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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161732
(43)【公開日】2024-11-20
(54)【発明の名称】ロボットハンド
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/08 20060101AFI20241113BHJP
【FI】
B25J15/08 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076710
(22)【出願日】2023-05-08
(71)【出願人】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】100154014
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100154520
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 祐子
(72)【発明者】
【氏名】平井 慎一
(72)【発明者】
【氏名】松野 孝博
(72)【発明者】
【氏名】花村 健太
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707DS01
3C707ES10
3C707EU04
3C707EV11
3C707EV16
3C707HS14
3C707NS10
(57)【要約】
【課題】厚みが薄い形状をした布などの様々なワークを正確に把持することができるロボットハンドを提供する。
【解決手段】エアシリンダ15のピストンロッド15bが鉛直上方向に移動すると、右側第1ラックレール13D1,左側第1ラックレール14D1も鉛直上方向に移動する。このため、前部右側歯車13C1,後部左側歯車14D2が回転する。これによって、後部右側歯車13C2,前部左側歯車14C1が回転することとなり、これに伴って、右側第2ラックレール14D1,左側第2ラックレール14D2が鉛直下方向に移動する。これにより、下部固定台16が鉛直下方向に移動することとなるから、下部固定台16によって、グリッパが鉛直下方向に押圧される。そのため、ワークに対して該グリッパの接触を維持させながら、該グリッパを閉じることによりワークを把持することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のワークを把持することができるグリッパと、
前記グリッパにて前記所定のワークを把持する際、該所定のワークに対して該グリッパの接触を維持させながら、該グリッパを閉じることにより該所定のワークを把持する把持機構と、を有してなるロボットハンド。
【請求項2】
前記把持機構は、
前記グリッパを開閉する開閉部材と、
前記グリッパの基端面側に位置する固定部と、
前記開閉部材に取り付けられている第1ラックレールと、
前記固定部に取り付けられている第2ラックレールと、
前記第1ラックレールが噛み合っている第1歯車と、
前記第2ラックレールが噛み合っている第2歯車と、を有し、
前記開閉部材が鉛直上方向に移動すると、前記グリッパが閉じるが、この際、前記第1ラックレールも鉛直上方向に移動するため、前記第1歯車が回転し、これによって、前記第2歯車が回転することとなり、これに伴って、前記第2ラックレールが鉛直下方向に移動し、これにより、前記固定部が鉛直下方向に移動することとなるから、該固定部によって、前記グリッパが鉛直下方向に押圧されるため、前記所定のワークに対して該グリッパの接触を維持させながら、該グリッパを閉じることにより該所定のワークを把持することができる請求項1に記載のロボットハンド。
【請求項3】
前記グリッパは、
基端面及び先端面が開放され、内部が中空に形成されると共に、該先端面が凹凸状に形成され、
前記先端面の凹部分には、前記開閉部材の先端部に取り付けられる取付片が一体的に設けられてなる請求項1又は2に記載のロボットハンド。
【請求項4】
