(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161719
(43)【公開日】2024-11-20
(54)【発明の名称】マイクロスイッチおよびスイッチ装置
(51)【国際特許分類】
H01H 19/06 20060101AFI20241113BHJP
【FI】
H01H19/06
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076676
(22)【出願日】2023-05-08
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 龍介
(72)【発明者】
【氏名】今瀬 隆則
(72)【発明者】
【氏名】浅田 泰洋
(72)【発明者】
【氏名】堺 理人
【テーマコード(参考)】
5G219
【Fターム(参考)】
5G219GS33
5G219HT04
5G219HU23
5G219KS02
5G219KU41
5G219KW03
5G219NS26
(57)【要約】
【課題】本発明は、作動軸の動作を安定して維持しつつ異物の侵入を好適に抑制するシール構造を備えたマイクロスイッチおよびスイッチ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】マイクロスイッチ1は、ケース10と、ケース10の挿通孔16aに挿通するマイクロ作動軸30と、マイクロ作動軸30を軸周りに覆うシール部材40と、を備えている。シール部材40は、ケース10から立ち上がる第一筒部41と、第一筒部41の上側Z1に配置されてマイクロ作動軸30に接続される第二筒部42と、軸方向Zに交差する交差方向に延びる少なくとも一個以上の交差部43と、を備えている。交差部43の少なくとも一個は、第一交差部43aを構成し、第一筒部41と第一交差部43aとの交差部分には、第一角部45が形成され、第二筒部42と第一交差部43aとの交差部分には、第二角部46が形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体に貫通形成された挿通孔に挿通して軸方向に変位する作動軸と、
前記作動軸を軸周りに覆い、かつ前記挿通孔を遮蔽する筒状のシール部材と、を備え、
前記シール部材は、前記筐体から前記軸方向の一方側に立ち上がる第一筒部と、前記第一筒部と同軸の中心軸及び前記第一筒部の外径よりも小さな外径を有し前記第一筒部の前記軸方向の一方側に配置されて前記作動軸に接続される第二筒部と、前記軸方向に交差する交差方向に延びる少なくとも一つ以上の交差部と、を備え、
前記交差部の少なくとも一つは、前記第一筒部と前記第二筒部とを接続する第一交差部を構成し、
前記第一筒部と前記第一交差部との交差部分には、前記交差方向のうち前記作動軸から遠ざかる方向を向く第一角部が形成され、
前記第二筒部と前記第一交差部との交差部分には、前記交差方向のうち前記作動軸に近づく方向を向く第二角部が形成されていることを特徴とするマイクロスイッチ。
【請求項2】
前記交差部は、前記第一交差部に加え、前記第二筒部と前記作動軸とを接続する第二交差部を備え、
前記第二交差部と前記第二筒部との交差部分には、前記交差方向のうち前記作動軸から遠ざかる方向を向く第三角部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のマイクロスイッチ。
【請求項3】
前記作動軸は複数設けられ、
前記シール部材は、複数の前記作動軸をまとめて覆うように設けられていることを特徴とする請求項1に記載のマイクロスイッチ。
【請求項4】
前記第一筒部には、前記筐体の前記挿通孔の周りの壁面に沿うフランジシール部が設けられ、
前記フランジシール部を、厚さ方向に押圧して筐体に固定する固定部材がさらに設けられていることを特徴とする請求項1に記載のマイクロスイッチ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のマイクロスイッチを搭載したことを特徴とするスイッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロスイッチおよびスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機器の装置等に搭載されるマイクロスイッチが知られている。マイクロスイッチは、電気回路を開閉する接点機構と、接点機構を収容する筐体と、筐体に挿通し筐体の内外に延びるマイクロ作動軸と、を備えている。