(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161747
(43)【公開日】2024-11-20
(54)【発明の名称】ホイールナット緩み検出システム及び該検出システムを備えるハブユニット軸受
(51)【国際特許分類】
G01L 5/24 20060101AFI20241113BHJP
【FI】
G01L5/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076732
(22)【出願日】2023-05-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】若林 達男
【テーマコード(参考)】
2F051
【Fターム(参考)】
2F051AA01
(57)【要約】
【課題】ホイールナットの緩みを精度よく、安価に検出することができるホイールナット緩み検出システム及び該検出システムを備えるハブユニット軸受、並びに車軸管式懸架装置を提供する。
【解決手段】ホイールナット緩み検出システム10の検出装置40は、回転フランジ32とディスクホイール15とが密着する当接面32aの密着状態に応じた物理量を検出するセンサ55、61を備え、該センサ55、61が検出する物理量の変化に基づいて、ホイールナット18の緩みの有無を検出する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転しない静止側部材と、
複数のボルト部材及び複数のホイールナットを用いて、外周部にホイール及び制動用回転部材が取り付けられる回転フランジと一体に回転する回転側部材と、
前記静止側部材と前記回転側部材との間に転動自在に設けられた複数の転動体と、
前記ホイールナットの緩みを検出する検出装置と、
を備えるホイールナット緩み検出システムであって、
前記検出装置は、
前記回転フランジと前記ホイールとの密着する当接面の密着状態に応じた物理量を検出するセンサを備え、
前記センサが検出する前記物理量の変化に基づいて、前記ホイールナットの緩みの有無を検出する、
ホイールナット緩み検出システム。
【請求項2】
前記検出装置は、
前記ホイールとの前記回転フランジの前記当接面に形成された環状溝と、
前記環状溝に一定圧力の流体を供給する圧力流体供給装置と、
前記環状溝内の流体圧力を検出する、前記センサである圧力センサと、
を備え、
前記圧力センサにより検出された前記流体圧力の低下に基づいて、前記ホイールナットの緩みの有無を検出する、
請求項1に記載のホイールナット緩み検出システム。
【請求項3】
前記回転側部材は、前記回転フランジと、内周面に外輪軌道を有する外輪とを有するハブであり、
前記静止側部材は、外周面に前記外輪軌道と対向する内輪軌道を有し、回転しないアクスルケースまたはスタブアクスルに外嵌固定される内輪であり、
前記ハブには、前記環状溝から前記外輪軌道から離れた内周面まで延びる回転側流路が形成され、
前記静止側部材には、前記内輪の軸方向端面に形成された切欠き、及び前記アクスルケースまたは前記スタブアクスルに形成され、前記内輪の内周面との間に形成される軸方向溝を含む、静止側流路が形成され、
前記ハブと前記内輪との間には、前記回転側流路と前記静止側流路とを密閉した状態で連結する密閉空間を構成する密閉手段が設けられ、
前記圧力流体供給装置及び前記圧力センサは、前記アクスルケースまたは前記スタブアクスルに形成された静止側流路に接続される、
請求項2に記載のホイールナット緩み検出システム。
【請求項4】
前記検出装置は、
前記回転フランジと前記ホイールとの前記当接面の密着部を挟むように配置される発光体、及び該発光体からの光を受光する、前記センサである受光体を備え、
前記受光体が受光する前記光の検出に基づいて、前記ホイールナットの緩みの有無を検出する、
請求項1に記載のホイールナット緩み検出システム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のホイールナット緩み検出システムを備えるハブユニット軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールナット緩み検出システム及び該検出システムを備えるハブユニット軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
大型車の車輪脱落事故発生の防止のため、国土交通省と日本自動車工業会では、特に事故発生率の高い左後輪のホイールナットの緩みを検出可能なインジケータの取付けを推奨している。
【0003】
