(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161714
(43)【公開日】2024-11-20
(54)【発明の名称】プラグとソケットとを有するロールインコネクタ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01R 13/64 20060101AFI20241113BHJP
H01R 43/00 20060101ALI20241113BHJP
H01R 13/622 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
H01R13/64
H01R43/00 B
H01R13/622
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076662
(22)【出願日】2023-05-08
(71)【出願人】
【識別番号】000132057
【氏名又は名称】ウイトコオブジュピター電通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003292
【氏名又は名称】弁理士法人三栄国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清藤 俊亨
【テーマコード(参考)】
5E021
5E051
【Fターム(参考)】
5E021FA05
5E021FA08
5E021FA14
5E021FA16
5E021FB10
5E021FC38
5E021FC40
5E021JA05
5E051BA02
5E051BA06
(57)【要約】
【課題】プラグとソケットのいずれか一方にカム面、他方にカムフォロワが、相対向するようにして形成されたロールインコネクタにおいて、プラグとソケット軸線を合わせる機構を簡単な構成とし、外径の細いコネクタを提供する。
【解決手段】ロールインコネクタのカム面とカムフォロワは、それらのいずれか一方が、カム部分と、該カム部分の後方に形成された第一の導体保持部とを備え、他方が、前記カム部分を受け入れるカム面ガイド筒部と、該カム面ガイド筒部の後方に形成されたカムフォロワ筒部と第二の導体保持部を備え、前記カム部分には、カム面が形成されており、前記カム面ガイド筒部は、前記カムフォロワ筒部と同じ内径を有し、前記カムフォロワ筒部の開口部をそのまま軸方向に延長して構成されており、前記カムフォロワは、前記カム部分に対する前記軸の回りの位置決め機能を有し、前記カム部分を前記軸方向にガイドするカムフォロワ面を備えている。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊合関係にあるプラグとソケットとを、互いに軸方向に差し込むことにより、第一の接続手段と第二の接続手段を所定の位置関係で相互に接続するロールインコネクタであって、
前記プラグと前記ソケットは、それらのいずれか一方にカム面、他方にカムフォロワが、相対向するようにして形成されており、
前記カム面と前記カムフォロワは、それらのいずれか一方が、カム部分と、該カム部分の後方に形成された第一の導体保持部とを備え、他方が、前記カム部分を受け入れるカム面ガイド筒部と、該カム面ガイド筒部の後方に形成されたカムフォロワ筒部と第二の導体保持部を備え、
前記カム部分には、その基底部から先尖部に向かって漸次先細り状になるような前記カム面が形成されており、
前記カム面ガイド筒部は、前記カムフォロワ筒部と同じ内径を有し、前記カムフォロワ筒部の開口部をそのまま前記軸方向に延長して構成されており、
前記カムフォロワは、前記カム部分に対する前記軸の回りの位置決めを行い、かつ、前記カム部分を前記軸方向にガイドする、カムフォロワ面を有し、
前記プラグと前記ソケットとが互いに前記軸方向に差し込まれ、前記カム部分が前記基底部まで前記カム面ガイド筒部内に差し込まれた状態において、前記カム部分は、その外周面の殆どが前記カム面ガイド筒部の内周面に遊合状態で接触しており、前記カム部分が前記カムフォロワ面に当接するまで、この接触の状態が維持されるように構成されていることを特徴とするロールインコネクタ。
【請求項2】
請求項1において、
前記カム部分は、前記カム面が形成された傾斜カム面と、傾斜カム溝とを備えており、
前記傾斜カム面は、前記カム部分が前記基底部まで前記カム面ガイド筒部内に差し込まれた状態において、前記カム部分を前記第一の接続手段と前記第二の接続手段とが接続が可能な軸周りの位置に回転させる機能を有しており、
前記傾斜カム溝は、前記第一の接続手段と前記第二の接続手段を、前記軸方向において接続が可能な位置に位置決めする機能を有しており、
前記カム部分が前記基底部まで前記カム面ガイド筒部内に差し込まれた状態において、前記カム部分の前記傾斜カム溝を除く、前記傾斜カム面の外周の全部分が、前記カム面ガイド筒部の内周面に遊合状態で接触していることを特徴とするロールインコネクタ。
【請求項3】
請求項2において、
前記カムフォロワ筒部は、前記カムフォロワ面として、前記カム部分に対する前記軸の回りの位置決め機能を有するカムヘッド部と、前記カム部分を前記軸方向にガイドする軸方向カム部とを備えていることを特徴とするロールインコネクタ。
【請求項4】
請求項2において、
前記カムフォロワ筒部は、前記カムフォロワ面として、前記カム部分に対する前記軸の回りの位置決めを行い、かつ、前記カム部分を前記軸方向にガイドする、前記軸方向に伸びた軸方向凸部を備えていることを特徴とするロールインコネクタ。
【請求項5】
請求項2において、
前記カム面ガイド筒部は、中空の円筒部からなりその内周面に前記傾斜カム面が遊合されるものであり、前記プラグと前記ソケットとが互いに前記軸方向に差し込まれたとき、前記傾斜カム面の前記先尖部が前記カムフォロワ面に到達する迄の間に、前記プラグの軸線と前記ソケットの軸線とを一致させるように構成されていることを特徴とするロールインコネクタ。
【請求項6】
請求項2において、
前記カム面ガイド筒部の前記軸方向の長さは、前記傾斜カム面の前記軸方向の長さと同等若しくは、前記傾斜カム面の前記軸方向の長さよりも若干長いことを特徴とするロールインコネクタ。
【請求項7】
請求項2において、
