(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161880
(43)【公開日】2024-11-20
(54)【発明の名称】電池モジュール及び電池パック
(51)【国際特許分類】
H01M 10/653 20140101AFI20241113BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20241113BHJP
H01M 10/643 20140101ALI20241113BHJP
H01M 50/342 20210101ALI20241113BHJP
H01M 50/507 20210101ALI20241113BHJP
H01M 50/521 20210101ALI20241113BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20241113BHJP
H01M 50/289 20210101ALI20241113BHJP
【FI】
H01M10/653
H01M10/613
H01M10/643
H01M50/342 101
H01M50/507
H01M50/521
H01M50/204 401H
H01M50/289
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023208437
(22)【出願日】2023-12-11
(31)【優先権主張番号】202321086429.8
(32)【優先日】2023-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】522492196
【氏名又は名称】遠景動力技術(江蘇)有限公司
【氏名又は名称原語表記】AESC Dynamics Technology(Jiangsu)Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.66 Shentai Road,Shengang Street,Jiangyin City,Wuxi City,Jiangsu Province,214443 China
(71)【出願人】
【識別番号】523454843
【氏名又は名称】遠景動力技術(湖北)有限公司
【氏名又は名称原語表記】AESC Dynamics Technology (Hubei) Ltd.
(71)【出願人】
【識別番号】523454854
【氏名又は名称】遠景動力技術(鄂爾多斯市)有限公司
【氏名又は名称原語表記】AESC Dynamics Technology (Ordos) Ltd.
(71)【出願人】
【識別番号】522492200
【氏名又は名称】遠景睿泰動力技術(上海)有限公司
【氏名又は名称原語表記】AESC Intelligent Innovation Dynamics Technology (Shanghai) Ltd.
【住所又は居所原語表記】Room 101,Building No.2,No.2555 Xiupu Road,Kangqiao Town,Pudong New District,Shanghai,201315 China
(74)【代理人】
【識別番号】100204490
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 葉子
(72)【発明者】
【氏名】張 暉
(72)【発明者】
【氏名】何 亞飛
【テーマコード(参考)】
5H012
5H031
5H040
5H043
【Fターム(参考)】
5H012AA01
5H012BB02
5H012JJ01
5H031AA09
5H031CC01
5H031EE04
5H040AA28
5H040AS07
5H040AT01
5H040AY04
5H040AY08
5H040NN01
5H040NN03
5H043AA09
5H043BA19
5H043CA03
5H043FA04
5H043LA21F
(57)【要約】 (修正有)
【課題】放熱効率を向上させ、構造的信頼性を確保する電池モジュール及び電池パックを提供する。
