(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161969
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】視認判定装置及び視認判定装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
G08G1/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077075
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100187311
【弁理士】
【氏名又は名称】小飛山 悟史
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】藤野 次郎
(72)【発明者】
【氏名】原 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】川上 悟
(72)【発明者】
【氏名】森本 寛
(72)【発明者】
【氏名】山田 健太
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB20
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181CC27
5H181FF27
5H181FF33
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】対象物に対するドライバーの視認判定の精度を向上させる。
【解決手段】車両の外部センサにより検出された対象物をドライバーが視認しているか否かを判定する視認判定装置であって、車両のドライバモニタカメラによりドライバーの視線ベクトルを推定すると共に、ドライバーの視線ベクトルを基準としてドライバーのアイポイントから離れるほど円錐状に広がる視線円錐領域を推定する視線円錐領域推定部と、視線円錐領域と対象物との重なりからドライバーが対象物を視認しているか否かを判定する視認判定部と、を備え、視線円錐領域推定部は、ドライバーの顔向きに応じて視線円錐領域を推定する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外部センサにより検出された対象物をドライバーが視認しているか否かを判定する視認判定装置であって、
前記車両のドライバモニタカメラにより前記ドライバーの視線ベクトルを推定すると共に、前記ドライバーの視線ベクトルを基準として前記ドライバーのアイポイントから離れるほど円錐状に広がる視線円錐領域を推定する視線円錐領域推定部と、
前記視線円錐領域と前記対象物との重なりから前記ドライバーが前記対象物を視認しているか否かを判定する視認判定部と、
を備え、
前記視線円錐領域推定部は、前記ドライバーの顔向きに応じて前記視線円錐領域を推定する、視認判定装置。
【請求項2】
前記視線円錐領域推定部は、前記ドライバーの顔向きが前記車両の前方向から逸れている場合、前記ドライバーの顔向きが前記前方向を向いている場合と比べて前記アイポイントからの距離による前記視線円錐領域の拡大率を大きくする、請求項1に記載の視認判定装置。
【請求項3】
前記視線円錐領域推定部は、前記ドライバーの顔向きが前記車両の前方向を向いている場合、前記視線ベクトルに直交する断面が縦長の楕円形状となる前記視線円錐領域を推定し、前記ドライバーの顔向きが前記車両の前方向から横に逸れている場合、前記断面が横長の楕円形状となる前記視線円錐領域を推定する、請求項1又は2に記載の視認判定装置。
【請求項4】
前記視線円錐領域推定部は、前記車両の車速が車速判定閾値以上である場合、前記車速が前記車速判定閾値未満である場合と比べて前記アイポイントからの距離による前記視線円錐領域の拡大率を小さくする、請求項1又は2に記載の視認判定装置。
【請求項5】
前記視線円錐領域推定部は、前記車両が旋回中である場合、前記車両が旋回中ではない場合と比べて、前記視線ベクトルに直交する断面が前記車両の旋回方向に拡大するように前記視線円錐領域を推定する、請求項1又は2に記載の視認判定装置。
【請求項6】
前記視線円錐領域推定部は、前記ドライバーから見た前記対象物の移動速度が移動速度閾値以上である場合、前記ドライバーから見た前記対象物の移動方向に前記視線ベクトルに直交する断面が拡大するように前記視線円錐領域を推定する、請求項1又は2に記載の視認判定装置。
【請求項7】
前記視線円錐領域推定部は、前記ドライバーが前記対象物を視認していると判定した後、前記ドライバーが前記対象物を視認していないと判定するまでの間、前記ドライバーが前記対象物を視認していると判定する前と比べて、前記視線円錐領域の拡大率を大きくする、請求項1又は2に記載の視認判定装置。
【請求項8】
車両の外部センサにより検出された対象物をドライバーが視認しているか否かを判定する視認判定装置の制御方法であって、
前記車両のドライバモニタカメラにより前記ドライバーの視線ベクトルを推定すると共に、前記ドライバーの視線ベクトルを基準として前記ドライバーのアイポイントから離れるほど円錐状に広がる視線円錐領域を推定し、
前記ドライバーの顔向きに応じて前記視線円錐領域を推定し、
前記視線円錐領域と前記対象物との重なりから前記ドライバーが前記対象物を視認しているか否かを判定する、視認判定装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視認判定装置及び視認判定装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、視認判定装置に関する技術文献として、特開2014―120113号公報が知られている。この公報には、ドライバモニタカメラの撮像画像から運転者の視線位置、視線円、及び視野領域を検出し、フロントカメラの撮像画像から車両進行方向前方にある特徴物を検出し、各検出結果に基づいて特徴物への運転者の視認態様を特定する装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ドライバーの顔向きによってはドライバモニタカメラの撮像画像に基づく視線ベクトルの推定精度が低下する。視線ベクトルの推定精度の低下によりドライバーが視認している対象物をドライバーが視認していないと誤判定するおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、車両の外部センサにより検出された対象物をドライバーが視認しているか否かを判定する視認判定装置であって、車両のドライバモニタカメラによりドライバーの視線ベクトルを推定すると共に、ドライバーの視線ベクトルを基準としてドライバーのアイポイントから離れるほど円錐状に広がる視線円錐領域を推定する視線円錐領域推定部と、視線円錐領域と対象物との重なりからドライバーが対象物を視認しているか否かを判定する視認判定部と、を備え、視線円錐領域推定部は、ドライバーの顔向きに応じて視線円錐領域を推定する。