前記カム部分が前記基底部まで前記カム面ガイド筒部内に差し込まれた状態において、前記カム面ガイド筒部の円周方向の長さCir3に対する前記プラグの前記傾斜カム面及び前記傾斜カム溝の外周面が接している円周方向の長さCir2の比率(接触長さ比)をCir2/Cir3としたとき、
前記Cir2/Cirは、80%~95%の範囲であることを特徴とするロールインコネクタ。
【請求項8】
請求項1において、
前記プラグと前記ソケットを接続する円筒形の把持筒を備え、
前記プラグと前記ソケットが接続された状態において、前記ソケットの前記カムフォロワ筒部と前記カム面ガイド筒部の2つの領域は、前記把持筒の部分を除いて、その全体が外部に露出していることを特徴とするロールインコネクタ。
【請求項9】
請求項4に記載のロールインコネクタの製造方法であって、
金属板をプレス加工して、前記プラグの前記第一の導体保持部及び前記傾斜カム面を形成し、
円筒状の金属板をプレス加工して、内面に前記軸方向凸部を有する前記カムフォロワ筒部を形成することを特徴とするロールインコネクタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラグとソケットとを有するコネクタ及びその製造方法に関するものであり、特に、プラグとソケットとが、互いに軸線方向に差し込まれることにより相対的に回転し複数のピンと多芯ケーブル等が所定の関係に接続される、ロールインコネクタ、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、円筒状のプラグおよび円筒状のソケットの両先端面に、互いに対向する傾斜カムを設け、プラグをソケットに差し込んだとき、傾斜カムの先端が相手側の傾斜カムの円周方向の一部に当接した後、傾斜面に沿って摺接し、複数のピンと多芯ケーブル等とを接続するように構成されたコネクタが記載されている。このようなコネクタでは、プラグとソケットとの差し込み時にそれらの芯がわずかでもずれていると、摺動面の片当たりや、スティク現象の発生等により、それらの軸線回りの回転が不円滑となり、正規の位置に位置決めされる前に回転が停止し、何度も差し込み直さなければならず、あるいは、それらの摺接部分の磨耗が激しくなる等の問題がある。そのため、コネクタにおいては、プラグとソケットとの接続時の軸線回りの向きが常に一定となるようにする必要がある。
【0003】
また、特許文献2に記載された発明は、シャフトから延びる半径方向突起部およびシャフト上の環状案内面を有するキーと、キーレセプタクルとを含むキーアセンブリに関するものである。キーレセプタクルがキーに係合し始めるとキーのテーパ付き端部がキーレセプタクルの開放端に進入し始める。キーがさらに進入し続けると、キーの長軸に平行な凸部である突起部がキーレセプタクルの斜面付きカム面に係合する。突起部がカム面に係合することにより、キーが回転する。この発明は、キーが係合するキーレセプタクルのカム面が斜面付きとなっている。また、機械的位置調整および/または機械的安定性を改善するため、突起部の端部が最初にカム面に係合する前にキーのテーパ付き端部がキーレセプタクルに進入し始めるように構成されている。この発明では、そのキーを例えばロールインコネクタのプラグと対比させた場合、キーにはロールインコネクタのように、1つのプラグの内部に複数のピンを設ける構造は想定されていない。また、この発明は、先端が円柱形状のキーをキーレセプタクルの傾斜した開口部に差し込む構成となっているため、キーレセプタクルの外径を小さくした場合、キーとキーレセプタクルの2つの軸線がズレないようにするのが困難と考えられる。
【0004】
プラグとソケットとの芯合わせを改善したロールインコネクタとして、特許文献3~5に記載されたものがある。
特許文献3に記載された発明は、円筒状のプラグ本体を円筒状のプラグケースに対してその軸線回りに回転可能とし、円筒内のプラグ本体とソケット本体との対向面に、プラグとソケットとを互いに軸方向に差し込んだとき、互いに摺接して、プラグ本体とソケット本体とが相対的に回転させられて、互いに軸線回りの回転方向に位置決めされた状態で、多芯ケーブルの複数の芯線に接続されたプラグ側の複数のピンの各々がソケット側の対応する接続ピンに接続されるように構成されている。
特許文献4に記載された発明は、円筒内のプラグとソケットとの対向面に、互いに軸線回りの回転方向に位置決めされるようにした傾斜カム面とカムフォロワとを対向させて設け、プラグとソケットとの対向面のいずれか一方の中心にピン挿入孔を設け、かつ他方の中心に、傾斜カム面とカムフォロワとが当接するより先にピン挿入孔に嵌合するようにしたセンターピンを突設している。
特許文献5に記載された発明は、円筒状のソケットの内面で円柱状のプラグの外周を抑えると共に、ソケットの内面に複数のリブを等間隔に配置し、リブとリブの間をプラグの先端の凸部が通過する構造としている。
【0005】
ロールインコネクタは、その用途によっては、そのサイズが非常に小さいものが必要とされる。実用化されているものの一例をあげると、プラグの外径が8.50mm、ソケットの外径が10.40mm、ソケットの内径が8.65mmであり、プラグとソケットの軸方向長さは各々約30mm、プラグとソケットに各々埋設されるピンが12本、各ピンの外径が0.70mmである。
このようにサイズが非常に小さいロールインコネクタでは、もし、プラグとソケットが嵌合を開始する時に2つの軸線がずれてしまうと、プラグとソケットを嵌合させて互いに軸線方向に移動させることが困難となる。
特許文献3に記載された発明の場合、2つの軸線がぶれると、円筒内の一対の傾斜カム面同士を合わせる事ができない。そのための、プラグ側の外周をソケット側の内周で抑えて2つの軸線がぶれないようにしている。
特許文献4に記載された発明の場合、プラグとソケットの嵌合初期の段階で、ソケットのセンターピンとプラグの穴が嵌合して2つの軸線がズレないようにしている。
特許文献5に記載された発明の場合、ソケットの内面でプラグの外周を抑えると共に、複数のリブの間をプラグの凸部が通過する構造にして、2つの軸線がズレないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4239325号
【特許文献2】特許第5690534号
【特許文献3】特許第5749877号
【特許文献4】特許第5852296号
