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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161946
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/739 20060101AFI20241114BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20241114BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20241114BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
H01L29/78 655G
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/78 655B
H01L29/78 657D
H01L29/78 652P
H01L29/78 652T
H01L29/78 657A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077022
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】阪口 浩介
(72)【発明者】
【氏名】曽根田 真也
(57)【要約】
【課題】ダイオード領域とIGBT領域とを備える半導体装置において、チップの温度が局所的に高くなることを防止する。
【解決手段】半導体装置は、IGBTとして機能するIGBT領域(10)と、ダイオードとして機能する複数のダイオード領域(20)とを備えるRC-IGBTのチップを備える。IGBT領域(10)とダイオード領域(20)とを合わせた領域である有効領域内に、複数のダイオード領域(20)が島状に配置される。1つのダイオード領域(20)の一辺の長さをWD、隣り合うダイオード領域(20)の間隔をWI、有効領域の一辺の長さをWC、チップの厚みをtとすると、2t<WD<5t、2t<WI<5t、WD+WI<WC/6の関係が満たされる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)として機能するIGBT領域と、
ダイオードとして機能する複数のダイオード領域と、
を備えるRC-IGBT(Reverse Conducting IGBT)のチップを備え、
前記IGBT領域と前記ダイオード領域とを合わせた領域である有効領域内に、複数の前記ダイオード領域が島状に配置されており、
1つの前記ダイオード領域の一辺の長さをWD、隣り合う前記ダイオード領域の間隔をWI、前記有効領域の一辺の長さをWC、前記チップの厚みをtとすると、
2t<WD<5t
2t<WI<5t
WD+WI<WC/6
の関係が満たされている、
半導体装置。
【請求項2】
前記ダイオード領域の一辺の長さと、隣り合う前記ダイオード領域の間隔とが、ともに160μm以上400μm以下である、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記IGBTのゲート電極とゲートパッドとの間を接続するゲート配線が配置されたゲート配線領域が、前記有効領域内には設けられておらず、前記有効領域の外周部に設けられている、
請求項1または請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記ダイオード領域は、前記IGBTのゲート電極が埋め込まれたアクティブトレンチゲートとして、第1方向に延伸するトレンチゲートと、前記第1方向に直交する第2方向に延伸する交差トレンチゲートとを有し、
前記交差トレンチゲートは、前記有効領域の外周部において、前記IGBTの前記ゲート電極とゲートパッドとの間を接続するゲート配線に接続している、
請求項1または請求項2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記交差トレンチゲートは、前記ダイオード領域の端部に沿って延伸している、
請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記ダイオード領域と前記IGBT領域とは、第1主面側の構造は互いに同じであり、第2主面側の構造は互いに異なる、
請求項1または請求項2に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記チップは、平面視で前記有効領域の外側に配置された温度センスダイオードをさらに備える、
請求項1または請求項2に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記チップは、前記有効領域の上側に配置された金属層と前記金属層上のめっき層とを含む積層金属層をさらに備える、
請求項1または請求項2に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関し、特に、ダイオード領域とIGBT領域とを備える半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IGBTとダイオードとが一つの半導体基板に形成された構造の半導体装置である逆導通IGBT(Reverse Conducting Insulated Gate Bipolar Transistor)(以下「RC-IGBT」という)が知られている(例えば下記の特許文献1)。RC-IGBTは、IGBTとダイオードとが別体である場合に比べ、有効面積を縮小して電流密度を高くでき、また放熱性が良いという利点もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5103830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
RC-IGBTには、チップ最表面の温度(Tj)が局所的に高くなるという問題がある。これは、ダイオード領域とIGBT領域との間の熱交換が不十分なことによって引き起こされると考えられる。
【0005】
本開示は以上のような課題を解決するためになされたものであり、ダイオード領域とIGBT領域とを備える半導体装置において、チップの温度が局所的に高くなることを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る半導体装置は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)として機能するIGBT領域と、ダイオードとして機能する複数のダイオード領域と、を備えるRC-IGBT(Reverse Conducting IGBT)のチップを備え、前記IGBT領域と前記ダイオード領域とを合わせた領域である有効領域内に、複数の前記ダイオード領域が島状に配置されており、1つの前記ダイオード領域の一辺の長さをWD、隣り合う前記ダイオード領域の間隔をWI、前記有効領域の一辺の長さをWC、前記チップの厚みをtとすると、2t<WD<5t、2t<WI<5t、WD+WI<WC/6の関係が満たされている。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る半導体装置によれば、ダイオード領域とIGBT領域との間の放熱性が向上し、チップの温度が局所的に高くなることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る半導体装置のチップの平面図である。
図2】実施の形態1に係る半導体装置のチップにおける温度分布を示す図である。
図3】比較例の半導体装置のチップにおける温度分布を示す図である。
図4】実施の形態1に係る半導体装置と比較例の半導体装置との短絡耐量を比較した図である。
図5】実施の形態1に係る半導体装置のIGBT領域の平面図である。
図6】実施の形態1に係る半導体装置のIGBT領域の断面図である。
図7】実施の形態1に係る半導体装置のIGBT領域の断面図である。
図8】実施の形態1に係る半導体装置のダイオード領域の平面図である。
図9】実施の形態1に係る半導体装置のダイオード領域の断面図である。
図10】実施の形態1に係る半導体装置のダイオード領域の断面図である。
図11】実施の形態1に係る半導体装置のIGBT領域とダイオード領域との境界の断面図である。
図12】実施の形態1に係る半導体装置の終端領域の断面図である。
図13】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するための図である。
