(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161849
(43)【公開日】2024-11-20
(54)【発明の名称】導電ペースト、導電配線付き不織布、おむつ及び導電配線付き不織布の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01B 1/22 20060101AFI20241113BHJP
D06B 11/00 20060101ALI20241113BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20241113BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20241113BHJP
B05D 5/12 20060101ALI20241113BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20241113BHJP
H01B 1/00 20060101ALI20241113BHJP
H01B 13/00 20060101ALI20241113BHJP
H01B 7/04 20060101ALN20241113BHJP
A61F 13/42 20060101ALN20241113BHJP
【FI】
H01B1/22 A
D06B11/00 E
B05D1/26 A
B05D7/00 B
B05D7/00 G
B05D5/12 B
B05D7/24 301E
B05D7/24 302Q
B05D7/24 303A
B05D7/24 303C
B05D7/24 303B
B05D7/24 302L
B05D7/24 302J
B05D7/24 302G
H01B1/00 A
H01B13/00 503D
H01B7/04
A61F13/42 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076951
(22)【出願日】2023-05-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂田 佳広
(72)【発明者】
【氏名】四釜 拓生
(72)【発明者】
【氏名】富田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】古正 力亜
(72)【発明者】
【氏名】山本 秀樹
【テーマコード(参考)】
3B154
3B200
4D075
5G301
5G311
5G323
【Fターム(参考)】
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5G301DA03
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5G323CA03
(57)【要約】
【課題】スクリーン印刷によって、不織布の表面に、初期抵抗が低く、かつ屈曲しても断線しにくい導電配線を印刷することができる導電ペースト導電ペーストを提供する。
【解決手段】本開示の導電ペーストは、ゴム(A)と、複数の樹枝状の導電性粒子(B)と、有機溶媒(C)と、を含有する。本開示の導電ペーストは、粘度が、50Pa・s~100Pa・sである。前記ゴム(A)と前記有機溶媒(C)とのハンセン溶解度パラメータの距離Ra1が、2.5(MPa)0.5以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム(A)と、複数の樹枝状の導電性粒子(B)と、有機溶媒(C)と、を含有し、
粘度が、30Pa・s~300Pa・sであり、
前記ゴム(A)と前記有機溶媒(C)とのハンセン溶解度パラメータの距離Ra1が、2.5(MPa)0.5以下である、導電ペースト。
【請求項2】
前記ゴム(A)の含有量が、導電ペーストの総量に対して、4質量%~10質量%であり、
前記導電性粒子(B)の含有量が、導電ペーストの総量に対して、60質量%~80質量%である、請求項1に記載の導電ペースト。
【請求項3】
導電ペーストを不織布に塗布し、乾燥して、前記不織布の一方の主面上に直線状の1本の導電配線が形成された試験片を作製したときの前記導電配線の浸透度が、0%~15%であり、
前記浸透度が、前記導電配線の短手方向に沿って切断された前記試験片の断面において、前記不織布の断面積に対する、前記導電配線のうちの前記不織布の内部に浸透している部位の断面積の割合を示し、
前記不織布が、通気性が31cc/cm2/sであるポリプロピレン系メルトブローン不織布である、請求項1に記載の導電ペースト。
【請求項4】
前記ゴム(A)が、フッ素ゴム、シリコーン、ポリオレフィン系エラストマー、及びポリスチレン系エラストマーの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の導電ペースト。
【請求項5】
前記ゴム(A)が、フッ素ゴムを含み、
前記フッ素ゴムが、未架橋物である、請求項4に記載の導電ペースト。
【請求項6】
前記フッ素ゴムが、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、及びテトラフルオロエチレンとプロピレンとの共重合体からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項5に記載の導電ペースト。
【請求項7】
前記導電性粒子(B)が、銀、銅、ニッケル、及び金の少なくとも一つを含む金属粉である、請求項1に記載の導電ペースト。
【請求項8】
さらに複数の二酸化ケイ素粒子(D)を含有する、請求項1に記載の導電ペースト。
【請求項9】
前記有機溶媒(C)が、
1分子中に1以上の水酸基を有し、かつ分子量が160を超えて220以下である有機溶媒(C1)と、
1分子中に1以上のエステル結合を有し、かつ分子量が140以上160以下である有機溶媒(C2)と、
を含む、請求項1に記載の導電ペースト。
【請求項10】
前記有機溶媒(C1)と、前記有機溶媒(C2)との比率(C1/C2)が、体積比で、20/80~80/20である、請求項9に記載の導電ペースト。
【請求項11】
不織布と、
前記不織布の少なくとも一方の主面上に形成された導電配線と、
を備え、
前記導電配線が、請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の導電ペーストの乾燥物である、導電配線付き不織布。
【請求項12】
前記導電配線の線幅が、70μm~500μmである、請求項11に記載の導電配線付き不織布。
【請求項13】
前記ゴム(A)と前記不織布とのハンセン溶解度パラメータの距離Ra2が、5.8(MPa)0.5以上である、請求項11に記載の導電配線付き不織布。
【請求項14】
請求項11に記載の導電配線付き不織布を含む、おむつ。
【請求項15】
請求項11に記載の導電配線付き不織布を製造する方法であって、
前記導電ペーストを前記不織布の少なくとも一方の主面上にスクリーン印刷をして、前記導電配線を形成すること、を含む導電配線付き不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、導電ペースト、導電配線付き不織布、おむつ及び導電配線付き不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パターン状の導電体(例えば、配線回路等)を形成する材料として、ペースト状の導電性組成物が知られている。
【0003】
特許文献1は、導電組成物(以下、「導電ペースト」ともいう。)を開示している。特許文献1に開示の導電ペーストは、バインダー樹脂、溶剤、導電性粒子、および無機微粒子を少なくとも含む。前記無機微粒子の平均1次粒子径は、5~100nmである。JIS K 5101-13-1に準拠して測定された吸油量は、120~600g/100gである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、不織布に導電配線を印刷する方法として、転写印刷が知られている。転写印刷では、離型シートに導電ペーストを所定の配線パターンに塗布し、導電ペースト付き離型シートを不織布の表面に加熱圧着して、離型シートを剥がす。これにより、不織布に導電配線が印刷される。
