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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161874
(43)【公開日】2024-11-20
(54)【発明の名称】水質浄化装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/20 20230101AFI20241113BHJP
   C02F 7/00 20060101ALI20241113BHJP
   C02F 3/22 20230101ALI20241113BHJP
【FI】
C02F3/20 C
C02F7/00
C02F3/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023160136
(22)【出願日】2023-09-25
(31)【優先権主張番号】P 2023076505
(32)【優先日】2023-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(71)【出願人】
【識別番号】501482938
【氏名又は名称】株式会社マリンフロート
(71)【出願人】
【識別番号】593011036
【氏名又は名称】海和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】越智 淳
(72)【発明者】
【氏名】松本 達治
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 靖時
(72)【発明者】
【氏名】木綿 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊一
(72)【発明者】
【氏名】山田 克彦
【テーマコード(参考)】
4D029
【Fターム(参考)】
4D029AA01
4D029AB07
4D029BB11
4D029CC06
(57)【要約】
【課題】水質を効率よく改善させること
【解決手段】
水質浄化装置10は、下方に向けて錐状に突出した中心部11aを有する浮体11と、浮体11の中心部から間隔を開けて、下方に延びた外筒13と、外筒13の下部にエアを供給するエア供給装置20とを備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方に向けて錐状に突出した中心部を有する浮体と、
前記浮体の中心部から間隔を開けて、下方に延びた外筒と、
前記外筒の下部にエアを供給するエア供給装置と
を備えた
水質浄化装置。
【請求項2】
前記エア供給装置は、
前記浮体の中心部から下方に延びたエア供給管と、
前記エア供給管の先端に取り付けられたエアレーションノズルと
を備えた、
請求項1に記載された水質浄化装置。
【請求項3】
下方に向けて錐状に突出した中心部を有する浮体と、
前記浮体の中心部から下方に延びたエア供給管と、
前記エア供給管の回りを囲うように設けられた外筒と、
前記エア供給管の先端に取り付けられたエアレーションノズルと
を備えた、
水質浄化装置。
【請求項4】
前記浮体は、
前記中心部の周りに径方向に中心部よりも緩やかに広がった拡径部を
さらに有する、請求項1に記載された水質浄化装置。
【請求項5】
前記浮体の中心部は、垂直方向に貫通した貫通孔を有し、
前記エア供給管は、前記貫通孔に挿通された所要の剛性を有する管体を有する、
請求項1に記載された水質浄化装置。
【請求項6】
前記浮体は、
前記エア供給管に接続されたエアポンプと、
前記エアポンプに接続された蓄電池と、
前記蓄電池に接続された太陽光パネルと
を備えた、請求項1に記載された水質浄化装置。
【請求項7】
前記外筒の外側に配置された第2エアレーションノズルを、さらに備えた請求項1に記載された水質浄化装置。
【請求項8】
水位測定センサをさらに備えた、請求項1に記載された水質浄化装置。
【請求項9】
アンカーケーブルと、
前記アンカーケーブルに取り付けられたアンカーと
を備えた、請求項1に記載された水質浄化装置。
【請求項10】
前記外筒の下方に、前記外筒の開口に対向するように間隔を開けて配置されたカバーをさらに備えた、請求項1に記載された水質浄化装置。
【請求項11】
前記エアレーションノズルを覆うフィルタをさらに備えた、請求項1に記載された水質浄化装置。
【請求項12】
前記外筒は、
端部が閉塞された二重パイプ構造で構成されており、
下部の内周面にエアの吹き出し口を有し、
前記エア供給装置は、前記外筒の壁面の間隙を通じて、エアを供給するように構成された、請求項1に記載された水質浄化装置。
【請求項13】
前記外筒は、外側面または上部に、前記外筒の壁面の間隙空間に、前記エア供給装置に接続されてエアが供給されるエア供給口を有する、請求項12に記載された水質浄化装置。
【請求項14】
前記外筒を浮体に対して固定する部材は、前記外筒の外周面に取り付けられている、請求項12に記載された水質浄化装置。
【請求項15】
前記外筒の上部は、上方ほど内径が大きくなったテーパー状の内径を有している、請求項1に記載された水質浄化装置。
【請求項16】
前記外筒の外周を囲う管材をさらに備えた、請求項1に記載された水質浄化装置。
【請求項17】
浮体の下面が中心から外縁に向けて延びた突条または溝からなる整流部が形成されている、請求項1に記載された水質浄化装置。
【請求項18】
