(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161797
(43)【公開日】2024-11-20
(54)【発明の名称】作業機械の管理システム
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20241113BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20241113BHJP
F01M 11/10 20060101ALN20241113BHJP
【FI】
E02F9/20 M
E02F9/26 A
F01M11/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076826
(22)【出願日】2023-05-08
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】生沼 大暉
(72)【発明者】
【氏名】平田 木乃美
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
3G015
【Fターム(参考)】
2D003BA02
2D003BB13
2D003CA02
2D003DA02
2D003DA04
2D003DB02
2D003DB03
2D003DB06
2D003DB07
2D003DC07
2D003FA02
2D015HA03
2D015HB02
2D015HB06
2D015HB07
3G015EA29
3G015FC07
(57)【要約】
【課題】オイルの状態を高い精度で推定することを目的とする。
【解決手段】作業機械と、前記作業機械の管理装置とを含む管理システムであって、前記管理装置は、前記作業機械の稼働情報と、前記作業機械の作動油の状態との関係を学習したモデルと、前記作業機械から前記稼働情報を取得する稼働情報取得部と、前記稼働情報取得部が取得した稼働情報を前記モデルに入力し、前記作動油の状態を推定した推定結果情報を取得する状態推定部と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械と、前記作業機械の管理装置とを含む管理システムであって、
前記管理装置は、
前記作業機械の稼働情報と、前記作業機械の作動油の状態との関係を学習したモデルと、
前記作業機械から前記稼働情報を取得する稼働情報取得部と、
前記稼働情報取得部が取得した稼働情報を前記モデルに入力し、前記作動油の状態を推定した推定結果情報を取得する状態推定部と、を有する、作業機械の管理システム。
【請求項2】
前記管理装置は、
前記作業機械から採取された作動油の分析結果を示す分析結果情報と、前記分析結果情報と対応する稼働情報と、を対応付けたデータセットを学習データとして、前記モデルを生成する学習部を有する、請求項1記載の作業機械の管理システム。
【請求項3】
前記推定結果情報は、前記モデルに入力された前記稼働情報と、前記モデルから出力された前記作動油の状態を示す予測値とを含む、請求項2記載の作業機械の管理システム。
【請求項4】
前記管理装置は、
前記データセットが格納された記憶部と、
学習データを抽出する範囲を特定する学習データ抽出部とを有し、
前記学習データ抽出部は、さらに、前記記憶部から、前記範囲が示す期間に取得されたデータセットを抽出し、学習データとする、請求項3記載の作業機械の管理システム。
【請求項5】
前記管理装置は、
前記データセットが格納された記憶部と、
学習データを抽出する範囲を特定する学習データ抽出部とを有し、
前記学習データ抽出部は、さらに、前記記憶部から、前記範囲が示す情報量となるようにデータセットを抽出し、学習データとする、請求項3記載の作業機械の管理システム。
【請求項6】
前記状態推定部は、
前記稼働情報取得部が取得した前記稼働情報が示す前記作業機械の運転状態が所定の状態である場合に、前記稼働情報を前記モデルに入力する、請求項1記載の作業機械の管理システム。
【請求項7】
前記管理装置は、
前記作動油の状態を示す予測値に基づき前記作動油の交換の要否を判定し、判定結果を出力する出力部を有する、請求項3記載の作業機械の管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械の管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、温度、動粘度、密度、誘電率等のオイルの性状値をセンサにより検出し、検出したオイルの性状値に基づいて、オイルの劣化状態を推定する作業機械が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業機械の定期メンテナンスでは、サービスマンが作業機械からオイルのサンプルを採取し、採取したサンプルを分析機関等で分析することで、オイルの劣化状態が把握される。これに対し、上述した従来の技術では、センサによる検出結果のみでオイルの劣化状態を推定するため、精度が不十分であった。
【0005】
本開示は、オイルの状態を高い精度で推定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る作業機械の管理システムは、作業機械と、前記作業機械の管理装置とを含む管理システムであって、前記管理装置は、前記作業機械の稼働情報と、前記作業機械の作動油の状態との関係を学習したモデルと、前記作業機械から前記稼働情報を取得する稼働情報取得部と、前記稼働情報取得部が取得した稼働情報を前記モデルに入力し、前記作動油の状態を推定した推定結果情報を取得する状態推定部と、を有する、作業機械の管理システムである。
【発明の効果】
【0007】
オイルの状態を高い精度で推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】作業機械の管理システムのシステム構成の一例を示す図である。
【
図2】作業機械の管理システムの有する各装置のハードウェア構成を説明する図である。
【
図4】管理装置の処理を説明する第一のフローチャートである。
【
図5】管理装置の処理を説明する第二のフローチャートである。
【
図6】学習データの抽出について説明する図である。
【
図8】ショベルの表示装置の表示例を示す図である。
【
図9】オイルの状態の推定結果の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図面を参照して、本実施形態の作業機械の管理システムについて説明する。
図1は、作業機械の管理システムのシステム構成の一例を示す図である。本実施形態では、ショベル100を作業機械の一例として説明する。
【0010】
本実施形態のショベルの管理システムSYSは、ショベル100と、管理装置200とを含む。以下の説明では、ショベル100の管理システムSYSを、単に管理システムSYSと表現する。
【0011】
