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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161954
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】シンバルの保持構造及び保持具
(51)【国際特許分類】
   G10D 13/10 20200101AFI20241114BHJP
   G10D 13/063 20200101ALI20241114BHJP
   G10G 5/00 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
G10D13/10 140
G10D13/063
G10G5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077042
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【弁理士】
【氏名又は名称】柏野 由布子
(72)【発明者】
【氏名】内田 悠希
【テーマコード(参考)】
5D182
【Fターム(参考)】
5D182BB11
(57)【要約】
【課題】保持具とシンバルスタンドの支持部との間にシンバルを保持する態様を簡単に再現することができるシンバルの保持構造を提供する。
【解決手段】シンバルの保持構造は、ロッド11と、ロッドに挿通されたシンバルを支持する支持部12と、を有するシンバルスタンド1と、ロッドに取り付けられて支持部との間にシンバルを挟んで保持する保持具2と、を備える。保持具は、ロッドに取り付けられた状態でロッドが配置される開口21を有し、ロッドの長手方向に移動不能に係止される係止部20と、係止部に対してロッドの長手方向に移動可能に取り付けられ、保持具がロッドに取り付けられた状態で係止部と支持部との間に位置する調整部30と、を有する。調整部は、係止部に対して移動する際に摺動する摺動面30aを有する。保持具は、調整部の摺動面を係止部に押し付ける押付部40、をさらに有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンバルに挿通されるロッドと、前記ロッドに設けられて前記ロッドに挿通された前記シンバルを支持する支持部と、を有するシンバルスタンドと、
前記ロッドに取り付けられて前記支持部との間に前記シンバルを挟んで保持する保持具と、を備え、
前記保持具は、
前記保持具が前記ロッドに取り付けられた状態で前記ロッドが配置される開口を有すると共に、前記ロッドの長手方向に移動不能に係止される係止部と、
前記係止部に対して前記ロッドの長手方向に移動可能に取り付けられ、前記保持具が前記ロッドに取り付けられた状態で前記係止部と前記支持部との間に位置する調整部と、を有し、
前記調整部は、前記係止部に面接触して前記係止部に対して移動する際に摺動する摺動面を有し、
前記保持具は、前記調整部の摺動面を前記係止部に押し付けて、前記調整部が前記係止部に対して前記ロッドの長手方向に移動することを抑制する押付部、をさらに有するシンバルの保持構造。
【請求項2】
前記係止部は、前記ロッドの長手方向を軸線とする第一ねじを有し、
前記調整部は、前記第一ねじに噛み合う第二ねじを有し、前記第二ねじが前記第一ねじに噛み合った状態で前記係止部に対して回転させることで前記係止部に対して前記ロッドの長手方向に移動し、
前記摺動面は、前記第一ねじに面接触する前記第二ねじの表面であり、
前記押付部は、前記ロッドの長手方向において前記第二ねじの表面を前記第一ねじに押し付ける請求項1に記載のシンバルの保持構造。
【請求項3】
前記係止部は、
前記開口を有するハウジングと、
前記ハウジング内に配置され、前記ロッドに係止する係止位置と、前記ロッドとの係止が解除される解除位置との間で移動可能とされた移動部材と、
前記移動部材を前記係止位置に向けて付勢する弾性部材と、を有する請求項1又は請求項2に記載のシンバルの保持構造。
【請求項4】
前記移動部材は、前記係止位置と前記解除位置との間で、前記ハウジングに対して前記ロッドの長手方向に交差する方向に移動可能とされると共に、前記係止位置に配置された状態で前記開口の内側に突出し、かつ、前記解除位置に配置された状態で前記開口の外側に退避する係止凸部を有し、
