(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161711
(43)【公開日】2024-11-20
(54)【発明の名称】防水シート施工用穿孔具
(51)【国際特許分類】
E04D 15/04 20060101AFI20241113BHJP
【FI】
E04D15/04 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076658
(22)【出願日】2023-05-08
(71)【出願人】
【識別番号】000178619
【氏名又は名称】アーキヤマデ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】橋本 雅史
(57)【要約】
【課題】設置対象に防水シートを設置する際に、専用の固定具を取り付けるための取付孔部を固定板に適切に形成する。
【解決手段】刃側部材8は、下方側に膨出して固定板21に対して下方側に窪んだ凹部を形成する凹部形成部と、その凹部形成部の中央部位に配設されて凹部形成部よりも下方側に突出して固定板21に対して取付孔部24を形成する取付孔部形成部とが備えられ、受け側部材は、刃側部材8の凹部形成部に対応して下方側に窪んで凹部形成部と嵌合自在な受け側凹部と、その受け側凹部の中央部位において刃側部材の取付孔部形成部に対応して開口して取付孔部形成部と嵌合自在な受け側開口部とが備えられ、刃側部材8と受け側部材との間に固定板21を挟んだ状態で刃側部材8と受け側部材とを嵌合させることで、固定板21に凹部23と取付孔部24とを形成可能に構成されている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置対象に固定された固定板に防水シートを固定する状態で防水シートを設置する際に、固定板に対して固定具の取付孔部を形成する防水シート施工用穿孔具において、
前記固定板に取付孔部を形成するための刃側部材と、
その刃側部材を受けて嵌合自在な受け側部材とが備えられ、
前記刃側部材は、下方側に膨出して固定板に対して下方側に窪んだ凹部を形成する凹部形成部と、その凹部形成部の中央部位に配設されて凹部形成部よりも下方側に突出して固定板に対して取付孔部を形成する取付孔部形成部とが備えられ、
前記受け側部材は、刃側部材の凹部形成部に対応して下方側に窪んで凹部形成部と嵌合自在な受け側凹部と、その受け側凹部の中央部位において刃側部材の取付孔部形成部に対応して開口して取付孔部形成部と嵌合自在な受け側開口部とが備えられ、
前記刃側部材と前記受け側部材との間に固定板を挟んだ状態で刃側部材と受け側部材とを嵌合させることで、固定板に凹部と取付孔部とを形成可能に構成されている防水シート施工用穿孔具。
【請求項2】
前記刃側部材は、別体に形成された第1分割体と第2分割体とが分割自在に備えられ、第1分割体には凹部形成部が備えられ、第2分割体には取付孔部形成部が備えられ、
前記第1分割体と前記第2分割体とは、取付孔部形成部が凹部形成部よりも下方側に突出する状態に取り付け自在であり、且つ、凹部形成部に対して取付孔部形成部を取り外す状態で取り外し自在に構成されている請求項1に記載の防水シート施工用穿孔具。
【請求項3】
前記取付孔部形成部は、その周方向において間隔を隔てて複数配設されて他の部位よりも下方側に突出する突出部と、その突出部の外方側端部において周方向の全長に亘って配設されて固定板を切断する切断部とが備えられ、
前記突出部は、取付孔部形成部の内方側から外方側に向けて下方側に傾斜する傾斜状に形成されている請求項1又は2に記載の防水シート施工用穿孔具。
【請求項4】
前記切断部は、前記取付孔部形成部の周方向において、前記突出部同士の間の中間部位が一番上方側に位置する湾曲状に形成されている請求項3に記載の防水シート施工用穿孔具。
【請求項5】
前記受け側部材は、前記固定板に当接して固定板の左右方向での位置を規制する左右方向位置規制部が備えられている請求項1又は2に記載の防水シート施工用穿孔具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設置対象に固定された固定板に防水シートを固定する状態で防水シートを設置する際に、固定板に対して固定具の取付孔部を形成する防水シート施工用穿孔具に関する。
【背景技術】
【0002】
屋根下地等の設置対象に防水シートを設置する場合には、例えば、設置対象に固定板を固定した上で、設置対象の上部に防水シートを敷設して、固定板上に接着等により防水シートを固定している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
