端面が、第1下穴h1及び第2下穴h2のそれぞれの外周囲部分を、中間部品Wの内側に向かって加圧して折り曲げる。このときの加圧力及び加圧ストロークは、前記パンチ駆動機構の動作によって調整される。より具体的には、前記制御部からの指示により設定された加圧ストロークと加圧力に従って、前記パンチ駆動機構が各バーリングパンチ60を進退させる。
【0025】
中子10は、バーリング加工時に各バーリングパンチ60から外力を受ける第1壁部w1及び第2壁部w2を中間部品Wの内側から支える治具である。
図2及び
図3に示すように、中子10は、中子固定部20と、中子主軸部30と、連結バネ40とを備える。
【0026】
中子固定部20は、本体21と、一対の第1支持部22と、二対の第2支持部23と、二対の固定ピン24とを有する。
本体21は、平面視で略T字型をなす板材であり、各位置での板厚が同じになっている。本体21の挿入方向先端側(+X方向の端部側)の角部には、面取りが形成されている。一方、本体21の挿入方向後端側(-X方向の端部側)には、本体21の両側面から幅方向に向かって突出した規制部21aが一対、形成されている。すなわち、本体21は、平面視におけるY方向の幅寸法が、その先端側から後端側にかけて一定であるが、各規制部21aのある後端位置においては、他の箇所よりも幅寸法が広くなっている。そして、各規制部21aのそれぞれには、本体21の先端からの挿抜方向に沿った距離が互いに等しい位置に、規制面21a1が形成されている。これら一対の規制面21a1を平面視において直線で結んだ場合、前記直線が挿抜方向に対して直交している。
【0027】
各第2支持部23のうち、本体21の上面に形成された方は、平面視で正方形の一部が半円形に切りかかれた第1凹部25aを有する板部であり、本体21の上面に対して一体に形成されている。第1凹部25aは、第2支持部23の挿抜方向における先端側の辺の幅方向中央位置に形成されている。第1凹部25aの内径は、バーリングパンチ60の外径よりも大きく、中間部品Wに形成するバーリング縦壁p1,p2の外周面p1a,p2a(
図9)の外径に略等しい。第2支持部23は、平面視したときに挿抜方向に沿って延在する一対の側面22aを有する。これら一対の側面22aは、共に平坦面であり、互いに平行である。これら側面22aの挿抜方向の先端位置同士を繋ぐ先端面22bの幅方向中央位置に、前記第1凹部25aが形成されている。一方、側面22aの挿抜方向の後端位置同士を繋ぐ後端面22cは、挿抜方向に対して直交する平坦面となっている。この後端面22cから先端面22bまでの各位置において、第2支持部23の板厚は一定である。
【0028】
各第2支持部23のうち、本体21の下面に形成された方も、本体21の上面に形成された方と同一形状及び同一寸法を有する。
すなわち、本体21の下面に形成された第2支持部23も、底面視で正方形の一部が半円形に切りかかれた第1凹部25aを有する板部であり、本体21の下面に対して一体に形成されている。この第1凹部25aも、第2支持部23の挿抜方向における先端側の辺の幅方向中央位置に形成されている。この第1凹部25aの内径も、バーリングパンチ60の外径よりも大きく、中間部品Wに形成するバーリング縦壁p1,p2の外周面p1a,p2a(
図9)の外径に略等しい。第2支持部23は、底面視したときに挿抜方向に沿って延在する一対の側面22aを有する。これら一対の側面22aは、共に平坦面であり、互いに平行である。これら側面22aの挿抜方向の先端位置同士を繋ぐ先端面22bの幅方向中央位置に、前記第1凹部25aが形成されている。一方、側面22aの挿抜方向の後端位置同士を繋ぐ後端面22cは、挿抜方向に対して直交する平坦面となっている。この後端面22cから先端面22bまでの各位置において、第2支持部23の板厚は一定である。
上下一対の第2支持部23は、本体21を透過して平面視した場合、先端面22b、第1凹部25a、一対の側面22a、後端面22cの各位置が、互いに一致するように重なって配置されている。
【0029】
