(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161974
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】樹脂構造体および樹脂構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B60R 13/02 20060101AFI20241114BHJP
【FI】
B60R13/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077085
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】都築 亮
【テーマコード(参考)】
3D023
【Fターム(参考)】
3D023BA01
3D023BB01
3D023BD02
3D023BE03
3D023BE31
(57)【要約】
【課題】意図しない変形を防止できる新規の樹脂構造体および樹脂構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂構造体は、第1部分と、第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間に配置されるスリットと、を備え、前記第1部分は、前記第1部分の端面に設けられる第1切断痕を有し、前記第2部分は、前記第2部分の端面に設けられる第2切断痕を有し、前記第1切断痕と前記第2切断痕は前記スリットを挟んで設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部分と、
第2部分と、
前記第1部分と前記第2部分との間に配置されるスリットと、
を備え、
前記第1部分は、前記第1部分の端面に設けられる第1切断痕を有し、
前記第2部分は、前記第2部分の端面に設けられる第2切断痕を有し、
前記第1切断痕と前記第2切断痕は前記スリットを挟んで設けられる、
樹脂構造体。
【請求項2】
前記樹脂構造体は、車両の内装部品であり、
前記スリットは、シートベルトが挿通可能に形成される、
請求項1に記載の樹脂構造体。
【請求項3】
第1部分、第2部分、前記第1部分と前記第2部分との間に配置されるスリット、および、前記スリットを挟んで前記第1部分の端面と前記第2部分の端面とを連結する連結部を備える中間成形品を形成する工程と、
前記中間成形品から前記連結部を切断して、前記第1部分の端面および前記第2部分の端面にそれぞれ第1切断痕および第2切断痕を形成する工程と、
を備える樹脂構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂構造体および樹脂構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スリットを備える樹脂構造体が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の樹脂構造体は、長手方向端が開口しているスリットを備える。
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂構造体の意図しない変形を防止することが好ましい。
【0005】
本開示の課題は、意図しない変形を防止できる新規の樹脂構造体および樹脂構造体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る樹脂構造体は、第1部分と、第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間に配置されるスリットと、を備え、前記第1部分は、前記第1部分の端面に設けられる第1切断痕を有し、前記第2部分は、前記第2部分の端面に設けられる第2切断痕を有し、前記第1切断痕と前記第2切断痕は前記スリットを挟んで設けられる。
【0007】
また、本開示に係る樹脂構造体の製造方法は、第1部分、第2部分、前記第1部分と前記第2部分との間に配置されるスリット、および、前記スリットを挟んで前記第1部分の端面と前記第2部分の端面とを連結する連結部を備える中間成形品を形成する工程と、前記中間成形品から前記連結部を切断して、前記第1部分の端面および前記第2部分の端面にそれぞれ第1切断痕および第2切断痕を形成する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、意図しない変形を防止できる新規の樹脂構造体および樹脂構造体の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】第1実施形態による樹脂構造体の中間成形品を示す図。
【
図4】第1実施形態による樹脂構造体の中間成形品の部分拡大図。
【
図5】
図4のB-B断面における樹脂構造体の製造方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
以下、本開示の第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。
【0011】
図1に示すように、樹脂構造体1は、第1部分2と、第2部分3と、第1部分2と第2部分3との間に配置されるスリットSと、を備える。
【0012】
