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特開2024-161853電着塗装用塗料、電着塗装用塗料の製造方法及び絶縁材の製造方法
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  • 特開-電着塗装用塗料、電着塗装用塗料の製造方法及び絶縁材の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161853
(43)【公開日】2024-11-20
(54)【発明の名称】電着塗装用塗料、電着塗装用塗料の製造方法及び絶縁材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 179/04 20060101AFI20241113BHJP
   C09D 5/44 20060101ALI20241113BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20241113BHJP
【FI】
C09D179/04
C09D5/44
C09D7/61
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076955
(22)【出願日】2023-05-08
(71)【出願人】
【識別番号】521166319
【氏名又は名称】株式会社リグノマテリア
(71)【出願人】
【識別番号】518314464
【氏名又は名称】合同会社Hide Technology
(71)【出願人】
【識別番号】501218566
【氏名又は名称】学校法人片柳学園
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】見正 大祐
(72)【発明者】
【氏名】船山 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】菊池 英行
(72)【発明者】
【氏名】山下 俊
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038DJ021
4J038DJ031
4J038GA06
4J038GA09
4J038HA166
4J038HA446
4J038JA17
4J038JA25
4J038JA30
4J038KA06
4J038KA20
4J038LA05
4J038MA10
4J038MA14
4J038NA14
4J038NA21
4J038NA24
4J038NA25
4J038PA04
4J038PA19
4J038PB06
4J038PB09
4J038PC02
(57)【要約】
【課題】ポリイミド系前駆体化合物及び無機粒子を含んでいても塗装性に優れる電着塗装用塗料の提供。
【解決手段】溶剤と、一般式(A1)に示す構造を有するポリイミド系前駆体化合物と、無機粒子と、を含有する電着塗装用塗料。一般式(A1)中、Rは脂肪族基及び芳香族基からなる群より選択される少なくとも一種を含む有機基を、Arは芳香族基を含む有機基を、Arは芳香族基を含む有機基を表す。
【化1】

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶剤と、
下記一般式(A1)に示す構造を有するポリイミド系前駆体化合物と、
無機粒子と、
を含有する電着塗装用塗料。
【化1】

(一般式(A1)中、Rは脂肪族基及び芳香族基からなる群より選択される少なくとも一種を含む有機基を、Arは芳香族基を含む有機基を、Arは芳香族基を含む有機基を表す。)
【請求項2】
前記一般式(A1)において前記Rで表される脂肪族基及び芳香族基からなる群より選択される少なくとも一種を含む有機基は、炭素数が1以上10以下である、請求項1に記載の電着塗装用塗料。
【請求項3】
前記一般式(A1)において、前記Arで表される芳香族基を含む有機基は主鎖に直鎖状及び分岐鎖状の脂肪族基並びにスルホニル基を含まない構造を有し、且つ前記Arで表される芳香族基を含む有機基は主鎖に直鎖状及び分岐鎖状の脂肪族基並びにスルホニル基を含まない構造を有する、請求項1に記載の電着塗装用塗料。
【請求項4】
ゼータ電位の絶対値が5mV以上である、請求項1に記載の電着塗装用塗料。
【請求項5】
前記無機粒子が、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、及び酸化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種を含む粒子である、請求項1に記載の電着塗装用塗料。
【請求項6】
テトラカルボン酸二無水物誘導体及びエステル化剤を反応させて、エステル化されたテトラカルボン酸二無水物誘導体を調製する工程と、
溶剤A中で、前記エステル化されたテトラカルボン酸二無水物誘導体及びジアミン化合物を反応させて、下記一般式(A1)に示す構造を有するポリイミド系前駆体化合物を合成し、前記ポリイミド系前駆体化合物及び溶剤Aを含有する第1混合液を調製する工程と、
前記第1混合液と、無機粒子と、を混合して第2混合液を得る工程と、
前記第2混合液と、溶剤Bと、を混合する工程と、を含む電着塗装用塗料の製造方法。
【化2】

(一般式(A1)中、Rは脂肪族基及び芳香族基からなる群より選択される少なくとも一種を含む有機基を、Arは芳香族基を含む有機基を、Arは芳香族基を含む有機基を表す。)
【請求項7】
前記エステル化剤が水酸基を有する沸点250℃以下の化合物である、請求項6に記載の電着塗装用塗料の製造方法。
【請求項8】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の電着塗装用塗料を電着塗装して塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を焼成する工程と、を有する絶縁材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電着塗装用塗料、電着塗装用塗料の製造方法及び絶縁材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モータなどの電気機器に用いられる電線としては、絶縁皮膜を有する絶縁電線が用いられている。電気自動車及びハイブリット車の駆動モータのように、高効率、高出力、及び小型化が求められるモータ用の電線には、コイルに占める導体占有率の高い平角エナメル線が用いられている。そして、平角エナメル線の製造には、電着塗装法が用いられることがある(例えば、特許文献1~5を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第1127047号公報
【特許文献2】特公昭54-41617号公報
【特許文献3】特許第2098020号公報
【特許文献4】特許第475189号公報
【特許文献5】特許第1311182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来から電着塗装によって絶縁材(例えば絶縁膜)を形成するための電着塗装用塗料にポリイミド樹脂が用いられており、このポリイミド樹脂として、全芳香族系のポリイミド樹脂などの溶剤への溶解性が低い樹脂も用いられている。こうした溶剤への溶解性が低い樹脂を用いる場合、溶剤への溶解性を高めるためにポリイミド前駆体であるポリアミド酸の状態で塗料とし、この塗料を用いて塗膜を形成した後に、焼成等によってイミド化することで絶縁材を形成することが行われている。
しかし、ポリイミド前駆体を含む電着塗装用塗料に無機粒子を添加した場合、ポリイミド前駆体と無機粒子とが凝集し、塗料が増粘して、塗装性(塗膜の形成性)に劣ることがあった。
【0005】
そこで本開示の課題は、ポリイミド系前駆体化合物及び無機粒子を含んでいても塗装性に優れる電着塗装用塗料、当該電着塗装用塗料の製造方法、及び当該電着塗装用塗料を用いる絶縁材の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段には、以下の手段が含まれる。
<1>
溶剤と、
下記一般式(A1)に示す構造を有するポリイミド系前駆体化合物と、
無機粒子と、
を含有する電着塗装用塗料。
【0007】
【化1】
【0008】
(一般式(A1)中、Rは脂肪族基及び芳香族基からなる群より選択される少なくとも一種を含む有機基を、Arは芳香族基を含む有機基を、Arは芳香族基を含む有機基を表す。)
<2>
前記一般式(A1)において前記Rで表される脂肪族基及び芳香族基からなる群より選択される少なくとも一種を含む有機基は、炭素数が1以上10以下である、<1>に記載の電着塗装用塗料。
<3>
前記一般式(A1)において、前記Arで表される芳香族基を含む有機基は主鎖に直鎖状及び分岐鎖状の脂肪族基並びにスルホニル基を含まない構造を有し、且つ前記Arで表される芳香族基を含む有機基は主鎖に直鎖状及び分岐鎖状の脂肪族基並びにスルホニル基を含まない構造を有する、<1>又は<2>に記載の電着塗装用塗料。
<4>
ゼータ電位の絶対値が5mV以上である、<1>~<3>のいずれか1項に記載の電着塗装用塗料。
<5>
前記無機粒子が、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、及び酸化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種を含む粒子である、<1>~<4>のいずれか1項に記載の電着塗装用塗料。