図3に示すように、二対の第2支持部23のうちの一対は、本体21の上面に対して固定ピン24により、Z方向に沿った軸線回りに、回動自在に軸支されている。
本体21の上面側にある一対の第2支持部23は、それぞれ、平面視で第1凹部25aと同じ半径を持つ円弧面である内側面23aを有する。ただし、内側面23aは、平面視において半円形状ではなく1/4円の円弧形状となっている。
そして、内側面23aの先端側には、平坦な先端面23bが形成されている。一対の第2支持部23間が
図3及び
図4(A)に示すように開いた状態では、各先端面23b同士が互いに離間してこれらの間に空間が形成される。一方、一対の第2支持部23間が
図4(B)に示すように閉じた状態では、各先端面23b同士が互いに面接触してこれらの間に空間が閉じられる。
【0030】
一方、内側面23aの後端側には、面取り23cを介して、平坦な後端面23dが形成されている。さらに、後端面23dの幅方向外側には、後端側から先端側に向かって平坦な傾斜面23eが形成されている。
面取り23cは、第2支持部23が固定ピン24を中心として傾動する際に、第1支持部22の先端面22bと干渉しないように切りかかれた面である。この面取り23cは、平面であってもよいし、あるいは平面視で凸曲面であってもよい。
後端面23dは、一対の第2支持部23間が完全に開いたときに、第1支持部22の先端面22bに面接触する平坦面である。言い換えると、一対の第2支持部23間が開いて各後端面23dが第1支持部22の先端面22bに当接することで、各第2支持部23間がそれ以上に開くのを規制する。
傾斜面23eは、
図3に示すように一対の第2支持部23間が開いた状態で、第1支持部22の両側面22aよりも幅方向の外側に位置している。そして、一対の傾斜面23eは、それらの後方側から前方側に向かうにつれて、両傾斜面23e間の幅寸法が広がるように傾斜している。言い換えると、各傾斜面23eは、後端側から先端側に向かって前傾するように形成されている。
【0031】
上下二対の第2支持部23のうち、本体21の下面に配置された方も、本体21の上面に形成された方と同一構成を有する。
すなわち、本体21の下面に配置された方の一対の第2支持部23は、本体21の上面に配置された方の一対の第2支持部23と鏡面対象の関係にある。したがって、本体21の下面に配置された方の一対の第2支持部23についても、同じ
図3を中子10の底面図と読み替えながら以下に説明する。
【0032】
図3に示すように、二対の第2支持部23のうちの一対は、本体21の下面に対して固定ピン24により、Z方向に沿った軸線回りに、回動自在に軸支されている。
本体21の下面側にある一対の第2支持部23は、それぞれ、底面視で第1凹部25aと同じ半径を持つ円弧面である内側面23aを有する。ただし、内側面23aは、底面視において半円形状ではなく1/4円の円弧形状となっている。
そして、内側面23aの先端側には、平坦な先端面23bが形成されている。一対の第2支持部23間が
図3及び
図4(A)に示すように開いた状態では、各先端面23b同士が互いに離間してこれらの間に空間が形成される。一方、一対の第2支持部23間が
図4(B)に示すように閉じた状態では、各先端面23b同士が互いに面接触してこれらの間に空間が閉じられる。
【0033】
一方、内側面23aの後端側には、面取り23cを介して、平坦な後端面23dが形成されている。さらに、後端面23dの幅方向外側には、後端側から先端側に向かって平坦な傾斜面23eが形成されている。
面取り23cは、第2支持部23が固定ピン24を中心として傾動する際に、第1支持部22の先端面22bと干渉しないように切りかかれた面である。この面取り23cは、平面であってもよいし、あるいは平面視で凸曲面であってもよい。
後端面23dは、一対の第2支持部23間が完全に開いたときに、第1支持部22の先端面22bに面接触する平坦面である。言い換えると、一対の第2支持部23間が開いて各後端面23dが第1支持部22の先端面22bに当接することで、各第2支持部23間がそれ以上に開くのを規制する。これら第2支持部23間の開閉角度は、上述した本体21の上面にある方の第2支持部23間の開閉角度と同じである。