しかしながら、転写印刷では、複数の工程の実施が必要で、細い導電配線(線幅:500μm以下)を印刷することが難しいおそれがある。そのため、スクリーン印刷によって、不織布に細い導電配線(線幅:500μm以下)を印刷することができる導電ペーストが求められている。
【0006】
しかしながら、従来の導電ペーストを用いて、不織布の表面に細い導電配線が印刷すると、初期抵抗が高いおそれがある。更に、従来の導電ペーストを用いて、不織布の表面に導電配線が印刷すると、屈曲によって導電配線が断線しやすいおそれがある。
【0007】
本開示は、上記に鑑みてなされたものである。
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、スクリーン印刷によって、不織布の表面に、初期抵抗が低く、かつ屈曲しても断線しにくい導電配線を印刷することができる導電ペーストを提供することである。
本開示の他の実施形態が解決しようとする課題は、導電配線の初期抵抗が低く、かつ屈曲しても導電配線が断線しにくい導電配線付き不織布及びおむつを提供することである。
本開示の他の実施形態が解決しようとする課題は、導電配線の初期抵抗が低く、かつ導電配線が屈曲しても導電配線が断線しにくい導電配線付き不織布を製造することができる導電配線付き不織布の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1> ゴム(A)と、複数の樹枝状の導電性粒子(B)と、有機溶媒(C)と、を含有し、
粘度が、30Pa・s~300Pa・sであり、
前記ゴム(A)と前記有機溶媒(C)とのハンセン溶解度パラメータの距離Ra1が、2.5(MPa)0.5以下である、導電ペースト。
<2> 前記ゴム(A)の含有量が、導電ペーストの総量に対して、4質量%~10質量%であり、
前記導電性粒子(B)の含有量が、導電ペーストの総量に対して、60質量%~80質量%である、前記<1>に記載の導電ペースト。
<3> 導電ペーストを不織布に塗布し、乾燥して、前記不織布の一方の主面上に直線状の1本の導電配線が形成された試験片を作製したときの前記導電配線の浸透度が、0%~15%であり、
前記浸透度が、前記導電配線の短手方向に沿って切断された前記試験片の断面において、前記不織布の断面積に対する、前記導電配線のうちの前記不織布の内部に浸透している部位の断面積の割合を示し、
前記不織布が、通気性が31cc/cm2/sであるポリプロピレン系メルトブローン不織布である、前記<1>又は<2>に記載の導電ペースト。
<4> 前記ゴム(A)が、フッ素ゴム、シリコーン、ポリオレフィン系エラストマー、及びポリスチレン系エラストマーの少なくとも1つを含む、前記<1>~<3>のいずれか1つに記載の導電ペースト。
<5> 前記ゴム(A)が、フッ素ゴムを含み、
前記フッ素ゴムが、未架橋物である、前記<4>に記載の導電ペースト。
<6> 前記フッ素ゴムが、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、及びテトラフルオロエチレンとプロピレンとの共重合体からなる群より選択される少なくとも1つを含む、前記<5>に記載の導電ペースト。
<7> 前記導電性粒子(B)が、銀、銅、ニッケル、及び金の少なくとも一つを含む金属粉である、前記<1>~<6>のいずれか1つに記載の導電ペースト。
<8> さらに複数の二酸化ケイ素粒子(D)を含有する、前記<1>~<7>のいずれか1つに記載の導電ペースト。
<9> 前記有機溶媒(C)が、
1分子中に1以上の水酸基を有し、かつ分子量が160を超えて220以下である有機溶媒(C1)と、
1分子中に1以上のエステル結合を有し、かつ分子量が140以上160以下である有機溶媒(C2)と、
を含む、前記<1>~<8>のいずれか1つに記載の導電ペースト。
<10> 前記有機溶媒(C1)と、前記有機溶媒(C2)との比率(C1/C2)が、体積比で、20/80~80/20である、前記<9>に記載の導電ペースト。
<11> 不織布と、
前記不織布の少なくとも一方の主面上に形成された導電配線と、
を備え、
前記導電配線が、前記<1>~<10>のいずれか1つに記載の導電ペーストの乾燥物である、導電配線付き不織布。
<12> 前記導電配線の線幅が、70μm~500μmである、前記<11>に記載の導電配線付き不織布。
<13> 前記ゴム(A)と前記不織布とのハンセン溶解度パラメータの距離Ra2が、5.8(MPa)0.5以上である、前記<11>又は<12>に記載の導電配線付き不織布。
<14> 前記<11>~<13>のいずれか1つに記載の導電配線付き不織布を含む、おむつ。
<15> 前記<11>~<13>のいずれか1つに記載の導電配線付き不織布を製造する方法であって、
前記導電ペーストを前記不織布の少なくとも一方の主面上にスクリーン印刷をして、前記導電配線を形成すること、を含む導電配線付き不織布の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一実施形態によれば、スクリーン印刷によって、不織布の表面に、初期抵抗が低く、かつ屈曲しても断線しにくい導電配線を印刷することができる導電ペーストが提供される。
本開示の他の実施形態によれば、導電配線の初期抵抗が低く、かつ屈曲しても導電配線が断線しにくい導電配線付き不織布及びおむつが提供される。
本開示の他の実施形態によれば、導電配線の初期抵抗が低く、かつ導電配線が屈曲しても導電配線が断線しにくい導電配線付き不織布の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施例の評価用サンプルの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示において、数値範囲を示す「~」はその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本開示において段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。本開示に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
本開示において、「不織布」とは、製織,編成及び製紙を除く,物理的方法及び/又は化学的方法によって所定のレベルの構造的強さが得られている平面状の繊維集合体を示す。
【0012】
(1)導電ペースト
本開示の導電ペーストは、ゴム(A)と、複数の樹枝状の導電性粒子(B)(以下、単に「導電性粒子(B)」ともいう。)と、有機溶媒(C)と、を含有する。本開示の導電ペーストの粘度は、30Pa・s~300Pa・sである。前記ゴム(A)と前記有機溶媒(C)とのハンセン溶解度パラメータ(以下、「HSP」ともいう)の距離Ra1(以下、「HSP距離Ra1」ともいう)が、2.5(MPa)0.5以下である。
【0013】
「ゴム」とは、弱い力で変形し,力を除いた後,急速にほぼ元の形状寸法に戻る材料を示す。ゴムは、熱可塑性エラストマー及び熱硬化性エラストマーを包含する。
「導電性粒子」とは、導電性を有する粒子を示す。「導電性を有する粒子」とは、JIS K 0130(2008)に従って測定した電気伝導率が100μS/cm以下の粒子を示す。
「樹枝状の導電性粒子」とは、アスペクト比が2~20である導電性粒子を示す。樹枝状の導電性粒子は、複数の幹を有する。複数の幹の各々は、幹から分かれた少なくとも1つの枝を有してもよい。
【0014】
