(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161777
(43)【公開日】2024-11-20
(54)【発明の名称】製氷機
(51)【国際特許分類】
F25C 1/25 20180101AFI20241113BHJP
【FI】
F25C1/25 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076798
(22)【出願日】2023-05-08
(71)【出願人】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜幾
(72)【発明者】
【氏名】石榑 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祐真
(72)【発明者】
【氏名】中田 大貴
(72)【発明者】
【氏名】植田 毅
(72)【発明者】
【氏名】山本 洋介
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で製氷機構の全体を衛生的に保つことができる製氷機を提供する。
【解決手段】箱体10の内部に、製氷機構16が収容される収容室11と、製氷機構16で生成した氷を貯留する貯氷室12が画成される。製氷機構16の製氷水タンク15に、タンク内に向けて紫外線を照射する殺菌手段32が配設される。殺菌手段32は、製氷水タンク15の閉成位置ではタンク内に貯留されている製氷水を殺菌し、製氷水タンク15の開放位置ではタンク内の空気を殺菌する。製氷水タンク15に、タンク内に吸込口を介して連通すると共に吹出口を介して収容室11に連通するダクト34が配設される。ダクト34に、タンク内から吸い込んだ空気を吹出口から吹き出すファンモータが配設される。製氷水タンク15の開放位置においてダクト34から殺菌された空気を収容室11に吹き出すことで、製氷機構16を殺菌する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍機構によって冷却される製氷部および製氷水が貯留される製氷水タンクを備える製氷機構が、箱体に内部画成した収容室に配置され、前記製氷水タンクと製氷部との間で製氷水を循環して該製氷部に氷を生成する製氷機であって、
前記製氷水タンク内に向けて紫外線を照射し、該製氷水タンクに貯留されている製氷水の増減に応じてタンク内の製氷水または空気を殺菌する殺菌手段と、
前記製氷水タンク内に吸込口が連通するダクトと、
前記製氷水タンク内の空気を前記吸込口からダクトに吸い込む吸気手段と、を備え、
前記ダクトに、前記吸気手段によって吸い込んだ空気を前記収容室に吹き出す吹出口を複数設けた
ことを特徴とする製氷機。
【請求項2】
前記製氷機構で生成した氷を貯留する貯氷室に所定量の氷が貯留されたことを検知する貯氷検知手段を備え、
該貯氷検知手段の検知タイミングで前記吸気手段を作動するよう構成した請求項1記載の製氷機。
【請求項3】
前記製氷機構は、下方に開口する製氷小室が形成された前記製氷部と、製氷小室を閉成する閉成位置および開放する開放位置に移動する水皿と、該水皿と一体で移動する前記製氷水タンクとを備え、製氷運転時には水皿を閉成位置に位置付けると共に、除氷運転時には水皿を開放位置に位置付けるよう構成され、
前記製氷水タンクと共に水皿を開放位置に位置付けた状態では、前記吸気手段を作動するよう構成した請求項1記載の製氷機。
【請求項4】
前記収容室内に、前記ダクトから吹き出された空気を収容室内で循環するよう案内するエアガイドを設けた請求項1記載の製氷機。
【請求項5】
前記吸気手段を作動して前記収容室内で空気を循環させる空気循環運転中に、該吸気手段の作動を一時的に停止するよう構成した請求項1~4の何れか一項に記載の製氷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、製氷水タンクに貯留した製氷水を、製氷水タンクと製氷部との間で循環して該製氷部に氷を生成する製氷機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多量の氷塊を製造し得る製氷機が、喫茶店やレストラン等の施設その他の厨房において好適に使用されている。製氷機としては、下向きに開口する多数の製氷小室に製氷水を下方から噴射供給して、該製氷小室に氷塊を生成する噴射式の製氷機構を備えたものがある。