【特許文献5】特許第6752491号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ロールインコネクタで基本的に必要な構造は、プラグとソケットの嵌合の初期の段階で、ソケットの軸線とプラグの軸線を一致させるのが容易なことである。また、特許文献3~5に記載された発明では、プラグとソケットとの芯合わせを改善するための構成を採用することで、2つの軸線がズレないようにすることが可能になる。その反面、上記構成を採用することにより、ロールインコネクタの外径が大きくなり、また、構造も複雑となり、これらが製造コストの増加要因となっている。
【0008】
本発明の課題は、ロールインコネクタにおいて、プラグとソケット軸線を合わせる機構を簡単な構成とし、外径の細いコネクタを提供することにある。
本発明の他の課題は、安価なロールインコネクタ、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの態様を示せば、ロールインコネクタは、
遊合関係にあるプラグとソケットとを、互いに軸方向に差し込むことにより、第一の接続手段と第二の接続手段を所定の位置関係で相互に接続するロールインコネクタであって、
前記プラグと前記ソケットは、それらのいずれか一方にカム面、他方にカムフォロワが、相対向するようにして形成されており、
前記カム面と前記カムフォロワは、それらのいずれか一方が、カム部分と、該カム部分の後方に形成された第一の導体保持部とを備え、他方が、前記カム部分を受け入れるカム面ガイド筒部と、該カム面ガイド筒部の後方に形成されたカムフォロワ筒部と第二の導体保持部を備え、
前記カム部分には、その基底部から先尖部に向かって漸次先細り状になるような前記カム面が形成されており、
前記カム面ガイド筒部は、前記カムフォロワ筒部と同じ内径を有し、前記カムフォロワ筒部の開口部をそのまま前記軸方向に延長して構成されており、
前記カムフォロワ筒部は、その内面に設けられ、前記カム部分に対する前記軸の回りの位置決めを行い、かつ、前記カム部分を前記軸方向にガイドする、カムフォロワ面を備えており、
前記プラグと前記ソケットとが互いに前記軸方向に差し込まれ、前記カム部分が前記基底部まで前記カム面ガイド筒部内に差し込まれた状態において、前記カム部分は、その外周面の殆どが前記カム面ガイド筒部の内周面に遊合態で接触しており、前記カム部分が前記カムヘッド部に当接するまで、この接触の状態が維持されるように構成されている。
【0010】
本発明の他の態様を示せば、前記ロールインコネクタは、
前記カム部分は、前記カム面が形成された傾斜カム面と、傾斜カム溝とを備えており、
前記傾斜カム面は、前記カム部分が前記基底部まで前記カム面ガイド筒部内に差し込まれた状態において、前記カム部分を前記第一の接続手段と前記第二の接続手段とが接続が可能な軸周りの位置に回転させる機能を有しており、
前記傾斜カム溝は、前記第一の接続手段と前記第二の接続手段を、軸方向において接続が可能な位置に位置決めする機能を有しており、
前記カム部分が前記基底部まで前記カム面ガイド筒部内に差し込まれた状態において、前記カム部分の前記傾斜カム溝を除く、前記傾斜カム面の外周の全部分が、前記カム面ガイド筒部の内周面に遊合状態で接触している。
本発明の他の態様を示せば、前記ロールインコネクタは、
前記カムフォロワ筒部は、前記カム部分に対する前記軸の回りの位置決めを行い、かつ、前記カム部分を前記軸方向にガイドする、前記軸方向に伸びた軸方向凸部を備えている。
本発明のさらに他の態様を示せば、金属板をプレス加工して、前記プラグの前記第一の導体保持部及び前記傾斜カム面を形成し、円筒状の金属板をプレス加工して、前記軸方向凸部を有する前記カムフォロワ筒部を形成する。
【0011】
本発明は、ロールインコネクタにおいて、プラグとソケット軸線を合わせる機構を設けることなく、傾斜カム面と相手側凸部が当接する位置を深くして中心がずれないまで嵌合させてから傾斜カム面に当たるようにすることで、簡単な構成により、プラグとソケット軸線を合わせるが可能になる。これにより、操作が簡単で安価なロールインコネクタを提供することができる。また、簡単な構成のため、外径の細いコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施例になるロールインコネクタの外観斜視図である。
【
図2】
図1のコネクタのO-O方向の縦断面図である。
【
図3】
図1のコネクタのO-O方向の横断面図である。
【
図4】本発明の第1の実施例になるプラグの縦断面図である。
【
図6】本発明の第1の実施例になるソケットの縦断面図である。
【
図9】本発明の第1の実施例になるプラグとソケットの接続状況を説明する図であり、プラグをソケットに差し込む前の状態を示している。
【
図10】第1の実施例におけるプラグとソケットの接続状況を説明する図であり、プラグがソケットのカムガイド筒内を直進している状態を示している。
【
図11】プラグとソケットの接続状況を説明する図であり、プラグがソケットのカムフォロワ筒部まで差し込まれ、回転しながら位置決めされる状態を示している。
【
図12】プラグとソケットの接続状況を説明する図であり、プラグがソケットのカムフォロワ筒部まで差し込まれ、回転しながら位置決めされる状態を示している。
【
図13】プラグとソケットの接続状況を説明する図であり、プラグがソケットのカムフォロワ筒部の軸方向カム部に沿って直進している状態を示している。
【
図14】プラグとソケットの接続状況を説明する図であり、ソケットに対するプラグの差込量と、ソケットとプラグとの円周方向の接触率の関係を示している。
【
図15】本発明の第2の実施例になるロールインコネクタにおける、プラグの側面図である。
【
図18】本発明の第2の実施例になるロールインコネクタにおける、ソケットの縦断面図である。
【
図19】第2の実施例におけるプラグとソケットの接続状況を説明する図であり、プラグがソケットのカムガイド筒内を直進している状態を示している。
【
図20】本発明の第3の実施例になるロールインコネクタにおける、プラグの側面図である。
【
図21】本発明の第4の実施例になるロールインコネクタにおける、ソケットの縦断面図である。
【
図22A】第4の実施例におけるプラグとソケットの接続状況を説明する図であり、プラグがソケットのカムガイド筒内を直進している状態を示している。
【
