(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161824
(43)【公開日】2024-11-20
(54)【発明の名称】アンモニア除害システム、浮体及びアンモニア供給方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/92 20060101AFI20241113BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20241113BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20241113BHJP
C02F 1/461 20230101ALI20241113BHJP
B01D 53/58 20060101ALI20241113BHJP
C01C 1/12 20060101ALI20241113BHJP
【FI】
B01D53/92 228
B01D53/78 ZAB
B01D53/92 225
B01D53/14 200
C02F1/461 A
B01D53/58
B01D53/92 335
B01D53/92 331
C01C1/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076891
(22)【出願日】2023-05-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】山田 大祐
(72)【発明者】
【氏名】高松 皆光
(72)【発明者】
【氏名】吉田 篤史
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4D061
【Fターム(参考)】
4D002AA12
4D002AA13
4D002AC10
4D002BA02
4D002BA03
4D002BA05
4D002BA06
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4D020CD10
4D020DA01
4D020DA02
4D020DB03
4D020DB20
4D061DA04
4D061DC14
4D061EA02
4D061EB01
(57)【要約】
【課題】アンモニアの除害効率をさらに高める。
【解決手段】アンモニア除害システムは、アンモニア含有ガスが流通するガス流通ラインと、ガス流通ラインから供給されるアンモニア含有ガスに含まれるアンモニアを加圧状態で第一吸収液に吸収させる第一希釈部と、第一希釈部内の気相の気体を一次処理ガスとして、第一希釈部の外部に送出可能な第一送出ラインと、第一送出ラインを通して供給される一次処理ガスに含まれるアンモニアを、第一希釈部よりも低い圧力下で第二吸収液に吸収させる第二希釈部と、第一送出ラインに設けられ、第一希釈部から第二希釈部への一次処理ガスの供給を調整する調整弁と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア含有ガスが流通するガス流通ラインと、
前記ガス流通ラインから供給される前記アンモニア含有ガスに含まれるアンモニアを加圧状態で第一吸収液に吸収させる第一希釈部と、
前記第一希釈部内の気相の気体を一次処理ガスとして、前記第一希釈部の外部に送出可能な第一送出ラインと、
前記第一送出ラインを通して供給される前記一次処理ガスに含まれるアンモニアを、前記第一希釈部よりも低い圧力下で第二吸収液に吸収させる第二希釈部と、
前記第一送出ラインに設けられ、前記第一希釈部から前記第二希釈部への前記一次処理ガスの供給を調整する調整弁と、を備える
アンモニア除害システム。
【請求項2】
前記第一希釈部は、前記第一希釈部内の気相と前記第一希釈部内の液相とを気液平衡状態とする
請求項1に記載のアンモニア除害システム。
【請求項3】
前記調整弁の開閉動作を制御する制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、
前記第一希釈部内の気相のアンモニア濃度が既定値を下回った際に、前記調整弁を閉状態から開状態に遷移させる
請求項1又は2に記載のアンモニア除害システム。
【請求項4】
前記第二希釈部は、大気圧下で、前記一次処理ガスに含まれるアンモニアを前記第二吸収液に吸収させる
請求項1又は2に記載のアンモニア除害システム。
【請求項5】
前記第一希釈部をバイパスし、前記ガス流通ラインと前記第一送出ラインとを接続するバイパスラインをさらに備える
請求項1又は2に記載のアンモニア除害システム。
【請求項6】
前記第二希釈部内の気相の気体を二次処理ガスとして、前記第二希釈部の外部に送出可能な第二送出ラインと、
前記第二送出ラインを通して供給される前記二次処理ガスに含まれるアンモニアの濃度を低下させる第三希釈部、をさらに備える
請求項1又は2に記載のアンモニア除害システム。
【請求項7】
前記アンモニア含有ガスは、不活性ガスを含むパージガスである
請求項1又は2に記載のアンモニア除害システム。
【請求項8】
前記アンモニア含有ガスは、アンモニアを貯蔵可能なタンクで生成されたボイルオフガスである
請求項1又は2に記載のアンモニア除害システム。
【請求項9】
前記第二希釈部の外部から前記第二希釈部内に、アンモニア含有ガスを吸引するガス吸引部、をさらに備える
請求項1又は2に記載のアンモニア除害システム。
【請求項10】
前記ガス吸引部は、前記ガス流通ラインから前記第二希釈部内に、前記ガス流通ラインを流通する前記アンモニア含有ガスを吸引する
請求項9に記載のアンモニア除害システム。
【請求項11】
前記第一希釈部、及び前記第二希釈部の少なくとも一方の液相から導入するアンモニア液と、水と、を混合することで、アンモニア水を生成するアンモニア水製造部をさらに備える
請求項1又は2に記載のアンモニア除害システム。
【請求項12】
燃料を燃焼させることで排ガスを排出する燃焼装置から排出される排ガスに脱硝処理を施す脱硝装置、をさらに備え、
前記アンモニア水製造部で生成された前記アンモニア水を、前記脱硝装置の還元剤として用いる
請求項11に記載のアンモニア除害システム。
【請求項13】
アンモニアを貯蔵可能なタンクをさらに備え、
前記アンモニア水製造部は、前記タンクの液相及び気相の少なくとも一方から導入したアンモニアを、前記アンモニア液及び前記水に混合し、前記アンモニア水を生成する
請求項11に記載のアンモニア除害システム。
【請求項14】
前記脱硝装置から排出される排ガスの窒素酸化物濃度を検出するNOx検出部と、前記脱硝装置から排出される排ガスのアンモニア濃度を検出するアンモニア検出部と、の少なくとも一方を備える
請求項12に記載のアンモニア除害システム。
【請求項15】
前記第一希釈部、及び前記第二希釈部の少なくとも一方の液相から排出される、アンモニアを含む排出液を脱窒可能な脱窒処理部、をさらに備える
請求項1又は2に記載のアンモニア除害システム。
【請求項16】
前記脱窒処理部は、
外部から導入した海水に電気分解を施すことで、次亜塩素酸ソーダを含む海水電解液を生成する電気分解部と、
前記排出液と前記電気分解部で生成された前記海水電解液との混合液を反応させる脱窒反応部と、を含む
請求項15に記載のアンモニア除害システム。
【請求項17】
浮体本体と、
請求項1又は2に記載のアンモニア除害システムと、を備える
浮体。
【請求項18】
請求項14に記載のアンモニア除害システムにおけるアンモニア供給方法であって、
前記脱硝装置から排出される排ガスの窒素酸化物濃度と、前記脱硝装置から排出される排ガスのアンモニア濃度との少なくとも一方に基づいて、前記脱硝装置への前記アンモニア水の供給量又は、前記アンモニア水の濃度を調整する
アンモニア供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンモニア除害システム、浮体及びアンモニア供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶等の浮体においては、積荷としてアンモニアを運搬することがある。また、浮体に設けられた主機等の燃料としてアンモニアを用いることがある。このようなアンモニアを取り扱う浮体は、アンモニアを貯蔵するタンク、及びタンクに接続されたアンモニアの流通する配管等を備えている。
【0003】
液化アンモニアを貯蔵するタンクは、外部からの入熱により、タンク内の液化アンモニアが蒸発したボイルオフガスとして、アンモニアガスが生成されることがある。この場合、タンク内の圧力が、アンモニアガスの生成により過度に上昇することを抑えるため、生成されたアンモニアガスを、タンクの外部に排出することがある。
【0004】