製氷機の概略構成を説明すれば、箱体内に水平に配置した製氷部に、下方に開口する製氷小室が碁盤目状に多数画成されると共に、該製氷部の上面には、冷凍機構を構成する蒸発器が密着的に蛇行配置される。また製氷部の下方には、支軸を介して水皿が傾動可能に枢支されると共に、該水皿の下部には外部水道源から供給される製氷水を貯留する製氷水タンクが一体的に設けられている。このように構成された製氷機では、製氷水タンクに貯留した製氷水を、冷凍機構により冷却される製氷部に循環ポンプで供給して該製氷部で氷を生成し、製氷部で氷結しなかった製氷水を製氷水タンクに回収して再循環するよう構成される。
【0003】
前記製氷機では、製氷部で生成した氷塊を貯留する貯氷庫内に氷が満杯になると、製氷運転を停止しているが、製氷運転の停止状態において、外部水道源から製氷水タンクへの製氷水の給水経路や製氷機構に水が残留しているため、該給水経路や製氷機構で雑菌が繁殖するおそれがある。そこで、製氷水の給水経路や製氷機構に紫外線照射器を設け、該紫外線照射器から照射される紫外線によって殺菌するよう構成した製氷機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の製氷機では、給水経路や製氷機構の夫々に紫外線照射器を設ける必要があり、部品点数が多くなる問題が指摘される。また、紫外線照射器から照射される紫外線によって殺菌可能な範囲は限られるため、製氷機構の全体を殺菌するためには、更に多くの紫外線照射器が必要となって構成が複雑になると共にコストも嵩む難点が指摘される。
【0006】
本発明は、前述した従来技術に内在する前記課題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、簡単な構成で製氷機構の全体を衛生的に保つことができる製氷機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項1の発明に係る製氷機は、
冷凍機構によって冷却される製氷部(13)および製氷水が貯留される製氷水タンク(15)を備える製氷機構(16)が、箱体(10)に内部画成した収容室(11)に配置され、前記製氷水タンク(15)と製氷部(13)との間で製氷水を循環して該製氷部(13)に氷を生成する製氷機であって、
前記製氷水タンク(15)内に向けて紫外線を照射し、該製氷水タンク(15)に貯留されている製氷水の増減に応じてタンク内の製氷水または空気を殺菌する殺菌手段(32)と、
前記製氷水タンク(15)内に吸込口(34a)が連通するダクト(34)と、
前記製氷水タンク(15)内の空気を前記吸込口(34a)からダクト(34)に吸い込む吸気手段(35)と、を備え、
前記ダクト(34)に、前記吸気手段(35)によって吸い込んだ空気を前記収容室(11)に吹き出す吹出口(34b)を複数設けたことを要旨とする。
請求項1の発明では、製氷水タンク内に向けて紫外線を照射する単一の殺菌手段によって、製氷水タンクに貯留される製氷水を殺菌できると共に、該紫外線で殺菌されたタンク内の空気を収容室に循環して収容室内に配置されている製氷機構の全体を殺菌することができ、構成が簡単になると共に製造コストを抑えることができる。また、ダクトに複数の吹出口を設けたので、殺菌された空気を収容室内に効率的に循環させることができる。
【0008】
請求項2に係る発明は、
前記製氷機構(16)で生成した氷を貯留する貯氷室(12)に所定量の氷が貯留されたことを検知する貯氷検知手段(29)を備え、
該貯氷検知手段(29)の検知タイミングで前記吸気手段(35)を作動するよう構成したことを要旨とする。
請求項2の発明では、収容室内で結露が発生し易い部分の乾燥を促進することができ、結露に起因する雑菌の増殖を抑制することができる。
【0009】
請求項3に係る発明は、
前記製氷機構(16)は、下方に開口する製氷小室(13a)が形成された前記製氷部(13)と、製氷小室(13a)を閉成する閉成位置および開放する開放位置に移動する水皿(14)と、該水皿(14)と一体で移動する前記製氷水タンク(15)とを備え、製氷運転時には水皿(14)を閉成位置に位置付けると共に、除氷運転時には水皿(14)を開放位置に位置付けるよう構成され、
前記製氷水タンク(15)と共に水皿(14)を開放位置に位置付けた状態では、前記吸気手段(35)を作動するよう構成したことを要旨とする。
