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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161715
(43)【公開日】2024-11-20
(54)【発明の名称】車両検査システム
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/007 20060101AFI20241113BHJP
【FI】
G01M17/007 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076663
(22)【出願日】2023-05-08
(71)【出願人】
【識別番号】000117467
【氏名又は名称】安全自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】早野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】浮津 敏幸
(72)【発明者】
【氏名】萩谷 忠司
(72)【発明者】
【氏名】平井 恭兵
(72)【発明者】
【氏名】平口 大輔
(57)【要約】
【課題】1つの検査ラインで2台以上の車両に対して受入検査及び完成検査を同時に実施可能にする。
【解決手段】本開示に係る車両検査システムの一態様は、重量が2トン以上の車両を検査可能な車両検査システムであって、車両のブレーキ制動力及び速度メータを検査する複合測定器、該複合測定器による検査時に用いられるフリーローラ、および車両の下回り検査を行う点検ピットを含む第1エリアであって、第1エリアに設けられる複数の測定器は車両の搬送方向に沿って配置される第1エリアと、直進時の横すべり量を測定するサイドスリップ測定器およびヘッドライト測定器を含む第2エリアであって、第2エリアに設けられる複数の測定器は車両の搬送方向に沿って配置される第2エリアと、第1エリアに設けられた測定器の出力と、第2エリアに設けられた測定器の出力と、を分離して保存可能な制御装置と、を備える。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量が2トン以上の車両を検査可能な車両検査システムであって、
車両のブレーキ制動力及び速度メータを検査する複合測定器、該複合測定器による検査時に用いられるフリーローラ、および前記車両の下回り検査を行う点検ピットを含む第1エリアであって、前記第1エリアに設けられる複数の測定器は前記車両の搬送方向に沿って配置される第1エリアと、
直進時の横すべり量を測定するサイドスリップ測定器およびヘッドライト測定器を含む第2エリアであって、前記第2エリアに設けられる複数の測定器は前記車両の搬送方向に沿って配置される第2エリアと、
前記第1エリアに設けられた測定器の出力と、前記第2エリアに設けられた測定器の出力と、を分離して保存可能な制御装置と、
を備える
車両検査システム。
【請求項2】
前記制御装置は、
少なくとも前記複合測定器および前記フリーローラの出力を含み、前記第1エリアに設けられた測定器から出力された第1出力が入力される第1制御装置であって、前記第1出力を保存及び管理可能な第1制御装置と、
少なくとも前記サイドスリップ測定器及び前記ヘッドライト測定器の出力を含み、前記第2エリアに設けられた測定器から出力される第2出力が入力される第2制御装置であって、前記第2出力を保存及び管理可能な第2制御装置と、
を含む
請求項1に記載の車両検査システム。
【請求項3】
前記第1エリアに設けられた前記複数の測定器及び前記第2エリアに設けられた前記複数の測定器は、夫々前記車両の搬送方向に沿う検査ラインを形成するように配置され、
前記第1エリアでは、上流側から軸重計、前記複合測定器および前記点検ピットの順に配置され、
前記第2エリアでは、上流側から重量計、前記サイドスリップ測定器及び前記ヘッドライト測定器の順に配置されている
請求項2に記載の車両検査システム。
【請求項4】
前記第1エリアに設けられた前記複数の測定器及び前記第2エリアに設けられた前記複数の測定器は、夫々前記車両の搬送方向に沿う検査ラインを形成するように配置され、
前記第1エリアと前記第2エリアとの間に前記車両が前記検査ラインから外れる方向へ移動可能なスペースが形成されている
