(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161770
(43)【公開日】2024-11-20
(54)【発明の名称】移動体搭載装置
(51)【国際特許分類】
F16M 11/10 20060101AFI20241113BHJP
B60R 11/02 20060101ALN20241113BHJP
【FI】
F16M11/10 M
B60R11/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076785
(22)【出願日】2023-05-08
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】山田 桐子
【テーマコード(参考)】
3D020
【Fターム(参考)】
3D020BA20
3D020BC02
3D020BC04
3D020BD02
3D020BD09
(57)【要約】
【課題】小型でありながら、移動体の異なる部位に本体部の向きを変更可能に取り付けることができ使い勝手のよい移動体搭載装置を提供する。
【解決手段】移動体搭載装置(91)は、本体部(1)と、本体部(1)に対し第1方向の第1側に配置され、移動体(M)の被取り付け部材(M1)に取り付けられる第1取り付け部(2)と、本体部(1)に対し第1方向の第1側とは反対側の第2側に配置され、移動体(M)の被取り付け部材(M1)に取り付けられる第2取り付け部(3)と、第1取り付け部(2)と本体部(1)と第2取り付け部(3)とを固定する固定具(5)と、を備える。第1取り付け部(2)及び第2取り付け部(3)は、本体部(1)に対し、第1方向に延びる軸線(CL1)まわりに独立して相対回動可能とされ、固定具(5)によってそれぞれ本体部(1)に対する所望の回動位置で固定できる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、
前記本体部に対し第1方向の第1側に配置され、移動体の被取り付け部材に取り付けられる第1取り付け部と、
前記本体部に対し前記第1方向の前記第1側とは反対側の第2側に配置され、前記移動体の被取り付け部材に取り付けられる第2取り付け部と、
前記本体部と前記第1取り付け部と前記第2取り付け部とを固定する固定具と、を備え、
前記第1取り付け部及び前記第2取り付け部は、前記本体部に対し、前記第1方向に延びる軸線まわりにそれぞれ独立して回動可能であり、前記固定具によって、それぞれ前記本体部に対する所望の回動位置で固定できる移動体搭載装置。
【請求項2】
前記固定具は、前記本体部と前記第1取り付け部と前記第2取り付け部とを前記第1方向に押し付けて固定する請求項1記載の移動体搭載装置。
【請求項3】
前記本体部は前記軸線を中心とする貫通孔を有し、
前記第1取り付け部は、前記貫通孔に挿通可能な軸柱と、前記軸柱の先端に設けられ前記軸柱を前記貫通孔に挿通した状態で前記貫通孔から突出する雄ねじ柱とを有し、
前記第2取り付け部は前記雄ねじ柱を挿通可能な貫通孔を有し、
前記固定具は、前記雄ねじ柱の雄ねじに螺合する雌ねじ部を有し、前記固定具を螺進させることで前記第1取り付け部と前記本体部と前記第2取り付け部とが前記第1方向に互いに押し付けられて固定される請求項2記載の移動体搭載装置。
【請求項4】
前記固定具は、
前記本体部と前記第1取り付け部とを固定する第1固定具と、前記本体部と前記第2取り付け部とを固定する第2固定具を含む請求項1又は請求項2記載の移動体搭載装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体搭載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、カメラを有する本体部,本体部から上方に突出した支持部,及び支持部の上方先端に形成された板状のベースを備えたドライブレコーダが記載されている。このドライブレコーダは、ベースを両面テープによって、移動体の一種である車両のフロントガラスの内面に貼り付けることでフロントガラスに取り付けられる。
【0003】
特許文献1に記載されたドライブレコーダの支持部は、本体部側とベース側とに分割された腕部と支柱部とが、水平軸まわりに上下回動可能に軸係合しており、ナットによって任意の回動位置で締め付け固定できるようになっている。
これにより、使用者は、フロントガラスに対するカメラの光軸方向を上下方向に回動調整できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ドライブレコーダは一般に自動車に搭載される。ここで、移動体を自動車,鉄道車両,航空機,船舶,飛行船,ドローンなどを含むものとすると、ドライブレコーダは移動体搭載装置として分類できる。
