(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161941
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】ドレッシング部材及びドレッシング方法
(51)【国際特許分類】
B24B 53/02 20120101AFI20241114BHJP
B24B 53/12 20060101ALI20241114BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B24B53/02
B24B53/12 Z
H01L21/304 622M
H01L21/304 631
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077017
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】関谷 勝彦
【テーマコード(参考)】
3C047
5F057
【Fターム(参考)】
3C047BB01
3C047BB15
3C047BB16
3C047BB19
3C047EE01
3C047EE11
5F057AA32
5F057BA11
5F057BB03
5F057CA14
5F057DA11
5F057EB16
5F057EB18
5F057EB27
5F057FA13
5F057FA39
5F057FA42
(57)【要約】
【課題】ドレッシング部材の反りを解消可能な構造を有し、且つ、複数の研削砥石の外周側面に対してドレッシングを施すこともできるドレッシング部材を提供する。
【解決手段】円盤状のチャックテーブルの保持面で保持された被加工物を研削ホイールで研削する研削装置において使用されるドレッシング部材であって、ドレッシング部材は、有頂円筒状であり、砥粒とボンド材とを含み外形が円形の頂部と、砥粒とボンド材とを含み、頂部の外周部に位置し、頂部の厚さ方向において頂部よりも突出する円筒状の側部と、を備え、頂部でチャックテーブルの保持面を覆い且つ側部でチャックテーブルの側面を少なくとも部分的に覆うことが可能であるドレッシング部材を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤状のチャックテーブルの保持面で保持された被加工物を研削ホイールで研削する研削装置において使用されるドレッシング部材であって、
該ドレッシング部材は、有頂円筒状であり、
砥粒とボンド材とを含み外形が円形の頂部と、
該砥粒と該ボンド材とを含み、該頂部の外周部に位置し、該頂部の厚さ方向において該頂部よりも突出する円筒状の側部と、
を備え、
該頂部で該チャックテーブルの該保持面を覆い且つ該側部で該チャックテーブルの側面を少なくとも部分的に覆うことが可能であることを特徴とするドレッシング部材。
【請求項2】
該砥粒を含まず該頂部の底面に固定された頂部支持部と、該砥粒を含まず該側部の内周側面に固定された側部支持部と、を有する有頂円筒状の支持部材を更に備えることを特徴とする請求項1記載のドレッシング部材。
【請求項3】
ドレッシング部材を用いて研削ホイールの該複数の研削砥石に対してドレッシングを施すドレッシング方法であって、
該研削ホイールは、環状の基台と、該基台の一面側において該基台の周方向に沿って設けられた該複数の研削砥石と、を有し、
該ドレッシング部材は、有頂円筒状であり、砥粒とボンド材とを含み外形が円形の頂部と、該砥粒と該ボンド材とを含み、該頂部の外周部に位置し該頂部の厚さ方向において該頂部よりも突出する円筒状の側部と、を有し、
該ドレッシング方法は、
該頂部でチャックテーブルの保持面を覆い且つ該側部で該チャックテーブルの側面を少なくとも部分的に覆った状態で、該頂部の底面側を該保持面で吸引保持する保持工程と、
保持工程後、該研削ホイールと該チャックテーブルとをそれぞれ回転させた状態で、該研削ホイールと該チャックテーブルとを該研削ホイールの回転軸と平行な第1方向に相対的に沿って接近させ、該複数の研削砥石の底面側に対してドレッシングを施す底面ドレッシング工程と、
を備えることを特徴とするドレッシング方法。
【請求項4】
保持工程後、該研削ホイールと該チャックテーブルとをそれぞれ回転させた状態で、該研削ホイールと該チャックテーブルとを該第1方向と直交する第2方向に沿って相対的に接近させ、該複数の研削砥石の外周側面に対してドレッシングを施す側面ドレッシング工程を更に備えることを特徴とする請求項3に記載のドレッシング方法。
【請求項5】
該ドレッシング部材は、該砥粒を含まず該頂部の底面に固定された頂部支持部と、該砥粒を含まず該側部の内周側面に固定された側部支持部と、を有する有頂円筒状の支持部材を更に備え、