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は車両検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、いわゆる車検と呼ばれる法定の定期検査が義務付けられている。車検や通常の整備等の場合、一連の作業工程の中に受入検査及び完成検査が含まれている。受入検査では、大まかな外観検査や点検ピットでの下回り検査等が行われ、車両の整備箇所の確認や交換部品の発注等が行われる。受入検査の後、受入検査で確認した不良個所を整備し、その後、完成検査が行われる。
【0003】
特許文献1には、図2に車検や通常の整備等の場合に行われる一般的な作業工程の一例が記載され、図3には完成検査が行われる検査ラインの一例が記載されている。この検査ラインは、整備工場の検査場エリアに、サイドスリップ測定器、ブレーキ制動力及び速度メータを検査する複合試験機、排ガス測定器、及びヘッドライト試験機、等が車両の走行線に沿って順に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平04-365155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車検で行われる受入検査及び完成検査は、国の機関では、一般的に車検場と呼ばれる専用ラインで夫々実施されている。他方、検査件数としては完成検査より受入検査のほうが多い。受入検査の検査件数が完成検査より多くなる理由として、例えば、まず受入検査を受け、整備工程を経た後、完成検査を受ける前に整備を確認するため再度受入検査を行う場合がある。そこで、検査効率を向上させるため、あるいは設備費や設置スペースの削減を目的として、近年、受入検査を完成検査ラインで行うニーズが増えてきている。しかし、1つの検査ラインで1台の車両が受入検査を受けているとき、同じ検査ラインで別の車両の完成検査を行うことができないという問題がある。
【0006】
本開示は、上述する事情に鑑みてなされたもので、1つの検査ラインで2台以上の車両に対して受入検査及び完成検査を同時に実施可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示に係る車両検査システムの一態様は、重量が2トン以上の車両を検査可能な車両検査システムであって、車両のブレーキ制動力及び速度メータを検査する複合測定器、該複合測定器による検査時に用いられるフリーローラ、および前記車両の下回り検査を行う点検ピットを含む第1エリアであって、前記第1エリアに設けられる複数の測定器は前記車両の搬送方向に沿って配置される第1エリアと、直進時の横すべり量を測定するサイドスリップ測定器およびヘッドライト測定器を含む第2エリアであって、前記第2エリアに設けられる複数の測定器は前記車両の搬送方向に沿って配置される第2エリアと、前記第1エリアに設けられた測定器の出力と、前記第2エリアに設けられた測定器の出力と、を分離して保存可能な制御装置と、を備える。
【0008】
なお、「重量が2トン以上の車両を検査可能な車両検査システム」とは、重量が2トン以上の車両に適用されて好適であるが、重量が2トン未満の車両の検査にも適用可能な車両検査システムであることを意味する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の車両検査システムの一態様によれば、第2エリアで完成検査を行いながら、第1エリアで別な車両に受入検査を行うことが可能になる。また、第1エリアに設けられた複合測定器等を用いて完成検査を行うこともでき、これによって、第1エリア及び第2エリアで2台同時に完成検査を行うことができる。そのため、単位時間当たりの検査件数を増加でき、検査効率を向上できると共に、依頼人の検査待ち時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る車両検査システムを示すブロック線図である。
図2】一実施形態に係る車両検査システムの各エリアの配置を示すブロック線図である。
図3】車検における一般的な作業手順の一例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、これらの実施形態に記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状及びその相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一つの構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0012】