本実施形態の管理システムSYSにおいて、ショベル100と、管理装置200とは、ネットワーク等を介して接続される。
【0012】
はじめに、本実施形態のショベル100の構成について説明する。
図1では、ショベル100の側面図を示す。
【0013】
ショベル100は、下部走行体1、旋回機構2、上部旋回体3を有する。ショベル100において、下部走行体1には旋回機構2を介して上部旋回体3が旋回可能に搭載されている。上部旋回体3にはブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端にはアーム5が取り付けられ、アーム5の先端にはエンドアタッチメントとしてのバケット6が取り付けられている。
【0014】
ブーム4、アーム5、バケット6は、アタッチメントの一例としての掘削アタッチメントを構成している。そして、ブーム4は、ブームシリンダ7により駆動され、アーム5は、アームシリンダ8により駆動され、バケット6は、バケットシリンダ9により駆動される。ブーム4にはブーム角度センサS1が取り付けられ、アーム5にはアーム角度センサS2が取り付けられ、バケット6にはバケット角度センサS3が取り付けられている。
【0015】
ブーム角度センサS1はブーム4の回動角度を検出するように構成されている。本実施形態では、ブーム角度センサS1は加速度センサであり、上部旋回体3に対するブーム4の回動角度(以下、「ブーム角度」とする。)を検出できる。ブーム角度は、例えば、ブーム4を最も下げたときに最小角度となり、ブーム4を上げるにつれて大きくなる。
【0016】
アーム角度センサS2はアーム5の回動角度を検出するように構成されている。本実施形態では、アーム角度センサS2は加速度センサであり、ブーム4に対するアーム5の回動角度(以下、「アーム角度」とする。)を検出できる。アーム角度は、例えば、アーム5を最も閉じたときに最小角度となり、アーム5を開くにつれて大きくなる。
【0017】
バケット角度センサS3はバケット6の回動角度を検出するように構成されている。本実施形態では、バケット角度センサS3は加速度センサであり、アーム5に対するバケット6の回動角度(以下、「バケット角度」とする。)を検出できる。バケット角度は、例えば、バケット6を最も閉じたときに最小角度となり、バケット6を開くにつれて大きくなる。
【0018】
ブーム角度センサS1、アーム角度センサS2、及び、バケット角度センサS3はそれぞれ、可変抵抗器を利用したポテンショメータ、対応する油圧シリンダのストローク量を検出するストロークセンサ、連結ピン回りの回動角度を検出するロータリエンコーダ、ジャイロセンサ、又は、加速度センサとジャイロセンサの組み合わせ等であってもよい。
【0019】
ブームシリンダ7にはブームロッド圧センサS7R及びブームボトム圧センサS7Bが取り付けられている。アームシリンダ8にはアームロッド圧センサS8R及びアームボトム圧センサS8Bが取り付けられている。
【0020】
バケットシリンダ9にはバケットロッド圧センサS9R及びバケットボトム圧センサS9Bが取り付けられている。ブームロッド圧センサS7R、ブームボトム圧センサS7B、アームロッド圧センサS8R、アームボトム圧センサS8B、バケットロッド圧センサS9R及びバケットボトム圧センサS9Bは、集合的に「シリンダ圧センサ」とも称される。
【0021】
ブームロッド圧センサS7Rはブームシリンダ7のロッド側油室の圧力(以下、「ブームロッド圧」とする。)を検出し、ブームボトム圧センサS7Bはブームシリンダ7のボトム側油室の圧力(以下、「ブームボトム圧」とする。)を検出する。アームロッド圧センサS8Rはアームシリンダ8のロッド側油室の圧力(以下、「アームロッド圧」とする。)を検出し、アームボトム圧センサS8Bはアームシリンダ8のボトム側油室の圧力(以下、「アームボトム圧」とする。)を検出する。
【0022】
バケットロッド圧センサS9Rはバケットシリンダ9のロッド側油室の圧力(以下、「バケットロッド圧」とする。)を検出し、バケットボトム圧センサS9Bはバケットシリンダ9のボトム側油室の圧力(以下、「バケットボトム圧」とする。)を検出する。
【0023】
上部旋回体3には運転室であるキャビン10が設けられ且つエンジン11等の動力源が搭載されている。また、エンジン11の排出機構の近傍には、CO2排出量を検出するためのセンサが設けられていてもよい。また、上部旋回体3には、ショベル100のエンジン系、油圧機器系の基幹部品の潤滑や動力伝達媒体として用いられているオイル(作動油)が収納される作動油タンク49が設けられている。
【0024】
さらに、上部旋回体3には、コントローラ30、表示装置40、入力装置42、音声出力装置43、記憶装置47、測位装置P1、機体傾斜センサS4、旋回角速度センサS5、撮像装置S6及び通信端末Tが取り付けられている。
【0025】
上部旋回体3には、電力を供給する蓄電部、及び、エンジン11の回転駆動力を用いて発電する電動発電機等が搭載されていてもよい。蓄電部は、例えば、キャパシタ、又は、リチウムイオン電池等である。電動発電機は、電動機として機能して機械負荷を駆動してもよく、発電機として機能して電気負荷に電力を供給してもよい。
【0026】
コントローラ30は、ショベル100の駆動制御を行う主制御部として機能する。本実施形態では、コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等を含むコンピュータで構成されている。コントローラ30の各種機能は、例えば、ROMに格納されたプログラムをCPUが実行することで実現される。各種機能は、例えば、オペレータによるショベル100の手動操作をガイド(案内)するマシンガイダンス機能、及び、オペレータによるショベル100の手動操作を自動的に支援するマシンコントロール機能の少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0027】
表示装置40は、各種情報を表示するように構成されている。表示装置40は、CAN等の通信ネットワークを介してコントローラ30に接続されていてもよく、専用線を介してコントローラ30に接続されていてもよい。
【0028】
入力装置42は、オペレータが各種情報をコントローラ30に入力できるように構成されている。入力装置42は、キャビン10内に設置されたタッチパネル、ノブスイッチ及びメンブレンスイッチ等の少なくとも1つを含む。
【0029】
音声出力装置43は、音声を出力するように構成されている。音声出力装置43は、例えば、コントローラ30に接続される車載スピーカであってもよく、ブザー等の警報器であってもよい。本実施形態では、音声出力装置43は、コントローラ30からの音声出力指令に応じて各種情報を音声出力するように構成されている。
【0030】
記憶装置47は、各種情報を記憶するように構成されている。記憶装置47は、例えば、半導体メモリ等の不揮発性記憶媒体である。記憶装置47は、ショベル100の動作中に各種機器が出力する情報を記憶してもよく、ショベル100の動作が開始される前に各種機器を介して取得する情報を記憶してもよい。