該保持工程では、該頂部支持部の底面を該保持面で吸引保持することを特徴とする請求項3又は4に記載のドレッシング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削装置において使用されるドレッシング部材と、研削ホイールの複数の研削砥石をドレッシング部材でドレッシングするドレッシング方法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、PC(Personal Computer)等の電子機器には、IC(Integrated Circuit)等のデバイスチップが搭載されている。デバイスチップは、例えば、表面側に複数のデバイスが形成されているシリコンウェーハ(以下、単にウェーハ)の裏面側を研削して薄化した後、ウェーハをデバイス単位に分割することで形成される。
【0003】
ウェーハの研削には、研削装置が使用される。研削装置は、円盤状のチャックテーブルを備える。チャックテーブルは、ウェーハを吸引保持した状態で所定の回転軸の周りに回転可能である。チャックテーブルの保持面で吸引保持されたウェーハは、研削ユニットで研削される。
【0004】
研削ユニットは、研削装置の高さ方向に沿って移動可能に構成されている。研削ユニットは、円柱状のスピンドルを有し、スピンドルの下端部には、円盤状のマウントを介して円環状の研削ホイールが装着されている。研削ホイールは、円環状の基台と、基台の周方向に沿って基台の底面側に配置された複数の研削砥石と、を有する。
【0005】
ウェーハに対してインフィード研削を施す際には、ウェーハを吸引保持したチャックテーブルを所定の回転軸の周りに回転させると共に、純水等の研削水をウェーハの被研削領域へ供給しながら、スピンドルの周りに回転している研削ホイールを保持面の上方の位置から保持面へ所定の速度で研削送りする。
【0006】
ウェーハの研削を進めると、研削砥石に目詰まり等が生じ、ウェーハを適切に研削できなくなることがある。この場合、研削ホイールでドレッシングボードを研削することで、研削砥石の研削能力を回復させる(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0007】
具体的には、まず、ウェーハに代えてドレッシングボードをチャックテーブルで吸引保持する。次いで、ドレッシングボードの被研削領域に研削水を供給しながら、複数の研削砥石でドレッシングボードを研削する。
【0008】
ドレッシングボードは、樹脂で形成された円盤状の支持プレートを有する。支持プレートの上面には、支持プレートよりも小さいサイズを有する平板状のドレッシング部材が接着剤等で固定されている。つまり、ドレッシングボードは、支持プレートとドレッシング部材との積層構造を有する。
【0009】
研削砥石にドレッシングを施すと、ドレッシング部材が消耗して薄くなる。ドレッシング部材が薄くなると、ドレッシングボードに反りが発生する。例えば、ドレッシングボードは、外周部に比べて中央部が凹む様に反る。この様な反りが生じると、チャックテーブルでドレッシングボードを吸引保持し難くなる。
【0010】
ところで、研削ホイールの径方向の中心が、スピンドルの回転中心からずれてマウントに装着されている場合、スピンドルの長手方向と直交する平面内でスピンドルの回転中に研削ホイールの振れが生じる。
【0011】
研削ホイールの振れが生じた状態でウェーハを研削すると、研削不良となる。研削ホイールの振れを低減するためには、複数の研削砥石の外周側面に対してドレッシングを施すことで複数の研削砥石を整形することが好ましい。
【0012】
しかし、支持プレート上に固定された平板状のドレッシング部材を用いても、複数の研削砥石の外周側面に対してドレッシングを施すことはできないので、他のドレッシング部材を用いる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2006-15423号公報
【特許文献2】特開2008-221360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、ドレッシング部材の反りを解消可能な構造を有し、且つ、複数の研削砥石の外周側面に対してドレッシングを施すこともできるドレッシング部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様によれば、円盤状のチャックテーブルの保持面で保持された被加工物を研削ホイールで研削する研削装置において使用されるドレッシング部材であって、該ドレッシング部材は、有頂円筒状であり、砥粒とボンド材とを含み外形が円形の頂部と、該砥粒と該ボンド材とを含み、該頂部の外周部に位置し、該頂部の厚さ方向において該頂部よりも突出する円筒状の側部と、を備え、該頂部で該チャックテーブルの該保持面を覆い且つ該側部で該チャックテーブルの側面を少なくとも部分的に覆うことが可能であるドレッシング部材が提供される。
【0016】
好ましくは、ドレッシング部材は、該砥粒を含まず該頂部の底面に固定された頂部支持部と、該砥粒を含まず該側部の内周側面に固定された側部支持部と、を有する有頂円筒状の支持部材を更に備える。
【0017】
