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2024-161924物体の回収を行うための医療機器および方法
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  • -物体の回収を行うための医療機器および方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161924
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】物体の回収を行うための医療機器および方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/22 20060101AFI20241114BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
A61B17/22
A61M25/00 540
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021160325
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】早川 浩一
【テーマコード(参考)】
4C160
4C267
【Fターム(参考)】
4C160EE30
4C160MM36
4C267AA03
4C267AA40
4C267BB02
4C267BB26
4C267CC08
4C267CC20
4C267CC23
4C267CC24
4C267GG03
4C267GG06
4C267GG07
4C267GG08
4C267GG09
4C267GG10
4C267GG11
4C267GG21
(57)【要約】
【課題】 本発明の目的は、簡単な機構と、簡単な操作で、物体を収容することができる医療機器を提供することにある。
【解決手段】 物体の回収を行うための医療機器であって、筒状体と、該筒状体の外面および内面を折り返すように摺動する摺動体とを含み、筒状体の先端付近で摺動体に物体を接触させて摺動させることにより、物体を引き込んで筒状体内部に回収することができる、前記医療機器。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の回収を行うための医療機器であって、筒状体と、該筒状体の外面および内面を折り返すように摺動する摺動体とを含み、筒状体の先端付近で摺動体に物体を接触させて摺動させることにより、物体を引き込んで筒状体内部に回収することができる、前記医療機器。
【請求項2】
摺動体の内側端部に接続された長尺体をさらに含む、請求項1に記載の医療機器。
【請求項3】
筒状体または長尺体の内側に挿通された内視鏡をさらに含む、請求項1または2に記載の医療機器。
【請求項4】
筒状体または長尺体の内側に挿通された拡張体をさらに含み、拡張体は、カテーテルとカテーテルに固定された伸縮可能な拡張部とを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の医療機器。
【請求項5】
物体の回収方法であって、
請求項1~4のいずれか一項に記載の医療機器を提供するステップ、
摺動体に物体を接触させるステップ、
摺動体を摺動させるステップ、
物体を筒状体内部に回収するステップ
を含む、前記方法。
【請求項6】
医療機器が、拡張体をさらに含み、
接触させるステップが、
拡張部を拡張させるステップ、
カテーテルを引くステップ、および
拡張部で物体を誘導するステップを含む
請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の回収を行うための医療機器および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓や大動脈壁などに形成された血栓が遊離して末梢の下肢動脈が閉塞すると、急性下肢虚血(ALI:Acute limb ischemia)が生じる。急性下肢虚血の治療方法として、経カテーテル的直接血栓溶解療法(CDT:Catheter-directed thrombolysis)、経皮的機械的血栓除去術(PMT:Percutaneous mechanical thrombectomy)、経皮的吸引血栓除去術(PAT:Percutaneous aspiration thrombectomy)などが知られている。
