(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161745
(43)【公開日】2024-11-20
(54)【発明の名称】積層計画情報生成装置及び積層計画情報生成方法、並びにプログラム
(51)【国際特許分類】
B23K 9/04 20060101AFI20241113BHJP
B23K 9/095 20060101ALI20241113BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20241113BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20241113BHJP
【FI】
B23K9/04 G
B23K9/04 Z
B23K9/095 505B
B33Y10/00
B33Y30/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076730
(22)【出願日】2023-05-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】近口 諭史
(72)【発明者】
【氏名】山田 岳史
(72)【発明者】
【氏名】椋田 雄
(57)【要約】
【課題】造形物の外表面の造形精度を維持しつつ、外表面近傍に狭隘部を発生させないようにする、積層計画情報生成装置及び積層計画情報生成方法、並びにプログラムを提供する。
【解決手段】積層計画情報生成装置200は、造形物の三次元形状を層分割して得られる各層形状の外縁をビードにより形成するための第一外縁経路の情報を取得する第一外縁経路取得部31と、第一外縁経路の内側に隣り合って第一外縁経路と並行する第二外縁経路を生成する第二外縁経路生成部33と、第二外縁経路に囲まれる領域をビードにより充填するための充填経路を生成する充填経路生成部35と、第二外縁経路及び充填経路におけるビードの積層条件を、第一外縁経路における積層条件よりもビード形成の入熱量及び溶着量が共に大きくなるように設定する積層条件設定部37と、積層計画情報を出力する出力部39とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融した加工材料を指定された経路に沿って対象面に付加して形成されるビードにより層形状を造形することを繰り返し、複数の層形状が積層された造形物を製造する積層造形装置において、前記積層造形装置を制御するための積層計画情報を生成する積層計画情報生成装置であって、
前記造形物の三次元形状を層分割して得られる各層形状の外縁を前記ビードにより形成するための第一外縁経路の情報を取得する第一外縁経路取得部と、
前記第一外縁経路の内側に隣り合って前記第一外縁経路と並行する第二外縁経路を生成する第二外縁経路生成部と、
前記第二外縁経路に囲まれる領域を前記ビードにより充填するための充填経路を生成する充填経路生成部と、
前記第二外縁経路及び前記充填経路における前記ビードの積層条件を、前記第一外縁経路における前記積層条件よりもビード形成の入熱量及び溶着量が共に大きくなるように設定する積層条件設定部と、
設定された前記第一外縁経路、前記第二外縁経路及び前記充填経路における前記ビードの積層条件を含む前記積層計画情報を出力する出力部と、
を備える積層計画情報生成装置。
【請求項2】
前記層形状の内縁を前記ビードにより形成するための第一内縁経路の情報を取得する第一内縁経路取得部と、
前記第一内縁経路の外側に隣り合って前記第一内縁経路と並行する第二内縁経路を生成する第二内縁経路生成部と、
を備え、
前記充填経路生成部は、生成した前記充填経路のうち前記第二内縁経路の内側の経路を削除する、
請求項1に記載の積層計画情報生成装置。
【請求項3】
前記充填経路生成部は、
前記層形状の少なくとも前記第一外縁経路の内側領域を前記ビードにより充填するための仮充填経路を生成する仮充填経路生成部と、
前記第二外縁経路の外側に配置される前記仮充填経路を削除して、前記第二外縁経路の内側に配置される前記仮充填経路を前記充填経路として抽出する充填経路抽出部と、
を備える請求項1に記載の積層計画情報生成装置。
【請求項4】
造形される前記層形状の内縁を前記ビードにより形成するための第一内縁経路の情報を取得する第一内縁経路取得部と、
前記第一内縁経路の外側に隣り合って前記第一内縁経路に並行する第二内縁経路を生成する第二内縁経路生成部と、
を備え、
前記充填経路生成部は、生成した前記充填経路のうち前記第二内縁経路の内側の経路を削除する、
請求項3に記載の積層計画情報生成装置。
【請求項5】
前記積層条件設定部は、前記充填経路の溶着量を、前記充填経路と前記第一外縁経路との間、又は前記充填経路と前記第二外縁経路との間の最短間隔が小さいほど、前記充填経路における前記溶着量を小さくする、
請求項1に記載の積層計画情報生成装置。
【請求項6】
前記積層条件設定部は、前記充填経路の溶着量を、前記充填経路と前記第一内縁経路との間、又は前記充填経路と前記第二内縁経路との間の最短間隔が小さいほど、前記充填経路における前記溶着量を小さくする、
請求項2又は4に記載の積層計画情報生成装置。
【請求項7】
前記充填経路生成部は、前記充填経路のビード形成方向と、前記第一外縁経路又は前記第二外縁経路のビード形成方向とがなす最小の交差角が小さいほど、前記第一外縁経路又は前記第二外縁経路の外縁経路と、該外縁経路に最接近する前記充填経路の端点又は屈曲した頂点との間の間隔を小さくする、
請求項1に記載の積層計画情報生成装置。
【請求項8】
前記充填経路生成部は、前記充填経路のビード形成方向と、前記第一内縁経路又は前記第二内縁経路のビード形成方向とがなす最小の交差角が小さいほど、前記第一内縁経路又は前記第二内縁経路の内縁経路と、該内縁経路に最接近する前記充填経路の端点又は屈曲した頂点との間の間隔を小さくする、
請求項2又は4に記載の積層計画情報生成装置。
【請求項9】
前記層形状を造形する前記ビードの形成順を、前記第一外縁経路、前記充填経路、前記第二外縁経路の順に設定する経路順設定部をさらに含む、
請求項1又は3に記載の積層計画情報生成装置。
【請求項10】
前記層形状を造形する前記ビードの形成順を、前記第一内縁経路、前記充填経路、前記第二内縁経路の順に設定する経路順設定部をさらに含む、
請求項2又は4に記載の積層計画情報生成装置。
【請求項11】
溶融した加工材料を指定された経路に沿って対象面に付加して形成されるビードにより層形状を造形することを繰り返し、複数の層形状が積層された造形物を製造する積層造形装置において、前記積層造形装置を制御するための積層計画情報を生成する積層計画情報生成方法であって、
前記積層計画情報は、前記造形物の三次元形状を層分割して得られる各層形状の外縁を前記ビードにより形成するための第一外縁経路の情報を取得し、
前記第一外縁経路の内側に隣り合って前記第一外縁経路と並行する第二外縁経路を生成し、
前記第二外縁経路に囲まれる領域を前記ビードにより充填するための充填経路を生成し、
前記第二外縁経路及び前記充填経路における前記ビードの積層条件を、前記第一外縁経路における前記積層条件よりもビード形成の入熱量及び溶着量を共に大きく設定し、
設定された前記第一外縁経路、前記第二外縁経路及び前記充填経路における前記ビードの積層条件を含む前記積層計画情報を出力する、
積層計画情報生成方法。
【請求項12】
前記層形状の内縁を前記ビードにより形成するための第一内縁経路の情報を取得し、
前記第一内縁経路の外側に隣り合って前記第一内縁経路と並行する第二内縁経路を生成し、
前記充填経路のうち、前記第二内縁経路の内側の経路を削除する、
請求項11に記載の積層計画情報生成方法。
【請求項13】
前記層形状の少なくとも前記第一外縁経路の内側領域を前記ビードにより充填するための仮充填経路を生成し、
