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▶ ゼスト、アイピー、ホールディングス、リミテッド、ライアビリティー、カンパニーの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016189
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】歯科用セメント組成物および使用法
(51)【国際特許分類】
   A61K 6/887 20200101AFI20240130BHJP
【FI】
A61K6/887
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023190287
(22)【出願日】2023-11-07
(62)【分割の表示】P 2020502554の分割
【原出願日】2018-04-03
(31)【優先権主張番号】62/481,005
(32)【優先日】2017-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PLURONIC
(71)【出願人】
【識別番号】510126243
【氏名又は名称】ゼスト、アイピー、ホールディングス、リミテッド、ライアビリティー、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ZEST IP HOLDINGS,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】チェン、シャンシュ
(72)【発明者】
【氏名】マシュー、マーク、ダーバン
(72)【発明者】
【氏名】ワン、リンヤン、ジュリア
(57)【要約】      (修正有)
【課題】歯科用セメント合着用途に使用される歯科用組成物および歯科修復方法を提供する。
【解決手段】歯科用基材の表面上で、接着剤およびペースト混合物を含んでなる歯科用組成物であって、該接着剤が、少なくとも1種のリン酸含有(メタ)アクリルモノマーを含んでなり、該ペースト混合物が、少なくとも1種の重合可能なモノマー、少なくとも1種のヒドロペルオキシドおよび少なくとも1種のチオ尿素化合物を含んでなる、歯科用組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用基材の表面上で、
接着剤および
ペースト混合物を含んでなる歯科用組成物であって、
該接着剤が、少なくとも1種のリン酸含有(メタ)アクリルモノマーを含んでなり、該ペースト混合物が、少なくとも1種の重合可能なモノマー、少なくとも1種のヒドロペルオキシドおよび少なくとも1種のチオ尿素化合物を含んでなる、歯科用組成物。
【請求項2】
前記リン酸含有(メタ)アクリルモノマーが、GPDM(グリセロールホスフェートジ(メタ)アクリレート{(メタ)アクリレート=アクリレートまたはメタクリレート})、フェニル-P(フェニルメタクリルオキシエチルホスフェート)、PENTA-P(ジペンタエリスリトールペンタアクリレートホスフェート)、10-MDP(メタクリロイルオキシデシルホスフェート)、HEMA-P(ヒドロキシエチルメタクリレートホスフェート)、HEA-P(ヒドロキシエチルアクリレートホスフェート)、ビス(HEMA)-P(ビス(ヒドロキシエチルメタクリレート)ホスフェート)、ビス(HEA)-P{ビス(ヒドロキシエチルアクリレート)ホスフェート)、ビス((メタ)アクリルオキシプロピル)ホスフェート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の歯科用組成物。
【請求項3】
前記リン酸含有(メタ)アクリルモノマーが、10-メタクリロイルオキシデシル二水素ホスフェート(10-MDP)である、請求項1または2に記載の歯科用組成物。
【請求項4】
前記チオ尿素が、1-(2-ピリジル)-2-チオ尿素(PTU)、1-ベンゾイル-2-チオ尿素(BTU)、1-アセチル-2-チオ尿素(ATU)、1-(2-テトラヒドロフルフリル)-2-チオ尿素(TTU)、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項5】
前記チオ尿素が、1-(2-ピリジル)-2-チオ尿素(PTU)である、請求項1~4のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項6】
前記ヒドロペルオキシドが第三級ヒドロペルオキシドである、請求項1~5のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項7】
前記ペースト混合物の第1の部分または第2の部分のいずれかが、銅(II)化合物をさらに含んでなる、請求項1~6のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項8】
前記歯科用基材がジルコニアである、請求項1~7のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項9】
前記接着剤が、単一ボトルの接着剤である、請求項1~8のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項10】
歯科修復方法であって、
歯科用基材上に歯科用接着剤を適用する第一工程であって、該接着剤が、少なくとも1種のリン酸含有(メタ)アクリルモノマーを含むものである、工程;および第1の部分と第2の部分が互いに分離した装置からペースト混合物を適用する第二工程であって、該第1の部分および第2の部分がペースト混合物を形成するものであり、かつ該装置からのペースト混合物が、第1の部分において少なくとも1種の重合可能モノマーおよび少なくとも1種のヒドロペルオキシドを含んでなり、かつ第2の部分において少なくとも1種のチオ尿素化合物を含むものである、工程
を含んでなる方法。
【請求項11】
前記リン酸含有(メタ)アクリルモノマーが、GPDM(グリセロールホスフェートジ(メタ)アクリレート{(メタ)アクリレート=アクリレートまたはメタクリレート})、フェニル-P(フェニルメタクリルオキシエチルホスフェート)、PENTA-P(ジペンタエリスリトールペンタアクリレートホスフェート)、10-MDP(メタクリロイルオキシデシルホスフェート)、HEMA-P(ヒドロキシエチルメタクリレートホスフェート)、HEA-P(ヒドロキシエチルアクリレートホスフェート)、ビス(HEMA)-P(ビス(ヒドロキシエチルメタクリレート)ホスフェート)、ビス(HEA)-P{ビス(ヒドロキシエチルアクリレート)ホスフェート)、ビス((メタ)アクリルオキシプロピル)ホスフェート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記リン酸含有(メタ)アクリルモノマーが、10-メタクリロイルオキシデシル二水素ホスフェート(10-MDP)である、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記チオ尿素が、1-(2-ピリジル)-2-チオ尿素(PTU)、1-ベンゾイル-2-チオ尿素(BTU)、1-アセチル-2-チオ尿素(ATU)、1-(2-テトラヒドロフルフリル)-2-チオ尿素(TTU)、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記チオ尿素が、1-(2-ピリジル)-2-チオ尿素(PTU)である、請求項10~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ヒドロペルオキシドが第三級ヒドロペルオキシドである、請求項10~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記ペースト混合物の第1の部分または第2の部分のいずれかが、銅(II)化合物をさらに含んでなる、請求項10~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記接着剤が歯科用基材に効果的に接着する、請求項10~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記歯科用基材がジルコニアである、請求項10~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
歯科用基材上の前記歯科用接着剤の接着強度が15MPa超である、請求項10~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記装置がデュアルバレルシリンジである、請求項10~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
歯科用基材の表面上で、
接着剤および
ペースト混合物を含んでなる歯科用組成物であって、
該接着剤が、少なくとも1種のリン酸含有(メタ)アクリルモノマーを含んでなり、該ペースト混合物が、事前に分離させた第1の部分および第2の部分を一緒に混合することによって形成されるものであり、該第1の部分が、少なくとも1種の重合可能なモノマーおよび少なくとも1種のヒドロペルオキシドを含んでなり、かつ該第2の部分が少なくとも1種のチオ尿素化合物を含んでなる、歯科用組成物。
【請求項22】
前記の事前に分離させた第1の部分および第2の部分が、デュアルバレルシリンジで分離される、請求項21に記載の歯科用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
使用分野は、歯科用組成物、とりわけ歯科用セメント合着(cementation)用途に有用なものである。
【背景技術】
【0002】
歯科用修復物または歯科用詰物は、失われた歯の構造の機能、統一性、および形態を修復するために使用される歯科用修復材である。構造的損失は通常、カリエスまたは外的外傷(本明細書では総称して窩洞と称する)に起因する。同様に審美性または目的の修復材の物理的統一性を改善するために、歯の形成中に意図的にも失われる。
【0003】
歯科用セメントは、合着剤、歯髄保護剤(pulp-protecting agent)、または窩洞ライナー材としての使用を含む、さまざまな歯科および歯科矯正用途に使用されている。さらに、それらは金属、樹脂またはセラミック修復物の下に防護層を形成して歯髄を損傷から保護するために使用されている。これは、象牙質およびエナメル質の両方に、インレー、アンレー、またはそのような物質を接着または固定し、鋳造するのに役立つ。
【0004】
