(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161710
(43)【公開日】2024-11-20
(54)【発明の名称】画像処理システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 1/12 20060101AFI20241113BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
H04N1/12
H04N1/00 E
H04N1/00 912
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076653
(22)【出願日】2023-05-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】金子 武司
【テーマコード(参考)】
5C062
5C072
【Fターム(参考)】
5C062AA05
5C062AA13
5C062AA35
5C062AB02
5C062AB08
5C062AB20
5C062AB22
5C062AB23
5C062AB41
5C062AB46
5C062AC04
5C062AC05
5C062AC08
5C062AC13
5C062AC67
5C062AC69
5C062AE01
5C062AE15
5C062AF10
5C072AA05
5C072BA03
5C072CA02
5C072DA25
5C072EA05
5C072EA07
5C072FB23
5C072NA01
5C072NA08
5C072RA01
5C072SA03
5C072SA06
5C072UA11
5C072UA13
5C072XA01
5C072XA04
(57)【要約】
【課題】最大処理時間長を最短にする観点から、原稿の読み取りと並行に実行される媒体へのイメージの形成を開始するタイミングを決定する場合に比して、原稿詰まりに伴う媒体の廃棄を少なくする。
【解決手段】読み取り対象である原稿の搬送と並行して、読み取り中の原稿のイメージを媒体に形成する場合、イメージの読み取りが開始されてからの原稿の搬送距離又は経過時間が、原稿の搬送が安定する距離又は時間として設定された閾値を超過した後に、媒体へのイメージの形成の開始を指示する1又は複数のプロセッサを有する画像処理システムを提供する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数のプロセッサを有し、
前記1又は複数のプロセッサは、
読み取り対象である原稿の搬送と並行して、読み取り中の原稿のイメージを媒体に形成する場合、
イメージの読み取りが開始されてからの原稿の搬送距離又は経過時間が、原稿の搬送が安定する距離又は時間として設定された閾値を超過した後に、媒体へのイメージの形成の開始を指示する、
画像処理システム。
【請求項2】
前記1又は複数のプロセッサは、
画面操作を通じて前記閾値の設定を受け付ける、
請求項1に記載の画像処理システム。
【請求項3】
前記1又は複数のプロセッサは、
読み取り対象である原稿の搬送に使用される速度別に前記閾値の設定を受け付ける、
請求項2に記載の画像処理システム。
【請求項4】
前記1又は複数のプロセッサは、
第1の速度用の前記閾値が、第1の速度よりも遅い第2の速度用の前記閾値よりも大きくなるように設定の受け付けを制御する、
請求項3に記載の画像処理システム。
【請求項5】
前記1又は複数のプロセッサは、
原稿詰まりの検出時に記録された前記搬送距離又は前記経過時間の履歴に基づいて前記閾値を設定する、
請求項1に記載の画像処理システム。
【請求項6】
前記1又は複数のプロセッサは、
読み取り対象である原稿の幅及び厚みのいずれか1つに対応する前記履歴に基づいて前記閾値を設定する、
請求項5に記載の画像処理システム。
【請求項7】
前記1又は複数のプロセッサは、
読み取り対象である原稿の搬送速度の指定に応じて前記閾値の設定を切り替える、
請求項1に記載の画像処理システム。
【請求項8】
前記1又は複数のプロセッサは、
イメージの読み取りの終了とイメージの形成の終了とを一致させる条件を満たす原稿の搬送距離又は経過時間が前記閾値より大きい場合、当該条件を満たす原稿の搬送距離又は経過時間を、媒体へのイメージの形成を開始するタイミングとして使用する、
請求項1に記載の画像処理システム。
【請求項9】
前記1又は複数のプロセッサは、
読み取られたイメージを指定された寸法の媒体に形成する場合にあって、イメージの読み取りの終了とイメージの形成の終了とを一致させる条件を満たす原稿の搬送距離又は経過時間が前記閾値より大きいとき、当該条件を満たす原稿の搬送距離又は経過時間を、媒体へのイメージの形成を開始するタイミングとして使用する、
請求項1に記載の画像処理システム。
【請求項10】
前記1又は複数のプロセッサは、
読み取られたイメージを指定された寸法の媒体に形成する場合にあって、イメージの読み取りの終了とイメージの形成の終了とを一致させる条件を満たす原稿の搬送距離又は経過時間が前記閾値より小さいとき、イメージの読み取りが開始されてからの原稿の搬送距離又は経過時間が前記閾値を超過した後に、媒体へのイメージの形成の開始を指示する、
請求項1に記載の画像処理システム。
【請求項11】
コンピュータに、
読み取り対象である原稿の搬送と並行して、読み取り中の原稿のイメージを媒体に形成する場合、
イメージの読み取りが開始されてからの原稿の搬送距離又は経過時間が、原稿の搬送が安定する距離又は時間として設定された閾値を超過した後に、媒体へのイメージの形成の開始を指示する機能、
を実現させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
読み取り対象である原稿の搬送と並行して、読み取り中の原稿のイメージを用紙(以下「媒体」ともいう。)に形成する動作モードがある。この動作モードは、最大長の原稿のコピーに要する原稿の読み取り開始からイメージの形成の終了までの時間長(以下「最大処理時間長」という。)を短縮して生産性を高める観点から採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
搬送方向の寸法が長い原稿は、搬送方向の寸法が短い原稿に比して、搬送中に原稿詰まりが発生し易いことが知られている。搬送方向の寸法が長い原稿は、搬送中にスキューが生じ易いためである。このため、搬送方向の寸法が長い原稿のイメージを媒体に記録する場合には、搬送方向の寸法が短い原稿よりも廃棄のリスクが高くなる。
【0005】