前記係止凸部は、前記ロッドを前記開口から抜く方向に向く面であって、前記係止凸部の突出方向に向かうにしたがって前記開口に前記ロッドを挿入する方向に傾斜する傾斜面を有する請求項3に記載のシンバルの保持構造。
【請求項5】
前記移動部材は、前記係止位置と前記解除位置との間で、前記ハウジングに対して前記ロッドの長手方向に交差する方向に移動可能とされると共に、前記係止位置に配置された状態で前記開口の内側に突出し、かつ、前記解除位置に配置された状態で前記開口の外側に退避する係止凸部を有し、
前記ロッドの先端部は、径方向において前記ロッドの外側から内側に向かうにしたがって前記ロッドの先端側に向けて傾斜する傾斜面を有する請求項3に記載のシンバルの保持構造。
【請求項6】
前記係止部は、
前記開口を有するハウジングと、
前記ハウジング内に配置され、前記ロッドに係止する係止位置と、前記ロッドとの係止が解除された解除位置との間で移動可能とされた移動部材と、
前記移動部材を前記係止位置に向けて付勢する弾性部材と、を有し、
前記移動部材は、前記係止位置と前記解除位置との間で、前記ハウジングに対して前記ロッドの長手方向に交差する方向に移動可能とされると共に、前記係止位置に配置された状態で前記開口の内側に突出し、かつ、前記解除位置に配置された状態で前記開口の外側に退避する係止凸部を有し、
前記ロッドは、当該ロッドの側面から窪み、前記係止凸部が挿入される係止凹部を有する請求項1又は請求項2に記載のシンバルの保持構造。
【請求項7】
前記係止凹部は、前記ロッドの側面の周方向の一部に形成されている請求項6に記載のシンバルの保持構造。
【請求項8】
シンバルに挿通されるロッドと、前記ロッドに設けられて前記ロッドに挿通された前記シンバルを支持する支持部と、を有するシンバルスタンドの前記ロッドに取り付けられて前記支持部との間に前記シンバルを挟んで保持する保持具であって、
前記保持具が前記ロッドに取り付けられた状態で前記ロッドが配置される開口を有すると共に、前記ロッドの長手方向に移動不能に係止される係止部と、
前記係止部に対して前記ロッドの長手方向に移動可能に取り付けられ、前記保持具が前記ロッドに取り付けられた状態で前記係止部と前記支持部との間に位置する調整部と、を有し、
前記調整部は、前記係止部に面接触して前記係止部に対して移動する際に摺動する摺動面を有し、
前記調整部の摺動面を前記係止部に押し付けて、前記調整部が前記係止部に対して前記ロッドの長手方向に移動することを抑制する押付部、をさらに有する保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シンバルの保持構造及び保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シンバルをスタンド(シンバルスタンド)に簡単に保持するためのクイックリリースクランプ(保持具)が開示されている。クイックリリースクランプは、スタンドを通す開口部と、開口部にスタンドを通した状態で閉位置と開位置との間で開口部の大きさを変えるクランプジョーと、クランプジョーの位置を変えるための操作子と、これら開口部、クランプジョー及び操作子を内部に配置したハウジングと、操作子とハウジングとの間に設けられた弾性部材と、を有する。
【0003】
このクイックリリースクランプにおいては、操作子が弾性部材の力によって押されて所定位置に保持されることで、操作子がクランプジョーを閉位置に保持する。また、操作子が弾性部材の力に抗うように操作されることで、クランプジョーを閉位置から開位置に移動させる。クランプジョーが閉位置に保持されることで、クイックリリースクランプがスタンドに取り付けられる。また、クランプジョーが開位置に移動することで、スタンドに対するクイックリリースクランプの取付状態が解除される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第11170745号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のクイックリリースクランプとスタンドの支持部との間にシンバルを挟む場合には、クイックリリースクランプと支持部との間隔が変化することで、シンバルを保持する態様が変化する。例えば、クイックリリースクランプと支持部との間隔に応じて、これらの間にシンバルを挟む力の大きさが変化する。これにより、シンバルを打撃した際のシンバルの揺れの態様が変化する。
