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2024-161952ひずみ解析方法、ひずみ解析装置、及びターゲット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161952
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】ひずみ解析方法、ひずみ解析装置、及びターゲット
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/16 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
G01B11/16 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077040
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西田 秀高
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA01
2F065AA65
2F065BB27
2F065BB29
2F065CC14
2F065DD06
2F065FF04
2F065FF44
2F065FF51
2F065GG04
2F065JJ19
2F065JJ26
2F065QQ24
2F065QQ31
(57)【要約】
【課題】サンプリングモアレ法によるひずみの解析を効率よく行う。
【解決手段】ひずみの解析の対象となる構造物の異なる箇所の夫々に格子模様が描画されたターゲットを貼り付け、ターゲットの夫々に構造物に生じた変形により発光する応力発光素子を併設する。ひずみ解析装置は、応力発光素子の発光輝度を取得し、ターゲットの夫々の発光輝度に基づき解析の対象とするターゲットを選択し、選択したターゲットの変形の前後における画像に基づきモアレ画像を生成し、生成したモアレ画像に表れているモアレ縞を位相解析することにより構造物に生じるひずみに関する情報を取得する。ひずみ解析装置は、例えば、発光輝度の高い応力発光素子が併設されている所定数のターゲットを優先して解析の対象として選択する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
格子模様が描画されたターゲットをひずみの解析の対象となる構造物の表面に貼りつけ、前記構造物に生じる変形の前後における前記格子模様を撮影して得られる画像を解析することにより前記構造物に生じるひずみに関する情報を生成するひずみ解析方法であって、
前記構造物の異なる箇所の夫々に前記ターゲットを貼り付け、
前記ターゲットの夫々に前記構造物に生じた変形により発光する応力発光素子を併設し、
前記応力発光素子の発光輝度を取得し、
前記ターゲットの夫々の前記発光輝度に基づき前記解析の対象とする前記ターゲットを選択し、
選択した前記ターゲットの前記変形の前後における前記画像に基づき前記情報を取得する、
ひずみ解析方法。
【請求項2】
請求項1に記載のひずみ解析方法であって、
前記発光輝度の高い前記応力発光素子が併設されている所定数の前記ターゲットを優先して前記解析の対象として選択する、
ひずみ解析方法。
【請求項3】
請求項1に記載のひずみ解析方法であって、
前記構造物は、移動体が通行する橋梁であり、
前記移動体が通行する方向に沿って前記橋梁の側面に複数の前記ターゲットを貼りつけ、
前記ターゲットの夫々の前記格子模様を撮影可能な位置に撮影装置を設置し、
前記応力発光素子の発光輝度に基づき撮影の対象とする前記ターゲットを選択し、
選択した前記ターゲットを前記撮影装置により撮影して前記画像を取得し、
取得した前記画像を解析することにより前記情報を生成する、
ひずみ解析方法。
【請求項4】
請求項1に記載のひずみ解析方法であって、
選択した前記ターゲットの前記変形の前後における前記画像に基づきモアレ画像を生成し、
前記モアレ画像に表れているモアレ縞の位相を解析することにより前記情報を生成する、
ひずみ解析方法。
【請求項5】
請求項1に記載のひずみ解析方法に用いるひずみ解析装置であって、
情報処理装置を用いて構成され、
前記画像を記憶し、
前記画像に基づき前記応力発光素子の発光輝度を取得し、
前記ターゲットの夫々の前記発光輝度に基づき前記解析の対象とする前記ターゲットを選択し、