図22B】第4の実施例におけるプラグとソケットの接続状況を説明する図であり、プラグがソケットのカムフォロワ筒部の軸方向カム部に沿って直進している状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のロールインコネクタについて、図面を参照しながら実施例を説明する。
まず、本発明の第1の実施例になるロールインコネクタについて、説明する。
最初に、ロールインコネクタ1の構造について、
図1~
図3を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1の実施例になるコネクタ1の外観斜視図である。ロールインコネクタ1は、プラグ2とソケット3からなり、プラグ2には円柱状の第1の多芯ケーブル4が接続され、ソケット3には電子部品に接続可能な複数のリード線(若しくは第2の多芯ケーブル)に接続される複数のコネクタピン31(a~n)が接続されている。プラグ2は、円筒形の把持筒22の中に回転可能に保持されている。
ロールインコネクタ1は、遊合(遊動嵌合)の関係にあるプラグ2とソケット3とを、プラグ2の把持筒22とソケット本体30とを手で持ちながら互いに軸O-Oの方向に差し込むことにより、プラグとソケットとが必要な範囲で相対的に回転し、第1の多芯ケーブルと第2の多芯ケーブルとを所定の位置関係で相互に接続するものである。
プラグ2とソケット3が接続された状態において、ソケット本体30の外表面は、プラグ2の把持筒22との接続部分を除いて、その全体が外部に露出している。
【0014】
図2は、
図1のコネクタの縦断面図であり、
図3は横断面図である。
プラグ本体20は、硬質合成樹脂材料からなる円柱状インシュレータ201と硬質の合成樹脂材料からなる円筒状の第一の導体保持部202とが、接合されて一体化されている。円柱状インシュレータ201の外周には、傾斜カム面(カム面)203が固定されている。傾斜カム面203は、プラグ本体20を多芯ケーブとリード線の接続が可能な軸周りの位置に回転させる機能がある。また、第一の導体保持部202と傾斜カム面203は、同じ外径を有している。傾斜カム面203は、円柱状インシュレータ201の左端部分からさらに軸方向に延びており、したがって、傾斜カム面203の内側は中空部208となっている(
図4、
図5参照)。
多芯ケーブル4の端末からプラグ本体20の第一の導体保持部202内に引き出された被覆導線である芯線42(a~n)の各端末が、ハンダ付け等により対応する複数のフィメールピン210(a~n)に接続されている。nは、6、8、12等、用途に応じて決められる。フィメールピン210は、サブインシュレータ204、205を介して、プラグ本体20内に固定されている。
【0015】
一方、ソケット3のソケット本体30は、硬質合成樹脂材料からなる中空円筒である。このソケット本体30は、軸方向において、カムフォロワ筒部32とカム面ガイド筒部35の2つの領域を有している。
カムフォロワ筒部32の一端側には、コネクタピン(メールピン、31(a~n))を保持する電極保持部(第二の導体保持部)38がカムフォロワ筒部と一体に設けられている。カムフォロワ筒部32の内周面と電極保持部(第二の導体保持部)38の外周面の間に、傾斜カム進入溝33が形成されている。カムフォロワ筒部32の内壁には、カムフォロワ面34が設けられている。
図2及び
図3は、傾斜カム面203の先尖部が傾斜カム進入溝33の最奥部に到達した状態を示しており、この状態で、芯線42(a~n)と対応するコネクタピン31(a~n)とが、フィメールピン210(a~n)を介して接続される。この、芯線42(a~n)とコネクタピン31(a~n)とが接続される状態において、カム面ガイド筒部35の外周に設けられたソケット側のねじ36に、把持筒22内に設けられたプラグ側のねじ26が螺合し、プラグ2とソケット3が固定されるように構成されている。ソケット本体30の軸方向の中間部には、拡径鍔部37が設けられ、Оリング39が装着されている。
プラグ2とソケット3が接続された状態において、ソケット本体30のカムフォロワ筒部32とカム面ガイド筒部35の2つの領域は、プラグ2の把持筒22との接続部分を除いて、その全体が外部に露出している。
【0016】
次に、プラグ2の構造について、
図4、
図5を参照しながら説明する。
図4は、プラグの縦断面図で、
図5は、
図4のプラグの外観斜視図である。
図4、
図5から明らかなとおり、プラグ2の先端、すなわち傾斜カム面203は、中空部208を略斜めに切断したような斜面形状となっている。すなわち、プラグ2は、傾斜カム面の基底部203Aから先尖部203Bに向かって漸次先細り状になるようなカム面として形成されている。円柱状インシュレータ201の側面の外側には、傾斜カム面203の基底部203Aの内側の空間に繋がる、傾斜カム溝206が設けられている。この傾斜カム溝は、軸O-O方向に帯状に伸びた溝である。円柱状インシュレータ201には、複数のピン挿入穴209(a~n)が設けられており、これらのピン挿入穴には、第一の導体保持部202内に保持されたフィメールピン210の先端が差し込まれるようになっている。
プラグ本体20は、その軸方向長さがL2であり、このうち、プラグのカム部分(傾斜カム面203+傾斜カム溝206)の軸方向長さがL21、直進延長領域の軸方向長さがL22、第一の導体保持部202の軸方向長さがL23である。
プラグ2は、単体、すなわちソケット3と接続される前の状態において、その把持筒22の接続部分を除いて、その全体の外表面、すなわち、傾斜カム面203及び第一の導体保持部202の外表面が、外部に露出している。
【0017】
ロールインコネクタは、配線密度の高いことが要求される。一例として、プラグ2の外径が8.50mm、ソケット3の外径(D31)が10.40mm、カム面ガイド筒部35の直径(内径D30)が8.65mmでのソケットで、n=12の配線が可能である。
一方、このような、10mm程度以下の小径のソケット3の穴に、プラグ2を差し込むのを容易にするために、作業者にとっては、プラグ2の傾斜カム面203の先端を目で容易に確認できるのが望ましい。そのため、本実施例では、プラグ本体20の一方の端部、すなわち先尖部203Bが鋭角に形成されている。
