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特開2024-161963換気装置の制御方法、換気制御装置、及び換気制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161963
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】換気装置の制御方法、換気制御装置、及び換気制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/007 20060101AFI20241114BHJP
   F24F 11/74 20180101ALI20241114BHJP
   F24F 7/08 20060101ALI20241114BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20241114BHJP
   F24F 110/12 20180101ALN20241114BHJP
   F24F 110/50 20180101ALN20241114BHJP
   F24F 110/72 20180101ALN20241114BHJP
【FI】
F24F7/007 B
F24F11/74
F24F7/08 101J
F24F110:10
F24F110:12
F24F110:50
F24F110:72
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077061
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】重田 明広
(72)【発明者】
【氏名】森 拓也
(72)【発明者】
【氏名】丸橋 伊織
(72)【発明者】
【氏名】金子 雄太
【テーマコード(参考)】
3L056
3L260
【Fターム(参考)】
3L056BD01
3L056BD02
3L056BE01
3L260AB15
3L260AB17
3L260BA02
3L260BA51
3L260CA12
3L260CA17
3L260CA32
3L260CB51
3L260CB65
3L260EA02
3L260EA07
3L260EA08
3L260FA07
3L260FC01
(57)【要約】
【課題】ユーザの安全性と快適性とを両立するように風量を調整できる換気装置の制御方法を提供する。
【解決手段】換気装置の制御方法は、目標温度、室内温度、外気温度の大小関係に応じて換気の目標風量を決定する目標決定ステップと、これらの温度の間の温度差に基づいて目標風量を増加させるか否かを判定する第1判定ステップと、空気汚染度に基づいて換気風量を増加させるべきか否かを判定する第2判定ステップと、実現すべき換気風量である設定風量を決定する風量決定ステップと、を含み、風量決定ステップでは、第1判定ステップにおいて目標風量を増加させないと判定し且つ第2判定ステップにおいて換気風量を増加させるべきと判定した場合の設定風量を、目標風量を増加させると判定し且つ換気風量を増加させるべきと判定した場合の設定風量より大きな値に決定する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
換気装置を制御する換気制御装置のコンピュータが実行する、換気装置の制御方法であって、
換気対象である空間についての目標温度、前記空間の温度である室内温度、及び前記空間の外の温度である外気温度の間の大小関係である温度状態に応じて前記空間の換気風量の目標風量を決定する目標決定ステップと、
前記目標温度、前記室内温度、及び前記外気温度の間の温度差に基づいて、前記目標風量を増加させるか否かを判定する第1判定ステップと、
前記空間の空気汚染度に基づいて、前記空間の換気風量を現在の風量から増加させるべきか否かを判定する第2判定ステップと、
前記第1判定ステップの判定結果及び前記第2判定ステップの判定結果に基づいて、前記空間において実現すべき換気風量である設定風量を決定する風量決定ステップと、
を含み、
前記風量決定ステップでは、前記第1判定ステップにおいて前記目標風量を増加させないと判定し且つ前記第2判定ステップにおいて前記空間の換気風量を現在の風量から増加させるべきと判定した場合の前記設定風量を、前記第1判定ステップにおいて前記目標風量を増加させると判定し且つ前記第2判定ステップにおいて前記空間の換気風量を現在の風量から増加させるべきと判定した場合の前記設定風量より大きな値に決定する、
換気装置の制御方法。
【請求項2】
前記空気汚染度は、前記空間における二酸化炭素の濃度であって、
前記第2判定ステップでは、前記空間における現在の換気風量が前記空間における二酸化炭素の濃度に応じて予め定められた下限風量より小さい場合に、前記換気風量を増加させるべきと判定する、
請求項1に記載の換気装置の制御方法。
【請求項3】
前記第1判定ステップでは、
前記温度状態が、前記目標温度と前記外気温度とが所定の温度誤差の範囲で一致し、且つ前記室内温度が前記目標温度及び前記外気温度より高いか又は低い第1状態であるときは、前記目標決定ステップにおいて前記第1状態に応じて決定された前記目標風量を、
前記目標温度と前記室内温度との温度差が予め定めた所定値より大きい場合に増加させると判定し、
前記目標温度と前記室内温度との温度差が前記所定値より小さい場合に増加させないと判定する、
請求項1に記載の換気装置の制御方法。
【請求項4】
前記第1判定ステップでは、
前記温度状態が、前記目標温度が前記室内温度より高く且つ前記外気温度より低い第2状態、又は前記目標温度が前記外気温度より高く且つ前記室内温度より低い第3状態であるときは、それぞれ、前記目標決定ステップにおいて前記第2状態に応じて決定された前記目標風量、又は前記第3状態に応じて決定された前記目標風量を、
前記目標温度と前記外気温度との温度差が前記目標温度と前記室内温度との温度差より小さい場合に増加させると判定し、
前記目標温度と前記外気温度との温度差が前記目標温度と前記室内温度との温度差以上である場合に増加させさないと判定する、
請求項1に記載の換気装置の制御方法。
【請求項5】
前記第1判定ステップでは、
前記温度状態が、前記外気温度が前記目標温度より高く且つ前記室内温度より低い第4状態、又は前記外気温度が前記室内温度より高く且つ前記目標温度より低い第5状態であるときは、それぞれ、前記目標決定ステップにおいて前記第4状態に応じて決定された前記目標風量、又は前記第5状態に応じて決定された前記目標風量を、
前記外気温度と前記目標温度との温度差が前記外気温度と前記室内温度との温度差より小さい場合に増加させると判定し、
前記外気温度と前記目標温度との温度差が前記外気温度と前記室内温度との温度差以上である場合に増加させないと判定する、
請求項1に記載の換気装置の制御方法。
【請求項6】
前記換気装置は、熱交換器を備え、
前記換気装置に実行させる換気モードを、前記熱交換器を動作させる熱交換換気モードとするか、又は前記熱交換器を動作させない通常換気モードとするか、を選択するモード選択ステップ、を更に含み、
前記第1判定ステップでは、前記モード選択ステップで前記熱交換換気モードが選択された場合には、前記目標温度、前記室内温度、及び前記外気温度の間の温度差の値に関わらず、前記目標決定ステップにおいて決定された前記目標風量を増加させないと判定する、
請求項1に記載の換気装置の制御方法。
【請求項7】
前記目標温度は、快適性指標に基づいて算出される、
請求項1に記載の換気装置の制御方法。
【請求項8】
前記空間を換気対象とする複数の前記換気装置の中から、換気動作を実行する少なくとも一つの前記換気装置を選定する装置選定ステップを含み、
前記装置選定ステップでは、前記空間に設けられたそれぞれの前記換気装置の換気口に対応する位置の前記空気汚染度に基づいて、換気動作を実行する少なくとも一つの前記換気装置を選定する、
請求項1に記載の換気装置の制御方法。
【請求項9】
前記目標決定ステップ、前記第1判定ステップ、前記第2判定ステップ、及び前記風量決定ステップを、所定時間毎に繰り返し実行する、
請求項1ないし8のいずれか一項に記載の換気装置の制御方法。
【請求項10】
換気装置を制御する換気制御装置のコンピュータが実行する、換気装置の制御方法であって、
換気対象である空間における空気汚染度が予め定めた所定の程度よりも低いときに、前記空間についての目標温度と前記空間の外の外気温度とが共に前記空間の温度である室内温度よりも低い場合又は前記目標温度と前記外気温度とが共に前記室内温度よりも高い場合の前記空間の換気風量が、前記室内温度が前記外気温度より高く且つ前記目標温度より低い場合又は前記室内温度が前記目標温度より高く且つ前記外気温度より低い場合の前記空間の換気風量に比べて大きい値となるように、前記換気装置の動作風量を調整することを含む、
換気装置の制御方法。
【請求項11】
換気対象である空間における空気汚染度が予め定めた所定の程度よりも低い場合であって、前記目標温度が前記室内温度より高く且つ前記外気温度より低いとき、又は前記目標温度が前記外気温度より高く且つ前記室内温度より低いときに、前記目標温度と前記外気温度との温度差が前記目標温度と前記室内温度との温度差より小さい場合の前記空間の換気風量が、前記目標温度と前記外気温度との温度差が前記目標温度と前記室内温度との温度差より大きい場合の前記空間の換気風量に比べて大きい値となるように、前記換気装置の動作風量を調整することを含む、
請求項10に記載の換気装置の制御方法。
【請求項12】
換気対象である空間における空気汚染度が予め定めた所定の程度よりも低い場合であって、前記外気温度が前記目標温度より高く且つ前記室内温度より低いとき、又は前記外気温度が前記室内温度より高く且つ前記目標温度より低いときに、前記外気温度と前記目標温度との温度差が前記外気温度と前記室内温度との温度差より小さい場合の前記空間の換気風量が、前記外気温度と前記目標温度との温度差が前記外気温度と前記室内温度との温度差より大きい場合の前記空間の換気風量に比べて大きい値となるように、前記換気装置の動作風量を調整することを含む、
請求項10又は11に記載の換気装置の制御方法。
【請求項13】
換気対象である空間を換気する換気装置を制御する換気制御装置であって、
前記空間についての目標温度、前記空間の温度である室内温度、及び前記空間の外の温度である外気温度の間の大小関係を表す温度状態に応じて前記空間の換気風量の目標風量を決定する目標決定部と、
前記目標温度、前記室内温度、及び前記外気温度の間の温度差に基づいて、前記目標風量を増加させるか否かを判定する第1判定部と、
前記空間の空気汚染度に基づいて、前記空間の現在の換気風量を増加させるべきか否かを判定する第2判定部と、
前記第1判定部の判定結果及び前記第2判定部の判定結果に基づいて、前記空間において実現すべき換気風量である設定風量を決定する風量決定部と、
を備え、
前記風量決定部は、前記第1判定部において前記目標風量を増加させないと判定し且つ前記第2判定部において前記空間の換気風量を現在の風量から増加させるべきと判定した場合の前記設定風量を、前記第1判定部において前記目標風量を増加させると判定し且つ前記第2判定部において前記空間の換気風量を現在の風量から増加させるべきと判定した場合の前記設定風量より大きな値に決定する、
換気制御装置。
【請求項14】
換気対象である空間を換気する換気装置を制御する換気制御装置のコンピュータを、
前記空間についての目標温度、前記空間の温度である室内温度、及び前記空間の外の温度である外気温度の間の大小関係を表す温度状態に応じて前記空間の換気風量の目標風量を決定する目標決定部、
前記目標温度、前記室内温度、及び前記外気温度の間の温度差に基づいて、前記目標風量を増加させるか否かを判定する第1判定部、
前記空間の空気汚染度に基づいて、前記空間の現在の換気風量を増加させるべきか否かを判定する第2判定部、及び、
前記第1判定部の判定結果及び前記第2判定部の判定結果に基づいて、前記空間において実現すべき換気風量である設定風量を決定する風量決定部、
として機能させる換気制御プログラムであって、
前記風量決定部は、前記第1判定部において前記目標風量を増加させないと判定し且つ前記第2判定部において前記空間の換気風量を現在の風量から増加させるべきと判定した場合の前記設定風量を、前記第1判定部において前記目標風量を増加させると判定し且つ前記第2判定部において前記空間の換気風量を現在の風量から増加させるべきと判定した場合の前記設定風量より大きな値に決定する、
換気制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、換気装置の制御方法、換気制御装置、及び換気制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、被換気空間のCOの濃度を調整する換気装置を開示する。特許文献1が開示する換気装置は、送風機とCOセンサと制御部とを備え、制御部がCOセンサの検出値に基づいて送風機の運転を「強運転」、「中運転」、「弱運転」から選択する。
【0003】
また、特許文献2は、全熱交換換気を採用する空調換気システムについての省エネ性と室内快適性を両立させる制御方法を開示する。特許文献2が開示する制御方法は、室温及び外気温に応じて直接換気又は全熱交換換気のいずれかの換気方式の選択を行い、室温、外気温、及び室内の二酸化炭素濃度に応じて換気量を選択する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2020/053946号