固定板の配設箇所が防水シートの固定箇所となるので、その固定板の配設箇所が点在配置となると、防水シートの固定強度等に問題が生じる可能性がある。そこで、特許文献1では、固定板として、円形状の第1固定板と帯形状の第2固定板とが備えられ、第1固定板と第2固定板との間隔等が適切な間隔となるように固定板の設置箇所を調整している。
【0004】
防水シートを設置する施工現場では、その施工現場の大きさや形状等に応じて、固定板の設置箇所を調整しており、例えば、帯形状の第2固定板については、必要な長さに切断する等して、その長さも調整する場合がある。よって、設置対象に対してビス等の固定具にて第2固定板を固定する際に、固定すべき位置に固定具の取付孔部が存在しない場合がある。例えば、第2固定板の長手方向に一定の間隔で取付孔部を予め形成していても、施工現場の大きさや形状に合わせて第2固定板の長さを変えると、予め形成した取付孔部の形成位置と固定すべき位置とが合致しない場合がある。また、第2固定板の長さを変えることで、第2固定板の端部に取付孔部がなければ、第2固定板の反り等の問題が生じてしまい、防水シートを適切に固定でき難い状況となる。
【0005】
そこで、第2固定板に対して、ビス等の固定具の取付孔部を形成するための防水シート施工用穿孔具が提案されており、この防水シート施工用穿孔具を用いることで、第2固定板の所望箇所に取付孔部を形成することが可能となる(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4679100号公報
【特許文献2】特開2001-225118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のものでは、屋根下地等の設置対象の上部に防水シートを直接敷設しているが、例えば、設置対象がデッキプレート等の金属屋根である場合には、その金属屋根の上部に断熱材を敷設し、その断熱材の上部に防水シートを敷設しており、金属屋根等の設置対象の上部に、断熱材を介在させる状態で防水シートを敷設する場合がある。
【0008】
このように、断熱材を介在させる場合には、固定板を固定する際に、ビス等の固定具の引き抜き強度を考慮する以外に、風等による防水シートの波打ちにより発生する水平方向の力も考慮しなければならない。設置対象と防水シートとの間に断熱材を介在させる場合には、固定板を固定するための固定具において、防水シートを固定する頭部とデッキプレート等の設置対象に固定される固定部位との間の距離が断熱材の厚み分だけ大きくなるので、防水シートの波打ちにより固定板に水平方向の力が作用すると、固定具の固定部位に対して、大きな水平方向の力が作用するとともに、モーメント力も作用することになる。よって、近年、通常のビス等に加えて、専用の固定具を用いて固定板を設置対象に固定するケースが増えている。
【0009】
専用の固定具を用いる場合には、その専用の固定具の形状等に対応して固定板に取付孔部を形成することが求められるが、特許文献2に記載の防水シート設置用穿孔具では対応できないことがある。例えば、専用の固定具は、通常のビス等に比べて、頭部の形状が大きくなっており、特許文献2に記載の防水シート設置用穿孔具にて取付孔部を形成しても、専用の固定具の頭部が固定板よりも上方側に突出した状態となってしまい、その突出した固定具の頭部に対応する部位だけ防水シートが上方側に突出した状態で設置されてしまう。また、大きな頭部に対して適切な位置に取付孔部を形成し難く、取付孔部の形成位置が適切な位置から位置ズレしてしまう可能性もある。
【0010】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、設置対象に防水シートを設置する際に、例えば、専用の固定具を用いて設置対象に固定板を固定する場合でも、専用の固定具を取り付けるための取付孔部を固定板に適切に形成することができる防水シート施工用穿孔具を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1特徴構成は、設置対象に固定された固定板に防水シートを固定する状態で防水シートを設置する際に、固定板に対して固定具の取付孔部を形成する防水シート施工用穿孔具において、
前記固定板に取付孔部を形成するための刃側部材と、
その刃側部材を受けて嵌合自在な受け側部材とが備えられ、
前記刃側部材は、下方側に膨出して固定板に対して下方側に窪んだ凹部を形成する凹部形成部と、その凹部形成部の中央部位に配設されて凹部形成部よりも下方側に突出して固定板に対して取付孔部を形成する取付孔部形成部とが備えられ、
前記受け側部材は、刃側部材の凹部形成部に対応して下方側に窪んで凹部形成部と嵌合自在な受け側凹部と、その受け側凹部の中央部位において刃側部材の取付孔部形成部に対応して開口して取付孔部形成部と嵌合自在な受け側開口部とが備えられ、