前記グリッパの外周面が凹凸状に形成されていることにより、前記先端面が凹凸状に形成されてなる請求項3に記載のロボットハンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のロボットハンドとして、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。この特許文献1に記載のロボットハンドは、ワークセット位置とワーク補正位置との間を昇降駆動されるワーク保持部を備え、該ワーク保持部において、ワークを吸着して保持するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06-182689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようなロボットハンドでは、ワークを吸着、特に、厚みが薄い形状をした布を吸着しようとすると、布の素材の違いによって、吸着の強さを調節しなければならず、その調節が非常に難しいという問題があった。そのため、様々な種類の布を正確に把持(吸着含む)することは難しいという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、厚みが薄い形状をした布などの様々なワークを正確に把持することができるロボットハンドを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の目的は、以下の手段によって達成される。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0007】
請求項1に係るロボットハンドは、所定のワーク(W)を把持することができるグリッパ(2)と、
前記グリッパ(2)にて前記所定のワーク(W)を把持する際、該所定のワーク(W)に対して該グリッパ(2)の接触を維持させながら、該グリッパ(2)を閉じることにより該所定のワーク(W)を把持する把持機構(1)と、を有してなることを特徴としている。
【0008】
請求項2に係るロボットハンドは、上記請求項1に記載のロボットハンドにおいて、
前記把持機構(1)は、
前記グリッパ(2)を開閉する開閉部材(エアシリンダ15)と、
前記グリッパ(2)の基端面(20a)側に位置する固定部(下部固定台16)と、
前記開閉部材(エアシリンダ15の可動台15c)に取り付けられている第1ラックレール(右側第1ラックレール13D1,左側第1ラックレール14D1)と、
前記固定部(下部固定台16)に取り付けられている第2ラックレール(右側第2ラックレール13D2,左側第2ラックレール14D2)と、
前記第1ラックレール(右側第1ラックレール13D1,左側第1ラックレール14D1)が噛み合っている第1歯車(前部右側歯車13C1,後部左側歯車14C2)と、
前記第2ラックレール(右側第2ラックレール13D2,左側第2ラックレール14D2)が噛み合っている第2歯車(後部右側歯車13C2,前部左側歯車14C1)と、を有し、
前記開閉部材(エアシリンダ15のピストンロッド15b)が鉛直上方向に移動すると、前記グリッパ(2)が閉じるが、この際、前記第1ラックレール(右側第1ラックレール13D1,左側第1ラックレール14D1)も鉛直上方向に移動するため、前記第1歯車(前部右側歯車13C1,後部左側歯車14C2)が回転し、これによって、前記第2歯車(後部右側歯車13C2,前部左側歯車14C1)が回転することとなり、これに伴って、前記第2ラックレール(右側第2ラックレール13D2,左側第2ラックレール14D2)が鉛直下方向に移動し、これにより、前記固定部(下部固定台16)が鉛直下方向に移動することとなるから、該固定部(下部固定台16)によって、前記グリッパ(2)が鉛直下方向に押圧されるため、前記所定のワーク(W)に対して該グリッパ(2)の接触を維持させながら、該グリッパ(2)を閉じることにより該所定のワーク(W)を把持することができることを特徴としている。
【0009】
請求項3に係るロボットハンドは、上記請求項1又は2に記載のロボットハンドにおいて、
前記グリッパ(2)は、
基端面(20a)及び先端面(20b)が開放され、内部が中空(S)に形成されると共に、該先端面(20b)が凹凸状に形成され、
前記先端面(20b)の凹部分(凹部20dの先端面20d1)には、前記開閉部材(エアシリンダ15のピストンロッド15b)の先端部(15b1)に取り付けられる取付片(20e)が一体的に設けられてなることを特徴としている。