通常、樹脂セメントには、トータルエッチングと自己接着性樹脂セメントの2つの分類がある。適切な使用のために、純粋な樹脂セメントは、歯面の前処理、好ましくはリン酸での前処理、および樹脂セメントの適用前に象牙質とエナメル質プライマーの適用が必要である。硬化後、これは象牙質とエナメル質の両方にマイクロメカニカルボンドを形成する。また、それらは口腔液に不溶性である。これらの「従来の樹脂セメント」(「トータルエッチング技術および象牙質接着技術」の使用を必要とするもの)には、デュアルキュア型と光硬化性型の2種類がある。「樹脂セメント類」に最近追加されたものとしては、歯表面の前処理を必要としない自己接着性樹脂セメントであって、より伝統的な種類のセメントよりも使いやすく、従来の樹脂セメントシステムの臨床的利点を多くもつようである。一般に、セルフエッチング樹脂セメントの接着強度は、トータルエッチング技術を使用した樹脂セメントの接着強度ほど高くないため、結果として縁で微小漏洩が発生する可能性が高いことに注意することが重要である。
【0005】
理想的な歯科用セメント材は、強力であってかつ耐久性のあるセメント合着と使いやすさを提供し得る。
【発明の概要】
【0006】
特定の実施態様において本明細書で提供されるものとしては、重合可能なモノマー、ならびにヒドロペルオキシドおよび/またはチオ尿素を含む歯科用組成物である。いくつかの実施態様において、組成物は銅(II)を(例えば、触媒として)さらに含む。
【0007】
本明細書においては歯科用組成物も提供され、当該組成物は、歯科用基材の表面上に接着剤およびペースト混合物を含み、当該接着剤は、少なくとも1種のリン酸含有(メタ)アクリルモノマーを含み、当該ペースト混合物は、少なくとも1種の重合可能なモノマー、少なくとも1種のヒドロペルオキシドおよび少なくとも1種のチオ尿素化合物を含むものである。リン酸含有(メタ)アクリルモノマーは、GPDM(グリセロールホスフェートジ(メタ)アクリレート{(メタ)アクリレート=アクリレートまたはメタクリレート})、フェニル-P(フェニルメタクリルオキシエチルホスフェート)、PENTA-P(ジペンタエリスリトールペンタアクリレートホスフェート)、10-MDP(メタクリロイルオキシデシルホスフェート)、HEMA-P(ヒドロキシエチルメタクリレートホスフェート)、HEA-P(ヒドロキシエチルアクリレートホスフェート)、ビス(HEMA)-P(ビス(ヒドロキシエチルメタクリレート)ホスフェート)、ビス(HEA)-P{ビス(ヒドロキシエチルアクリレート)ホスフェート)、ビス((メタ)アクリルオキシプロピル)ホスフェート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。特定の実施態様において、リン酸含有(メタ)アクリルモノマーは、10-メタクリロイルオキシデシル二水素ホスフェート(10-Methacryloyloxydecyl dihydrogen phosphate)(10-MDP)である。チオ尿素は、1-(2-ピリジル)-2-チオ尿素(PTU)、1-ベンゾイル-2-チオ尿素(BTU)、1-アセチル-2-チオ尿素(ATU)、1-(2-テトラヒドロフルフリル)-2-チオ尿素(TTU)、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。特定の実施態様において、チオ尿素は1-(2-ピリジル)-2-チオ尿素(PTU)である。特定の実施態様において、ヒドロペルオキシドは第三級ヒドロペルオキシドである。特定の実施態様において、ペースト混合物の第1の部分(a first part)または第2の部分(a second part)は、銅(II)化合物をさらに含む。特定の実施態様において、歯科用基材はジルコニアである。別の実施態様において、接着剤は単一ボトル接着剤(single bottle bonding agent)である。
【0008】
また、本明細書においては歯科修復方法が提供され、当該方法は:歯科基材上に歯科用接着剤を適用する第一工程であって、当該接着剤が少なくとも1種のリン酸含有(メタ)アクリルモノマーを含むものである、工程;および第1の部分と第2の部分が互いに分離した装置(device)からペースト混合物を適用する第二工程であって、当該第1の部分および第2の部分がペースト混合物を形成するものであって、かつ装置からのペースト混合物が、第1の部分において少なくとも1種の重合可能モノマーおよび少なくとも1種のヒドロペルオキシドを含み、かつ第2の部分において少なくとも1種のチオ尿素化合物を含むものである、工程を含む方法に関する。特定の実施態様において、リン酸含有(メタ)アクリルモノマーは、GPDM(グリセロールホスフェートジ(メタ)アクリレート{(メタ)アクリレート=アクリレートまたはメタクリレート})、フェニル-P(フェニルメタクリルオキシエチルホスフェート)、PENTA-P(ジペンタエリスリトールペンタアクリレートホスフェート)、10-MDP(メタクリロイルオキシデシルホスフェート)、HEMA-P(ヒドロキシエチルメタクリレートホスフェート)、HEA-P(ヒドロキシエチルアクリレートホスフェート)、ビス(HEMA)-P(ビス(ヒドロキシエチルメタクリレート)ホスフェート)、ビス(HEA)-P{ビス(ヒドロキシエチルアクリレート)ホスフェート)、ビス((メタ)アクリルオキシプロピル)ホスフェート、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。特定の実施態様において、リン酸含有(メタ)アクリルモノマーは、10-メタクリロイルオキシデシル二水素ホスフェート(10-MDP)である。チオ尿素は、1-(2-ピリジル)-2-チオ尿素(PTU)、1-ベンゾイル-2-チオ尿素(BTU)、1-アセチル-2-チオ尿素(ATU)、1-(2-テトラヒドロフルフリル)-2-チオ尿素(TTU)、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。特定の実施態様において、チオ尿素は1-(2-ピリジル)-2-チオ尿素(PTU)である。特定の実施態様において、ヒドロペルオキシドは第三級ヒドロペルオキシドである。特定の実施態様において、ペースト混合物の第1の部分または第2の部分は、銅(II)化合物をさらに含む。接着剤は、歯科用基材に効果的に接着する。特定の実施態様において、歯科用基材はジルコニアである。特定の実施態様において、歯科用基材上の歯科用接着剤の接着強度は15MPa超である。一つの実施態様において、装置はデュアルバレルシリンジ(dual-barrel syringe)である。
【0009】
さらに提供されるものとしては歯科用組成物であって、当該組成物は歯科用基材の表面上に接着剤およびペースト混合物を含み、当該接着剤は、少なくとも1種のリン酸含有(メタ)アクリルモノマーを含み、当該ペースト混合物は、予め分離させた第1の部分と第2の部分を一緒に混合することによって形成され、当該第1の部分は少なくとも1種の重合可能なモノマーおよび少なくとも1種のヒドロペルオキシドを含み;当該第2の部分は少なくとも1種のチオ尿素化合物を含むものである。特定の実施態様において、予め分離させた第1の部分と第2の部分は、デュアルバレルシリンジで分離させたものである。
【0010】
他の実施態様において、歯科用組成物は、第1の部分および第2の部分を含み、第1の部分は:銅(II)触媒;ヒドロペルオキシド;およびエチレン性基を含む重合可能なモノマーを含み;かつ第2の部分は:銅(II)触媒;チオ尿素;およびエチレン性基を含む重合可能なモノマーを含む。特定の実施態様において、第1の部分および第2の部分は物理的に分離している(例えば、歯の窩洞を修復するために歯科用組成物が使用されるような時間まで)。
【0011】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるものとしては、第1の部分および第2の部分を含む歯科用組成物であり、第1の部分および第2の部分は総合的に:銅(II)触媒;ヒドロペルオキシド;エチレン性基を含む重合可能なモノマー;およびチオ尿素を含む。特定の実施態様において、第1の部分は過酸化水素を含み、第2の部分はチオ尿素を含み、かつ第1の部分および第2の部分は互いに物理的に分離している(例えば、歯の窩洞を修復するために歯科用組成物が使用されるような時間まで)。
【0012】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるものとしては、歯科用組成物、その一部分、またはその樹脂前駆体であって、当該組成物は:銅(II)触媒;ヒドロペルオキシド;および重合可能なモノマー(例えば、エチレン性基を含む重合可能なモノマー)を含むものである。同様に、特定の実施態様において、本明細書で提供されるものとしては、歯科用組成物、その一部分、またはその樹脂前駆体であって、当該組成物は:銅(II)触媒;チオ尿素;および重合可能なモノマー(例えば、エチレン性基を含む重合可能なモノマー)を含むものである。
【0013】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供されるものとしては、第1の部分および第2の部分を含む歯科用組成物(例えば、速硬化性であり、銅を含まない、酸を含まない組成物)であって、当該第1の部分および第2の部分は総合的に:ヒドロペルオキシド(例えば、クメンヒドロペルオキシドなどの第三級アリールヒドロペルオキシドであるヒドロペルオキシド(例えばHOOCR’[式中、各R’は独立してアルキルまたはアリールであり、少なくとも1つのR’は、アリールである(例えば、置換または非置換アリール)]);重合可能なモノマー(例えば、エチレン性基を含む重合可能なモノマー);およびチオ尿素を含む。いくつかの実施態様において、第1の部分は過酸化水素を含み、第2の部分はチオ尿素を含み、第1の部分および第2の部分は互いに物理的に分離している。特定の実施態様において、ヒドロペルオキシドは歯科用組成物中の濃度が約1.5%(w/w)以上、またはモノマーに対する濃度が約1.5%(w/w)以上である。より具体的な実施態様において、ヒドロペルオキシドは、歯科用組成物中の濃度が約2%(w/w)以上、またはモノマーに対する濃度が約2%(w/w)以上である。一層の特定の実施態様において、ヒドロペルオキシドは、歯科用組成物中の濃度が約2.5%(w/w)以上、またはモノマーに対する濃度が約2.5%(w/w)以上である。さらなるまたは代替の実施態様において、チオ尿素は、歯科用組成物中の濃度が約1.5%(w/w)以上、またはモノマーに対する濃度が約1.5%(w/w)以上である。より特定の実施態様において、チオ尿素は、歯科用組成物中の濃度が約2%(w/w)以上、またはモノマーに対する濃度が約2%(w/w)以上である。一層の特定の実施態様において、チオ尿素は、歯科用組成物中の濃度が約2.5%(w/w)以上、またはモノマーに対する濃度が約2.5%(w/w)以上である。さらなるまたは追加の実施態様において、ヒドロペルオキシドとチオ尿素の合計重量は、歯科用組成物中の濃度が約3%(w/w)以上、またはモノマーに対する濃度が約3%(w/w)以上である。より具体的な実施態様において、ヒドロペルオキシドとチオ尿素の合計重量は、歯科用組成物中の濃度が約4%(w/w)以上、またはモノマーに対する濃度が約4%(w/w)以上である。一層の特定の実施態様において、ヒドロペルオキシドとチオ尿素の合計重量は、歯科用組成物中の濃度が約5%(w/w)以上、またはモノマーに対する濃度が約5%(w/w)以上である。
