(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161955
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】燃焼器、及びガスタービン
(51)【国際特許分類】
F02C 7/24 20060101AFI20241114BHJP
F23R 3/42 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
F02C7/24 C
F23R3/42 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077044
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】木下 泰希
(72)【発明者】
【氏名】徳山 剣太郎
(72)【発明者】
【氏名】西海 高史
(72)【発明者】
【氏名】橋本 健一
(72)【発明者】
【氏名】小野 正樹
(57)【要約】
【課題】音響減衰器の製造コスト及び大型化を抑えつつも、音響減衰器の耐久性を高める。
【解決手段】音響減衰器は、内周側が音源空間を成す筒を形成する板の一部と、前記板の一部と共同して前記筒の外周側に音響空間を形成する音響カバーと、を有する。前記筒は、前記音響空間から前記音源空間に貫通する音響孔を有する。前記音響カバーは、前記音響孔から離れた位置で、前記音響空間を閉じる閉端を有する。前記音響空間は、前記音響空間中で前記音響孔の側の縁を含む孔側領域と、前記閉端を含む奥側領域と、を有する。前記音響カバーは、前記奥側領域を形成する部分の強度が、前記孔側領域を形成する部分の強度よりも高い。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼器軸線周りに筒状を成し、内周側が音源空間を成す筒と、
前記筒の燃焼器軸線に対する径方向内側に配置され、燃料を噴射可能なノズルと、
前記筒を形成する板の一部と、前記板の一部と共同して前記筒の外周側に音響空間を形成する音響カバーと、を有する音響減衰器と、
を備え、
前記筒は、前記音響空間から前記音源空間に貫通する音響孔を有し、
前記音響カバーは、前記音響孔から離れた位置で、前記音響空間を閉じる閉端を有し、
前記音響空間は、前記音響空間中で前記音響孔の側の縁を含む孔側領域と、前記閉端を含む奥側領域と、を有し、
前記音響カバーは、前記奥側領域を形成する部分の強度が、前記孔側領域を形成する部分の強度よりも高い、
燃焼器。
【請求項2】
請求項1に記載の燃焼器において、
前記音響空間中で前記音響孔の側の前記縁から前記閉端までの、前記音響空間に沿った距離が空間長を成し、前記奥側領域は、前記音響孔の側の前記縁から前記空間長の半分より前記閉端の側の領域である、
燃焼器。
【請求項3】
請求項1に記載の燃焼器において、
前記筒は、前記燃焼器軸線周りに筒状を成し、前記ノズルから噴射された燃料が内周側で燃焼可能な燃焼筒である、
燃焼器。
【請求項4】
請求項1に記載の燃焼器において、
前記燃焼器軸線周りに筒状を成し、前記ノズルの外周側を覆う内筒と、
前記燃焼器軸線周りに筒状を成し、前記内筒の外周側を覆う外筒と、
前記燃焼器軸線周りに筒状を成し、前記内筒に接続され、前記ノズルから噴射された燃料が内周側で燃焼可能な燃焼筒と、
を有し、
前記筒は、前記外筒である、
燃焼器。
【請求項5】
請求項1に記載の燃焼器において、
前記音響カバーは、前記奥側領域と前記孔側領域とを含む全領域にわたって、前記音響空間を画定する枠板を有し、
前記枠板中で前記奥側領域を形成する部分である奥側枠板部の板厚は、前記枠板中で前記孔側領域を形成する部分である孔側枠板部の板厚よりも厚い、
燃焼器。
【請求項6】
請求項1に記載の燃焼器において、
前記音響カバーは、前記奥側領域と前記孔側領域とを含む全領域にわたって、前記音響空間を画定する枠板を有し、
前記枠板中で前記奥側領域を形成する部分である奥側枠板部を形成する材料は、前記枠板中で前記孔側領域を形成する部分である孔側枠板部を形成する材料よりも、疲労強度が高い、
燃焼器。
【請求項7】
請求項1に記載の燃焼器において、
前記音響カバーは、前記奥側領域と前記孔側領域とを含む全領域にわたって、前記音響空間を画定する枠板と、前記枠板中で前記奥側領域を形成する部分である奥側枠板部に固定されている補強リブと、を有する、
燃焼器。
【請求項8】
請求項1に記載の燃焼器において、
前記音響カバー、前記奥側領域と前記孔側領域とを含む全領域にわたって、前記音響空間を画定する枠板と、前記枠板中で前記奥側領域を形成する部分である奥側枠板部に固定されている補強板と、を有する、
燃焼器。
【請求項9】
請求項8に記載の燃焼器において、
前記補強板は、前記枠板の表面のうち、前記音響空間の縁を画定する内面に固定されている、
燃焼器。
【請求項10】
請求項1に記載の燃焼器において、
前記音響減衰器は、前記音響カバーと前記筒とを接合している第一溶接部を含む複数の溶接部を有し、前記音響減衰器の前記複数の溶接部中で、前記奥側領域を形成する部分の溶接脚長が、前記孔側領域を形成する部分の溶接脚長より長い、
燃焼器。
【請求項11】
請求項1に記載の燃焼器において、
前記音響カバーは、前記奥側領域と前記孔側領域とを含む全領域にわたって、前記音響空間を画定する枠板を有し、
以下のaからeのうちの少なくとも二つの組み合わせで、前記音響カバーにおける前記奥側領域を形成する部分の強度が、前記音響カバーにおける孔側領域を形成する部分の強度よりも高くなっている、
a.前記枠板中で前記奥側領域を形成する部分である奥側枠板部の少なくとも一部の板厚は、前記枠板中で前記孔側領域を形成する部分である孔側枠板部の板厚よりも厚い、
b.前記枠板中で前記奥側領域を形成する部分である奥側枠板部の少なくとも一部を形成する材料は、前記枠板中で前記孔側領域を形成する部分である孔側枠板部を形成する材料よりも、高サイクル疲労強度が高い、
c.前記音響カバーは、前記枠板中で前記奥側領域を形成する部分である奥側枠板部の少なくとも一部に固定されている補強リブを有する、