本発明の他の態様によれば、ドレッシング部材を用いて研削ホイールの該複数の研削砥石に対してドレッシングを施すドレッシング方法であって、該研削ホイールは、環状の基台と、該基台の一面側において該基台の周方向に沿って設けられた該複数の研削砥石と、を有し、該ドレッシング部材は、有頂円筒状であり、砥粒とボンド材とを含み外形が円形の頂部と、該砥粒と該ボンド材とを含み、該頂部の外周部に位置し該頂部の厚さ方向において該頂部よりも突出する円筒状の側部と、を有し、該ドレッシング方法は、該頂部でチャックテーブルの保持面を覆い且つ該側部で該チャックテーブルの側面を少なくとも部分的に覆った状態で、該頂部の底面側を該保持面で吸引保持する保持工程と、保持工程後、該研削ホイールと該チャックテーブルとをそれぞれ回転させた状態で、該研削ホイールと該チャックテーブルとを該研削ホイールの回転軸と平行な第1方向に相対的に沿って接近させ、該複数の研削砥石の底面側に対してドレッシングを施す底面ドレッシング工程と、を備えるドレッシング方法が提供される。
【0018】
好ましくは、ドレッシング方法は、保持工程後、該研削ホイールと該チャックテーブルとをそれぞれ回転させた状態で、該研削ホイールと該チャックテーブルとを該第1方向と直交する第2方向に沿って相対的に接近させ、該複数の研削砥石の外周側面に対してドレッシングを施す側面ドレッシング工程を更に備える。
【0019】
また、好ましくは、該ドレッシング部材は、該砥粒を含まず該頂部の底面に固定された頂部支持部と、該砥粒を含まず該側部の内周側面に固定された側部支持部と、を有する有頂円筒状の支持部材を更に備え、該保持工程では、該頂部支持部の底面を該保持面で吸引保持する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様に係るドレッシング部材は、円形の頂部と、円筒状の側部と、を有し、頂部でチャックテーブルの保持面を覆い、且つ、側部でチャックテーブルの側面を少なくとも部分的に覆うことができる。
【0021】
それゆえ、保持面に負圧を作用させれば、保持面及びドレッシング部材で規定される閉空間を吸引できる。これにより、頂部の底面の全体が保持面と略平行となる様にドレッシング部材を変形でき、ドレッシング部材の反りを解消できる。
【0022】
更に、ドレッシング部材をチャックテーブルで吸引保持した状態でチャックテーブルを回転させると共に、スピンドルの周りに回転する研削ホイールにおいて複数の研削砥石の外周側面を、ドレッシング部材の側部の外周側面に対して押し当てることにより、複数の研削砥石の外周側面に対してドレッシングを施すこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1(A)はドレッシング部材の頂面側斜視図であり、
図1(B)はドレッシング部材の底面側斜視図であり、
図1(C)は
図1(A)のAA断面図である。
【
図3】反りを説明するためのドレッシング部材の断面図である。
【
図5】
図5(A)は反りを有するドレッシング部材をチャックテーブルに載置する様子を示す図であり、
図5(B)は反りを有するドレッシング部材でチャックテーブルを覆う様子を示す図であり、
図5(C)は反りを矯正する様にドレッシング部材をチャックテーブルで吸引保持する様子を示す図である。
【
図6】
図6(A)は研削ユニットを研削送りする様子を示す斜視図であり、
図6(B)は
図6(A)の一部断面側面図である。
【
図7】
図7(A)は複数の研削砥石の底面側に対してドレッシングを施す様子を示す斜視図であり、
図7(B)は
図7(A)の一部断面側面図である。
【
図8】
図8(A)は第1変形例に係るドレッシング方法のフロー図であり、
図8(B)は第2変形例に係るドレッシング方法のフロー図である。
【
図9】
図9(A)は複数の研削砥石の外周側面をチャックテーブルに近づける様子を示す斜視図であり、
図9(B)は
図9(A)の一部断面側面図である。
【
図10】
図10(A)は複数の研削砥石の外周側面に対してドレッシングを施す様子を示す斜視図であり、
図10(B)は
図10(A)の一部断面側面図である。
【
図11】
図11(A)は第2の実施形態に係るドレッシング部材の頂面側斜視図であり、
図11(B)は第2の実施形態に係るドレッシング部材の底面側斜視図であり、
図11(C)は
図11(A)のBB断面図である。
【
図12】
図12(A)は反りを有するドレッシング部材をチャックテーブルに載置する様子を示す図であり、
図12(B)は反りを有するドレッシング部材でチャックテーブルを覆う様子を示す図であり、
図12(C)は反りを矯正する様にドレッシング部材をチャックテーブルで吸引保持する様子を示す図である。
【
図13】中凸状に反ったドレッシング部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1の実施形態)添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。
図1(A)は、新品のドレッシング部材2の頂面側斜視図であり、
図1(B)は、新品のドレッシング部材2の底面側斜視図であり、
図1(C)は、
図1(A)のAA断面図である。ドレッシング部材2は、有頂円筒状である。
【0025】
ドレッシング部材2は、円形の外形を有する円盤状の頂部2aと、円筒状の側部2bと、を含む。
図1(C)の断面図で示す様に、頂部2aは、各々円形の頂面2a
1及び底面2a