特許文献1に記載のホイールナットキャップは、
図7に示すように、全体が樹脂製でドーム状のキャプ本体110と、各ホイールナット100に取り付けられる略三角形状のインジケータ120とを有する。そして、隣接するホイールナット100に取り付けたインジケータ120の向きが対向するように、或いは全てのインジケータ120の向きが同一方向を向くように、インジケータ120をホイールナット100に取り付け、インジケータ120の向きが変化したことを視認することでホイールナット100の緩みを検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のホイールナットキャップは安価であるものの、以下の3つの課題などがあり、さらなる改善が望まれていた。
1. インジケータ120の取付け可能位相に限りがあるため、隣接するホイールナット100同士のインジケータ120の向きを完全に対向させることが難しく、その分、ナット緩みの検出精度が低下する。
2. 取付け箇所が多く、取り付けに手間がかかる。また、手間を考えると、すべての車輪に取付けることが難しい。
3. 気流で外れる虞があるので、前輪には適用しづらい。
【0006】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ホイールナットの緩みを精度よく、安価に検出することができるホイールナット緩み検出システム及び該検出システムを備えるハブユニット軸受を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、ホイールナット緩み検出システムに係る下記[1]及びハブユニット軸受に係る下記[2]の構成により達成される。
[1] 回転しない静止側部材と、
複数のボルト部材及び複数のホイールナットを用いて、外周部にホイール及び制動用回転部材が取り付けられる回転フランジと一体に回転する回転側部材と、
前記静止側部材と前記回転側部材との間に転動自在に設けられた複数の転動体と、
前記ホイールナットの緩みを検出する検出装置と、
を備えるホイールナット緩み検出システムであって、
前記検出装置は、
前記回転フランジと前記ホイールとの密着する当接面の密着状態に応じた物理量を検出し、
前記センサが検出する前記物理量の変化に基づいて、前記ホイールナットの緩みの有無を検出する、
ホイールナット緩み検出システム。
[2] [1]に記載のホイールナット緩み検出システムを備えるハブユニット軸受。
【発明の効果】
【0008】
本発明のホイールナット緩み検出システム及び該検出システムを備えるハブユニット軸受によれば、ホイールナットの緩みを精度よく、安価に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係るタイヤ支持構造の断面図である。
【
図2】
図2は、
図1の要部を180°反転して示す検出システムの拡大図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の変形例に係る検出システムの断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2実施形態に係る検出システムの断面図である。
【
図5】
図5(a)は、
図4のA矢視図であり、
図5(b)は、
図5(a)の一点鎖線VIで囲む部分の拡大図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態の変形例に係る検出システムの断面図である。
【
図7】
図7は、従来のホイールナットキャップがホイールナットに取り付けられたホイールの正面図ある。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の各実施形態に係るホイールナット緩み検出システム及び該検出システムを備えるハブユニット軸受について図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1及び
図2に示すように、本実施形態のホイールナット緩み検出システム10は、全浮動式後輪アクスルに適用した例である。このホイールナット緩み検出システム10では、車両のフレームにバネを介して(以上、図示せず)に支持されたアクスルケース12の内部に、駆動源からの駆動トルクをハブ30に伝達するアクスルシャフト11が配置されている。アクスルシャフト11の端部には,径方向に延びるフランジ部11aが一体的に形成されている。フランジ部11aの外周部に対して、ハブ30がボルト13によって取り付けられている。
【0012】