傾斜カム面203の基底部203Aと先尖部203Bを結ぶ線と軸O-Oのなす傾斜角をΘとした場合、傾斜角Θが大きくなると、プラグ2の傾斜カム面203を、ソケットのカム面ガイド筒部35に差し込む際に、プラグ2とソケット3の2つの軸線がズレないようにして差し込む作業が難しくなる。他方、傾斜角Θが小さいほど、プラグ2とソケット3の2つの軸線を一致させやすくなる。しかし、そのために、プラグ2とソケット3の軸方向長さL2を長くする必要がある。以上のことから、小径のロールインコネクタの場合、傾斜角Θは、30度~60度の範囲が望ましい。
【0018】
次に、ソケット3の構造について、
図2~
図3、
図6~
図8を参照しながら説明する。
ソケット本体30のカムフォロワ筒部32の内周面の一部に、カムフォロワ面34の一部を構成する軸方向カム部340が、カム面ガイド筒部35の方向へ軸に沿って細長く平行に設けられている。軸方向カム部340の先尖部には、カムフォロワ面34の他の部分を構成する、正面視で略二等辺三角形状のカムヘッド部(カムフォロワ)341が設けられている。このカムヘッド部341は、傾斜カム面203の先尖部203Bから基底部203Aの範囲(
図10のL20参照)を、左右いずれかの軸回りの方向にガイドし、さらに、傾斜カム面203、ひいては、プラグ2とソケット3を軸回りの正規の位置に位置決めさせる機能を有する。
また、軸方向カム部340の下端部からカムフォロワ筒部32の最奥部にかけては、カムフォロワ筒部32の内周面と円柱状の電極保持部38との間に、カムフォロワ面34の一部を構成する傾斜カム進入溝33が設けられている。この傾斜カム進入溝33は、傾斜カム面203が進入可能に構成されている。
プラグ2とソケット3が軸回りの正規の位置に位置決めされた場合、プラグ2の傾斜カム溝206がソケット3の軸方向カム部340に沿って軸方向に移動し、さらに、プラグ2の傾斜カム面203の先尖部203Bが、ソケット3の傾斜カム進入溝33の最奥部に到達することにより、プラグ2とソケット3が軸方向の正規の位置に位置決めされる。
ソケット本体30のカムフォロワ筒部32及びカム面ガイド筒部35の内径はD30、外径はD31である。ソケット本体30の外周には、Оリング39を有する拡径鍔部37が設けられている。この拡径鍔部37は、電気または電子機械器具のケース(図示略)の表面に当接するようにして、ケースに設けた嵌合孔(図示略)に嵌合し、ねじ部に螺合するナット(図示略)を、ケースの内面側から締め付けることによりケースに固定される。そして、コネクタピン31(a~n)が、ケース内の電気、電子部品に接続されたリード線(図示略)等にハンダ付け等により固着される。
【0019】
なお、本発明では、カムフォロワ筒部32とカム面ガイド筒部35の境界を、
図7における、カムフォロワ面34のカムヘッド部341を横切る線とする。すなわち、本発明では、ソケット本体30の軸方向の長さをL3とし、カム面ガイド筒部35の軸方向長さをL31、カムヘッド部341から傾斜カム進入溝33の最奥部迄の長さを、カムフォロワ筒部32の軸方向の長さL32と定義する。カム面ガイド筒部35の軸方向長さL31は、カム面ガイド筒部35の開口端から上記境界までの長さである。カムフォロワ筒部32の軸方向の長さL32には、軸方向カム部340の軸方向長さL321と、傾斜カム進入溝33の軸方向長さL322が含まれている。
【0020】
このように、各部の長さを定義したとき、プラグのカム部分(傾斜カム面203+傾斜カム溝206)の軸方向長さL21と、カム面ガイド筒部35の軸方向長さL31はほぼ等しい(
図10参照)。具体的には、L31は、(0.9~1.5)×L21の範囲内とするのが望ましい。カム面ガイド筒部35の軸方向長さをこのように設定することにより、カム面ガイド筒部35は、プラグとソケットとの芯合わせの機能を有効に発揮する。
【0021】
次に、
図9~
図14を参照しながら、本実施例のコネクタの接続時の動作および作用について説明する。
まず、
図9に示したように、プラグ2の把持筒22を把持し、傾斜カム面203の先尖部203Bをソケット3のカムフォロワ筒部32の開口端から内側へ軸方向に差し込む。このとき、傾斜カム面203の先尖部203Bは細長く、一方、カムフォロワ筒部32の開口端は円筒状であるため、相互の差し込みは容易である。傾斜カム面203をカムフォロワ筒部32内へ軸方向に差し込むにつれて、順次、傾斜カム面203とカムフォロワ筒部32との接触面積が広くなる。
【0022】
図10に示した、傾斜カム面203がカムフォロワ筒部32のカム面ガイド筒部35内へ深く差し込まれた状態では、傾斜カム面203がカム面ガイド筒部35内に嵌合(遊合)され、プラグ2の軸線とソケット3の軸線とが一致した状態になる。なお、
図10では、傾斜カム面203の先尖部203Bがカムフォロワ面34のカムヘッド部341の中央付近に当接した状態を示している。L20は、傾斜カム面203の基底部203Aから先尖部203Bまでの長さである。この状態から、傾斜カム面203がカムヘッド部341に接しながら軸線の周りに時計方向又は反時計方向に最大180°以内の範囲で回転し、軸周りの位置決めがなされる。なお、ソケット3に対するプラグ2の差し込み当初の軸周りの位置関係で、傾斜カム面203の先尖部がカムヘッド部341に当接する位置が異なり、したがって、軸周りの回転角度が異なってくることは言うまでもない。
【0023】
図11、
図12に示したように、プラグ2の傾斜カム面203を、さらにソケット3のカムフォロワ筒部内へ差し込むと、傾斜カム面203が、カムフォロワ面34のカムヘッド部341に当接して軸周りの回転を伴いながら、カムフォロワ筒部32内へ深く差しまれる。
図13に示したように、プラグ2の傾斜カム溝206がソケット3の軸方向カム部340に対向する位置に達すると、傾斜カム面203は回転が止まり、軸方向に直進するようになる。ソケット3に対するプラグ2の傾斜カム面203の円周方向の位置が、正規の位置に一致していないときは、傾斜カム面203がカムフォロワ面34の軸方向カム部340に当接し、次いでその傾斜に沿って摺動する際に、そのときの分力により、プラグの傾斜カム面203、すなわち円柱状インシュレータ201は、ソケット3に対して、正規の位置に向かって回転させられた後、回転を停止する。この、円柱状インシュレータ201の回転が止まる円周方向の位置は、プラグ2とソケット3が軸回りの正規の位置に位置決めされた位置である。すなわち、