前記整流部は、前記浮体の下面に螺旋状に形成されている、請求項1に記載された水質浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水質浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許3815655号公報には、農業用ため池、湖沼、貯水池等の閉鎖性水域の水質浄化装置に関する発明が開示されている。同公報に開示された水質浄化装置は、太陽電池を利用して汚水を循環流動させながら汚水中に空気を溶解させる曝気装置である。太陽電池と深夜電力受電設備が、チャージコントローラーを介してブロワーと蓄電池に接続されている。チャージコントローラーには、マスターコントローラーが併設されており、マスターコントローラーの設定時間に応じて太陽電池と深夜電力受電設備からの給電が切換えられる。これと共に、ブロワーに供給する定格電力の過不足に応じて、蓄電池の充電とブロワーへの放電がチャージコントローラーによって制御されて、汚水中に空気を供給して汚水を循環流動させる。
【0003】
特許4006063号公報には、浮遊式流水発生装置に関する発明が開示されている。同公報に記載された発明では、水面に浮遊して水中に延設されたシャフト先端に取付けられたプロペラを回転させて上向き又は下向きの循環水流を発生させて、水中又は海水中に空気を供給して、例えば、湖水、湾内、河口域、ダム、貯水池、溜池、養殖場などの閉鎖性水域の淡水又は海水の浄化が図られるとされている。同公報で開示されている浮遊式流水発生装置は、水面上に浮遊し上部側が拡がった漏斗状の浮体が設けられている。そして、該浮体には、水面を貫通して下方にシャフトが延設されており、駆動装置に連結されたシャフトの下端に軸芯回りに回転するプロペラが取付けられている。漏斗状の浮体の周囲には、上部がラッパ状に拡がったダクトが設けられている。ダクトの下端側は、プロペラの下方まで延設されており、漏斗状の浮体の外周側面とダクトの内周側面との間に環状の昇降流水路が形成されている。この装置では、回転するプロペラによって昇降流水路内に昇降流水が起こされ、ダクトの内外の水中に昇降循環流水を生じさせる。これと共に、浮遊式流水発生装置の取付孔具に係留ロープの一端が連結され、係留ロープの他端が水底のアンカーに連結され、プロペラが回転して循環流水を生じさせるときの反作用によって、浮遊式流水発生装置が、水底のアンカーを中心としてその周囲を旋回し、アンカーを中心としてその周囲を浄化する。また、浮体には、シャフトの駆動装置に電力を供給する太陽電池が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3815655号公報
【特許文献2】特許4006063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、本発明者は、水質を効率よく改善させたい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで開示される水質浄化装置は、下方に向けて錐状に突出した中心部を有する浮体と、浮体の中心部から間隔を開けて、下方に延びた外筒と、外筒の下部にエアを供給するエア供給装置とを備えている。かかる水質浄化装置によれば、水質を効率よく改善させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、水質浄化装置10を模式的に示す側面図である。
図2図2は、浮体11の平面図である。
図3図3は、外筒13およびエア供給管12の横断平面図である。
図4図4は、外筒13の下端を拡大した縦断側面図である。
図5図5は、他の形態に係る水質浄化装置10Aの側面図である。
図6図6は、水質浄化装置10の変形例を示す側面図である。
図7図7は、浮体11の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、ここで開示される水質浄化装置を図面に基づいて説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。各図面は模式的に描かれており、必ずしも実物を反映していない。また、各図面は、一例を示すのみであり、特に言及されない限りにおいて本発明を限定しない。また、同一の作用を奏する部材・部位には、適宜に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。本明細書において数値範囲を示す「X~Y」などの表記は、特に言及されない限りにおいて「X以上Y以下」を意味する。
【0009】
〈水質浄化装置10〉
図1は、水質浄化装置10を模式的に示す側面図である。水質浄化装置10は、浮体11と、エア供給管12と、外筒13と、エアレーションノズル14と、第2エアレーションノズル15と、アンカー16とを備えている。また、図2は、浮体11の平面図である。この実施形態では、図1および図2に示されているように、浮体11の上に、エアポンプ21と、蓄電池22と、太陽光パネル23とが設けられている。図2では、浮体11の上に取り付けられた、エアポンプ21およびエアポンプ21に接続された配管が模式的に図示されている。
【0010】
〈浮体11〉
浮体11は、浮力によって水面に浮かんだ構造物である。浮体11は、例えば、発泡樹脂製でありうる。浮体11は、例えば、発泡スチロールなどの発泡プラスチック成形品で構成されているとよい。浮体11の表面は、耐候性を有するウレタン樹脂及びウレア樹脂などの樹脂で被覆されているとよい。この実施形態では、浮体11は、エアポンプ21や、蓄電池22や、太陽光パネル23などを設置するのに要する所要の浮力が得られるように、所要の大きさを有している。
【0011】
浮体11は、図1に示されているように、下方に向けて錐状に突出した中心部11aを有している。図1に示された形態では、浮体11の中心部11aは、下方に向けて円錐状に突出している。この実施形態では、中心部11aは、上方に向かうにつれて徐々に外側に広がっている。中心部11aの外側面11a1の水平面に対する角度αは、大凡45度の角度で傾くように形成されている。浮体11の下部は、中心部11aの周りに拡径部11bを有している。拡径部11bでは、浮体11の下部は、中心部11aよりも緩やかな角度で外側に広がっている。
