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  • 特開-粒子、粒子の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161962
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】粒子、粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/00 20230101AFI20241114BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20241114BHJP
   B01J 2/00 20060101ALI20241114BHJP
   B01J 2/22 20060101ALI20241114BHJP
   C12N 11/00 20060101ALI20241114BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20241114BHJP
   C02F 3/08 20230101ALI20241114BHJP
   C12N 1/16 20060101ALN20241114BHJP
   C12N 1/20 20060101ALN20241114BHJP
   C12N 1/14 20060101ALN20241114BHJP
【FI】
C02F3/00 B
B01J20/30
B01J2/00 B
B01J2/22
C12N11/00
B01J20/28 Z
C02F3/08 B
C02F3/00 G
C12N1/16 Z
C12N1/20 D
C12N1/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077059
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】519057081
【氏名又は名称】学校法人北海道科学大学
(71)【出願人】
【識別番号】000146445
【氏名又は名称】株式会社常光
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】三原 義広
(72)【発明者】
【氏名】羽田 典久
【テーマコード(参考)】
4B033
4B065
4D003
4D027
4G004
4G066
【Fターム(参考)】
4B033NA12
4B033NA13
4B033NA14
4B033NB62
4B033ND04
4B033NG02
4B033NG03
4B065AA01X
4B065AA57
4B065AA72X
4B065BC41
4B065BD05
4B065CA54
4D003AA16
4D003EA14
4D003EA21
4D003EA22
4D003EA24
4D003EA25
4D003EA38
4D003FA10
4D027CA00
4G004BA00
4G004MA03
4G066AA05B
4G066AA12B
4G066AA22B
4G066AA27B
4G066AA41B
4G066AA51B
4G066AA61B
4G066AB07D
4G066AB23D
4G066AB29D
4G066AC02D
4G066AC11B
4G066BA05
4G066BA09
4G066BA20
4G066BA38
4G066CA45
4G066DA07
4G066FA11
4G066FA26
(57)【要約】
【課題】長時間保管した後でも良好な自律浮沈機能を有し、且つ、水性媒体中でも形状が維持されやすい、粒子を提供する。また、上記粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】コア部と、上記コア部を被覆するシェル部とを含む粒子であり、
上記コア部が、生体活動により気体を生成する微生物と、上記微生物に資化される資化物質と、マトリックス成分と、飽和脂肪酸塩、油脂、及び、疎水性担体からなる群から選ばれる成分とを含み、
上記コア部が、実質的に水を含まない、粒子。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア部と、前記コア部を被覆するシェル部とを含む粒子であり、
前記コア部が、生体活動により気体を生成する微生物と、前記微生物に資化される資化物質と、マトリックス成分と、飽和脂肪酸塩、油脂、及び、疎水性担体からなる群から選ばれる成分とを含み、
前記コア部が、実質的に水を含まない、粒子。
【請求項2】
生体活動により気体を生成する微生物と、前記微生物に資化される資化物質と、マトリックス成分と、飽和脂肪酸塩、油脂、及び、疎水性担体からなる群から選ばれる成分とを含む組成物を圧縮成形して、実質的に水を含まない成形体を得る工程1と、
前記成形体の表面に被覆層を形成して、コア部と、前記コア部を被覆するシェル部とを含む粒子を形成する工程2と、を含む粒子の製造方法。
【請求項3】
生体活動により気体を生成する微生物と、前記微生物に資化される資化物質と、マトリックス成分とを含む組成物を圧縮成形して成形体前駆体を形成する工程3と、
前記成形体前駆体の表面に飽和脂肪酸塩、油脂、及び疎水性担体からなる群から選ばれる成分を付着し、実質的に水を含まない成形体を形成する工程4と、
前記成形体の表面に被覆層を形成して、コア部と、前記コア部を被覆するシェル部とを含む粒子を形成する工程2と、を含む粒子の製造方法。
【請求項4】
前記被覆層が、ゲル前駆体成分とゲル化剤とを使用して形成され、
前記工程2が、
前記ゲル前駆体成分と溶媒とを含む第1液を管状物に充填する工程Aと、
前記成形体を前記管状物の内部に挿入して前記第1液に浸漬する工程Bと、
前記管状物から前記成形体をゲル化剤と溶媒とを含む第2液中に排出して、前記粒子を形成する工程Cとを含む、請求項2又は3に記載の粒子の製造方法。
【請求項5】
前記工程Bが、前記成形体を前記管状物の挿入口から挿入し、前記成形体を管状物の内部に吸い上げて、前記第1液に浸漬する工程である、請求項4に記載の粒子の製造方法。
【請求項6】
前記管状物が、前記挿入口となる直管部と、前記直管部と連通し、前記挿入口とは反対側に向かって縮径する縮径部とを有する、請求項5に記載の粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性媒体中で自律浮沈する粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境浄化(例えば、水質浄化)を目的として、環境汚染物質を吸着除去可能な汚染物質除去剤が使用されており、この汚染物質除去剤として水性媒体中で自律浮沈する粒子(以下「自律浮沈粒子」ともいう。)を適用する検討がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1では、自律浮沈粒子として、生体活動により気体を生成する微生物と、微生物の資化物質とを含む自律浮沈型のゲルビーズを開示している。