本発明は、最大処理時間長を最短にする観点から、原稿の読み取りと並行に実行される媒体へのイメージの形成を開始するタイミングを決定する場合に比して、原稿詰まりに伴う媒体の廃棄を少なくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、1又は複数のプロセッサを有し、前記1又は複数のプロセッサは、読み取り対象である原稿の搬送と並行して、読み取り中の原稿のイメージを媒体に形成する場合、イメージの読み取りが開始されてからの原稿の搬送距離又は経過時間が、原稿の搬送が安定する距離又は時間として設定された閾値を超過した後に、媒体へのイメージの形成の開始を指示する、画像処理システムである。
請求項2に記載の発明は、前記1又は複数のプロセッサは、画面操作を通じて前記閾値の設定を受け付ける、請求項1に記載の画像処理システムである。
請求項3に記載の発明は、前記1又は複数のプロセッサは、読み取り対象である原稿の搬送に使用される速度別に前記閾値の設定を受け付ける、請求項2に記載の画像処理システムである。
請求項4に記載の発明は、前記1又は複数のプロセッサは、第1の速度用の前記閾値が、第1の速度よりも遅い第2の速度用の前記閾値よりも大きくなるように設定の受け付けを制御する、請求項3に記載の画像処理システムである。
請求項5に記載の発明は、前記1又は複数のプロセッサは、原稿詰まりの検出時に記録された前記搬送距離又は前記経過時間の履歴に基づいて前記閾値を設定する、請求項1に記載の画像処理システムである。
請求項6に記載の発明は、前記1又は複数のプロセッサは、読み取り対象である原稿の幅及び厚みのいずれか1つに対応する前記履歴に基づいて前記閾値を設定する、請求項5に記載の画像処理システムである。
請求項7に記載の発明は、前記1又は複数のプロセッサは、読み取り対象である原稿の搬送速度の指定に応じて前記閾値の設定を切り替える、請求項1に記載の画像処理システムである。
請求項8に記載の発明は、前記1又は複数のプロセッサは、イメージの読み取りの終了とイメージの形成の終了とを一致させる条件を満たす原稿の搬送距離又は経過時間が前記閾値より大きい場合、当該条件を満たす原稿の搬送距離又は経過時間を、媒体へのイメージの形成を開始するタイミングとして使用する、請求項1に記載の画像処理システムである。
請求項9に記載の発明は、前記1又は複数のプロセッサは、読み取られたイメージを指定された寸法の媒体に形成する場合にあって、イメージの読み取りの終了とイメージの形成の終了とを一致させる条件を満たす原稿の搬送距離又は経過時間が前記閾値より大きいとき、当該条件を満たす原稿の搬送距離又は経過時間を、媒体へのイメージの形成を開始するタイミングとして使用する、請求項1に記載の画像処理システムである。
請求項10に記載の発明は、前記1又は複数のプロセッサは、読み取られたイメージを指定された寸法の媒体に形成する場合にあって、イメージの読み取りの終了とイメージの形成の終了とを一致させる条件を満たす原稿の搬送距離又は経過時間が前記閾値より小さいとき、イメージの読み取りが開始されてからの原稿の搬送距離又は経過時間が前記閾値を超過した後に、媒体へのイメージの形成の開始を指示する、請求項1に記載の画像処理システムである。
請求項11に記載の発明は、コンピュータに、読み取り対象である原稿の搬送と並行して、読み取り中の原稿のイメージを媒体に形成する場合、イメージの読み取りが開始されてからの原稿の搬送距離又は経過時間が、原稿の搬送が安定する距離又は時間として設定された閾値を超過した後に、媒体へのイメージの形成の開始を指示する機能、を実現させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明によれば、最大処理時間長を最短にする観点から、原稿の読み取りと並行に実行される媒体へのイメージの形成を開始するタイミングを決定する場合に比して、原稿詰まりに伴う媒体の廃棄を少なくできる。
請求項2記載の発明によれば、閾値の設定を容易化できる。
請求項3記載の発明によれば、搬送の速度に応じた閾値の設定を可能にできる。
請求項4記載の発明によれば、閾値の設定を支援できる。
請求項5記載の発明によれば、原稿詰まりの履歴を閾値の設定に反映できる。
請求項6記載の発明によれば、原稿の幅や厚みに応じた閾値を設定できる。
請求項7記載の発明によれば、読み取り対象である原稿の搬送速度に応じた閾値を設定できる。
請求項8記載の発明によれば、イメージの形成がイメージの読み取りに追いつかないようにできる。
請求項9記載の発明によれば、原稿の読み取り終了後にイメージの形成が開始されないようにできる。
請求項10記載の発明によれば、原稿詰まりに伴う媒体の廃棄を少なくできる。
請求項11記載の発明によれば、最大処理時間長を最短にする観点から、原稿の読み取りと並行に実行される媒体へのイメージの形成を開始するタイミングを決定する場合に比して、原稿詰まりに伴う媒体の廃棄を少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1で想定する画像処理システムのシステム構成例を説明する図である。
【
図2】プロセッサの機能構成例を説明する図である。
【
図3】予め設定した原稿の最大長の読み取りの完了時に、イメージデータに対応する画像の用紙への形成が完了する待機時間を説明する図である。
【
図4】原稿詰まりに起因する用紙の廃棄等を少なくする待機時間を説明する図である。
【
図5】ユーザがコピーを指示した場合に画像処理システムで実行される処理動作の一例を説明するフローチャートである。
【
図6】T0≧Tsを満たす場合における原稿の搬送距離と用紙の搬送距離の関係を説明する図である。
【
図7】S≧Lを満たす場合における原稿の搬送距離と用紙の搬送距離の関係を説明する図である。
【
図8】原稿の搬送が安定する距離の設定に使用するユーザインターフェース画面の一例を説明する図である。
【
図9】原稿の搬送が安定する距離の指定に問題がある場合におけるユーザインターフェース画面の変化を説明する図である。
【
図10】ユーザがコピーを指示した場合に画像処理システムで実行される処理動作の一例を説明するフローチャートである。
【
図11】過去に発生した原稿詰まりの履歴を収集したデータベースの一例を説明する図である。
【
図12】原稿の搬送が安定するまでの待機時間の設定に使用するユーザインターフェース画面の一例を説明する図である。
【
図13】他の実施の形態として想定する画像処理システムのシステム構成例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
<実施の形態1>
<システム構成>
図1は、実施の形態1で想定する画像処理システム1のシステム構成例を説明する図である。
【0010】
実施の形態1で想定する画像処理システム1は、プリント機能、スキャナ機能、コピー機能を有している。プリント機能は、用紙にイメージデータに対応する画像を形成する機能をいう。また、スキャナ機能は、原稿からイメージデータを読み取る機能をいう。原稿は、読み取り対象の一例である。コピー機能は、スキャナ機能を用いて読み取ったイメージデータに対応する画像を、プリント機能を用いて用紙に形成する機能である。