【0031】
また、記憶装置47は、ショベル100の稼働情報を記憶してもよい。ショベル100の稼働情報とは、ショベル100の有する各種のセンサによって検出される値を含む。具体的には、稼働情報は、ショベル100のパイロット圧、エンジン回転数、エンジン負荷率等を含んでよい。また、稼働情報は、自機の現在位置を示す位置情報、自機の向きを示す向き情報、自機の姿勢を示す姿勢情報、作業内容を示す作業内容情報、負荷率を記す負荷率情報、稼働時間の累積時間を示す累積時間情報、燃料噴射量を含む燃料情報、CO2排出量、作業量、運転状態等を含んでもよい。稼働情報は、通信端末Tによって定期的に管理装置200に送信されてもよい。
【0032】
測位装置P1は、上部旋回体3の位置を測定するように構成されている。測位装置P1は、上部旋回体3の向きを測定できるように構成されていてもよい。本実施形態では、測位装置P1は、例えばGNSSコンパスであり、上部旋回体3の位置及び向きを検出し、検出値をコントローラ30に対して出力する。そのため、測位装置P1は、上部旋回体3の向きを検出する向き検出装置としても機能し得る。向き検出装置は、上部旋回体3に取り付けられた方位センサであってもよい。
【0033】
機体傾斜センサS4は上部旋回体3の傾斜を検出するように構成されている。本実施形態では、機体傾斜センサS4は仮想水平面に対する上部旋回体3の前後軸回りの前後傾斜角及び左右軸回りの左右傾斜角を検出する加速度センサである。上部旋回体3の前後軸及び左右軸は、例えば、ショベル100の旋回軸上の一点であるショベル中心点で互いに直交する。
【0034】
旋回角速度センサS5は、上部旋回体3の旋回角速度を検出するように構成されている。旋回角速度センサS5は、上部旋回体3の旋回角度を検出或いは算出するように構成されていてもよい。本実施形態では、旋回角速度センサS5は、ジャイロセンサである。旋回角速度センサS5は、レゾルバ、ロータリエンコーダ等であってもよい。
【0035】
撮像装置S6は、空間認識装置の一例であり、ショベル100の周辺の画像を取得するように構成されている。本実施形態では、撮像装置S6は、ショベル100の前方の空間を撮像する前カメラS6F、ショベル100の左方の空間を撮像する左カメラS6L、ショベル100の右方の空間を撮像する右カメラS6R、及び、ショベル100の後方の空間を撮像する後カメラS6Bを含む。
【0036】
撮像装置S6は、例えば、CCD又はCMOS等の撮像素子を有する単眼カメラであり、撮像した画像を表示装置40に出力する。撮像装置S6は、ステレオカメラ、距離画像カメラ等であってもよい。また、撮像装置S6は、3次元距離画像センサ、超音波センサ、ミリ波レーダ、LIDAR又は赤外線センサ等の他の空間認識装置で置き換えられてもよく、他の空間認識装置とカメラとの組み合わせで置き換えられてもよい。
【0037】
前カメラS6Fは、例えば、キャビン10の天井、すなわちキャビン10の内部に取り付けられている。但し、前カメラS6Fは、キャビン10の屋根、ブーム4の側面等、キャビン10の外部に取り付けられていてもよい。左カメラS6Lは、上部旋回体3の上面左端に取り付けられ、右カメラS6Rは、上部旋回体3の上面右端に取り付けられ、後カメラS6Bは、上部旋回体3の上面後端に取り付けられている。
【0038】
通信端末Tは、ショベル100の外部にある外部機器との通信を制御するように構成されている。本実施形態では、通信端末Tは、衛星通信網、携帯電話通信網又はインターネット網等を介した外部機器との通信を制御する。外部機器は、例えば、外部施設に設置されたサーバ等の管理装置200である。
【0039】
本実施形態の管理装置200は、ショベル100から送信される稼働情報と、ショベル100の定期的なメンテナンスの際に採取されたオイルの分析結果とを用いてオイルの状態を推定する。また、本実施形態の管理装置200は、オイルの状態の推定結果に応じて、オイルの交換の要否を判定する。
【0040】
以下に、本実施形態の管理装置200によるオイルの状態の推定の処理の概略を説明する。
【0041】
ショベル100では、定期的にメンテナンスが行われる。このメンテナンスでは、サービスマン等により、作動油タンク49からオイルが採取され、採取されたオイルの分析が行われる。オイルの分析は、分析機関等によって行われる。
【0042】
本実施形態の管理装置200は、分析機関等から、オイルの分析結果を示す分析結果情報を取得する。そして、管理装置200は、オイルの分析結果情報と、ショベル100から取得した稼働情報との関係を機械学習により学習し、オイルの状態を推定する推定モデルを生成する。
【0043】
また、本実施形態の管理装置200は、推定モデルを生成すると、任意のタイミングで稼働情報を推定モデルに入力し、ショベル100が稼働情報を取得した時点におけるオイルの状態を推定した推定結果情報を得る。
【0044】
さらに、本実施形態の管理装置200は、推定結果情報から、オイルの交換の要否を判定し、交換が必要と判定された場合には、ショベル100の管理者等に対してその旨を通知する。ショベル100の管理者とは、例えば、ショベル100のメンテナンスを行うサービスマンであってもよいし、ショベル100を利用して作業を行う利用者であってもよい。
【0045】
本実施形態では、このように、ショベル100から採取したオイルの分析結果情報を用いて推定モデルを生成し、推定モデルを用いてオイルの状態を推定するため、推定の精度を向上させることができる。
【0046】
ここで、オイルの分析結果情報について説明する。本実施形態のオイルの分析結果情報は、オイルがショベル100から採取された日時を示す情報と、採取時におけるオイルの状態を示す情報とを含む。以下の説明では、オイルがショベル100から採取された日時を示す情報を、採取日時情報と表現する場合がある。また、オイルの状態を示す情報は、オイルの性状の値を含んでよい。
【0047】
オイルの状態を示す情報は、例えば、酸価、動粘度、オイルに含まれる金属元素別の重量等を含んでよい。酸価、動粘度は、オイルの劣化に伴い増加するものであり、オイルの劣化状況を示す。金属元素別の重量は、ショベル100の機械の摩耗の状況を示す。
【0048】
なお、オイルの状態を示す情報は、上述した項目以外の項目が含まれてよい。オイルの状態を示す情報に含まれる項目は、採取したオイルの分析を行う分析機関に応じて異なってよい。
【0049】
また、
図1の例では、管理装置200は1台の情報処理装置により実現されるものとしたが、これに限定されない。管理装置200は、複数の情報処理装置により実現されてもよい。言い換えれば、管理装置200により実現される機能は、複数の情報処理装置により実現されてもよい。
【0050】
次に
図2を参照し、管理システムSYSが有する各装置のハードウェア構成について説明する。