マイクロ作動軸は、筐体外部から筐体内部に向かって所定の押圧力を受けた場合に押圧方向に変位し、その変位によって接点機構に作用し、電気回路を開閉する。このようなマイクロスイッチでは、マイクロ作動軸が挿通する挿通孔から筐体内部に異物が侵入することがあることから、マイクロ作動軸周辺にシール構造を備えたものが提供されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のマイクロスイッチでは、ドーム形状に成型されたゴムキャップの頂部にマイクロ作動軸としての押下部材を挿通させた状態で押下部材とゴムキャップとを接続し、押下部材を周方向に覆うとともに、ゴムキャップの開口周縁で挿通孔を覆うことで、挿通孔を異物から遮蔽している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のゴムキャップは、特許文献1の
図5(a)に示す、押下部材の押下前状態において、全体ドーム形状となっているのに対し、
図5(b)に示す押下部材の押下後状態において、ドーム形状の頂部を構成する部分が陥没した陥没形状となってしまう。すなわち、ゴムキャップは、押下部材の変位に伴って、全体ドーム形状の一次モードから頂部が陥没した二次モードにモードの変更を伴う変形をしてしまうこととなる。そして、この変形は、例えば、ゴムキャップの壁面に沿った曲線に接線を引いた場合、その接線の頂部に向かう向きが、上向きから下向きに反転するほどの大きな変形であるため、ゴムキャップの剛性が大きく変化することとなる。このため、所定の押圧力を押下部材に加えてもゴムキャップの変形量が意図したものにならず、押下部材が意図しないタイミングで動作する可能性があり、押下部材の動作が安定しないおそれがある。
【0005】
本発明は、作動軸の動作を安定して維持しつつ異物の侵入を好適に抑制するシール構造を備えたマイクロスイッチおよびスイッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明のマイクロスイッチは、筐体と、前記筐体に貫通形成された挿通孔に挿通して軸方向に変位する作動軸と、前記作動軸を軸周りに覆い、かつ前記挿通孔を遮蔽する筒状のシール部材と、を備え、前記シール部材は、前記筐体から前記軸方向の一方側に立ち上がる第一筒部と、前記第一筒部と同軸の中心軸及び前記第一筒部の外径よりも小さな外径を有し前記第一筒部の前記軸方向の一方側に配置されて前記作動軸に接続される第二筒部と、前記軸方向に交差する交差方向に延びる少なくとも一つ以上の交差部と、を備え、前記交差部の少なくとも一つは、前記第一筒部と前記第二筒部とを接続する第一交差部を構成し、前記第一筒部と前記第一交差部との交差部分には、前記交差方向のうち前記作動軸から遠ざかる方向を向く第一角部が形成され、前記第二筒部と前記第一交差部との交差部分には、前記交差方向のうち前記作動軸に近づく方向を向く第二角部が形成されていることを特徴とする。
【0007】
このような本発明によれば、作動軸が軸方向の一方側から他方側に向かって筐体内に変位する際には、まず作動軸に接続されるシール部材の第二筒部に対して作動軸の変位方向に荷重が加わり、次いで、その荷重が第二筒部と交差部の接続部分である第二角部に対して伝達される。この荷重の伝達により、第二角部が作動軸の変位方向に変形し、第二角部の変形に合わせて第一交差部が変形する。ここで、第二筒部は、第一筒部よりも小径に構成されていることから、第一交差部は、第二角部よりも作動軸から交差方向に離れた第一角部を支点として、作動軸の変位方向に傾くように変形する。このように、シール部材の主な変形は、第一角部を支点に第一交差部が傾く程度の変形となり、交差方向のうち作動軸から遠ざかる方向を向く第一角部と、交差方向のうち作動軸に近づく方向を向く第二角部と、が向く方向は、それぞれ反転することがない。すなわち、上述した従来のマイクロスイッチのドーム形状のゴムキャップにおける変形のように、モードの変更を伴う変形がシール部材に生じることを抑制することができる。このため、例えば、シール部材の壁面に沿った曲線に接線を引いた場合、その接線の、作動軸に向かう向きが、上向きから下向きに反転することなどを防ぐことができる。これにより、シール部材の剛性を安定させることができるので、シール部材の所定の力に対する変形量を意図したものとし、作動軸の動作を意図したものとすることができる。したがって、作動軸の動作を安定して維持しつつ異物の侵入を好適に抑制するシール構造を備えたマイクロスイッチを提供することができる。
【0008】