前記第二外縁経路の外側に配置される前記仮充填経路を削除して、前記第二外縁経路の内側に配置される前記仮充填経路を前記充填経路として抽出する、
を備える請求項11に記載の積層計画情報生成方法。
【請求項14】
造形される前記層形状の内縁を前記ビードにより形成するための第一内縁経路の情報を取得し、
前記第一内縁経路の外側に隣り合って前記第一内縁経路と並行する第二内縁経路を生成し、
前記充填経路のうち、前記第二内縁経路の内側の経路を削除する、
請求項13に記載の積層計画情報生成方法。
【請求項15】
前記充填経路の溶着量を、前記充填経路と前記第一外縁経路との間、又は前記充填経路と前記第二外縁経路との間の最短間隔が小さいほど、前記充填経路における前記溶着量を小さくする、
請求項11に記載の積層計画情報生成方法。
【請求項16】
前記充填経路の溶着量を、前記充填経路と前記第一内縁経路との間、又は前記充填経路と前記第二内縁経路との間の最短間隔が小さいほど、前記充填経路における前記溶着量を小さくする、
請求項12又は14に記載の積層計画情報生成方法。
【請求項17】
前記充填経路のビード形成方向と、前記第一外縁経路又は前記第二外縁経路のビード形成方向とがなす最小の交差角が小さいほど、前記第一外縁経路又は前記第二外縁経路の外縁経路と、該外縁経路に最接近する前記充填経路の端点又は屈曲した頂点との間の間隔を小さくする、
請求項11に記載の積層計画情報生成方法。
【請求項18】
前記充填経路のビード形成方向と、前記第一内縁経路又は前記第二内縁経路のビード形成方向とがなす最小の交差角が小さいほど、前記第一内縁経路又は前記第二内縁経路の内縁経路と、該内縁経路に最接近する前記充填経路の端点又は屈曲した頂点との間の間隔を小さくする、
請求項12又は14に記載の積層計画情報生成方法。
【請求項19】
前記層形状を造形する前記ビードの形成順を、前記第一外縁経路、前記充填経路、前記第二外縁経路の順に設定する、
請求項11に記載の積層計画情報生成方法。
【請求項20】
前記層形状を造形する前記ビードの形成順を、前記第一内縁経路、前記充填経路、前記第二内縁経路の順に設定する経路順設定部をさらに含む、
請求項12又は14に記載の積層計画情報生成方法。
【請求項21】
溶融した加工材料を指定された経路に沿って対象面に付加して形成されるビードにより層形状を造形することを繰り返し、複数の層形状が積層された造形物を製造する積層造形装置において、前記積層造形装置を制御するための積層計画情報を生成するプログラムであって、
コンピュータに、
前記積層計画情報は、前記造形物の三次元形状を層分割して得られる各層形状の外縁を、前記ビードにより形成するための第一外縁経路の情報を取得する手順と、
前記第一外縁経路の内側に隣り合って前記第一外縁経路と並行する第二外縁経路を生成する手順と、
前記第二外縁経路に囲まれる領域を前記ビードにより充填するための充填経路を生成する手順と、
前記第二外縁経路及び前記充填経路における前記ビードの積層条件を、前記第一外縁経路における前記積層条件よりもビード形成の入熱量及び溶着量を共に大きく設定する手順と、
設定された前記第一外縁経路、前記第二外縁経路及び前記充填経路における前記ビードの積層条件を含む前記積層計画情報を出力する手順と、
を実行させるためのプログラム。
【請求項22】
請求項21に記載のプログラムであって、
コンピュータに、
前記層形状の少なくとも前記第一外縁経路の内側領域を前記ビードにより充填するための仮充填経路を生成する手順と、
前記第二外縁経路の外側に配置される前記仮充填経路を削除して、前記第二外縁経路の内側に配置される前記仮充填経路を前記充填経路として抽出する手順と、
を更に実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層計画情報生成装置及び積層計画情報生成方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生産手段として3Dプリンタを用いた造形のニーズが高まっており、金属材料を用いた造形の実用化に向けて研究開発が進められている。金属材料を造形する3Dプリンタは、レーザー又は電子ビーム、更にはアーク等の熱源を用いて、金属粉体又は金属ワイヤを溶融させ、溶融金属を積層させることで造形物を作製する。このような造形技術として、例えば特許文献1には、外側輪郭と内側輪郭とを有する二重の輪郭のパスと、その二重の輪郭の内側となる空き領域に充填パスを設ける積層例が開示されている。この積層例によれば、外側輪郭の充填経路を内側に複製し、内側輪郭の充填経路を外側に複製し、双方の充填経路同士が交差するまで上記の複製を繰り返す。そして、交差後は残った隙間をジグザクの経路で充填することで、複雑領域の充填を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】中国特許出願公開第108460174号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えばアークによる積層造形においては、溶接ビード(以下、ビードという。)の始終端部、角折れ部等の角部において狭隘部が形成されやすい。狭隘部の発生は、造形物に内部欠陥を生じさせる原因となるため、造形時においては狭隘部の発生を回避又は潰しこむ必要がある。また、造形対象によっては造形物の外表面に高い造形精度が要求され、その対策として、外表面(各層の外周縁)に低入熱で形成するビードを一重に積層する手法が用いられていた。しかし、上記のような低入熱ビードを外周縁位置に積層する手法では、外表面付近の狭隘部を完全には潰すことができない。また、特許文献1のように輪郭を設ける場合でも、輪郭を形成する外縁経路と、輪郭同士の間の充填経路との間に、空隙、融合不良等の欠陥が生じやすくなる。
【0005】
例えば、
図18Aに示すように、造形物を層分割した層内において、造形物の輪郭となる枠状のビードBaと、輪郭内側の充填部となるビードBbとを設けることで、形状精度が向上する。しかし、輪郭の内側では、枠状のビードBaと充填部のビードBbとの間に狭隘部Nnが生じ易くなる。また、
図18Bに示すように、造形物の輪郭から内側に向けて複数のビードBをコンター状に形成する場合には、中心部に残る隙間Gpによって内部欠陥が生じ易くなる。さらに、
図18Cに示すように、複数のビードBをラスター状に形成する場合には、余肉を増やすことにより内部欠陥を防げるが、輪郭形状の形状再現性が低下する。
【0006】
そこで本発明は、造形物の外表面の造形精度を維持しつつ、外表面近傍に狭隘部を発生させないようにする、積層計画情報生成装置及び積層計画情報生成方法、並びにプログラムの提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記の構成からなる。
(1) 溶融した加工材料を指定された経路に沿って対象面に付加して形成されるビードにより層形状を造形することを繰り返し、複数の層形状が積層された造形物を製造する積層造形装置において、前記積層造形装置を制御するための積層計画情報を生成する積層計画情報生成装置であって、
前記造形物の三次元形状を層分割して得られる各層形状の外縁を前記ビードにより形成するための第一外縁経路の情報を取得する第一外縁経路取得部と、
前記第一外縁経路の内側に隣り合って前記第一外縁経路と並行する第二外縁経路を生成する第二外縁経路生成部と、
前記第二外縁経路に囲まれる領域を前記ビードにより充填するための充填経路を生成する充填経路生成部と、
前記第二外縁経路及び前記充填経路における前記ビードの積層条件を、前記第一外縁経路における前記積層条件よりもビード形成の入熱量及び溶着量が共に大きくなるように設定する積層条件設定部と、
設定された前記第一外縁経路、前記第二外縁経路及び前記充填経路における前記ビードの積層条件を含む前記積層計画情報を出力する出力部と、
