(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161875
(43)【公開日】2024-11-20
(54)【発明の名称】製氷機
(51)【国際特許分類】
F25C 1/25 20180101AFI20241113BHJP
【FI】
F25C1/25 B
F25C1/25 303B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023174484
(22)【出願日】2023-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2023076795
(32)【優先日】2023-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141645
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100076048
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜幾
(72)【発明者】
【氏名】中田 大貴
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祐真
(72)【発明者】
【氏名】石榑 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】植田 毅
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で製氷機構の全体を衛生的に保つことができる製氷機を提供する。
【解決手段】箱体10の内部に、製氷機構16が収容される収容室11が画成される。製氷機構16の製氷水タンク15に、タンク内に向けて紫外線を照射する殺菌手段32が配設される。殺菌手段32は、製氷水タンク15の閉成位置ではタンク内に貯留されている製氷水を殺菌し、製氷水タンク15の開放位置ではタンク内の空気を殺菌する。製氷水タンク15に、タンク内に吸込口を介して連通するダクト34が配設される。ダクト34に、タンク内から吸い込んだ空気を吹出口から吹き出すファンモータが配設される。製氷水タンク15の開放位置においてダクト34から殺菌された空気を収容室11に吹き出すことで、製氷機構16を殺菌する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍機構によって冷却される製氷部および製氷水が貯留される製氷水タンクを備える製氷機構が、箱体に内部画成した収容室に配置され、前記製氷水タンクと製氷部との間で製氷水を循環して該製氷部に氷を生成する製氷機であって、
前記製氷水タンク内に向けて紫外線を照射し、該製氷水タンクに貯留されている製氷水の増減に応じてタンク内の製氷水または空気を殺菌する殺菌手段と、
前記製氷水タンク内に吸込口が連通するダクトと、
前記製氷水タンク内からダクトに吸い込んだ空気を前記収容室に吹き出す送風手段と、を備えた
ことを特徴とする製氷機。
【請求項2】
前記製氷機構は、下方に開口する製氷小室が形成された前記製氷部と、該製氷部の下方に位置して上下に傾動可能に一端が枢支されて、前記製氷小室を閉成する閉成位置および開放する開放位置の間で傾動可動な水皿と、該水皿に一体的に設けられた前記製氷水タンクと、を備え、
前記ダクトは、前記製氷水タンクにおける水皿の枢支側に対応する壁に設けられ、
前記水皿の開放位置において前記ダクトは、前記収容室の内壁に沿って上向きに空気を吹き出す姿勢となるよう構成した請求項1記載の製氷機。
【請求項3】
前記ダクトに、前記製氷水タンクの前記壁から突出する突出部との干渉を回避する凹部を設けた請求項2記載の製氷機。
【請求項4】
前記ダクトに前記送風手段が配設され、該送風手段に設けた吹出口の上方を離間して覆うガード部材を備え、
該ガード部材における前記吹出口の上方を覆う天壁は、前記製氷水タンクから離間するにつれて上方傾斜するよう構成した請求項1記載の製氷機。
【請求項5】
前記製氷水タンクの壁に、前記ダクトの吸込口が連通する通孔が形成されると共に、
前記製氷水タンクの壁および前記ダクトに、前記通孔と吸込口とを連通するように位置決めする位置決め手段が設けられ、
前記製氷水タンクとダクトは、前記位置決め手段で位置決めした状態で接合されている請求項1記載の製氷機。
【請求項6】
前記ダクトを、前記製氷水タンクにおいて、前記送風手段の作動時に製氷水タンクに貯留されている製氷水を前記吸込口から吸い込むことのない上部位置に設けた請求項1記載の製氷機。
【請求項7】