<6>
テトラカルボン酸二無水物誘導体及びエステル化剤を反応させて、エステル化されたテトラカルボン酸二無水物誘導体を調製する工程と、
溶剤A中で、前記エステル化されたテトラカルボン酸二無水物誘導体及びジアミン化合物を反応させて、下記一般式(A1)に示す構造を有するポリイミド系前駆体化合物を合成し、前記ポリイミド系前駆体化合物及び溶剤Aを含有する第1混合液を調製する工程と、
前記第1混合液と、無機粒子と、を混合して第2混合液を得る工程と、
前記第2混合液と、溶剤Bと、を混合する工程と、を含む電着塗装用塗料の製造方法。
【0009】
【化2】
【0010】
(一般式(A1)中、Rは脂肪族基及び芳香族基からなる群より選択される少なくとも一種を含む有機基を、Arは芳香族基を含む有機基を、Arは芳香族基を含む有機基を表す。)
<7>
前記エステル化剤が水酸基を有する沸点250℃以下の化合物である、<6>に記載の電着塗装用塗料の製造方法。
<8>
<1>~<5>のいずれか1項に記載の電着塗装用塗料を電着塗装して塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を焼成する工程と、を有する絶縁材の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、ポリイミド系前駆体化合物及び無機粒子を含んでいても塗装性に優れる電着塗装用塗料、当該電着塗装用塗料の製造方法、及び当該電着塗装用塗料を用いる絶縁材の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例及び比較例に使用した電着装置例を示す模式的図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の一例である実施形態について説明する。これらの説明および実施例は、実施形態を例示するものであり、発明の範囲を制限するものではない。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0014】
各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。
組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
「工程」とは、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
【0015】
<電着塗装用塗料>
本開示に係る電着塗装用塗料(以下、「本開示塗料」ともいう)は、溶剤と、後述の一般式(A1)に示す構造を有するポリイミド系前駆体化合物(以下、「特定ポリイミド系前駆体化合物」ともいう)と、無機粒子と、を含有する。
【0016】
本開示塗料は、上記構成により、ポリイミド系前駆体化合物及び無機粒子を含んでいても塗装性(塗膜の形成性)に優れる電着塗装用塗料となる。
これは、以下の理由によるものと推察される。
【0017】
従来から、絶縁材(例えば絶縁膜)を形成するための電着塗装用塗料において、全芳香族系のポリイミド樹脂などの溶剤への溶解性が低い樹脂が用いられている。こうした溶剤への溶解性が低い樹脂を用いる場合、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸の状態で溶剤に溶解させることで塗料を調製することが行われている。そして、この塗料を用いて塗膜を形成した後に、焼成等によってイミド化することで絶縁材が形成される。
【0018】
一方で電着塗装用塗料に対し、例えば形成する絶縁材の厚さの均一性を高めたり、部分放電による絶縁材の有機成分の摩耗を低減したりする観点から、無機粒子を添加する方法が考えられる。しかし、ポリイミド系前駆体化合物を含む電着塗装用塗料にさらに無機粒子を添加した場合、ポリイミド前駆体と無機粒子とが凝集し、塗料が増粘し、場合によってはゲル化することもあった。その結果、塗装性(塗膜の形成性)が低下し、塗膜を形成できないこともあった。
【0019】
この原因については、例えばポリイミド系前駆体化合物に含まれるカルボン酸基(-COOH)が無機粒子と電気的に引き合うことで、ポリイミド系前駆体化合物と無機粒子とが凝集することが、理由の一つとして考えられる。なお、特にゼータ電位がプラスの無機粒子(例えばベーマイトアルミナ等)においては、ポリイミド系前駆体化合物と凝集しやすい傾向が高い。
【0020】
これに対し本開示塗料は、後述の一般式(A1)に示す構造を有するポリイミド系前駆体化合物(特定ポリイミド系前駆体化合物)を用いている。特定ポリイミド系前駆体化合物は、カルボン酸基(-COOH)の部分のHが置換されて脂肪族基及び芳香族基からなる群より選択される少なくとも一種を含む有機基となった構造、つまり一般式(A1)におけるRが脂肪族基及び芳香族基の少なくとも一方を含む有機基である構造を有している。そのため、ポリイミド系前駆体化合物と無機粒子とが電気的に引き合って凝集することが抑制され、優れた塗装性が得られるものと考えられる。
【0021】
以下、本開示塗料を構成する各成分について説明する。
【0022】
(溶剤)
溶剤としては、例えば、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、非プロトン系極性溶剤、水等が挙げられる。
【0023】
エーテル系溶剤は、一分子中にエーテル結合を持つ溶剤である。
エーテル系溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、トリオキサン、1,2-ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。
【0024】
ケトン系溶剤は、一分子中にケトン基を持つ溶剤である。
ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0025】
アルコール系溶剤は、一分子中にアルコール性水酸基を持つ溶剤である。
アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、tert-ブチルアルコール、エチレングリコール、エチレングリコールのモノアルキルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールのモノアルキルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールのモノアルキルエーテル、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-ブテン-1,4-ジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、グリセリン、2-エチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール等が挙げられる。
【0026】
非プロトン性極性溶剤は、極性が高く酸性水素をもたない溶媒のことである。
非プロトン性極性溶剤として、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチレンホスホルアミド(HMPA)、N-メチルカプロラクタム、N-アセチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)、N,N’-ジメチルプロピレン尿素、テトラメチル尿素、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等が挙げられる。
【0027】
溶剤としては、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0028】
溶剤の含有量は、電着塗装用塗料全体に対して、50質量%以上98質量%以下であることが好ましく、60質量%以上95質量%以下であることがより好ましく、70質量%以上85質量%以下であることが更に好ましい。
【0029】
溶剤は、2種以上を混合した混合溶液であることが好ましい。
溶剤は、後述する、溶剤A及び溶剤Bを含むことが好ましい。
溶剤Aに対する溶剤Bの比(溶剤B/溶剤A)は、質量基準で、0.1以上4.0以下であることが好ましく、0.5以上3.0以下であることがより好ましく、0.8以上2.5以下であることが更に好ましい。
【0030】
(特定ポリイミド系前駆体化合物)
本開示塗料は、下記一般式(A1)に示す構造を有するポリイミド系前駆体化合物を含む。
【0031】
【化3】
【0032】
(一般式(A1)中、Rは脂肪族基及び芳香族基からなる群より選択される少なくとも一種を含む有機基を、Arは芳香族基を含む有機基を、Arは芳香族基を含む有機基を表す。)
【0033】
ここで、脂肪族基及び芳香族基からなる群より選択される少なくとも一種を含む有機基とは、構造中に脂肪族基及び芳香族基の少なくとも一方を含む基を意味し、さらに炭素(C)及び水素(H)以外の元素(例えばO、F、N、S等)を含んでもよい。また、芳香族基を含む有機基とは、構造中に芳香族基を含む基を意味し、さらに基の構造中に脂肪族基を含んでもよく、また炭素(C)及び水素(H)以外の元素(例えばO、F、N、S等)を含んでもよい。