傾斜面23eは、
図3に示すように一対の第2支持部23間が開いた状態で、第1支持部22の両側面22aよりも幅方向の外側に位置している。そして、一対の傾斜面23eは、それらの後方側から前方側に向かうにつれて、両傾斜面23e間の幅寸法が広がるように傾斜している。言い換えると、各傾斜面23eは、後端側から先端側に向かって前傾するように形成されている。これら傾斜面23eの傾斜角度は、上述した本体21の上面にある方の傾斜面23eの開閉角度と同じである。
なお、全ての第2支持部23について、これらを開く方向に付勢するように、全ての第2支持部23と第1支持部22との間に、板バネ等の付勢部材(不図示)を介在させてもよい。
【0034】
図2に示すように、中子主軸部30は、本体31と、4本の駆動軸32とを有する。
本体31は、幅方向に広くてかつ高さ方向に薄いブロック形状を有する。本体31の前面の中央位置には、連結バネ40の後端が固定されている。一方、本体31の後面の中央位置には、図示されない軸押し機構のシャフト先端が固定されている。このシャフト先端と連結バネ40は、本体31を間に挟んで互いに同軸配置されている。
各駆動軸32は、本体31の前面の四隅から前方に向かって延びる四角柱状の部品であり、本体31に対して一体に形成されている。4本の駆動軸32のうち、挿抜方向の後端側から先端側に向かって見た場合に、幅方向の右側にある2本で一方の軸押し部を構成し、また幅方向の左側にある2本で他方の軸押し部を構成している。前記一方の軸押し部では、上下に並んでかつ両者間に隙間を形成するように、一対の駆動軸32が配置されている。よって、これら一対の駆動軸32間に形成される隙間は、挿抜方向に沿ったガイドとして機能している。前記他方の軸押し部においても、上下に並んでかつ両者間に隙間を形成するように、一対の駆動軸32が配置されている。よって、これら一対の駆動軸32間に形成される隙間も、挿抜方向に沿ったガイドとして機能している。
言い換えると、中子主軸部30は、平面視で略U字型のブロックに対し、その両サイドから高さ方向の中央位置において、挿抜方向に沿ったスリットをガイドとして有するとも言える。
【0035】
図3に示すように、連結バネ40は、中子主軸部30と中子固定部20との間を同軸に連結する圧縮コイルバネである。すなわち、連結バネ40の先端が、中子固定部20の本体21の後面の高さ方向中央でかつ幅方向中央の位置に固定されている。また、連結バネ40の後端が、中子主軸部30の本体31の前面の高さ方向中央でかつ幅方向中央の位置に固定されている。よって、中子固定部20と、連結バネ40と、中子主軸部30は、この順に並ぶように同軸配置された状態で一体に連結され、中子10を構成している。
【0036】
ここで、中子固定部20の本体21の両側部は、それぞれ、対応する一対の駆動軸32間の隙間内に配置されている。そして、本体21の各規制部21aは、対応する一対の駆動軸32間の隙間を介して幅方向の外方に向かって左右に突出している。
より具体的に言うと、挿抜方向の前方側に向かって中子10を見た場合、左側にある上下一対の駆動軸32の間に、本体21の左側縁部分が挿抜方向に沿って摺動自在に挟み込まれている。同様に、挿抜方向の前方側に向かって中子10を見た場合、右側にある上下一対の駆動軸32の間に、本体21の右側縁部分が挿抜方向に沿って摺動自在に挟み込まれている。また、
図3に示すように平面視した場合、左右一対の駆動軸32間に、本体21の上面にある第1支持部22が、挿抜方向に沿って摺動自在に挟み込まれている。また、底面視した場合も、左右一対の駆動軸32間に、本体21の下面にある第1支持部22が、挿抜方向に沿って摺動自在に挟み込まれている。
したがって、中子固定部20と中子主軸部30は、同軸の状態を保ったまま、挿抜方向に沿って互いに接近離間自在とされている。ただし、両者は連結バネ40を介して連結されているので、中子主軸部30から中子固定部20が外れてしまわないようになっている。また、中子主軸部30を前記軸押し機構で中子10の挿入方向に押し出した場合、その押し出しの力が、連結バネ40を介して中子固定部20にも伝わるようになっている。
