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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161833
(43)【公開日】2024-11-20
(54)【発明の名称】表示システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20241113BHJP
【FI】
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076918
(22)【出願日】2023-05-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 伸
(72)【発明者】
【氏名】岡田 遼太朗
(72)【発明者】
【氏名】藤原 信吾
(72)【発明者】
【氏名】河野 嵩
(72)【発明者】
【氏名】大塚 泰介
(72)【発明者】
【氏名】竹内 凌一
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB12
5H181BB13
5H181CC04
5H181FF33
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL07
5H181LL08
(57)【要約】
【課題】対象物体の報知の漏れを低減する。
【解決手段】表示システム10は第1の表示装置12と第2の表示装置13とを有する。第1の表示装置12は特定の空間領域から見た場合に車両の外部領域の中で車両の車体の一部に遮蔽される第1の光景を表示可能である。第1の表示装置12は第1の報知を行う。第1の報知は第1の光景に含まれる対象物体に関する報知である。第2の表示装置は視認面を介して空間領域から視認可能な第2の光景に視覚情報を重畳可能である。第2の表示装置13は第2の報知を行う。第2の報知は第2の光景に含まれる対象物体に関する報知である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内の特定の空間領域から見た場合に、該車両の外部領域の中で該車両の車体の一部に遮蔽される第1の光景を表示可能な第1の表示装置と、
視認面を介して、前記空間領域から視認可能な第2の光景に視覚情報を重畳可能な第2の表示装置と、を備え、
前記第1の光景に含まれる対象物体に関する報知である第1の報知を第1の表示装置が行い、前記第2の光景に含まれる前記対象物体に関する報知である第2の報知を第2の表示装置が行う
表示システム。
【請求項2】
請求項1に記載の表示システムにおいて、
前記第1の表示装置は、前記車両に対する前記対象物体の相対的な移動により該対象物体が前記第2の光景から前記第1の光景に移った場合、前記第1の報知を行う
表示システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の表示システムにおいて、
前記第2の表示装置は、光を透過する透明部材に第1の画像を投影することにより、前記第2の光景に付加した虚像を、前記空間領域から前記第2の表示装置を見る搭乗者に認識させるヘッドアップディスプレイである
表示システム。
【請求項4】
請求項3に記載の表示システムにおいて、
前記ヘッドアップディスプレイは、前記第2の報知として、前記対象物体と前記第1の画像の虚像とを関連付けて前記搭乗者に認識させる
表示システム。
【請求項5】
請求項4に記載の表示システムにおいて、
前記第1の表示装置は、前記第1の光景に相当する第2の画像を表示する
表示システム。
【請求項6】
請求項5に記載の表示システムにおいて、
前記第1の表示装置は、前記第1の光景を遮蔽する前記車体の一部の表面に前記第2の画像を表示する
表示システム。
【請求項7】
請求項6に記載の表示システムにおいて、
前記第1の表示装置は、前記第1の報知として、前記第2の画像に含まれる前記対象物体の画像に関連付けて、第3の画像を表示する
表示システム。
【請求項8】
請求項7に記載の表示システムにおいて、
前記第1の画像及び前記第3の画像は、同一又は類似する形状である