また、この際、前記交差部は、前記第一交差部に加え、前記第二筒部と前記作動軸とを接続する第二交差部を備え、前記第二交差部と前記第二筒部との交差部分には、前記交差方向のうち前記作動軸から遠ざかる方向を向く第三角部が形成されていることが好ましい。このような構成によれば、シール部材が作動軸の変位に伴って変形する際に、第三角部を支点として第二交差部を傾かせ、第一角部を支点として第一交差部を傾かせることができ、変形箇所を複数個所に分散させることができる。このため、上記モードの変更を伴う変形がシール部材に生じることを抑制し、シール部材の剛性をより安定させ、シール部材の所定の力に対する変形量及び作動軸の動作を意図したものとすることができる。
【0009】
また、前記作動軸は複数設けられ、前記シール部材は、複数の前記作動軸をまとめて覆うように設けられていてもよい。このような構成によれば、筐体内に複数のスイッチを備える、いわゆる、デュアルタイプのマイクロスイッチにも本発明のシール部材の構造を適用することができる。
【0010】
また、前記第一筒部には、前記筐体の前記挿通孔の周りの壁面に沿うフランジシール部が設けられ、前記フランジシール部を、厚さ方向に押圧して筐体に固定する固定部材がさらに設けられていることが好ましい。このような構成によれば、フランジシール部を押圧しながら固定部材によってシール部材を筐体に確実に密着固定し、シール部材のシール性能を安定して維持することができる。
【0011】
また、本発明のスイッチ装置は、上述したいずれかのマイクロスイッチを搭載したことを特徴とする。このような構成によれば、作動軸の動作を安定して維持しつつ異物の侵入を好適に抑制するシール構造を備えたマイクロスイッチを用いて、スイッチ装置を構成することができる。なお、スイッチ装置としては、例えば、冷凍サイクルの中で冷媒の圧力を検知する圧力スイッチや、冷媒の温度を検出する温度スイッチ等が挙げられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、作動軸の動作を安定して維持しつつ異物の侵入を好適に抑制するシール構造を備えたマイクロスイッチおよびスイッチ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係るマイクロスイッチの斜視図。
【
図3】マイクロスイッチのマイクロ作動軸及びシール部材の拡大断面図。
【
図5】取付状態にあるマイクロ作動軸及びシール部材の拡大断面図。
【
図6】初期状態にあるマイクロ作動軸及びシール部材の拡大断面図。
【
図7】最大押し込み状態にあるマイクロ作動軸及びシール部材の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を、
図1~7に基づいて説明する。本実施形態に係るマイクロスイッチ1は、例えば、冷凍サイクルの圧縮機において冷媒の圧力を検出する圧力スイッチや、冷媒の温度を検出する温度スイッチなどのスイッチ装置に搭載され、スイッチ装置の一部を構成するものである。マイクロスイッチ1は、箱状のケース10(筐体)と、ケース10の上部に設けられる作動部20と、作動部20によって軸方向に進退移動させられるマイクロ作動軸30(作動軸)と、マイクロ作動軸30を軸周りに覆うシール部材40(シール部材)と、マイクロ作動軸30が軸方向に変位した際の力が作用する切替手段50と、切替手段50によって導通先を切り替えられる接点60と、を備えている。
【0015】
なお、以降の説明では、図面において、矢印X、矢印Y、矢印Zを、互いに直交する方向とする。そして、後述するマイクロ作動軸30の軸方向を矢印Zで示し、「軸方向Z」と記す。そして、軸方向Z一方側を「上側Z1」、他方側を「下側Z2」と記す。また、水平方向を矢印X、矢印Yで示し、それぞれ「前後方向X」、「幅方向Y」と記す。そして、前後方向Xの一方側を「前側X1」、他方側を「後側X2」と記す。なお、前後方向X及び幅方向Yは、図において、後述する挿通孔16aやマイクロ作動軸30の径方向をも示すことがある。これはあくまでも説明の便宜のためであり、必ずしもマイクロスイッチ1の実際の使用状態における方向と一致するとは限らず、マイクロスイッチ1の実際の使用状態における各方向を限定するものではない。
【0016】
ケース10は、略矩形箱状の箱部11と、箱部11の上側Z1に設けられる蓋部12と、を備えている。箱部11は、