【0011】
実施の形態1で想定する画像処理システム1は、システム全体を制御する制御装置10と、処理対象である画像や操作画面を記憶する主記憶装置14と、操作画面の表示やユーザ操作の受け付けに使用する操作パネル15と、原稿のイメージを光学的に読み取る画像入力装置16と、処理対象とする画像データに対して予め定めた処理を加える画像処理ユニット17と、記録媒体である用紙に画像を形成する画像出力装置18と、外部装置との通信に用いられる通信装置19とを有している。なお、制御装置10と各部を接続するバス等の信号線20を通じて接続されている。
【0012】
制御装置10は、プログラムを実行するプロセッサ11と、BIOS(Basic Input / Output System)やファームウェアなどのプログラムやデータを記憶するROM(Read Only Memory)12と、プログラムの作業エリアとして使用されるRAM(Random Access Memory)13とにより構成される。制御装置10は、いわゆるコンピュータとして動作する。
主記憶装置14は、例えばハードディスク装置や半導体メモリで構成される。ここでのハードディスク装置や半導体メモリは、記憶媒体の一例である。
【0013】
操作パネル15は、例えばタッチパネルと、ボタンやスイッチ等の物理キーで構成される。
タッチパネルは、例えば表示デバイスと静電容量式のフィルムセンサで構成される。静電容量式のフィルムセンサは、表示デバイスの視認を妨げない透過性の高い素材で構成され、表示デバイスの表示面に取り付けられる。表示デバイスは、例えば液晶ディスプレイ、有機EL(=Electro Luminescence)ディスプレイで構成される。
【0014】
画像入力装置16は、いわゆるスキャナである。本実施の形態で想定する画像入力装置16には、原稿台に取り付けられた原稿を搬送する搬送ローラその他の搬送機構と、照明光源と、搬送中の原稿からイメージデータを読み取るイメージセンサとが設けられている。
照明光源は、線状の照明光を搬送中の原稿に照射する光源である。本実施の形態の場合、照明光が照射される位置を読み取り位置という。本実施の形態における読み取り位置は固定である。
【0015】
イメージセンサには、例えばCCD(=Charge Coupled Devices)やCIS(=Contact Image Sensor)を使用する。本実施の形態における画像入力装置16は、読み取った原稿のイメージデータの出力形式として、例えばフルカラー形式、グレースケール形式、白黒形式のいずれにも対応する。
本実施の形態における画像入力装置16による原稿の読み取りは1枚単位で実行される。すなわち、画像入力装置16は、1枚の原稿からイメージデータが読み取られるたびに、イメージデータの表示や保存を実行する。
【0016】
本実施の形態における画像入力装置16は、A0サイズ、A1サイズ、A2サイズ、A3サイズ、A4サイズその他の定型サイズだけでなく、事前に定められた最大幅と最大長を満たす任意の原稿からイメージデータを読み取ることが可能である。ここでの最大幅は概略1mであり、最大長は概略16mである。このように最大長(すなわち送り長)が長い原稿をコピーする場合、原稿の全長の読み取りが終了した後に用紙に対するプリントを開始したのでは、コピーが終わるまでの時間が長くなる。
【0017】
そこで、前述したように、原稿の読み込みの途中でプリントを開始し、原稿の読み取り終了とプリントの終了との時間差を少なくするシンクロコピーモードが用意されている。シンクロコピーモードは、生産性を優先するモードの一例である。
この他、画像入力装置16が読み取り可能な原稿には、最小厚と最大厚が定められている。例えば最小厚は概略0.2mmであり、最大厚は概略13mmである。原稿の厚みは、例えば厚みの調整に用いるレバーの目盛りの位置の読み取りや検出により特定が可能である。
【0018】
さらに、本実施の形態で使用する画像入力装置16は、複数の読み取り速度に対応する。ユーザは、原稿の読み取りを開始する前に読み取り速度を切り替えることが可能である。本実施の形態では、「高速」、「中速」、「低速」の3段階を想定する。「中速」は「高速」の約半分の速度であり、「低速」は「中速」の約3分の1の速度である。なお、この速度比は一例である。
【0019】
画像処理ユニット17は、例えばレベル補正その他の前処理、画質の向上に関する処理を実行する。画質に関する処理には、例えば濃度、シャープネス、コントラスト、地色除去がある。
画像出力装置18は、例えば電子写真方式又はインクジェット方式により、ロール紙やカット紙の表面にイメージをプリントする装置である。
【0020】
本実施の形態の場合、A0サイズ、A1サイズ、A2サイズ、A3サイズ、A4サイズのカット紙、予め定めた幅と直径に巻き取ったロール紙を想定する。なお、手差し給紙される用紙の幅と長さは予め定められている。もっとも、用紙のサイズはこれに限らない。
通信装置19は、例えばイーザネット(登録商標)を通じ、ネットワークに接続されたサーバ、コンピュータ、ストレージ装置その他の外部装置と通信する。
【0021】
<機能構成>
図2は、プロセッサ11の機能構成例を説明する図である。
図2には、
図1との対応部分に対応する符号を付して示している。
図2に示す機能部は、プログラムの実行を通じて実現される。なお、
図2には、プロセッサ11が実現する機能部のうちコピー機能に関連する部分のみを表している。
図2では、代表的な機能として、コピー条件設定部111と、スキャン制御部112と、待機時間算出部113と、プリント制御部114とを有している。
【0022】
コピー条件設定部111は、操作パネル15を通じて指定されたコピー条件を設定する機能部である。コピー条件には、例えば出力サイズを指定されたサイズに固定する定形コピーモード、原稿の読み取りと画像の形成とが並行して進行するシンクロコピーモード、原稿の搬送が安定する距離S、用紙のサイズ、排出先、後処理の有無や後処理の内容がある。
本実施の形態の場合、原稿の搬送が安定する距離Sは、工場出荷時に初期値として設定されている。ここでの原稿の搬送が安定する距離Sは、例えば画像入力装置16で選択可能な原稿の搬送速度の最高値に基づいて定められる。このため、本実施の形態の場合、コピー条件としてユーザが指定する必要はない。ここでの距離Sは、閾値の一例である。
【0023】
スキャン制御部112は、画像入力装置16(
図1参照)における原稿の読み取りを制御する機能部である。具体的には、スキャン制御部112は、原稿の取り込み口への原稿の取り付け又は挿入を検知すると、画像入力装置16に対して原稿の搬送とイメージデータの読み取りを指示する。
なお、スキャン制御部112は、コピー条件設定部111から通知があった搬送速度等を搬送に先立って画像入力装置16に指示する。