【解決手段】電池モジュールは、筐体10と、複数の円筒型電池20を含み、円筒型電池の第1端には、電極端子が設置される。円筒型電池は、筐体内に収容され、各円筒型電池において電極端子は、筐体と熱伝導を形成し、電極端子と筐体との間の熱伝導を利用して円筒型電池の放熱を実現するので、放熱効率を効果的に向上させる。さらに、電極端子とトレイ底部上の冷却プレートとの間の熱伝導を確立することにより、トレイの既存の工程を変更することなく、電池パックの放熱構造を変更できる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体内に収容され、第1端には電極端子が設置され、前記第1端は前記筐体の内壁に面する複数の円筒型電池と、
を備え、
前記各円筒型電池の前記第1端と前記筐体の前記内壁との間の空間、及び前記各円筒型電池の第1端に近い側面上の一部の領域には、熱伝導性のある構造用接着剤が充填される、電池モジュール。
【請求項2】
前記各円筒型電池の前記側面の間には、間隙が設置される、請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記各円筒型電池の前記側面の間の間隙のうちの最小間隙は、1mm~10mmである、請求項2に記載の電池モジュール。
【請求項4】
前記各円筒型電池の前記側面上の前記熱伝導性のある構造用接着剤が充填された前記領域の高さをA、前記円筒型電池の総高さをhとすると、下記式の通りである、請求項1に記載の電池モジュール。
【数1】
式中、Dは、前記各円筒型電池の直径である。
【請求項5】
前記各円筒型電池の前記側面上の前記熱伝導性のある構造用接着剤が充填された前記領域の前記高さAと、前記円筒型電池の前記総高さhは、下記条件を満たす、請求項4に記載の電池モジュール。
【数2】
【請求項6】
前記各円筒型電池の第1端と前記筐体との間にはバスバーが設置され、前記バスバーは、前記熱伝導性のある構造用接着剤で包まれる、請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項7】
前記円筒型電池前記の第1端は、前記筐体の底板又は上板に面する、請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項8】
前記円筒型電池の第2端に配置された固定ブラケットをさらに備え、前記各円筒型電池の前記第2端には、防爆弁を含み、前記固定ブラケットには、前記円筒型電池に対向してアレイ状に配置された複数の貫通孔が設置される、請求項7に記載の電池モジュール。
【請求項9】
前記防爆弁は、上からマイカシートで覆われる、請求項8に記載の電池モジュール。
【請求項10】
前記マイカシートの前記各防爆弁に対応する領域には、脆弱部が設置される、請求項9に記載の電池モジュール。
【請求項11】
前記各貫通孔の縁にはバックルが設置され、
前記バックルは、前記各円筒型電池の前記側面上の回転溝に係合する、請求項8に記載の電池モジュール。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の電池モジュールと、
冷却プレートが設置されたトレイと、
を備え、
前記電池モジュールは前記トレイ内に収容され、前記各円筒型電池の前記第1端が前記冷却プレートに面するように構成される、電池パック。
【請求項13】
冷却プレートが設置されたトレイと、
第1端には電極端子が設置され、前記トレイ内に収容され、前記第1端は前記冷却プレートに面する複数の円筒型電池と、
を備え、
前記円筒型電池の前記第1端と前記冷却プレートとの間の空間、及び前記各円筒型電池の第1端に近い側面上の一部の領域には、熱伝導性のある構造用接着剤が充填される、電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力電池の製造及び製造の技術分野に属し、特に、電池モジュール及び電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ほとんどの場合、円筒型電源電池の冷却には蛇行状の冷却プレートが使用されている。一般に、蛇行状の冷却プレートは円筒型電池の側面に取り付けられ、円筒型電池は、外装筐体と蛇行状の冷却プレートとの間の熱伝導により放熱を達成する。この放熱方法の欠点は、円筒型電池の側面は放熱性能に劣り、蛇行状の冷却プレートが横方向の空間を大きく占める可能性があり、動力電池のエネルギー密度に影響を与える可能性があることである。さらに、現在、円筒型動力電池の構造的信頼性を向上させるために、電池パック内には発泡媒体が充填されるのが一般的である。しかしながら、発泡媒体が電池パックの内部空洞全体に充填されるため、単一の円筒型電池を分解して交換することが困難となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来技術の上述の欠点に鑑み、本発明は、放熱効率を向上させ、構造的信頼性を確保することができる電池モジュール及び電池パックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記を達成するために、本発明は、筐体と、複数の円筒型電池と、を含む電池モジュールを提供する。