図2に示すように、内部に収容空間13を備えている。収容空間13には、切替手段50、接点60等の構成部品が収容されている。箱部11の側壁のうち後側X2の側壁には、後側X2に突出する突出部14が形成されている。突出部14は、マイクロスイッチ1が搭載される装置(例えば上述した圧力スイッチ等の装置)に箱部11を固定するための部分であり、後述するベース部15とともに、箱部11を装置に接続する接続部分を構成している。蓋部12は、突出部14の上側Z1に配置されて上側Z1に延びるベース部15と、ベース部15に連続しベース部15に直交して前後方向Xに延びる蓋本体16と、を備えている。ベース部15は、厚板状に形成され、上述した突出部14とともに箱部11を装置に接続する接続部分を構成している。
【0017】
ベース部15の、前側X1を向く面には、幅方向Yに間隔をあけてそれぞれ前側X1に突出する一対の突起部15aが、幅方向Yに並ぶように合計2組形成されている。一対の突起部15aの間には、ベース部15の前側X1を向く面から前側X1に突出する直方体状の台座17が形成されている。台座17には、後述するレバー22を固定する固定部18が、締結部材19によって固定されている。固定部18は、金属製の板材を曲げ加工等して形成され、台座17の上側Z1の面及び幅方向Y両側面を覆うとともに、台座17の前側X1の端部よりも前側X1に突出している。蓋本体16は、前後方向X及び幅方向Yに延在する矩形板状に形成され、その中央部には、軸方向Zに貫通する挿通孔16aが貫通形成されている。
【0018】
挿通孔16aは、軸方向から見て円形に形成されている。
図3に示すように、蓋本体16において、挿通孔16aの上側Z1の開口縁部の周りには、挿通孔16aの径方向外方に延在する第一横面16b1(挿通孔16aの周りの壁面)と、第一横面16b1から上側Z1に立ち上がる第一縦面16b2と、で構成された第一段部16bが形成されている。また、蓋本体16には、第一段部16bの上側Z1の端部に連続し、挿通孔16aの径方向外方に延在する第二横面16c1と、第二横面16c1から上側Z1に立ち上がる第二縦面16c2と、で構成された第二段部16cが形成されている。第一段部16b及び第二段部16cの形成された部分には、後述するシール部材40を固定する固定部材70が設置されている。固定部材70は、蓋本体16の上側Z1の壁面から上側Z1に立ち上がる係止部71と、係止部71に形成された水平方向に貫通する孔部72に係止されて支持される本体部73と、を備えている。
【0019】
本体部73は、孔部72に係止された部分から蓋本体16の上側Z1の壁面及び第二段部16cに亘って延在し、
図3に示す断面視でL字状に形成された第一L状部74と、第一L状部74に連続して第二段部16cから第一段部16bに亘って延び、
図3に示す断面視でL字状に形成された第二L状部75と、を備えている。第一L状部74及び第二L状部75は、挿通孔16aの周方向の全周に亘って延在している。第二L状部75の下側Z2の端面には、下側Z2に突出する抜け止め突起76が形成されている。抜け止め突起76は、後述するシール部材40のフランジシール部44を軸方向Zに押圧することで、フランジシール部44を蓋本体16に密着固定する部分である。抜け止め突起76は、挿通孔16aの周方向の全周に亘って形成されている。
【0020】
作動部20は、外力を受けて変位することで、マイクロ作動軸30を軸方向に進退移動させる部分である。外力の例としては、マイクロスイッチ1が上述した冷媒の圧力を検出する圧力スイッチや冷媒の温度を検出する温度スイッチに用いられる場合、冷媒の圧力や温度変化に応じて、感応部材としてのベローズが変位する際に発生し、伝達される力などが挙げられる。そして、この場合、作動部20は、ベローズ等の変位をマイクロ作動軸30に伝達する変位伝達部材として機能する。作動部20は、
図1、2に示すように、固定部18の幅方向Y両側壁を貫いて固定された回転軸21と、回転軸21に回転可能に支持されるレバー22と、を備えている。レバー22は、上述したようなベローズの変位によって発生し、伝達された力に基づいて、回転軸21の軸回り(本実施形態では、
図2に示す方向から見て左回り)に回転するように設けられている。レバー22は、前後方向Xに延在する板状部23を備え、板状部23には、上側Z1に突出する円錐状の軸受部24が形成されている。軸受部24の内周面は、マイクロ作動軸30の後述する一端部31に摺接する摺接面を構成している。
【0021】
マイクロ作動軸30は、作動部20におけるレバー22の回転運動に追従して軸方向Zに進退移動する軸部材であり、上述した蓋本体16の挿通孔16aに挿通し、軸方向Zに延びて形成され、軸方向Zに変位可能にケース10に固定されている。