【特許文献2】特開2013-210138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、換気対象である空間にいる人の、空間内の空気汚染に対する安全性と空間内の温度についての快適性とを両立し得る、換気装置の制御方法、換気制御装置、及び換気制御プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示における換気装置の制御方法は、換気対象である空間についての目標温度、前記空間の温度である室内温度、及び前記空間の外の温度である外気温度の間の大小関係である温度状態に応じて前記空間の換気風量の目標風量を決定する目標決定ステップと、前記目標温度、前記室内温度、及び前記外気温度の間の温度差に基づいて、前記目標風量を増加させるか否かを判定する第1判定ステップと、前記空間の空気汚染度に基づいて、前記空間の換気風量を現在の風量から増加させるべきか否かを判定する第2判定ステップと、前記第1判定ステップの判定結果及び前記第2判定ステップの判定結果に基づいて、前記空間において実現すべき換気風量である設定風量を決定する風量決定ステップと、を含む。前記風量決定ステップでは、前記第1判定ステップにおいて前記目標風量を増加させないと判定し且つ前記第2判定ステップにおいて前記空間の換気風量を現在の風量から増加させるべきと判定した場合の前記設定風量を、前記第1判定ステップにおいて前記目標風量を増加させると判定し且つ前記第2判定ステップにおいて前記空間の換気風量を現在の風量から増加させるべきと判定した場合の前記設定風量より大きな値に決定する。
【0007】
また、本開示における他の換気装置の制御方法は、換気対象である空間における空気汚染度が予め定めた所定の程度よりも低いときに、前記空間についての目標温度と前記空間の外の外気温度とが共に前記空間の温度である室内温度よりも低い場合又は前記目標温度と前記外気温度とが共に前記室内温度よりも高い場合の前記空間の換気風量が、前記室内温度が前記外気温度より高く且つ前記目標温度より低い場合又は前記室内温度が前記目標温度より高く且つ前記外気温度より低い場合の前記空間の換気風量に比べて大きい値となるように、前記換気装置の動作風量を調整することを含む。
【0008】
また、本開示における換気制御装置は、換気対象である空間についての目標温度、前記空間の温度である室内温度、及び前記空間の外の温度である外気温度の間の大小関係を表す温度状態に応じて前記空間の換気風量の目標風量を決定する目標決定部と、前記目標温度、前記室内温度、及び前記外気温度の間の温度差に基づいて、前記目標風量を増加させるか否かを判定する第1判定部と、前記空間の空気汚染度に基づいて、前記空間の現在の換気風量を増加させるべきか否かを判定する第2判定部と、前記第1判定部の判定結果及び前記第2判定部の判定結果に基づいて、前記空間において実現すべき換気風量である設定風量を決定する風量決定部と、を備える。前記風量決定部は、前記第1判定部において前記目標風量を増加させないと判定し且つ前記第2判定部において前記空間の換気風量を現在の風量から増加させるべきと判定した場合の前記設定風量を、前記第1判定部において前記目標風量を増加させると判定し且つ前記第2判定部において前記空間の換気風量を現在の風量から増加させるべきと判定した場合の前記設定風量より大きな値に決定する。
【0009】
また、本開示における換気制御プログラムは、換気対象である空間を換気する換気装置を制御する換気制御装置のコンピュータを、前記空間についての目標温度、前記空間の温度である室内温度、及び前記空間の外の温度である外気温度の間の大小関係を表す温度状態に応じて前記空間の換気風量の目標風量を決定する目標決定部、前記目標温度、前記室内温度、及び前記外気温度の間の温度差に基づいて、前記目標風量を増加させるか否かを判定する第1判定部、前記空間の空気汚染度に基づいて、前記空間の現在の換気風量を増加させるべきか否かを判定する第2判定部、及び、前記第1判定部の判定結果及び前記第2判定部の判定結果に基づいて、前記空間において実現すべき換気風量である設定風量を決定する風量決定部、として機能させる。前記風量決定部は、前記第1判定部において前記目標風量を増加させないと判定し且つ前記第2判定部において前記空間の換気風量を現在の風量から増加させるべきと判定した場合の前記設定風量を、前記第1判定部において前記目標風量を増加させると判定し且つ前記第2判定部において前記空間の換気風量を現在の風量から増加させるべきと判定した場合の前記設定風量より大きな値に決定する。
【発明の効果】
【0010】
本開示における換気装置の制御方法、換気制御装置、及び換気制御プログラムは、換気対象である空間の空気汚染度、目標温度、室内温度、及び外気温度に基づいて、上記空間において実現すべき換気風量を決定する。よって、換気対象である空間にいる人の、空間内の空気汚染に対する安全性と、空間内の温度についての快適性と、を両立し得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態の換気システムの構成の一例を示す図
図2】実施の形態の換気装置が備える機器制御装置の構成の一例を示す図
図3】実施の形態の換気制御装置の構成の一例を示す図
図4】換気制御装置が目標風量の決定に用いる設定テーブルの一例を示す図表
図5】換気制御装置が第2判定処理に用いる下限風量マップの一例を示す図
図6】換気制御装置が実行する換気装置の制御方法の処理の手順を示すフローチャート
図7】換気制御装置が実行する第1判定処理の手順を示すフローチャート
図8】換気制御装置が実行する第2判定処理の手順を示すフローチャート
図9】換気制御装置が実行する設定風量決定処理の手順を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本開示の基礎となった知見等)
発明者らが本開示に想到するに至った当時、換気装置が換気する空間のCO(二酸化炭素)の濃度に応じて換気装置の風量を制御する技術があった。
しかしながら、CO濃度等の空気汚染の程度に応じて換気装置の風量を制御する場合には、換気対象である空間の室内温度の変動に伴ってユーザにとっての快適性が低下する場合があるという課題を発明者らは発見し、その課題を解決するために、本開示の主題を構成するに至った。
そこで、本開示は、COなどの空気汚染に対する安全性と、室内温度についての快適性とを両立し得る換気装置の制御方法、換気制御装置、及び換気制御プログラムを提供する。
【0013】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明を省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0014】
以下、実施の形態を説明する。
[1.構成]
[1-1.換気システムの構成]
図1は、実施の形態の換気システム1の構成の一例を示す図である。
換気システム1は、換気装置2を備え、住居や施設等の建築物Hの内部に設けられる空間Sの換気を行う。換気装置2の換気対象である空間Sは、例えば、建築物Hの内部に設けられた部屋である。
【0015】
換気システム1は、また、中継装置3と、換気制御装置4と、空気質センサ5と、内気温センサ6と、外気温センサ7と、空調装置8と、リモコン9と、を備える。
【0016】
中継装置3は、建築物Hにローカルネットワークを構築して、建築物Hに設けられた換気装置2、空気質センサ5、内気温センサ6、外気温センサ7、及び空調装置8と通信する。また、中継装置3は、公衆回線網や、専用線、その他の通信回路などで構成されたネットワークNWに接続し、ネットワークNWを介して換気制御装置4と通信する。これにより、中継装置3は、換気装置2、空気質センサ5、内気温センサ6、外気温センサ7、及び空調装置8を、ネットワークNWを介して換気制御装置4と通信可能に接続する。例えば、中継装置3はルータであり、ネットワークNWは、インターネット又はイントラネットを構成する通信ネットワークである。
【0017】
換気装置2は、建築物Hに設けられる。換気装置2は、本実施形態では全熱交換機であり、送風機10a、10bと、熱交換器11と、機器制御装置12と、を備える。機器制御装置12は、換気装置2を構成する送風機10a、10b、熱交換器11等の機器を制御する。
【0018】
送風機10a、10b及び熱交換器11は、機器制御装置12からの指示に従って動作する。送風機10aは、外気を取り込む給気ダクト13a内に気流を発生させる。送風機10bは、空間Sの空気を建築物Hの外部へ排気する排気ダクト13b内に気流を発生させる。熱交換器11は、給気ダクト13a内を流れる空気と、排気ダクト13b内を流れる空気との間で熱交換を行う。換気装置2は、機器制御装置12により、熱交換器11を動作させて全熱交換換気を行う熱交換換気モードと、熱交換器11を動作させずに換気を行う普通換気モードと、のいずれかの換気モードで動作する。
【0019】
機器制御装置12は、送風機10a、10bが備えるファン(不図示)の回転数を変更することにより、送風機10a、10bの送風量を変更して、給気ダクト13aを介した空間Sへの給気風量及び排気ダクト13bを介した空間Sからの排気風量を変更することができる。給気風量及び排気風量は、本実施形態では等量である。また、上記の給気風量及び排気風量を総称して、換気装置2の動作風量ともいうものとする。
【0020】
また、空間Sの全体における給気の風量又は排気の風量を総称して、空間Sの換気風量というものとする。本実施形態のように、1台の換気装置2により空間Sが換気される場合には、空間Sの換気風量は換気装置2の動作風量である。
【0021】
給気ダクト13aは、その内部に、塵埃や、微粒子、ウイルス飛沫、エアロゾル等を捕集するフィルタを備えていてもよい。
【0022】
リモコン9は、換気装置2及び空調装置8の各種設定を行うための機器である。リモコン9は、ユーザPから各種操作を受け付けるスイッチや、換気装置2の現在の設定を表示するディスプレイなどを備える。リモコン9は、換気装置2と通信する。リモコン9は、ユーザPから受け付けた操作に対応する情報を換気装置2及び又は空調装置8に送信する。
【0023】
空気質センサ5は、空間Sの空気汚染の程度である空気汚染度CCを検知する。本実施形態では、空気汚染度CCは、空間Sにおける二酸化炭素(CO)の濃度である。空気質センサ5は、例えば非分散型赤外線吸収法を採用するセンサである。
【0024】
内気温センサ6は、建築物Hの内部の空気の温度TJ(以下、「室内温度TJ」という)を検出する。内気温センサ6は、検出した室内温度TJを示す内気温度データを換気制御装置4に送信する。内気温センサ6は、建築物Hの壁面に配置される。
【0025】
外気温センサ7は、建築物Hの外部の空気の温度TQ(以下、「外気温度TQ」という)を検出する。外気温センサ7は、検出した外気温度TQを示す外気温度データを換気制御装置4に送信する。外気温センサ7は、建築物Hの外部に配置される。外気温センサ7は、例えば、給気ダクト13aの、建築物Hの外部にある給気口付近に配置される。
【0026】
換気制御装置4は、ネットワークNWを介して得られる空気質センサ5、内気温センサ6、及び外気温センサ7からの情報に基づいて、換気装置2の動作を制御する。換気制御装置4は、例えば、サーバ装置として構成され得る。なお、各図では、換気制御装置4を1つの装置として表現しているが、換気制御装置4は、その機能を分割して備える複数の装置によって構成されていてもよい。
【0027】
空調装置8は、内気温センサ6から空間Sの室内温度TJを取得し、室内温度TJが目標温度TBと一致するように、空間Sの冷房及び暖房を行う。本実施形態では、目標温度TBは、換気制御装置4から与えられる。空調装置8は、冷房運転又は暖房運転のいずれで動作しているかを示す空調情報を、換気制御装置4へ送信する。
【0028】
[1-2.機器制御装置の構成]
次に、換気装置2が備える機器制御装置12の構成について説明する。図2は、機器制御装置12の構成の一例を示す図である。機器制御装置12は、第1プロセッサ20と、第1メモリ21と、第1通信装置22と、を備える。
【0029】
第1メモリ21は、揮発性及び又は不揮発性の半導体メモリにより構成される。
第1通信装置22は、第1プロセッサ20が中継装置3及びリモコン9との間で有線通信又は無線通信を行うための送受信器である。第1プロセッサ20は、第1通信装置22により、中継装置3及びネットワークNWを介して換気制御装置4と通信する。
【0030】
第1プロセッサ20は、CPUなどのプロセッサを備えるコンピュータである。第1プロセッサ20は、プログラムやデータが書き込まれたROM、及び又はデータの一時記憶のためのRAMを有する構成であってもよい。そして、第1プロセッサ20は、機能要素又は機能ユニットとして、第1取得部23と、運転制御部24と、第1通信制御部25と、を備える。
【0031】
第1プロセッサ20が備えるこれらの機能要素は、例えば、コンピュータである第1プロセッサ20が、第1メモリ21に記憶された機器制御プログラム26を実行することにより実現される。なお、機器制御プログラム26は、コンピュータ読み取り可能な任意の記憶媒体に記憶させておくことができる。これに代えて、第1プロセッサ20が備える上記機能要素の全部又は一部を、それぞれ一つ以上の電子回路部品を含むハードウェアにより構成することもできる。
【0032】
第1取得部23は、リモコン9及び換気制御装置4から動作指示を取得する。換気制御装置4からの動作指示には、換気モードを後述する普通換気モード、第1熱交換換気モード、及び第2熱交換換気モードのいずれとするかの指定が含まれる。また、換気制御装置4からの動作指示には、後述する「弱風」及び「強風」の2段階の動作風量のそれぞれでの動作時間の指定である弱風時間to及び強風時間thが含まれる。
【0033】
運転制御部24は、換気装置2の電源がオンされたとき、又はオフされたときに、その旨を換気制御装置4に通知する。また、運転制御部24は、第1取得部23が換気制御装置4から取得した動作指示に従い、送風機10a、10b及び熱交換器11の動作を制御する。具体的には、運転制御部24は、換気制御装置4からの動作指示に従い、送風機10a、10bの送風量を制御して、換気装置2の動作風量を「弱風」と、「弱風」より風量の大きい「強風」と、の2段階に制御する。また、運転制御部24は、換気制御装置4からの動作指示に従い、熱交換器11の動作を制御して、換気装置2を普通換気モード、第1熱交換換気モード、又は第2熱交換換気モードで動作させる。
【0034】
普通換気モードは、熱交換器11を動作させずに換気を行う換気モードである。第1熱交換換気モードは、排気ダクト13bを流れる空気の熱を、給気ダクト13aを流れる空気に与えるように熱交換器11を動作させる換気モードである。また、第2熱交換換気モードは、給気ダクト13aを流れる空気の熱を、排気ダクト13bを流れる空気に与えるように熱交換器11を動作させる換気モードである。第1熱交換換気モード及び第2熱交換換気モードを総称して熱交換換気モードという。
【0035】
