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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161788
(43)【公開日】2024-11-20
(54)【発明の名称】液状化対策構造および構築方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/34 20060101AFI20241113BHJP
   E02D 27/26 20060101ALI20241113BHJP
   E02D 3/12 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
E02D27/34 Z
E02D27/26
E02D3/12 101
E02D3/12 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076811
(22)【出願日】2023-05-08
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 景太
(72)【発明者】
【氏名】藤山 淳司
(72)【発明者】
【氏名】木村 廣
(72)【発明者】
【氏名】船原 英樹
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 徹
【テーマコード(参考)】
2D040
2D046
【Fターム(参考)】
2D040AA01
2D040BD02
2D040BD03
2D040BD05
2D046DA18
(57)【要約】
【課題】施工手間と費用を軽減できるとともに、効率的な液状化対策を行うことができる液状化対策構造を提供する。
【解決手段】主建物2に隣り合う附属建物3を支持する附属地盤5の液状化を抑制するための液状化対策構造1である。液状化対策構造1は、主建物2の下方に設けられた地盤改良部10と、附属地盤5の外周縁部を拘束する地盤拘束部20とを備えており、地盤拘束部20の一部は、地盤改良部10のうち附属地盤5に対向する部位であることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主建物に隣り合う附属建物を支持する附属地盤の液状化を抑制するための液状化対策構造であって、
前記主建物の下方に設けられた地盤改良部と、前記附属地盤の外周縁部を拘束する地盤拘束部とを備えており、
前記地盤拘束部の一部は、前記地盤改良部のうち前記附属地盤に接する部位である
ことを特徴とする液状化対策構造。
【請求項2】
前記地盤拘束部は、前記附属地盤に形成された地中壁を備えており、
前記地中壁は、前記附属建物が前記地中壁に直接支持されることなく、前記附属建物の荷重が前記附属地盤に伝達されるように配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の液状化対策構造。
【請求項3】
前記地盤拘束部は、前記地中壁と前記附属建物との間に介設された緩衝体をさらに備えており、
前記緩衝体の剛性または強度は、前記附属地盤の剛性または強度よりも小さい
ことを特徴とする請求項2に記載の液状化対策構造。
【請求項4】
前記地中壁は、平面視格子状に配置されている
ことを特徴とする請求項2に記載の液状化対策構造。
【請求項5】
前記附属地盤に形成された前記地中壁と、前記主建物の下方に設けられた前記地盤改良部との接続部には、補強部が形成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の液状化対策構造。
【請求項6】
前記主建物の下方に設けられた地盤改良部は、前記主建物の下方の地盤の全面を地盤改良した全面改良体であり、
前記地盤拘束部の一部は、前記全面改良体の外周面のうち前記附属地盤に接する面である
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の液状化対策構造。
【請求項7】
請求項1に記載の液状化対策構造の上に建物を構築する構築方法であって、
主建物を構築する主建物構築工程と、
前記主建物を少なくとも上棟まで施工した後に前記主建物の下方の主地盤の沈下に伴って傾斜した附属地盤を整地する整地工程と、
整地した前記附属地盤の上に附属建物を構築する附属建物構築工程と、を備える