【0024】
また、搬送速度等の指示が完了すると、スキャン制御部112は、画像入力装置16に対し、原稿のイメージデータの読み取り開始を指示する。
なお、スキャン(読み取り)の開始タイミングは、スキャン制御部112を通じ、プリント制御部114に通知される。この通知をトリガーとして、プリント制御部114における待機時間の計測が開始される。
この他、スキャン制御部112は、画像入力装置16で読み取った原稿のイメージデータの主記憶装置14への書き込みを制御する。
【0025】
待機時間算出部113は、コピー条件設定部111で受け付けたコピー条件に応じ、原稿のイメージデータの読み取り開始からイメージデータのプリント開始までの待機時間を算出する機能部である。
すなわち、待機時間算出部113は、定型コピーモードとシンクロコピーモードで使用する待機時間を設定する。スキャンの開始タイミングから待機時間が経過すると、用紙に対する画像の形成が開始される。換言すると、用紙の搬送が開始される。
このように、待機時間は「プリント開始タイミング」の特定に使用される。
【0026】
本実施の形態の場合、待機時間は、おおよそ2つに分類される。
1つは、予め設定した原稿の最大長Lの読み取り完了時に、イメージデータに対応する画像の用紙への形成も完了する待機時間T0である。換言すると、待機時間T0は、原稿からのイメージデータの読み取りが終了するタイミングと用紙に対する画像の形成が終了するタイミングが一致するプリント開始タイミングを与える。ここでの待機時間T0は、原稿の最大長Lと、原稿の搬送速度Siと、用紙の搬送速度Soに基づいて算出される。
【0027】
他の1つは、原稿の搬送が安定する距離Sの搬送に要する待機時間Tsである。ここでの待機時間Tsは、原稿の搬送が安定する距離Sと、原稿の搬送速度Siに基づいて算出される。
ここでの待機時間T0と待機時間Tsは、原稿の読み取りの開始からの経過時間の一例である。また、待機時間T0と待機時間Tsは、閾値の一例である。
【0028】
プリント制御部114は、主記憶装置14に記憶されているイメージデータの画像処理ユニット17及び画像出力装置18(
図1参照)への出力を制御する機能部である。
プリント制御部114は、スキャンが開始されたタイミングからプリントを開始するまでの待機時間の通知を待機時間算出部113から受けとる。なお、プリント制御部114は、スキャンを開始したタイミングの通知をスキャン制御部112から受けとると、待機時間の経過を監視する。待機時間の経過が確認されると、プリント制御部114は、主記憶装置14から読み出したイメージデータに対応する画像の用紙への形成を開始する。
【0029】
<待機時間の説明>
図3は、予め設定した原稿の最大長Lの読み取りの完了時に、イメージデータに対応する画像の用紙への形成が完了する待機時間T0を説明する図である。横軸は時間であり、縦軸は搬送距離である。また、原稿からのイメージデータの読み取りが開始する時点を原点とする。
図3では、原稿の搬送に伴う搬送距離と時間の関係を実線で示し、用紙の搬送に伴う搬送距離と時間の関係を破線で示している。
【0030】
本実施の形態の場合、用紙の搬送速度は、原稿の搬送速度よりも速い。このため、破線の傾きの方が実線の傾きよりも大きくなっている。
図3の場合、原稿の搬送距離を示す実線が原稿の最大長Lに達したタイミングで、用紙の搬送距離を示す破線が用紙の最大長に達したタイミングで互いに交差している。
このとき、プリント開始タイミングT1は、待機時間T0に一致する。なお、待機時間T0に対応する原稿の搬送距離はLsで表される。
【0031】
この他、
図3には、原稿詰まりの発生タイミングを下向きの三角形の記号で示している。なお、原稿詰まりは、待機時間T0の後に発生している。つまり、原稿詰まりが発生した時点で、用紙の搬送は既に開始している。
原稿詰まりが発生した場合、原稿のイメージデータの読み取りを最初から再開する必要があるが、既に画像の形成が開始されていた用紙は、廃棄の対象になる。勿論、原稿詰まりが発生するまでに印刷に使用されたトナーやインクも無駄になる。
【0032】
原稿詰まりに起因する用紙の廃棄を無くすには、原稿の読み取りの完了を待って用紙への画像の形成を開始するとよい。しかし、それではシンクロコピーモードを設ける趣旨に反することになる。
図4は、原稿詰まりに起因する用紙の廃棄等を少なくする待機時間Tsを説明する図である。
図4には、
図3との対応部分に対応する符号を付して示している。
搬送方向の距離が長い原稿の搬送中の原稿詰まりは、原稿の搬送を開始した直後に出現する可能性が高く、搬送距離が長くなるのに伴って原稿詰まりのリスクは小さくなることが知られている。
【0033】
図4では、原稿の搬送が安定する距離S(>Ls)の経過後に(すなわち、距離Sに対応する時間Ts(>T0)の経過後に)、用紙に対する原稿の形成が開始されている。
図4でも、原稿の搬送中に原稿詰まりが発生している。ただし、
図4では、原稿詰まりの発生が、原稿の搬送が安定する距離Sより前に生じている。換言すると、原稿詰まりは、プリント開始タイミングT1より前に発生している。
このため、用紙に対する画像の形成は開始されていない。この場合、原稿詰まりが発生しても、用紙の廃棄や記録材であるトナーやインクの無駄は発生せずに済む。
【0034】
<処理動作の説明>
図5は、ユーザがコピーを指示した場合に画像処理システム1(
図1参照)で実行される処理動作の一例を説明するフローチャートである。
図5に示す処理動作は、プロセッサ11(
図1参照)によるプログラムの実行を通じて実現される。なお、図中に示す記号のSは、ステップを意味する。
まず、プロセッサ11は、原稿の搬送終了とプリント終了が同時になる条件を満たす原稿の搬送距離Lsを算出する(ステップ1)。なお、搬送距離Lsは
図3及び
図4に示されている。
【0035】
ここでの搬送距離Lsは、次式により算出される。
Ls=L-(L×Si)/So …式1
因みに、Lは原稿の最大長であり、Siは原稿の搬送速度であり、Soは用紙の搬送速度である。
次に、プロセッサ11は、原稿を搬送距離Lsだけ搬送するのに要する時間T0を算出する(ステップ2)。時間T0は
図3及び
図4に示されている。
ここでの時間T0は、次式により算出される。
T0=Ls/Si …式2
【0036】
時間T0が算出されると、プロセッサ11は、原稿の搬送が安定する時間Tsを算出する(ステップ3)。
なお、時間Tsの算出には、原稿の搬送が安定する距離Sの情報が必要とされる。本実施の形態の場合、プロセッサ11は、コピー条件として受け付けた原稿の搬送速度の区分(例えば「高速」、「中速」、「低速」)によらず単一の距離Sを使用する。
ここでの時間Tsは、次式により算出される。
Ts=S/Si …式3
前述したように、Siは原稿の搬送速度である。
【0037】