【0012】
なお、中心部11aの外側面11a1の水平面に対する角度αは、上記に特に限定されない。中心部11aの外側面11a1の水平面に対する角度αは、例えば、水平面に対して大凡60度の角度で傾くように形成されていてもよい。また、この実施形態では、中心部11aは、円錐状である。特に言及されないか限りにおいて、中心部11aは、円錐状に限定されない。中心部11aは、下方に向けて錐状に突出していればよく、例えば、三角錐や四角錐や五角錐や六角錐など多角錐の形状でもよい。また、図1に示された形態では、中心部11aの周りに、中心部11aよりも緩やかな角度で外側に広がった拡径部11bを有しているが、これに限定されない。例えば、浮体11の下部は、一様に錘状に単純な錐状の部材であってもよく、拡径部11bがなくてもよい。図1に示された形態では、浮体11の中心部には、エア供給管12を挿通させるための貫通孔11cが形成されている。図1に示された形態では、浮体11の最下端11dは、平坦に形成されており、その中心に貫通孔11cが開口している。また、貫通孔11cは、浮体11の中心部11aを垂直方向に貫通している。なお、ここでは、浮体11について、発泡プラスチック成形品が例示されているが、浮体11は、発泡プラスチック成形品に限定されない。浮体11は、例えば、鉄板を所要のブロック状に接合して形成してもよい。また、ガラス繊維強化プラスチックのような所要の剛性を有する樹脂板を所要の形状に成形した成形品でもよい。この場合も浮体11の下部が錘状になるように成形されるとよい。
【0013】
浮体11には、エアポンプ21、蓄電池22、太陽光パネル23などが設けられる。エアポンプ21、蓄電池22、太陽光パネル23など、浮体11の上部構造については、後で述べる。
【0014】
〈エア供給管12〉
エア供給管12は、エアを供給する配管である。図1では、浮体11の中央部、エア供給管12および外筒13が、部分的な断面図で描かれている。エア供給管12は、浮体11の中心部11aから下方に延びている。この実施形態では、エア供給管12は、浮体11の中心部11aに形成された貫通孔11cを通して、浮体11に取り付けられており、浮体11の中心部11aから下方に延びている。エア供給管12は、浮体11の中心部11aから予め定められた長さ下方に延びているとよい。
【0015】
図1に示された形態では、エア供給管12は、貫通孔11cに挿通された所要の剛性を有する管体で構成されている。具体的には、エア供給管12は、ステンレス製の内管12aの内側にチューブ12bが挿通されている。チューブ12bは、可撓性を有する管体であり、例えば、シリコンゴム製のチューブでありうる。内管12aは、浮体11の中心部11aに形成された貫通孔11cに挿入されている。かかる構成によって、エア供給管12は、浮体11の中心部11aからまっすぐに下方に延びた状態で維持されている。チューブ12bの上端は、内管12aの上端からはみ出て、浮体11の上部に沿って延びており、エアポンプ21に接続されている。また、チューブ12bの下端は、内管12aの下端からはみ出て予め定められた長さ延びている。エア供給管12は、所要の剛性を有する管体であり、垂直方向に貫通した貫通孔11cに挿通されている。このため、エア供給管12は、浮体11から垂直方向に沿って下方に延びた状態で維持される。
【0016】
〈外筒13〉
外筒13は、エア供給管12の回りを囲うように設けられた筒体である。この実施形態では、外筒13の内径は、エア供給管12の外径よりも大きい。エア供給管12は、外筒13の中心に配置されており、外筒13の両端にエア供給管12を支持する支持部材が取り付けられている。外筒13は、所要の剛性を有する配管であるとよく、例えば、耐衝撃製硬質ポリ塩化ビニル管(HIVP管)などが用いられうる。外筒13の最下端13aは、外側に広がっており、いわゆる鍔返しが設けられている。これにより、外筒13の最下端13aに所要の剛性が確保されている。さらに、外筒13の最下端13aが外側に広がっていることによって、下端から外筒13に水が流入する際に、水の流れが外筒13の表面から剥離しにくく、水が滑らかに外筒13に吸い込まれるようになる。このため、外筒13の下端から水が流入する際の流入損失が低減する。
【0017】
図3は、外筒13およびエア供給管12の横断平面図である。発明者が試験を行なった試験モデルでは、例えば、外筒13は、外径(直径)を26mmとし、内径(直径)を20mmとした。外筒13の中心部に挿入されるエア供給管12の内筒12aは、外径(直径)を9mmとし、内径(直径)を7.4mmとした。エア供給管12の内筒12aに挿入されるチューブ12bは、外径(直径)を7mmとし、内径(直径)を5mmとした。図3は、外筒13およびエア供給管12の横断平面図であり、エア供給管12の回りにエアレーションノズル14が見えている。ここで例示される試験モデルは、5分の1モデルを想定している。水質浄化装置10は、例えば、上記の5倍の寸法で作製されうる。なお、水質浄化装置10の実際の大きさは、これに限定されない。また、各部材の材質も、上記は、一例を例示するものであり、特段の言及がない限りにおいて、これに限定されない。
【0018】
エア供給管12は、外筒13に対して中心に位置するように固定されている。図1に示された形態では、外筒13の上端と下端に固定部品31,32が設けられており、エア供給管12が外筒13の中心になるように固定されている。エア供給管12が外筒13の中心に固定されていることによって、エア供給管12と外筒13との間に所要の間隙33が形成されている。外筒13とエア供給管12との間隙33は、図3に示されているように、エア供給管12の内部空間よりも十分に広いとよい。このようにエア供給管12が外筒13に対して中心に位置するように固定されることによって、エア供給管12を構造的に安定させることができる。エア供給管12は、外筒13の外側を回して外筒13の下端に連結されるように設けられてもよい。外筒13の上端は、浮体11との間に間隙34がある。