前記ダクトの吸込口および前記製氷水タンクに設けられて吸込口が連通する通孔は、側方に開口する横長扁平形状に形成した請求項1~6の何れか一項に記載の製氷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、製氷水タンクに貯留した製氷水を、製氷水タンクと製氷部との間で循環して該製氷部に氷を生成する製氷機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多量の氷を製造し得る製氷機が、喫茶店やレストラン等の施設その他の厨房において好適に使用されている。製氷機としては、下向きに開口する多数の製氷小室に製氷水を下方から噴射供給して、該製氷小室に氷を生成する噴射式の製氷機構を備えたものがある。製氷機の概略構成を説明すれば、箱体内に水平に配置した製氷部に、下方に開口する製氷小室が碁盤目状に多数画成されると共に、該製氷部の上面には、冷凍機構を構成する蒸発器が密着的に蛇行配置される。また製氷部の下方には、支軸を介して水皿が傾動可能に枢支されると共に、該水皿の下部には外部水道源から供給される製氷水を貯留する製氷水タンクが一体的に設けられている。このように構成された製氷機では、製氷水タンクに貯留した製氷水を、冷凍機構により冷却される製氷部に循環ポンプで供給して該製氷部で氷を生成し、製氷部で氷結しなかった製氷水を製氷水タンクに回収して再循環するよう構成される。
【0003】
前記製氷機では、製氷部で生成した氷塊を貯留する貯氷庫内に氷が満杯になると、製氷運転を停止しているが、製氷運転の停止状態において、外部水道源から製氷水タンクへの製氷水の給水経路や製氷機構に水が残留しているため、該給水経路や製氷機構で雑菌が繁殖するおそれがある。そこで、製氷水の給水経路や製氷機構に紫外線照射器を設け、該紫外線照射器から照射される紫外線によって殺菌するよう構成した製氷機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の製氷機では、給水経路や製氷機構の夫々に紫外線照射器を設ける必要があり、部品点数が多くなる問題が指摘される。また、紫外線照射器から照射される紫外線によって殺菌可能な範囲は限られるため、製氷機構の全体を殺菌するためには、更に多くの紫外線照射器が必要となって構成が複雑になると共にコストも嵩む難点が指摘される。
【0006】
本発明は、前述した従来技術に内在する前記課題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、簡単な構成で製氷機構の全体を衛生的に保つことができる製氷機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、請求項1の発明に係る製氷機は、
冷凍機構によって冷却される製氷部(13)および製氷水が貯留される製氷水タンク(15)を備える製氷機構(16)が、箱体(10)に内部画成した収容室(11)に配置され、前記製氷水タンク(15)と製氷部(13)との間で製氷水を循環して該製氷部(13)に氷を生成する製氷機であって、
前記製氷水タンク(15)内に向けて紫外線を照射し、該製氷水タンク(15)に貯留されている製氷水の増減に応じてタンク内の製氷水または空気を殺菌する殺菌手段(32)と、
前記製氷水タンク(15)内に吸込口(34a,46b)が連通するダクト(34,42,45)と、
前記製氷水タンク(15)内からダクト(34,42,45)に吸い込んだ空気を前記収容室(11)に吹き出す送風手段(35)と、を備えたことを要旨とする。
請求項1の発明では、製氷水タンク内に向けて紫外線を照射する単一の殺菌手段によって、製氷水タンクに貯留される製氷水を殺菌できると共に、該紫外線で殺菌されたタンク内の空気を収容室に循環して収容室内に配置されている製氷機構の全体を殺菌することができ、構成が簡単になると共に製造コストを抑えることができる。
【0008】
請求項2に係る発明は、
前記製氷機構(16)は、下方に開口する製氷小室(13a)が形成された前記製氷部(13)と、該製氷部(13)の下方に位置して上下に傾動可能に一端が枢支されて、前記製氷小室(13a)を閉成する閉成位置および開放する開放位置の間で傾動可動な水皿(14)と、該水皿(14)に一体的に設けられた前記製氷水タンク(15)と、を備え、
前記ダクト(34,42,45)は、前記製氷水タンク(15)における水皿(14)の枢支側に対応する壁(31)に設けられ、
前記水皿(14)の開放位置において前記ダクト(34,42,45)は、前記収容室(15)の内壁(11a)に沿って上向きに空気を吹き出す姿勢となるよう構成したことを要旨とする。