【0006】
本発明の一態様に係る視認判定装置によれば、ドライバーの顔向きによってドライバモニタカメラの撮像画像に基づく視線ベクトルの推定精度が低下することから、顔向きに応じて視線円錐領域を推定することで対象物に対するドライバーの視認判定の精度を向上させることができる。
【0007】
本発明の一態様に係る視認判定装置において、視線円錐領域推定部は、ドライバーの顔向きが車両の前方向から逸れている場合、ドライバーの顔向きが前方向を向いている場合と比べてアイポイントからの距離による視線円錐領域の拡大率を大きくしてもよい。
この視認判定装置によれば、ドライバーの顔向きが車両前方から逸れている場合には、ドライバモニタカメラの撮像画像に基づく視線ベクトルの推定精度が低下するため、視線円錐領域の拡大率を大きくすることで対象物に対するドライバーの視認判定の精度を向上させることができる。
【0008】
本発明の一態様に係る視認判定装置において、視線円錐領域推定部は、ドライバーの顔向きが車両の前方向を向いている場合、視線ベクトルに直交する断面が縦長の楕円形状となる視線円錐領域を推定し、ドライバーの顔向きが車両の前方向から横に逸れている場合、断面が横長の楕円形状となる視線円錐領域を推定してもよい。
この視認判定装置によれば、ドライバーの顔向きが車両の前方向を向いている場合には車両のピッチ方向における視線ベクトルの推定精度が低いため断面が縦長の楕円形状となる視線円錐領域を推定する。また、ドライバーの顔向きが車両の前方向から横に逸れている場合には車両のヨー方向における視線ベクトルの推定精度が低くなるため断面が横長の楕円形状となる視線円錐領域を推定する。これにより、この視認判定装置では、対象物に対するドライバーの視認判定の精度を向上させることができる。
【0009】
本発明の一態様に係る視認判定装置において、視線円錐領域推定部は、車両の車速が車速判定閾値以上である場合、車速が車速判定閾値未満である場合と比べてアイポイントからの距離による視線円錐領域の拡大率を小さくしてもよい。
この視認判定装置によれば、車速が高い場合にはドライバーの有効視野角が狭まることから、車速が車速判定閾値以上である場合に視線円錐領域の拡大率を小さくする。これにより、この視認判定装置では、対象物に対するドライバーの視認判定の精度を向上させることができる。
【0010】
本発明の一態様に係る視認判定装置において、視線円錐領域推定部は、車両が旋回中である場合、車両が旋回中ではない場合と比べて、視線円錐領域の視線ベクトルに直交する断面を車両の旋回方向に拡大してもよい。
この視認判定装置によれば、車両が旋回中である場合にはドライバーが旋回先を意識して見ると考えることができることから、視線円錐領域の視線ベクトルに直交する断面を車両の旋回方向に拡大することで、対象物に対するドライバーの視認判定の精度を向上させることができる。
【0011】
本発明の一態様に係る視認判定装置において、視線円錐領域推定部は、ドライバーから見た対象物の移動速度が移動速度閾値以上である場合、ドライバーから見た対象物の移動方向に視線ベクトルに直交する断面が拡大するように視線円錐領域を推定してもよい。
この視認判定装置によれば、ドライバーから見た対象物の移動速度が早い場合には、ドライバーは対象物の移動を考慮して視認しようとすることから、対象物の移動方向に視線ベクトルに直交する断面が拡大するように視線円錐領域を推定することで、対象物に対するドライバーの視認判定の精度を向上させることができる。
【0012】
本発明の一態様に係る視認判定装置において、視線円錐領域推定部は、ドライバーが対象物を視認していると判定した後、ドライバーが対象物を視認していないと判定するまでの間、ドライバーが対象物を視認している前と比べて、視線円錐領域の拡大率を大きくしてもよい。
この視認判定装置によれば、一度視認した対象物からドライバーが視線を少しずらしても対象物を視認している可能性が高いと考えられることから、視線円錐領域の拡大率を大きくすることで対象物に対するドライバーの視認判定の精度を向上させることができる。
【0013】
本発明の他の態様は、車両の外部センサにより検出された対象物をドライバーが視認しているか否かを判定する視認判定装置の制御方法であって、車両のドライバモニタカメラによりドライバーの視線ベクトルを推定すると共に、ドライバーの視線ベクトルを基準としてドライバーのアイポイントから離れるほど円錐状に広がる視線円錐領域を推定し、ドライバーの顔向きに応じて視線円錐領域を推定し、視線円錐領域と対象物との重なりからドライバーが対象物を視認しているか否かを判定してもよい。
【0014】
本発明の他の態様に係る視認判定装置の制御方法によれば、ドライバーの顔向きによってドライバモニタカメラの撮像画像に基づく視線ベクトルの推定精度が低下することから、顔向きに応じて視線円錐領域の大きさを推定することで対象物に対するドライバーの視認判定の精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の各態様によれば、対象物に対するドライバーの視認判定の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施形態に係る視認判定装置を示すブロック図である。
【
図2】ドライバーの視線ベクトルを説明するための平面図である。
【
図3】(a)ドライバーが対象物を視認している状況を説明するための図である。(b)ドライバーが対象物を視認していない状況を説明するための図である。
【
図4】(a)視線円錐領域の断面の一例を示す図である。(b)拡大率を大きくした場合の視線円錐領域の断面の一例を示す図である。
【
図5】(a)視線円錐領域の縦長の断面の一例を示す図である。(b)視線円錐領域の横長の断面の一例を示す図である。
【
図6】視認判定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】(a)車速に応じた視線円錐領域推定処理の一例を示すフローチャートである。(b)車両の旋回に応じた視線円錐領域推定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】(a)対象物の移動速度に応じた視線円錐領域推定処理の一例を示すフローチャートである。(b)ドライバーの視認状況に応じた視線円錐領域推定処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、一実施形態に係る視認判定装置100を示すブロック図である。