【0005】
円筒型電池の第1端には電極端子が設置され、円筒型電池は筐体内に収容され、各円筒型電池の内部において、電極端子は、筐体の底板と熱伝導を形成するように構成される。
【0006】
本発明の任意の実施形態において、円筒型電池の第1端は、筐体の底板に面する。
【0007】
本発明の任意の実施形態において、各円筒型電池の第1端と底板との間にはバスバーが設置され、円筒型電池は、バスバーを介して並列又は直列に接続される。
【0008】
本発明の任意の実施形態において、円筒型電池の側面の間にはスリットが設置される。
【0009】
本発明の任意の実施形態において、スリットには、熱伝導性のある構造用接着剤が充填される。熱伝導性のある構造用接着剤は、円筒型電池の第1端と側面の少なくとも一部と接触する。
【0010】
本発明の任意の実施形態において、円筒型電池の第2端に配置される固定ブラケットも含まれる。固定ブラケットには、円筒型電池に対向してアレイ状に配置された複数の貫通孔が設置される。
【0011】
本発明の任意の実施形態において、各貫通孔の縁にはバックルが設置され、バックルは、各円筒型電池の側面上の回転溝に係合する。
【0012】
本発明の任意の実施形態において、各円筒型電池の第2端には、防爆弁が含まれる。防爆弁は、上からマイカシートで覆われる。
【0013】
本発明の任意の実施形態において、マイカシートの各防爆弁に対応する領域には脆弱部が設置される。
【0014】
上記を達成するために、本発明は、電池モジュールと、トレイと、を含む電池パックをさらに提供する。
【0015】
トレイの底部には、冷却プレートが設置される。
【0016】
電池モジュールは、トレイ内に収容され、筐体の底板と冷却プレートとの間で熱伝導が生じるように構成される。
【0017】
上記を達成するために、本発明は、トレイと、複数の円筒型電池と、を含む電池パックをさらに提供する。
【0018】
トレイの底部には、冷却プレートが設置される。
【0019】
円筒型電池の一端には電極端子が設置され、円筒型電池はトレイ内に収容される。各円筒型電池は、電極端子と冷却プレートとの間で熱伝導が生じるように構成される。円筒型電池の第1端と冷却プレートとの間の空間、及び円筒型電池の側面間の空間には、熱伝導性のある構造用接着剤が充填される。
【0020】
上記を達成するために、本発明は、筐体と、複数の円筒型電池と、を含む電池モジュールをさらに提供する。
【0021】
円筒型電池は筐体内に収容され、円筒型電池の第1端には電極端子が設置され、円筒型電池の第1端は、筐体の内壁に面する。
【0022】
各円筒型電池の第1端と筐体の内壁との間の空間、及び各円筒型電池の第1端に近い側面上の一部の領域には、熱伝導性のある構造用接着剤が充填される。
【0023】
本発明の任意の実施形態において、各円筒型電池の側面の間には、間隙が設置される。
【0024】
本発明の任意の実施形態において、各円筒型電池の側面の間の間隙のうちの最小間隙は、1mm~10mmである。
【0025】
本発明の任意の実施形態において、各円筒型電池の側面上の熱伝導性のある構造用接着剤が充填された領域の高さをA、円筒型電池の総高さをhとすると、下記式の通りである。
【数1】
式中、Dは、円筒型電池の直径である。
【0026】
本発明の任意の実施形態において、各円筒型電池の側面上の熱伝導性のある構造用接着剤が充填された領域の高さAと、円筒型電池の総高さhは、下記条件を満たす。
【数2】
【0027】
本発明の任意の実施形態において、各円筒型電池の第1端と筐体との間にはバスバーが設置され、バスバーは、熱伝導性のある構造用接着剤で包まれる。
【0028】
本発明の任意の実施形態において、円筒型電池の第1端は、筐体の底板又は上板に面する。
【0029】
本発明の任意の実施形態において、円筒型電池の第2端に配置された固定ブラケットも含まれ、各円筒型電池の第2端には、防爆弁が含まれる。固定ブラケットには、円筒型電池に対向してアレイ状に配置された複数の貫通孔が設置される。