特許文献1のゲルビーズは、水等の水性媒体中に投与されると、一旦、液底まで沈降するものの、暫くすると、ゲルビーズ内の微生物の生体活動の過程により生成する気体及び/又は水性媒体不溶性液体が浮きとして作用することで、水性媒体-空気界面(以下「液面」ともいう。)に浮上する。一方、液面付近は、液底と比べると液圧が小さいため、ゲルビーズが液面に浮上するにつれて、ゲルビーズ内の気体及び/又は水性媒体不溶性液体はゲルビーズ外に放出される。この結果、浮きを失ったゲルビーズは自重により、再度沈降する。ゲルビーズは、水性媒体内で上述した浮沈を繰り返し、微生物の資化により資化物質が消尽されて水性媒体よりも比重が小さくなった後、液面に浮上し、その後回収される。
特許文献1では、吸着剤を導入したゲルビーズ及びこのゲルビーズを使用した汚染物質の浄化方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-137442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、特許文献1に記載されたゲルビーズについて検討したところ、長時間保管した後に使用した際に、自律浮沈機能が低下する場合があることを知見した。また、上記ゲルビーズは、水性媒体中に投入されると、ゲルビーズ内への水性媒体の浸透により形状が保持しにくく、この結果として、ゲルビーズ内の微生物及びその資化物質が水性媒体へ流出し、性能低下が生じる場合があることを明らかとした。
【0006】
そこで、本発明は、長時間保管した後でも良好な自律浮沈機能を有し、且つ、水性媒体中でも形状が維持されやすい、粒子を提供することを課題とする。
また、本発明は、上記粒子の製造方法を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
〔1〕 コア部と、上記コア部を被覆するシェル部とを含む粒子であり、
上記コア部が、生体活動により気体を生成する微生物と、上記微生物に資化される資化物質と、マトリックス成分と、飽和脂肪酸塩、油脂、及び、疎水性担体からなる群から選ばれる成分とを含み、
上記コア部が、実質的に水を含まない、粒子。
〔2〕 生体活動により気体を生成する微生物と、上記微生物に資化される資化物質と、マトリックス成分と、飽和脂肪酸塩、油脂、及び、疎水性担体からなる群から選ばれる成分とを含む組成物を圧縮成形して、実質的に水を含まない成形体を得る工程1と、
上記成形体の表面に被覆層を形成して、コア部と、上記コア部を被覆するシェル部とを含む粒子を形成する工程2と、を含む粒子の製造方法。
〔3〕 生体活動により気体を生成する微生物と、上記微生物に資化される資化物質と、マトリックス成分とを含む組成物を圧縮成形して成形体前駆体を形成する工程3と、
上記成形体前駆体の表面に飽和脂肪酸塩、油脂、及び疎水性担体からなる群から選ばれる成分を付着し、実質的に水を含まない成形体を形成する工程4と、
上記成形体の表面に被覆層を形成して、コア部と、上記コア部を被覆するシェル部とを含む粒子を形成する工程2と、を含む粒子の製造方法。
〔4〕 上記被覆層が、ゲル前駆体成分とゲル化剤とを使用して形成され、
上記工程2が、
上記ゲル前駆体成分と溶媒とを含む第1液を管状物に充填する工程Aと、
上記成形体を上記管状物の内部に挿入して上記第1液に浸漬する工程Bと、
上記管状物から上記成形体をゲル化剤と溶媒とを含む第2液中に排出して、上記粒子を形成する工程Cとを含む、〔2〕又は〔3〕に記載の粒子の製造方法。
〔5〕 上記工程Bが、上記成形体を上記管状物の挿入口から挿入し、上記成形体を管状物の内部に吸い上げて、上記第1液に浸漬する工程である、〔4〕に記載の粒子の製造方法。
〔6〕 上記管状物が、上記挿入口となる直管部と、上記直管部と連通し、上記挿入口とは反対側に向かって縮径する縮径部とを有する、〔5〕に記載の粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、長時間保管した後でも良好な自律浮沈機能を有し、且つ、水性媒体中でも形状が維持されやすい、粒子を提供できる。
また、本発明によれば、上記粒子の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】管状物の実施形態の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
また、本明細書において、各成分は、特段の断りが無い限り、各成分に該当する物質を1種単独でも用いても、2種以上を併用してもよい。ここで、各成分について2種以上の物質を併用する場合、その成分についての含有量とは、特段の断りが無い限り、併用した物質の合計の含有量を指す。
【0013】
[粒子]
本発明の粒子は、
コア部と、上記コア部を被覆するシェル部とを含む粒子であり、
上記コア部が、生体活動により気体を生成する微生物(以下、単に「微生物」ともいう。)と、上記微生物に資化される資化物質(以下、単に「資化物質」ともいう。)と、マトリックス成分と、飽和脂肪酸塩、油脂、及び、疎水性担体からなる群から選ばれる成分(以下、「特定成分」ともいう。)とを含み、
上記コア部が、実質的に水を含まない。
【0014】
〔粒子の作用〕
本発明の粒子は、撹拌等の外部からの助力を必要とせず、溶液内を自律的に浮き沈みすることが可能な粒子(自律浮沈粒子)である。
【0015】
粒子のコア部は、生体活動により気体を生成する微生物と、上記微生物に資化される資化物質と、マトリックス成分と、特定成分と、を含む。
粒子は、粒子よりも比重の小さい水性媒体中に投与されると一旦沈降するが、暫くすると、コア部内において、微生物の生体活動の過程によって気体が生成し(なお、例えば、微生物が酵母菌であり、且つ資化物質が糖類(例えばグルコース)である場合、二酸化炭素が気体として発生する。)、この気体が浮きとして作用することで、水性媒体-空気界面(液面)に浮上する。液面付近は水底と比べると水圧が小さいため、浮上に伴う水圧の低下により、コア部内に発生した気体は、体積が徐々に増大してその一部が粒子から放出され、粒子に付着する。粒子に付着した気体が浮きとして作用すると考えられる。