図1に示す視認判定装置100は、乗用車又は貨物車などの車両に搭載され、車両のドライバーが車両外部の対象物を視認しているか否かを判定する装置である。車両に高度な運転支援機能が搭載されたとしてもドライバーには周辺監視を行う義務があり、ドライバーが対象物を適切に視認していることを判定することが求められている。
【0019】
[視認判定装置の構成]
以下、本実施形態に係る視認判定装置100の構成について説明する。
図1に示すように、視認判定装置100は、装置を統括的に管理する視認判定ECU[Electronic Control Unit]10を備えている。視認判定ECU10は、CPU[Central Processing Unit]とROM[Read OnlyMemory]又はRAM[Random Access Memory]などの記憶部を有する電子制御ユニットである。視認判定ECU10では、例えば、記憶部に記憶されているプログラムをCPUで実行することにより各種の機能を実現する。視認判定ECU10は、複数の電子ユニットから構成されていてもよい。
【0020】
視認判定ECU10は、ドライバモニタカメラ1、外部センサ2、内部センサ3、及びHMI[Human Machine Interface]4と接続されている。
【0021】
ドライバモニタカメラ1は、車両のドライバーを撮像するためのカメラである。ドライバモニタカメラ1は、CCD[Charge Coupled Device]又はCIS[CMOS Image Sensor]などの撮像素子を有するデジタルカメラとすることができる。ドライバモニタカメラ1は、例えば運転席正面のステアリングコラムのカバー上に設けられ、所定のフレームレートでドライバーの頭部を撮像する。ドライバモニタカメラ1は、運転席の前のインストルメントパネルに埋め込まれていてもよく、インストルメントパネルの上部に設けられていてもよい。ドライバモニタカメラ1は、複数台のカメラから構成されていてもよい。ドライバモニタカメラ1は、ドライバー撮像画像を視認判定ECU10へ送信する。
【0022】
外部センサ2は、車両の周辺の状況を検出する検出機器である。外部センサ2は、カメラ及びレーダセンサのうち少なくとも一つを含む。カメラは、車両の外部状況を撮像する撮像機器である。カメラは、例えば車両のフロントガラスの裏側に設けられ、車両の前方を撮像する。カメラには、車両の周囲の複数方向を撮像する複数台の撮像機器が含まれていてもよい。カメラは、車両の外部状況に関する撮像情報を視認判定ECU10へ送信する。
【0023】
レーダセンサは、電波(例えばミリ波)又は光を利用して車両の周囲の物体を検出する検出機器である。レーダセンサには、例えば、ミリ波レーダ又はライダー[LIDAR:Light Detection and Ranging]が含まれる。レーダセンサには、車両の周囲の複数方向において物体を検出するため複数の検出機器が含まれていてもよい。レーダセンサは、検出した物体の情報を視認判定ECU10へ送信する。
【0024】
内部センサ3は、車両の走行状態を検出する検出機器である。内部センサ3は、車速センサ、及びヨーレートセンサを含む。車速センサは、車両の速度を検出する検出器である。車速センサは、検出した車速情報(車輪速情報)を視認判定ECU10に送信する。
【0025】
ヨーレートセンサは、車両の重心の鉛直軸周りのヨーレート(回転角速度)を検出する検出器である。ヨーレートセンサとしては、例えばジャイロセンサを用いることができる。ヨーレートセンサは、検出した車両のヨーレート情報を視認判定ECU10へ送信する。
【0026】
HMI4は、視認判定ECU10とドライバーとの間で情報の入出力を行うためのインターフェイスである。HMI4は、例えば、車室内に設けられたディスプレイ、スピーカーなどを備えている。HMI4は、視認判定ECU10からの制御信号に応じて、ディスプレイの画像出力及びスピーカーからの音声出力を行う。ディスプレイは、MID[Multi Information Display]であってもよく、ナビゲーションシステムのディスプレイであってもよく、HUD[Head Up Display]であってもよい。HMI4は、各種のインジケータを備えていてもよい。
【0027】
次に、視認判定ECU10の機能的構成について説明する。視認判定ECU10は、対象物認識部11、視線円錐領域推定部12、及び視認判定部13を有している。なお、以下に説明する視認判定ECU10の機能の一部は、車両と通信可能なサーバにおいて実行される態様であってもよい。
【0028】
対象物認識部11は、外部センサ2の検出結果に基づいて、車両外部の対象物を認識する。対象物とは、車両のドライバーが視認する対象となる物である。対象物には、例えば他車両、自転車、パーソナルモビリティ、歩行者などの移動体が含まれる。対象物には、信号機、道路標識、道路案内板、路面表示などの静止物が含まれてもよい。対象物はドライバーが視認可能な距離内に位置しているものに限定されてもよい。対象物は車両前方に位置するものに限定されてもよい。
【0029】
対象物認識部11は、車両に対する対象物の相対位置及び車両に対する対象物の相対速度を認識する。対象物認識部11は、外部センサ2におけるカメラの撮像画像とレーダセンサの検出結果を統合したセンサフュージョンにより対象物の認識を行ってもよい。対象物の認識については周知の技術を用いることができるため詳細な説明を省略する。
【0030】
対象物認識部11は、外部センサ2の検出結果に基づいて、ドライバーから見た対象物の位置を認識してもよい。ドライバーから見た対象物の位置とは、ドライバーのアイポイントから見た対象物の位置を意味する。
【0031】
ドライバーのアイポイントとは、車室内で運転席に着座しているドライバーの目が存在すると仮定される位置である。ドライバーのアイポイントは、三次元空間における座標として表現されてもよい。ドライバーのアイポイントは、例えば車体を基準として設定される。ドライバーのアイポイントは、固定の位置であってもよく、調整可能な位置であってもよい。
【0032】
ドライバーのアイポイントは、ドライバモニタカメラ1の撮像したドライバー撮像画像から認識されたドライバーの目の位置に基づいて調整されてもよい。ドライバーのアイポイントは、運転席の位置(例えばシートクッションの前後位置)に応じて調整されてもよい。ドライバーのアイポイントは、運転席のシートバックの傾きに応じて調整されてもよい。ドライバーのアイポイントは、視認判定装置100に共有されたドライバーの背の高さや座高などの個人情報に基づいて調整されてもよい。ドライバーのアイポイントは、その他の周知の技術を用いて調整することができる。