【0019】
この実施形態では、エア供給管12の内筒12aは、所要の剛性を有するステンレス製の配管であり、浮体11の貫通孔11cに通されて浮体11の中心部11aから下方に延びている。外筒13は、浮体11の中心部11aの下方において、浮体11のエア供給管12の内筒12aを囲うように内筒12aに固定されている。このため、外筒13は、浮体11の中心部11aの下方において安定している。また、外筒13の上端は、浮体11の中心部11aから下方に少し離れた位置に配置されている。外筒13の上端と浮体11の中心部11aとの間には、所要の間隙34が形成されている。
【0020】
エア供給管12および外筒13の長さは、光が届かない所要の深さに届くような長さに設定されているとよい。エア供給管12および外筒13の長さは、例えば、水質浄化装置10が設置される水域の水深に合わせて定められているとよい。例えば、水質浄化装置10が海上の水域に設置される場合には、潮の満ち引きに応じて調整されるとよい。また、ダム湖などの貯水池では、渇水時などに水位が大きく減少しうるが、その際は、メンテナンスなどにより、エア供給管12および外筒13の長さが適宜に変更されるとよい。このため、エア供給管12および外筒13は、浮体11に対して適宜に交換可能な構成であってもよい。固定部品31,32は、ネジなどの取り外し可能な締結部材で、エア供給管12の内筒12aおよび外筒13に留められているとよい。
【0021】
〈エアレーションノズル14〉
エアレーションノズル14は、エア供給管12の先端に取り付けられている。この実施形態では、エアレーションノズル14は、エア供給管12の内筒12aから下側にはみ出たチューブ12bの下端に取り付けられている。ここで、エア供給管12の下端(チューブ12bの下端は、外筒13からはみ出ず、チューブ12bの下端に取り付けられたエアレーションノズル14は、外筒13で囲われているとよい。エアレーションノズル14は、例えば、多孔質のセラミックス材で構成されているとよい。エアレーションノズル14は、微細な気泡として、いわゆるマイクロバブルやナノバブルと称される気泡を発生させるノズルであってもよい。
【0022】
エアレーションノズル14によって、チューブ12bを通って供給されるエアが微細な気泡となって噴出する。かかる水質浄化装置10は、図1に示されているように、浮体11を水面に浮上させつつ、水中に浮体11の下部、エア供給管12および外筒13が延びている。エア供給管12および外筒13は、下方に向けて錐状に突出した浮体11の中心部11aか下方に延びている。そして、エア供給管12の先端に取り付けられたエアレーションノズル14から、微細な気泡が噴出する。エアレーションノズル14から噴出する微細な気泡は、外筒13内を上昇し、外筒13の上端から吹き出る。外筒13の上端から吹き出た気泡は、浮体11の下部の中心部11aの下面に沿って中心部11aから外側に広がっていく。ここで、外筒13とエア供給管12との間隙33は、図3に示されているように、エア供給管12の内部空間よりも十分に広い。さらに、外筒13の上端は、図1に示されているように、浮体11の中心部11aの下面に対向しているが、中心部11aの下面との間に十分に広い間隙34がある。このため、エアレーションノズル14から噴出する微細な気泡は、外筒13内をスムーズに上昇し、外筒13の上端から浮体11の下部の中心部11aの下面に沿ってスムーズに外側に広がっていき、浮体11の側方から水面に出ていく。
【0023】
このように水質浄化装置10は、浮体11の中心部11aは、下方に向けて錐状に突出しており、浮体11の中心部11aから下方に延びたエア供給管12と、エア供給管12の回りを囲うように設けられた外筒13とを備えている。そして、エア供給管12の先端に取り付けられたエアレーションノズル14から微細な気泡が吹き出すように構成されている。
【0024】
かかる水質浄化装置10によれば、図1に示されているように、外筒13内を上昇する気泡とともに、外筒13内に上昇する水流が生じる(a1)。外筒13内に上昇した水流は、浮体11の下面に沿って上昇しつつ外側に広がっていく(a2)。他方で、外筒13の下端からは、上昇する水流を補うように、周囲の水が吸い込まれる(a3)。これにより、外筒13の下端から吸い込まれ、外筒13を通じて上昇し、外筒13の上端から浮体11の下面に沿って浮体11の径方向に広がる水の流れが生じる。この水質浄化装置10では、外筒13の内側において、水中でエアレーションノズル14から微細な気泡が吹き出す。かかる外筒13の閉じられた水中空間での曝気により、気泡が勢いよく上昇する。そして、外筒13の閉じられた水中空間では、気泡とともに上昇する水流が生じる。気泡および水流は、浮体11の下部の錐面に沿って勢いよく上昇しつつ外側に広がっていく。これにより、水域に広く気泡を含む水流が行き渡る。
【0025】
また、外筒13内に上昇する水流が生じることにより、外筒13の下部から周囲の水が吸い込まれるため、外筒13の内側と外側とで外筒13の周りを直方向に水が循環する環流が生じる(a4)。なお、図1は、環流について、模式的に示しているが、より広範に循環する環流が生じる。かかる水質浄化装置10が置かれる水域は、水が留まりやすい湖水、湾内、河口域、ダム、貯水池、溜池、養殖場などの閉鎖水域が想定される。閉鎖水域であれば、何処かで上層から下層に水が動き、水域内で水が外筒13の回りで鉛直方向に循環する。水質浄化装置10を通じて循環する水には、エアレーションノズル14から供給される空気が溶け込む。このため、水質浄化装置10は、設置された水域全体の酸素濃度を上昇させることができる。また、浮体11から下方に延びた外筒13の下端から水を吸い込むので、水域の底の方の水を水域の上部に吸い上げて循環させることができ、閉鎖水域の水質を効率よく改善させることができる。