d.前記音響カバーは、前記枠板中で前記奥側領域を形成する部分である奥側枠板部の少なくとも一部に固定されている補強板を有する、
e.前記音響減衰器は、前記音響カバーと前記筒とを接合している第一溶接部を含む複数の溶接部を有し、前記音響減衰器の前記複数の溶接部中で、前記奥側領域を形成する少なくとも一部の溶接脚長が、前記孔側領域を形成する部分の溶接脚長より長い、
燃焼器。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の燃焼器と、
空気を圧縮して圧縮空気を生成可能な圧縮機と、
前記燃焼器で生成された前記燃焼ガスにより駆動可能なタービンと、
中間ケーシングと、
を備え、
前記圧縮機は、ロータ軸線を中心として回転する圧縮機ロータと、前記圧縮機ロータを覆う圧縮機ケーシングと、有し、
前記タービンは、前記ロータ軸線を中心として、前記圧縮機ロータと一体回転するタービンロータと、前記タービンロータを覆うタービンケーシングと、を有し、
前記中間ケーシングは、前記ロータ軸線が延びるロータ軸線方向で、前記圧縮機ケーシングと前記タービンケーシングとの間に配置され、前記圧縮機ケーシングと前記タービンケーシングとを接続し、前記圧縮機から吐出された圧縮空気が流入可能であり、
前記燃焼器は、前記中間ケーシング内の圧縮空気が流入可能に前記中間ケーシングに設けられている、
ガスタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃焼器、この燃焼器を備えるガスタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは、空気を圧縮して圧縮空気を生成可能な圧縮機と、圧縮空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成可能な燃焼器と、燃焼ガスで駆動可能なタービンと、を備える。
【0003】
燃焼器は、筒状を成し、内周側が燃焼空間を形成する筒と、燃焼空間内に燃料及び圧縮空気を噴射可能なバーナと、を有する。
【0004】
燃焼器では、燃焼空間内で燃料を燃焼させている際に、燃焼振動を発生することがある。このため、以下の特許文献1に記載の燃焼器は、前述の筒及びバーナの他に、音響減衰器としての音響デバイスを有する。この音響デバイスは、複数の領域を有し、複数の領域相互間での径方向の厚さが異なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
音響減衰器は、燃焼振動で疲労するため、高い耐久性が要求される。一方で、音響減衰器の製造コストの上昇や、音響減衰器の大型化は望まれない。
【0007】
そこで、本開示は、音響減衰器の製造コスト及び大型化を抑えつつも、音響減衰器の耐久性を高めることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するための一態様としての燃焼器は、
燃焼器軸線周りに筒状を成し、内周側が音源空間を成す筒と、前記筒の燃焼器軸線に対する径方向内側に配置され、燃料を噴射可能なノズルと、前記筒を形成する板の一部と、前記板の一部と共同して前記筒の外周側に音響空間を形成する音響カバーと、を有する音響減衰器と、を備える。前記筒は、前記音響空間から前記音源空間に貫通する音響孔を有する。前記音響カバーは、前記音響孔から離れた位置で、前記音響空間を閉じる閉端を有する。前記音響空間は、前記音響空間中で前記音響孔の側の縁を含む孔側領域と、前記閉端を含む奥側領域と、を有する。前記音響カバーは、前記奥側領域を形成する部分の強度が、前記孔側領域を形成する部分の強度よりも高い。
【0009】
音響空間内に流入した気体分子の振幅は、音響空間と音響孔との境の位置で最大である。この気体分子の振幅は、この位置から遠ざかるにつれて次第に小さくなり、閉端の位置で最小になる。一方、音響空間内の圧力の変動幅は、音響空間と音響孔との境の位置で最小である。この圧力の変動幅は、この位置から遠ざかるにつれて次第に大きくなり、閉端の位置で最大になる。圧力変動の周期は、数十~数百Hzの周期である。このため、筒の内周側で燃料を燃焼させていると、音響カバーは、次第に高サイクル疲労する。特に、音響空間中の閉端側の部分は、音響空間中の音響孔側の部分よりも、圧力変動幅が大きいため、音響カバー中で閉端側の部分は、音響空間中の音響孔側の部分よりも、高サイクル疲労が進行し易い。
【0010】
そこで、本態様における音響カバーでは、奥側領域を形成する部分の強度が、孔側領域を形成する部分の強度よりも高い。この結果、本態様では、音響減衰器の耐久性を高めることができる。しかも、本態様の音響カバーでは、奥側領域を形成する部分の強度のみが高いので、音響カバー全体の強度を高くするよりも、製造コストを抑えることができる上に、大型化を抑えることができる。
【0011】
前記目的を達成するための一態様としてのガスタービンは、
前記一態様における燃焼器と、空気を圧縮して圧縮空気を生成可能な圧縮機と、前記燃焼器で生成された前記燃焼ガスにより駆動可能なタービンと、中間ケーシングと、を備える。前記圧縮機は、ロータ軸線を中心として回転する圧縮機ロータと、前記圧縮機ロータを覆う圧縮機ケーシングと、有する。前記タービンは、前記ロータ軸線を中心として、前記圧縮機ロータと一体回転するタービンロータと、前記タービンロータを覆うタービンケーシングと、を有する。前記中間ケーシングは、前記ロータ軸線が延びるロータ軸線方向で、前記圧縮機ケーシングと前記タービンケーシングとの間に配置され、前記圧縮機ケーシングと前記タービンケーシングとを接続し、前記圧縮機から吐出された圧縮空気が流入可能である。前記燃焼器は、前記中間ケーシング内の圧縮空気が流入可能に前記中間ケーシングに設けられている。
【発明の効果】
【0012】
本開示の一態様では、音響減衰器の製造コスト及び大型化を抑えつつも、音響減衰器の耐久性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示に係る一実施形態におけるガスタービンの模式的断面図である。