ことを特徴とする構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状化対策構造および構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地震時における地盤の液状化を抑制する液状化対策としては、例えば、特許文献1または2に記載されたものが知られている。
特許文献1の液状化防止方法は、建物を支持する地盤中に建物の周囲を囲む地中周壁を形成し、地中周壁の内側の地盤上にカウンターウェイトを設置している。カウンターウェイトと建物の荷重で、地盤を締め付けることで、地盤を拘束し液状化を阻止している。
特許文献2の液状化対策構造は、平面視格子状に形成された地中壁と、地中壁の上方に構築した構造物と、地中壁と構造物との間に介設された緩衝体と、を備えている。緩衝体の剛性は、構造物の直下の地盤の剛性よりも小さく設定されており、地中壁に作用する構造物の鉛直荷重を減少させて、直下の地盤に作用する鉛直荷重を増加させている。これによって、せん断変形を抑制する地中壁を構造物の下方に配置していながらも、構造物の鉛直荷重による地盤の拘束効果を期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-7894号公報
【特許文献2】特開2011-190645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、規模が大きい建物(主建物)の隣りに立体駐車場等の附属建物が建築されることがあるが、主建物に対して、附属建物は規模が小さい場合が多い。この場合、附属建物の液状化対策構造を、主建物の液状化対策構造と同じ仕様にすると、過剰な性能となり、施工手間や費用が余分にかかってしまうという問題があった。
このような観点から、本発明は、施工手間と費用を軽減できる効率的な液状化対策を行える液状化対策構造および構築方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決するための第一の本発明は、主建物に隣り合う附属建物を支持する附属地盤の液状化を抑制するための液状化対策構造であって、前記主建物の下方に設けられた地盤改良部と、前記附属地盤の外周縁部を拘束する地盤拘束部とを備えている。前記地盤拘束部の一部は、前記地盤改良部のうち前記附属地盤に接する部位であることを特徴とする。
本発明の液状化対策構造によれば、附属建物の地盤拘束部の一部を、主建物の地盤改良部の一部と共用しているので、地盤拘束部の施工手間と費用を軽減できる。
本発明の液状化対策構造においては、前記地盤拘束部は、前記附属地盤に形成された地中壁を備えており、前記地中壁は、前記附属建物が前記地中壁に直接支持されることなく、前記附属建物の荷重が前記附属地盤に伝達されるように配置されているものが好ましい。このような構成によれば、地中壁による附属地盤のせん断変形抑止、および附属建物の荷重による附属地盤の有効応力の増加による液状化抑制効果を期待できるとともに、附属地盤の支持力を強化することができる。
【0006】
本発明の液状化対策構造においては、前記地盤拘束部は、前記地中壁と前記附属建物との間に介設された緩衝体をさらに備えており、前記緩衝体の剛性または強度は、前記附属地盤の剛性または強度よりも小さいものが好ましい。このような構成によれば、地盤よりも変形し易い緩衝体を配置したことにより、地中壁で直接構造物を支持する場合に比べて、地中壁に作用する鉛直荷重(建物重量に起因する荷重)が減り、建物直下の地盤(地中壁で囲まれた領域に位置する地盤)に作用する鉛直荷重が増えるようになるので、せん断変形を抑制する地中壁を構造物の下方に配置していながらも、建物重量による地盤の拘束効果を期待することができる。
本発明の液状化対策構造においては、前記地中壁は、平面視格子状に配置されているものが好ましい。このような構成によれば、地中壁による附属地盤のせん断変形抑止、および附属建物の荷重による附属地盤の有効応力の増加による液状化抑制効果をさらに高めることができるとともに、附属地盤の支持力をより一層強化することができる。