【0037】
図5~
図7に示すように、中子固定部20の各第2支持部23は、バーリング加工の前後において開閉動作を行う。この開閉動作の詳細について、以下に説明する。
まず、
図5は、中子10を中間部品W内に挿入し始めた時点での平断面図を示す。この時点では、各規制部21aが固定金型50にまだ当たっておらず、また各駆動軸32も第2支持部23に当たっていない。したがって、各第2支持部23間が完全に開いた状態となっている。開いた一対の内側面23a間に形成された空間を第2凹部25bとした場合、この第2凹部25bと第1凹部25aとにより、平面視で略U字型の凹部25が形成されている。
【0038】
ここで、挿抜方向に沿って見た場合、第1凹部25aの寸法がL1、第2凹部25bの寸法がL2、そしてこれらの和である凹部25の寸法がL3(L1+L2=L3)となっている。一方、これから形成するバーリング縦壁p1,p2の外周面p1a,p2aによって形成される寸法はL4となっている。そして、寸法L3は、寸法L4よりも長めに設定されている。すなわち、第1凹部25a及び第2凹部25bを含む凹部25の挿抜方向に沿った寸法L3が、挿抜方向に沿ったバーリング縦壁p1,p2の寸法L4よりも長くなっている。このような寸法関係であれば、バーリング加工時のバーリング縦壁p1,p2を挿抜方向の全長にわたって支えるよう、第1壁部w1及び第2壁部w2をその内方から、第1支持部22及び第2支持部23によって支持できる。ただし、本実施形態では、略U字型の凹部25を形成したままバーリング加工を行う代わりに、各第2支持部23を閉じて完全な円形開口を形成してからバーリング加工を行う。これにより、ダレが少なく、より精度の高いバーリング加工を実施することが可能になる。
【0039】
すなわち、
図5の状態からさらに前記軸押し機構で中子10を押し込んでいくと、
図6に示すように、各規制部21aの規制面21a1が固定金型50の開口に対して当接する。これにより、第1凹部25aの中心軸線が、第1下穴h1及び第2下穴h2の各中心軸線、及び、各バーリングパンチ60の各中心軸線に対して一致する。この位置決めがなされた状態で前記軸押し機構が中子主軸部30を継続して押し込み続けると、中子固定部20については軸心合わせされて定位置に固定された状態で、連結バネ40を圧縮させながら中子主軸部30のみが挿入され続けていく。
【0040】
すると、
図5~
図6に示すように、各駆動軸32がそれらの先端において各傾斜面23eに当たり、各第2支持部23を、各固定ピン24を中心として回動させる。この時、各駆動軸32の先端角部には面取りが形成されているため、各傾斜面23eを傷つけることなく、スムーズに摺接可能としている。回転によって互いに接近する各第2支持部23は、それらの先端面23b同士が互いに合致し、その結果、第1凹部25aと一対の内側面23aによって区画された円柱形状の空間が形成される。この円柱形状の空間の中心軸線は、第1下穴h1及び第2下穴h2の各中心軸線、及び、各バーリングパンチ60の各中心軸線と一致している。この円柱形状の空間の内径は、前記寸法L4であるバーリング縦壁p1,p2の外径寸法に略等しい。また、この時の各傾斜面23eは、
図6に示すように各駆動軸32の内側面に当たっているため、各第2支持部23間を開く方向の動きが規制された状態にある。そのため、前記円柱形状の空間が維持されたままとなり、バーリング加工を行う準備が整った状態となっている。
【0041】
続いて、各バーリングパンチ60を、これら第1下穴h1及び第2下穴h2のそれぞれに同時に打ち込んでいく。第1下穴h1及び第2下穴h2の各外周囲部分のうち、第1支持部22及び第2支持部23で支持されていない環状の部分が中間部品Wの内方に向かって垂直に折れ曲がり、その結果、環状のバーリング縦壁p1,p2が形成される。これらバーリング縦壁p1,p2が形成された後は、これらが各第2支持部23に係止した状態となるため、このままでは中子10を抜出することができない。
そこで、