【0010】
請求項4に係るロボットハンドは、上記請求項3に記載のロボットハンドにおいて、
前記グリッパ(2)の外周面が凹凸状(凸部20c,凹部20d)に形成されていることにより、前記先端面(20b)が凹凸状(凸部20cの先端面20c1,凹部20dの先端面20d1)に形成されてなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
次に、本発明の効果について、図面の参照符号を付して説明する。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0012】
請求項1に係る発明によれば、所定のワーク(W)に対してグリッパ(2)の接触を維持させながら、グリッパ(2)を閉じることにより、ワーク(W)とグリッパ(2)との間に発生する摩擦を利用して、所定のワーク(W)を把持するようにしている。
【0013】
したがって、本発明によれば、厚みが薄い形状をした布などの様々なワーク(W)を正確に把持することができる。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、開閉部材(エアシリンダ15のピストンロッド15b)が鉛直上方向に移動させるだけで、グリッパ(2)を閉じることができると共に、所定のワーク(W)に対するグリッパ(2)の接触も維持することができるという、プログラムで同期を取ることが困難な2つの動作を同時に実現することができる。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、グリッパ(2)を閉じることによってワーク(W)を把持する際、グリッパ(2)とワーク(W)との接触状態を簡単容易に維持することができる。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、グリッパ(2)にてワーク(W)を把持できない可能性を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るロボットハンドが備える把持機構の斜視図である。
図2】同実施形態に係る把持機構の一部を示す正面図である。
図3】同実施形態に係るロボットハンドが備えるグリッパを示し、(a)は正面図、(b)は底面図である。
図4】(a)は、同実施形態に係るグリッパが閉じられる状態を説明する縦断面説明図、(b)は、同実施形態に係るグリッパが閉じられる状態を説明する底面側斜視図である。
図5】(a)~(c)は、同実施形態に係るピストンロッドが鉛直上方向に移動した際の動きを説明するロボットハンドの一部を示す正面側斜視図である。
図6】(a)~(c)は、同実施形態に係るグリッパを閉じていく状態を説明するロボットハンドのグリッパ側を示す正面側斜視図である。
図7】(a)~(c)は、同実施形態に係るグリッパにてワークを把持する状態を説明するロボットハンドのグリッパ側を示す正面側斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係るロボットハンドを、図面を参照して具体的に説明する。なお、以下の説明において、上下左右の方向を示す場合は、図示正面から見た場合の上下左右をいうものとする。
【0019】
<ロボットハンドの概略説明>
本実施形態に係るロボットハンドは、厚みが薄い形状をした布などの様々なワークを正確に把持することができるものである。具体的には、ロボットハンドは、図1に示す把持機構1と、図3に示すグリッパ2と、で主に構成されている。以下、各構成について詳しく説明する。
【0020】
<把持機構の説明>
把持機構1は、図1に示すように、円形状で厚みのある上部固定台10を備えている。そして、図1に示すように、この上部固定台10の下面10aには左右側面に一対の脚部11が取り付け固定されている。この一対の脚部11は、図1に示すように、縦長矩形状に形成されており、この一対の脚部11の下面11aは、取付台12に取り付け固定されている。
【0021】