運転制御部24は、また、第1取得部23がリモコン9から取得した動作指示に従い、換気装置2の電源のオン、オフや、送風機10a、10b、及び熱交換器11の動作を制御する。例えば、運転制御部24は、リモコン9からの動作指示に従い、動作風量や換気モードの設定を換気制御装置4の動作指示に従って行うかリモコン9からの指示に従うかを切り替えてもよい。本実施形態において説明する換気システム1の動作は、運転制御部24が、動作風量や換気モードの設定を換気制御装置4の動作指示に従って行う場合の動作である。
【0036】
第1通信制御部25は、第1通信装置22を介して換気制御装置4及びリモコン9と通信する。第1通信制御部25は、換気制御装置4及びリモコン9から受信した動作指示を、第1取得部23に出力する。
【0037】
[1-3.換気制御装置の構成]
次に、換気制御装置4の構成について説明する。換気制御装置4は、空間Sについての目標温度TBを決定する。また、換気制御装置4は、室内温度TJ、外気温度TQ、空間S内の空気汚染度CCを取得して、空間Sにおいて実現すべき換気風量を算出し、算出した換気風量が実現されるように換気装置2に動作を指示する。換気制御装置4は、所定の時間間隔tiで上記の動作を繰り返し、空間Sの室内温度TJ、空気汚染度CC等の変化に応じて、空間Sの換気風量を適応させる。
【0038】
図3は、換気制御装置4の構成の一例を示す図である。換気制御装置4は、第2プロセッサ30と、第2メモリ31と、第2通信装置32と、を備える。
【0039】
第2メモリ31は、揮発性及び又は不揮発性の半導体メモリにより構成される。
第2通信装置32は、第2プロセッサ30が中継装置3との間で通信を行うための送受信器である。
【0040】
第2プロセッサ30は、CPUなどのプロセッサを備えるコンピュータである。第2プロセッサ30は、本開示の「換気制御装置が備えるコンピュータ」に相当する。第2プロセッサ30は、プログラムやデータが書き込まれたROM、及び又はデータの一時記憶のためのRAMを有する構成であってもよい。そして、第2プロセッサ30は、機能要素又は機能ユニットとして、第2取得部33と、換気モード選択部34と、目標決定部35と、第1判定部36と、第2判定部37と、風量決定部38と、指示部39と、を備える。
【0041】
第2プロセッサ30が備えるこれらの機能要素は、例えば、コンピュータである第2プロセッサ30が、第2メモリ31に記憶された換気制御プログラム40を実行することにより実現される。なお、換気制御プログラム40は、コンピュータ読み取り可能な任意の記憶媒体に記憶させておくことができる。これに代えて、第2プロセッサ30が備える上記機能要素の全部又は一部を、それぞれ一つ以上の電子回路部品を含むハードウェアにより構成することもできる。
【0042】
第2取得部33は、空気質センサ5から、空間Sにおける空気汚染度CCについての情報を取得する。本実施形態では、上記空間Sにおける空気汚染度CCは二酸化炭素の濃度である。
【0043】
第2取得部33は、内気温センサ6及び外気温センサ7から、それぞれ、空間S内の温度である室内温度TJ及び空間Sの外の温度である外気温度TQを取得する。
【0044】
また、第2取得部33は、空間Sについての目標温度TBを、快適性指標(PMV、(Predicted Mean Vote)に基づいて算出する。PMVは、人の環境における温度、湿度、放射温度、及び気流、並びにその環境内に居る人の活動量及び着衣量の、7つのパラメータから、公知の計算式を用いて算出され得る。第2取得部33は、上記パラメータのうち、温度を除く6つのパラメータを固定値とし、PMVの算出式から逆算してPMV=0を与える温度を算出する。そして、第2取得部33は、上記算出した温度を空間Sの目標温度TBとする。
【0045】
ここで、第2取得部33は、上記6つのパラメータとして、換気装置2の稼働月、空間Sのある建築物Hの種類、及び空間S内に存在すると予想される代表的なユーザの属性に依存して、それぞれ異なる値セットを用いるものとすることができる。上記建物の種類は、例えば、木造家屋、オフィスビル、及び集合住宅等である。また、上記人物の属性は、例えば、子供、女性成人、男性成人、男性高齢者、及び女性高齢者等である。上記6つのパラメータの値セットは、上記稼働月、建物種類、及びユーザ属性の組み合わせのそれぞれについて予め算出して、第2メモリ31に記憶される。
【0046】
換気装置2の換気対象である空間Sのある建築物Hの種類及び空間S内に存在すると予想される代表的なユーザの属性は、例えば、換気装置2の設置時に、ユーザPにより設定情報としてリモコン9に入力される。入力されたユーザ属性は、換気装置2の機器制御装置12を介して換気制御装置4へ送信される。また、換気装置2が稼働している現在の月が何月であるかは、換気制御装置4が備えるタイマー(不図示)から取得され得る。
【0047】
第2取得部33は、上記設定情報及びタイマーから取得される稼働月に基づいて、第2メモリ31に記憶された上記6つのパラメータの値セットを選択する。そして、第2取得部33は、選択した値セットを用いて、PMV=0となる温度を目標温度TBとして算出する。
【0048】
第2取得部33は、上記算出した目標温度TBを空調装置8へ送信する。空調装置8は、リモコン9により電源がオンされているときは、上記送信された目標温度TBを受信する。空調装置8は、受信した目標温度TBと、内気温センサ6から取得される室内温度TJとに基づいて、冷房運転又は暖房運転を開始する。
【0049】
第2取得部33は、また、目標温度TBを空調装置8へ送信した後に、空調装置8の動作状態を示す上述の空調情報を、空調装置8から取得する。
【0050】
換気モード選択部34は、換気装置2に実行させる換気モードを、熱交換器11を動作させる熱交換換気モードとするか、熱交換器11を動作させない通常換気モードとするか、を選択する。
【0051】
詳細には、換気モード選択部34は、空調装置8が暖房運転を行っている場合において、次の式(1)に示されるように室内温度TJが外気温度TQより低く且つ目標温度TBより高いときは、換気装置2に動作させる換気モードとして、第1熱交換換気モードを選択する。
TB<TJ<TQ (1)
【0052】
これにより、目標温度TBより高い外気温度TQの外気が、そのままの温度で空間Sに導入されないようにして、室内温度TJと目標温度TBとの温度差が増加するのを防止することができる。
【0053】
また、換気モード選択部34は、空調装置8が冷房運転を行っている場合において、次の式(2)に示されるように室内温度TJが目標温度TBより低く且つ外気温度TQより高いときは、換気装置2に動作させる換気モードとして、第2熱交換換気モードを選択する。
TQ<TJ<TB (2)
【0054】
これにより、目標温度TBより低い外気温度TQの外気が、そのままの温度で空間Sに導入されないようにして、室内温度TJと目標温度TBとの温度差が増加するのを防止することができる。
【0055】
換気モード選択部34は、空調装置8が冷房運転又は暖房運転を行っている場合において、上記に従って熱交換換気モードを選択するとき以外は、換気装置2の換気モードとして、熱交換器11を動作させない普通換気モードを選択する。また、換気モード選択部34は、空調装置8が動作を停止しているときは、普通換気モードを選択する。
換気モード選択部34は、換気モードの選択結果を指示部39に通知する。
【0056】
目標決定部35は、目標温度TB、室内温度TJ、及び外気温度TQの間の大小関係に応じて、空間Sの換気風量の目標風量VTを決定する。以下、目標温度TB、室内温度TJ、及び外気温度TQの間の大小関係を、温度状態ともいう。
【0057】
具体的には、第1判定部36は、図4に示す設定テーブルTBLを用いて、温度状態に応じた、空間Sにおける換気風量の目標風量VTを決定する。設定テーブルTBLは、第2メモリ31に予め記憶される。
図4に示す設定テーブルTBLにおいて、「目標風量」列に示されたWA、WB、WC、WD、WEは、次の式(3)の関係を有するように予め定められた風量である。
WA<WB<WC<WD<WE (3)
【0058】
設定テーブルTBLは、目標温度TB、室内温度TJ、及び外気温度TQの大小関係に応じて、空間Sに外気を導入することにより室内温度TJを目標温度TBに近づけてユーザPにとっての快適性を向上し得るか否かの観点から、目標風量VTを規定したものである。
【0059】
なお、図4に示す設定テーブルTBL及び以下に示す各式において、符号「=」は、右辺の温度と左辺の温度とが、予め定めた所定の誤差範囲内において一致することを意味したものであり、必ずしも右辺の温度と左辺の温度とが厳密に等しいことを意味するものではない。
【0060】
図4に示す設定テーブルTBLの図示上から第2行目は、温度状態が、次の式(4)又は式(5)を満たす第1状態である場合を示している。すなわち、第1状態とは、目標温度TBと外気温度TQとが所定の温度誤差の範囲で一致し、且つ室内温度TJが目標温度TB及び外気温度TQより高いか又は低い状態である。
TJ<TQ=TB (4)
TQ=TB<TJ (5)
【0061】
目標決定部35は、設定テーブルTBLに従い、温度状態が上記第1状態であるときは、目標風量VTをWEに決定する。
温度状態が式(4)又は式(5)で示される第1状態であるときは、外気を空間S内に流入させることによって、室内温度TJを目標温度TBに近付けることができる。このため、温度状態が第1状態であるときは、第1状態に応じた目標風量VTとして、式(3)において最も大きな風量であるWEが決定される。
【0062】
図4に示す設定テーブルTBLの図示上から第3行目は、温度状態が、次の式(6)に示すように、目標温度TBが室内温度TJより高く且つ外気温度TQより低い第2状態である場合を示している。
TJ<TB<TQ (6)
【0063】
また、設定テーブルTBLの第4行目は、温度状態が、次の式(7)に示すように、目標温度TBが外気温度TQより高く且つ室内温度TJより低い第3状態である場合を示している。
TQ<TB<TJ (7)
【0064】
温度状態が上記第2状態又は第3状態であるときは、目標決定部35は、設定テーブルTBLに従い、目標風量VTをWDに決定する。
温度状態が式(6)又は式(7)で示される第2状態又は第3状態であるときは、外気を空間S内に流入させることによって、室内温度TJを目標温度TBに近付けることができる。しかしながら、外気を多量に室内に流入させると、室内温度TJが外気温度TQに近付き、室内温度TJと目標温度TBとの差が増加してしまう可能性がある。このため、温度状態が第2状態又は第3状態であるときは、それぞれ第2状態又は第3状態に応じた目標風量VTとして、式(3)において最大風量であるWEより風量が1段階少ないWDが決定される。
【0065】
設定テーブルTBLの第5行目は、温度状態が、次の式(8)に示すように、外気温度TQが目標温度TBより高く且つ室内温度TJより低い第4状態である場合を示している。
TB<TQ<TJ (8)
【0066】
また、設定テーブルTBLの第6行目は、温度状態が、次の式(9)に示すように、外気温度TQが室内温度TJより高く且つ目標温度TBより低い第5状態である場合を示している。
TJ<TQ<TB (9)
【0067】
温度状態が上記第4状態又は第5状態であるときは、目標決定部35は、設定テーブルTBLに従い、目標風量VTをWCに決定する。
温度状態が式(8)又は式(9)で示される第4状態又は第5状態であるときは、外気を空間S内に流入させることによって、室内温度TJを目標温度TBに近付けることができる。しかしながら、外気を多量に空間S内に流入させると、室内温度TJは、外気温度TQに近付いて目標温度TBに近付くものの、外気の導入だけでは、外気温度TQを上回って又は下回って目標温度TBに更に近づくことはできない。このため、温度状態が第4状態又は第5状態であるときは、それぞれ第4状態又は第5状態に応じた目標風量VTとして、式(3)においてWDよりも風量が1段階少ないWCが決定される。
【0068】
設定テーブルTBLの第7行目は、温度状態が、次の式(10)に示すように目標温度TB、外気温度TQ、及び室内温度TJが所定の温度誤差の範囲で互いに一致した、第6状態である場合を示している。
TJ=TQ=TB (10)
【0069】
また、設定テーブルTBLの第8行目は、温度状態が、次の式(11)又は式(12)を満たす第7状態であることを示している。すなわち、第7状態は、外気温度TQと室内温度TJとが所定の温度誤差の範囲で互いに一致し、且つ外気温度TQが目標温度TBより高いか又は低い状態である。
TB<TQ=TJ (11)
TJ=TQ<TB (12)
【0070】
目標決定部35は、設定テーブルTBLに従い、温度状態が上記第6状態又は第7状態であるときは、目標風量VTをWBに決定する。
温度状態が式(10)で示される第6状態であるときは、室内温度TJは目標温度TBとほぼ同じ温度であり、これらと同じ温度の外気を空間S内に導入してもあまり意味がない。また、温度状態が式(11)又は式(12)で示される第7状態であるときは、空間Sへの外気の導入量を大きくしても室内温度TJは目標温度TBには近づかない。従って、第6状態又は第7状態の場合には、外気の導入量は、空間S内に存在するユーザPや機器(不図示)からの発熱による温度上昇を解消する程度であればよく、温度状態が式(8)又は式(9)で示される第4状態又は第5状態の場合に比べて少なくすることができる。このため、温度状態が第6状態又は第7状態であるときは、それぞれ第6状態又は第7状態に応じた目標風量VTとして、式(3)においてWCよりも風量が1段階少ないWBが決定される。
【0071】
設定テーブルTBLの第9行目、第10行目、第11行目、及び第12行目は、それぞれ、温度条件が次の式(13)、式(14)、式(15)、及び式(16)で示される第8状態、第9状態、第10状態、及び第11状態である場合を示している。
TQ<TB=TJ (13)
TQ<TJ<TB (14)
TJ=TB<TQ (15)
TB<TJ<TQ (16)
【0072】
温度状態が上記第8状態、第9状態、第10状態、又は第11状態であるときは、目標決定部35は、設定テーブルTBLに従い、目標風量VTをWAに決定する。