【
図2】本開示に係る一実施形態におけるガスタービンの要部断面図である。
【
図3】本開示に係る第一実施形態における音響減衰器を周方向に展開して、径方向における外側から見た展開図である。
【
図7】本開示に係る第一実施形態における音響減衰器の模式的断面図である。
【
図8】音響空間中の各位置での圧力変動幅及び気体分子の振幅を示すグラフである。
【
図9】本開示に係る第二実施形態における音響減衰器の軸線方向に垂直な面での断面図である。
【
図10】本開示に係る第二実施形態における音響減衰器の径方向に垂直な面での断面図である。
【
図11】本開示に係る第三実施形態における音響減衰器を周方向に展開して、径方向における外側から見た展開図である。
【
図12】本開示に係る第四実施形態における音響減衰器の径方向に垂直な面での断面図である。
【
図13】本開示に係る第五実施形態における音響減衰器の軸線方向に垂直な面での断面図である。
【
図14】本開示に係る変形例における音響減衰器の径方向に垂直な面での断面図である。
【
図15】本開示に係る変形例におけるガスタービンの要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示に係る燃焼器、この燃焼器を備えるガスタービンの実施形態について、図面を用いて説明する。
【0015】
「ガスタービンの実施形態」
ガスタービンの実施形態について、
図1及び
図2を参照して説明する。
【0016】
本実施形態におけるガスタービンは、空気Aを圧縮して圧縮空気Acomを生成可能な圧縮機10と、圧縮空気Acom中で燃料Fを燃焼させて燃焼ガスGを生成可能な燃焼器20と、燃焼ガスGで駆動可能なタービン15と、中間ケーシング2と、を備える。
【0017】
圧縮機10は、ロータ軸線Arを中心として回転可能な圧縮機ロータ11と、圧縮機ロータ11を覆う圧縮機ケーシング12と、を有する。タービン15は、ロータ軸線Arを中心として回転可能なタービンロータ16と、タービンロータ16を覆うタービンケーシング17と、を有する。タービンロータ16の外周側とタービンケーシング17の内周側との間の環状の空間は、燃焼ガスが流れる燃焼ガス流路18を形成する。以下では、ロータ軸線Arが延びる方向をロータ軸線方向Drとする。また、ロータ軸線方向Drにおける一方側をロータ軸線上流側Dru、ロータ軸線方向Drにおける他方側をロータ軸線下流側Drdとする。
【0018】
圧縮機10は、タービン15に対してロータ軸線上流側Druに配置されている。中間ケーシング2は、ロータ軸線方向Drで、圧縮機ケーシング12とタービンケーシング17との間に配置されている。中間ケーシング2のロータ軸線上流側Druの端は、圧縮機ケーシング12のロータ軸線下流側Drdの端に接続されている。中間ケーシング2のロータ軸線下流側Drdの端は、タービンケーシング17のロータ軸線上流側Druの端に接続されている。中間ケーシング2内には、圧縮機10で生成された圧縮空気Acomが流入する。燃焼器20は、中間ケーシング2内の圧縮空気Acomが流入可能で且つ燃焼ガスGをタービン15の燃焼ガス流路18に導けるように、中間ケーシング2に取り付けられている。
【0019】
圧縮機ロータ11とタービンロータ16とは、同一ロータ軸線Ar上に位置し、互いに接続されてガスタービンロータ1を成す。このガスタービンロータ1には、例えば、発電機GENのロータが接続されている。
【0020】
燃焼器20は、
図2に示すように、フランジ21と、外筒22と、内筒23と、燃焼筒(又は尾筒)24と、複数のノズル25と、音響減衰器30と、を備える。
【0021】
フランジ21は、燃焼器軸線Acから放射方向に広がっている。外筒22、内筒23、及び燃焼筒(又は尾筒)24は、いずれも、中間ケーシング2内に配置されている。また、外筒22、内筒23、及び燃焼筒24は、いずれも、燃焼器軸線Ac周りに筒状を成している。ここで、以下の説明の都合上、燃焼器軸線Acが延びる方向を軸線方向Dcとする。また、軸線方向Dcの両側のうち、一方側を軸線下流側Dcd、他方側を軸線上流側Dcuとする。なお、軸線下流側Dcdは、ロータ軸線方向Daにおけるロータ軸線下流側Dadであり、軸線上流側Dcdはロータ軸線方向Daにおけるロータ軸線上流側Dauである。燃焼器軸線Acは、軸線下流側Dcdに向かうに連れてロータ軸線Arに近づくよう、ロータ軸線Arに対して傾いている。また、燃焼器軸線Acに対する径方向を単に径方向Dcrとする。また、燃焼器軸線Acに対する周方向を単に径方向Dccとする。
【0022】
中間ケーシング2には、この中間ケーシング2外から中間ケーシング2内に貫通する燃焼器取付孔2hが形成されている。フランジ21は、この燃焼器取付孔2hを塞ぐように、中間ケーシング2にボルト等で取り付けられている。外筒22は、中間ケーシング2内に配置され、フランジ21の軸線下流側Dcdに取り付けられている。これらフランジ21及び外筒22で構成される部分は、その形状からトップハットと呼ばれることがある。内筒23は、外筒22の内周側に配置され、サポート等を介して外筒22又はフランジ21に取り付けられている。この内筒23の内周側に複数のノズル25が配置されている。燃焼筒24は、内筒23の軸線下流側Dcdに、シール部材等を介して接続されている。燃焼筒24は、中間ケーシング2の内面に固定された燃焼筒サポート26により支持されている。
【0023】
複数のノズル25は、いずれも、軸線方向Dcに延びており、燃料を噴射する孔が形成されている。複数のノズル25は、いずれも、フランジ21に固定されている。
【0024】
外筒22の内周側と内筒23の外周側との間の環状の空間は、中間ケーシング2内からの圧縮空気Acomが流れる圧縮空気流路を形成する。軸線方向Dcで、フランジ21と内筒23との間には、隙間がある。圧縮空気流路内の圧縮空気Acomは、この隙間から内筒23内に流入する。内筒23内に流入した圧縮空気Acomは、燃焼筒24内に流出する。燃焼筒24内には、複数のノズル25からの燃料Fが噴射される。この燃料Fは、燃焼筒24内で燃焼する。よって、燃焼筒24の内周側の空間は、燃焼空間を成すと共に、音源空間Scを成す。この燃焼で発生した燃焼ガスGは、この燃焼筒24によりタービン15の燃焼ガス流路18内に導かれる。