【0026】
この実施形態では、浮体11の中心部11aは、下方に向けて錐状に突出している。浮体11の中心部11aの外周面に沿って、上昇する水流を生じさせるとともに、浮体11の径方向に広がる水の流れが生じる上で、当該中心部11aは適当な傾斜面を有しているとよい。例えば、かかる観点において、中心部を垂直に通る断面における母線の角度β(図1参照)が適切な角度に設定されているとよい。本発明者の知見では、かかる角度βが小さいほど、例えば、上昇する水の流れをスムーズに生じさせやすく、かかる角度βが適度に大きくなると、上昇する水の流れをスムーズに径方向に広げやすくなる。かかる観点において、本発明者の知見では、角度βは、15度以上、より好ましくは、30度以上、また、角度βは、100度以下、好ましくは90度であるとよい。
【0027】
上記のように、外筒13内に上昇する水流が生じさせるとの観点において、外筒13とエア供給管12との間隙33は、図3に示されているように、エア供給管12の内部空間よりも十分に広いとよい。例えば、外筒13の内径と、エア供給管12の外径との直径差は、10mm以上200mm以下であるとよい。外筒13の内径と、エア供給管12の外径との直径差は、好ましくは20mm以上であるとよく、また、好ましくは100mm以下であってもよい。
【0028】
この実施形態では、浮体11は、中心部11aの周りに拡径部11bを有している。拡径部11bでは、径方向に中心部よりも緩やかに広がっている。上述のように、外筒13内を上昇する気泡とともに、外筒13内に上昇する水流が、外筒13の上端から浮体11の中心部11aの下面に沿って外側に広がっていく。外筒13内に上昇する水流は、かかる拡径部11bに沿って径方向に広がっていく。このため、気泡を含む水流が、水質浄化装置10が設置された水域に広く広がりやすい。これにより、水域全体の水質を改善させる機能が向上する。また、上昇する水流が浮体11から径方向に広がっていくので、水質浄化装置10が設置された水域において垂直方向に水を循環させる環流を生じさせやすい。
【0029】
また、この水質浄化装置10では、図1に示されているように、浮体11の中心部11aは、垂直方向に貫通した貫通孔11cを有し、エア供給管12は、貫通孔11cに挿通された所要の剛性を有する管体12aを有している。かかる構成によって、浮体11から下方に向けて深い水域にエア供給管12を安定して延ばすことができる。この水質浄化装置10では、平面視において、浮体11が十分に大きく、浮体11から垂直方向に下方に向けて深い水域にエア供給管12が安定して延びている。さらに、エア供給管12の周りを外筒13が囲っている。このように浮体11から垂直方向に下方に向けて深い水域にエア供給管12や外筒13が延びているので、浮体11が傾きにくく、浮体11の姿勢が安定している。
【0030】
さらに、エア供給管12の周りを囲う外筒13内に上昇する水流が、外筒13の上端から浮体11の中心部11aの下面に沿ってスムーズに外側に広がっていく。かかる水流によっても浮体11のバランスが保たれやすい。浮体11の下面に、溝や突条が設けられていてもよい。浮体11の下面に設けられる溝や突条は、例えば、浮体11の中心部11aから放射状に複数設けられていてもよい。また、浮体11の下面に設けられる溝や突条は、気泡や気泡に伴って生じる水流を案内できる程度に適当な高さや深さ(例えば、1~3cm程度)を有しているとよい。
【0031】
〈第2エアレーションノズル15〉
さらに、この実施形態では、水質浄化装置10は、図1に示されているように、第2エアレーションノズル15を備えている。第2エアレーションノズル15は、外筒13の外側に配置されている。第2エアレーションノズル15は、多孔質のセラミックス材で構成されているとよい。また、第2エアレーションノズル15は、微細な気泡として、いわゆるマイクロバブル(ナノバブル)を発生させるノズルであってもよい。第2エアレーションノズル15は、外筒13の外側に配置されており、微細な気泡を生じさせる、このように、外筒13の外側に第2エアレーションノズル15が配置されていることによって、さらに、水質を浄化させることができる。第2エアレーションノズル15の設置位置は、特に限定されず、外筒13の外側で、かつ、浮体11の下部の任意の位置に設けられうる。外筒13の外側では、環流が生じており、第2エアレーションノズル15で生じさせた微細な気泡が、水域に広がりやすい。なお、エアレーションノズル14,第2エアレーションノズル15は、チューブタイプエアレーター、ディスクタイプエアレーター、マイクロポーラスセラミックエアレーターなどでもよい。
【0032】
〈エアポンプ21,蓄電池22,太陽光パネル23〉
浮体11の上部には、図2に示されているように、エアポンプ21が設けられている。エアポンプ21は、エア供給管12に接続されているとよい。この実施形態では、エアポンプ21は、コンプレッサが搭載されており、空気を圧縮させた圧縮空気を出力する装置である。エアポンプ21は、図2に示されているように、逆流防止バルブ26に接続された上で、分岐管27が取り付けられている。分岐管27には、エアレーションノズル14が取り付けられたエア供給管12が取り付けられている。また、この実施形態では、分岐管27には、第2エアレーションノズル15に空気を送る第2供給管28が取り付けられている。また、分岐管27には、圧力計29が取り付けられている。これにより、エアポンプ21からエアレーションノズル14および第2エアレーションノズル15に圧縮空気が送られる。また、エアポンプ21からエアレーションノズル14および第2エアレーションノズル15に送られる圧縮空気の圧力が圧力計29で測定されるように構成されている。このように、エアレーションノズル14や第2エアレーションノズル15へのエアの供給は、エアポンプ21を通じて行なわれる。