【0034】
で表される脂肪族基及び芳香族基からなる群より選択される少なくとも一種を含む有機基は、例えば後述するエステル化剤に由来する脂肪族基及び芳香族基からなる群より選択される少なくとも一種を含む有機基とすることができる。
で表される脂肪族基及び芳香族基からなる群より選択される少なくとも一種を含む有機基の炭素数は、1以上10以下であることが好ましく、1以上8以下であることがより好ましく、1以上6以下であることがさらに好ましい。脂肪族基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよく、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。
で表される脂肪族基及び芳香族基からなる群より選択される少なくとも一種を含む有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、2-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、フェニル基、及びベンジル基(Ph-CH-:Phはフェニル基を表す)等が挙げられる。これらの中でもメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、2-ブチル基、フェニル基、及びベンジル基が好ましい。
【0035】
エステル化剤の詳細については、後述する。
【0036】
Arで表される芳香族基を含む有機基は、例えばテトラカルボン酸二無水物に由来する有機基とすることができる。つまり、テトラカルボン酸二無水物におけるカルボン酸無水物基(-C(=O)-O-C(=O)-)を除いた4価の基とすることができる。このテトラカルボン酸二無水物としては、後述する「テトラカルボン酸二無水物」、「エステル基を有するテトラカルボン酸二無水物」、「アミド結合を有するテトラカルボン酸二無水物」及び「式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物」が挙げられる。
ただし、Arは、本開示塗料を用いて得られる絶縁材の耐熱性を向上させる観点から、主鎖に直鎖状及び分岐鎖状の脂肪族基並びにスルホニル基(-S(=O)-)を含まないことが好ましい。なお、Arにおける「主鎖」とは、4価の基であるArの構造中において、4つの結合手(一般式(A1)中において-C(=O)-基に結合する4つの結合手)同士を直接繋ぐ鎖を意味する。換言すると、側鎖でない部分を指す。また、主鎖に含まないことが好ましい脂肪族基は上記の通り「直鎖状及び分岐鎖状」の脂肪族基であり、環状の脂肪族基は主鎖に含まないことが好ましい基に該当しない。
【0037】
Arで表される芳香族基を含む有機基は、例えばジアミン化合物に由来する有機基とすることができる。つまり、ジアミン化合物におけるアミノ基(-NH)を除いた2価の基とすることができる。このジアミン化合物としては、後述する「ジアミン化合物」が挙げられる。
ただし、Arは、本開示塗料を用いて得られる絶縁材の耐熱性を向上させる観点から、主鎖に直鎖状及び分岐鎖状の脂肪族基並びにスルホニル基(-S(=O)-)を含まないことが好ましい。なお、Arにおける「主鎖」とは、2価の基であるArの構造中において、2つの結合手同士を直接繋ぐ鎖を意味する。換言すると、側鎖でない部分を指す。
【0038】
特定ポリイミド系前駆体化合物は、化合物中に含まれる全繰り返し単位の数に対して、一般式(A1)に示す構造の繰り返し単位の数の割合(%)が、50%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。
ポリイミド系前駆体化合物における「繰り返し単位」とは、重合体であるポリイミド系前駆体化合物の重合鎖上において、2個のアミド結合(-CO-NH-)毎に繰り返される構造の単位を意味する。例えば、ポリイミド系前駆体化合物がテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との重合体である場合には、2個のアミド結合、1個のテトラカルボン酸二無水物の残基、及び1個のジアミン化合物の残基により、1個の繰り返し単位が構成される。
【0039】
特定ポリイミド系前駆体化合物は、熱イミド化又は化学イミド化することにより、-CO-NH-結合及び-COOR基を閉環してポリイミドとすることができる。特定ポリイミド系前駆体化合物は、エステル化されたテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを重合して得られる。
【0040】
・特定ポリイミド系前駆体化合物の種類
特定ポリイミド系前駆体化合物は、例えば、ポリイミド前駆体、ポリエステルイミド前駆体、ポリエーテルイミド前駆体、及びポリアミドイミド前駆体からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
ここで、ポリイミド前駆体とは、特定ポリイミド系前駆体化合物のうち、前記一般式(A1)に示す構成単位に、エステル基、エーテル基及びアミド基を含まないものをいう。
ポリエステルイミド前駆体とは、特定ポリイミド系前駆体化合物のうち、前記一般式(A1)に示す構成単位に、さらにエステル基を含むものをいう。
ポリエーテルイミド前駆体とは、特定ポリイミド系前駆体化合物のうち、前記一般式(A1)に示す構成単位に、さらにエーテル基を含むものをいう。
ポリアミドイミド前駆体とは、特定ポリイミド系前駆体化合物のうち、前記一般式(A1)に示す構成単位に、さらにアミド基を含むものをいう。
【0041】
・ポリイミド前駆体
特定ポリイミド系前駆体化合物の1種であるポリイミド前駆体について説明する。
ポリイミド前駆体は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを重合して得られる。なお、テトラカルボン酸二無水物は、ジアミン化合物と重合する前にエステル化剤によってエステル化されていることが好ましい。エステル化の方法については、後述する。
【0042】
まず、エステル化される前のテトラカルボン酸二無水物について説明する。
テトラカルボン酸二無水物としては芳香族系の化合物、つまり特定ポリイミド系前駆体化合物となった際に一般式(A1)におけるArに芳香族基を含む有機基を導入し得る化合物が用いられる。
芳香族系テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ジフタル酸無水物(BPADA)、3,3’,4,4’-ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’-パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p-フェニレン-ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m-フェニレン-ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)-4,4’-ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)-4,4’-ジフェニルメタン二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)等を挙げられる。
【0043】
芳香族系テトラカルボン酸二無水物としては、例えば以下に示すテトラカルボン酸二無水物が好ましい。
【0044】
【化4】
【0045】
ただし、本開示塗料を用いて得られる絶縁材の耐熱性の向上の観点から、芳香族系テトラカルボン酸二無水物としては、カルボン酸無水物基(-C(=O)-O-C(=O)-)を除いた部分の構造において、主鎖に直鎖状及び分岐鎖状の脂肪族基並びにスルホニル基(-S(=O)-)を含まない化合物が好ましい。この観点から、芳香族系テトラカルボン酸二無水物としては、上記BTDA、PMDA、及びBPDAがより好ましい。
【0046】
なお、テトラカルボン酸二無水物として、前述の芳香族系テトラカルボン酸二無水物に加えて、さらに脂肪族テトラカルボン酸二無水物を併用することもできる。ただし、特定ポリイミド系前駆体化合物の合成に用いる全てのテトラカルボン酸二無水物のうち、脂肪族テトラカルボン酸二無水物の占める割合が10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましく、1モル%以下であることがさらに好ましく、0モル%であること(つまり脂肪族テトラカルボン酸二無水物を用いないこと)が特に好ましい。
【0047】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6-トリカルボキシノルボナン-2-酢酸二無水物、2,3,4,5-テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]-オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物;1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-メチル-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-8-メチル-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン等の芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0048】