を備える積層計画情報生成装置。
(2) 溶融した加工材料を指定された経路に沿って対象面に付加して形成されるビードにより層形状を造形することを繰り返し、複数の層形状が積層された造形物を製造する積層造形装置において、前記積層造形装置を制御するための積層計画情報を生成する積層計画情報生成方法であって、
前記積層計画情報は、前記造形物の三次元形状を層分割して得られる各層形状の外縁を前記ビードにより形成するための第一外縁経路の情報を取得し、
前記第一外縁経路の内側に隣り合って前記第一外縁経路と並行する第二外縁経路を生成し、
前記第二外縁経路に囲まれる領域を前記ビードにより充填するための充填経路を生成し、
前記第二外縁経路及び前記充填経路における前記ビードの積層条件を、前記第一外縁経路における前記積層条件よりもビード形成の入熱量及び溶着量を共に大きく設定し、
設定された前記第一外縁経路、前記第二外縁経路及び前記充填経路における前記ビードの積層条件を含む前記積層計画情報を出力する、
積層計画情報生成方法。
(3) 溶融した加工材料を指定された経路に沿って対象面に付加して形成されるビードにより層形状を造形することを繰り返し、複数の層形状が積層された造形物を製造する積層造形装置において、前記積層造形装置を制御するための積層計画情報を生成するプログラムであって、
コンピュータに、
前記積層計画情報は、前記造形物の三次元形状を層分割して得られる各層形状の外縁を、前記ビードにより形成するための第一外縁経路の情報を取得する手順と、
前記第一外縁経路の内側に隣り合って前記第一外縁経路と並行する第二外縁経路を生成する手順と、
前記第二外縁経路に囲まれる領域を前記ビードにより充填するための充填経路を生成する手順と、
前記第二外縁経路及び前記充填経路における前記ビードの積層条件を、前記第一外縁経路における前記積層条件よりもビード形成の入熱量及び溶着量を共に大きく設定する手順と、
設定された前記第一外縁経路、前記第二外縁経路及び前記充填経路における前記ビードの積層条件を含む前記積層計画情報を出力する手順と、
を実行させるためのプログラム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、外表面の造形精度を維持しつつ、外表面近傍に狭隘部が発生させないようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、積層造形装置の全体構成を示す概略図である。
【
図2】
図2は、積層計画情報生成装置の機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、積層計画情報の第1の生成手順を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、造形物のプロファイルを層分割した様子を示す説明図である。
【
図5A】
図5Aは、パスを設定する手順を模式的に示す説明図である。
【
図5B】
図5Bは、パスを設定する手順を模式的に示す説明図である。
【
図5C】
図5Cは、パスを設定する手順を模式的に示す説明図である。
【
図5D】
図5Dは、パスを設定する手順を模式的に示す説明図である。
【
図6】
図6は、充填経路の生成手順を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、積層領域に設定する充填経路の他の例を示す説明図である。
【
図9】
図9は、第一外縁経路及び第二外縁経路と、充填経路との位置調整の様子を示す説明図である。
【
図10】
図10は、第一外縁経路及び第二外縁経路と、充填経路との距離を示す説明図である。
【
図11】
図11は、第一外縁経路、第二外縁経路、充填経路に形成した各ビードの概略断面図である。
【
図12】
図12は、造形物が中空部を有する場合に充填経路を生成する手順を示すフローチャートである。
【
図13A】
図13Aは、造形物が中空部を有する場合のパスを設定する手順を模式的に示す説明図である。
【
図13B】
図13Bは、造形物が中空部を有する場合のパスを設定する手順を模式的に示す説明図である。
【
図13C】
図13Cは、造形物が中空部を有する場合のパスを設定する手順を模式的に示す説明図である。
【
図14】
図14は、積層計画情報の第2の生成手順における充填経路の生成手順を示すフローチャートである。
【
図17】
図17は、第一外縁経路を生成する他の方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。ここで示す積層造形装置は、予め用意された積層計画に基づき、溶融した加工材料を指定された経路に沿って対象面に付加してビードを形成し、このビードにより層形状を造形することを繰り返して、複数の層が積層された造形物を製造する。上記した積層造形計画は、積層計画情報生成装置により作成でき、作成された積層計画情報は積層造形装置に入力される。積層造形装置は、この入力された積層計画基づいて造形物を造形する。
【0011】
<積層造形装置の構成>
上記の積層計画情報に基づいて動作する積層造形装置の一構成例を説明する。
図1は、積層造形装置の全体構成を示す概略図である。積層造形装置100は、造形部11と造形制御部13とを備える。造形制御部13を制御する積層計画情報生成装置200は、造形制御部13に接続されて積層造形装置100の一部を構成してもよく、積層造形装置100とは別体に設けられていてもよい。造形制御部13は、以下に説明する造形部11の各部を統括して制御する。
【0012】
造形部11は、マニピュレータ15と、溶加材送給部17と、マニピュレータ制御部19と、熱源制御部21とを含んで構成される。
【0013】
マニピュレータ制御部19は、マニピュレータ15と熱源制御部21を制御する。マニピュレータ制御部19には不図示のコントローラが接続されて、マニピュレータ制御部19からの任意の操作がコントローラを介して操作者から指示可能となっている。
【0014】
マニピュレータ15は、例えば多関節ロボットであり、ロボット先端軸に設けたトーチ23には、溶加材Mが連続供給可能に支持される。トーチ23は、溶加材Mを先端から突出した状態に保持する。トーチ23の位置及び姿勢は、マニピュレータ15を構成するロボットアームの自由度の範囲で3次元的に任意に設定可能となっている。マニピュレータ15は、6軸以上の自由度を有するものが好ましく、先端の熱源の軸方向を任意に変化させられるものが好ましい。マニピュレータ15は、
図1に示す4軸以上の多関節ロボットの他、2軸以上の直交軸に角度調整機構を備えたロボット等、種々の形態でもよい。
【0015】
トーチ23は、不図示のシールドノズルを有し、シールドノズルからシールドガスが供給される。シールドガスは、大気を遮断し、溶接中の溶融金属の酸化、窒化などを防いで溶接不良を抑制する。本構成で用いるアーク溶接法としては、被覆アーク溶接又は炭酸ガスアーク溶接等の消耗電極式、TIG(Tungsten Inert Gas)溶接又はプラズマアーク溶接等の非消耗電極式のいずれであってもよく、造形対象に応じて適宜選定される。ここでは、ガスメタルアーク溶接を例に挙げて説明する。消耗電極式の場合、シールドノズルの内部にはコンタクトチップが配置され、電流が給電される溶加材Mがコンタクトチップに保持される。トーチ23は、溶加材Mを保持しつつ、シールドガス雰囲気で溶加材Mの先端からアークを発生する。
【0016】
溶加材供給部17は、トーチ23に向けて溶加材Mを供給する。溶加材供給部17は、溶加材Mが巻回されたリール17aと、リール17aから溶加材Mを繰り出す繰り出し機構17bとを備える。溶加材Mは、繰り出し機構17bによって必要に応じて正方向又は逆方向に送られながらトーチ23へ送給される。繰り出し機構17bは、溶加材供給部17側に配置されて溶加材Mを押し出すプッシュ式に限らず、ロボットアーム等に配置されるプル式、又はプッシュ-プル式であってもよい。
