(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161724
(43)【公開日】2024-11-20
(54)【発明の名称】産業車両
(51)【国際特許分類】
B66F 9/24 20060101AFI20241113BHJP
【FI】
B66F9/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076683
(22)【出願日】2023-05-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(72)【発明者】
【氏名】小川 透
(72)【発明者】
【氏名】早川 誠
【テーマコード(参考)】
3F333
【Fターム(参考)】
3F333AA02
3F333AB13
3F333AE02
3F333FE10
(57)【要約】
【課題】周囲の温度が低温又は高温であってもアタッチメントの位置を正確に検出することができる産業車両の提供にある。
【解決手段】車体と、車体に備えられ、マストおよびマストに対して可動するアタッチメントを有する荷役装置と、アタッチメントに備えられ、アタッチメントの位置を検出するポテンショメータ70と、を備える産業車両において、ポテンショメータ70を収容する筐体79と、筐体79とポテンショメータ70との間に設置された温度調整器と、温度調整器をポテンショメータ70に付勢する付勢部材と、を備えた。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体に備えられ、マストおよび前記マストに対して可動するアタッチメントを有する荷役装置と、
前記アタッチメントに備えられ、前記アタッチメントの位置を検出するポテンショメータと、を備える産業車両において、
前記ポテンショメータを収容する筐体と、
前記筐体と前記ポテンショメータとの間に設置された温度調整器と、
前記温度調整器を前記ポテンショメータに付勢する付勢部材と、を備えることを特徴とする産業車両。
【請求項2】
前記付勢部材は、緩衝機能を有する断熱性材料により形成されていることを特徴とする請求項1記載の産業車両。
【請求項3】
前記温度調整器は、加熱器であることを特徴とする請求項1又は2記載の産業車両。
【請求項4】
前記加熱器は、PTCヒータであることを特徴とする請求項3記載の産業車両。
【請求項5】
前記筐体の内壁に断熱性材料により形成されている断熱部材が設置されていることを特徴とする請求項1又は2記載の産業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、産業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
産業車両に関連する従来技術として、例えば、特許文献1に開示された材料貯蔵装置における材料計測装置が知られている。特許文献1に開示された材料貯蔵装置には、入力出庫装置としての材料搬送装置が設けられている。材料搬送装置には、リフタビームにリフタアームを適宜な案内により水平方向へ移動自在となし、リフタアームの下面にラックを装着し、このラックに螺合するピニオンがリフタビームの下面に回転自在に設けられている。このピニオンを駆動するためリフタアーム駆動用モータがリフタビームの下面に設けられ、このリフタアーム駆動用モータに移動量検出装置であるエンコーダが設けられている。なお、エンコーダに代えてポテンショメータを用いていることも可能である。
【0003】
ところで、産業車両においては、荷役装置を備えるフォークリフトが知られている。フォークリフトの荷役装置は、マストと、マストに対して可動するアタッチメントを備えている。荷を操作するアタッチメントには、アタッチメントの位置を検出するためにポテンショメータを備えることがある。そして、この種のフォークリフトは、冷凍倉庫等の低温環境で荷役作業を行う場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、産業車両が冷凍倉庫等の低温環境で荷役作業を行う場合、ポテンショメータの出力電圧が低温によってばらつきが生じ、アタッチメントの位置を正確に検出できないという問題がある。アタッチメントの位置を正確に検出できないと、アタッチメントにより棚に対して載置された荷の位置が意図する位置と相違してしまう。特に、無人走行する産業車両の場合、棚における荷の位置が意図する位置と相違すると、産業車両と荷との干渉および産業車両による荷の取り出し不能が生じるおそれがある。