図7に示すように、前記押し機構の駆動力により中子主軸部30を引き抜いていくと、各駆動軸32による各第2支持部23のロックが解除され、回動可能な状態に戻る。そして、さらに中子主軸部30を引き抜いていくと、連結バネ40を介して中子固定部20が引き抜かれていく。この時、各第2支持部23は、それらの内側面23aがバーリング縦壁p1,p2の外周面p1a,p2a(
図9)に当たって反力を受けることで
図7のように開くので、引っ掛かりを生じることなくスムーズに引き抜くことができる。
【0042】
なお、本実施形態では、各先端面23b同士を合致させて円柱形状の閉空間を形成する場合を例示しているが、この構成のみに限定されるものではない。すなわち、各先端面23b同士が完全には合致せず、これらの間に隙間が形成されていてもよく、この場合も必要十分な加工精度を持つバーリング縦壁p1,p2を形成可能である。ただし、本実施形態のように各先端面23b同士を完全に合致させて円柱形状の閉空間を形成した方が、ダレがなく、より高い精度のバーリング縦壁p1,p2を得ることが出来る。
【0043】
バーリング加工装置100全体構成の話に戻る。
前記軸押し機構は、
図1のX方向における中子10の進退動作を行う。すなわち、中子10を固定金型50内に固定配置された中間部品Wの矩形開口m1内に挿入する動作と、バーリング加工後の中子10を中間部品Wの矩形開口m1から抜き出す動作とを、行う。
前記部品供給機構は、図示されない部品収容部に収容された複数の中間部品Wの中から1つを取り出し、型開きした固定金型50内に配置する。中間部品Wの載置後、固定金型50は閉じられるが、中間部品Wの矩形開口m1のみが中子10に向かって開口した状態となる。
前記制御部は、前記軸押し機構、前記パンチ駆動機構、及び前記部品供給機構のそれぞれを連動して制御する。この制御部によれば、以下に続けて説明するバーリング加工方法を全自動で行うことができる。
【0044】
[バーリング加工方法]
本実施形態のバーリング加工方法は、
図8のフローチャートに示す各工程によって実行される。
即ち、開始後のステップS1では、前記制御部からの指示を受けた前記部品供給機構が前記部品収容部から中間部品Wを1つ取り出し、型開きした固定金型50内に配置する。その後、固定金型50を閉じる。これにより、中間部品Wが定位置に固定配置される。この時、中間部品Wの矩形開口m1は、固定金型50の外部に向かって開放され、なおかつ中子10の先端に向かって対向配置される。これにより、中子10と中間部品Wとが挿抜方向に沿って同軸配置される。
【0045】
続くステップS2では、挿抜方向の+X方向に向かって中子10を移動させ、中間部品Wの矩形開口m1内に挿入する。すなわち、前記軸押し機構により中子10の中子主軸部30を+X方向に沿う挿入方向に押し込んでいく。すると、まず中子固定部20が、その規制面21a1が固定金型50の開口部に当接することで移動を停止させられる。この時点における各第2支持部23は、
図5に示したように開いたままの状態を維持している。そのため、第1凹部25a及び第2凹部25bを含む凹部25の挿抜方向に沿った寸法L3が、挿抜方向に沿ったバーリング縦壁p1,p2の寸法L4よりも長くなっている。加えて、平面視において、第1凹部25aを形成する半円の中心と、第1下穴h1及び第2下穴h2の各中心と、貫通孔52,53の中心とが、互いに一致した状態となる。
【0046】
中子固定部20の停止後も、前記軸押し機構が中子主軸部30の押し込みを継続して行う。すると、中子主軸部30は連結バネ40を圧縮させながら+X方向に進んでいく。そして、各駆動軸32の先端が各傾斜面23eに当たって各第2支持部23を回動させ、
図6に示したように各第2支持部23間を閉じる。これにより、各第1支持部22と各第2支持部23間に、円柱形状の空間が、本体21の上下に1つずつ形成される。この円柱形状の空間は、第1下穴h1及び第2下穴h2、及び、貫通孔52,53と同じ中心軸線を共有する同軸配置となる。以上により、バーリング加工の準備が完了する。
【0047】