【0025】
音響減衰器30は、気柱共鳴原理に基づき、音を減衰させる機器である。この音響減衰器30は、燃焼筒24を形成する板の一部と、板の一部と共同して燃焼筒24の外周側に音響空間Ssを形成する音響カバー31と、を有する。燃焼筒24は、音響空間Ssから音源空間Scに貫通する複数の音響孔28を有する。
【0026】
音響カバー31は、
図3~
図6に示すように、音響空間Ssを画定する枠板32を有する。なお、
図3は、周方向Dccに展開した音響減衰器30を径方向における外側から見た展開図である。
図4は、
図3におけるIV-IV線断面図である。
図5は、
図3におけるV-V線断面図である。
図6は、
図5におけるVI-VI線断面図である。
【0027】
枠板32は、
図4~
図6に示すように、複数の側板35と、天板36と、を有する。複数の側板35は、径方向Dcrにおける内側の端が燃焼筒24に溶接で接合されている。複数の側板35のうち、隣り合っている二つの側板35相互は、溶接で接合されている。各側板35の径方向Dcrにおける外側の端は、天板36の縁に溶接で接合されている。この天板36は、径方向Dcrで、燃焼筒24と間隔をあけて対向している。以上のように、本実施形態における音響減衰器30は、複数の溶接部45を有する。なお、隣り合っている二つの側板35で構成される側板35の組が複数ある場合、複数の組のうち、いずれかの組は、一枚の板を曲げて、曲げられた板の一方の辺を一つの側板35とし、曲げられた板の他方の辺を他の一つの側板35としてもよい。すなわち、全ての組における二つの側板35相互間を溶接で接合しなくてもよい。また、同様に、一枚の板を曲げて、曲げられた板の一方の辺を一つの側板35とし、曲げられた板の他方の辺を天板36としてもよい。すなわち、複数の側板35のうち、いずれかの側板35は、天板36と溶接で接合しなくてもよい。
【0028】
枠板32により画定される音響空間Ssは、
図6に示すように、複数の音響孔28を含む領域から周方向Dccの一方側に延びている第一部分Ss1と、この第一部分Ss1の端部から軸線下流側Dcdに延びている第二部分Ss2と、この第二部分Ss2の端部から周方向Dccの他方側に延びている第三部分Ss3と、この第三部分Ss3の端から、一枚の側板35を介して第一部分Ss1に突き当たるまで軸線上流側Dcuに延びている第四部分Ss4と、この第四部分Ss4から、一枚の側板35を介して第二部分Ss2に突き当たるまで周方向Dccの一方側に延びている第五部分Ss5と、を有する。
【0029】
なお、第五部分Ss5が第二部分Ss2に突き当たっている部分に存在する側板35は、音響空間Ssを閉じる閉端39を形成する側板35eである。
【0030】
次に、本実施形態における音響減衰器30を模式的に示す
図7を参照して、この音響減衰器30の特徴について説明する。なお、
図7では、この音響減衰器30の特徴を理解し易くするため、音響空間Ssを直線的に延びた空間として描いている。
【0031】
音響カバー31は、複数の音響孔28から離れた位置で、音響空間Ssを閉じる前述の閉端39を有する。音響空間Ssに沿った音響孔28から閉端39までの距離が空間長Lである。音響減衰器30で減衰させる音の周波数は、この空間長Lにより定まる。この音響空間Scは、音響空間中で音響孔28の側の縁を含む孔側領域Roと、閉端を含む奥側領域Reと、を有する。なお、本実施形態では、例えば、音響空間中で音響孔28の側の縁から空間長Lの半分より閉端29側の領域が奥側領域Reであり、この奥側領域Reよりも音響孔28側の領域が孔側領域Roである。
【0032】
図8を用いて、音響空間Ss中の各位置での圧力変動幅及び気体分子の振幅について、説明する。なお、
図8中、横軸は、音響空間Ssと音響孔28との境の位置「0」から距離で示す音響空間Ss内の位置を示す。
【0033】
音響空間Ss内に流入した気体分子の振幅は、音響空間Ssと音響孔28との境の位置「0」で最大である。この気体分子の振幅は、位置「0」から遠ざかるにつれて次第に小さくなり、閉端39の位置「L」で最小になる。一方、音響空間Ss内の圧力の変動幅は、音響空間Ssと音響孔28との境の位置「0」で最小である。この圧力の変動幅は、位置「0」から遠ざかるにつれて次第に大きくなり、閉端39の位置「L」で最大になる。圧力変動の周期は、数十~数百Hzの周期である。このため、燃焼筒24内で燃料を燃焼させていると、音響カバー31は、次第に高サイクル疲労する。特に、音響空間Ss中の閉端39側の部分は、音響空間Ss中の音響孔28側の部分よりも、圧力変動幅が大きいため、音響カバー31で閉端39側の部分は、音響空間Ss中の音響孔28側の部分よりも、高サイクル疲労が進行し易い。
【0034】
そこで、本実施形態における音響カバー31では、
図6に示すように、閉端39を含む奥側領域Reを形成する部分の強度が、孔側領域Roを形成する部分の強度よりも高くなっている。この奥側領域Reは、
図5において、音響カバー31中で、音響空間Ss中の第三部分Ss3、第四部分Ss4及び第四部分Ss4を形成する部分である。また、孔側領域Roは、音響カバー31中で、音響空間Ss中の第一部分Ss1及び第二部分Ss2を形成する部分である。本実施形態では、これを実現するため、
図4~
図6に示すように、枠板32中で奥側領域Reを形成する部分である奥側枠板部33の板厚teが、枠板32中で孔側領域Roを形成する部分である孔側枠板部34の板厚toよりも厚い。本実施形態では、例えば、奥側枠板部33の板厚teが7mmで、孔側枠板部34の板厚toが5mmである。
【0035】
よって、本実施形態では、音響減衰器30の耐久性を高めることができる。しかも、本実施形態では、奥側枠板部33の板厚teのみが厚いので、枠板32全体の板厚を厚くするよりも、製造コストを抑えることができる上に、孔側領域Roを形成する部分の大型化を抑えることができる。
【0036】
「音響減衰器の第二実施形態」