粒子が液面に浮上すると、粒子内の気体及び粒子に付着した気体は、粒子から離脱する。この結果、浮きを失った粒子は自重により、再度沈降する。粒子は、水性媒体内で上述した浮沈を繰り返し(以下において、粒子が浮沈を繰り返す挙動を「鉛直回遊挙動」ともいう。)、微生物の資化により資化物質が消尽され水性媒体よりも比重が小さくなった後、液面に浮く。
【0016】
本発明の粒子は特定成分を含むことから、水性媒体中に投入されても粒子内への水性媒体の浸透が抑制され易いと推測される。この結果として、形状が保持されやすく、粒子内の微生物及びその資化物質の水性媒体への流出による性能低下が生じにくい。
【0017】
更に、今般の発明者らの検討により、コア部に水が含まれると、保存時においても微生物による発酵が進行し、この結果として、長期間保管後に粒子を使用した場合に、自律浮沈の挙動が劣化する(例えば、浮沈速度、浮沈回数、及び自律浮沈挙動が示されなくなるまでの期間(品質保持期間)が劣化する)と考えている。
本発明の粒子のコア部は実質的に水を含まないため、長期間保管後に粒子を使用した場合においても微生物による発酵が抑制されているため、作製直後の粒子と同様の良好な自律浮沈挙動を示し得る。
【0018】
上述した通り、本発明の粒子は、自律浮沈に寄与する機能を有するだけでなく、各用途に応じて要求される機能をシェル部に付与することで、様々な用途への応用が可能となる。
このような機能を与え得る機能成分としては、例えば、吸着剤が挙げられる。
吸着剤としては、活性炭、イオン交換樹脂、ゼオライト、マグネタイト、シリカ、プルシアンブルー、水酸化セリウム、及び酸化セリウム等が挙げられる。
なお、例えば、シェル部がプルシアンブルーを含む場合、プルシアンブルーは選択的にセシウムを吸着するため、上記粒子は、セシウム吸着用自律浮沈粒子として機能し得る。また、シェル部が水酸化セリウム又は酸化セリウムを含む場合、これらの化合物は選択的にフッ化物イオンを吸着するため、上記粒子は、フッ化物イオン吸着用自律浮沈粒子として機能し得る。つまり、上記構成の粒子は、鉛直回遊挙動により、水性媒体内に存在する被除去成分であるセシウム及びフッ化物イオンを効率よく吸着し、最終的に液面に浮くことで回収可能となる。
【0019】
以下、本発明の粒子の構成について説明する。
粒子は、コア部と、上記コア部を被覆するシェル部とを含む。
シェル部は、単層であっても、複層であってもよい。また、シェル部は、コア部の表面の少なくとも一部を覆っていればよく、コア部の表面の全周囲を覆っていることが好ましい。
粒子の形状は特に制限されず、球状、板状、及び針状等が挙げられ、なかでも、球状が好ましい。なお、ここでいう「球状」とは、真球状だけでなく、回転楕円体及び卵形等の形状も含む。
粒子の平均粒径は特に制限されないが、例えば、1cm以下が好ましく、0.6cm以下がより好ましく、0.1cm以下が更に好ましく、0.5mm以下が特に好ましく、0.2mm以下が最も好ましい。なお、下限値は、例えば、0.05mm以上である。
なお、平均粒径とは、10個以上の粒子の長径を測定し、それらを算術平均して得られる値である。
【0020】
〔コア部〕
コア部は、生体活動により気体を生成する微生物と、上記微生物に資化される資化物質と、特定成分と、マトリックス成分と、を含む。
以下、コア部が含む各成分について詳述する。
【0021】
<微生物>
粒子は、生体活動により気体及び/又は水性媒体不溶性液体を生成する微生物を含む。
微生物による生体活動としては特に制限されず、例えば、微生物による代謝、分解、及び光合成が挙げられる。
微生物の生体活動により生成される気体の種類は特に制限されず、例えば、二酸化炭素、酸素、水素、窒素、及びメタン等が挙げられる。また、微生物の生体活動により生成される水性媒体不溶性液体の種類は特に制限されず、例えば、炭化水素化合物等が挙げられる。
【0022】
微生物としては特に制限されないが、例えば、酵母菌、腸内菌、乳酸菌、好気性芽胞菌、嫌気性菌、カビ(例えば、麹カビ)、藻類、及びプランクトン等が挙げられる。
上記微生物のうち、酵母菌、腸内菌、及び乳酸菌は、発酵により、主に、二酸化炭素を生成し得る。
また、一部の好気性芽胞菌及び嫌気性菌は、発酵により、主に、二酸化炭素、及び/又は水素を生成し得る。
麹カビは、糖化により澱粉(澱粉は、後述する資化物質又は後述する重り材となり得る。)を分解して二酸化炭素を生成し得る。
【0023】
藻類は、光合成又は呼吸により酸素を生成し得る。特に、藻類の一種であるラン藻は、水素も生成し得る。
また、オーランチオキトリウム(Aurantiochytrium)属に属する藻類は、水性媒体不溶性液体として炭化水素化合物(スクアレン(テルぺノイド系の油脂に相当する))を生成する。HD-1株(Oleomonas sagaranensis)も、嫌気条件下では、水性媒体不溶性液体として石油を生成する。
【0024】
プランクトンは、光合成又は摂食により二酸化炭素を生成し得る。
微生物としては、なかでも、サッカロミケス属に属する微生物が好ましい。
サッカロミケス属に属する微生物としては、Saccharomyces bayanus、Saccharomyces boulardii、Saccharomyces bulderi、Saccharomyces cariocanus、Saccharomyces cariocus、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces chevalieri、Saccharomyces dairenensis、Saccharomyces ellipsoideus、Saccharomyces florentinus、Saccharomyces kluyveri、Saccharomyces martiniae、Saccharomyces monacensis、Saccharomyces norbensis、Saccharomyces paradoxus、Saccharomyces pastorianus、Saccharomyces spencerorum、Saccharomyces turicensis、Saccharomyces unisporus、Saccharomyces uvarum、又はSaccharomyces zonatusがより好ましい。
比較的入手が容易であり、二酸化炭素の生成能力がより優れる点で、Saccharomyces cerevisiaeが更に好ましい。
【0025】
微生物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
粒子中、微生物の含有量(微生物が複数種含まれる場合にはその合計量)は特に制限されないが、粒子の全質量に対して、1~20質量%が好ましく、1~10質量%がより好ましい。
【0026】
<資化物質>