【0014】
特定の実施態様において、銅(II)触媒は、銅(II)イオンおよび/または銅(II)化合物を含む。特定の実施態様において、銅(II)触媒は、硫酸銅(II)、酢酸銅(II)、塩化銅(II)、アセチルアセトン銅(II)、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施態様において、銅(II)触媒は、組成物中に約5重量%以下の量(例えば、約1重量%以下、または約0.1重量%以下)で存在する。
【0015】
いくつかの実施態様において、ヒドロペルオキシドは、1つ以上の-OOH基で置換された炭化水素(例えば、C~C20炭化水素)を含む。特定の実施態様において、ヒドロペルオキシドは第三級ヒドロペルオキシド(例えば、-OOH基は第三級置換を有する炭素で置換されている)。より具体的な実施態様において、ヒドロペルオキシドは、t-ブチルヒドロペルオキシド、t-アミルヒドロペルオキシド、p-ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ピナンヒドロペルオキシド、p-メンタンヒドロペルオキシド、および1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロペルオキシド、またはそれらの組み合わせであるか、それらを含む。さらなるまたは代替の実施態様において、ヒドロペルオキシドは組成物中に約0.01%(w/w)~約10%(w/w)の量で存在する。より具体的な実施態様において、ヒドロペルオキシドは組成物中に約0.1%(w/w)~約5%(w/w)の量で存在する。いくつかの実施態様において、ヒドロペルオキシドは、ヒドロペルオキシドの重合可能なモノマーに対する比として約1:9999~約1:9にて組成物中に存在する。より具体的な実施態様において、ヒドロペルオキシドの重合可能なモノマーに対する比は約1:99~約5:95である。
【0016】
特定の実施態様において、モノマーは歯科的に許容可能なモノマーである。いくつかの実施態様において、モノマーは、ビニル、アクリレート、メタクリレート、またはそれらの組み合わせを含む。さらなるまたは代替の実施態様において、モノマーは約10%(w/w)~約60%(w/w)の量で存在している。より具体的な実施態様において、重合可能なモノマーは約20%(w/w)~約50%(w/w)の量で存在している。
【0017】
特定の実施態様において、チオ尿素は、1-(2-ピリジル)-2-チオ尿素(PTU)、1-ベンゾイル-2-チオ尿素(BTU)、1-アセチル-2-チオ尿素(ATU)、1-(2-テトラヒドロフルフリル)-2-チオ尿素(TTU)またはそれらの組み合わせを含む。さらなるまたは代替の実施態様において、チオ尿素は、チオ尿素の重合可能なモノマーに対する比として約1:999から約100:900で組成物中に存在する。より具体的な実施態様において、チオ尿素の重合可能なモノマーの比は約1:99~約10:90である。
【0018】
特定の実施態様において、本明細書で提供される歯科用組成物はフィラーを含む。より具体的な実施態様において、第1の部分および第2の部分がフィラーを含む。さらにより具体的な実施態様において、フィラーは微粉化フィラーである。いくつかの実施態様において、微粉化フィラーは複数の粒子を含む。特定の実施態様において、粒子は約0.02ミクロン~約30ミクロン、例えば約0.2ミクロン~約10ミクロンの平均寸法(例えば直径)を有する。さらなるまたは代替の実施態様において、フィラーは無機フィラー、予備重合フィラー、またはそれらの組み合わせを含む。フィラーには、非限定的な例として、金属酸化物、金属窒化物、金属フッ化物、ケイ酸塩、シリカ(例えば、コロイドシリカ、沈降シリカ、溶融シリカ)、アルミノケイ酸塩、アルミノホウケイ酸塩、フルオロアルミノケイ酸塩、バリウムケイ酸塩、バリウムアルミノケイ酸塩、バリウムアルミノホウケイ酸塩、ストロンチウムアルミノケイ酸塩、バリウムフルオロアルミノケイ酸塩、ストロンチウムフルオロアルミノケイ酸塩、ストロンチウム亜鉛フルオロアルミノケイ酸塩、亜鉛アルミノケイ酸塩、予備重合フィラー、およびそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施態様において、フィラーは、約10%(w/w)~約90%(w/w)の量で存在する。より具体的な実施態様において、フィラーは約40%(w/w)~約80%(w/w)の量で存在する。一層より具体的な実施態様において、フィラーは約60%(w/w)~約80%(w/w)の量で存在する。
【0019】
いくつかの実施態様において、組成物は、光開始剤、安定剤、溶媒、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施態様において、光開始剤は約5%(w/w)以下の量で存在する。さらなるまたは代替の実施態様において、安定剤は約1%(w/w)以下の量で存在する。
【0020】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供される組成物は、酸または無水物を含まないか、実質的に含まない。特定の実施態様において、組成物(および/またはその部分)は、5%(w/w)未満の酸(例えば、3%(w/w)未満、1%(w/w)未満、または0.5%(w/w)未満)を含む。特定の実施態様において、組成物またはその部分は非酸性である(例えば、約5以上のpHを有する)。
【0021】
様々な実施態様において、本明細書で提供される組成物は、修復歯科用途において(例えば、クラスIまたはクラスIIの窩洞を有する歯の修復において)で利用される場合など、良好な性能特性を有する。特定の実施態様において、第1の部分と第2の部分とを組み合わせることで、組成物の総体積は10%未満(例えば、8%未満、6%未満、または4%未満)収縮する(例えば、固まるにつれて))。場合によっては、そのような収縮を最小限に抑えることにより、充填物と歯の間の空隙形成の発生率が低下し、修復中および修復後の歯への損傷(例えば、割れ)の発生率が低下する。さらなるまたは代替の実施態様において、第1の部分と第2の部分を組み合わせることで、複合材の吸湿性は100μg/mm未満(例えば、50μg/mm未満、25μg/mm未満、20μg/mm未満、または15μg/mm未満)である。場合によっては、吸湿性を最小限に抑えることにより、修復材の膨張が軽減され、続けて生じる複合材へ硬化し、このことは歯への損傷(例えば、割れ)、充填物の歯からの脱離などの発生を低下させ得る。
【0022】
また本明細書において提供されるものとしては、本明細書に記載された組成物成分または部分の混合、例えば部分的または完全に硬化した混合物から生じた歯科用複合材である。いくつかの実施態様において、複合材は部分的または完全に硬化した樹脂、フィラー、および銅を含む。特定の実施態様において複合材は、約10%(w/w)~約60%(w/w)の量の硬化樹脂(the cured resin)、約10%(w/w)~約90%(w/w)の量のフィラー、および約1元素重量%以下の銅を含む。本明細書においては、銅(II)触媒;ヒドロペルオキシド;エチレン性基を含む重合可能なモノマー;およびチオ尿素を含む反応混合物も提供される。反応混合物は部分的に硬化され、そのモノマー単位の一部はモノマーを形成し、他の部分はオリゴマーまたはそのポリマーを形成する。
【0023】
いくつかの実施態様において、本明細書で提供される二部式組成物(two part composition)は、筐体を備えるデュアルバレル装置内に含有され、当該筐体は、第一筒および第二筒を備え、当該第一筒は、本明細書に記載の組成物の第1の部分を含有し、第二筒は、本明細書に記載の組成物の第2の部分を含有している。特定の実施態様において、デュアルバレル装置は、第1の部分および第2の部分を同時に押し出しおよび/または混合するように構成される。
【0024】
本明細書においては、個体の歯を修復する方法も提供される。いくつかの実施態様において、方法は、第一組成物(例えば、本明細書に記載の歯科用組成物の第1の部分)を第二組成物(例えば、本明細書に記載の歯科用組成物の第2の部分)と組み合わせて混合組成物を形成することを含む。特定の実施態様において、第一組成物はヒドロペルオキシドを含み、第二組成物はチオ尿素、ならびに銅(II)触媒、重合可能なモノマー(例えば、エチレン基を含む重合可能なモノマー)およびフィラーを含む第一組成物および/または第二組成物の一方または両方を含む。いくつかの実施態様において、方法は、混合組成物を個体(例えば、個体の歯におけるクラスIまたはクラスIIの窩洞)に投与することをさらに含む。いくつかの実施態様において、方法は、混合組成物を硬化させること(例えば、組成物を自己硬化させること、および/または歯科用硬化光を使用して組成物を光硬化させること)をさらに含む。特定の実施態様において混合組成物の硬化は、修復複合材の形成をもたらす(例えば、個体の歯腔内の充填物の形態にて)。好ましい実施態様において硬化工程(例えば、自己硬化)は修復プロセスを促進するために比較的迅速に行われる。特定の実施態様において、硬化工程(例えば、自己硬化することまたは固まること)は、10分以内、4分以内、2分以内などで起こる。
【0025】
特定の実施態様において、本発明の方法は:1)象牙質およびエナメル質(例えば、歯牙構造)に歯科用接着プライマーを適用し、場合により続けて硬化活性剤を適用し、場合により歯科用硬化光でプライマー層を硬化する工程;2)クラウン、インレー、アンレー、ベニアなどの事前に作製した修復物上に歯科用接着プライマーを適用し、場合により続けて硬化活性剤を適用し、場合により歯科用硬化光でプライマー層を硬化する工程;3)事前に作製した修復物を歯牙構造(象牙質およびエナメル質)に接着するために歯科用セメント層を適用する工程を含む。
【0026】
いくつかの実施態様において、本方法は、充填される窩洞の内部および周囲から窩洞を除去することを含む(例えば、歯を穿孔して窩洞をそこから除去する)。
【0027】
本明細書に開示されるこれらおよび他の目的、特性、組成物の特徴、その部分、その前駆体、得られる複合材、および方法は、ならびに製造方法と共に、以下の記載および添付の特許請求の範囲を考慮し、添付の図面(これらはすべて本明細書の一部をなすものである)を参照することによってより明確になるであろう。しかしながら、図面は、例示および説明のみを目的とし、本発明を限定する定義としては意図されていないことを明確に理解されたい。明細書および特許請求の範囲で使用されるように、「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」の単数形は、文脈が明らかに反対を示さない限り、複数の指示対象を含む。
【発明の具体的な説明】
【0028】