温度状態が式(13)、式(14)、式(15)、又は式(16)で示される各状態であるときは、外気を導入することで室内温度TJと目標温度TBとの差は却って大きくなり得る。これらの温度状態では、外気の導入量は、例えば、空間Sに居るユーザPが排出するCOによる空気汚染の増加を解消し得る程度の、最小限の量であることが望ましい。このため、温度状態が第8状態、第9状態、第10状態、又は第11状態であるときは、これらの温度状態に応じた目標風量VTとして、式(3)において最も風量が少ないWAが決定される。
【0073】
第1判定部36は、目標温度TB、室内温度TJ、及び外気温度TQの間の温度差に基づいて、目標決定部35が決定した目標風量VTを増加させるか否かを判定する。この判定は、空間S内にいるユーザPの快適性をより向上するべく、目標決定部35が決定した目標風量VTを増加方向に修正することにより更に迅速に室内温度TJを目標温度TBに近づけることができるか否かの観点で行われる。
【0074】
ただし、第1判定部36は、換気モード選択部34が熱交換換気モードを選択した場合には、目標風量VTを増加させないと判定する。上述した式(1)又は式(2)が満たされて熱交換換気モードが選択される場合には、空間S内に導入する外気の風量を増加させると、室内温度TJと目標温度TBとの温度差が増加してしまうためである。
【0075】
第1判定部36は、目標風量VTを増加させると判定したときは、目標風量VTより大きな値をもつ修正目標風量VTMを算出する。
【0076】
具体的には、第1判定部36は、まず、換気モード選択部34が普通換気モードを選択した場合において、温度状態が第1状態であるときは、目標決定部35が第1状態に応じて風量WEに決定した目標風量VTを風量WEから増加させるか否かを、目標温度TBと室内温度TJとの温度差に基づいて判定する。
【0077】
第1判定部36は、温度状態が上述の式(4)又は式(5)で示される第1状態であるときは、目標温度TBと室内温度TJとの温度差が予め定めた所定値ΔTsより大きい場合に、目標決定部35が第1状態に応じて決定した目標風量VTを、風量WEから増加させると判定する。室内温度TJと目標温度TBとの温度差が所定値ΔTsより大きい場合には、目標温度TBと同じ外気温度TQをもつ外気の導入量をより多くすることで、室内温度TJをより迅速に目標温度TBに近づけることができるためである。一方、温度状態が第1状態である場合において、目標温度TBと室内温度TJとの温度差が予め定めた所定値ΔTsより小さい場合には、第1判定部36は、目標決定部35が第1状態に応じて風量WEに決定した目標風量VTを、風量WEから増加させず、風量WEのまま維持すると判定する。
【0078】
すなわち、第1判定部36は、普通換気モードにおいて目標温度TB、室内温度TJ、及び外気温度TQが次に示す第1増風条件を満たすときは、目標決定部35が温度状態に応じて決定した目標風量VTを増加させると判定する。
(第1増風条件):TJ<TQ=TB、又は、TQ=TB<TJ(第1状態)であって、且つ、|TB-TJ|>ΔTs。
【0079】
また、第1判定部36は、換気モード選択部34が普通換気モードを選択した場合において、温度状態が上述の式(6)で示される第2状態又は式(7)で示される第3状態であるときは、目標温度TBと外気温度TQとの温度差と、目標温度TBと室内温度TJとの温度差とに基づいて、目標決定部35が第2状態又は第3状態に応じてWDに決定した目標風量VTを増加させるか否かを判定する。
【0080】
具体的には、第1判定部36は、温度状態が第2状態又は第3状態であるときは、目標温度TBと外気温度TQとの温度差が目標温度TBと室内温度TJとの温度差より小さい場合に、目標決定部35が第2状態又は第3状態に応じて風量WDに決定した目標風量VTを、風量WDから増加させると判定する。目標温度TBが室内温度TJよりも外気温度TQに近い場合には、目標温度TBに近い外気温度TQをもつ外気の導入量をより多くすることで、室内温度TJをより迅速に目標温度TBに近づけることができるためである。一方、温度状態が第2状態又は第3状態である場合において、目標温度TBと外気温度TQとの温度差が目標温度TBと室内温度TJとの温度差以上であるときは、第1判定部36は、目標決定部35が第2状態又は第3状態に応じて風量WDに決定した目標風量VTを、風量WDから増加させず、風量WDのまま維持すると判定する。
【0081】
すなわち、第1判定部36は、普通換気モードにおいて目標温度TB、室内温度TJ、及び外気温度TQが次に示す第2増風条件を満たすときは、目標決定部35が温度状態に応じて決定した目標風量VTを増加させると判定する。
(第2増風条件):TJ<TB<TQ(第2状態)、又は、TQ<TB<TJ(第3状態)であって、且つ、|TB-TQ|<|TB-TJ|。
【0082】
また、第1判定部36は、換気モード選択部34が普通換気モードを選択した場合において、温度状態が上述の式(8)で示される第4状態又は式(9)で示される第5状態であるときは、外気温度TQと目標温度TBとの温度差と、外気温度TQと室内温度TJとの温度差とに基づいて、目標決定部35が第4状態又は第5状態に応じてWCに決定した目標風量VTを増加させるか否かを判定する。
【0083】
具体的には、第1判定部36は、温度状態が第4状態又は第5状態であるときは、外気温度TQと目標温度TBとの温度差が外気温度TQと室内温度TJとの温度差より小さい場合に、目標決定部35が第4状態又は第5状態に応じて風量WCに決定した目標風量VTを、風量WCから増加させると判定する。外気温度TQが室内温度TJより目標温度TBに近い場合には、目標温度TBに近い外気温度TQをもつ外気の導入量をより多くすることにより、室内温度TJをより迅速に目標温度TBに近づけることができるためである。一方、温度状態が第4状態又は第5状態である場合において、外気温度TQと目標温度TBとの温度差が外気温度TQと室内温度TJとの温度差以上であるときは、第1判定部36は、目標決定部35が第4状態又は第5状態に応じて風量WCに決定した目標風量VTを、風量WCから増加させず、風量WCのまま維持すると判定する。
【0084】
すなわち、第1判定部36は、普通換気モードにおいて目標温度TB、室内温度TJ、及び外気温度TQが次に示す第3増風条件を満たすときは、目標決定部35が温度状態に応じて決定した目標風量VTを増加させると判定する。
(第3増風条件):TB<TQ<TJ(第4状態)、又は、TJ<TQ<TB(第5状態)であって、且つ、|TQ-TB|<|TQ-TJ|。
【0085】
また、第1判定部36は、温度状態が図4に示す設定テーブルTBLに示された第6状態から第11状態のいずれかである場合には、室内温度TJ、外気温度TQ、及び目標温度TBに関わらず、目標風量VTを増加させないと判定する。これらの場合には、外気の導入量を増加させても室温状態TJが目標温度TBにより迅速に到達することがないためである。
【0086】
第2判定部37は、空間Sの空気汚染度CCに基づいて、空間Sの換気風量を現在の風量VCから増加させるべきか否かを判定する。具体的には、第2判定部37は、空間Sの現在の換気風量VCが、空間Sにおける空気汚染度CCに応じて予め定められた下限風量Wminより小さい場合には、空間Sの換気風量を現在の風量VCから増加させるべきと判定する。上述したように、本実施形態では、空気汚染度CCは、空間Sにおける二酸化炭素濃度である。
【0087】
より具体的には、第2判定部37は、図5に示すような二酸化炭素濃度と下限風量との関係を示す下限風量マップを用いて、空気質センサ5が検知した空気汚染度CCである二酸化炭素濃度に応じた下限風量Wminを算出する。下限風量マップは、空間Sにおける二酸化炭素濃度に応じて予め定められた下限風量を示すグラフであり、予め作成されて第2メモリ31に記憶される。図5に示す下限風量マップにおいて、横軸は二酸化炭素濃度であり、縦軸は下限風量である。グラフG1は、二酸化炭素濃度に応じて決定すべき下限風量の標準値又は基準値を示している。第2判定部37は、グラフG1に従い、空気汚染度CCに応じた下限風量Wminを算出する。なお、グラフG2及びグラフG21は、グラフG1が示す標準値よりも大きな下限風量を指定するグラフであり、後述する風量決定部38により用いられる。
【0088】
第2判定部37は、空間Sの換気風量の現在の値VCが上記算出した下限風量Wminより小さいときは、換気風量を現在の値VCから増加させるべきと判定する。また、第2判定部37は、空間Sの換気風量の現在の値VCがWmin以上であるときは、空間Sの換気風量を現在の値VCから増加させず、現在の風量VCに維持すべきと判定する。
【0089】
上述したように、換気制御装置4は、室内温度TJ等の取得、空間Sにおいて実現すべき換気風量の算出、及び換気装置2への動作指示を、所定の時間間隔tiで繰り返し実行する。第2判定部37は、後述する風量決定部38が上記繰り返し実行における前回の実行サイクルにおいて決定した上記空間Sにおいて実現すべき換気風量を、今回の実行サイクルにおける空間Sの換気風量の現在の風量VCとして用いる。以下、空間Sの換気風量の現在の風量VCを、空間Sの現在の換気風量VCともいうものとする。
【0090】
風量決定部38は、目標風量VTを増加させるか否かについての第1判定部36における判定結果、及び空間Sにおける空気汚染度に基づいて換気風量を増加させるべきか否かについての第2判定部37における判定結果に基づいて、空間Sにおいて実現すべき換気風量を決定する。以下、空間Sにおいて実現すべき換気風量を、設定風量VSともいうものとする。
【0091】
本実施形態では、特に、風量決定部38は、第1判定部36が目標風量VTを増加させないと判定し且つ第2判定部37が空間Sの換気風量を現在の風量VCから増加させるべきと判定した場合の設定風量VSを、第1判定部36が目標風量VTを増加させると判定し且つ第2判定部37が空間Sの換気風量を現在の風量VCから増加させるべきと判定した場合の設定風量VSより大きな値に決定する。
【0092】
第2判定部37が空気汚染度CCに基づいて空間Sの換気風量を現在の風量VCから増加させるべきと判定した場合、空気汚染の継続的な悪化により、空気汚染度CCが増加し続けていることが想定され得る。本実施形態では、風量決定部38における上記動作により、第1判定部36及び第2判定部37における判定動作の実行中に空間S内における空気汚染の程度が悪化し続けるような場合でも、ユーザにとっての高い安全性と快適性とを両立し得るように、換気装置を制御することができる。
【0093】
具体的には、風量決定部38は、第1判定部36が目標風量VTを増加させると判定したか否か、及び第2判定部37が空間Sの換気風量を現在の風量VCから増加させるべきと判定したか否かに応じて、設定風量VSを以下のように決定する。
【0094】
なお、以下において、第1判定部36において増加判定とは、第1判定部36が目標風量VTを増加させると判定したことを意味する。また、第1判定部36において維持判定とは、第1判定部36が目標風量VTを増加させないと判定したことを意味する。また、第2判定部37において増加判定とは、第2判定部37が空間Sの換気風量を現在の風量VCから増加させるべきと判定したことを意味する。また、第2判定部37において維持判定とは、第2判定部37が空間Sの換気風量を現在の風量VCに維持すべきと判定したことを意味する。
【0095】
風量決定部38は、まず、第1判定部36が増加判定であるときは、目標決定部35が温度状態に応じて決定した目標風量VTに、温度状態に応じた修正値を加算して、温度状態に応じた修正目標風量VTMを算出する。例えば、風量決定部38は、次の式(17)、式(18)、及び式(19)により、温度状態に応じた修正目標風量を算出する。
温度状態が第1状態の場合 :VTM=WE+ΔWm1 (17)
温度状態が第2状態又第3状態の場合:VTM=WD+ΔWm2 (18)
温度状態が第4状態又第5状態の場合:VTM=WC+ΔWm3 (19)
【0096】
式(17)の風量WE、式(18)の風量WD、及び式(19)の風量WCは、それぞれ、上述において説明した目標決定部35の動作において目標決定部35が第1状態に応じて決定する目標風量VTの風量、第2状態又は第3状態に応じて決定する目標風量VTの風量、及び第4状態又は第5状態に応じて決定する目標風量VTの風量である。
【0097】
なお、式(17)、式(18)、及び式(19)における、それぞれの修正値ΔWm1、ΔWm2、及びΔWm3は、予め定められて第2メモリ31に記憶される。修正値ΔWm1、ΔWm2、及びΔWm3の全部又は一部は、同じ値であってもよいし、互いに異なる値であってもよい。
【0098】
次に、風量決定部38は、第1判定部36の判定結果が増加判定か維持判定か、及び第2判定部37の判定結果が増加判定か維持判定かに応じて、設定風量VSを以下のように決定する。
【0099】
(第1判定組合せ):第1判定部36が増加判定で、第2判定部37が増加判定の場合は、上述において算出した温度状態に応じた修正目標風量VTM、及び第2判定部37が算出した下限風量Wminのうち、大きい方の風量を設定風量VSとする。
【0100】
(第2判定組合せ):第1判定部36が維持判定で、第2判定部37が増加判定の場合は、設定風量VSを、第1判定組合せの場合よりも大きな値とする。すなわち、上述において算出した修正目標風量VTMよりも大きな、温度状態に応じた増加目標風量VO、及び第2判定部37が算出した下限風量Wminより大きな、空気汚染度に応じた修正下限風量WMminのうち、大きい方の風量を設定風量VSとする。
増加目標風量VO及び修正下限風量WMminの算出については後述する。
【0101】
(第3判定組合せ):第1判定部36が増加判定で、第2判定部37が維持判定の場合は、上述において算出した温度状態に応じた修正目標風量VTMを設定風量VSとする。
(第4判定組合せ):第1判定部36が維持判定で、第2判定部37が維持判定の場合は、目標決定部35が決定した目標風量VTを設定風量VSとする。
【0102】
上記第2判定組合せにおいて、風量決定部38は、温度状態に応じた増加目標風量VOを、例えば、温度状態に応じた増分ΔWm4、ΔWm5、及びΔWm6を用いて、次の式(20)、式(21)、及び式(22)により算出する。
温度状態が第1状態の場合 :VO=WE+ΔWm1+ΔWm4 (20)
温度状態が第2状態又第3状態の場合:VO=WD+ΔWm2+ΔWm5 (21)
温度状態が第4状態又第5状態の場合:VO=WC+ΔWm3+ΔWm6 (22)