次いで、ジアミン化合物について説明する。
ジアミン化合物は、分子構造中に2つのアミノ基を有するジアミン化合物である。ジアミン化合物としては、芳香族系の化合物、つまり特定ポリイミド系前駆体化合物となった際に一般式(A1)におけるArに芳香族基を含む有機基を導入し得る化合物が用いられる。
【0049】
芳香族ジアミン化合物としては、例えば、p-フェニレンジアミン(PDA)、m-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン(DAM)、4,4’-ジアミノジフェニルエタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフォン、1,5-ジアミノナフタレン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-Tolidine)、5-アミノ-1-(4’-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチルインダン、6-アミノ-1-(4’-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチルインダン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、3,5-ジアミノ-3’-トリフルオロメチルベンズアニリド、3,5-ジアミノ-4’-トリフルオロメチルベンズアニリド、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,7-ジアミノフルオレン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’-メチレン-ビス(2-クロロアニリン)、2,2’,5,5’-テトラクロロ-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジクロロ-4,4’-ジアミノ-5,5’-ジメトキシビフェニル、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)-ビフェニル(BAPB)、2,2’-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(AHPP)、1,3’-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、4,4’-(p-フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’-(m-フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’-ビス[4-(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’-ビス[4-(4-アミノ-2-トリフルオロメチル)フェノキシ]-オクタフルオロビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン(AHPS)、2,4-ジアミノトルエン(DAT)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジエチルアニリン)(MBDEA)等の芳香族ジアミン;ジアミノテトラフェニルチオフェン等の芳香環に結合された2個のアミノ基と当該アミノ基の窒素原子以外のヘテロ原子を有する芳香族ジアミン;等が挙げられる。
【0050】
また、芳香族ジアミン化合物に加えて芳香族ジイソシアネートを併用してもよく、芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等が挙げられる。
【0051】
芳香族ジアミン化合物及び芳香族ジイソシアネートとしては、例えば以下に示すジアミン化合物及びジイソシアネートが好ましい。
【0052】
【化5】
【0053】
ただし、本開示塗料を用いて得られる絶縁材の耐熱性の向上の観点から、芳香族ジアミン化合物としては、アミノ基を除いた部分の構造において、主鎖に直鎖状及び分岐鎖状の脂肪族基並びにスルホニル基(-S(=O)-)を含まない化合物が好ましい。この観点から、芳香族ジアミン化合物としては、上記ODA、BAPB、PDA、DAT、及びm-Tolidineがより好ましい。
【0054】
なお、ジアミン化合物として、前述の芳香族ジアミン化合物及びその誘導体に加えて、さらに脂肪族ジアミン化合物を併用することもできる。ただし、特定ポリイミド系前駆体化合物の合成に用いる全てのジアミン化合物のうち、脂肪族ジアミン化合物の占める割合が10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましく、1モル%以下であることがさらに好ましく、0モル%であること(つまり脂肪族ジアミン化合物を用いないこと)が特に好ましい。
【0055】
脂肪族ジアミン化合物としては、例えば、1,1-メタキシリレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4-ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、イソフォロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ-4,7-メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6,2,1,02.7]-ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族ジアミン(脂環式ジアミンも含む)等が挙げられる。
【0056】
テトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて併用してもよい。
【0057】
・ポリエステルイミド前駆体
特定ポリイミド系前駆体化合物の1種であるポリエステルイミド前駆体について説明する。
ポリエステルイミド前駆体は、エステル基を有するテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを重合して得られる。なお、エステル基を有するテトラカルボン酸二無水物は、ジアミン化合物と重合する前にエステル化剤によってエステル化されていることが好ましい。
【0058】
テトラカルボン酸二無水物が含有するエステル基の数は、特に限定されないが、1つ以上4つ以下であることが好ましく、2つ以上3つ以下であることがより好ましく、2つであることが更に好ましい。
【0059】
エステル基を有するテトラカルボン酸二無水物は、トリカルボン酸無水物及びジオールを反応させて得たものであることが好ましい。
具体的には、例えば、下記式(1)で示されるものであることが好ましい。
【0060】
【化6】
【0061】
(式(1)中、Xはそれぞれ独立に3価の有機基を示し、Yは2価の有機基を示す。)
【0062】
式中、Xはトリカルボン酸無水物よりカルボキシ基、及び1,3-オキソ-2-オキサプロピレン(-CO-O-CO-)基を除いたその残基であり、Yはジオールから2つのヒドロキシル基を除いたその残基である。
【0063】
エステル基を有するテトラカルボン酸二無水物の合成に用いられる、トリカルボン酸無水物としては、例えば、ベンゼントリカルボン酸無水物(1,2,3-ベンゼントリカルボン酸無水物、トリメリット酸無水物[1,2,4-ベンゼントリカルボン酸無水物]等)、ナフタレントリカルボン酸無水物(1,2,4-ナフタレントリカルボン酸無水物、1,4,5-ナフタレントリカルボン酸無水物、2,3,6-ナフタレントリカルボン酸無水物、1,2,8-ナフタレントリカルボン酸無水物等)、3,4,4’-ベンゾフェノントリカルボン酸無水物、3,4,4’-ビフェニルエーテルトリカルボン酸無水物、3,4,4’-ビフェニルトリカルボン酸無水物、2,3,2’-ビフェニルトリカルボン酸無水物、3,4,4’-ビフェニルメタントリカルボン酸無水物、3,4,4’-ビフェニルスルホントリカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0064】
エステル基を有するテトラカルボン酸二無水物の合成に用いられる、ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ドデカンジオールなど
の脂肪族ジオール;シクロヘキサンジオール、水添キシリレングリコール、等の脂環式ジオール;キシリレングリコール等の芳香族ジオール;2価のアルコールにアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等)を付加重合させたポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0065】
エステル基を有するテトラカルボン酸二無水物の合成に用いられる、ジアミン化合物の例示は、既述のものと同一である。
【0066】
・ポリアミドイミド前駆体
特定ポリイミド系前駆体化合物の1種であるポリアミドイミド前駆体について説明する。