図2は、作業機械の管理システムの有する各装置のハードウェア構成を説明する図である。
【0051】
はじめに、ショベル100のハードウェア構成について説明する。キャビン10内には、コントローラ30、表示装置40、通信端末T等が設置されている。
【0052】
エンジン11は、エンジン負荷の増減にかかわらずエンジン回転数を一定に維持するアイソクロナス制御を採用したディーゼルエンジンである。エンジン11に関する燃料噴射量及び燃料噴射タイミング等は、エンジン制御ユニット50により制御される。
【0053】
エンジン11の回転軸は、油圧ポンプとしてのメインポンプ14及びパイロットポンプ15のそれぞれの回転軸に接続されている。
【0054】
レギュレータ13は、メインポンプ14の押し退け容積を制御できるように構成されている。本実施形態では、レギュレータ13は、コントローラ30からの制御指令に応じてメインポンプ14の斜板傾転角を調節することによってメインポンプ14の押し退け容積を制御する。例えば、コントローラ30は、吐出圧センサ28等の出力に応じてレギュレータ13に対して制御指令を出力することで、メインポンプ14の押し退け容積を変化させる。レギュレータ13は、斜板傾転角を表すデータをコントローラ30に送信できるように構成されている。
【0055】
メインポンプ14は、作動油ラインを介して作動油をコントロールバルブ17に供給できるように構成されている。本実施形態では、メインポンプ14は、斜板式可変容量型油圧ポンプである。
【0056】
油温センサ14cは、作動油タンク49とメインポンプ14との間の作動油ラインを流れる作動油の温度を検出できるように構成されている。そして、油温センサ14cは、検出したデータをコントローラ30に送信できるように構成されている。
【0057】
パイロットポンプ15は、パイロットラインを介して操作装置等の各種油圧制御機器に作動油を供給できるように構成されている。本実施形態では、パイロットポンプ15は、固定容量型油圧ポンプである。但し、パイロットポンプ15は、省略されてもよい。この場合、パイロットポンプ15が担っていた機能は、メインポンプ14によって実現されてもよい。この場合、メインポンプ14は、コントロールバルブ17に作動油を供給する機能とは別に、絞り等により作動油の圧力を低下させた後で操作装置等に作動油を供給する機能を備えていてもよい。
【0058】
コントロールバルブ17は、ショベル100の油圧系の制御を行う油圧制御装置である。コントロールバルブ17は、右側走行用油圧モータ、左側走行用油圧モータ、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9及び旋回用油圧モータ等の油圧アクチュエータに接続されている。
【0059】
コントローラ30は、ショベル100を制御する制御装置である。本実施形態では、コントローラ30は、CPU、揮発性記憶装置及び不揮発性記憶装置等を含むマイクロコンピュータで構成されている。そして、コントローラ30の各種機能は、CPUが不揮発性記憶装置に格納されたプログラムを実行することで実現される。
【0060】
表示装置40は、右側ピラーと運転席との間に取り付けられ、且つ、運転席に着座した操作者が画面を視認できるように配置されている。そして、表示装置40は、コントローラ30からの指令に応じて各種情報を表示できるように構成されている。本実施形態では、表示装置40は、コントローラ30に接続される液晶ディスプレイである。
【0061】
画像表示部41は、画像が表示される。スイッチパネル45は、各種ハードウェアスイッチを含むパネルである。スイッチパネル45は、画像表示部41の上に配置されるタッチパネルであってもよい。
【0062】
本実施形態では、表示装置40は、蓄電池70から電力の供給を受けて動作するように構成されている。蓄電池70は、エンジン11のオルタネータ11a(発電機)で発電した電力で充電される。蓄電池70の電力は、コントローラ30、通信端末T等にも供給される。例えば、エンジン11のスタータ11bは、蓄電池70からの電力で駆動され、エンジン11を始動するように構成されている。
【0063】
通信端末Tは、ショベル100と外部機器との間の通信を制御できるように構成されている。本実施形態では、通信端末Tは、衛星通信回線、携帯電話通信回線及び近距離無線通信回線等の少なくとも1つを通じたショベル100と管理装置200の少なくとも1つとの間の無線通信を制御する。
【0064】
エンジン制御ユニット50は、エンジン11を制御できるように構成されている。また、エンジン制御ユニット50は、冷却水温等、エンジン11の状態を表すデータをコントローラ30に送信できるように構成されている。
【0065】
エンジン回転数調整ダイヤル75は、エンジン11の回転数を調整するためのダイヤルである。エンジン回転数調整ダイヤル75は、エンジン回転数の設定状態を示すデータをコントローラ30に送信する。エンジン回転数調整ダイヤル75は、SPモード、Hモード、Aモード及びアイドリング状態の4段階でエンジン回転数を切り換えできるように構成されている。SPモードは、作業量を優先したい場合に選択される回転数モードであり、最も高いエンジン回転数を利用する。Hモードは、作業量と燃費を両立させたい場合に選択される回転数モードであり、二番目に高いエンジン回転数を利用する。Aモードは、燃費を優先させながら低騒音でショベル100を稼働させたい場合に選択される回転数モードであり、三番目に高いエンジン回転数を利用する。アイドリング状態は、エンジン11をアイドリング状態にしたい場合に選択される回転数モードであり、最も低いエンジン回転数を利用する。エンジン11は、エンジン回転数調整ダイヤル75で設定された回転数モードに対応する一定のエンジン回転数で回転するように制御される。
【0066】
次に、本実施形態の管理装置200のハードウェア構成について説明する。本実施形態の管理装置200は、それぞれバスで相互に接続されているCPU201、記憶装置202、通信装置203、入力装置204、表示装置205を有するコンピュータである。
【0067】
CPU201は、管理装置200の全体の動作を制御する。記憶装置202は、CPU201が実行するプログラムや、ショベル100に関する種々の情報等が格納される。通信装置203は、ネットワークを経由して、ショベル100と通信を行う。
【0068】
入力装置204は、管理装置200に対する情報の入力を行うためのものであり、例えば、キーボードやポインティングデバイス等によって実現される。表示装置205は、管理装置200から出力される各種の情報を表示するものであり、ディスプレイ等によって実現される。
【0069】
次に、
図3を参照して、本実施形態の管理装置200の機能について説明する。
図3は、管理装置の機能を説明する図である。
【0070】