本明細書では、歯科用組成物が提供される。また本明細書では、その構成部品、歯科修復法、歯科用組成物の調製に使用される樹脂、歯科用複合材(例えば、充填材)なども提供される。特定の実施態様において、歯科用組成物は、例えば互いに物理的に分離した状態に維持される二つの部分のような二つの部分を含む。場合によっては、例えば歯科用組成物が歯科修復法(本明細書に記載のようなもの)で使用される場合のように、二つの部分が組み合わさった場合に組成物は複合材(例えば、歯の修復で使用される充填材)を形成する。
【0029】
特定の実施態様において、本明細書で提供されるのは、二つの部分を含む歯科用組成物(例えば、それを混合することで開始する遊離ラジカル重合と共に)であって、いくつかの実施態様において、当該二部式歯科用組成物が:(1)少なくとも1種のエチレン性不飽和基を有する少なくとも1種のモノマー(例えば、本明細書に記載されるような、エチレン性基を含む重合可能なモノマーとも称する);(2)少なくとも1種のヒドロペルオキシド基を含む一部分;および(3)少なくとも1種の置換チオ尿素を含む1つの部分を含むものである。より具体的な実施態様において、二部式歯科用組成物は:(l)少なくとも1種のエチレン性不飽和基を有する少なくとも1種のモノマー;(2)少なくとも1種のヒドロペルオキシド基を含む一部分;(3)少なくとも1種の置換チオ尿素を含む一部分;および(4)少なくとも1種の銅(II)化合物(例えば、第1の部分および第2の部分を組み合わせることで組成物の硬化に触媒作用を及ぼす、例えば簡易化および/または促進する(例えば、そのモノマー成分の重合)ような銅(II)化合物))。
【0030】
特定の実施態様において本明細書で提供されるのは、第1の部分および第2の部分を含む歯科用組成物であって、第1の部分が:(1)銅(II)触媒;(2)ヒドロペルオキシド;および(3)エチレン性基を含む重合可能なモノマーを含み、かつ第2の部分が:(1)銅(II)触媒;(2)チオ尿素;および(3)エチレン性基を含む重合可能なモノマーを含む。また本明細書では、例えば、(1)銅(II)触媒;(2)ヒドロペルオキシド;および(3)エチレン性基を含む重合可能なモノマーを含む歯科用組成物、ならびに/または(1)銅(II)触媒;(2)チオ尿素;および(3)エチレン性基を含む重合可能なモノマーを含む歯科用組成物など、その個々の第1の部分および第2の部分も提供される。
【0031】
特定の実施態様においては、筐体を備えるデュアルバレル装置が提供され、当該筐体は第一筒および第二筒を備え、当該第一筒は中に本明細書に記載の組成物の第1の部分を含み、かつ当該第二筒は本明細書で提供される組成物の第2の部分を含むものである。いくつかの実施態様において、デュアルバレル装置は、第1の部分および第2の部分を同時に押し出すのに適した任意の適切な装置であって、その結果第1の部分および第2の部分が混合し、そのモノマー成分の初期化および重合が促進される。特定の実施態様において、デュアルバレル装置は、第一および第二のプランジャーを含む(同時)押し下げによって第1の部分および第2の部分の混合を促進するように構成されたノズルを含むデュアルバレルシリンジである。
【0032】
特定の実施態様において、少なくとも1種のエチレン性不飽和基を有するモノマーまたはエチレン性基を含む重合可能なモノマーは、少なくとも1種の>C=C<基を含む化合物である。特定の実施態様において、モノマーは式RC=CRで表され、式中各RはH、COOR、またはアルキル、アリールなどの置換されていてもよい炭化水素から独立して選択され、ここで少なくとも1つのRがHではない。特定の実施態様において、少なくとも1つのRはCOORまたはアリール(例えば、フェニルなど)である。いくつかの実施態様において、Rは、Hまたはアルキル(例えば、C~Cアルキル)のいずれかである。より具体的な実施態様において、アルキルはC~Cアルキル(例えば、メチル、エチルなど)である。特定の実施態様において、アルキルは、非環状(例えば、分岐状もしくは直鎖状)または環状、飽和または不飽和のアルキルである。いくつかの実施態様において、任意の置換基には、非限定的な例として、-OH、アルキル、および/またはアリールが挙げられる。特定の実施態様において、モノマーは、式RC=CRLによって表される1つ以上の部分を含み、式中、RおよびL基は独立して、上記のR基について記載された通りである。特定の実施態様においてモノマーは2つ以上のRC=CRL基を含み、式中L基は式Iに示すように一緒に連結される(例えば、RC=CRL-(LCR=CRのように連結され、式中はa>0、例えば1~5、例えば1~2である)。
【化1】
【0033】
例えば、いくつかの実施態様において、モノマーは、場合によりRC=CR-COO((CH(CHOH)OOC-RC=CRであって、式中mは1~6(例えば2~4)であり、nは0~1であり、かつpは1~30(例えば1~10)である。
【0034】
特定の実施態様において、モノマーは、アクリレート(例えば、3つのR基はHであり、かつ1つのR基はCOORである)、メタクリレート(例えば、2つのR基はHであり、かつ1つのR基はメチルであり、かつ別のR基(メチルと同じ炭素上のもの)はCOORである)、またはビニル基(少なくとも1種のR基は炭化水素である)である。いくつかの実施態様において、モノマーは、アクリレート、メタクリレート、および/またはビニル基を含む。特定の実施態様において、エチレン性不飽和基は、アクリレート基およびメタクリレート基から選択される。重合可能なモノマーの例としては、限定することなく以下が含まれる:グリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート{(メタ)アクリレート=アクリレートまたはメタクリレート}、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2’-エトキシ-2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ-(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ-(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ-(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ-(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ-(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロイルプロパントリ(メタ)アクリレート、ウレタンジメタクリレート(2-ヒドロキシエチルメタクリレートの2,4,4-トリメチルヘキサンジイソシアネートとの反応付加物)、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルプロポキシ)-フェニル]-プロパン(Bis-GMA)、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート中の、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(ここで分子中のエチレンオキシドの総モル数は2~30単位の範囲であり得る)、またはそれらの混合物が挙げられる。本明細書において言及されるように、「(メタ)アクリレート」には、メタクリレートとアクリレートの両方の開示が含まれる。
【0035】
特定の実施態様において、組成物中に存在するモノマーの量は、任意の好適な量である。特定の実施態様において、本明細書で提供される歯科用組成物は、(例えば、組成物全体の)重量パーセントの量で10%~60%のモノマーを含む。より具体的な実施態様において、重量パーセントは20%~50%の間である。
【0036】
特定の実施態様において本明細書で提供される組成物は、銅(II)化合物の形態などで銅(II)を含む。特定の例において、銅(II)(例えば、銅(II)化合物)は組成物の硬化(curing)(例えば、硬くなること(hardening)、または固まること(setting))に触媒作用を及ぼす(例えば、モノマーの重合を促進または容易化する)ために使用される。特定の例において、銅(II)(例えば、その化合物)の存在は、本発明の組成物の2つの部分が混合される際に重合プロセスを促進させる(例えば、それにより分離されたヒドロペルオキシドとチオ尿素が一緒になり、重合の開始が容易になり、それは銅(II)の存在によって促進される)。銅(II)触媒は、場合によって解離した形態、会合した形態(例えば、銅(II)化合物の形態)、または部分的に会合した形態である。様々な実施態様において、銅(II)化合物は、その分子式に少なくとも1つの銅(II)を含む任意の好適な化合物である。銅(II)化合物の例としては、限定することなく、硫酸銅(II)、酢酸銅(II)、塩化銅(II)、アセチルアセトン銅(II)、およびそれらの組み合わせが挙げられる。特定の実施態様において銅(II)化合物は酢酸銅(II)である。他の実施態様において、当該銅(II)化合物はアセチルアセトン銅(II)である。特定の実施態様において、銅(II)(またはその化合物)の重量パーセントは1%未満である。より具体的な実施態様において、銅(II)(またはその化合物)の重量パーセントは0.1%未満である。一層より特定の実施態様において、銅(II)(またはその化合物)は、本明細書の組成物中に約0.001重量%~約0.05重量%の量で提供されるか、または組み合わせられる。
【0037】
特定の実施態様において、ヒドロペルオキシドは、任意の好適な薬剤、とりわけ歯科的に許容可能な薬剤、例えば本明細書で提供されるチオ尿素と組み合わせた場合に本明細書のモノマーの重合を、歯科用途、とりわけ修復用途に適した速度で開始および/または促進するようなものである。いくつかの実施態様において、ヒドロペルオキシドは式HOO-Rで表され、式中Rは任意の好適な有機基である。特定の実施態様において、Rは、C~C20炭化水素(アルキル基、アリール基(例えば、フェニル)、アルキルアリール基、付加的な-OOH基などの任意の好適な基で任意に置換されたもの)などの炭化水素である。いくつかの実施態様において、Rは、式:-CRによって表され、式中、R、R、およびRのそれぞれは、独立して、H、アルキル(環状および/または非環状、および分枝状または直鎖状)、アリール(例えばフェニル)、アリールアルキル(例えばアルキルの炭素に結合)、アルキルアリールアルキルなどであって、そのような基は任意に置換または非置換である。いくつかの実施態様において、R、R、およびRのうちの少なくとも2つはHではない。特定の実施態様において、ヒドロペルオキシドは第三級ヒドロペルオキシドである、すなわち、R、R、およびRのいずれもHではない。特定の場合においてR、R、および/またはRのいずれか1つ以上は、別のまたは同じR、R、およびRと任意に一緒にして、環状(単環状または多環状)アルキル基(本明細書で記載されるように、場合によって置換または非置換されている)を形成する。本明細書に記載されるように、少なくとも1つのヒドロペルオキシド基を有する任意の好適なヒドロペルオキシド化合物が場合により使用される。特定の実施態様において、ヒドロペルオキシド化合物は、1つより多くのヒドロペルオキシド基を含む。ヒドロペルオキシド化合物の非限定的な例としては、限定することなく、t-ブチルヒドロペルオキシド、t-アミルヒドロペルオキシド、p-ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ピナンヒドロペルオキシド、p-メタンヒドロペルオキシド、および1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロペルオキシドが挙げられる。