ポリアミドイミド前駆体は、アミド基を有するテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを重合して得られる。なお、アミド基を有するテトラカルボン酸二無水物は、ジアミン化合物と重合する前にエステル化剤によってエステル化されていることが好ましい。
【0067】
テトラカルボン酸二無水物が含有するアミド基の数は、特に限定されないが、1つ以上4つ以下であることが好ましく、2つ以上3つ以下であることがより好ましく、2つであることが更に好ましい。
【0068】
アミド基を有するテトラカルボン酸二無水物の合成に用いられる、ジアミン化合物としては、既述のものと同一であることが好ましい。
アミド基を有するテトラカルボン酸二無水物は、トリメリット酸無水物クロライド等のトリカルボン酸無水物の酸塩化物とジアミン化合物とを反応させて得たものであることが好ましい。
具体的には、例えば、下記式(2)で示されるものであることが好ましい。
【0069】
【化7】
【0070】
式(2)中、Xはそれぞれ独立に3価の有機基を示し、Yは2価の有機基を示す。
【0071】
式(2)中、Xはトリカルボン酸無水物よりカルボキシ基、及び1,3-オキソ-2-オキサプロピレン(-CO-O-CO-)基を除いたその残基、又はトリカルボン酸無水物の酸塩化物より-COOCl基、及び1,3-オキソ-2-オキサプロピレン(-CO-O-CO-)基を除いたその残基であり、Yはジイソシアネートから2つのイソシアネート基を除いたその残基、又はジアミン化合物から2つのアミノ基を除いたその残基である。
【0072】
アミド基を有するテトラカルボン酸二無水物の合成に用いられる、トリカルボン酸無水物としては、例えば、上述のエステル基を有するテトラカルボン酸二無水物の合成に用いられるトリカルボン酸無水物と同様のものが挙げられる。
アミド基を有するテトラカルボン酸二無水物の合成に用いられる、トリカルボン酸としては、1,2,3-ベンゼントリカルボン酸、トリメリット酸(1,2,4-ベンゼントリカルボン酸)、ナフタレントリカルボン酸(1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、1,4,5-ナフタレントリカルボン酸、2,3,6-ナフタレントリカルボン酸、1,2,8-ナフタレントリカルボン酸等)、3,4,4’-ベンゾフェノントリカルボン酸、3,4,4’-ビフェニルエーテルトリカルボン酸、3,4,4’-ビフェニルトリカルボン酸、2,3,2’-ビフェニルトリカルボン酸、3,4,4’-ビフェニルメタントリカルボン酸、3,4,4’-ビフェニルスルホントリカルボン酸等が挙げられる。
また、トリカルボン酸無水物の酸塩化物としては、例えば、上述のエステル基を有するテトラカルボン酸二無水物の合成に用いられるトリカルボン酸無水物の酸塩化物が挙げられる。
【0073】
アミド基を有するテトラカルボン酸二無水物の合成に用いられる、ジイソシアネートとしては、例えば、メタフェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、o-トリジンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、4,4’-オキシビス(フェニルイソシアネート)、4,4’-ジイソシアネートジフェニルメタン、ビス[4-(4-イソシアネートフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2′-ビス[4-(4-イソシアネートフェノキシ)フェニル]プロパン、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジエチルジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、m-キシレンジイソシアネート、p-キシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
アミド基を有するテトラカルボン酸二無水物の合成に用いられるジアミン化合物としては、例えば、上述のポリイミド前駆体の合成に用いられるジアミン化合物と同一のものが挙げられる。
【0074】
・特定ポリイミド系前駆体化合物の分子量
特定ポリイミド系前駆体化合物の数平均分子量は、5000以上100000以下であることがよく、より好ましくは10000以上70000以下、更に好ましくは20000以上50000以下である。
特定ポリイミド系前駆体化合物の数平均分子量を5000以上とすることで、形成された皮膜の強度が向上しやすい。一方、特定ポリイミド系前駆体化合物の数平均分子量を100000以下とすると塗料の高粘度化が抑制される。上記範囲とすると、柔軟性などの機械的物性が向上し、絶縁電線、絶縁部品の加工がしやすく、塗料化も容易である。
【0075】
特定ポリイミド系前駆体化合物の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法で測定される値である。
【0076】
特定ポリイミド系前駆体化合物の含有量は、電着塗装用塗料全体に対して、0.1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、1質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上20質量%以下であることが更に好ましい。
【0077】
(無機粒子)
本開示塗料は、無機粒子を含有する。
無機粒子は、金属、及び金属酸化物からなる群から選択される少なくとも1種を含む粒子であることが好ましい。
【0078】
金属としては特に限定されず、例えば、アルミニウム、金、銀、白金、パラジウム、亜鉛、鉄、銅、チタン、マグネシウムなどが挙げられる。
金属酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化銀、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化銅
、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン、酸化マグネシウムなどが挙げられる。
なお、金属酸化物は水和物形成しうる場合、金属酸化物はその水和物を含むこととする。例えば、酸化アルミニウムは、酸化アルミニウム1水和物(すなわち、ベーマイトアルミナ)を形成しうるため、酸化アルミニウム1水和物は酸化アルミニウムの1種である。
【0079】
塗膜の厚さの均一性の観点から、無機粒子は、金属酸化物を含む粒子であることが好ましく、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、及び酸化マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種を含む粒子であることがより好ましく、酸化アルミニウムを含む粒子であることが更に好ましい。
【0080】
塗膜の厚さの均一性の観点から、無機粒子の粒径は、1nm以上50nm以下であることが好ましく、2nm以上40nm以下であることがより好ましく、3nm以上30nm以下であることが更に好ましい。
【0081】
無機粒子の粒径は株式会社堀場製作所製、ナノ粒子解析装置nanoPartica SZ-100により測定する。
以下に無機粒子の粒径の測定手順について具体的に説明する。
無機粒子を含む分散液をその溶媒組成と同じ配合の溶媒で0.01%の濃度に希釈した後、ガラスセルに入れ、粒子径測定を実施する。
【0082】
塗膜の厚さの均一性の観点から、無機粒子のゼータ電位の絶対値は5mV以上であることが好ましく、20mV以上であることがより好ましく、30mV以上であることが更に好ましい。
無機粒子のゼータ電位の絶対値の上限値は特に限定されないが、例えば、110mV以下であってもよい。
【0083】
無機粒子のゼータ電位の絶対値は株式会社堀場製作所製、ナノ粒子解析装置nanoPartica SZ-100により測定する。
以下に無機粒子のゼータ電位の絶対値の測定手順について具体的に説明する。
測定対象とする無機粒子を含む分散液をその溶媒組成と同じ配合の溶媒で0.01%の濃度に希釈し、測定溶液を調製する。測定溶液をガラスセルに入れ、ゼータ電位測定を行う。
【0084】
無機粒子の含有量は、樹脂の含有量に対して、1質量%以上80質量%以下であることが好ましく2質量%以上70質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上60質量%以下であることが更に好ましい。
【0085】
(その他の成分)
本実施形態に係る塗料は、本願発明の効果を妨げない範囲で、公知慣用の種々の塗料用添加剤を含有することができる。塗料用添加剤としては、例えば、増粘剤、レベリング剤、チクソ化剤、消泡剤、凍結安定剤、艶消し剤、架橋反応触媒、皮張り防止剤、分散剤、湿潤剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤、可塑剤、潤滑剤、還元剤、防腐剤、防黴剤、消臭剤、黄変防止剤、静電防止剤又は帯電調整剤等が挙げられる。
【0086】
(ゼータ電位の絶対値)