音響減衰器の第二実施形態について、
図9及び
図10を参照して、説明する。なお、
図9は、音響減衰器の軸線方向に垂直な面での断面図で、第一実施形態における音響減衰器を示す
図5に対応する図である。
図10は、音響減衰器の径方向に垂直な面での断面図で、第一実施形態における音響減衰器を示す
図6に対応する図である。
【0037】
本実施形態における音響減衰器30aの音響カバー31aでも、第一実施形態における音響減衰器30の音響カバー31と同様、奥側領域Reを形成する部分の強度が、孔側領域Roを形成する部分の強度よりも高くなっている。本実施形態では、これを実現するため、枠板32a中で奥側領域Reを形成する部分である奥側枠板部33aを形成する材料が、枠板32a中で孔側領域Roを形成する部分である孔側枠板部34を形成する材料より、疲労強度が高い。本実施形態では、例えば、奥側枠板部33aを形成する材料がニッケル基合金で、孔側枠板部34を形成する材料がステンレスである。ニッケル基合金は、ステンレスよりも、この音響カバー31aの使用環境温度(1100℃~1600℃)での高サイクル疲労強度が高い。なお、音響カバー31aの使用環境温度とは、燃焼筒24内で燃料を燃焼させているときの音響カバー31aの温度である。また、本実施形態では、燃焼筒24の母材を形成する材料もニッケル基合金である。
【0038】
よって、本実施形態でも、音響減衰器30aの耐久性を高めることができる。しかも、本実施形態では、奥側枠板部33aを形成する材料のみが疲労強度の高い材料なので、枠板32a全体を疲労強度の高い材料にするよりも、製造コストを抑えることができる。さらに、本実施形態では、枠板32aの板厚を厚くしなくてもよいため、第一実施形態よりも、音響減衰器30aの大型化を抑えることができる。
【0039】
既設の音響減衰器を本実施形態における音響減衰器30aに改造する場合について説明する。この場合、
図10に示すように、既設の音響減衰器で奥側領域Reになる部分の側板35mに、隣接する他の音響減衰器30gがあるとする。この場合、既設の音響減衰器で奥側領域Reになる部分の側板35mの板厚を厚くする改造は、不要である。このため、この場合、他の音響減衰器30gの配置変更や形状変更等を伴わずに、既設の音響減衰器を本実施形態における音響減衰器30aに改造することができる。
【0040】
「音響減衰器の第三実施形態」
音響減衰器の第三実施形態について、
図11を参照して、説明する。なお、
図11は、音響減衰器を周方向に展開して、径方向における外側から見た展開図で、第一実施形態における音響減衰器を示す
図3に対応する図である。
【0041】
本実施形態における音響減衰器30bの音響カバー31bでも、以上の各実施形態における音響減衰器の音響カバーと同様、奥側領域Reを形成する部分の強度が、孔側領域Roを形成する部分の強度よりも高くなっている。これを実現するため、本実施形態における音響カバー31bは、音響空間Ssを画定する枠板32bのほかに、複数の補強リブ41を有する。複数の補強リブ41は、枠板32b中で奥側領域Reを形成する部分である奥側枠板部33bに固定されている。なお、枠板32b中で孔側領域Roを形成する部分である孔側枠板部34bには、補強リブ41が固定されていない。
【0042】
本実施形態における補強リブ41は、枠板32bの表面のうち、音響空間Ssの縁を画定する内面と背合わせの関係にある外面に溶接で接合されている。補強リブ41は、枠板32bに対する接合面積に対して、枠板32bの表面から突出量が相対的に大きい。このため、補強リブ41を音響空間Ss内に配置されるよう枠板32bの内面に接合すると、音響減衰器30bによる音響減衰効果に対する影響が大きい。そこで、本実施形態では、補強リブ41を枠板32bの外面に接合している。但し、補強リブ41を音響空間Ss内に配置することを前提として、音響空間Ssを設計している場合には、この限りではない。
【0043】
本実施形態でも、以上の実施形態と同様、音響減衰器30bの耐久性を高めることができる。さらに、本実施形態では、奥側枠板部33bにのみ補強リブ41を設けるので、枠板32b全体に補強リブ41を設けるよりも、製造コストを抑えることができる上に、孔側領域Roを形成する部分の大型化を抑えることができる。
【0044】
「音響減衰器の第四実施形態」
音響減衰器の第四実施形態について、
図12を参照して、説明する。なお、
図12は、音響減衰器の径方向に垂直な面での断面図で、第一実施形態における音響減衰器を示す
図6に対応する図である。
【0045】
本実施形態における音響減衰器30cの音響カバー31cでも、以上の各実施形態における音響減衰器の音響カバーと同様、奥側領域Reを形成する部分の強度が、孔側領域Roを形成する部分の強度よりも高くなっている。これを実現するため、本実施形態における音響カバー31cは、音響空間Ssを画定する枠板32bのほかに、複数の補強板42を有する。複数の補強板42は、枠板32b中で奥側領域Reを形成する部分である奥側枠板部33bに固定されている。なお、枠板32b中で孔側領域Roを形成する部分である孔側枠板部34bには、補強板42が固定されていない。
【0046】
ここで、本願での「補強板」とは、枠板に対する接合面積よりも、枠板に平行な各方向における投影面積のうちで最大の投影面積が小さい補強部材である。一方、本願での「補強リブ」とは、枠板に対する接合面積よりも、枠板に平行な各方向における投影面積のうちで最大の投影面積が大きい補強部材である。
【0047】
補強板42は、枠板32bの表面のうち、音響空間Ssの縁を画定する内面に溶接で接合されている。補強板42は、補強リブ41と異なり、枠板32bに対する接合面積に対して、枠板32bの表面から突出量が相対的に小さい。このため、補強板42を音響空間Ss内に配置されるよう枠板32bの内面に接合しても、補強リブ41を音響空間Ss内に配置されるよう枠板32bの内面に接合する場合より、音響減衰器30cによる音響減衰効果に対する影響が小さい。そこで、本実施形態では、補強板42を枠板32bの内面に接合している。但し、補強板42を枠板32bの外面に接合してもよい。