請求項3の発明では、殺菌手段に、透過性のシリコーンレンズやシリコーンキャップを用いる構成において、該シリコーンレンズやシリコーンキャップが汚染されて透過率が低下するのを防ぐことができ、殺菌手段による殺菌能力の低下を防ぐことができる。すなわち、シリコーンレンズやシリコーンキャップの近傍に配置される蒸気圧を有する樹脂材料の蒸気が、長時間に亘ってシリコーンレンズやシリコーンキャップの周囲に滞溜していると、該蒸気によってシリコーンレンズやシリコーンキャップが汚染されて透過率が低下するおそれがあるが、水皿および製氷水タンクを開放位置に位置付けた状態で吸気手段を作動してタンク内と収容室内とで空気を循環することで、シリコーンレンズやシリコーンキャップの周囲に蒸気が滞溜するのを防ぎ、蒸気によってシリコーンレンズやシリコーンキャップが汚染されて機能低下するのを防ぐことができる。
【0010】
請求項4に係る発明は、
前記収容室(11)内に、前記ダクト(34)から吹き出された空気を収容室(11)内で循環するよう案内するエアガイド(36,38)を設けたことを要旨とする。
請求項4の発明では、ダクトの吹出口から吹き出される空気を、エアガイドによって収容室内において一定方向に循環するよう案内することができ、殺菌された空気の流れが乱れることなく一定方向に効率的に流れ、製氷機構の全体をより効果的に殺菌することができる。
【0011】
請求項5に係る発明は、
前記吸気手段(35)を作動して前記収容室(11)内で空気を循環させる空気循環運転中に、該吸気手段(35)の作動を一時的に停止するよう構成したことを要旨とする。
請求項5の発明では、空気循環運転中に吸気手段の作動を一時的に停止することで、冷凍機構から漏出した可燃性冷媒を機外に効果的に排出することができ、安全性に優れる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る製氷機によれば、単一の殺菌手段によって製氷水の循環経路および収容室に配置されている製氷機構の全体を殺菌して衛生的に保つことができ、構成を簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例の製氷機を示す要部概略断面図である。
【
図3】実施例の水皿を開放位置に位置付けた製氷機の要部概略断面図である。
【
図5】実施例の第1のエアガイドを示す概略斜視図である。
【
図6】殺菌手段と製氷水タンクとの関係を示す説明図であって、(a)は閉成位置の状態で示し、(b)は開放位置の状態で示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に係る製氷機につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。実施例では、製氷機として、所謂クローズドセルタイプの製氷機構を備えた噴射式の製氷機を挙げて説明する。
【実施例0015】
図1に示す実施例の製氷機は、その本体となる断熱構造の箱体10の内部に、後述するドレンパン24によって上方の収容室11と、下方の貯氷室12とが区画され、収容室11に、製氷部13、水皿14および製氷水タンク15等からなる製氷機構16が配置されている。具体的には、
図1~
図3に示す如く、箱体10の上部に水平に配置されている取付部材17の下方に、下向き(一方)に開口する多数の製氷小室(製氷室)13aを画成した製氷部13が固定支持される。製氷部13の上面には、冷凍機構を構成する蒸発器18が密着的に蛇行配置され、製氷運転時に冷媒を循環させて製氷部13(製氷小室13a)を強制冷却し、除氷運転時に高温冷媒(ホットガス)を循環させて製氷部13(製氷小室13a)を加熱するよう構成される。また、製氷部13の下方に水皿14が配設され、この水皿14の下側に、製氷水を貯留する製氷水タンク15が一体的に配設されている。箱体10は、収容室11の上部を塞ぐ断熱構造の天板19を備えている。なお、図示しないが、箱体10には、貯氷室12から氷を取り出すための取出口が前方に開放するように開設されると共に、この取出口を開閉する扉が配設されている。以下の説明において、扉が設けられる側を前側として、前後方向を指称し、左右方向とは、製氷機を正面から見た
図1の状態での左右方向をいう。
【0016】