「ハンセン溶解度パラメータ(Hansen Solvility Parameter)」はCharles M.Hansenが発表した、物質同士の親和性の指標となる値であり、3成分(すなわち、双極子間力項δp、London分散力項δd及び水素結合力項δh)からなる3次元空間(以下、「ハンセンの3Dグラフ」ともいう)で表される。δpは、双極子間力による効果を示す。δdは、分散力のよる効果を示す。δhは、水素結合力の効果を示す。
「前記ゴム(A)と前記有機溶媒(C)とのハンセン溶解度パラメータの距離Ra1」とは、有機溶媒(C)に対するゴム(A)の溶解性の指標を示す。具体的に、「HSP距離Ra1」は、ハンセンの3Dグラフにおいて、ゴム(A)と有機溶媒(C)との座標間の距離を示す。一般に、HSP距離Ra1が小さいほど、ゴム(A)は、有機溶媒(C)に溶解しやすく、HSP距離Ra1が大きいほど、ゴム(A)は、有機溶媒(C)に溶解しにくい。「HSP距離Ra1」は、コンピューターソフトウエア「Hansen Solubility Parameters in Practice」(HSPiP ver.5.5.06)を用いることで算出される。詳しくは、「HSP距離Ra1」の算出方法は、実施例に記載の方法と同様である。
【0015】
本開示の導電ペーストは、上記の構成を有するので、スクリーン印刷によって、不織布の表面に、初期抵抗が低く、かつ屈曲しても断線しにくい導電配線(例えば、線幅:30μm~3mm)を印刷することができる。
この効果は、以下の理由によると推測されるが、これに限定されない。
本開示では、HSP距離Ra1が、2.5(MPa)0.5以下である。これは、ゴム(A)が有機溶媒(C)に溶解していることを示す。そのため、本開示の導電ペーストは、スクリーン印刷によって不織布の表面に導電配線(以下、単に「本開示の導電配線」ともいう)を印刷することができる。
本開示では、複数の樹枝状の導電性粒子(B)が用いられる。そのため、本開示の導電配線に含まれる導電性粒子(B)同士の接点の数は、導電性粒子(B)が樹枝状でない場合(例えば、導電性粒子がフレーク状である場合)よりも、多い。つまり、本開示の導電配線の抵抗は、低く、かつ導電配線の屈曲に起因して増大しにくい。それ故、本開示の導電配線は、初期抵抗が低く、かつ本開示の導電配線が屈曲した際に、断線しにくい。
本開示では、導電ペーストの粘度は、30Pa・s~300Pa・sである。そのため、本開示の導電配線が不織布の表面に印刷される際に、不織布に浸透しにくく、線幅500μm以下の導電配線として印刷することに適している。
これらの結果、本開示の導電ペーストは、スクリーン印刷によって、不織布の表面に、初期抵抗が低く、かつ屈曲しても断線しにくい導電配線を印刷することができると推測される。
【0016】
本開示の導電ペーストの粘度は、30Pa・s~300Pa・sである。本開示の導電ペーストを用いて、スクリーン印刷によって不織布の表面に導電配線を印刷する場合、塗布工程及び乾燥工程が実施される。塗布工程では、配線パターンに対応する孔を有する版上に、導電ペーストを塗布する。乾燥工程では、導電ペースト中の有機溶媒(C)を乾燥させる。塗布工程では、有機溶媒(C)を適度に揮発させにくいことが求められ、かつ乾燥工程では、有機溶媒(C)を短時間で揮発させることが求められる。本開示の導電ペーストの粘度が上記範囲内であれば、塗布工程では、有機溶媒(C)は適度揮発しにくく、かつ乾燥工程では、有機溶媒(C)は短時間で揮発しやすい。
【0017】
本開示の導電ペーストの粘度は、好ましくは50Pa・s~150Pa・s、より好ましくは55Pa・s~100Pa・sである。本開示の導電ペーストの粘度が50Pa・s~150Pa・sであれば、本開示の導電性ペーストは、スクリーン印刷によって、不織布の表面に、細い導電配線として印刷され得る。
導電ペーストの粘度の測定方法は、実施例に記載の方法と同様である。
【0018】
導電ペーストを不織布に塗布し、乾燥して、前記不織布の一方の主面上に直線状の1本の導電配線が形成された試験片を作製したときの前記導電配線の浸透度(以下、単に「浸透度」ともいう)が、0%~15%である。前記浸透度は、前記導電配線の短手方向に沿って切断された前記試験片の断面において、前記不織布の断面積(以下、「基材面積」ともいう)に対する、前記導電配線のうちの前記不織布の内部に浸透している部位の断面積(以下、「浸透面積」ともいう)の割合を示す。前記不織布は、通気性が31cc/cm2/sであるポリプロピレン系メルトブローン不織布である。
【0019】
本開示において、「ポリプロピレン系メルトブローン不織布」とは、繊維の材質がポリプロピレンであるメルトブローン不織布を示す。メルトブローン不織布の平均繊維径は、通常、10μm未満である。
【0020】
浸透度が0%~15%であることは、浸透度が15%超である場合よりも、本開示の導電配線が不織布に浸透しにくいことを示す。これにより、本開示の導電配線は、本開示の導電配線が屈曲した際に、より断線しにくい。
浸透度は、屈曲しても導電配線が断線しにくい観点から、好ましくは10%以下が好ましく、より好ましくは5%以下である。
浸透度の測定方法は、実施例に記載の方法と同様である。
【0021】
本開示の導電ペーストの固形分は、特に限定されない。固形分は、ゴム(A)及び複数の樹枝状の導電性粒子(B)を含む。本開示の導電ペーストの固形分は、不織布に対する浸透を抑制する、細線描画性の観点から、好ましくは60質量%~90質量%、より好ましくは70質量%~80質量%である。
【0022】
(1.1)ゴム(A)
本開示の導電ペーストは、ゴム(A)を含有する。ゴム(A)は、本開示の導電配線において、導電性粒子(B)を保持するバインダ樹脂として機能する。つまり、ゴム(A)は、本開示の導電配線に屈曲性を付与する。
【0023】
ゴム(A)としては、例えば、フッ素ゴム、シリコーン、ポリオレフィン系エラストマー、ポリスチレン系エラストマー、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、エチレン・プロピレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。これらは1種のみを単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0024】
「フッ素ゴム」とは、フッ素原子を有する構成単位を含む樹脂のうちゴムの性質を有する樹脂を示す。
【0025】
中でも、ゴム(A)は、フッ素ゴム、シリコーン、ポリオレフィン系エラストマー、及びポリスチレン系エラストマーの少なくとも1つを含むことが好ましい。これにより、ゴム(A)がフッ素ゴム、シリコーン、ポリオレフィン系エラストマー、及びポリスチレン系エラストマーの少なくとも1つを含まない場合よりも、本開示の導電ペーストは、柔軟性が高く、かつ耐屈曲性に優れる導電配線とすることができる。特に、ゴム(A)は、フッ素ゴムを含むことがより好ましく、フッ素ゴムであることがさらに好ましい。ゴム(A)がフッ素ゴムを含むことで、ゴム(A)がフッ素ゴムを含まない場合よりも、本開示の導電ペーストの不織布への浸透を抑制することができる。
ゴム(A)は、フッ素ゴムを含み、前記フッ素ゴムが、未架橋物であることが好ましい。これにより、フッ素ゴムが架橋のフッ素ゴムである場合よりも、ゴム(A)は、有機溶媒(C)に溶解しやすい。その結果、本開示の導電ペーストは、所望の線幅の導電配線を印刷しやすくすることができる。更に、フッ素ゴムは、本開示の導電配線の不織布への浸透を抑制することができる。
【0026】
フッ素ゴムは、未架橋物であってもよいし、架橋物であってもよい。フッ素ゴムの架橋方法は、公知の方法であればよい。
【0027】
フッ素ゴムとしては、フッ化ビニリデン系ゴム、テトラフルオロエチレン-プロピレン系ゴム及びテトラフルオロエチレン-フッ素化アルキルビニルエーテル系ゴム、等が挙げられる。フッ化ビニリデン系ゴムとしては、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンとプロピレンとの共重合体、等が挙げられる。