図14】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するための図である。
図15】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するための図である。
図16】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するための図である。
図17】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するための図である。
図18】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するための図である。
図19】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するための図である。
図20】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するための図である。
図21】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するための図である。
図22】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するための図である。
図23】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するための図である。
図24】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するための図である。
図25】実施の形態2に係る半導体装置の平面図である。
図26】実施の形態3に係る半導体装置の平面図である。
図27】実施の形態4に係る半導体装置の構成を説明するための図である。
図28】実施の形態5に係る半導体装置の構成を説明するための図である。
図29】実施の形態6に係る半導体装置のIGBT領域とダイオード領域との境界の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明において、nおよびpは半導体の導電型を示し、本開示においては、第1導電型をn型、第2導電型をp型として説明するが、第1導電型をp型、第2導電型をn型としてもよい。また、nは不純物濃度がnよりも低濃度であることを示し、nは不純物濃度がnよりも高濃度であることを示す。同様に、pは不純物濃度がpよりも低濃度であることを示し、pは不純物濃度がpよりも高濃度であることを示す。
【0010】
また、各領域の不純物濃度の高さはピーク濃度によって規定されるものとする。すなわち、不純物濃度が高い(または低い)領域とは、不純物のピーク濃度が高い(または低い)領域を意味する。
【0011】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1に係る半導体装置である逆導通IGBT(Reverse Conducting Insulated Gate Bipolar Transistor)(以下「RC-IGBT」という)のチップの平面図である。
【0012】
半導体装置101は、1つの半導体装置内にIGBTとして機能するIGBT領域10と、ダイオードとして機能するダイオード領域20とを備えている。ダイオード領域20は、半導体装置内の縦方向および横方向にそれぞれ複数並んで配置されており、ダイオード領域20は周囲をIGBT領域10に取り囲まれている。つまり、IGBT領域10内に複数のダイオード領域20が島状(アイランド状)に設けられている。このような構成のRC-IGBTは「アイランド型」と呼ばれる。
【0013】
図1の半導体装置101では、IGBT領域10内に、ダイオード領域20が紙面左右方向に6列、紙面上下方向に6行のマトリクス状に設けられている。しかし、ダイオード領域20の個数および配置はこれに限られず、IGBT領域10内に、複数のダイオード領域20が、後述する条件を満たすように点在して設けられ、それぞれのダイオード領域20が周囲をIGBT領域10に囲まれた構成であればよい。IGBT領域10とダイオード領域20とを合わせた領域を「セル領域」または「有効領域」と呼ぶ。また、ダイオード領域20の個数を「分割数」ということもある。
【0014】
図1の半導体装置101は、平面視で、IGBT領域10の中央に配置された温度センスダイオード100を有している。また、IGBT領域10の紙面下側に隣接するようにパッド領域40が設けられており、パッド領域40には、半導体装置101を制御するための各種の制御パッド41が配置されている。なお、パッド領域40内にも、IGBTセルやダイオードセルが設けられてもよい。
【0015】
図1のパッド領域40には、制御パッド41の例として、電流センスパッド41aと、ケルビンエミッタパッド41bと、ゲートパッド41cと、一対の温度センスダイオードパッド41d,41eとが示されている。
【0016】
電流センスパッド41aは、半導体装置101のセル領域に流れる電流を検知するための制御パッドである。半導体装置101のセル領域に電流が流れる際に、セル領域全体に流れる電流の数分の1から数万分の1の電流が電流センスパッド41aに流れるように、電流センスパッド41aは、セル領域の一部のIGBTセルまたはダイオードセルに電気的に接続されている。
【0017】
ケルビンエミッタパッド41bおよびゲートパッド41cには、半導体装置101のオン・オフを制御するゲート駆動電圧が印加される。ケルビンエミッタパッド41bは、IGBTセルのp型ベース層およびn型エミッタ層に電気的に接続される。ゲートパッド41cは、IGBTセルのゲートトレンチ電極に電気的に接続される。ケルビンエミッタパッド41bとp型ベース層とは、p型コンタクト層を介して電気的に接続されてもよい。
【0018】
温度センスダイオードパッド41dは、温度センスダイオード100のアノードおよびカソードのうちの一方に接続され、温度センスダイオードパッド41eは、温度センスダイオード100のアノードおよびカソードのうちの他方に接続されている。温度センスダイオードパッド41d,41eには、温度センスダイオード100の温度に応じた電圧差が発生する。温度センスダイオードパッド41d,41eの電圧差を測定することで、半導体装置101の温度を測定することができる。
【0019】
セル領域とパッド領域40とを合わせた領域の周囲には、半導体装置101の耐圧保持のための終端領域30が設けられている。終端領域30には、周知の耐圧保持構造を適宜選択して設けることができる。耐圧保持構造としては、例えば、FLR(Field Limiting Ring)やVLD(Variation of Lateral Doping)などが知られている。FLRは、半導体装置101のおもて面側である第1主面側に形成されたp型半導体からなるリング状のp型終端ウェル層で、セル領域およびパッド領域40を合わせた領域を囲むことで構成される。VLDは、半導体装置101の第1主面側に形成された濃度勾配を持つリング状のp型終端ウェル層で、セル領域およびパッド領域40を合わせた領域を囲むことで構成される。FLRにおけるリング状のp型終端ウェル層の数や、VLDにおけるリング状のp型終端ウェル層の濃度分布は、半導体装置101の耐圧設計によって適宜選択される。パッド領域40のほぼ全域に亘ってp型終端ウェル層を設けてもよい。
【0020】
また、図1の半導体装置101では、セル領域とパッド領域40とを合わせた領域の外周部(終端領域30の内周部)と、セル領域の中心線に沿った領域とに、ゲート配線領域50が確保されている。ゲート配線領域50は、IGBTのゲート電極とゲートパッド41cとを接続するゲート配線(「ゲートランナー」とも呼ばれる)を引き回すための領域である。また、セル領域の中心線に沿った部分のゲート配線領域50は、温度センスダイオード100と温度センスダイオードパッド41d,41eとを接続する配線の引き回しにも利用される。
【0021】
実施の形態1に係る半導体装置101は、有効領域(セル領域)内に島状のダイオード領域20が複数配置されたRC-IGBTであり、ダイオード領域20が以下の条件を満たすように配置されている。すなわち、ダイオード領域20の一辺の長さをWD、隣り合うダイオード領域20の間隔をWI、有効領域の一辺の長さをWC、チップ厚みをtとすると、ダイオード領域20は次の3つの式のすべてを満たす。
【0022】
2t<WD<5t ・・・式(1)
2t<WI<5t ・・・式(2)
WD+WI<WC/6 ・・・式(3)
【0023】
式(3)の条件から、ダイオード領域20が並ぶ周期(ピッチ)は有効領域の一辺の長さの6分の1よりも短く設定される。そのため、有効領域のそれぞれの辺に沿って6個以上のダイオード領域20が並ぶ。よって、有効領域内にはダイオード領域20が36個以上設けられる。