本実施形態の管理装置200は、分析結果取得部210、稼働情報取得部220、学習データ抽出部230、学習部240、状態推定部250、出力部260、記憶部270を含む。
【0071】
管理装置200の分析結果取得部210、稼働情報取得部220、学習データ抽出部230、学習部240、状態推定部250、出力部260は、CPU201が記憶装置202等に格納されたプログラムを読み出して実行することで実現されてよい。記憶部270は、記憶装置202等により実現されてよい。
【0072】
分析結果取得部210は、分析機関等からオイルの分析結果情報271を取得し、記憶部270に格納する。分析結果情報271は、例えば、分析機関等から送信される電子メール等に添付されていてもよい。
【0073】
稼働情報取得部220は、ショベル100が収集した稼働情報272を取得し、記憶部270に格納する。稼働情報取得部220は、例えば、一日のうちの予め設定された時間に、ショベル100から稼働情報272を受信してよい。
【0074】
また、本実施形態では、分析結果取得部210により分析結果情報271が取得されると、分析結果情報271に含まれる採取日時情報が示す日時と最も近い日時に取得された稼働情報272を、分析結果情報271と対応付けて記憶部270に格納してよい。言い換えれば、分析結果情報271は、分析結果情報271と対応する稼働情報272と対応付けられて記憶部270に格納されてよい。
【0075】
学習データ抽出部230は、記憶部270に格納された情報から、学習部240による機械学習に用いられる学習データの範囲を特定し、特定された範囲に基づき学習データを抽出する。学習データ抽出部230の処理の詳細は後述する。
【0076】
学習部240は、オイルの状態を推定する推定モデル273を生成し、記憶部270に保持させる。推定モデル273は、学習データ抽出部230により抽出された学習データを機械学習した学習済みモデルである。
【0077】
また、学習部240は、分析結果取得部210が新たに分析結果情報271を取得した場合に、推定モデル273を更新する。言い換えれば、学習部240は、分析結果情報271が新たに追加される度に、推定モデル273を更新する。
【0078】
状態推定部250は、推定モデル273を用いて、ショベル100のオイルの状態を推定し、推定した結果を含む推定結果情報274を記憶部270に格納する。具体的には、状態推定部250は、ショベル100から受信した稼働情報272を推定モデル273へ入力し、推定モデル273から出力される、オイルの性状の予測値を取得する。オイルの性状の予測値とは、言い換えれば、オイルの状態を推定した結果であり、オイルの状態を示す予測値である。
【0079】
そして、状態推定部250は、オイルの性状の予測値と、推定モデル273に入力された稼働情報272とを対応付けて、推定結果情報274とし、記憶部270に格納する。
【0080】
また、本実施形態の状態推定部250は、オイルの状態の推定結果に応じて、ショベル100のオイルの交換の要否を判定し、オイルの交換が必要と判定された場合には、その旨をショベル100の管理者等に通知する。交換が必要と判定された場合の通知の詳細は後述する。
【0081】
出力部260は、各種の情報を出力する。具体的には、出力部260は、推定結果情報274やオイルの性状の予測値を出力してもよい。また、出力部260は、オイル交換の要否の判定結果を、ショベル100の管理者が所持している端末装置等に出力してもよい。また、出力部260は、ショベル100の表示装置40に表示させる情報を出力してもよい。
【0082】
記憶部270は、分析結果情報271、稼働情報272、推定モデル273、推定結果情報274が格納される。
【0083】
記憶部270において、分析結果情報271は、分析結果情報271と対応する稼働情報272と対応付けられたデータセットとして格納されてよい。
【0084】
推定モデル273は、例えば、ニューラルネットワーク(Neural Network)を中心に構成される。本実施形態では、ニューラルネットワークは、入力層及び出力層の間に一層以上の中間層(隠れ層)を有する、いわゆるディープニューラルネットワークであってよい。本実施形態の推定モデル273は、稼働情報272が入力されると、オイルの状態を推定した結果として、オイルの性状の予測値を出力する。
【0085】
推定結果情報274は、推定モデル273に入力された稼働情報272と、推定モデル273から出力されたオイルの性状の予測値とが対応付けられた情報である。
【0086】
次に、管理装置200の動作について説明する。
図4は、管理装置の処理を説明する第一のフローチャートである。
図4では、推定モデル273の生成又は更新する処理を示す。
【0087】
本実施形態の管理装置200は、分析結果取得部210により、分析結果情報271を取得したか否かを判定する(ステップS401)。
【0088】
ステップS401において、分析結果情報271を取得した場合、後述するステップS403へ進む。ステップS401において、分析結果情報271を取得していない場合、管理装置200は、稼働情報取得部220により、稼働情報272を取得したか否かを判定する(ステップS402)。ステップS402において、稼働情報272を取得していない場合、管理装置200は、ステップS401へ戻る。
【0089】
ステップS401で分析結果情報271を取得した場合、又は、ステップS402において、稼働情報272を取得した場合、管理装置200は、学習データ抽出部230により、学習データを抽出する範囲を特定する(ステップS403)。本実施形態の学習データを抽出する範囲とは、学習データとなる情報が取得された期間を示してもよいし、学習データとなる情報の量を示してもよい。
【0090】
続いて、管理装置200は、記憶部270に格納された分析結果情報271と稼働情報272の中から、ステップS403で特定された範囲の情報を学習データとして抽出する(ステップS404)。ステップS403とステップS404における学習データ抽出部230の処理の詳細は後述する。
【0091】
続いて、管理装置200は、学習部240により、ステップS404で抽出された学習データにより機械学習を行い、学習済みデータである推定モデル273を生成又は更新する(ステップS405)。本実施形態では、学習部240は、既に推定モデル273が記憶部270に格納されている場合には、記憶部270に格納された推定モデル273を更新する。
【0092】
図5は、管理装置の処理を説明する第二のフローチャートである。
図5は、推定モデル273を用いてオイルの状態を推定する処理を示す。なお、管理装置200は、
図4に示す処理と、
図5に示す処理とを、一連の処理として実行してもよい。
【0093】
管理装置200は、稼働情報取得部220により、ショベル100から稼働情報272を取得したか否かを判定する(ステップS501)。ステップS501において、稼働情報272を取得していない場合、管理装置200は、待機する。
【0094】