【0028】
ゴム(A)がフッ素ゴムを含み、前記フッ素ゴムが未架橋物である場合、フッ素ゴムは、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、及びテトラフルオロエチレンとプロピレンとの共重合体からなる群より選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。これにより、本開示の導電ペーストは、柔軟性が高く、かつ耐屈曲性に優れる導電配線とすることができる。
【0029】
ゴム(A)は、市販品であってもよい。
【0030】
ゴム(A)の含有量は、特に限定されない。ゴム(A)の含有量は、導電ペーストへの分散性やスクリーン印刷時の印刷のしやすさの観点から、本開示の導電ペーストの総量に対して、好ましくは2.5質量%以上、より好ましくは3質量%以上である。ゴム(A)の含有量は、初期抵抗を下げる観点から、本開示の導電ペーストの総量に対して、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは6質量%以下である。これらの観点から、ゴム(A)の含有量は、好ましくは3質量%~6質量%である。
【0031】
(1.2)導電性粒子(B)
本開示の導電ペーストは、導電性粒子(B)を含有する。導電性粒子(B)は、本開示の導電配線に導電性を付与する。
【0032】
導電性粒子(B)の形状は、樹枝状である。すなわち、導電性粒子(B)のアスペクト比は、2~20である。導電性粒子(B)のアスペクト比は、屈曲をしやすくする観点から、好ましくは3~15、より好ましくは3~12である。導電性粒子(B)のアスペクト比の測定方法は、導電性粒子(B)を走査電子顕微鏡で加速電圧5kV、倍率10000で観察し、導電性粒子(B)の長手方向と短手方向の比率から評価する。
【0033】
導電性粒子(B)のタップ密度(以下、「TD」ともいう)は、特に限定されず好ましくは0.01g/cm3~5g/cm3、より好ましくは0.1g/cm3~3g/cm3である。
【0034】
導電性粒子(B)の比表面積は、特に限定されず、0.3m2/g~10m2/gであってもよい。
【0035】
導電性粒子(B)の材質は、金属であれば特に限定されず、例えば、銀、アルミニウム、マグネシウム、銅、金、ステンレス、チタン、鉄、青銅、マンガン、クロム、スズ、ジルコニア、鉛、ニッケル、これらの合金等が挙げられる。
【0036】
中でも。導電性粒子(B)は、銀、銅、ニッケル、及び金の少なくとも1つを含む金属粉であることが好ましく、導電性の観点から、銀粉、銀コート銅粉、銀コートニッケル粉、鉄粉、銅粉、及び金粉の少なくとも1つを含むことがより好ましい。
【0037】
導電性粒子(B)は、市販品であってもよい。
【0038】
導電性粒子(B)の含有量は、特に限定されない。導電性粒子(B)の含有量は、導電性確保の観点から、本開示の導電ペーストの総量に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。導電性粒子(B)の含有量は、導電ペーストにした時の分散性の観点から、本開示の導電ペーストの総量に対して、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下ある。これらの観点から、導電性粒子(B)の含有量は、好ましくは60質量%~80質量%である。
【0039】
(1.3)有機溶媒(C)
本開示の導電ペーストは、有機溶媒(C)を含有する。
【0040】
有機溶媒(C)の種類は、HSP距離Ra1が、2.5(MPa)0.5以下であれば、特に限定されず、ゴム(A)の種類によって、適宜選択される。有機溶媒(C)は、1種のみを単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0041】
有機溶媒(C)の沸点は、特に限定されず、好ましくは180℃以上、より好ましくは200℃以上である。有機溶媒(C)の沸点は、250℃以下であれば、スクリーン印刷で印刷後に乾燥しやすい。
有機溶媒(C)の沸点の測定方法は、実施例に記載の方法と同様である。
【0042】
有機溶媒(C)の定圧常圧条件下での蒸発エンタルピー(以下、「ΔHv」ともいう)は、特に限定されず、好ましくは40kJ/mol以上、より好ましくは45kJ/mol以上、さらに好ましくは47kJ/mol以上である。有機溶媒(C)のΔHvが47kJ/mol以上であれば、スクリーン印刷で所望の線幅の導電配線を印刷しやすい。有機溶媒(C)のΔHvは、55kJ/mol以下であってもよい。
有機溶媒(C)のΔHvの測定方法は、実施例に記載の方法と同様である。
【0043】
有機溶媒(C)は、1分子中に1以上の水酸基を有し、かつ分子量が160を超えて220以下である有機溶媒(C1)(以下、単に「有機溶媒(C1)」ともいう)と、1分子中に1以上のエステル結合を有し、かつ分子量が140以上160以下である有機溶媒(C2)(以下、単に「有機溶媒(C2)」ともいう)と、を含むことが有機溶媒(C)の粘度や沸点、蒸発エンタルピ―を選択しやすい観点から好ましい。有機溶媒(C)は、有機溶媒(C1)及び有機溶媒(C2)からなってもよい。
有機溶媒(C1)及び有機溶媒(C2)は有機溶媒(C)の沸点、蒸発エンタルピ―を調整しやすい観点から2種類併用することも出来る。
【0044】
有機溶媒(C)が有機溶媒(C1)及び有機溶媒(C2)を含む場合、前記有機溶媒(C1)と、前記有機溶媒(C2)との比率(C1/C2)は、体積比で、20/80~80/20であることが有機溶媒(C)の粘度や沸点、蒸発エンタルピ―を選択しやすい観点から好ましい。
【0045】
以下、ゴム(A)が上述したフッ素ゴムである場合の有機溶媒(C)について、説明する。
【0046】
有機溶媒(C)としては、例えば、炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、エステル系溶媒等が挙げられる。有機溶媒(C)は、1種のみを単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。アルコール系溶媒としては、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、テキサノール、ブチルジグリコール等が挙げられる。エステル系溶媒としては、マロン酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、エチレングリコールブチルエーテルアセテート(EGBEA)、シュウ酸ジエチル、トリメチルリン酸エステルが挙げられる。
【0047】
有機溶媒(C1)としては、例えば、アルコール系溶媒であるジエチレングリコールモノブチルエーテル(EGBEA)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、テキサノール、ブチルジグリコール等が挙げられる。中でも、有機溶媒(C1)は、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、及びテキサノールからなる群より選択される1以上であることが好ましい。
【0048】
有機溶媒(C2)としては、例えば、エステル系溶媒であるマロン酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、シュウ酸ジエチル、トリメチルリン酸エステル等が挙げられる。中でも、有機溶媒(C2)は、マロン酸ジエチル、及びトリメチルリン酸エステルからなる群から選ばれる1以上であることが好ましい。
【0049】
有機溶媒(C)は、市販品であってもよい。
【0050】
有機溶媒(C)の含有量は、特に限定されない。有機溶媒(C)の含有量は、バインダー樹脂の溶解性の観点から、本開示の導電ペーストの総量に対して、好ましくは15質量%以上、より好ましくは18質量%以上である。有機溶媒(C)の含有量は、導電ペーストのスクリーン印刷時の印刷のしやすさの確保及び導電配線の十分な導電性の確保等の観点から、本開示の導電ペーストの総量に対して、好ましくは28質量%以下、より好ましくは25質量%以下ある。