【0006】
しかしながら、特許文献1のクイックリリースクランプでは、クランプジョーの雌ねじがスタンドの雄ねじに噛み合うように構成されている。このため、シンバルを保持する態様を再現するためには、クイックリリースクランプをスタンドに取り付ける度に、クイックリリースクランプと支持部との間隔を調整する必要がある。このため、シンバルを保持する態様を再現することが難しい。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、保持具とシンバルスタンドの支持部との間にシンバルを保持する態様を簡単に再現することが可能なシンバルの保持構造及び保持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、シンバルに挿通されるロッドと、前記ロッドに設けられて前記ロッドに挿通された前記シンバルを支持する支持部と、を有するシンバルスタンドと、前記ロッドに取り付けられて前記支持部との間に前記シンバルを挟んで保持する保持具と、を備え、前記保持具は、前記保持具が前記ロッドに取り付けられた状態で前記ロッドが配置される開口を有すると共に、前記ロッドの長手方向に移動不能に係止される係止部と、前記係止部に対して前記ロッドの長手方向に移動可能に取り付けられ、前記保持具が前記ロッドに取り付けられた状態で前記係止部と前記支持部との間に位置する調整部と、を有し、前記調整部は、前記係止部に面接触して前記係止部に対して移動する際に摺動する摺動面を有し、前記保持具は、前記調整部の摺動面を前記係止部に押し付けて、前記調整部が前記係止部に対して前記ロッドの長手方向に移動することを抑制する押付部、をさらに有するシンバルの保持構造である。
【0009】
本発明の他の態様は、シンバルに挿通されるロッドと、前記ロッドに設けられて前記ロッドに挿通された前記シンバルを支持する支持部と、を有するシンバルスタンドの前記ロッドに取り付けられて前記支持部との間に前記シンバルを挟んで保持する保持具であって、前記保持具が前記ロッドに取り付けられた状態で前記ロッドが配置される開口を有すると共に、前記ロッドの長手方向に移動不能に係止される係止部と、前記係止部に対して前記ロッドの長手方向に移動可能に取り付けられ、前記保持具が前記ロッドに取り付けられた状態で前記係止部と前記支持部との間に位置する調整部と、を有し、前記調整部は、前記係止部に面接触して前記係止部に対して移動する際に摺動する摺動面を有し、前記調整部の摺動面を前記係止部に押し付けて、前記調整部が前記係止部に対して前記ロッドの長手方向に移動することを抑制する押付部、をさらに有する保持具である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、保持具とシンバルスタンドの支持部との間にシンバルを保持する態様を簡単に再現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るシンバルの保持構造を示す斜視図である。
図2図1のシンバルの保持構造を示す断面図である。
図3図1図2のシンバルの保持構造において、保持具をロッドから取り外し、かつ、分解した状態を示す斜視図である。
図4図1図2のシンバルの保持構造において、ロッド、及び、ロッドに取り付ける前の状態の保持具を示す拡大断面図である。
図5図1図2のシンバルの保持構造において、保持具をロッドに取り付ける過程を示す拡大断面図である。
図6図1図2のシンバルの保持構造において、保持具をロッドに取り付けた状態を示す拡大断面図である。
図7図6に示す状態において、保持具の移動部材を係止位置から解除位置に移動した後の状態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1図7を参照して本発明の一実施形態について説明する。
図1図2に示すように、シンバルの保持構造は、シンバルスタンド1と、保持具2と、を備える。
【0013】
シンバルスタンド1は、ロッド11と、支持部12と、を有する。ロッド11には、シンバルCYが挿通される。支持部12は、ロッド11に設けられ、ロッド11に挿通されたシンバルCYを支持する。