表示システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両を安全に運転することが求められている。車両の安全な運転には、車両の周囲の外部領域に存在する障害物等の対象物体を把握することが求められる。そこで、ヘッドアップディスプレイを使用して、前方視野内の危険個所を示す文字、記号等を表示する運転支援装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-219077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の運転支援装置では、車両の周囲の外部領域に存在する対象物体の報知に漏れが生じることがある。
【0005】
従って、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされた本開示の目的は、車両の周囲に存在する対象物体の報知の漏れを低減させる表示システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した諸課題を解決すべく、第1の観点による表示システムは、
車両内の特定の空間領域から見た場合に、該車両の外部領域の中で該車両の車体の一部に遮蔽される第1の光景を表示可能な第1の表示装置と、
視認面を介して、前記空間領域から視認可能な第2の光景に視覚情報を重畳可能な第2の表示装置と、を備え、
前記第1の光景に含まれる対象物体に関する報知である第1の報知を第1の表示装置が行い、前記第2の光景に含まれる前記対象物体に関する報知である第2の報知を第2の表示装置が行う。
【発明の効果】
【0007】
上記のように構成された本開示に係る表示システムによれば、車両の周囲に存在する対象物体の報知の漏れが低減する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る表示システムの概略構成を示す機能ブロック図である。
図2図1の表示システムの車両内での配置を示す配置図である。
図3図1の第1の表示装置及び第2の表示装置から視認可能な光景を説明する図である。
図4】第1の表示装置における第1の報知により搭乗者が視認する光景を示す図である。
図5】第2の表示装置における第2の報知により搭乗者が視認する光景を示す図である。
図6図1の制御装置が実行する報知処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示を適用した表示システムの実施形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
図1に示すように、一実施形態に係る表示システムは、第1の表示装置12及び第2の表示装置13を含んで構成される。表示システム10は、更に、カメラ部14及び制御装置15を含んで構成されてよい。制御装置15は、第1の表示装置12及び第2の表示装置13の少なくとも一方に内蔵されてよい。
【0011】
図2に示すように、表示システム10は、例えば、車両11に搭載される。車両は、例えば自動車、産業車両、鉄道車両、生活車両、および滑走路を走行する固定翼機等を含んでよい。自動車は、例えば乗用車、トラック、バス、二輪車、およびトロリーバス等を含んでよい。産業車両は、例えば農業および建設向けの産業車両等を含んでよい。産業車両は、例えばフォークリフトおよびゴルフカート等を含んでよい。農業向けの産業車両は、例えばトラクター、耕耘機、移植機、バインダー、コンバイン、および芝刈り機等を含んでよい。建設向けの産業車両は、例えばブルドーザー、スクレーバー、ショベルカー、クレーン車、ダンプカー、およびロードローラ等を含んでよい。車両は、人力で走行するものを含んでよい。車両の分類は、上述した例に限られない。例えば、自動車は、道路を走行可能な産業車両を含んでよい。複数の分類に同じ車両が含まれてよい。
【0012】
車両11には、上方向、下方向、前方向、後方向、及び左右方向が定められていてよい。
【0013】
図3に示すように、第1の表示装置12は、第1の光景s1を表示可能である。第1の光景s1は、アイボックスebから見た場合に、車両11の外部領域の中で車両11の車体の一部に遮蔽される光景である。アイボックスebは、車両11内の特定の空間領域である。具体的には、アイボックスebは、車両11内の搭乗者が運転席に着座した状態で、当該搭乗者の目が位置すると想定される空間領域である。アイボックスebは、車両11の上下方向において、第1の光景s1を遮蔽する車体の一部よりも上方に位置してよい。
【0014】