粒子は、微生物が資化して気体及び/又は水性媒体不溶性液体を生成する物質を含む。つまり、粒子は、微生物に資化された結果として気体及び/又は水性媒体不溶性液体を生成する資化物質を含む。
資化物質は、微生物の種類に応じて適宜選択される。微生物は、資化により、気体を生成する。
微生物が酵母菌である場合、資化物質としては、例えば、グルコース等の糖類、及び、グルコース等の糖類の原料となる澱粉と澱粉を分解して糖類を生成する酵素との混合物を使用できる。
微生物が乳酸菌である場合、資化物質としては、例えば、グルコース及び澱粉等が挙げられる。
微生物が麹カビである場合、資化物質としては、例えば、澱粉及びセルロース等の固体有機物が挙げられる。なお、微生物がカビである場合、カビは固体の有機物に担持されていることが好ましい。
微生物が藻類である場合、資化物質としては、例えば、有機酸、アルコール類、ビタミン、及び栄養塩が挙げられる。
微生物がプランクトンである場合、資化物質としては、例えば、植物プランクトン及び栄養塩等が挙げられる。
【0027】
資化物質は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
粒子中、資化物質の含有量(資化物質が複数種含まれる場合にはその合計量)は特に制限されないが、粒子の全質量に対して、1~80質量%が好ましく、5~65質量%がより好ましく、5~60質量%が更に好ましい。
なお、粒子中の微生物は、外界に存在する物質を資化物質として利用することもできる。このため、粒子は、資化物質を最小限の含有量で含む構成であってもよい。
【0028】
<特定成分>
粒子は、飽和脂肪酸塩、油脂、及び、疎水性担体からなる群から選ばれる成分(特定成分)を含む。
特定成分の性状は特に制限されず、液体状及び固体状が挙げられる。
特定成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
粒子中、特定成分の含有量(特定成分が複数種含まれる場合にはその合計量)は特に制限されないが、粒子の全質量に対して、0.1~5質量%が好ましく、0.1~3質量%がより好ましく、0.1~1質量%が更に好ましい。
【0029】
(飽和脂肪酸塩)
飽和脂肪酸塩としては、例えば、炭素数8以上の飽和脂肪酸の金属塩が挙げられる。
炭素数8以上の飽和脂肪酸としては、炭素数8~22の飽和脂肪酸が好ましく、炭素数10~20の飽和脂肪酸がより好ましく、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、又はステアリン酸が更に好ましい。
飽和脂肪酸塩を構成する金属種としては、ナトリウム及びカリウム等のアルカリ金属;マグネシウム及びカルシウム等のアルカリ土類金属;アルミニウム;銅;亜鉛等が挙げられる。
飽和脂肪酸塩の具体例としては、ステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸カルシウム等が挙げられる。
【0030】
(油脂)
油脂としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。
グリセリン脂肪酸エステルは、モノグリセリド、ジグリセリド、及びトリグリセリドのいずれであってもよく、グリセリンが重合したポリグリセリンのヒドロキシ基の1つ以上に脂肪酸がエステル化した、ポリグリセリン脂肪酸エステルであってもよい。
グリセリン脂肪酸エステルは、市販品を使用することができる。
【0031】
(疎水性担体)
疎水性担体は、疎水性を示す担体である。
疎水性担体の具体例としては、例えば、担体と、担体に担持された疎水性化合物とを含む化合物が挙げられる。
疎水性化合物は、担体上に、化学的又は物理的に吸着していればよい。
担体としては、有機担体及び無機担体のいずれでもよく、例えば、活性炭、ゼオライト、シリカ、アルミナ、木質バイオマス(例えば、木くず、セルロースナノファイバー、カーボンナノチューブ、及びリグニン等)、及び鉄粒子(例えば、鉄粉等)等が挙げられる。
疎水性化合物としては、例えば、飽和脂肪酸;油脂;フルオロアルキル基(好ましくはトリフルオロメチル基)、アルキルシリル基、アルキルアミン基、フルオロシリル基、及び炭素数3以上のアルキル基等の官能基を有する化合物;等が挙げられる。
【0032】
<マトリックス成分>
粒子は、マトリックス成分を含む。
マトリックス成分は、微生物と資化物質とを保持し、且つ、コア部の形状を維持し得る成分であれば特に制限されず、例えば、バインダーポリマー、及び、二酸化ケイ素、リン酸三カルシウム、及びリン酸水素カルシム等が挙げられる。
また、マトリックス成分は、ゲル前駆体成分及びゲル化剤を含むのも好ましい。
マトリックス成分がゲル前駆体成分及びゲル化剤を含む場合、粒子のコア部へ水が浸入した際に、ゲル前駆体成分及びゲル化剤がゲルとなってコア部の結合剤として機能し得る。この結果として、コア部の形状がより一層維持され、品質保持期間が長くなり易い。
ゲル前駆体成分及びゲル化剤としては、後述するシェル部のゲル前駆体成分及びゲル化剤と同様のものが挙げられる。
【0033】
バインダーポリマーとしては、例えば、乳糖、デンプン、デキストリン、白糖、マルチトール、トレハロース、シクロデキストリン、還元麦芽糖水飴、及び結晶セルロース等の固体製剤において賦形剤として使用され得る公知のポリマーが挙げられる。
なお、セルロール及びセルロース誘導体は、セルロースナノファイバーであってもよい。
【0034】
マトリックス成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
粒子中、コア部のマトリックス成分の含有量(マトリックス成分が複数種含まれる場合にはその合計量)は特に制限されないが、粒子の全質量に対して、1~80質量%が好ましく、5~65質量%がより好ましく、5~60質量%が更に好ましい。
【0035】
<その他の成分>
上記コア部は、更に他の成分を含んでいてもよく、例えば、重り材及び浮き材が挙げられる。
重り材とは、粒子を水性媒体へ投与した直後においては重りとして寄与し、粒子が鉛直回遊挙動を示す間に水性媒体へ溶解され得る成分、又は、微生物により資化される成分を意図する。
重り材としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、グルコース、澱粉、グリセロール、及び麦芽糖等が挙げられる。
また、浮き材とは、粒子の溶液内での浮沈過程において浮きとして寄与し得る成分であり、例えば、炭酸水素ナトリウムが挙げられる。
【0036】
<コア部の含水量>
粒子におけるコア部は、実質的に水を含まない。