請求項2の発明では、ダクトから殺菌された空気を収容室の内壁に沿って吹き出すことができるので、該空気を収容室に効率的に循環させることができ、製氷機構を効果的に殺菌できる。
【0009】
請求項3に係る発明は、
前記ダクト(42)に、前記製氷水タンク(15)の前記壁(31)から突出する突出部(43)との干渉を回避する凹部(42a)を設けたことを要旨とする。
請求項3の発明では、ダクトに、製氷水タンクの枢支側の壁から突出する突出部との干渉を回避する凹部を設けたので、該ダクトを製氷水タンクの枢支側の壁に近づけて配設することができる。すなわち、製氷水タンクからのダクトの突出量を抑えることができるので、製氷水タンクのサイズによって収容室の内壁と製氷水タンクの枢支側の壁との離間間隔が異なる各種仕様の製氷機に対して、ダクトを共通化することが可能となる。
【0010】
請求項4に係る発明は、
前記ダクト(45)に前記送風手段(35)が配設され、該送風手段(35)に設けた吹出口(36)の上方を離間して覆うガード部材(55)を備え、
該ガード部材(55)における前記吹出口(36)の上方を覆う天壁(56)は、前記製氷水タンク(15)から離間するにつれて上方傾斜するよう構成したことを要旨とする。
請求項4の発明では、送風手段の上方を覆うガード部材により、上方から滴下する水滴が送風手段に侵入するのを防止して該送風手段の故障発生を防ぐことができる。また、ガード部材の天壁によって送風手段から吹き出される空気を整流して、該空気を収容室に効果的に吹き出させることができる。
【0011】
請求項5に係る発明は、
前記製氷水タンク(15)の壁(31)に、前記ダクト(45)の吸込口(46b)が連通する通孔(49)が形成されると共に、
前記製氷水タンク(15)の壁(31)および前記ダクト(45)に、前記通孔(49)と吸込口(46b)とを連通するように位置決めする位置決め手段(48a,50)が設けられ、
前記製氷水タンク(15)とダクト(45)は、前記位置決め手段(48a,50)で位置決めした状態で接合されていることを要旨とする。
請求項5の発明では、位置決め手段によって製氷水タンクの通孔とダクトの吸込口とを位置ずれすることなく連通した状態で、製氷水タンクにダクトを接合することができるので、通孔と吸込口との位置ずれに起因する製氷水タンクからの水漏れを防ぐことができる。
【0012】
請求項6に係る発明は、
前記ダクト(45)を、前記製氷水タンク(15)において、前記送風手段(35)の作動時に製氷水タンク(15)に貯留されている製氷水を前記吸込口(46b)から吸い込むことのない上部位置に設けたことを要旨とする。
請求項6の発明では、製氷水タンクに貯留されている製氷水が送風手段に侵入して故障するのを防ぐことができる。
【0013】
請求項7に係る発明は、
前記ダクト(45)の吸込口(46b)および前記製氷水タンク(15)に設けられて吸込口(46b)が連通する通孔(49)は、側方に開口する横長扁平形状に形成したことを要旨とする。
請求項7の発明では、送風手段による空気の吸込み量を充分に確保しつつ、ダクトや送風手段が他の部材に干渉することなく、製氷水タンクにおいて吸込口および通孔の位置を高くすることができ、製氷水タンクに貯留されている製氷水が送風手段に侵入して故障するのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る製氷機によれば、単一の殺菌手段によって製氷水の循環経路および収容室に配置されている製氷機構の全体を殺菌して衛生的に保つことができ、構成を簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】水皿を閉成位置に位置付けた実施例1の製氷機の要部概略断面図である。
【
図2】実施例1の製氷機構を示す概略斜視図である。
【
図3】水皿を開放位置に位置付けた実施例1の製氷機の要部概略断面図である。
【
図5】実施例1の殺菌手段の配設部位を示す要部概略斜視図である。
【
図6】殺菌手段と製氷水タンクとの関係を示す説明図であって、(a)は閉成位置の状態で示し、(b)は開放位置の状態で示している。
【
図7】実施例2の製氷機構を示す要部概略図である。
【
図9】実施例3の製氷機構を示す要部概略正面図である。
【
図10】実施例3の製氷機構の要部を一部分解して示す概略斜視図である。
【
図11】実施例3のファンモータを取り付けたダクトを示す概略斜視図である。
【
図12】実施例3のダクト、ファンモータおよびガード部材を組み付けた状態で示す概略側面図である。
【
図13】実施例3のダクトの本体を示す概略斜視図である。
【
図14】実施例3のダクトのモータ取付部を示す概略斜視図である。
【
図15】実施例4の製氷機構を示す要部概略正面図である。
【