続くステップS3では、各バーリングパンチ60が共通の軸線に沿って互いに接近するように射出される。すると、固定金型50の貫通孔52,53を通って射出された各バーリングパンチ60が中間部品Wの上下面に打ち付けられる。この時の第1壁部w1は、その下面が、中子10の上面にある第1支持部22及び各第2支持部23によって支持されている。同時に、この時の第2壁部w2は、その上面が、中子10の下面にある第1支持部22及び各第2支持部23によって支持されている。したがって、中間部品Wは、その第1壁部w1及び第2壁部w2の双方が中子10によって支持された状態で、各バーリングパンチ60が第1壁部w1及び第2壁部w2に向かって打ちつけられる。
【0048】
その結果、中間部品Wの上面においては、下穴h1の周囲壁部のうち、第1支持部22及び各第2支持部23によって支持されていない環状の部分が下方に向けて折り曲げられる。同時に、中間部品Wの下面においては、下穴h2の周囲壁部のうち、第1支持部22及び各第2支持部23によって支持されていない環状の部分が上方に向けて折り曲げられる。このようにして行われたバーリング加工により、
図9に示すバーリング縦壁p1,p2が形成される。
バーリング縦壁p1,p2は、互いに同じ軸線を共有する環状の壁である。バーリング縦壁p1は、環状の外周面p1aと環状の内周面p1bとを有する。同様に、バーリング縦壁p2も、環状の外周面p2aと環状の内周面p2bとを有する。外周面p1aと外周面p2aは、互いに同じ外径と同じ高さを有する。内周面p1bと内周面p2bも、互いに同じ外径と同じ高さを有する。よって、バーリング縦壁p1,p2は、互いに同じ形状寸法を有する。
【0049】
続くステップS4では、各バーリングパンチ60を互いに離間させる方向に引き抜く。すなわち、上方のバーリングパンチ60においてはこれを+Z方向に移動させ、下方のバーリングパンチ60においてはこれを-Z方向に移動させる。以上により、各バーリングパンチ60を中間部品Wの外部に移動させる。
【0050】
さらに続くステップS5では、前記制御部からの指示を受けた前記軸押し機構の駆動により、中間部品Wの矩形開口m1から中子10が引き抜かれる。この時、
図7に示したように、まず先に中子主軸部30が引き抜かれていくことで、各第2支持部23の回動規制が解除される。そして、さらに中子主軸部30を引き抜いていくと、各第2支持部23間が、その各内側面23aがバーリング縦壁p1,p2の外周面p1a,p2aに摺接することで押し広げられていく。したがって、各第2支持部23がバーリング縦壁p1,p2に引っかかることなく、中子固定部20がスムーズに引き抜かれていく。このようにして、中子10は中間部品Wの外部に抜出される。
【0051】
続くステップS6では、固定金型50を型開きし、中間部品Wをバーリング加工して得たバーリング加工部品Pを取り出す。以上により、バーリング加工方法の全工程が終了する。
出来上がったバーリング加工部品Pは、
図9に示すように、正面から見て閉断面の一部をなす第1壁部w1及び第2壁部w2と、第1壁部w1及び第2壁部w2の両方に形成されたバーリング加工穴H1,H2を有するバーリング縦壁p1,p2とを備えている。
【0052】
[変形例]
上記実施形態は一例であり、例えば、
図10あるいは
図11および
図12に示す変形例も採用可能である。
図10は、上記実施形態の第1変形例を示す図であって、バーリング加工後の第1壁部w1を透過して中子10Aを見た平面図である。なお、中子10Aはその幅方向中心位置を通る中心線に対して左右対称形状を有するので、
図10では中子10Aの幅方向半分のみを図示している。
【0053】
本変形例1の中子10Aは、上記実施形態の第2支持部23のような可動部を備えていない。すなわち、上記実施形態で言うところの各第2支持部23に相当する部品が、第1支持部22に対して一体に固定されている。そして、この中子10Aは、上記実施形態で言うところの中子固定部20、中子主軸部30、連結バネ40に分割されておらず、一体物になっている。
【0054】