【0048】
よって、本実施形態でも、以上の実施形態と同様、音響減衰器30cの耐久性を高めることができる。さらに、本実施形態では、奥側枠板部33bにのみ補強板42を設けるので、枠板32b全体に補強板42を設けるよりも、製造コストを抑えることができる。また、本実施形態でも、補強板42を枠板32bの内面に設けるため、第一実施形態や第三実施形態よりも、音響減衰器30cの大型化を抑えることができる。
【0049】
さらに、本実施形態では、
図10を用いて第二実施形態で説明したように、既設の音響減衰器に隣接する他の音響減衰器30gがある場合でも、他の音響減衰器30gの配置変更や形状変更等を伴わずに、既設の音響減衰器を本実施形態における音響減衰器30cに改造することができる。
【0050】
「音響減衰器の第五実施形態」
音響減衰器の第五実施形態について、
図13を参照して、説明する。なお、
図13は、音響減衰器の軸線方向に垂直な面での断面図で、第一実施形態における音響減衰器を示す
図5に対応する図である。
【0051】
本実施形態における音響減衰器30dの音響カバー31dでも、以上の各実施形態における音響減衰器の音響カバーと同様、奥側領域Reを形成する部分の強度が、孔側領域Roを形成する部分の強度よりも高くなっている。
【0052】
本実施形態における音響カバー31dも、以上の実施形態と同様、枠板32bを有する。この枠板32bも、第一実施形態における枠板32と同様、複数の側板35と、天板36と、を有する。複数の側板35は、径方向Dcr内側の端が燃焼筒24に溶接で接合されている。この溶接部45は第一溶接部45aである。複数の側板35のうち、隣り合っている二つの側板35相互は、溶接で接合されている。各側板35の径方向Dcrにおける外側の端は、天板36の縁に溶接で接合されている。以上のように、本実施形態における音響減衰器30dは、第一溶接部45aを含む複数の溶接部45を有する。
【0053】
本実施形態では、音響減衰器30dの複数の溶接部45中で、奥側領域Reを形成する部分の溶接部45の溶接脚長Lweが、孔側領域Roを形成する部分の溶接部45の溶接脚長Lwoより長い、このため、奥側領域Reにおける複数の溶接部45での接合強度が上がり、本実施形態における音響カバー31dでも、以上の各実施形態における音響カバーと同様、奥側領域Reを形成する部分の強度が、孔側領域Roを形成する部分の強度よりも高くなる。
【0054】
よって、本実施形態でも、以上の実施形態と同様、音響減衰器30dの耐久性を高めることができる。さらに、本実施形態では、全ての溶接部45ではなく、奥側領域Reの溶接部45の溶接脚長Lweのみを長くしているので、全ての溶接部45の溶接脚長を長くするよりも、製造コストを抑えることができる。また、本実施形態では、溶接脚長を長くしているだけであるため、音響減衰器30dの大型化を抑えることができる。
【0055】
「変形例」
以上では、音響カバーの奥側領域Reを形成する部分の強度を孔側領域Roを形成する部分の強度よりも高くするための複数の態様を説明した。これら複数の態様は、適宜組み合わせてもよい。
【0056】
すなわち、以下のaからeのうちの少なくとも二つの組み合わせで、音響カバーにおける奥側領域Reを形成する部分の強度を、音響カバーにおける孔側領域Roを形成する部分の強度よりも高くしてもよい。
a.枠板中で奥側領域Reを形成する部分である奥側枠板部の少なくとも一部の板厚は、枠板中で孔側領域Roを形成する部分である孔側枠板部の板厚よりも厚い。
b.枠板中で奥側領域Reを形成する部分である奥側枠板部の少なくとも一部を形成する材料は、枠板中で孔側領域Roを形成する部分である孔側枠板部を形成する材料よりも、高サイクル疲労強度が高い。
c.音響カバーは、枠板中で奥側領域Reを形成する部分である奥側枠板部の少なくとも一部に固定されている補強リブ41を有する。
d.音響カバーは、枠板中で奥側領域Reを形成する部分である奥側枠板部の少なくとも一部に固定されている補強板42を有する、
e.音響減衰器は、音響カバーと筒とを接合している第一溶接部45aを含む複数の溶接部45を有し、音響減衰器の複数の溶接部45中で、奥側領域Reを形成する部分の少なくとも一部の溶接脚長Lweが、孔側領域Roを形成する部分の溶接脚長Lwoより長い。
【0057】
例えば、上記aと上記dとを組み合わせて、音響カバーにおける奥側領域Reの強度を、音響カバーにおける孔側領域Roを形成する部分の強度よりも高くしてもよい。この場合、
図14に示すように、この音響カバー31eにおける奥側枠板部33eの一部の板厚が、この音響カバー31eにおける孔側枠板部34eの板厚よりも厚い。ここでの奥側枠板部33eの一部は、奥側枠板部33e中で、他の音響減衰器30gと隣接する側板35mを除く奥側枠板部33eである。この側板35mの表面のうち、音響空間Ssの縁を画定する内面には、補強板42が固定されている。なお、
図14は、音響減衰器の軸線方向に垂直な面での断面図で、第一実施形態における音響減衰器を示す
図5に対応する図である。
【0058】
上記aのみで、音響カバーの奥側領域Reを形成する部分の強度を孔側領域Roを形成する部分の強度よりも高くすると、側板の厚さ増加で、隣接する他の音響減衰器30gの配置変更や形状変更が必要になる。しかしながら、上記aと上記dとを組み合わせることで、他の音響減衰器30gの配置変更や形状変更等を伴わずに、既設の音響減衰器を本変形例における音響減衰器30eに改造することができる。同様の趣旨から、例えば、上記aと上記bとを組み合わせてもよし、上記bと上記cとを組み合わせてもよい。
【0059】
また、例えば、上記aから上記dのうちのいずれか一態様、さらに以上で説明した各組み合わせた態様に対して、上記eを組み合わせてもよい。
【0060】
以上の各実施形態及び変形例における音響減衰器は、燃焼筒24の外周側にも設けられている。しかしながら、
図15に示すように、外筒22の内周側は、音源空間Scを成すため、この外筒22の外周側に音響減衰器30fを設ける場合もある。この音響減衰器30fも、以上の各実施形態及び変形例における音響減衰器と同様に構成してもよい。