ステップS501において、稼働情報272を取得した場合、管理装置200は、状態推定部250により、推定モデル273に対して稼働情報272を入力する(ステップS502)。
【0095】
続いて、状態推定部250は、推定モデル273から出力される、オイルの性状の予測値を取得し(ステップS503)、ステップS502で推定モデル273に入力した稼働情報272と対応付けた推定結果情報274を記憶部270に格納する(ステップS504)。
【0096】
次に、
図6を参照して、本実施形態の学習データ抽出部230の処理について説明する。
図6は、学習データの抽出について説明する図である。
図6では、
図4のステップS403とステップS404における学習データ抽出部230の処理の詳細を説明する。
【0097】
図6(A)(B)、(C)は、稼働情報272を取得した際の学習データ抽出部230の処理を説明する図である。
【0098】
図6(A)、(B)、(C)において、センサA、センサBは、稼働情報272に含まれる値の一例であり、オイルの状態は、分析結果情報が示すオイルの性状の値、又は、推定モデル273から出力されるオイルの性状の予測値であってよい。
図6(A)、(B)、(C)では、センサA、センサB、オイルの状態のそれぞれの時間の変化を示している。
【0099】
本実施形態では、稼働情報272の入力に応じて推定モデル273を更新する場合、学習データを抽出する範囲は、稼働情報272が取得された日時を起点とした過去の一定の期間において取得された分析結果情報271と、分析結果情報271と対応付けられた稼働情報272とのデータセットであってよい。この場合、学習データ抽出部230は、この一定の期間において取得された分析結果情報271と、分析結果情報271と対応する稼働情報272とを学習データとして記憶部270から抽出する。
【0100】
分析結果情報271と対応する稼働情報272とは、分析結果情報271に含まれる採取日時情報が示す日時と最も近いタイミングで取得された稼働情報272である。
【0101】
図6(A)は、管理装置200が稼働情報272xを取得した場合に、推定モデル273を生成し、生成された推定モデル273を用いてオイルの状態を推定する場合を示す。
【0102】
この場合、稼働情報272xが取得された日時は、タイミングT1である。したがって、学習データ抽出部230は、タイミングT1を起点とした過去の一定の期間Kを特定する。言い換えれば、
図6(A)では、タイミングT1からを起点とし、タイミングT2まで遡った期間である期間Kを、学習データを抽出する範囲とする。
【0103】
そして、学習データ抽出部230は、一定の期間Kにおいて取得された分析結果情報271と、分析結果情報271と対応する稼働情報272とのデータセットを学習データとして抽出する。
【0104】
タイミングT1からタイミングT2までの期間Kにおいて取得された分析結果情報271は、分析結果情報271a、271bを含む。
【0105】
図6(A)において、稼働情報272aは、分析結果情報271aと最も近いタイミングで取得された稼働情報である。したがって、稼働情報272aは、分析結果情報271aと対応する稼働情報となる。
【0106】
また、
図6(A)において、稼働情報272bは、分析結果情報271bと最も近いタイミングで取得された稼働情報である。したがって、稼働情報272bは、分析結果情報271bと対応する稼働情報となる。
【0107】
そこで、学習データ抽出部230は、分析結果情報271aと稼働情報272aと対応付けたデータセットと、分析結果情報271bと稼働情報272bと対応付けたデータセットとを含む学習データを抽出する。なお、期間Kは、予め管理装置200の管理者等によって設定されていてよい。
【0108】
管理装置200は、このようにして抽出された学習データにより、推定モデル273を生成し、生成された推定モデル273に対して、タイミングT1で取得した稼働情報272xを入力する。そして、管理装置200は、推定モデル273から出力されるオイルの性状の予測値275xを取得する。
【0109】
次に、
図6(B)について説明する。
図6(B)の例では、管理装置200が稼働情報272yを取得した場合に、推定モデル273を更新し、更新された推定モデル273を用いてオイルの状態を推定する場合を示す。
【0110】
この場合、稼働情報272yが取得された日時は、タイミングT5である。したがって、学習データ抽出部230は、タイミングT5を起点とした過去の一定の期間Kを特定する。言い換えれば、
図6(B)では、タイミングT5からを起点とし、タイミングT6まで遡った期間である期間Kを、学習データを抽出する範囲とする。
【0111】
そして、学習データ抽出部230は、一定の期間Kにおいて取得された分析結果情報271と、分析結果情報271と対応する稼働情報272とのデータセットを学習データとして抽出する。
【0112】
タイミングT5からタイミングT6までの期間Kにおいて取得された分析結果情報271は、分析結果情報271c、271cを含む。
【0113】
また、
図6(B)において、稼働情報272cは、分析結果情報271cと最も近いタイミングで取得された稼働情報である。したがって、稼働情報272cは、分析結果情報271cと対応する稼働情報となる。また、稼働情報272dは、分析結果情報271dと最も近いタイミングで取得された稼働情報である。したがって、稼働情報272dは、分析結果情報271dと対応する稼働情報となる。
【0114】
そこで、学習データ抽出部230は、分析結果情報271cと、稼働情報272cとを対応付けたデータセットと、分析結果情報271dと、稼働情報272dとを対応付けたデータセットとを含む学習データを抽出する。
【0115】
本実施形態では、このようにして抽出された学習データを用いて推定モデル273を更新し、更新後の推定モデル273に対し、タイミングT5で取得された稼働情報272yを入力する。そして、管理装置200は、更新後の推定モデル273から出力されるオイルの性状の予測値275yを取得する。
【0116】
次に、
図6(C)について説明する。
図6(C)の例では、管理装置200が稼働情報272zを取得した場合に、推定モデル273を更新し、更新された推定モデル273を用いてオイルの状態を推定する場合を示す。
【0117】
この場合、稼働情報272zが取得された日時は、タイミングT8である。したがって、学習データ抽出部230は、タイミングT8を起点とした過去の一定の期間Kを特定する。言い換えれば、
図6(C)では、タイミングT8からを起点とし、タイミングT9まで遡った期間である期間Kを、学習データを抽出する範囲とする。
【0118】
そして、学習データ抽出部230は、一定の期間Kにおいて取得された分析結果情報271と、分析結果情報271と対応する稼働情報272とのデータセットを学習データとして抽出する。
【0119】