2を有する。頂部2aの厚さ(即ち、頂面2a
1及び底面2a
2間の距離)は、例えば、約1.0mmである。
【0026】
側部2bは、頂部2aの外周部に位置しており、頂部2aの外周部から垂下している。即ち、側部2bは、頂部2aの厚さ方向2cにおいて頂部2aの底面2a2よりも突出している。
【0027】
側部2bは、各々円環状の頂面2b1及び底面2b2と、各々円筒状の外周側面2b3及び内周側面2b4と、を有する。側部2bの長さ(即ち、頂面2b1及び底面2b2間の距離)は、例えば、約7.0mmである。また、側部2bの厚さ(即ち、外周側面2b3及び内周側面2b4間の距離)は、例えば、約1.0mmである。
【0028】
側部2bの外周側面2b3と、頂部2aの外周側面2a3とは、略面一になっている。なお、本実施形態において、頂部2a及び側部2bは一体的に形成されており、側部2bの頂面2b1は、説明の便宜上の仮想的な面である。つまり、側部2bの頂面2b1は、頂部2a及び側部2bの仮想的な境界である。
【0029】
頂部2a及び側部2bの各々は、ドレッシング機能を有する本体部であり、砥粒、ボンド材等を含む。砥粒は、ホワイトアランダム(WA)、グリーンカーボン(GC)等である。ボンド材は、ビトリファイドボンド、レジンボンド等であり、砥粒を固定するために用いられる。
【0030】
ドレッシング部材2を製造する際には、まず、それぞれ粉末状の砥粒、フィラー、ボンド材、有機物から成る気孔形成材等を混錬する。例えば、50vol%のWA製の砥粒と、10vol%のフィラーと、20vol%の粉末状のボンド材と、20vol%の気孔形成材と、が用いられる。
【0031】
次いで、混錬物を金型に充填して加圧成型し、この成型体を焼成することで円盤状の焼成体を得る。その後、焼成体の一面の中央部を円盤状にくりぬくことで、
図1(A)から
図1(C)に示すドレッシング部材2を得る。
【0032】
焼成中に気孔形成材が気化して消失することにより、ドレッシング部材2には気孔が形成される。ドレッシング部材2は、例えば、40%以上60%以上の気孔率を有する。一部の気孔は、頂部2aの底面2a2から頂面2a1まで連続している。
【0033】
なお、ドレッシング部材2の製造方法は、上述に記載の内容に限定されるものではない。具体的には、加圧成型の段階で、頂部2a及び側部2bに対応する形状を有する1つの成型体を作成し、この成型体を焼成することでドレッシング部材2を製造することもできる。
【0034】
また、頂部2a及び側部2bの各焼成体を別々に作成し、その後、頂部2a及び側部2bを接着剤等で固定することにより、ドレッシング部材2を製造してもよい。別々の焼成体を固定する場合、例えば、頂部2aの外周側面2a3及び側部2bの外周側面2b3が略面一となる様に、頂部2aの底面2a2と側部2bの頂面2b1とを近接させて固定する。
【0035】
しかし、これに代えて、側部2bの内周側面2b4の内径を、頂部2aの外周側面2a3の外径と略同じとした上で、頂部2aの頂面2a1及び側部2bの頂面2b1が略面一となる様に、頂部2aの外周側面2a3と側部2bの内周側面2b4とを近接させて固定してもよい。
【0036】
ドレッシング部材2の内側には、有頂円筒状の支持部材4が接着剤で固定されている。支持部材4は、チャックテーブル10の保持面10aとの接触面積を増加させる機能、頂部2aの底面2a2に露出している気孔を塞ぐ機能等を有する。
【0037】
支持部材4は、円形の外形を有する頂部支持部4aと、円筒状の側部支持部4bと、を有する。支持部材4(即ち、頂部支持部4a及び側部支持部4b)は、塩化ビニル等の合成樹脂で形成されている。
【0038】
プラスチック製の支持部材4は、射出成形、ブロー成形、押出成形、圧縮成形、プレス成形等の適切な手法により成形される。支持部材4は、ドレッシング部材2とは異なり、砥粒、砥粒を固定するためのボンド材等を有さない。
【0039】
頂部支持部4aは、頂部2aの底面2a
2に固定されている。
図1(C)において特に明らかな様に、頂部支持部4aは、各々円形の頂面4a
1及び底面4a
2と、円筒状の外周側面4a
3と、を有する。頂部支持部4aの厚さ(即ち、頂面4a
1及び底面4a
2間の距離)は、例えば、約1.0mmである。
【0040】
側部支持部4bは、側部2bの内周側面2b
4に固定されている。
図1(C)において特に明らかな様に、側部支持部4bは、頂部支持部4aの外周部から垂下している。即ち、側部支持部4bは、厚さ方向2cにおいて頂部支持部4aの底面4a
2よりも突出している。
【0041】
側部支持部4bは、各々円環状の頂面4b1及び底面4b2と、各々円筒状の外周側面4b3及び内周側面4b4と、を有する。側部支持部4bの底面4b2は、側部2bの底面2b2と略面一となっている。側部支持部4bの厚さ(即ち、外周側面4b3及び内周側面4b4間の距離)は、例えば、約1.0mmである。
【0042】
8インチ(約200mm)の被加工物11(
図2参照)を吸引保持する場合、チャックテーブル10の保持面10aは約230mmに設定される。そして、このチャックテーブル10にドレッシング部材2が用いられる場合、内周側面4b