移動体搭載装置がドライブレコーダのようなカメラ装置の場合、移動体の異なる面に本体部の向き、すなわち光軸の向きを変更可能にして取り付けできて使い勝手のよいことが要望されている。しかしながら、特許文献1に記載されたような従来の技術を用いてこの要望に応えるためには、ベースを、本体部に対し前後方向の広範囲に回動可能にする必要があり、カメラ装置全体が大型化する。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、小型でありながら、移動体の異なる部位に本体部の向きを変更可能に取り付けることができ使い勝手のよい移動体搭載装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は次の構成を有する。すなわち、
本体部と、
前記本体部に対し第1方向の第1側に配置され、移動体の被取り付け部材に取り付けられる第1取り付け部と、
前記本体部に対し前記第1方向の前記第1側とは反対側の第2側に配置され、前記移動体の被取り付け部材に取り付けられる第2取り付け部と、
前記本体部と前記第1取り付け部と前記第2取り付け部とを固定する固定具と、を備え、
前記第1取り付け部及び前記第2取り付け部は、前記本体部に対し、前記第1方向に延びる軸線まわりにそれぞれ独立して回動可能であり、前記固定具によって、それぞれ前記本体部に対する所望の回動位置で固定できる移動体搭載装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、小型でありながら移動体の異なる部位に本体部の向きを変更可能に取り付けることができ使い勝手がよい、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一態様における移動体搭載装置91を示す前面図である。
【
図4】
図4は、移動体搭載装置91を左前斜め上方から見た斜視図である。
【
図5】
図5は、移動体搭載装置91の組み立て図である。
【
図6A】
図6Aは、移動体搭載装置91の第1取り付け態様を示す図である。
【
図6B】
図6Bは、移動体搭載装置91の第2取り付け態様を示す図である。
【
図6C】
図6Cは、移動体搭載装置91の第3取り付け態様を示す図である。
【
図7】
図7は、移動体搭載装置91の変形例1である移動体搭載装置91Aを示す図であり、
図7(a)は前面図、
図7(b)は
図7(a)におけるSb-Sb位置での断面図である。
【
図8】
図8は、移動体搭載装置91の変形例2である移動体搭載装置91Bを示す部分断面の前面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一態様を、移動体搭載装置91により説明する。
【0011】
移動体搭載装置91は、移動体の一種である自動車に搭載されるカメラ装置である。まず、移動体搭載装置91の構成を、
図1~
図5を参照して説明する。
図1は、本発明の一態様における移動体搭載装置91を示す前面図である。
図2Aは、移動体搭載装置91の左側面図であり、
図2Bは、移動体搭載装置91の右側面図である。
図3Aは、
図2AにおけるS3A-S3A位置での断面図であり、
図3Bは、
図2AにおけるS3B-S3B位置での断面図である。
図4は、移動体搭載装置91を左前斜め上方から見た斜視図である。
図5は、移動体搭載装置91の組み立て図である。説明の便宜上、上下左右前後の各方向を、
図4に矢印で示された方向に規定し、各図に矢印で記載している。
【0012】
図5に示されるように、車載カメラ91は、本体部1,第1取り付け部2,第2取り付け部3,及びナット部材である固定具5を備えている。
図1及び
図4に示されるように、本体部1は、左右方向(第1方向)に延びる軸線CL1を中心とする半径Raの外周面の円筒状の筐体11を有する。筐体11は、例えば樹脂で形成される。
【0013】
筐体11は、前部に、左右方向に所定の幅をもって左右前後方向に延在する平面が形成されるよう抉られた凹部11aを有する。
図3Bにも示されるように、筐体11の内部にはカメラユニット12が収容され、そのレンズは凹部11aの底面の中央部に露出している。カメラユニット12の光軸CLcは、
図1及び
図4に示される本体部1の姿勢において軸線CL1と交わり前後方向に延びている。
光軸CLcは、カメラユニット12で撮像する画像の中心位置となる方向、すなわち撮像方向を示す。
【0014】
図3A及び
