(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161794
(43)【公開日】2024-11-20
(54)【発明の名称】新規なN-置換型ナイロンおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 69/00 20060101AFI20241113BHJP
【FI】
C08G69/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076823
(22)【出願日】2023-05-08
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.第71回高分子学会年次大会、発表番号3P1E012の予稿集 公益社団法人 高分子学会 発行 発行日:令和4年5月10日 2.第71回高分子学会年次大会、発表番号3P1E012のポスター 開催日:令和4年5月25日~令和4年5月27日 3.第71回高分子討論会、講演番号2I05の予稿集 公益社団法人 高分子学会 発行 発行日:令和4年8月17日 4.第71回高分子討論会、講演番号 2I05のスライド 開催場所:北海道大学 札幌キャンパス 開催日:令和4年9月6日 5.第34回 万有札幌シンポジウム-有機化学:センスとこだわりが生み出す分子たち、講演番号S-10の予稿集 万有札幌シンポジウム組織委員会 発行 6.第34回 万有札幌シンポジウム-有機化学:センスとこだわりが生み出す分子たち、講演番号S-10のスライド 開催場所:北海道大学鈴木章ホール(オンライン複合開催) 開催日:令和4年10月8日 7.第103回日本化学会 春季大会、講演番号K304-2vnの予稿集 公益社団法人 日本化学会 発行 発行日:令和5年3月8日 8.第103回日本化学会 春季大会、講演番号K304-2vnのスライド 開催場所:東京理科大学野田キャンパス 開催日:令和5年3月23日
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】佐田 和己
(72)【発明者】
【氏名】松岡 慶太郎
(72)【発明者】
【氏名】菅野 明梨
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 奈月
【テーマコード(参考)】
4J001
【Fターム(参考)】
4J001DA01
4J001EB03
4J001EB05
4J001EB07
4J001EB08
4J001EC13
4J001JA10
4J001JB42
(57)【要約】 (修正有)
【課題】新規な溶媒可溶性のN-置換型ナイロンおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】式I:
(式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して同一または異なり、所望によりハロゲン、ヒドロキシ基および/またはカルボキシ基で置換されていてもよい通常1~20個、好ましくは1~10個、1~8個、1~6個または1~4個の炭素原子を有する飽和または不飽和の直鎖、分岐鎖または環状の脂肪族炭化水素基である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒可溶性のN-置換型ナイロン。
【請求項2】
下限臨界共溶温度(LCST)を示す請求項1に記載のN-置換型ナイロン。
【請求項3】
前記溶媒が水、医薬上許容し得る塩類水溶液、モノオール類、アルキレングリコール類、アルキレングリコールの重合物類、ポリオール類、カルボン酸化合物類、(ポリ)アルキレングリコールアルキルエーテル類、前記のモノオール類、アルキレングリコール類、アルキレングリコールの重合物類、ポリオール類、カルボン酸化合物類または(ポリ)アルキレングリコールアルキルエーテル類とカルボン酸化合物類とから誘導されるエステル類、ケトン類、アルキルエーテル類、環状エーテル類、脂肪族系炭化水素類、芳香族系炭化水素類、ハロゲン置換化合物類、含窒素官能基置換炭化水素類、複素環含有化合物類、アミド系化合物類、スルホキシド系化合物類、ニトリル化合物類、動植物油脂類および石油系溶剤類からなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載のN-置換型ナイロン。
【請求項4】
-5℃~60℃の温度範囲内にガラス転移点を有する請求項1に記載のN-置換型ナイロン。
【請求項5】
式I:
【化1】
(式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して同一または異なり、所望によりハロゲン、ヒドロキシ基、カルボキシ基で置換されていてもよい1~20個の炭素原子を有する飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基であり、pは1~10の整数であり、qは1~10の整数であり、
nは2~5,000の整数である)
で示される化合物である、請求項1に記載のN-置換型ナイロン。
【請求項6】
式(I)中、R1およびR2が、それぞれ独立して同一または異なり、非置換の1~20個の炭素原子を有する飽和の脂肪族炭化水素基である、請求項5に記載のN-置換型ナイロン。
【請求項7】
式(I)中、pおよびqが、それぞれ独立して2~10個の整数である、請求項5または6に記載のN-置換型ナイロン。
【請求項8】
式(I)中、pおよびqの和が、2~15の整数である、請求項5または6に記載のN-置換型ナイロン。
【請求項9】
N-置換型ナイロンの製造方法であって、
(1)溶媒中でN,N’-ジアルキルアミン-α,ω-アルキルジアミンとジカルボン酸とを混合し、
(2)触媒の存在下で重縮合させてN-置換型ナイロンを得る
ことを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なN-置換型ナイロンおよびその製造方法に関する。詳細には、本発明は、下限臨界共溶温度(LCST)を示すN-置換型ナイロンおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナイロンは1930年代に開発された世界最古の合成繊維であり、繊維としての強さは第2級アミド間の水素結合に起因する高い融点と結晶性によるとされ、現在でも固体状態での物性・機能が研究対象となっている。
また、高分子化学の一般的常識として、ナイロンおよびポリアミドはその誘導体も含め、硬く・強い繊維として理解されている。しかし、ナイロンはその高い結晶性のために、多くの有機溶媒および水へ不溶であり、溶液物性については十分な探索が行われていない。その結果、溶液物性に基づく機能性材料や生体親和性材料への適用については研究が進められておらず、これらには柔軟で溶解性の高いビニルポリマーを中心とした研究が進んでいる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、新規な溶媒可溶性のN-置換型ナイロンおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは上記課題に鑑みて鋭意検討した結果、従来のナイロン合成のモノマーである第1級のジアミンに代えて第2級のジアミンとし、N-H結合を含まない第3級アミドを骨格に含むポリ(N-置換アミド)、すなわちN-置換型ナイロンとすることにより、溶媒可溶性のいわゆる「柔らかいナイロン」を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、溶媒可溶性のN-置換型ナイロンおよびその製造方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明は、N-置換型ナイロンおよびその製造方法を提供する。
[N-置換型ナイロン]
本発明は、溶媒可溶性のN-置換型ナイロンに関する。
本明細書において、溶媒可溶性とは、0~50℃のいずれかの温度で溶媒に可溶である性質、すなわちN-置換型ナイロンをこの温度範囲の溶媒に加えて混合すると均一透明な溶液になる(例えば、透過度が90%以上となる)性質をいう。