【0024】
この構成により、ダイオード領域20とIGBT領域10との境界長が長くなるため、ダイオード領域20とIGBT領域10との間の放熱性が向上する。図2は、式(1)~(3)を満たす実施の形態1に係る半導体装置(ダイオード領域の分割数は164個)のチップにおけるチップ最表面の温度(Tj)の分布を示す図であり、図3は、式(1)~(3)を満たさない比較例の半導体装置(ダイオード領域の分割数は4個)のチップにおけるTjの分布を示す図である。図2図3との比較から、実施の形態1に係る半導体装置では、比較例の半導体装置に比べ、チップ全体で温度が均一化されており、Tjが低いことが分かる。
【0025】
また、Tjの低減は、半導体装置の短絡耐量の向上に寄与できる。図4は、実施の形態1に係る半導体装置(ダイオード領域の分割数は164個)と比較例の半導体装置(ダイオード領域の分割数は4個)との短絡耐量を比較した図である。図4から、実施の形態1に係る半導体装置では、比較例の半導体装置に比べ、短絡耐量が約35%向上することが確認できる。
【0026】
IGBTチップ(RC-IGBTチップを含む)を用いた半導体装置の構造としては、IGBTチップを搭載した絶縁基板を、ベース板に搭載させた構造が一般的であり、ベース板の下面が冷却面となって、半導体装置の冷却が行われる。このような半導体装置の性能を定義する熱抵抗としては、チップ最表面の温度(Tj)と冷却水温度やケースの温度との差で規定される「Rth(j-c)」(ケース温度基準)、「Rth(j-w)」(冷却水温度基準)などがある。従来、半導体装置の熱抵抗を下げるためには、チップ面積を増やしたり、チップの周辺部材を変更したりするのが一般的であった。本実施の形態の半導体装置によれば、Tjを下げることができるため、チップの面積や周辺部材の変更なしに、熱抵抗を下げることができる。よって、製造コストの増加を伴うことなく、半導体装置の性能向上に寄与できる。
【0027】
以下、実施の形態1に係るRC-IGBTである半導体装置の構造の一例を示す。
【0028】
図5は、RC-IGBTである半導体装置のIGBT領域10の構成を示す部分拡大平面図である。また、図6および図7は、RC-IGBTである半導体装置のIGBT領域の構成を示す断面図である。図5は、図1に示した半導体装置101における破線82で囲った領域を拡大して示したものである。図6は、図5に示した半導体装置101の破線A-Aに沿った断面図であり、図7は、図5に示した半導体装置101の破線B-Bに沿った断面図である。
【0029】
図5に示すように、IGBT領域10には、アクティブトレンチゲート11とダミートレンチゲート12とがストライプ状に設けられている。図5においては、アクティブトレンチゲート11およびダミートレンチゲート12が紙面左右方向に延伸した例を示すが、アイランド型のRC-IGBTのIGBT領域10には長手方向と短手方向の区別はないため、アクティブトレンチゲート11およびダミートレンチゲート12は紙面上下方向に延伸してもよい。
【0030】
アクティブトレンチゲート11は、半導体基板に形成されたトレンチ内に、ゲート絶縁膜であるゲートトレンチ絶縁膜11bを介してゲート電極であるゲートトレンチ電極11aが設けられて構成されている。ダミートレンチゲート12は、半導体基板に形成されたトレンチ内にダミートレンチ絶縁膜12bを介してダミートレンチ電極12aが設けられて構成されている。アクティブトレンチゲート11のゲートトレンチ電極11aは、ゲートパッド41cに電気的に接続される。ダミートレンチゲート12のダミートレンチ電極12aは、半導体装置101の第1主面上に設けられるエミッタ電極に電気的に接続される。
【0031】
なお、半導体基板の材料はシリコンでもよいし、炭化珪素(SiC)などのワイドバンドギャップ半導体でもよい。ワイドバンドギャップ半導体を用いて形成された半導体装置は、シリコンを用いた従来の半導体装置と比較して、高電圧、大電流、高温での動作に優れている。ワイドバンドギャップ半導体としては、炭化珪素の他、窒化ガリウム(GaN)系材料、ダイヤモンドなどがある。
【0032】
型エミッタ層13が、アクティブトレンチゲート11の幅方向の両側にゲートトレンチ絶縁膜11bに接して設けられる。n型エミッタ層13は、n型不純物として例えばヒ素またはリン等を有する半導体層であり、n型不純物の濃度は1.0E+17/cm3~1.0E+20/cm3である。n型エミッタ層13は、アクティブトレンチゲート11の延伸方向に沿って、p型コンタクト層14と交互に設けられる。p型コンタクト層14は、隣り合った2つのダミートレンチゲート12の間にも設けられる。p型コンタクト層14は、p型不純物として例えばボロンまたはアルミ等を有する半導体層であり、p型不純物の濃度は1.0E+15/cm3~1.0E+20/cm3である。
【0033】
図5に示すように、半導体装置101のIGBT領域10では、アクティブトレンチゲート11が3本並んだ隣に、ダミートレンチゲート12が3本並び、ダミートレンチゲート12が3本並んだ隣に、アクティブトレンチゲート11が3本並んだ構成をしている。IGBT領域10は、このようにアクティブトレンチゲート11の組とダミートレンチゲート12の組が交互に並んだ構成をしている。図5では、1つのアクティブトレンチゲート11の組に含まれるアクティブトレンチゲート11の数を3としたが、1以上であればよい。また、1つのダミートレンチゲート12の組に含まれるダミートレンチゲート12の数は1以上であってよく、ダミートレンチゲート12の数は0であってもよい。すなわち、IGBT領域10に設けられるトレンチの全てをアクティブトレンチゲート11としてもよい。
【0034】
図6は、半導体装置101の図5における破線A-Aでの断面図であり、IGBT領域10の断面図である。半導体装置101は、半導体基板からなるn型ドリフト層1を有している。n型ドリフト層1は、n型不純物として例えばヒ素またはリン等を有する半導体層であり、n型不純物の濃度は1.0E+12/cm3~1.0E+15/cm3である。半導体基板は、図6においては、n型エミッタ層13およびp型コンタクト層14からp型コレクタ層16までの範囲である。図6においてn型エミッタ層13およびp型コンタクト層14の紙面上端を半導体基板の第1主面であり、p型コレクタ層16の紙面下端が半導体基板の第2主面である。半導体基板の第1主面は、半導体装置101のおもて面側の主面であり、半導体基板の第2主面は、第1主面に対向する半導体装置101の裏面側の主面である。半導体装置101は、IGBT領域10において、第1主面と第2主面との間にn型ドリフト層1を有している。
【0035】
図6に示すように、IGBT領域10では、n型ドリフト層1の第1主面側に、n型ドリフト層1よりもn型不純物の濃度が高いn型キャリア蓄積層2が設けられている。n型キャリア蓄積層2は、n型不純物として例えばヒ素またはリン等を有する半導体層であり、n型不純物の濃度は1.0E+13/cm3~1.0E+17/cm3である。なお、半導体装置101は、n型キャリア蓄積層2が設けられずに、図6で示したn型キャリア蓄積層2の領域にもn型ドリフト層1が設けられた構成であってもよい。n型キャリア蓄積層2を設けることによって、IGBT領域10に電流が流れた際の通電損失を低減することができる。n型キャリア蓄積層2とn型ドリフト層1とを合わせてドリフト層と呼んでもよい。
【0036】
n型キャリア蓄積層2は、n型ドリフト層1を構成する半導体基板に、n型不純物をイオン注入し、その後アニールによって注入したn型不純物をn型ドリフト層1である半導体基板内に拡散させることで形成される。
【0037】
n型キャリア蓄積層2の第1主面側には、p型ベース層15が設けられている。p型ベース層15は、p型不純物として例えばボロンまたはアルミ等を有する半導体層であり、p型不純物の濃度は1.0E+12/cm3~1.0E+19/cm3である。p型ベース層15はアクティブトレンチゲート11のゲートトレンチ絶縁膜11bに接している。p型ベース層15の第1主面側には、アクティブトレンチゲート11のゲートトレンチ絶縁膜11bに接してn型エミッタ層13が設けられ、残りの領域にp型コンタクト層14が設けられている。n型エミッタ層13およびp型コンタクト層14は半導体基板の第1主面を構成している。なお、p型コンタクト層14は、p型ベース層15よりもp型不純物の濃度が高い領域であり、p型コンタクト層14とp型ベース層15とを区別する必要がある場合にはそれぞれを個別に呼称してよく、p型コンタクト層14とp型ベース層15とを合わせてp型ベース層と呼んでもよい。