前記箱体10の下部に機械室(図示せず)を画成することができ、該機械室に、冷凍機構を配置可能である。冷凍機構は、圧縮機、凝縮器、膨張弁(膨張手段)および蒸発器18の順番で冷媒が循環するように構成でき、製氷運転では、圧縮機で圧縮された気化冷媒は、凝縮器で凝縮液化された後、膨張弁で減圧され、蒸発器18に流入してここで一挙に膨張して蒸発し、前記製氷部13と熱交換を行って該製氷部13を氷点下にまで強制冷却させる。そして蒸発器18で蒸発し熱交換した気化冷媒は、圧縮機に帰還するサイクルを反復する。冷凍機構は、除氷運転では、ホットガス弁の切り替えによってホットガスを蒸発器18に供給し、製氷部13を加熱するよう構成される。
【0017】
図1~
図3に示す如く、前記水皿14は、前記取付部材17の左側に偏った位置に設けられた支持部17aに対して前後方向に延在する支持軸20を介して回動可能に枢支される。水皿14には、各製氷小室13aと対応する位置に、前記製氷水タンク15内の製氷水を製氷部13の各製氷小室13aへ噴射するための噴射孔14aおよび製氷部13へ供給されて氷結に至らなかった製氷水(未氷結水)を製氷水タンク15へ戻す戻り孔14bが夫々開設されている。
【0018】
図1に示す如く、前記水皿14の上方に、図示しない水道源に連通する給水管21を設けることができ、該給水管21に介挿した給水弁22を開放して、給水管21から常温の水を水皿14の表面へ供給することが可能としてある。そして、水皿表面に供給された水は、水皿14に設けた前記戻り孔14b等を介して製氷水タンク15に貯留され、製氷水として使用される。製氷水タンク15に、該製氷水タンク15に貯留されている製氷水を水皿14に供給する循環ポンプ23を配設することができ、該循環ポンプ23によって水皿14に供給された製氷水を、該水皿14に設けた前記噴射孔14aから製氷部13の各製氷小室13aに噴射供給できる。そして、製氷部13で氷結しなかった製氷水は、戻り孔14bを介して製氷水タンク15に回収され、再度の循環に供される。実施例では、製氷水タンク15、製氷部13、水皿14および製氷水タンク15と水皿14とを循環ポンプ23を介して接続して製氷水が流通する管体(図示せず)が、製氷水タンク15と製氷部13との間で製氷水が循環する循環経路となる。
【0019】
図1に示す如く、前記製氷機構16の下方に、該製氷機構16から流下する排水(製氷残水、オーバーフロー水、結露水等)を受けるドレンパン24を配設することができる。ドレンパン24には、該ドレンパン24で受けた排水を排出するドレン管25を設けることができる。また、貯氷室12の底部に、排出管に連通する排出口(何れも図示せず)を設けることができ、該排出口にドレン管25の下端部を挿通可能である。すなわち、ドレンパン24で受けた排水を、ドレン管25および排出管を介して機外に排出できる構成とすることが可能になっている。また、排出口の内径は、ドレン管25の外径より大きく設定されており、貯氷室内で発生した氷の融解水や結露水等を排出口とドレン管25との間の隙間から排出管に導いて機外に排出可能になっている。
【0020】
前記製氷機構16には、前記水皿14の枢支側と反対側(右側)に、前記製氷部13に対して水皿14および製氷水タンク15からなる製氷水供給部を開閉(傾動)させるための傾動機構26を設けることが可能である。製氷機構16は、製氷運転において製氷水供給部の水皿14を、
図1に示す如く、傾動機構26によって製氷部13の各製氷小室13aの下面を塞いだ閉成位置に位置付け可能であり、該閉成位置において製氷水タンク15に貯留されている製氷水を、前記循環ポンプ23により水皿14から前記蒸発器18によって冷却された各製氷小室13aに対して噴射供給することで、該製氷小室13aに氷を生成できるようになっている。また、製氷機構16は、除氷運転において製氷水供給部の水皿14を、
図3に示す如く、傾動機構26によって製氷部13から下方へ離間して製氷小室13aからの氷の放出を許容する傾斜姿勢となる開放位置に位置付け可能であり、該開放位置において蒸発器18によって加熱された製氷小室13aから離脱した氷が、水皿14の傾斜した上面に案内されて前記貯氷室12に落下するよう構成される。なお、傾動機構26は、製氷水供給部を傾動して閉成位置と開放位置とで姿勢変化させるものであるが、以下の説明では、単に水皿14を傾動するというと共に、水皿14の閉成位置、開放位置という。
【0021】
