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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161783
(43)【公開日】2024-11-20
(54)【発明の名称】自動運転車両
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/14 20200101AFI20241113BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20241113BHJP
【FI】
B60W50/14
B60W60/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076806
(22)【出願日】2023-05-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100187311
【弁理士】
【氏名又は名称】小飛山 悟史
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 広矩
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA57
3D241BB42
3D241CE04
3D241CE05
3D241DB01Z
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DB12Z
3D241DD11Z
(57)【要約】
【課題】前提条件が満たされていないときであっても、ドライバの単純な操作により前提条件を満足させると共に自動運転制御を開始させることができる自動運転車両を提供する。
【解決手段】自動運転車両1は、走行安全に関する制御及び自動変速制御を含む前提制御が実行可能であることを前提条件とし、前提条件を満たす場合に自動運転制御を実行可能である。自動運転車両1は、自動運転制御の開始が要求された場合に前提条件が満たされていないとき、前提制御を自動的に実行可能に切り替える自動切替の承諾をドライバに問い合わせる問合せ部15と、自動切替を承諾するドライバによる承諾入力を認識する承諾認識部16と、承諾入力が認識された場合に自動切替を実行する自動切替部17と、を備える。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行安全に関する制御及び自動変速制御を含む前提制御が実行可能であることを前提条件とし、前記前提条件を満たす場合に自動運転制御を実行可能な自動運転車両であって、
前記自動運転制御の開始が要求された場合に前記前提条件が満たされていないとき、前記前提制御を自動的に実行可能に切り替える自動切替の承諾をドライバに問い合わせる問合せ部と、
前記自動切替を承諾する前記ドライバによる承諾入力を認識する承諾認識部と、
前記承諾入力が認識された場合に前記自動切替を実行する自動切替部と、を備える、自動運転車両。
【請求項2】
前記問合せ部は、前記自動運転制御の実行が許容されている所定の自動車専用道路に前記自動運転車両の車両位置が存在する場合に前記前提条件が満たされていないとき、前記自動切替の承諾を前記ドライバに問い合わせ、
前記自動切替部は、前記承諾入力が認識された場合に前記自動切替を実行すると共に前記自動運転制御を実行する、請求項1に記載の自動運転車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動運転車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シフトポジションが自動運転可能ポジション(いわゆるDレンジ)以外の位置に変更された場合、シフトポジションを自動運転可能ポジションに戻すように通知する車両制御装置が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2022/019173号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、ユーザ(ドライバ)の操作によってシフトポジションが自動運転可能ポジションに復元された後に、自動運転モードへと移行する。