4の内径は、約230mmに設定される。
【0043】
なお、被加工物11は、例えば、上述のウェーハである。被加工物11の径に応じて、適切な外径を有するチャックテーブル10が選択され、使用されるチャックテーブル10の外径に応じて、側部2bの内周側面2b4及び側部支持部4bの内周側面4b4の各内径、側部支持部4bの厚さ等が、適宜変更される。
【0044】
この様なドレッシング部材2は、研削装置6で使用される。
図2は、研削装置6の斜視図である。
図2に示すX軸方向(前後方向、第2方向)、Y軸方向、及び、Z軸方向(上下方向、第1方向、研削送り方向)は互いに直交する。
【0045】
研削装置6は、ドレッシング部材2及び被加工物11の搬入、搬出等が作業者により行われるマニュアル式であるが、搬入、研削、洗浄及び搬出を自動的に行うフルオート式であってもよい。
【0046】
研削装置6は、構成要素を支持する基台8を有する。基台8の上面には、X軸方向に長手部を有する矩形状の開口8aが形成されている。開口8a内には、チャックテーブル10をX軸方向に沿って移動させるボールねじ式のX軸方向移動機構(不図示)が設けられている。
【0047】
ここで、
図5(A)を参照し、チャックテーブル10について説明する。チャックテーブル10は、円盤状であり、非多孔質の緻密なセラミックス等で形成された円盤状の枠体12を有する。枠体12は、30mmの厚さ(即ち、円盤の一面から他面までの長さ)を有する。
【0048】
枠体12の上面側には、円盤状の凹部が形成されている。この凹部には多孔質セラミックスで形成された円盤状の多孔質板14が固定されている。多孔質板14は、略平坦な底面と、外周から中央に向かうにつれて厚さが増加する上面と、を有する。
【0049】
つまり、多孔質板14の上面は、外周部に比べて中央部が僅かに突出する円錐面である。但し、多孔質板14の上面における中央部の突出量は、10μmから20μm程度と微小であるので、
図5(A)では多孔質板14の上面を略平坦に示す。
【0050】
枠体12の凹部の底面には、凹部の底面の中心から放射状に広がる様に形成された放射状流路12aが形成されている。また、枠体12には、枠体12の底面の中心を貫通する様に中央流路12bが形成されている。中央流路12bは、放射状流路12aに接続している。
【0051】
中央流路12bには、真空ポンプ等の吸引源16が接続されており、吸引源16を動作させると多孔質板14の上面には負圧が伝達される。枠体12の上面と、多孔質板14の上面とは、略面一となっており、被加工物11を吸引保持する保持面10aとして機能する。なお、枠体12の外周側面は、チャックテーブル10の側面10bに対応する。
【0052】
チャックテーブル10は、円盤状のテーブルベース(不図示)上にベアリング(不図示)を介して回転可能に連結されている。テーブルベースは、チャックテーブル10の回転軸10c(
図6(A)参照。なお、
図6(A)では、回転軸10cを簡略化している。)の傾きを調整する傾き調整機構(不図示)で支持されている。
【0053】
テーブルベースの傾きは、保持面10aの一部がXY平面と略平行になる様に調整される。テーブルベースの径方向の中心部には、貫通孔(不図示)が形成されている。貫通孔には、チャックテーブル10の回転軸10cが配置されている。回転軸10cの下端部には、従動プーリ(不図示)が設けられている。
【0054】
チャックテーブル10の近傍には、サーボモータ等の回転駆動源(不図示)が配置されている。回転駆動源は、駆動プーリ(不図示)を回転させる。駆動プーリ及び従動プーリには、無端ベルト(不図示)が掛けられており、回転駆動源の動力はチャックテーブル10へ伝達される。
【0055】
チャックテーブル10、テーブルベース、傾き調整機構、回転駆動源等は、上述のX軸方向移動機構を構成するX軸方向移動テーブル(不図示)で支持されており、X軸方向移動テーブルの移動に伴い、X軸方向に沿って一体的に移動する。
【0056】
ここで
図2に戻る。X軸方向移動機構は、開口8aの前方(X軸方向の一方)に位置する搬入搬出位置A1から、開口8aの後方(X軸方向の他方)に位置する研削位置A2まで、の範囲において、チャックテーブル10をX軸方向に沿って移動させる。
【0057】
円盤状の被加工物11を研削する際には、搬入搬出位置A1に配置されたチャックテーブル10に、被加工物11を載置する。これに対して、ドレッシングを施す際には、被加工物11に代えて、搬入搬出位置A1に配置されたチャックテーブル10に、ドレッシング部材2を載置する。
【0058】
チャックテーブル10の底面には、矩形状のテーブルカバー18が設けられている。テーブルカバー18のX軸方向の両側には、X軸方向に沿って伸縮可能な蛇腹状のカバー部材20が設けられている。
【0059】
基台8の後方側には、四角柱状のコラム22が設けられている。コラム22の前方側には、研削送り機構24が設けられている。研削送り機構24は、コラム22の前方側面に固定された一対のガイドレール26を有する。
【0060】