ところで、この取付台12は、図1に示すように、上部固定台10と対向する位置に配置されている厚みのある円形状の第1取付台12aと、第1取付台12aよりも厚みのある円形状で、図示しないロボットアームが取り付けられる第2取付台12bと、第1取付台12aと第2取付台12bとを繋ぐ厚みのある矩形状の連結台12cと、で構成されている。かくして、図1に示すように、このような取付台12の第1取付台12aの左側面側の上面12a1には、一対の脚部11のうち図示左側に位置する脚部11が取り付け固定されている。そして、図1に示すように、一対の脚部11のうち図示右側に位置する脚部11は、連結台12cの左側面側の上面12c1に取り付け固定されている。
【0022】
一方、図1に示すように、第1取付台12aの右側面側の上面12a1には、前後方向に離間して、矩形状で一対の右側支持板13Aが起立状に取り付け固定されている。そして、図1に示すように、この一対の右側支持板13A間を掛け渡すように、右側回転軸13Bが一対の右側支持板13A間に回転可能なように取り付けられている。さらに、図1に示すように、右側回転軸13Bの前部側には、前部右側歯車13C1が回転可能に取り付けられており、右側回転軸13Bの後部側には、後部右側歯車13C2が回転可能に取り付けられている。そしてさらに、図1に示すように、前部右側歯車13C1には、右側第1ラックレール13D1が噛み合っており、図2に示すように、後部右側歯車13C2には、右側第2ラックレール13D2が噛み合っている。
【0023】
一方、図1に示すように、第1取付台12aの左側面側の上面12a1には、中間位置から前後方向に離間して、矩形状で一対の左側支持板14Aが起立状に取り付け固定されている。そして、図1に示すように、この一対の左側支持板14A間を掛け渡すように、左側回転軸14Bが一対の左側支持板14A間に回転可能なように取り付けられている。さらに、図1に示すように、左側回転軸14Bの前部側には、前部左側歯車14C1が回転可能に取り付けられており、左側回転軸14Bの後部側には、後部左側歯車14C2が回転可能に取り付けられている。そしてさらに、図2に示すように、後部左側歯車14C2には、左側第1ラックレール14D1が噛み合っており、図1に示すように、前部左側歯車14C1には、左側第2ラックレール14D2が噛み合っている。
【0024】
一方、図1に示すように、第1取付台12aの中央部分には、上下方向に貫通して設けられている矩形状の貫通孔12a2が設けられている。そして、この貫通孔12a2内には、エアシリンダ15が挿入されている。この点、より詳しく説明すると、エアシリンダ15は、図1に示すように、ロッドカバー部15aが、上部固定台10の上面10b中央部に起立状に固定されている。そして、このロッドカバー部15aには、図1に示すピストンロッド15bが設けられており、このピストンロッド15bの先端部側(図示下側)には、縦長略矩形状の可動台15cが取り付け固定されている。すなわち、この可動台15cが、図1に示すように、鉛直上下方向に移動可能なように貫通孔12a2内に挿入されており、この可動台15c内に、ピストンロッド15bが可動台15cと一体となるように挿入されている。これにより、空気圧によって、ピストンロッド15bが、鉛直上方向(図1に示す上方向)に移動すると、それに合わせて、可動台15cも、鉛直上方向(図1に示す上方向)に移動することとなる。そして、空気圧によって、ピストンロッド15bが、鉛直下方向(図1に示す下方向)に移動すると、それに合わせて、可動台15cも、鉛直下方向(図1に示す下方向)に移動することとなる。なお、図5に示すように、ピストンロッド15bの先端部15b1には、グリッパ2が取り付けられている。この点の詳細は、後述することとする。
【0025】
ところで、図1に示すように、可動台15cの前部側の右側面15c1には、右側第1ラックレール13D1が取り付け固定されており、図2に示すように、可動台15cの後部側の左側面15c2には、左側第1ラックレール14D1が取り付け固定されている。これにより、可動台15cが鉛直上下方向(図1に示す上下方向)に移動すると、それに合わせて、右側第1ラックレール13D1及び左側第1ラックレール14D1も、鉛直上下方向(図1に示す上下方向)に移動することとなる。
【0026】