【0003】
しかしながら、血栓の寸法が大きい場合や、血栓が硬い場合には、皮膚から血管を穿刺して行う経皮的な方法では、血栓を除去することが困難である。したがって、血栓の寸法が大きい場合や、血栓が硬い場合には、バルーンを有するカテーテルによる血栓除去術が有効である。
【0004】
この方法では、外科的に皮膚を切開し、大腿動脈を露出させる。次に、大腿動脈を切開して血管内にカテーテルを挿入し、収縮したバルーンを伸ばして血栓による閉塞部(または狭窄部)を通過させた後にバルーンを拡張させる。この後、バルーンを近位側に引っ張ることで、血栓を血管の切開部まで移動させ、切開部から体外に除去する。しかし、この方法は、外科的な技術を要するため、医師の技術的習熟度に依存する。このため、患者への身体的負担が大きく、治療後の感染のリスクが高い。
【0005】
そのため、例えば特許文献1には、皮膚を切開せずに、バルーンを有する血栓除去デバイスを血管に挿入して、血栓を除去する方法が記載されている。この方法は、血栓除去デバイスのバルーンによって血栓を引っ張り、血管内で拡張させた漏斗状の管体に収容する。この後、近位側から血栓を吸引し、漏斗状の管体内の血栓を体外へ排出できる。
【0006】
特許文献2には、2つのシャフト部と、2つのシャフト部の遠位部から遠位側へ延在する切削部とを有し、前記切削部は、前記シャフト部に対して傾斜する切削刃を有する線状部を備えた医療デバイスが記載されている。このデバイスは、切削刃を備える線状部が、シャフト部に対して傾斜しているため、生体管腔内で物体が引き込まれる捕獲デバイスの中で移動することで、物体を効果的に破砕できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許公開第2011/0213393号明細書
【特許文献2】特開2018-143577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載のデバイスでは、漏斗状の管体内の血栓を、吸引力のみで細いシースを介して体外へ除去することは困難である。また、特許文献2に記載のデバイスでは、構造が複雑で、血栓の破砕を必要とするため、血管を傷める恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、簡単な機構と、簡単な操作で、生体内の物体を効率的に回収できる医療機器および方法を提供することを目的とする。
【0010】
すなわち本発明は、以下に関する。
[1]物体の回収を行うための医療機器であって、筒状体と、該筒状体の外面および内面を折り返すように摺動する摺動体とを含み、筒状体の先端付近で摺動体に物体を接触させて摺動させることにより、物体を引き込んで筒状体内部に回収することができる、前記医療機器。
[2]摺動体の内側端部に接続された長尺体をさらに含む、[1]に記載の医療機器。
[3]筒状体または長尺体の内側に挿通された内視鏡をさらに含む、[1]または[2]に記載の医療機器。
【0011】
[4]筒状体または長尺体の内側に挿通された拡張体をさらに含み、拡張体は、カテーテルとカテーテルに固定された伸縮可能な拡張部とを有する、[1]~[3]のいずれか一項に記載の医療機器。
[5]物体の回収方法であって、[1]~[4]のいずれか一項に記載の医療機器を提供するステップ、摺動体に物体を接触させるステップ、摺動体を摺動させるステップ、物体を筒状体内部に回収するステップを含む、前記方法。
[6]医療機器が、拡張体をさらに含み、接触させるステップが、拡張部を拡張させるステップ、カテーテルを引くステップ、および拡張部で物体を誘導するステップを含む、[5]に記載の方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡単な機構と、簡単な操作で物体を回収することができるため、操作性や製造コストの点において大きなメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の第1実施態様に係る医療機器の先端部分を示す概念図である。
図2図2は、本発明の第1実施態様に係る医療機器の使用例を示す概念図である。
図3図3は、本発明の第1実施態様に係る医療機器の変形例を示す図である。