図3は、車検の一般的な作業手順の一例を示す工程図である。
図3に示されているように、まず、車検のために、整備工場に入庫した車両は、業務受付部門で受付手続きが行われる(ステップS10)。受付手続きが済んだ車両は、その後、受入検査を受ける(ステップS12)。次に、受入検査で確認した不良個所を整備し(ステップS14)、その後、完成検査を受ける(ステップS16)。完成検査の後、洗車工程(S18)などを経て依頼人に納車される(S20)。
【0013】
なお、作業手順の別な例では、整備ステップS14と完成検査S16との間に行われる中間検査と、この中間検査で得られた知見に基づいて行われる整備ステップと、がさらに加わる場合もある。
【0014】
図1は、一実施形態に係る車両検査システムを示すブロック線図である。
本実施形態に係る車両検査システム10は、重量が2トン以上の車両を検査可能な車両検査システムである。車両検査システム10は第1エリアA1及び第2エリアA2を備え、第1エリアA1及び第2エリアA2には、夫々複数の各種測定器が設けられている。第1エリアA1では受入検査が行われ、第2エリアA2では完成検査が行われる。第1エリアA1及び第2エリアA2は、通常、受入検査及び完成検査が一貫して行われるように、整備工場の1つの建屋内に配置される。また、第1エリアA1から第2エリアA2への車両の搬送が容易なように、第1エリアA1と第2エリアA2とは、1つの建屋内で近接して連続した床面に配置される。別な実施形態では、受入検査と完成検査とは、同じ敷地内の別な建屋で行われる。
【0015】
第1エリアA1又は第2エリアA2において、検査対象となる車両は、複数の測定器の間を搬送されながら各種の測定が行われる。各エリア内で複数の測定器は車両の搬送が容易なように配置される。例えば、各エリア内で複数の測定器は、車両が向きを変えずに直線状に移動しながら各種測定が可能なように配置される。これによって、各測定ステップ間の間隔を短縮できる。なお、車両は、運搬機で一定の搬送路に沿って各測定器間を搬送される場合もあり、自前のエンジンで自走して各測定器間を移動する場合もある。
【0016】
第1エリアA1には、少なくとも車両のブレーキ制動力及び速度メータを検査する複合測定器12、及び複合測定器12による検査時に用いられるフリーローラ14が設けられている。複合測定器12では、例えば、2本の計測用ローラが並列に配置された箱形の枠体を床面に形成されたピットなどに設置し、車両の駆動軸に接続された駆動輪を2本の計測用ローラに乗せた状態で計測が行われる。ブレーキ制動力を計測する場合は、車両のシフトレバーをN(ニュートラル)レンジにし、2本の計測用ローラをモータなどで回転させた状態でブレーキを踏むことで制動力を検出している。速度メータを検査する場合は、車両のシフトレバーをD(ドライブ)レンジにした状態で車両の駆動輪を自走させ、車両の速度メータが例えば40km/hを示す時の検査装置の指示値と車両の速度メータの値と比べて、車両の速度メータの誤差を確認している。
【0017】
フリーローラ14は、複合測定器12による検査時に、例えば、4WD車やダンプカー等の大型車両が検査対象である場合に、車両の駆動輪と連動して回転する車輪を回転させながら支持する。
【0018】
また、第1エリアA1には点検ピット16が設けられている。点検ピット16では、車両の大まかな外観検査を行うと共に、車両を昇降させて車両の下回りなどの検査を行う。受入検査では、これらの測定器による測定結果から、車両の整備箇所の確認や交換部品の発注等を行う。
【0019】
第2エリアA2には、少なくともサイドスリップ測定器18及びヘッドライト測定器20が設けられている。サイドスリップ測定器18は、車両が直進する時の横すべり量を測定する。ヘッドライト測定器20は、ヘッドライトから発せられる光の状態が正常かどうかを検査する。
【0020】
さらに、車両検査システム10は、制御系として制御装置30を備えている。制御装置30には、第1エリアA1に設けられた測定器の出力(第1出力)と、第2エリアA2に設けられた測定器の出力(第2出力)とが入力されるが、制御装置30において、第1出力と第2出力とは分離して保存可能に構成されている。
【0021】