【0038】
また、半導体装置101には、n型ドリフト層1の第2主面側に、n型ドリフト層1よりもn型不純物の濃度が高いn型バッファ層3が設けられている。n型バッファ層3は、半導体装置101がオフ状態のときにp型ベース層15から第2主面側に伸びる空乏層がパンチスルーするのを抑制するために設けられる。n型バッファ層3は、例えば、リン(P)あるいはプロトン(H+)を注入して形成してよく、リン(P)およびプロトン(H+)の両方を注入して形成してもよい。n型バッファ層3のn型不純物の濃度は1.0E+12/cm3~1.0E+18/cm3である。なお、半導体装置101は、n型バッファ層3が設けられずに、図6で示したn型バッファ層3の領域にもn型ドリフト層1が設けられた構成であってもよい。n型バッファ層3とn型ドリフト層1とを合わせてドリフト層と呼んでもよい。
【0039】
半導体装置101には、n型バッファ層3の第2主面側に、p型コレクタ層16が設けられている。すなわち、n型ドリフト層1と第2主面との間に、p型コレクタ層16が設けられている。p型コレクタ層16は、p型不純物として例えばボロンまたはアルミ等を有する半導体層であり、p型不純物の濃度は1.0E+16/cm3~1.0E+20/cm3である。p型コレクタ層16は半導体基板の第2主面を構成している。p型コレクタ層16は、IGBT領域10だけでなく、終端領域30にも設けられており、p型コレクタ層16のうち終端領域30に設けられた部分はp型終端コレクタ層16aを構成している(図12参照)。また、p型コレクタ層16は、IGBT領域10からダイオード領域20に一部がはみ出して設けられてもよい。
【0040】
図6に示すように、半導体装置101には、半導体基板の第1主面からp型ベース層15を貫通し、n型ドリフト層1に達するトレンチが形成されている。トレンチ内にゲートトレンチ絶縁膜11bを介してゲートトレンチ電極11aが設けられることでアクティブトレンチゲート11が構成されている。ゲートトレンチ電極11aは、ゲートトレンチ絶縁膜11bを介してn型ドリフト層1に対向している。ゲートトレンチ絶縁膜11bは、p型ベース層15およびn型エミッタ層13に接している。ゲートトレンチ電極11aにゲート駆動電圧が印加されると、アクティブトレンチゲート11のゲートトレンチ絶縁膜11bに接するp型ベース層15にチャネルが形成される。
【0041】
また、トレンチ内にダミートレンチ絶縁膜12bを介してダミートレンチ電極12aが設けられることでダミートレンチゲート12が構成されている。ダミートレンチ電極12aは、ダミートレンチ絶縁膜12bを介してn型ドリフト層1に対向している。ダミートレンチ絶縁膜12bも、ゲートトレンチ絶縁膜11bと同様に、p型ベース層15およびn型エミッタ層13に接しているが、ダミートレンチ電極12aにはエミッタ電圧が印加されるため、ダミートレンチゲート12のダミートレンチ絶縁膜12bに接するp型ベース層15にはチャネルが形成されない。
【0042】
図6に示すように、アクティブトレンチゲート11のゲートトレンチ電極11aの上には層間絶縁膜4が設けられている。半導体基板の第1主面の層間絶縁膜4が設けられていない領域の上、および層間絶縁膜4の上にはバリアメタル5が形成されている。バリアメタル5は、例えば、チタン(Ti)を含む導電体であってよく、例えば、窒化チタンであってよく、チタンとシリコン(Si)を合金化させたTiSiであってよい。図6に示すように、バリアメタル5は、n型エミッタ層13、p型コンタクト層14およびダミートレンチ電極12aにオーミック接触し、n型エミッタ層13、p型コンタクト層14およびダミートレンチ電極12aと電気的に接続されている。
【0043】
バリアメタル5の上には、エミッタ電極6が設けられる。エミッタ電極6は、例えば、アルミニウムシリコン合金(Al-Si系合金)などのアルミ合金で形成してもよく、アルミ合金で形成した電極上に、無電解めっき、あるいは電解めっきでめっき膜を形成した複数層の金属膜からなる電極であってもよい。無電解めっき、あるいは電解めっきで形成するめっき膜は、例えば、ニッケル(Ni)めっき膜であってよい。また、隣接する層間絶縁膜4間等の微細な領域であって、エミッタ電極6では良好な埋め込みが得られない領域がある場合には、エミッタ電極6よりも埋込性が良好なタングステンを微細な領域に配置して、タングステンの上にエミッタ電極6を設けてもよい。なお、バリアメタル5を設けずに、n型エミッタ層13、p型コンタクト層14およびダミートレンチ電極12aの上にエミッタ電極6を設けてもよい。また、n型エミッタ層13などのn型の半導体層の上のみにバリアメタル5を設けてもよい。バリアメタル5とエミッタ電極6とを合わせてエミッタ電極と呼んでよい。
【0044】
図6では、ダミートレンチゲート12のダミートレンチ電極12aの上には層間絶縁膜4が設けられない図を示したが、層間絶縁膜4をダミートレンチゲート12のダミートレンチ電極12aの上にも形成してもよい。層間絶縁膜4をダミートレンチゲート12のダミートレンチ電極12aの上に形成した場合には、別の断面(不図示)においてエミッタ電極6とダミートレンチ電極12aとを電気的に接続すればよい。
【0045】
p型コレクタ層16の第2主面側には、コレクタ電極7が設けられる。コレクタ電極7は、エミッタ電極6と同様、アルミ合金やアルミ合金とめっき膜とで構成されていてもよい。また、コレクタ電極7はエミッタ電極6と異なる構成であってもよい。コレクタ電極7は、p型コレクタ層16にオーミック接触し、p型コレクタ層16と電気的に接続されている。
【0046】
図7は、半導体装置101の図5における破線B-Bでの断面図であり、IGBT領域10の断面図である。図6に示した破線A-Aでの断面図とは、アクティブトレンチゲート11に接して、半導体基板の第1主面側に設けられるn型エミッタ層13が、図7の破線B-Bでの断面には見られない点が異なる。つまり、図5に示したように、n型エミッタ層13は、p型ベース層の第1主面側に選択的に設けられている。なお、ここで言うp型ベース層とは、p型ベース層15とp型コンタクト層14とを合わせて呼ぶp型ベース層のことである。
【0047】
図8は、RC-IGBTである半導体装置のダイオード領域の構成を示す部分拡大平面図である。また、図9および図10は、RC-IGBTである半導体装置のダイオード領域の構成を示す断面図である。図8は、図1に示した半導体装置101における破線83で囲った領域を拡大して示したものである。図9は、図8に示した半導体装置101の破線C-Cにおける断面図である。図10は、図8に示した半導体装置101の破線D-Dにおける断面図である。
【0048】
ダイオードトレンチゲート21は、半導体装置101の第1主面に沿ってダイオード領域20の一端側から対向する他端側に向かって延伸している。ダイオードトレンチゲート21は、ダイオード領域20の半導体基板に形成されたトレンチ内にダイオードトレンチ絶縁膜21bを介してダイオードトレンチ電極21aが設けられることで構成される。ダイオードトレンチ電極21aは、ダイオードトレンチ絶縁膜21bを介してn型ドリフト層1に対向している。隣接する2つのダイオードトレンチゲート21の間には、p型コンタクト層24およびp型アノード層25が設けられている。p型コンタクト層24は、p型不純物として例えばボロンまたはアルミ等を有する半導体層であり、p型不純物の濃度は1.0E+15/cm3~1.0E+20/cm3である。p型アノード層25は、p型不純物として例えばボロンまたはアルミ等を有する半導体層であり、p型不純物の濃度は1.0E+12/cm3~1.0E+19/cm3である。p型コンタクト層24とp型アノード層25とはダイオードトレンチゲート21の長手方向に交互に設けられている。
【0049】
図9は、半導体装置101の図8における破線C-Cでの断面図であり、ダイオード領域20の断面図である。半導体装置101は、ダイオード領域20においてもIGBT領域10と同じく半導体基板からなるn型ドリフト層1を有している。ダイオード領域20のn型ドリフト層1とIGBT領域10のn型ドリフト層1とは連続して一体的に構成されたものであり、同一の半導体基板によって構成されている。図9において半導体基板は、p型コンタクト層24からn型カソード層26までの範囲である。図9においてp型コンタクト層24の紙面上端を半導体基板の第1主面、n型カソード層26の紙面下端を半導体基板の第2主面と呼ぶ。ダイオード領域20の第1主面とIGBT領域10の第1主面は同一面であり、ダイオード領域20の第2主面とIGBT領域10の第2主面は同一面である。
【0050】