前記傾動機構26は、ギヤードモータ等のモータ(駆動手段)27により正転方向または逆転方向に回転するカム部材28を備えてもよく、該カム部材28を正転方向または逆転方向に回転することで、前記水皿14を、前記閉成位置と開放位置とに変位させることが可能な構成にできる。傾動機構26は、閉成位置から傾動した水皿14が開放位置に至ったことを検知すると共に、開放位置から傾動した水皿14が閉成位置に至ったことを検知する検知手段(図示せず)を設けることができ、該検知手段が水皿14の開放位置または閉成位置を検知してモータ27を停止することで、水皿14を開放位置または閉成位置に保持する構成とすることができる。
【0022】
図1に示す如く、前記ドレンパン24には、前記水皿14の開放位置での傾斜下端側の下方位置に、収容室11と貯氷室12とを連通する開口部24aを形成することができ、除氷運転において製氷部13から落下して水皿14の上面を滑落する氷を、開口部24aを介して貯氷室12に放出可能な構成にできる。また、貯氷室12には、製氷機構16での製氷運転と除氷運転とを交互に行う製氷サイクルを繰り返すことで貯氷室内に氷が所定量貯留されたことを検知する貯氷検知手段29を設けることができ、該貯氷検知手段29の検知に基づいて製氷機構16での氷の製造を中断(製氷サイクルの中断)できる構成とすることが可能である。そして、貯氷検知手段29が氷を検知しなくなる(貯氷室内の氷の貯留量が所定量より少なくなる)と、製氷機構16での氷の製造を再開する構成とすることができる。なお、貯氷検知手段29の氷検知による製氷機構16での氷の製造中断中は、前記水皿14を開放位置に保持する構成とすることができる。
【0023】
製氷機は、製氷運転および除氷運転を切り替えるための手段を備えることができる。この手段として、例えば、前記製氷部13に配設された温度センサ(図示せず)を用いることが可能であって、該温度センサが製氷完了温度を検知した条件で、前記循環ポンプ23が停止されて製氷運転が完了し、除氷運転に移行する構成とすることができる。また、製氷機は、除氷運転において、前記温度センサが除氷完了温度を検知した条件で、前記蒸発器18による製氷部13の加熱が停止されると共に、前記傾動機構26によって前記水皿14が開放位置から閉成位置まで戻され、除氷運転を完了する構成とすることができる。
【0024】
図1、
図2に示す如く、前記製氷水タンク15に、タンク内に貯留する製氷水を排出可能なオーバーフローパイプ30を設けることが可能である。オーバーフローパイプ30は、前記水皿14の閉成位置および開放位置で、製氷水タンク15内の最も低くなる位置より上方位置で外部に排水口を開口し、閉成位置において製氷水タンク15に貯留する製氷水の上限水位L1(
図6(a)参照)をオーバーフローパイプ30で規定する一方、開放位置において製氷水タンク15内の一部の製氷水(製氷残水)を排出して所定量の製氷残水が残るように残留水位L2(
図6(b)参照)を規定し、残留させた製氷残水を次回の製氷水として再利用し得るように構成できる。なお、オーバーフローパイプ30の排水口から排出される製氷水等は、前記ドレンパン24で受けられる。
【0025】
図2、
図4に示す如く、前記製氷水タンク15における左壁31(傾動機構26の配置側とは反対側)には、タンク内に向けて紫外線を照射可能な殺菌手段32が配設されている。殺菌手段32は、水銀ランプやメタルハライドランプ等の放電ランプ、または紫外線発光ダイオード(UVC(深紫外線)-LED)等の紫外線光源で発生した紫外線を外部に照射するためのレンズ33を設けることができ、該レンズ33を、左壁31に設けた貫通孔31aに臨ませている。貫通孔31aは、製氷水タンク15の閉成位置において前記オーバーフローパイプ30で規定される前記上限水位L1より下側で、かつ前記残留水位L2より上側に位置し、製氷水タンク15の閉成位置(製氷運転時)では、
図6(a)に示す如く、レンズ33がタンク内に貯留されている製氷水に没して該製氷水を紫外線によって殺菌可能であると共に、製氷水タンク15の開放位置(除氷運転時)では、
図6(b)に示す如く、レンズ33がタンク内に残留している製氷残水の残留水位L2より上側に出てタンク内の空気を紫外線によって殺菌可能に構成されている。すなわち、製氷水タンク15に対して殺菌手段32は、製氷水タンク15に貯留されている製氷水の増減に応じてタンク内の製氷水または空気を殺菌する。なお、製氷水タンク15の開放位置(除氷運転時)において、残留水位L2より上側に位置するレンズ33から照射される紫外線は、製氷残水の水面にも照射されて該製氷残水も殺菌可能となっている。実施例では、紫外線光源としてUVC-LEDが用いられると共に、レンズ33として、高透過性のシリコーンレンズが用いられている。また、UVC-LEDで発生する深紫外線が樹脂材料を透過しないことから、シリコーンレンズの保護および取り付けには、深紫外線が透過するシリコーンキャップを用いることができる。