なお、本実施形態におけるハブ30は、ハブユニット軸受を構成する外輪24と、外輪24の外周部の軸方向中間部に径方向外側に延びる回転フランジ32と、が一体に形成されている。したがって、回転フランジ32と外輪24とは一体に回転する。
【0013】
回転フランジ32には、ダブルタイヤ14のディスクホイール15が、ブレーキドラム(制動用回転部材)16と共に複数のボルト部材17及び複数のホイールナット18(
図1は、1本のみ示す)によって取付けられている。
【0014】
図2を参照して、ディスクホイール15が当接する回転フランジ32の当接面32aには、軸方向外側に開口する環状溝36が形成されている。該環状溝36は、ボルト部材17及びホイールナット18によって当接面32aに密着状態で当接するディスクホイール15により閉鎖されて環状流体室37を構成する。
なお、図に示す例では、環状溝36がボルト部材17より外径側に設けられているが、ボルト部材17より内径側に設けることもできる。
【0015】
ハブ30は、アクスルケース12に対して、互いにアクスルシャフト11の軸方向に隔置して配置された複列の軸受、即ち、インボード側軸受部21及びアウトボード側軸受部22によって回転自在に支持されている。これにより、ダブルタイヤ14がアクスルケース12に対して回転自在に支持される。即ち、本実施形態においては、ハブ30が回転側部材の一部を構成する。
【0016】
インボード側軸受部21及びアウトボード側軸受部22は、円すいころ軸受であり、各軸受部21、22の外輪軌道24a、24bがハブ30の外輪24の内周面に直接形成されている。また、インボード側軸受部21の内輪25とアウトボード側軸受部22の内輪26とは、アクスルケース12の外周面12aにガタのない隙間嵌めで嵌合している。内輪25及び26の外周面には、それぞれ内輪軌道25a及び26aが形成されている。外輪軌道24aと内輪軌道25a、及び外輪軌道24bと内輪軌道26aとの間には、保持器27に回転自在に保持された転動体である複数の円錐ころ23が、転動自在に装填されている。
【0017】
インボード側軸受部21の内輪25は、大鍔側においてアクスルケース12の段部12bによって車両の内側に向かう変位が規制されており、アウトボード側軸受部22の内輪26は、その大鍔側においてハブナット19によって車両の外側に向かう変位が規制されてアクスルケース12に固定されている。即ち、本実施形態においては、内輪25、26が静止側部材の一部を構成する。
【0018】
そして、ハブナット19をアクスルケース12の端部外面に形成された雄ねじ部12cにねじ込んで締め付けることにより、インボード側軸受部21及びアウトボード側軸受部22に対して予圧を与えて、軸受の剛性を高めると共に、円錐ころ23と外輪軌道24a、24b及び内輪軌道25a、26aとの間に生じる隙間を吸収させる。なお、シール部材20a、20bは,軸受内部の潤滑剤が外部へ流出することを防止し、且つ、シール部材20aは外部から塵埃等の異物が、シール部材20bはアクスルケース12内のデフオイルが軸受内部に進入することを防止している。
【0019】
検出装置40は、前述した環状流体室37と、流体流路41と、圧力流体供給装置50と、圧力センサ(センサ)55とを備える。
【0020】
流体流路41は、回転側流路42と、静止側流路43と、回転側流路42と静止側流路43とが接続するハブユニット軸受の軸受空間Cに形成された密閉空間C1と、を備える。
【0021】
回転側流路42は、回転フランジ32の内部を径方向に延び、環状流体室37と外輪24の外輪軌道24a、24bから離れた内周面とを連通する。
【0022】
静止側流路43は、内輪25、26の互いに突き合わされる軸方向端面に径方向に沿って延びる切欠き25b、26bと、静止側部材であるアクスルケース12に形成されており、アクスルケース12の外周面12aを軸方向に延びる軸方向溝43aと該外周面12aに外嵌する内輪25、26の内周面とで形成される軸方向流路43bと、アクスルケース12の内部に設けられて、供給口43cと軸方向流路43bとを接続するL字形流路43dと、を備える。供給口43cは、アクスルケース12の外周面に形成された接続部である。
【0023】
密封空間C1は、ハブ30と内輪25、26との間の軸受空間Cに形成され、内輪25、26の突き合わせ面側外周面と外輪24の内周面との間に設けられた密閉手段であるシール部材20c、20dにより密閉された空間である。また、内輪25、26のアクスルケース12との嵌合面、及びハブナット19に隣接するワッシャとの当接面には、軸方向流路43bからの流体漏れを防止するためのOリング28が装着されている。密封空間C1には、回転側流路42及び静止側流路43が連通している。なお、アウトボード側内輪26のアウトボード側端面にもOリング溝が設けられているが、これはインボード側内輪25との共通化を図った為であり、アウトボード側内輪26のアウトボード側端面のOリング溝は省略することもできる。