【0033】
図1および図2に示された形態では、エアポンプ21は、蓄電池22に接続されている。さらに、蓄電池22は、太陽光パネル23に接続されている。エアポンプ21を駆動させるための電力は、浮体11に取り付けられた太陽光パネル23を通じて得られるように構成されている。この実施形態では、図1および2に示されているように、浮体11の上部には、周縁部に沿って立ち上がった壁11eが設けられている。ここで、壁11eは、浮体11の上部に水が浸入するのを防ぐ役目があり、適当な高さが設定されるとよい。壁11eの高さは、浮体11が設置される水域の風の影響や、波の影響などが考慮されて適当な高さが設定されるとよい。また、壁11eには、ドレン(図示省略)が設けられて、浮体11の上部に侵入した水が適切に排出されるように構成されているとよい。
【0034】
また、図1に示されているように、浮体11の上には、蓄電池22と、太陽光パネル23が設けられているとよい。図1に示されているように、太陽光パネル23は、浮体11の上面を覆うように浮体11に取り付けられているとよい。太陽光パネル23は、例えば、浮体11に取り付けられた支持フレーム23aに設置されているとよい。支持フレーム23aは、例えば、壁11eに取り付けられているとよい。蓄電池22は、太陽光パネル23の下に配置されており、太陽光パネル23で発電された電力が蓄えられるように構成されているとよい。エアポンプ21は、蓄電池22に接続され、昼夜を問わず、蓄電池22から電力を得て駆動しうるように構成されているとよい。
【0035】
〈アンカー16〉
水質浄化装置10は、水底に沈められたアンカー16によって、水域の一定の場所に設置されるとよい。ここで、水質浄化装置10は、アンカーケーブル17と、アンカーケーブル17に取り付けられたアンカー16とを備えているとよい。アンカーケーブル17は、例えば、浮体11、内筒12aおよび外筒13のうちいずれか1つに取り付けられるとよい。水域の一定の場所に水質浄化装置10が留まることによって、安定した水質浄化効果が得られる。なお、ここでは、アンカー16およびアンカーケーブル17で固定されることを例示しているが、水質浄化装置10の設置方法は、かかる方法に限定されない。例えば、ロープなどで、護岸などの構造物に固定してもよい。
【0036】
〈水位測定センサ〉
水質浄化装置10には、水位測定センサ30が取り付けられてもよい。水位測定センサ30は、例えば、GPSを通じて水位が測定されるものでもよいし、アンカー16のように水底に沈めてその水圧からの水位が測定されるものでもよい。水質浄化装置10は、さらに通信装置によって、水位測定センサ30で測定される水位についてのデータが送信され、水位測定センサ30で測定される水位が遠隔で検知できるように構成されていてもよい。これにより、水質浄化装置10が設置された水域の水位が遠隔で監視されうる。例えば、住宅地に近接した溜池などでは、雨で水位が上昇したことが溜池を見に行かずとも把握され、水門の開閉などのタイミングを確認しうる。また、天候に寄らず、水位が異常に低下する場合には漏水が疑われる。このような異常も、水位が常時監視されることによって、流入水量との差分から早期に検知されうる。水質浄化装置10は、例えば、浮体11に太陽光パネル23や蓄電池22を取り付けることができ、電源を得ることができる。水質改善に加えて、水位測定センサ30など簡易な構成を付加することによって、常時水位を検知する手段として多機能化が図られうる。
【0037】
このように水質浄化装置10は、下方に向けて錐状に突出した中心部を有する浮体11と、浮体11の中心部から間隔を開けて、下方に延びた外筒13と、外筒13の下部にエアを供給するエア供給装置20とを備えているとよい。かかる水質浄化装置10によれば、エア供給装置20によって外筒13の下部にエアが供給されることによって、外筒13内に上昇する水流が生じる。このことによって、外筒13の下部から周囲の水が吸い込まれる。そして、水域の底の方の水を水域の上部に吸い上げて循環させることができ、閉鎖水域の水質を効率よく改善させることができる。エア供給装置20は、例えば、図1に示されているように、浮体11の中心部から下方に延びたエア供給管12と、エア供給管12の先端に取り付けられたエアレーションノズル14とを備えているとよい。
【0038】
《変形例》
以下、水質浄化装置10の変形例をさらに説明する。図4は、外筒13の下端を拡大した縦断側面図である。図4に示された形態では、カバー36と、フィルタ38をさらに備えている。
【0039】
カバー36は、外筒13の下方に、外筒13の最下端13aの開口13bに対向するように間隔を開けて配置されている。カバー36は、例えば、開口13bよりも少し広い板状の部材であり、外筒13の最下端13aに取り付けられる支持部37を介して、最下端13aの開口13bに対向するように所要の間隔を開けて配置されている。ここで、カバー36と、最下端13aの開口13bとの間隔は、当該間隙から水がスムーズに入り込む程度の隙間が形成されているとよい。カバー36は、外筒13の下端が、直接、水底に当たるのを抑止できる。また、カバー36が着底しても、外筒13の下端の開口13bと、カバー36との間に間隙があるので、外筒13への水の吸い込みが阻害されない。外筒13の下端の開口から水底の泥などが吸い込まれにくくなる。カバー36は、適宜に「端板」とも称される。外筒13の下端の開口13bと、カバー36との間に、所要の間隙を形成するため、また、外筒13を上昇する水流が形成される際に、水底の泥が巻き上がるのを抑止するため、カバー36を支持する支持部37は、軸状の部位とし、所要の長さを有しているとよい。カバー36は、安定して外筒13に取り付けられているとよい。例えば、支持部37は、外筒13に、ボルトによって固定されていたり、溶接されていたりするとよい。
【0040】