第1の表示装置12は、第1の光景s1に相当する第2の画像を表示してよい。第1の表示装置12は、制御装置15から第2の画像を取得してよい。第2の画像は、アイボックスebからの視線が表示面上の任意の点を通り車両11の外部に貫通した領域の点像の集合体であってよい。言い換えれば、第2の画像は、アイボックスebから見る光景のうち、第2の画像の表示面によって遮られることで視認できない光景である。第2の画像は、2の画像の表示面によって遮られなければ、アイボックスebから視認し得た光景である。したがって、アイボックスebから視認される第2の画像は、第1の光景s1を遮蔽する車体の一部を透過した光景として視認され得る。
【0015】
第2の画像は、アイボックスebから視認する後述する第2の光景s2と連続する光景の画像として表示されてよい。言換えると、第1の光景s1は、第2の画像として、第2の光景s2と連続する光景であってよい。第2の光景s2は、視認面vsを介してアイボックスebから視認可能な光景である。なお、第1の光景s1と第2の光景s2は、連続しない光景であってもよい。本実施形態において、第1の光景s1と第2の光景s2は、連続する光景である。
【0016】
第2の画像において、搭乗者がアイボックスebから視認する第2の光景s1と同一又は類似する明るさとなるように、明度や彩度が調整されてよい。例えば、車両11の内部に、第2の光景s2を撮影するカメラが設けられてよい。当該カメラで取得した画像から、搭乗者が視認する第2の光景s2の明るさが推定されてよい。、第2の画像が示す第1の光景s1と搭乗者が視認する第2の光景s2とが自然に連続性をもって視認できるように、第2の画像の明度や彩度が調整されてよい。
【0017】
第1の表示装置12は、第1の光景s1を遮蔽する車体の一部の表面に第2の画像を表示してよい。当該車体の一部は、例えば、アイボックスebに対して車両11の前方且つ下方の部分である。第1の表示装置12は、当該一部の表面、例えば、車両11のダッシュボードに表示面が位置するディスプレイであってよい。ディスプレイは、LEDディスプレイ、有機ELディスプレイ等のように表示面に画像を形成してよい。又は、ディスプレイは、プロジェクションディスプレイのように、プロジェクタから画像光をスクリーンの表示面に投影してよい。本実施形態の具体的な構成において、第1の表示装置12は、プロジェクションディスプレイである。
【0018】
図2に示すように、第1の表示装置12にプロジェクションディスプレイが適用される構成において、第1の表示装置12は、プロジェクタ16及びスクリーン17を含んで構成されてよい。プロジェクタ16は、車両11の室内で、画像光をスクリーン17に投影可能な任意の位置に設けられてよい。プロジェクタ16は、例えば、ヘッドレスト、車両11の室内の天井等に設けられる。スクリーン17は、再帰性反射材及び車両11の上下方向に光を拡散させる拡散板を積層させることによって形成されていてよい。
【0019】
第1の表示装置12は、第1の報知を行ってよい。第1の報知は、第1の光景s1に含まれる対象物体に関する報知である。第1の報知は、後に詳細に説明される。更に、第1の表示装置12は、第1の報知として、第2の画像に含まれる対象物体の画像に関連付けて第3の画像を表示してよい。
【0020】
対象物体は、車両11が走行することが想定される環境において、安全な運転のために注意が必要だと考えられる物体である。対象物体は、例えば車両11の走行において、回避の必要がある物体や、目印として使用する物体であってよい。対象物体は、例えば、車止め、人、車椅子、縁石、落下物、小動物、障害物、陥没した道路部分、停止線等の路上の描画物等であり、特には、車両11に対して全高が低い物体である。全高が低いとは、車両11の前端の高さ以下であってよい。
【0021】
図4に示すように、第3の画像im3は、例えば、第2の画像im2内の対象物体である車止めの画像に重畳される輪郭、輪郭内部の塗潰し、車止めの画像近傍に表示される警告マークである。警告マークとして表示される画像は、例えば車止めの画像を指し示す矢印等の画像であってよい。
【0022】
第1の表示装置12は、車両11に対する対象物体の相対的な移動により当該対象物体が第2の光景s2から第1の光景s1に移った場合に第1の報知を行ってよい。より具体的には、例えば、車両11が対象物体に対して移動することにより当該対象物体が第2の光景s2から第1の光景s1に移った場合に第1の報知が行なわれてよい。又は、例えば、対象物体が車両11に対して移動することにより当該対象物体が第2の光景s2から第1の光景s1に移った場合に第1の報知が行われてよい。第1の報知の詳細は、後述される。
【0023】