本発明の液状化対策構造においては、前記附属地盤に形成された前記地中壁と、前記主建物の下方に設けられた前記地盤改良部との接続部には、補強部が形成されているものが好ましい。このような構成によれば、主建物の重量と附属建物の重量との差によって地盤沈下量の差が発生した場合であっても、接続部に発生するせん断力に対抗することができる。
本発明の液状化対策構造においては、前記主建物の下方に設けられた地盤改良部は、前記主建物の下方の地盤の全面を地盤改良した全面改良体であり、前記地盤拘束部の一部は、前記全面改良体の外周面のうち前記附属地盤に接する面であるものが好ましい。このような構成によれば、全面改良体の側面を、地盤拘束部の一部として利用することができる。
【0007】
前記課題を解決するための第二の本発明は、液状化対策構造の上に建物を構築する構築方法であって、主建物を構築する主建物構築工程と、前記主建物を少なくとも上棟まで施工した後に前記主建物の下方の主地盤の沈下に伴って傾斜した附属地盤を整地する整地工程と、整地した前記附属地盤の上に附属建物を構築する附属建物構築工程と、を備えることを特徴とする。
本発明の構築方法によれば、主建物の重量による地盤の沈下によって傾斜が発生した附属地盤を平坦にした後に附属建物を施工することができる。したがって、附属建物の構築の施工手間および費用を軽減できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の液状化対策構造および構築方法によれば、施工手間と費用を軽減でき、効率的な液状化対策を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第一の実施形態に係る液状化対策構造を示した図であって、(a)は全体平面図、(b)は要部拡大平面図である。
図2】本発明の第一の実施形態に係る構築方法を説明するための図であって、(a)は主建物構築工程を示した断面図、(b)は整地工程を示した断面図、(c)は附属建物構築工程を示した断面図である。
図3】本発明の第一の実施形態に係る液状化対策構造の三次元有限要素法による解析のメッシュモデルである。
図4】建物自重による鉛直荷重を示した図である。
図5】(a)は主建物を先に上棟させた場合の沈下量のコンター図、(b)は附属地盤の整地後に附属建物を構築した場合の沈下量のコンター図である。
図6】(a)は主建物を先に上棟させた場合の地盤の上載圧のコンター図、(b)は附属地盤の整地後に附属建物を構築した場合の地盤の上載圧のコンター図である。
図7】(a)は主建物を先に上棟させた場合の地中壁の最大せん断応力のコンター図、(b)は附属地盤の整地後に附属建物を構築した場合の地中壁の最大せん断応力のコンター図である。
図8】(a)は附属地盤に形成された地中壁と主建物の下方に設けられた地盤改良部との接続部の補強部を示した平面図、(b)は変形例に係る補強部を示した平面図である。
図9】本発明の第二の実施形態に係る液状化対策構造を示した図であって、(a)は全体平面図、(b)は断面図である。
図10】本発明の第三の実施形態に係る液状化対策構造を示した図であって、(a)は全体平面図、(b)は断面図である。
図11】本発明の第四の実施形態に係る液状化対策構造を示した図であって、(a)は全体平面図、(b)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の第一の実施形態に係る液状化対策構造および構築方法について、添付した図面を参照しながら説明する。本実施形態では、主建物に附属建物が隣り合って構築されており、主建物が格子状に形成された地盤改良部にて支持された場合を例に挙げて説明する。
図1は第一の実施形態に係る液状化対策構造を示した図であって、(a)は全体平面図、(b)は要部拡大平面図、図2は構築方法を説明するための図であって、(a)は液状化対策構造構築工程を示した断面図、(b)は主建物構築工程および整地工程を示した断面図、(c)は附属建物構築工程を示した断面図である。
【0011】
図1および図2に示すように、第一の本実施形態に係る液状化対策構造1は、主建物2(図2参照)に隣り合う附属建物3(図2参照)を支持する附属地盤5の液状化を抑制するためのものである。液状化対策構造1は、主建物2の下方に設けられた地盤改良部10と、附属地盤5の外周縁部を拘束する地盤拘束部20とを備えている。
【0012】
主建物2は、例えばオフィスビル、テナントビルやマンション等の、大きい床面積を備え重量が大きく、傾斜に対する許容値が厳しい建物である。本実施形態の主建物2は、平面視L字形状を呈している。