図3Bに示されるように、筐体11は、軸線CL1を中心として左右に貫通する貫通孔11dを有する。
図3Aに示されるように、貫通孔11dの内壁の右端部側には、軸線CL1と平行に右端まで細長く開口するスリット11cが形成されている。筐体11の内部空間には、側面視で弧状となる基板13が収容されている。基板13は、左壁11bL(
図3A及び
図5参照)の内面に取り付けられている。基板13とカメラユニット12との間は、ケーブル13aによって電気的に接続されている。
【0015】
図5に示されるように、筐体11の左壁11bLは、左外面において左方に僅かに突出し、軸線CL1を中心として放射状に延びる凹部と凸部が周方向に交互に形成された係合部11eLを有する。同様に、筐体11の右壁11bRは、右外面において右方に僅かに突出し、軸線CL1を中心として放射状に延びる凹部と凸部が周方向に交互に形成された係合部11eRを有する。
【0016】
第1取り付け部2は、本体部1の右側(第1側)に配置され、第2取り付け部3は、第1取り付け部2とは反対側となる本体部1の左側(第2側)に配置されている。
【0017】
第1取り付け部2は筐体21を有する。筐体21は、
図2B及び
図5に示されるように、下部が軸線CL1を中心として本体部1と同じ半径Raの外周面を有する半円柱状の半円柱部211とされ、上部は半円柱部211の上部に段差なく連接された角柱状の角柱部212とされている。従って、角柱部212の前後方向の奥行D2(
図2B及び
図4参照)は半径Raの2倍となっている。
【0018】
角柱部212の上面212aには、第1取り付け部2を移動体側の被取り付け部材に取り付けるための貼着部材22が貼り付けられている。貼着部材22は、例えば厚手の両面テープである。
【0019】
第1取り付け部2は、
図2B及び
図3Aに示されるように、右端側が開放し左方に向け軸線CL1を中心とする円形で抉られた凹部21aを有する。また、角柱部212は、左端側が開放し右方に向け抉られた肉抜き部21bを有する。
第1取り付け部2は、軸線CL1を中心として、右方へは凹部21a内に延び、左方へは左壁21c(
図3A参照)から左方へ突出するように形成された軸柱23を有する。軸柱23は、筐体11の貫通孔11dに少ない遊びで挿通可能である。
【0020】
軸柱23は外郭が形成され内部は空間となっており、軸柱23の内部の空間の右端に、レセプタクル82が取り付けられている。レセプタクル82には、
図3Aに示されるように、外部から接続プラグ81が着脱自在に取り付けられる。また、軸柱23には、周方向に延びる開口であるコード孔23dが形成されている。
レセプタクル82と基板13と間は、ケーブル83によって電気的に接続されている。基板13には、カメラユニット12で撮像した画像を電気信号に変換する処理部が搭載されている。カメラユニット12で撮像した画像は、ケーブル13a,基板13の処理部,及びケーブル83を介して画像信号としてレセプタクル82に出力され、この画像信号は、レセプタクル82に接続された接続プラグを介して外部の機器に出力される。
【0021】
軸柱23の左端部には、スタッド24が、軸線CL1を軸として左方に突出するようにナット24bによって固定されている。スタッド24は、先端部側が雄ねじが形成された雄ねじ柱24aとなっている。
【0022】
第1取り付け部2は、
図5に示されるように、左壁21cの左外面に、左方に僅かに突出し、軸線CL1を中心として放射状に延びる凹部と凸部とが周方向に交互に形成された係合部21eを有する。係合部21eは、本体部1の係合部11eRと凹凸係合可能である。
【0023】
第2取り付け部3は筐体31を有する。筐体31は、
図2A及び
図5に示されるように、第1取り付け部2と同様に下部が軸線CL1を中心として本体部1と同じ半径Raの外周面を有する半円柱状の半円柱部311とされ、上部は半円柱部311の上部に段差なく連接された角柱状の角柱部312とされている。従って、角柱部312の前後方向の奥行D3(
図2A及び
図4参照)は半径Raの2倍となっている。
【0024】
角柱部312の上面312aには、第2取り付け部3を移動体側の被取り付け部材に取り付けるための貼着部材32が貼り付けられている。貼着部材32は、例えば厚手の両面テープである。
【0025】
第2取り付け部3は、
図2A及び
図3Aに示されるように、左端側が開放し右方に向け軸線CL1を中心とする円形で抉られた凹部31aを有する。また、角柱部312は、右端側が開放し左方に向け抉られた肉抜き部31bを有する。
第2取り付け部3は、凹部31aの底となる右壁31cに、軸線CL1を中心とする貫通孔31dを有する。貫通孔31dの内径は、スタッド24の軸柱23から突出した部分の外径よりも大きくなっている。