本開示塗料のゼータ電位の絶対値は、塗膜の厚さの均一性の観点から、5mV以上であることが好ましく、20mV以上であることがより好ましく、30mV以上、40mV以上、又は50mV以上であることがさらに好ましい。
本開示塗料のゼータ電位の絶対値の上限値は特に限定されないが、例えば、110mV以下であってもよく、5mV以上110mV以下であってもよく、20mV以上90mV以下であってもよく、30mV以上80mV以下であってもよい。
【0087】
本開示塗料のゼータ電位の絶対値は株式会社堀場製作所製、ナノ粒子解析装置nanoPartica SZ-100により測定する。
以下に本開示塗料のゼータ電位の絶対値の測定手順について具体的に説明する。
測定対象の塗料を、測定対象の塗料に含まれる溶剤と同一組成の溶剤で0.01質量%の濃度に希釈し(すなわち、樹脂及び無機粒子の合計の含有量が、測定溶液全体に対し0.01質量%となる様に希釈する。)測定溶液とした後、ガラスセルに入れ、ゼータ電位測定を実施する。
【0088】
<電着塗装用塗料の製造方法>
本開示に係る電着塗装用塗料の製造方法は、
テトラカルボン酸二無水物誘導体及びエステル化剤を反応させてエステル化されたテトラカルボン酸二無水物誘導体を調製する工程(第0工程:エステル化工程)と、
溶剤A中で、前記エステル化されたテトラカルボン酸二無水物誘導体及びジアミン化合物を反応させて前述の一般式(A1)に示す構造を有するポリイミド系前駆体化合物(特定ポリイミド系前駆体化合物)を合成し、特定ポリイミド系前駆体化合物及び溶剤Aを含有する第1混合液を調製する工程(第1工程)と、
前記第1混合液と、無機粒子と、を混合して第2混合液を得る工程(第2工程)と、
前記第2混合液と、溶剤Bと、を混合する工程(第3工程)と、を含む。
【0089】
以下、各工程について詳細に説明する。
【0090】
(第0工程:エステル化工程)
エステル化工程は、テトラカルボン酸二無水物誘導体及びエステル化剤を反応(エステル化)させてエステル化されたテトラカルボン酸二無水物誘導体を調製する工程である。
【0091】
・エステル化による反応
テトラカルボン酸二無水物誘導体とエステル化剤とを反応させることで、テトラカルボン酸二無水物誘導体におけるカルボン酸無水物基(-C(=O)-O-C(=O)-)が開環し、一方がカルボキシル基(-COOH)に、もう一方がカルボキシル基におけるHが置換された構造の基(-COOR(Rは脂肪族基及び芳香族基からなる群より選択される少なくとも一種を含む有機基を指す)、以下「エステル基」と称す)になる。
エステル化されたテトラカルボン酸二無水物誘導体におけるカルボン酸無水物基が開環して生じるカルボキシル基のうち、エステル化によってエステル基となる割合(つまりカルボキシル基の数とエステル基の数の和に対するエステル基の数の割合)は、10%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、45%以上であることがさらに好ましく、50%であることがさらに好ましい。
【0092】
なお、エステル化されたテトラカルボン酸二無水物誘導体におけるカルボキシル基の数とエステル基の数の和に対するエステル基の数の割合は、核磁気共鳴分析(NMR)によって、エステル基に由来する水素の定量を行うことにより測定することができる。
【0093】
・テトラカルボン酸二無水物誘導体
テトラカルボン酸二無水物誘導体としては、既述の「テトラカルボン酸二無水物」、「エステル基を有するテトラカルボン酸二無水物」、「アミド結合を有するテトラカルボン酸二無水物」及び「式(3)で表されるテトラカルボン酸二無水物」を用いることができる。
【0094】
・エステル化剤
エステル化剤としては、脂肪族基及び芳香族基からなる群より選択される少なくとも一種を含む有機基並びに水酸基(-OH)を有する化合物が用いられ、例えばアルコール(R-OH(Rは脂肪族基及び芳香族基からなる群より選択される少なくとも一種を含む有機基を指す))が用いられる。アルコールにおいてRで表される脂肪族基及び芳香族基からなる群より選択される少なくとも一種を含む有機基の炭素数は、1以上10以下であることが好ましく、1以上8以下であることがより好ましく、1以上6以下であることがさらに好ましい。脂肪族基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよく、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。
エステル化剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、フェノール、及びベンジルアルコール(Ph-CH-OH:Phはフェニル基を表す)等が挙げられる。これらの中でもメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2-ブタノール、フェノール、及びベンジルアルコールが好ましい。
【0095】
エステル化剤は、後述の通りテトラカルボン酸二無水物誘導体と反応させた後に、蒸発させて除去することが好ましく、この観点からエステル化剤は沸点が低いことが好ましい。エステル化剤の沸点が低いことで、エステル化剤を蒸発させる際の加熱の温度を低く抑えることができ、エステル化によって開環され一方がエステル基となった部位が再び閉環してカルボン酸無水物基となることが抑制できる。具体的には、エステル化剤の沸点は250℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましく、150℃以下であることがさらに好ましい。なお、エステル化剤の沸点の下限は、特に限定されるものではないが、30℃以上とすることができる。
【0096】
・エステル化の方法
テトラカルボン酸二無水物誘導体とエステル化剤とを反応(エステル化)させる具体的な方法としては、例えば、テトラカルボン酸二無水物誘導体とエステル化剤とを混合して還流しながら加熱する方法が挙げられる。
加熱の温度は、例えば30℃以上150℃以下であることが好ましく、60℃以上120℃以下であることがより好ましい。反応させる時間は、例えば1時間以上10時間以下であることが好ましく、2時間以上6時間以下であることがより好ましい。
【0097】
・エステル化剤の除去
テトラカルボン酸二無水物誘導体とエステル化剤とを反応(エステル化)させた後に、エステル化剤を除去することが好ましい。エステル化されたテトラカルボン酸二無水物誘導体とジアミン化合物との反応を行う前にエステル化剤を除去しておくことで、エステル化剤が縮合剤やジイソシアネート化合物と反応することを抑制でき、エステル化されたテトラカルボン酸二無水物誘導体とジアミン化合物との反応率を高めることができる。
具体的には、エステル化が完了した後、さらにエステル化剤の沸点以上の温度で加熱してエステル化剤を蒸発させて除去することが好ましい。エステル化剤を蒸発させる際の加熱の温度は、例えば20℃以上100℃以下であることが好ましく、40℃以上80℃以下であることがより好ましい。エステル化剤の沸点が高い場合には、減圧下で蒸発させることで沸点を下げることが好ましい。加熱の時間は、例えば1時間以上24時間以下であることが好ましく、3時間以上8時間以下であることがより好ましい。
エステル化剤としては、水酸基を有する沸点250℃以下の化合物であることが好ましい。
【0098】
(第1工程)
第1工程は、溶剤A中で、エステル化されたテトラカルボン酸二無水物誘導体及びジアミン化合物を反応させて特定ポリイミド系前駆体化合物を合成し、特定ポリイミド系前駆体化合物及び溶剤Aを含有する第1混合液を調製する工程である。
【0099】
・反応
エステル化されたテトラカルボン酸二無水物誘導体とジアミン化合物とを反応させることで、エステル化されたテトラカルボン酸二無水物誘導体が有するカルボキシル基(-COOH)とジアミン化合物が有するアミノ基(-NH)とが反応して、アミド結合(-CO-NH-)が形成され、前述の一般式(A1)に示す構造を有するポリイミド系前駆体化合物が合成される。
【0100】
第1工程の具体的な方法としては、例えば、溶剤Aに対して、エステル化工程で得られたエステル化されたテトラカルボン酸二無水物誘導体、及びジアミン化合物を加え、さらに必要により縮合剤を加えて、撹拌しながら反応させる方法が挙げられる。
【0101】
・ジアミン化合物
ジアミン化合物としては、既述の「ジアミン化合物」を用いることができる。
【0102】
・縮合剤
縮合剤としては、例えばジフェニル(2,3-ジヒドロ-2-チオキソ-3-ベンゾオキサゾリル)ホスホネート(DBOP)、(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスファート(BOP)、ヘキサフルオロリン酸(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウム(PyBOP)、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-ベンゾトリアゾリウム3-オキシドテトラフルオロボラート(TBTU)、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-ベンゾトリアゾリウム3-オキシドヘキサフルオロホスファート(HBTU)、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドテトラフルオロボラート(TATU)、及び1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスファート(HATU)等を用いることができる。
