(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161819
(43)【公開日】2024-11-20
(54)【発明の名称】給電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/90 20160101AFI20241113BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20241113BHJP
H02J 50/80 20160101ALI20241113BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241113BHJP
B60L 53/14 20190101ALI20241113BHJP
B60L 53/35 20190101ALI20241113BHJP
B60M 7/00 20060101ALI20241113BHJP
B60L 5/00 20060101ALI20241113BHJP
E04H 6/18 20060101ALI20241113BHJP
E04H 6/42 20060101ALI20241113BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20241113BHJP
【FI】
H02J50/90
H02J50/10
H02J50/80
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
B60L53/14
B60L53/35
B60M7/00 X
B60L5/00 B
E04H6/18 606G
E04H6/42 Z
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076882
(22)【出願日】2023-05-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 和裕
(72)【発明者】
【氏名】辰田 康明
【テーマコード(参考)】
5G503
5H105
5H125
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503FA06
5G503GB08
5G503GD04
5H105BA09
5H105BB05
5H105CC07
5H105CC19
5H105DD10
5H105EE15
5H105GG02
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC25
5H125BE02
5H125CD10
5H125DD02
5H125EE51
5H125FF15
5L049CC13
5L050CC13
(57)【要約】
【課題】機械式駐車場におけるワイヤレス給電を実現する給電システムを提供する。
【解決手段】給電システムは、電気自動車を下方から支持し、前記電気自動車を上下方向、左右方向、前後方向、及び/又は、ヨー方向の移動によって運搬し、所定位置に格納する搬送機と、前記搬送機によって運搬されて格納される前記電気自動車の格納部とを有し、前記格納部の断面は略凹状をなし、前記搬送機は、前記電気自動車を下方から支持しながら前記格納部の凹部に進入及び所定位置で下降し、前記電気自動車を前記凹部の上方に架橋させて駐車する駐車システムにおいて、前記格納部の前記凹部を前後左右及び上下のうち、少なくとも一方向に移動可能な給電コイルを備え、前記給電コイルは前記電気自動車に搭載された受電コイルに給電を行なう。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自動車を下方から支持し、前記電気自動車を上下方向、左右方向、前後方向、及び/又は、ヨー方向の移動によって運搬し、所定位置に格納する搬送機と、
前記搬送機によって運搬されて格納される前記電気自動車の格納部と
を有し、
前記格納部の断面は略凹状をなし、
前記搬送機は、前記電気自動車を下方から支持しながら前記格納部の凹部に進入及び所定位置で下降し、前記電気自動車を前記凹部の上方に架橋させて駐車する駐車システムにおいて、
前記格納部の前記凹部を前後左右及び上下のうち、少なくとも一方向に移動可能な給電コイルを備え、
前記給電コイルは前記電気自動車に搭載された受電コイルに給電を行なう、
給電システム。
【請求項2】
前記電気自動車を識別する車両識別部と、
前記給電コイルの移動及び給電制御を実行する制御部と
を有し、
前記制御部は、前記車両識別部で得られる情報により、前記電気自動車が前記受電コイルを搭載しており、且つ、前記電気自動車のユーザから給電が望まれていることを認識した場合に、前記給電コイルからの給電を行なう、