しかしながら、自動運転制御が実行可能となる前提条件として走行安全に関する制御及び自動変速制御を含む前提制御の実行が不可能となっている場合、不可能となっていた前提制御を実行可能に切り替える操作は、ドライバにとって煩わしい可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、走行安全に関する制御及び自動変速制御を含む前提制御が実行可能であることを前提条件とし、前提条件を満たす場合に自動運転制御を実行可能な自動運転車両であって、自動運転制御の開始が要求された場合に前提条件が満たされていないとき、前提制御を自動的に実行可能に切り替える自動切替の承諾をドライバに問い合わせる問合せ部と、自動切替を承諾するドライバによる承諾入力を認識する承諾認識部と、承諾入力が認識された場合に自動切替を実行する自動切替部と、を備える。
【0006】
本発明の一態様に係る自動運転車両によれば、自動運転制御の開始が要求された場合に前提条件が満たされていないとき、ドライバは、自動切替の承諾の問合せを受ける。ドライバが承諾入力を行うと、承諾入力が認識され、前提制御を自動的に実行可能に切り替える自動切替が実行される。これにより、前提条件が満たされていないときであっても、ドライバの単純な操作により前提条件を満足させると共に自動運転制御を開始させることができる。
【0007】
一実施形態では、問合せ部は、自動運転制御の実行が許容されている所定の自動車専用道路に自動運転車両の車両位置が存在する場合に前提条件が満たされていないとき、自動切替の承諾をドライバに問い合わせ、自動切替部は、承諾入力が認識された場合に自動切替を実行すると共に自動運転制御を実行してもよい。この場合、例えば、自動運転車両が所定の自動車専用道路に進入する際に前提条件が満たされていないときであっても、ドライバの単純な操作により自動車専用道路での自動運転制御を円滑に開始させることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、前提条件が満たされていないときであっても、ドライバの単純な操作により前提条件を満足させると共に自動運転制御を開始させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る自動運転車両を備える車両を示すブロック図である。
図2】自動切替の承諾を説明するための概念図である。
図3図1の自動運転ECUの処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当する要素同士には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0011】
図1は、実施形態に係る自動運転車両を備える車両を示すブロック図である。自動運転車両1は、所定の前提条件を満たす場合に自動運転制御を実行可能に構成されている。自動運転制御とは、ドライバが運転操作をすることなく、自動運転車両1の走行する道路に沿って自動で自動運転車両1を走行させる車両制御である。自動運転制御としては、予め設定された自動車専用道路において実行可能な自動運転制御(例えばレベル2以上)であってもよい。前提条件とは、走行安全に関する制御及び自動変速制御を含む前提制御が実行可能であることを意味する。前提制御について、詳しくは後述する。自動運転車両1は、例えば、所定の自動車専用道路を走行可能な乗用車等である。
【0012】
[自動運転システムの構成]
図1に示されるように、自動運転車両1は、自動運転ECU[Electronic Control Unit]10、内部センサ21、外部センサ22、GPS[Global Positioning System]受信機23、地図データベース24、HMI[Human Machine Interface]25、及び、アクチュエータ26を備えている。
【0013】
自動運転ECU10は、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]、CAN[Controller Area Network]通信回路などを有する電子制御ユニットである。自動運転ECU10は、CPUが出力する信号に基づいてハードウェアを制御し、後述する自動運転ECU10の機能を実現する。より具体的な動作の一例としては、自動運転ECU10は、CAN通信回路を動作させてデータを入出力し、入力データをRAMに記憶し、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムを実行する。
【0014】