【0026】
第2取り付け部3は、右壁31cの右外面に、右方に僅かに突出し、軸線CL1を中心として放射状に延びる凹部と凸部が周方向に交互に形成された係合部31eを有する(
図5参照)。係合部31eは、本体部1の係合部11eLと凹凸係合可能である。
【0027】
固定具5は、
図3A及び
図5に示されるように、雌ねじ部51aを有する基部51と、基部51から径方向の外方に放射状に延びる複数の腕部52とを有する。この例において固定具5は4つの腕部52を等角度間隔で有する。雌ねじ部51aは、第1取り付け部2のスタッド24における雄ねじ柱24aに螺合する。腕部52は、固定具5を回して雌ねじ部51aを雄ねじ柱24aに螺進及び螺退させるときの指掛かりとなる。
【0028】
上述の部材を組付けて移動体搭載装置91が形成される。この組付け手順について、
図5などを参照して説明する。
【0029】
図3Aに示されるように、予め、基板13から引き出されているケーブル83を、スリット11c及びコード孔23dを通してレセプタクル82と接続しておく。
その状態で、
図5に示されるように、第1取り付け部2における、先端にスタッド24が突出固定されている軸柱23を、本体部1における筐体11の貫通孔11dに右側から挿入する(矢印DR1参照)。そして、本体部1の右壁11bRの係合部11eRと、第1取り付け部2の係合部21eとを、軸線CL1まわりに所望の回動位置で係合させる。この状態で、
図3Aに示されるように、スタッド24の雄ねじ柱24aは、本体部1の左壁11bLから左方に突出した状態となる。
【0030】
図5において、軸線CL1まわりの本体部1と第1取り付け部2とは、本体部1の光軸CLcが前方を向き、第1取り付け部2の上面212aが前後左右に延在する平面になる姿勢で示されている。
【0031】
次に、第2取り付け部3を、その貫通孔31dにスタッド24の雄ねじ柱24aを挿通させるように本体部1に接近させる。次いで、雄ねじ柱24aの雄ねじに固定具5の雌ねじ部51aを螺合させる。そして、本体部1の左壁11bLの係合部11eLと第2取り付け部3の係合部31eとを、軸線CL1まわりに所望の回動位置となるように係合させ、その状態で固定具5を指などで回して締め付ける。
図5に示される例では、第2取り付け部3の上面312aと第1取り付け部2の上面212aとが平行になるように、固定具5によって締結固定される。
これにより、移動体搭載装置91が組み立てられる。
【0032】
この構成から明らかなように、移動体搭載装置91は、本体部1と第1取り付け部2及び第2取り付け部3それぞれとの相対回動位置を、独立に調整可能である。
ここで、本体部1と第1取り付け部2及び第2取り付け部3との相対角度を、それぞれ角度θc,θdとする。角度θc,θdは、本体部1が、その光軸CLcが前後に延び撮像方向が前方となる姿勢として次のように規定する。
【0033】
第2取り付け部3について、角度θdは、左面視の
図2Aにおいて、第2取り付け部3の上面312aの延在面SF31と光軸CLcとの成す角度であって、両者の交点Ptよりも撮像方向側(前方側)の光軸CLc1を基準とする反時計回りの角度とする。この場合、角度θdは、第2取り付け部3が二点鎖線で示される仮想線のうちの前方側に倒れる姿勢で鈍角となる。また、角度θdは、二点鎖線で示される仮想線のうちの後方側に倒れる姿勢で鋭角となる。また、実線で示される姿勢において角度θdは0(ゼロ)°となる。
【0034】
第1取り付け部2について、角度θcは、右面視の
図2Bにおいて、第1取り付け部2の上面212aの延在面SF21と光軸CLcとの成す角度であって、両者の交点Ptよりも撮像方向側(前方側)の光軸CLc1を基準とする時計回りの角度とする。この場合、角度θcは、第1取り付け部2が二点鎖線で示される仮想線のうちの前方側に倒れる姿勢で鈍角となる。また、角度θcは、二点鎖線で示される仮想線のうちの後方側に倒れる姿勢で鋭角となる。また、実線で示される姿勢において角度θcは0(ゼロ)°となる。第1取り付け部2及び第2取り付け部3の回動可能な範囲、すなわち角度θc,θdの取り得る範囲は、それぞれ0°~180°の間の任意の範囲で設定される。
【0035】
第1取り付け部2及び第2取り付け部3は、本体部1に対し、角度θc及び角度θdが独立して異なる値となるように軸線CL1まわりに相対回動可能である。
第1取り付け部2と第2取り付け部3とが同一平面の被取り付け部材に取り付けられる場合に、角度θcと角度θdは等しくなる。また、第1取り付け部2と第2取り付け部3とが、異なる角度の平面の二つの被取り付け部材にそれぞれ取り付けられる場合に、角度θcと角度θdは異なる値となる。