【0030】
本発明の任意の実施形態において、各貫通孔の縁にはバックルが設置され、バックルは、各円筒型電池の側面上の回転溝に係合する。
【0031】
上記を達成するために、本発明は、上記に開示した電池モジュールと、トレイと、を含む電池パックをさらに提供する。
【0032】
トレイには、冷却プレートが設置される。
【0033】
電池モジュールは、トレイ内に収容され、円筒型電池の第1端が冷却プレートに面するように構成される。
【0034】
上記を達成するために、本発明は、トレイと、複数の円筒型電池と、を含む電池パックをさらに提供する。
【0035】
トレイには、冷却プレートが設置される。
【0036】
円筒型電池の第1端には、電極端子が設置され、円筒型電池は、トレイ内に収容され、円筒型電池の第1端は、冷却プレートに面する。
【0037】
円筒型電池の第1端と冷却プレートとの間の空間、及び各円筒型電池の第1端に近い側面上の一部の領域には、熱伝導性のある構造用接着剤が充填される。
【発明の効果】
【0038】
本発明の技術的効果は、本発明では、電極端子と筐体との間の熱伝導を利用して円筒型電池の放熱を実現するので、放熱効率を効果的に向上することができることにある。さらに、本発明では、電極端子とトレイ底部上の冷却プレートとの間の熱伝導を確立することにより、トレイの既存の工程を変更することなく、電池パックの放熱構造を変更することができ、これにより、電池パックの設計、開発、製造コストが効果的に削減される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明の一実施形態による電池パックの分解図である。
【
図2】本発明の一実施形態による電池モジュールの分解図である。
【
図3】本発明の一実施形態による電池モジュールの断面図である。
【
図6】本発明の別の実施形態による電池パックの分解図である。
【
図7】本発明の別の実施形態による電池モジュールの分解図である。
【
図8】従来の円筒型電池の放熱ソリューションの概略図である。
【
図9】本発明の円筒型電池の放熱面積と従来の円筒型電池の放熱面積を比較した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の実装を、具体的な実施形態によって以下に説明する。当業者であれば、本明細書の開示内容から、本発明の他の利点及び効果を容易に理解することができる。本発明は、他の異なる特定の実装方法を通じて実装又は適用することもできる。本明細書の詳細は、本発明の精神から逸脱することなく、異なる観点及び用途に基づいて修正又は変更することもできる。なお、以下の実施形態及び各実施形態の特徴は矛盾しない範囲で、組み合わせることができる。
【0041】
なお、以下の実施形態で提供される図面は、専ら本発明の基本的な考え方を概略式的に示すものである。したがって、図面は本発明に関連する構成要素のみを示しており、実際の実装における構成要素の数、形状、寸法に応じて描かれたものではない。実際の実装では、部材の種類、数、比率は任意に変更可能であり、部材の配置形態もより複雑になり得る。
【0042】
なお、本発明が提供する円筒型電池20は、外装筐体と、外装筐体内に収容された巻回セルと、を含む巻芯型の円筒型電池である。巻芯は、正極片、負極片、及び必要なセパレータを巻回して形成される。正極片及び負極片には、活物質が塗布されており、正極片と負極片との間には、セパレータが配置される。巻回セルの両端には、正極タブと負極タブが設置される。一般に、正極タブは、電極端子21に電気的に接続され、負極タブは、外装筐体又は防爆弁に電気的に接続される。電極端子21及び防爆弁は、外装筐体の両端に位置し、電極端子21と外装筐体との間には、必要な絶縁構造が設置される。巻芯型の電池は、従来の電池構造に比べてエネルギー密度が高いため、電気自動車の動力電池として広く使用されている。
【0043】
本発明によって提供される技術的解決策は、具体的な実施形態を参照しながら以下の段落で詳細に説明される。
【0044】
実施形態1
【0045】
図1~
図5を参照すると、本発明の一実施形態は、トレイ80と、トレイ80内に収容される複数の電池モジュールと、を含む電池パックを提供する。トレイ80の底部には、冷却プレート30が設置され、各電池モジュールは、筐体10と、複数の円筒型電池20と、を含む。円筒型電池20の第1端には、電極端子21が設置される。円筒型電池20は、筐体10内に収容され、各円筒型電池20は、電極端子21と冷却プレート30との間で熱伝導が生じ得るように構成され。なお、円筒型電池20は、電極端子21から電流を放出し、多量の熱を発生する