次に、プロセッサ11は、シンクロコピーモードか定型コピーモードかを判定する(ステップ4)。
ステップ4でシンクロコピーモードと判定された場合、プロセッサ11は、T0<Tsか否かを判定する(ステップ5)。換言すると、プロセッサ11は、原稿の搬送終了とプリント終了が同時になる条件を満たす待機時間T0が、原稿の搬送が安定する距離の搬送に必要な待機時間Tsより短いか否かを判定する。
【0038】
ステップ5で肯定結果が得られる場合(すなわち、
図4の関係を満たす場合)、プロセッサ11は、プリント開始タイミングT1に待機時間Tsを設定する(ステップ6)。
この場合、プロセッサ11は、原稿の搬送が安定する距離Sだけ原稿が搬送されたタイミングで用紙の搬送を開始する。原稿詰まりの発生確率は、原稿の搬送が安定する距離Sまで原稿が搬送された後は低いので、原稿詰まりに起因する用紙の廃棄は少なく済む。
【0039】
一方、ステップ5で否定結果が得られた場合、プロセッサ11は、プリント開始タイミングT1に待機時間T0を設定する(ステップ7)。
図6は、T0≧Tsを満たす場合における原稿の搬送距離と用紙の搬送距離の関係を説明する図である。
図6には、
図4との対応部分に対応する符号を付して示している。
図6の場合、プリント開始タイミングT1は、原稿の搬送が安定する待機時間Tsよりも後になる。従って、プリント開始タイミングT1の経過後に原稿詰まりが発生する可能性は低い。しかも、このプリント開始タイミングT1で用紙の搬送を開始すると、原稿の搬送終了とプリント終了が同時になる。
【0040】
次に、ステップ4で定型コピーモードと判定された場合について説明する。定型コピーモードは、指定された用紙サイズに合わせて、原稿から読み取ったイメージデータの画像を拡大コピー又は縮小コピーするモードである。例えばA2サイズの原稿をA1サイズの用紙に拡大コピーするモードである。
なお、読み取り対象である原稿の寸法は、操作パネル15(
図1参照)を通じて指定された原稿の向きと、原稿の取り込み口に挿入された原稿の幅の検知結果に基づいて特定される。
【0041】
この場合、プロセッサ11は、S<Lか否かを判定する(ステップ8)。換言すると、プロセッサ11は、原稿の搬送が安定する距離Sが、原稿の最大長Lより短いか否かを判定する。
ステップ8で肯定結果が得られる場合(すなわち、
図4の関係を満たす場合)、プロセッサ11は、プリント開始タイミングT1に待機時間Tsを設定する(ステップ9)。
この場合、プロセッサ11は、原稿の搬送が安定する距離Sだけ原稿が搬送されたタイミングで用紙の搬送を開始する。
【0042】
一方、ステップ8で否定結果が得られた場合、プロセッサ11は、プリント開始タイミングT1に待機時間T0を設定する(ステップ10)。
図7は、S≧Lを満たす場合における原稿の搬送距離と用紙の搬送距離の関係を説明する図である。
図7には、
図6との対応部分に対応する符号を付して示している。
図7の場合、プリント開始タイミングT1は、原稿の搬送が安定する待機時間Tsよりも前になる。従って、プリント開始タイミングT1の経過後に原稿詰まりが発生する可能性がある。
【0043】
しかし、原稿の搬送が安定する待機時間Tsで用紙の搬送を開始するのでは、既に原稿の搬送が終了しているのにプリントが開始されないことになる。これでは、生産性の観点から好ましくない。
そこで、本実施の形態では、定型コピーモードの場合、原稿詰まりに備えて用紙の搬送(すなわちコピー出力)の開始を遅らせるのではなく、生産性を優先している。なお、ステップ8で否定結果が得られるような原稿は、搬送方向の長さが短いため、原稿詰まりが発生するリスクは相対的に低い。この意味でも、ステップ8で否定結果が得られる場合には、プリント開始タイミングT1に待機時間T0を設定する。
【0044】
<まとめ>
本実施の形態の場合、シンクロコピーモードでは、原稿の搬送が安定する時間Tsを経過した後に用紙の搬送を開始するので(すなわちプリントを開始するので)、生産性を優先しつつも原稿詰まりに伴う媒体の廃棄を少なくすることが可能になる。
【0045】
なお、定型コピーモードにおいて、原稿の最大長Lが原稿の搬送が安定する距離Sより短い場合には、シンクロコピーモードと同様、原稿の搬送が安定する時間Tsを経過した後に用紙の搬送を開始するので(すなわちプリントを開始するので)、生産性を優先しつつも原稿詰まりに伴う媒体の廃棄を少なくすることが可能になる。
【0046】
また、定型コピーモードにおいて、原稿の最大長Lが原稿の搬送が安定する距離Sより長い場合には、原稿の搬送終了とプリント終了が同時になるタイミングで用紙の搬送を開始するので(すなわちプリントを開始するので)、原稿の搬送が終了した後に用紙の搬送を開始せずに済む。すなわち、生産性の低下が回避される。
【0047】
<実施の形態2>
本実施の形態でも、
図1で説明した画像処理システム1を前提とする。また、本実施の形態で使用するプロセッサ11(
図1参照)も、
図2に示す機能構成を有している。
ただし、本実施の形態で想定する画像処理システム1は、原稿の搬送が安定する距離Sを、画面操作を通じて設定可能とする機能を有している。すなわち、本実施の形態の場合、距離Sは事後的に設定が可能である。
【0048】
距離Sを設定するタイミングには、例えば画像処理システム1(
図1参照)の導入時や保守を担当するスタッフによるメンテナンス時が想定される。この他、距離Sは、ユーザがコピーモードの選択時に設定することも可能である。
以下では、距離Sの設定に使用するユーザインターフェース画面について説明する。
図8は、原稿の搬送が安定する距離Sの設定に使用するユーザインターフェース画面200の一例を説明する図である。
【0049】
図8に示すユーザインターフェース画面200は、操作パネル15(
図1参照)に表示される。
本実施の形態の場合、ユーザインターフェース画面200は、コピー条件の設定時に操作パネル15に表示される。
図8におけるユーザインターフェース画面200は、原稿の搬送速度欄201と、原稿の搬送が安定する距離Sの指定欄202と、「取り消し」ボタン203と、「決定」ボタン204とで構成されている。
【0050】
原稿の搬送速度欄201には「原稿読み取り速度」とのタイトルが付されている。
図8の場合、原稿の搬送速度欄201は、「低速」欄201A、「中速」欄201B、「高速」欄201Cで構成される。すなわち、3つの速度に分類されている。
原稿の搬送が安定する距離Sの指定欄202には「安定して読める長さ」とのタイトルが付されている。
図8の場合、原稿の搬送が安定する距離Sの指定欄202は、原稿の搬送速度に対応付けて3つ設けられている。
【0051】