車両検査システム10によれば、第1エリアA1には、少なくともブレーキ制動力及び速度メータの検査を行う複合測定器12及びフリーローラ14、及び点検ピット16が設けられているため、第1エリアA1で受入検査が可能である。第2エリアA2には、少なくともサイドスリップ測定器18及びヘッドライト測定器20が設けられているため、第1エリアA1で完成検査が可能である。そして、制御装置30は、第1エリアA1に設けられた測定器の出力(第1出力)と、第2エリアA2に設けられた測定器の出力(第1出力)とが分離して保存される。
【0022】
従って、第1エリアA1で受入検査を行い、第2エリアA2で別な車両に完成検査を行っても、制御装置30において受入検査で得られた検査データと完成検査で得られた検査データとが混同されるおそれはない。そのため、第2エリアA2で完成検査を行いながら、第1エリアA1で別な車両に受入検査を行うことが可能になる。また、第1エリアA1に設けられた複合測定器12を用いて完成検査の一部を行うこともでき、そのため、第1エリアA1及び第2エリアA2で夫々別の車両に同時に完成検査を行うことができる。
【0023】
従って、受入検査用の専用ライン及び完成検査用の専用ラインを別々に備えなくても、単位時間当たりの検査台数を増やして、検査効率を向上できるため、専用ライン建設のための費用及び設置スペースを節減できると共に、依頼人の検査待ち時間を短縮できる。
【0024】
さらに、第1エリアA1に複合測定器12が設けられているため、重量が2トン以上の大型車両を検査する場合、第1エリアA1で行われる受入検査で、複合測定器12でブレーキ制動力及び速度メータの検査を行っておくことで、その後の検査で整備要箇所を正確に把握でき、適格な整備を行うことができる。
【0025】
さらに、第1エリアA1に複合測定器12が設けられているため、重量が2トン以上(例えば、4~10トン)の大型車両を検査する場合、第1エリアA1でブレーキ制動力及び速度メータの検査を行っておくことで、その後の検査で整備要箇所を正確に把握でき、適格な整備を行うことができる。
なお、上述のように、本実施形態に係る車両検査システム10は、重量が2トン以上の車両に適用されて好適であるが、重量が2トン未満の車両の検査においても適用できる。
【0026】
一実施形態では、完成検査では、サイドスリップ測定器18による測定、サイドスリップ測定器18による横すべり量の測定、複合測定器12によるブレーキ制動力及び速度メータの検査、ヘッドライト測定器20によるヘッドライトから照射される光の状態の検査、排出ガス測定、又はディーゼル車両の排出ガスに含まれる有害物質である粒子状物質(PM)の測定、等が行われる。
【0027】
制御装置30は、例えば、中央演算部(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の記憶部、及び通信部(入出力インターフェイス)等を備えたコンピュータ装置である。
【0028】
図1に図示されている例示的な実施形態では、第1エリアA1と第2エリアA2とは、各測定器の並びに沿って直線状に配置されている。別な実施形態では、が、第1エリアA1の下流側端において、第2エリアA2に設けられた各測定器の並び方向が、第1エリアA1に設けられた各測定器の並び方向に対して直交する方向に配置されていてもよい。
【0029】
一実施形態では、図1に示されているように、制御装置30は、第1制御装置30a及び第2制御装置30bとで構成されている。第1制御装置30aには、複合測定器12及びフリーローラ14の出力を含み、第1エリアA1に設けられた測定器の出力(第1出力)が入力される。第2制御装置30bには、サイドスリップ測定器18及びヘッドライト測定器20の出力を含み、第2エリアA2に設けられた測定器の出力(第2出力)が入力される。第1出力は第1制御装置30aで保存及び管理され、第2出力は第2制御装置30bで保存及び管理される。
【0030】
本実施形態によれば、第1エリアA1に設けられた測定器の出力を保存及び管理する第1制御装置30aとは別に、第2エリアA2に設けられた測定器から出力された第2出力を保存及び管理する第2制御装置30bを備えているため、第1エリアA1で受入検査を行い、第2エリアA2で別の車両の完成検査を同時に行っても、第1出力及び第2出力を混同するおそれはない。
【0031】
なお、第1制御装置30a及び第2制御装置30bは、制御盤として夫々別なケースに収納され、第1制御装置30aは第1エリアA1又はその近傍に配置され、第2制御装置30bは第2エリアA2又はその近傍に配置されるようにしてもよい。あるいは、第1制御装置30a及び第2制御装置30bは1個のケースに収納されるようにしてもよい。