。円筒型電池20の外装筐体から熱を放出する場合と比較して、電極端子から直接熱を排出する方が効率が良い。また、円筒型電池20の外装筐体は、一般に、鋼製の筐体であり、電極端子21は、一般に、アルミニウム又は銅の電極端子であるため、電極端子21の材質はより熱伝導性に優れている。したがって、円筒型電池20の電極端子21は、外装筐体に比べて熱伝導性が良い。本発明では、電極端子21と冷却プレート30との間の熱伝導を利用して円筒型電池20の放熱を実現するため、放熱効率を効果的に向上することができる。さらに、冷却プレート30を電池の底部に配置することが動力電池の分野では主流の設計であることを理解されたい。本発明では、電極端子21とトレイ80の底部上の冷却プレート30との間の熱伝導を確立することにより、トレイ80の既存の工程を変更することなく、電池パックの放熱構造を変更することができるため、電池パックの設計、開発、製造コストが効果的に削減される。
【0046】
なお、本実施形態は、新規な円筒型電池20の放熱構造を保護することを目的としている。
すなわち、熱が電極端子21を介して放熱され、電極端子21と冷却プレート30との間の熱伝導を達成できるあらゆる解決策は、本発明の保護の範囲内に含まれるべきである。したがって、本発明の冷却プレート30の設置位置は独特なものではない。例えば、他のいくつかの実施形態において、冷却プレート30は、各電池モジュールの一部であっても良く、例えば、冷却プレート30は、各電池モジュールの底板として使用されても良い。
【0047】
図2、
図3,及び
図4を参照すると、具体的な実施形態において、円筒型電池20の第1端は下を向いている。各円筒型電池20の第1端と冷却プレート30との間にはバスバー50が設置され、各円筒型電池20は、バスバー50を介して並列又は直列に接続される。本実施形態における円筒型電池20は、電極端子21及びバスバー50を介して冷却プレート30との熱伝導を形成し、電極端子21及びバスバー50の放熱効率は、円筒型電池20の外装筐体の放熱効率よりも優れていることを理解されたい。
【0048】
図3を参照すると、さらなる実施形態では、円筒型電池20の側面の間にはスリットが設置される。電極端子21と冷却プレート30との間の放熱効率、及びバスバー50と冷却プレート30との間の放熱効率をさらに向上させるために、円筒型電池20の第1端と冷却プレート30との間に熱伝導媒体を充填しても良い。例えば、円筒型電池20の第1端と冷却プレート30との間に、熱伝導性のある構造用接着剤40が充填される。熱伝導性のある構造用接着剤は、注入工程中は流体状態にあり、注入後に完全に硬化し得る。したがって、本実施形態において、熱伝導性のある構造用接着剤は、放熱のための熱伝導性媒体として機能するだけでなく、電池パックの構造部材の一部でもあり、電池を効果的に固定することができる。具体的な実施形態において、熱伝導性のある構造用接着剤は、例えば、エポキシ樹脂又はポリウレタンなどの樹脂マトリックスと、窒化アルミニウム又は窒化ケイ素などの熱伝導性充填剤との混合物であっても良い。さらに、例えば、円筒型電池20の第1端と冷却プレート30との間の空間、及び第1端に近い各円筒型電池20の側面上の領域の一部に、熱伝導性のある構造用接着剤40を充填することができ、これにより熱伝導効率がさらに向上する。このようにして、円筒型電池20の放熱効率が確保され、接着剤充填工程が簡略化され、接着剤充填効率が向上し、電池モジュール及び電池パックの全体的な構造強度も向上することができる。本実施形態において、バスバー50は、熱伝導性のある構造用接着剤40で包まれている。なお、いくつかの実施形態では、熱伝導性のある構造用接着剤40は、例えば、円筒型電池20の高さ方向の全領域を充填しても良い。
【0049】
図3及び
図4を参照すると、具体的な実施形態において、円筒型電池20の側面の間の間隙のうちの最小間隙は、1mm~10mmであり、例えば、3mm、5mm、又は8mmであって良い。この間隙の寸法により、熱伝導性のある構造用接着剤40がこれらの間隙を完全に埋めることができる良好な流動性を有することを保証するだけでなく、電池パックのエネルギー密度が過剰な間隙によって影響を受けることを防止することもできる。