図3に示すように、第2の表示装置13は、第2の光景s2に、視覚情報を重畳可能である。言い換えれば、第2の表示装置13は、第2の光景s2に視覚情報を重畳した光景を搭乗者に視認させ得る。視認面vsは、例えば、法令等で定められる運転者席の視野の規定を満足させるように定められる。視認面vsは、例えば、車両11の前端から前方向に第1の距離以上離れた外部領域の地面より上方向の空間を搭乗者に視認させ得る。視認面vsは、車両11の上下方向において、第1の光景s1を遮蔽する車体の一部よりも上方に位置してよい。視認面vsは、アイボックスebから見て、第1の表示装置12の表示面に上下方向において連続していてよい。
【0024】
第2の表示装置13は、例えば、ヘッドアップディスプレイである。又は、第2の表示装置13は、例えば、視認面vsに画像を形成するディスプレイである。本実施形態の具体的な構成において、第2の表示装置13は、ヘッドアップディスプレイである。
【0025】
図2に示すように、第2の表示装置13にヘッドアップディスプレイが適用される構成において、第2の表示装置13は、透明部材18及び投影装置19を含んで構成される。
【0026】
透明部材18は、光を透過してよい。透明部材18は、例えば、車両11のウィンドシールドである。又は、透明部材18は、例えば、アイボックスebから見てウィンドシールドに重なって位置するコンバイナである。上述の視認面vsは、ウィンドシールドであってよい。
【0027】
投影装置19は、透明部材18に第1の画像を投影してよい。第2の表示装置13は、投影装置19が第1の画像を投影することにより、透明部材18を透過する第2の光景s2に付加して、第1の画像に相当する虚像を車両11に搭乗する搭乗者に認識させてよい。特に、虚像を認識させる搭乗者は、アイボックスebから第2の表示装置13を見る搭乗者であってよい。第2の表示装置13は、制御装置15から第1の画像を取得してよい。
【0028】
投影装置19は、例えば、光源、透過型液晶パネル、及び反射鏡を含んでよい。光源は、透過型液晶パネルに光を照射してよい。透過型液晶パネルは、透過面に第1の画像を形成してよい。反射鏡は、透過型液晶パネルの透過による第1の画像を透明部材18に反射してよい。
【0029】
図5に示すように、ヘッドアップディスプレイである第2の表示装置13は、後述する、第2の報知として、対象物体である車止めcsと、第1の画像im1に相当する虚像とを関連付けて搭乗者に認識させてよい。
【0030】
後述するように第1の画像im1の形状、色は、第3の画像im3と同一又は類似してよい。第1の画像im1及び前記第3の画像im3が形状の変化等の動きを持った画像である場合には、同一の対象物に関連付いた第1の画像im1及び前記第3の画像im3は同一の動きを行ってよい。第1の画像im1及び前記第3の画像im3が点滅する場合には、同一の対象物に関連付いた第1の画像im1及び前記第3の画像im3は同一の周期、タイミングで点滅を行ってよい。
【0031】
異なる対象物に関連付いた第1の画像im1及び前記第3の画像im3の形状、色は、異なってよい。第1の画像im1及び前記第3の画像im3が形状の変化等の動きを持った画像である場合には、異なる対象物に関連付いた第1の画像im1及び前記第3の画像im3は異なる動きを行ってよい。第1の画像im1及び前記第3の画像im3が点滅する場合には、異なる対象物に関連付いた第1の画像im1及び前記第3の画像im3は異なる周期、タイミングで点滅を行ってよい。第1の画像im1及び前記第3の画像im3の形状、色、動作、点滅の形態は、対象物の種類に応じて決定してよい。
【0032】
第2の表示装置13は、第2の報知を行ってよい。第2の報知は、第2の光景s2に含まれる対象物体に関する報知である。第2の報知は、後に詳細に説明される。
【0033】
カメラ部14は、車両11において、第1の光景s1及び第2の光景s2を撮像可能な位置に設けられてよい。カメラ部14は、具体的には、車両11の前端に設けられてよい。カメラ部14は、複数のカメラを含んでよい。複数のカメラの一部が第1の光景s1を撮像し、他の一部のカメラが第2の光景s2を撮像してよい。又は、複数のカメラそれぞれが第1の光景s1及び第2の光景s2を撮像してよい。カメラ部14が複数のカメラを含む構成において、当該複数のカメラは、車両11の前端において左右方向に並ぶように設けられてよい。カメラ部14は、撮像により原画像を生成してよい。カメラ部14は、例えば、30fpsの周期で原画像を生成してよい。カメラ部14は、例えば、第1の光景s1及び第2の光景s2の動画像を生成してよい。