【0036】
図4に示されるように、第1取り付け部2及び第2取り付け部3が、それぞれの上面212a及び上面312aが水平面となる姿勢のときに、本体部1の相対回動角度を、光軸CLcが水平の前方を向く基準位置から上方を角度θa、下方を角度θbとすると、角度θa,θbの最大値は、例えばそれぞれ90°とされる。角度θa,θbの最大値は任意に設定できる。角度θaと角度θbとは等しくなくてもよい。
また、本体部1に対し、第1取り付け部2及び第2取り付け部3は、それぞれ独立して軸線CL1まわりに相対的に回動可能である。
図4において、第2取り付け部3は、2点鎖線で示されるように、本体部に対し軸線CL1の時計まわりに例えば90°回動可能であり(矢印DR41参照)、反時計まわりに例えば90°回動可能である(矢印DR42参照)。第1取り付け部2についても同様である。
【0037】
上述の構成により、移動体搭載装置91は、被取り付け部材に対し様々な取り付け態様出の取り付けが可能となっている。具体例として次の第1~第3取り付け態様について、それぞれ
図6A~
図6Cを参照して説明する。
【0038】
(第1取り付け態様)
図6Aは、移動体搭載装置91を、移動体Mの被取り付け部材M1に取り付けた第1取り付け態様を示す前面図である。この場合の被取り付け部材M1は、平板である。第1取り付け態様においては、本体部1に対し第1取り付け部2及び第2取り付け部3を軸線CL1まわりの同じ角度位置に固定してそれぞれの上面212a及び上面312aが平行になるようにしている。
【0039】
図6Aに示されるように、移動体搭載装置91において、本体部1の重心Gは、前面視において左右方向に本体部1の幅の中央(幅を2分する位置)にあるようにするとよい。これにより、第1取り付け部2及び第2取り付け部3それぞれにおける左右方向の取り付け中心位置を示す取り付け軸線LN2及び取り付け軸線LN3の間に本体部1が配置され、取り付け軸線LN2と取り付け軸線LN3との間の距離を2等分する位置に、本体部1の重心Gが位置する。これにより、移動体搭載装置91を被取り付け部材M1に取り付けた状態で、いわゆる片持ち支持ではなくモーメントがつりあった状態となるので、第1取り付け部2及び第2取り付け部3での取り付け強度が向上し、強い外力が加わっても離脱しにくく高い取り付け信頼性が得られる。
【0040】
本体部1の重心Gの左右方向の位置は、厳密に本体部1の幅の中央になくてもよく、概ね中央又は中央に近い位置にあれば、生じるモーメントは僅かであり、取り付け強度への影響は実質的に無視できる。
【0041】
(第2取り付け態様)
図6Bは、移動体搭載装置91を、移動体Mの被取り付け部材M2に取り付けた第2取り付け態様を示す前面図である。この場合の被取り付け部材M2は、上方に凸となるように湾曲した部材である。第2取り付け態様においても、本体部1に対し第1取り付け部2及び第2取り付け部3を同じ角度位置に固定してそれぞれの上面212a及び上面312aが平行になるようにしている。また、第1取り付け部2及び第2取り付け部3それぞれの左右方向の幅W2及び幅W3をより小さく設定すると、貼着部材22,32の被取り付け部材M2の曲面への追従性がより向上するので好ましい。具体的には、第1取り付け部2において、幅W2を奥行D2よりも小さくし、第2取り付け部3において、幅W3を奥行D3よりも小さくするとよい。さらには、幅W2,W3を、それぞれ奥行D2,D3の半分以下にするとよりよい。また、
図6Bから明らかなように、被取り付け部材M2は、本体部1に干渉しない限り下方に凸となる曲面であってもよい。
【0042】
第2取り付け態様では、第1取り付け態様と同様に、被取り付け部材M2に対し、第1取り付け部2と第2取り付け部3との左右方向に離隔した2箇所での取り付けとなり、それらの間に本体部1が支持される態様となっている。すなわち、いわゆる片持ち支持ではなくモーメントが実質的につりあった状態、又はそれに近い状態となっているので、被取り付け部材M2が曲面であるにもかかわらず、第1取り付け部2及び第2取り付け部3での取り付け強度が向上し、強い外力が加わっても離脱しにくく高い取り付け信頼性が得られる。
【0043】
(第3取り付け態様)
図6Cは、移動体搭載装置91を、移動体Mの被取り付け部材M3に取り付けた第3取り付け態様を示す一部断面の側面図である。この場合の被取り付け部材M3は、移動体Mの居室RMを画成する板状部材であり、天井となる第1壁部M31と第1壁部M31の後縁部から斜め下方(例えば第1壁部M31の延在面から約70°下向き)に折り曲げられた背壁である第2壁部M32とを有する。