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、周囲の温度が低温又は高温であってもアタッチメントの位置を正確に検出することができる産業車両の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、車体と、前記車体に備えられ、マストおよび前記マストに対して可動するアタッチメントを有する荷役装置と、前記アタッチメントに備えられ、前記アタッチメントの位置を検出するポテンショメータと、を備える産業車両において、前記ポテンショメータを収容する筐体と、前記筐体と前記ポテンショメータとの間に設置された温度調整器と、前記温度調整器を前記ポテンショメータに付勢する付勢部材と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明では、ポテンショメータが筐体に収容され、筐体とポテンショメータとの間に設置される温度調整器は付勢部材によりポテンショメータに押し付けられるので、ポテンショメータの温度は、温度調整器により調整される。したがって、周囲の温度が低温又は高温であってもポテンショメータの著しい温度変化を抑制できる。その結果、ポテンショメータの出力電圧は安定し、アタッチメントの位置を正確に検出することができる。
【0009】
また、上記の産業車両において、前記付勢部材は、緩衝機能を有する断熱性材料により形成されている構成としてもよい。
この場合、付勢部材が緩衝機能を有する断熱性材料により形成されているので、温度調整器は、付勢部材の緩衝機能によりポテンショメータに押し付けられるとともに、断熱性材料による断熱効果により周囲の温度の影響を受けにくくなる。その結果、ポテンショメータの出力電圧はより安定する。
【0010】
また、上記の産業車両において、前記温度調整器は、加熱器である構成としてもよい。
この場合、冷凍倉庫等の低温環境であっても、加熱器がポテンショメータを加熱することで、ポテンショメータの著しい温度低下を抑制できる。
【0011】
また、上記の産業車両において、前記加熱器は、PTCヒータである構成としてもよい。
この場合、PTCヒータは、低温環境のときにポテンショメータを安定して加熱することができ、一方、常温環境のとき加熱を抑制することができる。PCTヒータが周囲温度に応じて自律的に作動するので温度調整のための制御が不要となり、製作コストを抑制することができる。
【0012】
また、上記の産業車両において、前記筐体の内壁に断熱性材料により形成されている断熱部材が設置されている構成としてもよい。
この場合、筐体の内壁に断熱部材が設置されていることで、断熱部材がポテンショメータに対する周囲の温度の影響をさらに受けにくくすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、周囲の温度が低温又は高温であってもアタッチメントの位置を正確に検出することができる産業車両を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1の実施形態に係るフォークリフトの概要を示す斜視図である。
【
図2】第1の実施形態に係るフォークリフトの側面図である。
【
図3】第1の実施形態に係るフォークリフトの概略構成図である。
【
図4】フォークリフトの荷役装置におけるアタッチメントの側面図である。
【
図5】アタッチメントアームの要部を示す側面図である。
【
図6】(a)はポテンショメータを収容する筐体の縦断面図であり、(b)は筐体をブラケットから外した状態の斜視図であり、(c)は筐体およびPTCを示す斜視図である。
【
図7】第2の実施形態に係るフォークリフトにおけるポテンショメータを収容する筐体の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係る産業車両について図面を参照して説明する。本実施形態の産業車両は、3WAYタイプのフォークリフトである。3WAYタイプのフォークリフトは、車体の向きを変えることなく左右方向および前方向へ荷役が可能である。また、本実施形態のフォークリフトは、冷凍倉庫等の低温環境で稼働可能な冷凍仕様のフォークリフトである。なお、方向を特定する「前後」、「左右」および「上下」については、運転席の運転シートに着座し、フォークリフトの前進側を向いた状態を基準として示す。
【0016】
図1、