また、例えば、何らかのトラブルが生じた場合等に、配管内を、窒素等の不活性ガスによってパージすることで、配管内のアンモニアを排出することがある。この場合、配管内からは、アンモニアと不活性ガスとを含んだパージガスが排出される。
【0005】
アンモニアは、周囲環境へ影響を及ぼす可能性が有る。このため、タンクや配管内から排出される、ボイルオフガス(アンモニアガス)や、パージガスを、浮体が浮かぶ周囲の水中や大気中にそのまま放出することは好ましくない。
【0006】
特許文献1には、アンモニアガスを大気中に放出する前に無害化処理するアンモニアガスの除害システムが開示されている。この除害システムでは、アンモニアを含む気体を、スクラバやクーリングタワー等の閉鎖空間に導き、水に充分接触させることで、アンモニア成分を水に吸収させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、浮体に設けられるアンモニア除害システムは、限られたスペースに設置する必要があることから、アンモニアの除害効率をさらに高めることが求められている。
【0009】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、アンモニアの除害効率をさらに高めることができるアンモニア除害システム、浮体及びアンモニア供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本開示に係るアンモニア除害システムは、ガス流通ラインと、第一希釈部と、第一送出ラインと、第二希釈部と、調整弁と、を備えている。前記ガス流通ラインは、アンモニア含有ガスが流通する。前記第一希釈部は、前記ガス流通ラインから供給される前記アンモニア含有ガスに含まれるアンモニアを加圧状態で第一吸収液に吸収させる。前記第一送出ラインは、前記第一希釈部内の気相の気体を一次処理ガスとして、前記第一希釈部の外部に送出可能とされている。前記第二希釈部は、前記第一送出ラインを通して供給される前記一次処理ガスに含まれるアンモニアを、前記第一希釈部よりも低い圧力下で第二吸収液に吸収させる。前記調整弁は、前記第一送出ラインに設けられている。前記調整弁は、前記第一希釈部から前記第二希釈部への前記一次処理ガスの供給を調整する。
【0011】
本開示に係る浮体は、浮体本体と、上記したようなアンモニア除害システムと、を備えている。
本開示に係るアンモニア供給方法は、脱硝装置から排出される排ガスの窒素酸化物濃度と、前記脱硝装置から排出される排ガスのアンモニア濃度との少なくとも一方に基づいて、前記脱硝装置への前記アンモニア水の供給量又は、前記アンモニア水の濃度を調整する。
【発明の効果】
【0012】
本開示のアンモニア除害システム、浮体及びアンモニア供給方法によれば、アンモニアの除害効率をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の実施形態に係るアンモニア除害システム、浮体を備えた浮体の側面図である。
【
図2】本開示の第一実施形態に係るアンモニア除害システムの構成を示す図である。
【
図3】本開示の第一実施形態の第一変形例におけるアンモニア除害システムの構成を示す図である。
【
図4】本開示の第一実施形態の第二変形例におけるアンモニア除害システムの構成を示す図である。
【
図5】本開示の第一実施形態の第三変形例におけるアンモニア除害システムの構成を示す図である。
【
図6】本開示の第二実施形態に係るアンモニア除害システムの構成を示す図である。
【
図7】本開示の第二実施形態の第一変形例におけるアンモニア除害システムの構成を示す図である。
【
図8】本開示の第三実施形態に係るアンモニア除害システムの構成を示す図である。
【
図9】本開示の第三実施形態の第一変形例におけるアンモニア除害システムの構成を示す図である。
【
図10】本開示の第一~第三実施形態の変形例に係るアンモニア除害システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第一実施形態>
以下、本開示の実施形態に係るアンモニア除害システム、浮体及びアンモニア供給方法について、
図1から
図9を参照して説明する。
【0015】
(浮体の全体構成)
図1に示すように、本開示の実施形態の浮体1は、浮体本体2と、上部構造4と、燃焼装置8と、アンモニア除害システム100Aと、を備えている。なお、この実施形態の浮体1は、主機等により航行可能な船舶を一例として説明する。浮体1の船種は、特定の船種に限られない。浮体1の船種としては、液化ガス運搬船、フェリー、RORO船、自動車運搬船、客船等を例示できる。この実施形態では浮体1が船舶である場合について説明するが、浮体1は船舶に限られず、主機等による航行が不能なFSU(Floating Storage Unit)、FSRU(Floating Storage and Regasification Unit)等であってもよい。
【0016】
浮体本体2は、海水に浮かぶように形成されている。浮体本体2は、その外殻をなす一対の舷側5A,5Bと船底6とを有している。舷側5A,5Bは、左右舷側をそれぞれ形成する一対の舷側外板を備える。船底6は、これら舷側5A,5Bを接続する船底外板を備える。浮体本体2は、最も上層に配置される全通甲板である上甲板7を更に備えている。上部構造4は、この上甲板7上に形成されている。上部構造4内には、居住区等が設けられている。この実施形態の浮体1では、例えば、上部構造4よりも船首尾方向FAの船首2a側に、貨物を搭載するカーゴスペース(図示無し)が設けられている。なお、浮体本体2の構成については、何ら限定するものではなく、上記以外の構成であってもよい。
【0017】
燃焼装置8は、燃料を燃焼させることで熱エネルギーを発生させる装置であり、上記の浮体本体2内に設けられている。燃焼装置8としては、浮体1を推進させるための主機に用いられる内燃機関、船内に電気を供給する発電設備に用いられる内燃機関、作動流体としての蒸気を発生させるボイラー等を例示できる。この実施形態の浮体1で主機として用いられる燃焼装置8は、例えば、燃料としてアンモニアと、アンモニアとは異なる重油などの他の燃料と、を切り替えて用いることが可能となっている。燃焼装置8には、燃料を供給する燃料系統(図示せず)が接続されている。燃料系統は、アンモニアと、他の燃料とが流通する。
【0018】
燃焼装置8の燃料をアンモニアから他の燃料に切り替える際やメンテナンスを行う際、燃焼装置8の燃料系統を含む配管系統に残存したアンモニアを、窒素等の不活性ガス(パージガス)に置き換える、いわゆるパージが行われる。ここで、配管系統にする残存するアンモニアは、液化アンモニアであってもよいし、アンモニアガスであってもよい。パージを行うため、配管系統には、不活性ガス供給装置(図示せず)が接続されている。不活性ガス供給装置は、配管系統に、不活性ガスを供給可能とされている。なお、不活性ガスは、アンモニアに接触した際に化学反応しない気体であればよく、例えば、窒素を例示できる。不活性ガス供給装置において、不活性ガス供給源(図示せず)から配管系統に不活性ガスを供給すると、配管系統内のアンモニアが不活性ガスにより押し出される。これにより、配管系統からは、アンモニア(液化アンモニア、アンモニアガス)、及び不活性ガスを含むパージガスが排出される。
【0019】
(アンモニア除害システムの構成)
図2は、本開示の第一実施形態に係るアンモニア除害システムの構成を示す図である。
図2に示すように、アンモニア除害システム100Aは、ガス流通ライン10と、第一希釈部20と、第一送出ライン30と、第二希釈部50と、第二送出ライン70と、第三希釈部80と、制御装置60と、を備えている。
【0020】
ガス流通ライン10は、アンモニア含有ガスが流通する。アンモニア含有ガスとしては、例えば、パージの際に燃焼装置8(
図1参照)の配管系統から排出されるパージガス、アンモニアタンクから排出されるボイルオフガス、配管等から漏洩して気化したアンモニアを含むガス等を例示できる。ガス流通ライン10は、流通するアンモニア含有ガスをアンモニア除害システム100Aへと導く。
【0021】
ガス流通ライン10の途中には、開閉弁15が設けられている。開閉弁15は、ガス流通ライン10内の流路を開閉可能とされている。開閉弁15は、後述する制御装置60によって、その開閉動作が制御される。なお、開閉弁15は、開度を調整可能な調整弁であってもよい。
なお、ガス流通ライン10と後述するバイパスライン110との組み合わせは、一つに限られず、複数備えていてもよい。
【0022】
第一希釈部20は、ガス流通ライン10から供給されるアンモニア含有ガスに含まれるアンモニアを加圧状態で第一吸収液L1に吸収させる。第一希釈部20は、中空構造であり、その内部に、アンモニアを吸収可能な第一吸収液L1を貯留する。第一吸収液L1としては、例えば、清水や、海水を例示できる。第一希釈部20内には、気相と液相とが形成される。