選択した前記ターゲットの前記変形の前後における前記画像に基づき前記情報を取得する、
ひずみ解析装置。
【請求項6】
請求項5に記載のひずみ解析装置であって、
ユーザインタフェースと通信可能に接続し、
前記ターゲットの夫々の前記応力発光素子の発光輝度を前記ユーザインタフェースを介してユーザに提示し、
前記解析の対象とする所定数の前記ターゲットの指定を前記ユーザインタフェースを介してユーザから受け付け、
受け付けた前記ターゲットを前記解析の対象として選択し、
選択した前記ターゲットの前記変形の前後における前記画像に基づき前記情報を取得する、
ひずみ解析装置。
【請求項7】
請求項1に記載のひずみ解析方法に用いる前記ターゲットであって、
表面に前記格子模様が描画された透明な素材からなる第1の層と、
前記第1の層の裏面に積層される、前記応力発光素子を含んだ第2の層と
を有する、
ターゲット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ひずみ解析方法、ひずみ解析装置、及びターゲットに関し、とくにサンプリングモアレ法によるひずみの解析を効率よく行うための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、わが国では高度経済成長期に建設された構造物の老朽化が問題となっており、こうした構造物についての健全性の評価や寿命診断を効率よく行うための技術の確立が急がれている。
【0003】
構造物についての健全性の評価や寿命診断を行うための手法として、従来より、例えば、ひずみゲージやレーザ変位計により構造物のひずみを測定することが行われている。また昨今では、より簡便かつ効率よくひずみを解析する技術としてサンプリングモアレ法が注目されている。
【0004】
サンプリングモアレ法は、格子模様が描画されたシート(以下、「ターゲット」と称する。)を構造物に貼りつけ、構造物の変形(ひずみ)の発生前後における格子模様をカメラにより撮影し、得られた画像に基づきモアレ画像を生成し、生成したモアレ画像に表れているモアレ縞について位相解析を行うことにより構造物に生じているひずみを解析する手法である(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60-195406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、例えば、橋梁や鉄塔、ビル、高速道路、トンネル、風量発電設備のような規模の大きな構造物についてサンプリングモアレ法によりひずみの解析を行おうとした場合、構造物の広い範囲に亘って多数のターゲットを貼り付けた後、貼り付けたターゲットの夫々について逐一画像解析を行う必要があり、実施に際し負担が大きいという課題がある。
【0007】
本発明はこのような背景に鑑みてなされたもので、構造物に生じるひずみの解析を効率よく行うことが可能な、ひずみ解析方法、ひずみ解析装置、及びターゲットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明のうちの一つは、格子模様が描画されたターゲットをひずみの解析の対象となる構造物の表面に貼りつけ、前記構造物に生じる変形の前後における前記格子模様を撮影して得られる画像を解析することにより前記構造物に生じるひずみに関する情報を生成するひずみ解析方法であって、前記構造物の異なる箇所の夫々に前記ターゲットを貼り付け、前記ターゲットの夫々に前記構造物に生じた変形により発光する応力発光素子を併設し、前記応力発光素子の発光輝度を取得し、前記ターゲットの夫々の前記発光輝度に基づき前記解析の対象とする前記ターゲットを選択し、選択した前記ターゲットの前記変形の前後における前記画像に基づき前記情報を取得する。
【0009】
その他、本願が開示する課題、及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、サンプリングモアレ法によるひずみの解析を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態として説明するひずみ解析システムの概略的な構成を示す図である。
図2】ターゲットの構成を示す斜視図である。
図3】ひずみ解析装置が備える主な機能を示す図である。
図4A】ターゲット毎発光輝度のデータ構造を示す図である。