内部センサ21は、自動運転車両1の走行状態を検出する車載センサである。内部センサ21は、車速センサ、加速度センサ、及びヨーレートセンサを含んでいてもよい。車速センサ、加速度センサ、及びヨーレートセンサとしては、公知のセンサを用いることができる。内部センサ21は、自動運転車両1の走行状態に関する検出情報を自動運転ECU10に送信する。
【0015】
外部センサ22は、カメラ又はレーダセンサのいずれかを少なくとも含む。カメラは、自動運転車両1の周辺環境を撮像する撮像機器である。カメラは、例えば自動運転車両1のフロントガラスの裏側に設けられ、車両前方を撮像する。レーダセンサは、電波(例えばミリ波)又は光を利用して自動運転車両1の周辺の物体を検出する検出機器である。レーダセンサには、例えば、レーダ(ミリ波レーダ)又はライダー[LiDAR:Light Detection and Ranging]が含まれる。外部センサ22は、自動運転車両1の周辺の物体に関する検出情報を自動運転ECU10に送信する。
【0016】
GPS受信機23は、3個以上のGPS衛星から信号を受信することにより、自動運転車両1の車両位置(例えば自動運転車両1の緯度及び経度)を測定する。GPS受信機23は、測定した車両位置の情報を自動運転ECU10へ送信する。
【0017】
地図データベース24は、地図情報を記憶するデータベースである。地図データベース24は、例えば、自動運転車両1に搭載されたHDD[Hard Disk Drive]等の記録装置内に形成されている。地図データベース24に記憶された地図情報には、例えば、道路の位置情報、道路形状の情報(例えば曲率情報)、交差点及び分岐点の位置情報等が含まれる。地図情報には、予め設定された自動車専用道路において自動運転制御を実行するための道路の位置、形状、自動車専用道路の開始地点、及び、自動車専用道路の終了地点等の情報が含まれる。
【0018】
HMI25は、自動運転車両1と運転者を含む乗員との間で情報の入出力を行うためのインターフェイスである。HMI25は、ナビゲーション画面としてのタッチパネルを含むディスプレイを備えている。HMI25は、自動運転ECU10からの制御信号に応じてディスプレイの画像出力を行う。ディスプレイとして、ヘッドアップディスプレイ[HUD:Head Up Display]が用いられてもよい。ディスプレイとして、インストルメントパネルのドライバ前方にスピードメータを含んで設けられた液晶ディスプレイ(いわゆるマルチインフォメーションディスプレイ[MID:Multi Information Display])が用いられてもよい。
【0019】
HMI25は、ドライバが前提制御の実行可否を切り替える前提制御設定入力を受け付けるための設定入力部を含む。HMI25は、受け付けたドライバの前提制御設定入力に関する情報を自動運転ECU10に送信する。
【0020】
前提制御は、自動運転制御を実行するための前提となる制御であり、走行安全に関する制御及び自動変速制御を含む。走行安全に関する制御は、いわゆる車両安定制御[VSC:Vehicle Stability Control]、及び、いわゆるトラクションコントロール[TRC:Traction Control System]を含む。自動変速制御は、自動変速機の変速比が固定されない制御を意味し、例えば自動運転車両1のシフトレバーがDレンジである状態で実行される制御であってもよい。
【0021】
設定入力部としては、走行安全に関する制御については、例えば、ナビゲーション画面としてのタッチパネルを用いることができる。設定入力部としてのタッチパネルは、タッチパネルに表示されたボタン画像のタッチ操作又はスワイプ操作等により、走行安全に関する制御についての前提制御設定入力を受け付けてもよい。前提制御設定入力は、例えば、前提制御に含まれる制御の実行可否を切り替えるための、設定入力部としてのタッチパネルに表示されたソフトウェアスイッチのON操作及びOFF操作を含む。ソフトウェアスイッチのボタン画像は、例えば、ナビゲーション画面の最上位の階層の画面から複数回のタッチ操作又はスワイプ操作等により画面を遷移することで表示される最上位の階層よりも下位の画面に表示されてもよい。
【0022】
設定入力部としては、自動変速制御については、例えば、自動運転車両1のシフトレバーを用いることができる。自動運転車両1のシフトレバーは、例えば、操作の前後でレバー位置が変わらないモーメンタリ動作をしてもよい。この場合の自動変速制御は、バイワイヤシフト方式であってもよい。設定入力部としてのシフトレバーは、自動変速機の変速比が固定されない制御(例えばDレンジ)、又は、自動変速機の変速比が固定される制御(例えばスポーツモード)のいずれかを選択するように操作されることにより、自動変速制御についての前提制御設定入力を受け付けてもよい。