【0033】
対象物認識部11は、例えばセンサフュージョンによる対象物の認識結果を踏まえて、ドライバーから見た対象物の位置を求める。対象物認識部11は、外部センサ2のカメラの撮像画像をドライバーのアイポイントから見た画像となるように視点変換処理を行うことで、ドライバーから見た対象物の位置を求めてもよい。対象物認識部11は、ドライバーから見た対象物の位置の時間変化に基づいて、ドライバーから見た対象物の移動速度を算出する。また、対象物認識部11は、ドライバーから見た対象物のサイズを認識する。
【0034】
対象物認識部11は、対象物の種別を認識してもよい。対象物の種別とは、四輪車、二輪車、歩行者、信号機、道路標識などの種別である。対象物認識部11は、例えばパターンマッチングにより対象物の種別を認識する。対象物認識部11は、種別ごとに予め用意された画像パターンを用いたマッチングにより、外部センサ2のカメラの撮像画像から対象物の種別を認識してもよい。
【0035】
なお、対象物の各種の認識については、機械学習モデルを用いて実行されてもよい。機械学習モデルは、例えば畳込みニューラルネットワーク(CNN)などのニューラルネットワークである。ニューラルネットワークは、複数の畳込み層およびプーリング層を含む複数の層を含むことができる。ニューラルネットワークとしては、ディープラーニングによる深層学習ネットワークが用いられてもよい。
【0036】
視線円錐領域推定部12は、車両のドライバモニタカメラ1の撮像したドライバーの撮像画像に基づいてドライバーの視線ベクトルを推定すると共に、ドライバーの視線ベクトルを基準とした視線円錐領域を推定する。また、視線円錐領域推定部12は、ドライバーの顔向きの認識も行う。
【0037】
ドライバーの視線ベクトルは、ドライバーのアイポイントを始点として直線上に延びるドライバーの視線に対応する三次元空間上のベクトルである。視線ベクトルの推定方法としては、例えば顔向きと角膜反射法により計測された瞳孔の中心位置とを用いて推定する方法がある。視線ベクトルの推定に機械学習モデルを用いてもよい。視線ベクトルの推定については周知の技術であるため詳細な説明を省略する。なお、視線ベクトルは、必ずしも長さを含む必要はなく、視線方向と言う意味で用いることができる。
【0038】
ここで、
図2は、ドライバーの視線ベクトルを説明するための平面図である。
図2に、車両M、車両Mの走行する道路R、歩行者50(対象物)、視線ベクトルEBを示す。歩行者50は、車両Mの前方の横断歩道を渡ろうとしている歩行者である。歩行者50の進行方向を矢印Pとして示す。
図2に示すように、視線ベクトルEBは、車両Mのドライバーが対象物である歩行者50に向けた視線に相当する。
【0039】
図3(a)は、視線円錐領域の一例を示す図である。
図3(a)に、ドライバーのアイポイントEPを起点として視線ベクトルEBから広がる視線円錐領域ECを示す。また、
図3(a)に、対象物である歩行者50に対するドライバーの視認を判定するときに用いるバウンディングボックス60を示す。バウンディングボックス60は三次元空間に設定され、例えば歩行者50を最小の体積で囲う矩形のボックスとして設定される。なお、バウンディングボックス60の設定は必須ではない。なお、
図3(b)は、ドライバーが対象物を視認していない状況を説明するための図である。
図3(b)の状況については後述する。
【0040】
図3(a)に示すように、視線円錐領域推定部12は、ドライバーのアイポイントEPから延びる視線ベクトルEBを基準として視線円錐領域ECを推定する。視線円錐領域ECは、ドライバーの視線ベクトルEBに広がりを持たせた円錐状の領域である。なお、視線円錐領域ECは厳密な円錐形状である必要はない。視線円錐領域ECの断面形状は、円形状や楕円形状に限られず、全体的に円や楕円に近い形状であればよい。
【0041】
視線円錐領域推定部12は、対象物ごとに異なる大きさの視線円錐領域を推定してもよい。視線円錐領域推定部12は、同時に複数の対象物が存在する場合には、ドライバーの視線ベクトルに対して各対象物の視認判定に用いられる複数の視線円錐領域を推定することができる。
【0042】
視線円錐領域ECは、ドライバーの有効視野角を考慮して推定されてもよい。有効視野は、人の視野の中心部に位置し、高い解像度で物体を認識できる領域である。有効視野角(有効視野の視野角)には個人差があるが例えば20°とすることができる。有効視野の外側には広範囲の周辺視野が存在する。周辺視野は、低い解像度で物体を認識できる領域である。視線円錐領域推定部12は、視線円錐領域ECの頂角として有効視野角を用いてもよい。なお、視線円錐領域推定部12は、有効視野角と関係ない値を視線円錐領域ECの頂角として推定してもよい。
【0043】
視線円錐領域推定部12は、視線ベクトルEBの推定精度を考慮して、視線円錐領域ECを推定することができる。視線ベクトルEBの推定精度には、ドライバーの顔向きが与える影響が大きい。
【0044】
視線円錐領域推定部12は、ドライバーの顔向きに応じて視線円錐領域ECを推定する。視線円錐領域推定部12は、ドライバモニタカメラ1のドライバー撮像画像に基づいて、ドライバーの顔向きを認識する。ドライバーの顔向きの認識については周知の技術を用いることができるため詳細な説明を省略する。
【0045】
具体的に、視線円錐領域推定部12は、ドライバーの顔向きが車両Mの前方向から逸れている場合、ドライバーの顔向きが車両Mの前方向を向いている場合と比べてアイポイントEPからの距離による視線円錐領域ECの拡大率を大きくする。
【0046】
ドライバーの顔向きが車両Mの前方向を向いている場合とは、例えばアイポイントEPを通過する車両Mの前後軸に並行な軸線に対してドライバーの顔向きが設定角度範囲内に含まれる場合である。設定角度範囲は、例えばドライバモニタカメラ1が視線ベクトルを高精度に推定できる範囲に対応する。設定角度範囲は、ドライバモニタカメラ1の仕様によって変更されてもよく、ドライバモニタカメラ1とアイポイントEPとの位置関係に応じて変更されてもよい。ドライバーの顔向きが車両Mの前方向から逸れている場合とは、ドライバーの顔向きが設定角度範囲外となる場合である。なお、ドライバーの顔向きが逸れる方向は横方向に限定されず、上下方向が含まれてもよい。
【0047】
ここで、
図4(a)は、視線円錐領域ECの断面の一例を示す図である。
図4(b)は、拡大率を大きくした場合の視線円錐領域ECの断面の一例を示す図である。