【0026】
図2、
図4に示す如く、前記製氷水タンク15の左壁31には、タンク内に吸込口34aを介して連通するダクト34が設けられている。吸込口34aは、前記上限水位L1より上側においてタンク内に連通し、製氷水が吸込口34aを介してダクト内に流入しないよう構成される。ダクト34は、左壁31に沿って前後方向に所定長さで延在し、該ダクト34の右壁に吸込口34aが設けられ、該吸込口34aが製氷水タンク15の左壁31に設けた通口31bを介してタンク内部に連通している。また、ダクト34の上壁に、前後方向に離間して複数の吹出口34bが設けられている。ダクト34の内部には、プロペラと、該プロペラを回転するモータとからなるファンモータ(吸気手段)35が配設されており、該ファンモータ35を作動することで、吸込口34aから吸い込んだ製氷水タンク内の空気を、複数の吹出口34bから前記収容室11に吹き出し得るよう構成される。製氷水タンク15に配設されたダクト34は、収容室11における左側の縁側において前後方向に所定長さで延在し、複数の吹出口34bから収容室11の前後方向の略全域に空気を略均等に吹き出し得るよう構成される。
【0027】
図1、
図3に示す如く、前記収容室11には、前記ダクト34の上壁(吹出口34b)に対面する上左隅部に、第1のエアガイド36を設けることができる。第1のエアガイド36は、
図5に示す如く、前後方向に並ぶ複数のガイド部材37から構成することができ、各ガイド部材37には、吹出口34bから吹き出される空気の流れを、右方に向けて偏向する傾斜面37aが形成されている。また、収容室11には、第1のエアガイド36から右方向に離間した位置に、該第1のエアガイド36と向き合う第2のエアガイド38を設けることができる。第2のエアガイド38は、第1のエアガイド36と同様に前後方向に並ぶ複数のガイド部材39から構成することができ、各ガイド部材39には、第1のエアガイド36で偏向された空気の流れを下方に向けて偏向する傾斜面39aが形成されており、該傾斜面39aで偏向した一部の空気は、前記ドレンパン24に当って左方に偏向するよう構成される。すなわち、第1および第2のエアガイド36,38およびドレンパン24によって、ダクト34の吹出口34bから吹き出された空気を、収容室内において一定の向きで循環させ得るよう構成されている。なお、各ガイド部材37,39は、傾斜面37a,39aを挟む両側に側壁37b,39bを設ける構成とすることができ、各ガイド部材37,39の傾斜面37a,39aで偏向する空気が前後方向に分散されることなく一定方向に偏向できるようにし得る。
【0028】
実施例の製氷機では、前記貯氷検知手段29の検知に基づいて製氷機構16での氷の製造が中断されると共に、該貯氷検知手段29の検知タイミングで前記ファンモータ35が作動を開始し、貯氷検知手段29が氷を検知しなくなり、製氷機構16での氷の製造が再開されるとファンモータ35の作動を停止する設定とすることが可能である。すなわち、実施例の製氷機では、貯氷検知手段29の検知状態では常にファンモータ35が駆動して収容室内を空気が流れる構成とすることが可能である。また、ファンモータ35は、貯氷検知手段29の非検知状態であっても、通常の製氷サイクルにおける除氷運転で前記水皿14が開放位置に位置付いている状態で作動する構成とすることが可能である。
【0029】
〔実施例の作用〕
次に、実施例に係る製氷機の作用について説明する。
【0030】
前記製氷機構16での製氷運転において、前記水皿14の閉成位置では、前記殺菌手段32のレンズ33は、
図6(a)に示す如く、前記製氷水タンク15に貯留されている製氷水に没しているので、レンズ33からタンク内に照射される紫外線によって製氷水が殺菌される。そして、殺菌された製氷水が、前記循環ポンプ23によって循環経路を循環することで、該循環経路も殺菌される。前記製氷部13の製氷小室13a内に氷が生成され、前記温度センサが製氷完了温度を検知すると、循環ポンプ23を停止して除氷運転に移行する。除氷運転では、前記冷凍機構のホットガス弁の切り替えによってホットガスが蒸発器18に供給されて製氷部13が加熱されると共に、前記傾動機構26によって水皿14が閉成位置から開放位置に向けて傾動される。傾動機構26の検知手段によって水皿14の開放位置が検知されると、傾動機構26による水皿14の傾動が停止し、該水皿14は開放位置に保持される。