【0023】
上述の走行安全に関する制御のほか、前提制御は、いわゆるPCS[Pre-Crash Safety]及びいわゆるLDA[Lane Departure Alert]等の予防安全制御を含んでもよい。前提制御は、いわゆるACC[Adaptive Cruise Control]及びいわゆるLKA[Lane Keep Assist]等の運転支援制御を含んでもよい。前提制御は、電子的に切り替え可能な運転モード(例えばスノーモード等)の制御を含んでもよい。
【0024】
HMI25は、ドライバの承諾入力を受け付けるための承諾入力部を含む。HMI25は、受け付けたドライバの承諾入力に関する情報を自動運転ECU10に送信する。
【0025】
ドライバの承諾入力とは、詳しくは後述するように、問合せ部15によってドライバに対して行われた自動切替の承諾の問合せに応じて、ドライバが自動切替を承諾するための入力操作を意味する。承諾入力部としては、例えば、ナビゲーション画面としてのタッチパネルを用いることができる。承諾入力部としてのタッチパネルは、タッチパネルに表示された承諾ボタン画像のタッチ操作又はスワイプ操作等により、ドライバの承諾入力を受け付けてもよい。承諾入力のためのボタン画像は、例えば、ナビゲーション画面の最上位の階層の画面に表示される。
【0026】
アクチュエータ26は、自動運転車両1の走行制御に用いられる機器であり、自動運転ECU10からの制御信号に応じて動作する。アクチュエータ26は、駆動アクチュエータ、ブレーキアクチュエータ、及び操舵アクチュエータを少なくとも含む。駆動アクチュエータは、例えば動力源としてのエンジン又はモータ等に設けられ、自動運転車両1の駆動力を制御する。ブレーキアクチュエータは、例えば液圧ブレーキシステムに設けられ、自動運転車両1の車輪へ付与する制動力を制御する。操舵アクチュエータは、例えば電動パワーステアリングシステムのアシストモータであり、自動運転車両1の操舵トルクを制御する。
【0027】
以下、自動運転ECU10の機能について説明する。図1に示されるように、自動運転ECU10は、機能的構成として、車両情報取得部11、地図情報取得部12、自動運転準備部13、前提条件認識部14、問合せ部15、承諾認識部16、自動切替部17、及び、自動運転実行部18を有している。なお、自動運転ECU10の機能は、自動運転車両1が通信可能なサーバを用いて実現されてもよい。
【0028】
車両情報取得部11は、内部センサ21の検出結果に基づいて、自動運転車両1の走行状態を認識する。走行状態には、例えば、自動運転車両1の車速、自動運転車両1の加速度、自動運転車両1のヨーレートが含まれる。
【0029】
車両情報取得部11は、外部センサ22の検出結果に基づいて、自動運転車両1の周辺の外部環境を取得する。外部環境には、自動運転車両1に対する物体の位置、自動運転車両1に対する物体の相対速度、及び自動運転車両1に対する物体の移動方向などが含まれる。外部環境には、外部センサ22の検出結果から区画線認識処理によって認識された区画線及び道路形状が含まれていてもよい。
【0030】
車両情報取得部11は、GPS受信機23の位置情報及び地図情報に基づいて、自動運転車両1の地図上の位置である車両位置を取得する。自動運転ECU10は、SLAM[Simultaneous Localization and Mapping]技術により車両位置を認識してもよい。
【0031】
地図情報取得部12は、自動運転制御のために用いる地図情報を取得する。地図情報取得部12は、例えば、自動運転車両1の車両位置と地図データベース24とに基づいて、所定の自動車専用道路において自動運転制御を実行するための地図情報を取得する。
【0032】
自動運転準備部13は、自動運転の目的地、地図情報、車両位置、外部環境、及び走行状態(車速、ヨーレートなど)に基づいて、自動運転車両1の走行計画を生成する。目的地は、ドライバを含む乗員が設定した目的地であってもよく、自動的に目的地を提案されてもよい。例えば、ある自動車専用道路において自動運転車両1が自動運転制御を実行する場合において、当該自動車専用道路の出口を目的地とするとき、ドライバを含む乗員が目的地を設定してもよく、自動運転ECU10が自動的に目的地を設定してもよい。
【0033】