附属建物3は、主建物2に隣り合って構築される建物である。附属建物3は、例えば立体駐車場や倉庫等の、主建物2と比較して重量が小さく、傾斜に対する許容値が緩い建物である。本実施形態の附属建物3は、平面視L字状の主建物2の凹んだ部分に配置されている。
【0013】
地盤改良部10は、主建物2を支持する主地盤4を地盤改良することにより構築される。本実施形態の地盤改良部10は、主地盤4の内部で平面視格子状に形成された地盤改良体である。地盤改良体は、セメント系固化材を混合・撹拌し、主地盤4内で固めることで形成されている。具体的には、地盤改良部10は、主地盤4の周縁部を囲う周縁壁11と、周縁壁11の内側を格子状に区切る内壁12とを備えている。地盤改良部10は、液状化しやすい地盤を格子状の地盤改良体で囲い込むことによって、地盤の水平変位を抑え、液状化を防止する。
【0014】
地盤拘束部20は、附属地盤5の外周縁部を拘束する部位であって、附属建物3の構築位置を外側から囲うように形成されている。地盤拘束部20は、外側地中壁21と内側共用壁22とを備えている。
外側地中壁21は、附属建物3の外周部のうち、主建物2の周縁部(主地盤4の周縁部)の外側に配置された地中壁であって、地盤改良部10とは別途形成されている。すなわち、外側地中壁21は、主地盤4に接しない地中壁である。本実施形態の外側地中壁21は、外側に向かって凸となる平面視L字形状を呈している。
内側共用壁22は、主建物2と附属建物3との境界(主地盤4と附属地盤5との境界)に配置された地中壁であって、地盤改良部10と共用される壁である。つまり、地盤拘束部20の一部(内側共用壁22)は、地盤改良部10のうち附属地盤5に接する部位(周縁壁11の一部)にて共用されている。内側共用壁22は、内側(主建物2側)に向かって凹となる平面視L字形状を呈している。
【0015】
外側地中壁21および内側共用壁22は、難透水性の連続壁であり、連続壁の下端部は液状化の恐れのある液状化地盤6よりも下側の非液状化層7に根入れされている(図2の(a)参照)。連続壁は、コンクリート、モルタル、ソイルセメント、シートパイル、鋼管、H鋼などと構成要素とする各種連続壁工法(例えば、柱列式連続壁工法、等厚式連続壁工法、鋼製連続壁工法等)にて構築すればよい。本実施形態では、外側地中壁21および内側共用壁22は、縦方向に延在する円柱部23を横方向に順次並列させて連設させることで形成されている(図1の(b)参照)。なお、地盤改良部10の周縁壁11および内壁12も、外側地中壁21および内側共用壁22と同等の構成である。地盤拘束部20は、周囲が囲まれた附属地盤5で附属建物3の重量を支持することで、建物重量による附属地盤5の拘束圧増加で液状化抑制効果が得られる。
【0016】
次に、本実施形態に係る構築方法について、図2を参照しながら説明する。本実施形態の構築方法は、前記構成の液状化対策構造1の上に建物を構築する方法である。構築方法は、液状化対策構造構築工程と、主建物構築工程と、沈下工程と、整地工程と、附属建物構築工程と、を備えている。
【0017】
液状化対策構造構築工程は、液状化対策構造1を構築する工程である。液状化対策構造構築工程では、図2の(a)に示すように、主地盤4に地盤改良部10を形成するとともに、附属地盤5に地盤拘束部20を形成する。
主建物構築工程は、主建物2を構築する工程である。主建物構築工程では、図2の(b)に示すように、液状化対策構造1の主地盤4に形成された地盤改良部10の上に主建物2を構築する。主建物2の構築に伴って重量が増加し、主地盤4が沈下する。
整地工程は、主地盤4の沈下に伴って傾斜した附属地盤5を整地する工程である。整地工程では、主建物2を少なくとも上棟まで施工した後に附属地盤5の表面を平坦に整地して整地面27を形成する。
附属建物構築工程は、附属建物3を構築する工程である。附属建物構築工程では、図2の(c)に示すように、整地されて平坦になった整地面27(附属地盤5の表面)の上に附属建物3を構築する。
【0018】