【0051】
(1.4)二酸化ケイ素粒子(D)
本開示の導電ペーストは、さらに複数の二酸化ケイ素粒子(D)を含有することが好ましい。これにより、本開示の導電ペーストの粘度は、本開示の導電ペーストが二酸化ケイ素粒子(D)を含有しない場合よりも向上する。
【0052】
「二酸化ケイ素粒子」とは、材質が二酸化ケイ素の粒子を示す。
【0053】
二酸化ケイ素粒子の形状は、特に限定されず、球状、フレーク(鱗片)状、及び樹枝状等が挙げられる。
【0054】
二酸化ケイ素粒子(D)は、表面処理剤で表面処理が施されていてもよい。表面処理剤としては、例えば、ポリジメチルシロキサン、ジメチルジクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、N-メチル-ヘキサメチルジシラザン、N-エチル-ヘキサメチルジシラザン、及びヘキサメチル-N-プロピルジシラザン等が挙げられる。
【0055】
二酸化ケイ素粒子(D)は、市販品であってもよい。
【0056】
本開示の導電ペーストが二酸化ケイ素粒子(D)を含有する場合、二酸化ケイ素粒子(D)の含有量は、導電ペーストの粘度を調整する観点から好ましくは0.1質量%~3.0質量%、より好ましくは0.5~1.5質量%である。
【0057】
(1.5)その他の成分
本開示の導電ペーストは、必要に応じて、その他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、例えば、安定剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、酸化防止剤、チキソ化剤、密着促進剤、防錆剤等が挙げられる。
【0058】
(2)導電配線付き不織布
本開示の導電配線付き不織布は、不織布と、前記不織布の少なくとも一方の主面上に形成された導電配線と、を備える。前記導電配線は、本開示の導電ペーストの乾燥物である。
【0059】
本開示の導電配線付き不織布は、上記の構成を有するので、導電配線の初期抵抗が低く、かつ屈曲しても導電配線が断線しにくい。
【0060】
(2.1)不織布
不織布は、シート状物である。不織布の構造は、導電配線付き不織布の用途等に応じて適宜選択され、例えば、単層構造、又は2層以上の複数層構造であってもよい。
【0061】
不織布としては、メルトブローン不織布、スパンボンド不織布、湿式不織布、水流交絡不織布、乾式不織布、乾式パルプ不織布、エアレイド不織布、フラッシュ紡糸不織布、トウ開繊不織布、ニードルパンチ不織布、長繊維セルロース繊維不織布等が挙げられる。
【0062】
不織布は、混繊不織布であってもよい。「混繊不織布」とは、樹脂の異なる繊維が紡糸段階で混合された不織布を示す。
【0063】
不織布の目付は、特に制限されず、導電配線付き不織布の用途等に応じて適宜選択され、1g/m2~400g/m2であってもよく、5g/m2~100g/m2であってもよい。
不織布の目付の測定方法は、下記の通りである。すなわち、不織布から縦方向100mm×横方向100mmの試料を3個採取して、各試料の質量をそれぞれ測定する。得られる測定値の平均値を単位面積当たりに換算し、小数点以下第一位を四捨五入して得られる値を目付(g/m2)とする。
【0064】
不織布の厚みは、特に制限されず、導電配線付き不織布の用途等に応じて適宜選択され、0.05mm~1mmであってもよく、0.02mm~0.5mmであってもよい。
不織布の厚みの測定方法は、下記の通りである。すなわち、目付を測定した試料の主面の中央及び四隅の5点の厚みを、厚み計(PEACOCK社製、品番「R1-250」、測定端子25mmφ)を用いて、荷重7g/m2で測定する。目付を測定した試料の3個の試料につき、この方法で厚みを測定し、その平均値を厚み(mm)とする。
【0065】
不織布の通気性は、特に限定されず、導電配線付き不織布の用途等に応じて適宜選択され、10cc/cm2/s~100cc/cm2/sであってもよく、15cc/cm2/s~50cc/cm2/sであってもよい。
不織布の通気性の測定方法は、JIS L 913:2010(一般不織布試験方法)の6.8.1(フラジール形法)に記載の方法である。
【0066】
不織布は、複数の繊維によって構成される。複数の繊維の平均繊維径は、導電配線付き不織布の用途等に応じて適宜選択され、5μm~50μmであってもよく、10μm~40μmであってもよよい。
繊維の平均繊維径の測定方法は、下記の通りである。すなわち、電子顕微鏡(日立製作所製S-3500N)を用いて、倍率1000倍の不織布の写真を撮影する。得られる写真から繊維の直径を測定可能な繊維を選択し、選択した繊維の直径を測定する。測定した繊維の本数の合計が100本を超えるまで撮像と測定を繰り返す。得られた繊維の直径の測定値の算術平均値を平均繊維径とする。
【0067】
繊維は、長繊維であってもよいし、短繊維であってもよい。繊維の断面形状は、特に制限されず、例えば、円形、楕円形、異形断面等が挙げられる。
【0068】
繊維は、熱可塑性樹脂を含有する。熱可塑性樹脂としては、例えば、α-オレフィンの単独重合体又は共重合体、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、等が挙げられる。α-オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン等が挙げられる。ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。ポリアミドとしては、例えば、ナイロン-6、ナイロン-66等が挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種のみを単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0069】
α-オレフィンの単独重合体又は共重合体としては、例えば、エチレン・ プロピレンランダム共重合体、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン、エチレン・1-ブテンランダム共重合体等のエチレンランダム共重合体などのエチレン系重合体;ポリプロピレン(プロピレン単独重合体)、プロピレン・ エチレンランダム共重合体、プロピレン・ 1-ブテンランダム共重合体等のプロピレンランダム共重合体などのプロピレン系重合体;ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテンなどが挙げられる。
【0070】
前記ゴム(A)と前記不織布とのハンセン溶解度パラメータの距離Ra2(以下、「HSP距離Ra2」ともいう)は、5.8(MPa)0.5以上であることが好ましい。
【0071】
「前記ゴム(A)と前記不織布とのハンセン溶解度パラメータの距離Ra2」とは、不織布に対するゴム(A)の親和性の指標を示す。具体的に、「HSP距離Ra2」は、ハンセンの3Dグラフにおいて、別途評価したゴム(A)と、不織布との座標間の距離を示す。一般に、HSP距離Ra2が大きいほど、ゴム(A)は不織布に浸透しにくい。各座標は、コンピューターソフトウエア「Hansen Solubility Parameters in Practice」(HSPiP ver.5.5.06)を用いることで算出される。詳しくは、各座標および「HSP距離Ra2」の算出方法は、実施例に記載の方法と同様である。
【0072】
HSP距離Ra2が5.8(MPa)0.5以上であることは、ゴム(A)が不織布に溶解浸透しにくいことを示す。これにより、本開示の導電配線は、屈曲しても断線しにくくなる。
【0073】