請求項1に記載の給電システム。
【請求項3】
前記制御部は、
前記車両識別部で得られる情報に基づき前記電気自動車が前記受電コイルを搭載していると判断される場合、前記車両識別部で得られる情報により前記給電コイルの位置を決定し、
前記搬送機が前記格納部の前記凹部から退避した後、決定した位置へ前記給電コイルを移動させ、
給電を開始する
請求項2に記載の給電システム。
【請求項4】
前記給電コイル及び/又は前記受電コイルは、前記電気自動車の幅方向に長辺をなす長方形状のコイルである、
請求項1から3のいずれか1項に記載の給電システム。
【請求項5】
前記電気自動車の前記駐車システムにおける駐車料金に対し、前記給電コイルから給電した電力量を加算して出力する
請求項1から3のいずれか1項に記載の給電システム。
【請求項6】
前記格納部の前記凹部の底面は、磁性体であること
請求項1から3のいずれか1項に記載の給電システム。
【請求項7】
前記格納部の前記凹部の底面は、中空であるか、又は、パンチングメタル若しくはエキスパンドメタルで構成されている
請求項1から3のいずれか1項に記載の給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械式駐車場におけるワイヤレス給電を実現する給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車が普及し始めており、駐車エリアに停められた車両に給電する給電装置が駐車場に設置されている。電気自動車に搭載されている蓄電池への給電の方法は、有線による給電と、無線によるワイヤレス給電とがある。有線による給電では、ユーザがケーブルを車両に取り付ける作業が必要であるのに対し、ワイヤレス給電では、駐車エリアに固定された給電コイルの場所に合わせた駐停車さえできれば、ユーザの作業なしに給電を開始できる。ただしワイヤレス給電では、車両の位置を、固定された給電コイルの位置に合わせて給電効率を維持することが容易でない。地上の平面駐車場では車両の下方の空間が少ないために給電コイルを動かす機構を設けることは困難である。
【0003】
地上の空間を有効に利用するため、地上又は地下の高さ方向に車両を格納する機械式駐車場が普及している。機械式駐車場には、ゴンドラ式や昇降式など、車両を格納した格納部自体が動く方式と、特許文献1及び2のように、搬送装置が車両を搬送して格納部にそれぞれ格納する方式とがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2872962号
【特許文献2】特許第2787435号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
機械式駐車場において、床面に設置された給電コイルと電気自動車の受電コイルの位置合わせは困難である。
【0006】
本発明は、機械式駐車場におけるワイヤレス給電を実現する給電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施形態の給電システムは、電気自動車を下方から支持し、前記電気自動車を上下方向、左右方向、前後方向、及び/又は、ヨー方向の移動によって運搬し、所定位置に格納する搬送機と、前記搬送機によって運搬されて格納される前記電気自動車の格納部とを有し、前記格納部の断面は略凹状をなし、前記搬送機は、前記電気自動車を下方から支持しながら前記格納部の凹部に進入及び所定位置で下降し、前記電気自動車を前記凹部の上方に架橋させて駐車する駐車システムにおいて、前記格納部の前記凹部を前後左右及び上下のうち、少なくとも一方向に移動可能な給電コイルを備え、前記給電コイルは前記電気自動車に搭載された受電コイルに給電を行なう。
【0008】
本開示の給電システムでは、機械式駐車場においても車両が駐車スペースに格納されたことに応じて給電を開始する制御が可能である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、駐車スペースの下方に空間を有するような機械式駐車場におけるワイヤレス給電が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】給電装置を含む給電システムの構成を示すブロック図である。
【
図6】制御部による給電開始処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】第2実施形態における給電システムの構成を示すブロック図である。
【