【0038】
いくつかの実施態様において、ヒドロペルオキシドの任意の好適な濃度は、本明細書で提供される組成物および方法において任意に利用される。特定の実施態様において、ヒドロペルオキシド化合物の合計は、(例えば、組成物全体の)約0.01%(w/w)~約10.0%(w/w)の範囲である。特定の実施態様において、ヒドロペルオキシドは、組成物全体の約0.1%(w/w)~約5.0%(w/w)の範囲で存在する。いくつかの実施態様において、ヒドロペルオキシドは、組成物中に約1.5%(w/w)~約5%(w/w)の量で存在する。特定の例において、本明細書で提供されるヒドロペルオキシド、例えば上記のものの中では、様々な条件下で安定であって長期の保存期間を有する。
【0039】
任意の好適なチオ尿素は、本明細書に記載の組成物(例えば、本明細書に記載の二部式組成物のうちの少なくとも一部において)において任意に使用される。いくつかの実施態様において、チオ尿素は、歯科的に許容されるチオ尿素など、置換したチオ尿素である。いくつかの実施態様において、チオ尿素は、有機チオ尿素、例えば、有機ラジカル(例えば、ピリジル、アセチルなど)で置換されたチオ尿素である。特定の実施態様において、チオ尿素は、構造RNC(=S)NRによって表され、式中、R、R、RおよびRは、H、COR10、ヘテロシクロアルキルおよびヘテロアリール(例えば、置換または非置換のヘテロシクロアルキルまたはヘテロアリール)から独立して選択され、R10は、アルキル、ヘテロアルキル(環状または非環状)、アリール、またはヘテロアリール(R10は置換または非置換)である。特定の実施態様において、チオ尿素基は、環のヘテロ原子に対して炭素α位でヘテロシクロアルキルまたはヘテロアリールに結合している。いくつかの実施態様において、R、R、RおよびRの少なくとも1つまたは1つはHではない。特定の実施態様において、置換チオ尿素は、1-(2-ピリジル)-2-チオ尿素(PTU)、1-ベンゾイル-2-チオ尿素(BTU)、1-アセチル-2-チオ尿素(ATU)、1-(2-テトラヒドロフルフリル)-2-チオ尿素(TTU)およびそれらの混合物(すなわち、PTU、BTU、ATU、および/またはTTUのいずれか1つ以上)からなる群から選択される。
【0040】
特定の実施態様において、本明細書で提供される組成物の2つの部分の組み合わせが組成物の硬化をもたらす。特定の例において、2つの部分、とりわけヒドロペルオキシドとそのチオ尿素の組み合わせが組成物のモノマー成分の重合の開始を容易化する。特定の実施態様において、銅(II)触媒の包含は、硬化プロセス(例えば、モノマー成分の重合)を加速し、歯科用途に好適となるように十分に速い硬化時間をもたらす。場合によっては、二つの部分を混合した場合、混合された組成物は硬化する(cures)(固まる(sets)または硬化する(hardens)など)。一つの実施態様において、固まる時間は20分未満である(例えば、青色範囲の波長(例えば、400nm~530nm、約470nmなど)を有する光の大部分を放出する光硬化装置を使用する光硬化の必要なしに))。一つの実施態様において、固まる時間は10分未満である。一つの実施態様において、固まる時間は5分未満である。より好ましい実施態様において、硬化(例えば、固まる)時間は約250秒以下である。好ましい実施態様において、硬化(例えば、固まる)時間は約180秒以下である。さらなるまたは代替の実施態様において、組成物は、2つの部分が組み合わさった場合、約200秒以下、例えば約150秒以下の作業時間を有する。さらに、いくつかの実施態様において、作業時間は少なくとも30秒である(例えば、歯の窩洞、とりわけクラスIまたはクラスIIの窩洞の修復または充填を可能にするため)。
【0041】
特定の実施態様において、組成物および/またはその一部分に追加の添加剤が含まれる。いくつかの実施態様において、非限定的な例として、光開始剤、フィラー、安定剤、溶媒、またはそれらの組み合わせなど、任意の好適な添加剤が場合により含まれる。特定の実施態様において、歯科用組成物(またはその一部分)は、樹脂組成物およびフィラー(例えば、本明細書に記載の歯科用組成物の材料を含む樹脂組成物)を含む。より具体的な実施態様において、本明細書で提供される組成物の各部分は、樹脂組成物(例えば、本明細書に記載されるモノマーを含む組成物)およびフィラーを含む。
【0042】
特定の実施態様において、本明細書で提供される組成物(またはその一部分)は、フィラー、例えば、少なくとも1種の微粉化フィラーを含む。場合によっては、フィラーは分極収縮を軽減し、機械特性を改善し、歯科用複合材の放射線不透過性を向上させる場合があり得る。さらなるまたは代替の例において、フィラーは、歯科用組成物のレオロジー特性を変化させ得る。例示的なフィラーには、限定することなく、金属酸化物、金属窒化物、金属フッ化物、ケイ酸ガラス、コロイダルシリカ、沈降シリカ、溶融シリカ、アルミノケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、フルオロアルミノケイ酸ガラス、バリウムケイ酸塩、バリウムアルミノケイ酸塩、バリウムアルミノホウケイ酸塩、ストロンチウムアルミノケイ酸塩、バリウムフルオロ-アルミノケイ酸塩、ストロンチウムフルオロアルミノケイ酸塩、ストロンチウム亜鉛フルオロアルミノケイ酸塩、亜鉛アルミノケイ酸塩の事前重合した複合材フィラー、およびそれらの1つ以上の任意の組み合わせが挙げられる。金属酸化物およびフッ化物の例としては、限定することなく酸化バリウム、フッ化ストロンチウム、フッ化バリウム、フッ化イッテルビウム、フッ化イットリウム、酸化亜鉛、酸化ビスマス(III)が挙げられる。一つの実施態様において、当該フィラーは、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)などのカップリング剤で処理される。いくつかの例において、そのような処理は、フィラーと樹脂マトリックス間の界面結合を強化し、機械的特性を改善する。
【0043】
いくつかの実施態様において、フィラーは、微粉化フィラー、例えば、複数の固体粒子を含むか、またはそれから構成されるフィラーである。特定の実施態様において、微細化フィラー(例えば、その粒子)は、例えば、0.02ミクロン(μm)~30ミクロンの間の平均サイズ(例えば、粒径)などの任意の好適な平均寸法を有する。特定の実施態様において、平均サイズは0.2ミクロン~10ミクロンの間である。
【0044】
特定の実施態様において、フィラーは、本明細書で提供される組成物中に任意の好適な量で存在する。いくつかの実施態様において、フィラー(例えば、微粉化フィラー)は、組成物中に10重量%~90重量%の間の量で存在する。特定の実施態様において、重量パーセントは40%~80%の間である。
【0045】
特定の実施態様において、本明細書で提供される組成物(またはその一部分)は、少なくとも1種の光開始剤をさらに含む。任意の好適な光開始剤が場合によって含まれる。光開始剤の例としては、限定することなく、ベンゾインおよび誘導体、2,2-ジエトキシアセトフェノン、カンフォロキノン、1-フェニル-1,2-プロパンジオン、モノアシルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド、およびそれらの混合物が挙げられる。さらに、光開始剤と一緒に活性剤を使用することができる。活性剤の例としては、限定することなく、2-エチル-4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾエート、2-アミル-4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾエート、2-オクチル-4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾエート;2-(エチルヘキシル)-4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾエート、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジメチルアミノフェネチルアルコールおよびそれらの混合物が挙げられる。一つの実施態様において、光開始剤系は、カンフォロキノンおよび2-エチル-4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾエート、2-アミル-4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾエート、2-オクチル-4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾエート;2-(エチルヘキシル)-4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾエート、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N-ジメチルアミノフェネチルアルコールおよびそれらの任意の1つ以上の混合物が挙げられる。一つの実施態様において、光開始剤の重量パーセントは5%未満である。一つの実施態様において、光開始剤の重量パーセントは3%未満である。
【0046】
特定の実施態様において、本明細書で提供される組成物は、少なくとも1種の安定剤を含む。場合によっては、安定剤は、本明細書に記載の組成物のモノマー成分などの重合を阻害する薬剤である。特定の例において、そのような薬剤は、本明細書で提供される組成物の保存期間を改善するのに有用である(例えば、使用前にモノマーの重合を阻害する)。本明細書においては任意の好適な安定剤または重合阻害剤(遊離ラジカルスカベンジャーなど)を任意に利用する。安定剤には、非限定的な例として、2,6-ジ-(tert-ブチル)-4-メチルフェノール(BHT)および4-メトキシフェノール(MEHQ)が挙げられる。安定剤任意の好適な量で、例えば1重量%未満などの量で場合により利用する。
【0047】