図2に示すように、フォークリフト10は、車体11と、車体11の前部に備えられた荷役装置12と、を有している。車体11には、前方へ向けて延在する左右一対のリーチレグ14が備えられている。リーチレグ14の先端部には、遊転可能な前輪13が備えられている。リーチレグ14の先端部は、左右方向に延在する連結部材15により連結されている。車体11の後部には、操舵可能な駆動輪としての後輪16が備えられている。
図3に示すように、後輪16は走行用モータ17の駆動により回転される。また、後輪16は、操舵用モータ18の駆動により操舵される。走行用モータ17および操舵用モータ18は、電動モータであって車体11の内部に収容されている。車体11の底部には、走行時の車体11の安定性を高めるためのキャスタ輪19が備えられている(
図2を参照)。
【0017】
車体11には、立席式の運転席20が備えられている。運転席20の上方にはヘッドガード21が備えられている。ヘッドガード21は、車体11の前部に設けられた前部ピラー22および車体11の後部に設けられた後部ピラー23により支持されている。なお、本実施形態のフォークリフト10は、運転席20を備えているが無人走行および有人走行が可能なフォークリフトである。
【0018】
車体11には、バッテリ24および各部を制御するコントローラ25が収容されている。
図3に示すように、コントローラ25は、演算処理部としてのCPU26と、RAMおよびROM等からなる記憶部27と、を備えている。コントローラ25は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する専用のハードウェア、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)を備えていてもよい。コントローラ25は、コンピュータプログラムにしたがって動作する1つ以上のプロセッサ、ASIC等の1つ以上の専用のハードウェア回路、あるいは、それらの組み合わせを含む回路として構成し得る。コントローラ25は、走行用モータ17および操舵用モータ18を制御する。
【0019】
次に、荷役装置12について説明する。荷役装置12は、マスト30と、マスト30に対して昇降可能(可動な)なアタッチメント31と、を有している。マスト30は、左右一対のリーチレグ14にそれぞれ立設されたアウタマスト32と、アウタマスト32に対して昇降可能な左右一対のインナマスト33とを有している。インナマスト33を昇降するリフトシリンダ28が備えられている。
【0020】
図4に示すように、アタッチメント31は、リフトブラケット34と、リフトブラケット34に対して左右方向に移動可能なアタッチメントアーム35と、アタッチメントアーム35に備えられるフォークユニット36と、有している。リフトブラケット34は、インナマスト33に対して昇降するブラケット本体37を備えている。ブラケット本体37には、上下一対のシフトレール38、39が取り付けられている。上側のシフトレール38の下面には上部ラック(図示せず)が備えられている。下側のシフトレール39の上面には下部ラック(図示せず)が備えられている。上下一対のシフトレール38、39は、左右方向に延在し、断面U字状のレール溝をそれぞれ有している。
【0021】
アタッチメントアーム35は、アーム本体部43を備えている。アーム本体部43の後部には上下一対のガイドローラ44、45が備えられている。上側のガイドローラ44はシフトレール38のレール溝に案内され、下側のガイドローラ45はシフトレール39のレール溝に案内される。ガイドローラ44、45の軸心は上下方向である。アーム本体部43は、上部ラックの上面を転動する転動ローラ46を備えている。このため、アタッチメントアーム35は、リフトブラケット34に対して左右方向へ移動するシフト機能を備える。
【0022】
図5に示すように、アーム本体部43には、収容空間47が形成されている。収容空間47には、シフト用モータ48が収容されている(
図2を参照)。シフト用モータ48は正逆の回転が可能な電動モータである。シフト用モータ48の回転軸(図示せず)にはモータギヤ(図示せず)が備えられている。収容空間47におけるシフト用モータ48の後方には、ピニオンギヤ(図示せず)が収容されている。シフト用モータ48の回転軸の軸心は上下方向である。ピニオンギヤは、回転軸の軸心と平行な軸心を有する軸部(図示せず)と、軸部の上部に備えられ、上部ラックと噛み合う上部ギヤ(図示せず)と、軸部の下部に備えられ、下部ラックおよびモータギヤと噛み合う下部ギヤ(図示せず)と、を有する。したがって、シフト用モータ48の駆動により、シフト用モータ48の回転力は、モータギヤを介してピニオンギヤへ伝達され、アタッチメントアーム35はリフトブラケット34に対して左右方向へ往復移動する。