本明細書において、透過度とは、測定波長800nmでの透過度[%]をいう。
ある種の態様において、本発明のN-置換型ナイロンが可溶性を示す溶媒には、例えば水、医薬上許容される塩の水溶液またはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のモノオール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等のアルキレングリコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルキレングリコールの重合物類、グリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール等のポリオール類、ギ酸、酢酸等のカルボン酸化合物類、(ポリ)エチレングリコールモノメチルエーテル、(ポリ)エチレングリコールジメチルエーテル、(ポリ)エチレングリコールモノブチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールアルキルエーテル類、酢酸エチル、酢酸プロプル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等、上記モノオール類、アルキレングリコール類、ポリオール類、(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類と上記カルボン酸化合物類から誘導されるエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジエチルエーテル、エチルブチルエーテル等のアルキルエーテル類、(ポリ)エチレングリコールモノメチルエーテル、(ポリ)エチレングリコールジメチルエーテル、(ポリ)エチレングリコールモノブチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールアルキルエーテル類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、モルホリン等の環状エーテル類、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、オクタン等の脂肪族系炭化水素類、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族系炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、クロルエタン、ヘキサフロロイソプロパノール等のハロゲン置換化合物類、ニトロベンゼン、アニリン、アニソール、トルイジン等の含窒素官能基置換炭化水素類、ピリジン、フラン、メチルフラン、ピロール等の複素環含有化合物類、ジメチルホルミアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系化合物類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系化合物類、アセトニトリル等のニトリル化合物類、大豆油、アマニ油等の動植物油脂類、ホワイトガソリン、石油エーテル、ミネラルスピリット、ソルベントナフサ等の石油系溶剤類など極性および非極性の有機溶媒が含まれるが、好ましくは水、水可溶性溶剤、およびその混合物が好ましい。また、例えば塩化ナトリウム、水酸化カルシウム、リン酸ナトリウム、塩化鉄、塩化アンモニウム等、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、アンモニウム、有機アミン類等のカチオン類と、ハロゲン化物アニオン、カルボキシルアニオン、リン酸(水素)アニオン、炭酸(水素)アニオン等のアニオン類からなる無機または有機塩類、生理食塩水等の生体適合性水溶液類、酢酸緩衝溶液、リン酸緩衝溶液、トリスEDTA緩衝液等、緩衝機能を有する塩水溶液等も好適に用いられる。特に好ましくは、水または医薬上許容し得る塩類の水溶液である。
【0006】
ある種の態様において、本発明のN-置換型ナイロンの溶液は、上記した溶媒中、0~50℃の範囲で80%以上、85%以上、90%以上、95%以上または97%以上の透過度となる温度を有してよい。
【0007】
ある種の態様において、本発明のN-置換型ナイロンは、温度応答性高分子であり、より具体的には下限臨界共溶温度(LCST:Lower Critical Solution Temperature)を示してよい。下限臨界共溶温度は、下限臨界溶液温度とも呼ばれ、化合物の溶液をそれを超える温度に加熱すると白濁し、それ以下の温度に冷却すると再度溶解して透明になるという、化合物の可逆的な相分離挙動である。
【0008】
本発明のN-置換型ナイロンのLCSTとは、10mg/mlのN-置換型ナイロン水溶液を調製して、紫外可視光分光スペクトル測定装置(ETC-505型ペルチェ式恒温角型セルホルダーを装備した日本分光社 V-750測定装置)を用いて、10-50℃間での昇温速度1.5℃/minで変化させた場合の測定波長800nmでの透過度[%]が90%を下まわる時点の温度である。本発明のN-置換型ナイロンのLCSTは、脂肪族骨格の窒素原子置換基を変化させたり、脂肪族骨格中に含まれる炭素数を変化させることにより制御することができ、例えば10~45℃、11~43℃、12~42℃または14~40℃などの範囲内に含まれ得るがこれらの温度範囲に限られない。
【0009】
ある種の態様において、本発明のN-置換型ナイロンは、溶媒中、狭い温度幅で相の変化が生じるという特徴を有してよい。かかる相の変化は、見た目では均一透明系-白濁不均一系の可逆的な相の変化という現象で観察され、例えば、10mg/mlのN-置換型ナイロン水溶液を調製して、紫外可視光分光スペクトル測定装置(ETC-505型ペルチェ式恒温角型セルホルダーを装備した日本分光社 V-750測定装置)を用いて、10-50℃間の往復温度勾配速度1.5℃/minで変化させた場合の測定波長800nmでの透過度[%]を測定してよい。例えば、透過度[%]が80%以上、83%以上、85%以上、90%以上変化した場合を相の変化が生じる温度幅の基準としてよい。
【0010】
本発明のN-置換型ナイロンは、例えば、20℃以内、18℃以内、15℃以内、12℃以内、10℃以内の温度幅で相の変化を生じ得る。ここで、相の変化を生じる温度幅とは、上記の透過度[%]の変化が生じる温度から変化が終了する温度までの範囲、例えば、系の昇温過程では透明な溶液が白濁し始める(例えば、透過度が90%以下となる)温度から白濁が完了する(例えば、透過度が10%以下となる)温度までの温度幅をいい、系の降温過程では白濁した液が透明になり始める(例えば、透過度が10%以上となる)温度から均一な溶液になる(例えば、透過度が90%以上となる)温度までの温度幅をいう。
【0011】
ある種の態様において、本発明のN-置換型ナイロンは、N,N’-ジ置換型ナイロンであり、骨格の繰り返し単位中の2個の窒素原子が、それぞれ独立して、所望によりハロゲン、ヒドロキシ基および/またはカルボキシルなどで置換されていてもよい通常1~20個、好ましくは1~10個、1~8個、1~6個または1~4個の炭素原子を有する同一または異なる飽和または不飽和の直鎖、分岐鎖または環状の脂肪族炭化水素基で置換されたN,N’-ジ置換型ナイロンとしてよい。
【0012】
ある種の態様において、本発明のN-置換型ナイロンは、N,N’-ジ置換型ナイロンであり、骨格の繰り返し単位中の脂肪族骨格に含まれる隣り合う窒素原子間の飽和または不飽和の直鎖、分岐鎖または環状の脂肪族炭化水素の炭素数(p)が、通常1~10個、好ましくは1~8個、1~6個、1~4個、2~6個、2~5個、2~4個、2~3個、3~6個、3~5個、3~4個、4~6個または4~5個であるN,N’-ジ置換型ナイロンとしてよい。
【0013】
ある種の態様において、本発明のN-置換型ナイロンは、N,N’-ジ置換型ナイロンであり、骨格の繰り返し単位中の脂肪族骨格に含まれる隣り合うカルボニル基間の飽和または不飽和の直鎖、分岐鎖または環状の脂肪族炭化水素の炭素数(q)が、通常1~10個、好ましくは1~8個、1~6個、1~4個、2~6個、2~5個、2~4個、2~3個、3~6個、3~5個、3~4個、4~6個または4~5個であるN,N’-ジ置換型ナイロンとしてよい。