図9に示すように、ダイオード領域20においてもIGBT領域10と同様に、n型ドリフト層1の第1主面側にn型キャリア蓄積層2が設けられ、n型ドリフト層1の第2主面側にn型バッファ層3が設けられている。ダイオード領域20に設けられるn型キャリア蓄積層2およびn型バッファ層3は、IGBT領域10に設けられるn型キャリア蓄積層2およびn型バッファ層3と同一の構成である。なお、IGBT領域10およびダイオード領域20にn型キャリア蓄積層2は必ずしも設ける必要はなく、IGBT領域10にn型キャリア蓄積層2を設ける場合であっても、ダイオード領域20にはn型キャリア蓄積層2を設けない構成としてもよい。また、IGBT領域10と同じく、n型ドリフト層1、n型キャリア蓄積層2およびn型バッファ層3を合わせてドリフト層と呼んでもよい。
【0051】
n型キャリア蓄積層2の第1主面側には、p型アノード層25が設けられている。p型アノード層25は、n型ドリフト層1と第1主面との間に設けられている。p型アノード層25は、IGBT領域10のp型ベース層15とp型不純物の濃度を同じ濃度にして、p型アノード層25とp型ベース層15とを同時に形成してもよい。また、p型アノード層25のp型不純物の濃度を、IGBT領域10のp型ベース層15のp型不純物の濃度よりも低くして、ダイオード動作時にダイオード領域20に注入される正孔の量を減少させるように構成してもよい。ダイオード動作時に注入される正孔の量を減少させることでダイオード動作時のリカバリ損失を低減することができる。
【0052】
p型アノード層25の第1主面側には、p型コンタクト層24が設けられている。p型コンタクト層24のp型不純物の濃度は、IGBT領域10のp型コンタクト層14のp型不純物と同じ濃度としてもよいし、異なる濃度としてもよい。p型コンタクト層24は半導体基板の第1主面を構成している。なお、p型コンタクト層24は、p型アノード層25よりもp型不純物の濃度が高い領域であり、p型コンタクト層24とp型アノード層25とを区別する必要がある場合にはそれぞれを個別に呼称してよく、p型コンタクト層24とp型アノード層25とを合わせてp型アノード層と呼んでもよい。
【0053】
ダイオード領域20には、n型バッファ層3の第2主面側に、n型カソード層26が設けられている。n型カソード層26は、n型ドリフト層1と第2主面との間に設けられている。n型カソード層26は、n型不純物として例えばヒ素またはリン等を有する半導体層であり、n型不純物の濃度は1.0E+16/cm3~1.0E+21/cm3である。n型カソード層26は、ダイオード領域20の一部または全部に設けられる。n型カソード層26は半導体基板の第2主面を構成している。なお、図示していないが、上述のようにn型カソード層26を形成した領域に、さらにp型不純物を選択的に注入して、n型カソード層26を形成した領域の一部をp型半導体としてp型カソード層を設けてもよい。
【0054】
図9に示すように、半導体装置101のダイオード領域20には、半導体基板の第1主面からp型アノード層25を貫通し、n型ドリフト層1に達するトレンチが形成されている。ダイオード領域20のトレンチ内にダイオードトレンチ絶縁膜21bを介してダイオードトレンチ電極21aが設けられることでダイオードトレンチゲート21が構成されている。ダイオードトレンチ電極21aはダイオードトレンチ絶縁膜21bを介してn型ドリフト層1に対向している。
【0055】
図9に示すように、ダイオードトレンチ電極21a、およびp型コンタクト層24の上にはバリアメタル5が設けられている。バリアメタル5は、ダイオードトレンチ電極21aおよびp型コンタクト層24とオーミック接触し、ダイオードトレンチ電極およびp型コンタクト層24に電気的に接続されている。バリアメタル5は、IGBT領域10のバリアメタル5と同一の構成であってよい。バリアメタル5の上には、エミッタ電極6が設けられる。ダイオード領域20に設けられるエミッタ電極6は、IGBT領域10に設けられたエミッタ電極6と連続して形成されている。なお、IGBT領域10の場合と同様に、バリアメタル5を設けずに、ダイオードトレンチ電極21aおよびp型コンタクト層24とエミッタ電極6とをオーミック接触させてもよい。なお、図9では、ダイオードトレンチゲート21のダイオードトレンチ電極21aの上には層間絶縁膜4が設けられない図を示したが、層間絶縁膜4をダイオードトレンチゲート21のダイオードトレンチ電極21aの上に形成してもよい。層間絶縁膜4をダイオードトレンチゲート21のダイオードトレンチ電極21aの上に形成した場合には、別の断面(不図示)においてエミッタ電極6とダイオードトレンチ電極21aとを電気的に接続すればよい。
【0056】
型カソード層26の第2主面側には、コレクタ電極7が設けられる。エミッタ電極6と同様、ダイオード領域20のコレクタ電極7は、IGBT領域10に設けられたコレクタ電極7と連続して形成されている。コレクタ電極7は、n型カソード層26にオーミック接触し、n型カソード層26に電気的に接続されている。
【0057】
図10は、半導体装置101の図8における破線D-Dでの断面図であり、ダイオード領域20の断面図である。図9に示した破線C-Cでの断面図とは、p型アノード層25とバリアメタル5との間に、p型コンタクト層24が設けられておらず、p型アノード層25が半導体基板の第1主面を構成している点が異なる。つまり、図9で示したp型コンタクト層24は、p型アノード層25の第1主面側に選択的に設けられている。
【0058】
図11は、RC-IGBTである半導体装置のIGBT領域とダイオード領域との境界の構成を示す断面図である。図11は、図1に示した半導体装置101における破線G-Gにおける断面図である。
【0059】
図11に示すように、IGBT領域10の第2主面側に設けられたp型コレクタ層16は、IGBT領域10とダイオード領域20との境界から距離U1だけダイオード領域20側にはみ出して設けられている。このように、p型コレクタ層16をダイオード領域20にはみ出して設けることにより、ダイオード領域20のn型カソード層26とアクティブトレンチゲート11との距離を大きくすることができ、還流ダイオード動作時にゲートトレンチ電極11aにゲート駆動電圧が印加された場合であっても、IGBT領域10のアクティブトレンチゲート11に隣接して形成されるチャネルからn型カソード層26に電流が流れるのを抑制することができる。距離U1は、例えば100μmであってよい。なお、RC-IGBTである半導体装置101の用途によっては、距離U1がゼロまたは100μmより小さい距離であってもよい。
【0060】
図12は、RC-IGBTである半導体装置の終端領域の構成を示す断面図である。図12は、図1における破線E-Eでの断面図であり、IGBT領域10から終端領域30にかけての断面図である。なお、図12においては、ゲート配線領域50の図示は省略されている。
【0061】
図12に示すように、半導体装置101の終端領域30は、半導体基板の第1主面と第2主面との間にn型ドリフト層1を有している。終端領域30の第1主面および第2主面は、それぞれIGBT領域10およびダイオード領域20の第1主面および第2主面と同一面である。また、終端領域30のn型ドリフト層1は、それぞれIGBT領域10およびダイオード領域20のn型ドリフト層1と同一構成であり連続して一体的に形成されている。
【0062】
型ドリフト層1の第1主面側、すなわち半導体基板の第1主面とn型ドリフト層1との間にp型終端ウェル層31が設けられている。p型終端ウェル層31は、p型不純物として例えばボロンまたはアルミ等を有する半導体層であり、p型不純物の濃度は1.0E+14/cm3~1.0E+19/cm3である。p型終端ウェル層31は、IGBT領域10およびダイオード領域20が含まれるセル領域を取り囲んで設けられている。p型終端ウェル層31は複数のリング状に設けられており、p型終端ウェル層31が設けられる数は、半導体装置101の耐圧設計によって適宜選択される。また、p型終端ウェル層31のさらに外縁側にはn型チャネルストッパ層32が設けられており、n型チャネルストッパ層32はp型終端ウェル層31を取り囲んでいる。
【0063】
型ドリフト層1と半導体基板の第2主面との間には、p型終端コレクタ層16aが設けられている。p型終端コレクタ層16aは、セル領域に設けられるp型コレクタ層16と連続して一体的に形成されている。従って、p型終端コレクタ層16aを含めてp型コレクタ層16と呼んでもよい。
【0064】
半導体基板の第2主面上にはコレクタ電極7が設けられている。コレクタ電極7は、IGBT領域10およびダイオード領域20を含むセル領域から終端領域30まで連続して一体的に形成されている。一方、終端領域30の半導体基板の第1主面上にはセル領域から連続しているエミッタ電極6と、エミッタ電極6とは分離された終端電極6aとが設けられる。