【0061】
また、本開示は、以上で説明した各実施形態に限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲において、種々の追加、変更、置き換え、部分的削除等が可能である。
【0062】
「付記」
以上の実施形態及び変形例における燃焼器は、例えば、以下のように把握される。
【0063】
(1)第一態様における燃焼器は、
燃焼器軸線Ac周りに筒状を成し、内周側が音源空間Scを成す筒22,24と、前記筒22,24の燃焼器軸線Acに対する径方向内側に配置され、燃料Fを噴射可能なノズル25と、前記筒22,24を形成する板の一部と、前記板の一部と共同して前記筒22,24の外周側に音響空間Ssを形成する音響カバー31,31a,31b,31c,31d,31eと、を有する音響減衰器30,30a,30b,30c,30d,30e,30fと、を備える。前記筒22,24は、前記音響空間Ssから前記音源空間Scに貫通する音響孔28を有する。前記音響カバー31,31a,31b,31c,31d,31eは、前記音響孔28から離れた位置で、前記音響空間Ssを閉じる閉端39を有する。前記音響空間Ssは、前記音響空間Ss中で前記音響孔28の側の縁を含む孔側領域Roと、前記閉端39を含む奥側領域Reと、を有する。前記音響カバー31,31a,31b,31c,31d,31eは、前記奥側領域Reを形成する部分の強度が、前記孔側領域Roを形成する部分の強度よりも高い。
【0064】
音響空間Ss内に流入した気体分子の振幅は、音響空間Ssと音響孔28との境の位置で最大である。この気体分子の振幅は、この位置から遠ざかるにつれて次第に小さくなり、閉端39の位置で最小になる。一方、音響空間Ss内の圧力の変動幅は、音響空間Ssと音響孔28との境の位置で最小である。この圧力の変動幅は、この位置から遠ざかるにつれて次第に大きくなり、閉端39の位置で最大になる。圧力変動の周期は、数十~数百Hzの周期である。このため、筒22,24の内周側で燃料を燃焼させていると、音響カバー31,31a,31b,31c,31d,31eは、次第に高サイクル疲労する。特に、音響空間Ss中の閉端39側の部分は、音響空間Ss中の音響孔28側の部分よりも、圧力変動幅が大きいため、音響カバー31,31a,31b,31c,31d,31e中で閉端39側の部分は、音響空間Ss中の音響孔28側の部分よりも、高サイクル疲労が進行し易い。
【0065】
そこで、本態様における音響カバー31,31a,31b,31c,31d,31eでは、奥側領域Reを形成する部分の強度が、孔側領域Roを形成する部分の強度よりも高い。この結果、本態様では、音響減衰器30,30a,30b,30c,30d,30eの耐久性を高めることができる。しかも、本態様の音響カバー31,31a,31b,31c,31d,31eでは、奥側領域Reを形成する部分の強度のみが高いので、音響カバー31,31a,31b,31c,31d,31e全体の強度を高くするよりも、製造コストを抑えることができる上に、大型化を抑えることができる。
【0066】
(2)第二態様における燃焼器は、
前記第一態様における燃焼器において、前記音響空間Ss中で前記音響孔28の側の前記縁から前記閉端39までの、前記音響空間Ssに沿った距離が空間長Lを成し、前記奥側領域Reは、前記音響孔28の側の前記縁から前記空間長Lの半分より前記閉端の側の領域である。
【0067】
(3)第三態様における燃焼器は、
前記第一態様又は前記第二態様における燃焼器において、前記筒24は、前記燃焼器軸線Ac周りに筒状を成し、前記ノズル25から噴射された燃料Fが内周側で燃焼可能な燃焼筒である。
【0068】
(4)第四態様における燃焼器は、
前記第一態様又は前記第二態様における燃焼器において、前記燃焼器軸線Ac周りに筒状を成し、前記ノズル25の外周側を覆う内筒23と、前記燃焼器軸線Ac周りに筒状を成し、前記内筒23の外周側を覆う外筒22と、前記燃焼器軸線Ac周りに筒状を成し、前記内筒23に接続され、前記ノズル25から噴射された燃料Fが内周側で燃焼可能な燃焼筒24と、を有する。前記筒22は、前記外筒である。
【0069】
(5)第五態様における燃焼器は、
前記第一態様から前記第四態様のうちのいずれか一態様における燃焼器において、前記音響カバー31は、前記奥側領域Reと前記孔側領域Roとを含む全領域にわたって、前記音響空間Ssを画定する枠板32を有する。前記枠板32中で前記奥側領域Reを形成する部分である奥側枠板部33の板厚teは、前記枠板32中で前記孔側領域Roを形成する部分である孔側枠板部34の板厚toよりも厚い。
【0070】
本態様で、枠板32の板厚を適宜調節することで、奥側領域Reを形成する部分の強度を孔側領域Roを形成する部分の強度よりも高くすることができる。
【0071】
(6)第六態様における燃焼器は、
前記第一態様から前記第四態様のうちのいずれか一態様における燃焼器において、前記音響カバー31aは、前記奥側領域Reと前記孔側領域Roとを含む全領域にわたって、前記音響空間Ssを画定する枠板32aを有する。前記枠板32a中で前記奥側領域Reを形成する部分である奥側枠板部33aを形成する材料は、前記枠板32a中で前記孔側領域Roを形成する部分である孔側枠板部34を形成する材料よりも、疲労強度が高い。
【0072】
本態様で、枠板32aを形成する材料を適宜選択することで、奥側領域Reを形成する部分の疲労強度を孔側領域Roを形成する部分の疲労強度よりも高くすることができる。
【0073】
(7)第七態様における燃焼器は、
前記第一態様から前記第四態様のうちのいずれか一態様における燃焼器において、前記音響カバー31bは、前記奥側領域Reと前記孔側領域Roとを含む全領域にわたって、前記音響空間Ssを画定する枠板32bと、前記枠板32b中で前記奥側領域Reを形成する部分である奥側枠板部33bに固定されている補強リブ41と、を有する。
【0074】