一方、図2に示すように、一対の脚部11の内周面には、上下方向に亘って凹状の溝部11bが設けられており、この溝部11b内に、右側第2ラックレール13D2及び左側第2ラックレール14D2が図1に示す上下方向に移動可能なように挿入されている。すなわち、一対の脚部11のうち、図2に示す右側に位置する脚部11の溝部11b内に図2に示す上下方向に移動可能なように右側第2ラックレール13D2が挿入され、一対の脚部11のうち、図1に示す左側に位置する脚部11の溝部11b内に図2に示す上下方向に移動可能なように左側第2ラックレール14D2が挿入されている。
【0027】
ところで、右側第2ラックレール13D2は、図1及び図2に示すように、右側第2ラックレール13D2の先端部13D2aが、第1取付台12aを貫通して図示下方向まで延びており、さらに、左側第2ラックレール14D2も、図1及び図2に示すように、左側第2ラックレール14D2の先端部14D2aが、第1取付台12aを貫通して図示下方向まで延びている。そして、この右側第2ラックレール13D2の先端部13D2a及び左側第2ラックレール14D2の先端部14D2aは、図1及び図2に示すように、リング状の下部固定台16の上面16aに取り付け固定されている。なお、図6(a)に示すように、下部固定台16の下面16b(図1も参照)には、グリッパ2が配置されている。
【0028】
<把持機構の動作説明>
かくして、上記のように構成される把持機構1は、次のように動作することとなる。
【0029】
すなわち、図5(a)に示す状態から、空気圧によって、ピストンロッド15bが、鉛直上方向(図5に示す上方向)に移動すると、それに合わせて、可動台15cも、図5(b),(c)に示すように、鉛直上方向(図5に示す上方向)に移動する。この際、図1図2図5(a)に示すように、可動台15cに取り付け固定されている右側第1ラックレール13D1及び左側第1ラックレール14D1も、鉛直上方向(図5に示す上方向)に移動する。これにより、図1に示すように、右側第1ラックレール13D1に噛み合っている前部右側歯車13C1が回転する。これに伴って、図1に示す右側回転軸13Bが回転するから、この右側回転軸13Bの回転によって、後部右側歯車13C2が回転する。そして、後部右側歯車13C2には、図2に示すように、右側第2ラックレール13D2が噛み合っているから、この後部右側歯車13C2の回転に伴って、脚部11の溝部11b内に沿って、図5(b),(c)に示すように、右側第2ラックレール13D2が鉛直下方向(図5に示す下方向)に移動する。
【0030】
さらに、左側第1ラックレール14D1が、鉛直上方向(図5に示す上方向)に移動すると、図2に示すように、左側第1ラックレール14D1に噛み合っている後部左側歯車14C2も回転する。これに伴って、図1に示す左側回転軸14Bが回転するから、この左側回転軸14Bの回転によって、前部左側歯車14C1が回転する。そして、前部左側歯車14C1には、図1に示すように、左側第2ラックレール14D2が噛み合っているから、この前部左側歯車14C1の回転に伴って、脚部11の溝部11b内に沿って、図5(b),(c)に示すように、左側第2ラックレール14D2が鉛直下方向(図5に示す下方向)に移動する。かくして、右側第2ラックレール13D2及び左側第2ラックレール14D2が、鉛直下方向(図5に示す下方向)に移動すれば、図5(b),(c)に示すように、下部固定台16も鉛直下方向(図5に示す下方向)に移動することとなる。
【0031】
一方、図5(c)に示す状態から、空気圧によって、ピストンロッド15bが、鉛直下方向(図5に示す下方向)に移動すると、それに合わせて、可動台15cも、図5(b),(a)に示すように、鉛直下方向(図5に示す下方向)に移動する。この際、図1図2図5(c)に示すように、可動台15cに取り付け固定されている右側第1ラックレール13D1及び左側第1ラックレール14D1も、鉛直下方向(図5に示す下方向)に移動する。これにより、図1に示すように、右側第1ラックレール13D1に噛み合っている前部右側歯車13C1が回転する。これに伴って、図1に示す右側回転軸13Bが回転するから、この右側回転軸13Bの回転によって、後部右側歯車13C2が回転する。そして、後部右側歯車13C2には、図2に示すように、右側第2ラックレール13D2が噛み合っているから、この後部右側歯車13C2の回転に伴って、脚部11の溝部11b内に沿って、図5(b),(a)に示すように、右側第2ラックレール13D2が鉛直上方向(図5に示す上方向)に移動する。