第一希釈部20は、圧力容器であり、第一希釈部20内には、ガス流通ライン10を通して、アンモニア含有ガスが導入される。ここで、ガス流通ライン10を流通するアンモニア含有ガスは、大気圧よりも高い圧力に加圧されている。そのため、第一希釈部20内に導入されたアンモニア含有ガスは、大気圧よりも高い圧力に加圧された加圧状態となっている。そして、第一希釈部20内に導入されたアンモニア含有ガスに含まれるアンモニア成分は、加圧状態で第一吸収液L1に吸収されることとなる。本実施形態の第一希釈部20では、例えば、第一希釈部20内の気相と液相とを気液平衡状態となるまで、気相に含まれるアンモニアを、第一吸収液L1に吸収させるようにしている。
【0023】
ここで、第一希釈部20は、第一吸収液L1によるアンモニアの吸収を促進させるため、例えば、第一希釈部20内の液相を吸上げ、スプレーノズル等を介して、第一希釈部20内の上部の気相中に散液されるようにしてもよい。これにより、液相に含まれる第一吸収液L1が、第一希釈部20内の気相中のアンモニアと接触し、アンモニアの吸収が促進される。
【0024】
第一送出ライン30は、第一希釈部20内の気相の気体を一次処理ガスG1として、第一希釈部20の外部に送出可能である。第一送出ライン30の一端は、第一希釈部20内の上部に連通している。第一送出ライン30の他端は、第二希釈部50に接続されている。つまり、第一送出ライン30は、一次処理ガスG1を第二希釈部50に送出可能とされている。
【0025】
第一送出ライン30の途中には、調整弁35が設けられている。調整弁35は、第一希釈部20から第二希釈部50への一次ガスの供給を調整可能である。ここで、調整弁35における開度調整は、第一送出ライン30内の流路を開状態と閉状態との間で切り換えることで、気体の流れを断続するものであってもよい。また、調整弁35は、第一送出ライン30内の流路の開度を調整することで、第一送出ライン30内の流路を流れる気体の流量を調整可能である。調整弁35の動作は、制御装置60によって制御可能である。
【0026】
第二希釈部50は、第一送出ライン30に接続されている。第二希釈部50は、第一送出ライン30を通して供給される一次処理ガスG1に含まれるアンモニアを、第一希釈部20よりも低い圧力下で第二吸収液L2に吸収させる。本実施形態の第二希釈部50は、大気圧下で、一次処理ガスG1に含まれるアンモニアを第二吸収液L2に吸収させる。
【0027】
第二送出ライン70は、第二希釈部50内の気相の気体を二次処理ガスG2として、第二希釈部50の外部に送出可能である。第二送出ライン70の一端は、第二希釈部50内の上部に連通している。第二送出ライン70の他端は、第三希釈部80に接続されている。
【0028】
第三希釈部80は、第二送出ライン70を通して供給される二次処理ガスG2に含まれるアンモニアの濃度を低下させる。第三希釈部80は、二次処理ガスG2に含まれるアンモニアの濃度を低下させることができるのであれば、いかなるものを用いてもよい。第三希釈部80としては、例えば、希釈ファン、GCU(ガス燃焼ユニット(Gas Combustion Unit))、触媒燃焼装置等が例示できる。希釈ファンは、外部から取り込む外気(空気)を、二次処理ガスG2に混合することによって、二次処理ガスG2中のアンモニア濃度を低減させる。GCU(ガス燃焼ユニット(Gas Combustion Unit))、触媒燃焼装置は、二次処理ガスG2に含まれるアンモニアを燃焼させることによって、気体中のアンモニア濃度を低減させる。また、第三希釈部80は、アンモニアを吸収できる吸収物質、例えば活性炭等により二次処理ガスG2に含まれるアンモニアを吸収するようにしてもよい。また、第三希釈部80は、第二希釈部50と同様、水等の吸収液により二次処理ガスG2に含まれるアンモニアを吸収する、いわゆる湿式であってもよい。なお、第三希釈部80は必須の構成ではない。第三希釈部80を備えない構成とすることも可能である。また、第二希釈部50の後段側に、第三希釈部80に加えて、さらに他の希釈部(例えば、第四希釈部等:図示無し)を備えるようにしてもよい。
【0029】
第三希釈部80には、排気ライン90が接続されている。排気ライン90は、第三希釈部80によってアンモニアが除害された気体を大気中に排出する。排気ライン90としては、例えば、浮体本体2の上甲板7上などに設けられたベントポスト、ファンネル9(
図1参照)等を用いることができる。
【0030】
制御装置60は、開閉弁15、及び調整弁35の開閉動作を少なくとも制御する。
制御装置60は、ガス流通ライン10から第一希釈部20内にアンモニア含有ガスが導入される際に、開閉弁15を開く。制御装置60は、第一送出ライン30を通して第一希釈部20内の気相から気体を外部に送出する際に、開閉弁15を閉じる。
制御装置60は、開閉弁15、及び調整弁35の動作を制御することで、第一希釈部20内で、第一希釈部20内の気相と第一希釈部20内の液相とが気液平衡状態となるまで、第一希釈部20にアンモニア含有ガスを一時的に貯留し、いわゆるバッチ処理を行う。なお、制御装置60による制御対象は、開閉弁15及び調整弁35の開閉動作に限られない。例えば、アンモニア除害システム100Aにポンプ(図示せず)等を備えている場合、ポンプ(図示せず)等の動作を制御するようにしてもよい。
【0031】
制御装置60は、第一希釈部20内の気相のアンモニア濃度を監視する。制御装置60は、第一希釈部20内の気相のアンモニア濃度が規定値を下回った際に、調整弁35を閉状態から開状態に遷移させる。この実施形態では、制御装置60は、第一希釈部20内の気相と第一希釈部20内の液相とが気液平衡状態となった際に、第一希釈部20から第二希釈部50に、第一希釈部20内の気相の気体を送出する。
【0032】
上記規定値は、例えば、気液平衡状態となった場合のアンモニア濃度よりも高いアンモニア濃度である。気液平衡状態になったと推定される場合、第一希釈部20内の気相のアンモニア濃度は、規定値を下回る。規定値としては、気液平衡状態のアンモニア濃度よりも僅かに高いアンモニア濃度を例示できる。ここで、一般に、気液平衡状態とは、気相-液相間の物質移動が完全になくなった状態である。しかし厳密には、温度が僅かながらも刻々と変化しているため、常に物質移動は起こっている状態となる。
【0033】
制御装置60は、ガス流通ライン10から第一希釈部20内にアンモニア含有ガスが導入される際に、調整弁35を閉状態とする。
【0034】
なお、制御装置60における制御とは、予め設定されたプログラムに基づいてコンピューターが所定の処理を順次実行するものに限らず、例えば圧力センサー等の検出値を見たオペレータが、制御装置60に対して所定の操作を行うことで、制御装置60が開閉弁15、調整弁35を動作させる、いわゆる遠隔操作を含む。
【0035】
また、本実施形態におけるアンモニア除害システム100Aは、バイパスライン110を更に備えている。
バイパスライン110は、第一希釈部20をバイパスし、ガス流通ライン10と第一送出ライン30とを接続する。バイパスライン110の一端は、開閉弁15よりも上流側のガス流通ライン10に接続されている。バイパスライン110の他端は、調整弁35よりも下流側の第一送出ライン30に接続されている。バイパスライン110の途中には、バイパスライン110内の流路を開閉する弁115が設けられている。バイパスライン110は、開閉弁15と調整弁35とを閉じた状態で、弁115を開くことで、ガス流通ライン10内を流れるアンモニア含有ガスを、第一希釈部20に通すことなく、第一送出ライン30へとバイパスさせることができる。
なお、このバイパスライン110は、必須の構成ではなく、バイパスライン110を備えない構成とすることもできる。また、制御装置60は、弁115の開閉を制御するようにしてもよい。
【0036】
(作用効果)
上記第一実施形態では、ガス流通ライン10から供給されるアンモニア含有ガスに含まれるアンモニアが、第一希釈部20において加圧状態で第一吸収液L1に吸収される。そして、第一希釈部20内の気相の気体は、一次処理ガスG1として、第一送出ライン30を通して第一希釈部20の外部に送出される。また、第二希釈部50において、一次処理ガスG1に含まれるアンモニアが、第一希釈部20よりも低い圧力下で第二吸収液L2に吸収される。これにより、第一希釈部20においてアンモニア含有ガスを保持することができ、バッチ処理でアンモニアの除害を行うことが可能となる。そのため、船舶の傾きの影響を受ける吸収塔等を用いずに、単純なシステム構成でアンモニアを除害することが可能となる。したがって、アンモニアの除害効率をさらに高めることができる。