【0014】
図3図4に示すように、ロッド11は、係止凹部13を有する。係止凹部13は、支持部12よりも先端側に位置するロッド11の先端側部位において、ロッド11の側面から窪む。係止凹部13は、ロッド11の側面の周方向の一部に形成されている。また、ロッド11は、係止凹部13を複数(図示例では2つ)有し、複数の係止凹部13は、ロッド11の周方向に間隔をあけて並んでいる。なお、係止凹部13は、例えばロッド11の側面の周方向全体に形成されてもよい。ロッド11の係止凹部13は、後述する保持具2をロッド11に係止するために設けられている。
【0015】
ロッド11の先端部は、傾斜面11aを有する。ロッド11の傾斜面11aは、径方向においてロッド11の外側から内側に向かうにしたがってロッド11の先端側に向けて傾斜する。すなわち、ロッド11の先端部は、先細り状に形成されている。ロッド11の傾斜面11aは、前述した係止凹部13よりもロッド11の先端側に位置する。
【0016】
ロッド11の先端部は、傾斜面11aを複数(図示例では2つ)有する。複数の傾斜面11aは、ロッド11の周方向に間隔をあけて並んでいる。図示例におけるロッド11の傾斜面11aの数は、前述した係止凹部13の数に対応している。また、ロッド11の周方向における傾斜面11aの位置は、係止凹部13の位置に対応している。なお、ロッド11の傾斜面11aは、例えばロッド11の周方向全体に形成されてもよい。
【0017】
図1図2に示すように、保持具2は、ロッド11に取り付けられて支持部12との間にシンバルCYを挟んで保持する。図1図2において、支持部12とシンバルCYとの間、及び、シンバルCYと保持具2との間には、それぞれフェルト製の緩衝部材3が設けられている。緩衝部材3により、シンバルCYを支持部12や保持具2に対して保護したり、シンバルCYが支持部12や保持具2に接触することで不要な音が発生したりすることを抑制又は防止できる。
【0018】
図3図4に示すように、保持具2は、係止部20と、調整部30と、押付部40と、を有する。
【0019】
図4図6に示すように、係止部20は、保持具2がロッド11に取り付けられた状態でロッド11が配置される開口21を有する。係止部20の開口21は、ロッド11の長手方向(Z軸方向)に延びている。また、係止部20は、保持具2がロッド11に取り付けられた状態でロッド11の長手方向に移動不能に係止される(図6参照)。図示例において、係止部20の開口21は、係止部20を貫通しているが、例えば貫通しなくてもよい。
【0020】
図3図4に示すように、係止部20は、ハウジング22と、移動部材23と、弾性部材24と、を有する。
【0021】
ハウジング22は、ロッド11が配置される開口21を含む。ハウジング22は、移動部材23及び弾性部材24が収容される収容部位25、及び、後述する調整部30が取り付けられる取付部位26、を有する。収容部位25と取付部位26とは、ロッド11の長手方向に対応する開口21の延長方向(Z軸方向)に並ぶ。ハウジング22の開口21は、収容部位25と取付部位26とにわたって設けられる。
【0022】
収容部位25は、移動部材23及び弾性部材24を収容可能な内部空間251を有する。内部空間251は、ハウジング22の開口21に連なる。また、収容部位25は、内部空間251に配置された移動部材23の一部をハウジング22の外側に臨ませるための露出用開口252を有する。露出用開口252は、開口21の延長方向(Z軸方向)に直交する直交方向の一方側(X軸正方向側)に向いている。
【0023】
取付部位26には、調整部30がロッドの長手方向(Z軸方向)に移動可能に取り付けられる。取付部位26は、調整部30に面接触し、調整部30が取付部位26に対して移動する際に摺動する摺動面26aを有する。本実施形態の取付部位26は、調整部30がロッド11の長手方向を軸線とする第一ねじ261を有する。この第一ねじ261の表面が、前述した取付部位26の摺動面26aである。
【0024】
本実施形態の取付部位26は、収容部位25からロッド11の長手方向(Z軸負方向)に延びる筒状に形成されている。取付部位26は、ロッド11の長手方向から見て、収容部位25よりも小さい。取付部位26の第一ねじ261は、筒状とされた取付部位26の外周面に設けられる。すなわち、第一ねじ261は雄ねじである。