図4(b)の視線円錐領域ECの断面は、
図4(a)の断面と比べて大きい円となっている。視線円錐領域推定部12は、ドライバーの顔向きが車両Mの前方向を向いている場合には、
図4(a)に示す大きさの視線円錐領域ECを推定する。視線円錐領域推定部12は、ドライバーの顔向きが車両Mの前方向から逸れている場合、
図4(b)に示すように
図4(a)と比べて大きい大きさの視線円錐領域ECを推定する。
【0048】
視線円錐領域推定部12は、ドライバーの顔向きが逸れるほどドライバモニタカメラ1の撮像画像を用いた視線ベクトルの推定精度が低下するおそれがあるため、ドライバーの顔向きが車両Mの前方向から逸れている場合に視線円錐領域ECの拡大率を大きくすることで、対象物に対するドライバーの視認判定の精度を向上させることができる。
【0049】
また、視線円錐領域推定部12は、ドライバーの顔向きが車両Mの前方向を向いている場合、視線ベクトルEBに直交する断面が縦長の楕円形状となる視線円錐領域ECを推定し、ドライバーの顔向きが車両Mの前方向から横に逸れている場合、断面が横長の楕円形状となる視線円錐領域を推定してもよい。縦長とは、視線ベクトルEBに直交する断面の横方向の長さと比べて縦方向(上下方向)の長さが長いことを意味する。同様に、横長とは、視線ベクトルEBに直交する断面の縦方向の長さと比べて横方向の長さが長いことを意味する。
【0050】
ここで、
図5(a)は、視線円錐領域ECの縦長の断面の一例を示す図である。
図5(b)は、視線円錐領域ECの横長の断面の一例を示す図である。視線円錐領域推定部12は、ドライバーの顔向きが車両Mの前方向を向いている場合、
図5(a)に示すように断面が縦長の楕円形状となる視線円錐領域ECを推定する。視線円錐領域推定部12は、ドライバーの顔向きが車両Mの前方向から横に逸れている場合、
図5(b)に示すように断面が横長の楕円形状となる視線円錐領域を推定する。
【0051】
視線円錐領域推定部12は、ドライバーの顔向きが車両Mの前方向を向いている場合には車両Mのピッチ方向における視線ベクトルの推定精度が低くなりやすいため、視線円錐領域ECの断面を縦長の楕円形状とすることで、ドライバーが対象物を視認していないと誤判定してしまうことを避けることができる。同様に、視線円錐領域推定部12は、ドライバーの顔向きが車両Mの横方向に逸れている場合には車両Mのヨー方向における視線ベクトルの推定精度が低くなりやすいため、視線円錐領域ECの断面を横長の楕円形状とすることで、対象物に対するドライバーの視認判定の精度を向上させることができる。
【0052】
視線ベクトルEBの推定精度は、上述したドライバーの顔向きの他、ドライバーの顔を照らす光の状況、眼鏡やメイク、顔つきなどの個人差によって変化する。視線ベクトルEBの推定精度は、例えば外からの強い光がドライバーの顔にあたってドライバーの目の周りに白飛びが発生した場合に低下する。視線ベクトルEBの推定精度は、外からの光のあたり方によりドライバーの顔の目の周りだけが影となった場合にも低下する。
【0053】
視線ベクトルEBの推定精度は、ドライバーが眼鏡を掛けている場合、ドライバーが眼鏡を掛けていない場合と比べて低下する場合がある。視線ベクトルEBの推定精度は、眼鏡の縁の形状などによっても変化する。視線ベクトルEBの推定精度は、目の周りにアイライナーやつけまつげなどのメイクが施されている場合、メイクの影響で低下するおそれがある。視線ベクトルEBの推定精度は、ドライバーの個人差として高齢などでまぶたが下がり気味である場合に低下するおそれがある。視線円錐領域推定部12は、上述したような視線ベクトルEBの推定精度の低下要因が存在する場合、推定精度の低下要因が存在しない場合と比べて、視線円錐領域ECの拡大率を大きくしてもよい。
【0054】
また、視線円錐領域推定部12は、車両Mの車速に応じて視線円錐領域ECを推定してもよい。ドライバーの有効視野角は、車速によって変化することが知られている。具体的に、視線円錐領域推定部12は、車両Mの車速が車速判定閾値以上である場合、車速が車速判定閾値未満である場合と比べてアイポイントEPからの距離による視線円錐領域ECの拡大率を小さくしてもよい。車速判定閾値は予め設定された値の閾値である。車速判定閾値は40km/hであってもよく、50km/hであってもよく、60km/hであってもよい。車速判定閾値の値は特に限定されない。
【0055】
視線円錐領域推定部12は、車速が高い場合にはドライバーの有効視野角が狭まることから、車速が車速判定閾値以上である場合に視線円錐領域ECの拡大率を小さくすることで、対象物に対するドライバーの視認判定の精度を向上させることができる。
【0056】
なお、視線円錐領域推定部12は、有効視野角を全ドライバー共通の固定値としてもよく、ドライバーの個人認証を行っている場合にはドライバーごとに個別に値を設定してもよい。ドライバーの個別の有効視野角の値は、例えばドライバーの年齢、身長、性別などから設定することができる。視線円錐領域推定部12は、ドライバーの運転者登録時にフロントガラス上に仮想の対象物を投影してドライバーが視認していると考える範囲で視線を動かして貰うなどすることで、有効視野角に関するドライバー検査を行ってもよい。視線円錐領域推定部12は、有効視野角に関するドライバー検査の結果を踏まえてドライバーの個別の有効視野角の値を設定してもよい。
【0057】
更に、視線円錐領域推定部12は、車両Mの走行状態に応じて視線円錐領域ECを推定してもよい。具体的に、視線円錐領域推定部12は、車両Mが旋回中である場合、車両Mが旋回中ではない場合と比べて、視線ベクトルEBに直交する断面が車両Mの旋回方向(右方向又は左方向)に拡大するように視線円錐領域を推定してもよい。
【0058】
視線円錐領域推定部12は、例えば内部センサ3のヨーレートセンサの検出したヨーレート情報に基づいて、車両Mが旋回中であるか否かを判定する。視線円錐領域推定部12は、車両Mのヨーレートが旋回閾値以上である場合、車両Mが旋回中であると判定する。視線円錐領域推定部12は、車両Mの操舵角に基づいて車両Mが旋回中であるか否かの判定を行ってもよい。視線円錐領域推定部12は、車両Mの操舵角が旋回操舵角閾値以上である場合、車両Mは旋回中であると判定する。旋回閾値及び旋回操舵角閾値は予め設定された値の閾値である。
【0059】
視線円錐領域推定部12は、車両Mが旋回中である場合、断面が車両Mの旋回方向に拡大するように視線円錐領域ECを推定する。
図5(b)を参照して説明すると、視線円錐領域推定部12は、例えば旋回方向が
図5(b)に示す矢印Pと一致する場合、