【0050】
本発明の具体的な実施形態では、円筒型電池20の側面上の接着剤の充填高さ比率が制限されるため、円筒型電池20の放熱効率が確保され、接着剤の充填工程が大幅に簡略化され、接着剤の充填効率が向上する。
【0051】
図8を参照すると、従来の円筒型電池の放熱解決策では、各円筒型電池20上の蛇行管100の圧延角αは一般に約60°であり、このとき、各円筒型電池20と蛇行管100との間の熱交換面積S
1は、次の通りである。
【数3】
【0052】
図9を参照すると、式中、Dは、円筒型電池20の直径であり、hは、円筒型電池20の総高さである。
【0053】
しかしながら、本実施形態において、円筒型電池20の放熱面積Sは、円筒型電池20の端面の面積に、円筒型電池20の側面の接着剤充填領域の面積を加えた面積となる。すなわち、
【数4】
【0054】
図9を参照すると、式中、Aは、円筒型電池20の側面上の接着剤充填領域の高さである。
【0055】
本実施形態において従来の放熱解決策と同じ熱交換面積を達成するには、S=S
1、すなわち、次のようにするだけで良い。
【数5】
その結果、次のような結果が得られる。
【数6】
【0056】
上記の計算から、本実施形態の熱交換面積を従来の解決策の放熱面積よりも大きくするには、次の条件を満たすだけでよいことが分かる。
【数7】
【0057】
円筒型電池20の共通仕様と、上記の方法に従って算出された側面接着剤充填高さ比率は、次の表に示すとおりである。
【表1】
【0058】
上記のデータから、本実施形態によれば、従来の放熱解決策よりも大きな熱交換面積を得るために、より低い接着剤充填高さを用いることができることが分かり、これにより接着剤の充填工程が大幅に簡素化され、電池の製造コストが節約される。
【0059】
さらなる実施形態では、各円筒型電池の側面上の熱伝導性のある構造用接着剤が充填された領域の高さAと、円筒型電池の総高さhは、下記条件を満たす。
【数8】
【0060】
なお、接着剤の充填高さの一貫性を制御するのは容易ではないことを理解する必要がある。接着剤の充填高さが各電池の上面に近すぎると、接着剤が溢れやすくなり、防爆弁が汚染され、熱的安全性に影響を与える。本実施形態では、接着剤の充填高さが電池の高さの95%未満に制限されているため、上記の問題の発生が効果的に防止される。
【0061】
図2、
図3及び
図5を参照すると、さらなる実施形態において、円筒型電池20の第2端には、固定ブラケット60が配置される。固定ブラケット60には、アレイ状に配置された複数の貫通孔62が設置される。円筒型電池20の第2端は、固定ブラケット60上に相対的に固定して取り付けられる。例えば、円筒型電池20の第2端は、貫通孔62内に延伸して固定されるか、固定ブラケット60の下面に接着などにより固定しても良い。なお、円筒型電池20の側面の一部に接着剤が充填されると、円筒型電池20の第2端は浮遊状態となることを理解されたい。したがって、本発明では、円筒型電池20の第2端に固定ブラケット60が設置される。固定ブラケット60は、円筒型電池20の第2端を相対的に固定した状態に維持することができ、これにより円筒型電池の安定性が向上し、電池パックの全体的な構造強度が向上する。
【0062】
図5を参照すると、好ましい実施形態において、貫通孔の縁にはバックル61が設置され、バックル61は、円筒型電池20の側面上の回転溝に係合する。なお、円筒型電池20の外装筐体は、一般に、内側の巻回セルよりも若干長いことを理解されたい。したがって、巻回セルが外部筐体内で軸方向の変位を発生するのを防止するために、一般に、外部筐体の第2端に近い側面には環状の回転溝22が設置され、回転溝22の内端は、巻回セルの端縁に接触して巻回セルの位置を規制する。本実施形態において、回転溝22は、固定ブラケット60の位置を規制するために使用され、バックル61が回転溝22に係合して、固定ブラケット60と各円筒型電池20とを相対的に固定した状態に維持し、固定ブラケット60が円筒型電池20の軸に沿って滑ることが防止される。
【0063】