【0014】
具体的には、ある種の態様において、本発明のN-置換型ナイロンは、以下の式I:
【化1】
(式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して同一または異なり、所望によりハロゲン、ヒドロキシ基および/またはカルボキシ基で置換されていてもよい通常1~20個、好ましくは1~10個、1~8個、1~6個または1~4個の炭素原子を有する飽和または不飽和の直鎖、分岐鎖または環状の脂肪族炭化水素基であり、
pは脂肪族骨格に含まれる隣り合う窒素原子間の飽和または不飽和の直鎖、分岐鎖または環状の脂肪族炭化水素の炭素数を指し、かかる炭素数は通常1~10個、好ましくは1~8個、1~6個、1~4個、2~6個、2~5個、2~4個、2~3個、3~6個、3~5個、3~4個、4~6個または4~5個であり、
qは脂肪族骨格に含まれる隣り合うカルボニル基間の飽和または不飽和の直鎖、分岐鎖または環状の脂肪族炭化水素の炭素数を指し、かかる炭素数は通常1~10個、好ましくは1~8個、1~6個、1~4個、2~6個、2~5個、2~4個、2~3個、3~6個、3~5個、3~4個、4~6個または4~5個であり、
nは式IでN,N’-ジ置換型ナイロンの繰り返し単位の数であり、例えば、2以上、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、特に好ましくは20以上、また5,000以下、好ましくは2,000以下、より好ましくは500以下、特に好ましくは100以下、例えば2~5,000、5~5,000、10~5,000、20~5,000、2~2,000、5~2,000、10~2,000、20~2,000、2~500、5~500、10~500、20~500、2~100、5~100、10~100、20~100、好ましくは、5~500、10~500または20~500であってよい)
で示される化合物としてよい。
式中のR
1、R
2、p、qおよびnの置換基および整数がこれらの範囲外となる化合物は、溶媒に不溶性となり、および/またはLCSTを有しないかまたは明確なLCSTを示さない。
【0015】
ある種の態様において、式I中のN-置換型ナイロンの脂肪族骨格中に含まれる炭素数pおよびqの和(p+q)は、例えば、2~15、2~13、2~12、2~10、2~8、2~6、2~5、2~4、3~4、3~13、3~13、3~12、3~10、3~8、3~6、3~5、3~4、4~15、4~13、4~12、4~10、4~8、4~6、4~5、5~15、5~13、5~12、5~10、5~8、5~6、6~15、6~13、6~12、6~10、6~8、7~15、7~13、7~12、7~10、7~9、8~15、8~13、8~12、8~10、8~9、9~15、9~13、9~12、9~10、10~15、10~13、10~12などの整数であってよく、好ましくは6~12、7~12、8~12、9~12、10~12、6~11、7~11、8~11、9~11、10~11などの整数であってよく、より好ましくは6~12であってよく、最も好ましくは7~9であってよい。
式I中のpおよびqの和がこれらの範囲外となる化合物は、LCSTを有しないか、または明確なLCSTを有さない。
【0016】
ある種の態様において、本発明のN-置換型ナイロンの数平均分子量は、例えば、100~1,000,000、500~1,000,000、1,000~500,000、1,500~100,000、2,000~50,000、3,000~10,000などであってよいが、これらに限られない。
本発明のN-置換型ナイロンの分子量は公知一般の方法を用いて測定することができる。例えば、サイズ排除クロマトグラフ法、飛行時間型質量分析法、極限粘度測定法、光散乱分析法等が挙げられるが、最も簡便には、サイズ排除クロマトグラフ法(いわゆるSEC)が好適に用いられる。
サイズ排除クロマトグラフ法においては、本発明のN-置換型ナイロンが溶解する溶離液、例えば水、クロロホルム、ジクロロベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルミアミド、N-メチルピロリドン、ヘキサフロロイソプロパノールなどの一般的な溶離液が使用できる。また分子量標準としては、ポリスチレン、ポリエチレングリコール、プルランなどを適宜使用できる。
【0017】
ある種の態様において、本発明の式Iで示されるN-置換型ナイロンは、式(I)中、R1およびR2は、それぞれ独立して同一または異なり、非置換の1~20個、例えば1~10個、好ましくは1~6個または1~4個の炭素原子を有する飽和または不飽和の直鎖、分岐鎖または環状の脂肪族炭化水素基であり、pは脂肪族骨格に含まれる隣り合う窒素原子間の脂肪族炭化水素の炭素数を指し、かかる炭素数は通常1~10個、好ましくは1~8個、1~6個、1~4個、2~6個、2~5個、2~4個、2~3個、3~6個、3~5個、3~4個、4~6個または4~5個であり、qは脂肪族骨格に含まれる隣り合うカルボニル基間の脂肪族炭化水素の炭素数を指し、かかる炭素数は通常1~10個、好ましくは1~8個、1~6個、2~6個、2~5個、2~4個、2~3個、3~6個、3~5個、3~4個、4~6個または4~5個であり、
nは式IでN,N’-ジ置換型ナイロンの繰り返し単位の数であり、例えば、2以上、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、特に好ましくは20以上、また5,000以下、好ましくは2,000以下、より好ましくは500以下、特に好ましくは100以下、例えば2~5,000、5~5,000、10~5,000、20~5,000、2~2,000、5~2,000、10~2,000、20~2,000、2~500、5~500、10~500、20~500、2~100、5~100、10~100、20~100、好ましくは、5~500、10~500または20~500であってよい)
で示される化合物としてよい。
【0018】
また、ある種の態様において、本発明の式Iで示されるN-置換型ナイロンは、式(I)中、R1およびR2は、それぞれ独立して同一または異なり、非置換の1~6個の炭素原子を有する飽和または不飽和の直鎖、分岐鎖または環状の、好ましくは直鎖の飽和脂肪族炭化水素基であり、pは脂肪族骨格に含まれる隣り合う窒素原子間の飽和または不飽和の直鎖、分岐鎖または環状の脂肪族炭化水素の炭素数を指し、かかる炭素数は通常1~10個、好ましくは1~6個、2~6個、1~4個、2~5個、2~4個、2~3個、3~6個、3~5個、3~4個、4~6個または4~5個であり、qは脂肪族骨格に含まれる隣り合うカルボニル基間の脂肪族炭化水素の炭素数を指し、かかる炭素数は通常1~10個、好ましくは1~8個、1~6個、1~4個、2~6個、2~5個、2~4個、2~3個、3~6個、3~5個、3~4個、4~6個または4~5個であり、
nは式IでN,N’-ジ置換型ナイロンの繰り返し単位の数であり、例えば、2以上、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、特に好ましくは20以上、また5,000以下、好ましくは2,000以下、より好ましくは500以下、特に好ましくは100以下、例えば2~3,000、5~3,000、10~3,000、20~3,000、2~2,000、5~2,000、10~2,000、20~2,000、2~500、5~500、10~500、20~500、2~100、5~100、10~100、20~100、好ましくは、5~500、10~500または20~500であってよい)
で示される化合物としてよい。
【0019】