図9】第2実施形態における制御部による給電開始処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】第2実施形態における制御部による給電開始処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11】識別体及び車両識別部の設置位置の一例を示す図である。
【
図12】第3実施形態における給電装置の構成を示すブロック図である。
【
図13】第3実施形態における制御部による給電開始処理の一例を示すフローチャートである。
【
図14】第3実施形態における制御部による給電開始処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示をその実施の形態を示す図面を参照して具体的に説明する。以下の実施の形態では、本開示の給電方法、及び給電装置について、その給電方法を実施するワイヤレス給電システムを搭載した機械式駐車場を例に挙げて説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、機械式駐車場の模式斜視図であり、
図2は、車両Vが載置される格納部13の拡大図である。
図1に示す機械式駐車場は、地下又は地中に形成された空間内部に複数本建てられた支柱11と、支柱11に架け渡されたフレーム12と、フレーム12に支持される車両Vを格納する格納部13とを含む。機械式駐車場は、格納部13を多段に設けて構成されている。格納部13は、地下又は地中に形成された略直方体状の空間に上下左右に複数並べられてもよいし、同様に地下又は地中に形成された円筒状の空間に上下及び周方向に複数並べられてもよい。機械式駐車場は更に、搬入口及び搬出口(図示せず)と各格納部13との間で車両Vを搬送する搬送機14を含む。
【0013】
格納部13は、矩形状の平板の長辺側の2つの側辺部を厚肉とさせた形状を有し、断面が略凹状(U字状)をなす。格納部13は、長辺方向が、載置される車両Vの前後方向と沿うように並設されている。格納部13の厚肉部131の上に、車両Vのタイヤが載るようにして車両Vが格納部13に格納される。格納部13はその他、長辺の側辺部に側板を立設し、側板の端面から内側に、タイヤ幅よりも十分に長い支持板を延出させ、断面が上方に欠落部を向けたC字状をなすような形状であってもよい。格納部13の凹部(断面C字状の場合は中央空間)132の底面は、車両Vの荷重を受けないため、中空に形成されていてもよいし、後述する給電コイル21から発生する磁束による過電流損を低減するために金網等のエキスパントメタルやパンチングメタルを用いてもよい。さらに、給電コイル21から発生する磁束が下部に透過することを防ぐため、フェライト等の磁性体が凹部132の底面に用いられてもよい。格納部13は、車両Vの荷重に耐えられるように頑丈且つ軽量に形成されており、後述する給電コイル21から発生する磁束による損失及び漏れを低減するように構成されていればよい。
【0014】
格納部13の厚肉部131の間の中央の凹部132には、搬送機14が備える車両Vの支持部142が基体141から延出して進入可能である。搬送機14は、
図1に示す例では円柱状の基体141を備え、上下、且つ周方向に回転して車両Vを搬送可能である。支持部142は、車両Vを下方から、タイヤの最下部(厚肉部131に接する箇所)が自由になるように支持する。支持部142は、車両Vの各タイヤの周面のうち、最下部を避けた下部の2箇所を支持するようにしてもよい。
【0015】
搬送機14は、格納先の格納部13に対応する位置まで上下方向、水平方向、及び/又は、回転によって移動すると、支持部142を延出させて車両Vの格納部13の上方に車両Vを運搬する。搬送機14は、車両Vを支持する支持部142を降下させる。支持部142の幅及び高さは、格納部13の凹部132の幅及び深さよりも小さい。支持部142が下降して格納部13の厚肉部131の上面の高さとほぼ同様となると、車両Vのタイヤの最下部が格納部13の厚肉部131の上面に接する。支持部142が更に下降すると、支持部142は、車両Vの下部から離脱し、車両Vは格納部13に支持される。支持部142が格納部13の凹部132の底まで到達すると、搬送機14は支持部142を凹部132から引き出す。支持部142が基体141に戻ると、搬送機14はホームポジション(搬入口又は搬出口)まで戻る。
【0016】
これにより、車両Vは、
図1に示す如く、格納部13の上方に、厚肉部131に架橋するようにして駐車される。
【0017】
このような機械式駐車場において、格納部13の構造が、車両Vの下方に支持部142が潜り込めるようにしてある凹部132を有するものであることを利用し、車両Vが受電コイルを備えている場合に給電可能な給電装置2を、格納部13それぞれに設ける。給電装置2は、格納部13の凹部132の底に設置される給電コイル21からの給電を実行する。給電装置2は、格納部13、即ち各駐車スペースの奥に設置されている。