図4図4は、本発明の第1実施態様に係る医療機器の使用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において、「物体」とは、「固形の物体」であり、固形状の部分を含む物体である。物体としては、例えば、生体内、管腔内または体腔内に存在する。物体の例としては、ポリープ、組織片、筋腫、筋肉片(筋線維)、消化管内の排泄物(便、硫酸バリウム製剤等)、血栓、留置物(ステント、フィルター等)、誤飲した異物、破断した医療機器の一部、残留した医療機器の一部または全部などを含む。
【0015】
本発明において、「医療機器」とは、ヒトもしくは動物の疾病の診断、治療もしくは予防に使用されること、またはヒトもしくは動物の身体の構造もしくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等を指す。
【0016】
本発明において、「筒状体」とは、物体をその内側に回収することができる、略筒形状の部材をいう。略筒形状とは、典型的には、例えば、1枚の板状部材を円形に丸めた、断面が円形の円筒状を含み、その内側に物体を収容して、体外に適切に回収することができる。すなわち、筒状体は、物体を収容する内面および該内面の反対側にある外面を有する、アーチ状の部分(アーチ状部)を有する。筒状体が、例えば、4枚の板状部材を連結した、断面が四角形の筒形状を有する場合は、アーチ状部はコの字形を含むロの字形であり、内側の凹んでいる面を内面、その反対側にある外側の突出している面を外面という。
【0017】
筒状体が、上記のように1枚の板状部材を円形に丸めた、断面が円形の円筒状を有する場合は、アーチ状部はCの字形を含むО(オー)の字形であり、内面および外面は曲面である。筒状体が、例えば、1枚の板状部材を半円形に丸めた、断面が半円形の半円筒状を有する場合は、アーチ状部はCの字形であり、内面および外面は曲面である。すなわち、アーチ状部とは、筒状体におけるロの字形、コの字形、Оの字形、またはCの字形のアーチ状の部分をいう。ロの字形はコの字形を、Оの字形はCの字形を包含する。本発明において、アーチ状部の凹んでいる側を、内面、凹面、内側、内部、アーチ状部の突出している側を外面、凸面、外側、外部という場合がある。アーチ状は、弧状も含む。
【0018】
アーチ状部の内面と外面のどちらか一方は平面であってもよく、例えば、内面が凹面で外面が平面、内面が平面で外面が凸面であってもよい。筒状体は剛性を有し、その凹面に移植片を配置することで、移植片を外部に離脱させることなく、適切に保持することができる。筒状体は、凹面を有するアーチ状部を少なくとも一部に有していればよく、断面が半円形、円形、四角形、多角形の部材でもよい。筒状体は、移植片をその内側に適切に引き込むことができるように、長尺状であることが好ましい。筒状体は、管腔や体腔の形状に合わせて自由に屈曲できるように、可撓性を有する材料で構成することもできる。
【0019】
筒状体の材料としては、特に限定されず、各種公知の材料を単独でまたは複数組み合わせて用いることができる。このような材料としては、例えば、金属、軟質塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーンゴム、天然ゴム、合成ゴム、スチレンーエチレンーブチレンースチレン共重合体(SEBS)、スチレンーエチレンープロピレンースチレン共重合体(SEPS)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ナイロンなどのポリアミド樹脂及びポリアミドエラストマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル樹脂及びポリエステルエラストマー、ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂、フッ素ゴム、フッ素樹脂、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
本発明において、「摺動体」とは、筒状体の表面に沿って摺動することができる帯状体をいう。一態様において、帯状体は、筒状体の面形状に沿って摺動できる筒形状を有する。摺動体は、筒状体の長軸方向に沿って摺動し、筒状体の先端部で折り返されることで、内面から外面、外面から内面に移動する。摺動体は、筒状体の外面から先端部で折り返されて内面に移動することで、筒状体上をベルトコンベアの様に摺動し、物体を摺動体に接触させることで、物体を筒状体の内部に引き込むことができる。