【0103】
なお、式(20)、式(21)、及び式(22)における、それぞれの増分ΔWm4、ΔWm5、及びΔWm6は、予め定められて第2メモリ31に記憶される。増分ΔWm4、ΔWm5、及びΔWm6の全部又は一部は、同じ値であってもよいし、互いに異なる値であってもよい。
【0104】
また、上記第2判定組合せにおいて、風量決定部38は、例えば図5に示す下限風量マップのグラフG2を用いて、空気汚染度CCに応じた、下限風量Wminより大きな修正下限風量WMminを算出する。なお、修正下限風量WMminの算出に用いられる下限風量マップのグラフは、空気汚染度CCの実用範囲内においてグラフG1により与えられる下限風量Wminより大きい下限風量を与える任意のグラフとすることができる。例えば、風量決定部38は、図5に示す下限風量マップのグラフG2に代えて、グラフG21を用いるものとすることができる。
【0105】
指示部39は、換気装置2に動作指示を送信して、換気装置2の換気モードを設定し及び換気装置2の動作風量を調整する。具体的には、指示部39は、動作指示として、換気モード選択部34から通知された換気モードの選択結果に応じて、換気モード選択部34が選択した換気モードの実行を換気装置2の機器制御装置12に指示する。
【0106】
また、指示部39は、風量決定部38が決定した設定風量VSが空間Sの換気風量として実現されるように、換気装置2の機器制御装置12に指示を与える。上述したように、本実施形態では、換気装置2の動作風量は、「弱風」と「強風」の2段階であり、3段階以上の多段階に又は任意の値に設定することができない。このため、指示部39は、換気装置2の動作風量の時間平均値が設定風量VSとなるように、機器制御装置12に指示を与える。
【0107】
上述したように、換気制御装置4は、室内温度TJ等の取得、空間Sにおいて実現すべき換気風量の算出、及び換気装置2への動作指示を、所定の時間間隔で繰り返し実行する。従って、指示部39は、次の式(23)及び式(24)に示すように、上記繰り返し実行の実行周期ti内における動作風量の時間平均値が設定風量VSとなるように、機器制御装置12に指示を与える。
(WL×to+WH×th)÷ti=VS (23)
to+th=ti (24)
【0108】
式(23)及び式(24)において、WL及びWHは、それぞれ、換気装置2における「弱風」時の動作風量及び「強風」時の動作風量である。また、to及びthは、それぞれ、「弱風」での動作時間である弱風時間、及び「強風」での動作時間である強風時間である。
【0109】
具体的には、式(23)及び式(24)に基づき、指示部39は、次の式(25)及び式(26)で算出される弱風時間to及び強風時間thを、換気装置2の機器制御装置12に指示する。
to=(WH×ti-VS)/(WH-WL) (25)
th=(VS-WL×ti)/(WH―WL) (26)
【0110】
上記の構成を有する換気制御装置4では、第2判定部37において空間Sの換気風量を増加させるべきと判断しない場合、すなわち、空気汚染度CCが、予め定められた下限風量マップにおいて現在の換気風量VCより小さい下限風量Wminを与えるような、所定値よりも小さい範囲にあるときには、第1判定部36における判定結果に依存して、空間Sにおける換気風量が目標決定部35が定めた目標風量VT又は風量決定部38が算出した修正目標風量VTMとなるように、換気装置2の動作風量が調整される。
【0111】
例えば、第1判定部36の判定結果が維持判定であって目標風量VTが換気風量として設定される上述の第4判定組合せの場合には、例えば図4に示す設定テーブルTBLに示された第2状態、第3状態、第4状態、及び第5状態と、第9状態及び第11状態と、の設定風量の比較から理解されるように、目標温度TBと外気温度TQとが共に室内温度TJよりも低い場合(第3状態及び第4状態)又は目標温度TBと外気温度TQとが共に室内温度TJよりも高い場合(第2状態及び第5状態)には、室内温度TJが外気温度TQより高く且つ目標温度TBより低い場合(第9状態)又は室内温度TJが目標温度TBより高く且つ外気温度TQより低い場合(第11状態)に比べて、空間Sにおける換気風量が大きい値となるように、換気装置2の動作風量が調整される(すなわち、WD、WC>WA)。
【0112】
これにより、換気風量の設定に際して空気汚染に対する安全性向上を考慮する必要がない程度に空気汚染度CCが低い場合には、室内温度TJが外気温度TQと目標温度TBとの間にあって空間Sへの外気の導入量を多くしても室内温度TJを目標温度TBに近づけられない第9状態又は第11状態の場合に比べて、外気の導入量を増やすことで室内温度を目標温度に近づけることが可能な第2状態、第3状態、第4状態、又は第5状態の場合に、換気風量を大きくするように換気装置の動作風量が調整される。その結果、ユーザPの安全性に配慮しつつも、ユーザPの快適性を向上することができる。
【0113】
また、第1判定部36の判定結果が増加判定であって修正目標風量VTMが換気風量として設定される第3判定組合せの場合には、例えば上述した第2増風条件により、目標温度TBが室内温度TJより高く且つ外気温度TQより低いとき(第2状態)、又は目標温度TBが外気温度TQより高く且つ室内温度TJより低いときには(第3状態)、目標温度TBと外気温度TQとの温度差が目標温度TBと室内温度TJとの温度差より小さい場合の空間Sの換気風量が、目標温度TBと外気温度TQとの温度差が目標温度TBと室内温度TJとの温度差より大きい場合の空間Sの換気風量に比べて大きい値となるように、換気装置2の動作風量が調整される。
【0114】
これにより、換気風量の設定に際して空気汚染に対する安全性向上を考慮する必要がない程度に空気汚染度CCが低い場合であって、且つ目標温度TBが室内温度TJと外気温度TQとの間にある第2状態又は第3状態であるときには、目標温度TBが外気温度TQよりも室内温度TJに近く、空間Sへの外気の導入量を多くしても室内温度を目標温度に近づけられない場合に比べて、目標温度が室内温度よりも外気温度に近く、外気の導入量を増やすことで室内温度を目標温度に近づけることが可能な場合に、換気風量を大きくするように換気装置の動作風量が調整される。その結果、ユーザPの快適性がより向上され得る。
【0115】
また、第1判定部36の判定結果が増加判定であって修正目標風量VTMが換気風量として設定される第3判定組合せの場合において、例えば上述した第3増風条件により、外気温度TQが目標温度TBより高く且つ室内温度TJより低いとき(第4状態)、又は外気温度TQが室内温度TJより高く且つ目標温度TBより低いときには(第5状態)、外気温度TQと目標温度TBとの温度差が外気温度TQと室内温度TJとの温度差より小さい場合の空間Sの換気風量が、外気温度TQと目標温度TBとの温度差が外気温度TQと室内温度TJとの温度差より大きい場合の空間Sの換気風量に比べて大きい値となるように、換気装置の動作風量が調整される。
【0116】
これにより、換気風量の設定に際して空気汚染に対する安全性向上を考慮する必要がない程度に空気汚染度CCが低い場合であって、且つ外気温度TQが室内温度TJと目標温度TBとの間にある第4状態又は第5状態であるときには、外気温度TQが目標温度TBよりも室内温度TJに近く、空間Sへの外気の導入量を多くしても室内温度TJを目標温度TBに近づけられない場合に比べて、外気温度TQが室内温度TJよりも目標温度TBに近く、外気の導入量を増やすことで室内温度TJを目標温度TBに近づけることが可能な場合に、換気風量を大きくするように換気装置の動作風量が調整される。その結果、ユーザPの快適性がより向上され得る。
【0117】
[1-5.換気制御装置の動作]
次に、換気制御装置4における動作について説明する。図6は、換気制御装置4のコンピュータである第2プロセッサ30が実行する換気装置の制御方法の処理の手順を示すフローチャートである。図6に示す処理は、換気装置2及び換気制御装置4の電源が共にオン状態になったときに開始する。換気装置2の電源がオンされたこと、及びオフされたことは、機器制御装置12から換気制御装置4に通知される。
【0118】
処理を開始すると、まず、第2取得部33は、目標温度TBを決定する(S100)。上述したように、目標温度TBは、例えば快適性指標PMVに基づいて決定され得る。また、第2取得部33は、内気温センサ6、外気温センサ7、空気質センサ5、及び空調装置8から、それぞれ、室内温度TJ、外気温度TQ、空気汚染度CC、及び空調情報を取得する(S102)。
【0119】
次に、換気モード選択部34は、室内温度TJ、外気温度TQ、及び空調情報に基づき、換気装置2が実行すべき換気モードを選択する(S104)。また、目標決定部35は、目標温度TB、室内温度TJ、外気温度TQ、及び空気汚染度CC、並びにステップS104において選択された換気モードに基づき、温度状態に応じた目標風量VTを決定する(S106)。上述したように、温度状態とは、目標温度TB、室内温度TJ、及び外気温度TQの間の大小関係である。
【0120】
次に、第1判定部36は、第1判定処理を行う(S108)。第1判定処理は、第1判定部36が、目標温度TB、室内温度TJ、及び外気温度TQの間の温度差に基づいて、ステップS106において決定された目標風量VTを増加させるか否かの判定を行う処理である。第1判定処理の手順については後述する。
【0121】
次に、第2判定部37は、第2判定処理を行う(S110)。第2判定処理は、第2判定部37が、ステップS102において取得された空気汚染度CCに基づいて空間Sの換気風量を現在の風量から増加させるか否かの判定を行う処理である。第2判定処理の手順については後述する。
【0122】
次に、風量決定部38は、設定風量決定処理を行う(S112)。設定風量決定処理は、風量決定部38が、ステップS108の第1判定処理における第1判定部36の判定結果及びステップS110における第2判定処理における第2判定部37の判定結果に基づいて、空間Sにおいて実現すべき換気風量である設定風量VSを決定する処理である。設定風量決定処置の手順については後述する。
【0123】
次に、指示部39は、換気装置2へ動作指示を送信して、ステップS104において選択された換気モードの実行の指示、及びステップS112において決定された設定風量VSの情報を送信する(S114)。上述したように、本実施形態では、上記設定風量VSの情報は、換気装置2が実行周期ti内において実行すべき「弱風」動作の時間である弱風時間to及び「強風」動作の時間である強風時間thである。
【0124】
続いて、指示部39は、ステップS114における動作指示の送信から所定時間が経過したか否かを判断する(S116)。上記所定時間は、上述した実行サイクルの実行周期tiである。実行周期tiは、例えば15分である。
【0125】
そして、動作指示の送信から所定時間が経過したときは(S116、YES)、指示部39は、ステップS102に処理を戻す。一方、動作指示の送信から所定時間が経過していないときは(S116、NO)、指示部39は、換気装置2の電源がオフされたか否かを判断する(S118)。
【0126】
そして、換気装置2の電源がオフされないときは(S118、NO)、指示部39は、ステップS116に処理を戻す。一方、換気装置2の電源がオフされたときは(S118、YES)、指示部39は、本処理を終了する。
【0127】
次に、図6のステップS108における第1判定処理の手順について説明する。
図7は、第1判定部36が実行する第1判定処理の手順を示すフローチャートである。
第1判定処理では、まず、第1判定部36は、換気モード選択部34が図6のステップS104において選択した換気モードが普通換気モードであるか否かを判断する(S200)。そして、普通換気モードが選択されていないとき、すなわち、熱交換換気モードが選択されているときは(S200、NO)、第1判定部36は、目標決定部35が図6のステップS106において決定した温度状態に応じた目標風量VTを増加させないと判定する。すなわち、第1判定部36は、判定結果を維持判定とする(S206)。その後、第1判定部36は、第1判定処理を終了して図6のステップS110に処理を移す。
【0128】
一方、ステップS200において普通換気モードが選択されていると判断されるときは(S200、YES)、第1判定部36は、温度状態が第1状態か否かを判断する。すなわち、第1判定部36は、温度状態が上述の式(4)又は式(5)を満たす第1状態か否かを判断する(S202)。そして、温度状態が第1状態であるときは(S202、YES)、第1判定部36は、上述した第1増風条件が満たされているか否かを判断する。すなわち、第1判定部36は、目標温度TBと室内温度TJとの温度差が予め定めた所定値ΔTsより大きいか否かを判断する(S204)。
【0129】
そして、目標温度TBと室内温度TJとの温度差が予め定めた所定値ΔTsより大きいときは(S204、YES)、第1判定部36は、目標決定部35が図6のステップS106において決定した温度状態に応じた目標風量VTを増加させると判定する。すなわち、第1判定部36は、判定結果を増加判定とする(S208)。その後、第1判定部36は、第1判定処理を終了して図6のステップS110に処理を移す。
【0130】
一方、目標温度TBと室内温度TJとの温度差が所定値ΔTs以上であるときは(S204、NO)は、第1判定部36は、ステップS206に処理を移して、判定結果を維持判定とする。
【0131】
また、一方、ステップS202において上述の式(4)及び式(5)の双方が満たされず、温度状態が第1状態でないと判断されるときは(S202、NO)、第1判定部36は、温度状態が、上述の式(6)又は式(7)を満たす第2状態又は第3状態であるか否かを判断する(S210)。そして、温度状態が第2状態又は第3状態であるときは(S210、YES)、第1判定部36は、上述した第2増風条件が満たされているか否かを判断する。すなわち、第1判定部36は、目標温度TBと外気温度TQとの温度差が目標温度TBと室内温度TJとの温度差より小さいか否かを判断する(S212)。
【0132】
そして、目標温度TBと外気温度TQとの温度差が目標温度TBと室内温度TJとの温度差より小さいときは(S212、YES)、目標決定部35は、ステップS208に処理を移して、判定結果を増加判定とする。一方、目標温度TBと外気温度TQとの温度差が目標温度TBと室内温度TJとの温度差以上であるときは(S212、NO)、第1判定部36は、ステップS206に処理を移して、判定結果を維持判定とする。