【0018】
図3は、給電コイル21の配置を示す模式図である。給電コイル21は、
図3に示すように、格納部13の幅方向、即ち駐車される車両Vの幅方向に長辺をなす直方体の筐体22に格納されている。給電コイル21は、筐体22に沿う長方形状のコイル、即ち、駐車される車両Vの幅方向に長辺をなす長方形状のコイルである。給電コイル21は、図示しない電力線及び信号線により、給電装置2の本体と接続されている。
【0019】
格納部13に対して車両Vの位置は、幅方向には自由度が低いが、前後方向には輪留めを設置したとしても調整が可能である。幅方向に広い長方形状の給電コイル21を用いることによって車種によって異なる受電コイルの位置や大きさに対して網羅でき、幅方向の位置ずれに強い構成とすることができる。前後方向は、車両Vを載置する場所を変えるか、給電コイル21の筐体22を移動させるかによって位置を調整して伝達効率を低下させないようにすることができる。
【0020】
給電コイル21の筐体22は、凹部132の底面を、奥行き方向(車両Vの前後方向)、幅方向(左右方向)、及び高さ方向(上下方向)のうち、少なくとも一方向に移動可能に構成されている。例えば、筐体22の底面に車輪が設けられていて、前後左右に可動であり、車輪軸が上下に伸縮して高さ方向に可動である。移動機構は、車輪に限られず、厚肉部131の内部から延出される支持機構が前後左右及び上下に筐体22を移動させる機構であってもよい。
【0021】
給電装置2は、格納部13に車両Vが載置されるとこれを検知し、電気自動車即ち受電コイル31が車両Vの下部に設けられている車両Vであることを確認してから、自動的に給電を開始する。
【0022】
図4は、給電装置2を含む給電システム200の構成を示すブロック図であり、
図5は、給電装置2の構成を示すブロック図である。給電システム200は、電気自動車である車両Vに搭載されているバッテリ30と、バッテリ30への電力を受電する受電コイル31とに対し、給電装置2から給電コイル21を介して電力を供給する。
【0023】
給電装置2は、制御部23、記憶部24、通信回路25、及び接続部26を備える。制御部23、記憶部24、通信回路25及び接続部26は、1つの基板上に集積されてマイクロコントローラとして構成されてよいし、各々の構成部として実装されてもよい。
【0024】
制御部23は、CPU(Central Processing Unit )を用いる。制御部23は、記憶部24に記憶してあるプログラムP2を読み出して実行し、後述の制御処理を実現する。給電装置2は、給電コイル21と接続されており、制御部23は給電コイル21への電源Eからの給電を制御する。制御部23は、接続部26を介して接続される検知部27からの入力に基づいて車両Vが駐車スペースに駐車されたことと、支持部142が引き抜かれたことを検知すると、給電コイル21からの給電を開始する。
【0025】
記憶部24は、不揮発性メモリを用いる。記憶部24にはプログラム(プログラムプロダクト)P2が記憶されている。プログラムP2は、給電装置2の製造時にメモリに組み込まれている。プログラムP2は、コンピュータ(制御部23)により読み取り可能な記録媒体に記録されているものを、制御部23が読み取って記憶部24に記憶したものであってもよい。
【0026】
通信回路25は、受電コイル31を制御する車載制御装置との無線通信を実現する。通信回路25は、例えばBluetooth(登録商標)により通信する。通信回路25による無線通信の規格はBluetoothに限らない。また通信回路25は、他の無線通信機器、例えば車両Vに搭載されている機器との無線通信を行なってもよい。さらに通信回路25は、搬送機14にも搭載されており、搬送機14が車両Vを格納部13へ搬送する段階において受電コイル31を制御する車載制御装置又は車両Vに搭載されている機器と通信を行い、管理システム4に通信データを送信しておくことも可能である。
【0027】
接続部26は、制御部23の入出力インタフェースである。接続部26は、検知部27と接続されている。接続部26は、筐体22の移動機構28を駆動するモータと接続される。
【0028】
検知部27は、例えば圧力センサであって格納部13に車両Vが載置された場合の荷重によって車両Vの載置を検知する。検知部27は、格納部13の厚肉部131の上面のタイヤの設置箇所に設けられているか、車留めのタイヤの接地面に設けられてもよい。検知部27はその他、超音波を発する発信部と反射した超音波を受信する超音波センサを上方に設けてもよいし、他の特定の波長の光を発光する発光部及びその反射光を受光する光電センサを上方に向けて設けてもよい。検知部27は、カメラであってもよい。