【0021】
本発明において、「長尺体」とは、筒状体内に進退可能に挿通することができる、長尺の部材をいう。長尺体は、その一部に摺動体の内側端部を接続することができ、長尺体を筒状体に対して相対的に進退させることで、摺動体を筒状体に対して相対的に動かすことができる。一態様において、長尺体は、内側に空洞を有するパイプ状に構成することもできる。そして、長尺体の内側に、内視鏡や拡張体を挿通して長尺体の先端から進出させることで、筒状体の先端方向にある物体の観察や誘導を行うこともできる。
【0022】
以下、本発明の好適な実施態様に係る医療機器ついて、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施態様に係る医療機器の先端部分を示す概念図、図2は、本発明の第1実施態様に係る医療機器の使用例を示す概念図、図3は、本発明の第1実施態様に係る医療機器の変形例を示す図である。
なお、本願における各図において、説明を容易とするため、各部材の大きさは、適宜強調されており、図示の各部材は、実際の大きさを示すものではない。
【0023】
第1実施態様
まず、本発明の第1実施態様について説明する。
図1に示されるように、本発明の第1実施態様に係る医療機器1は、筒状体2および摺動体3を含む。筒状体2は、円筒形状を有する長尺の円筒体であり、Оの字形のアーチ状部の内面は凹曲面、外面は凸曲面を成す。摺動体3は、筒状体2の形状に沿って摺動できる、円筒形状を有する長尺の帯状体である。
【0024】
摺動体3は、筒状体2の外面および内面を折り返すように摺動させることができ、筒状体2の外面形状および内面形状に沿って変形する。筒状体2の先端部は、摺動体3が折り返される部分であり、摺動体3の摺動を円滑にして摩耗を抑えるため、断面がR形状をなしている(面取りされている)ことが望ましい。
【0025】
摺動体3は、例えば、筒状体2の基端側(図1右側)から外側に通し、先端方向(図1左方向)に引っ張り、筒状体2の先端部で内側に折り返し、折り返された部分を基端方向に引っ張ることで、筒状体2の内面および外面を覆うことができる。そして、摺動体3の内側端部31を筒状体2の基端方向に引っ張ることで、摺動体3を筒状体2の外面から内面に折り返すように摺動させることができる。
【0026】
逆に摺動体3の外側端部32を筒状体2の基端方向に引っ張ることで、摺動体3を筒状体2の内面から外面に折り返すように摺動させることもできる。一態様において、筒状体2の内側を軸方向に進退できる長尺体4をさらに含むことができ、摺動体3の内側端部31を長尺体4に接続することができる。長尺体4は、摺動体3を操作するための操作部として機能し、摺動体3を進退させるだけで、摺動体3を筒状体2に対して相対的に摺動させることができる。
【0027】
このように、円筒形状の帯状体である摺動体3の内側端部31を、筒状体2の基端方向に引っ張る場合、矢印で示されるように、摺動体3は筒状体2の円形の先端部(開口部)で周方向に沿って折り返され、内側に折り返された摺動体3は円筒形状を維持しつつ筒状体2の基端方向にベルトコンベア式に移動していく。このとき、摺動体3の外側端部32は、筒状体2の外側を先端方向に移動する。
【0028】
図2に示されるように、本発明の医療機器1を管腔L(例えば、消化管など)内に存在する物体T(例えば、排泄物)を回収するために使用する際は、摺動体3の内側端部31および外側端部32が筒状体2の基端側に来るように配置し、物体Tを筒状体2の先端部に位置する摺動体3に接触させる(図2a)。そして、筒状体2の基端部を一方の手で把持し、他方の手で長尺体4の基端部を基端方向(図2右方向)に引っ張る(図2b)。
【0029】
すなわち、長尺体4を筒状体2から引き抜き、長尺体4の先端を筒状体2の基端方向に後退させることで、筒状体2内に物体Tを収容するためのスペースを確保する。長尺体4は、筒状体2に対して相対的に基端方向に移動するため、長尺体4に接続された摺動体3の内側端部31も同様に、筒状体2に対して相対的に基端方向に移動する。これにより、摺動体3は筒状体2の形状に沿って、外側から内側にベルトコンベア式に摺動する。
【0030】
したがって、図2aにおいて、筒状体2の先端部で摺動体3に接触していた物体Tは、図2bに示されるように、摺動体3によって筒状体2内部に引き込まれ、物体Tはその周囲が摺動体3に挟まれた状態で筒状体2の基端方向に移動する。そして、帯状の摺動体3は間断なく連続的に筒状体2の内側に移動するので、物体Tを適度に圧し潰しながら筒状体2の内部に引き込んで回収することができる。