【0032】
さらに、左側第1ラックレール14D1が、鉛直下方向(図5に示す下方向)に移動すると、図2に示すように、左側第1ラックレール14D1に噛み合っている後部左側歯車14C2も回転する。これに伴って、図1に示す左側回転軸14Bが回転するから、この左側回転軸14Bの回転によって、前部左側歯車14C1が回転する。そして、前部左側歯車14C1には、図1に示すように、左側第2ラックレール14D2が噛み合っているから、この前部左側歯車14C1の回転に伴って、脚部11の溝部11b内に沿って、図5(b),(a)に示すように、左側第2ラックレール14D2が鉛直上方向(図5に示す上方向)に移動する。かくして、右側第2ラックレール13D2及び左側第2ラックレール14D2が、鉛直上方向(図5に示す上方向)に移動すれば、図5(b),(a)に示すように、下部固定台16も鉛直上方向(図5に示す上方向)に移動することとなる。
【0033】
したがって、上記のようにして、把持機構1は、動作することとなる。
【0034】
<グリッパの説明>
次に、グリッパ2について説明する。
【0035】
グリッパ2は、熱硬化性エラストマ、熱可塑性エラストマ等弾性を有する柔軟材料にて形成されてなるもので、図3(a)に示すように、正面視略台形状のグリッパ本体20を備えている。グリッパ本体20は、図3(b),図4(a)に示すように、内部が中空Sに形成されている。そして、図3(a)に示すこのグリッパ本体20の基端面20a(図3に示す上方向)は、図4(a)に示すように、内部にピストンロッド15bが挿入可能なように開放されている。そしてさらに、図3(b)に示すこのグリッパ本体20の先端面20b(図3に示す上方向)も、図3(b),図4(b)に示すように開放されている。
【0036】
一方、図3(a)に示すように、グリッパ本体20の外周面には、一定間隔を空けて、上下方向に亘って延びて設けられている凸部20cが一体的に形成されている。これにより、グリッパ本体20の外周面には、図3に示すように、隣り合う凸部20cの間に凹部20dが形成されることとなる。
【0037】
ところで、上記説明した凸部20cは、図3(b)に示すグリッパ本体20の先端面20bが凹凸状に形成されるように、図3(a)に示すように、凹部20dの先端面20d1(図示下面)よりも、凸部20cの先端面20c1(図示下面)が鉛直下方向(図示下方向)に飛び出るように形成されている。なお、この理由は、後述する。
【0038】
一方、図3(b)に示すように、凹部20dの先端面20d1には、底面視扇形状の取付片20eが、グリッパ本体20の先端面20bの中心点Oに向かって、それぞれ一体的に取り付け固定されている。また、図3(b),図4に示すように、この取付片20eの先端部20e1は、ピストンロッド15bの先端部15b1に取り付け固定されている。これにより、図4(a)に示すように、ピストンロッド15bが矢印Y1方向(図示上方向)に移動すると、取付片20eが矢印Y1方向(図示上方向)に引っ張られることとなるから、図4(a),(b)に示すように、凹部20dの先端面20d1が矢印Y2方向(グリッパ本体20の内方向)に引っ張られることとなる。
【0039】
一方、図4(a)に示すように、矢印Y1方向とは逆方向(図示下方向)にピストンロッド15bが移動すると、取付片20eが矢印Y1方向と逆方向(図示下方向)に押し戻されることとなるから、図4(a),(b)に示すように、凹部20dの先端面20d1が矢印Y2方向とは逆方向(グリッパ本体20の外方向)に押し戻されることとなる。
【0040】
かくして、このようして、グリッパ2は構成されることとなるが、さらに詳しく、図6も参照して、グリッパ2の動作を説明することとする。
【0041】
<グリッパの動作説明>
図6(a)に示すように、グリッパ2は、グリッパ本体20の基端面20aが、下部固定台16の下面16bに位置するように配置されている。そして、図5(a)に示すように、ピストンロッド15bの先端部15b1は、リング状の下部固定台16内に挿入されており、上記説明したように、図3(b),図4に示すように、ピストンロッド15bの先端部15b1には、取付片20eの先端部20e1が取り付け固定されている。なお、図6(a)に示すように、凸部20cの先端面20c1は、作業面Gに接触している。