【0024】
圧力流体供給装置50は、例えば、一定圧力の圧縮空気を環状流体室37に供給するための装置であり、コンプレッサ51と、コンプレッサ51の吐出側に設けられた絞り弁52とを備え、アクスルケース12の供給口43cに接続されている。圧力流体供給装置50は、コンプレッサ51から供給される圧縮空気の圧力と、絞り弁52の開度を調整することで、一定圧力の圧縮空気を環状流体室37に供給する。
【0025】
圧力センサ55は、環状流体室37内の流体の圧力を測定するためのものであり、一般的な圧力計が使用可能である。圧力センサ55は、環状流体室37内の流体の圧力を精度よく測定するために、環状流体室37の近くに設置することが望ましいが、環状流体室37は、回転側部材に設けられるので設置し難い。図に示す実施形態では、静止側となる、絞り弁52と供給口43cとの間に設けられている。
【0026】
このような構成の検出装置40では、ホイールナット18に緩みが生じると、密着していた回転フランジ32の当接面32aとディスクホイール15との間に隙間が発生し、該隙間から環状流体室37内の圧縮空気が外部に漏れ出して、環状流体室37の圧力が急速に低下する。圧力センサ55は、この漏れによる環状流体室37内の圧力低下を捉え、圧力低下が一定の閾値以上になったとき、ホイールナット18の緩みと判定する。
【0027】
なお、ホイールナット18に緩みが生じていない時は、環状流体室37からの圧縮空気の漏れがないため、エネルギの消費はなく、省エネなシステムとなる。また、圧力流体供給装置50や圧力センサ55などは、アクスルケース12等の静止側部材に設置が可能なため、圧力流体供給装置50や圧力センサ55と有線で接続することができ、高価な無線や流体カップリングが不要となり、検出装置40のコストを低減することができる。
【0028】
また、この検出装置40では、前述したように、圧縮空気を利用しているので、エアサス車や空気ブレーキを用いるトラクタのような、既に圧縮空気源を搭載している大型車においては、圧力センサ55の追加だけでホイールナット緩み検出システム10を構築することができ、製作コストを低減できる。なお、環状流体室37内の圧縮空気が漏れ出しても、絞り弁52が漏れ量を減少させるので、エアサスや空気ブレーキに対する影響を抑制することができる。
【0029】
(第1実施形態の変形例)
本変形例のホイールナット緩み検出システム10は、シングルタイヤ(図示せず)を有する前輪リジッド構造に適用した例である。
【0030】
本変形例のホイールナット緩み検出システム10は、
図3に示すように、車両のフレームにバネを介して取付けられたアクスルビームにスラスト軸受とキングピン(以上、図示せず)を用いて支持されたスタブアクスル12dの外径側に、インボード側軸受部21及びアウトボード側軸受部22を介してハブ30が回転自在に支持されている。
【0031】
インボード側軸受部21の内輪25及びアウトボード側軸受部22の内輪26は、それぞれの外周面に内輪軌道25a及び26aを備え、スタブアクスル12dの外周面12eにガタのない隙間嵌めで嵌合し、スタブアクスル12dの段部12f及びハブナット19によって軸方向位置が規制されている。
【0032】
ハブ30は、内周面に外輪軌道24a、24bが一体に形成される外輪24と、外周面のアウトボード寄り端部に回転フランジ32とを有する。回転フランジ32には、シングルタイヤのディスクホイール15が、ブレーキドラム16と共に複数のボルト部材17及び複数のホイールナット18によって取付けられている。
【0033】
ハブ30の外輪24のアウトボード側内径端部には、ハブ30のアウトボード側開口を塞ぐように、ハブキャップ35が内嵌固定されている。また、インボード側軸受部21のインボード側には、外輪24とインボード側軸受部21の内輪25の間にシール部材20aが取り付けられて、軸受内部の潤滑剤が外部へ流出することを防止し、且つ、外部から塵埃等の異物がインボード側軸受部21及びアウトボード側軸受部22の内部に進入することを防止している。
【0034】
そして、検出装置40は、第1実施形態のホイールナット緩み検出システム10と同様に、環状流体室37と、流体流路41と、圧力流体供給装置50と、圧力センサ55とを備える。
【0035】