各ガイドレール26には、Z軸方向移動板28がZ軸方向に沿ってスライド可能に取り付けられている。Z軸方向移動板28の後方側面には、ナット部(不図示)が設けられている。ナット部には、ねじ軸30が、回転可能な態様で連結している。
【0061】
ねじ軸30の上端部には、パルスモータ等の回転駆動源32が連結されている。回転駆動源32でねじ軸30を回転させれば、Z軸方向移動板28は、ガイドレール26に沿ってZ軸方向に移動する。
【0062】
Z軸方向移動板28の前方側面には、研削ユニット34が固定されている。研削ユニット34は、有底円筒状の保持部材36を有する。保持部材36の内側には、円柱状のスピンドルハウジング38が配置されている。
【0063】
スピンドルハウジング38内には、Z軸方向に略平行に配置された円柱状のスピンドル40の一部が回転可能に保持されている。スピンドル40の上端部近傍には、サーボモータ等の回転駆動源(不図示)が設けられている。
【0064】
スピンドル40の長手方向は、Z軸方向と略平行に配置されている。スピンドル40の下端部は、スピンドルハウジング38の下端よりも下方に突出しており、スピンドル40の下端部には、円盤状のホイールマウント42を介して円環状の研削ホイール44が装着されている。
【0065】
スピンドル40の回転に伴い、研削ホイール44も回転する。本実施形態において、研削ホイール44の回転軸40a(
図6(A)等参照)は、スピンドル40に対応し、Z軸方向と略平行に配置されている。研削ホイール44は、アルミニウム合金等の金属材料で形成された円環状の基台44aを有する。
【0066】
基台44aの一面44a
1側(
図6(B)参照)には、基台44aの周方向に沿って複数の研削砥石44bが設けられている。各研削砥石44bは、例えば、金属、セラミックス、熱硬化性樹脂等の結合材に、ダイヤモンド、cBN(cubic Boron Nitride)等の砥粒を混錬した後、成型、焼成等を経て形成される。
【0067】
スピンドル40の直下には、純水等の研削水を供給するための研削水供給ノズル(不図示)が設けられている。研削水供給ノズルは、ウェーハを研削する際や、ドレッシング部材2で研削砥石44bに対してドレッシングを施す際に、ウェーハ又はドレッシング部材2と、研削砥石44bと、の接触領域(即ち、被研削領域)に研削水を供給する。
【0068】
研削装置6で被加工物11を研削する際には、まず、チャックテーブル10を搬入搬出位置A1に配置し、保持面10aでウェーハを吸引保持する。次いで、チャックテーブル10を研削位置A2に移動させる。
【0069】
そして、被研削領域に研削水を供給しながらチャックテーブル10及び研削ホイール44を回転させると共に、研削ユニット34を所定の研削送り速度で研削送りする。被加工物11は、インフィード研削により研削され、被研削面には放射状のソーマーク(即ち、研削痕)が形成される。
【0070】
研削が進むにつれて(例えば、複数枚のウェーハを研削すると)、研削砥石44bに目潰れが生じる。そこで、研削砥石44bの研削能力を回復させるために、ドレッシング部材2を使用して研削砥石44bに対してドレッシングを施す。
【0071】
ドレッシング部材2を用いて研削ホイール44に対してドレッシングを施す際には、まず、チャックテーブル10を搬入搬出位置A1に配置する。そして、被加工物11に代えて、ドレッシング部材2をチャックテーブル10に載置する。
【0072】
このとき、保持面10aの全体がドレッシング部材2の頂部2aで覆われると共に、チャックテーブル10の側面10bの略上半分がドレッシング部材2の側部2bで覆われる。即ち、側面10bが少なくとも部分的に覆われる。
【0073】
次に、頂部2aの被研削領域に研削水を供給しながら研削ホイール44とチャックテーブル10とをそれぞれ回転させた状態で、研削ホイール44とチャックテーブル10とをZ軸方向に沿って相対的に接近させる。
【0074】
本実施形態では、Z軸方向におけるチャックテーブル10の位置を静止させた状態で、研削ユニット34を所定の研削送り速度で研削送りする。複数の研削砥石44bの底面44b1側が頂部2aに当たることで、複数の研削砥石44bの底面44b1側に対してドレッシングが施される。
【0075】
この様に、インフィード研削の要領でドレッシングを進めるにつれて、頂部2aは摩耗して徐々に薄くなる。薄化に伴い、ドレッシング部材2には、例えば、頂部2aの中央部が凹む様に(即ち、中凹状に)反りが生じる。
図3は、ドレッシング部材2の反りを説明するためのドレッシング部材2の断面図である。
【0076】
図3に示す例では、頂部2aの中央部に頂面2a
1の最下点があり、頂部2aの外周部に頂面2a
1の最上点がある。最下点と最上点と、の差(即ち、反り量Δ)は、例えば、2.0mmであるが、反り量Δは、ドレッシング部材2の径や、頂部2aの厚さに応じて異なる。
【0077】
なお、頂部2aの反りに応じて、頂部支持部4aを含むドレッシング部材2全体が変形する。しかし、後述する様に、頂部2aに反りが生じたとしてもチャックテーブル10で吸引保持できることが、本実施形態のドレッシング部材2の特徴の一つである。
【0078】