図2、3に示すように、マイクロ作動軸30は、ケース10外に位置して上側Z1の端部を構成する一端部31と、一端部31に隣接する締め付け溝32と、ケース10内に位置して下側Z2の端部を構成する係合部33と、を備えている。一端部31は、レバー22の軸受部24の内周面に摺接する部分であり、その外面は、半球状に形成されている。締め付け溝32は、シール部材40の後述する取付孔48の開口端縁を構成する軸シール部49を接続する溝であり、マイクロ作動軸30の径方向内方に凹んで形成されている。締め付け溝32の底部は、軸シール部49に当接可能な小径部32aを構成している。係合部33は、切替手段50に係合する部分であり、この係合部33が切替手段50に係合することで、マイクロ作動軸30が進退移動した際に、切替手段50に対して、軸方向Z(軸方向)の力が作用するようになっている。
【0022】
シール部材40は、マイクロ作動軸30を軸周りに覆い、かつ挿通孔16aを遮蔽する部材であり、可撓性の樹脂材料等を用いて形成されている。
図3に示すように、シール部材40は、ケース10の第一段部16bから立ち上がる第一筒部41と、第一筒部41の上側Z1に配置される第二筒部42と、軸方向Zと交差する交差方向(本実施形態では挿通孔16a及びマイクロ作動軸30の径方向(水平方向))に延びる交差部43と、を備えている。第一筒部41は、マイクロ作動軸30と同軸の中心軸を備え、軸方向Zに延びる筒状に形成されている。第一筒部41の内径寸法は、上述した挿通孔16aの内径寸法と略同じに設定されている。第一筒部41の下側Z2の端部には、挿通孔16aの径方向外方に突出するフランジシール部44が形成されている。フランジシール部44は、第一段部16bの第一横面16b1(挿通孔16aの周りの壁面)に沿って延び、固定部材70の抜け止め突起76によって軸方向Z(厚さ方向)に押圧されてケース10に密着固定されている。
【0023】
第二筒部42は、第一筒部41と同軸の中心軸を備え、筒状に形成されている。第二筒部42の外径寸法は、第一筒部41の外径寸法よりも小さく形成されている。交差部43は、第一筒部41と第二筒部42とを接続する第一交差部43aと、第二筒部42とマイクロ作動軸30とを接続する第二交差部43bと、を備えている。すなわち、シール部材40には、少なくとも一つ以上の交差部43が形成されている。第一交差部43aは、第一筒部41の上側Z1の端部から第二筒部42の下側Z2の端部まで延びている。第一交差部43aと第一筒部41との接続部分、すなわち交差部分には、交差方向のうちマイクロ作動軸30から遠ざかる方向を向く第一角部45が形成されている。第一交差部43aと第二筒部42との接続部分、すなわち交差部分には、交差方向のうちマイクロ作動軸30に近づく方向を向く第二角部46が形成されている。
【0024】
第二交差部43bは、第二筒部42の上側Z1の端部からマイクロ作動軸30の締め付け溝32まで延びている。第二交差部43bと第二筒部42との接続部分、すなわち交差部分には、交差方向のうちマイクロ作動軸30から遠ざかる方向を向く第三角部47が形成されている。第二交差部43bの中央部には、軸方向Zに貫通する取付孔48が形成され、取付孔48には、マイクロ作動軸30が挿通している。取付孔48の開口端縁は、シール部材40の他の部分よりも肉厚な軸シール部49を構成している。軸シール部49は、締め付け溝32に接続される部分であり、その接続の際に、締め付け溝32と軸シール部49とが密着することで、密着部分のシールが行われる。ここで、例えば、締め付け溝32の溝幅は、軸シール部49の厚さ方向の寸法よりも小さく設定することができる。これにより、締め付け溝32と軸シール部49の接続の際には、軸シール部49が、軸方向Zに変形させられながら、締め付け溝32に嵌め込まれることとなるため、変形前の状態に戻ろうとする軸シール部49が締め付け溝32の内面に密着することによって、軸方向Zにシールが行われる。
【0025】
また、上述した締め付け溝32の底部で構成される小径部32aの外径寸法は、シール部材40の取付孔48の内径寸法よりも大きく設定することができる。これにより、締め付け溝32と軸シール部49の接続の際には、取付孔48の内径を広げた状態でマイクロ作動軸30が取付孔48に挿入された後に、内径を広げる前の状態に戻ろうとする取付孔48の開口縁部(すなわち、軸シール部49)が小径部32aの外周面に密着することによって、径方向にシールが行われる。
【0026】