【0065】
エミッタ電極6と終端電極6aとは、半絶縁性膜33を介して電気的に接続されている。半絶縁性膜33は、例えば、sinSiN(semi-insulating Silicon Nitride:半絶縁性シリコン窒化膜)であってよい。終端電極6aとp型終端ウェル層31およびn型チャネルストッパ層32とは、終端領域30の第1主面上に設けられた層間絶縁膜4に形成されたコンタクトホールを介して電気的に接続されている。また、終端領域30には、エミッタ電極6、終端電極6aおよび半絶縁性膜33を覆って終端保護膜34が設けられている。終端保護膜34は、例えば、ポリイミドで形成してよい。
【0066】
以下、実施の形態1に係るRC-IGBTである半導体装置の製造方法の一例を示す。
【0067】
図13図24は、RC-IGBTである半導体装置101の製造方法を示す図である。図13図20は半導体装置101のおもて面側を形成する工程を示す図であり、図21図24は、半導体装置101の裏面側を形成する工程を示す図である。
【0068】
まず、図13に示すようにn型ドリフト層1を構成する半導体基板を準備する。半導体基板には、例えば、FZ(Floating Zone)法で作製された、いわゆるFZウエハやMCZ(Magnetic applied CZochralski)法で作製された、いわゆるMCZウエハを用いてよく、n型不純物を含むn型ウエハであってよい。半導体基板に含まれるn型不純物の濃度は、作製される半導体装置の耐圧によって適宜選択され、例えば、耐圧が1200Vの半導体装置では、半導体基板を構成するn型ドリフト層1の比抵抗が40~120Ω・cm程度となるようにn型不純物の濃度が調整される。図13に示すように、半導体基板を準備する工程では、半導体基板の全体がn型ドリフト層1となっているが、このような半導体基板の第1主面側または第2主面側から、p型あるいはn型の不純物イオンを注入し、その後熱処理などによって半導体基板内に拡散させることで、p型あるいはn型の半導体層を形成し、半導体装置101は製造される。
【0069】
図13に示すように、n型ドリフト層1を構成する半導体基板は、IGBT領域10およびダイオード領域20になる領域を備えている。また、図示しないがIGBT領域10およびダイオード領域20になる領域の周囲には終端領域30となる領域を備えている。以下では、半導体装置101のIGBT領域10およびダイオード領域20の構成の製造方法について主として説明するが、半導体装置101の終端領域30については周知の製造方法により作製してよい。例えば、終端領域30に耐圧保持構造としてp型終端ウェル層31を有するFLRを形成する場合、半導体装置101のIGBT領域10およびダイオード領域20を加工する前にp型不純物イオンを注入して形成してもよく、半導体装置101のIGBT領域10あるいはダイオード領域20にp型不純物をイオン注入する際に同時にp型不純物イオンを注入して形成してもよい。
【0070】
次に、図14に示すように、半導体基板の第1主面側からリン(P)などのn型不純物を注入してn型キャリア蓄積層2を形成する。また、半導体基板の第1主面側からボロン(B)などのp型不純物を注入してp型ベース層15およびp型アノード層25を形成する。n型キャリア蓄積層2、p型ベース層15およびp型アノード層25は、半導体基板内に不純物イオンを注入した後、熱処理により不純物イオンを拡散させることで形成される。n型不純物およびp型不純物は、半導体基板の第1主面上にマスク処理を施した後イオン注入されるため、半導体基板の第1主面側に選択的に形成される。n型キャリア蓄積層2、p型ベース層15およびp型アノード層25は、IGBT領域10およびダイオード領域20に形成され、終端領域30でp型終端ウェル層31に接続される。なお、マスク処理とは、半導体基板上にレジストを塗布し、写真製版技術を用いてレジストの所定の領域に開口を形成し、開口を介して半導体基板の所定の領域にイオン注入を施したり、エッチングを施したりするために、半導体基板上にマスクを形成する処理を言う。
【0071】
p型ベース層15およびp型アノード層25は、同時にp型不純物をイオン注入して形成してもよい。この場合、p型ベース層15とp型アノード層25の深さやp型不純物濃度は同じとなり同一の構成となる。また、マスク処理によりp型ベース層15とp型アノード層25とに別々にp型不純物をイオン注入することで、p型ベース層15とp型アノード層25の深さやp型不純物濃度を異ならせてもよい。
【0072】
また、別の断面において形成されるp型終端ウェル層31は、p型アノード層25と同時にp型不純物をイオン注入して形成してもよい。この場合、p型終端ウェル層31とp型アノード層25との深さやp型不純物濃度は同じとなり同一の構成とすることが可能である。また、p型終端ウェル層31とp型アノード層25とを同時にp型不純物をイオン注入して形成して、p型終端ウェル層31とp型アノード層25とのp型不純物濃度を異なる濃度とすることも可能である。この場合、いずれか一方または双方のマスクをメッシュ状のマスクとして、開口率を変更すればよい。
【0073】
また、マスク処理によりp型終端ウェル層31とp型アノード層25とを別々にp型不純物をイオン注入することで、p型終端ウェル層31およびp型アノード層25の深さやp型不純物濃度を異ならせてもよい。
【0074】
p型終端ウェル層31、p型ベース層15およびp型アノード層25は、同時にp型不純物をイオン注入して形成してもよい。
【0075】
次に、図15に示すように、マスク処理によりIGBT領域10のp型ベース層15の第1主面側に選択的にn型不純物を注入してn型エミッタ層13を形成する。注入するn型不純物は、例えば、砒素(As)またはリン(P)であってよい。また、マスク処理により、IGBT領域10のp型ベース層15の第1主面側に選択的にp型不純物を注入してp型コンタクト層14を形成し、ダイオード領域20のp型アノード層25の第1主面側に選択的にp型不純物を注入してp型コンタクト層24を形成する。注入するp型不純物は、例えばボロン(B)またはアルミニウム(Al)であってよい。
【0076】
次に、図16に示すように、半導体基板の第1主面側からp型ベース層15およびp型アノード層25を貫通し、n型ドリフト層1に達するトレンチ8を形成する。IGBT領域10において、n型エミッタ層13を貫通するトレンチ8は、側壁がn型エミッタ層13の一部を構成する。トレンチ8は、半導体基板上にSiOなどの酸化膜を堆積させた後、マスク処理によってトレンチ8を形成する部分の酸化膜に開口を形成し、開口を形成した酸化膜をマスクとして半導体基板をエッチングすることで形成してよい。図16では,IGBT領域10とダイオード領域20とでトレンチ8のピッチを同じにして形成しているが、IGBT領域10とダイオード領域20とでトレンチ8のピッチを異ならせてもよい。トレンチ8のピッチは平面視におけるパターンは、マスク処理のマスクパターンにより適宜変更することができる。
【0077】
次に、図17に示すように、酸素を含む雰囲気中で半導体基板を加熱してトレンチ8の内壁および半導体基板の第1主面に酸化膜9を形成する。トレンチ8の内壁に形成された酸化膜9のうち、IGBT領域10のトレンチ8に形成された酸化膜9がアクティブトレンチゲート11のゲートトレンチ絶縁膜11bおよびダミートレンチゲート12のダミートレンチ絶縁膜12bである。また、ダイオード領域20のトレンチ8に形成された酸化膜9がダイオードトレンチ絶縁膜21bである。半導体基板の第1主面に形成された酸化膜9は後の工程で除去される。
【0078】
次に、図18に示すように、内壁に酸化膜9を形成したトレンチ8内に、CVD(chemical vapor deposition)などによってn型またはp型の不純物をドープしたポリシリコンを堆積させて、ゲートトレンチ電極11a、ダミートレンチ電極12aおよびダイオードトレンチ電極21aを形成する。
【0079】
次に、図19に示すように、IGBT領域10のアクティブトレンチゲート11のゲートトレンチ電極11a上に層間絶縁膜4を形成した後に半導体基板の第1主面に形成された酸化膜9を除去する。層間絶縁膜4は、例えば、SiOであってよい。そして、マスク処理により堆積させた層間絶縁膜4にコンタクトホールを形成する。コンタクトホールは、n型エミッタ層13上、p型コンタクト層14上、p型コンタクト層24上、ダミートレンチ電極12a上およびダイオードトレンチ電極21a上に形成される。
【0080】
次に、図20に示すように、半導体基板の第1主面および層間絶縁膜4上にバリアメタル5を形成し、さらにバリアメタル5の上にエミッタ電極6を形成する。バリアメタル5は、窒化チタンをPDV(physical vapor deposition)やCVDによって成膜することで形成される。