【0034】
制御装置15は、1以上のプロセッサおよびメモリを含む。プロセッサは、特定のプログラムを読み込ませて特定の機能を実行する汎用のプロセッサ、および特定の処理に特化した専用のプロセッサを含んでよい。専用のプロセッサは、特定用途向けIC(ASIC;Application Specific Integrated Circuit)を含んでよい。プロセッサは、プログラマブルロジックデバイス(PLD;Programmable Logic Device)を含んでよい。PLDは、FPGA(Field-Programmable Gate Array)を含んでよい。制御装置15は、1つ又は複数のプロセッサが協働するSoC(System-on-a-Chip)、およびSiP(System In a Package)のいずれかであってもよい。
【0035】
制御装置15は、カメラ部14から取得する原画像に画像処理を施す。制御装置15は、例えば、原画像に対して歪曲補正を行ってよい。制御装置15は、例えば、カメラ部14が複数のカメラを有する構成においては、それぞれの原画像に基づいて、単一の合成した原画像を生成してよい。制御装置15は、第1の光景s1及び第2の光景s2の両方が含まれる単一の原画像を生成してよい。制御装置15は、例えば、複数の原画像を合成して第1の光景s1の画像を含む原画像、及び第2の光景s2の画像を含む原画像をそれぞれ生成してよい。
【0036】
制御装置15は、原画像中に対象物体の像が含まれるか否を判別してよい。制御装置15は、原画像中に対象物体の像が含まれている場合、対象物体の像の原画像内での位置を検出してよい。原画像中の対象物体の像の有無の判別、及び位置の検出は、公知の任意の方法が用いられてよい。公知の任意の方法としては、例えば、パターンマッチング、機械学習による識別モデルの適用が挙げられる。
【0037】
制御装置15は、原画像に対象物体の像が含まれる場合、対象物体が第1の光景s1内、又は第2の光景s2内に位置するかを判別してよい。制御装置15は、原画像内の位置と第1の表示装置12の表示面の位置及び視認面vsの位置との予め求められている第1の対応関係に基づいて、対象物体が第1の光景s1内、又は第2の光景s2内に位置するかを判別してよい。第1の対応関係は、カメラの取付位置、カメラの光学特性、第1の表示装置12の表示面の位置、視認面vsの位置、アイボックスebの位置等に基づいて、予め算出されていてよい。
【0038】
制御装置15は、対象物体が第1の光景s1内に位置すると判別する場合、原画像から第1の光景s1に対応する部分画像を抽出してよい。制御装置15は、抽出した部分画像を、第1の対応関係に基づいて、第1の表示装置12の表示面の座標系に変換することにより、第2の画像im2を生成してよい。第2の画像im2は、第1の表示装置12の表示面を透過した光景を表す画像である。制御装置15は、更に、第1の対応関係に基づいて、対象物体の像の、第2の画像im2における位置を算出してよい。制御装置15は、対象物体の種類又は輪郭に応じて第3の画像im3を生成してよい。制御装置15は、第2の画像im2に、第3の画像im3を関連付けてよい。具体的には前述のように、制御装置15は、第2の画像im2内の対象物体の像に第3の画像im3を重畳した合成画像を生成してよい。制御装置15は、当該合成画像を情報として第1の表示装置12に付与することにより、第1の表示装置12に合成画像を表示させてよい。前述のように、制御装置15は、合成画像、言換えると第3の画像im3を重畳した第2の画像im2を表示させることにより、第1の表示装置12に第1の報知を実行させる。したがって、対象物体が第1の光景s1に位置する場合に、第1の報知が行われてよい。第3の画像im3は、第2の画像im2における対象物体の像に重畳する画像に限られず、例えば対象物体の像の周囲を囲う画像、対象物体の手前に表示される壁等の像、対象物体の像の存在を指し示す像等であってよい。
【0039】
制御装置15は、対象物体が第2の光景s2内に位置すると判別する場合、第1の対応関係に基づいて、視認面vsにおいて、アイボックスebから対象物体の見える位置を算出してよい。制御装置15は、対象物体の種類又は輪郭に応じて第1の画像im1を生成してよい。制御装置15は、算出した位置及び第1の画像im1を情報として第2の表示装置13に付与することにより、第2の表示装置13に第1の画像im1を視認可能な状態に遷移させてよい。前述のように、制御装置15は、第1の画像im1を視認可能な状態に遷移させることにより、第2の表示装置13に第2の報知を実行させてよい。したがって、対象物体が第2の光景s2に位置する場合に、第2の報知が行われてよい。