タイミングT8からタイミングT9までの期間Kにおいて取得された分析結果情報271は、分析結果情報271e、271fを含む。
【0120】
また、
図6(C)において、稼働情報272eは、分析結果情報271eと最も近いタイミングで取得された稼働情報である。したがって、稼働情報272eは、分析結果情報271eと対応する稼働情報となる。また、稼働情報272fは、分析結果情報271fと最も近いタイミングで取得された稼働情報である。したがって、稼働情報272fは、分析結果情報271fと対応する稼働情報となる。
【0121】
そこで、学習データ抽出部230は、分析結果情報271eと稼働情報272eとを対応付けたデータセットと、分析結果情報271fと稼働情報272fとを対応付けたデータセットとを含む学習データを抽出する。
【0122】
本実施形態では、このようにして抽出された学習データを用いて推定モデル273を更新し、更新後の推定モデル273に対し、タイミングT8で取得された稼働情報272zを入力する。そして、管理装置200は、更新後の推定モデル273から出力されるオイルの性状の予測値275zを取得する。
【0123】
このように、本実施形態では、オイルの状態を予測するタイミングに応じて、学習データを抽出する範囲を変更し、推定モデル273を更新する。
【0124】
したがって、本実施形態では、オイルの状態を推定する際に、最新の状態に更新された推定モデル273を用いることができ、推定モデル273に、時間経過に変化する説明変数が存在する場合であっても、適切なオイルの性状の予測値を取得できる。
【0125】
なお、
図6の例では、学習データを抽出する範囲を、情報が取得された期間としたが、これに限定されない。
【0126】
学習データを抽出する範囲は、例えば、学習データとなる情報の量としてもよい。具体的には、例えば、学習データを抽出する範囲を、所定のタイミング以前に取得された所定数の情報としてもよい。
【0127】
例えば、所定のタイミングを、新たな稼働情報を取得したタイミングT1とし、所定数を100件とした場合、
図6(A)では、学習データ抽出部230は、記憶部270から、タイミングT1以前に取得された分析結果情報271と、各分析結果情報271と対応する稼働情報272とのデータセットを100件分抽出し、学習データとすればよい。所定のタイミングと所定数とは、予め設定されていてよい。
【0128】
また、
図6(B)では、学習データ抽出部230は、記憶部270から、タイミングT5以前に取得された分析結果情報271と、各分析結果情報271と対応する稼働情報272とのデータセットを、合計が100件となるように抽出し、学習データとすればよい。
【0129】
また、
図6(C)では、学習データ抽出部230は、記憶部270から、タイミングT8以前に取得された分析結果情報271と、各分析結果情報271と対応する稼働情報272とのデータセットを、合計が100件となるように抽出し、学習データとすればよい。
【0130】
本実施形態では、このように、学習データを抽出する範囲を情報量(データセットの数)とすることで、機械学習の精度を調整することができる。また、記憶部270に蓄積されている情報量に合わせて、推定モデル273の生成や更新を行うことができる。
【0131】
また、本実施形態では、学習データを抽出する範囲を、特定の時期としてもよい。特定の時期は、予め設定されていてよい。具体的には、例えば、特定の時期を、稼働情報272を取得したときの季節と同じ季節としてもよい。この場合、学習データ抽出部230は、稼働情報272を取得したタイミングT1が春であった場合には、過去の春の期間(例えば3月から5月)に取得された分析結果情報271と稼働情報272のデータセットを抽出して学習データとする。
【0132】
また、本実施形態では、学習データを抽出する範囲を、過去に同じ作業現場で作業していた時期としてもよい。作業現場は、例えば、稼働情報に含まれる位置情報から特定されてもよいし、ショベル100の管理者等によって入力されてもよい。
【0133】
このように、本実施形態では、状況に応じて学習データを抽出する範囲を変更することができ、ショベル100の利用状況に応じた学習データで推定モデル273を更新することができる。
【0134】
また、
図6では、管理装置200が稼働情報272を取得した場合に推定モデル273を更新する場合を説明したが、本実施形態の学習データ抽出部230は、新たな分析結果情報271が取得された場合にも、学習データの範囲を特定して抽出し、抽出された学習データで推定モデル273を更新してよい。
【0135】
具体的には、学習データ抽出部230は、新たな分析結果情報271が取得されると、新たに取得された分析結果情報271に含まれる採取日時情報が示す日時を起点とした過去の一定の期間に取得された分析結果情報271と、分析結果情報271と対応する稼働情報272とのデータセットを、学習データとして抽出する。ここで抽出される学習データには、新たに取得された分析結果情報271が含まれる。
【0136】
そして、管理装置200は、学習部240により、抽出された学習データを用いて推定モデル273を更新すればよい。
【0137】
本実施形態では、このようにすることで、定期的なメンテナンスでオイルが採取される度に、最新の分析結果情報271を推定モデル273に反映させることができる。
【0138】
また、本実施形態では、推定モデル273を用いることで、稼働情報272を取得する度にオイルの状態を推定することができる。つまり、本実施形態によれば、定期的に行われるメンテナンスと比較して、高い頻度でオイルの状態を推定することができる。
【0139】
具体的には、例えば、
図6(A)のタイミングT1からタイミングT2までの期間Kでは、推定モデル273が生成されていない。したがって。この期間は、定期的に行われるメンテナンスと同じ頻度で、オイルの状態が把握される。これに対し、例えば、
図6(B)のタイミングT5からタイミングT6までの期間K、
図6(C)のタイミングT8からタイミングT9までの期間Kでは、推定モデル273が生成されており、稼働情報272が取得される度に、オイルの状態が推定される。
【0140】
このため、本実施形態によれば、ショベル100の管理者等に対し、適切な時期にオイルの交換を促すことができる。
【0141】
次に、
図7を参照して、本実施形態の推定結果情報274について説明する。
図7は、推定結果情報の一例を示す図である。
【0142】
本実施形態の推定結果情報274は、情報の項目として、日時、型式、機番、パイロット圧、エンジン回転数、エンジン負荷率、レバー操作信号、運転状態、オイル性状予測値等を含む。推定結果情報274に含まれる項目「日時」、「型式」、「機番」、「パイロット圧」、「エンジン回転数」、「エンジン負荷率」、「レバー操作信号」、「運転状態」の値は、稼働情報であり、推定モデル273に入力される情報である。
【0143】