また、活性エステル法を用いてもよい。例えば、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)、及びエチル(ヒドロキシイミノ)シアノアセタート(Oxyma)等を用いて活性エステルを形成後にジフェニルリン酸アジド(DPPA)などの縮合剤を用いることができる。
【0103】
・溶剤A
溶剤Aは、特定ポリイミド系前駆体化合物を溶解する溶媒であることが好ましい。したがって、第1工程では、合成された特定ポリイミド系前駆体化合物を溶剤A中に溶解させることが好ましい。
ここで、本実施形態において、「溶解する」とは、25℃において、特定ポリイミド系前駆体化合物が溶剤Aに対して90質量%以上の範囲で溶解することをいう。
溶剤Aは、具体的には、例えば、既述の非プロトン性極性溶剤が挙げられる。
【0104】
溶剤Aの添加量は、特定ポリイミド系前駆体化合物を溶解することができる量であれば特に限定されないが、合成された特定ポリイミド系前駆体化合物の質量に対して、1000質量%以上6000質量%であることが好ましい。
【0105】
・特定ポリイミド系前駆体化合物の含有量
第1工程で調整される第1混合液において、特定ポリイミド系前駆体化合物の含有量は、第1混合液に対して、5質量%以上45質量%以下とすることが好ましく、10質量%以上40質量%以下とすることがより好ましく、15質量%以上35質量%以下とすることが更に好ましい。
【0106】
(第2工程)
第2工程は、第1混合液と、無機粒子と、を混合して第2混合液を得る工程である。
第2工程は、例えば、第1混合液に対して無機粒子を添加して混合する方法が挙げられる。
無機粒子の添加方法は、特に限定されず、無機粒子単体で添加する方法、無機粒子を含む分散液を添加する方法が挙げられるが、分散性の観点から無機粒子を含む分散液を添加する方法であることが好ましい。
【0107】
無機粒子を含む分散液は、無機粒子と、溶剤A又は後述の溶剤Bと、を含むことが好ましい。
無機粒子を含む分散液全体に対する、無機粒子の含有量は、5質量%以上30質量%以下であることが好ましく、10質量%以上20質量%以下であることが更に好ましい。
【0108】
無機粒子の添加量は特に限定されず、例えば、第1混合液中の樹脂の含有量に対して、1質量%以上80質量%以下であることが好ましく2質量%以上70質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上60質量%以下であることが更に好ましい。
【0109】
(第3工程)
第3工程は、第2混合液と、溶剤Bと、を混合する工程である。
第3工程は、例えば、第2混合液に対して溶剤Bを滴下しながら混合する方法が挙げられる。
【0110】
溶剤Bは、特定ポリイミド系前駆体化合物を溶解しない溶剤であることが好ましい。
ここで本明細書において「溶解しない」とは、25℃において、特定ポリイミド系前駆体化合物が溶剤Bに対して3質量%以下の範囲内で溶解することも含む。
溶剤Bとしては、例えば、既述のエーテル系溶剤、既述のケトン系溶剤、既述のアルコール系溶剤、水等が挙げられる。
【0111】
第2混合液と、溶剤Bと、を混合する方法としては、特に限定されず、公知の撹拌装置等を用いて行うことができる。撹拌装置としては、例えば、ホモミキサー、ホモジナイザー、ディゾルバー等を用いることができる。
【0112】
溶剤Bの添加量は、特に限定されないが、例えば、第2混合液に対し、50質量%以上90質量%以下であることが好ましく、55質量%以上85質量%以下であることがより好ましく、60質量%以上80質量%以下であることが更に好ましい。
【0113】
ここで、溶剤A及び溶剤Bの組み合わせについては既述した具体例に特に限定されない。溶剤Aは製造する電着塗装用塗料に含まれる特定ポリイミド系前駆体化合物を溶解する溶剤であり、溶剤Bは製造する電着塗装用塗料に含まれる特定ポリイミド系前駆体化合物を溶解しない溶剤であることが好ましい。
例えば、溶剤Bの具体例として水を挙げているが、使用する特定ポリイミド系前駆体化合物の種類によっては溶剤Aとなり得る。例えば、製造する電着塗装用塗料に含まれる特定ポリイミド系前駆体化合物が水に溶解する場合、溶剤Aは水とし、溶剤Bは水以外の溶剤とすることが好ましい。
【0114】
<絶縁材の製造方法>
本開示に係る絶縁材の製造方法は、電着塗装用塗料を電着塗装して塗膜を形成する工程(塗膜形成工程)と、前記塗膜を焼成する工程(焼成工程)と、を有することが好ましい。
以下に各工程の詳細について説明する。
【0115】
(塗膜形成工程)
塗膜形成工程は、本開示に係る電着塗装用塗料を電着塗装して塗膜を形成する工程である。
電着塗装の方法は、特に限定されず、公知の電着塗装方法を用いることができる。例えば、被塗物を陽極とし、陰極との間に、1V以上400V以下の電圧を印加して行なうことが好ましい。また、例えば、被塗物を陰極とし、陽極との間に、1V以上400V以下の電圧を印加して行なうことが好ましい。電着塗装時の塗料の温度は、例えば、10℃以上45℃であることが好ましい。
【0116】
被塗物については、特に限定されないが、例えば、板状の導体、棒状の導体、コイル状の導体、不定形の導体等が挙げられる。
被塗物の材質については、電気を通じるものであれば特に限定されないが、例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、チタン、ビスマス等の金属、前記金属の合金、カーボン、などが挙げられる。
また、被塗物は、導体の表面にニッケル等のめっきを有するものでもよい。
【0117】
塗膜の膜厚は特に限定されるものではなく、用途や被塗物の種類に応じて5μm以上100μm以下等の範囲で適宜調整することが好ましい。
【0118】
図1に、電着塗装に用いられる電着装置100の一例を示す。
ステンレス製容器10は、塗料11を収容する。
ステンレス製容器10の上部には、ガラス製容器蓋12が備えられている。
ガラス製容器蓋12を介して、ステンレス製容器10内に管16及び管17が通されており、管16から、不活性ガス(例えば、窒素、アルゴンなど)が吹き込まれ、管17からステンレス製容器10の外へ流出する。
直流電源13は、正極である電界発生用電極14及び負極である被覆用基材15に接続され、各電極の間に電圧を印加する。
【0119】
各電極の間に電圧を印加することで、塗料11に含有される特定ポリイミド系前駆体化合物(以下、樹脂成分とも称する)及び無機粒子が電気泳動して負極である被覆用基材15に向かい、被覆用基材15表面で樹脂成分及び無機粒子の凝集が起こり、塗膜が形成される。なお、樹脂成分及び無機粒子が正極側に電気泳動する材料である場合には、被覆用基材15を直流電源13のプラスに繋ぎ(つまり被覆用基材15を正極とし)、電界発生用電極14を直流電源13のマイナスに繋ぎ(つまり電界発生用電極14を負極とし)、樹脂成分及び無機粒子を電気泳動させて、正極である被覆用基材15表面に樹脂成分及び無機粒子の塗膜を形成することが好ましい。
【0120】
(焼成工程)
焼成工程は、塗膜形成工程を経て得られた塗膜を焼成する工程である。
当該焼成によって、塗膜における特定ポリイミド系前駆体化合物のイミド化を進行させることができ、ポリイミド樹脂を含む絶縁材(例えばポリイミド絶縁膜)を形成することができる。
【0121】
焼成工程は、段階的に加熱温度を上げることで行ってもよい。
上記塗膜を段階的に加熱するとは、比較的低温の温度(例えば200℃以下)で塗膜を加熱することで塗膜を乾燥し、その後高温(例えば300℃付近)で乾燥後の塗膜を焼成してもよい。
【0122】
塗膜の乾燥は、例えば、加熱乾燥、自然乾燥、真空乾燥等の方法により乾燥させる方法が挙げられ、製造効率化の観点から、加熱乾燥が好ましい。
加熱乾燥の条件は、塗膜の膜厚等に応じて適宜変更することが好ましいが、例えば、70℃以上200℃以下で、20分間以上300分間以下の条件で乾燥させることが好ましく、20分間以上200分間以下の条件で乾燥させることがより好ましい。
【0123】
乾燥後の塗膜の焼成は、150℃以上400℃以下(好ましくは300℃付近)で、20分間以上120分間以下焼成することが挙げられる。
焼成は、段階的に昇温させて行ってもよい。
焼成における加熱方法は、ヒーター加熱、熱風加熱、誘電加熱などが挙げられる。
【0124】
以上の工程を経て、絶縁材が製造されることが好ましい。
【0125】
上記製造方法で得られる絶縁材は、例えば、絶縁電線、絶縁部品、移動通信機器(第5世代(5G)を含む)、フィルムなどの用途に適用できる。
【実施例0126】
以下に実施例について説明するが、本開示はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
【0127】
<実施例1>
(ポリイミド前駆体溶液の調製)
まず、テトラカルボン酸二無水物とエステル化剤とを反応させた。
冷却器を備えたフラスコに、表1に記載の種類及び量(mol)のテトラカルボン酸二無水物、及び表1に記載の種類及び量(mol)のエステル化剤を仕込み、65℃で4時間加熱しながら還流させて両者を反応させた。次いで、冷却器を外して、減圧下、60℃で3時間加熱することで残存したエステル化剤を蒸発させた。これにより、テトラカルボン酸二無水物とエステル化剤とが反応したエルテル化テトラカルボン酸二無水物の粉末を得た。