【0029】
図6は、制御部23による給電開始処理の一例を示すフローチャートである。制御部23は、起動している間、以下に示す処理を繰り返し実行する。
【0030】
制御部23は、検知部27からの信号に基づき、車両Vが、給電装置2に対応する格納部13に車両Vが載置されたことを検知したか否かを判断する(ステップS101)。制御部23は、車両Vが載置されたことを検知していないと判断した場合(S101:NO)、所定時間(例えば1秒、10秒、30秒等)待機し、処理をステップS101へ戻す。
【0031】
制御部23は、検知部27から車両Vが載置されたことを検知したと判断した場合(S101:YES)、移動機構28へ、少なくとも高さ方向の移動(上昇)を指示する(ステップS102)。
【0032】
制御部23は、通信回路25により受電側の車載制御装置との通信接続を試行し(ステップS103)、通信接続が可能であるか否かを判断する(ステップS104)。ステップS104において、受電コイル31を備えている車両Vの受電のための車載制御装置は、受電する場合(バッテリ30が充電要である場合)、車両Vが電源OFF状態(イグニッションオフ)となった後、給電装置2との通信を試行しながら電源ONのままの状態となっている。したがって、給電装置2の通信回路25から通信接続を試行すれば通信接続を確立させることが可能である。受電コイル31を備えていない車両Vでは、受電のための車載制御装置は存在せず、通信接続が不可能である。
【0033】
制御部23は、通信接続が可能であると判断された場合(S104:YES)、車両Vの車載制御装置と通信接続を確立し(ステップS105)、車両Vから車両情報を取得する(ステップS106)。制御部23は、取得した車両情報に基づき、給電コイル21からの給電が可能であることを確認して、給電コイル21の位置を決定する(ステップS107)。制御部23は、移動機構28へ、決定した位置を指示し(ステップS108)、給電コイル21からの給電を開始させる(ステップS109)。
【0034】
ステップS107において制御部23は、車種によって確認してもよいし、充電率が所定率以下であることを確認してもよい。制御部23は、給電に必要な電力(時間当たりの給電量)が対応可能であることを確認してもよい。ステップS107における処理は、車両識別部に相当する。
【0035】
ステップS108において制御部23は、車載制御装置から受電コイル31の位置に関する情報を取得し、給電コイル21の筐体22の位置を、できるだけ給電効率を高くすることができる位置を決定する。制御部23は、車種ごとに記憶部24に記憶してある位置データを読み出して位置を決定してもよいし、位置データそのものを車載制御装置から取得してもよい。
【0036】
制御部23は、給電を開始させた後、バッテリ30の状態が、充電が必要な状態であるか否かを判断する(ステップS110)。ステップS110において制御部23は、所定率よりもバッテリ30の充電率が低い場合、所定電圧値よりも電圧値が小さい場合などに、充電が必要であると判断し、充電率が所定率以上、電圧値が所定の電圧値以上である場合、バッテリ30の充電が不要と判断する。
【0037】
充電が必要な状態であると判断した場合(S110:YES)、制御部23は、処理をステップS110へ戻し、給電コイル21からの給電を維持する。
【0038】
充電が不要と判断された場合(S110:NO)、例えば満充電状態であると判断された場合、制御部23は、給電コイル21からの給電を停止し(ステップS111)、待機状態へ遷移する(ステップS112)。ステップS112において制御部23は、給電コイル21からの給電を停止するものの、通信回路25による通信接続を確立させたまま維持し、バッテリ30が再び充電が必要な状態となった場合に、処理をステップS109へ戻って給電を開始できるようにする。なおステップS112以降の処理は行わず、満充電状態になった後、制御部23は処理を停止してもよい。
【0039】
制御部23は、給電を停止して待機状態へ遷移した場合、ステップS102で移動させる前の位置(ホームポジション)へ給電コイル21を戻すように指示する(ステップS1113)。制御部23は、通信接続を切断し(ステップS114)、処理を終了する。
【0040】
ステップS104において通信接続が可能でないと判断された場合(S104:NO)、制御部23は、車両Vは給電対象でない(受電コイル31を備えていない)と判断し(ステップS115)、処理を終了する。
【0041】
上述の構成及び処理により、駐車スペースに格納された車両Vの下方に空間が存在するような機械式駐車場において、ワイヤレス給電が実現される。搬送機14で車両Vを搬送し、格納部13に格納させるタイプの機械式駐車場であれば、同様にしてワイヤレス給電が可能である。