また、ある種の態様において、本発明の式Iで示されるN-置換型ナイロンは、式(I)中、R1およびR2は、それぞれ独立して同一または異なり、非置換の1~4個の炭素原子を有する飽和または不飽和の直鎖、分岐鎖または環状の、好ましくは直鎖の飽和脂肪族炭化水素基であり、pは脂肪族骨格に含まれる隣り合う窒素原子間の飽和または不飽和の直鎖、分岐鎖または環状の、好ましくは直鎖の脂肪族炭化水素の炭素数を指し、かかる炭素数は通常1~10個、好ましくは1~6個、1~4個、2~6個、2~5個、2~4個、2~3個、3~6個、3~5個、3~4個、4~6個または4~5個であり、qは脂肪族骨格に含まれる隣り合うカルボニル基間の飽和または不飽和の直鎖、分岐鎖または環状の、好ましくは直鎖の脂肪族炭化水素の炭素数を指し、かかる炭素数は通常1~10個、好ましくは1~8個、1~6個、1~4個、2~6個、2~5個、2~4個、2~3個、3~6個、3~5個、3~4個、4~6個または4~5個であり、
nは式IでN,N’-ジ置換型ナイロンの繰り返し単位の数であり、例えば、2以上、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、特に好ましくは20以上、また5,000以下、好ましくは2,000以下、より好ましくは500以下、特に好ましくは100以下、例えば5~2,000、10~2,000、20~2,000、2~500、5~500、10~500、20~500、2~100、5~100、10~100、20~100、好ましくは、5~500、10~500または20~500であってよい)
で示される化合物としてよい。
【0020】
ある種の態様において、本発明のN-置換型ナイロンは、柔らかいナイロンであり、低いガラスを有してよい。
具体的には、本発明のN-置換型ナイロンは、例えば、METTLER社製 TOLEDO STAR^e System DSC 1で測定して、例えば、-5℃~60℃、好ましくは-3℃~55℃の範囲内にガラス転移点(Tg)を有するものであってよい。
これらの物性により、本発明のポリ(N-置換アミド)化合物は、常温で固体ないしガム状の性状を有してよい。
【0021】
ある種の態様において、本発明のN-置換型ナイロンは、加水分解し得る化合物であってよい。
【0022】
具体的には、本発明のN-置換型ナイロンは、例えば、
以下の式I:
【化2】
において以下の置換基および変数で表される化合物としてよい。
(i)R
1およびR
2はエチルであり、(p,q)は(2,9)である。
(ii)R
1およびR
2はプロピルであり、(p,q)は(2,9)である。
(iii)R
1およびR
2はイソプロピルであり、(p,q)は(2,9)である。
(iv)R
1およびR
2はブチルであり、(p,q)は(2,9)である。
(v)R
1およびR
2はイソブチルであり、(p,q)は(2,9)である。
(vi)R
1およびR
2はt-ブチルであり、(p,q)は(2,9)である。
(vii)R
1およびR
2はエチルであり、(p,q)は(2,10)である。
(viii)R
1およびR
2はプロピルであり、(p,q)は(2,10)である。
(ix)R
1およびR
2はイソプロピルであり、(p,q)は(2,10)である。
(x)R
1およびR
2はブチルであり、(p,q)は(2,10)である。
(xi)R
1およびR
2はイソブチルであり、(p,q)は(2,10)である。
(xii)R
1およびR
2はt-ブチルであり、(p,q)は(2,10)である。
(xiii)R
1およびR
2はエチルであり、(p,q)は(3,8)である。
(xiv)R
1およびR
2はプロピルであり、(p,q)は(3,8)である。
(xv)R
1およびR
2はイソプロピルであり、(p,q)は(3,8)である。
(xvi)R
1およびR
2はブチルであり、(p,q)は(3,8)である。
(xvii)R
1およびR
2はイソブチルであり、(p,q)は(3,8)である。
(xviii)R
1およびR
2はt-ブチルであり、(p,q)は(3,8)である。
(xix)R
1およびR
2はエチルであり、(p,q)は(3,9)である。
(xx)R
1およびR
2はプロピルであり、(p,q)は(3,9)である。
(xxi)R
1およびR
2はイソプロピルであり、(p,q)は(3,9)である。
(xxii)R
1およびR
2はブチルであり、(p,q)は(3,9)である。
(xxiii)R
1およびR
2はイソブチルであり、(p,q)は(3,9)である。
(xxiv)R
1およびR
2はt-ブチルであり、(p,q)は(3,9)である。
(xxv)R
1およびR
2はエチルであり、(p,q)は(3,10)である。
(xxvi)R
1およびR
2はプロピルであり、(p,q)は(3,10)である。
(xxvii)R
1およびR
2はイソプロピルであり、(p,q)は(3,10)である。
(xxviii)R
1およびR
2はブチルであり、(p,q)は(3,10)である。
(xxix)R
1およびR
2はイソブチルであり、(p,q)は(3,10)である。
(xxx)R
1およびR
2はt-ブチルであり、(p,q)は(3,10)である。
(xxxi)R
1およびR
2はエチルであり、(p,q)は(4,7)である。
(xxxii)R
1およびR
2はプロピルであり、(p,q)は(4,7)である。
(xxxiii)R
1およびR
2はイソプロピルであり、(p,q)は(4,7)である。
(xxxiv)R
1およびR
2はブチルであり、(p,q)は(4,7)である。
(xxxv)R
1およびR
2はイソブチルであり、(p,q)は(4,7)である。
(xxxvi)R
1およびR
2はt-ブチルであり、(p,q)は(4,7)である。
(xxxvii)R
1およびR
2はエチルであり、(p,q)は(4,8)である。
(xxxviii)R
1およびR
2はプロピルであり、(p,q)は(4,8)である。
(xxxix)R
1およびR
2はイソプロピルであり、(p,q)は(4,8)である。
(xl)R
1およびR
2はブチルであり、(p,q)は(4,8)である。
(xli)R
1およびR
2はイソブチルであり、(p,q)は(4,8)である。
(xlii)R
1およびR
2はt-ブチルであり、(p,q)は(4,8)である。
(xliii)R
1およびR
2はエチルであり、(p,q)は(4,9)である。
(xliv)R
1およびR
2はプロピルであり、(p,q)は(4,9)である。
(xlv)R
1およびR
2はイソプロピルであり、(p,q)は(4,9)である。
(xlvi)R
1およびR
2はブチルであり、(p,q)は(4,9)である。
(xlvii)R
1およびR
2はイソブチルであり、(p,q)は(4,9)である。
(xlviii)R
1およびR
2はt-ブチルであり、(p,q)は(4,9)である。
(xliv)R
1およびR
2はエチルであり、(p,q)は(5,7)である。
(xlv)R
1およびR
2はプロピルであり、(p,q)は(5,7)である。
(xlvi)R
1およびR
2はイソプロピルであり、(p,q)は(5,7)である。
(xlvii)R
1およびR
2はブチルであり、(p,q)は(5,7)である。
(xlviii)R
1およびR
2はイソブチルであり、(p,q)は(5,7)である。
(xlix)R
1およびR
2はt-ブチルであり、(p,q)は(5,7)である。
(l)R
1およびR
2はエチルであり、(p,q)は(6,6)である。
(li)R
1およびR
2はプロピルであり、(p,q)は(6,6)である。
(lii)R
1およびR
2はイソプロピルであり、(p,q)は(6,6)である。
(liii)R
1およびR
2はブチルであり、(p,q)は(6,6)である。
(liv)R
1およびR
2はイソブチルであり、(p,q)は(6,6)である。
(lv)R
1およびR
2はt-ブチルであり、(p,q)は(6,6)である。
(lvi)R
1およびR
2はエチルであり、(p,q)は(7,5)である。
(lvii)R
1およびR
2はプロピルであり、(p,q)は(7,5)である。
(lviii)R
1およびR
2はイソプロピルであり、(p,q)は(7,5)である。
(lix)R
1およびR
2はブチルであり、(p,q)は(7,5)である。
(lx)R
1およびR
2はイソブチルであり、(p,q)は(7,5)である。
(lxi)R
1およびR
2はt-ブチルであり、(p,q)は(7,5)である。
【0023】
[N-置換型ナイロンの製造方法]
本発明は、第2の局面において、溶媒可溶性のN-置換型ナイロンの製造方法に関する。