前記刃側部材と前記受け側部材との間に固定板を挟んだ状態で刃側部材と受け側部材とを嵌合させることで、固定板に凹部と取付孔部とを形成可能に構成されている点にある。
【0012】
本構成によれば、刃側部材と受け側部材との間に固定板を挟んだ状態で刃側部材と受け側部材とを嵌合させることで、固定板に凹部と取付孔部とを形成することができる。刃側部材では、取付孔部形成部が、凹部形成部の中央部位において凹部形成部よりも下方側に突出しているので、固定板に形成される凹部は、取付孔部よりも大きなものとなり、取付孔部の形成位置が、凹部の中央部位となる。これにより、頭部の形状が大きな専用の固定具を用いる場合でも、その頭部が凹部に嵌り込み、その頭部が固定板よりも上方側に突出した状態となるのを防止することができる。しかも、取付孔部の形成位置が、凹部の中央部位であるので、凹部の形成位置を調整するだけで、取付孔部の形成位置も調整することができ、適切な位置に容易に取付孔部を形成することができる。
【0013】
固定板に凹部と取付孔部とを形成するためには、刃側部材と受け側部材との間に固定板を挟んだ状態で刃側部材と受け側部材とを嵌合させるだけでよい。よって、防水シートを設置する施工現場において、固定板に対して凹部と取付孔部とを簡易に且つ適切に形成することができ、作業性の向上を図ることができる。
【0014】
本発明の第2特徴構成は、前記刃側部材は、別体に形成された第1分割体と第2分割体とが分割自在に備えられ、第1分割体には凹部形成部が備えられ、第2分割体には取付孔部形成部が備えられ、
前記第1分割体と前記第2分割体とは、取付孔部形成部が凹部形成部よりも下方側に突出する状態に取り付け自在であり、且つ、凹部形成部に対して取付孔部形成部を取り外す状態で取り外し自在に構成されている点にある。
【0015】
本構成によれば、第1分割体と第2分割体は別体に形成されているので、第1分割体に備える凹部形成部については、凹部を形成するための適切な形状に形成することができ、第2分割体に備える取付孔部形成部についても、取付孔部を形成するための適切な形状に形成することができる。しかも、固定板に凹部と取付孔部とを形成するときに、第1分割体と第2分割体とを取り付けて使用することができ、それ以外のときには、第1分割体と第2分割体とを取り外して別々に収納しておくことができ、取り扱い易いものとなっている。更に、取付孔部を形成する際に、取付孔部形成部が摩耗等しても、取付孔部形成部が備えられた第2分割体だけを交換することができ、取付孔部形成部の交換を容易に行うことができ、その交換作業自体も簡易なものとなる。
【0016】
本発明の第3特徴構成は、前記取付孔部形成部は、その周方向において間隔を隔てて複数配設されて他の部位よりも下方側に突出する突出部と、その突出部の外方側端部において周方向の全長に亘って配設されて固定板を切断する切断部とが備えられ、
前記突出部は、取付孔部形成部の内方側から外方側に向けて下方側に傾斜する傾斜状に形成されている点にある。
【0017】
本構成によれば、刃側部材と受け側部材との間に固定板を挟んだ状態で刃側部材と受け側部材とを嵌合させる場合に、取付孔部形成部の突出部が他の部位よりも下方側に突出しているので、その突出部が固定板に当接して固定板を下方側に押圧することになる。突出部は、取付孔部形成部の内方側から外方側に向けて下方側に傾斜する傾斜状に形成されているので、突出部の外方側端部にて固定板に対して集中的に下方側への押圧力を作用させることができる。切断部は、突出部の外方側端部において周方向の全長に亘って配設されているので、固定板において、突出部の外方側端部にて集中的に下方側への押圧力を作用させた部位を切断部にて切断することができる。このように、固定板に対して下方側への押圧力を適切に作用させながら、効率よく取付孔部を形成することができる。しかも、固定板に対して下方側への押圧力を適切に作用させながら固定板を切断するので、切り屑等が生じることなく、取付孔部を形成することができる。
【0018】
本発明の第4特徴構成は、前記切断部は、前記取付孔部形成部の周方向において、前記突出部同士の間の中間部位が一番上方側に位置する湾曲状に形成されている点にある。
【0019】
突出部の外方側端部にて固定板に対して集中的に下方側への押圧力を作用させることができるので、切断部は、突出部の外方側端部に対応する部位にて最初に固定板を切断することができる。本構成によれば、切断部は、取付孔部形成部の周方向において、突出部同士の間の中間部位が一番上方側に位置する湾曲状に形成されているので、最初に固定板を切断する突出部の外方側端部に対応する部位に引き続いて、周方向で連続する部位にて固定板を順次切断していくことができる。これにより、切断部にて固定板を効率よく切断することができ、取付孔部を適切に形成することができる。