ここで「実質的に水を含まない」とは、コア部における水の含有量が、コア部の全質量に対して、2質量%以下であることをいい、1.5質量%以下が好ましい。コア部における水の含有量の下限は特に制限されないが、0質量%が挙げられる。
コア部の含水量の測定方法としては、例えば、赤外加熱乾燥質量方式に基づく赤外線電子水分計を用いて実施できる。含水量の測定は、成型体(錠剤)を対象としてもよいし、粉末を対象としてもよい。
【0037】
〔シェル部〕
粒子は、コア部を被覆するシェル部を有する。
シェル部は、マトリックス成分を含むことが好ましい。
また、シェル部は、粒子を適用する各用途に応じた機能を発揮する機能成分(例えば、粒子を汚染物質吸着用粒子として用いる場合、吸着剤が該当する。)と、マトリックス成分と、を含むことが好ましい。シェル部が、機能成分とマトリックス成分とを含む場合、マトリックス成分は機能成分を粒子表面に保持し得る。
【0038】
<マトリックス成分>
マトリックス成分は、特に制限されず、例えば、ゲル状物質及び高分子化合物等が挙げられる。なお、ここでいう高分子化合物は、ゲル状物質を含まない。
上記ゲル状物質の形態としては、物理ゲル又は化学ゲルが好ましい。
なお、ここでいう「物理ゲル」とは、水素結合、イオン結合、及びキレート形成等により高分子が架橋されることにより形成されるゲルを意味する。また、ここでいう「化学ゲル」とは、共有結合によって高分子が架橋されることにより形成されるゲルを意味する。
【0039】
上記ゲル状物質(物理ゲル、化学ゲル)としては、例えば、脂肪酸、天然油脂系脂肪酸、12-ヒドロキシステアリン酸、β-ラクトグロブリン、ヒアルロン酸、アルギン酸、キトサン、カルボキシメチルセルロース、ポリ乳酸、及びポリエチレングリコールからなる群より選ばれるゲル前駆体成分をゲル化したもの;イオン液体/ポリジメチルシロキサン(IL/PDMS)ゲル;シリカゲル;シリコーンゲル;ポリメタクリル酸、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリビニルメチルエーテル、ポリロタキサン、及びゼラチンからなる群より選ばれるゲル前駆体成分をゲル化したもの;等が挙げられる。
【0040】
上述したゲル前駆体成分をゲル化する方法は、使用する各ゲル前駆体成分に応じて適宜選択できる。なかでも、上述したゲル前駆体成分をゲル化する方法は、ゲル化剤を使用してゲル化する方法であるのが好ましい。
例えば、アルギン酸のゲル化剤としては、金属塩が知られている。
アルギン酸のゲル化の具体的な方法としては、アルギン酸及び/又はアルギン酸塩を溶解した水溶液と金属塩とを混合することにより実施できる。なお、金属塩の金属種としては特に制限されないが、例えば、カルシウム、鉄、マンガン、又は亜鉛が好ましく、カルシウム又は鉄がより好ましく、カルシウムが更に好ましい。
【0041】
また、高分子化合物としては、例えば、高吸水性樹脂及びイオン交換樹脂等が挙げられる。高吸水性樹脂としては、N,N-ジメチルアクリルアミド及びN-ビニルピロリドン等の親水性モノマーに由来する繰り返し単位を含む樹脂が挙げられる。イオン交換樹脂としては、スチレン又はジビニルベンゼンに由来する繰り返し単位を含む樹脂が挙げられる。
【0042】
シェル部のマトリックス成分としては、なかでも、微生物により生成された気体をコア部外へ放出しやすい材料であることが好ましく、物理ゲル又は化学ゲルがより好ましい。
【0043】
マトリックス成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
粒子中、シェル部のマトリックス成分の含有量(マトリックス成分が複数種含まれる場合にはその合計量)は特に制限されないが、粒子の全質量に対して、0.5~3質量%が好ましく、0.8~2質量%がより好ましく、0.8~1.2質量%が更に好ましい。
【0044】
<機能成分>
機能成分としては、例えば、水浄化材として広く活用される成分が挙げられる。機能性成分としては、例えば、活性炭;イオン交換樹脂;ゼオライト、酸化鉄、アルミナ、メソポーラスシリカ、モンモリロナイト、及び水酸化セリウム等の無機物;担子菌、糸状菌、放線菌、及び真菌等の微生物;等が挙げられる。
機能成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
粒子中、シェル部の機能成分の含有量(機能成分が複数種含まれる場合にはその合計量)は特に制限されないが、粒子の全質量に対して、0.1~50質量%が好ましく、1~25質量%がより好ましく、5~10質量%が更に好ましい。
【0045】
〔粒子の製造方法〕
以下に、粒子の製造方法について説明する。
粒子の製造方法としては特に制限されず、例えば、以下に示す第1~3の製造方法が挙げられる。
【0046】
<第1の製造方法>
第1の製造方法は、以下に示す工程1及び工程2を含む製造方法である。
工程1:微生物と、資化物質と、マトリックス成分と、特定成分とを含む組成物を圧縮成形して、実質的に水を含まない成形体を得る工程
工程2:上記成形体の表面に被覆層を形成して、コア部と、上記コア部を被覆するシェル部とを含む粒子を形成する工程
【0047】
以下、工程1及び工程2について詳述する。
【0048】
(工程1)
工程1は、微生物と、資化物質と、マトリックス成分と、特定成分とを含む組成物(以下、単に「組成物」ともいう。)を圧縮成形して、実質的に水を含まない成形体を得る工程である。
【0049】
《組成物》
組成物は、微生物、資化物質、マトリックス成分、及び特定成分とを含む。組成物中に含まれる微生物、資化物質、マトリックス成分、及び特定成分は、上段部で説明した粒子のコア部が含む微生物、資化物質、マトリックス成分、及び特定成分と同じである。
また、組成物は、上記以外のその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、上段部で説明した粒子のコア部が含むその他の成分が挙げられる。
【0050】
組成物中、微生物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
組成物中、微生物の含有量(微生物が複数種含まれる場合にはその合計量)は特に制限されないが、組成物の全質量に対して、1~20質量%が好ましく、1~10質量%がより好ましい。
【0051】
組成物中、資化物質は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
組成物中、資化物質の含有量(資化物質が複数種含まれる場合にはその合計量)は特に制限されないが、組成物の全質量に対して、1~90質量%が好ましく、5~80質量%がより好ましく、5~65質量%が更に好ましく、5~60質量%が好ましい。
【0052】