なお、締め付け溝32と軸シール部49との密着によるシールについては、上述のように、締め付け溝32の溝幅を、軸シール部49の厚さ方向の寸法よりも小さく設定することで、軸方向Zのシールのみを行ってもよいし、小径部32aの外径寸法を、シール部材40の取付孔48の内径寸法よりも大きく設定することで、径方向のシールのみを行ってもよい。さらに、締め付け溝32の溝幅を、軸シール部49の厚さ方向の寸法よりも小さく設定し、かつ、小径部32aの外径寸法を、シール部材40の取付孔48の内径寸法よりも大きく設定することで、軸方向Zおよび径方向のシールを両方行ってもよい。すなわち、締め付け溝32の溝幅を、軸シール部49の厚さ方向の寸法よりも小さく設定し、かつ、または、小径部32aの外径寸法を、シール部材40の取付孔48の内径寸法よりも大きく設定することができる。このようにして、マイクロ作動軸30、シール部材40間と、シール部材40、ケース10間と、で互いの密着が維持されることで、シール部材40内の気密性が維持される。
【0027】
なお、本実施形態では、例えば、シール部材40の外部から可燃性のガスが入らないように気密性を有するように構成する必要がある場合があり、その仕様として内部側からの数10kPaの気密性を有するように気密性を設定するが、この気密性は適宜変更することができる。また、本実施形態では、
図1に示すように、作動部20、マイクロ作動軸30は、1個のケース10に複数設けられることもある。この場合、それぞれのマイクロ作動軸30及び挿通孔16aを個別にシール部材40で覆ってもよいし、それぞれのマイクロ作動軸30及び挿通孔16aをまとめて覆ってもよい。この場合、例えばシール部材40は、軸方向から見て長円形状や楕円形状などに形成してもよい。
【0028】
切替手段50は、
図2に示すように、マイクロ作動軸30の係合部33に係合する可動片51と、可動片51の先端部に当接し、後述する可動接点63を第一固定接点61または第二固定接点62に向けて付勢するスナップ片52と、前側X1の端部に可動接点63を備える導通片53と、を備えている。接点60は、ケース10に設けられる複数の不図示の端子にそれぞれ接続される導通部材であり、第一固定接点61と、第二固定接点62と、導通片53の前側X1の端部に固定される可動接点63と、を備えている。第一固定接点61は、収容空間13内でケース10に固定され、不図示の第一端子に接続されている。第二固定接点62は、第一固定接点61の上側Z1に配置され、第一固定接点61と軸方向Zに対向して収容空間13内でケース10に固定されている。第二固定接点62は、不図示の第二端子に接続されている。可動接点63は、第一固定接点61と第二固定接点62との間に配置され、第一固定接点61及び第二固定接点62のそれぞれに対して当接可能に設けられ、導通先を切り替え可能となっている。
【0029】
以下、マイクロ作動軸30の組み立てについて説明する。まず、
図4に示すシール部材40の取付孔48に、マイクロ作動軸30を一端部31側から軸方向Zに挿入する。そして、シール部材40の軸シール部49をマイクロ作動軸30の締め付け溝32に嵌め込み、マイクロ作動軸30、シール部材40間のシールを行う。次に、シール部材40のフランジシール部44がケース10の第一段部16bに当接するようにシール部材40をケース10に配置する。この際、
図2に示すように、マイクロ作動軸30の係合部33を切替手段50の可動片51に係合させる。そして、固定部材70をケース10に設置し、第二L状部75の抜け止め突起76でフランジシール部44を押圧し、シール部材40をケース10に密着固定する。これにより、
図5に示すように、シール部材40がケース10に取り付けられて取付状態となる。次に、マイクロ作動軸30を所定量下側Z2に変位させて、一端部31を作動部20の軸受部24に当接させる。この状態では、シール部材40は、
図6に示すように、第一交差部43aが水平方向に対して軸方向Zに傾いた初期状態となる。これにより、シール部材40の組み立てが完了する。
【0030】
次に、マイクロスイッチ1の動作について説明する。ここでは、一例としてマイクロスイッチ1は上述した冷媒の圧力を検出する圧力スイッチに搭載されて、冷媒の圧力が小さい低圧状態と、冷媒の圧力が低圧状態より所定量大きい高圧状態と、で接点60の導通先を切り替えるものとする。なお、
図2は、冷媒が低圧状態にある場合のマイクロスイッチ1を示している。この状態では、作動部20がマイクロ作動軸30を下側Z2に押圧しておらず、スナップ片52によって下側Z2に付勢された可動接点63が、第一固定接点61に当接して導通し、低圧状態であることが検出される。この状態では、シール部材40は、上述した初期状態の形状を維持している。次に、冷媒の圧力が上昇すると、圧力スイッチのベローズに圧力が作用し、それによってベローズが変位し、その変位が不図示の伝達部材を介して作動部20に伝達され、作動部20に対して下側Z2に向かう外力を加える。これにより、作動部20のレバー22が回転軸21の軸回りの左回りに回転する。これにより、マイクロ作動軸30が、レバー22の回転に追従して下側Z2に変位する。