【0020】
本発明の第5特徴構成は、前記受け側部材は、前記固定板に当接して固定板の左右方向での位置を規制する左右方向位置規制部が備えられている点にある。
【0021】
本構成によれば、左右方向位置規制部は、固定板に当接して固定板の左右方向での位置を規制するので、刃側部材と受け側部材との間に固定板を挟んだ状態で刃側部材と受け側部材とを嵌合させる過程で、固定板が左右方向に位置ずれするのを防止することができる。これにより、固定板において、例えば、刃側部材と受け側部材とを嵌合させる前に位置合わせした位置に、凹部と取付孔部とを形成することができ、凹部と取付孔部との形成位置を適切な位置に形成し易いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】防水シートを施工した状態の概略構成を示す斜視図
【
図4】(A)は刃側部材を示す側面図、(B)は刃側部材を示す断面図
【
図5】(A)は第2分割体における突出部及び切断部を示す斜視図、(B)は(A)とは異なる角度から見た第2分割体における突出部及び切断部を示す斜視図
【
図6】(A)は受け側部材を示す斜視図、(B)は受け側部材を示す断面図
【
図7】(A)は刃側部材と受け側部材とを嵌合させる手前の状態を示す図、(B)は刃側部材と受け側部材とを嵌合させた後の状態を示す図
【
図8】(A)は専用の固定具と第2固定板の表面側とを示す図、(B)は第2固定板の裏面側を示す図、(C)は第2固定板の凹部に専用の固定具を装着した状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0023】
まず、
図1及び
図2に基づいて、設置対象に対して防水シート1を設置する防水シート1の施工を行った状態について説明する。
【0024】
図1に示すように、この実施形態では、設置対象が、デッキプレート2等の金属屋根となっている。デッキプレート2の上部に断熱材3を敷設し、その断熱材3の上部に防水シート1を敷設している。防水シート1を固定するために、デッキプレート2に固定された固定板4が配設されており、その固定板4の上部に接着剤等を介在させることで、防水シート1を固定板4上に固定している。
【0025】
ちなみに、固定板4に防水シート1を固定する固定方法については、各種の固定方法が適用可能である。例えば、固定板4の上面部に接着剤を塗布して、その上から防水シート1を敷設する。また、固定板4の上面部に予めホットメルト接着層を設けておき、その上から防水シート1を敷設した状態で、防水シート1の上方から電磁誘導加熱によって固定板4を加熱することでホットメルト接着層を溶かして、固定板4に防水シート1を固定する固定方法を採用することもできる。
【0026】
固定板4としては、
図1に示すように、形状の異なる第1固定板11と第2固定板21とが備えられている。第1固定板11及び第2固定板21は、例えば、ともに金属製にて構成されており、その上面部が防水シート1の接着面となっている。第1固定板11は、円形状に形成されているのに対して、第2固定板21は、その長手方向に直線状に延びる帯形状に形成されている。
【0027】
第1固定板11は、例えば、一定の間隔を隔てて複数配設させることにより、広い範囲に亘って防水シート1を固定することができる。それに対して、第2固定板21は、接着面が直線状に連続して存在するので、防水シート1を連続して接着固定することができる。そこで、施工現場の大きさや形状に応じて、第1固定板11と第2固定板21とを使い分けながら、防水シート1を固定することができる。
【0028】
第1固定板11及び第2固定板21を配設するに当たり、第1固定板11の配設箇所及び第2固定板21の配設箇所は適宜調整することができる。よって、施工現場の大きさや形状に応じて、第1固定板11と第2固定板21との間隔や第1固定板11同士の間の間隔等を適切な間隔に調整することができる。
【0029】
この実施形態では、
図1に示すように、デッキプレート2と防水シート1との間に断熱材3を介在させているので、デッキプレート2に対して固定板4を固定する際に、ビス5の引き抜き強度を考慮する以外に、風等による防水シート1の波打ちにより発生する水平方向の力も考慮しなければならない。
【0030】
デッキプレート2と防水シート1との間に断熱材3を介在させる場合には、固定板4を固定するためのビス5を設けるに当たり、そのビス5において、防水シート1を固定する頭部とデッキプレート2に固定される固定部位との間の距離が断熱材3の厚み分だけ大きくなる。よって、防水シート1の波打ちにより固定板4に水平方向の力が作用すると、ビス5の固定部位に対して、大きな水平方向の力が作用するとともに、モーメント力も作用することになる。