図8の場合、「低速」欄201Aに対応する指定欄202Aには「1」が表示されている。すなわち、原稿の搬送が安定する距離Sは1mであると示されている。「中速」欄201Bに対応する指定欄202Bには「3」が表示されている。すなわち、原稿の搬送が安定する距離Sは3mであると示されている。「高速」欄201Cに対応する指定欄202Cには「5」が表示されている。すなわち、原稿の搬送が安定する距離Sは5mであると示されている。
【0052】
距離Sのこれらの数値は、初期値でもよいし、前回に使用された設定値でもよいし、ユーザが新たに入力又は修正した数値でもよい。
なお、原稿の搬送速度が速くなるほど、原稿の搬送が安定する距離Sは長くなる。搬送速度が速くなるほど搬送中の原稿は搬送方向に対して傾き易くなり、原稿詰まりも相対的に生じ易くなるためである。
【0053】
なお、「高速」を第1の速度の一例とすると、「高速」より速度が遅い「中速」や「低速」は第2の速度の一例となる。また、「中速」を第1の速度の一例とすると、「低速」は第2の速度の一例となる。
「取り消し」ボタン203が操作されると、ユーザや保守スタッフが入力した数値が取り消され、直前の数値に戻る。なお、工場出荷時に初期値として入力された数値に戻してもよい。
「決定」ボタン204が操作されると、ユーザや保守スタッフによる入力が確定し、入力された数値がステップ3(
図5参照)で参照される状態になる。
【0054】
図9は、原稿の搬送が安定する距離Sの指定に問題がある場合におけるユーザインターフェース画面200(
図5参照)の変化を説明する図である。
図9には、
図8との対応部分に対応する符号を付して示している。
図9には、誤った数値が入力された直後のユーザインターフェース画面200Aと、入力された数値の誤りを示すユーザインターフェース画面200Bの表示例が示されている。
【0055】
ユーザインターフェース画面200Aの場合、「中速」欄201Bに対応する指定欄202Bには「6」が表示されている。この値は、「低速」欄201Aに対応する指定欄202Aの「1」よりも大きい数字であるだけでなく、「高速」欄201Cに対応する指定欄202Cの「5」よりも大きい数字である。
しかし、原稿詰まりの発生リスクは、「高速」の方が「中速」よりも高い。このため、「中速」欄201Bに対応する指定欄202Bには、「高速」欄201Cに対応する指定欄202Cの数値よりも小さい数値が入力される必要がある。
【0056】
このため、ユーザインターフェース画面200Bには、指定欄202Bに対応付けてユーザの注意を喚起するポップアップ210が表示されている。
図9に示すポップアップ210には、「注意!」、「「高速」の設定値より小さい値を入力してください」が表示されている。
なお、このポップアップ210の表示や文面は一例であり、誤った数値の入力を受け付けない、不図示のスピーカーからアラーム音を出力する、指定欄202Bやユーザインターフェース画面200Aを点滅させる等の方法によって、入力された数値の誤りをユーザに通知してもよい。
【0057】
<まとめ>
本実施の形態の場合、原稿の搬送が安定する距離Sを設定可能とするので、距離Sの設定や調整が容易になる。
また、本実施の形態では、原稿の搬送が安定する距離Sを原稿の搬送速度別に設定することが可能になる。
また、本実施の形態では、搬送速度に応じた距離Sを設定するユーザの入力を支援することが可能になる。
また、本実施の形態の場合、原稿の搬送速度に応じて距離Sが設定されるので、用紙が廃棄される可能性が少なくなる。
【0058】
<実施の形態3>
本実施の形態でも、
図1で説明した画像処理システム1を前提とする。また、本実施の形態で使用するプロセッサ11(
図1参照)も、
図2に示す機能構成を有している。
ただし、本実施の形態で想定する画像処理システム1は、原稿の搬送が安定する距離Sを過去の原稿詰まりの履歴に基づいて設定する機能を有している。すなわち、本実施の形態では、個々のユーザ別に記録されている原稿詰まりの履歴に基づいて距離Sを設定可能とする。
【0059】
例えば同じ画像処理システム1を使用していても、原稿詰まりの発生頻度が高いユーザと発生頻度が低いユーザが現れることがある。このような現象は、例えば原稿を正しく挿入するユーザと、原稿を斜めに挿入する癖があるユーザとの間に認められる。
また、コピーの対象である原稿の寸法に応じ、原稿詰まりが発生する可能性が高い搬送距離の特定が可能な場合がある。
そこで、本実施の形態の場合、原稿詰まりの履歴に関する情報に基づいて、搬送が安定する距離Sを設定する。
【0060】
図10は、ユーザがコピーを指示した場合に画像処理システム1(
図1参照)で実行される処理動作の一例を説明するフローチャートである。
図10には、
図5との対応部分に対応する符号を付して示している。
図10では、ステップ2とステップ3の間に、原稿詰まり検出時の履歴に基づいて距離Sを設定するステップ11を設ける点で相違する。
ここでの履歴は、該当する画像処理システム1を使用するユーザ別に記録されている履歴である。
【0061】
図11は、過去に発生した原稿詰まりの履歴を収集したデータベース300の一例を説明する図である。
図11に示すデータベース300は、発生日時301と、ユーザID302と、原稿の幅303と、原稿の厚み304と、原稿詰まりが発生した搬送距離305で構成されている。
因みに、幅が狭い原稿は、幅が広い原稿よりも原稿詰まりが発生する可能性が高い。また、薄手の原稿は、厚手の原稿よりも原稿詰まりが発生する可能性が高い。
【0062】
そこで、本実施の形態では、原稿の幅303と原稿の厚み304の両方をデータベース300に記録している。
もっとも、データベース300に記録される情報はこれらに限らないし、これらの一部でもよい。
図11に示すデータベース300からは、過去に原稿詰まりが発生しているユーザと発生していないユーザが分かる。
【0063】
例えば過去に原稿詰まりが発生していないユーザについては、原稿の搬送が安定する距離Sとして工場出荷時等に設定された初期値を用いてもよい。
もっとも、コピーの対象である原稿の幅と厚みの両方と類似する原稿について原稿詰まりが発生した搬送距離の最大値や平均値を特定し、特定された数値を原稿の搬送が安定する距離Sとして設定してもよい。
一方、過去に原稿詰まりが発生したユーザについては、該当するユーザについて原稿詰まりが発生した際の搬送距離の最大値や平均値を特定し、特定された数値を原稿の搬送が安定する距離Sとして設定してもよい。
【0064】
なお、最大値や平均値の算出には、コピーの対象である原稿の幅と厚みの両方と類似する原稿について原稿詰まりが発生した搬送距離を抽出して用いてもよい。
因みに、過去に原稿詰まりが発生したユーザの場合にも、ユーザを区別せず、コピーの対象である原稿の幅と厚みの両方と類似する原稿について原稿詰まりが発生した搬送距離の最大値や平均値を特定し、特定された数値を原稿の搬送が安定する距離Sとして設定してもよい。
ステップ11で原稿の搬送が安定する距離Sが設定されると、プロセッサ11は、前述した実施の形態1と同様の処理を実行する。