特定の実施態様において、本明細書で提供されるのは、歯科用途などにおいて、または歯科用途のためのそのような組成物の利用方法および製造方法である。一般的な例において、そのような組成物は、歯科的に許容可能な方法で(すなわち、個体、患者または人の口(またはその歯腔)への投与に好適な方法で)調製される。特定の実施態様において、本明細書で提供されるのは、本明細書に記載される組成物を例えば個体の歯を修復するために個体に投与する方法である。特定の実施態様において、本明細書に記載の組成物が提供され、その任意の部分は組み合わせて混合組成物を形成し(例えば、ここで組成物のモノマーは重合される)、混合組成物は個体に投与され(例えば、個体の窩洞)、かつ混合組成物は硬化される(例えば、固まるまで)。
【0048】
特定の実施態様において、この方法は、歯(例えば、窩洞を含む歯)を修復するために利用される。いくつかの実施態様において、組成物は、クラスIまたはクラスIIの窩洞(例えば、G.V. Black分類システムに基づくもの)、または後歯の窩洞を含む歯を修復するために投与、送達、および/または使用される。特定の実施態様において、クラスIの窩洞は、臼歯および小臼歯の咬合面、臼歯の頬面の咬合面の3分の2、上切歯の舌面、または上臼歯の舌面にある凹みまたは割れ目の中に位置する窩洞である。いくつかの実施態様において、クラスIIの窩洞は、臼歯または小臼歯の近位表面の窩洞である。特定の実施態様において、組成物は、大きな窩洞(他の修復組成物が欠けている領域)を充填するのに効果的なメカニズムを提供するのにとりわけ有用である。特定の実施態様において、本明細書の方法に従って処理される窩洞は、任意の歯の表面(例えば、歯の充填物の表面、または窩洞の前にあった歯の表面の場所、または窩洞がなかった場合にあったであろう場所)から約3mm以上(例えば、約4mm以上、約5mm以上、約5mm~約7mmなど)の深さを有する。
【0049】
いくつかの実施態様において、混合物は、例えば口腔内条件で固まった後など歯科用硬化光によりさらに硬化される。さらなるまたは代替の実施態様において、本明細書で提供される歯科用組成物の追加の層は、固まった混合物または硬化した混合物の上に置かれ、続いて歯科用硬化光で硬化する。
【0050】
特定の実施態様において、本明細書で提供される組成物の部分は混合されて混合組成物を形成し、混合組成物は個体(例えば、個体の歯腔)に投与され、混合組成物は15分(例えば、0.2分~15分、0.5分~10分、1分~6分、2分~5分、または3分~4分など)まで周囲条件下で硬化される。特定の例において、周囲条件下での硬化は、組成物を硬化させることを含む(例えば、光を発する装置のような光開始装置の不在下で硬化し、その大部分は青色波長を有する(例えば、400~530nmの範囲、または約470nm))。特定の実施態様において、硬化(例えば、自己硬化または固まった)複合材は、光を出射する装置などの光開始装置を使用してさらに硬化され、その大部分は青色波長(例えば、400~530nm、または約470nm)を有するものである。より具体的な実施態様において、光硬化の前に、追加の混合組成物を腔に投与する。いくつかの例では、表面での充填物の完全な硬化を容易にするために、表面での光硬化が望ましい(例えばリビングポリマーおよび/または開始剤の例えば、ラジカル基が相互作用し、完全な重合/硬化の前に空気中で不活性化(die)する可能性がある))。
【0051】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の望ましい修復材の1つ以上の特性は、本明細書に記載の材料の濃度を使用するなどによって、任意の好適な方法で達成される。特定の実施態様において、本明細書で提供されるものとしては、本明細書に記載されるような銅(II)を含む組成物(例えば、二部型組成物)である。いくつかの実施態様において、銅(II)の存在は、歯科的に有効となるように十分な速度で組成物の硬化(例えば、自己硬化)を触媒する。いくつかの実施態様において、存在する銅(II)(またはその化合物)の量は、効果を発揮するためにあまり必要ではない。例えば、いくつかの実施態様において、0.1重量%未満または一層0.01重量%未満の銅(II)(またはその化合物)が使用される。さらなるまたは代替の実施態様において、より高い濃度のヒドロペルオキシドおよび/またはチオ尿素を使用して良好な硬化速度が達成される。いくつかの実施態様において、本明細書で提供される組成物は、ヒドロペルオキシドとチオ尿素の合計濃度(例えば、組成物の別個の部分でヒドロペルオキシドとチオ尿素を提供)として約2.5重量%以上(モノマーの総重量に対する-、すなわち{{重量ヒドロペルオキシド+重量チオ尿素}/総重量モノマー}×100%)、約3重量%以上、約4重量%以上、または約5重量%以上が含まれる。
【0052】
本明細書の特定の実施態様において、本明細書の任意の組成物の第1の部分および第2の部分の硬化した組み合わせ、または本明細書に記載のヒドロペルオキシドを含む任意の組成物とチオ尿素を含む任意の組成物の硬化した組み合わせを含む歯科用セメントが提供される。特定の実施態様において、本明細書に記載の組成物の一方または両方の部分は、銅(II)触媒を含む。いくつかの実施態様において、本明細書で提供される複合材は、硬化樹脂(例えば、本明細書に記載の重合モノマーを含む)、フィラーおよび銅を含む。特定の実施態様において、複合材は、例えばモノマーを含む組成物について本明細書で記載される量のように硬化樹脂を任意の好適な量で含み(例えば、約10重量%~約60重量%)、フィラーを含む組成物について本明細書で記載される量のようにフィラーを任意の好適な量で含み(例えば、約10重量%~約90重量%)、かつ(例えば、元素をベースとして存在する銅の量に基づき)約1元素重量%以下の量の銅を含む(例えば、約0.1重量%以下、約0.05重量%以下など)。特定の実施態様において、歯科用複合材は、約60%(w/w)~約80%(w/w)の量のフィラーおよび約20%(w/w)~約40%(w/w)の硬化樹脂を含む。
【0053】
特定の実施態様において、本明細書で提供および使用される歯科用セメント組成物は、酸および/または無水物の含有量が全くないかまたは低い。特定の実施態様において、酸および/または無水物の含有量は組成物の5重量%未満である。より具体的な実施態様において、酸および/または無水物の含有量は組成物の3重量%未満、組成物の2重量%未満、組成物の1重量%未満、組成物の0.5重量%未満、組成物の0.1重量%未満などである。いくつかの実施態様において、組成物は、約5以上のpH、約5.5以上のpH、約6以上のpH、約6.5以上のpH、または約7以上のpHなど、実質的に中性またはアルカリ性の性質を有する。特定の場合において、組成物の酸含有量は、得られた複合材の吸湿性または水分収着を最小限にするなど、何らかの理由で最小限に抑えることが好ましい。場合によっては、修復材として使用される場合に複合材への水分収着が高レベルであると修復材の体積が膨張し得、修復材が変形し、最終的に修復材の脱離、歯の損傷、および/または他の望ましくない結果がもたらされ得る。
【0054】
特定の実施態様において、本明細書で提供される組成物は、約100μg/mm以下の水分収着である複合材(または本明細書で提供される複合材)に硬化する。特定の実施態様において、水分収着は、約50μg/mm以下、約25μg/mm以下、約20μg/mm以下、または約15μg/mmである。
【0055】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の複合材(例えば、本明細書に記載の組成物部分の組み合わせから形成される)は、歯科用途のための良好な物理的パラメータを有する。いくつかの実施態様において、そのような複合材は、良好な曲げ強度(例えば、50MPa超、100MPa超、125MPa超など)を有する。さらなるまたは代替の実施態様において、複合材は、良好な圧縮強度(例えば、100MPa超、150MPa超、200MPa超、250MPa超など)を有する。特定の実施態様において、複合材は、良好な直径強度を有する(例えば、30MPa超、40MPa超、45MPa超など)。いくつかの実施態様において、本明細書で提供される複合材は、良好な水溶性(例えば、1μg/mm未満)である(In some embodiments, composites provided herein good water solubility (e.g., less than 1 μg/mm3).)。特定の実施態様において、本明細書で提供される複合材は、良好な放射線不透過性を有する(例えば、200%Al超、300%AI超など)。そのような複合材を含むフィルム(例えば、約10ミクロン~約15ミクロン、例えば約14ミクロンの厚さを有するフィルム)の試験を行うなど、任意の好適なプロセスを使用して任意のそのようなパラメータを決定するために利用する。
【0056】
本明細書では本明細書に記載される組成物の製造方法も提供される。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の組成物の構成部分は、任意の好適な順序で組み合わされる。例示的なプロセスは、実施例に記載されている。特定の実施態様において、本明細書で提供される組成物の一部は、モノマー、ヒドロペルオキシド、任意の安定剤、および任意の光開始剤を組み合わせることにより調製される。いくつかの実施態様において、それらの組み合わせは混合して樹脂を形成し、フィラーを添加し、混合または製粉する。同様に、本明細書で提供される組成物の一部は、特定の実施態様において、モノマー、チオ尿素、任意の安定剤、および任意の光開始剤を組み合わせることにより調製される。いくつかの実施態様において、それらの組み合わせは混合して樹脂を形成し、フィラーを添加し、混合または製粉する。実施例に記載される特定の薬剤(および対応する成分類型)の例示は、本明細書に記載される組成物および方法の開示に含まれるものとして理解されるべきである。
【0057】
セラミックは、主にイオン結合および共有結合で保持された金属、非金属または半金属原子を含む無機の非金属の固体材料である。歯科では、セラミック材料が歯冠を製造するために広く使用されており、典型的なセラミック材料には、酸化ジルコニウム、長石磁器、二ケイ酸リチウムが含まれるが、これらに限定されない。これらの材料に良好な接着強度を持たせるために、セメント合着の前にプライマーが必要になる場合があり得る。
【0058】
予備硬化した歯科用樹脂を使用して歯冠を製造することもでき、十分な接着強度を得るためにプライマーも必要になる場合があり得る。
【0059】
いくつかの実施態様において、この方法は:1)象牙質およびエナメル質に歯科用接着プライマーを適用し、続けて任意で硬化活性化剤を適用し、任意で歯科硬化光でプライマー層を硬化する工程;2)クラウン、インレー、アンレー、ベニアなどの事前に作製された修復物に歯科用接着プライマー(a dental bonding primer)を適用し、必要に応じて硬化活性剤を加え、必要に応じて歯科用硬化ライトでプライマー層を硬化させる工程;および3)歯科用セメント層を適用して、事前に作成された修復物を歯牙構造(象牙質およびエナメル質)に接着する工程を含む。