【0031】
物体Tが筒状体2の内部に適切に回収された事を確認すると、医療機器1を管腔L内から引き抜き、今度は逆に長尺体4を先端方向に進出させることで、接続されている摺動体3を筒状体2の先端方向に摺動させる。物体Tは、筒状体2の先端部から押し出され、押し出された物体Tは、検査、培養、観察などに使用することができる。
【0032】
図3は、本発明の第1実施態様に係る医療機器の変形例を示す図である。本変形例の医療機器1’において、長尺体4’は、内側に空洞を有するパイプ状に構成されている。長尺体4’は両端に開口部を有し、例えば、基端側の開口部から内視鏡などを挿通し、先端側の開口部から進出させることで、筒状体2の内部や先端方向にある物体Tを観察することができる。
【0033】
本変形例においては、長尺体4’の内側には、拡張体5が挿通されているものとして説明する。拡張体5は、カテーテル52とカテーテル52に固定された伸縮可能な拡張部51とを含む。拡張体5は、拡張部51を収縮させた状態で、カテーテル52と共に長尺体4’の先端側の開口部から進出させることができ、管腔L内にある物体Tを越えて(物体Tの遠位側に)配置することができる(図3a)。このとき、物体Tは、筒状体2の先端部からは離れており、摺動体3にはまだ接触していない。
【0034】
本変形例の医療機器1’で、管腔L(例えば、血管など)内に存在する物体T(例えば、血栓など)を回収するためには、図3bに示されるように、拡張部51を拡張させた状態でカテーテル52を基端方向(図3右方向)に引っ張る。引っ張られた拡張部51は物体Tに当接し、カテーテル52を引くにつれて筒状体2の先端部に誘導される。ガイドワイヤーを拡張部51と共に追加的に使用してもよい。
【0035】
物体Tが誘導されて筒状体2の先端部に位置する摺動体3に接触すると、長尺体4’の基端側の開口部に配置されているバルブ41を閉じて、カテーテル52を長尺体4’に対して動かないように固定する。そして、上述のように、長尺体4’を基端方向に引っ張り、摺動体3によって物体Tを引き込んで筒状体2内部に回収する。長尺体4’は省略することもでき、この場合、内視鏡や拡張体5は筒状体2の内側に挿通する。
【0036】
本変形例では、拡張部51で血栓が血流で流されないようにできるため、血液よりも物体T(血栓)を優先的に回収することができ有利である。拡張された拡張部51で長尺体4’の先端部に蓋をすることで、物体Tが筒状体2から離脱することを防ぐこともできる。拡張部51を収縮させて物体Tと共に筒状体2内に収容することで、医療機器1’を引き抜く際に、拡張部51で管腔Lを傷つけるようなことを防ぐこともできる。
【0037】
別の態様として、図4に示されるように、皮膚Sに切開をいれて露出した筋線維Mのある長さの両端(筋肉端部)を切開して、(図4a)、切開部から医療機器1を挿入し(図4b)、摺動体3である長さに切開された筋線維M(筋肉片)を引き込んで収納し(図4c)、医療機器1を回収して、必要に応じて切開した筋肉端部を焼灼・結紮して、皮膚Sを縫合(図4d)することもできる。
【0038】
本発明の医療機器の使用は、例えば、以下の工程によって順次行うことができる。
(1)医療機器を提供する
(2)摺動体に物体を接触させる
(3)摺動体を摺動させる
(4)物体を筒状体内部に回収する
【0039】
(3)において、摺動体に接続された長尺体を基端方向に引っ張ることで、摺動体を摺動させることもできる。(2)において、拡張部を物体の遠位側に伸ばし、カテーテルを引くことで、拡張部で物体を摺動体に誘導して回収することもできる。(4)において、拡張部で血栓を誘導させて回収を行うことで、血液よりも物体を優先的に回収することができる。医療機器を体腔内に経腹腔的に挿入して、体腔内の物体を回収することもできる。
【0040】
以上のように、本発明によれば、簡単な機構と、簡単な操作で物体を回収することができるため、操作性や製造コストの点において大きなメリットがある。
【符号の説明】
【0041】
1、1’ 医療機器
2 筒状体
3 摺動体
31 内側端部
32 外側端部
4、4’ 長尺体
41 バルブ
5 拡張体
51 拡張部
52 カテーテル
T 物体
L 管腔、体腔
S 皮膚
M 筋線維
図1
図2
図3
図4