ゴム(A)が上述したフッ素ゴムである場合、HSP距離Ra2が5.8(MPa)0.5以上とする不織布を構成する樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合体、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合物等が挙げられる。
【0074】
(2.2)導電配線
導電配線のパターン形状は、導電配線付き不織布の用途等に応じて適宜選択される。
【0075】
導電配線の線幅は、導電配線付き不織布の用途に応じて適宜選択される。導電配線の線幅は、70μm~500μmであることが好ましく、30μm~3mmであることがより好ましい。
導電配線のラインアンドスペース(すなわち、「L/S」)は、例えば70μm/70μm~500μm/500μmであってもよい。
【0076】
(2.3)用途
本開示の導電配線付き不織布の用途は、特に限定されず、例えば、衣料(例えば、芯地、接着芯地等)、医療(例えば、手術着、覆布等)、建築(例えば、ルーフィング材、タフトカーペット基材等)、土木(例えば、ドレン材、ろ過材等)、車両(例えば、自動車内装、自動車部品等)、衛生(例えば、おむつ、生理用品、救急用品、清浄用品等)、インテリア(例えば、カーペット、家具部材、建具、壁装、装飾品等)、寝装(例えば、ふとん袋、枕カバー、シーツ等)、農業(例えば、ビニールハウスシート、苗床用シート等)、皮革(例えば、人工皮革用基布、合成皮革用基布等)、生活資材(例えば、収納用品、包装材、袋物等)、産業資材(例えば、工業用資材、電気材料、製品基材等)等が挙げられる。
【0077】
(3)おむつ
本開示のおむつは、本開示の導電配線付き不織布を含む。
【0078】
本開示のおむつは、本開示の導電配線付き不織布を含むことの他は、公知の構成であればよい。
【0079】
(4)導電配線付き不織布の製造方法
本開示の導電配線付き不織布の製造方法は、本開示の導電配線付き不織布を製造する方法である。当該製造方法は、前記導電ペーストを前記不織布の少なくとも一方の主面上にスクリーン印刷をして、前記導電配線を形成すること(以下、「スクリーン印刷工程」ともいう)、を含む。
【0080】
本開示の導電配線付き不織布の製造方法は、上記の構成を有するので、導電配線の初期抵抗が低く、かつ導電配線が屈曲しても導電配線が断線しにくい導電配線付き不織布を製造することができる。更に、本開示の導電配線付き不織布の製造方法は、転写印刷によって導電配線を印刷する場合よりも少ない工程で、導電配線付き不織布を製造することができる。
【0081】
(4.1)準備工程
本開示の導電配線付き不織布の製造方法は、準備工程を含んでもよい。準備工程では、導電ペースト及び不織布を準備する。
【0082】
導電ペーストとしては、上述した「(1)導電ペースト」の導電ペーストとして例示したものと同様のものが挙げられる。不織布としては、上述した「(2.1)不織布」の不織布として例示したものと同様のものが挙げられる。導電ペーストを準備する方法は、公知の方法であればよい。不織布を準備する方法は、公知の方法であればよい。
【0083】
(4.2)スクリーン印刷工程
本開示の導電配線付き不織布の製造方法は、スクリーン印刷工程を含む。スクリーン印刷工程では、前記導電ペーストを前記不織布の少なくとも一方の主面上にスクリーン印刷をして、前記導電配線を形成する。
【0084】
スクリーン印刷の方法は、公知の方法であればよい。スクリーン印刷の印刷条件は、導電ペーストの種類及び不織布の種類等に応じて、適宜調整すればよい。
【実施例0085】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0086】
[1]準備
以下の材料を準備した。
【0087】
[1.1]バインダ樹脂
バインダ樹脂として、下記のゴム(A)及びバインダ樹脂(X)を準備した。
【0088】
[1.1.1]ゴム(A)
・フッ素ゴム(a1):スリーエムジャパン株式会社製の「FC-2178」(材質:未架橋のフッ素ゴム(フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体))
【0089】
[1.1.2]バインダ樹脂(X)
・エチルセルロース(x1) :株式会社日新化成製の「ETHOCEL N7」(材質:エチルセルロース)
・非晶性ポリエステル(x2):東洋紡エムシー株式会社製の「Vylon BX-1001」(材質:非晶性ポリエステル)
【0090】
[1.2]導電性粒子
導電性粒子として、下記の樹枝状の導電性粒子(B)及びフレーク状の導電性粒子(Y)を準備した。
【0091】
[1.2.1]樹枝状の導電性粒子(B)
・樹枝状Ag(b1):Metalor社製の「K-79124P」(材質:銀、形態:粉末、粒子形状:樹枝状、アスペクト比:6.5、TD:2.4g/cm3、比表面積:2.3m2/g)
・樹枝状Ag(b2):三井金属鉱業株式会社製の「GLC」(材質:銀、形態:粉末、粒子形状:樹枝状、アスペクト比:3.3、TD:1.2g/cm3、比表面積:0.91m2/g)
・樹枝状Ag(b3):AMES社製の「R08371-00」(材質:銀、形態:粉末、粒子形状:樹枝状、アスペクト比:12、TD:0.4g/cm3、比表面積:0.91m2/g)
【0092】
[1.2.2]フレーク状の導電性粒子(Y)
・フレーク状Ag(y1):株式会社徳力本店製の「TC-506」(材質:銀、形態:粉末、粒子形状:フレーク状、アスペクト比:1.1、TD:5.3g/cm3、比表面積:0.29m2/g)
【0093】
[1.3]有機溶媒(C)
テキサノール(c1):2,2,4-Trimethyl-1,3-Pentanediol Monoisobutyrate(製造会社:SIGMA-ALDRICH、分子量:216、1分子中の水酸基の数:1個、1分子中のエステル結合の数:1個)
EGBEA(c2) :Ethylene Glycol Butyl Ether Acetate(製造会社:東京化成工業株式会社、分子量:160、1分子中のエステル結合の数:1個)
シュウ酸ジエチル(c3):Dietyl Oxalate(製造会社:富士フイルム和光純薬製、分子量:146、1分子中のエステル結合の数:2個)
ブチルジグリコール(c4):Diethylene glycol monobutyl ether(製造会社:東京化成工業株式会社、分子量:162、1分子中の水酸基の数:1個)
マレイン酸ジメチル(c5):Dimethyl Meleate(製造会社:富士フイルム和光純薬株式会社、分子量:144、1分子中のエステル結合の数:2個)
ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(c6):Dipropylene Glycol monobutyl ether(製造会社:富士フイルム和光純薬製、分子量190、1分子中の水酸基の数:1個)1分子中の水酸基の数:1個)
マロン酸ジエチル(c7):Diethyl Malonete(製造会社:富士フイルム和光純薬株式会社、分子量:160、1分子中のエステル結合の数:2個)
【0094】
[1.4]二酸化ケイ素粒子(D)(増粘剤)
二酸化ケイ素粒子(d1):Cabot製の「Ts-720」(比表面積:200m2/g、表面処理剤:ポリジメチルシロキサン)
【0095】
[1.5]不織布
MB不織布:ポリプロピレン系メルトブローン不織布(三井化学株式会社製銘柄名:Syntex、目付:20g/m2、通気性:31cc/cm2/s、材質:ポリプロピレン)
【0096】
[2]参考例
材質の親和性評価を、ハンセン溶解度パラメータを用いて評価した。詳しくは、以下の方法で、HSP則により、溶解法によりバインダ樹脂のHSP座標を、接触角法により不織布のHSP座標を算出した。その後、バインダ樹脂と有機溶媒(C)とのHSP距離(Ra1)、バインダ樹脂と不織布とのHSP距離を算出した。
【0097】
[2.1.1]バインダ樹脂のHSPの3成分の算出