【0025】
移動部材23は、ハウジング22の内部空間251(ハウジング22内)に配置される。移動部材23は、ハウジング22内において係止位置P1と解除位置P2(図7参照)との間で移動可能とされている。係止位置P1は、移動部材23がロッド11に係止する位置である。解除位置P2は、ロッド11との係止が解除される位置である。
【0026】
本実施形態において、移動部材23は、ハウジング22内において係止位置P1と解除位置P2との間で、ハウジング22に対して直交方向(X軸方向)に移動可能とされている。移動部材23を解除位置P2から係止位置P1に向けて移動させる方向は、直交方向の一方側(X軸正方向側)であり、移動部材23を係止位置P1から解除位置P2に向けて移動させる方向は、直交方向の他方側(X軸負方向側)である。なお、移動部材23を解除位置P2から係止位置P1に向けて移動させる方向は、例えば直交方向の他方側(X軸負方向側)であってもよい。
【0027】
移動部材23の一部は、ハウジング22の露出用開口252から外側に臨むように配置される。これにより、保持具2の利用者が移動部材23を操作することができる。例えば、保持具2の利用者が手指によって移動部材23をハウジング22内に向けて押すことで、移動部材23を直交方向の他方側に移動させることができる、すなわち、移動部材23を係止位置P1から解除位置P2に向けて移動させることができる。
【0028】
ハウジング22に取り付けられた抜け止めピン27は、移動部材23が係止位置P1からさらに直交方向の一方側に移動することを規制する。これにより、移動部材23が、係止位置P1からさらに直交方向の一方側に移動して露出用開口252からハウジング22の外側に抜け落ちることを防止できる。
【0029】
移動部材23は、係止凸部231を有する。図4に示すように、係止凸部231は、移動部材23が係止位置P1に配置された状態で開口21の内側に突出する。また、図7に示すように、係止凸部231は、移動部材23が解除位置P2に配置された状態で開口21の外側に退避する。図6に示すように、係止凸部231は、移動部材23が係止位置P1に配置された状態で、係止部20の開口21に挿入されたロッド11の係止凹部13に挿入される。これにより、係止部20が、ロッド11に対してその長手方向(Z軸方向)に移動不能に係止される。
【0030】
図4に示すように、係止凸部231は、傾斜面231aを有する。係止凸部231の傾斜面231aは、ロッド11を係止部20の開口21から抜く方向(Z軸負方向)に向く面である。係止凸部231の傾斜面231aは、係止凸部231の突出方向(X軸正方向側)に向かうにしたがって係止部20の開口21にロッド11を挿入する方向(Z軸正方向)に傾斜する。
【0031】
弾性部材24は、移動部材23を係止位置P1に向けて付勢する。ハウジング22の内部空間251において、移動部材23に対して直交方向の他方側(X軸負方向側)に隣り合わせて配置され、ハウジング22の内面と移動部材23との間に挟まれる。これにより、弾性部材24は、移動部材23を直交方向の一方側(X軸正方向側)に付勢する。図示例の弾性部材24は、コイルばねであるが、例えばゴムなどであってもよい。
【0032】
調整部30は、係止部20に対して着脱可能に取り付けられる。係止部20に取り付けられた調整部30は、係止部20に対してロッド11の長手方向(Z軸方向)に移動可能である。調整部30は、係止部20の摺動面26aに面接触して係止部20に対して移動する際に摺動する摺動面30aを有する。本実施形態の調整部30は、係止部20の第一ねじ261に噛み合う第二ねじ31を有する。第一ねじ261に面接触する第二ねじ31の表面が、調整部30の摺動面30aである。第二ねじ31が第一ねじ261に噛み合った状態で調整部30を係止部20に対して回転させることにより、調整部30が係止部20に対してロッド11の長手方向に移動する。
本実施形態の調整部30は、筒状に形成されている。調整部30の第二ねじ31は、筒状とされた調整部30の内周面に設けられる。すなわち、第二ねじ31は、雌ねじである。
【0033】