走行計画には、自動運転車両1の進路[trajectory]が含まれている。自動運転車両1の進路とは、自動運転制御において自動運転車両1が走行する未来の走行軌跡である。自動運転ECU10は、目的地、現在の自動運転車両1の地図上の位置、及び地図情報に基づいて目的地までの自動運転車両1の目標ルート(車線単位の経路)を算出する。
【0034】
自動運転準備部13は、自動運転車両1が進路に沿って走行するための速度パターン(速度計画)を算出する。自動運転準備部13は、乗員の設定した自動運転制御の許容速度、地図情報に含まれる設定速度(例えば法定最高速度)、地図情報に含まれる一時停止線、信号機などの位置情報、先行車、歩行者などの外部環境などに基づいて、自動運転車両1の速度パターンを算出する。自動運転準備部13は、自動運転車両1の進路及び速度パターンを算出することで、自動運転車両1の進路及び速度パターンを含む走行計画を生成する。
【0035】
自動運転準備部13は、自動車専用道路に車両位置が存在するか否かの判定を行う。自動運転準備部13は、自動車専用道路に車両位置が存在すると判定した場合、自動運転の準備として、車両位置が存在する自動車専用道路についての自動運転車両1の走行計画を生成する。
【0036】
前提条件認識部14は、自動運転制御を実行するための前提となる前提条件が満たされているか否かを認識する。前提条件認識部14は、前提制御に含まれる制御の全てが実行可能であるとき、前提条件が満たされていると認識する。前提条件認識部14は、前提制御に含まれる制御の少なくとも1つが実行不可能であるとき、前提条件が満たされていないと認識する。
【0037】
前提条件認識部14は、少なくとも走行安全に関する制御及び自動変速制御が実行可能であるとき、前提条件が満たされていると認識する。前提条件認識部14は、前提制御に予防安全制御が含まれる場合、走行安全に関する制御及び自動変速制御に加えて予防安全制御が実行可能であるときに前提条件が満たされていると認識してもよい。前提条件認識部14は、前提制御に運転支援制御が含まれる場合、走行安全に関する制御及び自動変速制御に加えて運転支援制御が実行可能であるときに前提条件が満たされていると認識してもよい。前提制御に含まれる制御が実行可能であるか否かは、上述の設定入力部への前提制御設定入力に応じて決まる。
【0038】
問合せ部15は、自動運転制御の開始が要求されているか否かの判定を行う。自動運転制御の開始は、ドライバの操作によって要求されてもよいし、ドライバの操作によらず自動運転車両が所定の自動車専用道路に進入するタイミングで自動的に要求されてもよい。
【0039】
問合せ部15は、自動運転制御の開始が要求された場合に前提条件が満たされているか否かの判定を行う。「自動運転制御の開始が要求された場合」とは、例えば、ステアリングホイールのスポーク部に設けられたスイッチボタン等のドライバの操作により、自動運転制御を開始させる要求信号が自動運転ECU10に送信された場合であってもよい。「自動運転制御の開始が要求された場合」とは、例えば所定の自動車専用道路に自動運転車両1が進入したことにより、車両位置及び地図情報に基づいて自動運転制御を開始させる要求を自動運転ECU10が認識した場合であってもよい。問合せ部15は、前提条件認識部14の認識結果に基づいて、自動運転制御の開始が要求された場合に前提条件が満たされているか否かを判定する。
【0040】
ここで、自動運転制御の開始が要求された場合に前提条件が満たされていないとき、そのままでは自動運転制御が開始しない。そのため、前提条件が満たされるように、不可能となっていた前提制御を実行可能に切り替える操作をドライバが行うことが考えられる。しかし、自動運転制御を開始させようとするタイミングでのこのような前提制御を実行可能に切り替える操作は、ドライバにとって煩わしい可能性がある。例えば、自動運転制御の開始を要求するためのドライバの操作とは別途の操作が必要になることで、ドライバにとって煩わしい可能性がある。また、前提制御を実行可能に切り替える操作を行うために、設定入力部としてのタッチパネルにおいて最上位の階層よりも下位の画面に表示されたソフトウェアスイッチにアクセスすることがドライバにとって煩わしい可能性がある。
【0041】
そこで、問合せ部15は、自動運転制御の開始が要求された場合に前提条件が満たされていないとき、自動切替の承諾をドライバに問い合わせる。自動切替とは、HMI25がドライバによる設定入力部への前提制御設定入力を受付けることなく、前提制御を自動的に実行可能に切り替えることを意味する。自動切替の承諾は、問合せ部15による問合せに対してドライバが承諾することを意味する。