【0031】
そこで、固定板4をデッキプレート2に固定するに当たり、
図2に示すように、ビス5に加えて、専用の固定具6を用いて、固定板4をデッキプレート2に固定している。
図2は、デッキプレート2に対する第2固定板21の固定状態を示した断面図であるので、以下、デッキプレート2に対する第2固定板21の固定状態について説明する。
【0032】
専用の固定具6は、
図2及び
図8(A)に示すように、例えば、樹脂等の弾性変形自在な材料にて製造された円筒形状のワッシャーにて構成されている。専用の固定具6は、径方向に拡大させた頭部61と、その頭部61よりも小径で上下方向に延びる中間部62と、下方側部位ほど小径となるように徐々に縮径された縮径部63とが備えられている。
【0033】
頭部61及び中間部62の内部には、
図2に示すように、上下方向に連続して延びる第1孔部64が形成されている。その第1孔部64の直径は、ビス5における頭部51の直径と略同じ又は頭部51の直径よりも少し大きく形成されている。縮径部63の内部には、上下方向に連続して延びる第2孔部65が形成されている。その第2孔部65の直径は、ビス5における頭部51の直径よりも小径であり、ビス5におけるネジ部52の直径と略同じ又はネジ部52の直径よりも少し大きく形成されている。
【0034】
ビス5は、
図2に示すように、専用の固定具6の内部に形成された第1孔部64及び第2孔部65を挿通させる状態で、デッキプレート2に固定されている。専用の固定具6では、第1孔部64と第2孔部65との間に、下方側部位ほど小径となるように縮径された傾斜状の第3孔部66が形成されている。第3孔部66には、ビス5の頭部51の下方側部位が当接しており、その当接によってそれ以上のビス5の下方側(奥側)への移動を規制している。
【0035】
このように、ビス5に加えて、専用の固定具6を用いて、第2固定板21をデッキプレート2に固定することで、例えば、風等による防水シート1の波打ちにより水平方向の力が発生しても、専用の固定具6自体が、揺動する等により関節のような働きをするので、デッキプレート2に対するビス5の固定部位にかかる水平方向の力やモーメント力を低減することができる。しかも、使用者等が第2固定板21の上方側を踏み込んだ場合でも、専用の固定具6自体が、収縮や弾性変形する等により緩衝材のように働くので、ビス5に対して直接的に力が作用するのを抑制して、ビス5の飛び出しを防止することができる。
【0036】
専用の固定具6を用いる場合には、第2固定板21に形成するビス5の取付孔部24を専用の固定具6に対応する形状とすることが求められる。そこで、
図2及び
図8に示すように、第2固定板21には、取付孔部24に加えて、その取付孔部24に対応する部位及びその周囲部位が下方側に窪んだ凹部23を形成している。
【0037】
第2固定板21に形成される凹部23は、特に
図8(A)及び(B)に示すように、円形状の取付孔部24よりも大径の円形部分を下方側に窪ませることで、取付孔部24よりも大きな円形状に形成されている。これにより、
図2及び
図8(C)に示すように、頭部61の形状が大きな専用の固定具6を用いる場合には、その頭部61が凹部23に嵌り込み、その頭部61が第2固定板21の上面部よりも上方側に突出した状態となるのを防止することができる。ちなみに、円形状の凹部23の内径は、専用の固定具6における頭部61の外径よりも大きくなるように形成されている。
【0038】
取付孔部24は、
図8(A)及び(B)に示すように、凹部23の中央部位に形成されている。取付孔部24の内径が、専用の固定具6における頭部61の外径よりも小径で、且つ、専用の固定具6における中間部62の外径と略同じ又はその中間部62の外径よりも少し大きく形成されている。
【0039】
図8(C)に示すように、凹部23に対して専用の固定具6を嵌め込むことで、その専用の固定具6における中間部62及び縮径部63を、第2固定板21に形成された取付孔部24に挿通させることができる。これにより、
図2に示すように、凹部23に専用の固定具6を嵌め込むことによって、専用の固定具6における中間部62及び縮径部63を取付孔部24に挿通させた状態とし、ビス5を、専用の固定具6における第1孔部64及び第2孔部65を挿通させて、デッキプレート2に固定させることができる。
【0040】
第2固定板21は、単なる板体にて構成されているわけではなく、
図2及び
図8(B)に示すように、その長手方向に直交する左右方向の両端部位を裏面側に折り返した折り返し部22が備えられている。第2固定板21を断熱材3上に配設する際には、