本実施形態では、樹脂構造体1は、車両の後部座席付近に設けられてシートベルトアンカーを覆うシートサイドである。樹脂構造体1の意匠面1aは、車両の室内に面する。樹脂構造体1は、シートサイドに限らず、車両の内装部材に適用可能である。
【0013】
樹脂構造体1は、長手方向(
図1の矢印Y方向)が車両の上下方向と概ね一致するように車室内に取り付けられる。樹脂構造体1は、第1部分2が下側に、第2部分3が上側となるように車室内に配置される。車両の上部にはシートベルトアンカーが設置される。シートベルトは、樹脂構造体1の長手方向に沿って意匠面1a上に配設される。
【0014】
スリットSは、樹脂構造体1の長手方向と交差する方向に延びる。スリットSは、シートベルトが挿通可能に形成される。シートベルトは、スリットSに挿通され、意匠面1aと反対側の裏面1b側に至る。
【0015】
第1部分2は、第1外周面21と、第1外周面21に設けられた第1切断痕22と、第1外周面21と繋がる第1内周面23と、を有する。
【0016】
第1外周面21は、スリットSに隣接して設けられる。本実施形態の第1外周面21は、樹脂構造体1の厚み方向(
図1の矢印Z方向)に延びる縦壁である。
【0017】
本実施形態の第1切断痕22は、概ね矩形状に形成される。これに限らず、第1切断痕22は、半円形状、三角形、四角形、その他の多角形、およびその他の種々様々な形状を選択可能である。
【0018】
第1内周面23は、スリットSに面する。
【0019】
本実施形態では、第2部分3は、第1部分2より大きい。本実施形態では、第2部分3は、第1部分2の概ね3倍程度の大きさに形成される。これに限らず、第2部分3は、第1部分2の2倍から4倍程度の大きさであってもよい。
【0020】
第2部分3は、第2外周面31と、第2外周面31に設けられた第2切断痕32と、第2外周面31と繋がる第2内周面33と、を有する。
【0021】
第2外周面31は、スリットSに隣接して設けられる。本実施形態の第2外周面31は、樹脂構造体1の厚み方向(
図1の矢印Z方向)に延びる縦壁である。
【0022】
本実施形態の第2切断痕32は、概ね矩形状に形成される。これに限らず、第2切断痕32は、半円形状、三角形、四角形、その他の多角形、およびその他の種々様々な形状を選択可能である。
【0023】
また、本実施形態の第2切断痕32は、第1切断痕22と概ね同じ形状に形成される。これに限らず、第2切断痕32は、第1切断痕22と異なる形状または異なる大きさに形成されてもよい。
【0024】
第2内周面33は、スリットSに面する。本実施形態の第2内周面33は、第1内周面23と対向し、スリットSを画定する。第2内周面33は、第1内周面23に平行な第1部分33aと、第1部分33aにつながりスリットSの開口を広げるための第2部分33bとを含む。
【0025】
図2は、
図1のA部分を拡大して示した側面図である。
図2に示すように、第1切断痕22と第2切断痕32は、スリットSを挟んで設けられる。第1切断痕22と第2切断痕32の距離は、短いことが好ましい。本実施形態の第1切断痕22は、第1外周面21の矢印X方向における中央部分よりスリットS側に偏って配置される。同様に、第2切断痕32も、第2外周面31の矢印X方向における中央部分よりスリットS側に偏って配置される。
【0026】
また、本実施形態の第1切断痕22の上端は、第1部分2の第1外周面21の上縁21aと一致するように配置される。第2切断痕32の上端は、第2部分3の第2外周面31の上縁31aと一致するように配置される。
【0027】
次に、
図3から
図5を用いて本実施形態の樹脂構造体1の製造方法を説明する。樹脂構造体1は、複数の成形型の間に画成されたキャビティに樹脂原料を射出し冷却することで成形される。
【0028】
樹脂構造体1の製造方法は、中間成形品11の成形工程と、切断工程と、を備える。
【0029】
図3に示すように、中間成形品11は、第1部分12と、第2部分13と、スリットS1と、連結部14と、を備える。第1部分12は、樹脂構造体1の第1部分2となる。第2部分13は、樹脂構造体1の第2部分3となる。スリットS1は、樹脂構造体1のスリットSとなる。
【0030】
図4に示すように、連結部14は、スリットS1を挟んで、第1部分12の第1外周面121と第2部分13の第2外周面131とを連結する。本実施形態の連結部14は、概ねU字形状に形成される。
【0031】
本実施形態では、中間成形品11の成形工程は、第1射出工程と、第2射出工程と、冷却工程と、を有する。
【0032】
図5は、
図4のB-B断面における第1射出工程(
図5(a)を参照)、第2射出工程(
図5(b)を参照)および冷却工程の各工程を示す。
【0033】
第1射出工程では、第1部分12、第2部分13およびスリットS1が形成される。
【0034】
図5(a)に示すように、第1射出工程では、第1型6と、第2型7および可動型8で画成された第1キャビティ9aに樹脂原料が射出される。樹脂原料は、予め加熱され流動可能な状態で、ゲートG(
図3を参照)から第1キャビティ9aに射出される。第1キャビティ9aに射出された樹脂原料は、第1部分12、第2部分13およびスリットS1を形成する。
【0035】
本実施形態では、