なお、本変形例における流体流路41の密封空間C1は、ハブ30と内輪26との間に形成され、シール部材20b及びハブキャップ35により画成された密閉空間である。
【0036】
回転側流路42は、回転フランジ32から外輪24までハブ30の内部を径方向に延び、環状流体室37と密閉空間C1とを連通する。静止側流路43は、内輪26の背面側端部に形成された切欠き26cを有すると共に、スタブアクスル12dの外周面に、内輪25、26の軸方向長さ全体に亘って形成された軸方向溝43aを備え、軸方向溝43aが内輪25、26の内周面と共に軸方向流路43bを形成し、L字形流路43dに接続される。なお、圧力流体供給装置50及び圧力センサ55は、第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0037】
このような構成の検出装置40では、ホイールナット18が緩むと、第1実施形態の検出装置40で説明したように(
図2参照)、密着していた回転フランジ32の当接面32aとディスクホイール15との間に隙間が発生し、該隙間から環状流体室37内の圧縮空気が外部に漏れ出して、環状流体室37の圧力が急速に低下する。圧力センサ55は、この漏れによる環状流体室37内の圧力低下を捉え、圧力低下が一定の閾値以上になったとき、ホイールナットの緩みと判定する。
【0038】
(第2実施形態)
第2実施形態の検出装置40は、光によりホイールナット18の緩みを検出するホイールナット緩み検出システム10であり、
図4及び
図5は、ホイールナット緩み検出システム10を全浮動式後輪アクスルに適用した例である。
【0039】
回転フランジ32の当接面32aは、各ボルト部材17の近傍に対向して形成された一対の有底穴を有し、発光体60及び該発光体60からの光を受光する受光体(センサ)61が、埋設配置されている。発光体60及び受光体61は、いずれも安価な素子、例えば、LED素子や一般的な光センサが使用可能である。
【0040】
図5(a)、(b)に示すように、発光体60及び受光体61は、回転フランジ32にディスクホイール15が取り付けられたとき、当接面32aとディスクホイール15とが隙間なく密着して、光の通過を阻止する密着部32bを挟んで密着部32bの両側に配置されている。詳細には、発光体60と受光体61とを結ぶ仮想直線Lは、受光体61が発光体60からの光を受光できるように、ボルト部材17を避け、かつ密着部32bが発光体60、受光体61間に必ず存在するように設定されている。
【0041】
なお、本実施形態では、発光体60がボルト部材17より外径側に、受光体61がボルト部材17より内径側に配置されているが、発光体60と受光体61との間に光を遮断する密着部32bがあればよく、ボルト部材17との位置関係は限定されない。
【0042】
このような構成の検出装置40では、ホイールナット18が緩むと、発光体60からの光を遮断していた当接面32aとディスクホイール15との密着部32bに隙間が発生し、発光体60からの光が、該隙間を介して受光体61に到達する。
【0043】
検出装置40は、受光体61が発光体60からの光を検出し、検出レベルが一定の閾値以上になったとき、ホイールナット18の緩みと判定する。
【0044】
このホイールナット緩み検出システム10では、発光体60と受光体61を回転側部材(ハブ30)に配置する必要がある、しかし、発光体60は、常時点灯している必要はなく、必要に応じた間隔で一瞬点灯すればよい。また、受光体61も、光を検出した時だけ無線などによる警報を発すればよいので、電力消費量は少ない。また、回転部材側にバッテリを設けた構成とすれば、スリップリング等を用いずとも、長時間可動可能なホイールナット緩み検出システム10を低コストで構成できる。さらに、外輪20及び内輪25、26の相対回転を利用した発電機構を追加すればなおよい。
【0045】
(第2実施形態の変形例)
本変形例のホイールナット緩み検出システム10は、シングルタイヤ(図示せず)を有する前輪リジッド構造に適用した例である。
【0046】
図6に示すように、本変形例のホイールナット緩み検出システム10も、第2実施形態と同様に、発光体60及び受光体61が、回転フランジ32の当接面32aとディスクホイール15とが隙間なく密着する密着部32bを挟んで回転フランジ32の当接面32aに配置されている。
【0047】
そして、ホイールナット18が緩むと密着部32bに隙間が発生し、発光体60からの光が該隙間を介して受光体61で検出され、検出レベルが一定の閾値以上になったとき、ホイールナットの緩みと判定する。
【0048】