【0040】
制御装置15は、具体的に、第2の表示装置13がヘッドアップディスプレイである構成においては、視認面vsにおいてアイボックスebから対象物体の見える位置として、搭乗者が対象物体を視認する透明部材18における位置を算出する。より具体的には、搭乗者が対象物体を視認する透明部材18における位置は、第1の画像im1の投影位置である。当該投影位置は、アイボックスebと対象物体を繋ぐ視線と透明部材18とが交わる領域であってよい。制御装置15は、透明部材18における投影位置に第1の画像im1を投影してよい。制御装置15は、透明部材18に第1の画像im1を投影することにより、搭乗者に対象物体と関連付けて第1の画像im1を視認させる。第1の画像im1は、透明部材18を透過した対象物体の光学像に重畳して搭乗者に視認させる画像であってよい。第1の画像im1は、例えば対象物体の周囲を囲う像、対象物体の手前に表示される壁等の像、又は対象物体の像の存在を指し示す像などとして、搭乗者に視認させうる画像であってよい。
【0041】
例えば、車両11が前進、又は対象物体が車両11に近付くことにより、対象物体が第2の光景s2から第1の光景s1に移動する。このような事象に対して、上述の制御装置15の情報処理により、対象物体が第2の光景s2から第1の光景s1に移動する場合に、第2の報知から第1の報知に切替えられる。例えば、車両11が後退、又は対象物体が車両11から遠ざかることにより、対象物体が第1の光景s1から第2の光景s2に移動する。このような事象に対して、上述の制御装置15の情報処理により、対象物体が第1の光景s1から第2の光景s2に移動する場合に、第1の報知から第2の報知に切替えられる。
【0042】
制御装置15は、第2の表示装置13が視認面vsに画像を形成するディスプレイである構成においては、原画像から第2の光景s2に対応する部分画像を抽出してよい。制御装置15は、抽出した部分画像を、第1の対応関係に基づいて、視認面vsの座標系に変換することにより、当該ディスプレイに表示する画像を生成してよい。又、上述のように、制御装置15は、第1の画像im1が生成される場合、当該画像に第1の画像im1を重畳してよい。制御装置15は生成した画像を情報として第1の表示装置12に付与してよい。
【0043】
なお、対象物体の一部である第1の部分が第1の光景s1に含まれ、且つ同一の対象物体の他の部分である第2の部分が第2の光景s2に含まれる場合には、第1の表示装置12及び第2の表示装置13は、それぞれ第3の画像im3及び第1の画像im1を表示させてよい。具体的には、制御装置15は、第1の表示装置12に対象物体の第1の部分に対応する第3の画像im3を表示させてよい。更に、制御装置15は、第2の表示装置13に対象物の第2の部分に対応する第1の画像im1を表示させてよい。このような構成により、表示システム10は、搭乗者に、第1の表示装置12において視認する第1の光景s1と、視認面vsを介して視認する第2の光景s2とにおいて、対象物体に関する報知をシームレスに認識させ得る。
【0044】
制御装置15は、第1の画像im1及び、第3の画像im3を表示する際に、スピーカ等から警告音を発してよい。例えば、第1の光景s1と第2の光景s2とが連続しない光景であり、搭乗者が第1の表示装置12によって確認できない領域がある場合、制御装置15は、第1の光景s1と第2の光景s2との間に対象物が存在する状況において第1の画像im1及び第3の画像im3のいずれの表示もできない場合に、警告音を発してよい。
【0045】
次に、本実施形態において制御装置15が実行する、報知処理について、図6のフローチャートを用いて説明する。報知処理は、カメラ部14から原画像を取得する場合に開始する。
【0046】
ステップS100において、制御装置15は、新規に取得した原画像に、ノイズ除去及びホワイトバランス調整等の前段画像処理を施す。なお、カメラ部14が複数のカメラを有する構成においては、前段画像処理において原画像を合成してもよい。処理後、プロセスはステップS101に進む。
【0047】