【0031】
マイクロ作動軸30が下側Z2に変位すると、シール部材40の軸シール部49が下側Z2に引っ張られる。この際、先ず、第二交差部43bに下向きの荷重が加わる。これにより、第二交差部43bが、第三角部47を支点として下側Z2に傾く。次に、上記荷重が、第二交差部43b、及び第三角部47を介して第二筒部42に加わり、第二筒部42が下側Z2に変位する。そうすると、第二筒部42下端の第二角部46に対して下側Z2に荷重が加わる。これにより第一交差部43aが変形する。ここで、第二筒部42は、第一筒部41よりも小径に構成されていることから、第一交差部43aは、第二角部46よりもマイクロ作動軸30の径方向外方に離れた第一角部45を支点として、下側Z2に傾くように変形する。そして、この第一交差部43aの変形に伴い、第一筒部41が、フランジシール部44との境界を支点としてマイクロ作動軸30の径方向外方に傾くように変形する。このようにして、シール部材40は、
図7に示す最大押し込み状態となる。
【0032】
次に、マイクロ作動軸30の下側Z2への変位によって、下側Z2に向かう荷重が切替手段50に作用し、可動片51が変形し、可動片51の変形に連動してスナップ片52が変形する。スナップ片52の変形量が一定量を超えると、導通片53に対する付勢力が反転し、導通片53が上側Z1に付勢されることとなり、これによって、可動接点63と第一固定接点61との導通状態が解除され、可動接点63と第二固定接点62とが当接し導通する。すなわち、切替手段50によって、接点60の導通先が切り替わる。これによって、マイクロスイッチ1が低圧状態から高圧状態に切り替わったことが検出される。
【0033】
なお、本実施形態では、
図2は、冷媒が低圧状態にある場合のマイクロスイッチ1を示しているものとしたが、これとは逆に、
図2は、冷媒が高圧状態にある場合のマイクロスイッチ1を示していてもよい。すなわち、
図2に示す状態で高圧状態であることが検出されてもよい。そして、この状態から、冷媒の圧力が低下した場合にベローズが変位し、その変位が作動部20に伝達され、マイクロ作動軸30が下側Z2に変位し、スナップ片52の付勢力が反転し、可動接点63と第一固定接点61との導通状態が解除されるとともに可動接点63と第二固定接点62とが導通し、マイクロスイッチ1が高圧状態から低圧状態に切り替わったことが検出されてもよい。
【0034】
なお、本実施形態では、マイクロスイッチ1の動作について、マイクロスイッチ1が冷媒の圧力を検出する圧力スイッチに搭載された場合の説明をしたが、これはあくまでも例示であり、例えば、マイクロスイッチ1が冷媒の温度を検出する温度スイッチに搭載され、冷媒の温度が低い低温状態と、冷媒の温度が低温状態より所定量高い高温状態とで、接点60の導通先を切り替えるものとした場合も同様に成り立つ。この場合、例えば、
図2の状態を、冷媒が低温状態にある状態とする。ここから冷媒の温度が上昇すると、ベローズが膨張するなどして変位し、その変位が不図示の伝達部材を介して作動部20に伝達され、作動部20に対して下側Z2に向かう外力を加える。これにより、圧力スイッチの場合と同様に、シール部材40が変位するとともにマイクロ作動軸30が下側Z2に変位し、当該変位によって生じた荷重が切替手段50に作用し、スナップ片52による付勢力が反転し、可動接点63と第一固定接点61との導通状態が解除され、可動接点63と第二固定接点62とが導通する。これによって、マイクロスイッチ1が低温状態から高温状態に切り替わったことが検出される。
【0035】
以上、上述した実施形態によれば、マイクロ作動軸30が上側Z1(一方側)から下側Z2(他方側)に向かってケース10(筐体)内に変位する際には、まずマイクロ作動軸30に接続されるシール部材40の第二筒部42に対してマイクロ作動軸30の変位方向に荷重が加わり、次いで、その荷重が第二筒部42と第一交差部43a(交差部43)との接続部分である第二角部46に対して伝達される。この荷重の伝達により、第一交差部43aが変形する。ここで、第二筒部42は、第一筒部41よりも小径に構成されていることから、第一交差部43aは、第二角部46よりもマイクロ作動軸30から交差方向に離れた第一角部45を支点として、マイクロ作動軸30の変位方向に傾くように変形する。そしてこの変形に伴い、第一筒部41が、フランジシール部44との境界を支点としてマイクロ作動軸30の径方向外方に傾くように変形する。