【0017】
熱源制御部21は、マニピュレータ15による溶接に要する電力を供給する溶接電源である。熱源制御部21は、溶加材Mを溶融、凝固させるビード形成時に供給する溶接電流及び溶接電圧を調整する。また、熱源制御部21が設定する溶接電流及び溶接電圧等の溶接条件に連動して、溶加材供給部17の溶加材供給速度が調整される。
【0018】
溶加材Mを溶融させる熱源としては、上記したアークに限らない。例えば、アークとレーザーとを併用した加熱方式、プラズマを用いる加熱方式、電子ビーム又はレーザーを用いる加熱方式等、他の方式による熱源を採用してもよい。電子ビーム又はレーザーにより加熱する場合、加熱量を更に細かく制御でき、形成する溶接ビードの状態をより適正に維持して、積層構造物の更なる品質向上に寄与できる。また、溶加材Mの材質についても特に限定するものではなく、例えば、軟鋼、高張力鋼、アルミ、アルミ合金、ニッケル、ニッケル基合金など、造形物Wkの特性に応じて、用いる溶加材Mの種類が異なっていてよい。
【0019】
上記した構成の積層造形装置100は、造形物Wkの造形計画に基づいて作成された造形プログラムに従って動作する。造形プログラムは、多数の命令コードにより構成され、造形物Wkの形状、材質、入熱量等の諸条件に応じて、適宜なアルゴリズムに基づいて作成される。この造形プログラムに従って、トーチ23を移動させつつ、送給される溶加材Mを溶融及び凝固させると、溶加材Mの溶融凝固体である線状のビードBがベース25上に形成される。つまり、マニピュレータ制御部19は、造形制御部13から提供される所定のプログラムに基づいて、マニピュレータ15と熱源制御部21を駆動させる。マニピュレータ15は、マニピュレータ制御部19からの指令により、溶加材Mをアークで溶融させながらトーチ23を移動させてビードBを形成する。このようにしてビードBを順次に形成、積層することで、目的とする形状の造形物Wkが得られる。
【0020】
<積層計画情報生成装置の構成>
図2は、積層計画情報生成装置200の機能ブロック図である。積層計画情報生成装置200は、第一外縁経路取得部31と、第二外縁経路生成部33と、充填経路生成部35と、積層条件設定部37と、出力部39とを備える。積層計画情報生成装置200の各部の詳細については後述するが、概略的な機能は次の通りである。
【0021】
まず、積層計画情報生成装置200には、前述した造形物を製造するための造形計画が入力される。造形計画には、造形物の形状(CADデータでもよい)及び溶接条件等の情報が含まれる。また、前述した造形プログラムを入力してもよい。
【0022】
第一外縁経路取得部31は、入力された造形計画から、造形物の三次元形状を層分割して得られる各層形状の外縁をビードにより形成するための第一外縁経路の情報を取得する。第一外縁経路の情報とは、造形物を層分割した各層における、造形物の輪郭(外縁形状)をビードにより形成する際の、トーチ23の移動軌跡を表す座標群、ベクトル等の経路情報である。
【0023】
第二外縁経路生成部33は、第一外縁経路の内側に隣り合って第一外縁経路と並行する第二外縁経路を生成する。また、充填経路生成部35は、第二外縁経路に囲まれる領域をビードにより充填するための充填経路を生成する。
【0024】
充填経路生成部35は、第二外縁経路及び充填経路におけるビードの積層条件を、第一外縁経路における積層条件よりもビードの形成による入熱量及びビードの溶着量が共に大きくなるように設定する。つまり、第二外縁経路と充填経路とが、第一外縁経路の場合よりも流動性が高い溶融金属で隙間なく、高効率で充填できる溶接条件に設定する。
【0025】
出力部39は、設定された第一外縁経路、第二外縁経路及び充填経路におけるビードの積層条件を含む積層計画情報を出力する。出力される積層計画情報は、入力された積層計画の修正情報であってもよく、この修正を波及させた造形プログラムであってもよい。出力された積層計画情報は、積層造形装置100の造形制御部13に送られて、造形物の製造に供される。
【0026】
上記の積層計画情報生成装置200は、例えば、PC(Personal Computer)等の情報処理装置を用いたハードウェアにより構成される。積層計画情報生成装置200の各機能は、不図示の制御部が不図示の記憶装置に記憶された特定の機能を有するプログラムを読み出し、これを実行することで実現される。制御部としては、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processor Unit)等のプロセッサ、又は専用回路等を例示できる。記憶装置としては、揮発性の記憶領域であるRAM(Random Access Memory)、不揮発性の記憶領域であるROM(Read Only Memory)等のメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等のストレージを例示できる。
【0027】
また、積層計画情報生成装置200は、上記した形態のほか、前述したように、ネットワーク等を介して遠隔地から造形制御部13に接続される他のコンピュータで構成してもよい。また、積層計画情報生成装置200が生成した積層計画情報は、適宜な記憶媒体を介して造形制御部13に入力される形態でもよい。
【0028】
<第1の積層計画情報の生成手順>
次に、積層計画情報生成装置200による積層計画情報の生成手順について、
図2に示す各部の構成と共に詳細に説明する。
図3は、積層計画情報の第1の生成手順を示すフローチャートである。まず、積層計画情報生成装置200は、積層計画から造形物の形状情報を取得し、造形物の3次元形状プロファイル(以下、プロファイルともいう。)を層状にスライス(層分割)した層状データを生成する(S1)。
【0029】
プロファイルについては特に限定されないが、例えば、市販のCAD編集ソフトウェアで作成されたプロファイルを例示できる。そのほか、三次元構造物の形状をスキャンして得た3次元の点群情報等であってもよい。プロファイルをスライスする手段としては、公知の手段、又は市販のソフトウェアの機能を用いてもよく、例えば指定した積層方向に対して直交する面でスライスして、複数層に分割してもよい。
【0030】
図4は、造形物のプロファイルPrfを層分割した様子を示す説明図である。ベース25上に造形しようとする造形物のプロファイルPrfを、ビード幅に応じた所定の厚さでビードの積層方向Dhに直交するスライス面PLで切断する。これにより、プロファイルPrfが層分割された複数のビード層BLが得られる。
【0031】
次に、得られたビード層BLの層状データに応じて、ビードを形成するためのトーチ23の移動経路(パスともいう)とビード形状に関する情報を生成する。ビード形成のパスは、公知の方法で算出でき、例えば、ラスター状のパターンを層形状に当てはめてパスを生成してもよい。生成されるパスの情報は、パス中に含まれる点の座標情報(x,y,z)、隣接するパス同士のピッチ等の情報を含む。
【0032】
ビード形状に関する情報については、ビード層の断面の充填に必要となる面積、層高さ等の情報を基に、必要なビード高さと幅の情報を求めることができる。また、溶接可能なビードの高さと幅(ビード形成方向に直交する方向の幅)の条件から、任意の組合せを選択してもよい。その場合、選択したビード高さと幅を基に、並設されるビードのピッチ及びビード層の高さ、パスの本数等を調整してもよい。また、ビードを積層する際の溶接電流、溶接電圧、ワイヤ送給速度及びトーチ23の移動速度、等の多数の溶接条件まで特定してもよい。
【0033】
ここで、上記したパスの情報について詳細に説明する。造形物をビード層BL毎に造形するための層毎のパスとして、以下に説明する第一外縁経路、第二外縁経路、充填経路を設定する。