【0042】
問合せ部15により、前提条件が満たされていないと判定した場合、自動切替の承諾をドライバに問い合せる。問合せ部15は、自動運転制御の実行が許容されている所定の自動車専用道路に車両位置が存在する場合に前提条件が満たされていないとき、自動切替の承諾をドライバに問い合わせてもよい。問合せ部15は、例えば、HMI25の承諾入力部としてのタッチパネルに、ドライバの承諾入力を受け付けるためのソフトウェアスイッチをポップアップさせることにより、自動切替の承諾をドライバに問い合せてもよい。
【0043】
承諾認識部16は、自動切替を承諾するドライバによる承諾入力を認識する。承諾認識部16は、例えば、問合せ部15によりドライバに対する問合せがあった場合にHMI25の承諾入力部がドライバの承諾入力を受け付けたとき、承諾入力を認識する。承諾認識部16は、例えば、問合せ部15によりドライバに対する問合せがあった場合にHMI25の承諾入力部がドライバの承諾入力を受け付けていないとき、承諾入力を認識しない。
【0044】
自動切替部17は、承諾認識部16によりドライバの承諾入力が認識された場合に、前提制御を自動的に実行可能に切り替える自動切替を実行する。自動切替部17は、自動切替を実行すると共に自動運転制御を実行する。ここでの自動切替部17は、自動切替を実行すると共に後述の自動運転実行部18に自動運転制御を実行させる。
【0045】
自動切替部17は、例えば、自動運転車両が所定の自動車専用道路に進入するタイミングで承諾入力が認識された場合には、承諾入力の認識の後すぐに自動切替を実行する。自動切替部17は、自動運転車両が所定の自動車専用道路に進入してから承諾入力が認識された場合には、承諾入力の認識の後すぐに自動切替を実行してもよい。これらの場合、自動車専用道路での自動運転制御を円滑に開始させることができる。
【0046】
自動切替部17は、自動運転車両が所定の自動車専用道路に進入するまでに承諾入力が認識された場合には、自動運転車両が所定の自動車専用道路に進入するまで待たずに(例えば承諾入力の認識の後すぐに)自動切替を実行してもよい。この場合、ドライバが自分の操作に応じた自動切替えであると認識し易い。
【0047】
自動運転実行部18は、自動運転制御の開始が要求された場合に前提条件が満たされているとき、生成した走行計画に基づいて、自動運転車両1の自動運転制御を実行する。自動運転実行部18は、上述の問合せ部15による問合せに応じて承諾認識部16によりドライバの承諾入力が認識された場合、自動切替が実行される結果として前提条件が満たされることとなるため、生成した走行計画に基づいて、自動運転車両1の自動運転制御を実行する。自動運転実行部18は、アクチュエータ26に制御信号を送信することにより、自動運転車両1の車速、操舵角をコントロールして自動運転制御を実行する。
【0048】
図2は、自動切替の承諾を説明するための概念図である。図2には、HMI25の一例として、ステアリングホイールのスポーク部に設けられたスイッチボタン25a、タッチパネル25bにおいて最上位の階層よりも下位の画面に表示されたソフトウェアスイッチ(設定入力部)25c、及び、タッチパネル25bにおいて最上位の階層にポップアップさせたソフトウェアスイッチ(承諾入力部)25d、が示されている。
【0049】
図2の例では、スイッチボタン25a及びソフトウェアスイッチ25cには、自動運転制御の開始を要求する機能が割り当てられている。一例として、ドライバの操作によって自動運転制御の開始が要求される場面を想定すると、ドライバは、自動運転車両が所定の自動車専用道路に進入するまでに、スイッチボタン25a又はソフトウェアスイッチ25cを操作してもよい。この場合、自動運転車両が所定の自動車専用道路に進入するタイミングまでは自動運転制御の開始の要求が保留されてもよい。或いは、ドライバは、自動運転車両が所定の自動車専用道路に進入してから、スイッチボタン25a又はソフトウェアスイッチ25cを操作してもよい。この場合、自動運転車両が所定の自動車専用道路を走行していれば、操作後すぐに自動運転制御の開始が要求されてもよい。なお、他の例として、ドライバの操作によらず、自動運転車両が所定の自動車専用道路に進入するタイミングで自動的に自動運転制御の開始が要求されてもよい。
【0050】