【0044】
移動体搭載装置91は、第1取り付け部2の上面212aと第2取り付け部3の上面312aとが非平行とされて被取り付け部材M3に取り付けられている。
詳しくは、第1取り付け部2は、上面212aが第1壁部M31の表面と平行となる回動姿勢とされ、第2取り付け部3は、上面312aが第2壁部M32と平行となる回動姿勢とされて、それぞれ第1壁部M31及び第2壁部M32に取り付けられている。
これにより、移動体搭載装置91は、異なる方向に延在する2つの被取り付け部材に、それぞれ第1取り付け部2及び第2取り付け部3を取り付けることができる。
【0045】
移動体搭載装置91の重心Gの位置が、
図6Cに示されるように仮に軸線CL1上にあったとすると、移動体Mが前進中に急制動がかかったときには重心Gに前向きの慣性力F1がかかり、急発進したときには重心Gに後向きの慣性力F2がかかるものと考えることができる。
従来の取り付け部が一つのみの装置では、例えば本体部が天井の第1壁部M31のみに取り付けられる。この場合、取り付け部位には、慣性力F1及びF2に起因するモーメントによる引き剥がし力が加わるため、貼着強度低下が懸念される。これに対し、移動体搭載装置91は、二つの取り付け部である第1取り付け部2及び第2取り付け部3を有し、それぞれ独立して回動姿勢を設定できる。そのため、移動体搭載装置91は、第1壁部M31と第2壁部M32との両方に取り付けることができる。
【0046】
この場合、第2取り付け部3と第2壁部M32との取り付け部位にかかる慣性力F1及び慣性力F2に起因するモーメントは比較的小さい。従って、移動体搭載装置91としての被取り付け部材M3に対する取り付け強度は維持され、高い取り付け強度が得られる。また、光軸CLcは、本体部1を第1取り付け部2及び第2取り付け部3の回動位置によらず軸線CL1まわりの所望の回動位置に自由に設定できるので、被取り付け部材M3の延在方向によらず、所望の方向に設定可能である。
図6Cに示される例では、居室RM内を撮像するために、光軸CLcは、前斜め下方の向きとなるように設定されている。
【0047】
移動体搭載装置91は、上述の構成を有することから、第3取り付け態様のような居室RM内を撮像する用途に限らず、移動体Mの外面に取り付けて移動体Mの周囲の光景を撮像することも可能である。
【0048】
以上、詳述したように、移動体搭載装置91は、側面視で、本体部1を、第1取り付け部2及び第2取り付け部3の外形から外側に突出させずに軸線CL1まわりに回動可能となっている。そのため、移動体搭載装置91は小型に構成できる。また、移動体搭載装置91は、第1取り付け部2と第2取り付け部3とを、軸線CL1まわりの異なる回動位置で固定することができる。そのため、移動体搭載装置91は、小型でありながら移動体Mの異なる部位に取り付けることができ、かつ本体部1の向きも変更可能である。このように、移動体搭載装置91は使い勝手がよいものとなっている。
【0049】
すなわち、移動体搭載装置91は、第1取り付け部2及び第2取り付け部3が、本体部1に対し、固定具5が螺退して押し付けが解除された状態で第1方向(左右方向)に延びる軸線CL1まわりに独立して相対回動可能とされ、固定具5の螺進による押し付けによって軸線CL1まわりの回動位置を所望の位置として固定される。
【0050】
以上詳述した一態様は、その構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形した変形例としてもよい。
【0051】
係合部11eLと及びこれに係合する係合部31eは形成されていなくてもよい。また、係合部11eR及びこれに係合する係合部21eは形成されていなくてもよい。係合部31eなどが形成されていない場合は、固定具5を締め付けることで、本体部1と第1取り付け部2及び第2取り付け部3とが直接に面接触で当接し、両面間の摩擦力によって回動が規制される。また、固定する回動角度も、凹凸のピッチ毎という制限がなく任意の回動角度で細かく調整して固定することができる。
【0052】
軸柱23は、第2取り付け部3側に設けてもよく、この場合は、レセプタクル82は第2取り付け部3側に配置される。また、本体部1に軸線CL1に沿って左側と右側とに延びる一対の軸柱を形成し、第1取り付け部2と第2取り付け部3とをそれぞれ別々のナット部材で締結するようにしてもよい。
この場合は、固定具5として、本体部1に対し第1取り付け部2を押し付けて固定する第1固定具と、本体部1に対し第2取り付け部3を押し付けて固定する第2固定具との二つの固定具を含む。