図2を参照すると、さらなる実施形態において、円筒型電池20の第2端は、上からマイカシート70で覆われる。なお、マイカシート70は、良好な難燃性を有することを理解されたい。1つの円筒型電池20に熱暴走が生じた場合、例えば、1つの電池が故障したり、複数の電池が故障したりすると、円筒型電池20の第2端に設置された防爆弁が開き、円筒型電池20に対応するマイカシートの一部を突き破る。しかしながら、故障していない他の円筒型電池20の上の雲母は破壊されないため、故障した円筒型電池20から放出される高温物質は、正常な円筒型電池20の第2端に落下せず、これにより、熱暴走の連鎖反応を回避する。これにより、電池パックの安全性が向上する。具体的な実施形態では、マイカシート70を高温物質が突き破りやすくするために、例えば、マイカシート70上の各防爆弁に対応する領域に、脆弱部を設置しても良い。
【0064】
上記の実施形態の示唆を受け、上記の実施形態に基づき行う他の簡単な修正も、本発明の保護範囲内に含まれることを理解されたい。例えば、代替実施形態では、電池モジュールを省略し、円筒型電池20をトレイ80に直接逆さまに設置しても良い。円筒型電池20の電極端子21は、トレイ80の底部における冷却プレート30との熱伝導を実現することもでき、これは本発明の設計構想と一致しており、本発明の技術的効果が達成される。
【0065】
実施形態2
【0066】
図6及び
図7を参照すると、本実施形態は、実施形態1を変形したものであり、実施形態1との唯一の違いは、本実施形態における円筒型電池20の電極端子21が上向きであることである。対応して、本実施形態におけるバスバー50及び冷却プレート30は、円筒型電池20の上端に位置する。同様に、本実施形態における冷却プレート30は、電池パックの上部カバー又は電池モジュールの上部カバーであっても良い。なお、本実施形態では、電池モジュールを省略し、円筒型電池20をトレイ80に直接設置しても良いことを理解されたい。本実施形態では、接着剤の局所充填を採用して、円筒型電池20の電極端子21と冷却プレート30との間、及び各円筒型電池20の側面の第1端に近い領域の一部に熱伝導性のある構造用接着剤40を充填しても良い。
【0067】
以上をまとめ、本発明では、電極端子21と冷却プレート30との間の熱伝導を利用して円筒型電池20の放熱を実現し、放熱効率を効果的に向上させる。本発明では、電極端子21とトレイ80の底部上の冷却プレート30との間の熱伝導を確立することにより、トレイ80の既存の工程を変更することなく、電池パックの放熱構造を変更することができ、これにより電池パックの設計、開発、製造コストが効果的に削減される。円筒型電池20の一端と冷却プレート30との間の空間、及び円筒型電池20の第1端に近い側面上の一部の領域には、熱伝導性のある構造用接着剤40が充填される。これにより、円筒型電池20の放熱効率が確保され、接着剤の充填工程が簡略化され、接着剤の充填効率が向上する。本発明では、円筒型電池20の第2端に固定ブラケット60が設置される。固定ブラケット60は、円筒型電池20の第2端を相対的に固定して維持するため、円筒型電池の安定性が向上し、電池パックの全体的な構造強度が向上する。本発明では、回転溝22は、固定ブラケット60の位置を規制するために使用され、バックル61が回転溝22に係合して、固定ブラケット60と各円筒型電池20とを相対的に固定した状態に維持し、固定ブラケット60が円筒型電池20の軸に沿って滑ることが防止される。
【0068】
上述の実施形態は、本発明の原理及び効果を例示するものであり、本発明を限定するものではない。当業者は、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、上述の実施形態を修正又は変更することができる。したがって、本発明に開示される精神及び技術的思想から逸脱することなく当業者によって行われるすべての同等の修正又は変更は、やはり本発明の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【0069】
本明細書の説明では、本発明の実施形態の完全な理解を提供するために、部材及び/又は方法の例などの多くの具体的な詳細が提供される。しかしながら、当業者は、本発明の実施形態が、1つ以上の特定の詳細を伴わずに、又は他の装置、システム、アセンブリ、方法、部材、材料、部品などを使用して実施され得ることを認識するべきである。他の場合には、本発明の態様を分かりにくくすることを避けるために、周知の構造、材料、又は動作については詳細に示したり説明したりしていない。
【0070】