図4B】変形前後画像のデータ構造を示す図である。
図5】ひずみ解析処理を説明するフローチャートである。
図6】ひずみ解析装置の実現に用いる情報処理装置のハードウェア構成の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態につき図面を参照しつつ説明する。以下の説明において、符号の前に付している「S」の文字は処理ステップを意味する。また、以下の説明では、「情報」、「データ」等の表現にて各種情報を説明するが、各種情報は、例示する以外のデータ構造で表現されていてもよい。
【0013】
図1に、本発明の一実施形態として示すひずみ解析システム1の概略的な構成を示している。ひずみ解析システム1は、サンプリングモアレ法により構造物に生じるひずみを解析する。同図に示すように、ひずみ解析システム1は、解析の対象となる構造物である橋梁2の側面に沿って間隔を開けて貼り付けられた複数のターゲット3と、ターゲット3の夫々に併設された応力発光素子4と、ターゲット3の表面を橋梁2から離れた位置から撮影する撮影装置5と、撮影装置5により取得される静止画像(以下、「撮影画像」と称する。)を解析することにより、車両6等が通過した際に橋梁2に生じるひずみに関する情報(以下、「ひずみ情報」と称する。)を生成するひずみ解析装置100と、を含む。尚、本実施形態では、一例として、解析の対象となる構造物が橋梁2である場合を示すが、解析の対象となる構造物は、例えば、ビル、鉄塔、トンネル、ダム等の治水設備、発電設備等、他の種類のものでもよい。
【0014】
図2に、ターゲット3の構成を示している。以下の説明において、同図に示す+z側を表面と称し、-z側を裏面と称する。同図に示すように、ターゲット3は、格子シート31(第1の層)と、格子シート31の裏面側に積層される応力発光シート32(第2の層)と、応力発光シート32の裏面側に積層される粘着シート33(第3の層)とを有する。
【0015】
格子シート31は、透明樹脂等の透明な素材からなり、その表面にはサンプリングモアレ法におけるモアレ縞を生成するための格子模様3aが描画されている。
【0016】
応力発光シート32は応力発光素子4を含む。応力発光シート32は、橋梁2に生じた変形(ひずみ)により粘着シート33を介して入力される応力により発光する。応力発光素子4の発光強度は、上記の応力の大きさが大きい程、高く(大きく)なる。上記の発光は、透明の格子シート31を透過し、撮影装置5の位置から視認することができる。尚、応力発光シート32は、例えば、格子シート31の裏面に応力発光素子4を含んだ物質(例えば、応力発光素子4とバインダとを混練した物質)を塗布する(塗膜を形成する)ことにより形成してもよい。
【0017】
応力発光素子4は、例えば、応力発光セラミクスを用いて構成される。応力発光素子4は、機械的エネルギー(応力、摩擦、衝撃、圧縮、引張り)を加えることにより光エネルギーを放出する。応力発光素子4の発光色は素材毎に異なるため、例えば、ターゲット3毎に発光色を変えて個々のターゲット3を容易に識別できるようにしてもよい。
【0018】
粘着シート33は、ターゲット3と構造物(橋梁2)の表面との間に介在し、ターゲット3を構造物に固定(粘着)する。粘着シート33の素材としては、構造物に生じた変形を応力発光シート32に伝達可能なものが用いられる。尚、応力発光シート32を応力発光素子4と粘着性のバインダを混練した物質により構成する等して粘着シート33として機能させてもよい。
【0019】
図1に戻り、撮影装置5は、例えば、複数のターゲット3が写り込むように橋梁2の方向に向け、画角を固定した状態で設置される。撮影装置5は現場に複数設けてもよい。撮影装置5は、橋梁2を車両6が通過することにより橋梁2に変形が生じた場合に、変形の前後におけるターゲット3の様子(格子模様や発光状態)を撮影する。撮影装置5としては、例えば、変位の持続期間が短い場合でも対応できるように高速撮影が可能なもの(フレームレートの高いもの)が選択される。
【0020】
ひずみ解析装置100は、情報処理装置(コンピュータ)を用いて構成される。ひずみ解析装置100は、撮影装置5により撮影された画像を解析することによりモアレ画像を生成し、生成したモアレ画像に基づきひずみ情報を生成する。
【0021】