図16】ダクトおよびファンモータと製氷水タンクの上限水位との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明に係る製氷機につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。実施例では、製氷機として、所謂クローズドセルタイプの製氷機構を備えた噴射式の製氷機を挙げて説明する。
【実施例0017】
図1に示す実施例1の製氷機は、その本体となる断熱構造の箱体10の内部に、後述するドレンパン24によって上方の収容室11と、下方の貯氷室12とが区画され、収容室11に、製氷部13、水皿14および製氷水タンク15等からなる製氷機構16が配置されている。具体的には、
図1~
図3に示す如く、箱体10の上部に水平に配置されている取付部材17の下方に、下向き(一方)に開口する多数の製氷小室(製氷室)13aを画成した製氷部13が固定支持される。製氷部13の上面には、冷凍機構を構成する蒸発器18が密着的に蛇行配置され、製氷運転時に冷媒を循環させて製氷部13(製氷小室13a)を強制冷却し、除氷運転時に高温冷媒(ホットガス)を循環させて製氷部13(製氷小室13a)を加熱するよう構成される。また、製氷部13の下方に水皿14が配設され、この水皿14の下側に、製氷水を貯留する製氷水タンク15が一体的に配設されている。箱体10は、収容室11の上部を塞ぐ断熱構造の天板19を備え、該天板19が収容室11の上内壁を構成している。なお、図示しないが、箱体10には、貯氷室12から氷を取り出すための取出口が前方に開放するように開設されると共に、この取出口を開閉する扉が配設されている。以下の説明において、扉が設けられる側を前側として、前後方向を指称し、左右方向とは、製氷機を正面から見た
図1の状態での左右方向をいう。
【0018】
前記箱体10の下部に機械室(図示せず)を画成することができ、該機械室に、冷凍機構を配置可能である。冷凍機構は、圧縮機、凝縮器、膨張弁(膨張手段)および蒸発器18の順番で冷媒が循環するように構成でき、製氷運転では、圧縮機で圧縮された気化冷媒は、凝縮器で凝縮液化された後、膨張弁で減圧され、蒸発器18に流入してここで一挙に膨張して蒸発し、前記製氷部13と熱交換を行って該製氷部13を氷点下にまで強制冷却させる。そして、蒸発器18で蒸発し熱交換した気化冷媒は、圧縮機に帰還するサイクルを反復する。冷凍機構は、除氷運転では、ホットガス弁の切り替えによってホットガスを蒸発器18に供給し、製氷部13を加熱するよう構成される。
【0019】
図1~
図3に示す如く、前記水皿14は、前記取付部材17の左側に偏った位置に設けられた支持部17aに対して前後方向に延在する支持軸20を介して左端側(一端側)が回動可能に枢支されて、製氷部13に対して水皿14は、右端側(他端側)が上下方向に傾動可能に構成される。水皿14には、各製氷小室13aと対応する位置に、前記製氷水タンク15内の製氷水を製氷部13の各製氷小室13aへ噴射するための噴射孔14aおよび製氷部13へ供給されて氷結に至らなかった製氷水(未氷結水)を製氷水タンク15へ戻す戻り孔14bが夫々開設されている。
【0020】
図1に示す如く、前記水皿14の上方に、図示しない水道源に連通する給水管21を設けることができ、該給水管21に介挿した給水弁22を開放して、給水管21から常温の水を水皿14の表面へ供給することが可能としてある。そして、水皿表面に供給された水は、水皿14に設けた前記戻り孔14b等を介して製氷水タンク15に貯留され、製氷水として使用される。製氷水タンク15に、該製氷水タンク15に貯留されている製氷水を水皿14に供給する循環ポンプ23を配設することができ、該循環ポンプ23によって水皿14に供給された製氷水を、該水皿14に設けた前記噴射孔14aから製氷部13の各製氷小室13aに噴射供給できる。そして、製氷部13で氷結しなかった製氷水は、戻り孔14bを介して製氷水タンク15に回収され、再度の循環に供される。実施例1では、製氷水タンク15、製氷部13、水皿14および製氷水タンク15と水皿14とを循環ポンプ23を介して接続して製氷水が流通する管体(図示せず)が、製氷水タンク15と製氷部13との間で製氷水が循環する循環経路となる。
【0021】
前記製氷機構16には、前記水皿14の枢支側と反対側(右側)に、前記製氷部13に対して水皿14および製氷水タンク15からなる製氷水供給部を開閉(傾動、接離)させるための傾動機構26を設けることが可能である。製氷機構16は、製氷運転において製氷水供給部の水皿14を、