この中子10Aにおいても、第1凹部25aを形成する半円形状の壁面とこの第1凹部25aに連なって挿抜方向に延在する第2凹部25bとを含む凹部25が形成されている。そして、上記実施形態と同様に、挿抜方向に沿って見た場合、第1凹部25aの寸法がL1、第2凹部25bの寸法がL2、そしてこれらの和である凹部25の寸法がL3(L1+L2=L3)となっている。一方、バーリング縦壁p1,p2の外周面によって形成される寸法はL4となっている。そして、寸法L3は、寸法L4よりも長めに設定されている。すなわち、第1凹部25a及び第2凹部25bを含む凹部25の挿抜方向に沿った寸法L3が、挿抜方向に沿ったバーリング縦壁p1,p2の寸法L4よりも長くなっている。
この寸法関係によれば、バーリング加工時のバーリング縦壁p1,p2を挿抜方向の全長にわたって支えるよう、第1壁部w1及び第2壁部w2をその内方から、中子10Aによって支持できる。従って、幅寸法が狭く閉断面形状を有する中間部品Wであっても、必要十分な加工精度を維持しながら生産性が高いバーリング加工を行うことができる。
【0055】
図11及び
図12は、上記実施形態の第2変形例を示す図であり、より具体的には上記第1変形例をさらに変更したものである。
この第2変形例の中子10Bでは、上記第2変形例の中子10Aにおいて、第2凹部25bを間に挟む部分の一方である第2支持部23Aを、第1凹部25aに対して接近離間するように屈曲自在としている。ただし、各寸法L1,L2,L3,L4に関しては、上記実施形態及び上記第1変形例と同じである。
この第2支持部23Aによれば、形成するバーリング縦壁p1,p2の周方向における支持範囲が上記第1変形例の場合に比べて拡張されるので、バーリング加工穴H1,H2の加工精度をより高めることができる。また、第2支持部23Aを屈曲させた固定状態を解いてから中子10Bを抜出できるので、第2支持部23Aがバーリング縦壁p1,p2に当たっても自然に元の位置に復元させることができる。よって、バーリング縦壁p1,p2との干渉によって中子10Bが抜けなくなることがないので、生産性を損なうこともない。
【0056】
上記第1変形例及び第2変形例以外にも、必要に応じて、工程や構成を適宜変更してもよい。上記実施形態及び変形例では、バーリング加工後に固定金型50から取り出したものをバーリング加工品Pとしたが、このバーリング加工品Pを製品として用いても良いし、または、さらなる加工を施した上で製品としてもよい。このような製品としては、例えば自動車のアーム(リンク)がある。また、バーリング加工穴の形状を円形としたが、円形のみに限らず、正方形や長方形等の矩形、または多角形、あるいは楕円形等、他の形状としてもよい。
【0057】
以上説明の実施形態及び各変形例の骨子を以下の態様として纏める。
(1)本発明の一態様に係るバーリング加工方法は、
互いに対向する第1壁部w1及び第2壁部w2を、閉断面を区画する壁部の一部として含む中間部品Wに対し、第1壁部w1に形成された第1下穴h1、及び、第2壁部w2に形成されて第1下穴w1と同軸をなす第2下穴h2のうち、第1下穴h1のみ、又は、第1下穴h1及び第2下穴h2の両方、に対してバーリング加工穴H1,H2を形成する方法であって、
バーリング加工穴H1,H2を区画するバーリング縦壁p1,p2の周方向半分に対応する形状を有する第1凹部25aと、第1凹部25aに連なり挿抜方向に沿って開口した第2凹部25bとを有してかつ、第1凹部25a及び第2凹部25bを含む凹部25の挿抜方向に沿った寸法L3が挿抜方向に沿ったバーリング縦壁p1,p2の寸法L4よりも長い中子10(10A,10B)を、挿抜方向に沿って中間部品Wの閉断面内に挿入し、第1凹部25aと、第1下穴h1または第2下穴h2とが同軸になる位置に位置決めする工程と、
第1下穴h1のみ、又は第1下穴h1及び第2下穴h2の両方に、バーリングパンチ60を打ち込むことで、第1壁部w1のみ、又は、第1壁部w1及び第2壁部w2の両方を、中子10(10A,10B)で支持しながらバーリング縦壁p1,p2を形成する工程と、
バーリング縦壁p1,p2が第2凹部25b内を通過するように中子10を中間部品Wから引き抜いてバーリング加工部品Pを得る工程と、