図4は、ドレッシング部材2を用いて複数の研削砥石44bに対してドレッシングを施すドレッシング方法のフロー図である。本実施形態では、保持工程S10及び底面ドレッシング工程S20の順に各工程を行う。
【0079】
図5(A)から
図5(C)は、保持工程S10を示す。特に、
図5(A)は、反りを有するドレッシング部材2を搬入搬出位置A1に配置されたチャックテーブル10に載置する様子を示す図であり、
図5(B)は、反りを有するドレッシング部材2でこのチャックテーブル10を覆う様子を示す図である。
【0080】
図5(B)に示す様に、反りを有するドレッシング部材2を保持面10aに載置すると、例えば、頂部支持部4aの底面4a
2の一部が保持面10aに接し、側部支持部4bの内周側面4b
4の一部である円環状の領域が保持面10aの外周端部に接する。
【0081】
なお、頂部支持部4aの底面4a2は、必ずしも保持面10aに接しなくてもよい。いずれにしても、保持面10a、側部支持部4bの内周側面4b4、及び、頂部支持部4aの底面4a2で規定される環状(又は中央部に比べて外周部が厚い円盤状)の隙間46が形成される。
【0082】
次に、多孔質板14に負圧を作用させる。例えば、保持面10aのゲージ圧を-100kPaから-70kPaの所定値とする。負圧の作用により、頂部支持部4aの底面4a
2が保持面10aに接する様に、頂部2a及び頂部支持部4aが変形し、最終的に、環状の隙間46が消滅する(
図5(C)参照)。
【0083】
この様にして、頂部2aで保持面10aを覆い、且つ、側部2bでチャックテーブル10の側面10bを少なくとも部分的に覆った状態で、頂部2aの底面2a2が頂部支持部4aを介して保持面10aで吸引保持される。
【0084】
図5(C)は、反りを矯正する様にドレッシング部材2をチャックテーブル10で吸引保持する様子を示す図である。本実施形態では、ドレッシング部材2の頂部2aが反りを有していたとしても、頂部2aの底面2a
2側を保持面10aで吸引保持できる。
【0085】
保持工程S10後、チャックテーブル10を研削位置A2に配置する。このとき、複数の研削砥石44bの底面44b1で規定される円環状の研削領域が、Z軸方向においてチャックテーブル10の回転軸10cと重なる。
【0086】
次いで、頂部2aの被研削領域に研削水を供給しながら研削ホイール44とチャックテーブル10とをそれぞれ回転させた状態で、研削ホイール44とチャックテーブル10とをZ軸方向に沿って相対的に接近させる。
【0087】
本実施形態では、Z軸方向におけるチャックテーブル10の位置を静止させた状態で、研削ユニット34を所定の研削送り速度で研削送りする。
図6(A)は、研削ユニット34を研削送りする様子を示す斜視図であり、
図6(B)は、
図6(A)の一部断面側面図である。
【0088】
複数の研削砥石44bの底面44b
1が頂部2aに当たることで、複数の研削砥石44bの底面44b
1側に対してドレッシングが施される(底面ドレッシング工程S20)。
図7(A)は、複数の研削砥石44bの底面44b
1側に対してドレッシングを施す様子を示す斜視図であり、
図7(B)は、
図7(A)の一部断面側面図である。
【0089】
加工条件の一例は、例えば、次の通りである。
チャックテーブルの回転数:40rpm
スピンドルの回転数 :2000rpm
研削送り速度 :1μm/sから5μm/s
研削水の流量 :4L/min
【0090】
本実施形態では、保持面10aと、ドレッシング部材2と、で規定される閉空間を吸引することにより、ドレッシング部材2の頂部2aに反りが生じていたとしても、頂部2aの底面2a2の全体が保持面10aと略平行となる様にドレッシング部材2を変形でき、ドレッシング部材2の反りを解消できる。
【0091】
(変形例)
図8(A)は、第1変形例に係るドレッシング方法のフロー図であり、
図8(B)は、第2変形例に係るドレッシング方法のフロー図である。
【0092】
変形例では、ドレッシング部材2の側部2bを利用して複数の研削砥石44bの外周側面44b
2(
図9(B)等参照)にドレッシングを施すことで、複数の研削砥石44bを整形する(側面ドレッシング工程S15,S25)。
【0093】
図8(A)に示す様に、側面ドレッシング工程S15は、保持工程S10の後且つ底面ドレッシング工程S20の前であってよく、
図8(B)に示す様に、側面ドレッシング工程S25は、保持工程S10及び底面ドレッシング工程S20の後であってもよい。
【0094】
側面ドレッシング工程S15,S25では、まず、研削ホイール44とチャックテーブル10とをそれぞれ回転させた状態で、研削砥石44bがドレッシング部材2と略同じ高さに位置し、且つ、頂部2aの頂面2a1よりも上に研削ホイール44の基台44aが位置する様に、研削ホイール44のZ軸方向の位置を調整する。
【0095】
次に、研削ホイール44及びチャックテーブル10の回転を維持したまま、研削ホイール44とチャックテーブル10とをX軸方向に沿って相対的に接近させる。本実施形態では、X軸方向における研削ホイール44の位置を静止させた状態で、チャックテーブル10を所定の速度で研削ホイール44に近づける。
【0096】
図9(A)は、複数の研削砥石44bの外周側面44b