図1に示す如く、傾動機構26によって製氷部13の各製氷小室13aの下面を塞いだ閉成位置に位置付け可能であり、該閉成位置において製氷水タンク15に貯留されている製氷水を、前記循環ポンプ23により水皿14から前記蒸発器18によって冷却された各製氷小室13aに対して噴射供給することで、該製氷小室13aに氷を生成できるようになっている。また、製氷機構16は、除氷運転において製氷水供給部の水皿14を、
図3に示す如く、傾動機構26によって製氷部13から下方へ離間して製氷小室13aからの氷の放出を許容する傾斜姿勢となる開放位置に位置付け可能であり、該開放位置において蒸発器18によって加熱された製氷小室13aから離脱した氷が、水皿14の傾斜した上面に案内されて前記貯氷室12に落下するよう構成される。なお、傾動機構26は、製氷水供給部を傾動して閉成位置と開放位置とで姿勢変化させるものであるが、以下の説明では、単に水皿14を傾動するというと共に、水皿14の閉成位置、開放位置という場合がある。
【0022】
前記傾動機構26は、ギヤードモータ等のモータ(駆動手段)27により正転方向または逆転方向に回転するカム部材28を備えてもよく、該カム部材28を正転方向または逆転方向に回転することで、前記水皿14を、前記閉成位置と開放位置とに変位させることが可能な構成にできる。傾動機構26は、閉成位置から傾動した水皿14が開放位置に至ったことを検知すると共に、開放位置から傾動した水皿14が閉成位置に至ったことを検知する水皿検知手段(図示せず)を設けることができ、該水皿検知手段が水皿14の開放位置または閉成位置を検知してモータ27を停止することで、水皿14を開放位置または閉成位置に保持する構成とすることができる。
【0023】
図1に示す如く、前記製氷機構16の下方に、該製氷機構16から流下する排水(製氷残水、オーバーフロー水、結露水等)を受けるドレンパン24を配設することができる。ドレンパン24には、該ドレンパン24で受けた排水を機外に排出するドレン管25を設けることができる。また、ドレンパン24には、前記水皿14の開放位置での傾斜下端側の下方位置に、収容室11と貯氷室12とを連通する開口部24aを形成することができ、除氷運転において製氷部13から落下して水皿14の上面を滑落する氷を、開口部24aを介して貯氷室12に放出可能な構成にできる。また、貯氷室12には、製氷機構16での製氷運転と除氷運転とを交互に行う製氷サイクルを繰り返すことで貯氷室内に、規定量の氷が貯留されたことを検知可能な貯氷スイッチ(貯氷検知手段)29を設けることができ、該貯氷スイッチ29の検知に基づいて製氷機構16での氷の製造を待機(製氷運転の停止、製氷サイクルの待機)できる構成とすることが可能である。そして、貯氷スイッチ29が氷を検知しなくなる(貯氷室内の氷が規定量未満になる)と、製氷機構16での氷の製造を再開(製氷運転の開始、製氷サイクルの開始)する構成とすることができる。実施例1では、貯氷室12内の氷が満杯状態(規定量)となったときに氷によりスイッチがON作動して満杯を検知し、貯氷室12内の氷が満杯状態(規定量)から減少して氷を検知しなくなってスイッチがOFF作動することで満杯を検知しなくなる。なお、貯氷スイッチ29が満杯を検知して製氷機構16での氷の製造を待機(停止)している間は、前記水皿14を開放位置に保持する構成とすることができる。
【0024】
製氷機は、製氷運転および除氷運転を切り替えるための手段を備えることができる。この手段として、例えば、前記製氷部13に配設された温度センサ(図示せず)を用いることが可能であって、該温度センサが製氷完了温度を検知した条件で、前記循環ポンプ23が停止されて製氷運転が完了し、除氷運転に移行する構成とすることができる。また、製氷機は、除氷運転において、前記温度センサが除氷完了温度を検知した条件で、前記蒸発器18による製氷部13の加熱が停止されると共に、前記傾動機構26によって前記水皿14が開放位置から閉成位置まで戻され、除氷運転を完了する構成とすることができる。
【0025】
図1、
図2に示す如く、前記製氷水タンク15に、タンク内に貯留する製氷水を排出可能なオーバーフローパイプ30を設けることが可能である。オーバーフローパイプ30は、前記水皿14の閉成位置および開放位置で、製氷水タンク15内の最も低くなる位置より上方位置で外部に排水口を開口し、閉成位置において製氷水タンク15に貯留する製氷水の上限水位L1(
図6(a)参照)をオーバーフローパイプ30で規定する一方、開放位置において製氷水タンク15内の一部の製氷水(製氷残水)を排出して所定量の製氷残水が残るように残留水位L2(
図6(b)参照)を規定し、残留させた製氷残水を次回の製氷水として再利用し得るように構成できる。なお、オーバーフローパイプ30の排水口から排出される製氷水等は、前記ドレンパン24で受けられる。