【0037】
また、上記第一実施形態では、第一希釈部20で、第一希釈部20内の気相と液相とを気液平衡状態としている。これにより、ガス流通ライン10から供給されるアンモニア含有ガスに含まれるアンモニアを、第一吸収液L1に対して最大限に吸収させることができる。したがって、第一希釈部20内の気相の気体のアンモニア濃度を十分に低下させた状態で、第二希釈部50に送り込むことができる。
【0038】
さらに、上記第一実施形態では、制御装置60は、第一希釈部20内の気相のアンモニア濃度が規定値を下回った際に、調整弁35を閉状態から開状態に遷移させる。これにより、第一希釈部20内で、アンモニア含有ガスが十分に第一吸収液L1に吸収され、アンモニア濃度が規定値未満に下回った状態の一次処理ガスG1を、第二希釈部50に供給することができる。これにより、第二希釈部50における、アンモニア吸収の負荷が軽減される。
【0039】
また、上記第一実施形態では、第二希釈部50は、大気圧下で、一次処理ガスG1に含まれるアンモニアを第二吸収液L2に吸収させる。これにより、第二希釈部50を、加圧のためのポンプ等の機器を必要としない、簡易な構成とすることができる。
【0040】
さらに、上記第一実施形態では、第一希釈部20をバイパスし、ガス流通ライン10と第一送出ライン30とを接続するバイパスライン110を備える。これにより、ガス流通ライン10等の残圧を抜く際などに、バイパスライン110を通して、ガス流通ライン10内のガスの残圧を迅速に抜くことができる。
【0041】
また、上記第一実施形態では、第三希釈部80を備える。第三希釈部80には、第二送出ライン70を通して、第二希釈部50内の気相の気体である二次処理ガスG2が供給される。第三希釈部80では、二次処理ガスG2に含まれるアンモニアの濃度をさらに低下させることができる。
【0042】
さらに、上記第一実施形態では、アンモニア含有ガスが不活性ガスを含むパージガスである場合、パージガスが、ガス流通ライン10を通して、第一希釈部20に供給される。ガス流通ライン10から供給されるパージガスは、第一希釈部20に加圧状態で一時貯留され、パージガスに含まれたアンモニアが、第一吸収液L1に吸収される。その後、第一希釈部20内の気相の気体である一次処理ガスG1は、送出ラインを通して、第二希釈部50に供給され、第二希釈部50内で、一次処理ガスG1に含まれるアンモニアが第二吸収液L2に吸収される。したがって、パージの際のガス流通ライン10を通して大量に流れ込むパージガスに含まれるアンモニアを、効率良く除害することができる。
【0043】
また、ガス流通ライン10を流通するアンモニア含有ガスが、アンモニアタンクで発生したボイルオフガスである場合も、上記パージガスの場合と同様に、ガス流通ライン10から供給されるボイルオフガスを、第一希釈部20に加圧状態で一時貯留して、ボイルオフガスのアンモニアを第一吸収液L1に吸収させることができる。さらに、一次処理ガスG1を、第二希釈部50に供給して、第二希釈部50内で、一次処理ガスG1に含まれるアンモニアを第二吸収液L2に吸収させることができる。
これにより、アンモニアを貯蔵可能なタンクで生成されたボイルオフガスに含まれるアンモニアを、第一希釈部20、第二希釈部50により効率よく除害することができる。
【0044】
(第一実施形態の変形例)
上記第一実施形態では、第一希釈部20で、アンモニア含有ガスをバッチ処理するようにしたが、アンモニア含有ガスのアンモニア濃度が低い場合、開閉弁15及び調整弁35を開いたままの状態として、ガス流通ライン10から第一希釈部20に流入するアンモニア含有ガスを連続処理するようにしてもよい。
【0045】
また、上記第一実施形態において、一次処理ガスG1に含まれるアンモニアを第二吸収液L2に吸収させる方式としては、直接第一送出ライン30の配管を第二吸収液L2中に沈めて一次処理ガスG1を第二吸収液L2中に放出させることで気液接触させる所謂バブリング方式としても良い。これにより、第二希釈部50を、簡易な構成としつつ、第二吸収液L2に対するアンモニアの吸収効率を向上することができる。
【0046】
(第一実施形態の第一変形例)
図3は、本開示の第一実施形態の第一変形例におけるアンモニア除害システムの構成を示す図である。
上記第一実施形態では、バイパスライン110及び弁115を一組だけ設ける場合について説明した。しかし、
図3に示す第一変形例のように、バイパスライン110としてバイパスライン110A,110Bを設け、弁115として弁115A,115Bを設けるようにしてもよい(以下、第二、第三実施形態も同様)。バイパスライン110Aには弁115Aが設けられ、バイパスライン110Bには弁115Bが設けられている。言い換えれば、弁115Aに対して弁115Bが並列に設けられている。これにより、弁115A,115Bの何れか一方が作動不良となった場合であっても、他方によりバックアップしてガス流通ライン10の残圧を抜くことが可能となる。なお、三つ以上のバイパスライン110及び弁115を備えるようにしてもよい。
【0047】
(第一実施形態の第二変形例)
図4は、本開示の第一実施形態の第二変形例におけるアンモニア除害システムの構成を示す図である。
上記第一実施形態では、ガス流通ライン10に開閉弁15が設けられ、バイパスライン110に弁115が設けられる場合を例示した。しかし、
図4に示す第二変形例のように、開閉弁15および弁115に代えて一つの三方弁415を設けるようにしてもよい(以下、第二、第三実施形態も同様)。この第二変形例においても、上記第一変形例と同様に、バイパスライン110A及び三方弁415と並列にバイパスライン110B、弁115Bを設けるようにしてもよい。このようにすることで、三方弁415が作動不良となった場合であっても、ガス流通ライン10の残圧を抜くことが可能となる。
【0048】
(第一実施形態の第三変形例)
図5は、本開示の第一実施形態の第三変形例におけるアンモニア除害システムの構成を示す図である。
上記第一実施形態に加えて、
図5に示す第一実施形態の第三変形例のように、第二吸収液L2によるアンモニアの吸収を促進させる混合部63を備えるようにしてもよい(以下、第三実施形態も同様)。混合部63は、第一送出ライン30を流れるアンモニア含有ガス又は一次処理ガスG1と、第二希釈部50に貯留されている第二吸収液L2とを混合する。混合部63は、分岐ライン76と、ミキサー77と、吸収液供給ライン78と、吸収液循環ポンプ79と、を備えている。分岐ライン76は、第一送出ライン30から分岐して、第一送出ライン30を流れるアンモニア含有ガス又は一次処理ガスG1をミキサー77に導く。ミキサー77は、第一送出ライン30を流れる気体であるアンモニア含有ガス又は一次処理ガスG1を、第二吸収液L2と混合する。ミキサー77としては、例えば、エジェクタやスタティックミキサーやマイクロリアクターを用いることができる。このようにミキサー77によって混合されることで、第一送出ライン30を流れるアンモニア含有ガス又は一次処理ガスG1に含まれるアンモニアガスが吸収液に吸収され易くなる。吸収液供給ライン78は、第二希釈部50の第二吸収液L2をミキサー77へ供給する。吸収液循環ポンプ79は、吸収液供給ライン78の第二吸収液L2をミキサー77へ向けて送り出す。混合部63によって混合された混合流体は、第二希釈部50内に導入される。
【0049】
なお、上記第一実施形態の第三変形例において、例えば、開閉弁(図示せず)を設けて、第一送出ライン30から第二希釈部50に直接流入させる流路と、第一送出ライン30から分岐ライン76、ミキサー77及び吸収液供給ライン78を介して流入させる流路とを選択可能としてもよい。また、上記第一実施形態の第三変形例において、第二希釈部50に貯留された第二吸収液L2によるアンモニアの吸収を促進させるため、例えば、吸収液供給ライン78からスプレーノズル等を介して、第二希釈部50内の上部の気相中に散液するようにしてもよい。
【0050】
<第二実施形態>
次に、本開示の第二実施形態に係るアンモニア除害システム、浮体について説明する。この第二実施形態は、第一実施形態と、空気導入ライン260、及びガス吸引部200を備える構成のみが異なるので、
図1を援用し、第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。
【0051】
(アンモニア除害システムの構成)
図6は、本開示の第二実施形態に係るアンモニア除害システムの構成を示す図である。
図6に示すように、アンモニア除害システム100Bは、ガス流通ライン10と、第一希釈部20と、第一送出ライン30と、第二希釈部50と、第二送出ライン70と、第三希釈部80と、制御装置60と、空気導入ライン260と、ガス吸引部200と、を備えている。