図13は、芯線42(a~n)と対応するコネクタピン31(a~n)とが、正規の関係の位置に位置決めされた状態を示している。
この状態から、プラグ2をさらにソケットへ差し込むと、
図2、
図3に示した、コネクタの最終的な接続状態となる。また、
図13の状態で、把持筒22のねじ26がソケットのカム面ガイド筒部35に設けられたねじ36と螺合可能になる。したがって、
図2、
図3に示した接続状態で、ねじ26、36によりプラグ2とソケット3を固定することができる。なお、プラグ2とソケット3とを固定する手段は、ねじに限定されるものでなく、プラグ2とソケット3の弾性変形を利用して固定するなど、他の公知の固定手段を用いても良い。
【0024】
次に、
図14により、本発明のカム面ガイド筒部35の機能及び効果を説明する。
図14は、ソケットに対するプラグの差込量と、ソケットとプラグの円周方向の接触率の関係を示している。
図14において、横軸は、ソケットに対するプラグの差込量を示している。また、縦軸は、ソケット(内径D30)の円周方向の長さCir3に対して、プラグの外周面が(遊合状態で)接している円周方向の長さCir2の比率(接触長さ比)、Cir2/Cir3を示している。線aで示したパターンは、プラグのカム部分の形状が
図4、
図5にした構成に対応するものである。
ソケットは、中空の円筒部からなり、そのカム面ガイド筒部35の内周面にプラグ2の傾斜カム面203が嵌合(遊合)される。
図14のポイントP0は、
図14の(A)の状態、すなわち、
図9に相当し、プラグをソケットに差し込む前の状態を示している。
傾斜カム面203の先尖部203Bがカム面ガイド筒部35に差し込まれるに伴い、接触長さ比が連続的に増加する。
図14の(B)は、線a上の傾斜領域に該当し、プラグがソケットの先頭部分がカム面ガイド筒部35に嵌合(遊合)されている。
図14のL31の区間では、プラグ2はカム面ガイド筒部35内を直進する(作業者の操作で、旋回も可能ではある)。
プラグがポイントp1、すなわち基底部203Aまで、カム面ガイド筒部35内に差し込まれた状態では、傾斜カム面203は、カム面ガイド筒部(内径D30)の円周方向の長さCir3に対して殆ど、例えば90%程度あるいはそれ以上、接している状態になり、以降、この状態が継続される。接していない残りの部分は、傾斜カム溝206に対応する領域である。
【0025】
図14の(C)の状態では、プラグがカム面ガイド筒部35内に深く差しこまれ、接触長さ比が90%程度の高い区間が長くなるため、プラグはその軸方向の向きが、ソケットの軸方向の向きとかなり一致するようになる。
図14のポイントP2は、
図14の(D)の状態、すなわち、プラグのカム部分がカムフォロワ面34のカムヘッド部341に当接し、接触長さ比が100%となる、
図10の状態に相当し、プラグのカム部分は、その外周面の殆どがカム面ガイド筒部35の内周面に遊合状態で接している。すなわちP0、p1、P2を結ぶ線aの下側の区間(L21+L22)の面積が、プラグのカム部分とカム面ガイド筒部35の内周面とが接触している総面積になる。これにより、プラグはその軸方向の向きが、ソケットの軸方向の向きと完全に一致する状態に維持される。
その後、ポイントp2からp3までの区間は、
図14の(E)の状態、あるいは、
図11~
図13の状態に相当する。すなわち、プラグのカムが、軸方向の向きはソケットの軸方向の向きと完全に一致した状態で、カムヘッド部341や傾斜カム進入溝33によりその動きを拘束されつつ、直進/旋回しながら、ソケットに差し込まれる。
【0026】
本実施例において、カム面ガイド筒部35の軸方向の長さL31は、プラグのカム部分の軸方向の長さL21と同等もしくはそれ以上である。そのため、プラグ2とソケット3とを互いに軸方向に差し込んだとき、傾斜カム面203の先尖部がポイントp2に到達するまでの間、換言すると、カムフォロワ面34のカムヘッド部341に到達するまでの間に、プラグ2の軸線とソケット3の軸線が完全に一致し、その状態が、プラグ2の殆どがソケット3内に差し込まれるポイントp3まで維持される。
したがって、ソケット3へのプラグ2の差し込み時に、ソケット3の軸線に対してプラグ2の軸線が振れることはなくなり、プラグ2をソケット3に円滑に差し込むことができる。
【0027】
ソケット3に対する円柱状インシュレータ201の円周方向の位置は、正規の位置に一致しているため、ソケット3の軸方向カム部340がプラグ2の傾斜カム溝206に進入し、傾斜カム面203が傾斜カム進入溝33の最奥部まで差し込まれるまでの間に、コネクタピン31(a~n)と芯線42(a~n)との電気的な接続手段の接続がなされる。作業者は、把持筒22を把持して、プラグ2とソケット3とが互いに差し込まれるように、軸方向に押し込むだけで良く、プラグ2が一対のカム機構によって自動的に回転させられ、位置決めされるので、操作性がよい。
【0028】
なお、
図14に線bで示したパターンは、カム形状が、
図4、
図5にした実施例ではなく、中空部208から傾斜カム溝206に向かって次第に幅が狭くなるような構造の場合を示している。あるいは、傾斜角Θがより小さい例である。これらの例では、接触長さ比の増加が緩やかになり、線aのパターンに比べて、ソケット3に対してプラグ2の芯の振れを抑える効果はやや低下する。しかし、カム面ガイド筒部による軸ずれ防止の効果が得られることに変わりはない。カム面とカムフォロワの形状は、ロールインコネクタの用途やソケットの直径の大きさなどに応じて、それらに適した選択する必要がある。
図14でCir2/Cir3が一定になる状態は、80%~95%の範囲で設定するのが望ましい。このように、カムフォロワ筒部の開口部から適切な長さに延長した、カム面ガイド筒部を設けるだけで、作業者の操作性が大幅に向上する効果が得られる。
【0029】
以上述べたように、本発明の実施例によれば、プラグ2の傾斜カム面203とソケット3のカムフォロワ面34の組み合わせにより、プラグとソケットとの芯合わが容易になる。カム面ガイド筒部35は、カム機構を構成するカムフォロワ筒部32と同じ内径を有し、カムフォロワ筒部の開口部をそのまま軸方向に延長しただけの簡単な構成である。すなわち、カム機構を構成するための構成要素をそのまま利用して、プラグとソケットの軸線を合わせる機構を簡単な構成とすることができる。また、カムフォロワ筒部32の開口部をカム面ガイド筒部としているため、ソケット3の外径を太くする要素が不要であり、外径の細いコネクタを提供することができる。