【0042】
(第2実施形態)
第2実施形態では、無線通信の相手を正確に特定してワイヤレス給電を実行するために、車両それぞれを識別する識別情報を読み取る車両識別部を用いる。
図7は、第2実施形態における給電システム200の構成を示すブロック図であり、
図8は、給電装置2の構成を示すブロック図である。第2実施形態における機械式駐車場、即ち格納部13、搬送機14等の構成は、第1実施形態の機械式駐車場と同一である。車両識別部を用いる点と、処理手順を除き、第2実施形態における給電システム200は第1実施形態の給電システム200の構成と同様である。第2実施形態の給電システム200のうち、第1実施形態の給電システム200と共通する構成については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0043】
第2実施形態において、給電装置2は、車両識別部29と接続部26で接続されている。車両識別部29は、格納部13、即ち各駐車スペースの奥に設置された給電装置2に、格納部13に載置される車両Vに臨む面から車両Vに向かうように設けられる。
【0044】
車両識別部29は第1例ではカメラである。車両識別部29は、車両Vに付されている特定の文字列、特定のマーク、特定の色、特定の模様等が描かれた識別体Tから車両Vの識別情報を読み取り可能である。識別情報は、例えば車両番号であってもよいし、その他会員番号等であってもよい。識別体Tは、例えば、バーコード、二次元コードが印刷されたシートであって、車両Vのフロントガラス又はリアガラスの内側に外向きに貼りつけられたものであってもよい。識別体Tは、識別情報がエンコードされた図柄が印刷されたものであってもよい。識別体Tは、例えば車両番号が記された所謂ナンバープレートであってもよく、文字認識により読み取られる車両番号は識別情報として使用可能である。識別体Tは、車両Vの前部及び後部の両方に取り付けられてよい。車両識別部29は、接続されている給電装置2が設置された格納部13に載置される車両Vの識別体Tから識別情報を読み取ると、これを制御部23へ通知する。
【0045】
車両識別部29は第2例では無線タグリーダである。車両識別部29は、RFID(Radio Frequency Identifier)タグ、NFC(Near Field Communication)タグ等を用いた識別体Tから、無線タグに記憶されている車両Vの識別情報を読み取る。車両識別部29は、指向性の高いリーダを用いることにより、上下又は左右に並ぶ他の格納部13に載置された他の車両Vの識別体Tから情報を読み取らないように設定されるとよい。
【0046】
また、第2実施形態では、給電装置2は受電側の車載制御装置32から情報を受け取り、受け取った情報に基づいて給電を開始するか否かを判断する。第2実施形態では、機械式駐車場に車両Vが入庫される前に、車載制御装置32と接続される他の車載機器において、あるいは、その車載機器又は車載制御装置32と通信接続可能なユーザの情報端末装置において、車両Vのユーザが操作によって駐車場内での給電を実行する指示を入力する操作を受け付けてある。具体的には、機械式駐車場の搬入口まで車両Vを運転して停車した際に、ナビゲーション装置等の車載機器にて「充電しますか?」の問いかけがユーザ向けになされる。ユーザが車載機器に対して「充電する」を選択してからOFF操作を行なうと、車載機器から車載制御装置32へ充電指示が送信され、車載制御装置32は電源OFFとならずに、給電装置2との通信が可能となるまで待機する待機状態へ遷移する。ユーザの上方端末装置にて操作が受け付けられる場合も同様である。
【0047】
図9及び
図10は、第2実施形態における制御部23による給電開始処理の一例を示すフローチャートである。制御部23は、起動している間、以下に示す処理を繰り返し実行する。
図9及び
図10のフローチャートに示す処理手順のうち、第1実施形態の
図6のフローチャートに示した処理手順と共通する手順については、同一のステップ番号を付し、詳細な説明を省略する。
【0048】
制御部23は、検知部27から車両Vが載置されたことを検知したと判断した場合(S101:YES)、車両識別部29により、所定時間以内に識別体Tを検知したか否かを判断する(ステップS121)。ステップS121において制御部10は、第1例においては定期的に車両識別部29を起動して、カメラである車両識別部29から得られる画像から、特定の文字列、マーク、模様等を認識できたか否かを判断し、認識できたと判断した場合、識別体Tを検知したと判断する。制御部10は、第2例においては定期的に車両識別部29を起動して、識別体Tから情報を読み取ることができたか否かを判断し、読み取ることができたと判断した場合、検知したと判断する。