本態様で、枠板32bの一部に補強リブ41を固定することで、奥側領域Reを形成する部分の強度を孔側領域Roを形成する部分の強度よりも高くすることができる。
【0075】
(8)第八態様における燃焼器は、
前記第一態様から前記第四態様のうちのいずれか一態様における燃焼器において、前記音響カバー31cは、前記奥側領域Reと前記孔側領域Roとを含む全領域にわたって、前記音響空間Ssを画定する枠板32bと、前記枠板32b中で前記奥側領域Reを形成する部分である奥側枠板部33bに固定されている補強板42と、を有する。
【0076】
本態様で、枠板32bの一部に補強板42を固定することで、奥側領域Reを形成する部分の強度を孔側領域Roを形成する部分の強度よりも高くすることができる。なお、ここでの「補強板」とは、枠板に対する接合面積よりも、枠板に平行な各方向における投影面積のうちで最大の投影面積が小さい補強部材である。一方、前述の「補強リブ」とは、枠板に対する接合面積よりも、枠板に平行な各方向における投影面積のうちで最大の投影面積が大きい補強部材である。
【0077】
(9)第九態様における燃焼器は、
前記第八態様における燃焼器において、前記補強板42は、前記枠板32bの表面のうち、前記音響空間Ssの縁を画定する内面に固定されている。
【0078】
本態様では、音響減衰器30cの大型化を抑えることができる。
【0079】
(10)第十態様における燃焼器は、
前記第一態様から前記第四態様のうちのいずれか一態様における燃焼器において、前記音響減衰器30dは、前記音響カバー31dと前記燃焼筒24とを接合している第一溶接部45aを含む複数の溶接部45を有する。前記音響減衰器30dの前記複数の溶接部45中で、前記奥側領域Reを形成する部分の溶接脚長Lweが、前記孔側領域Roを形成する部分の溶接脚長Lwoより長い。
【0080】
本態様で、音響減衰器30dの複数の溶接部45における溶接脚長を適宜定めることにより、奥側領域Reを形成する部分の強度を孔側領域Roを形成する部分の強度よりも高くすることができる。
【0081】
(11)第十一態様における燃焼器は、
前記第一態様から前記第四態様のうちのいずれか一態様における燃焼器において、前記音響カバーは、前記奥側領域Reと前記孔側領域Roとを含む全領域にわたって、前記音響空間Ssを画定する枠板を有する。以下のaからeのうちの少なくとも二つの組み合わせで、前記音響カバーにおける前記奥側領域Reを形成する部分の強度が、前記音響カバーにおける孔側領域Roを形成する部分の強度よりも高くなっている。
a.前記枠板中で前記奥側領域Reを形成する部分である奥側枠板部の少なくとも一部の板厚は、前記枠板中で前記孔側領域Roを形成する部分である孔側枠板部の板厚よりも厚い、
b.前記枠板中で前記奥側領域Reを形成する部分である奥側枠板部の少なくとも一部を形成する材料は、前記枠板中で前記孔側領域Roを形成する部分である孔側枠板部を形成する材料よりも、高サイクル疲労強度が高い、
c.前記音響カバーは、前記枠板中で前記奥側領域Reを形成する部分である奥側枠板部の少なくとも一部に固定されている補強リブ41を有する、
d.前記音響カバーは、前記枠板中で前記奥側領域Reを形成する部分である奥側枠板部の少なくとも一部に固定されている補強板42を有する、
e.前記音響減衰器は、前記音響カバーと前記筒とを接合している第一溶接部45aを含む複数の溶接部45を有し、前記音響減衰器の前記複数の溶接部45中で、前記奥側領域Reを形成する少なくとも一部の溶接脚長Lweが、前記孔側領域Roを形成する部分の溶接脚長Lwoより長い。
【0082】
以上の実施形態及び変形例におけるガスタービンは、例えば、以下のように把握される。
(12)第十二態様におけるガスタービンは、
前記第一態様から前記第十一態様のうちのいずれか一態様における燃焼器20と、空気Aを圧縮して圧縮空気Acomを生成可能な圧縮機10と、前記燃焼器20で生成された前記燃焼ガスGにより駆動可能なタービン15と、中間ケーシング2と、を備える。前記圧縮機10は、ロータ軸線Arを中心として回転する圧縮機ロータ11と、前記圧縮機ロータ11を覆う圧縮機ケーシング12と、有する。前記タービン15は、前記ロータ軸線Arを中心として、前記圧縮機ロータ11と一体回転するタービンロータ16と、前記タービンロータ16を覆うタービンケーシング17と、を有する。前記中間ケーシング2は、前記ロータ軸線Arが延びるロータ軸線方向Drで、前記圧縮機ケーシング12と前記タービンケーシング17との間に配置され、前記圧縮機ケーシング12と前記タービンケーシング17とを接続し、前記圧縮機10から吐出された圧縮空気Acomが流入可能である。前記燃焼器20は、前記中間ケーシング2内の圧縮空気Acomが流入可能に前記中間ケーシング2に設けられている。
【符号の説明】
【0083】
1:ガスタービンロータ
2:中間ケーシング
2h:燃焼器取付孔
10:圧縮機
11:圧縮機ロータ
12:圧縮機ケーシング
15:タービン
16:タービンロータ
17:タービンケーシング
18:燃焼ガス流路
20:燃焼器
21:フランジ
22:外筒(又は単に筒)
23:内筒
24:燃焼筒(又は尾筒、又は単に筒)
25:ノズル
26:燃焼筒サポート
28:音響孔
30,30a,30b,30c,30d,30e,30f:音響減衰器
31,31a,31b,31c,31d,31e:音響カバー
32,32a,32b,32e:枠板
33,33a,33b,33e:奥側枠板部
34,34b,34e:孔側枠板部
35,35e,35m:側板
36:天板
39:閉端
41:補強リブ
42:補強板
45:溶接部
45a:第一溶接部
A:空気
Acom:圧縮空気
F:燃料
G:燃焼ガス
Sc:音源空間
Ss:音響空間
Ss1:第一部分
Ss2:第二部分
Ss3:第三部分
Ss4:第四部分
Ss5:第五部分
Ar:ロータ軸線
Ac:燃焼器軸線
Dr:ロータ軸線方向
Dru:ロータ軸線上流側
Drd:ロータ軸線下流側
Dc:軸線方向
Dcu:軸線上流側
Dcd:軸線下流側
Dcc:周方向
Dcr:径方向
L:空間長
Lwo,Lwe:溶接脚長
to,te:板厚
Re:奥側領域
Ro:孔側領域