図3は液状化対策構造の三次元有限要素法による解析のメッシュモデル、図4は建物自重による鉛直荷重を示した図、図5の(a)は主建物を先に上棟させた場合の沈下量のコンター図、(b)は附属地盤の整地後に附属建物を構築した場合の沈下量のコンター図、図6の(a)は主建物を先に上棟させた場合の地盤の上載圧のコンター図、(b)は附属地盤の整地後に附属建物を構築した場合の地盤の上載圧のコンター図、図7の(a)は主建物を先に上棟させた場合の地中壁の最大せん断応力のコンター図、(b)は附属地盤の整地後に附属建物を構築した場合の地中壁の最大せん断応力のコンター図である。
【0019】
建物自重が作用した際の地盤沈下について解析した結果について、図3乃至図8を参照しながら説明する。図3に示すように、本解析では、主地盤4、地盤改良部10、附属地盤5および地盤拘束部20を、三次元ソリッド要素でモデル化している。主建物2側の地盤改良部10の頂部と、附属建物3側の地盤拘束部20で囲まれた附属地盤5には、基礎を模擬したシェル要素を配している。図4に示すように、建物自重による鉛直荷重は、基礎上面から分布荷重として与えている。具体的には、主建物2側は、地盤改良部10に略600kN/m、附属建物3側は、地盤拘束部20で囲まれた附属地盤5の位置に略60kN/mの荷重を作用させている。
【0020】
まず、建物自重による沈下量について説明する。図5の(a)に示すように、主建物2を先に上棟させた場合で、附属建物3の施工前の状態では、主建物2の自重によって、沈下が発生している。具体的には、地盤改良部10の中央付近で、1.8cmに近い沈下が発生している。附属建物3の範囲では、主建物2の重量の影響で、主建物2寄りの部分、特に図中、附属地盤5の左下部分に沈下がみられ、傾斜が発生している。附属地盤5の沈下量は、主建物2と附属建物3を同時施工する場合(図示せず)の附属地盤5の沈下量よりも小さい。
附属地盤5を整地した後に附属建物3を構築した状態の沈下量を、図5の(b)に示す。図5の(b)の沈下量は、主建物2の上棟後の附属地盤5の地盤面を基準とした沈下量となっている。附属地盤5の沈下量は、中央部が0.6cm程度で、周縁部が0.2cm程度となっている。この沈下量は、主建物2と附属建物3を同時施工する場合(図示せず)の附属地盤5の沈下量よりも小さく、傾斜も大幅に軽減されている。
【0021】
次に、地盤に作用する上載圧について説明する。図6の(a)に示すように、主建物2を先に上棟させた場合で、附属建物3の施工前の状態では、附属地盤5に上載圧はかかっていない。一方、図6の(b)に示すように、附属建物3を構築した後に、附属地盤5に30~60kN/m程度の上載圧がかかっている。なお、図示はしないが、主建物2と附属建物3を同時施工する場合は、附属地盤5における上載圧は、傾斜の影響で大きい部分と極端に小さい部分が生じた。上載圧が小さい部分では、液状化抑制効果が弱まってしまう。
【0022】
次に、地盤改良部10および地盤拘束部20の最大せん断応力について説明する。図7に示すように、主建物2と附属建物3との境界部(地盤拘束部20の地盤改良部10への接続部25)で局所的にせん断応力が大きくなっていることが分かる。主建物2を先に上棟させた場合で、附属建物3の施工前の状態では、図7の(a)に示すように、接続部25のせん断応力が一番大きく311.5kN/mとなっている。附属建物3の施工後の状態では、図7の(b)に示すように、接続部25のせん断応力が一番大きく308.9kN/mとなっている。附属建物3の施工後の方が施工前よりも最大せん断応力が小さくなっている。また、図示はしないが、主建物2と附属建物3を同時施工する場合は、接続部のせん断応力が一番大きく332.5kN/mとなり、主建物2の構築後に附属建物3を構築する場合より最大せん断応力が大きくなる。
【0023】
最大せん断応力が大きい場所に対しては、地中壁を補強することで対応することができる。以下に、地中壁を補強する構造を説明する。図8の(a)は附属地盤に形成された地中壁と主建物の下方に設けられた地盤改良部との接続部の補強部を示した平面図、(b)は変形例に係る補強部を示した平面図である。
【0024】
地中壁を補強する構造は、図8の(a)に示すように、地盤拘束部20の外側地中壁21と地盤改良部10との接続部25(外側地中壁21の端部)に形成されている。接続部25を補強する補強部26は、円柱部23が複数列(本実施形態では二列)配置されており、壁厚が厚くなっている。円柱部23は、外側地中壁21の端部の円柱部23の内側に追加して配置されている。このような構成によれば、壁厚が大きくなった補強部26により、せん断応力に対抗でき、せん断応力を低減することができる。