図2に示すように、第2固定板21における折り返し部22の下面側部位を断熱材3の上面部に当接させる状態となる。よって、折り返し部22以外の部位では、第2固定板21と断熱材3の上面部との間に隙間が形成されているので、第2固定板21に対して、下方側に窪んだ凹部23を形成しても、第2固定板21と断熱材3の上面部との間に形成された隙間の範囲内に凹部23が納められている。これにより、第2固定板21を断熱材3上に配設した場合に、折り返し部22の下面側部位だけでなく、凹部23の下面側部位も、断熱材3の上面部に当接することになり、第2固定板21を安定した姿勢で配設することができる。
【0041】
以上の如く、
図2や
図8等を参照しながら、デッキプレート2に対する第2固定板21の固定状態について説明したが、デッキプレート2に対する第1固定板11の固定状態については、第2固定板21と同様であるので、その説明及び図示は省略する。ちなみに、第1固定板11は、円形状に形成されているので、
図1に示すように、第1固定板11の中央部位に、凹部23や取付孔部24(
図2参照)が予め形成されており、ビス5に加えて、専用の固定具6を用いて、デッキプレート2に第1固定板11を固定している。
【0042】
施工現場では、その施工現場の大きさや形状等に応じて、固定板4の設置箇所を調整しており、帯形状の第2固定板21については、必要な長さに切断する等して、その長さを調整する場合がある。このとき、第2固定板21をデッキプレート2に固定する際に、固定すべき位置に凹部23や取付孔部24が存在しないことがある。そこで、本発明に係る防水シート施工用穿孔具は、第2固定板21に対して凹部23や取付孔部24を形成するために用いられている。
【0043】
この防水シート施工用穿孔具7は、
図3及び
図7に示すように、第2固定板21に穴をあける穴あけ工具であり、施工現場等において持ち運び自在な可搬式に構成されている。防水シート施工用穿孔具7は、上方側に位置するパンチング部71と、下方側に位置してパンチング部71を受ける台座部72とが備えられ、作業者等によるハンドル部(図示省略)の操作に伴って、油圧を用いて、パンチング部71を台座部72に対して接近移動させるパンチング動作を行う油圧式に構成されている。
【0044】
ここで、第2固定板21に取付孔部24等を形成する際の動作として、ハンマー等にて穿孔具をたたく等の動作が必要なものも考えられる。しかしながら、
図1に示すように、デッキプレート2と防水シート1との間に断熱材3を介在させる施工現場では、断熱材3の上部等においてハンマー等にて穿孔具をたたく等の動作を行うと、その大きな衝撃が断熱材3に伝わり、断熱材3が凹んだりして損傷してしまう可能性がある。
【0045】
それに対して、この実施形態では、防水シート施工用穿孔具7が、油圧を用いてパンチング動作を行うことで、第2固定板21に凹部23と取付孔部24を形成している。これにより、
図1に示すように、デッキプレート2と防水シート1との間に断熱材3を介在させる施工現場において、断熱材3の上部等において防水シート施工用穿孔具7にてパンチング動作を行っても大きな衝撃は発生せず、断熱材3の損傷を防止しながら、第2固定板21に凹部23と取付孔部24を形成する作業を行うことができる。
【0046】
防水シート施工用穿孔具7は、
図3に示すように、第2固定板21に取付孔部24等を形成するための刃側部材8と、その刃側部材8を受けて嵌合自在な受け側部材9とが備えられている。刃側部材8は、パンチング部71に対して取付自在及び取り外し自在に備えられ、受け側部材9は、台座部72に対して取付自在及び取り外し自在に備えられている。ちなみに、
図3では、パンチング部71に対して刃側部材8を取り付け、台座部72に受け側部材9を取り付けた状態を示している。
【0047】
(刃側部材)
刃側部材8は、
図4に示すように、別体に形成された第1分割体81と第2分割体91とが分割自在に備えられている。第1分割体81には、第2固定板21に対して下方側に窪んだ凹部23を形成する凹部形成部83が備えられている。それに対して、第2分割体91には、凹部形成部83よりも下方側に突出して、第2固定板21に対して取付孔部24を形成する取付孔部形成部99が備えられている。
【0048】
第1分割体81は、円柱状の上方側部位82と、その上方側部位82から下方側に膨出する円柱状の凹部形成部83とが備えられている。上方側部位82が、パンチング部71に対して取付自在及び取り外し自在に構成されている。凹部形成部83は、下方側部位ほど小径となる傾斜状に形成されており、第2固定板21に対して下方側に窪んだ凹部23を形成するための部位となっている。
【0049】