【0049】
所定時間以内に識別体Tを検知しないと判断された場合(S121:NO)、制御部23は、車両Vは給電対象でない(受電コイル31を備えていない)と判断し(S115)、処理を終了する。
【0050】
所定時間以内に識別体Tを検知したと判断された場合(S121:YES)、制御部23は、車両識別部29により、識別体Tから識別情報を取得する(ステップS122)。その後、制御部23は、通信回路25により受電側の車載制御装置との通信接続を試行し(S103)、通信接続が可能であるか否かを判断する(S104)。
【0051】
通信接続が可能であると判断された場合(S104:YES)、車両Vの車載制御装置32と通信接続を確立し(S105)、車載制御装置32と情報を交換する(ステップS126)。第2実施形態においてステップS126では、識別情報を用いて通信相手が正しいことを特定できる。この場合、制御部23は、ステップS122にて取得した識別情報により車載制御装置32との間で、通信相手として正しいか否かの認証を行なうとよい。
【0052】
ステップS126にて交換した情報に基づき制御部23は、車両Vのユーザから給電が望まれているか否かを判断する(ステップS127)。ステップS127において制御部23は、車載制御装置32にて駐車場内での給電を実行する指示を受けているか否かの上方を車載制御装置32から取得して判断する。
【0053】
車両Vのユーザから給電が望まれていないと判断(認識)された場合(S127:NO)、制御部23は、処理をステップS115へ進め、処理を終了する。
【0054】
車両Vのユーザから給電が望まれていると判断(認識)された場合(S127:YES)、制御部23は、車載制御装置32との間で交換した情報に基づき、給電コイル21の高さ及び位置を決定する(ステップS128)。ステップS128において制御部23は例えば、車種ごとに移動すべき給電コイル21の高さ及び前後左右の位置を記憶部24に記憶しておき、記憶部24からそれらの情報を参照して決定する。制御部23は、車載制御装置32から高さ及び前後左右の位置のデータを取得してもよい。
【0055】
制御部23は、移動機構28へ、決定した高さ及び位置を指示し(ステップS129)、ステップS109以降の処理を実行する。これにより、給電が可能な車両Vであって、且つ、給電が望まれていることが認識される車両Vに絞って給電処理を開始することができ、移動機構28及び給電装置2の無用な動作の実行を避けることができる。
【0056】
(変形例)
また第2実施形態では更に、識別体Tを、車両Vの受電コイル31に対して特定の箇所に設け、車両識別部29を、給電コイル21の特定の箇所に設け、識別体Tを下方から識別できたときに初めて(S121:YES)、その後の処理を開始するようにしてもよい。
図11は、識別体T及び車両識別部29の設置位置の一例を示す図である。例えば識別体Tと車両識別部29との位置関係を、
図11に示すように、給電コイル21及び受電コイル31が同軸で対向する位置関係となっている場合に識別可能に適切に設定されているとよい。これにより、支持部142が格納部13の凹部132から退避したことを確実に確認してから、給電コイル21の筐体22の移動を開始させることが可能である。
【0057】
(第3実施形態)
第3実施形態では、駐車場の管理システム4と連携する。
図12は、第3実施形態における給電装置2の構成を示すブロック図である。第3実施形態における機械式駐車場、即ち格納部13、搬送機14等の構成は、第1実施形態の機械式駐車場と同一である。機械式駐車場の管理システム4と連携する点を除き、第3実施形態における給電システム200は第1実施形態の給電システム200の構成と同様である。第3実施形態の給電システム200のうち、第1実施形態の給電システム200と共通する構成については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0058】
第3実施形態において、各格納部13の給電装置2はそれぞれ、接続部26を介して機械式駐車場の管理システム4と接続されており、信号の授受又は通信接続が可能である。機械式駐車場では、ユーザが車両Vを搬入口まで運転して利用を開始するに際し、管理システム4が有する操作パネル等のインタフェースにて、駐車場内での給電を実行する指示を入力する操作を受け付け可能である。ユーザはこの際、インタフェースに、入庫する車両Vの識別データ(車両番号)、車種等のデータを操作又は所定の記憶媒体からの読み取りによって入力できる。給電装置2は、これらの情報と、管理システム4から搬送機14の制御装置140へ指示した内容とに基づき、車載制御装置とのデータのやり取りや、搬送機14の支持部142の引き抜きを検知する処理を行なうことなしに、給電を自動的に開始することができる。また、給電装置2が管理システム4と連携することにより、給電の結果、即ち給電した量、もしくはそれに基づく課金額を管理システム4へ出力できる。これにより、機械式駐車場では駐車料金と充電料金とを合わせた料金徴収を実現できる。