【0060】
いくつかの実施態様において、歯科用接着プライマーは、少なくとも1種のリン酸ペンダント基を有する少なくとも1種の重合可能なモノマーを含む。いくつかの実施態様において、モノマーは、エチレングリコールメタクリレートホスフェート、ビス[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]ホスフェート、10-メタクリロイルオキシデシル二水素ホスフェート、グリセロールホスフェートジ(メタ)アクリレート、フェニル-P(フェニルメタクリルオキシエチルホスフェート)、PENTA-P(ジペンタエリスリトールペンタアクリレートホスフェート)からなる群から選択される。
【0061】
いくつかの実施態様において、歯科用接着プライマーは、少なくとも1種のカルボン酸または無水物ペンダント基を有する少なくとも1種の重合可能なモノマーを含む。いくつかの実施態様において、モノマーは、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、4-META(4-メタクリルオキシエチルトリメリット酸無水物)、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、4-META(4-メタクリルオキシエチルトリメリット酸);PM-HEMA(ピロメリット酸無水物と2-ヒドロキシエチルメタクリレートの付加生成物)、PM-GDM(ピロメリット酸無水物とグリセロールジメタクリレートの付加生成物)、BTDA-HEMA(3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物とヒドロキシエチルメタクリレートの付加生成物)、PA-HEMA(無水フタル酸とヒドロキシエチルメタクリレートの付加生成物)、MA-GDM(無水マレイン酸とグリセロールジメタクリレートの付加生成物)からなる群から選択される。
【0062】
いくつかの実施態様において、歯科用接着プライマーは、少なくとも1種の(メタ)アクリレート基を有する少なくとも1種のエチレン性不飽和基を含む。特定の実施態様において、エチレン性不飽和基は、アクリレート基およびメタクリレート基から選択される。重合可能なモノマーの例には、以下が含まれるが、これらに限定されない:グリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート{(メタ)アクリレート=アクリレートまたはメタクリレート}、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2’-エトキシ-2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールモノ-(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ-(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ-(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ-(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ-(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ-(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロイルプロパントリ(メタ)アクリレート、ウレタンジメタクリレート(2-ヒドロキシエチルメタクリレートの2,4,4-トリメチルヘキサンジイソシアネートとの反応付加物)、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルプロポキシ)-フェニル]-プロパン(Bis-GMA)、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート中のエトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(分子中のエチレンオキシドの総モル数は2~30単位の範囲であり得る)、またはそれらの混合物。本明細書で言及されるように、「(メタ)アクリレート」には、メタクリレートとアクリレートの両方の開示が含まれる。
【0063】
いくつかの実施態様において、歯科用接着プライマーは少なくとも1種の溶媒を含む。いくつかの実施態様において、溶媒は、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、n-ブタノール、t-ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、水からなる群から選択される。
【0064】
いくつかの実施態様において、硬化活性剤は、酸性環境で遊離ラジカルを生成する化学物質である。
【0065】
いくつかの実施態様において、事前に作製された修復物の材料は、少なくとも1種の無機フィラーを含む事前に硬化された歯科用樹脂材である。いくつかの実施態様において、前記事前に作製された修復物の材料はセラミックである。いくつかの実施態様において、前記セラミックは、酸化ジルコニウム、長石磁器、二ケイ酸リチウムからなる群から選択される。
【0066】
いくつかの実施態様において、事前に作製された修復物上の歯科用プライマーは歯科用接着剤である。いくつかの実施態様において、歯科用プライマーは、少なくとも1種の(メタ)アクリレートペンダント基を有する少なくとも1種のシランを含むプライマーである。
【0067】
いくつかの実施態様において、歯科用セメントは、混合チップを備えた歯科用デュアルバレルシリンジを介して、前記の事前に作製された修復物に送達される。
【0068】
いくつかの実施態様において、過剰の歯科用セメントは歯科用器具で取り除かれる。いくつかの実施態様において、歯科用セメントは、歯科用硬化光により任意に硬化される。
【0069】
いくつかの例において、本明細書で使用される「固まる時間(set time)」は、本明細書で提供される混合組成物(すなわち、本明細書に記載される2部式組成物の両方の部分を組み合わせた組成物)が、とりわけ歯科用硬化ライトなどの修復材の硬化を容易にするように設計された補助装置がない場合(例えば、本明細書では「自己硬化」とも称する)において、固体または硬質の複合材(部分的にまたは完全に硬化したもの)を形成する時間の長さである。歯科用硬化光は、光硬化樹脂に基づく複合材の重合に使用される歯科用機器である。それは、光で硬化するいくつかの異なる歯科材で使用できる。使用される光は、可視の青色光スペクトルに該当する。この光は、さまざまな波長にわたって供給され、装置の種類ごとに異なる。歯科用硬化光には4つの基本的な種類がある;タングステンハロゲン、発光ダイオード(LED)、プラズマアーク硬化(PAC)、およびレーザー。特定の例において、「作用時間(work time)」は、混合された組成物が典型的な歯科技術および/または機器を使用して順応でなくなった後の時間の長さである。
【0070】
本明細書で使用する場合、重量パーセント(重量%または%(w/w))は、反対の明記がない限り、組成物または複合材の全重量に対する成分の重量のパーセンテージを指す。いくつかの実施態様において、重量パーセントは、二部型組成物(例えば第1の部分および第2の部分が物理的に分離されているもの)の重量に対する成分の重量、および/または二部型組成物のうちの一部分の重量に対する成分の重量を指す。場合によっては、二部システムの両方の部分で成分の重量パーセントは同一でも類似していてもよく、また二部システムの各部分において成分は異なる重量パーセントを有していてもよい。例えば、一般的な例では、ヒドロペルオキシドおよびチオ尿素はそれぞれ、各部分で異なる重量パーセントを有し、ヒドロペルオキシドは組成物の第1の部分に全体的にまたは主要的に存在し、チオ尿素は組成物の第2の部分に全体的にまたは主要的に存在する。
【0071】
本明細書で使用される「アルキル」という用語は、単独でまたは組み合わせて、置換されていてもよい直鎖状または置換されていてもよい分枝状の鎖飽和または不飽和の炭化水素モノラジカルであって、例えば1個~約10個、より好ましくは1個~約6個の炭素原子を有するものを指す。例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、2-メチル-1-プロピル、2-メチル-2-プロピル、2-メチル-1-ブチル、3-メチル-1-ブチル、2-メチル-3-ブチル、2,2-ジメチル-1-プロピル、2-メチル-1-ペンチル、3-メチル-1-ペンチル、4-メチル-1-ペンチル、2-メチル-2-ペンチル、3-メチル-2-ペンチル、4-メチル-2-ペンチル、2,2-ジメチル-1-ブチル、3,3-ジメチル-1-ブチル、2-エチル-1-ブチル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-アミルおよびヘキシル、ならびにヘプチル、オクチルなどのより長鎖のアルキル基が含まれるが、これらに限定されない。本明細書において記載される場合は常に「C~Cアルキル」などの数値範囲とは、いくつかの実施態様において、アルキル基が1個の炭素原子からなることを意味し、いくつかの実施態様において、2個の炭素原子からなることを意味し、いくつかの実施態様において、3個の炭素原子からなることを意味し、いくつかの実施態様において、4個の炭素原子からなることを意味し、いくつかの実施態様において、5個の炭素原子からなることを意味し、またはいくつかの実施態様において、6個の炭素原子からなることを意味するが、本定義は、数値範囲が指定されていない「アルキル」という用語の出現も対象とする。さらに、アルキルが両側で置換されている(例、上記Lについて説明したように)場合によっては、アルキルは、上記で定義されたモノラジカル、アルキルに由来するジラジカルを指し得る。例としては、メチレン(-CH-)、エチレン(-CHCH-)、プロピレン(-CHCHCH-)、イソプロピレン(-CH(CH)CH-)などが挙げられるが、これらに限定されない。「アルキル」は、例えば、3個~約15個の環炭素原子または3個~約10個の環炭素原子を含有している、任意に置換された飽和炭化水素モノラジカル環を指す環状アルキル基も指し得るが、いくつかの実施態様においては、置換基(例えば、メチルシクロプロピル)として追加の非環炭素原子を含む。この用語には、融合、非融合、架橋およびスピロラジカルが含まれる。いくつかの実施態様において、縮合シクロアルキルは、結合環がシクロアルキル環である2~4個の縮合環を含む。例としては、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、クメン、およびピナリング系が挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