【0065】
<まとめ>
本実施の形態の場合、過去に発生した原稿詰まりの履歴に基づいて原稿の搬送が安定する距離Sを設定するので、原稿詰まりの履歴を閾値の設定に反映することが可能になる。また、原稿の幅や厚みに応じた閾値を設定することが可能になる。その結果、原稿詰まりに起因する用紙の廃棄が少なく済む。
【0066】
<他の実施の形態>
(1)以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の技術的範囲は前述した実施の形態に記載の範囲に限定されない。前述した実施の形態に、種々の変更又は改良を加えたものも、本発明の技術的範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0067】
(2)前述の実施の形態2においては、距離Sを搬送速度の区分別に指定可能な場合について説明したが、原稿の搬送速度とは無関係に距離Sの設定を指定可能としてもよい。
【0068】
(3)前述の実施の形態2においては、距離Sを3つの搬送速度の区分別に指定可能な場合について説明したが、距離Sを2つの搬送速度の区分別に指定可能としてもよいし、4つ以上の搬送速度の区分別に指定可能としてもよい。また、原稿の搬送速度を予め定めた範囲内で任意に指定可能な場合、指定した搬送速度別に距離Sの設定を指定可能としてもよい。
【0069】
(4)前述の実施の形態2においては、搬送速度の区分別に距離Sを設定する場合について説明した。しかし、原稿詰まりは、搬送速度だけでなく、原稿の厚みに応じて設定可能としてもよい。この際、厚みを複数の区分とし、厚みの区分別に距離Sを設定可能としてもよい。
因みに、薄手の原稿は厚手の原稿よりも原稿詰まりが発生し易い。このため、薄手の原稿の距離Sは、厚手の原稿の距離Sよりも大きな値となる。従って、相対的に薄手の区分に対する距離Sの設定値が、厚手の区分に対する距離Sの設定値よりも小さい場合には、ポップアップ210(
図9参照)等を表示してもよい。
【0070】
(5)前述の実施の形態2においては、搬送速度の区分別に距離Sを設定する場合について説明した。しかし、原稿詰まりは、搬送速度だけでなく、原稿の幅に応じて設定可能としてもよい。この際、幅を複数の区分とし、幅の区分別に距離Sを設定可能としてもよい。
因みに、幅が長い原稿は幅が短い原稿よりも原稿詰まりが発生し易い。このため、幅が長い原稿の距離Sは、幅が短い原稿の距離Sよりも大きな値となる。従って、相対的に幅が長い区分に対する距離Sの設定値が、幅が短い区分に対する距離Sの設定値よりも小さい場合には、ポップアップ210(
図9参照)等を表示してもよい。
【0071】
(6)前述の実施の形態においては、用紙の搬送を開始する(すなわちプリントを開始する)タイミングの判定に使用する閾値として原稿の搬送が安定する距離Sを用いる場合について説明したが、距離Sに対応する待機時間Tsを使用してもよい。
図12は、原稿の搬送が安定するまでの待機時間Tsの設定に使用するユーザインターフェース画面200Cの一例を説明する図である。
図12には、
図8との対応部分に対応する符号を付して示している。
【0072】
図12に示すユーザインターフェース画面200Cも、操作パネル15(
図1参照)に表示される。
例えばユーザインターフェース画面200Cは、コピー条件の設定時に操作パネル15に表示される。
図12におけるユーザインターフェース画面200Cは、原稿の搬送速度欄201と、原稿の搬送が安定するまでの待機時間Tsの指定欄205と、「取り消し」ボタン203と、「決定」ボタン204とで構成されている。
【0073】
図12の場合、原稿の搬送が安定するまでの待機時間Tsの指定欄205には「安定して読める時間」とのタイトルが付されている。
図12の場合、原稿の搬送が安定する時間Tsの指定欄205は、原稿の搬送速度に対応付けて3つ設けられている。
図12の場合、「低速」欄201Aに対応する指定欄205Aには「10」が表示されている。すなわち、原稿の搬送が安定するまでの待機時間Tsは10秒であると示されている。「中速」欄201Bに対応する指定欄205Bには「15」が表示されている。すなわち、原稿の搬送が安定するまでの待機時間Tsは15秒であると示されている。「高速」欄201Cに対応する指定欄205Cには「17」が表示されている。すなわち、原稿の搬送が安定するまでの待機時間Tsは17秒であると示されている。
【0074】
待機時間Tsのこれらの数値は、初期値でもよいし、前回に使用された設定値でもよいし、ユーザが新たに入力又は修正した数値でもよい。
なお、原稿の搬送速度が速くなるほど、原稿の搬送が安定するまでの待機時間Tsは長くなる。搬送速度が速くなるほど搬送中の原稿は搬送方向に対して傾き易くなり、原稿詰まりも相対的に生じ易くなるためである。
【0075】
(7)前述の実施の形態3においては、コピーの対象である原稿の幅と厚みの両方が類似する原稿に関する原稿詰まりの履歴を用いて原稿の搬送が安定する距離Sを設定する例について説明したが、コピーの対象である原稿の幅又は厚みが類似する原稿に関する原稿詰まりの履歴を用いて原稿の搬送が安定する距離Sを設定してもよい。
【0076】
(8)前述の実施の形態3においては、原稿詰まりが発生した搬送距離がデータベース300に記録される場合について説明したが、原稿の搬送開始から原稿詰まりが発生するまでの経過時間がデータベース300に記録されていてもよい。この場合、経過時間の履歴に基づいて、用紙の搬送を開始するまでの待機時間を設定してもよいし、原稿の搬送が安定する距離Sを設定してもよい。ここでの待機時間は、経過時間の一例である。
【0077】
(9)前述の実施の形態3においては、該当する画像処理システム1について収集された原稿詰まりの履歴に基づいて原稿の搬送が安定する距離Sを設定する場合について説明したが、原稿の搬送が安定する距離Sの設定には、ネットワーク上に存在するサーバ等に記録されている複数の画像処理システム1から収集された原稿詰まりの履歴を使用してもよい。すなわち、ビッグデータとして収集された原稿詰まりの履歴を使用してもよい。
また、前述したビッグデータの解析等により、原稿の寸法や搬送速度の組み合わせに応じて特定された原稿の発生が安定する距離Sや待機時間Tsを使用してもよい。
【0078】
(10)前述の実施の形態では、画像入力装置16(
図1参照)と画像出力装置18(
図1参照)を一体的に含む画像処理システム1(
図1参照)を想定しているが、画像入力装置16と画像出力装置18がそれぞれ独立の装置でもよい。すなわち、画像入力装置16は、いわゆるスキャナ単体でもよい。
図13は、他の実施の形態として想定する画像処理システム1Aのシステム構成例を説明する図である。
図13には、
図1との対応部分に対応する符号を付して示している。
【0079】