図5(b)に示すように旋回方向に断面が拡大された視線円錐領域ECを推定する。このとき、視線円錐領域ECの縦幅は、車両Mが旋回していない場合と同一であってもよく、車両Mが旋回していない場合と比べて短くしてもよい。
【0060】
視線円錐領域推定部12は、車両が旋回中である場合にはドライバーが旋回先を意識して見ると考えることができることから、視線円錐領域の視線ベクトルに直交する断面を車両の旋回方向に拡大することで、対象物に対するドライバーの視認判定の精度を向上させることができる。
【0061】
また、視線円錐領域推定部12は、ドライバーから見た対象物の移動速度が移動速度閾値以上である場合、ドライバーから見た対象物の移動方向に断面が拡大するように視線円錐領域ECを推定してもよい。ドライバーから見た対象物の移動速度は、上述した対象物認識部11により認識される。移動速度閾値は予め設定された値の閾値である。
【0062】
図5(b)を参照して説明すると、視線円錐領域推定部12は、例えば歩行者50の移動速度が移動速度閾値以上である場合、
図5(b)に示すように断面が歩行者50の進行方向Pに拡大された視線円錐領域ECを推定する。視線円錐領域推定部12は、ドライバーが移動速度が早い対象物の移動を考慮して視認しようとすると考えられることから、対象物の移動方向に断面が拡大するように視線円錐領域を推定することで、対象物に対するドライバーの視認判定の精度を向上させることができる。
【0063】
また、視線円錐領域推定部12は、ドライバーが対象物を視認していると判定された後、ドライバーが対象物を視認していないと判定されるまでの間、ドライバーが対象物を視認している前と比べて、視線円錐領域ECの拡大率を大きくしてもよい。対象物の視認判定は後述する視認判定部13で行われる。
【0064】
図4(a)及び
図4(b)を参照して説明すると、視線円錐領域推定部12は、例えば
図4(a)に示すドライバーが歩行者50を視認していると判定された後、ドライバーが歩行者50を視認していないと判定されるまでの間、ドライバーが対象物を視認する前の
図4(a)と比べて
図4(b)のように視線円錐領域ECの拡大率を大きくする。視線円錐領域推定部12は、一度視認した対象物からドライバーが視線を少しずらしても対象物を視認している可能性が高いと考えられることから、視線円錐領域の拡大率を大きくすることで対象物に対するドライバーの視認判定の精度を向上させることができる。
【0065】
更に、視線円錐領域推定部12は、対象物の認識精度(対象物の位置や対象物のサイズの認識精度)を考慮して、視線円錐領域ECを推定してもよい。対象物の認識精度は、外部センサ2の検出誤差、車両Mと対象物との相対速度などによって変化する。外部センサ2の検出誤差の求め方については周知の技術を用いることができるため詳細な説明を省略する。
【0066】
視線円錐領域推定部12は、外部センサ2の検出誤差が誤差閾値以上である場合、検出誤差が誤差閾値未満である場合と比べて、対象物の認識精度が低下している可能性があることから視線円錐領域ECの拡大率を大きくしてもよい。
【0067】
視線円錐領域推定部12は、車両Mと対象物との相対速度が相対速度閾値以上である場合、車両Mと対象物との相対速度が相対速度閾値未満である場合と比べて、対象物の認識精度が低下している可能性があることから、視線円錐領域ECの拡大率を大きくしてもよい。誤差閾値及び相対速度閾値は予め設定された値の閾値である。
【0068】
視線円錐領域推定部12は、対象物のサイズを誤って大きく認識するサイズ誤認識が生じている場合には、サイズ誤認識が生じていない場合と比べて、視線円錐領域ECの拡大率を小さくしてもよい。サイズ誤認識の発生は外部センサ2の検出誤差やフュージョン情報に含まれるサイズ推定誤差の情報から判定できる。サイズ誤認識の発生は周知の技術により判定できる。
【0069】
また、視線円錐領域推定部12は、車両Mに対する対象物の位置に応じて視線円錐領域ECを推定してもよい。具体的に、視線円錐領域推定部12は、対象物の位置が車両Mの前方向から横に逸れているほど、断面が横に長い視線円錐領域ECを推定してもよい。また、視線円錐領域推定部12は、対象物の種別に応じて視線円錐領域ECを推定してもよい。具体的に、視線円錐領域推定部12は、対象物の種別が二輪車である場合、対象物の種別が四輪車である場合と比べて見落としやすいことから、視線円錐領域ECの拡大率を小さくしてもよい。二輪車の他、歩行者など見落としやすい対象物に対して視線円錐領域ECの拡大率の縮小を適用することができる。
【0070】
視認判定部13は、対象物認識部11の認識した対象物と視線円錐領域推定部12の推定したドライバーの視線円錐領域ECとに基づいて、ドライバーが対象物を視認しているか否かを判定する。視認判定部13は、例えば、車両M又はドライバーのアイポイントEPを基準とした三次元空間の座標系における視線円錐領域ECと対象物との重なりからドライバーが対象物を視認しているか否かを判定する。
【0071】
視認判定部13は、例えば視線円錐領域ECと対象物との重なり割合が視認判定閾値以上である場合にドライバーが対象物を視認していると判定する(
図3(a)参照)。視認判定部13は、視線円錐領域ECと対象物との重なり割合が視認判定閾値未満である場合にはドライバーが対象物を視認していないと判定する(
図3(b)参照)。視認判定閾値は予め設定された値の閾値である。視認判定閾値は三割であってもよく、四割であってもよく、五割であってもよい。視認判定閾値の値は特に限定されない。
【0072】
重なり割合とは、視線円錐領域ECに対して対象物が重なる割合である。重なり割合の算出には対象物そのものを用いてもよく、
図3及び
図4に示すようなバウンディングボックス60を用いてもよい。
【0073】
視認判定部13は、平面座標系における視線円錐領域ECと対象物との重なりからドライバーが対象物を視認しているか否かを判定してもよい。視認判定部13は、ドライバーのアイポイントEPが基準となるように視点変換された撮像画像上に対象物及び視線円錐領域ECを投影し、撮像画像上における視線円錐領域ECの範囲に対して対象物の占める割合を重なり割合として算出してもよい。視認判定部13は、その他の周知の技術を用いて対象物と視線円錐領域ECとの重なり割合を算出してもよい。視認判定部13は、視線円錐領域ECと対象物との重なり割合が視認判定閾値以上である場合にドライバーが対象物を視認していると判定する。
【0074】
視認判定部13は、三次元空間の座標系又は平面座標系における視線円錐領域ECと対象物との重なりから、機械学習モデルを用いてドライバーが対象物を視認しているか否かを判定してもよい。
【0075】