【0034】
図5A~
図5Dは、パスを設定する手順を模式的に示す説明図である。第一外縁経路取得部31は、
図5Aに示すように、プロファイルPrfから求めたビード層BLにおいて、造形物の外縁に沿って形成するビードのパスである第一外縁経路41を求める(S2)。
【0035】
また、第二外縁経路生成部33は、
図5Bに示すように、第一外縁経路41の内側に隣り合って第一外縁経路41と並行する第二外縁経路43を生成する(S3)。
【0036】
そして、充填経路生成部35は、
図5Cに示すように、第二外縁経路43に囲まれる領域をビードにより充填するための充填経路45を生成する(S4)。
【0037】
上記したステップS2~S4について、更に詳細に説明する。ステップS2で生成する第一外縁経路41の情報には、ビード形状の情報を与えることができる。このとき、第一外縁経路41は、造形物の外表面の形状再現を担う枠状の部分であるので、ビード幅を太くし過ぎると形状の再現率が低下する。また、製造した造形物を後工程で切削する場合に、余肉量が増大して生産効率を低下させる。そのため、第一外縁経路41は、枠内の体積充填を担う充填経路45に比べて細幅のビードを設定することが好ましく、その溶接条件としては、ビードの垂れが生じにくい低入熱条件にすることが好ましい。細幅のビードを設定するにあたっては、溶加材Mの溶着量を下げるように溶接速度を増大させたり、溶加材送給速度を下げたりすることが有効で、低入熱条件にあたっては、溶接電圧又は溶接電流を下げたり、低入熱でもアークの発生が安定しやすくなる溶加材の正逆送給制御を行ったりすることが有効である。
【0038】
ステップS3で生成する第二外縁経路43は、第一外縁経路41の内側で沿った経路となる。具体的な一例としては、第一外縁経路41を形成する点情報に対して所定の距離だけ内側にオフセットした点を生成することで、その点の集合を第二外縁経路43としてよい。第一外縁経路41の形状が幾何図形で近似される場合は、その幾何図形を所定割合で縮小した相似図形を第二外縁経路43としてもよい。第二外縁経路43については、造形物の外形の形状再現を直接担う部分ではないので、第一外縁経路41より太いビード幅が設定されることが好ましい。また、充填経路45と第一外縁経路41との中間に位置するので、溶加材Mの溶着体積を大きくすることで、枠状の第一外縁経路41との間の隙間、及び充填経路45の始終端のビード形状に起因した凹凸の激しい狭隘部を、それぞれ溶かし込んで未溶着の発生を防止できる。そのため、第二外縁経路43の溶接条件としては、高入熱条件にするが好ましい。
【0039】
ステップS4で生成する充填経路45について、更に具体的に説明する。
図6は、充填経路の生成手順を示すフローチャートである。
図7は、積層領域を示す説明図である。充填経路45を生成するには、
図7に示すように、分割した層内の第一外縁経路41又は第二外縁経路43から一定距離La,Lb内に存在する積層領域Adを生成する(S11)。
【0040】
生成された積層領域Adに、
図5Cに示す任意形状の充填経路45を生成する(S12)。ここで生成する充填経路45は、例えばラスター状であってもよく、その場合、できるだけビードを連続形成できるように、積層領域Adの長手方向に沿った方向に充填経路45を配置するのがよい。
【0041】
以上の第一外縁経路41と第二外縁経路43と充填経路45を重ね合わせて、
図5Dに示す積層経路を設定する(S13)。これにより、造形物の外縁となる第一外縁経路41と、その内側の充填経路45との間に第二外縁経路43が配置された積層経路が求められる。
【0042】
図8は、積層領域Adに設定する充填経路の他の例を示す説明図である。積層領域Adの形状が複雑になると、設定可能な充填経路のパターンが多数存在するため、造形効率のよいパターンを選定する必要がある。例えば、
図8に示すような形状の積層領域Adの場合、ラスター状のビード形成パスを模擬した平行線群49を、回転角αを調整して積層領域Adの長手方向に沿わせて配置する。配置した平行線群49のうち、積層領域Ad以外の領域を削除する。そして、積層領域Ad内に配置された平行線群49の最近傍の端部同士を連結する。すると、一本の連続するパスP
S1(P
st→P
L1)と、これとは別に独立したパスPS2(P
L2→P
end)を生じることがある。その場合、線端部P
L1から線端部P
L2まで新たなパスPS3を追加することで、パスPS1,PS3,PS2からなる連続する充填経路が得られる。このように、積層領域Adに設定する充填経路45は、積層領域Adの形状に応じて任意に設定できる。
【0043】
こうして得られた
図5Dに示す充填経路45は、そのままの経路長であると、充填経路45の始終端のビードが第一外縁経路41又は第二外縁経路43のビードと重なることがある。その場合、ビード同士が重なった部分では溶加材Mの溶着量が過多となり、ビードの積層高さに大きな偏りが生じてしまう。そこで、充填経路45と第一外縁経路41又は第二外縁経路43のビード同士が重ならないよう、充填経路45の長さを調整する。
【0044】
図9は、第一外縁経路41及び第二外縁経路43と、充填経路45との位置調整の様子を示す説明図である。第二外縁経路43のビードB2と充填経路45のビードB3とが重なった部分には、盛り上がりを生じる。そこで、充填経路45が第二外縁経路43から所定の距離Ldだけ離れるように、充填経路45の始終端の位置を調整してもよい。また、充填経路45を第一外縁経路41から離すように調整することでもよい。ただし、充填経路45のビードB3と第二外縁経路43のビードB2とが互いに重ならない距離Ldにすると、ビード同士の間に隙間を生じるため、少なくとも一部のビード同士が重なる距離Ldにするのが好ましい。
【0045】
さらに、第一外縁経路41及び第二外縁経路43のビード形成方向と、充填経路45のビード形成方向とが直交、つまり、交差角θ(平面上で2つの直線が交差する場合の最小の交差角)が90°である場合と、傾斜する場合(交差角θ<90°)とでは、ビード同士が重なる距離Ldが同じであっても、交差角θが小さいほどビード同士の間に隙間Gpが生じやすくなる。つまり、充填経路45と第一外縁経路41又は第二外縁経路43との交差角θが90°より小さいほど、充填経路45のビードB3の端部に形成される隙間Gpが大きくなる。そのため、交差角θが小さいほど、充填経路45の端点(又は屈曲した経路の頂点)と第一外縁経路41又は第二外縁経路43との間の距離を小さくする。これにより未溶着欠陥の発生を抑制できる。
【0046】
交差角θの算出は、端点から経路を延長してできる角を使ってもよく、各経路がなす局所的なビード形成方向のベクトルがなす角として算出してもよい。後者のベクトルがなす角による交差角θの算出は、第一外縁経路41,第二外縁経路43の経路の形状(曲がり)が一様でないときに適する場合がある。
【0047】
図10は、第一外縁経路41及び第二外縁経路43と、充填経路45との距離を示す説明図である。上記した距離Ldとは別に、充填経路45上の任意の点P(端部に限定されない)と第二外縁経路43(又は第一外縁経路41)との充填経路45の並び方向に関する最短距離Lcに基づいて、充填経路45の溶着量を調整してもよい。
図10における最上部の充填経路45aと最下部の充填経路45bは、他の充填経路と比較して極端に短く、第二外縁経路43との間隔(