【0023】
収容空間47におけるシフト用モータ48の前方には、フォークユニット36を旋回するための旋回用モータ55が収容されている(
図2を参照)。旋回用モータ55は正逆の回転が可能な電動モータである。旋回用モータ55の回転軸(図示せず)にはモータギヤ(図示せず)が備えられている。回転軸の軸心は上下方向である。旋回用モータ55の前方には、減速ギヤ(図示せず)が収容されている。減速ギヤは、上部ギヤ部(図示せず)および下部ギヤ部(図示せず)を有している。減速ギヤの前方において旋回軸61がアーム本体部43に軸支されている。旋回軸61はフォークユニット36を支持する。旋回軸61の上端部には、旋回ギヤが備えられている。減速ギヤおよび旋回軸61の軸心は旋回用モータ55の回転軸の軸心と平行である。
【0024】
減速ギヤの上部ギヤ部はモータギヤと噛み合い、下部ギヤ部は旋回ギヤと噛み合う。したがって、旋回用モータ55の駆動により、旋回用モータ55の回転力は、モータギヤを介して減速ギヤ、旋回ギヤへ伝達されて旋回軸61が旋回する。旋回軸61が旋回することで、フォークユニット36はアタッチメントアーム35に対して左右方向へ旋回する。
【0025】
フォークユニット36は、左右一対のフォーク63と、左右一対のフォーク63を支持するフォーク支持板64と、フォーク支持板64に設けられ、旋回軸61との取り付けのための取付基部65と、を有している。
【0026】
ところで、本実施形態のフォークリフト10は、アタッチメントアーム35の左右方向の位置を検知するポテンショメータ70を有している。
図5に示すように、ポテンショメータ70は、アーム本体部43に設けられたブラケット66に固定されている。
図6(a)に示すように、ポテンショメータ70は、ブラケット66に固定される固定部71と、固定部71に対して回転する回転部72と、を備えている。
図6(b)に示すように、固定部71は、外部へ引き出されるハーネス73と接続されている。ポテンショメータ70は、コントローラ25と接続されており、コントローラ25へ出力電圧の信号を伝達する。ポテンショメータ70の出力電圧は、回転部72の固定部71に対する位置に応じて変動する。ポテンショメータ70がブラケット66に固定された状態では、固定部71がブラケット66の下面と当接し、回転部72の一部がブラケット66の上方へ向けて位置する。固定部71の下面は平坦面である。
【0027】
ブラケット66には、第1ギヤ(図示せず)と、第2ギヤ(図示せず)と、が回転可能に支持されている。ポテンショメータ70の回転部72は、円盤状の回転部ギヤ(図示せず)を備える第3ギヤ(図示せず)と同軸状に接続されている。第1ギヤは、下ギヤ部(図示せず)および上ギヤ部(図示せず)を有している。下ギヤ部は上部ギヤ部と噛み合う。第2ギヤは、上ギヤ部と噛み合う上ギヤ部(図示せず)と、回転部ギヤと噛み合う下ギヤ部(図示せず)と、を有している。第1ギヤ、第2ギヤおよび第3ギヤは、減速ギヤとして機能する。したがって、ピニオンギヤの回転力は、第1ギヤ、第2ギヤを介して回転部ギヤに伝達され、第3ギヤが回転する。第3ギヤの回転に伴ってポテンショメータ70の回転部72が回転する。
【0028】
本実施形態では、ポテンショメータ70の出力電圧が温度変化によりばらつかないように、ポテンショメータ70を収容する筐体79と、筐体79とポテンショメータ70との間に設置された温度調整器としてのPTCヒータ80と、を有する。筐体79は、鉄製であり、底板81と、底板81の外周縁から立ち上がる側板82と、側板82に備えられ、ブラケット66との取り付けられる取付座83と、を備えている。側板82の一部は切り欠き84が形成されている。切り欠き84は、ポテンショメータ70のハーネス73等を引き出すためのものである。取付座83には、ボルト86の挿通が可能な通孔85が形成されている。なお、ブラケット66にはボルト86の螺入が可能なねじ孔94が形成されている。
【0029】