【0042】
かくして、この状態で、空気圧によって、ピストンロッド15bが、鉛直上方向(図6に示す上方向)に移動すると、図4(a)に示すように、取付片20eが矢印Y1方向(図示上方向)に引っ張られることとなるから、図4(a),(b)に示すように、凹部20dの先端面20d1が矢印Y2方向(グリッパ本体20の内方向)に引っ張られることとなる。この際、図6(b)に示すように、その引っ張られた部分が、リング状の下部固定台16内から引っ張り出されることとなる(図5(b),(c)も参照)。そのため、この引っ張り力によって、図6(a)に示す凸部20cも、グリッパ本体20の内方向(図4(a),(b)に示す矢印Y2方向)に引っ張られようとする。しかしながら、図3(a)に示すように、凹部20dの先端面20d1(図示下面)よりも、凸部20cの先端面20c1(図示下面)が鉛直下方向(図示下方向)に飛び出るように形成されているから、図6(b)に示すように、凹部20dの先端面20d1(図示下面)が、グリッパ本体20の内方向(図4(a),(b)に示す矢印Y2方向)に引っ張られたとしても、図6(b)に示すように、凸部20cの先端面20c1は、作業面Gとの接触を維持したままとなる。また、上記説明したように、ピストンロッド15bが、鉛直上方向(図6に示す上方向)に移動すると、下部固定台16が鉛直下方向(図6に示す下方向)に移動するから、この下部固定台16によってグリッパ本体20が下方向に押圧されるため、この押圧力も相伴って、凸部20cの先端面20c1は、確実に、作業面Gとの接触を維持できることとなる。
【0043】
続いて、図6(c)に示すように、ピストンロッド15bが、さらに、鉛直上方向(図6に示す上方向)に移動すると、図6(b)に示す凸部20cの先端面20c1(図示下面)も、最終的に、グリッパ本体20の内方向(図4(a),(b)に示す矢印Y2方向)に引っ張れることとなる。しかしながら、ピストンロッド15bが、さらに、鉛直上方向(図6に示す上方向)に移動すると、図6(c)に示すように、下部固定台16が、さらに、鉛直下方向(図6に示す下方向)に移動することとなるから、この下部固定台16によって、グリッパ本体20が下方向に、さらに押圧されるため、グリッパ本体20と、作業面Gとの接触は維持されたままとなる。
【0044】
したがって、空気圧によって、ピストンロッド15bが、鉛直上方向(図6に示す上方向)に移動すると、グリッパ本体20の先端面20bが閉じられることとなるが、グリッパ2は、作業面Gとの接触を維持したままとなる。
【0045】
一方、元に戻すには、空気圧によって、ピストンロッド15bを、鉛直下方向(図6に示す下方向)に移動させれば良い。これにより、上記説明した手順と逆の動作を行うこととなり、これによって、図6(c)⇒図6(b)⇒図6(a)に示す状態を変遷し、元に戻ることとなる。
【0046】
したがって、空気圧によって、ピストンロッド15bが、鉛直下方向(図6に示す下方向)に移動するだけで、グリッパ本体20の先端面20bは開放されることとなる。
【0047】
<ロボットハンドの一使用例の説明>
次に、上記のように構成されるロボットハンドの一使用例を図7を参照して具体的に説明する。
【0048】
図7に示すような、厚みが薄い形状をした布であるワークWを把持するにあたって、まず、図7(a)に示すように、ワークWの上面Waに、凸部20cの先端面20c1を接触させる。続いて、空気圧によって、ピストンロッド15bを、鉛直上方向(図6に示す上方向)に移動させると、図6を参照して説明したように、図7(b)に示すように、凸部20cの先端面20c1は、ワークWの上面Waとの接触を維持したままとなる。これにより、凸部20cの先端面20c1とワークWの上面Waとの間に摩擦が発生することとなる。そのため、さらに続けて、ピストンロッド15bを、鉛直上方向(図6に示す上方向)に移動させると、図6を参照して説明したように、凸部20cの先端面20c1が、グリッパ本体20の内方向(図4(a),(b)に示す矢印Y2方向)に引っ張れることとなるから、凸部20cの先端面20c1とワークWの上面Waとの間の摩擦によって、図7(c)に示すように、ワークWが、グリッパ本体20の内部に引きずり込まれることとなる。
【0049】