第2分割体91は、円柱状の上方側部位92と、その上方側部位92よりも大径の円柱状の下方側部位93とが備えられている。上方側部位92が、パンチング部71に対して取付自在及び取り外し自在に構成されている。下方側部位93の下端部が、第2固定板21に対して取付孔部24を形成するための取付孔部形成部99となっている。
【0050】
第1分割体81の中央部位には、第2分割体91を挿入自在とする上下方向に貫通する挿入孔部84が形成されている。第1分割体81の挿入孔部84に対して第2分割体91を挿入することで、第2分割体91の取付孔部形成部99が第1分割体81の凹部形成部83よりも下方側に突出する状態で、第1分割体81と第2分割体91とを取り付けることができる。このとき、第1分割体81の第1分割体側当接部85と第2分割体91の第2分割体側当接部97とが当接することで、第2分割体91のそれ以上の挿入側への移動を規制している。それに対して、第1分割体81の挿入孔部84から第2分割体91を取り外すことで、第1分割体81の凹部形成部83に対して第2分割体91の取付孔部形成部99を取り外す状態で、第1分割体81と第2分割体91とを取り外すことができる。
【0051】
第2分割体91には、上方側部位92及び下方側部位93の内部に、
図4(B)に示すように、上下方向に延びる円形状の貫通孔部94が形成されており、その貫通孔部94は、下方側部位が上方側部位よりも大径に形成されている。
【0052】
図4及び
図5に示すように、第2分割体91における下方側部位93の下端部が取付孔部形成部99に形成されており、その取付孔部形成部99として、突出部95と切断部96とが備えられている。突出部95は、下方側部位93の下端部(取付孔部形成部99)の周方向において間隔を隔てて複数配設されており(この実施形態では、3つ配設されている)、その周方向において他の部位よりも下方側に突出する部位となっている。この突出部95の下方側への突出量は、下方側部位93の下端部(取付孔部形成部99)において、内方側端部から外方側端部まで同じ突出量ではなく、内方側端部から外方側端部に向けて下方側への突出量が大きくなるように形成されている。このようにして、突出部95は、下方側部位93の下端部(取付孔部形成部99)において、その周方向では他の部位よりも下方側に突出しており、その内方側から外方側に向かう径方向では内方側から外方側に向けて下方側に傾斜する傾斜状に形成されている。
【0053】
切断部96は、
図4及び
図5に示すように、突出部95の外方側端部において下方側部位93の下端部(取付孔部形成部99)の周方向の全長に亘って配設されており、第2固定板21を切断する部位となっている。この切断部96は、
図5に示すように、下方側部位93の下端部の周方向において、突出部95同士の間の中間部位98が一番上方側に位置する湾曲状に形成されている。
【0054】
(受け側部材)
受け側部材9は、
図6に示すように、円柱状の上方側部位101と、その上方側部位101よりも小径の円柱状の下方側部位102とが備えられている。上方側部位101には、刃側部材8の凹部形成部83(
図4参照)に対応する受け側凹部103と、刃側部材8の取付孔部形成部99(
図4参照)に対応する受け側開口部104とが備えられている。受け側凹部103は、上方側部位101の中央部位に配設されており、下方側に窪んで凹部形成部83(
図4参照)と嵌合自在な円柱状の凹部にて形成されている。受け側開口部104は、受け側凹部103の中央部に配設されており、取付孔部形成部99(
図4参照)と嵌合自在な円形状の開口部にて形成されている。
【0055】
この実施形態では、受け側開口部104が、
図6(B)に示すように、受け側部材9の下方側部位102も貫通する開口部にて形成されており、その下方側部位が上方側部位よりも大径の円形状に形成されている。ちなみに、受け側開口部104は、受け側部材9の下方側部位102も貫通するものに限るのではなく、例えば、受け側部材9の上下方向の途中部位までを開口するものでもよく、どのような形状に形成するかについては適宜変更が可能である。
【0056】
以下、第2固定板21に凹部23と取付孔部24とを形成するときの動作について説明する。
【0057】
図3に示すように、刃側部材8をパンチング部71に取り付け、受け側部材9を台座部72に取り付ける。
図7(A)に示すように、受け側部材9の上部に第2固定板21を載置させて第2固定板21を所望位置にセッティングする。このとき、受け側部材9には、
図3及び
図6(A)に示すように、第2固定板21に当接して第2固定板21の左右方向での位置を規制する左右方向位置規制部105が備えられている。よって、この左右方向位置規制部105を用いることで、第2固定板21の所望位置へのセッティングを容易に行うことができる。左右方向位置規制部105は、