【0052】
また、本実施形態におけるアンモニア除害システム100Bは、第一希釈部20に接続されたガス流通ライン10とは別の位置のガス流通ライン10Bから、第二希釈部50にアンモニア含有ガスを導入する導入ライン220を備えている。導入ライン220は、例えば、調整弁35よりも下流側で第一送出ライン30に接続されている。なお、導入ライン220は、第一送出ライン30ではなく、第二希釈部50に直接接続するようにしてもよい。導入ライン220には、開閉弁221が設けられている。
【0053】
ガス流通ライン10Bと導入ライン220とは、接続ライン230により接続されている。接続ライン230の途中には、開閉弁231が設けられている。なお、導入ライン220がガス流通ライン10Bから第二希釈部50にアンモニア含有ガスを導入する場合について説明したが、ガス流通ライン10,10Bとは異なる別のガス流通ライン(図示せず)を導入ライン220としてもよい。
【0054】
また、ガス流通ライン10Bには、不活性ガス導入ライン240と、空気導入ライン260とが接続されている。不活性ガス導入ライン240は、パージを行う際に外部からガス流通ライン10Bに不活性ガス(例えば窒素ガス)を供給する。空気導入ライン260は、外部からガス流通ライン10Bに空気を供給する。不活性ガス導入ライン240の途中には、開閉弁241が設けられている。空気導入ライン260の途中には、開閉弁261が設けられている。上記の開閉弁221、231、241、261は、制御装置60によりその開閉動作が制御されている。
【0055】
このような構成において、パージを行う際には、開閉弁241を開き、ガス流通ライン10Bを含む配管系統に、不活性ガスを送り込む。配管系統に送り込まれた不活性ガスは、配管系統内のアンモニアとともに、パージガスとしてガス流通ライン10を通して第一希釈部20へと送り込まれる。
また、配管系統のパージが進行し、配管内のアンモニア濃度が下がってきた場合(例えば、アンモニアの爆発限界以下のアンモニア濃度となった場合)、開閉弁241を閉じ、開閉弁261を開く。これにより、空気導入ライン260を通して、外部からガス流通ライン10Bを含む配管系統に、空気が送り込まれる。その結果、パージ時おける不活性ガスの使用量を抑えることができる。
【0056】
空気導入ライン260を通して空気をガス流通ライン10Bに送り込んでいる状態では、配管系統内のアンモニア濃度が低くなっている。このような場合、開閉弁231、221を開き、ガス流通ライン10Bから、接続ライン230、導入ライン220を通して、第一送出ライン30から第二希釈部50へと、アンモニア含有ガスを送り込むようにしてもよい。
【0057】
ガス吸引部200は、第二希釈部50の外部から第二希釈部50内に、アンモニア含有ガスを吸引する。ガス吸引部200は、例えば、ガス流通ライン10Bから第二希釈部50内に、ガス流通ライン10Bを流通するアンモニア含有ガスを吸引する。ガス吸引部200としては、例えば、エジェクタ205や、ミキサー(図示せず)等を用いることができる。本実施形態では、ガス吸引部200として、エジェクタ205を備えている場合を例示している。
【0058】
エジェクタ205は、例えば、第二希釈部50内に第二吸収液L2を供給する給液ライン207の途中に設けられている。給液ライン207は、給液ライン207の途中に設けられたポンプ208等により、第二吸収液L2を圧送する。エジェクタ205は、導入ライン220に接続された接続ライン209を有している。接続ライン209の途中には、開閉弁203が設けられている。
【0059】
エジェクタ205は、圧送される第二吸収液L2を駆動流体とし、第二吸収液L2がエジェクタ205内を通過する際に生じる負圧を、接続ライン209を通して導入ライン220、ガス流通ライン10Bに作用させることが可能である。具体的には、開閉弁203を開き、エジェクタ205で発生する負圧を導入ライン220、ガス流通ライン10Bに作用させることにより、ガス流通ライン10B内のアンモニア含有ガスが吸引され、エジェクタ205及び給液ライン207を通して第二希釈部50へと送り込まれる。
【0060】
このようなエジェクタ205による吸引は、例えば、パージの終盤、又はパージの終了後に行うようにしてもよい。これにより、ガス流通ライン10B内をパージした際、ガス流通ライン10B内に残存するアンモニア含有ガスを、ガス吸引部200により吸引して第二希釈部50に送り込むことができるため、少量のアンモニア含有ガスを第二希釈部50で処理することが可能となる。また、エジェクタ205による吸引は、ガス流通ライン10Bを含む配管系統内の残圧を低減させるため等、他の目的で行ってもよい。
【0061】
(作用効果)
上記第二実施形態では、第二希釈部50の外部から第二希釈部50内に、アンモニア含有ガスを吸引するガス吸引部200を備えることで、第二希釈部50では、ガス吸引部200で吸引したアンモニア含有ガスに含まれるアンモニアを第二吸収液L2で吸収させることができる。
【0062】
また、上記第二実施形態では、ガス吸引部200が、ガス流通ライン10Bから第二希釈部50内に、ガス流通ライン10Bを流通するアンモニア含有ガスを吸引している。これにより、ガス流通ライン10B内をパージした際、ガス流通ライン10B内に残存するアンモニア含有ガスを、ガス吸引部200で吸引することができる。そして、ガス流通ライン10内に残存するアンモニア含有ガスに含まれるアンモニアを、第二希釈部50の第二吸収液L2で吸収することができる。したがって、パージの際に、ガス流通ライン10内のアンモニア濃度を更に低減することが可能となる。
【0063】
また、上記第一実施形態と同様、アンモニア含有ガスに含まれるアンモニアを、第一希釈部20、第二希釈部50を経ることで、効率的に除害することができ、アンモニアの除害効率が高めることができる。
【0064】
(第二実施形態の変形例)
上記第二実施形態の第二希釈部50における第二吸収液L2によるアンモニアの吸収を促進させるため、例えば、給液ライン207からスプレーノズル等を介して、第二希釈部50内の上部の気相中に散液するようにしてもよい。また、一次処理ガスG1に含まれるアンモニアを第二吸収液L2に吸収させる方式としては、直接第一送出ライン30の配管を第二吸収液L2中に沈めて一次処理ガスG1を第二吸収液L2中に放出させることで気液接触させる方式としても良い。
【0065】
また、上記第二実施形態では、開閉弁203、221、231、241、261の開閉動作が、制御装置60により制御される場合について例示したが、この構成に限られない。例えば、開閉弁203、221、231、241、261の開閉動作は、作業員等により手動で行うようにしてもよい。
【0066】
さらに、上記第二実施形態では、配管系統に送り込まれた不活性ガスが、配管系統内のアンモニアとともに、パージガスとしてガス流通ライン10を通して第一希釈部20へと送り込まれる場合について説明した。しかし、これに限られるものでは無く、例えば、パージガスは、第一希釈部20へ送り込まずに、ガス流通ライン10からバイパスライン110を通して第二希釈部50へ送り込むことも可能である。
【0067】
(第二実施形態の第一変形例)
図7は、本開示の第二実施形態の第一変形例におけるアンモニア除害システムの構成を示す図である。
上述した第二実施形態では、ガス吸引部200が、ガス流通ライン10Bからアンモニア含有ガスを吸引し、第二希釈部50に送り込むようにしたが、この構成に限られるものではない。例えば、ガス吸引部200は、第一希釈部20から第二希釈部50内に、アンモニア含有ガスとして、一次処理ガスG1を吸引するようにしてもよい。この場合、例えば、
図7に示すように、第一送出ライン30から分岐してガス吸引部200に至る他の接続ライン209Bと、他の接続ライン209に設けられて他の接続ライン209を開閉する開閉弁203Bと、を備えるようにすればよい。
また、ガス吸引部200は、ガス流通ライン10B、第一希釈部20以外のさらに他の部位から、アンモニア含有ガスを吸引するようにしてもよい。
【0068】
<第三実施形態>
次に、本開示の第三実施形態に係るアンモニア除害システム、浮体について説明する。この第三実施形態は、タンク300と、アンモニア水製造部310と、脱硝装置320と、脱窒処理部350と、を備える構成のみが第一、第二実施形態と異なるので、
図1を援用し、第一、第二実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。
【0069】
(アンモニア除害システムの構成)
図8は、本開示の実施形態に係るアンモニア除害システムの構成を示す図である。