【0031】
前記水皿14が開放位置まで傾動することで、前記製氷水タンク15に残留している製氷残水は、前記オーバーフローパイプ30を介してドレンパン24に排出される。製氷水タンク15内の製氷残水が残留水位L2まで減少すると、
図6(b)に示す如く、前記殺菌手段32のレンズ33は製氷残水から上側に出るので、該レンズ33からタンク内に照射される紫外線によって残留水位L2より上側のタンク内の空気が殺菌される。また、水皿14の開放位置において、前記ファンモータ35が作動し、紫外線によって殺菌されたタンク内の空気は、前記ダクト34に吸込口34aから吸い込まれて、前記複数の吹出口34bから収容室11内に吹き出される。
図3に示す如く、吹出口34bから上方に向けて吹き出された空気は、前記第1のエアガイド36によって右方に向けて偏向されて製氷機構16の上部領域を右方に向けて流れ、該空気は、前記第2のエアガイド38によって下方に向けて偏向される。そして、下方に向けて偏向されて開放位置の水皿14の上面に至る空気は、負圧となっている製氷水タンク内に前記戻り孔14b等から流入し、再び吸込口34aを介してダクト34に吸い込まれて、吹出口34bから収容室11内に吹き出されるように循環する。また、第2のエアガイド38によって偏向され、前記ドレンパン24に至った空気は、該ドレンパン24に沿って製氷機構16の下部領域を左方に向けて流れる。すなわち、水皿14が開放位置に保持されている状態では、紫外線によって殺菌された空気が、製氷水タンク15の内部と収容室11との間を循環すると共に、収容室11に配置されている製氷機構16の周囲を循環し、製氷水タンク15の内部および製氷機構16の全体が循環する空気によって殺菌される。
【0032】
除氷運転によって前記製氷部13から氷が落下し、前記温度センサが除氷完了温度を検知すると、前記蒸発器18による製氷部13の加熱が停止されると共に、前記傾動機構26によって前記水皿14が開放位置から閉成位置まで戻され、除氷運転から製氷運転に移行する。なお、水皿14が閉成位置まで戻ると、前記給水弁22が開放して外部水道源から供給される水が水皿14を経て製氷水タンク15に貯留され、タンク内に貯留される製氷水は、前記殺菌手段32によって殺菌される。また、水皿14の閉成位置において、前記ファンモータ35の作動が停止される。
【0033】
前記製氷運転と除氷運転とを交互に行う製氷サイクルを繰り返し、前記貯氷室12に所定量の氷が貯留されたことを前記貯氷検知手段29が検知すると、製氷サイクルが停止し、前記水皿14は開放位置に保持される。そして、水皿14が開放位置に保持されている間は、前記ファンモータ35が作動され、前述したように、前記製氷水タンク15の内部および前記収容室11に、殺菌された空気が循環して殺菌される。
【0034】
実施例の製氷機では、製氷水タンク15に設けた殺菌手段32によって殺菌した製氷水を循環経路に循環することで、該循環経路を殺菌して衛生的に保つことができる。また、殺菌手段32によって殺菌した空気を、製氷機構16が配置された収容室11に循環することで、製氷機構16の全体を殺菌することができる。そして、循環経路および製氷機構16全体の殺菌を、製氷水タンク15に設けた単一の殺菌手段32によって行い得るよう構成したので、構成が簡単になると共に製造コストを抑えることができる。また、ダクト34に複数の吹出口34bを設けたので、収容室内の全体に殺菌された空気を略均等に循環させることができ、製氷機構16の全体を効果的に殺菌することができる。
【0035】
実施例の製氷機では、ダクト34の吹出口34bから吹き出される空気を、収容室11内において一定方向に循環するよう案内するエアガイド36,38を設けたので、殺菌された空気の流れが乱れることなく一定方向に効率的に流れ、製氷機構16の全体をより効果的に殺菌することができ、衛生的に保つことができる。
【0036】