組成物中、特定成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
組成物中、中、特定成分の含有量(特定成分が複数種含まれる場合にはその合計量)は特に制限されないが、組成物の全質量に対して、0.5~10質量%が好ましく、1~10質量%がより好ましく、2~10質量%が更に好ましい。
【0053】
組成物中、マトリックス成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
組成物中、マトリックス成分の含有量(マトリックス成分が複数種含まれる場合にはその合計量)は特に制限されないが、組成物の全質量に対して、1~80質量%が好ましく、5~65質量%がより好ましく、5~60質量%が更に好ましい。
【0054】
組成物は、上述の各種成分を混合することにより調製できる。混合方法としては特に制限されず、例えば、パドルミキサー、アジホモミキサー、及びディスパーミキサー等を使用してもよい。
【0055】
《圧縮成形》
組成物の圧縮成形は、打錠機により実施するのが好ましい。
打錠機としては特に制限されず、例えば、単発式打錠機及びロータリー式打錠機等を使用できる。
圧縮成形の圧力は、例えば、1~10kNが好ましく、1.0~1.5kNがより好ましい。
工程1により得られる成形体(錠剤)の硬度としては、2~30Nが好ましく、2~10Nがより好ましい。
工程1により得られる成形体(錠剤)の形状は特に制限されず、球状、板状、及び針状等が挙げられ、なかでも、球状が好ましい。なお、ここでいう「球状」とは、真球状だけでなく、回転楕円体及び卵形等の形状も含む。
成形体の平均粒径は特に制限されないが、例えば、1cm以下が好ましく、0.5cm以下がより好ましく、3mm以下が更に好ましい。なお、下限値は、例えば、1mm以上である。
なお、平均粒径とは、10個以上の粒子の長径を測定し、それらを算術平均して得られる値である。
【0056】
また、成形体は、実質的に水を含まない。
ここで「実質的に水を含まない」とは、成型体における水の含有量が、成型体の全質量に対して2質量%以下であることをいい、1.5質量%以下であるのが好ましい。成型体中における水の含有量の下限としては、0質量%が挙げられる。
成型体の含水量の測定方法としては、例えば、赤外加熱乾燥質量方式に基づく赤外線電子水分計を用いて実施できる。含水量の測定は、成型体を対象としてもよいし、成型体を粉砕した粉末又は成型体形成前の組成物粉末を対象としてもよい。
【0057】
(工程2)
工程2は、工程1で得られた成形体の表面に被覆層を形成して、コア部と、上記コア部を被覆するシェル部とを含む粒子を形成する工程である。本工程を実施することにより、シェル部となる被覆層が形成される。
【0058】
被覆層の形成方法としては特に制限されず、被覆層を構成する材料に応じて適宜選択できる。
例えば、成形体の周囲にゲル状の被覆層を形成する方法として、成形体をゲル前駆体成分含有液に浸漬し、次いで、ゲル前駆体成分含有液から取り出した成形体をゲル化剤含有液に浸漬して、ゲル前駆体をゲル化する方法が挙げられる。
ゲル前駆体成分としては、上段部において粒子のシェル部を形成する成分として説明した各種ゲル前駆体成分が挙げられ、なかでも、アルギン酸又はその塩が好ましい。
例えば、被覆層をアルギン酸のゲル状物とする場合、成形体をアルギン酸及び/又はアルギン酸塩を溶解した水溶液に浸漬し、次いで、この水溶液から取り出した成形体をカルシウム、鉄、マンガン、及び亜鉛から選ばれる金属塩を溶解した水溶液に浸漬すればよい。
【0059】
ゲル前駆体成分とゲル化剤を使用して、成形体の周囲にゲル状の被覆層を形成する場合、工程2としては、下記工程A~工程Cを含むのが好ましい。
工程A:ゲル前駆体成分と溶媒とを含む第1液を管状物に充填する工程
工程B:工程1で得られた成形体を管状物の内部に挿入して、第1液に浸漬する工程
工程C:管状物から成形体をゲル化剤と溶媒とを含む第2液中に排出して、粒子を形成する工程
【0060】
《工程A》
工程Aは、ゲル前駆体成分と溶媒とを含む第1液を管状物に充填する工程である。
第1液としては、ゲル前駆体成分と溶媒を含む溶液であれば、その種類は特に制限されない。溶媒としては、ゲル前駆体成分を溶解可能であれば特に制限されず、例えば、水等が挙げられる。
工程Aで使用する管状物の形態としては、例えば、成形体の周囲にゲル状の被覆層を形成し易い点で、先端に挿入口(吸い口)を有し、他端に吸引装置を連結可能であり、且つ、他端に連結した吸引装置によって管状物内部の圧力の調整により、成形体及び前駆体形成成分の吸引、吐出、及び、保持を可能とするものであればよい。このような管状物としては、例えば、図1に示す管状物が好適に使用され得る。
図1の管状物1は、先端3aに、成形体及び前駆体形成成分の挿入口となる直管部3を有し、更に、直管部3と連通し、挿入口とは反対側に向かって縮径する縮径部5と、縮径部5と連通し且つ管状物1の他端に配置された吸引装置(不図示)と縮径部5とを連結する連結部7と、を有している。
【0061】
直管部3の内径は、工程1で得られた成形体の直径よりも大きければ特に制限されないが、成形体の直径の2倍以上であるのが好ましく、例えば、0.1~1cmである。
直管部3の高さは、成形体の表面に被覆層を形成し易くする点で、工程1で得られた成形体の直径よりも大きいことが好ましく、例えば、0.2~1.5cmである。
また、縮径部5の連結部7側の内径は、例えば、0.3~0.7cmである。
縮径部5の連結部7側の内径は、成形体の粒径より小さいことが好ましい。
【0062】
工程Aでは、まず、ゲル前駆体成分と溶媒とを含む第1液を先端の吸い口から管状物1の内部に吸い上げることで、第1成分を管状物に充填する。第1液を管状物1の内部に吸い上げる際、第1液は、少なくとも直管部3と縮径部5が充填されるまで吸引される。
【0063】
《工程B》
工程Bは、工程1で得られた成形体を管状物1の内部に挿入して、第1液に浸漬する工程である。
まず、内部に成形体を配置したウェルを準備し、上述の第1液を内部に充填した状態の管状物1をウェル内に差し入れ、管状物1の吸い口を成形体に接触させて、管状物1の吸い口に成形体を挿入する。この操作の後、管状物1の内圧を落とすことで、成形体を管状物1の内部に吸い上げ、成形体を管状物1の内部に充填された第1液に浸漬させる。
浸漬時間は、例えば、1~120秒が好ましい。
第1液の温度は、例えば、3~40℃が好ましい。
ウェルの形状としては特に制限されず、平底ウェル及び丸底ウェル等が挙げられる。
【0064】
《工程C》