自動運転制御の開始が要求されると、前提条件が満たされているか否かが判定される。前提条件が満たされている場合、そのまま自動運転制御が実行される。
【0051】
一方、前提条件が満たされていない場合、例えば、タッチパネル25bにおいて最上位の階層にソフトウェアスイッチ25dがポップアップされる。ソフトウェアスイッチ25dには、例えば「承諾」等の承諾入力を意味する文字列が付されていてもよい。これから自動運転制御の実行を開始する旨の「自動運転をONします」等の文字列がソフトウェアスイッチ25dに並記されてもよい。自動運転制御の実行を開始するのと同時に自動切替を実行する旨の「同時にPCS・VSCがONになります」等の文字列がソフトウェアスイッチ25dに並記されてもよい。自動切替を実行する旨の文字列は、前提条件が満たされていない原因となっている前提制御を意味する。自動切替を実行する旨の文字列は、前提制御に含まれる少なくとも1つの実行不可能である制御に対応するように変更され得る。
【0052】
前提条件が満たされていない場合において、例えばポップアップされたソフトウェアスイッチ25dをドライバがタッチ操作すると、承諾入力が認識される。これにより、自動切替が実行されると共に、自動運転制御の実行が開始される。
【0053】
[自動運転ECU10の処理]
次に、自動運転ECUの処理の一例について、図3のフローチャートを参照して説明する。図3は、図1の自動運転車両の処理の一例を示すフローチャートである。図3に示される処理は、例えば、自動運転車両1の走行中に実行される。
【0054】
図3に示されるように、自動運転車両1の自動運転ECU10は、S01において、車両情報取得部11及び地図情報取得部12により、自動運転車両1の車両位置及び地図情報の取得を行う。車両情報取得部11は、例えば、GPS受信機23の測定結果から自動運転車両1の車両位置を取得する。地図情報取得部12は、例えば、自動運転車両1の車両位置と地図データベース24とに基づいて、所定の自動車専用道路において自動運転制御を実行するための地図情報を取得する。
【0055】
S02において、自動運転ECU10は、前提条件認識部14により、前提条件の認識を行う。前提条件認識部14は、前提制御に含まれる制御の全てが実行可能である場合に、前提条件が満たされていると認識する。前提条件認識部14は、前提制御に含まれる制御の少なくとも1つが実行不可能である場合に、前提条件が満たされていないと認識する。
【0056】
S03において、自動運転ECU10は、自動運転準備部13により、自動車専用道路に車両位置が存在するか否かの判定を行う。自動運転ECU10は、自動車専用道路に車両位置が存在すると判定した場合、S04の処理に移行する。自動運転ECU10は、自動車専用道路に車両位置が存在しないと判定した場合、図3の処理を終了する。
【0057】
S04において、自動運転ECU10は、自動運転準備部13により、自動運転の準備を行う。自動運転準備部13は、車両位置が存在する自動車専用道路についての自動運転車両1の走行計画の生成等、自動運転の準備を行う。
【0058】
S05において、自動運転ECU10は、問合せ部15により、前提条件が満たされているか否かの判定を行う。自動運転ECU10は、前提条件が満たされていないと判定した場合(S05:NO)、S06の処理に移行する。自動運転ECU10は、前提条件が満たされていると判定した場合(S05:YES)、S09の処理に移行する。
【0059】
S06において、自動運転ECU10は、問合せ部15により、自動切替の承諾をドライバに問い合せる。問合せ部15は、例えば、HMI25の承諾入力部としてのタッチパネルに、ドライバの承諾入力を受け付けるためのソフトウェアスイッチをポップアップさせることにより、自動切替の承諾をドライバに問い合せる。
【0060】
S07において、自動運転ECU10は、承諾認識部16により、承諾入力が認識されたか否かの判定を行う。自動運転ECU10は、承諾入力が認識されたと判定した場合、S08の処理に移行する。自動運転ECU10は、前提条件が満たされていないと判定した場合、図3の処理を終了する。
【0061】
S08において、自動運転ECU10は、自動切替部17により、自動切替の実行を行う。自動切替部17は、前提制御を自動的に実行可能に切り替える自動切替を実行する。その後、自動運転ECU10は、S09の処理に移行する。
【0062】