フィルタ38は、エアレーションノズル14を覆う部材である。例えば、エアポンプ21をオフにした際にサイフォン効果で水がエア供給管12に逆流する場合がある。フィルタ38は、このような逆流する対するエアレーションノズル14の目詰まりを防止する部材であるとよい。フィルタ38は、例えば、合成繊維からなる網材であり、エアレーションノズル14を覆うように構成さているとよい。フィルタ38の目の細かさは、エアレーションノズル14からのエアがスムーズに抜け、かつ、エアレーションノズルの目詰まりを防止させるものであるとよい。上記観点において、フィルタ38は、例えば、エアレーションノズル14を覆う袋状の部材であってもよい。かかる観点において、フィルタ38の材質は問わない。
【0041】
〈水質浄化装置10A〉
図5は、他の形態に係る水質浄化装置10Aの側面図である。水質浄化装置10Aでは、外筒13Aは、端部が閉塞された二重パイプ構造で構成されている。また、外筒13Aは、下部の内周面に、エアの吹き出し口41を有している。吹き出し口41は、二重パイプ構造の外筒13Aの内周面(内壁)において、二重パイプ構造の外筒13Aの壁面内の間隙42に貫通しているとよい。エア供給装置20Aは、外筒13Aの壁面の間隙42を通じて、エアを供給するように構成されているとよい。例えば、外筒13Aの壁面の間隙42にエアを送る配管43が設けられているとよい。この場合、外筒13Aは、外側面の上部に、エア供給口44を有しているとよい。配管43は、かかるエア供給口44に接続されている。また、図5に示された形態では、外筒13Aの壁面の間隙42にエアを送る配管43が、所要の剛性を有する配管で構成されている。外筒13Aは、配管43によって、浮体11に対して固定されている。
【0042】
かかるエア供給装置20Aによれば、エア供給装置20Aおよび配管43を通じて、外筒13Aの壁面の間隙42にエアが供給される。外筒13Aの壁面の間隙42に供給されたエアは、外筒13Aを通じて、下部の内周面の吹き出し口41から吹き出し、外筒13Aの内側に上昇する水流が形成される。また、図1に示された形態で存在していたエア供給管12を省略でき、外筒13を固定していた固定部品31,32も省略できる。外筒13内には、エア供給管12や固定部品31,32のような部材がないので、ゴミが絡まりにくい。このように、図5に示された水質浄化装置10Aによれば、外筒13内には、エア供給管12や固定部品31,32のようなエアの上昇を阻害する部品がなく、外筒13Aの内側に、スムーズに上昇する水流を形成することができる。かかる水質浄化装置10Aでは、二重パイプ構造のエア供給装置20Aを通じて、外筒13Aの下部にエアを供給することができ、外筒13Aがエア供給管12の役割を担っている。
【0043】
なお、水質浄化装置10Aでは、外筒13Aの壁面の間隙42にエアを送る配管43によって、外筒13Aが浮体11に固定されているが、かかる形態に限定されない。例えば、外筒13Aを浮体11に対して固定する部材は、配管43とは、別の部材で、構成されていてもよい。この場合でも、外筒13Aを浮体11に対して固定する部材は、外筒13Aの外周面に取り付けられているとよい。この場合、外筒13Aを浮体11に対して固定する部材が、外筒13Aの内周面に設けられていない。この場合、固定部材にゴミなどが絡むことなどのトラブルが生じにくくなり、かつ、外筒13Aに沿って水を上昇させる機能が向上することが期待できる。
【0044】
なお、図5に示された形態では、外筒13Aは、ストレートな直管である。外筒13Aは、かかる形態に限定されない。例えば、図示は省略するが、外筒13Aの上部13A1は、上方ほど内径が大きくなったテーパー状の内径を有していてもよい。この場合、水面に向かう程、泡が大きくなることと相まって、外筒13A内の水がエアによってスムーズに押し上げられる。このため、外筒13Aに沿って水を上昇させる機能が向上することが期待できる。外筒13Aの上部13A1を、上方ほど内径が大きくなったテーパー状の内径とする構成は、例えば、図1に示された形態にも採用されうる。
【0045】
図6は、水質浄化装置10の変形例を示す側面図である。図6に示されているように、水質浄化装置10は、外筒13の外側に、外筒13の外周を囲う管材50をさらに備えていてもよい。なお、図6では、管材50を固定する部材は、省略されている。管材50は、例えば、外筒13、エア供給管12、浮体11などに、固定部材(図示省略)によって固定されているとよい。外筒13の外周を囲う管材50をさらに備えていることによって、外筒13を上昇するエアおよび水流の流れが安定しやすい。なお、図6に示す例では、エア供給管12は、外筒13の下端よりも下方に延びている。この場合、エアレーションノズル14から噴出するエアは、外筒13だけでなく、外筒13の外周を囲う管材50にも漏れる。このため、管材50にも上昇流を生じうる。このように、外筒13の外周を囲う管材50の下端にもエアが供給されるように構成されていてもよい。このように、外筒13は、外筒13の外周を囲う管材50をさらに設けるなど、多重管で構成されていてもよい。
【0046】
図7は、浮体11の側面図である。浮体11の下面には、図7に示されているように、中心から外縁に向けて延びた突条11f(または溝)からなる整流部11gが形成されていてもよい。この場合、突条11f(または溝)からなる整流部11gが形成されていることによって、浮体11の下面に形成された突条11f(または溝)に沿ってエアが上昇しやすくなり、浮体11の周りのエアや水の流れに回転が与えられ、渦を発生させることができる。かかる整流部11gは、図7に示されているように、浮体11の下面に螺旋状に形成されていてもよい。突条11f(または溝)からなる整流部11gの具体的な形状は、浮体11の周りの流れを整えるとの観点において適宜に適当な形状が採用されうる。
【0047】