工程Cは、工程Bを経た成形体を管状物から吐出し、ゲル化剤と溶媒とを含む第2液に浸漬させる工程である。工程Cを経ることで、成形体(コア部)の周囲にゲル状の被覆層(シェル部)を有する粒子が形成される。
浸漬時間は、例えば、10秒~300秒が好ましい。
第2液の温度は、例えば、3~40℃が好ましい。
【0065】
工程Cにより得られる粒子は、第2液から取り出された後、乾燥を施されるのが好ましい。乾燥法としては、例えば、通風乾燥、真空乾燥、及び凍結乾燥等が挙げられ、凍結乾燥が好ましい。
【0066】
<第2の製造方法>
第2の製造方法は、以下に示す工程3、工程4、及び工程2を含む製造方法である。
工程3:微生物と、資化物質と、マトリックス成分とを含む組成物を圧縮成形して成形体前駆体を形成する工程
工程4:成形体前駆体の表面に特定成分を付着し、実質的に水を含まない成形体を形成する工程
工程2:上記成形体の表面に被覆層を形成して、コア部と、上記コア部を被覆するシェル部とを含む粒子を形成する工程
【0067】
第2の製造方法は、工程1に代えて、工程3及び工程4を実施する点以外は、第1の製造方法と同様の手順により実施できる。つまり、第2の製造方法では、予め特定成分以外の成分を混合した組成物を使用して成形体前駆体を作製し、この成形体前駆体の表面に特定成分を塗布することで成形体(コア部)を形成している。
成形体前駆体の表面に特定成分を付着する方法としては、スプレー法及び浸漬法等が挙げられる。
【0068】
また、工程4で形成される成形体は、実質的に水を含まない。
ここで「実質的に水を含まない」とは、成形体における水の含有量が、成形体の全質量に対して2質量%以下であることをいい、1.5質量%以下であるのが好ましい。成形体中における水の含有量の下限としては、0質量%が挙げられる。
成型体の含水量の測定方法としては、例えば、赤外加熱乾燥質量方式に基づく赤外線電子水分計を用いて実施できる。含水量の測定は、成型体を対象としてもよいし、成型体を粉砕した粉末を対象としてもよい。
【0069】
工程3及び4により、コア部の表面側に特定成分が多く含まれる成形体を形成できる。
【0070】
<第3の製造方法>
第3の製造方法は、以下に示す工程5及び工程2を含む製造方法である。
工程5:杵及び臼の少なくとも一方に特定成分を配置した打錠機を使用して、微生物と、資化物質と、マトリックス成分とを含む組成物を外部滑沢法に基づいて圧縮成形して、実質的に水を含まない成形体を得る工程
工程2:上記成形体の表面に被覆層を形成して、コア部と、上記コア部を被覆するシェル部とを含む粒子を形成する工程
【0071】
第3の製造方法は、工程1に代えて工程5を実施する点以外は、第1の製造方法と同様の手順により実施できる。
また、工程5で形成される成形体は、実質的に水を含まない。
ここで「実質的に水を含まない」とは、成形体における水の含有量が、成形体の全質量に対して2質量%以下であることをいい、1.5質量%以下であるのが好ましい。成形体中における水の含有量の下限としては、0質量%が挙げられる。
成型体の含水量の測定方法としては、例えば、赤外加熱乾燥質量方式に基づく赤外線電子水分計を用いて実施できる。含水量の測定は、成型体を対象としてもよいし、成型体を粉砕した粉末を対象としてもよい。
工程5により、表面側に特定成分が多く含まれる成形体を形成できる。
【実施例0072】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0073】
[実施例1:粒子Aの作製及び評価]
〔コア部の作製〕
<混合粉末Aの作製>
グルコース72g、ドライイースト7.2g、結晶セルロース2.0g、ステアリン酸マグネシウム2.0g、二酸化ケイ素2.0g、乳酸カルシウム1.2g、及びアルギン酸ナトリウム1.2gを混和した。
次いで、得られた混和物50gを三庄インダストリー株式会社ロータリークラッシャーに投入して粉砕して、混合粉末Aを得た。
【0074】
<錠剤Aの作製>
単発式打錠機(単発式打錠機「FY-TQM」(富士薬品機械社製))を使用して、25℃50%RH環境下にて混合粉末Aの錠剤A(直径3mmの丸錠、重さ30mg、硬度15N)を成形した。
25℃40%RHの環境下、赤外線式電子水分計(株式会社シービーシー「MB-30」)を使用して錠剤Aの含水量を測定したところ、錠剤Aの含水量は、錠剤Aの全質量に対して、1.5質量%以下であった。
【0075】
〔シェル部の作製〕
次いで、図1に示す管状物を使用して、錠剤A(コア部)の周囲に被覆層(シェル部)を付与する操作を実施した。
なお、図1に示す管状物は、先端に挿入口(吸い口)を有する管状物であり、他端に連結した吸引装置により管状物内部の圧力の調整により、錠剤A及びシェル部形成成分の吸引、吐出、及び、保持が可能である。図1の管状物の具体的な構造については、既述のとおりである。
【0076】
まず、1質量%アルギン酸ナトリウム水溶液(製品名「アルギン酸ナトリウム 500~600cP」、富士フィルム和光純薬(株)社製(以下「第1液」ともいう。))を先端の吸い口から管状物の内部に吸い上げることで、第1液を管状物に充填した。
次いで、第1液を内部に充填した状態の管状物を錠剤Aを設置した平底ウェルに差し入れ、管状物の吸い口に錠剤Aを挿入した後、錠剤Aを管状物の内部に吸い上げた。上記操作により、錠剤Aは、管状物の内部に充填された第1液に浸漬された。
1分間の浸漬の後、管状物から錠剤Aを吐出して、錠剤Aを5質量%塩化カルシウム水溶液(以下「第2液」ともいう。)内へ浸漬させる(浸漬時間3分間)ことで、錠剤A(コア部)の周囲にゲル状の被覆層(シェル部)を形成した。なお、サーモカメラによる熱分析により、錠剤Aを第2液に浸漬させた際、コア部への水の侵入は抑制されていることを確認した。
【0077】
〔粒子Aの評価〕
作製した粒子Aについて、以下の各種評価を実施した。
<評価1:長期保管後の自律浮沈挙動>
乾燥処理を行った粒子Aを脱気密封装置にて真空パック保存し、温度25℃で72時間保管した。
次いで、保管後の粒子Aを水温25℃の水を収容した透明容器(容量5~10L、高さ1~2mの透明容器)に投入してその自律浮沈挙動を観察した。
長期保管後の粒子Aは、水底から水面までの浮沈を繰り返し、作製直後の粒子Aと同様の浮沈挙動を示した。また、長期保管後の粒子Aの、浮沈速度、浮沈回数、及び自律浮沈挙動が示されなくなるまでの期間(品質保持期間)は、作製直後の粒子Aとほぼ同じであり、良好な自律浮沈挙動を示した。
【0078】
<評価2:水性媒体中での形状維持性>
粒子Aを水0.1mLに水没させて3分間放置した。その後、粒子Aの形状、質量変化、及び硬度の変化を確認した。
粒子Aは、水没前後で、形状、質量、及び硬度に変化がないことが確認された。
【0079】
[実施例2:粒子Bの作製]