【0032】
一実施形態では、図1に示されているように、第1エリアA1に設けられた複数の測定器は、検査対象となる車両の搬送方向に沿う検査ラインTを形成するように配置されている。また、第2エリアA2に設けられた複数の測定器も、検査対象となる車両の搬送方向に沿う検査ラインTを形成するように配置されている。
【0033】
そして、第1エリアA1では、上流側から軸重計22、複合測定器12及び点検ピット16の順に配置され、第2エリアA2では、上流側から重量計24、サイドスリップ測定器18及びヘッドライト測定器20の順に配置されている。なお、軸重計22では車両の夫々の車軸に加わる荷重(軸重量)を測定し、重量計24では運転可能な状態における車両重量を測定する。
【0034】
本実施形態によれば、第1エリアA1に設けられた複数の測定器及び第2エリアA2に設けられた複数の測定器は、夫々検査対象となる車両の搬送方向に沿う検査ラインTを形成するように配置されているため、各測定器間で車両が向きを変える必要がなく、車両の搬送が容易になる。これによって、各測定器間における車両の搬送距離及び搬送時間を短縮できるため、受入検査及び完成検査に要する時間を短縮できる。
【0035】
また、第1エリアA1には軸重計22が設けられ、軸重計22によって車両の各車軸に加えられる荷重が測定され、第2エリアA2には重量計24が設けられ、重量計24によって、車両が運転可能な状態における車両重量が測定されるため、第1エリアA1で行われる受入検査及び第2エリアA2で行われる完成検査に基づいて、整備要箇所を正確に把握でき、適格な整備を行うことができる。
【0036】
図1に図示されている例示的な実施形態では、軸重計22の出力は第1制御装置30aに入力されて保存及び管理され、重量計24の出力は第2制御装置30bに入力されて存及び管理される。そして、第1制御装置30a及び第2制御装置30bに夫々保存されているデータは、中継用パソコン42を介して必要な部署に送信される。
【0037】
また、図1に図示されている例示的な実施形態では、第1エリアA1に配置されている各測定器は、軸重計22、フリーローラ14、複合測定器12及び点検ピット16は、この順序で上流側から配置され、直線状の検査ラインTに沿うように1列に配置されている。また、第2エリアA2に配置されている各測定器は、重量計24、サイドスリップ測定器18及びヘッドライト測定器20の順序で上流側から配置され、直線状の検査ラインTに沿うように1列に配置されている。直線状の検査ラインとは、第1エリアA1又は第2エリアA2に設けられている複数の測定器による車両の測定位置が直線状に配置された検査ラインであり、これによって、車両は各測定位置間を直線状に搬送できるため、向きを変える操作を必要としない。そのため、各測定器間の車両の搬送距離及び搬送時間を短縮できる。
【0038】
本開示に係る車両検査システムは、図1に図示されている例示的な実施形態における各測定機器の組合せ又は配置に限定されない。本開示に係る車両検査システムの目的を達成可能な範囲で、各種測定機器の組合せ又は配置は自由に変更できる。
【0039】
なお、別な実施形態では、第1エリアA1に設けられた各測定器の配置によって形成される直線状の検査ラインTに対して、第2エリアA2に設けられた各測定器の配置によって形成される検査ラインTが直交する方向に沿って配置されていてもよい。
【0040】
図2は、一実施形態に係る車両検査システムの各エリアの配置を示すブロック線図である。図2において、図示は省略されているが、本実施形態においては、図1に示されているように、第1エリアA1に設けられた複数の測定器及び第2エリアA2に設けられた複数の測定器は、夫々検査対象となる車両の搬送方向に沿う検査ラインTを形成するように配置されている。
【0041】
そして、図2に示されているように、第1エリアA1と第2エリアA2との間にスペースSが配置され、第1エリアA1と第2エリアA2とは間にスペースSが配置された分だけ間隔を空けている。スペースSは、第1エリアA1でも受入検査を終えた車両が検査ラインTから外れる方向へ移動可能な広さを有している。
【0042】