視認判定部13は、視線円錐領域ECと対象物との重なり割合が視認判定閾値以上である状態が一定時間継続した場合に、ドライバーが対象物を視認していると判定する態様であってもよい。視認判定部13は、夜間である場合には、昼間である場合と比べて、一定時間を長い時間に変更してもよい。一定時間は、対象物の種別に応じて異なる時間が設定されていてもよい。
【0076】
視認判定部13は、視認判定結果を踏まえてドライバーに対する注意喚起又は情報提供を行ってもよい。視認判定部13は、HMI4に制御信号を送信することにより、ドライバーに対する注意喚起又は情報提供を実行する。視認判定部13は、例えば、HMI4のスピーカーの音出力又はディスプレイへの画像表示によりドライバーが視認していない対象物の存在の注意喚起を行う。視認判定部13は、スピーカーの音出力又はディスプレイへの画像表示によりドライバーが視認している対象物に関する情報提供を行ってもよい。その他、視認判定部13は、ドライバーの対象物の視認判定結果を車両Mの運転支援システムや自動運転システムに送信してもよい。
【0077】
[視認判定装置の制御方法]
次に、本実施形態に係る視認判定装置100の制御方法について図面を参照して説明する。
図6は、視認判定処理の一例を示すフローチャートである。視認判定処理は、例えば車両Mのイグニッションがオン状態となっている場合に実行される。
【0078】
図6に示すように、視認判定装置100の視認判定ECU10は、S10として、対象物認識部11により車両Mの外部の対象物を認識したか否かを判定する。対象物認識部11は、例えばセンサフュージョンにより対象物を認識する。視認判定ECU10は、対象物を認識したと判定された場合(S10:YES)、S11に移行する。視認判定ECU10は、対象物を認識したと判定されなかった場合(S10:NO)、視認判定処理を終了する。視認判定ECU10は、一定時間の経過後S10から処理を繰り返す。
【0079】
S11において、視認判定ECU10は、視線円錐領域推定部12によりドライバーの顔向きを認識する。視線円錐領域推定部12は、ドライバモニタカメラ1のドライバー撮像画像に基づいてドライバーの顔向きを認識する。その後、視認判定ECU10はS12に移行する。
【0080】
S12において、視認判定ECU10は、視線円錐領域推定部12によりドライバーの視線ベクトルEBを推定する。視線円錐領域推定部12は、ドライバモニタカメラ1のドライバー撮像画像に基づいて、ドライバーのアイポイントEPから延びるドライバーの視線ベクトルEBを推定する。その後、視認判定ECU10はS13に移行する。なお、ドライバーの顔向きの認識とドライバーの視線ベクトルEBの推定は同時に行われてもよい。
【0081】
S13において、視認判定ECU10は、視線円錐領域推定部12によりドライバーの顔向きが車両Mの前方向から逸れているか否かを判定する。視認判定ECU10は、ドライバーの顔向きが車両Mの前方向から逸れていると判定された場合(S13:YES)、S14に移行する。視認判定ECU10は、ドライバーの顔向きが車両Mの前方向から逸れていると判定されなかった場合(S13:NO)、S15に移行する。
【0082】
S14において、視認判定ECU10は、視線円錐領域推定部12により、後述するS15の場合と比べて拡大した視線円錐領域ECを推定する。拡大した視線円錐領域ECとは、アイポイントEPからの距離による視線円錐領域ECの拡大率を大きくしたと言う意味である。視線円錐領域推定部12は、視線ベクトルEBを基準として円錐状に広がる視線円錐領域ECを設定する。なお、視線円錐領域推定部12は、
図5(b)に示すような断面が横長の視線円錐領域ECを推定してもよい。その後、視認判定ECU10は、S16に移行する。
【0083】
S15において、視認判定ECU10は、視線円錐領域推定部12により視線円錐領域ECを推定する。ここでは、ドライバーの顔向きに応じた視線円錐領域ECの拡大は行わない。なお、視線円錐領域推定部12は、
図5(a)に示すような断面が縦長の視線円錐領域ECを推定してもよい。その後、視認判定ECU10は、S16に移行する。
【0084】
S16において、視認判定ECU10は、視認判定部13により視線円錐領域ECと対象物との重なり割合が視認判定閾値以上であるか否かを判定する。視認判定ECU10は、視線円錐領域ECと対象物との重なり割合が視認判定閾値以上であると判定された場合(S16:YES)、S17に移行する。視認判定ECU10は、視線円錐領域ECと対象物との重なり割合が視認判定閾値以上であると判定されなかった場合(S16:NO)、S18に移行する。
【0085】
S17において、視認判定ECU10は、視認判定部13によりドライバーが対象物を視認していると判定する。視認判定部13は、ドライバーの視認判定結果を車両Mの運転支援システム又は自動運転システムに送信する。その後、視認判定ECU10は、視認判定処理を終了し、一定時間の経過後S10から処理を繰り返す。
【0086】
S18において、視認判定ECU10は、視認判定部13によりドライバーが対象物を視認していないと判定する。視認判定部13は、ドライバーの視認判定結果を車両Mの運転支援システム又は自動運転システムに送信する。その後、視認判定ECU10は、視認判定処理を終了し、一定時間の経過後S10から処理を繰り返す。
【0087】
視認判定ECU10は、ドライバーの顔向き以外の各種状況に応じて視線円錐領域ECを推定してもよい。
図7(a)は、車速に応じた視線円錐領域推定処理の一例を示すフローチャートである。視線円錐領域推定処理は、例えば
図6のフローチャートにおけるS12とS13の間で実行することができる。視線円錐領域推定処理は、S14又はS15とS16の間で実行されてもよい。後述する各種の視線円錐領域推定処理についても同様である。
【0088】
図7(a)に示すように、視認判定ECU10は、S20として、視線円錐領域推定部12により車両Mの車速が車速判定閾値以上であるか否かを判定する。視認判定ECU10は、車速が車速判定閾値以上であると判定された場合(S20:YES)、S21に移行する。視認判定ECU10は、車速が車速判定閾値以上であると判定されなかった場合(S20:NO)、S22に移行する。
【0089】
S21において、視認判定ECU10は、視線円錐領域推定部12により視線円錐領域ECを推定する。この場合は車速に応じた視線円錐領域ECの変更は行われない。その後、視認判定ECU10は、視線円錐領域推定処理を終了する。
【0090】
S22において、視認判定ECU10は、視線円錐領域推定部12によりS21の場合と比べて縮小した視線円錐領域ECを推定する。縮小した視線円錐領域ECとは、アイポイントEPからの距離による視線円錐領域ECの拡大率を小さくしたと言う意味である。その後、視認判定ECU10は、視線円錐領域推定処理を終了する。