本発明のN-置換型ナイロンは、
(1)溶媒中でN,N’-ジアルキルアミン-α,ω-アルキルジアミンとジカルボン酸とを混合し、
(2)触媒の存在下で重縮合させてN-置換型ナイロンを得る
方法により製造してよい。
あるいは、本発明のN-置換型ナイロンは、下記の方法により製造してもよい。
1.ジカルボン酸を既存の方法により、酸ハロゲン化、もしくは酸無水物化したのちに、N,N’-ジアルキルアミン-α,ω-アルキルジアミンを添加し、重合させてN-置換型ナイロンを得る。ここで、酸ハロゲン化は酸クロリドを用いることができる。
2.または、溶媒中でN,N’-ジアルキルアミン-α,ω-アルキルジアミンとジカルボン酸とを混合し、触媒の存在下で重縮合させてN-置換型ナイロンを得る。
重合反応としては、公知の重合反応を用いることができる。例えば、界面重合法、すなわち、水可溶化させたジアミン化合物を反応槽に導入し、さらに水に対して非相溶、かつ比重が1未満の溶剤中に溶解させた酸ハロゲン化物を有機層-水槽界面で重合させナイロンを得る方法や、本反応に対して不活性な溶液、もしくは実質的に溶媒を含まないバルク条件下において、酸ハロゲン化物とジアミン化合物の反応中に生じるハロゲン化水素を吸収するために当量以上の塩基性化合物の存在下において重合させる方法、または(水)溶液中において、水可溶化させたジアミン化合物とジカルボン酸化合物を当量混合し所謂ナイロン塩水溶液としたのち、加熱、必要に応じて加圧下で重縮合反応させる方法としてよい。
上記に例示した製造方法において原料モノマーとして用いるN,N’-ジアルキルアミン-α,ω-アルキルジアミンの2個の窒素原子間のアルキル基は、N-置換型ナイロンについて上記式(I)で「p」の数を有する脂肪族炭化水素であってよい。また、原料モノマーとして用いるジカルボン酸としては、上記式(I)で「q」の数を有する脂肪族炭化水素基のハロゲン化ジカルボン酸であってよく、例えば、ジカルボン酸クロリド、ジカルボン酸ブロミド、ジカルボン酸ヨージドなどが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0024】
2の製造方法において用いる塩基性化合物としては、反応の際に生じるハロゲン化水素を塩として吸収するために用いられる。一般的にポリアミドの縮重合に使用されるものであれば限定されないが、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン等のアルキルアミン類、ジメチルアニリン、1,8-ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン等の芳香族アミン類、ピリジン、メチルピリジン、ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、ジアザビシクロオクタン、N-メチルイミダゾール、キヌクリジン、ルチジン等の含窒素複素化合物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、リン酸カリウム等の無機塩基類等であってよい。
【0025】
上記の製造方法における工程では、例えば、大気圧下、0~80℃、0~60℃、好ましくは0~50℃などの温度で、1~120時間、2~100時間、好ましくは2~96時間撹拌して行ってよい。
上記の製造方法によって生成したN-置換型ナイロンは、各種有機溶媒を用いて再沈殿するか、または水を用いた透析によって純度を高めてよい。
【0026】
本発明のN-置換型ナイロンは、1H NMRおよび/または13C NMR、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により構造および分子量を測定することができる。
【実施例0027】
本発明のN-置換型ナイロンを以下の手順で製造した。
N,N’-ジアルキルアミン-α,ω-アルキルジアミン (1当量)およびトリエチルアミン(2当量)を含むジクロロメタン(0.4M)溶液に対して、氷冷下ジカルボン酸クロリド(2当量)を滴加した。
反応溶液を0℃で30分撹拌後、室温まで昇温し2時間さらに撹拌した。
反応終了後、反応溶媒をロータリーエバポレーターで減圧留去したのち、得られた粗生成物を透析膜(Spectra/Por(登録商標)3, 3.5 kD)を用いて水中で3~5日間透析による精製を行った。
水溶液を減圧留去したのち、凍結乾燥を行うことで本発明のN-置換型ナイロンを得た。
得られたN-置換型ナイロンの構造および分子量は、以下の測定条件を用いた1H 1H NMR(CDCl3,400MHz)、13C NMR(CDCl3,100MHz)およびサイズ排除クロマトグラフィー(SEC(CHCl3))の測定結果から決定した。
・NMR
機器:JEOL JNM-ECZ400
測定条件:CDCl3溶媒、室温
・サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)
カラム: Shodex K-803L and K-805L
機器: SHIMADZU CTO-20A with LC-20AD gradient pump, SPD-20A UV detector, and RID-20A refractive detector
測定条件:CHCl3溶液、40℃、流速1.0 mL/min
【0028】
製造例1
N,N’-dimethylnylon-2,4
N,N’-dimethylethylenediamine(215μL,2.00mmol)とAdipoyl chloride(291μL,2.00mmol)をモノマーとすることで、N,N’-dimethylnylon-2,4(13.7mg,4% yield)を黄色固体として得た。
1H NMR(CDCl3,400MHz)σ=3.29-3.69(m,4H),2.81-3.13(m,6H),2.20-2.46(m,4H),1.51-1.77(m,4H).
13C NMR(CDCl3,100MHz)σ=172.9,47.0,46.8,44.8,36.7,35.8,33.8,33.2,24.6.
SEC(CHCl3):Mn=2.09×104,PDI(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))=2.54,Tg=29.0℃.
【0029】
製造例2
N,N’-dimethylnylon-2,5
N,N’-dimethylethylenediamine(1.32mL,12.3mmol)とPimeloyl chloride(2.00mL,12.3mmol)をモノマーとすることで、N,N’-dimethylnylon-2,5(848mg,32% yield)を黄色固体として得た。
1H NMR(CDCl3,400MHz)σ=3.39-3.55(m,4H),2.91-3.09(m,6H),2.16-2.42(m,4H),1.54-1.73(m,4H),1.26-1.47(m,2H).
13C NMR(CDCl3,100MHz)σ=173.1,47.0,46.8,44.7,36.8,35.7,33.8,33.2,32.4,29.1,25.1,24.7.
SEC(CHCl3):Mn=1.31×104,PDI(Mw/Mn)=7.86,Tg=22.5℃.
【0030】
製造例3
N,N’-dimethylnylon-2,6
N,N’-dimethylethylenediamine(1.19mL,11.1mmol)とSuberoyl chloride(2.00mL,11.1mmol)をモノマーとすることで、N,N’-dimethylnylon-2,6(1.29g,51% yield)を黄色固体として得た。
1H NMR(CDCl3,400MHz)σ=3.36-3.61(m,4H),2.85-3.12(m,6H),2.17-2.40(m,4H),1.46-1.72(m,4H),1.27-1.42(m,4H).
13C NMR(CDCl3,100MHz)σ=173.3,47.1,46.9,44.6,36.8,35.7,33.7,33.3,32.5,29.2,25.3,24.8.
SEC(CHCl3):Mn=1.49×104,PDI(Mw/Mn)=7.16,Tg=7.5℃.