【0026】
図2、
図4、
図5に示す如く、前記製氷水タンク15における左壁31(水皿14の枢支側に対応する壁、傾動機構26の配置側とは反対側の壁)には、タンク内に向けて紫外線を照射可能な殺菌手段32が配設されている。殺菌手段32は、水銀ランプやメタルハライドランプ等の放電ランプ、または紫外線発光ダイオード(UVC(深紫外線)-LED)等の紫外線光源33を備え、該光源33をブラケット38によって左壁31に取り付けている。ブラケット38は、紫外線光源33を囲繞する第1部材38aと、該第1部材38aとによって紫外線光源33の光射出側を覆う紫外線透過性の樹脂シール材39を挟持する第2部材38bとからなり、該第2部材38bが左壁31に設けた貫通孔31aに挿通されている。実施例1では、樹脂シール材39として高透過性のシリコーンが用いられ、該シリコーンが有する柔軟性によって製氷水タンク内の製氷水(製氷残水)が紫外線光源33の収容部に侵入するのを防ぐよう、樹脂シール材39によって製氷水タンク15に対して殺菌手段32が水密的に配設されている。また、シリコーンからなる樹脂シール材39は、紫外線光源33が発する紫外線を外部に照射するためのレンズとして機能する。なお、ブラケット38(第2部材38b)と左壁31との間は、適宜のシーリング材によって水密に構成されている。
【0027】
前記貫通孔31aは、製氷水タンク15の閉成位置において前記オーバーフローパイプ30で規定される前記上限水位L1より下側で、かつ製氷水タンク15の開放位置での前記残留水位L2より上側に位置している。これにより、製氷水タンク15の閉成位置(製氷運転時)では、
図6(a)に示す如く、貫通孔31aに臨む紫外線光源33(樹脂シール材39)がタンク内に貯留されている製氷水の水面より下方に臨んで、紫外線光源33からの紫外線を製氷水中に照射して該製氷水を殺菌可能である。また、製氷水タンク15の開放位置(除氷運転時)では、
図6(b)に示す如く、貫通孔31aに臨む紫外線光源33がタンク内に残留している製氷残水の水面より上方に臨んで、紫外線光源33からの紫外線をタンク内の空気中に照射して該空気を殺菌可能である。なお、製氷水タンク15の開放位置において、残留水位L2より上方に位置する紫外線光源33から照射される紫外線は、製氷残水(製氷水)の水面にも照射されて該製氷残水も殺菌される。すなわち、製氷水タンク15に対して殺菌手段32は、製氷水タンク15に貯留している製氷水(製氷残水)の増減(水位の上下動)に応じてタンク内の製氷水または空気を殺菌し得るよう構成されている。
【0028】
図2、
図4に示す如く、前記製氷水タンク15の前記殺菌手段32が配設される左壁31に、タンク内に吸込口34aを介して連通するダクト34が設けられる。吸込口34aは、前記上限水位L1より上側においてタンク内に連通し、製氷水が吸込口34aを介してダクト内に流入しないよう構成される。ダクト34は、左壁31から左方に向けて延出する第1延在部40と、該第1延在部40の延出端に連設されて上方に向けて延在する第2延在部41とから構成されて、第1延在部40の端部(右端部)に設けた吸込口34aが、製氷水タンク15の左壁31に設けた通口31bを介してタンク内部に連通している。また、ダクト34の第2延在部41の端部(上端部)に、プロペラと、該プロペラを回転するモータとからなるファンモータ(送風手段)35が配設されており、該ファンモータ35を作動することで、吸込口34aから吸い込んだ製氷水タンク内の空気を、ファンモータ35の吹出口36から前記収容室11に吹き出し可能に構成される。ダクト34の第2延在部41は、
図6(b)に示す如く、水皿14(製氷水タンク15)の開放位置において、収容室11の左内壁(内壁)11aに沿う略鉛直姿勢となって、該第2延在部41に設けたファンモータ35の吹出口36が真上を向くよう構成される。すなわち、製氷水タンク15の開放位置においてダクト34は、ファンモータ35によって収容室11の左内壁11aに沿って上向きに空気を吹き出す姿勢となるよう構成される。これにより、ダクト34から上方に向けて吹き出された空気は、収容室11を画成する左、上および右の壁11a,19,11bに沿って収容室内を循環する(
図3参照)。なお、ダクト34に設けたファンモータ35の吹出口36は、殺菌手段32の配設位置の近くに位置するよう設定される。
【0029】