変形例に係る補強部26は、図8の(b)に示すように、二列の円柱部23,23が、外側地中壁21の中心軸を挟むように配置されている。このような構成によれば、壁厚が大きくなった補強部26により、せん断応力にバランス良く対抗でき、せん断応力をより一層低減することができる。
なお、円柱部23の追加場所は、前記構成に限定されるものではない。せん断応力が大きい場合には、円柱部23をさらに追加して地盤改良部10側に広がって配置する構造としてもよい。
【0025】
以下に、本実施形態の液状化対策構造1および構築方法の作用効果を説明する。かかる液状化対策構造1によれば、地盤拘束部20の一部である内側共用壁22を、地盤改良部10の周縁壁11の一部(附属地盤5に対向する周縁壁11)と共用するので、内側共用壁22の施工を省略できる。つまり、地盤拘束部20の施工手間と費用を軽減することができる。
また、地盤拘束部20の外側地中壁21と、地盤改良部10との接続部25には、補強部26が形成されているので、主建物2の重量と附属建物3の重量との差によって地盤沈下量の差が発生した場合であっても、接続部25に発生するせん断応力に対抗することができる。
【0026】
本実施形態の構築方法によれば、主建物2の少なくとも上棟まで施工した後に附属地盤5を平坦に整地し、附属建物3を施工することによって、主建物2の重量による地盤の沈下によって傾斜が発生した附属地盤5を平坦にした状態で附属建物3を施工することができる。これによって、附属建物3を安定した状態で施工できるので、施工手間と費用を軽減することができる。
また、構築方法によれば、附属地盤5の沈下量を低減できる。さらに、附属地盤5の上載圧を中央部が大きく周縁部が小さくなるようにバランスよく分散できるので、局所的に上載圧が極端に小さくなることはない。これによって、液状化抑制効果を、附属地盤5の全体で効率的に得ることができる。また、地盤拘束部20の外側地中壁21と地盤改良部10との接続部25に作用するせん断応力を小さくできるので、補強部26の構造を大掛かりな構成にしなくても済む。
【0027】
次に、本発明の第二の実施形態に係る液状化対策構造について、図9を参照しながら説明する。
図9は第二の実施形態に係る液状化対策構造を示した図であって、(a)は全体平面図、(b)は断面図である。
第二の実施形態の液状化対策構造1aは、地盤改良部10aの構成が第一の実施形態と異なる。地盤改良部10aは、主建物2の下方の主地盤4の全面を地盤改良した全面改良体15である。全面改良体15は、主地盤4の全面に亘って所定の深さでブロック状に形成された改良体である。地盤拘束部20は、外側地中壁21と内側共用壁22とを備えている。外側地中壁21は、第一の実施形態と同様の構成であるので同じ符号を付して説明を省略する。内側共用壁22は、全面改良体15の外周面のうち、附属地盤5に接する側面16にて構成されている。
第二の実施形態の液状化対策構造1aによれば、第一の実施形態と同様に、内側共用壁22の施工を省略できる。したがって、地盤拘束部20の施工手間と費用を軽減することができる。
【0028】
本発明の第三の実施形態に係る液状化対策構造について、図10を参照しながら説明する。
図10は本発明の第三の実施形態に係る液状化対策構造を示した図であって、(a)は全体平面図、(b)は断面図である。
第三の実施形態の液状化対策構造1bは、地盤拘束部20bの構成が第一の実施形態と異なる。地盤拘束部20bは、外側地中壁21と内側共用壁22と地中壁30と緩衝体31とを備えている。外側地中壁21と内側共用壁22は、第一の実施形態と同様の構成であるので同じ符号を付して説明を省略する。
地中壁30は、外側地中壁21と内側共用壁22の内側に配置されている。地中壁30は、平面視格子状(本実施形態では十字形状)を呈し、外側地中壁21と内側共用壁22とで囲まれた附属地盤5を分割している。地中壁30は、附属建物3が地中壁30に直接支持されることなく、附属建物3の荷重が附属地盤5に伝達されるように配置されている。具体的には、地中壁30の上端が、附属地盤5の基礎の下端よりも低い位置に形成されており、地中壁30と附属地盤5との間にクリアランスが形成されている。
【0029】