図3に、ひずみ解析装置100が備える主な機能を示している。同図に示すように、ひずみ解析装置100は、記憶部110、撮影画像取得部120、ターゲット特定部125、発光輝度判定部130、解析対象選択部135、画像解析部140、解析結果提供部150、及び発光輝度閾値設定部180の各機能を備える。
【0022】
記憶部110は、撮影データ111、ターゲット毎発光輝度112、発光輝度閾値113、選択中ターゲット114、変形前後画像115、モアレ画像116、及びひずみ情報117の各情報(データ)を記憶する。
【0023】
撮影画像取得部120は、撮影装置5により取得された所定期間(例えば、車両6等が橋梁2を通過した期間)に撮影された動画データ(以下、「撮影データ」と称する。)を取得し、取得した撮影データを撮影データ111として管理する。尚、本実施形態では、動画データである撮影データ111から変位の発生前後の夫々における撮影画像を取得する場合を例として説明するが、撮影データ111は静止画像として取得された撮影画像の集合であってもよい。
【0024】
ターゲット特定部125は、撮影データ111から取得される撮影画像に写っているターゲット3を特定するとともに、当該撮影画像において特定したターゲット3が写っている範囲を特定する。ターゲット特定部125は、例えば、撮影データ111から取得される撮影画像を解析することにより(例えば、AI(Artificial Intelligence)を用いた画像認識技術により)、撮影画像に写っているターゲット3と当該撮影画像においてターゲット3が写っている範囲を特定する。ターゲット特定部125は、特定した上記範囲の夫々に識別子(以下、「ターゲットID」と称する。)を付与し、ターゲット毎発光輝度112に各範囲に関する情報を格納する。
【0025】
図4Aに、ターゲット毎発光輝度112のデータ構造を示す。同図に示すように、ターゲット毎発光輝度112は、ターゲットID1121、範囲特定情報1122、及び発光輝度1123の各項目を有する一つ以上のレコードを含む。
【0026】
上記項目のうち、ターゲットID1121には、ターゲット特定部125が、撮影画像から特定したターゲット3毎に付与する識別子であるターゲットIDが格納される。範囲特定情報1122には、ターゲット特定部125が特定した当該ターゲットが撮影画像に写っている範囲を示す情報が格納される。同図の例では、範囲特定情報1122に、ターゲット3が写っている範囲における対角の頂点に位置する画素のxy座標を格納している。発光輝度1123には、発光輝度判定部130によって判定される、当該ターゲット3の発光輝度を示す情報が格納される。
【0027】
図3に戻り、発光輝度判定部130は、ターゲット特定部125が特定した、撮影データ111に写っているターゲット3の夫々の発光輝度を判定し、判定した発光輝度を、ターゲット毎発光輝度112の対応するレコードの発光輝度1123に格納する。発光輝度判定部130は、例えば、ターゲット3が写っている範囲の画素の明るさ(輝度)に基づき発光輝度を判定する。尚、ターゲット3の応力発光素子4は、例えば、橋梁2を車両6等が通過した際に発光するが、発光輝度判定部130は、ターゲット3が発光している期間における撮影画像を撮影データ111から取得し、取得した撮影画像に基づき上記期間における最大の発光輝度を取得し、取得した最大の発光輝度を当該ターゲット3の発光輝度として発光輝度1123に格納する。
【0028】
解析対象選択部135は、ターゲット毎発光輝度112の発光輝度1123に基づき、解析対象とするターゲット3を選択する。例えば、解析対象選択部135は、発光輝度が、発光輝度閾値113として予め設定されている閾値(以下、「発光輝度閾値」と称する。)以上であるターゲット3を解析対象のターゲット3として選択する。また、例えば、解析対象選択部135は、ターゲット3の撮影画像やターゲット3の夫々の発光輝度1123をユーザに提示してターゲット3の選択をユーザから受け付け、ユーザから受け付けたターゲット3を解析対象として選択する。解析対象選択部135は、選択したターゲット3のターゲットIDを選択中ターゲット114として管理する。
【0029】
図3に示す画像解析部140は、選択中ターゲット114に管理されているターゲット3の夫々について、撮影データ111から取得される変形(ひずみ)の発生前後における撮影画像を取得し、取得した撮影画像に基づきモアレ画像を生成し、生成したモアレ画像に表れているモアレ縞を位相解析することによりひずみに関する情報を生成してひずみ情報117として管理する。