【0053】
第1取り付け部2及び第2取り付け部3の側面視形状は、
図2A及び
図2Bに示される形状に限定されるものではなく自由である。また、本体部1は、軸線CL1を軸とする円筒状でなくてもよく、角筒状、楕円筒状、三角筒状などであってもよい。
【0054】
本体部1,第1取り付け部2,及び第2取り付け部3の固定構造は、上述の、固定具5による軸方向の締め付け構造に限定されない。
例えば、次の変形例1及び変形例2のいずれかの構造とすることができ、それぞれ
図7(a),(b)及び
図8を参照して説明する。
図7は、移動体搭載装置91の変形例1である移動体搭載装置91Aを示す図であり、
図7(a)は前面図、
図7(b)は
図7(a)におけるSb-Sb位置での断面図である。
図8は、移動体搭載装置91の変形例2である移動体搭載装置91Bを示す部分断面の前面図である。
【0055】
(変形例1)
図7(a),(b)に示される変形例1の移動体搭載装置91Aは、本体部1A,第1取り付け部2A,及び第2取り付け部3Aを有する。
本体部1Aは、左右両面から軸線CL1を中心軸として左方及び右方に延びる一対の円柱状の突出軸部15A,15Aを有する。第1取り付け部2A及び第2取り付け部3Aは、それぞれ突出軸部15Aをわずかなガタで挿入可能な貫通孔25A及び貫通孔35Aを有する。
これにより、一対の突出軸部15Aを、それぞれ貫通孔25Aと貫通孔35Aとに挿入することで、本体部1Aと第1取り付け部2A及び第2取り付け部3Aとの相対的な回動位置を自由に設定できる。
【0056】
一方、
図7(b)に示されるように、第1取り付け部2Aには、貫通孔25Aの径方向に雌ねじが形成された孔26Aが形成されており、孔26Aには第1固定具としてノブ付きの止めねじN1が螺合している。これにより、止めねじN1を指などで螺進させて貫通孔25Aに挿入された突出軸部15Aの回動及び軸方向移動を規制でき、第1取り付け部2Aを本体部1に対し固定できる。第2取り付け部3Aについても同様で、第2固定具となるノブ付きの止めねじN2が用いられる。
【0057】
すなわち、変形例1の移動体搭載装置91Aは、本体部1,第1取り付け部2,及び第2取り付け部3の固定を、軸方向への押し付けではなく、第1固定具及び第2固定具の径方向の締め付け固定によって行うものである。この構造は、第1,第2固定具であるそれぞれ止めねじN1,N2を、軸線CL1と直交する軸線まわりに回転させて締緩を行うので、左右方向に指が入るスペースがない部位への取り付けなどに有効な構造である。
【0058】
(変形例2)
図8に示される変形例2の移動体搭載装置91Bは、本体部1B,第1取り付け部2B,第2取り付け部3B,及び二つのキャップ7B1,7B2を有する。
本体部1Bは、左右両面それぞれにおいて軸線CL1を軸として突出する突出軸部17Bを備えている。突出軸部17Bは、根元側の凹凸係合部16Bと先端側の先端軸部15Bとを有する。
【0059】
凹凸係合部16Bは、全周面に所定の周方向ピッチで形成された軸方向に延びる複数の凹部を有する。先端軸部15Bは、凹凸係合部16Bの先端に、それよりも小さい外径でさらに外方に延びるよう形成されている。
第1取り付け部2Bは、軸線CL1を軸線として貫通する貫通孔27Bを有する。貫通孔27Bは、本体部1B側の部分に、本体部1Bの凹凸係合部16Bと係合する複数の凸リブ群部26Bを有し、本体部1から遠い側の残部に、本体部1Bにおける先端軸部15Bの外径d2よりも大きな内径d1で形成された遊嵌孔部25Bを有する。第2取り付け部3Bについても同様の構造を有する。
【0060】
図8に示されるように、第1取り付け部2Bの貫通孔27Bに本体部1Bの突出軸部17Bを挿入すると、一定距離挿入したところで、凹凸係合部16Bと凸リブ群部26Bとを所定の周方向ピッチで係合できる。この係合後、さらに突出軸部17Bの挿入を進めることで、
図8に示されるように先端軸部15Bが遊嵌孔部25B内に充分進入した状態となる。この状態において遊嵌孔部25Bと先端軸部15Bとの間に環状の空間VBが形成される。
【0061】
キャップ7B1(第1固定具)及びキャップ7B2(第2固定具)は同じ部材である。
図8に示されるように、キャップ7B1は、貫通孔71bを有する円環状の環状部71と、環状部71の一方の端部を塞ぐと共に、環状部71よりも大径で全周で径方向の外方に張り出した鍔部72とを有し、弾性部材で形成されている。弾性部材は、例えばゴムである。環状部71の外径d71は、第1取り付け部2Bの遊嵌孔部25Bの内径d1よりもわずかに大きく、貫通孔71bの内径d72は、先端軸部15Bの外径d2よりもわずかに小さく形成されている。