図8に示すように、アンモニア除害システム100Cは、ガス流通ライン10と、第一希釈部20と、第一送出ライン30と、第二希釈部50と、第二送出ライン70と、第三希釈部80と、制御装置60と、タンク300と、アンモニア水製造部310と、脱硝装置320と、脱窒処理部350と、を備えている。
【0070】
タンク300は、アンモニアを貯蔵可能である。タンク300は、例えば、燃焼装置8の燃料としてのアンモニアを貯蔵可能である。タンク300で貯蔵するアンモニアは、例えば、船舶である浮体1の積荷としてのアンモニアであってもよい。
【0071】
アンモニア水製造部310は、アンモニア水貯蔵タンク311と、第一接続ライン312と、第二接続ライン313と、を備えている。
【0072】
アンモニア水貯蔵タンク311は、アンモニア水製造部310で製造するアンモニア水を貯蔵可能である。
第一接続ライン312は、アンモニア水貯蔵タンク311と、第一希釈部20の液相とを接続している。第一接続ライン312の途中には、開閉弁(図示せず)が設けられており、第一希釈部20の液相からアンモニア水貯蔵タンク311へのアンモニア液の供給を断続可能である。
第二接続ライン313は、アンモニア水貯蔵タンク311と、第二希釈部50の液相とを接続している。第二接続ライン313の途中には、開閉弁(図示せず)が設けられており、第二希釈部50の液相からアンモニア水貯蔵タンク311へのアンモニア液の供給を断続可能である。
【0073】
アンモニア水製造部310は、アンモニア水貯蔵タンク311に、水供給ライン(図示せず)を通して、清水、または海水を供給可能とされている。アンモニア水製造部310は、第一希釈部20、及び第二希釈部50の少なくとも一方の液相から導入するアンモニア液と、水と、を混合することで、アンモニア水を生成する。
【0074】
また、アンモニア水製造部310は、タンク300に貯蔵されているアンモニアを導入可能とされている。このため、アンモニア水製造部310は、第一タンク接続ライン315と、第二タンク接続ライン316と、を有している。
【0075】
第一タンク接続ライン315は、アンモニア水製造部310と、タンク300の液相とを接続している。第一タンク接続ライン315の途中には、開閉弁(図示せず)が設けられており、タンク300の液相からアンモニア水製造部310アンモニア水貯蔵タンク311へのアンモニア液の供給を断続可能である。
第二タンク接続ライン316は、アンモニア水製造部310と、タンク300の気相とを接続している。第二タンク接続ライン316の途中には、開閉弁(図示せず)が設けられており、タンク300の気相からアンモニア水貯蔵タンク311へのアンモニアガスの供給を断続可能である。
【0076】
アンモニア水製造部310は、タンク300に貯蔵されているアンモニアを導入することで、アンモニア水貯蔵タンク311内で製造するアンモニアの濃度を調整可能である。また、アンモニア水製造部310は、タンク300内のアンモニアをタンク300から抜いた後に残るアンモニアガスや、タンク300で外部からの入熱によって生じたボイルオフガス等のアンモニアガスを、アンモニア水貯蔵タンク311で受け入れるようにしてもよい。
【0077】
アンモニア水製造部310で製造されるアンモニア水は、浮体1内で、適宜の用途で使用可能である。
本実施形態では、例えば、アンモニア水製造部310で製造されるアンモニア水を、脱硝装置320の還元剤として用いている。
【0078】
脱硝装置320は、燃料を燃焼させる燃焼装置8から排出される排ガスに脱硝処理を施す。脱硝装置320とアンモニア水貯蔵タンク311は、還元剤供給ライン321を介して接続されている。還元剤供給ライン321の途中には、ポンプ(図示せず)が設けられ、アンモニア水貯蔵タンク311に貯蔵されたアンモニア水を、還元剤として脱硝装置320に供給可能とされている。還元剤供給ライン321を通して脱硝装置320に供給されるアンモニア水は、脱硝装置320で、窒素酸化物を分解できる程度の濃度を少なくとも有していればよい。
【0079】
脱硝装置320は、アンモニア水製造部310で生成され還元剤供給ライン321を通して供給されるアンモニア水を、還元剤として用いて排ガスに脱硝処理を施す。脱硝装置320で脱硝処理が施された排ガスは、脱硝装置320に接続された排気ライン325を通して、ファンネル9(
図1参照)等から排出される。
【0080】
ここで、この第三実施形態では、NOx検出部S1とアンモニア検出部S2とを更に備えている。NOx検出部S1は、脱硝装置320の排気側における窒素酸化物の濃度を検出する。アンモニア検出部S2は、脱硝装置320の排気側におけるアンモニア濃度を検出する。本実施形態では、NOx検出部S1により検出された窒素酸化物の濃度が規制値以下になるように、アンモニア水製造部310から脱硝装置320へのアンモニア水供給量や、アンモニア水製造部310により製造するアンモニア水の濃度調整を行っている。また、本実施形態では、脱硝装置320へのアンモニア水の供給多過とならないように、アンモニア検出部S2の検出結果に基づいて、脱硝装置320へ供給するアンモニア水の量を調整している。なお、NOx検出部S1とアンモニア検出部S2とは、必要に応じて設ければ良く、省略するようにしてもよい。
【0081】
脱窒処理部350は、第一希釈部20、及び第二希釈部50の少なくとも一方の液相から排出される、アンモニアを含む排出液を脱窒可能とされている。言い換えれば、脱窒処理部350は、脱窒処理することで排出液中の窒素化合物を分子状窒素として浮体本体2の外部へ排出可能に構成されている。本実施形態において、脱窒処理部350は、第一排出液ライン355,第二排出液ライン356を備えている。
【0082】
第一排出液ライン355は、脱窒処理部350と、第一希釈部20の液相とを接続している。第一排出液ライン355の途中には、開閉弁(図示せず)が設けられており、第一希釈部20の液相から脱窒処理部350へのアンモニア液の供給を断続可能である。
第二排出液ライン356は、脱窒処理部350と、第二希釈部50の液相とを接続している。第二排出液ライン356の途中には、開閉弁(図示せず)が設けられており、第二希釈部50の液相から脱窒処理部350へのアンモニアガスの供給を断続可能である。
【0083】
脱窒処理部350は、適宜の方法で、脱窒処理を行う。例えば、脱窒処理部350は、反応剤として、例えば強酸性の薬液等を用い、脱窒処理を行うようにしてもよい。本実施形態において、脱窒処理部350は、例えば、海水電解液を用いて、脱窒処理を行う。
【0084】
脱窒処理部350は、電気分解部351と、脱窒反応部352と、を備えている。電気分解部351は、浮体1の外部、浮体1の周囲の海から導入した海水に電気分解を施すことで、次亜塩素酸ソーダを含む海水電解液を生成する。電気分解部351で生成された海水電解液は、反応材供給ライン353を通して、脱窒反応部352に供給される。
【0085】
脱窒反応部352は、第一排出液ライン355,第二排出液ライン356を通して、第一希釈部20、及び第二希釈部50の少なくとも一方の液相から排出されるアンモニアを含む排出液と、反応材供給ライン353を通して供給される海水電解液とを混合する。脱窒反応部352は、アンモニアを含む排出液と海水電解水とを反応させることで、アンモニアを含む排出液を脱窒処理する。すなわち、脱窒反応部352は、排出液に含まれる窒素化合物であるアンモニアと、このアンモニアの分解の過程で生成される窒素化合物とをそれぞれ分子状窒素とする。
【0086】
脱窒反応部352における脱窒処理により生じた分子状窒素は、脱窒反応部352に接続された排気ライン359を通して、ファンネル9(
図1参照)やベントポスト(図示せず)等から外部に排気される。
また、脱窒反応部352により脱窒処理された液(水、または希薄成分を含む液)は、脱窒反応部352に接続された排液ライン358を通して、脱窒反応部352の外部に排出される。排液ライン358を通して排出される液は、例えば、浮体1の外部の海に排出してもよいし、浮体1内で再利用しても良いし、浮体1内に貯蔵して陸揚げするようにしてもよい。さらに、脱窒反応部352における脱窒処理により排出液から窒素化合物が取り除かれた液(水、または希薄成分を含む液)は、第一希釈部20や第二希釈部50に戻して、第一希釈部20の第一吸収液L1及び第二希釈部50の第二吸収液L2として再利用するようにしてもよい。
【0087】
(作用効果)
上記第三実施形態では、アンモニア水製造部310で、第一希釈部20、第二希釈部50の少なくとも一方の液相から導入するアンモニア液と、水と、を混合することで、アンモニア水を生成する。これにより、アンモニア含有ガスから回収したアンモニアを基に、アンモニア水を製造することができ、アンモニアの有効利用を図ることができる。
【0088】