【0030】
本発明の実施例によれば、プラグ2の傾斜カム面203とソケット3のカム面ガイド筒部35の組み合わせにより、プラグとソケットとの芯合わができた後、傾斜カム面203とカムヘッド部とが当接し、かつ相対的に摺動するので、その摺動が円滑に行われる。そのため、従来例のように、芯のずれに伴う摺動面の片当たりや、スティク現象の発生等により、プラグ2とソケット3とが正規の位置に位置決めされる前に、それらの相対回転が停止し、差し込みをやり直したり、それらの摺接部分の磨耗が激しくなる等の不具合は発生しない。
【0031】
201
なお、プラグ2をソケット3から外すには、把持筒22を把持して、ねじ26、36の螺合を解除し、ソケット3をプラグ2から離れる方向に引くだけでよい。これにより、接続手段であるコネクタピン31(a~n)が、芯線42(a~n)から離脱して、接続手段の接続状態が解除される。
【0032】
本発明の第1の実施例によれば、円筒状のソケットの端部をそのまま延長してカム面ガイド筒部を形成しており、ソケットやプラグには、カム機構として必要な構成を設けるのみでよく、プラグとソケット軸線を合わせる機構が簡単なものとなる。プラグ2及びソケット3の形状が簡単なものでよいため、難しい加工がなく、順送プレスなどで構成部品が簡単に製造できるので、安価なコネクタを提供することができる。
【0033】
次に、本発明の第2の実施例になるロールインコネクタについて、
図15~
図19を参照しながら説明する。
第2の実施例では、
図15~
図17に示したように、円柱状インシュレータ201の左端部分が、プラグ2の傾斜カム面203の先端部分と実質的に同じ位置まで、軸方向に伸びている。換言すると、直径D21の円柱状インシュレータ201の外側に、直径D20の傾斜カム面203が固定されている。円柱状インシュレータ201内には、複数のピン挿入穴209(a~n)が設けられており、これらのピン挿入穴には、第一の導体保持部202内に保持されたフィメールピン210(a~n)の先端が差し込まれるようになっている。
【0034】
図18は、第2の実施例になるロールインコネクタにおける、ソケットの縦断面図である。カムフォロワ面34の軸方向カム部340の下端は、カムフォロワ筒部32の最奥部まで伸びている。カムフォロワ筒部32には、第1の実施例の円柱状の電極保持部38に相当するものがなく、カムフォロワ筒部32の側壁に、コネクタピン31(a~n)が固定されている。
図19は、第2の実施例におけるプラグとソケットの接続状況を説明する図であり、プラグがソケットのカムガイド筒内を直進している状態を示している。
本実施例においても、第1の実施例と同様に、カム面ガイド筒部35の軸方向の長さL31は、プラグのカム部分の軸方向の長さL21と同等もしくはそれ以上である。そのため、プラグ2とソケット3とを互いに軸方向に差し込んだとき、傾斜カム面203の先尖部203Bがカムフォロワ面34のカムヘッド部341に到達するまでの間に、プラグ2の軸線とソケット3の軸線が完全に一致し、その状態が、プラグ2の殆どがソケット3内に差し込まれるまで維持される。
したがって、ソケット3へのプラグ2の差し込み時に、ソケット3に対してプラグ2の軸の芯が振れることはなくなり、プラグ2をソケット3に円滑に差し込むことができる。
【0035】
作業者にとっては、プラグ2の傾斜カム面203の先端を目で容易に確認できるのが望ましい。そのため、本実施例では、円柱状インシュレータ201の外周面と傾斜カム面203との差が明確になるように、カムの先端に段差(D20-D21)が設けられ、かつ、プラグ本体20の先尖部203Bが鋭角に形成されている。なお、円柱状インシュレータ201の左端部分を、プラグ2の傾斜カム面203の先端部分よりもさらに左側に延長するのは、カム面ガイド筒部35の内面に接触しない区間、すなわち、
図14のP0の位置よりも右側の区間を長くすることに相当し、プラグとソケットとの芯合わせ機能が低下するという不具合がある。もし、延長が必要な場合は、芯合わせ機能が確保される範囲で、円柱状インシュレータ201の左端部分の延長幅を決定するのが望ましい。
【0036】
次に、本発明の第3の実施例になるロールインコネクタについて、
図20を参照しながら説明する。
図20は、第3の実施例における、プラグの側面図である。この実施例では、円柱状インシュレータ201の左端部分が、傾斜カム面203の基底部203Aと先尖部203Bとを結ぶ線に沿うように傾斜している。この実施例は、円柱状インシュレータ201の左端部分とカムフォロワ筒部32とが傾斜面で相互に係合するものであり、第1の実施例と第2の実施例の中間の形態になっている。すなわち、第1の実施例(
図2参照)では、円柱状インシュレータ201の左端部分と円柱状の電極保持部38とが各々軸方向に直角な方向の部分を有し、これらの部分が互いに接しているのに対し、第3の実施例では、円柱状インシュレータ201の左端部分の傾斜面と、電極保持部38の傾斜面とが接触するように構成され、複数のピン挿入穴209(a~n)が、円柱状インシュレータ201と電極保持部38の双方にまたがって形成されている。
【0037】
本実施例では、円柱状インシュレータ201の左端部分がプラグ2の傾斜カム面203の先端部分と実質的に同じ位置まで、軸方向に伸びている。しかし、円柱状インシュレータ201の左端部分が、傾斜カム面203の基底部203Aと先尖部203Bとを結ぶ線に沿うように傾斜しているため、作業者は、プラグ2の傾斜カム面203の先端を目で容易に確認でき、操作性がよい。
【0038】
本発明において、一対のカム機構は、上記の構成に限定されるものではない。例えば、カムフォロワ面34のカムヘッド部341の形状を、傾斜カム面203との関係で、カムフォロワ筒部32への移動が円滑に行われる範囲で、略二等辺三角形以外の形状にしても良い。また、ソケット3の軸方向カム部340は、軸方向の幅が同一、すなわち軸に平行な形状となっているが、奥に向かって若干広がり、プラグ2の傾斜カム溝206もこれに対応して軸方向に若干広がり、他方、傾斜カム面203と滑らかに連続するようにしても良い。ただ、傾斜カム溝206の円周方向の幅が大きくなると、傾斜カム面203の先尖部がカムヘッド部341に当接したとき、傾斜カム面203の円筒部とカムフォロワ筒部32との円周方向の接触面積が狭くなり、プラグとソケットとの芯合わせ機能が低下する。したがって、芯合わせ機能が確保される範囲で、傾斜カム溝206の円周方向の幅を決定するのが望ましい。