【0133】
また、一方、ステップS210において上述の式(6)及び式(7)の双方が満たされず、温度状態が第2状態でも第3状態でもないと判断されるときは(S210、NO)、第1判定部36は、温度状態が、上述の式(8)又は式(9)を満たす第4状態又は第5状態であるか否かを判断する(S214)。そして、温度状態が第4状態又は第5状態であるときは(S214、YES)、第1判定部36は、上述した第3増風条件が満たされているか否かを判断する。すなわち、第1判定部36は、外気温度TQと目標温度TBとの温度差が外気温度TQと室内温度TJとの温度差より小さいか否かを判断する(S216)。
【0134】
そして、外気温度TQと目標温度TBとの温度差が外気温度TQと室内温度TJとの温度差より小さいときは(S216、YES)、目標決定部35は、ステップS208に処理を移して、判定結果を増加判定とする。一方、外気温度TQと目標温度TBとの温度差が外気温度TQと室内温度TJとの温度差以上であるときは(S216、NO)、第1判定部36は、ステップS206に処理を移して、判定結果を維持判定とする。
【0135】
また、一方、ステップS214において上述の式(8)及び式(9)の双方が満たされず、温度状態が第4状態でも第5状態でもないと判断されるときは(S214、NO)、第1判定部36は、ステップS206に処理を移して、判定結果を維持判定とする。
【0136】
次に、図6のステップS110における第2判定処理の手順について説明する。
図8は、第2判定部37が実行する第2判定処理の手順を示すフローチャートである。
第2判定処理では、まず、第2判定部37は、図5に示すような下限風量マップのグラフG1を用いて、空間Sの空気汚染度CCに応じて定まる下限風量Wminを算出する(S300)。
【0137】
第2判定部37は、空間Sの換気風量の現在の値VCが、上記算出した下限風量Wminより小さいか否かを判断する(S302)。そして、空間Sの換気風量の現在の値VCが上記算出した下限風量Wminより小さいときは(S302、YES)、第2判定部37は、空間Sの換気風量を現在の値VCから増加させるべきと判定する。すなわち、第2判定部37は、判定結果を増加判定とする(S304)。その後、第2判定部37は、第2判定処理を終了して図6のステップS112に処理を移す。
【0138】
一方、空間Sの換気風量の現在の値VCが上記算出した下限風量Wmin以上であるときは(S302、NO)、第2判定部37は、空間Sの換気風量を現在の値VCから増加させず、現在の風量VCのまま維持すべきと判定する。すなわち、第2判定部37は、判定結果を維持判定とする(S306)。その後、第2判定部37は、第2判定処理を終了して図6のステップS112に処理を移す。
【0139】
次に、図6のステップS112における設定風量決定処理の手順について説明する。
図9は、風量決定部38が実行する設定風量決定処理の手順を示すフローチャートである。
設定風量決定処理では、まず、風量決定部38は、図6のステップS108の第1判定処理における第1判定部36の判定結果が増加判定であったか否かを判断する(S400)。そして、第1判定部36の判定結果が増加判定であったとき、すなわち、第1判定部36が目標風量を増加させると判定したときは(S400、YES)、風量決定部38は、温度状態に応じた修正目標風量VTMを算出する(S402)。
【0140】
続いて、風量決定部38は、図6のステップS110の第2判定処理における第2判定部37の判定結果が増加判定であったか否かを判断する(S404)。そして、第2判定部37の判定結果か増加判定であったときは(S404、YES)、風量決定部38は、ステップS402で算出した修正目標風量VTM及び図8のステップS300において第2判定部37が算出した空気汚染度CCに応じた下限風量Wminのうち大きい方を設定風量VSとする(S406)。そして、風量決定部38は、設定風量決定処理を終了して図6のステップS114に処理を移す。
【0141】
一方、ステップS400において第1判定部36の判定結果が増加判定でなく維持判定であったとき、すなわち、第1判定部36が目標風量を増加させないと判定したときは(S400、NO)、風量決定部38は、図6のステップS110の第2判定処理における第2判定部37の判定結果が増加判定であったか否かを判断する(S408)。そして、第2判定部37の判定結果か増加判定であったときは(S408、YES)、風量決定部38は、ステップS404を実行した場合に算出され得る修正目標風量VTMよりも大きな増加目標風量VTOを算出する(S410)。また、風量決定部38は、図5に示すような下限風量マップのグラフG2を用いて、空気汚染度CCに応じた、下限風量Wminより大きな修正下限風量WMminを算出する(S412)。
【0142】
そして、風量決定部38は、ステップS410及びS412においてそれぞれ算出した増加目標風量VTO及び修正下限風量WMminのうち大きい方を設定風量VSとする(S414)。その後、風量決定部38は、設定風量決定処理を終了して図6のステップS114に処理を移す。
【0143】
一方、ステップS404において第2判定部37の判定結果が増加判定でなく維持判定であったと判断されるときは(S404、NO)、修正目標風量VTMを設定風量VSとする(S416)。その後、風量決定部38は、設定風量決定処理を終了して図6のステップS114に処理を移す。
【0144】
また、一方、ステップS408において第2判定部37の判定結果が増加判定でなく維持判定であったと判断されるときは(S408、NO)、風量決定部38は、図6のステップS106において目標決定部35が決定した目標風量VTを設定風量VSとする(S418)。そして、風量決定部38は、設定風量決定処理を終了して図6のステップS114に処理を移す。
【0145】
ここで、図6のステップS104及びS106は、それぞれ、本開示のモード選択ステップ及び目標決定ステップに相当する。図6のステップS108及びS110は、それぞれ、本開示の第1判定ステップ及び第2判定ステップに相当する。また、図6のステップS112及びステップS114は、本開示の風量決定ステップ及び指示ステップに相当する。
【0146】
なお、上述した実施形態では、換気装置2は、熱交換器11を備えて全熱交換換気を行い得る装置であるものとしたが、換気装置2の構成は、これには限定されない。換気装置2は、熱交換器11を備えず、空間Sへの給気及び空間Sからの排気の少なくともいずれかを行う装置であってもよい。この場合には、換気制御装置4は、換気モード選択部34を備える必要はなく、上述した普通換気モードを選択した場合の動作のみを行うものすることができる。
【0147】
また、上述した実施形態では、換気制御装置4は、1台の換気装置2を制御するものとしたが、換気制御装置4が制御する換気装置2の台数は1台に限らず、同じ空間Sを換気する複数の換気装置2を制御するものとしてもよい。また、この場合には、換気制御装置4が制御する複数台の換気装置2には、上述した実施形態に示す熱交換器11を備える換気装置2と、熱交換器11を備えず普通換気のみを行う換気装置2とが混在してもよい。
【0148】
換気制御装置4が、熱交換器11を備えるか又は備えない複数の換気装置2を制御する場合には、指示部39は、風量決定部38が決定した設定風量VSを、複数の換気装置2のそれぞれに配分して、これら複数の換気装置2の全体により設定風量VSを実現するように個々の換気装置2の動作風量を調整してもよい。
【0149】
また、換気制御装置4が、空間Sを換気対象とする複数の換気装置2を制御する場合には、換気制御装置4は、空間Sに設けられたそれぞれの換気装置2の換気口に対応する位置の空気汚染度に基づいて、換気動作を実行する少なくとも一つの換気装置2を選定するものとしてもよい。例えば、図6のフローチャートが示す処理おいて、換気制御装置4の第2取得部33は、ステップS102において、空間Sにおけるそれぞれの換気装置2の換気口の位置に対応する位置に配された複数の空気質センサ5から、それぞれ空気汚染度CCを取得する。そして、換気制御装置4は、少なくともステップS114の前に、上記複数の空気質センサ5から取得した空気汚染度CCに基づいて、換気動作を実行する少なくとも一つの換気装置2を選定する装置選定ステップを実行するものとすることができる。
【0150】
[2.効果等]
以上、説明したように、換気装置2を制御する換気制御装置4の第2プロセッサ30が実行する換気装置2の制御方法は、換気対象である空間Sについての目標温度TB、空間Sの温度である室内温度TJ、及び空間Sの外の温度である外気温度TQの間の大小関係である温度状態に応じて空間Sの換気風量の目標風量VTを決定する目標決定ステップと、目標温度TB、室内温度TJ、及び外気温度TQの間の温度差に基づいて、目標風量VTを増加させるか否かを判定する第1判定ステップと、空間Sの空気汚染度CCに基づいて、空間Sの換気風量を現在の風量VCから増加させるべきか否かを判定する第2判定ステップと、第1判定ステップの判定結果及び第2判定ステップの判定結果に基づいて、空間Sにおいて実現すべき換気風量である設定風量VSを決定する風量決定ステップと、を含み、風量決定ステップでは、第1判定ステップにおいて目標風量VTを増加させないと判定し且つ第2判定ステップにおいて空間Sの換気風量を現在の風量VCから増加させるべきと判定した場合の設定風量VSを、第1判定ステップにおいて目標風量VTを増加させると判定し且つ第2判定ステップにおいて空間の換気風量を現在の風量VCから増加させるべきと判定した場合の設定風量VSより大きな値に決定する。
【0151】
これによれば、目標温度TB、室内温度TJ、及び外気温度TQに基づいて快適性の観点から定めた目標風量VTを増加させないと判定した場合の方が、目標風量VTを増加させると判定した場合に比べて、その後に空気汚染に対する安全性の観点から換気風量の増加の必要性が判定された場合に設定風量VSを大きな値に決定する。このため、第1判定ステップ及び第2判定ステップの実行中に空気汚染の程度が悪化し続けるような場合でも、ユーザPにとっての高い安全性と快適性とを両立し得るように、換気装置2を制御することができる。
【0152】
換気装置2の制御方法において、空気汚染度CCは、空間Sにおける二酸化炭素の濃度であって、第2判定ステップでは、空間Sにおける現在の換気風量VCが空間Sにおける二酸化炭素の濃度に応じて予め定められた下限風量Wminより小さい場合に、換気風量を増加させるべきと判定する。
【0153】
これによれば、二酸化炭素濃度の値に基づいて、安全性の観点から換気風量を増加させるべきか否かを容易に判定することができる。
【0154】
換気装置2の制御方法において、第1判定ステップでは、温度状態が、目標温度TBと外気温度TQとが所定の温度誤差の範囲で一致し、且つ室内温度TJが目標温度TB及び外気温度TQより高いか又は低い第1状態であるときは、目標決定ステップにおいて第1状態に応じて決定された目標風量VTを、目標温度TBと室内温度TJとの温度差が予め定めた所定値ΔTsより大きい場合に増加させると判定し、目標温度TBと室内温度TJとの温度差が所定値ΔTsより小さい場合に増加させないと判定する。
【0155】
これによれば、室内温度TJと目標温度TBとの温度差が所定値ΔTSより大きい場合には、目標温度TBと同じ外気温度TQをもつ外気の導入量をより多くして、室内温度TJをより迅速に目標温度に近づけることができる。一方、室内温度TJと目標温度TBとの温度差が所定値ΔTsより小さい場合には、外気の導入量を増加させないこととして、室内温度TJが目標温度TBから離れていくのを抑制することができる。よって、ユーザの快適性を向上するように、換気装置2の風量を調整することができる。
【0156】
換気装置2の制御方法において、第1判定ステップでは、温度状態が、目標温度TBが室内温度TJより高く且つ外気温度TQより低い第2状態、又は目標温度TBが外気温度TQより高く且つ室内温度TJより低い第3状態であるときは、それぞれ、目標決定ステップにおいて第2状態に応じて決定された目標風量VT、又は第3状態に応じて決定された目標風量VTを、目標温度TBと外気温度TQとの温度差が目標温度TBと室内温度TJとの温度差より小さい場合に増加させると判定し、目標温度TBと外気温度TQとの温度差が目標温度TBと室内温度TJとの温度差以上である場合に増加させさないと判定する。
【0157】
これによれば、目標温度TBが室内温度TJよりも外気温度TQに近い場合に、外気の導入量をより多くして、室内温度TJをより迅速に目標温度TBに近づけることができる。一方、目標温度TBが外気温度TQよりも室内温度TJに近いか又はこれらの温度の互いの温度差が等しい場合には、外気の導入量を増加させないこととして、室内温度TJが目標温度TBから離れていくのを抑制し、及び換気装置2の消費電力の不要な増加を抑制することができる。
【0158】
換気装置2の制御方法において、第1判定ステップでは、温度状態が、外気温度TQが目標温度TBより高く且つ室内温度TJより低い第4状態、又は外気温度TQが室内温度TJより高く且つ目標温度TBより低い第5状態であるときは、それぞれ、目標決定ステップにおいて第4状態に応じて決定された目標風量VT、又は第5状態に応じて決定された目標風量VTを、外気温度TQと目標温度TBとの温度差が外気温度TQと室内温度TJとの温度差より小さい場合に増加させると判定し、外気温度TQと目標温度TBとの温度差が外気温度TQと室内温度TJとの温度差以上である場合に増加させないと判定する。
【0159】
これによれば、外気温度TQが室内温度TJよりも目標温度TBに近い場合に、外気の導入量をより多くして室内温度TJをより迅速に目標温度TBに近づけることができる。一方、外気温度TQが目標温度TBよりも室内温度TJに近いか又はこれらの温度の互いの温度差が等しい場合には、外気の導入量を増加させないこととして、室内温度TJが目標温度TBから離れていくのを抑制し、及び換気装置の消費電力の不要な増加を抑制することができる。
【0160】