図10の上下方向の間隔)が全体的に非常に狭い。そのため、充填経路45a,45bに形成されるビードは、それに隣接する経路に形成されるビードによって多くの溶着金属が重なりやすく、積層高さが盛り上がりやすくなる。この盛り上がりは、積層表面の形状品質、特に表面の平坦度を低下させる。そのため、最短距離Lcが短い場合には、充填経路45a,45bに形成されるビードのビード幅を狭くするか、充填経路45a,45bを部分的に削除することが好ましい。または、充填経路のパス数を減らすことで充填経路45全体の溶加材Mの溶着量を減らしてもよい。その場合、層全体の溶着量の総量を一定に維持するため、第一外縁経路41,第二外縁経路43における溶加材Mの溶着量を部分的に増やせばよい。
【0048】
次に、ビードの積層条件を設定する(
図5のS5)。積層条件設定部37(
図2)は、第二外縁経路43及び充填経路45におけるビードの積層条件を、第一外縁経路41における積層条件よりもビードの形成による入熱量及びビードの溶着量が共に大きくなるように設定する。
【0049】
図11は、第一外縁経路41、第二外縁経路43、充填経路45に形成した各ビードの概略断面図である。第一外縁経路41に形成するビードB1と充填経路45に形成するビードB3との間では、ビード間距離が一定にならず、各ビードの外表面には凹凸形状が形成される。そこで、ビードB1とビードB3との間を、第二外縁経路43に形成するビードB2によって埋め込むことで、境界近傍の欠陥発生を防止する。そのため、第二外縁経路43のビードの積層条件は、充填経路45と同様に入熱量及びビードの溶着量を共に大きくなるように設定するのが好ましい。
【0050】
出力部39は、設定された第一外縁経路41、第二外縁経路43及び充填経路45の各経路の情報と、各経路に形成されるビードB1,B2,B3の積層条件とを含む積層計画情報を出力する(S6)。積層計画情報に含まれる経路の情報は、少なくとも経路を構成する座標の集合を含み、積層条件は、ビードの形状制御に関わる溶接速度、溶加材送給速度等の制御情報を少なくとも含む。また、積層計画情報には、各経路の積層に要求されるビード形状、積層開始点、積層終了点のフラグ情報、各経路の積層順序等を付加的に含んでもよい。なお、積層順序について好ましい態様としては、第一外縁経路41、充填経路45、第二外縁経路43の順に設定することが好ましい。こうすることで、第二外縁経路43のビードB2によって第一外縁経路41と充填経路45のビードB1,B3が形成する隙間を確実に埋め尽くすことができ、場所に応じて入熱量と溶着量の調整を補正できるだけの自由度を確保できる。
【0051】
この積層計画情報は、積層造形装置100の造形制御部13に入力され、造形部11を駆動する手順を実行するためのプログラムに供される。
【0052】
(変形例)
上記した層形状はいずれも中実形状であるが、造形物によっては中空部が存在することがある。その場合、前述した充填経路45の内側に内縁経路を設けることになる。
図12は、造形物が中空部を有する場合に充填経路を生成する手順を示すフローチャートである。このフローチャートは、
図3に示すフローチャートのステップS4とステップS5との間のP1-P2間に挿入される手順となる。
図13A~
図13Cは、造形物が中空部を有する場合のパスを設定する手順を模式的に示す説明図である。
【0053】
この場合の積層計画情報生成装置200は、
図2に示す第一内縁経路取得部51と、第二内縁経路取得部53とを含んで構成される。積層計画情報生成装置200は、
図3に示すステップS1~S4を実施して、第一外縁経路41、第二外縁経路43、充填経路45を求める。そして、第一内縁経路取得部51は、前述した造形物のプロファイルPrfから求めたビード層BLにおいて、
図13Aに示すように、造形物の内縁に沿って形成するビードのパスである第一内縁経路55を求める(S21)。また、第二内縁経路取得部53は、
図13Bに示すように、第一内縁経路55の外側に隣り合って第一内縁経路55に並行する第二内縁経路57を生成する(S22)。なお、
図13A,
図13Bには充填経路の図示を省略している。
【0054】
充填経路生成部35は、
図13Cに示すように、生成した充填経路45のうち、第二内縁経路57の内側の経路を削除する。生成した第一内縁経路55及び第二内縁経路57と、充填経路45とは、互いの位置関係及び形成するビードの積層条件に関しては、前述した第一外縁経路41及び第二外縁経路43と充填経路45との関係と同様である。
【0055】
<第2の積層計画情報の生成手順>
次に、第2の積層計画情報の生成手順を説明する。この場合の積層計画情報生成装置200の充填経路生成部35には、仮充填経路生成部61と充填経路抽出部63とが含まれる。
【0056】
図14は、積層計画情報の第2の生成手順における充填経路の生成手順を示すフローチャートである。本手順は、
図3に示すステップS4の内容が
図14に示す手順となる。
図15A~
図15Cは、パスを設定する手順を模式的に示す説明図である。
【0057】
まず、積層計画情報生成装置200は、前述したステップS1~S3を実施して、第一外縁経路41、第二外縁経路43を求める。充填経路生成部35の仮充填経路生成部61は、前述した
図8に示される手順に基づき、第一外縁経路41の長手方向に沿った平行線群を仮充填経路65として設定する。仮充填経路65は、その形状が任意であり、第一外縁経路41、第二外縁経路43の形状に応じた方向の経路に設定すればよい。つまり、
図15Aに示すように、層形状の少なくとも第一外縁経路41の内側領域をビードにより充填するための仮充填経路65を生成する(S31)。
【0058】
第一外縁経路41と第二外縁経路43と、生成した仮充填経路65とを重ね合わせると
図15Bに示すようになる。ここで、充填経路抽出部63は、第二外縁経路43の外側に配置される仮充填経路65を削除する(S32)。そして、
図15Cに示すように、第二外縁経路43の内側に配置される仮充填経路65(
図15B)を、充填経路45として抽出する。こうして得られた第一外縁経路41、第二外縁経路43、充填経路45を重ね合わせた経路を、積層経路として設定する(S33)。
【0059】
また、前述したステップS2,S3により第一外縁経路41と第二外縁経路43を求める前に充填経路45を求めてもよい。
図16A~
図16Cは、パスを設定する他の手順を模式的に示す説明図である。その場合、充填経路生成部35は、
図16Aに示すように、造形物の層形状に基づき、ビード形成が必要となる領域に充填経路45を生成する。この充填経路45は、前述した
図8に示す手順に基づいて生成できる。
【0060】
図17は、第一外縁経路41を生成する他の方法を示す説明図である。第一外縁経路取得部31は、
図17に示すように、充填経路45の端点Pc(又は屈曲した経路の頂点)を抽出して、その抽出された端点Pcの最近傍同士の点を結ぶように直線又は指定の曲線で接続し、補完することによって第一外縁経路41を生成する。
【0061】
第二外縁経路生成部33は、
図16Bに示すように、第一外縁経路41の内側に、前述した手順で第二外縁経路43を生成する。そして、充填経路生成部35は、
図16Cに示すように、第二外縁経路43の外側に配置される充填経路45を削除する。こうして得られた第一外縁経路41、第二外縁経路43、充填経路45を重ね合わせることで積層経路を設定する。
【0062】
なお、上記した層形状は中空部を有する形状であってもよい。その場合、前述した充填経路45の内側に、前述した手順で内縁経路を設ければよい。その具体的な手順は、前述した手順と同様であるため説明を省略する。
【0063】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせること、及び明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0064】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 溶融した加工材料を指定された経路に沿って対象面に付加して形成されるビードにより層形状を造形することを繰り返し、複数の層形状が積層された造形物を製造する積層造形装置において、前記積層造形装置を制御するための積層計画情報を生成する積層計画情報生成装置であって、