実施例1の製氷機では、前記貯氷スイッチ29の満杯検知に基づいて製氷機構16での氷の製造が中断されると共に、該貯氷スイッチ29の検知タイミングで前記ファンモータ35が作動を開始し、貯氷スイッチ29が満杯を検知しなくなり、製氷機構16での氷の製造が再開されるとファンモータ35の作動を停止する設定とすることが可能である。すなわち、実施例1の製氷機では、貯氷スイッチ29の検知状態では常にファンモータ35が作動して収容室内を空気が流れる構成とすることが可能である。また、ファンモータ35は、貯氷スイッチ29による満杯の非検知状態であっても、通常の製氷サイクルにおける除氷運転で前記水皿14が開放位置に位置付いている状態で作動する構成とすることが可能である。
【0030】
〔実施例1の作用〕
次に、実施例1に係る製氷機の作用について説明する。
【0031】
前記製氷機構16での製氷運転において、前記水皿14の閉成位置では、前記殺菌手段32の紫外線光源33は、
図6(a)に示す如く、前記製氷水タンク15に貯留されている製氷水の水面より下方に位置しているので、紫外線光源33からタンク内に照射される紫外線は製氷水中に照射され、該製氷水が殺菌される。そして、殺菌された製氷水が、前記循環ポンプ23によって循環経路を循環することで、該循環経路も殺菌される。前記製氷部13の製氷小室13a内に氷が生成され、前記温度センサが製氷完了温度を検知すると、循環ポンプ23を停止して除氷運転に移行する。除氷運転では、前記冷凍機構のホットガス弁の切り替えによってホットガスが蒸発器18に供給されて製氷部13が加熱されると共に、前記傾動機構26によって水皿14が閉成位置から開放位置に向けて傾動される。傾動機構26の検知手段によって水皿14の開放位置が検知されると、傾動機構26による水皿14の傾動が停止し、該水皿14は開放位置に保持される。
【0032】
前記水皿14が開放位置まで傾動することで、前記製氷水タンク15に残留している製氷残水は、前記オーバーフローパイプ30を介してドレンパン24に排出される。製氷水タンク15内の製氷残水が、オーバーフローパイプ30で規定される残留水位L2まで減少した状態では、
図6(b)に示す如く、前記殺菌手段32の紫外線光源33は製氷残水の水面より上方に位置しているので、該紫外線光源33からタンク内に照射される紫外線によって残留水位L2より上側のタンク内の空気が殺菌される。また、紫外線光源33からの紫外線は製氷残水の水面にも照射されるので、該製氷残水も殺菌される。
【0033】
前記水皿14の開放位置において、前記ファンモータ35が作動し、紫外線によって殺菌されたタンク内の空気は、前記吸込口34aからダクト34に吸い込まれて、ファンモータ35の前記吹出口36から収容室11内に吹き出される。
図3、
図6(b)に示す如く、製氷水タンク15の開放位置では、ダクト34の第2延在部41は収容室11の左内壁11aに沿う略鉛直姿勢となり、前記吹出口36からは左内壁11aに沿って上向きに空気が吹き出される。上方に向けて吹き出された空気は、左内壁11aに沿って前記天板19に至り、該天板19に沿って製氷機構16の上部領域を右方に流れた空気は、前記収容室11の右内壁11bに沿って下方に向けて流れる。そして、下方に向けて流れて開放位置の水皿14の上面に至る空気は、負圧となっている製氷水タンク内に前記戻り孔14b等から流入し、再び吸込口34aを介してダクト34に吸い込まれて、吹出口36から収容室11内に吹き出されるように循環する。また、下方に向けて流れて前記ドレンパン24に至った空気は、該ドレンパン24に沿って製氷機構16の下部領域を左方に向けて流れる。すなわち、水皿14が開放位置に保持されている状態では、紫外線によって殺菌された空気が、製氷水タンク15の内部と収容室11との間を循環すると共に、収容室11に配置されている製氷機構16の周囲を循環し、製氷水タンク15の内部および製氷機構16の全体が、循環する空気によって殺菌される。
【0034】
除氷運転によって前記製氷部13から氷が落下し、前記温度センサが除氷完了温度を検知すると、前記蒸発器18による製氷部13の加熱が停止されると共に、前記傾動機構26によって前記水皿14が開放位置から閉成位置まで戻され、除氷運転から製氷運転に移行する。なお、水皿14が閉成位置に戻る際に前記給水弁22が開放して外部水道源から供給される水が水皿14を経て製氷水タンク15に貯留され、タンク内に貯留される製氷水は、前記殺菌手段32によって殺菌される。また、水皿14の閉成位置において、前記ファンモータ35の作動が停止される。
【0035】
前記製氷運転と除氷運転とを交互に行う製氷サイクルを繰り返し、前記貯氷室12が氷で満杯となったことを前記貯氷スイッチ29が検知すると、製氷サイクルが停止し、前記水皿14は開放位置に保持される。そして、水皿14が開放位置に保持されている間は、前記ファンモータ35が作動され、前述したように、前記製氷水タンク15の内部および前記収容室11に、殺菌された空気が循環して殺菌される。
【0036】