【0062】
第1固定具であるキャップ7B1は、矢印DR8に示されるように、環状部71を空間VBに強嵌合で挿入することができる。これにより、環状部71の径方向の弾性圧縮の反発力に伴い生じる摩擦力によって、先端軸部15Bと貫通孔27Bとの、軸線CL1に沿った移動及び軸線CL1まわりの回動が実質的に不能となる。これにより、第1取り付け部2Bは、第1固定具であるキャップ7B1によって本体部1Bに対し所望の回動位置で固定される。
第2取り付け部3Bについても同様であり、第2取り付け部3Bは、第2固定具であるキャップ7B2によって本体部1B対し所望の回動位置で固定される。
【0063】
このキャップ7B1,7B2の強嵌合挿入によって、本体部1B,第1取り付け部2B,及び第2取り付け部3Bは一体的に所望の回動姿勢で固定される。変形例2の移動体搭載装置91Bは、構造が簡易であり、ナット部材5を締緩させることなく、キャップ7B1,7B2を押し込むだけで部材を固定できるので固定作業も容易である。
【0064】
上述の移動体搭載装置91,91A,91B(以下、移動体搭載装置91等)を搭載する移動体Mとして、自動車,鉄道車両,航空機,船舶,飛行船,ドローンなどがあり、人間の搭乗可否によらず能動的及び受動的に移動する物体が該当する。このような移動体Mに搭載される移動体搭載装置91等は、カメラ装置に限定されるものではない。例えば、移動体Mの乗員の体温などを非接触で計測するセンサ装置,乗員が聴取する音楽を居室RM内に提供する音楽再生装置,乗員が外部と通信するための通信端末,移動体搭載装置91等の内部或いは外部の温度,湿度などを計測する計測装置であってもよい。また、移動体搭載装置91等は、居室RMの内部の被投射体或いは移動体Mの外部の被投射体に画像を投射する画像投射装置などであってもよい。この画像投射装置は、例えば、居室RM内から移動体Mのフロントガラスなどにナビゲーション画像等を投射する、或いは、居室RM内や移動体Mの外面に設置され、移動体M外の移動経路や移動空間に配置された被投射体に対し、他の移動体に報知する情報を投射する。
【0065】
これらの装置が、操作面,画像表示面などの機能に主に関わる面を明確に有する場合、その機能面の向きを、機能面に直交する仮想軸線を機能軸線としてその向きで定義する。また、これらの装置が、その機能を最も発揮するための方向性を有する場合、例えば、音楽再生装置の場合はスピーカから放出される音の向き、センサ装置の場合はセンサ装置の検出対象の検出感度が最も高くなる向き、通信端末の場合は、電波の受信感度が最も高くなる向き、などを機能軸線の向きとする。
【0066】
上述の一態様で説明した光軸CLcは、移動体搭載装置91等がカメラ装置である場合の撮像方向を示すものであるから、光軸CLcはカメラ装置としての機能軸線に該当する。このように、移動体搭載装置91は、被取り付け部材に取り付けた状態での機能軸線の向きを、回動変更可能に取り付けできて使い勝手がよい。
【符号の説明】
【0067】
1,1A,1B 本体部
11 筐体
11a 凹部
11bL 左壁
11bR 右壁
11c スリット
11d 貫通孔
11eL,11eR 係合部
12 カメラユニット
13 基板
13a ケーブル
15A,17B 突出軸部
15B 先端軸部
16B 凹凸係合部
17B 突出軸部
2,2A,2B 第1取り付け部
21 筐体
21a 凹部
21b 肉抜き部
21c 左壁
21e 係合部
211 半円柱部
212 角柱部
212a 上面
22 貼着部材
23 軸柱
23d コード孔
24 スタッド
24a 雄ねじ柱
24b ナット
25A 貫通孔
26A 孔
27B 貫通孔
25B 遊嵌孔部
3,3A,3B 第2取り付け部
31 筐体
31a 凹部
31b 肉抜き部
31c 右壁
31d 貫通孔
31e 係合部
311 半円柱部
312 角柱部
312a 上面
32 貼着部材
35A 貫通孔
5 固定具(ナット部材)
51 基部
51a 雌ねじ部
52 腕部
7B1,7B2 キャップ
71 環状部
71b 貫通孔
72 鍔部
81 接続プラグ
82 レセプタクル
83 ケーブル
91,91A,91B 移動体搭載装置(車載カメラ)
CLc,CLc1 光軸(機能軸線)
CL1 軸線
D2,D3 奥行
d1,d72 内径
d71,d2 外径
F1,F2 慣性力
G 重心
LN2,LN3 取り付け軸線
M 移動体
M1,M2,M3 被取り付け部材
M31 第1壁部
M32 第2壁部
N1,N2 止めねじ
Ra 半径
RM 居室
SF21,SF31 延在面
VB 空間
W2,W3 幅
θa,θb,θc,θd 角度