後述する表1に記載の20種類の有機溶媒(C)10mLに各バインダ樹脂0.1gを添加し、25℃で24時間静置した。静置後の液体を目視で観察し、下記の評価基準を基づいて、有機溶媒(C)に対するバインダ樹脂の溶解性のスコアリングをした。
【0098】
<バインダ樹脂の溶解性の評価基準>
0:不溶
2:濁り及び/または揺らぎ
1:溶解
「0」又は「2」は、有機溶媒(C)がバインダ樹脂に対して貧溶媒であることを示す。「1」は、有機溶媒(C)がバインダ樹脂に対して良溶媒であることを示す。
【0099】
スコアリング結果を表1に示す。得られたスコアを基に、コンピューターソフトウエア「Hansen Solubility Parameters in Practice」(HSPiP ver.5.5.06)(以下、「HSPiP」ともいう)の計算プログラムに従い、バインダ樹脂のHSPの3成分(すなわち、双極子間力項δpB、London分散力項δdB及び水素結合力項δhB)を求めた。
【0100】
【0101】
[2.1.3]MB不織布のHSPの3成分の算出
接触角計(協和界面科学株式会社製、「DMe-211」)を用いて、後述する表2に記載の14種類の有機溶媒(C)2μLをMB不織布に滴下し、滴下した時点から10秒後の接触角を測定した。下記の評価基準に基づいて、有機溶媒(C)に対するMB不織布の浸透性のスコアリングをした。
【0102】
<MB不織布の浸透性の評価基準>
0:接触角>0°
1:接触角=0°
「0」は、有機溶媒(C)がMB不織布に対して貧溶媒であることを示す。「1」は、有機溶媒(C)がMB不織布に対して良溶媒であることを示す。
【0103】
スコアリング結果を表2に示す。得られたスコアを基に、コンピューターソフトウエア「HSPiP」の計算プログラムに従い、不織布のHSPの3成分(すなわち、双極子間力項δpN、London分散力項δdN及び水素結合力項δhN)を求めた。
【0104】
【0105】
[2.1.4]HSP距離(Ra1,Ra2)
バインダ樹脂と有機溶媒(C)とのHSP距離(Ra1)、バインダ樹脂とMB不織布とのHSP距離(Ra2)は、下記の式(1)で表される。
【0106】
式(1):バインダ樹脂と有機溶媒(C)のHSP距離(Ra1)={4×(δdB-δdS)2+(δpB-δpS)2+(δhB-δhS)2}0.5
【0107】
有機溶媒(C)が混合溶媒である場合、有機溶媒(C)のHSPの3成分(すなわち、δpS、δdS及びδhS)は、下記式(2)~式(4)により算出した。
式(2):有機溶媒(C)のδpS=溶媒AのδpS×溶媒Aの混合割合(体積%)+溶媒BのδpS×溶媒Bの混合割合(体積%)
式(3):有機溶媒(C)のδdS=溶媒AのδdS×溶媒Aの混合割合(体積%)+溶媒BのδdS×溶媒Bの混合割合(体積%)
式(4):有機溶媒(C)のδhS=溶媒AのδhS×溶媒Aの混合割合(体積%)+溶媒BのδhS×溶媒Bの混合割合(体積%)
【0108】
[2.2]有機溶媒(C)の沸点
有機溶媒(C)の沸点は、コンピューターソフトウエア「HSPiP」に収載されている値を用いた。有機溶媒(C)が溶媒Aと溶媒Bとからなる混合溶媒である場合、下記式(5)により算出された値を「有機溶媒(C)の沸点」とした。
式(5):混合溶媒の沸点=溶媒Aの沸点(℃)×溶媒Aの混合割合(体積%)+溶媒Bの沸点(℃)×溶媒Bの混合割合(体積%)
【0109】
[2.3]有機溶媒(C)の蒸発エンタルピーΔHv
有機溶媒(C)の蒸発エンタルピーΔHvは、コンピューターソフトウエア「HSPiP」に収載されている値を用いた。有機溶媒(C)が溶媒Aと溶媒Bとからなる混合溶媒である場合、下記式(6)により算出された値を「有機溶媒(C)の蒸発エンタルピーΔHv」とした。
式(6):混合溶媒のΔHv=溶媒AのΔHv(kJ/mol)×溶媒Aの混合割合(体積%)+溶媒BのΔHv(kJ/mol)×溶媒Bの混合割合(体積%)
【0110】
[3]実施例1~実施例5、及び比較例1~比較例7
表3に示す組成比(質量比)で、バインダ樹脂、導電性粒子、有機溶媒(C)、及び二酸化ケイ素粒子(D)を配合して、混合物を得た。得られた混合物を自転・公転ミキサー(株式会社シンキー製、「ARE-310」)を用いて予備混練して、混練物を得た。得られた混練物を、小型3本ロール機(株式会社アイメックス製、「BR-150HCVIII」)を用いて分散して、導電ペーストを得た。
【0111】
[4]評価
以下の方法で、粘度測定、導電ペーストの乾きにくさ、MB不織布への導電ペーストの浸透度、初期抵抗及び5回折曲げ時抵抗の評価を各々実施した。
【0112】
[4.1]粘度測定
E型粘度計(東機産業株式会社製、TV-200)を用いて、導電ペーストの粘度を測定した。測定条件は、25℃、1rpm(revolutions per minute)であった。
【0113】
[4.2]導電ペーストの乾きにくさ
スクリーン印刷によって細い導電配線を印刷するために、導電ペーストの乾きにくさを評価した。スクリーン印刷では、孔のあいた版(以下、「孔版」ともいう)の一方の主面に導電ペーストをのせて、スキージで導電ペーストを擦ることで、孔版の他方の主面側から導電ペーストを被印刷物に擦り付ける。そのため、導電ペーストが孔版にのせられてから被印刷物に擦り付けられるまでに、導電ペーストの粘度が経時変化しないことが重要である。
【0114】
縦3cm×横6cmサイズのスライドガラス上に、2本のテープ(3M社製のセロハンテープ、厚み20μm)を、2本のテープの長手方向が平行となるように貼って、テープ付きスライドガラスを得た。2本のテープの間隔は、1mmであった。テープ付きスライドガラスの2本のテープの間に、前記の導電ペーストを塗工した。塗工直後に、2本のテープをスライドガラスから剥離して、スライドガラス上に形成された、1本の線状の塗工物(以下、「塗工物(1mm幅)」ともいう)を得た。塗工物((1mm幅)のサイズは、線幅1mm、厚み20μm、線長さ6cmであった。その後、室温(23℃)で2時間放置後、塗工物(1mm幅)の表面を目視で観察するとともに、手指による塗工物(1mm幅)の触感を確認した。
【0115】
2本のテープの間隔を5mmとしたことの他は、塗工物(1mm幅)の作製方法と同様にして、スライドガラス上に形成された、1本の線状の塗工物(以下、「塗工物(5mm幅)」ともいう)を得た。塗工物(5mm幅)のサイズは、線幅5mm、厚み20μm、線長さ6cmであった。その後、塗工物(1mm幅)と同様にして、塗工物(5mm幅)の観察等を行った。
【0116】
下記の評価基準により、塗工物(1mm幅)及び塗工物(5mm幅)について、塗工適性を評価した。なお、比較例6及び比較例7では、導電ペーストを塗工した時点から10分後に、塗工物(1mm幅)及び塗工物(5mm幅)の表面の乾きを確認した。
【0117】
<塗工適性についての評価基準>
「A」:塗工物(1mm幅)及び塗工物(5mm幅)の表面の乾きが無い(すなわち、塗工物の表面を触った際に塗工物の表面に触った跡がつく。)、かつ塗工物(1mm幅)及び塗工物(5mm幅)の外観は良好であった。
「B」:塗工物(1mm幅)及び塗工物(5mm幅)の表面の乾きが無い、かつ塗工物(5mm幅)の外観は良好であったが塗工物(1mm幅)の外観が良好でなかった。
「C」:塗工物(1mm幅)及び塗工物(5mm幅)の表面に乾きがあり(すなわち、塗工物の表面を触った際に塗工物の表面に触った跡がつく。)、かつ塗工物(1mm幅)及び塗工物(5mm幅)の外観が不良であった。
「D」:塗工物(1mm幅)及び塗工物(5mm幅)の表面に乾きがあり、かつ塗工物(5mm幅)を塗工できなかった。
【0118】
[4.3]MB不織布への導電ペーストの浸透度
[4.3.1]評価用サンプル