前記造形物の三次元形状を層分割して得られる各層形状の外縁を前記ビードにより形成するための第一外縁経路の情報を取得する第一外縁経路取得部と、
前記第一外縁経路の内側に隣り合って前記第一外縁経路と並行する第二外縁経路を生成する第二外縁経路生成部と、
前記第二外縁経路に囲まれる領域を前記ビードにより充填するための充填経路を生成する充填経路生成部と、
前記第二外縁経路及び前記充填経路における前記ビードの積層条件を、前記第一外縁経路における前記積層条件よりもビード形成の入熱量及び溶着量が共に大きくなるように設定する積層条件設定部と、
設定された前記第一外縁経路、前記第二外縁経路及び前記充填経路における前記ビードの積層条件を含む前記積層計画情報を出力する出力部と、
を備える積層計画情報生成装置。
この積層計画情報生成装置によれば、第一外縁経路と充填経路との間で懸念される境界近傍の欠陥発生を、第一外縁経路と充填経路との間に第二外縁経路のビードを埋め込むことにより抑制できる。
【0065】
(2) 前記層形状の内縁を前記ビードにより形成するための第一内縁経路の情報を取得する第一内縁経路取得部と、
前記第一内縁経路の外側に隣り合って前記第一内縁経路と並行する第二内縁経路を生成する第二内縁経路生成部と、
を備え、
前記充填経路生成部は、生成した前記充填経路のうち前記第二内縁経路の内側の経路を削除する、(1)に記載の積層計画情報生成装置。
この積層計画情報生成装置によれば、層形状に中空部を含む場合に、中空部の輪郭を第一内縁経路で囲み、第一内縁経路の外側に第二内縁経路を介して充填経路を配置する。これにより、第一内縁経路と充填経路との間で懸念される境界近傍の欠陥発生を、第一内縁経路と充填経路との間に第二内縁経路のビードを埋め込むことにより抑制できる。
【0066】
(3) 前記充填経路生成部は、
前記層形状の少なくとも前記第一外縁経路の内側領域を前記ビードにより充填するための仮充填経路を生成する仮充填経路生成部と、
前記第二外縁経路の外側に配置される前記仮充填経路を削除して、前記第二外縁経路の内側に配置される前記仮充填経路を前記充填経路として抽出する充填経路抽出部と、
を備える(1)に記載の積層計画情報生成装置。
この積層計画情報生成装置によれば、少なくとも第一外縁経路の内側領域に生成した仮充填経路のうち、第二外縁経路の外側に配置される部分を削除することで、第二外縁経路の内側に配置される充填経路を設定できる。
【0067】
(4) 造形される前記層形状の内縁を前記ビードにより形成するための第一内縁経路の情報を取得する第一内縁経路取得部と、
前記第一内縁経路の外側に隣り合って前記第一内縁経路に並行する第二内縁経路を生成する第二内縁経路生成部と、
を備え、
前記充填経路生成部は、生成した前記充填経路のうち前記第二内縁経路の内側の経路を削除する、(3)に記載の積層計画情報生成装置。
この積層計画情報生成装置によれば、層形状に中空部を含む場合に、中空部の輪郭を第一内縁経路で囲み、第一内縁経路の外側に第二内縁経路を介して充填経路を配置する。これにより、第一内縁経路と充填経路との間で懸念される境界近傍の欠陥発生を、第一内縁経路と充填経路との間に第二内縁経路のビードを埋め込むことにより抑制できる。
【0068】
(5) 前記積層条件設定部は、前記充填経路の溶着量を、前記充填経路と前記第一外縁経路との間、又は前記充填経路と前記第二外縁経路との間の最短間隔が小さいほど、前記充填経路における前記溶着量を小さくする、(1)に記載の積層計画情報生成装置。
この積層計画情報生成装置によれば、最短間隔に応じて充填経路の溶着量を調整することにより、経路同士がオーバーラップする位置で生じるビードの積層高さの増加が調整され、極端な盛り上がり等による凹凸の形成を防止できる。
【0069】
(6) 前記積層条件設定部は、前記充填経路の溶着量を、前記充填経路と前記第一内縁経路との間、又は前記充填経路と前記第二内縁経路との間の最短間隔が小さいほど、前記充填経路における前記溶着量を小さくする、(2)又は(4)に記載の積層計画情報生成装置。
この積層計画情報生成装置によれば、最短間隔に応じて充填経路の溶着量を調整することにより、経路同士がオーバーラップする位置で生じるビードの積層高さの増加が調整され、極端な盛り上がり等による凹凸の形成を防止できる。
【0070】
(7) 前記充填経路生成部は、前記充填経路のビード形成方向と、前記第一外縁経路又は前記第二外縁経路のビード形成方向とがなす最小の交差角が小さいほど、前記第一外縁経路又は前記第二外縁経路の外縁経路と、該外縁経路に最接近する前記充填経路の端点又は屈曲した頂点との間の間隔を小さくする、(1)に記載の積層計画情報生成装置。
この積層計画情報生成装置によれば、交差角が小さくなるほど生じやすくなるビード同士間の隙間を、充填経路と第一外縁経路又は第二外縁経路との間隔を異ならせることで縮小できる。これにより、未溶着欠陥の発生を抑制できる。
【0071】
(8) 前記充填経路生成部は、前記充填経路のビード形成方向と、前記第一内縁経路又は前記第二内縁経路のビード形成方向とがなす最小の交差角が小さいほど、前記第一内縁経路又は前記第二内縁経路の内縁経路と、該内縁経路に最接近する前記充填経路の端点又は屈曲した頂点との間の間隔を小さくする、(3)又は(4)に記載の積層計画情報生成装置。
この積層計画情報生成装置によれば、交差角が小さくなるほど生じやすくなるビード同士間の隙間を、充填経路と第一内縁経路又は第二内縁経路との間隔を異ならせることで縮小できる。これにより、未溶着欠陥の発生を抑制できる。
【0072】
(9) 前記層形状を造形する前記ビードの形成順を、前記第一外縁経路、前記充填経路、前記第二外縁経路の順に設定する経路順設定部をさらに含む、(1)又は(4)に記載の積層計画情報生成装置。
この積層計画情報生成装置によれば、第一外縁経路と充填経路のビードを形成した後で、第二外縁経路のビードを形成することで、実際に積層造形を行っている際に、周辺形状に合わせて積層条件や積層経路の補正制御を行う自由度を確保できる。
【0073】
(10) 前記層形状を造形する前記ビードの形成順を、前記第一内縁経路、前記充填経路、前記第二内縁経路の順に設定する経路順設定部をさらに含む、(2)又は(4)に記載の積層計画情報生成装置。
この積層計画情報生成装置によれば、第一内縁経路と充填経路のビードを形成した後で、第二内縁経路のビードを形成することで、実際に積層造形を行っている際に、周辺形状に合わせて積層条件や積層経路の補正制御を行う自由度を確保できる。
【0074】
(11) 溶融した加工材料を指定された経路に沿って対象面に付加して形成されるビードにより層形状を造形することを繰り返し、複数の層形状が積層された造形物を製造する積層造形装置において、前記積層造形装置を制御するための積層計画情報を生成する積層計画情報生成方法であって、
前記積層計画情報は、前記造形物の三次元形状を層分割して得られる各層形状の外縁を前記ビードにより形成するための第一外縁経路の情報を取得し、
前記第一外縁経路の内側に隣り合って前記第一外縁経路と並行する第二外縁経路を生成し、
前記第二外縁経路に囲まれる領域を前記ビードにより充填するための充填経路を生成し、
前記第二外縁経路及び前記充填経路における前記ビードの積層条件を、前記第一外縁経路における前記積層条件よりもビード形成の入熱量及び溶着量を共に大きく設定し、
設定された前記第一外縁経路、前記第二外縁経路及び前記充填経路における前記ビードの積層条件を含む前記積層計画情報を出力する、
積層計画情報生成方法。
この積層計画情報生成方法によれば、第一外縁経路と充填経路との間で懸念される境界近傍の欠陥発生を、第一外縁経路と充填経路との間に第二外縁経路のビードを埋め込むことにより抑制できる。