本明細書で使用される「アリール」という用語は、単独でまたは組み合わせて、任意に置換された、環炭素原子が6個~約20個である芳香族炭化水素ラジカルを指し、縮合および非縮合アリール環を含む。縮合アリール環ラジカルは、2~4個の縮合環を含み、この結合の環はアリール環であって、他の個々の環は脂環状、複素環状、芳香族、複素芳香族またはそれらの任意の組み合わせである。さらにアリールという用語は、6個~約12個の環炭素原子を含有している縮合および非縮合環、ならびに6個~約10個の環炭素原子を含むものをも含む。単環アリール基の非限定的な例としては、フェニルが挙げられ;縮合環アリール基としては、ナフチル、フェナントレニル、アントラセニル、アズレニルが挙げられ;非縮合ビ-アリール基にはビフェニルが挙げられる。
【0073】
本明細書で使用される「ヘテロアリール」という用語は、単独でまたは組み合わせて、約5個~約20個の骨格環原子を含有している任意に置換された芳香族モノラジカルを指し、ここで、1個以上の環原子が、酸素、窒素および硫黄(ただしこれら原子に限定されない)の中から独立して選択されるヘテロ原子であるが、当該基の環が2つの隣接するOまたはS原子を含まないということを条件とする。環中に2つ以上のヘテロ原子が存在する実施態様において、2つ以上のヘテロ原子は互いに同一であるか、2つ以上のヘテロ原子の一部またはすべてが他のものと異なる。ヘテロアリールという用語は、少なくとも1種のヘテロ原子を有する任意に置換された融合および非融合ヘテロアリール基を含む。ヘテロアリールという用語はまた、5個~約12個の骨格環原子を有する縮合および非縮合ヘテロアリール、ならびに5個~約10個の骨格環原子を有するものを含む。特定の例では、ヘテロアリール基への結合は、炭素原子またはヘテロ原子を介している。単環ヘテロアリール基の非限定的な例としては、ピリジルまたはフラニルが含まれる。
【0074】
本明細書で使用される「ヘテロアルキル」という用語は、上記の置換されていてもよいアルキル構造を指し、骨格鎖炭素原子の1つまたは複数(および必要に応じて任意の関連水素原子)がそれぞれ独立してヘテロ原子(すなわち、炭素以外の原子、例えば限定することなく酸素、窒素、硫黄、またはそれらの組み合わせなど)で置換されているものを指す。例示的なヘテロアルキル基としては、エチレンオキシド(例えば、-CH2CH2On-)などの直鎖基、またはテトラヒドロフランなどの環状基が含まれる。
【実施例0075】
例で使用されている材料の略称は次のとおりである。
PTU:1-(2-ピリジル)-2-チオ尿素
CHP:クメンヒドロペルオキシド
CuPD:アセチルアセトン銅(II)MDP:10-メタクリロイルオキシデシル二水素ホスフェート
R202:AEROSIL(商標)ヒュームドシリカR812S:AEROSIL(商標)ヒュームドシリカ
GM27884-K6:Schott GM27884歯科用ガラス、3μm
YbF3:フッ化イッテルビウム
BYK W9010:湿潤分散添加剤(流動改質剤)
CQ:カンファーキノン
EDMAB:エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート
UDMA:ウレタンジメタクリレート
E6BAD:エトキシル化(6)ビスフェノールAジメタクリレートEBPADM:エトキシル化(3)ビスフェノールAジメタクリレート
BisGMA:ビスフェノールA-グリシジルメタクリレート
TEGDM:トリエチレングリコールジメタクリレート
BHT:ブチル化ヒドロキシトルエン
HDK N-20P:ヒュームドシリカ
Pluronic L-44:界面活性剤
DI水:蒸留水
DHEPT:N-N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-P-トルイジン
BPO:過酸化ベンゾイル
【0076】
実施例1-16%MDPを有する接着剤の調製
実施例1および実施例2は、化学物質を添加および混合することにより調製した。化学物質は、ヒュームドシリカを除くすべての固体が溶解するまで混合し、結果として低粘性の液体となった。
【0077】
【表1】
【0078】
実施例2-8%MDPおよび8%PMDMを有する接着剤の調製
実施例2は、実施例1および2を比率で混合することにより調製した。
【0079】
【表2】
【0080】
比較例A-0%MDPおよび16%PMDMを有する接着剤の調製
例1および2は、化学物質を添加および混合することにより調製した。すべての化学物質はヒュームドシリカを除くすべての固体が溶解するまで混合し、低粘性の液体が生成された。
【0081】
【表3】
【0082】
実施例3-第1の部分 CHP-共開始剤含有ペーストの調製
実施例3は、化学物質を添加および混合することにより調製した。樹脂化学物質は、すべての固体が溶解するまで、CQ、EDMAB、およびBHTなどの溶解可能な固体と混合した。次いで、R812S、YbF3およびGM27884を含む固体フィラーを添加し、スピードミキサーで混合し、続けて3本ロールミルで混合し、ペースト状の半固体を得た。
【0083】
【表4】
【0084】
実施例4-第2の部分 PTU-共開始剤含有ペーストの調製
実施例4は、化学物質を添加および混合することにより調製した。樹脂化学物質は、すべての固体が溶解するまで、CQ、EDMAB、PTU、およびBHTを含む溶解可能な固体と混合した。CuPDをTEGDMAのミキサーに追加し、スピードミキサーで混合した。次に、R812S、YbF3、およびGM27884を含む固体フィラーを添加し、スピードミキサーで混合した後、3本ロールミルで混合して、ペースト状の半固体を得た。
【0085】
【表5】
【0086】
実施例5-第1の部分 実施例3のペーストと第2の部分 実施例4のペーストの混合物の調製
実施例5は、実施例3(CHP共開始剤含有)および実施例4(PTU共開始剤含有)をデュアルバレルシリンジに充填することにより調製され、各筒では第1の部分および第2の部分として、それぞれ1つのペーストが収容された。このペーストの組み合わせを使用する場合は、両方のペーストが混合筒を通過して好適に混合できるように、混合チップが取り付けられる。混合が行われると、材料は約4~8分間で硬化した。
【0087】
実施例7および実施例8ならびに比較例B-接着剤および混合された第1の部分および第2の部分のセメントペーストの適用
ジルコニア基材をポリマー樹脂に埋め込み、最上層を切り落とすことにより露出させた。基材を露出させ、600グリットのSiC紙で研磨した。ジルコニア表面に、60psiの圧力で50nmの酸化アルミニウム粉末をさらにサンドブラストした。その後、すべての試験片を徹底的にすすいだ。実施例1または実施例2または比較例Aのいずれかからの接着剤の層を軽くブラッシングして適用し、続いて約10秒間空気により薄くした。次に、試験片をISO29022-2013に記載されている接着ジグに入れた。実施例5のペースト混合物を窩洞に注入し、35℃の湿度室に1時間保持した後、ジグから外した。次に、試験片を水に入れ、37℃のオーブンで20時間保持した。次に、試験片の接着強度をISO29022-2013に従って記録した。各グループの10個の試験片について、平均接着強度と標準偏差を表1に記録した。結果は、16%(実施例1)または8%(実施例2)の接着剤を含有しているMDPは、それぞれ19.8MPaおよび19.1MPaで15MPaを超える接着強度を提供することが示され、一方ではMDPを欠く比較例Aの接着剤は、11.6MPaで15MPa未満の劣った接着強度を有していた。
【0088】
【表6】
【0089】
比較例C-第1の部分 BPO-共開始剤含有ペーストの調製
比較例Cは、実施例3で行ったように化学物質を添加および混合することにより調製した。樹脂化学物質は、すべての固体が溶解するまで、CQ、EDMAB、BPO、およびBHTなどの溶解可能な固体と混合した。次いで、R812S、YbF3およびGM27884を含む固体フィラーを添加し、スピードミキサーで混合し、続いて3本ロールミルにより、ペースト状の半固体を得た。
【0090】
【表7】
【0091】
比較例D-第2の部分 DHEPT-共開始剤含有ペーストの調製
比較例Dは、実施例4で行われたように化学物質を添加および混合することにより調製した。樹脂化学物質は、すべての固体が溶解するまで、CQ、EDMAB、DHEPT、およびBHTなどの溶解可能な固体と混合した。次いで、R812S、YbF3およびGM27884を含む固体フィラーを添加し、スピードミキサーで混合し、続いて3本ロールミルにより、ペースト状の半固体を得た。
【0092】
【表8】
【0093】
比較例E-第1の部分 例Cのペーストと第2の部分 例Dのペーストの混合物の調製 比較例Eは、比較例Cおよび比較例Dをデュアルバレルシリンジに、各筒に1つのペーストを収容して充填することにより、実施例5で行われたように調製した。このペーストの組み合わせを使用する場合は、両方のペーストが混合筒を通過して適切に混合できるように、混合チップが取り付けられる。混合が行われると、材料は約4~8分間で硬化した。
【0094】
比較例FおよびG-接着剤および混合された第1の部分および第2の部分のセメントペーストの適用
実施例7および実施例8で行われたように、ジルコニア基材をポリマー樹脂に埋め込み、最上層を切り落とすことにより露出させた。基材を露出させ、600グリットのSiC紙で研磨した。ジルコニア表面に、60psiの圧力で50nmの酸化アルミニウム粉末をさらにサンドブラストした。その後、すべての試験片を徹底的にすすいだ。実施例1または実施例2の層を軽くブラッシングして適用し、続いて約10秒間空気により薄くした。次に、試験片をISO29022-2013に記載されている接着ジグに入れた。比較例Eのペースト混合物を窩洞に注入し、35℃の湿度室に1時間保持した後、ジグから外した。次に、試験片を水に入れ、37℃のオーブンで20時間保持した。次に、試験片の接着強度をISO29022-2013に従って記録した。各グループの10個の試験片について、平均接着強度と標準偏差を表2に記録した。表2で示される結果は、BPO(例C)およびDHEPT(例D)がセメントペーストを調製するための第1の部分および第2の部分の共開始剤含有ペーストにおいて共開始剤として使用される場合、接着強度は、8.1MPaおよび11.4Mpaにおいて、それぞれ19.8MPaおよび19.1MPaにてのCHP(例3)およびPTU(例4)が第1の部分および第2の部分において共開始剤として使用される場合よりもはるかに低く、弱いことを示すものであった。
【0095】
【表9】
【手続補正書】
【提出日】2023-11-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書または図面に記載された発明。
【外国語明細書】