〔コア部の作製〕
<混合粉末Bの作製>
グルコース72g、ドライイースト7.2g、結晶セルロース2.0g、二酸化ケイ素2.0g、乳酸カルシウム1.2g、及びアルギン酸ナトリウム1.2gを混和した。
次いで、得られた混和物50gを三庄インダストリー株式会社ロータリークラッシャーに投入して粉砕して、混合粉末Bを得た。
【0080】
<錠剤Bの作製>
25℃50%RH環境下にて、打錠を行う臼杵の表面に予めステアリン酸カルシウムを噴霧塗布した単発式打錠機(単発式打錠機「FY-TQM」(富士薬品機械社製))を使用して混合粉末Bを打錠成形し、錠剤B(直径3mmの丸錠、重さ30mg、硬度15N)を成形した。錠剤Bは、微生物、資化物質、及びマトリックスを主成分とするコア部とコア部の周囲を覆うステアリン酸マグネシウムの被膜とから構成される。
【0081】
25℃40%RHの環境下、赤外線式電子水分計(株式会社シービーシー「MB-30」)を使用して錠剤Bの含水量を測定したところ、錠剤Bの含水量は、錠剤Bの全質量に対して、1.5質量%以下であった。
【0082】
〔シェル部の作製〕
次いで、実施例1の粒子Aと同様の手順により、錠剤Bの周囲にゲル状の被覆層(シェル部)を形成することで、粒子Bを作製した。なお、サーモカメラによる熱分析により、錠剤Bを第2液に浸漬させた際、コア部への水の侵入は抑制されていることを確認した。
【0083】
〔粒子Bの評価〕
作製した粒子Bについて、以下の各種評価を実施した。
<評価1:長期保管後の自律浮沈挙動>
乾燥処理を行った粒子Bを脱気密封装置にて真空パック保存し、温度25℃で72時間保管した。
次いで、保管後の粒子Bを水温25℃の水を収容した透明容器(容量5~10L、高さ1~2mの透明容器)に投入してその自律浮沈挙動を観察した。
長期保管後の粒子Bは、水底から水面までの浮沈を繰り返し、作製直後の粒子Bと同様の浮沈挙動を示した。また、長期保管後の粒子Bの、浮沈速度、浮沈回数、及び自律浮沈挙動が示されなくなるまでの期間(品質保持期間)は、作製直後の粒子Bとほぼ同じであり、良好な自律浮沈挙動を示した。
【0084】
<評価2:水性媒体中での形状維持性>
粒子Bを水0.1mLに水没させて3分間放置した。その後、粒子Bの形状、質量変化、及び硬度の変化を確認した。
粒子Bは、水没前後で、形状、質量、及び硬度に変化がないことが確認された。
【0085】
[実施例3:粒子Cの作製]
〔コア部の作製〕
<混合粉末Cの作製>
グルコース72g、ドライイースト7.2g、結晶セルロース2.0g、二酸化ケイ素2.0g、乳酸カルシウム1.2g、及びアルギン酸ナトリウム1.2gを混和した。
次いで、得られた混和物50gを三庄インダストリー株式会社ロータリークラッシャーに投入して粉砕して、混合粉末Cを得た。
【0086】
<錠剤Cの作製>
25℃50%RH環境下にて、単発式打錠機(単発式打錠機「FY-TQM」(富士薬品機械社製))を使用して混合粉末Cを打錠成形し、得られた打錠成形物にステアリン酸マグネシウムを噴霧塗布して、錠剤C(直径3mmの丸錠、重さ30mg、硬度15N)を成形した。錠剤Cは、微生物、資化物質、及びマトリックスを主成分とするコア部とコア部の周囲を覆うステアリン酸マグネシウムの被膜とから構成される。
【0087】
25℃40%RHの環境下、赤外線式電子水分計(株式会社シービーシー「MB-30」)を使用して錠剤Cの含水量を測定したところ、錠剤Cの含水量は、錠剤Cの全質量に対して、1.5質量%以下であった。
【0088】
〔シェル部の作製〕
次いで、実施例1の粒子Aと同様の手順により、錠剤Cの周囲にゲル状の被覆層(シェル部)を形成することで、粒子Cを作製した。なお、サーモカメラによる熱分析により、錠剤Cを第2液に浸漬させた際、コア部への水の侵入は抑制されていることを確認した。
【0089】
〔粒子Cの評価〕
作製した粒子Cについて、以下の各種評価を実施した。
<評価1:長期保管後の自律浮沈挙動>
乾燥処理を行った粒子Cを脱気密封装置にて真空パック保存し、温度25℃で72時間保管した。
次いで、保管後の粒子Cを水温25℃の水を収容した透明容器(容量5~10L、高さ1~2mの透明容器)に投入してその自律浮沈挙動を観察した。
長期保管後の粒子Cは、水底から水面までの浮沈を繰り返し、作製直後の粒子Cと同様の浮沈挙動を示した。また、長期保管後の粒子Cの、浮沈速度、浮沈回数、及び自律浮沈挙動が示されなくなるまでの期間(品質保持期間)は、作製直後の粒子Cとほぼ同じであり、良好な自律浮沈挙動を示した。
【0090】
<評価2:水性媒体中での形状維持性>
粒子Cを水0.1mLに水没させて3分間放置した。その後、粒子Cの形状、質量変化、及び硬度の変化を確認した。
粒子Cは、水没前後で、形状、質量、及び硬度に変化がないことが確認された。
【0091】
[比較例1:粒子Rの作製]
〔コア部の作製〕
<混合粉末Rの作製>
グルコース72g、ドライイースト7.2g、結晶セルロース2.0g、二酸化ケイ素2.0g、乳酸カルシウム1.2g、及びアルギン酸ナトリウム1.2gを混和した。
次いで、得られた混和物50gを三庄インダストリー株式会社ロータリークラッシャーに投入して粉砕して、混合粉末Rを得た。
【0092】
<錠剤Rの作製>
単発式打錠機(単発式打錠機「FY-TQM」(富士薬品機械社製))を使用して、25℃50%RH環境下にて混合粉末Rの錠剤R(直径3mmの丸錠、重さ30mg、硬度15N)を成形した。
25℃40%RHの環境下、赤外線式電子水分計(株式会社シービーシー「MB-30」)を使用して錠剤Rの含水量を測定したところ、錠剤Rの含水量は、錠剤Rの全質量に対して、1.5質量%以下であった。
【0093】
〔シェル部の作製〕
次いで、実施例1の粒子Aと同様の手順により、錠剤Rの周囲にゲル状の被覆層(シェル部)を形成することで、粒子Rを作製した。
【0094】
〔粒子Rの評価〕
作製した粒子Rについて、以下の各種評価を実施した。
<評価1:長期保管後の自律浮沈挙動>
乾燥処理を行った粒子Aを脱気密封装置にて真空パック保存し、温度25℃で72時間保管した。
次いで、保管後の粒子Rを水温25℃の水を収容した透明容器(容量5~10L、高さ1~2mの透明容器)に投入してその自律浮沈挙動を観察した。
長期保管後の粒子Rは、水底から水面までの浮沈を繰り返したものの、浮沈速度、浮沈回数、及び自律浮沈挙動が示されなくなるまでの期間(品質保持期間)は、作製直後の粒子Rと比べて劣化していることが確認された。
【0095】
<評価2:水性媒体中での形状維持性>
粒子Rを水0.1mLに水没させて観察したところ、1分以内に崩壊した。
【符号の説明】
【0096】
1 管状物
3a 先端
3 直管部
5 縮径部
7 連結部
図1