【0031】
製造例4
N,N’-dimethylnylon-2,7
N,N’-dimethylethylenediamine(215μL,2.00mmol)とAzelaoyl chloride(391μL,2.00mmol)をモノマーとすることで、N,N’-dimethylnylon-2,7(164mg,34% yield)を黄色固体として得た。
1H NMR(CDCl3,400MHz)σ=3.38-3.60(m,4H),2.89-3.09(m,6H),2.19-2.40(m,4H),1.42-1.72(m,4H),1.20-1.42(m,6H).
13C NMR(CDCl3,100MHz)σ=173.3,46.9,44.6,36.9,35.7,33.7,33.4,32.6,29.3,25.4,24.9.
SEC(CHCl3):Mn=2.46×104,PDI(Mw/Mn)=4.69,Tg=10.5℃.
【0032】
製造例5
N,N’-dimethylnylon-2,8
N,N’-dimethylethylenediamine(215μL,2.00mmol)とSebacoyl chloride(427μL,2.00mmol)をモノマーとすることで、N,N’-dimethylnylon-2,8(187mg,37% yield)を黄色固体として得た。
1H NMR(CDCl3,400MHz)σ=3.34-3.66(m,4H),2.78-3.18(m,6H),2.13-2.41(m,4H),1.40-1.73(m,4H),1.21-1.39(m,8H).
13C NMR(CDCl3,100MHz)σ=173.4,47.1,46.9,44.6,36.9,35.7,33.7,33.4,32.6,29.4,29.3,25.4,24.9.
SEC(CHCl3):Mn=1.62×104,PDI(Mw/Mn)=4.95,Tg=4.7℃.
【0033】
製造例6
N,N’-dimethylnylon-3,3
N,N’-dimethyl-1,3-propanediamine(246μL,2.00mmol)とGlutaryl chloride(258μL,2.00mmol)をモノマーとすることで、N,N’-dimethylnylon-3,3(152mg,38% yield)を茶色固体として得た。
1H NMR(CDCl3,400MHz)σ=3.18-3.52(m,4H),2.79-3.09(m,6H),2.20-2.49(m,4H),1.81-2.02(m,2H),1.58-1.81(m,2H).
13C NMR(CDCl3,100MHz)σ=172.3,47.4,45.3,45.1,35.3,33.2,32.7,26.2,24.9,20.5,20.2.
SEC(CHCl3):Mn=2.97×103,PDI(Mw/Mn)=3.58,Tg=24.5℃.
【0034】
製造例7
N,N’-dimethylnylon-3,4
N,N’-dimethyl-1,3-propanediamine(424μL,3.44mmol)とAdipoyl chloride(500μL,3.44mmol)をモノマーとすることで、N,N’-dimethylnylon-3,4(161mg,22% yield)を茶色固体として得た。
1H NMR(CDCl3,400MHz)σ=3.10-3.52(m,4H),2.75-3.09(m,6H),2.11-2.40(m,4H),1.70-1.94(m,2H),1.56-1.70(m,4H).
13C NMR(CDCl3,100MHz)σ=172.9,172.7,47.9,45.6,45.5,35.7,33.6,33.0,26.6,25.2,25.0.
SEC(CHCl3):Mn=4.51×103,PDI(Mw/Mn)=3.15,Tg=16.3℃.
【0035】
製造例8
N,N’-dimethylnylon-3,5
N,N’-dimethyl-1,3-propanediamine(3.00mL,24.4mmol)とPimeloyl chloride(4.00mL,24.6mmol)をモノマーとすることで、N,N’-dimethylnylon-3,5(1.23g,22% yield)を茶色固体として得た。
1H NMR(CDCl3,400MHz)σ=3.20-3.46(m,4H),2.86-3.06(m,6H),2.23-2.41(m,4H),1.69-1.91(m,2H),1.55-1.69(m,4H),1.28-1.48(m,2H).
13C NMR(CDCl3,100MHz)σ=172.7,47.5,45.3,45.2,35.3,33.2,32.7,29.0,26.2,25.0,24.9,24.7.
SEC(CHCl3):Mn=1.42×104,PDI(Mw/Mn)=5.52,Tg=10.3℃.
【0036】
製造例9
N,N’-dimethylnylon-3,6
N,N’-dimethyl-1,3-propanediamine(246μL,2.00mmol)とSuberoyl chloride(361μL,2.00mmol)をモノマーとすることで、N,N’-dimethylnylon-3,6(244mg,51% yield)を茶色固体として得た。
1H NMR(CDCl3,400MHz)σ=3.20-3.48(m,4H),2.83-3.08(m,6H),2.19-2.39(m,4H),1.70-1.99(m,2H),1.46-1.70(m,4H),1.22-1.45(m,4H).
13C NMR(CDCl3,100MHz)σ=172.9,47.6,45.3,45.2,35.4,33.5,33.3,32.9,29.3,26.3,25.3,24.9.
SEC(CHCl3):Mn=1.11×104,PDI(Mw/Mn)=8.96,Tg=3.7℃.
【0037】
製造例10
N,N’-dimethylnylon-3,7
N,N’-dimethyl-1,3-propanediamine(246μL,2.00mmol)とAzelaoyl chloride(391μL,2.00mmol)をモノマーとすることで、N,N’-dimethylnylon-3,7(211mg,42% yield)を茶色固体として得た。
1H NMR(CDCl3,400MHz)σ=3.22-3.47(m,4H),2.85-3.10(m,6H),2.15-2.41(m,4H),1.69-1.83(m,2H),1.42-1.69(m,4H),1.09-1.40(m,6H).
13C NMR(CDCl3,100MHz)σ=173.0,47.7,45.3,35.4,33.6,33.0,29.3,26.4,25.3,25.0.
SEC(CHCl3):Mn=1.96×104,PDI(Mw/Mn)=2.88,Tg=6.2℃.
【0038】
製造例11
N,N’-dimethylnylon-4,2
N,N’-dimethyl-1,4-butanediamine(291μL,2.00mmol)とSuccinyl chloride(226μL,2.00mmol)をモノマーとすることで、N,N’-dimethylnylon-4,2(177mg,45% yield)を茶色固体として得た。
1H NMR(CDCl3,400MHz)σ=3.24-3.51(m,4H),2.83-3.13(m,6H),2.56-2.73(m,4H),1.39-1.65(m,4H).
13C NMR(CDCl3,100MHz)σ=171.6,49.4,47.4,47.2,35.1,33.5,33.4,28.5,28.4,28.0,27.8,25.6,25.4,24.5.
SEC(DMF):Mn=2.66×104,PDI(Mw/Mn)=4.26,Tg=39.5℃.
【0039】
製造例12
N,N’-dimethylnylon-4,3
N,N’-dimethyl-1,4-butanediamine(564μL,3.88mmol)とGlutaryl chloride (500μL,3.88mmol)をモノマーとすることで、N,N’-dimethylnylon-4,3(274mg,33% yield)を茶色固体として得た。
1H NMR(CDCl3,400MHz)σ=3.16-3.54(m,4H),2.85-3.07(m,6H),2.26-2.54(m,4H),1.78-2.08(m,2H),1.33-1.59(m,4H).
13C NMR(CDCl3,100MHz)σ=172.3,49.4,47.2,46.9,35.2,33.2,32.8,32.1,25.5,24.5,24.4,20.6,20.3.