また、上記第三実施形態では、アンモニア水製造部310で生成されたアンモニア水を、脱硝装置320の還元剤として用いる。
これにより、脱硝装置320において、燃料を燃焼させることで排ガスを排出する燃焼装置から排出される排ガスに脱硝処理を施すことができる。窒素化合物である排ガスから窒素を取り出し、窒素単体で排出することができる。このようにして、アンモニア含有ガスから回収したアンモニアを有効利用することができる。
【0089】
上記第三実施形態では、アンモニア水製造部310は、アンモニアを貯蔵可能なタンク300の液相及び気相の少なくとも一方から導入したアンモニアを、アンモニア液及び水に混合し、アンモニア水を生成している。これにより、タンク300に貯蔵されたアンモニアにより、生成するアンモニア水のアンモニア濃度を容易に調整することが可能となる。
【0090】
上記第三実施形態では、脱窒処理部350を備えることで、第一希釈部20、及び第二希釈部50の少なくとも一方の液相から排出される、アンモニアを含む排出液を脱窒することができる。これにより、排出液に含まれる窒素化合物を分子状窒素として排出することが可能となる。
【0091】
上記第三実施形態では、脱窒処理部350は、次亜塩素酸ソーダを含む海水電解液と、排出液との混合液を反応させる。これにより、アンモニアを分解するための強酸性の薬液を貯蔵しておく必要が無くなる。したがって、コスト上昇を抑えつつ、脱窒処理を行うことが可能となる。
【0092】
また、上記第一実施形態と同様、アンモニア含有ガスに含まれるアンモニアは、第一希釈部20、第二希釈部50を順次経ることで、効率的に吸収される。これにより、アンモニアの除害効率が高められる。
【0093】
(第三実施形態の変形例)
第三実施形態では、アンモニア水の供給先を脱硝装置320としたが、アンモニア水の供給先は脱硝装置に限られない。アンモニア水の供給先は、アンモニア水を有効活用できかつ、アンモニアを窒素に分解可能な装置であれば、脱硝装置320とは別の方式の装置であっても良い。アンモニアを窒素に分解可能な別の方式の装置としては、例えば、アンモニアストリッピング装置と燃料電池との組み合わせを例示できる。
【0094】
(第三実施形態の第一変形例)
図9は、本開示の第三実施形態の第一変形例におけるアンモニア除害システムの構成を示す図である。
図9に示すように、第三実施形態の第一変形例におけるアンモニア除害システム100Cは、第三実施形態の構成に加えて、第二希釈部50に貯留された第二吸収液L2を第一希釈部20へ移すことが可能なシフトライン314を、更に備えている。
この第三実施形態の第一変形例によれば、第二希釈部50によってアンモニアを吸収した第二吸収液L2を、第一希釈部20で活用する事が可能となり、第二希釈部50の第二吸収液L2にさらにアンモニアを吸収させることが可能となる。そのため、第二希釈部50の第二吸収液L2の有効活用につながる。
【0095】
(第一から第三実施形態の変形例)
上記第一から第三実施形態では、バイパスライン110を通して、第一希釈部20を通さずに、アンモニア含有ガスを第二希釈部50に直接送り込むことができるようにしたが、この構成に限られない。
例えば、
図10に示す変形例のように、ガス流通ライン10から分岐するバイパスライン400を、第二送出ライン70に接続するようにしてもよい。バイパスライン400は、開閉弁15の上流側で、ガス流通ライン10に接続されている。バイパスライン400の途中には、バイパスライン400へのアンモニア含有ガスの流入を断続する開閉弁410が設けられている。
【0096】
また、バイパスライン400から分岐し、第二希釈部50に接続される第一分岐ライン401と、第二送出ライン70に接続される第二分岐ライン402と、を有していてもよい。第一分岐ライン401の途中には、開閉弁411が設けられている。第二分岐ライン402の途中には、開閉弁412が設けられている。開閉弁411、412を開閉することで、開閉弁410を開いた際にバイパスライン400に流入するアンモニア含有ガスの供給先を、第二希釈部50と第二送出ライン70とから適宜選択可能である。
【0097】
このようなバイパスライン400を備えることで、ガス流通ライン10等の残圧を抜く際、バイパスライン400を通して、ガス流通ライン10内のガスの残圧を迅速に抜くことができる。
なお、上記
図10に示す変形例において、第一実施形態の第一変形例(
図3参照)のように、複数のバイパスライン400及び開閉弁410を設けて、冗長性を持たせるようにしてもよい。さらに、上記
図10に示す変形例において、第一実施形態の第二変形例のように、開閉弁15、410に代えて一つの三方弁を設けるようにしてもよい。また、上記と同様、冗長性を持たせるために、三方弁と並列に開閉弁を設けるようにしてもよい。
【0098】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0099】
<付記>
各実施形態に記載のアンモニア除害システム100A~100D、浮体1は、例えば以下のように把握される。
【0100】
(1)第1の態様に係るアンモニア除害システム100A~100Dは、アンモニア含有ガスが流通するガス流通ライン10と、前記ガス流通ライン10から供給される前記アンモニア含有ガスに含まれるアンモニアを加圧状態で第一吸収液L1に吸収させる第一希釈部20と、前記第一希釈部20内の気相の気体を一次処理ガスG1として、前記第一希釈部20の外部に送出可能な第一送出ライン30と、前記第一送出ライン30を通して供給される前記一次処理ガスG1に含まれるアンモニアを、前記第一希釈部20よりも低い圧力下で第二吸収液L2に吸収させる第二希釈部50と、前記第一送出ライン30に設けられ、前記第一希釈部20から前記第二希釈部50への前記一次処理ガスG1の供給を調整する調整弁35と、を備える。
【0101】
このアンモニア除害システム100A~100Dは、ガス流通ライン10から供給されるアンモニア含有ガスに含まれるアンモニアが、第一希釈部20において加圧状態で第一吸収液L1に吸収される。そして、第一希釈部20内の気相の気体は、一次処理ガスG1として、第一送出ライン30を通して第一希釈部20の外部に送出される。また、第二希釈部50において、一次処理ガスG1に含まれるアンモニアが、第一希釈部20よりも低い圧力下で第二吸収液L2に吸収される。これにより、第一希釈部20においてアンモニア含有ガスを保持することができ、バッチ処理でアンモニアの除害を行うことが可能となる。そのため、船舶の傾きの影響を受ける吸収塔等を用いずに、単純なシステム構成でアンモニアを除害することが可能となる。したがって、アンモニアの除害効率をさらに高めることができる。
【0102】
(2)第2の態様に係るアンモニア除害システム100A~100Dは、(1)のアンモニア除害システム100A~100Dであって、前記第一希釈部20は、前記第一希釈部20内の気相と前記第一希釈部20内の液相とを気液平衡状態とする。
【0103】
これにより、ガス流通ライン10から供給されるアンモニア含有ガスに含まれるアンモニアを、第一吸収液L1に対して最大限に吸収させることができる。したがって、第1希釈部内の気相の気体のアンモニア濃度を十分に低下させた状態で、第二希釈部50に送り込むことができる。
【0104】
(3)第3の態様に係るアンモニア除害システム100A~100Dは、(1)又は(2)のアンモニア除害システム100A~100Dであって、前記調整弁35の開閉動作を制御する制御装置60をさらに備え、前記制御装置60は、前記第一希釈部20内の気相のアンモニア濃度が規定値を下回った際に、前記調整弁35を閉状態から開状態に遷移させる。
【0105】
これにより、第一希釈部20内で、アンモニア含有ガスが十分に第一吸収液L1に吸収され、アンモニア濃度が規定値未満に下回った状態の一次処理ガスG1を、第二希釈部50に供給することができる。これにより、第二希釈部50における、アンモニア吸収の負荷が軽減される。
【0106】
(4)第4の態様に係るアンモニア除害システム100A~100Dは、(1)から(3)の何れか一つのアンモニア除害システム100A~100Dであって、前記第二希釈部50は、大気圧下で、前記一次処理ガスG1に含まれるアンモニアを前記第二吸収液L2に吸収させる。
【0107】
これにより、第二希釈部50を、加圧のためのポンプ等の機器を必要としない、簡易な構成とすることができる。
【0108】
(5)第5の態様に係るアンモニア除害システム100A~100Dは、(1)から(4)の何れか一つのアンモニア除害システム100A~100Dであって、前記第一希釈部20をバイパスし、前記ガス流通ライン10と前記第一送出ライン30とを接続するバイパスライン110をさらに備える。
【0109】