ステップS101では、制御装置15は、ステップS100において前段画像処理を施した原画像に、対象物体の像が含まれるか否かを判別する。対象物体の像が含まれる場合、プロセスはステップS102に進む。対象物体の像が含まれない場合、報知処理は終了する。
【0048】
ステップS102では、制御装置15は、対象物体が第1の光景s1内に位置するか否かを判別する。第1の光景s1内に位置する場合、プロセスはステップS103に進む。第1の光景s1内に位置しない場合、プロセスはステップS105に進む。
【0049】
ステップS103では、制御装置15は、ステップS100において前段画像処理を施した原画像から第2の画像im2を生成する。更に、制御装置15は、対象物体の像の第2の画像im2における位置を算出し、第3の画像im3を生成する。生成後、プロセスはステップS104に進む。
【0050】
ステップS104では、制御装置15は、ステップS103において生成した第2の画像im2及び第3の画像im3を第1の表示装置12に付与することにより、第1の報知を実行させる。付与後に、プロセスはステップS105に進む。
【0051】
ステップS105では、制御装置15は、対象物体第2の光景s2内に位置するか否かを判別する。第2の光景s2内に位置する場合、プロセスはステップS106に進む。第2の光景s2内に位置しない場合、報知処理は終了する。
【0052】
ステップS106では、制御装置15は、原画像に基づいて、視認面vsにおいてアイボックスebから対象物体の見える位置を算出する。更に、制御装置15は、算出した位置を関連付けた第1の画像im1を生成する。生成後、プロセスはステップS107に進む。
【0053】
ステップS107では、制御装置15は、ステップS106において生成した第1の画像im1を第2の表示装置13に付与することにより、第2の報知を実行させる。付与後に、報知処理は終了する。
【0054】
以上のような構成の本実施形態の表示システム10は、車両11内の特定の空間領域ebから見た場合に当該車両11の外部領域の中で当該車両11の車体の一部に遮蔽される第1の光景s1を表示可能な第1の表示装置12と、視認面vsを介して空間領域ebから視認可能な第2の光景s2に視覚情報を重畳可能な第2の表示装置13とを備え、第1の光景s1に含まれる対象物体に関する報知である第1の報知を第1の表示装置12が行い、第2の光景s2に含まれる対象物体に関する報知である第2の報知を第2の表示装置13が行う。通常、車両11からは、第1の光景s1のみが視認可能である。しかし、車両11近傍で高さの低い観察物体は、搭乗者にとって注意すべき物体であるにかかわらず第1の光景s1に含まれず、第2の光景s2に含まれることがある。このような状態では、対象物体の存在の報知が難しい。一方で、上述の構成を有する表示システム10は、第1の表示装置12において、第2の光景s2に対象物体が含まれる場合に第2の報知が行われるので、対象物体の報知の漏れを低減させ得る。
【0055】
又、表示システム10では、第1の表示装置12は車両11に対する対象物体の相対的な移動により当該対象物体が第2の光景s2から第1の光景s1に移った場合に第1の報知を行う。このような構成により、表示システム10は、相対移動により対象物体が車両11に近付くに際して、途切れることなく報知が実行される。したがって、表示システム10は、対象物体が車両11に接近したとしても、搭乗者に注意を促し得る。
【0056】
又、表示システム10では、第2の表示装置13は、光を透過する透明部材18に第1の画像im1を投影することにより第2の光景s2に付加した虚像を、空間領域ebから第2の表示装置13を見る搭乗者に認識させるヘッドアップディスプレイである。このような構成により、表示システム10は、従来用いられているウィンドシールド等を用いた車両11に適用され得る。
【0057】
又、表示システム10では、ヘッドアップディスプレイは、第2の報知として、対象物体と第1の画像im1の虚像とを関連付けて搭乗者に認識させる。このような構成により、表示システム10では、対象物体の実空間における位置を搭乗者に容易に把握させ得る。
【0058】
又、表示システム10では、第1の表示装置12は、第1の光景s1を遮蔽する車体の一部の表面に、第1の光景s1に相当する第2の画像im2を表示する。このような構成により、表示システム10では、第1の光景s1を遮蔽する車体の一部を透過させて、第1の光景s1を視認するように、搭乗者に知覚させ得る。したがって、表示システム10は、搭乗者に対象物体の位置を明確に知覚させ得る。
【0059】