【0030】
同図に示すように、画像解析部140は、変形前後画像取得部141、ダウンサンプリング部142、輝度補完処理部143、モアレ画像生成部144、及びひずみ情報生成部145の各機能を有する。
【0031】
このうち変形前後画像取得部141は、橋梁2を車両6等が通過することにより生じる変形の前後における選択中ターゲット114の撮影画像を撮影データ111から取得する。例えば、変形前後画像取得部141は、撮影データ111における車両6が写っていない時の静止画像を変形前の撮影画像(以下、「変形前画像」と称する。)として取得する。また、変形前後画像取得部141は、選択中ターゲット114の上を車両6が通過している時の静止画像を変形後の撮影画像(以下、「変形後画像」と称する。)として取得する。
【0032】
変形前後画像取得部141は、選択中ターゲット114の夫々のターゲット3について取得した変形前画像及び変形後画像を変形前後画像115として管理する。尚、変形前後画像115には、ダウンサンプリング部142によってダウンサンプリングされた画像(以下、「ダウンサンプリング画像」と称する。)や、輝度補完処理部143によって輝度補完された画像(以下、「輝度補完画像」と称する。)も管理される。
【0033】
図4Bに、変形前後画像115のデータ構造を示す。同図に示すように、変形前後画像115は、ターゲットID1151、変形前画像1152、及び変形後画像1153の各項目を有する一つ以上のレコードを含む。
【0034】
上記項目のうち、ターゲットID1121には、ターゲットIDが格納される。変形前画像1152には、変形前画像、当該変形前画像のダウンサンプリング画像、及び当該変形前画像の輝度補完画像が格納される。変形後画像1153には、変形後画像、当該変形後画像のダウンサンプリング画像、及び当該変形後画像の輝度補完画像が格納される。
【0035】
図3に戻り、ダウンサンプリング部142は、選択中ターゲット114の夫々のターゲット3の変形前画像及び変形後画像についてダウンサンプリングを行い、ダウンサンプリング後の変形前画像及びダウンサンプリング後の変形後画像を変形前後画像115に管理する。
【0036】
輝度補完処理部143は、ダウンサンプリング後の変形前画像及びダウンサンプリング後の変形後画像について、ダウンサンプリングで間引いた範囲について輝度補完処理を行い、輝度補完処理後の変形前画像及び輝度補完処理後の変形後画像を変形前後画像115に管理する。
【0037】
モアレ画像生成部144は、輝度補完処理後の変形前画像及び輝度補完処理後の変形後画像にグラデーション処理を施すことによりモアレ画像を生成し、輝度補完処理後の変形前画像及び変形後画像のモアレ画像をモアレ画像116として管理する。
【0038】
ひずみ情報生成部145は、選択中ターゲット114のターゲット3の夫々のモアレ画像に表れているモアレ縞について位相解析を行うことにより橋梁2の夫々が貼り付けられている部位についてひずみ情報を生成し、生成したひずみ情報をひずみ情報117として管理する。
【0039】
解析結果提供部150は、画像解析部140により生成されたモアレ画像116やひずみ情報117をユーザインタフェースを介してユーザに提供する。
【0040】
発光輝度閾値設定部180は、ユーザインタフェースを介して前述した閾値の設定をユーザから受け付け、受け付けた閾値を発光輝度閾値113として管理する。
【0041】
図5は、ひずみ解析装置100がひずみ情報117の生成に際して行う処理(以下、「ひずみ解析処理S500」と称する。)を説明するフローチャートである。以下、同図とともにひずみ解析処理S500について説明する。
【0042】
まず、撮影画像取得部120が、撮影装置5によって撮影された撮影データを取得し、取得した撮影データを撮影データ111として管理する(S511)。
【0043】
続いて、ターゲット特定部125が、撮影データ111から取得される撮影画像に写っているターゲット3を特定するとともに、当該撮影画像において特定したターゲット3が写っている範囲を特定する。特定したターゲット3の夫々に付与したターゲットIDと特定したターゲット3の夫々の上記範囲をターゲット毎発光輝度112に格納する(S512)。
【0044】