第1エリアA1で受入検査を終えた車両は、受入検査における検査結果に基づいて整備場に移動し、整備作業が行われる場合がある。その際、本実施形態によれば、第1エリアA1で受入検査を終えた車両を第1エリアA1内で車両の搬送方向上流側に戻すことなく、第1エリアA1から第2エリアA2に続く検査ラインTから外れる方向へ移動させることができる。これによって、受入検査を終えた車両を、第1エリアA1内で車両の搬送方向上流側に戻すことなく、矢印aに示すように、整備場へ移動させて整備作業を行い、その後、再度受入検査に回したり、あるいは第1エリアA1に設けられた測定器を用いて完成検査を行うために、矢印bに示すように、第1エリアA1の上流側端に回すことができる。これによって、第1エリアA1の終端から他の検査場又は整備場に車両移動することが容易になり、車両の移動時間を短縮できるため、検査効率を向上できる。
【0043】
図2に図示されている例示的な実施形態において、例えば、第1エリアA1及び第2エリアA2は、夫々短辺が5m、長辺が10mの広さの長方形を有し、スペースSは、検査対象となる車両の重量及び大きさに応じて短辺が5m、長辺が5~15mの広さの長方形を有している。スペースSは、上述の長さの長辺を有するため、重量が2トン以上(例えば、4~10トン)の大型車両でも、矢印a又は矢印bに示すように、容易に検査ラインTLから外れるように移動させることができる。
【0044】
なお、図2に図示されている例示的な実施形態では、第1エリアA1における検査ラインTと第2エリアA2における検査ラインTとは同一方向を向いているが、第2エリアA2の検査ラインを第1エリアA1の検査ラインに対して傾斜し又は直交する方向へ向けてもよい。
【0045】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0046】
1)一態様に係る車両検査システム(10)は、重量が2トン以上の車両を検査可能な車両検査システム(10)であって、車両のブレーキ制動力及び速度メータを検査する複合測定器(12)、該複合測定器(12)による検査時に用いられるフリーローラ(14)、および前記車両の下回り検査を行う点検ピット(16)を含む第1エリア(A1)であって、前記第1エリア(A1)に設けられる複数の測定器は前記車両の搬送方向に沿って配置される第1エリア(A1)と、直進時の横すべり量を測定するサイドスリップ測定器(18)およびヘッドライト測定器(20)を含む第2エリア(A2)であって、前記第2エリア(A2)に設けられる複数の測定器は前記車両の搬送方向に沿って配置される第2エリア(A2)と、前記第1エリア(A1)に設けられた測定器の出力と、前記第2エリア(A2)に設けられた測定器の出力と、を分離して保存可能な制御装置(30)と、を備える。
【0047】
このような構成によれば、第1エリア(A1)は、少なくとも複合測定器(12)及び点検ピット(16)を含むため、第1エリア(A1)で受入検査が可能であり、第2エリア(A2)は、少なくともサイドスリップ測定器(18)及びヘッドライト測定器(20)を含むため、第1エリア(A1)で完成検査が可能である。また、第1エリア(A1)に設けられた測定器の出力と、第2エリア(A2)に設けられた測定器の出力と、を分離して保存可能な制御装置(30)を備えるため、第1エリア(A1)で1台の車両に受入検査を行い、第2エリア(A2)で別な車両に完成検査を行っても、受入検査で得た出力と完成検査で得た別な車両の出力とを混同するおそれはない。従って、第2エリア(A2)で完成検査を行いながら、第1エリア(A1)で別な車両に受入検査を行うことが可能になる。また、第1エリア(A1)に設けられた複合測定器(12)を用いて完成検査の一部を行うこともでき、これによって、第1エリア(A1)及び第2エリア(A2)で夫々同時に別な車両の完成検査を行うことができるため、単位時間当たりの検査件数を増加でき、検査効率を向上できる。
【0048】
従って、受入検査用の専用ライン及び完成検査用の専用ラインを別々に備えなくても、検査効率を向上できるため、専用ライン建設のための費用及び設置スペースを節減できると共に、依頼人の検査待ち時間を短縮できる。
【0049】
さらに、第1エリア(A1)に上述の複合測定器(12)が設けられているため、重量が2トン以上の大型車両を検査する場合、第1エリア(A1)で複合測定器(12)によるブレーキ制動力及び速度メータの検査を行っておくことで、その後の検査で整備要箇所を正確に把握でき、適格な整備を行うことができる。
【0050】