【0091】
図7(b)は、車両の旋回に応じた視線円錐領域推定処理の一例を示すフローチャートである。
図7(b)に示すように、視認判定ECU10は、S30として、視線円錐領域推定部12により車両Mが旋回中であるか否かを判定する。視線円錐領域推定部12は、車両Mのヨーレート又は車両Mの操舵角に基づいて車両Mが旋回中であるか否かを判定する。視認判定ECU10は、車両Mが旋回中であると判定された場合(S30:YES)、S31に移行する。視認判定ECU10は、車両Mが旋回中であると判定されなかった場合(S30:NO)、S32に移行する。
【0092】
S31において、視認判定ECU10は、視線円錐領域推定部12により、後述するS32の場合と比べて車両Mの旋回方向に拡大した視線円錐領域ECを推定する。車両Mの旋回方向に拡大した視線円錐領域ECとは、視線ベクトルEBに直交する断面が車両Mの旋回方向に拡大された視線円錐領域ECを意味する。その後、視認判定ECU10は、視線円錐領域推定処理を終了する。
【0093】
S32において、視認判定ECU10は、視線円錐領域推定部12により視線円錐領域ECを推定する。この場合は車両Mの旋回に応じた視線円錐領域ECの変更は行われない。その後、視認判定ECU10は、視線円錐領域推定処理を終了する。
【0094】
図8(a)は、対象物の移動速度に応じた視線円錐領域推定処理の一例を示すフローチャートである。
図8(a)に示すように、視認判定ECU10は、S40として、視線円錐領域推定部12によりドライバーから見た対象物の移動速度が移動速度閾値以上であるか否かを判定する。視認判定ECU10は、ドライバーから見た対象物の移動速度が移動速度閾値以上であると判定された場合(S40:YES)、S41に移行する。視認判定ECU10は、ドライバーから見た対象物の移動速度が移動速度閾値以上であると判定されなかった場合(S40:NO)、S42に移行する。
【0095】
S41において、視認判定ECU10は、視線円錐領域推定部12により、後述するS42の場合と比べて対象物の移動方向に拡大した視線円錐領域ECを推定する。対象物の移動方向に拡大した視線円錐領域ECとは、視線ベクトルEBに直交する断面が対象物の移動方向に拡大された視線円錐領域ECを意味する。その後、視認判定ECU10は、視線円錐領域推定処理を終了する。
【0096】
S42において、視認判定ECU10は、視線円錐領域推定部12により視線円錐領域ECを推定する。この場合は対象物の移動速度に応じた視線円錐領域ECの変更は行われない。その後、視認判定ECU10は、視線円錐領域推定処理を終了する。
【0097】
図8(b)は、ドライバーの視認状況に応じた視線円錐領域推定処理の一例を示すフローチャートである。
図8(b)に示すように、視認判定ECU10は、S50として、視線円錐領域推定部12により、視認判定処理の対象物がドライバーが視認していると判定されている対象物であるか否かを判定する。視認判定ECU10は、ドライバーが視認していると判定されている対象物であると判定された場合(S50:YES)、S51に移行する。視認判定ECU10は、ドライバーが視認していると判定されている対象物であると判定されなかった場合(S50:NO)、S52に移行する。
【0098】
S51において、視認判定ECU10は、視線円錐領域推定部12により、後述するS52の場合と比べて拡大した視線円錐領域ECを推定する。その後、視認判定ECU10は、視線円錐領域推定処理を終了する。
【0099】
S52において、視認判定ECU10は、視線円錐領域推定部12により視線円錐領域ECを推定する。この場合は対象物の視認の有無に応じた視線円錐領域ECの変更は行われない。その後、視認判定ECU10は、視線円錐領域推定処理を終了する。
【0100】
以上説明した本実施形態に係る視認判定装置100(及び視認判定装置100の制御方法)によれば、ドライバーの顔向きによってドライバモニタカメラ1の撮像画像に基づく視線ベクトルEBの推定精度が低下することから、顔向きに応じて視線円錐領域ECを推定することで対象物に対するドライバーの視認判定の精度を向上させることができる。
【0101】
また、視認判定装置100によれば、ドライバーの顔向きが車両Mの前方向を向いている場合には車両Mのピッチ方向における視線ベクトルの推定精度が低いため断面が縦長の楕円形状となる視線円錐領域ECを推定し、ドライバーの顔向きが車両Mの前方向から横に逸れている場合には車両Mのヨー方向における視線ベクトルの推定精度が低くなるため断面が横長の楕円形状となる視線円錐領域ECを推定することで、対象物に対するドライバーの視認判定の精度を向上させることができる。
【0102】
また、視認判定装置100によれば、車速が高い場合にはドライバーの有効視野角が狭まることから、車速が車速判定閾値以上である場合に視線円錐領域の拡大率を小さくすることで、対象物に対するドライバーの視認判定の精度を向上させることができる。
【0103】
更に、視認判定装置100によれば、車両Mが旋回中である場合にはドライバーが旋回先を意識して見ると考えることができることから、視線円錐領域ECの視線ベクトルに直交する断面を車両Mの旋回方向に拡大することで、対象物に対するドライバーの視認判定の精度を向上させることができる。
【0104】
また、視認判定装置100によれば、ドライバーから見た対象物の移動速度が早い場合には、ドライバーは対象物の移動を考慮して視認しようとすることから、対象物の移動方向に視線ベクトルに直交する断面が拡大するように視線円錐領域ECを推定することで、対象物に対するドライバーの視認判定の精度を向上させることができる。
【0105】
また、視認判定装置100によれば、一度視認した対象物からドライバーが視線を少しずらしても対象物を視認している可能性が高いと考えられることから、視線円錐領域ECの拡大率を大きくすることで対象物に対するドライバーの視認判定の精度を向上させることができる。
【0106】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の推定、改良を施した様々な形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0107】
1…ドライバモニタカメラ、2…外部センサ、10…視認判定ECU、11…対象物認識部、12…視線円錐領域推定部、13…視認判定部、50…歩行者(対象物)、100…視認判定装置、EB…視線ベクトル、EC…視線円錐領域、EP…アイポイント、M…車両。