SEC(CHCl3):Mn=8.48×103,PDI(Mw/Mn)=3.43,Tg=19.5℃.
【0040】
製造例13
N,N’-dimethylnylon-4,4
N,N’-dimethyl-1,4-butanediamine(3.51g,30.2mmol)とAdipoyl chloride(4.40mL,30.3mmol)をモノマーとすることで、N,N’-dimethylnylon-4,4(1.37g,20% yield)を茶色固体として得た。
1H NMR(CDCl3,400MHz)σ=3.20-3.51(m,4H),2.83-3.05(m,6H),2.26-2.44(m,4H),1.59-1.94(m,4H),1.36-1.59(m,4H).
13C NMR(CDCl3,100MHz)σ=172.6,172.5,172.4,49.5,47.2,46.9,35.3,33.3,32.7,25.7,25.5,25.1,24.8,24.8,24.4,24.4.
SEC(CHCl3):Mn=4.81×104,PDI(Mw/Mn)=3.47,Tg=12.5℃.
【0041】
製造例14
N,N’-dimethylnylon-4,5
N,N’-dimethyl-1,4-butanediamine(446μL,3.07mmol)とPimeloyl chloride(500μL,3.07mmol)をモノマーとすることで、N,N’-dimethylnylon-4,5(284mg,39% yield)を茶色固体として得た。
1H NMR(CDCl3,400MHz)σ=3.23-3.50(m,4H),2.83-3.03(m,6H),2.21-2.45(m,4H),1.58-1.79(m,4H),1.44-1.58(m,4H),1.26-1.44(m,2H).
13C NMR(CDCl3,100MHz)σ=172.9,49.7,47.4,47.1,35.5,33.5,32.9,29.3,25.7,25.2,24.9,24.6,24.5.
SEC:Mn=1.21×104,PDI(Mw/Mn)=15.4,Tg=4.0℃.
【0042】
製造例15
N,N’-dimethylnylon-4,6
N,N’-dimethyl-1,4-butanediamine(402μL,2.77mmol)とSuberoyl chloride(500μL,2.77mmol)をモノマーとすることで、N,N’-dimethylnylon-4,6(373mg,53% yield)を黄色固体として得た。
1H NMR(CDCl3,400MHz)σ=3.18-3.52(m,4H),2.82-3.04(m,6H),2.16-2.40(m,4H),1.41-1.77(m,8H),1.16-1.41(m,4H).
13C NMR(CDCl3,100MHz)σ=172.8,49.5,47.2,46.9,35.3,33.5,33.3,32.8,29.3,25.5,25.3,24.9,24.4,24.4.
SEC(CHCl3):Mn=6.39×104,PDI(Mw/Mn)=5.19,Tg=-0.5℃.
【0043】
製造例16
N,N’-dimethylnylon-5,1
N,N’-dimethyl-1,5-pentanediamine(322μL,2.00mmol)とMalonyl chloride(194μL,2.00mmol)をモノマーとすることで、N,N’-dimethylnylon-5,1(193mg,49% yield)を黄色固体として得た。
1H NMR(CDCl3,400MHz)σ=3.14-3.90(m,6H),2.47-3.14(m,6H),1.43-1.88(m,4H),1.01-1.43(m,2H).
13C NMR(CDCl3,100MHz)σ=166.8,50.4,49.0,47.6,47.3,40.7,40.6,35.9,35.8,35.6,33.5,33.4,28.0,26.7,25.6,23.8.
SEC(CHCl3):Mn=9.12×103,PDI(Mw/Mn)=3.52,Tg=54.5℃.
【0044】
製造例17
N,N’-dimethylnylon-5,2
N,N’-dimethyl-1,5-pentanediamine(320μL,2.00mmol)とSuccinyl chloride(225μL,2.00mmol)をモノマーとすることで、N,N’-dimethylnylon-5,2(242mg,57% yield)を茶色固体として得た。
1H NMR(CDCl3,400MHz)σ=3.23-3.40(m,4H),2.80-3.06(m,6H),2.52-2.70(m,4H),1.37-1.71(m,4H),1.11-1.37(m,2H).
13C NMR(CDCl3,100MHz)σ=171.6,49.7,47.6,35.2,35.1,33.5,33.5,28.4,28.0,27.9,27.8,27.0,24.0.
SEC(CHCl3):Mn=6.95×103,PDI=1.63,Tg=27.0℃.
【0045】
製造例18
N,N’-dimethylnylon-5,3
N,N’-dimethyl-1,5-pentanediamine(3.35g,25.7mmol)とGlutaryl chloride(3.30mL,25.6mmol)をモノマーとすることで、N,N’-dimethylnylon-5,3(1.88g,32% yield)を茶色固体として得た。
1H NMR(CDCl3,400MHz)σ=3.20-3.46(m,4H),2.86-3.12(m,6H),2.33-2.51(m,4H),1.89-2.04(m,2H),1.47-1.64(m,4H),1.16-1.34(m,2H).
13C NMR(CDCl3,100MHz)σ=172.3,49.7,47.4,35.3,35.2,33.3,32.8,32.0,28.2,28.1,26.9,23.9,20.6,20.4.
SEC(CHCl3):Mn=1.71×104,PDI(Mw/Mn)=2.43,Tg=11.0℃.
【0046】
製造例19
N,N’-dimethylnylon-5,4
N,N’-dimethyl-1,5-pentanediamine(332μL,2.00mmol)とAdipoyl chloride(291μL,2.00mmol)をモノマーとすることで、N,N’-dimethylnylon-5,4(143mg,30% yield)を茶色固体として得た。
1H NMR(CDCl3,400MHz)σ=3.13-3.38(m,4H),2.78-3.00(m,6H),2.17-2.37(m,4H),1.58-1.71(m,4H),1.41-1.58(m,4H),1.09-1.31(m,2H).
13C NMR(CDCl3,100MHz)σ=172.3,49.8,47.4,35.3,35.2,33.3,32.7,28.3,28.1,26.9,26.8,25.1,24.7,23.9.
SEC(CHCl3):Mn=8.95×103,PDI(Mw/Mn)=3.69,Tg=8.0℃.
【0047】
製造例20
N,N’-dimethylnylon-5,5
N,N’-dimethyl-1,5-pentanediamine(332μL,2.00mmol)とPimeloyl chloride(326μL,2.00mmol)をモノマーとすることで、N,N’-dimethylnylon-5,5(257mg,51% yield)を茶色固体として得た。
1H NMR(CDCl3,400MHz)σ=3.17-3.43(m,4H),2.83-3.04(m,6H),2.23-2.38(m,4H),1.61-1.76(m,4H),1.47-1.61(m,4H),1.34-1.47(m,2H),1.17-1.34(m,2H).
13C NMR(CDCl3,100MHz)σ=172.6,49.8,47.4,35.3,33.3,32.7,29.2,28.2,26.9,25.1,24.7,24.0.
SEC(CHCl3):Mn=2.52×104,PDI=5.39,Tg=-1.2℃.