換気装置2の制御方法において、換気装置2は熱交換器11を備え、換気装置2に実行させる換気モードを、熱交換器11を動作させる熱交換換気モードとするか、又は熱交換器11を動作させない通常換気モードとするか、を選択するモード選択ステップを更に含み、第1判定ステップでは、モード選択ステップで熱交換換気モードが選択された場合には、目標温度TB、室内温度TJ、及び外気温度TQの間の温度差の値に関わらず、目標決定ステップにおいて決定された目標風量VTを増加させないと判定する。
【0161】
これによれば、換気装置2が熱交換換気モードで動作することで空間Sに導入される外気が外気温度TQと異なる温度を有することとなるような場合には、目標風量VTの増加要否の判定を行わないこととするので、目標風量VTを不要に増加させて室内温度TJが目標温度TBから離れてしまうような事態を防止することができる。
【0162】
換気装置2の制御方法において、目標温度TBは、快適性指標PMVに基づいて算出される。
【0163】
これによれば、目標温度TBが快適性指標PMVに基づいて算出されるので、ユーザPにとって快適な目標温度TBを、ユーザPの操作を要することなく適切に設定することができる。
【0164】
換気装置2の制御方法は、空間Sを換気対象とする複数の換気装置2の中から、換気動作を実行する少なくとも一つの換気装置2を選定する装置選定ステップを含み、装置選定ステップでは、空間Sに設けられたそれぞれの換気装置2の換気口に対応する位置の空気汚染度に基づいて、換気動作を実行する少なくとも一つの換気装置2を選定する。
【0165】
これによれば、換気対象である空間Sにおいて空気汚染の程度が空間的に一様でない場合でも、複数の換気装置2の中から、空気汚染の程度が高い空間部分を換気する少なくとも一つの換気装置2を選択して動作させることができる。このため、空気汚染をより迅速に解消してユーザPの安全性をより高めることができる。
【0166】
換気装置2の制御方法では、目標決定ステップ、第1判定ステップ、第2判定ステップ、及び風量決定ステップを、所定時間tin毎に繰り返し実行する。
【0167】
これによれば、外気温度TQ、室内温度TJ、及び空気汚染度CCの時間変化に応じて、空間Sにおける換気風量を適応的に制御することができるので、例えば、一日を通じた環境変化の影響を受けることなくユーザの安全性と快適性とを安定に維持し得るように換気装置2を制御することがでできる。
【0168】
換気装置2を制御する換気制御装置4の第2プロセッサ30が実行する、換気装置2の制御方法は、換気対象である空間Sにおける空気汚染度CCが予め定めた所定の程度よりも低いときに、空間Sについての目標温度TBと空間Sの外の外気温度TQとが共に空間Sの温度である室内温度TJよりも低い場合又は目標温度TBと外気温度TQとが共に室内温度TJよりも高い場合の空間Sの換気風量が、室内温度TJが外気温度TQより高く且つ目標温度TBより低い場合又は室内温度TJが目標温度TBより高く且つ外気温度TQより低い場合の空間Sの換気風量に比べて大きい値となるように、換気装置2の動作風量を調整することを含む。
【0169】
これによれば、例えば換気風量の設定に際して空気汚染に対する安全性向上を考慮する必要がない程度に空間Sにおける空気汚染度が低い場合には、室内温度TJが外気温度TQと目標温度TBとの間にあり、空間Sへの外気の導入量を多くしても室内温度TJを目標温度TBに近づけられない場合に比べて、外気の導入量を増やすことで室内温度TJを目標温度TBに近づけることが可能な場合である目標温度TB及び外気温度TQが共に室内温度TJより高いか又は低い場合に、換気風量を大きくするように換気装置の動作風量が調整される。よって、ユーザPの安全性に配慮しつつ、目標温度TB、外気温度TQ、室内温度TJの関係に応じてユーザPの快適性を向上することができる。
【0170】
換気装置2の制御方法では、換気対象である空間Sにおける空気汚染度CCが予め定めた所定の程度よりも低い場合であって、目標温度TBが室内温度TJより高く且つ外気温度TQより低いとき、及び目標温度TBが外気温度TQより高く且つ室内温度TJより低いときに、目標温度TBと外気温度TQとの温度差が目標温度TBと室内温度TJとの温度差より小さい場合の空間Sの換気風量が、目標温度TBと外気温度TQとの温度差が目標温度TBと室内温度TJとの温度差より大きい場合の空間Sの換気風量に比べて大きい値となるように、換気装置2の動作風量を調整することを含む。
【0171】
これによれば、例えば換気風量の設定に際して空気汚染に対する安全性向上を考慮する必要がない程度に空間Sにおける空気汚染度が低い場合であって且つ目標温度TBが室内温度TJと外気温度TQとの間にあるときには、目標温度TBが外気温度TQよりも室内温度TJに近く、空間Sへの外気の導入量を多くしても室内温度TJを目標温度TBに近づけられない場合に比べて、外気の導入量を増やすことで室内温度TJを目標温度TBに近づけることが可能な、目標温度TBが室内温度TJよりも外気温度TQに近い場合に、換気風量を大きくするように換気装置2の動作風量が調整される。よって、目標温度TB、外気温度TQ、室内温度TJの関係に応じてユーザの快適性をより向上することができる。
【0172】
換気装置2の制御方法では、換気対象である空間Sにおける空気汚染度CCが予め定めた所定の程度よりも低い場合であって、外気温度TQが目標温度TBより高く且つ室内温度TJより低いとき、及び外気温度TQが室内温度TJより高く且つ目標温度TBより低いときに、外気温度TQと目標温度TBとの温度差が外気温度TQと室内温度TJとの温度差より小さい場合の空間Sの換気風量が、外気温度TQと目標温度TBとの温度差が外気温度TQと室内温度TJとの温度差より大きい場合の空間Sの換気風量に比べて大きい値となるように、換気装置の動作風量を調整することを含む。
【0173】
これによれば、例えば換気風量の設定に際して空気汚染に対する安全性向上を考慮する必要がない程度に空間Sにおける空気汚染度CCが低い場合であって且つ外気温度TQが室内温度TJと目標温度TBとの間にあるときには、外気温度TQが目標温度TBよりも室内温度TJに近く、空間Sへの外気の導入量を多くしても室内温度TJを目標温度TBに近づけられない場合に比べて、外気の導入量を増やすことで室内温度TJを目標温度TBに近づけることが可能な、外気温度TQが室内温度TJよりも目標温度TBに近い場合に、換気風量を大きくするように換気装置2の動作風量が調整される。よって、目標温度TB、外気温度TQ、室内温度TJの関係に応じてユーザの快適性をより向上することができる。
【0174】
また、換気対象である空間Sを換気する換気装置2を制御する換気制御装置4は、空間Sについての目標温度TB、空間Sの温度である室内温度TJ、及び空間Sの外の温度である外気温度TQの間の大小関係を表す温度状態に応じて空間Sの換気風量の目標風量VTを決定する目標決定部35と、目標温度TB、室内温度TJ、及び外気温度TQの間の温度差に基づいて、目標風量VTを増加させるか否かを判定する第1判定部36と、空間Sの空気汚染度CCに基づいて、空間Sの現在の換気風量VCを増加させるべきか否かを判定する第2判定部37と、第1判定部36の判定結果及び第2判定部37の判定結果に基づいて、空間Sにおいて実現すべき換気風量である設定風量VSを決定する風量決定部38と、を備え、風量決定部38は、第1判定部36において目標風量VTを増加させないと判定し且つ第2判定部37において空間Sの換気風量を現在の風量VCから増加させるべきと判定した場合の設定風量VSを、第1判定部36において目標風量VTを増加させると判定し且つ第2判定部37において空間Sの換気風量を現在の風量VCから増加させるべきと判定した場合の設定風量VSより大きな値に決定する。
【0175】
これによれば、上述した換気装置2の制御方法と同様の効果を奏する。
【0176】
また、換気制御プログラム40は、換気対象である空間Sを換気する換気装置2を制御する換気制御装置4の第2プロセッサ30を、空間Sについての目標温度TB、空間Sの温度である室内温度TJ、及び空間Sの外の温度である外気温度TQの間の大小関係を表す温度状態に応じて空間Sの換気風量の目標風量VTを決定する目標決定部35、目標温度TB、室内温度TJ、及び外気温度TQの間の温度差に基づいて、目標風量VTを増加させるか否かを判定する第1判定部36、空間Sの空気汚染度CCに基づいて、空間Sの現在の換気風量VCを増加させるべきか否かを判定する第2判定部37、及び、第1判定部36の判定結果及び第2判定部37の判定結果に基づいて、空間Sにおいて実現すべき換気風量である設定風量VSを決定する風量決定部38、として機能させ、風量決定部38は、第1判定部36において目標風量VTを増加させないと判定し且つ第2判定部37において空間Sの換気風量を現在の風量VCから増加させるべきと判定した場合の設定風量VSを、第1判定部36において目標風量VTを増加させると判定し且つ第2判定部37において空間Sの換気風量を現在の風量VCから増加させるべきと判定した場合の設定風量VSより大きな値に決定する。
【0177】
これによれば、上述した換気装置2の制御方法と同様の効果を奏する。
【0178】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する例示として、上記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用できる。また、上記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。そこで、以下、他の実施形態を例示する。
【0179】
上述した実施形態では、目標温度TBが快適性指標PMVに基づいて算出されるものとしたが、目標温度TBの算出方法は、これには限定されない。目標温度TBは、環境温度に依存した、人にとっての快適性を客観的に評価し得る任意の指標を用いて定めるものとすることができる。そのような指標は、例えば、有効温度(ET:effective temperature)、標準新有効温度(SET)、又は予測不快者数(PPD)であり得る。
【0180】
上述した実施形態では、空気汚染度CCとして二酸化炭素濃度を用いるものとしたが、換気制御装置4が用いる空気汚染度CCは、二酸化炭素濃度には限定されない。空気汚染度CCは、人が活動する空間Sにおいて人の健康に影響を与え得る任意の空気汚染の程度を示す数値であり得る。例えば、空気汚染度CCは、空間Sにおける一酸化炭素、アンモニア、プロパン等の有毒ガスの濃度、又は、酸素の欠乏度合いを表す数値(例えば、酸素濃度の逆数に比例する数値)などでもよい。あるいは、空気汚染度CCは、花粉、PM2.5、黄砂、塵埃、又はタバコの煙など、微小粒子の濃度であってもよい。空気質センサ5には、対象とする空気汚染の種類に応じて、従来技術に従い適切なセンサを選択して用いるものとすることができる。
【0181】
上述した実施形態では、換気装置2は、「弱風」と「強風」の2段階の動作風量で動作するものとしたが、換気装置2の構成は、これには限定されない。換気装置2は、3段階以上又は無段階の動作風量で動作するものであってもよい。換気制御装置4の指示部39は、換気装置2が3段階以上の動作風量で動作する場合には、上述した実施形態と同様に、繰り返し実行の実行周期ti内における動作風量の時間平均値が設定風量VSとなるように、各段階の動作風量の動作時間を換気装置2に指示すればよい。また、換気装置2が無段階の動作風量で動作する場合には、換気制御装置4の指示部39は、単に設定風量VSと同じ動作風量で動作するように換気装置2に指示することができる。
【0182】
上述した実施形態では、換気制御装置4はサーバ装置として構成されるものとしたが、換気制御装置4はサーバ装置には限定されない。換気制御装置4は、パーソナルコンピューター、タブレット端末、及びスマートフォン等の、コンピュータを備えて処理を行い得る任意の装置を用いて実現され得る。
【0183】
また、換気制御装置4は、第2プロセッサ30がASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等により構成されて、換気装置2の内部に備えられてもよい。あるいは、換気制御装置4は、換気装置2が備える機器制御装置12の一部として構成されてもよい。この場合には、例えば、換気制御プログラム40が機器制御プログラム26の一部を構成して、換気制御装置4の第2プロセッサ30が備える機能要素が、機器制御装置12の第1プロセッサ20の機能要素として実現されるものとすることができる。
【0184】
なお、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【0185】
(付記)
以上の実施の形態の記載により、下記の技術が開示される。
【0186】
(技術1)換気装置を制御する換気制御装置のコンピュータが実行する、換気装置の制御方法であって、換気対象である空間についての目標温度、前記空間の温度である室内温度、及び前記空間の外の温度である外気温度の間の大小関係である温度状態に応じて前記空間の換気風量の目標風量を決定する目標決定ステップと、前記目標温度、前記室内温度、及び前記外気温度の間の温度差に基づいて、前記目標風量を増加させるか否かを判定する第1判定ステップと、前記空間の空気汚染度に基づいて、前記空間の換気風量を現在の風量から増加させるべきか否かを判定する第2判定ステップと、前記第1判定ステップの判定結果及び前記第2判定ステップの判定結果に基づいて、前記空間において実現すべき換気風量である設定風量を決定する風量決定ステップと、を含み、前記風量決定ステップでは、前記第1判定ステップにおいて前記目標風量を増加させないと判定し且つ前記第2判定ステップにおいて前記空間の換気風量を現在の風量から増加させるべきと判定した場合の前記設定風量を、前記第1判定ステップにおいて前記目標風量を増加させると判定し且つ前記第2判定ステップにおいて前記空間の換気風量を現在の風量から増加させるべきと判定した場合の前記設定風量より大きな値に決定する、換気装置の制御方法。
【0187】
これによれば、目標温度、室内温度、及び外気温度に基づいて快適性の観点から定めた目標風量を増加させないと判定した場合の方が、目標風量を増加させると判定した場合に比べて、その後に空気汚染に対する安全性の観点から換気風量の増加の必要性が判定された場合に設定風量を大きな値に決定する。このため、第1判定ステップ及び第2判定ステップの実行中に空気汚染度が悪化し続けるような場合でも、ユーザにとっての高い安全性と快適性とを両立し得るように、換気装置を制御することができる。