本実施形態の調整部30は、後述する押付部40が収容される収容凹部32を有する。収容凹部32は、調整部30を係止部20に取り付けた状態で、ロッド11の長手方向において係止部20の収容部位25に対向する調整部30の対向面30bに開口する。図3図4に示すように、収容凹部32は、筒状とされた調整部30の周方向全体にわたって形成されている。すなわち、収容凹部32は調整部30をその軸方向(Z軸方向)から見てリング状に形成されている。
調整部30は、係止部20に対してロッド11を係止部20の開口21から抜く方向(Z軸負方向)に位置する。このため、図1図2に示すように、係止部20に取り付けられた調整部30は、保持具2がロッド11に取り付けられた状態で、係止部20とシンバルスタンド1の支持部12との間に位置する。
【0034】
図4に示すように、押付部40は、調整部30の摺動面30aを係止部20に押し付けて、調整部30が係止部20に対してロッド11の長手方向に移動することを抑制する。本実施形態において、押付部40は、ロッド11の長手方向において第二ねじ31の表面(調整部30の摺動面30a)を第一ねじ261の表面(係止部20の摺動面26a)に押し付ける。押付部40は、弾性体であり、ロッド11の長手方向において係止部20と調整部30との間に挟まれる。これにより、押付部40は、その弾性力によって第二ねじ31の表面を第一ねじ261に押し付ける。
【0035】
図3図4に示すように、本実施形態の押付部40は、コイルばねである。押付部40は、コイルばねの軸線が係止部20の第一ねじ261及び調整部30の第二ねじ31の軸線と概ね一致するように配置される。これにより、押付部40が、第一、第二ねじ261,31の周方向において第二ねじ31の表面を第一ねじ261に対して均等に押し付けることができる。
【0036】
コイルバネである押付部40は、リング状に形成された調整部30の収容凹部32に収容される。そして、調整部30が係止部20に取り付けられた状態では、押付部40が係止部20の収容部位25と調整部30の収容凹部32の底面との間に挟まれる。この状態では、押付部40がほとんど露出しないため、押付部40の保護を図ることができる。
なお、押付部40は、コイルばねに限らず、例えばゴムなどであってもよい。
【0037】
次に、本実施形態のシンバルの保持構造に備える保持具2の使用方法の一例について説明する。
図4に示すように、保持具2がロッド11に取り付けられていない状態では、係止部20の移動部材23が弾性部材24の付勢力によって係止位置P1に位置する。この状態では、移動部材23の係止凸部231がハウジング22の開口21の内側に突出する。
【0038】
保持具2をロッド11に取り付ける際には、図5に示すように、調整部30が係止部20(特に収容部位25)とシンバルスタンド1の支持部12との間に位置するように、ロッド11をハウジング22の開口21に挿入する。図5における矢印D1は、保持具2をロッド11に取り付ける方向を示している。この際、ロッド11の先端部の傾斜面11aと、ハウジング22の開口21の内側に突出する係止凸部231の傾斜面231aとが互いに押し付けられる。このため、弾性部材24の付勢力に抗って移動部材23が係止位置P1から解除位置P2(図7参照)に向けて移動する。すなわち、係止凸部231が開口21の外側に退避する。
【0039】
これにより、図6に示すように、ロッド11の係止凹部13が直交方向(X軸方向)において移動部材23の係止凸部231と隣り合う位置まで、ロッド11がハウジング22の開口21に入り込む。そして、移動部材23が弾性部材24の付勢力によって係止位置P1に戻ることで、係止凸部231がロッド11の係止凹部13に挿入される。
以上により、シンバルスタンド1に対する保持具2の取り付けが完了する。
【0040】
図1図2図6に示すように、保持具2をロッド11に取り付けた状態においては、保持具2の調整部30が、係止部20とシンバルスタンド1の支持部12との間に位置する。このため、調整部30を係止部20に対してロッド11の長手方向に移動させることで、保持具2とシンバルスタンド1の支持部12との間隔を調整することができる。これにより、保持具2と支持部12との間にシンバルCYを保持する態様(例えばシンバルCYを挟む力の大きさ)を調整することができる。
【0041】