ここで、前記貯氷検知手段29の氷検知により製氷機構16での氷の製造が中断されたときの収容室11の内部は、製氷運転を行った直後であるため、収容室11の内部は湿潤である。また、製氷運転から移行した除氷運転ではホットガスによって製氷部13を加熱するため、蒸発器18の近傍の配管等は結露が発生し易い状態であり、この状態が長時間継続すると雑菌が増殖する懸念がある。実施例では、貯氷検知手段29の検知タイミングで前記ファンモータ35の作動を開始するよう構成したので、製氷機構16の周囲を空気が循環することで収容室内の全体温度を均一化することができると共に、結露発生部の乾燥を促進して雑菌の増殖を抑制することができる。
【0037】
また、実施例の製氷機では、前記水皿14が開放位置に保持されている状態では、前記ファンモータ35が常に作動して、製氷水タンク15の内部と収容室11との間で空気が循環するよう構成したので、前記殺菌手段32における製氷水タンク内に臨むシリコーンレンズやシリコーンキャップの周囲に、樹脂材料が有する蒸気が滞溜するのを防いで、蒸気によってシリコーンレンズやシリコーンキャップが汚染されて機能低下するのを防ぐことができる。
【0038】
(別実施例について)
ここで、冷凍機構で用いられる冷媒として、ハイドロカーボン(HC)系の可燃性冷媒を用いる場合、前記収容室11に配置されている蒸発器18や、該蒸発器18に接続する冷媒配管等に割れ目が生じたりして可燃性冷媒が漏出し、その漏出した可燃性冷媒が傾動機構26等の電気接点の周囲に滞溜すると、引火するおそれがある。そして、実施例のように貯氷検知手段29の検知状態では常にファンモータ35を動作する構成では、収容室内を常に空気が流れるため、漏出した可燃性冷媒が機外に排出されることなく収容室内に残留するおそれがある。
【0039】
そこで、別実施例の製氷機では、前記貯氷検知手段29の氷検知でファンモータ35の作動を開始して前記収容室11内で空気を循環させる空気循環運転中に、該ファンモータ35の作動を一時的に停止するようファンモータ35を制御する構成とすることが可能としてある。すなわち、ファンモータ35の作動開始から一定時間後に、所定時間だけ動作を停止する休止時間を設ける構成とすることができるようになっている。可燃性冷媒は、空気よりも比重が大きいために漏出箇所から漏出した可燃性冷媒は降下することから、ファンモータ35の作動を休止時間だけ停止すると、漏出した可燃性冷媒は収容室11から降下し、前記ドレンパン24のドレン管25や、貯氷室12の排出口を介して機外に排出される。すなわち、ファンモータ35の作動によって収容室11内に空気の流れを作ることで、漏出した可燃性冷媒が引火のおそれがある特定箇所に滞溜するのを防ぐと共に、該ファンモータ35の休止時間の間に、漏出した可燃性冷媒をドレン管25や排出口を介して機外に効果的に排出することができ、安全性に優れる。また、ファンモータ35は、収容室11の内部を殺菌するのに設けられるものであるので、漏出した可燃性冷媒の処理のための専用の装置を設ける必要もなく、構成が複雑になったりコストが嵩んだりすることもない。なお、ファンモータ35の休止時間は、収容室11の大きさ等に合わせて、可燃性冷媒が漏出した場合に、該可燃性冷媒を効果的に機外に排出可能な時間に変更調節するようにすればよい。
【0040】
〔変更例〕
本願は、前述した実施例等の構成に限定されるものでなく、その他の構成を適宜に採用することができる。
(1) 実施例等では、クローズドセルタイプの製氷機構を備えた製氷機で説明したが、オープンセルや流下式の製氷機構を備えた製氷機であってもよい。
(2) 実施例等では、殺菌手段から常に紫外線を製氷水タンク内に照射するよう構成したが、一定サイクル毎に紫外線の照射と照射停止とを繰り返す構成を採用することができる。例えば、貯氷検知手段による検知タイミングで殺菌手段による紫外線照射を開始し、予め設定された照射時間を経過したら照射を停止し、照射停止からサイクルタイムの経過後に照射を再開する等のパターンで、貯氷検知手段が氷を検知しなくなるまで殺菌手段を制御する構成を採用することができる。
(3) 実施例等では、エアガイドとして複数のガイド部材から構成したが、前後方向に所定長さを有する単一のガイド部材を採用することができる。そして、単一のガイド部材を用いる場合に、ガイド部材の傾斜面に前後方向に離間して複数の案内板を並列に設け、該案内板によって空気を整流させる構成を採用することができる。
(4) また、実施例等では収容室にエアガイドを用けたが、該エアガイドは必要に応じて設けるものであればよい。