【0048】
製造例21
N,N’-dimethylnylon-6,1
N,N’-dimethyl-1,6-hexanediamine(348μL,2.00mmol)とMalonyl chloride(194μL,2.00mmol)をモノマーとすることで、N,N’-dimethylnylon-6,1(97.0mg,23% yield)を黄色固体として得た。
1H NMR(CDCl3,400MHz)σ=3.10-3.92(m,6H),2.34-3.10(m,6H),1.43-1.84(m,4H),1.11-1.43(m,4H).
13C NMR(CDCl3,100MHz)σ=166.7,50.4,49.0,47.8,40.7,40.7,36.1,35.9,35.8,33.4,33.3,28.2,26.9,26.5.
SEC(CHCl3):Mn=1.03×104,PDI(Mw/Mn)=4.00,Tg=35.5℃.
【0049】
製造例22
N,N’-dimethylnylon-6,2
N,N’-dimethyl-1,6-hexanediamine(4.60mL,26.5mmol)とSuccinyl chloride(3.00mL,26.5mmol)をモノマーとすることで、N,N’-dimethylnylon-6,2(1.69g,28% yield)を茶色固体として得た。
1H NMR(CDCl3,400MHz)σ=3.23-3.42(m,4H),2.82-3.11(m,6H),2.55-2.72(m,4H),1.42-1.80(m,4H),1.16-1.38(m,4H).
13C NMR(CDCl3,100MHz)σ=171.7,49.7,47.7,47.6,35.1,33.5,28.6,28.4,28.2,28.0,27.8,27.2,26.5.
SEC(DMF):Mn=3.54×103,PDI(Mw/Mn)=1.35,Tg=18.7℃.
【0050】
製造例23
N,N’-dimethylnylon-6,3
N,N’-dimethyl-1,6-hexanediamine(348μL,2.00mmol)とGlutaryl chloride(258μL,2.00mmol)をモノマーとすることで、N,N’-dimethylnylon-6,3(182mg,38% yield)を黄色固体として得た。
1H NMR(CDCl3,400MHz)σ=3.15-3.47(m,4H),2.72-3.03(m,6H),2.26-2.45(m,4H),1.83-2.01(m,2H),1.36-1.65(m,4H),1.13-1.36(m,4H).
13C NMR(CDCl3,100MHz)σ=172.2,49.7,47.5,47.4,35.2,33.2,32.8,28.3,27.1,26.6,20.7.
SEC(CHCl-3):Mn=9.31×103,PDI=2.27,Tg=4.7℃.
【0051】
製造例24
N,N’-dimethylnylon-6,4
N,N’-dimethyl-1,6-hexanediamine(348μL,2.00mmol)とAdipoyl chloride(291μL,2.00mmol)をモノマーとすることで、N,N’-dimethylnylon-6,4(181mg,36% yield)を茶色固体として得た。
1H NMR(CDCl3,400MHz)σ=3.15-3.39(m,4H),2.73-3.09(m,6H),2.08-2.38(m,4H),1.58-1.74(m,4H),1.37-1.58(m,4H),1.17-1.37(m,4H).
13C NMR(CDCl3,100MHz)σ=172.7,50.2,47.8,47.7,35.6,33.6,33.1,28.7,27.4,26.9,25.5,25.4,25.2,25.1.
SEC(CHCl3):Mn=1.03×104,PDI(Mw/Mn)=5.53,Tg=0.7℃.
【0052】
透過度[%]変化の測定
製造した各種N-置換型ナイロンの10mg/m水溶液を調製し、以下の条件で水溶液の温度を変化させた場合の溶液の透過度[%]変化を測定した。
測定条件
測定機器:紫外可視光分光スペクトル測定装置(日本分光社、ETC-505型ペルチェ式恒温角型セルホルダーを装備したV-750測定装置)
測定温度:5~90℃
温度勾配:1.5℃/分
測定波長:800nm
本発明のN-置換型ナイロンは、LCSTを示した。また、その一透明系-白濁不均一系の相の変化は20℃以内の狭い温度幅で生じることが透過度曲線で示された。
【0053】
本発明の各種N-置換型ナイロンで測定されたLCSTと、N-置換型ナイロンを構成する脂肪族骨格に含まれる炭素数pおよびqとの関係を調べた。
その結果を表1に示す。
【0054】
【0055】
表1に示されるように、式(I)中、R1およびR2の両方がメチルである本発明のN-置換型ナイロンは、LCSTを示すことが明らかになった。また、脂肪族骨格に含まれる炭素数pおよびqの和(p+q)が7~9のN,N'-ジメチル置換型ナイロンはLCSTを示すことが明らかになった。
一方で、理論に拘束されるものではないが、LCSTはN-置換型ナイロンの構造の置換基、骨格中の脂肪族骨格の親水性基と疎水性基とのバランスにより生じる現象であると考えられる。したがって、溶媒に依存してLCSTを示すN-置換型ナイロン中のpおおびqは変動し得ると考えられる。
【0056】
尚、上述の本発明は、次の態様を包含し得ることを確認的に述べておく。
・第1態様:溶媒可溶性のN-置換型ナイロン。
・第2態様:下限臨界共溶温度(LCST)を示す前記第1態様に記載のN-置換型ナイロン。
・第3態様:前記溶媒が水、医薬上許容し得る塩類水溶液、モノオール類、アルキレングリコール類、アルキレングリコールの重合物類、ポリオール類、カルボン酸化合物類、(ポリ)アルキレングリコールアルキルエーテル類、前記のモノオール類、アルキレングリコール類、アルキレングリコールの重合物類、ポリオール類、カルボン酸化合物類または(ポリ)アルキレングリコールアルキルエーテル類とカルボン酸化合物類とから誘導されるエステル類、ケトン類、アルキルエーテル類、環状エーテル類、脂肪族系炭化水素類、芳香族系炭化水素類、ハロゲン置換化合物類、含窒素官能基置換炭化水素類、複素環含有化合物類、アミド系化合物類、スルホキシド系化合物類、ニトリル化合物類、動植物油脂類および石油系溶剤類からなる群から選択される1種以上である、前記第1態様または第2態様に記載のN-置換型ナイロン。
・第4態様:-5℃~60℃にガラス転移点を有する、前記第1態様~第3態様のいずれか1つに記載のN-置換型ナイロン。
・第5態様:前記N-置換型ナイロンが、式I:
【化3】
(式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して同一または異なり、所望によりハロゲン、ヒドロキシ基、カルボキシ基で置換されていてもよい1~20個の炭素原子を有する飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基であり、pは脂肪族骨格に含まれる隣り合う窒素原子間の脂肪族炭化水素の炭素数を指し、かかる炭素数は1~10個であり、qは脂肪族骨格に含まれる隣り合うカルボニル基間の脂肪族炭化水素の炭素数を指し、かかる炭素数は1~10個であり、
nは2~5,000の整数である)
で示される化合物である、前記第1態様~第4態様のいずれか1つに記載のN-置換型ナイロン。
・第6態様
第1態様から第5態様のいずれか1つに記載のN-置換型ナイロンの製造方法であって、
(1)溶媒中でN,N’-ジアルキルアミン-α,ω-アルキルジアミンとジカルボン酸とを混合し、
(2)触媒の存在下で重縮合させてN-置換型ナイロンを得る
ことを含む方法。