図13に示す画像処理システム1Aの場合には、画像入力装置16のプロセッサと、画像出力装置18のプロセッサとが連携して前述した処理動作を実行すればよいし、画像入力装置16のプロセッサが単独で前述した処理動作を実行してもよいし、画像入力装置16のプロセッサが単独で前述した処理動作を実行してもよい。
なお、ネットワーク21上に設けたプリントサーバのプロセッサが、画像入力装置16と画像出力装置18が連携動作するように前述した処理動作を実行してもよい。
【0080】
(11)前述した実施の形態におけるプロセッサは、広義的な意味でのプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU(=Central Processing Unit))の他、専用的なプロセッサ(例えばGPU(=Graphical Processing Unit)、ASIC(=Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(=Field Programmable Gate Array)、プログラム論理デバイス等)を含む。
また、前述した各実施の形態におけるプロセッサの動作は、1つのプロセッサが単独で実行してもよいが、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して実行してもよい。また、プロセッサにおける各動作の実行の順番は、前述した各実施の形態に記載した順番のみに限定されるものでなく、個別に変更してもよい。
【0081】
<付記>
(((1)))
1又は複数のプロセッサを有し、前記1又は複数のプロセッサは、読み取り対象である原稿の搬送と並行して、読み取り中の原稿のイメージを媒体に形成する場合、イメージの読み取りが開始されてからの原稿の搬送距離又は経過時間が、原稿の搬送が安定する距離又は時間として設定された閾値を超過した後に、媒体へのイメージの形成の開始を指示する、画像処理システム。
(((2)))
前記1又は複数のプロセッサは、画面操作を通じて前記閾値の設定を受け付ける、(((1)))に記載の画像処理システム。
(((3)))
前記1又は複数のプロセッサは、読み取り対象である原稿の搬送に使用される速度別に前記閾値の設定を受け付ける、(((2)))に記載の画像処理システム。
(((4)))
前記1又は複数のプロセッサは、第1の速度用の前記閾値が、第1の速度よりも遅い第2の速度用の前記閾値よりも大きくなるように設定の受け付けを制御する、(((3)))に記載の画像処理システム。
(((5)))
前記1又は複数のプロセッサは、原稿詰まりの検出時に記録された前記搬送距離又は前記経過時間の履歴に基づいて前記閾値を設定する、(((1)))~(((4)))のいずれか1つに記載の画像処理システム。
(((6)))
前記1又は複数のプロセッサは、読み取り対象である原稿の幅及び厚みのいずれか1つに対応する前記履歴に基づいて前記閾値を設定する、(((5)))に記載の画像処理システム。
(((7)))
前記1又は複数のプロセッサは、読み取り対象である原稿の搬送速度の指定に応じて前記閾値の設定を切り替える、(((1)))~(((6)))のいずれか1つに記載の画像処理システム。
(((8)))
前記1又は複数のプロセッサは、イメージの読み取りの終了とイメージの形成の終了とを一致させる条件を満たす原稿の搬送距離又は経過時間が前記閾値より大きい場合、当該条件を満たす原稿の搬送距離又は経過時間を、媒体へのイメージの形成を開始するタイミングとして使用する、(((1)))~(((7)))のいずれか1つに記載の画像処理システム。
(((9)))
前記1又は複数のプロセッサは、読み取られたイメージを指定された寸法の媒体に形成する場合にあって、イメージの読み取りの終了とイメージの形成の終了とを一致させる条件を満たす原稿の搬送距離又は経過時間が前記閾値より大きいとき、当該条件を満たす原稿の搬送距離又は経過時間を、媒体へのイメージの形成を開始するタイミングとして使用する、(((1)))~(((8)))のいずれか1つに記載の画像処理システム。
(((10)))
前記1又は複数のプロセッサは、読み取られたイメージを指定された寸法の媒体に形成する場合にあって、イメージの読み取りの終了とイメージの形成の終了とを一致させる条件を満たす原稿の搬送距離又は経過時間が前記閾値より小さいとき、イメージの読み取りが開始されてからの原稿の搬送距離又は経過時間が前記閾値を超過した後に、媒体へのイメージの形成の開始を指示する、(((1)))~(((9)))のいずれか1つに記載の画像処理システム。
(((11)))
コンピュータに、読み取り対象である原稿の搬送と並行して、読み取り中の原稿のイメージを媒体に形成する場合、イメージの読み取りが開始されてからの原稿の搬送距離又は経過時間が、原稿の搬送が安定する距離又は時間として設定された閾値を超過した後に、媒体へのイメージの形成の開始を指示する機能、を実現させるためのプログラム。
【0082】
(((1)))に係る画像処理システムによれば、最大処理時間長を最短にする観点から、原稿の読み取りと並行に実行される媒体へのイメージの形成を開始するタイミングを決定する場合に比して、原稿詰まりに伴う媒体の廃棄を少なくできる。
(((2)))に係る画像処理システムによれば、システムに応じた閾値の設定を容易化できる。
(((3)))に係る画像処理システムによれば、搬送の速度に応じた閾値の設定を可能にできる。
(((4)))に係る画像処理システムによれば、閾値の設定を支援できる。
(((5)))に係る画像処理システムによれば、原稿詰まりの履歴を閾値の設定に反映できる。
(((6)))に係る画像処理システムによれば、原稿の幅や厚みに応じた閾値を設定できる。
(((7)))に係る画像処理システムによれば、読み取り対象である原稿の搬送速度に応じた閾値を設定できる。
(((8)))に係る画像処理システムによれば、イメージの形成がイメージの読み取りに追いつかないようにできる。
(((9)))に係る画像処理システムによれば、原稿の読み取り終了後にイメージの形成が開始されないようにできる。
(((10)))に係る画像処理システムによれば、原稿詰まりに伴う媒体の廃棄を少なくできる。
(((11)))に係るプログラムによれば、最大処理時間長を最短にする観点から、原稿の読み取りと並行に実行される媒体へのイメージの形成を開始するタイミングを決定する場合に比して、原稿詰まりに伴う媒体の廃棄を少なくできる。
【符号の説明】
【0083】
1、1A…画像処理システム、10…制御装置、11…プロセッサ、12…ROM、13…RAM、14…主記憶装置、15…操作パネル、16…画像入力装置、17…画像処理ユニット、18…画像出力装置、19…通信装置、20…信号線、21…ネットワーク、111…コピー条件設定部、112…スキャン制御部、113…待機時間算出部、114…プリント制御部