図6(c)に示すように、筐体79の内部には、複数の断熱部材87、88、89、90、91が備えられている。断熱部材87~90は、弾性変形可能であって緩衝機能を有する断熱性材料により形成されている。本実施形態では、筐体79における4つの側板82の内壁に断熱部材87、88、89、90が設置されている。また、底板81の内壁に断熱部材91が設置されている。断熱性材料としては、例えば、ゴム系材料であり、ゴム系材料を発泡成形させることで緩衝機能を有する断熱部材が得られる。
【0030】
図6(c)に示すように、底板81に設置されている断熱部材91の上面には、温度調整器としてのPTCヒータ80(Positive Temperature Coefficient)が載置されている。PTCヒータ80は、低温になると電流が流れやすくなることで発熱し、一定以上の温度になると電流が流れにくくなり、温度が安定する。つまり、PTCヒータ80は、周囲の温度に応じて自律的に作動する加熱器である。PTCヒータ80は、平板状のヒータ本体92と引き出し線93とを有する。ヒータ本体92は、ポテンショメータ70の固定部71の下面と当接するように断熱部材91の上面に載置されている。引き出し線93は、切り欠き84から引き出されている。ヒータ本体92の側方は断熱部材87~90に囲繞され、ヒータ本体92の下方は断熱部材91により覆われている。なお、PTCヒータ80は、コントローラ25と接続されているが、単にPTCヒータ80の温度の信号を送信するためである。
【0031】
ところで、断熱部材91は、筐体79がブラケット66に固定された状態では上下方向に圧縮された弾性変形の状態となり、弾性変形による復元力は、ヒータ本体92をポテンショメータ70に押し付ける付勢力となる。つまり、断熱部材91は付勢部材に相当する。断熱部材91の厚さは、十分な付勢力が発生するように、例えば、筐体79の底板81の内壁からポテンショメータ70の固定部71の下面までの距離より大きいことが好ましい。筐体79をボルト86でブラケット66に固定することで、ポテンショメータ70が筐体79に収容されるとともに、ポテンショメータ70に対するPTCヒータ80の水平方向の位置決めとポテンショメータ70への固定が可能となる。筐体79のブラケット66への固定より、ヒータ本体92がポテンショメータ70に押し付けられ、PTCヒータ80のポテンショメータ70に対する固定手段が不要となる。
【0032】
次に、本実施形態のフォークリフト10の作用について説明する。フォークリフト10が、例えば、冷凍倉庫等の低温環境下において稼働される場合、PTCヒータ80が周囲の温度に応じて温度上昇してポテンショメータ70を加熱する。PTCヒータ80の温度が所定温度(例えば、50℃)まで上昇すると、所定温度を維持する。このため、ポテンショメータ70は周囲の低温になることはなく、PTCヒータ80によって所定温度で保温される。したがって、ポテンショメータ70の温度変化は抑制され、ポテンショメータ70の温度変化による出力電圧のばらつきを防止できる。その結果、周囲の温度の影響を受けてアタッチメントアーム35のシフト位置の狂いが生じることはない。
【0033】
フォークリフト10が、例えば、冷凍倉庫から出て屋外といった常温環境下において稼働されても、PTCヒータ80によってポテンショメータ70の温度が著しく変化することはない。フォークリフト10が冷凍倉庫と屋外との間で出入りを繰り返しても、ポテンショメータ70の出力電圧がばらつくことはない。
【0034】
本実施形態に係るフォークリフト10は、以下の効果を奏する。
(1)ポテンショメータ70が筐体79に収容され、筐体79とポテンショメータ70との間に設置される温度調整器としてのPTCヒータ80は、付勢部材としての断熱部材91によりポテンショメータ70に押し付けられる。このため、ポテンショメータ70の温度は、PTCヒータ80により調整される。したがって、周囲の温度が低温又は高温であってもポテンショメータ70の著しい温度変化を抑制できる。その結果、ポテンショメータ70の出力電圧は安定し、アタッチメント31の位置を正確に検出することができる。
【0035】
(2)付勢部材としての断熱部材91は、緩衝機能を有する断熱性材料により形成されている。このため、PTCヒータ80は、断熱部材91の緩衝機能によりポテンショメータ70に押し付けられるとともに、断熱性材料による断熱効果により周囲の温度の影響を受けにくくなる。その結果、ポテンショメータ70の出力電圧はより安定する。
【0036】
(3)温度調整器としてのPTCヒータ80は加熱器であるので、冷凍倉庫等の低温環境であっても、PTCヒータ80がポテンショメータ70を加熱することで、ポテンショメータ70の著しい温度低下を抑制できる。