【0059】
図13及び
図14は、第3実施形態における制御部23による給電開始処理の一例を示すフローチャートである。制御部23は、起動している間、以下に示す処理を繰り返し実行する。
図13及び
図14のフローチャートに示す処理手順のうち、第1実施形態の
図6のフローチャートに示した処理手順と共通する手順については、同一のステップ番号を付し、詳細な説明を省略する。
【0060】
第3実施形態において制御部23は、検知部27から車両Vが載置されたことを検知したと判断した場合(S101:YES)、管理システム4から車両情報を取得する(ステップS132)。ステップS132において制御部23は、ユーザが管理システム4のインタフェースに入力した車両番号、車種のデータ、給電の指示を取得する。
【0061】
ステップS132で取得した情報に基づき、制御部23は、車両Vのユーザから給電が望まれているか否かを判断する(ステップS133)。車両Vのユーザから給電が望まれていないと判断(認識)された場合(S133:NO)、制御部23は、処理をステップS115へ進め、処理を終了する。
【0062】
車両Vのユーザから給電が望まれていると判断(認識)された場合(S133:YES)、制御部23は、ステップS132で取得した情報(車種のデータ)に基づき、給電コイル21の高さ及び位置を決定する(ステップS134)。ステップS134において制御部23は例えば、車種ごとに移動すべき給電コイル21の高さ及び前後左右の位置を記憶部24に記憶しておき、記憶部24からそれらの情報を参照して決定する。制御部23は、車載制御装置32から高さ及び前後左右の位置のデータを取得してもよい。
【0063】
制御部23は、管理システム4から、搬送機14の制御装置140へ、支持部142の引き抜きを指示したことの通知を受け付けたか否かを判断する(ステップS135)。制御部23は、支持部142の引き抜き通知を受け付けていないと判断した場合(S135:NO)、所定時間(例えば1秒、10秒、30秒等)待機し、処理をステップS135へ戻す。
【0064】
制御部23は、支持部142の引き抜きの通知を受け付けたと判断した場合(S135:YES)、ステップS134で決定した高さ及び位置への移動を移動機構28へ指示する(ステップS136)。
【0065】
続いて制御部23は、ステップS103からステップS106の処理を実行する。給電コイル21は移動済みであるから、制御部23は給電コイル21からの給電を開始させ(S109)、充電が必要な状態であるか否かの判断を実行する(S110)。
【0066】
制御部23は、充電が不要であると判断し(S110:NO)、給電コイル21からの給電を停止した場合(S111)、給電開始から停止までに給電コイル21から出力した電力量と、記憶してある電気料金データとを用いて加算料金を算出し、管理システム4へ出力する(ステップS137)。
【0067】
続いて制御部23は、待機状態へ遷移し(S112)、給電コイル21をホームポジションへ移動するように指示し(S113)、通信接続を停止し(S114)、処理を終了する。
【0068】
このように、給電装置2は駐車場の管理システム4と連携し、給電した量に基づく加算額を管理システム4へ通知し、機械式駐車場では駐車料金と充電料金とを合わせた料金徴収を実現できる。利用者にとっても機械式駐車場の管理者にとっても、妥当な料金を合わせて徴収でき、機械式駐車場の利便性が向上する。
【0069】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0070】
特許請求の範囲に記載されている複数の請求項に関して、引用形式に関わらず、相互に組み合わせることが可能である。特許請求の範囲では、複数の請求項に従属する多項従属請求項が記載されている。特許請求の範囲では、多項従属請求項に従属する多項従属請求項は記載されていないが、多項従属請求項に従属する多項従属請求項を記載してもよい。
【符号の説明】
【0071】
13 格納部
131 厚肉部
132 凹部
14 搬送機
142 支持部
200 給電システム
2 給電装置
21 給電コイル
22 筐体
23 制御部
27 検知部
29 車両識別部
4 管理システム
V 車両(電気自動車)