ここで説明した水質浄化装置は、例えば、海洋養殖にも適用可能である。ここで説明した水質浄化装置は、植物プラクトンやリンなどの栄養に富む海底付近の海水を、外筒13内の曝気を通じて上昇させ、浮体11の下面を通じて広いエリアに拡散させることができる。このため、水質浄化装置が、海洋養殖が行われているエリアに設置されることによって、植物プラクトンやリンなどの栄養に富む海底付近の海水を、海洋養殖が行われているエリアに行き渡らせることができる。また、ポンプで海水を汲み上げる場合に比べて、外筒13への曝気を通じて、海水を上昇させるので、汲み上げられる海水の水質を改善させることができ、外筒13のつまりなども発生しにくい。
【0048】
以上、ここでの開示について、種々説明したが、ここでの開示は、特に言及されない限りにおいて、上述した実施形態や変形例に限定されない。また、種々言及した実施形態や変形例の各構成は、互いに阻害しない関係であれば、適宜に組み合わせることができる。
【0049】
本発明(1)は、水質浄化装置に関する。ここで、本発明(1)における水質浄化装置は、
下方に向けて錐状に突出した中心部を有する浮体と、
前記浮体の中心部から間隔を開けて、下方に延びた外筒と、
前記外筒の下部にエアを供給するエア供給装置と
を備えている。
【0050】
本発明(2)は、(1)の水質浄化装置であって、
前記エア供給装置は、
前記浮体の中心部から下方に延びたエア供給管と、
前記エア供給管の先端に取り付けられたエアレーションノズルと
を備えている。
【0051】
本発明(3)は、水質浄化装置に関する。ここで、本発明(3)における水質浄化装置は、
下方に向けて錐状に突出した中心部を有する浮体と、
前記浮体の中心部から下方に延びたエア供給管と、
前記エア供給管の回りを囲うように設けられた外筒と、
前記エア供給管の先端に取り付けられたエアレーションノズルと
を備えている。
【0052】
本発明(4)は、(1)から(3)までの何れかの水質浄化装置であって、
前記浮体は、
前記中心部の周りに径方向に中心部よりも緩やかに広がった拡径部を
さらに有する。
【0053】
本発明(5)は、(1)から(4)までの何れかの水質浄化装置であって、
前記浮体の中心部は、垂直方向に貫通した貫通孔を有し、
前記エア供給管は、前記貫通孔に挿通された所要の剛性を有する管体を有する。
【0054】
本発明(6)は、(1)から(5)までの何れかの水質浄化装置であって、
前記浮体は、
前記エア供給管に接続されたエアポンプと、
前記エアポンプに接続された蓄電池と、
前記蓄電池に接続された太陽光パネルと
を備えている。
【0055】
本発明(7)は、(1)から(6)までの何れかの水質浄化装置であって、
前記外筒の外側に配置された第2エアレーションノズルを、さらに備えている。
【0056】
本発明(8)は、(1)から(7)までの何れかの水質浄化装置であって、
水位測定センサをさらに備えている。
【0057】
本発明(9)は、(1)から(8)までの何れかの水質浄化装置であって、
アンカーケーブルと、前記アンカーケーブルに取り付けられたアンカーと
を備えている。
【0058】
本発明(10)は、(1)から(9)までの何れかの水質浄化装置であって、
前記外筒の下方に、前記外筒の開口に対向するように間隔を開けて配置されたカバーをさらに備えている。
【0059】
本発明(11)は、(1)から(10)までの何れかの水質浄化装置であって、
前記エアレーションノズルを覆うフィルタをさらに備えている。
【0060】
本発明(12)は、(1)から(11)までの何れかの水質浄化装置であって、
前記外筒は、
端部が閉塞された二重パイプ構造で構成されており、
下部の内周面にエアの吹き出し口を有し、
前記エア供給装置は、前記外筒の壁面の間隙を通じて、エアを供給するように構成されている。
【0061】
本発明(13)は、(12)の水質浄化装置であって、
前記外筒は、外側面または上部に、前記外筒の壁面の間隙空間に、前記エア供給装置に接続されてエアが供給されるエア供給口を有する。
【0062】
本発明(14)は、(12)または(13)の水質浄化装置であって、
前記外筒を浮体に対して固定する部材は、前記外筒の外周面に取り付けられている。
【0063】
本発明(15)は、(1)から(14)までの何れかの水質浄化装置であって、
前記外筒の上部は、上方ほど内径が大きくなったテーパー状の内径を有している。
【0064】
本発明(16)は、(1)から(15)までの何れかの水質浄化装置であって、
前記外筒の外周を囲う管材をさらに備えている。
【0065】
本発明(17)は、(1)から(16)までの何れかの水質浄化装置であって、
浮体の下面が中心から外縁に向けて延びた突条または溝からなる整流部が形成されている。
【0066】
本発明(18)は、(1)から(17)までの何れかの水質浄化装置であって、
前記整流部は、前記浮体の下面に螺旋状に形成されている。
【符号の説明】
【0067】
10,10A 水質浄化装置
11 浮体
11a 中心部
11a1 中心部11aの外側面
11b 拡径部
11c 貫通孔
11d 最下端
11e 壁
11f 突条(または溝)
11g 整流部
12 エア供給管
12a 内管
12a 管体
12b チューブ
13 外筒
13A 外筒(二重パイプ構造)
13A1 外筒13Aの上部
13a 最下端
13b 開口
14 エアレーションノズル
16 アンカー
17 アンカーケーブル
20,20A エア供給装置
21 エアポンプ
22 蓄電池
23 太陽光パネル
23a 支持フレーム
26 逆流防止バルブ
27 分岐管
29 圧力計
30 水位測定センサ
31,32 固定部品
33 外筒13内部の間隙
34 外筒13上部の間隙
36 カバー
37 支持部
38 フィルタ
41 吹き出し口
42 間隙
43 配管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7