【0037】
(4)加熱器がPTCヒータ80であることで、PTCヒータ80は、低温環境のときにポテンショメータ70を安定して加熱することができ、一方、常温環境のとき加熱を抑制することができる。PTCヒータ80が周囲温度に応じて自律的に作動するので温度調整のための制御が不要となり、製作コストを抑制することができる。
【0038】
(5)筐体79の内壁に断熱性材料により形成されている断熱部材87~91が設置されているので、断熱部材87~91がポテンショメータ70に対する周囲の温度の影響をさらに受け難くすることができる。また、断熱部材87~91が設置されることで、PTCヒータ80の電力消費を抑制することができる。
【0039】
(6)筐体79をボルト86でブラケット66に固定することで、ポテンショメータ70が筐体79に収容されるとともに、ポテンショメータ70に対するPTCヒータ80の水平方向の位置決めとポテンショメータ70への固定が同時に可能となる。その結果、PTCヒータ80のポテンショメータ70に対する固定手段が不要となる。また、筐体79およびPTCヒータ80の取付作業が比較的容易となる。
【0040】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係るフォークリフトについて説明する。本実施形態では、筐体が断熱部材の機能を果たすほか、付勢部材の構成が第1の実施形態と相違する。本実施形態では、第1の実施形態と同じ構成については、第1の実施形態の説明を援用し、共通の符号を用いる。
【0041】
図7に示すように、本実施形態のフォークリフト100における筐体101は、筐体101を形成する材料が断熱性に優れた樹脂である。筐体101の内部には、ポテンショメータ70およびPTCヒータ80が収容される僅かな空間102が形成されている。空間102において付勢部材としての弾性体103がPTCヒータ80と筐体101の間に介在される。弾性体103は、例えば、ゴムシートであるが、非断熱性材料であってもよい。
【0042】
本実施形態によれば、筐体101をボルト86でブラケット66に固定することで、ポテンショメータ70が筐体101に収容されるとともに、ポテンショメータ70に対するPTCヒータ80の水平方向の位置決めとポテンショメータ70への固定が可能となる。また、筐体101が断熱性に優れた樹脂により形成されているので、周囲の温度が低温又は高温であってもポテンショメータ70の著しい温度変化を抑制できる。また、第1の実施形態と比較して部品点数を抑制でき、製作コストを低減することができる。
【0043】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
【0044】
○ 上記の実施形態では、温度調整器として加熱器を用いたが、これに制限されない。温度調整器は、例えば、冷却器であってもよい。この場合、フォークリフトが高温の環境下にて稼働されるとき、冷却器によりポテンショメータを冷却し、出力電圧のばらつきを抑制することができる。
○ 上記の実施形態では、加熱器としてPTCヒータを用いたが、これに限らない。加熱器は、温度を検知して温度に応じて制御される加熱器であってもよい。例えば、一定の温度以下のときに、コントローラの制御を受けて加熱器を作動させてもよい。温度に応じて加熱制御されることで、PTCヒータよりも電力消費を抑制することができる。
○ 上記の実施形態では、付勢部材としての断熱部材を含む複数の断熱部材を用いたが、これに限らない。例えば、周囲の温度が冷蔵程度の温度であれば、断熱機能を備えない付勢部材を用い、筐体の内部に断熱部材が備えられない構成としてもよい。
○ 上記の実施形態では、付勢部材は緩衝機能を有する断熱部材としたが、これに限らない。付勢部材は温度調整器のポテンショメータへの押し付けが可能であればよく、例えば、金属ばねを用いてもよい。
【符号の説明】
【0045】
10、100 フォークリフト
11 車体
12 荷役装置
17 走行用モータ
18 操舵用モータ
25 コントローラ
30 マスト
31 アタッチメント
34 リフトブラケット
35 アタッチメントアーム
36 フォークユニット
43 アーム本体部
47 収容空間
61 旋回軸
63 フォーク
64 フォーク支持板
65 取付基部
66 ブラケット
70 ポテンショメータ
79、101 筐体
80 PTCヒータ
87、88、89、90 断熱部材
91 断熱部材(付勢部材)
103 弾性部材(付勢部材)