又、表示システム10では、第1の表示装置12は、第1の報知として第2の画像im2に含まれる対象物体の画像に関連付けて第3の画像im3を表示する。このような構成により、表示システム10は、対象物体の実空間における位置を搭乗者に容易に把握させ得る。
【0060】
又、表示システム10では、同一の対象物に関連付いた第1の画像im1及び前記第3の画像im3の形状、色は、同一又は類似する。第1の報知及び第2の報知の切替わり時に、報知のための画像が異なると搭乗者は、同じ対象物体であっても異なる対象物体であるように誤解をし得る。一方で上述の構成を有する表示システム10は、第1の表示装置12及び第2の表示装置13のいずれかへの対象物体に対する視覚的な報知の切替えにおいて、同じ対象物体であると容易に認識させ得る。
【0061】
以上、表示システム10の実施形態を説明してきたが、本開示の実施形態としては、装置を実施するための方法又はプログラムの他、プログラムが記録された記憶媒体(一例として、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、CD-RW、磁気テープ、ハードディスク、又はメモリカード等)としての実施態様をとることも可能である。
【0062】
また、プログラムの実装形態としては、コンパイラによってコンパイルされるオブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラムコード等のアプリケーションプログラムに限定されることはなく、オペレーティングシステムに組み込まれるプログラムモジュール等の形態であってもよい。さらに、プログラムは、制御基板上のCPUにおいてのみ全ての処理が実施されるように構成されてもされなくてもよい。プログラムは、必要に応じて基板に付加された拡張ボード又は拡張ユニットに実装された別の処理ユニットによってその一部又は全部が実施されるように構成されてもよい。
【0063】
本開示に係る実施形態について説明する図は模式的なものである。図面上の寸法比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。
【0064】
本開示に係る実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は改変を行うことが可能であることに注意されたい。従って、これらの変形又は改変は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0065】
本開示に記載された構成要件の全て、及び/又は、開示された全ての方法、又は、処理の全てのステップについては、これらの特徴が相互に排他的である組合せを除き、任意の組合せで組み合わせることができる。また、本開示に記載された特徴の各々は、明示的に否定されない限り、同一の目的、同等の目的、または類似する目的のために働く代替の特徴に置換することができる。したがって、明示的に否定されない限り、開示された特徴の各々は、包括的な一連の同一、又は、均等となる特徴の一例にすぎない。
【0066】
さらに、本開示に係る実施形態は、上述した実施形態のいずれの具体的構成にも制限されるものではない。本開示に係る実施形態は、本開示に記載された全ての新規な特徴、又は、それらの組合せ、あるいは記載された全ての新規な方法、又は、処理のステップ、又は、それらの組合せに拡張することができる。
【0067】
本開示において「第1」及び「第2」等の記載は、当該構成を区別するための識別子である。本開示における「第1」及び「第2」等の記載で区別された構成は、当該構成における番号を交換することができる。例えば、第1の表示装置は、第2の表示装置と識別子である「第1」と「第2」とを交換することができる。識別子の交換は同時に行われる。識別子の交換後も当該構成は区別される。識別子は削除してよい。識別子を削除した構成は、符号で区別される。本開示における「第1」及び「第2」等の識別子の記載のみに基づいて、当該構成の順序の解釈、小さい番号の識別子が存在することの根拠に利用してはならない。
【符号の説明】
【0068】
10 表示システム
11 車両
12 第1の表示装置
13 第2の表示装置
14 カメラ
15 制御装置
16 プロジェクタ
17 スクリーン
18 透明部材
19 投影装置
cs 車止め
eb アイボックス
im1 第1の画像
im2 第2の画像
im3 第3の画像
s1 第1の光景
s2 第2の光景
vs 視認面
図1
図2
図3
図4
図5
図6