図6(A)に示すように、受け側部材9の上方側部位92の左右方向の両端部に配設されており、左右一対の直線状の当接部となっている。この左右一対の左右方向位置規制部105が、第2固定板21の折り返し部22(
図8(B)参照)の先端部に当接することで、第2固定板21の左右方向での位置を規制している。
【0058】
このようにして、第2固定板21のセッティングを行うと、
図7(B)に示すように、作業者等によるハンドル部(図示省略)の操作に伴って、パンチング部71を台座部72に対して接近移動させるパンチング動作を行う。これにより、刃側部材8と受け側部材9との間に第2固定板21を挟んだ状態で刃側部材8と受け側部材9とを嵌合させることで、第2固定板21に凹部23と取付孔部24とを形成している。
【0059】
刃側部材8と受け側部材9との間に第2固定板21を挟んだ状態で刃側部材8と受け側部材9とが嵌合する場合には、刃側部材8における膨出形状の凹部形成部83(
図4参照)が受け側部材9における凹形状の受け側凹部103(
図6参照)に嵌合することで、第2固定板21が下方側への押圧力を受けて下方側に窪むように変形することになり、第2固定板21に凹部23が形成される。刃側部材8における取付孔部形成部99(
図4参照)が受け側部材9における受け側開口部104(
図6参照)に嵌合することで、第2固定板21が切断されて、第2固定板21に取付孔部24が形成される。
【0060】
このようにして、防水シート1を設置する施工現場において、作業者等が防水シート施工用穿孔具7を用いて、パンチング部71を台座部72に対して接近移動させるパンチング動作を行うだけで、第2固定板21に対して凹部23と取付孔部24とを簡易に且つ適切に形成することができ、作業性の向上を図ることができる。しかも、取付孔部24の形成位置は、凹部23の中央部位となるので、凹部23の形成位置を調整するだけで、取付孔部24の形成位置も調整することができ、適切な位置に容易に取付孔部24を形成することができる。
【0061】
刃側部材8と受け側部材9との間に第2固定板21を挟んだ状態で刃側部材8と受け側部材9とを嵌合させる場合に、
図4及び
図5に示すように、突出部95が下方側部位93の下端部(取付孔部形成部99)においてその周方向で他の部位よりも下方側に突出しているので、その突出部95が第2固定板21に当接して第2固定板21を下方側に押圧することになる。突出部95は、下方側部位93の下端部(取付孔部形成部99)において、内方側から外方側に向けて下方側に傾斜する傾斜状に形成されているので、突出部95の外方側端部にて第2固定板21に対して集中的に下方側への押圧力を作用させることができる。切断部96は、突出部95の外方側端部において周方向の全長に亘って配設されているので、第2固定板21において、突出部95の外方側端部にて集中的に下方側への押圧力を作用させた部位を切断部96にて切断することができる。このように、第2固定板21に対して下方側への押圧力を適切に作用させながら第2固定板21を切断するので、切り屑等が生じることなく、取付孔部24を形成することができる。
【0062】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、夫々単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0063】
(1)上記実施形態では、取付孔部形成部99として、複数の突出部95を備えるに当たり、例えば、3つの突出部95が備えられているが、突出部95の数については、適宜変更が可能であり、2つでも、4つ以上とすることもできる。
【0064】
(2)上記実施形態では、切断部96について、下方側部位93の下端部の周方向において、突出部95同士の間の中間部位98が一番上方側に位置する湾曲状に形成しているが、この湾曲状に限るものではなく、その他の形状を適用することもできる。
【0065】
(3)上記実施形態では、帯形状の第2固定板21に対して凹部23と取付孔部24を形成する場合に、本発明に係る防水シート施工用穿孔具7を用いているが、固定板4の形状については、帯形状に限るものではなく、各種の形状の固定板4に対して凹部23と取付孔部24を形成する場合に、本発明に係る防水シート施工用穿孔具7を用いることができる。
【符号の説明】
【0066】
1 防水シート
2 デッキプレート(設置対象)
4 固定板
7 防水シート施工用穿孔具
8 刃側部材
9 受け側部材
23 凹部
24 取付孔部
81 第1分割体
83 凹部形成部
91 第2分割体
95 突出部
96 切断部
98 突出部同士の中間部位
99 取付孔部形成部
103 受け側凹部
104 受け側開口部
105 左右方向位置規制部