尚、本発明は、前述した各実施形態及び各変形例に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
例えば、ハブ30と別体に形成され、内周面に外輪軌道24a、24bを有する一体型外輪をハブ30の円筒部の内周面に嵌合固定する構造にも本発明は適用可能である。
【0049】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 回転しない静止側部材と、
複数のボルト部材及び複数のホイールナットを用いて、外周部にホイール及び制動用回転部材が取り付けられる回転フランジと一体に回転する回転側部材と、
前記静止側部材と前記回転側部材との間に転動自在に設けられた複数の転動体と、
前記ホイールナットの緩みを検出する検出装置と、
を備えるホイールナット緩み検出システムであって、
前記検出装置は、
前記回転フランジと前記ホイールとの密着する当接面の密着状態に応じた物理量の変化を検出するセンサを備え、
前記センサが検出する前記物理量の変化に基づいて、前記ホイールナットの緩みの有無を検出する、
ホイールナット緩み検出システム。
この構成によれば、ホイールナットの緩みを精度よく、安価に検出することができる。
【0050】
(2) 前記検出装置は、
前記ホイールとの前記回転フランジの前記当接面に形成された環状溝と、
前記環状溝に一定圧力の流体を供給する圧力流体供給装置と、
前記環状溝内の流体圧力を検出する、前記センサである圧力センサと、
を備え、
前記圧力センサにより検出された前記流体圧力の低下に基づいて、前記ホイールナットの緩みの有無を検出する、
(1)に記載のホイールナット緩み検出システム。
この構成によれば、圧縮流体を用いてホイールナットの緩みを精度よく、安価に検出することができる。
【0051】
(3) 前記回転側部材は、前記回転フランジと、内周面に外輪軌道を有する外輪とを有するハブであり、
前記静止側部材は、外周面に前記外輪軌道と対向する内輪軌道を有し、回転しないアクスルケースまたはスタブアクスルに外嵌固定される内輪であり、
前記ハブには、前記環状溝から前記外輪軌道から離れた内周面まで延びる回転側流路が形成され、
前記静止側部材には、前記内輪の軸方向端面に形成された切欠き、及び前記アクスルケースまたは前記スタブアクスルに形成され、前記内輪の内周面との間に形成される軸方向溝を含む、静止側流路が形成され、
前記ハブと前記内輪との間には、前記回転側流路と前記静止側流路とを密閉した状態で連結する密閉空間を構成する密閉手段が設けられ、
前記圧力流体供給装置及び前記圧力センサは、前記アクスルケースまたは前記スタブアクスルに形成された静止側流路に接続される、
(2)に記載のホイールナット緩み検出システム。
この構成によれば、静止側流路、圧力流体供給装置及び圧力センサを静止側部材に配置することで、ホイールナット緩み検出システムが簡素化できる。また、エアサス車や空気ブレーキを用いるトラクタの様に、既に圧縮空気源を搭載している大型車においては、圧力センサの追加だけでホイールナット緩み検出システムを構築できる。
【0052】
(4) 前記検出装置は、
前記回転フランジと前記ホイールとの前記当接面の密着部を挟むように配置される発光体、及び該発光体からの光を受光する、前記センサである受光体を備え、
前記受光体が受光する前記光の検出に基づいて、前記ホイールナットの緩みの有無を検出する、
(1)に記載のホイールナット緩み検出システム。
この構成によれば、回転フランジとホイールとの当接面の密着部から漏れる光を用いてホイールナットの緩みを精度よく、安価に検出することができる。
【0053】
(5) (1)~(4)のいずれか1つに記載のホイールナット緩み検出システムを備えるハブユニット軸受。
この構成によれば、精度よく、安価なホイールナット緩み検出システムを備えるハブユニット軸受を提供できる。
【符号の説明】
【0054】
10 ホイールナット緩み検出システム
12 アクスルケース(静止側部材)
12d スタブアクスル(静止側部材)
15 ディスクホイール
16 ブレーキドラム(制動用回転部材)
17 ボルト部材
18 ホイールナット
20c、20d シール部材(密閉手段)
23 円錐ころ(転動体)
24 外輪(回転側部材)
24a、24b 外輪軌道
25、26 内輪
25a、26a 内輪軌道
30 ハブ(回転側部材)
32 回転フランジ
32a 当接面
32b 密着部
36 環状溝
40 検出装置
41 流体流路
42 回転側流路
43 静止側流路
43a 軸方向溝
50 圧力流体供給装置
55 圧力センサ(センサ)
60 発光体
61 受光体(センサ)
C 軸受空間