かくして、このようにすれば、ワークWをグリッパ本体20の内部に引きずり込んだ状態で、グリッパ本体20の先端面20bが閉じられることとなるから、厚みが薄い形状をした布であるワークWであっても把持することが可能となる。
【0050】
したがって、以上説明してきた本実施形態は、ワークWに対してグリッパ2の接触を維持しながらグリッパ2を閉じることにより、ワークWとグリッパ2との間に発生する摩擦を利用して、ワークWをグリッパ2にて把持するようにしている。それゆえ、本実施形態によれば、厚みが薄い形状をした布などの様々なワークWを正確に把持することができる。
【0051】
<変形例の説明>
なお、本実施形態において示した形状等はあくまで一例であり、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば、本実施形態において示した把持機構1、グリッパ2の形状はあくまで一例であり、どのような形状でも良い。例えば、把持機構1としては、空気圧に限らず、電磁モータや紐などの索体等でピストンロッド15bを上下動させるようにしても良く、さらには、リンク機構でも良い。すなわち、ワークWに対してグリッパ2の接触を維持しながらグリッパ2を閉じることができれば、どのような構成でも良い。しかしながら、把持機構1としては、上記説明した構成が好ましい。ピストンロッド15bを鉛直上方向に移動させるだけで、グリッパ2を閉じることができると共に、ワークWに対するグリッパ2の接触も維持することができるという、プログラムでは同期を取ることが困難な2つの動作を同時に実現することができるためである。
【0052】
また、グリッパ2としては、本実施形態において説明した形状に限らず、どのような形状でも良い。しかしながら、グリッパ2としては、上記説明した構成が好ましい。グリッパ2を閉じることによってワークWを把持する際、グリッパ2とワークWとの接触状態を簡単容易に維持することができるためである。
【0053】
また、本実施形態においては、グリッパ本体20の外周面に凸部20cと凹部20dを形成することにより、グリッパ本体20の先端面20bが凹凸状に形成されるようにしたが、グリッパ本体20の先端面20bだけを凹凸状に形成しても良い。しかしながら、グリッパ本体20の外周面に凸部20cと凹部20dを形成することにより、グリッパ本体20の先端面20bが凹凸状に形成されるようにした方が好ましい。グリッパ本体20の先端面20bだけを凹凸状に形成すると、凹部20dの先端面20d1がグリッパ本体20の内方向に引っ張られる際、それと同時に、凸部20cの先端面20c1がグリッパ本体20の内方向に引っ張られてしまう可能性があり、これによって、グリッパ2とワークWとの接触状態を維持できず、グリッパ2にてワークWを把持できない可能性があるためである。そのため、グリッパ本体20の外周面に凸部20cと凹部20dを形成することにより、グリッパ本体20の先端面20bが凹凸状に形成されるようにした方が好ましい。
【0054】
また、本実施形態においては、ワークWとして、厚みが薄い形状をした布を例示したが、それに限らず、厚みが薄い形状をした物体であれば、どのようなものにも適用可能である。なお、本実施形態においては、特に、厚みが薄い形状をした物体に対して適用するのが好適であるものの、どのようなワークにも適用可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 把持機構
2 グリッパ
13C1 前部右側歯車(第1歯車)
13C2 後部右側歯車(第2歯車)
13D1 右側第1ラックレール(第1ラックレール)
13D2 左側第1ラックレール(第1ラックレール)
14C1 前部左側歯車(第2歯車)
14C2 後部左側歯車(第1歯車)
14D1 右側第2ラックレール(第2ラックレール)
14D2 左側第2ラックレール(第2ラックレール)
15 エアシリンダ(開閉部材)
15b ピストンロッド
15b1 (ピストンロッドの)先端部
15c 可動台
16 下部固定台(固定部)
20 グリッパ本体
20a 基端面
20b 先端面
20c 凸部
20c1 (凸部の)先端面
20d 凹部
20d1 (凹部の)先端面
S 中空
W ワーク(所定のワーク)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7