これにより、ガス流通ライン10等の残圧を抜く際、バイパスライン110を通して、ガス流通ライン10内のガスの残圧を迅速に抜くことができる。
【0110】
(6)第6の態様に係るアンモニア除害システム100A~100Dは、(1)から(5)の何れか一つのアンモニア除害システム100A~100Dであって、前記第二希釈部50内の気相の気体を二次処理ガスG2として、前記第二希釈部50の外部に送出可能な第二送出ライン70と、前記第二送出ライン70を通して供給される前記二次処理ガスG2に含まれるアンモニアの濃度を低下させる第三希釈部80、をさらに備える。
【0111】
これにより、二次処理ガスG2に含まれるアンモニアの濃度をさらに低下させることができる。
【0112】
(7)第7の態様に係るアンモニア除害システム100A~100Dは、(1)から(6)の何れか一つのアンモニア除害システム100A~100Dであって、前記アンモニア含有ガスは、不活性ガスを含むパージガスである。
【0113】
これにより、パージの際のガス流通ライン10を通して大量に流れ込むパージガスに含まれるアンモニアを、効率良く除害することができる。
【0114】
(8)第8の態様に係るアンモニア除害システム100A~100Dは、(1)から(7)の何れか一つのアンモニア除害システム100A~100Dであって、前記アンモニア含有ガスは、アンモニアを貯蔵可能なタンクで生成されたボイルオフガスである。
【0115】
これにより、アンモニアを貯蔵可能なタンクで生成されたボイルオフガスに含まれるアンモニアを、第一希釈部20、第二希釈部50により効率よく除害することができる。
【0116】
(9)第9の態様に係るアンモニア除害システム100Bは、(1)から(8)の何れか一つのアンモニア除害システム100Bであって、前記第二希釈部50の外部から前記第二希釈部50内に、アンモニア含有ガスを吸引するガス吸引部200、をさらに備える。
【0117】
これにより、ガス吸引部200で吸引したアンモニア含有ガスに含まれるアンモニアを第二吸収液L2で吸収させることができる。
【0118】
(10)第10の態様に係るアンモニア除害システム100Bは、(9)のアンモニア除害システム100Bであって、前記ガス吸引部200は、前記ガス流通ライン10Bから前記第二希釈部50内に、前記ガス流通ライン10Bを流通する前記アンモニア含有ガスを吸引する。
【0119】
これにより、例えばガス流通ライン10内に残存するアンモニア含有ガスを、ガス吸引部200で吸引することができる。したがって、ガス流通ライン10内に残存するアンモニア含有ガスに含まれるアンモニアを、第二希釈部50の第二吸収液L2で吸収することができる。したがって、ガス流通ライン10内のアンモニア濃度を更に低減することが可能となる。
【0120】
(11)第11の態様に係るアンモニア除害システム100Cは、(1)から(10)の何れか一つのアンモニア除害システム100Cであって、前記第一希釈部20、及び前記第二希釈部50の少なくとも一方の液相から導入するアンモニア液と、水と、を混合することで、アンモニア水を生成するアンモニア水製造部310をさらに備える。
【0121】
これにより、アンモニア含有ガスから回収したアンモニアを基に、アンモニア水を製造することができ、アンモニアの有効利用を図ることができる。
【0122】
(12)第12の態様に係るアンモニア除害システム100Cは、(11)のアンモニア除害システム100Cであって、燃料を燃焼させることで排ガスを排出する燃焼装置8から排出される排ガスに脱硝処理を施す脱硝装置320、をさらに備え、
前記アンモニア水製造部310で生成された前記アンモニア水を、前記脱硝装置320の還元剤として用いる。
【0123】
これにより、燃料を燃焼させることで排ガスを排出する燃焼装置8から排出される排ガスに脱硝処理を施すことができる。したがって、アンモニア含有ガスから回収したアンモニアを有効利用することができる。
【0124】
(13)第13の態様に係るアンモニア除害システム100Cは、(11)又は(12)のアンモニア除害システム100Cであって、アンモニアを貯蔵可能なタンク300をさらに備え、前記アンモニア水製造部310は、前記タンク300の液相及び気相の少なくとも一方から導入したアンモニアを、前記アンモニア液及び前記水に混合し、前記アンモニア水を生成する。
【0125】
これにより、タンク300に貯蔵されたアンモニアにより、生成するアンモニア水のアンモニア濃度を容易に調整することが可能となる。
【0126】
(14)第14の態様に係るアンモニア除害システム100Cは、(13)のアンモニア除害システム100Cであって、前記脱硝装置320から排出される排ガスの窒素酸化物濃度を検出するNOx検出部S1と、前記脱硝装置320から排出される排ガスのアンモニア濃度を検出するアンモニア検出部S2と、の少なくとも一方を備える。
これにより、排ガスの窒素酸化物濃度及び排ガスのアンモニア濃度に応じて、脱硝装置320へ供給するアンモニアの量を調整することが可能となる。
【0127】
(15)第15の態様に係るアンモニア除害システム100Cは、(1)から(14)の何れか一つのアンモニア除害システム100Cであって、前記第一希釈部20、及び前記第二希釈部50の少なくとも一方の液相から排出される、アンモニアを含む排出液を脱窒可能な脱窒処理部350、をさらに備える。
【0128】
これにより、排出液に含まれる窒素化合物を分子状窒素として排出することが可能となる。
【0129】
(16)第16の態様に係るアンモニア除害システム100Cは、(15)のアンモニア除害システム100Cであって、前記脱窒処理部350は、外部から導入した海水に電気分解を施すことで、次亜塩素酸ソーダを含む海水電解液を生成する電気分解部351と、前記排出液と前記電気分解部351で生成された前記海水電解液との混合液を反応させる脱窒反応部352と、を含む。
【0130】
このような構成によれば、アンモニアを分解するための強酸性の薬液を貯蔵しておく必要が無くなる。したがって、コスト上昇を抑えつつ、脱窒処理を行うことが可能となる。
【0131】
(17)第17の態様に係る浮体1は、浮体本体2と、(1)から(16)の何れか一つのアンモニア除害システム100A~100Dと、を備える。
浮体1の例としては、液化ガス運搬船、フェリー、RORO船、自動車運搬船、客船等の船舶、FSU(Floating Storage Unit)、FSRU(Floating Storage and Regasification Unit)等が挙げられる。
【0132】
これにより、アンモニアの除害効率をさらに高めることができるアンモニア除害システム100A~100Dを備えた浮体1を提供することができる。
【0133】
(18)第18の態様に係るアンモニア供給方法は、(14)のアンモニア除害システム100Cにおけるアンモニア供給方法であって、前記脱硝装置320から排出される排ガスの窒素酸化物濃度と、前記脱硝装置320から排出される排ガスのアンモニア濃度との少なくとも一方に基づいて、前記脱硝装置320への前記アンモニア水の供給量又は、前記アンモニア水の濃度を調整する。
これにより、脱硝装置320に対して適切な量のアンモニアを供給することができる。
【符号の説明】
【0134】
1…浮体 2…浮体本体 2a…船首 4…上部構造 5A、5B…舷側 6…船底 7…上甲板 8…燃焼装置 9…ファンネル 10、10B…ガス流通ライン 15、203、221、231、241、261、410、411、412…開閉弁 20…第一希釈部 30…第一送出ライン 35…調整弁 50…第二希釈部 60…制御装置 70…第二送出ライン 80…第三希釈部 90…排気ライン 100A~100D…アンモニア除害システム 110…バイパスライン 115…弁 200…ガス吸引部 205…エジェクタ 207…給液ライン 208…ポンプ 209…接続ライン 220…導入ライン 230…接続ライン 240…不活性ガス導入ライン 260…空気導入ライン 300…タンク 310…アンモニア水製造部 311…アンモニア水貯蔵タンク 312…第一接続ライン 313…第二接続ライン 314…シフトライン 315…第一タンク接続ライン 316…第二タンク接続ライン 320…脱硝装置 321…還元剤供給ライン 325…排気ライン 350…脱窒処理部 351…電気分解部 352…脱窒反応部 353…反応材供給ライン 355…第一排出液ライン 356…第二排出液ライン 358…排液ライン 359…排気ライン 400…バイパスライン 401…第一分岐ライン 402…第二分岐ライン 415…三方弁 G1…一次処理ガス G2…二次処理ガス L1…第一吸収液 L2…第二吸収液 S1…NOx検出部 S2…アンモニア検出部