2をチャックテーブル10に近づける様子を示す斜視図であり、
図9(B)は、
図9(A)の一部断面側面図である。
図10(A)は、複数の研削砥石44bの外周側面44b
2に対してドレッシングを施す様子を示す斜視図であり、
図10(B)は、
図10(A)の一部断面側面図である。
【0097】
この様に、複数の研削砥石44bの外周側面44b2をドレッシング部材2の側部2bの外周側面2b3に対して押し当てることにより、複数の研削砥石44bの外周側面44b2に対してドレッシングを施すことができる。
【0098】
即ち、1つのドレッシング部材2により、研削砥石44bの底面44b1のドレッシングと、研削砥石44bの外周側面44b2のドレッシングと、のいずれも行うことができる。
【0099】
(第2の実施形態)次に、第2の実施形態に係るドレッシング部材52を説明する。ドレッシング部材52は、樹脂製の頂部支持部4a及び側部支持部4bを有さない点でドレッシング部材2と異なるが、他の点は同じである。
【0100】
それゆえ、ドレッシング部材2と共通する要素には同じ符号を付す。なお、使用されるチャックテーブル10の外径に応じて、ドレッシング部材52の内周側面2b4の内径は、適宜変更される。
【0101】
図11(A)は、第2の実施形態に係る新品のドレッシング部材52の頂面側斜視図であり、
図11(B)は、第2の実施形態に係る新品のドレッシング部材52の底面側斜視図であり、
図11(C)は、
図11(A)のBB断面図である。
【0102】
ドレッシング部材52の頂部2aも、同様に、使用に伴い摩耗して徐々に薄くなり、頂部2aの中央部が凹む様に反りが生じる。
図12(A)は、反りを有するドレッシング部材52をチャックテーブル10に載置する様子を示す図である。
【0103】
図12(B)は、反りを有するドレッシング部材52でチャックテーブル10を覆う様子を示す図であり、
図12(C)は、反りを矯正する様にドレッシング部材52をチャックテーブル10で吸引保持する様子を示す図である。
【0104】
加工条件の一例は、例えば、次の通りである。
チャックテーブルの回転数 :300rpm
スピンドルの回転数 :2000rpm
チャックテーブルの移動速度:1μm/sから5μm/s
研削水の流量 :4L/min
【0105】
第2の実施形態においても、保持面10aと、ドレッシング部材52とで規定される閉空間を吸引することにより、ドレッシング部材52の頂部2aに反りが生じていたとしても、頂部2aの底面2a2の全体が保持面10aと略平行となる様にドレッシング部材52を変形でき、ドレッシング部材52の反りを解消できる。
【0106】
更に、複数の研削砥石44bの外周側面44b2をドレッシング部材52の側部2bの外周側面2b3に対して押し当てることにより、複数の研削砥石44bの外周側面44b2に対してドレッシングを施すこともできる。
【0107】
(他の変形例)
図13は、中凸状に反ったドレッシング部材52の断面図である。支持部材4を有さないドレッシング部材52は、頂部2aの薄化に伴い中凸状に変形することがある。しかし、この様に変形したとしても、保持面10aと、ドレッシング部材52と、で規定される閉空間を吸引することにより、ドレッシング部材52の反りを解消できる。
【0108】
その他、上述の実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。例えば、ドレッシング部材2,52における気孔は必須ではない。つまり、ドレッシング部材2,52を製造する際には、気孔形成材を省略してもよい。
【0109】
ところで、上述の実施形態及び変形例では、スピンドル40及び研削ホイール44を含む研削ユニット34に対してチャックテーブル10をX軸方向移動機構によりX軸方向に移動させるが、チャックテーブル10に対して研削ユニット34をX軸方向に移動させてもよい。
【符号の説明】
【0110】
2,52:ドレッシング部材
2a:頂部、2a1:頂面、2a2:底面、2a3:外周側面
2b:側部、2b1:頂面、2b2:底面、2b3:外周側面、2b4:内周側面
2c:厚さ方向
4:支持部材
4a:頂部支持部、4a1:頂面、4a2:底面、4a3:外周側面
4b:側部支持部、4b1:頂面、4b2:底面、4b3:外周側面、4b4:内周側面
6:研削装置
8:基台、8a:開口
10:チャックテーブル、10a:保持面、10b:側面、10c:回転軸
11:被加工物
12:枠体、12a:放射状流路、12b:中央流路、14:多孔質板、16:吸引源
18:テーブルカバー、20:カバー部材、22:コラム、24:研削送り機構
26:ガイドレール、28:Z軸方向移動板、30:ねじ軸
32:回転駆動源
34:研削ユニット、36:保持部材、38:スピンドルハウジング
40:スピンドル、40a:回転軸
42:ホイールマウント、44:研削ホイール
44a:基台、44a1:一面
44b:研削砥石、44b1:底面、44b2:外周側面
46:隙間
A1:搬入搬出位置、A2:研削位置、Δ:反り量
S10:保持工程、S20:底面ドレッシング工程
S15,S25:側面ドレッシング工程