S09において、自動運転ECU10は、自動運転実行部18により、自動運転制御を実行する。自動運転実行部18は、前提条件が満たされた状態で、自動運転制御を開始する。その後、自動運転ECU10は、図3の処理を終了する。
【0063】
以上説明したように、自動運転車両1によれば、自動運転制御の開始が要求された場合に前提条件が満たされていないとき、ドライバは、自動切替の承諾の問合せを受ける。ドライバが承諾入力を行うと、承諾入力が認識され、前提制御を自動的に実行可能に切り替える自動切替が実行される。これにより、前提条件が満たされていないときであっても、ドライバの単純な操作により前提条件を満足させると共に自動運転制御を開始させることができる。
【0064】
自動運転車両1では、問合せ部15は、自動運転制御の実行が許容されている所定の自動車専用道路に車両位置が存在する場合に前提条件が満たされていないとき、自動切替の承諾をドライバに問い合わせる。自動切替部17は、承諾入力が認識された場合に自動切替を実行すると共に自動運転制御を実行する。これにより、例えば、自動運転車両1が所定の自動車専用道路に進入する際に前提条件が満たされていないときであっても、ドライバの単純な操作により自動車専用道路での自動運転制御を円滑に開始させることができる。
【0065】
なお、自動運転車両1が所定の自動車専用道路に進入する際に前提条件が満たされておらず、問合せに応じて承諾入力がなされた結果として自動切替が実行された場合、例えば自動運転車両1が当該自動車専用道路から出る際に、当該自動切替で自動的に実行可能とした前提制御を実行不可能に戻してもよい。ただし、前提制御は、自動運転車両1の安全性及び安定性に関わる機能を有する制御であることを考慮すると、ドライバによる意図的な操作に応じて実行不可能としてもよい。つまり、当該自動切替で自動的に実行可能とした前提制御は、HMI25の設定入力部が当該前提制御について実行不可能とする旨の前提制御設定入力を受け付けるまでは、実行可能のまま維持してもよい。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0067】
上記実施形態では、問合せ部15は、自動運転制御の実行が許容されている所定の自動車専用道路に車両位置が存在する場合に前提条件が満たされているか否かを判定したが、この例に限定されない。問合せ部15は、車両位置が所定の自動車専用道路に存在していない場合に前提条件が満たされているか否かを判定してもよい。
【0068】
上記実施形態では、HMI25の承諾入力部として、タッチパネル25bにおいて最上位の階層にポップアップさせたソフトウェアスイッチ25dを例示したが、この例に限定されない。HMI25の承諾入力部として、ステアリングホイールのスポーク部に設けられたスイッチボタン等、ドライバが容易に操作可能なその他のスイッチが用いられてもよい。HMI25の承諾入力部として、ドライバの声を音声認識するためのマイクが用いられてもよい。
【0069】
上記実施形態では、前提条件認識部14は、走行安全に関する制御及び自動変速制御に加えて運転支援制御が実行可能であるときに前提条件が満たされていると認識したが、この例に限定されない。前提制御に運転支援制御(例えばACC)が含まれなくてもよい。つまり、自動変速制御がACCの機能の利用を前提としてもよいし、単体としてのACCとは別に自動変速制御が加減速の制御を有していてもよい。
【0070】
上記実施形態では、自動切替部17は、自動運転車両が所定の自動車専用道路に進入するまでに承諾入力が認識された場合には、承諾入力の認識の後すぐに自動切替を実行したが、この例に限定されない。自動切替部17は、承諾入力の認識の後すぐに自動切替を実行せず、自動運転車両が所定の自動車専用道路に進入するタイミング、或いは、自動運転車両が所定の自動車専用道路に進入してから、自動切替を実行してもよい。
【0071】
上記実施形態では、自動運転車両1は、GPS受信機23及び地図データベース24を備えていたが、これらは必須ではない。GPS受信機23及び地図データベース24のいずれか又は両方が省略されていてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1…自動運転車両、10…自動運転ECU、11…車両情報取得部、12…地図情報取得部、13…自動運転準備部、14…前提条件認識部、15…問合せ部、16…承諾認識部、17…自動切替部、18…自動運転実行部、25c…ソフトウェアスイッチ(設定入力部)、25d…ソフトウェアスイッチ(承諾入力部)。
図1
図2
図3