【0081】
エミッタ電極6は、例えば、スパッタリングや蒸着などのPVDによってアルミシリコン合金(Al-Si系合金)をバリアメタル5の上に堆積させて形成してよい。また、形成したアルミシリコン合金の上に、無電解めっきや電解めっきでニッケル合金(Ni合金)をさらに形成してエミッタ電極6としてもよい。エミッタ電極6をめっきで形成すると、エミッタ電極6として厚い金属膜を容易に形成することができるので、エミッタ電極6の熱容量を増加させて耐熱性を向上させることができる。なお、PVDでアルミシリコン合金からなるエミッタ電極6を形成した後に、めっき処理でニッケル合金をさらに形成する場合、ニッケル合金を形成するためのめっき処理は半導体基板の第2主面側の加工を行った後に実施してもよい。
【0082】
次に、図21に示すように半導体基板の第2主面側を研削し、半導体基板を設計した所定の厚さに薄板化する。研削後の半導体基板の厚さは、例えば、80μm~200μmであってよい。
【0083】
次に、図22に示すように、半導体基板の第2主面側からn型不純物を注入しn型バッファ層3を形成する。さらに、半導体基板の第2主面側からp型不純物を注入しp型コレクタ層16を形成する。n型バッファ層3はIGBT領域10、ダイオード領域20および終端領域30に形成してよく、IGBT領域10またはダイオード領域20のみに形成してもよい。
【0084】
n型バッファ層3は、例えば、リン(P)イオンを注入して形成してよい。また、プロトン(H+)を注入して形成してよい。さらに、プロトンとリンの両方を注入して形成してよい。プロトンは比較的低い加速エネルギーで半導体基板の第2主面から深い位置にまで注入することができる。また、加速エネルギーを変えることでプロトンを注入する深さを比較的容易に変更することができる。このため、n型バッファ層3をプロトンで形成する際に、加速エネルギーを変更しながら複数回注入すると、リンで形成するよりも半導体基板の厚さ方向に幅が広いn型バッファ層3を形成することができる。
【0085】
また、リンはプロトンに比較して、n型不純物としての活性化率を高くすることができるので、リンでn型バッファ層3を形成することにより薄板化した半導体基板であってもより確実に空乏層がパンチスルーするのを抑制することができる。半導体基板をより一層薄板化するには、プロトンとリンの両方を注入してn型バッファ層3を形成するのが好ましく、この際には、プロトンはリンよりも第2主面から深い位置に注入される。
【0086】
p型コレクタ層16は、例えば、ボロン(B)を注入して形成してよい。p型コレクタ層16は、終端領域30にも形成され、終端領域30のp型コレクタ層16がp型終端コレクタ層16aとなる。半導体基板の第2主面側からイオン注入した後に、第2主面にレーザーを照射してレーザーアニールすることで、注入したボロンが活性化しp型コレクタ層16が形成される。この際、半導体基板の第2主面から比較的浅い位置に注入されたn型バッファ層3のためのリンも同時に活性化される。一方、プロトンは350℃~500℃といった比較的低いアニール温度で活性化されるので、プロトンを注入した後はプロトンの活性化のための工程以外で、半導体基板全体が350℃~500℃より高い温度にならないように留意する必要がある。レーザーアニールは、半導体基板の第2主面近傍のみを高温にできるため、プロトンを注入した後であってもn型不純物やp型不純物の活性化に用いることができる。
【0087】
次に、図23に示すように、ダイオード領域20にn型カソード層26を形成する。n型カソード層26は、例えば、リン(P)を注入して形成してよい。図23に示すように、IGBT領域10とダイオード領域20との境界からダイオード領域20側に距離U1の位置に、p型コレクタ層16とn型カソード層26との境界が位置するように、リンが第2主面側からマスク処理により選択的に注入される。n型カソード層26を形成するためのn型不純物の注入量は、p型コレクタ層16を形成するためのp型不純物の注入量より多い。図23では、第2主面からのp型コレクタ層16とn型カソード層26の深さを同じに示しているが、n型カソード層26の深さはp型コレクタ層16の深さ以上である。n型カソード層26が形成される領域は、p型不純物が注入された領域にn型不純物を注入してn型半導体にする必要があるので、n型カソード層26が形成される領域の全てで注入されたp型不純物の濃度をn型不純物の濃度より高くする。
【0088】
次に、図24に示すように、半導体基板の第2主面上にコレクタ電極7を形成する。コレクタ電極7は、第2主面のIGBT領域10、ダイオード領域20および終端領域30の全面に亘って形成される。また、コレクタ電極7は、半導体基板であるn型ウエハの第2主面の全面に亘って形成してよい。コレクタ電極7は、スパッタリングや蒸着などのPVDによって、アルミシリコン合金(Ai-Si系合金)やチタン(Ti)などを堆積させて形成してよく、アルミシリコン合金、チタン、ニッケルあるいは金など複数の金属を積層させて形成してもよい。さらには、PVDで形成した金属膜上に無電解めっきや電解めっきで、さらに金属膜を形成してコレクタ電極7としてもよい。
【0089】
以上のような工程により半導体装置101は作製される。半導体装置101は、1枚のn型ウエハにマトリクス状に複数作製されるので、レーザーダイシングやブレードダイシングにより個々の半導体装置101に切り分けることで半導体装置101は完成する。
【0090】
[変形例1]
従来の半導体装置では、より正確なTjを計測するために、比較的温度が高くなるチップ中央に温度センスダイオードを配置する必要があった。図1においては、温度センスダイオード100がチップ中央に配置された例を示したが、実施の形態1に係る半導体装置101では、チップ全体の温度が均一化されるため、温度センスダイオード100をチップ中央に配置せずとも正確なTjを測定できる。よって、温度センスダイオード100の配置の自由度が向上する。
【0091】
実施の形態1に係る半導体装置101では、平面視で、温度センスダイオード100を有効領域の外側(つまり、有効領域に挟まれない領域)に配置してもよい。例えば、温度センスダイオード100を、温度センスダイオードパッド41d,41eの付近に配置すれば、温度センスダイオード100と温度センスダイオードパッド41d,41eとを接続する配線を短くできるとともに、当該配線を引き回すための領域が不用になる。そのため、温度センスダイオード100と温度センスダイオードパッド41d,41eとを接続する配線の引き回しに利用されていた領域(図1の例であれば、セル領域の中心線に沿った部分のゲート配線領域50)を縮小させて、有効領域の面積(有効面積)を拡大することができる。有効領域の面積拡大はチップ温度の均一化に寄与する。
【0092】
[変形例2]
有効領域の上側に配置された金属層であるエミッタ電極6の上にめっき膜(不図示)を形成してもよい。すなわちエミッタ電極6は、金属層とめっき層とを含む積層金属層であってもよい。エミッタ電極6に、めっき膜による熱伝達および熱容量が追加されて、より効率的にチップ最表面の温度(Tj)の均一化を図ることができる。めっき膜としては、ニッケルを主な材料としたものを用いることができる。めっき膜として、より熱伝導率の高い銅を主な材料としたものを用いれば、より高い効果が得られる。
【0093】
<実施の形態2>
図25は、実施の形態2に係る半導体装置の平面図である。実施の形態2に係る半導体装置は、実施の形態1の半導体装置におけるWD(ダイオード領域20の一辺の長さ)およびWI(隣り合うダイオード領域20の間隔)を、ともに160μm以上400μm以下の範囲にしたものである。WDおよびWIをともに160μm以上400μm以下の範囲にすると、実施の形態1で説明した効果がより効率的に得られる。
【0094】
<実施の形態3>
図26は、実施の形態3に係る半導体装置の平面図である。実施の形態3に係る半導体装置では、ゲート配線領域50が有効領域の外周部のみに設けられており、有効領域内にはゲート配線領域50が設けられていない。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0095】
実施の形態3に係る半導体装置101では、実施の形態1に比べ、有効領域の面積が増加するため、ダイオード領域20の分割数を増やすことができ、チップ最表面の温度(Tj)を低減する効果を向上させることができる。
【0096】