【0188】
(技術2)前記空気汚染度は、前記空間における二酸化炭素の濃度であって、前記第2判定ステップでは、前記空間における現在の換気風量が前記空間における二酸化炭素の濃度に応じて予め定められた下限風量より小さい場合に、前記換気風量を増加させるべきと判定する、技術1に記載の換気装置の制御方法。
【0189】
これによれば、二酸化炭素濃度の値に基づいて、安全性の観点から換気風量を増加させるべきか否かを容易に判定することができる。
【0190】
(技術3)前記第1判定ステップでは、前記温度状態が、前記目標温度と前記外気温度とが所定の温度誤差の範囲で一致し、且つ前記室内温度が前記目標温度及び前記外気温度より高いか又は低い第1状態であるときは、前記目標決定ステップにおいて前記第1状態に応じて決定された前記目標風量を、前記目標温度と前記室内温度との温度差が予め定めた所定値より大きい場合に増加させると判定し、前記目標温度と前記室内温度との温度差が前記所定値より小さい場合に増加させないと判定する、技術1又は2に記載の換気装置の制御方法。
【0191】
これによれば、室内温度と目標温度との温度差が所定値より大きい場合には、目標温度と同じ外気温度をもつ外気の導入量をより多くして、室内温度をより迅速に目標温度に近づけることができる。一方、室内温度と目標温度との温度差が所定値より小さい場合には、外気の導入量を増加させないこととして、室内温度が目標温度から離れていくのを抑制することができる。よって、ユーザの快適性を向上するように、換気装置の風量を調整することができる。
【0192】
(技術4)前記第1判定ステップでは、前記温度状態が、前記目標温度が前記室内温度より高く且つ前記外気温度より低い第2状態、又は前記目標温度が前記外気温度より高く且つ前記室内温度より低い第3状態であるときは、それぞれ、前記目標決定ステップにおいて前記第2状態に応じて決定された前記目標風量、又は前記第3状態に応じて決定された前記目標風量を、前記目標温度と前記外気温度との温度差が前記目標温度と前記室内温度との温度差より小さい場合に増加させると判定し、前記目標温度と前記外気温度との温度差が前記目標温度と前記室内温度との温度差以上である場合に増加させさないと判定する、技術1ないし3のいずれかに記載の換気装置の制御方法。
【0193】
これによれば、目標温度が室内温度よりも外気温度に近い場合に、外気の導入量をより多くして、室内温度をより迅速に目標温度に近づけることができる。一方、目標温度が外気温度よりも室内温度に近いか又はこれらの温度の互いの温度差が等しい場合には、外気の導入量を増加させないこととして、室内温度が目標温度から離れていくのを抑制し、及び換気装置の消費電力の不要な増加を抑制することができる。
【0194】
(技術5)前記第1判定ステップでは、前記温度状態が、前記外気温度が前記目標温度より高く且つ前記室内温度より低い第4状態、又は前記外気温度が前記室内温度より高く且つ前記目標温度より低い第5状態であるときは、それぞれ、前記目標決定ステップにおいて前記第4状態に応じて決定された前記目標風量、又は前記第5状態に応じて決定された前記目標風量を、前記外気温度と前記目標温度との温度差が前記外気温度と前記室内温度との温度差より小さい場合に増加させると判定し、前記外気温度と前記目標温度との温度差が前記外気温度と前記室内温度との温度差以上である場合に増加させないと判定する、技術1ないし4のいずれかに記載の換気装置の制御方法。
【0195】
これによれば、外気温度が室内温度よりも目標温度に近い場合に、外気の導入量をより多くして、室内温度をより迅速に目標温度に近づけることができる。一方、外気温度が目標温度よりも室内温度に近いか又はこれらの温度の互いの温度差が等しい場合には、外気の導入量を増加させないこととして、室内温度が目標温度から離れていくのを抑制し、及び換気装置の消費電力の不要な増加を抑制することができる。
【0196】
(技術6)前記換気装置は、熱交換器を備え、前記換気装置に実行させる換気モードを、前記熱交換器を動作させる熱交換換気モードとするか、又は前記熱交換器を動作させない通常換気モードとするか、を選択するモード選択ステップ、を更に含み、前記第1判定ステップでは、前記モード選択ステップで前記熱交換換気モードが選択された場合には、前記目標温度、前記室内温度、及び前記外気温度の間の温度差の値に関わらず、前記目標決定ステップにおいて決定された前記目標風量を増加させないと判定する、技術1ないし5のいずれかに記載の換気装置の制御方法。
【0197】
これによれば、換気装置が熱交換換気モードで動作することで空間に導入される外気が外気温度と異なる温度を有することとなるような場合には、目標風量の増加要否の判定を行わないこととするので、目標風量を不要に増加させて室内温度が目標温度から離れてしまうような事態を防止することができる。
【0198】
(技術7)前記目標温度は、快適性指標に基づいて算出される、技術1ないし6のいずれかに記載の換気装置の制御方法。
【0199】
これによれば、目標温度が快適性指標に基づいて算出されるので、ユーザにとって快適な目標温度を、ユーザの操作を要することなく適切に設定することができる。
【0200】
(技術8)前記空間を換気対象とする複数の前記換気装置の中から、換気動作を実行する少なくとも一つの前記換気装置を選定する装置選定ステップを含み、前記装置選定ステップでは、前記空間に設けられたそれぞれの前記換気装置の換気口に対応する位置の前記空気汚染度に基づいて、換気動作を実行する少なくとも一つの前記換気装置を選定する、技術1ないし7のいずれかに記載の換気装置の制御方法。
【0201】
これによれば、換気対象である空間において空気汚染の程度が空間的に一様でない場合でも、複数の換気装置の中から、空気汚染の程度が高い空間部分を換気する少なくとも一つの換気装置を選択して動作させることができる。このため、空気汚染をより迅速に解消してユーザの安全性をより高めることができる。
【0202】
(技術9)前記目標決定ステップ、前記第1判定ステップ、前記第2判定ステップ、及び前記風量決定ステップを、所定時間毎に繰り返し実行する、技術1ないし8のいずれかに記載の換気装置の制御方法。
【0203】
これによれば、外気温度、室内温度、及び空気汚染度の時間変化に応じて、空間における換気風量を適応的に制御することができるので、例えば、一日を通じた環境変化の影響を受けることなくユーザの安全性と快適性とを安定に維持し得るように換気装置を制御することがでできる。
【0204】
(技術10)換気装置を制御する換気制御装置のコンピュータが実行する、換気装置の制御方法であって、換気対象である空間における空気汚染度が予め定めた所定の程度よりも低いときに、前記空間についての目標温度と前記空間の外の外気温度とが共に前記空間の温度である室内温度よりも低い場合又は前記目標温度と前記外気温度とが共に前記室内温度よりも高い場合の前記空間の換気風量が、前記室内温度が前記外気温度より高く且つ前記目標温度より低い場合又は前記室内温度が前記目標温度より高く且つ前記外気温度より低い場合の前記空間の換気風量に比べて大きい値となるように、前記換気装置の動作風量を調整することを含む、換気装置の制御方法。
【0205】
これによれば、例えば換気風量の設定に際して空気汚染に対する安全性向上を考慮する必要がない程度に空間における空気汚染度が低い場合には、室内温度が外気温度と目標温度との間にあり、空間への外気の導入量を多くしても室内温度を目標温度に近づけられない場合に比べて、外気の導入量を増やすことで室内温度を目標温度に近づけることが可能な場合である目標温度及び外気温度が共に室内温度より高いか又は低い場合に、換気風量を大きくするように換気装置の動作風量が調整される。よって、ユーザの安全性に配慮しつつ、目標温度、外気温度、室内温度の関係に応じてユーザの快適性を向上することができる。
【0206】
(技術11)換気対象である空間における空気汚染度が予め定めた所定の程度よりも低い場合であって、前記目標温度が前記室内温度より高く且つ前記外気温度より低いとき、又は前記目標温度が前記外気温度より高く且つ前記室内温度より低いときに、前記目標温度と前記外気温度との温度差が前記目標温度と前記室内温度との温度差より小さい場合の前記空間の換気風量が、前記目標温度と前記外気温度との温度差が前記目標温度と前記室内温度との温度差より大きい場合の前記空間の換気風量に比べて大きい値となるように、前記換気装置の動作風量を調整することを含む、技術10に記載の換気装置の制御方法。
【0207】
これによれば、例えば換気風量の設定に際して空気汚染に対する安全性向上を考慮する必要がない程度に空間における空気汚染度が低い場合であって且つ目標温度が室内温度と外気温度との間にあるときには、目標温度が外気温度よりも室内温度に近く、空間への外気の導入量を多くしても室内温度を目標温度に近づけられない場合に比べて、外気の導入量を増やすことで室内温度を目標温度に近づけることが可能な、目標温度が室内温度よりも外気温度に近い場合に、換気風量を大きくするように換気装置の動作風量が調整される。よって、目標温度、外気温度、室内温度の関係に応じてユーザの快適性をより向上することができる。
【0208】
(技術12)換気対象である空間における空気汚染度が予め定めた所定の程度よりも低い場合であって、前記外気温度が前記目標温度より高く且つ前記室内温度より低いとき、又は前記外気温度が前記室内温度より高く且つ前記目標温度より低いときに、前記外気温度と前記目標温度との温度差が前記外気温度と前記室内温度との温度差より小さい場合の前記空間の換気風量が、前記外気温度と前記目標温度との温度差が前記外気温度と前記室内温度との温度差より大きい場合の前記空間の換気風量に比べて大きい値となるように、前記換気装置の動作風量を調整することを含む、技術10又は11に記載の換気装置の制御方法。
【0209】
これによれば、例えば換気風量の設定に際して空気汚染に対する安全性向上を考慮する必要がない程度に空間における空気汚染度が低い場合であって且つ外気温度が室内温度と目標温度との間にあるときには、外気温度が目標温度よりも室内温度に近く、空間への外気の導入量を多くしても室内温度を目標温度に近づけられない場合に比べて、外気の導入量を増やすことで室内温度を目標温度に近づけることが可能な、外気温度が室内温度よりも目標温度に近い場合に、換気風量を大きくするように換気装置の動作風量が調整される。よって、目標温度、外気温度、室内温度の関係に応じてユーザの快適性をより向上することができる。
【0210】
(技術13)換気対象である空間を換気する換気装置を制御する換気制御装置であって、前記空間についての目標温度、前記空間の温度である室内温度、及び前記空間の外の温度である外気温度の間の大小関係を表す温度状態に応じて前記空間の換気風量の目標風量を決定する目標決定部と、前記目標温度、前記室内温度、及び前記外気温度の間の温度差に基づいて、前記目標風量を増加させるか否かを判定する第1判定部と、前記空間の空気汚染度に基づいて、前記空間の現在の換気風量を増加させるべきか否かを判定する第2判定部と、前記第1判定部の判定結果及び前記第2判定部の判定結果に基づいて、前記空間において実現すべき換気風量である設定風量を決定する風量決定部と、を備え、前記風量決定部は、前記第1判定部において前記目標風量を増加させないと判定し且つ前記第2判定部において前記空間の換気風量を現在の風量から増加させるべきと判定した場合の前記設定風量を、前記第1判定部において前記目標風量を増加させると判定し且つ前記第2判定部において前記空間の換気風量を現在の風量から増加させるべきと判定した場合の前記設定風量より大きな値に決定する、換気制御装置。
【0211】
これによれば、技術1の換気装置の制御方法と同様の効果を奏する。
【0212】
(技術14)換気対象である空間を換気する換気装置を制御する換気制御装置のコンピュータを、前記空間についての目標温度、前記空間の温度である室内温度、及び前記空間の外の温度である外気温度の間の大小関係を表す温度状態に応じて前記空間の換気風量の目標風量を決定する目標決定部、前記目標温度、前記室内温度、及び前記外気温度の間の温度差に基づいて、前記目標風量を増加させるか否かを判定する第1判定部、前記空間の空気汚染度に基づいて、前記空間の現在の換気風量を増加させるべきか否かを判定する第2判定部、及び、前記第1判定部の判定結果及び前記第2判定部の判定結果に基づいて、前記空間において実現すべき換気風量である設定風量を決定する風量決定部、として機能させる換気制御プログラムであって、前記風量決定部は、前記第1判定部において前記目標風量を増加させないと判定し且つ前記第2判定部において前記空間の換気風量を現在の風量から増加させるべきと判定した場合の前記設定風量を、前記第1判定部において前記目標風量を増加させると判定し且つ前記第2判定部において前記空間の換気風量を現在の風量から増加させるべきと判定した場合の前記設定風量より大きな値に決定する、換気制御プログラム。
【0213】
これによれば、技術1の換気装置の制御方法と同様の効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0214】
以上のように、本開示に係る換気装置の制御方法、換気制御装置、及び換気制御プログラムは、ユーザの安全性と快適性とを両立するように換気する用途に利用可能である。
【符号の説明】
【0215】
1 換気システム
2 換気装置
3 中継装置
4 換気制御装置
5 空気質センサ
6 内気温センサ
7 外気温センサ
8 空調装置8
9 リモコン
10a、10b 送風機
11 熱交換器
12 機器制御装置
13a 給気ダクト
13b 排気ダクト
20 第1プロセッサ
21 第1メモリ
22 第1通信装置
23 第1取得部
24 運転制御部
25 第1通信制御部
26 機器制御プログラム
30 第2プロセッサ
31 第2メモリ
32 第2通信装置
33 第2取得部
34 換気モード選択部
35 目標決定部
36 第1判定部
37 第2判定部
38 風量決定部
39 指示部
40 換気制御プログラム
CC 空気汚染度
S 空間
TB 目標温度
TJ 室内温度
TQ 外気温度
VC 現在の換気風量
VT 目標風量
VS 設定風量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9