実施例1の製氷機では、製氷水タンク15に設けた殺菌手段32によって殺菌した製氷水を循環経路に循環することで、該循環経路を殺菌して衛生的に保つことができる。また、殺菌手段32によって殺菌した空気を、製氷機構16が配置された収容室11に循環することで、製氷機構16の全体を殺菌することができる。そして、循環経路および製氷機構16全体の殺菌を、製氷水タンク15に設けた単一の殺菌手段32によって行い得るよう構成したので、構成が簡単になると共に製造コストを抑えることができる。また、製氷水タンク15の開放位置では、前記ダクト34の第2延在部41は収容室11の左内壁11aに沿う略鉛直姿勢となり、前記吹出口36からは左内壁11aに沿って上向きに空気が吹き出されるので、該空気は収容室内を効率的に循環し、製氷機構16の全体を効果的に殺菌することができる。
【0037】
ここで、前記貯氷スイッチ29の満杯検知により製氷機構16での氷の製造が中断されたときの収容室11の内部は、製氷運転を行った直後であるため、収容室11の内部は湿潤である。また、製氷運転から移行した除氷運転ではホットガスによって製氷部13を加熱するため、蒸発器18の近傍の配管等は結露が発生し易い状態であり、この状態が長時間継続すると雑菌が増殖する懸念がある。実施例1では、貯氷スイッチ29の検知タイミングで前記ファンモータ35の作動を開始するよう構成したので、製氷機構16の周囲を空気が循環することで収容室内の全体温度を均一化することができると共に、結露発生部の乾燥を促進して雑菌の増殖を抑制することができる。
【0038】
前記殺菌手段32を製氷水タンク15に取り付けるための樹脂シール材39として用いられるシリコーンは、該シリコーンの近傍に配置される蒸気圧を有する樹脂材料の蒸気が、長時間に亘ってシリコーンの周囲に滞溜していると、該蒸気によってシリコーンが汚染されて透過率が低下するおそれがある。しかし、実施例1の製氷機では、水皿14および製氷水タンク15を開放位置に位置付けた状態でファンモータ35を作動してタンク内と収容室内とで空気を循環することで、樹脂シール材39の周囲に蒸気が滞溜するのを防ぎ、蒸気によって樹脂シール材39が汚染されて機能低下するのを防ぐことができる。すなわち、紫外線を照射するレンズとして機能している樹脂シール材39の透過率が低下するのを防ぐことができ、殺菌手段32による殺菌能力の低下を防ぐことができる。
【0039】
実施例1の製氷機では、製氷水タンク15において、空気循環するためのダクト34の吸込口34aが位置する左壁31に、殺菌手段32を右方に向けて紫外線を照射するよう配設したので、タンク内を吸込口34aに向けて右から左に流れてくる空気に対して紫外線を長く当てることができ、空気の殺菌効果を高めることができる。
【0040】
(別の実施例について)
次に、実施例2~実施例4について説明する。なお、実施例2~実施例4については、実施例1と異なる部分について主に説明し、実施例1と同一または同様の機能を有する部材には同じ符号を付して詳細説明は省略する。
ここで、製氷機では、各種仕様の製氷能力に応じて水皿14や製氷水タンク15のサイズが異なっており、サイズが異なる水皿14や製氷水タンク15を、共通の箱体10(収容室11)に配設する場合、水皿14の枢支位置が共通となるため、収容室11の左内壁11aと製氷水タンク15の左壁31との離間間隔は、製氷水タンク15のサイズによって異なることとなる。このため、実施例1のように第1延在部40と第2延在部41とが等径で形成されているダクト34を、突出部43との干渉を回避するように屈曲して製氷水タンク15に配設する場合は、製氷水タンク15のサイズによっては該製氷水タンク15が開放位置に傾動する際に、ダクト34に設けたファンモータ35が左内壁11aに接触して傾動の妨げとなる事態を生じ、ダクト34の共通化を図る場合に適用し得る仕様の範囲は限定的となる。これに対し、実施例2のダクト42のように、凹部42aを設けて第2延在部41を、可能な限り左壁31に近づけることが可能に構成することで、適用可能な仕様の範囲を広げることができる。すなわち、共通のダクト42を使用可能な仕様の範囲が広がるので、異なる構成のダクトを製作するコストを低減することができ、製品コストを下げることが可能となる。また、実施例2のダクト42は、吸込口34aの開口面積、第1延在部40および該第1延在部40と第2延在部41との連設部における空気が流通する通路の断面積を、前後方向に大きくして、ダクト42の左方への突出量を大きくすることなく凹部42aでの圧力損失によって空気の流通量が低下するのを防いでいるので、空気殺菌において収容室11を循環する空気量が低下して殺菌効果が下がるのも抑制することができる。