【0075】
(12) 前記層形状の内縁を前記ビードにより形成するための第一内縁経路の情報を取得し、
前記第一内縁経路の外側に隣り合って前記第一内縁経路と並行する第二内縁経路を生成し、
前記充填経路のうち、前記第二内縁経路の内側の経路を削除する、(11)に記載の積層計画情報生成方法。
この積層計画情報生成方法によれば、層形状に中空部を含む場合に、中空部の輪郭を第一内縁経路で囲み、第一内縁経路の外側に第二内縁経路を介して充填経路を配置する。これにより、第一内縁経路と充填経路との間で懸念される境界近傍の欠陥発生を、第一内縁経路と充填経路との間に第二内縁経路のビードを埋め込むことにより抑制できる。
【0076】
(13) 前記層形状の少なくとも前記第一外縁経路の内側領域を前記ビードにより充填するための仮充填経路を生成し、
前記第二外縁経路の外側に配置される前記仮充填経路を削除して、前記第二外縁経路の内側に配置される前記仮充填経路を前記充填経路として抽出する、を備える(11)に記載の積層計画情報生成方法。
この積層計画情報生成方法によれば、少なくとも第一外縁経路の内側領域に生成した仮充填経路のうち、第二外縁経路の外側に配置される部分を削除することで、第二外縁経路の内側に配置される充填経路を設定できる。
【0077】
(14) 造形される前記層形状の内縁を前記ビードにより形成するための第一内縁経路の情報を取得し、
前記第一内縁経路の外側に隣り合って前記第一内縁経路と並行する第二内縁経路を生成し、
前記充填経路のうち、前記第二内縁経路の内側の経路を削除する、(13)に記載の積層計画情報生成方法。
この積層計画情報生成方法によれば、層形状に中空部を含む場合に、中空部の輪郭を第一内縁経路で囲み、第一内縁経路の外側に第二内縁経路を介して充填経路を配置する。これにより、第一内縁経路と充填経路との間で懸念される境界近傍の欠陥発生を、第一内縁経路と充填経路との間に第二内縁経路のビードを埋め込むことにより抑制できる。
【0078】
(15) 前記充填経路の溶着量を、前記充填経路と前記第一外縁経路との間、又は前記充填経路と前記第二外縁経路との間の最短間隔が小さいほど、前記充填経路における前記溶着量を小さくする、(11)に記載の積層計画情報生成方法。
この積層計画情報生成方法によれば、最短間隔に応じて充填経路の溶着量を調整することにより、経路同士がオーバーラップする位置で生じるビードの積層高さの増加が調整され、極端な盛り上がり等による凹凸の形成を防止できる。
【0079】
(16) 前記充填経路の溶着量を、前記充填経路と前記第一内縁経路との間、又は前記充填経路と前記第二内縁経路との間の最短間隔が小さいほど、前記充填経路における前記溶着量を小さくする、
請求項(12)又は(14)に記載の積層計画情報生成方法。
この積層計画情報生成方法によれば、最短間隔に応じて充填経路の溶着量を調整することにより、経路同士がオーバーラップする位置で生じるビードの積層高さの増加が調整され、極端な盛り上がり等による凹凸の形成を防止できる。
【0080】
(17) 前記充填経路のビード形成方向と、前記第一外縁経路又は前記第二外縁経路のビード形成方向とがなす最小の交差角が小さいほど、前記第一外縁経路又は前記第二外縁経路の外縁経路と、該外縁経路に最接近する前記充填経路の端点又は屈曲した頂点との間の間隔を小さくする、(11)に記載の積層計画情報生成方法。
この積層計画情報生成方法によれば、交差角が小さくなるほど生じやすくなるビード同士間の隙間を、充填経路と第一外縁経路又は第二外縁経路との間隔を異ならせることで縮小できる。これにより、未溶着欠陥の発生を抑制できる。
【0081】
(18) 前記充填経路のビード形成方向と、前記第一内縁経路又は前記第二内縁経路のビード形成方向とがなす最小の交差角が小さいほど、前記第一内縁経路又は前記第二内縁経路の内縁経路と、該内縁経路に最接近する前記充填経路の端点又は屈曲した頂点との間の間隔を小さくする、(12)又は(14)に記載の積層計画情報生成方法。
この積層計画情報生成方法によれば、交差角が小さくなるほど生じやすくなるビード同士間の隙間を、充填経路と第一内縁経路又は第二内縁経路との間隔を異ならせることで縮小できる。これにより、未溶着欠陥の発生を抑制できる。
【0082】
(19) 前記層形状を造形する前記ビードの形成順を、前記第一外縁経路、前記充填経路、前記第二外縁経路の順に設定する、(11)に記載の積層計画情報生成方法。
この積層計画情報生成方法によれば、第一外縁経路と充填経路のビードを形成した後で、第二外縁経路のビードを形成することで、実際に積層造形を行っている際に、周辺形状に合わせて積層条件や積層経路の補正制御を行う自由度を確保できる。
【0083】
(20) 前記層形状を造形する前記ビードの形成順を、前記第一内縁経路、前記充填経路、前記第二内縁経路の順に設定する経路順設定部をさらに含む、(12)又は(14)に記載の積層計画情報生成方法。
この積層計画情報生成方法によれば、第一内縁経路と充填経路のビードを形成した後で、第二内縁経路のビードを形成することで、実際に積層造形を行っている際に、周辺形状に合わせて積層条件や積層経路の補正制御を行う自由度を確保できる。
【0084】
(21) 溶融した加工材料を指定された経路に沿って対象面に付加して形成されるビードにより層形状を造形することを繰り返し、複数の層形状が積層された造形物を製造する積層造形装置において、前記積層造形装置を制御するための積層計画情報を生成するプログラムであって、
コンピュータに、
前記積層計画情報は、前記造形物の三次元形状を層分割して得られる各層形状の外縁を、前記ビードにより形成するための第一外縁経路の情報を取得する手順と、
前記第一外縁経路の内側に隣り合って前記第一外縁経路と並行する第二外縁経路を生成する手順と、
前記第二外縁経路に囲まれる領域を前記ビードにより充填するための充填経路を生成する手順と、
前記第二外縁経路及び前記充填経路における前記ビードの積層条件を、前記第一外縁経路における前記積層条件よりもビード形成の入熱量及び溶着量を共に大きく設定する手順と、
設定された前記第一外縁経路、前記第二外縁経路及び前記充填経路における前記ビードの積層条件を含む前記積層計画情報を出力する手順と、
を実行させるためのプログラム。
このプログラムによれば、第一外縁経路と充填経路との間で懸念される境界近傍の欠陥発生を、第一外縁経路と充填経路との間に第二外縁経路のビードを埋め込むことにより抑制できる。
【0085】
(22) (21)に記載のプログラムであって、
コンピュータに、
前記層形状の少なくとも前記第一外縁経路の内側領域を前記ビードにより充填するための仮充填経路を生成する手順と、
前記第二外縁経路の外側に配置される前記仮充填経路を削除して、前記第二外縁経路の内側に配置される前記仮充填経路を前記充填経路として抽出する手順と、
を更に実行させるためのプログラム。
このプログラムによれば、少なくとも第一外縁経路の内側領域に生成した仮充填経路のうち、第二外縁経路の外側に配置される部分を削除することで、第二外縁経路の内側に配置される充填経路を設定できる。
【符号の説明】
【0086】
11 造形部
13 造形制御部
15 マニピュレータ
17 溶加材送給部
17a リール
17b 繰り出し機構
19 マニピュレータ制御部
21 熱源制御部
23 トーチ
25 ベース
31 第一外縁経路取得部
33 第二外縁経路取得部
35 充填経路生成部
37 積層条件設定部
39 出力部
41 第一外縁経路
43 第二外縁経路
45 充填経路
49 平行線群
51 第一内縁経路取得部
53 第二内縁経路取得部
55 第一内縁経路
57 第二内縁経路
61 仮充填経路生成部
63 充填経路抽出部
100 積層造形装置
200 積層計画情報生成装置