を有する。
【0058】
(2)上記(1)に記載に記載のバーリング加工方法において、
バーリング縦壁p1,p2を形成する工程の前に、中子10(10B)のうち、第2凹部25bを区画する部位の少なくとも一部に外力を加えて屈曲させてから固定することで、第1下穴h1の外周囲部分のみ、又は、第1下穴h1及び第2下穴h2の両方の外周囲部分、における支持範囲を拡張する工程と、
バーリング縦壁p1,p2を形成する工程の後でかつバーリング加工部品Pを得る工程の前に、中子10(10B)の固定を解く工程と、
をさらに有してもよい。
【0059】
(3)上記(2)に記載に記載のバーリング加工方法において、
前記支持範囲を拡張する工程で、中子10(10B)のうち、第2凹部25bを間に挟む一対の部位の両方に前記外力を加えることで互いに接近させるように屈曲させてから固定し、
前記固定を解く工程で、前記一対の部位の両方に対する前記固定を解除してもよい。
【0060】
(4)本発明の一態様に係るバーリング加工装置100は、
互いに対向する第1壁部w1及び第2壁部w2を、閉断面を区画する壁部の一部として含む中間部品Wに対し、第1壁部w1に形成された第1下穴h1、及び、第2壁部w2に形成されて第1下穴w1と同軸をなす第2下穴h2のうち、第1下穴h1のみ、又は、第1下穴h1及び第2下穴h2の両方、に対してバーリング加工穴H1,H2を形成する装置であって、
中間部品Wの閉断面に対する挿抜方向に沿って進退自在に配置され、バーリング加工穴H1,H2を区画するバーリング縦壁p1,p2の周方向半分に対応する形状を有する第1凹部25aと、第1凹部25aに連なり挿抜方向に沿って開口した第2凹部25bと、閉断面に挿入した際に第1凹部25aが所定位置を超えるのを規制する規制部(位置決め部)21aとを有してかつ、第1凹部25a及び第2凹部25bを含む凹部25の挿抜方向に沿った寸法L3が挿抜方向に沿ったバーリング縦壁p1,p2の寸法L4よりも長い中子10(10A,10B)と、
中子10(10A,10B)及び中間部品W間を挿抜方向に沿って接近離間させる前記軸押し機構(駆動機構)と、
凹部25に対し、挿抜方向と直交する方向に沿って進退するバーリングパンチ60と、
を備える。
【0061】
(5)上記(4)に記載に記載のバーリング加工装置100において、
中子10(10B)が、
第1凹部25aを区画する第1支持部22と、
第2凹部25bを区画し、第1凹部25aに対して接近離間する方向に屈曲自在である第2支持部23と、
を有してもよい。
【0062】
(6)上記(5)に記載に記載のバーリング加工装置100において、
中子10(10B)が、
第1支持部22、第2支持部23、及び規制部(位置決め部)21a、を有する中子固定部20と、
中子固定部20と共に前記閉断面に挿入され、中子固定部20が前記所定位置に位置決めされた後も前記閉断面内に進入して第2支持部23に外力を加えて第1凹部25aに接近させてから固定する中子主軸部30と、
を有してもよい。
【0063】
(7)上記(6)に記載に記載のバーリング加工装置100において、
第1支持部22及び第2支持部23が、中子固定部20の表裏面の両方に設けられていてもよい。
【0064】
(8)上記(5)~(7)の何れか1項に記載に記載のバーリング加工装置100において、
第2支持部23が一対、第2凹部25bを間に挟んで互いに接近離間自在に配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0065】
10 中子
20 中子固定部
21 本体
21a 規制部(位置決め部)
22 第1支持部
23 第2支持部
24 固定ピン
25 凹部
25a 第1凹部
25b 第2凹部
30 中子主軸部
31 本体
32 駆動軸
40 連結バネ
50 固定金型
60 バーリングパンチ
100 バーリング加工装置
H1,H2 バーリング加工穴
h1 第1下穴
h2 第2下穴
P バーリング加工部品
p1,p2 バーリング縦壁
p1a,p2a 外周面
W 中間部品