保持具2をロッド11から取り外す際には、図7に示すように、保持具2の移動部材23を弾性部材24の付勢力に抗って係止位置P1から解除位置P2に移動させればよい。図7における矢印D2は、移動部材23を解除位置P2に向けて移動させる方向を示している。ここで、移動部材23の一部はハウジング22の露出用開口252から外側に臨んでいる。また、移動部材23を露出用開口252からハウジング22の内側に向けて動かす方向が、移動部材23を係止位置P1から解除位置P2に移動させる方向になっている。これにより、保持具2の利用者が移動部材23を手指でハウジング22の内側に押し込むだけで、移動部材23を簡単に解除位置P2に移動させることができる。移動部材23を解除位置P2に移動させた状態では、保持具2とロッド11との係止状態が解除される。このため、ロッド11をハウジング22の開口21から抜いて、保持具2をロッド11から取り外すことができる。図7における矢印D3は、保持具2をロッド11から取り外す方向を示している。
以上のように、保持具2は、ロッド11に対して回転させる必要が無いため、ロッド11に対して短い時間で簡単に着脱することができる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態のシンバルの保持構造及び保持具2によれば、保持具2は、調整部30の摺動面30aを係止部20に押し付けて、調整部30が係止部20に対してロッド11の長手方向に移動することを抑制する押付部40を有する。このため、調整部30を係止部20に対して移動させようとする際には、調整部30の摺動面30aと係止部20との間に摩擦力が発生して、調整部30が係止部20に対して移動することを抑制できる。これにより、係止部20と調整部30との位置関係が不意に変化することを抑制できる。すなわち、ロッド11に取り付けられた保持具2と支持部12との間隔が不意に変化することを抑制して、保持具2と支持部12との間にシンバルCYを保持する態様が不意に変化することを抑制できる。
【0043】
係止部20と調整部30との位置関係が保持具2の押付部40によって好適に維持されることで、保持具2をロッド11から一度取り外しても、再度ロッド11に取り付けた際に、保持具2と支持部12との間隔を簡単に再現することができる。すなわち、保持具2と支持部12との間にシンバルCYを保持する態様を簡単に再現することができる。
【0044】
また、本実施形態のシンバルの保持構造及び保持具2では、調整部30の第二ねじ31が係止部20の第一ねじ261に噛み合った状態で調整部30を係止部20に対して回転させることで、調整部30が係止部20に対してロッド11の長手方向に移動する。さらに、押付部40は、ロッド11の長手方向において第二ねじ31の表面を係止部20の第一ねじ261の表面に押し付ける。これにより、調整部30の第二ねじ31を係止部20の第一ねじ261に対して回転させようとする際には、第一、第二ねじ261,31の間に大きな摩擦力が生じる。当該摩擦力により、係止部20と調整部30との位置関係が不意に変化することを効果的に抑制することができる。
また、調整部30を係止部20に対してロッド11の長手方向に移動させる機構が第一、第二ねじ261,31によって構成されることで、係止部20と調整部30との相対的な位置関係をより精密に調整することが可能となる。
【0045】
また、本実施形態のシンバルの保持構造及び保持具2では、弾性部材24によって移動部材23を係止位置P1に保持することができる。これにより、ロッド11に対する保持具2の係止状態が不意に解除されることを効果的に抑制できる。
また、弾性部材24の付勢力に抗って移動部材23を係止位置P1から解除位置P2に移動させるだけで、ロッド11に対する保持具2の係止状態を簡単に解除することができる。すなわち、保持具2をロッド11に対して簡単に取り付けたり取り外したりすることができる。
【0046】
また、本実施形態のシンバルの保持構造及び保持具2では、移動部材23の係止凸部231が、ロッド11をハウジング22の開口21から抜く方向に向く面であって、係止凸部231の突出方向に向かうにしたがってハウジング22の開口21にロッド11を挿入する方向に傾斜する傾斜面231aを有する。これにより、係止部20の開口21にロッド11を挿入するだけで、ロッド11の先端が係止位置P1に位置する係止凸部231の傾斜面231aを押して、弾性部材24の付勢力に抗って移動部材23を係止位置P1から解除位置P2に移動させることができる。すなわち、ロッド11を簡単に係止部20の開口21に通して配置することができる。