また、ソケット3の側に、先尖部を有する傾斜カム面と1つの導体保持部を設け、プラグの開口側に、カム面ガイド筒部を設け、その奥に傾斜カム進入溝と他の導体保持部を設けても良い。
【0039】
次に、本発明の第4の実施例として、カムフォロワ面が他の形状を有する、すなわち略二等辺三角形のカムヘッド部のない形状のカムフォロワ面を有する、ロールインコネクタの例を、
図17、
図21、
図22A、
図22Bを参照しながら説明する。
第4の実施例のロールインコネクタは、そのプラグ2が、第2の実施例で述べたのと同様な、円柱状インシュレータ201を備えている。すなわち、
図17に示したように、円柱状インシュレータ201の左端部分が、プラグ2の傾斜カム面203の先端部分と実質的に同じ位置まで、軸方向に伸びている。また、円柱状インシュレータ201の形状や第一の導体保持部202の内部に保持される芯線42(a~n)、フィメールピン210(a~n)などの構成も、第2の実施例で述べたのと同様である。
ただ、第4の実施例のプラグ2が第2の実施例のプラグと異なるのは、第一の導体保持部202及び傾斜カム面203の材料が、金属であることである。すなわち、プラグ2の第一の導体保持部202及び傾斜カム面203は、金属板や金属部品をプレス加工して製造されている。
【0040】
また、第4の実施例のロールインコネクタは、
図21に示したような金属製のソケット3を備えている。このソケットは、カムフォロワ筒部32の内周に、カムフォロワ面34を構成する要素として、軸方向凸部342を備えている。この軸方向凸部342は、第1、第2の実施例におけるカムヘッド部341に相当する位置から、軸方向に、軸方向カム部340の一部の領域に相当する位置まで伸びている。
図22Aは、第4の実施例におけるプラグとソケットの接続状況を説明するものであり、プラグ2がソケット3のカムガイド筒内を直進している状態を示している。また、
図22Bは、プラグ2がソケット3のカムフォロワ筒部の傾斜カム溝206が、破線で示した軸方向凸部342に係合し、軸方向に直進している状態を示している。
【0041】
第4の実施例の軸方向凸部342は、例えば、円筒状の金属板をプレス加工して製造される。一例として、
図22Aに示したように、軸方向凸部342は、金属製の円筒であるカムフォロワ筒部32の側面を内側へ矩形状に打ち抜き加工して、カムフォロワ筒部の内面に軸方向凸部を形成したものである。なお、
図22Aの符号343は、金属板の打ち抜き加工に伴う側面の穴を示している。カムフォロワ面34の一部を構成する軸方向凸部342の円周方向の幅は、金属板であるカムフォロワ筒部32の厚みと同じてあり、狭いものとなる。そのため、プラグ2の傾斜カム溝206の幅も、この軸方向凸部342の幅に合わせて細くなるのは言うまでもない。
【0042】
第4の実施例によれば、カムを構成する部材を、金属板や金属部品のプレス加工により製造できるので、ロールインコネクタとして、安価な製品を製造することができる。
カムフォロワ面の軸方向凸部342は、相手のカムヘッド部に当接して、このカムヘッド部の軸線方向の動きを、回転及び軸方向の動きに変換するためのものである。軸方向凸部342をカムフォロワ面として機能させるために、その全長は、プラグ2のカム面がソケット3のカムフォロワ筒部32の内部へ円滑に移動する範囲で、適当な長さに設定すればよい。先端部が矩形の場合、加工はより容易である。ただ、傾斜カム面の先尖部203Bが矩形の面に当接した場合には、先尖部203Bが軸周りに左右に逃げにくくなる。実用上は、その確率が低いのと、当接した場合、作業者は自然とプラグを持って揺らすので、容易に当接が外れ、比較的容易に、プラグ2をソケット3に差し込むことができる。
なお、軸方向凸部342の形状は矩形以外の形状、例えば、先端を曲面状としても良い。また、打ち抜き加工以外のプレス加工でも良く、あるいは、軸方向凸部を溶接などで、カムフォロワ筒部32の内部へ固定しても良い。
【0043】
本発明は、また、次のような変形した態様での実施が可能である。
(a)ソケット3に多芯ケーブル4と同様のものを接続して、コネクタをケーブルの中間接続用コネクタとする。
(b)ソケット3にも、プラグ2と同様に、把持筒と、その中に回転可能に設けられたソケット本体とを設ける。
(c)把持筒22を省略し、プラグ本体を直接把持して、ソケットに差し込む。
【0044】
以上述べた実施例は、本発明を、被覆導線である複数の芯線を束ねた多芯ケーブル用の電気的な接続用のコネクタに適用し、複数の芯線を各々所定の位置関係で、1組のプラグとソケットにより相互に接続するコネクタである。本発明は、電気的な接続手段に限られるものではなく、例えば複数のオプチカルファィバを束ねた光ケーブルや、複数の気体または液体の流通用のチューブを束ねた流体用ケーブルの接続用のコネクタにも適用できる。すなわち、上記実施例の電気的な接続手段を、光学的、または流体的な接続手段に置き換え、1組のプラグとソケットにより、各オプチカルファィバや各流通用のチューブを各々所定の位置関係で、相互に接続するコネクタとすることができる。
あるいはまた、プラグの多芯ケーブルを光ケーブルとし、かつ芯線を光コネクタとし、それらによって光学的な接続手段を形成する。あるいはまた、光ケーブルと電気的な接続手段の異種媒体を同時に接続可能なハイブリッドのコネクタとすることもできる。
【符号の説明】
【0045】
1 ロールインコネクタ
2 プラグアセンブリ
20 プラグ
201 円柱状インシュレータ
202 第一の導体保持部
203 傾斜カム面(カム面)
203A 傾斜カム面の基底部
203B 傾斜カム面の先尖部
204 サブインシュレータ
205 サブインシュレータ
206 傾斜カム溝
208 中空部
209 ピン挿入穴
21 ロック部
212 ガイド溝
22 把持筒
3 ソケット
30 ソケット本体
31 コネクタピン
32 カムフォロワ筒部
33 傾斜カム進入溝
34 カムフォロワ面
340 軸方向カム部
341 カムヘッド部
342 軸方向凸部
35 カム面ガイド筒部
36 ガイド爪
37 拡径鍔部
38 第二の導体保持部
39 Оリング
4 多芯ケーブル