本明細書全体にわたる「一実施形態」、「ある実施形態」、又は「具体的な実施形態」の記載は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味し、必ずしもすべての実施形態に含まれることは意味しない。したがって、明細書全体の様々な場所に存在する「一実施形態において」、「ある実施形態において」、又は「具体的な実施形態において」という語句は、必ずしも同一の実施形態を指すわけではない。さらに、本発明の任意の具体的な実施形態の具体的な特徴、構造、又は特性は、任意の適切な方法で1つ又は複数の他の実施形態と組み合わせることができる。なお、本明細書に記載及び図示された本発明の実施形態の他の変形及び修正は、本明細書の教示に照らして可能であり、本発明の構想及び範囲の一部とみなされることを理解されたい。
【0071】
また、図に示される1つ以上の要素は、より別個又は統合された方法で実装されても良く、あるいは、特定の状況では動作しないために削除されたり、特定の用途に応じて役立つ可能性があるために提供されても良いことも理解される。
【0072】
さらに、明示的に別段の記載がない限り、図中の方向矢印は単なる例示であり、限定するものではないとみなされるべきである。さらに、本明細書で使用される「又は」という用語は、特に断りのない限り、一般に「及び/又は」を意味するものとする。用語が個別の機能を提供するか、又は組み合わせた機能を提供するかが明確でない場合、部材又は工程の組み合わせも指定されているとみなされる。
【0073】
本明細書の説明及び以下の段落の特許請求の範囲全体で使用される場合、「前記」は、別段の指定がない限り、複数を含む。同様に、本明細書の説明及び以下の段落の特許請求の範囲全体で使用される「において」は、別段の指定がない限り、「中に」及び「上に」を意味する。
【0074】
本発明の図示された実施形態の前述の説明(要約に記載された内容を含む)は、網羅的であること、又は本発明を本明細書に開示される正確な形態に限定することを意図したものではない。
本発明の具体的な実施形態及び本発明の例は、例示のみを目的として本明細書に記載されているが、当業者であれば認識及び理解するように、本発明の構想及び範囲内で様々な等価な修正を行うことができる。言及したように、これらの修正は、本発明の記載された実施形態の上記の説明を考慮して本発明に対して行うことができ、本発明の構想及び範囲内にある。
【0075】
本明細書では、システム及び方法が、本発明を理解するのに役立つ詳細とともに概括的に説明されている。さらに、本発明の実施形態の全体的な理解を提供するために、さまざまな具体的な詳細が提供されている。しかしながら、当業者であれば、本発明の実施形態は、1つ以上の特定の詳細なしで実施されてもよいし、他の装置、システム、付属品、方法、部材、材料、部分などを用いて実施されてもよいことを理解することができる。他の例では、本発明の実施形態の態様を分かりにくくすることを避けるために、周知の構造、材料、及び/又は動作については詳細に示したり説明したりしていない。
【0076】
したがって、本発明は、その具体的な実施形態を参照して本明細書に記載されているが、修正、様々な変更、及び置換の自由は依然として上記の開示の範囲内にある。さらに、特定の状況においては、本発明のいくつかの特徴は、請求される本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、他の特徴を対応して使用することなく使用されることを理解されたい。したがって、特定の状況又は材料を本発明の実質的な範囲及び精神に適合させるために、多くの修正を行うことができる。本発明は、以下の特許請求の範囲で使用される特定の用語、及び/又は本発明を実施するための最良の形態として開示される具体的な実施形態に限定されることを意図するものではない。しかしながら、本発明は、添付の特許請求の範囲に含まれるあらゆる実施形態及び均等物を含むことを意図している。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ決定されるものとする。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、効果的な放熱を備えた電池モジュール及び電池パックを提供する。
【符号の説明】
【0078】
10: 筐体
20: 円筒型電池
21: 電極端子
22: 回転溝
30: 冷却プレート
40: 熱伝導性のある構造用接着剤
50: バスバー
60: 固定ブラケット
61: バックル
62: 貫通孔
70: マイカシート
80: トレイ
【外国語明細書】