MB不織布を切って、不織布片を得た。不織布片のサイズは、50mm×70mm×厚み0.2mmであった。不織布片をスライドガラスの片面に耐熱テープで固定した。窓枠状(サイズ:5mm×60mm)の貫通孔を有するフィルム(材質:ポリエチレンテレフタレート、サイズ:厚み20μm)を準備した。スライドガラスに固定された不織布片上にフィルムを配置して、固定した。その後、フィルム上に導電ペーストをのせて、ヘラで延ばした。次いで、不織布片からフィルムを剥がした。これにより、スライドガラスに固定された塗工物付き不織布片が得られた。塗工物付き不織布片は、不織布片と、不織布片の一方の主面上に形成された導電ペーストの塗工物と、を有する。導電ペーストの塗工物のサイズは、厚み20μm×5mm×60mmであった。
スライドガラスに固定された塗工物付き不織布片を、100℃に加熱したオーブンに入れ、30分間加熱した。その後に、スライドガラスに固定された塗工物付き不織布片をオーブンから取出した。スライドガラスから導電ペースト塗布不織布を剥がした。これにより、スクリーン印刷によって形成された評価用サンプルを得た。
【0119】
評価用サンプルの上面図を
図1に示す。
図1中、符号10は評価用サンプルを示し、符号11は不織布片を示し、符号12は塗工物(すなわち、導電配線)を示す。
【0120】
[4.3.2]浸透度の測定
評価用サンプル10の塗工物12が形成されている部位を、切断線C2-C2(
図1参照)で不織布片11の厚み方向に沿って、剃刀で切断した。切断線C2-C2は、塗工物12の短手方向と平行である。切断された評価用サンプルを固定して、切断面にオスミニウムコーティングをした。
【0121】
その後、新形走査電子顕微鏡(日立ハイテクソリューション社製、「S-3700N」)を用いて、評価用サンプル10の断面を撮影して、断面SEM画像を得た。評価用サンプル10の断面SEM画像を、
図2に示す。撮影条件は、加速電圧が10kV、倍率が200倍であった。
図2中、黒色部分が不織布片11を示し、白色部分が塗工物12を示す。
【0122】
断面SEM画像より、塗工物12のうちの不織布片11の内部に浸透している部位の断面積(すなわち、浸透面積)と、不織布片11の断面積(すなわち、基材面積)とを測量した。
【0123】
「塗工物12のうちの不織布片11の内部に浸透している部位の断面積」とは、塗工物12の幅WC(
図2参照)と、塗工物12の不織布片11の内部への浸透深さDC(
図2参照)と、の積を示す。塗工物12の幅WCとは、断面SEM画像における塗膜部分の幅を示す。具体的に、塗工物12の幅WCは、5mmであった。塗工物12の浸透深さDCとは、断面SEM画像における塗膜部分の深さを示す。
【0124】
「不織布片11の断面積」とは、不織布片11の幅WS(
図2参照)と、不織布片11の厚みDS(
図2参照)と、の積を示す。不織布片11の幅WSとは、断面SEM画像における不織布の幅を示す。具体的に、不織布片11の幅WSは、50mmであった。不織布片11の厚みDSとは、断面SEM画像における不織布の厚みを示す。具体的に、不織布片11の厚みDSは、0.21mmであった。
【0125】
塗工物12の断面積の測定結果及び不織布片11の断面積の測定結果を用いて、下記式(5)により、浸透度を算出した。5つの評価用サンプルの浸透度(N=3)の平均値を「導電ペーストの浸透度」とした。導電ペーストの浸透度の評価結果を表3に示す。導電ペーストの浸透度の許容可能な範囲は、10%以下である。
【0126】
式(5):浸透度[%]=(塗工物12のうちの不織布片11の内部に浸透している部位の断面積(すなわち、浸透面積WC×DS)/不織布片11の断面積(すなわち、基材面積WS×DS))×100
【0127】
[4.4]初期抵抗及び5回折曲げ時抵抗の測定
[4.4.1]初期抵抗
評価用サンプル10の塗工物12が形成されている部位Rにおいて、抵抗率計(日東精工アナリテック株式会社製、ロレスタGX MCP-T700)を用いて、50mm間の体積抵抗[Ω]を測定した。体積抵抗率[Ω・cm]=抵抗[Ω]×断面積(塗工幅(5mm)×塗工厚み(20μm))/長さ(50mm)を算出し、得られた体積抵抗率を「初期抵抗」とした。測定結果を表3に示す。初期抵抗の許容可能な範囲は、10×10-5Ω・cm未満である。
【0128】
[4.4.2]5回折曲げ時抵抗
評価用サンプル10に折り曲げ操作を繰り返し5回行った。「折り曲げ操作」は、評価用サンプル10の塗工物12の長手方向の中央部を、切断線C2-C2(
図1参照)(以下、「折り曲げ基線C2-C2」ともいう)に沿って、初期面に対して山折りに180°折曲げ、次いで、塗工物12の長手方向の中央部を、折り曲げ基線C2-C2に沿って、初期面に対して谷折りに180°℃折曲げる一連の操作を示す。「初期面」とは、折り曲げ操作が施されていない状態(すなわち、初期状態)の評価用サンプル10の塗工物12の平面状の表面を示す。次いで、初期抵抗の測定方法と同様にして、50mm間の体積抵抗[Ω]を測定した。下記式(6)により、体積抵抗率[Ω・cm]を算出し、得られた体積抵抗の測定値を「5回折曲げ時抵抗」とした。測定結果を表3に示す。5回折曲げ時抵抗の許容可能な範囲は、10×10
-5Ω・cm以下である。
【0129】
式(6):体積抵抗率[Ω・cm]=抵抗[Ω]×断面積(塗工幅(5mm)×塗工厚み(20μm))/長さ(50mm)
【0130】
【0131】
表1中、「EC(x1)」とは、エチルセルロース(x1)を示す。「A-PE(x2)」とは、非晶性ポリエステル(x2)を示す。「Texanol(c1)」とは、テキサノール(c1)を示す。「DO(c3)」とは、シュウ酸ジエチル(c3)を示す。「DGME(c4)」とは、ブチルジグリコール(c4)を示す。「DM(c5)」は、マレイン酸ジメチル(c5)を示す。「ΔHv」とは、混合溶媒の蒸発エンタルピーを示す。「Ra1」とは、バインダ樹脂と有機溶媒(C)のHSP距離を示す。「Ra2」とは、バインダ樹脂とMB不織布のHSP距離を示す。「導電ペーストの固形分」とは、導電ペーストの総量に対する導電ペーストの固形の質量の割合(質量%)を示す。
【0132】
比較例1及び比較例2の導電ペーストは、ゴム(A)を含有しなかった。更に、比較例1及び比較例2では、HSP距離Ra1が、2.5(MPa)0.5以下ではなかった。そのため、比較例1及び比較例2では、不織布への浸透度が15%以上であり、初期抵抗は10×10-5Ω・cm以下であったものの、5回折曲げ時抵抗は、10×10-5Ω・cm以下ではなく、一部断線した。
比較例3及び比較例4の導電ペーストの粘度は、30Pa・s~300Pa・sの範囲内ではなかった。そのため、比較例3は、粘度が高く線幅が0.5mm程度の導電配線の印刷ができなかった。比較例4では、初期抵抗は10×10-5Ω・cm以下ではなかった。
比較例5~比較例7の導電ペーストは、複数の樹枝状の導電性粒子(B)を含有しなかった。そのため、比較例5では、不織布への浸透度が15%以上であり、初期抵抗は10×10-5Ω・cm以下ではなく、5回折曲げ時抵抗も、10×10-5Ω・cm以下ではなかく、一部断線した。比較例6及び比較例7では、乾きにくさの評価が「B」であった。すなわち、比較例6及び比較例7の導電ペーストでは、スクリーン印刷をすることができなかった。
これらの結果から、比較例1~比較例7の導電ペーストは、スクリーン印刷によって、不織布の表面に、初期抵抗が低く、かつ屈曲しても断線しにくい導電配線を印刷することができる導電ペーストではないことがわかった。
【0133】
実施例1~実施例7では、導電ペーストは、ゴム(A)と、複数の樹枝状の導電性粒子(B)と、有機溶媒(C)と、を含有した。導電ペーストの粘度は、30Pa・s~300Pa・sであった。HSP距離Ra1は、2.5(MPa)0.5以下であった。そのため、実施例1~実施例7では、初期抵抗は10×10-5Ω・cm以下であり、5回折曲げ時抵抗は、10×10-5Ω・cm以下であった。実施例1~実施例5の乾きにくさの評価は、表1の通り「A」又は「B」であった。
これらの結果、実施例1~実施例7の導電ペーストは、スクリーン印刷によって、不織布の表面に、初期抵抗が低く、かつ屈曲しても断線しにくい導電配線を印刷することができる導電ペーストであることがわかった。