【0036】
このように、シール部材40の主な変形は、第三角部47を支点に第二交差部43bが傾き、第一角部45を支点に第一交差部43aが傾き、フランジシール部44との境界を支点として第一筒部41が傾く程度の変形となり、交差方向のうちマイクロ作動軸30から遠ざかる方向を向く第一角部45と、交差方向のうちマイクロ作動軸30に近づく方向を向く第二角部46と、が向く方向は、それぞれ反転することがない。すなわち、上述した従来のマイクロスイッチのドーム形状のゴムキャップにおける変形のように、モードの変更を伴う変形がシール部材40に生じることを抑制することができる。このため、例えば、シール部材40の壁面に沿った曲線に接線を引いた場合、その接線の、マイクロ作動軸30に向かう向きが、上向きから下向きに反転することや、下向きから上向きに反転することを防ぐことができる。これにより、シール部材40の剛性を安定させることができるので、シール部材の所定の力に対する変形量を意図したものとし、マイクロ作動軸30の動作を意図したものとすることができる。したがって、マイクロ作動軸30の動作を安定して維持しつつ異物の侵入を好適に抑制するシール構造を備えたマイクロスイッチ1を提供することができる。
【0037】
また、シール部材40がマイクロ作動軸30の変位に伴って変形する際に、第三角部47を支点として第二交差部43bを傾かせ、第一角部45を支点として第一交差部43aを傾かせることができ、変形箇所を複数個所に分散させることができる。このため、上記モードの変更を伴う変形がシール部材40に生じることを抑制し、シール部材40の所定の力に対する変形量及びマイクロ作動軸30の動作を意図したものとすることができる。
【0038】
また、シール部材40は、複数のマイクロ作動軸30を覆うように形成することもできるので、ケース10内に複数のスイッチを備える、いわゆる、デュアルタイプのマイクロスイッチ1にも本発明のシール部材40の構造を適用することができる。なお、このようにシール部材40は、複数のマイクロ作動軸30をまとめて覆うように形成してもよいし、複数のマイクロ作動軸30のそれぞれを覆う複数のシール部材40を設けてもよい。この際、上述した固定部材70の抜け止め突起76が複数のシール部材40をまとめて押圧するようにし、一つの固定部材70で複数のシール部材40を蓋本体16に密着固定することもできる。この構成によれば、固定部材70の部品点数を削減することができるとともに、固定部材70の小型化に資することができる。
【0039】
また、固定部材70を設けたことで、フランジシール部44を押圧しながら固定部材70によってシール部材40をケース10に確実に密着固定し、シール部材40のシール性能を安定して維持することができる。なお、この固定部材70を省略し、シール部材40の第一筒部41の開口縁部を第一段部16bに圧入等することも考えられる。しかしながら、この場合、シール部材40による収容空間13の密封が不十分になる可能性もあるため、固定部材70を用いることが好ましい。
【0040】
また、上述した実施形態によれば、マイクロ作動軸30の動作を安定して維持しつつ異物の侵入を好適に抑制するシール部材40を備えたマイクロスイッチ1を用いて、圧力スイッチや温度スイッチなどのスイッチ装置を構成することができる。
【0041】
尚、以上に説明した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、これに限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によっても尚本発明のマイクロスイッチ1の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。例えば、本実施形態では、シール部材40の第二筒部42を、第三角部47及び第二交差部43bを介してマイクロ作動軸30に接続したが、これを省略し、第二筒部42を直接マイクロ作動軸30に接続してもよい。すなわち、シール部材40を、第一筒部41、第一交差部43a、第一角部45、第二筒部42及び第二角部46で構成してもよい。また、これとは反対に、交差部43をさらに増やし、新たに角部を増設してもよい。
【符号の説明】
【0042】
Z 軸方向
Z1 上側(一方側)
1 マイクロスイッチ
10 ケース(筐体)
16a 挿通孔
30 マイクロ作動軸(作動軸)
40 シール部材
41 第一筒部
42 第二筒部
43 交差部
43a 第一交差部
45 第一角部
46 第二角部