実施の形態1で説明したように、本開示の技術に係る半導体装置101では、温度センスダイオード100(図26では不図示)をチップ中央に配置する必要はない。そのため、温度センスダイオード100と温度センスダイオードパッド41d,41eとを接続する配線を引き回すためのゲート配線領域50を有効領域内に設けない図26のようなレイアウトが可能となる。
【0097】
また、図26の構成では、有効領域の上に配置されるエミッタ電極6を分割する必要がない。一般的な半導体装置の製造では、エミッタ電極6上にはんだ等を接続するための金属膜を設け、その上にリードフレームなどが接続される。エミッタ電極6が分割されていない一体的な構造であれば、そのような半導体装置の製造が容易になって歩留まりが改善したり、部品点数や工数が低減したりすることで、半導体装置の製造コストの低減が期待できる。また、半導体装置の構造が単純化することで、半導体装置の信頼性向上にも寄与できる。
【0098】
<実施の形態4>
図27は、実施の形態4に係る半導体装置の構成を説明するための図である。実施の形態1に係る半導体装置101では、図5に示したように、IGBT領域10において、複数のアクティブトレンチゲート11が全て同じ方向(この方向を「第1方向」と定義する)に延伸していた。それに対し、実施の形態4に係る半導体装置101では、図27のように、IGBT領域10において、第1方向に延伸するアクティブトレンチゲート11に加えて、第1方向と直交する第2方向に延伸するアクティブトレンチゲート11c(以下「交差トレンチゲート11c」という)を有している。
【0099】
交差トレンチゲート11cは、チップ外周部まで延伸し、有効領域の外周部のゲート配線領域50に配置されたゲート配線(不図示)と電気的に接続している。また、個々のアクティブトレンチゲート11は交差トレンチゲート11cとT字型に接続している。その他の構成は、実施の形態1~3と同様である。
【0100】
実施の形態4に係る半導体装置101によれば、実施の形態1~3の同様の効果に加えて、ゲート遅延時間の増加を抑制できるという効果が得られる。その結果、動作が遅延するセルの存在に起因する面内での電流の不均一化が抑制されるため、実施の形態1~3よりも、チップ最表面の温度(Tj)の低減や短絡耐量の向上が見込める。また、アクティブトレンチゲート11と交差トレンチゲート11cがT字型に接続することで、アクティブトレンチゲート11と交差トレンチゲート11cとの接続部分でゲートトレンチ電極11aの埋め込み性が悪くなることを抑制できる。
【0101】
<実施の形態5>
図28は、実施の形態5に係る半導体装置の構成を説明するための図である。図28では、ダイオード領域20の位置を分かりやすくするため、ダイオード領域20に砂地模様のハッチングを施している。
【0102】
実施の形態5に係る半導体装置101では、交差トレンチゲート11cがダイオード領域20の端部に沿って配置されている。すなわち、交差トレンチゲート11cは、ダイオード領域20の辺に沿うように延伸している。その他の構成は、実施の形態4と同様である。
【0103】
実施の形態5に係る半導体装置101によれば、交差トレンチゲート11cを設けることによる有効領域の縮小(無効領域の増加)を最小限に抑えつつ、実施の形態4と同様の効果を得ることができる。
【0104】
<実施の形態6>
図29は、実施の形態6に係る半導体装置のIGBT領域とダイオード領域との境界の断面図である。図29のように、実施の形態6に係る半導体装置101では、ダイオード領域20とIGBT領域10とで、半導体装置101の第1主面側の構造が互いに同じであり、裏面側の構造のみが互いに異なる。つまり、実施の形態6に係る半導体装置101では、ダイオード領域20にもIGBT領域10と同様に、ゲート駆動電圧が印加されるアクティブトレンチゲート11や、それに隣接するn型エミッタ層13が形成されている。
【0105】
実施の形態6に係る半導体装置101においても、IGBT領域10とダイオード領域20との境界長を長くでき、局所的な発熱を抑制できる。さらに、チップ全面で通電可能であるため、電流密度を下げることができ、実施の形態1~5よりもチップ最表面の温度(Tj)の低減や短絡耐量の向上の効果が見込める。
【0106】
なお、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【0107】
<付記>
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0108】
(付記1)
IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)として機能するIGBT領域と、
ダイオードとして機能する複数のダイオード領域と、
を備えるRC-IGBT(Reverse Conducting IGBT)のチップを備え、
前記IGBT領域と前記ダイオード領域とを合わせた領域である有効領域内に、複数の前記ダイオード領域が島状に配置されており、
1つの前記ダイオード領域の一辺の長さをWD、隣り合う前記ダイオード領域の間隔をWI、前記有効領域の一辺の長さをWC、前記チップの厚みをtとすると、
2t<WD<5t
2t<WI<5t
WD+WI<WC/6
の関係が満たされている、
半導体装置。
【0109】
(付記2)
前記ダイオード領域の一辺の長さと、隣り合う前記ダイオード領域の間隔とが、ともに160μm以上400μm以下である、
付記1に記載の半導体装置。
【0110】
(付記3)
前記IGBTのゲート電極とゲートパッドとの間を接続するゲート配線が配置されたゲート配線領域が、前記有効領域内には設けられておらず、前記有効領域の外周部に設けられている、
付記1または付記2に記載の半導体装置。
【0111】
(付記4)
前記ダイオード領域は、前記IGBTのゲート電極が埋め込まれたアクティブトレンチゲートとして、第1方向に延伸するトレンチゲートと、前記第1方向に直交する第2方向に延伸する交差トレンチゲートとを有し、
前記交差トレンチゲートは、前記有効領域の外周部において、前記IGBTの前記ゲート電極とゲートパッドとの間を接続するゲート配線に接続している、
付記1から付記3のいずれか一つに記載の半導体装置。
【0112】
(付記5)
前記交差トレンチゲートは、前記ダイオード領域の端部に沿って延伸している、
付記4に記載の半導体装置。
【0113】
(付記6)
前記ダイオード領域と前記IGBT領域とは、第1主面側の構造は互いに同じであり、第2主面側の構造は互いに異なる、
付記1から付記5のいずれか一つに記載の半導体装置。
【0114】
(付記7)
前記チップは、平面視で前記有効領域の外側に配置された温度センスダイオードをさらに備える、
付記1から付記6のいずれか一つに記載の半導体装置。
【0115】
(付記8)
前記チップは、前記有効領域の上側に配置された金属層と前記金属層上のめっき層とを含む積層金属層をさらに備える、
付記1から付記7のいずれか一つに記載の半導体装置。
【符号の説明】
【0116】
1 n型ドリフト層、2 n型キャリア蓄積層、3 n型バッファ層、4 層間絶縁膜、5 バリアメタル、6 エミッタ電極、6a 終端電極、7 コレクタ電極、8 トレンチ、9 酸化膜、10 IGBT領域、11 アクティブトレンチゲート、11a ゲートトレンチ電極、11b ゲートトレンチ絶縁膜、11c 交差トレンチゲート、12 ダミートレンチゲート、12a ダミートレンチ電極、12b ダミートレンチ絶縁膜、13 n型エミッタ層、14 p型コンタクト層、15 p型ベース層、16 p型コレクタ層、16a p型終端コレクタ層、20 ダイオード領域、21 ダイオードトレンチゲート、21a ダイオードトレンチ電極、21b ダイオードトレンチ絶縁膜、24 p型コンタクト層、25 p型アノード層、26 n型カソード層、30 終端領域、31 p型終端ウェル層、32 n型チャネルストッパ層、33 半絶縁性膜、34 終端保護膜、40 パッド領域、41 制御パッド、41a 電流センスパッド、41b ケルビンエミッタパッド、41c ゲートパッド、41d,41e 温度センスダイオードパッド、50 ゲート配線領域、100 温度センスダイオード、101 半導体装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
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図20
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図22
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図24
図25
図26
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図29