【0047】
また、本実施形態のシンバルの保持構造及び保持具2では、ロッド11の先端部が、径方向においてロッド11の外側から内側に向かうにしたがってロッド11の先端側に向けて傾斜する傾斜面11aを有する。これにより、係止部20の開口21にシンバルスタンド1のロッド11を挿入するだけで、ロッド11の傾斜面11aが係止位置P1に位置する係止凸部231を押して、弾性部材24の付勢力に抗って移動部材23を係止位置P1から解除位置P2に移動させることができる。すなわち、ロッド11を簡単に係止部20の開口21に通すことができる。
【0048】
また、本実施形態のシンバルの保持構造では、ロッド11が、その側面から窪み、移動部材23の係止凸部231が挿入される係止凹部13を有する。これにより、ロッド11を係止部20の開口21に挿入した上で、移動部材23を係止位置P1に配置して係止凸部231をロッド11の係止凹部13に挿入することで、保持具2をロッド11に係止させることができる。また、移動部材23は弾性部材24によって係止位置P1に保持されるため、移動部材23の係止凸部231がロッド11の係止凹部13から不意に抜け出ることを効果的に抑制できる。これにより、従来のように、保持具2をねじによってロッド11に取り付ける場合と比較して、保持具2がロッド11から外れることを抑制できる。
また、弾性部材24の付勢力に抗って移動部材23を係止位置P1から解除位置P2に移動させるだけで、簡単に移動部材23の係止凸部231をロッド11の係止凹部13から抜くことができる。すなわち、保持具2をロッド11に対して簡単に取り付けたり取り外したりすることができる。
【0049】
また、本実施形態のシンバルの保持構造では、ロッド11の係止凹部13が、ロッド11の側面の周方向の一部に形成されている。このため、係止部20の係止凸部231がロッド11の係止凹部13に挿入された状態では、係止部20がロッド11に対してその周方向に回転することを防止できる。これにより、保持具2をロッド11に取り付けた状態で、保持具2とシンバルスタンド1の支持部12との間隔を簡単に調整することができる。以下、この点について説明する。
【0050】
保持具2をロッド11に取り付けた状態で保持具2と支持部12との間隔を調整するためには、ロッド11の長手方向を中心軸として保持具2の調整部30を係止部20に対して回転させる。ここで、前述したように、保持具2をロッド11に取り付けた状態ではロッド11に対する係止部20の回転が防止される。このため、保持具2の調整部30だけを手で摘まんで回転させるだけで、簡単に調整部30を係止部20に対して回転させることができ、その結果として、調整部30を係止部20に対してロッド11の長手方向に移動させることができる。すなわち、保持具2と支持部12との間隔を片手で簡単に調整することができる。
【0051】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0052】
本発明においては、例えば係止部20の第一ねじ261が雌ねじであり、第一ねじ261に噛み合う調整部30の第二ねじ31が雄ねじであってもよい。
【0053】
本発明において、調整部30は、例えば係止部20に対して単純にロッド11の長手方向に移動するだけでもよい。
【0054】
本発明において、移動部材23は、少なくともハウジング22に対してロッド11の長手方向に交差する方向に移動可能であればよい。すなわち、移動部材23は、例えばハウジング22に対してロッド11の長手方向に傾斜する方向に移動可能とされてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…シンバルスタンド、2…保持具、11…ロッド、11a…傾斜面、12…支持部、13…係止凹部、20…係止部、21…開口、22…ハウジング、23…移動部材、24…弾性部材、30…調整部、30a…摺動面、31…第二ねじ、40…押付部、231…係止凸部、231a…傾斜面、261…第一ねじ、CY…シンバル、P1…係止位置、P2…解除位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7