続いて、発光輝度判定部130が、ターゲット特定部125が特定した、撮影データ111に写っているターゲット3の夫々の発光輝度を判定し、判定した発光輝度を、ターゲット毎発光輝度112の対応するレコードの発光輝度1123に格納する(S513)。
【0045】
続いて、解析対象選択部135が、ターゲット毎発光輝度112の発光輝度1123に基づき、もしくは、ターゲット3の夫々の発光輝度1123をユーザに提示しつつターゲット3の選択をユーザから受け付けることにより、解析対象とするターゲット3を選択し、選択したターゲット3のターゲットIDを選択中ターゲット114に格納する(S514)。
【0046】
続いて、画像解析部140が、選択中ターゲット114に管理されているターゲット3の夫々について、撮影データ111から取得される変形(ひずみ)の発生前後における撮影画像を取得し、取得した撮影画像に基づきダウンサンプリング、輝度補完、及びモアレ画像の生成を行い、選択中ターゲット114のターゲット3の夫々のモアレ画像に表れているモアレ縞について位相解析を行うことにより橋梁2の夫々が貼り付けられている部位についてひずみ情報を生成し、生成したひずみ情報をひずみ情報117として管理する。
(S515)。
【0047】
続いて、解析結果提供部150が、生成したモアレ画像やひずみ情報をユーザインタフェースを介してユーザに提供する(S516)。
【0048】
<情報処理装置の例>
図6は、ひずみ解析装置100の実現に用いる情報処理装置のハードウェア構成の一例である。例示する情報処理装置10は、プロセッサ11、主記憶装置12、補助記憶装置13、入力装置14、出力装置15、及び通信装置16を備える。情報処理装置10の具体例として、例えば、パーソナルコンピュータ、オフィスコンピュータ、各種サーバ装置、汎用機等がある。情報処理装置10は、その全部又は一部が、例えば、クラウドシステムによって提供される仮想サーバのように、仮想化技術を用いて提供される仮想的な情報処理資源を用いて実現されるものであってもよい。ひずみ解析装置100は、通信可能に接続された複数の情報処理装置10を用いて実現してもよい。
【0049】
同図において、プロセッサ11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、AI(Artificial Intelligence)チップ等を用いて構成されている。
【0050】
主記憶装置12は、プログラムやデータを記憶する装置であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリ(NVRAM(Non Volatile RAM))等である。
【0051】
補助記憶装置13は、例えば、SSD(Solid State Drive)、ハードディスクドライブ、光学式記憶装置(CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)等)、ストレージシステム、ICカード、SDカードや光学式記録媒体等の記録媒体の読取/書込装置、クラウドサーバの記憶領域等である。補助記憶装置13には、記録媒体の読取装置や通信装置16を介してプログラムやデータを読み込むことができる。補助記憶装置13に格納(記憶)されているプログラムやデータは主記憶装置12に随時読み込まれる。
【0052】
入力装置14は、外部から各種情報(機器情報等)の入力を受け付けるインタフェースであり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、カードリーダ、ペン入力方式のタブレット、音声入力装置等である。
【0053】
出力装置15は、処理経過や処理結果等の各種情報や各種制御情報、制御指令等を出力するインタフェースである。出力装置15は、例えば、上記の各種情報を可視化する表示装置(LCD(Liquid Crystal Display)、グラフィックカード等)、上記の各種情報を音声化する装置(音声出力装置(スピーカ等))、上記の各種情報を文字化する装置(印字装置等)である。尚、例えば、情報処理装置10が通信装置16を介して他の装置との間で情報の入力や出力を行う構成としてもよい。
【0054】
入力装置14及び出力装置15は、ユーザとの間で情報の受け付けや情報の提示を行うユーザインタフェースを構成する。
【0055】