【0128】
次いで、撹拌機と温度計を備えた1Lの3つ口セパラブルフラスコに、表1に記載の種類及び量(mol)のジアミン化合物、及び溶剤AとしてNMP(ポリイミド系前駆体化合物が20.0質量%濃度となる量)を仕込み、窒素を流入させ撹拌しながら溶解させた。次に、表1に記載の種類及び量(mol)の縮合剤を添加した後、前記で得たエルテル化テトラカルボン酸二無水物の粉末を徐々に添加し撹拌、20.0質量%濃度(ポリイミド前駆体を含む溶液全体に対する、ポリイミド系前駆体化合物の含有量が20質量%。以下同様とする)のポリイミド前駆体を含む溶液を得た。
【0129】
(電着塗装用塗料の調製)
ポリイミド前駆体を含む溶液20gに溶剤AとしてNMP80gを入れ希釈した(第1工程)。次いで、激しく撹拌しながら、無機粒子を含む分散液としてベーマイトアルミナA10(酸化アルミニウム1水和物を含む無機粒子及び溶剤AであるNMPを含む。無機粒子の含有量は、分散液全体に対して、10質量%である。)7.06gを滴下し(第2工程)、次いで溶剤Bとしてエタノール180gを滴下し(第3工程)、電着塗装用塗料を得た。
【0130】
<実施例2~17>
用いるジアミン化合物、酸成分(テトラカルボン酸二無水物)、エステル化剤、及び縮合剤を、表1~表4に記載の種類及び量(mol)に変更し、且つ添加する無機粒子を表1~表4に記載の種類に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリイミド前駆体を含む溶液を調製し、且つ電着塗装用塗料を得た。
なお、実施例12及び14では、縮合剤を使用しなかった。また、実施例8~17では、(電着塗装用塗料の調製)における溶剤Bとしてメタノールを用いた。
【0131】
<比較例1>
(ポリイミド前駆体溶液の調製)
撹拌機と温度計を備えた1Lの3つ口セパラブルフラスコに、表4に記載の種類及び量(mol)のジアミン化合物、及び溶剤AとしてNMP(ポリイミド系前駆体化合物が20.0質量%濃度となる量)を仕込み、窒素を流入させ撹拌しながら溶解させた。次に、表4に記載の種類及び量(mol)の酸成分(テトラカルボン酸二無水物)を徐々に添加し撹拌、20.0質量%濃度(ポリイミド前駆体を含む溶液全体に対する、ポリイミド系前駆体化合物の含有量が20質量%。以下同様とする)のポリイミド前駆体を含む溶液を得た。
【0132】
(電着塗装用塗料の調製)
ポリイミド前駆体を含む溶液20gに溶剤AとしてNMP80gを入れ希釈した(第1工程)。次いで、激しく撹拌しながら、無機粒子を含む分散液としてベーマイトアルミナA10(酸化アルミニウム1水和物を含む無機粒子及び溶剤AであるNMPを含む。無機粒子の含有量は、分散液全体に対して、10質量%である。)7.06gを滴下し(第2工程)、次いで溶剤Bとしてメタノール180gを滴下し(第3工程)、電着塗装用塗料を得た。
【0133】
<比較例2>
用いるジアミン化合物、及び酸成分(テトラカルボン酸二無水物)を、表4に記載の種類及び量(mol)に変更し、且つ添加する無機粒子を表4に記載の種類に変更したこと以外は、比較例1と同様にして、ポリイミド前駆体を含む溶液を調製し、且つ電着塗装用塗料を得た。
【0134】
<電着塗装>
(電着及び乾燥・焼成)
図1の電着装置を使用し、各例で得られた電着塗装用塗料を用いて、電着塗装を施した。被塗物(陰極電極)には幅10mm、厚さ1mm、角部Rが0.1mmの無酸素銅を用いた。窒素を流入させながらDC250Vを5分印加し、電着膜を形成した。被塗物を恒温槽によって120℃前後で溶媒を乾燥させた後、段階的に昇温させ、最終的に300℃で10分間焼成を行い、絶縁皮膜を施した被塗物(以下、絶縁材)を作製した。
【0135】
<評価>
(電着塗装用塗料の外観)
各例で得られた電着塗装用塗料を目視にて確認し、電着塗装用塗料に含まれる成分が均一に近い状態で分散しているか否かを評価した。
表中、電着塗装用塗料に含まれる成分が均一に近い状態で分散している場合、「分散」と記載する。
一方、電着塗装用塗料中に凝集物が生じている場合は「凝集」と記載する。
【0136】
(電着塗装用塗料の保存性)
各例で得られた電着塗装用塗料を5℃で保管し、一定時間経過毎に電着塗装用塗料を取り出して、上記(電着及び乾燥・焼成)と同一の条件で、絶縁材を作製した。作製した絶縁材を用いて、後述の(絶縁破壊試験)を行い、破壊電圧値が初期値の50%以下になった時点の保管時間を測定した。
【0137】
(絶縁皮膜の外観)
各例で得られた電着塗装用塗料を用いて作製した絶縁材の絶縁皮膜を目視にて確認し、絶縁皮膜の表面平滑性を評価した。
表中、絶縁皮膜の表面が平滑な場合、「良好」と記載する。
一方、絶縁皮膜の表面に凸凹が多数生じている場合は「不良」と記載する。
【0138】
(皮膜厚)
各例で得られた電着塗装用塗料を用いて作製した絶縁材の厚さ方向及び幅方向の外径を任意に3点ずつ測定した。絶縁材の厚さ方向の外径の算術平均値及び絶縁材の幅方向の外径の算術平均値を算出する。そして、絶縁材の厚さ方向の外径の算術平均値から、絶縁材に含まれる被塗物(陽極電極)の厚さ方向の径を減ずることで、厚さ方向の皮膜厚を算出した(表中「厚(mm)」と記載する)。また、絶縁材の幅方向の外径の算術平均値から、絶縁材に含まれる被塗物(陽極電極)の幅方向の径を減ずることで、幅方向の皮膜厚を算出した(表中「幅(mm)」と記載する)。
また、塗膜の膜厚の算術平均を算出する際に測定した絶縁材の絶縁皮膜の膜厚のうち、最も小さい値を最薄部厚さとした(表中「最薄部厚さ」と記載する)。
ここで、塗膜の幅及び膜厚の測定はマイクロメータを用いて行った。
【0139】
(可とう性)
直径5mmの円筒形マンドレルに沿って、各例で得られた電着塗装用塗料を用いて作製した絶縁材の90度曲げを行い、拡大鏡にて絶縁皮膜の亀裂の有無を確認した。亀裂が確認されなかった場合を「合格」とし、亀裂が確認された場合「不合格」とする。
【0140】
(耐電圧試験)
各例で得られた電着塗装用塗料を用いて作製した絶縁材の外周に、10mm幅の金属箔を密着させて巻き、絶縁材と金属箔との間にAC2000Vrms,50Hzの電圧を10秒間印加し、漏れ電流が5mA未満で「合格」とし、漏れ電流が5mA以上で「不合格」とした。
【0141】
(絶縁破壊試験)
各例で得られた電着塗装用塗料を用いて作製した絶縁材の外周に、10mm幅の金属箔を密着させて巻き、絶縁材と金属箔との間に正弦波(50Hz)の電圧を印加、約500V/秒で昇圧し、漏れ電流が5mA以上になった時の電圧を破壊電圧とした。
【0142】
(耐熱劣化性試験)
各例で得られた電着塗装用塗料を用いて作製した絶縁材の絶縁皮膜に対し、300℃で500時間の加熱処理を施した。次いで、加熱処理後の絶縁皮膜に、後述の(フィルム伸び試験)を行い、フィルム伸び(%)が初期値に対して50%以上になったものを「合格」とし、50%未満になったものを「不合格」とした。
【0143】
(5%質量減少温度)
各例で得られた電着塗装用塗料を用いて作製した絶縁材の絶縁皮膜を剥離し、島津製作所製DTG-60Hを用いてTG-DTA測定を実施した。絶縁皮膜の質量が5質量%減少する温度が500℃以上である場合を「合格」とし、500℃未満である場合を「不合格」とした。
【0144】
(フィルム伸び試験)
各例で得られた電着塗装用塗料を用いて作製した絶縁材の絶縁皮膜に、鋭利な刃で幅5mmの切込みを入れ、端面からピンセットで引き剥がして、約100mmのフィルム片として切り出した。チャック長50mmでフィルム片の引張試験を実施し、フィルム片が破断するまでのフィルムの伸び率を測定した。
【0145】
【表1】
【0146】
【表2】
【0147】
【表3】
【0148】
【表4】
【0149】
以下に表1~表4の記載について説明する。
・樹脂:電着塗装用塗料の作製の際に使用した、ジアミン化合物、ジイソシアネート、及びテトラカルボン酸二無水物の種類並びに添加量(単位はモル)を表す。さらに、電着塗装用塗料の作製の際に使用したメタクリル酸無水物の添加量(単位はモル)を表す。なお、樹脂として市販品のものを使用した場合、製品名を記載する。
・良溶剤:電着塗装用塗料に含まれる溶剤Aの種類を示す。
・貧溶剤:電着塗装用塗料に含まれる溶剤Bの種類を示す。
・樹脂の種類:電着塗装用塗料に含まれる樹脂の種類を示す。
・無機粒子:電着塗装用塗料に含まれる無機粒子の種類を示す。「A10」はベーマイトアルミナA10を表す。ベーマイトアルミナは酸化アルミニウムを含む粒子であり、シリカは酸化ケイ素を含む粒子である。
【0150】
上記結果から、実施例の電着塗装用塗料は、比較例の電着塗装用塗料と比較して、凝集の発生が抑制されており、優れた塗装性が得られていることが分かる。また、一般式(A1)のArにおいて主鎖に脂肪族基を含む構造のポリイミド前駆体を合成している実施例16、17に比べて、主鎖に脂肪族基を含まない構造のポリイミド前駆体を合成している実施例1~15では、優れた耐熱性を有する絶縁材が得られていることが分かる。
【符号の説明】
【0151】
10 ステンレス製容器
11 塗料
12 ガラス製容器蓋
13 直流電源
14 電界発生用電極
15 被覆用基材
16、17 管
100 電着装置
図1