2)別な態様に係る車両検査システム(10)は、1)に記載の車両検査システム(10)において、前記制御装置(30)は、少なくとも前記複合測定器(12)および前記フリーローラ(14)の出力を含み、前記第1エリア(A1)に設けられた測定器から出力された第1出力が入力される第1制御装置(30a)であって、前記第1出力を保存及び管理可能な第1制御装置(30a)と、少なくとも前記サイドスリップ測定器(18)及び前記ヘッドライト測定器(20)の出力を含み、前記第2エリア(A2)に設けられた測定器から出力される第2出力が入力される第2制御装置(30b)であって、前記第2出力を保存及び管理可能な第2制御装置(30b)と、を含む。
【0051】
このような構成によれば、第1エリア(A1)に設けられた測定器から出力された第1出力を保存及び管理する第1制御装置(30a)と、第1制御装置(30a)とは別に、第2エリア(A2)に設けられた測定器から出力された第2出力を保存及び管理する第2制御装置(30b)と、を備えているため、第1エリア(A1)で受入検査を行い、第2エリア(A2)で別の車両の完成検査を同時に行っても、第1出力及び第2出力を混同するおそれはなく、夫々の車両に精度良い検査を行うことができる。
【0052】
3)さらに別な態様に係る車両検査システム(10)は、2)に記載の車両検査システム(10)において、前記第1エリア(A1)に設けられた前記複数の測定器及び前記第2エリア(A2)に設けられた前記複数の測定器は、夫々前記車両の搬送方向に沿う検査ライン(T)を形成するように配置され、前記第1エリア(A1)では、上流側から軸重計(22)、前記複合測定器(12)および前記点検ピット(16)の順に配置され、前記第2エリア(A2)では、上流側から重量計(24)、前記サイドスリップ測定器(18)及び前記ヘッドライト測定器(20)の順に配置されている。
【0053】
このような構成によれば、第1エリア(A1)に設けられた複数の測定器及び第2エリア(A2)に設けられた複数の測定器は、夫々検査対象となる車両の搬送方向に沿う検査ライン(T)を形成するように配置されるため、各測定器間の車両の搬送が容易になり、各測定器間の車両の搬送時間を短縮できる。これによって、受入検査及び完成検査に要する時間を短縮できる。
【0054】
また、第1エリア(A1)のうちの上流側位置に軸重計(22)が設けられ、軸重計(22)によって車両の各車軸に加えられる荷重が測定され、第2エリア(A2)のうちの上流側位置に重量計(24)が設けられ、重量計(24)によって、車両が運転可能な状態における車両重量が測定される。これによって、第1エリア(A1)で行われる受入検査及び第2エリア(A2)で行われる完成検査に基づいて、整備要箇所を正確に把握でき、適格な整備を行うことができる。
【0055】
4)さらに別な態様に係る車両検査システム(10)は、1)乃至3)のいずれかに記載の車両検査システム(10)において、前記第1エリア(A1)に設けられた前記複数の測定器及び前記第2エリア(A2)に設けられた前記複数の測定器は、夫々前記車両の搬送方向に沿う検査ライン(T)を形成するように配置され、前記第1エリア(A1)と前記第2エリア(A2)との間に前記車両が前記検査ライン(T)から外れる方向へ移動可能なスペース(S)が形成されている。
【0056】
検査ライン(T)の途中で車両を検査ラインから外れる方向へ移動させることは容易ではない。特に2トン以上の重量を有する大型車両の場合、非常に難しい。このよう場合は、通常、検査ライン(T)上の移動経路を上流側又は下流側まで車両を搬送せざるを得ないが、その間別な車両の検査はできない。
【0057】
上記構成によれば、第1エリア(A1)と第2エリア(A2)との間に上記スペース(S)をもうけることで、第1エリア(A1)で受入検査を終えた車両を第1エリア(A1)内で車両の搬送方向上流側に戻すことなく、上記スペース(S)を使って検査ラインから外れる方向へ移動させることができる。そして、整備場へスムーズに移動させて整備作業を行い、その後、再度受入検査に回したり、あるいは第1エリア(A1)に設けられた測定器を用いて完成検査を行うことができる。これによって、第1エリア(A1)の終端から他の検査場又は整備場に車両を移動することが容易になり、車両の移動時間を短縮できるため、検査効率を向上できる。
【符号の説明】
【0058】
10 車両検査システム
12 複合測定器
14 フリーローラ
16 点検ピット
18 サイドスリップ測定器
20 ヘッドライト測定器
22 軸重計
24 重量計
30 制御装置
30a 第1制御装置
30b 第2制御装置
32 データ中継用パソコン
40 整備場
A1 第1エリア
A2 第2エリア
S スペース
検査ライン

図1
図2
図3