通信装置16は、通信ネットワークや通信線等の通信基盤を介した他の装置との間での通信(有線通信又は無線通信)を実現する装置であり、例えば、NIC(Network Interface Card)、無線通信モジュール、USBモジュール等を用いて構成される。通信装置16は、例えば、撮影装置5と通信し、撮影装置5から撮影データ111を取得する。
【0056】
情報処理装置10には、例えば、オペレーティングシステム、ファイルシステム、DBMS(DataBase Management System)(リレーショナルデータベース、NoSQL等)、KVS(Key-Value Store)等が導入されていてもよい。
【0057】
ひずみ解析装置100が備える機能は、情報処理装置10のプロセッサ11が、主記憶装置12に格納されているプログラムを読み出して実行することにより、もしくは、ひずみ解析装置100を構成するハードウェア(FPGA、ASIC、AIチップ等)自体の機能によって実現される。ひずみ解析装置100は、前述した各種の情報(データ)を、例えば、データベースのテーブルやファイルシステムが管理するファイルとして記憶する。
【0058】
以上に説明したように、本実施形態のひずみ解析システム1によれば、ターゲット3の夫々に併設した応力発光素子4の発光輝度に基づき解析の対象とするターゲット3を絞り込むので、サンプリングモアレ法による構造物に生じるひずみの解析を効率よく行うことができる。
【0059】
また、発光輝度の高い応力発光素子4が併設されている所定数のターゲット3を優先して解析の対象として選択するので、健全性や寿命に大きな影響を与えるひずみを対象として必要な解析を効率よく行うことができる。
【0060】
また、ターゲット3を、図2に示したように透明な素材からなる格子シート31に応力発光シート32を積層した構成とすることで、ターゲット及び応力発光素子4の構造物への貼り付けや撤去等の作業を効率よく行うことができる。
【0061】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、以上の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。例えば、上記の実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また上記実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。
【0062】
例えば、構造物の高所の部位におけるひずみ情報を取得しようとする場合は、無人飛行体を構造物の高所に貼り付けられたターゲット3を撮影可能な位置まで飛行させ、無人飛行体に搭載した撮影装置5によりターゲット3を撮影した撮影データ111を取得し、取得した撮影データ111について、前述した手順により解析の対象とするターゲット3を選択し、選択したターゲット3を対象として撮影画像を解析することによりひずみ情報117を生成するようにしてもよい。そのようにすることで、構造物の高所におけるひずみの解析を効率よく行うことができる。
【0063】
また、応力発光素子4は、可視光を発光するものに限られず、例えば、赤外線や遠赤外線領域の光を発光するものでもよい。その場合、撮影装置5としては、応力発光素子4の発光光の波長領域に感度を有するものを用いる。
【0064】
また、発光輝度閾値は、例えば、選択されるターゲット3の数が所定範囲に収まるように設定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 ひずみ解析システム
2 橋梁
3 ターゲット
3a 格子模様
31 格子シート(第1の層)
32 応力発光シート(第2の層)
33 粘着シート(第3の層)
4 応力発光素子
5 撮影装置
6 車両
100 ひずみ解析装置
110 記憶部
111 撮影データ
112 ターゲット毎発光輝度
113 発光輝度閾値
114 選択中ターゲット
115 変形前後画像
116 モアレ画像
117 ひずみ情報
120 撮影画像取得部
125 ターゲット特定部
130 発光輝度判定部
135 解析対象選択部
140 画像解析部
141 変形前後画像取得部
142 ダウンサンプリング部
143 輝度補完処理部
144 モアレ画像生成部
145 ひずみ情報生成部
150 解析結果提供部
180 発光輝度閾値設定部
S500 ひずみ解析処理
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6