緩衝体31は、地中壁30に作用する鉛直荷重(附属建物3の重量に起因する荷重)を緩和する目的で配置されるものであり、地中壁30と附属建物3との間に介設されている。緩衝体31は、附属地盤5の表層部に埋設されており、緩衝体31の上面は、附属地盤5の表面と面一になっている。緩衝体31は、平面視格子状になるように、地中壁30の上端面の全体に配置してもよいし、ブロック状に成型して、地中壁30の上端面の適所に点在させてもよい。
緩衝体31の剛性または強度は、附属地盤5の剛性または強度よりも小さくなっている。緩衝体31の材質等に制限はないが、例えば、附属地盤5よりも弾性係数の小さい発泡スチロールや発泡ウレタンなどを緩衝体31として使用することができる。なお、附属地盤5よりも弾性係数が大きい材料(木材や鋼材等)を使用する場合は、内部に空洞を備えた箱状に成形するなど、附属地盤5よりも変形し易くなるような構造や形状を採用すればよい。
【0030】
第三の実施形態の液状化対策構造1bによれば、第一の実施形態と同様の作用効果を得られるとともに、さらに以下の作用効果を得られる。液状化対策構造1bでは、附属地盤5よりも変形し易い緩衝体31を配置したことにより、地中壁30で附属建物3を直接支持する場合と比べて、地中壁30に作用する鉛直荷重が減り、附属建物3の直下の附属地盤5に作用する鉛直荷重が増えるようになる。これによって、せん断変形を抑制する地中壁30を附属建物3の下方に配置していながらも、附属建物3の重量による附属地盤5の拘束効果を期待することができる。すなわち、第三の実施形態に係る液状化対策構造1bによれば、附属建物3の重量により附属地盤5の初期有効応力が増大した状態となり、さらには、地中壁30により附属地盤5のせん断変形が抑制されるようになるので、液状化抑制効果がより一層大きくなる。さらに、附属地盤5の支持力を強化することができる。
【0031】
本発明の第四の実施形態に係る液状化対策構造について、図11を参照しながら説明する。
図11は本発明の第四の実施形態に係る液状化対策構造を示した図であって、(a)は全体平面図、(b)は断面図である。
第四の実施形態の液状化対策構造1cは、地盤拘束部20cの構成が第一の実施形態と異なる。地盤拘束部20cは、外側地中壁21と内側共用壁22とを備えている。内側共用壁22は、第一の実施形態と同様の構成であるので同じ符号を付して説明を省略する。外側地中壁21は鋼矢板33にて構成されている。鋼矢板33は、附属地盤5の外側を覆う位置に所定の深さまで打ち込まれている。
第四の実施形態の液状化対策構造1cによれば、第一の実施形態と同様の作用効果を得られるとともに、外側地中壁21の施工手間と費用をより一層低減できるという作用効果を得られる。
【0032】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定する趣旨ではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。例えば、地盤改良部10と地盤拘束部20との形状や組合せは、前記実施形態に限定されるものではない。例えば、全面改良体15にて構成された地盤改良部10aと、地中壁30と緩衝体31とを備えた地盤拘束部20bとを組み合わせてもよいし、地盤改良部10aと鋼矢板33で構成された外側地中壁21を有する地盤拘束部20cとを組み合わせてもよい。
また前記実施形態では、外側地中壁21と内側共用壁22は、ともにL字形状を呈しているが、これに限定されるものではない。例えば、内側共用壁が平面視コ字状に凹んだ形状であれば、外側地中壁は直線状であればよい。また、内側共用壁が直線状であれば、外側地中壁は附属建物を支持する附属地盤を囲うように平面視コ字状であればよい。また、外側地中壁と内側共用壁の形状は、附属建物の外周形状に応じて適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 液状化対策構造
2 主建物
3 附属建物
5 附属地盤
10 地盤改良部
20 地盤拘束部
21 外側地中壁
22 内側共用壁
25 接続部
26 補強部
1a 液状化対策構造
10a 地盤改良部
15 全面改良体
1b 液状化対策構造
20b 地盤拘束部
30 地中壁
31 緩衝体
1c 液状化対策構造
20c 地盤拘束部
33 鋼矢板
図1
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