項目「日時」の値は、稼働情報を取得した日時を示す。項目「型式」の値は、ショベル100の型式を示し、項目「機番」の値は、ショベル100を特定するための機体識別番号を示す。項目「パイロット圧」、「エンジン回転数」、「エンジン負荷率」、「レバー操作信号」、「運転状態」等は、ショベル100の有する各種のセンサから取得される値である。
【0144】
また、推定結果情報274に含まれる項目「オイル性状予測値」の値は、オイルの状態を推定した結果の値であり、推定モデル273から出力される。
【0145】
図7の例では、推定結果情報274xにおいて、稼働情報272xと、オイルの推定結果を示す情報であるオイルの性状の予測値275xとが対応付けられている。
【0146】
つまり、
図7の例では、管理装置200は、稼働情報272xを推定モデル273に入力し、稼働情報272xを取得した時のショベル100のオイルの状態を示すオイルの性状の予測値275xを取得したことを示す。
【0147】
また、本実施形態の管理装置200は、稼働情報272を取得する度に、推定モデル273によってオイルの状態を推定するものとしたが、これに限定されない。
【0148】
本実施形態では、例えば、稼働情報が示すショベル100の運転状態が、予め決められた所定の状態である場合に、オイルの状態を推定してもよい。
【0149】
具体的には、例えば、稼働情報が示すショベル100の運転状態が、アイドリング状態である場合に、稼働情報272を推定モデル273に入力し、オイルの状態を推定してもよい。
【0150】
ショベル100からオイルが採取される際には、ショベル100はアイドリング状態に近い状態であることが予想される。つまり、推定モデル273は、分析結果情報271と、アイドリング状態で取得された稼働情報272とを対応付けたデータセットを学習データとして生成されることが予測される。
【0151】
したがって、本実施形態では、ショベル100の運転状態が、アイドリング状態であるときに
図5の処理を実行することで、推定モデル273による演算に適した稼働情報272を入力データとすることができ、推定の精度を向上させることができる。
【0152】
また、本実施形態では、ショベル100の運転状態が、アイドリング状態以外の状態である場合、管理装置200は、運転状態に応じた係数等を用いてオイルの状態を推定してもよい。アイドリング状態以外の運転状態とは、例えば、掘削作業中の状態等を含む。
【0153】
本実施形態では、このようにすることで、ショベル100の運転状態に応じたオイルの性状の予測値を得ることができ、オイルの状態を高い精度で推定することができる。
【0154】
また、本実施形態では、稼働情報が示すショベル100の運転状態が、アイドリング状態以外の状態である場合には、ショベル100に対して、運転状態をアイドリング状態とすることを指示するメッセージ等を送信し、ショベル100の表示装置40に表示させてもよい。
【0155】
図8は、ショベルの表示装置の表示例を示す図である。
図8に示す表示装置40には、オイルの状態を推定するために、ショベル100の運転状態をアイドリング状態にすることを指示するメッセージ40aが表示されている。
【0156】
ショベル100は、このメッセージ40aが表示装置40に表示された後に、運転状態がアイドリング状態とされると、稼働情報272を取得して、管理装置200に送信する。
【0157】
なお、本実施形態では、ショベル100の表示装置40にメッセージ40aを表示させるものとしたが、これに限定されない。本実施形態では、例えば、ショベル100を遠隔操作室から操作する場合等には、遠隔操作室の表示装置に、メッセージ40aを表示させてもよい。
【0158】
また、本実施形態の管理装置200は、ショベル100に対して、メッセージの代わりに、アイドリング状態とすることを指示する制御信号を送信してもよい。ショベル100は、管理装置200から、アイドリングモードとすることを指示する制御信号を受信すると、制御信号の指示に応じて自機の運転状態をアイドリング状態とし、稼働情報272を取得して管理装置200に送信すればよい。
【0159】
次に、
図9を参照して、オイルの状態の推定結果からオイルの交換が必要と判定された場合の通知について説明する。
図9は、オイルの状態の推定結果の表示例を示す図である。
【0160】
図9に示す画面90は、例えば、ショベル100の管理者が所持している端末装置等に表示される画面の一例である。
【0161】
本実施形態の管理装置200は、例えば、新たに取得した稼働情報272を推定モデル273への入力として取得されたオイルの性状の予測値が、所定の閾値以上であった場合に、オイルの交換が必要であると判定し、画面90を管理者の端末装置等に表示してよい。
【0162】
画面90は、表示領域90a、90b、90cを含む。表示領域90aは、推定モデル273に入力された稼働情報に含まれるセンサの値と、推定モデル273から出力されたオイルの性状の予測値及び分析結果情報と、の経時変化を示す情報が表示される。
【0163】
表示領域90bは、ショベル100の機番と、オイルの状態を推定した日時とが表示される。表示領域90cは、オイルが劣化しており、交換が必要である旨を示すメッセージが表示される。
【0164】
また、
図9の例では、表示領域90aにおいて、推定モデル273の更新に用いられた学習データの範囲を示すマーカ90dと、新たに取得された稼働情報272と、オイルの性状の予測値とを示すマーカ90eとが表示されてよい。
【0165】
本実施形態では、このように、稼働情報272に含まれるセンサの値とオイルの性状の予測値の経時変化とを、メッセージと対応付けて表示させることで、オイルの状態の変化をショベル100の管理者に把握させることができる。
【0166】
また、本実施形態では、学習データの抽出範囲を表示させることで、ショベル100の管理者等に対し、推定モデル273がどのように更新されているかを把握させることができる。
【0167】
なお、上述した本実施形態では、ショベル100のオイル(作動油)の状態の推定するものとしたが、これに限定されない。本実施形態は、人が採取して分析を行うことで状態が監視されるものに対して適用することができる。例えば、本実施形態は、プラントや工場等から排出される監視対象に対して適用することができる。
【0168】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説した。しかしながら、本発明は、上述した実施形態に制限されることはない。上述した実施形態は、本発明の範囲を逸脱することなしに、種々の変形、置換等が適用され得る。また、別々に説明された特徴は、技術的な矛盾が生じない限り、組み合わせが可能である。
【符号の説明】
【0169】
30 コントローラ
40 表示装置
100 ショベル
200 管理装置
210 分析結果取得部
220 稼働情報取得部
230 学習データ抽出部
240 学習部
250 状態推定部
260 出力部
270 記憶部