図3に示すように、ゲートGは、いわゆるサイドゲートであり、中間成形品11の外周面11cに設けられる。第1射出工程でゲートGから射出された樹脂原料は、ゲートGを起点に第1キャビティ9a内に拡がり、第1部分12、第2部分13およびスリットS1を形成する。ゲートGは、サイドゲートに限らず、中間成形品11の裏面11bに設けられてもよい。
【0036】
次に、第2射出工程では、連結部14が形成される。本実施形態では、連結部14は、コアバック法により形成される。
【0037】
図5(b)に示すように、第2射出工程では、可動型8が白矢印方向に後退し、第1型6、第2型7および可動型8で画成された第2キャビティ9bを形成する。第2キャビティ9bは、ランナー部9cと、ランナー部9cおよび第1キャビティ9aの間の縮流部9dとを含む。樹脂原料は、第1キャビティ9aから第2キャビティ9bの内部に流入する。第2キャビティ9bに流入した樹脂原料は、連結部14を形成する。縮流部9dは、ランナー部9cよりも小さな断面積を有する。
【0038】
図5(b)では、第2部分13と連結部14の接続箇所について示したが、第1部分12と連結部14の接続箇所でも、同様に可動型8が後退する。
【0039】
本実施形態では、ウェルドライン(樹脂原料の合流部分の跡)が連結部14に形成されるように、第1射出工程の開始時期から第2射出工程の開始時期までの期間が調整されている。具体的には、第2射出工程は、樹脂原料が第1外周面121および第2外周面131のどちらにも到達した後で開始される。例えば、
図3に示すように、樹脂原料は、ゲートGから第1外周面121まで第1経路12aを通過する。また、樹脂原料は、ゲートGから第2外周面131まで第2経路13aを通過する。第1経路12aおよび第2経路13aのそれぞれの長さ、抵抗、その他の要因により、樹脂原料が第1外周面121に到達する時期は、樹脂原料が第2外周面131に到達する時期とは異なり得る。第2射出工程は樹脂原料が第1外周面121および第2外周面131のどちらにも到達した後で開始されるので、樹脂原料は第1外周面121および第2外周面131の両方から同時に第2キャビティ9bに流入して、第2キャビティ9b内で合流する。この結果、ウェルドラインが連結部14に形成される。
【0040】
さらに、本実施形態の第1射出工程および第2射出工程では、中間成形品11の第1部分12または第2部分13において樹脂原料が合流することを防止することができる。このため、中間成形品11の第1部分12または第2部分13にウェルドラインが表出することを防止できる。ひいては、樹脂構造体1の第1部分2および第2部分3にウェルドラインが表出することを防止できる。
【0041】
例えば、
図3の例では第2経路13aは第1経路12aよりも短いので、樹脂原料が第2外周面131に到達する時期は樹脂原料が第1外周面121に到達する時期よりも早くなり得る。仮に第2キャビティ9bが第1キャビティ9aに常時連通している場合、第2経路13aを通る樹脂原料は、第2部分13から第2キャビティ9bを介して第1部分12に流出し、第1経路12aを通る樹脂原料と第1部分12内で合流することがあり得る。このような場合、第1部分12にウェルドラインが表出する。本実施形態では、樹脂原料は第1部分12および第2部分13から同時に第2キャビティ9bに流入して第2キャビティ9b内で合流する。従って、ウェルドラインが第1部分12に表出することを防止できる。
【0042】
さらに、冷却工程では、第1キャビティ9aおよび第2キャビティ9bに射出された樹脂原料は、第1型6、第2型7および可動型8から脱型された後、冷却される。これにより、中間成形品11が形成される。
【0043】
冷却工程において、樹脂原料は冷却収縮する。板状に射出された樹脂原料は、その中心部に向かって収縮する。樹脂原料の収縮率は体積により異なる。板状に射出された樹脂原料の場合、収縮率は、その縁から中心部までの距離によって異なる。
【0044】
本実施形態の中間成形品11は、スリットS1を挟んで、大きさの異なる第1部分12と第2部分13が配置される。このため、第1部分12と第2部分13とでは、冷却収縮による収縮率が異なる。具体的には、第1部分12の収縮率は、第2部分13より大きくなる。この結果、連結部14が形成されていない場合、冷却工程では、中間成形品11の第1部分12が第2部分13に対して変位し、変位したまま固化するおそれがある。特に、第1部分12の第1外周面121が第2部分13の第2外周面131に近づいてスリット開口が閉じる方向(
図3の矢印X方向)に変形するおそれがある。あるいは、第1部分12の第1外周面121が、第2部分13の第2外周面131に比べて厚み方向(
図3の矢印Z方向)に浮き上がるまたは沈みこむように変形するおそれがある。
【0045】
連結部14は、スリットS1を挟んで、第1部分12の第1外周面121と第2部分13の第2外周面131を連結する。連結部14は、第1部分12の第1外周面121が第2部分13の第2外周面131に対して変位することを防止する。これにより、連結部14は、冷却収縮によって、中間成形品11が変形することを防止できる。
【0046】
切断工程では、中間成形品11から連結部14が切断されて、第1部分2の第1外周面21および第2部分3の第2外周面31にそれぞれ第1切断痕22および第2切断痕32が形成される。
【0047】
連結部14は、第1部分12の第1外周面121(縮流部9d)において切断される。第1切断痕22は、第1部分12の第1外周面121で切断された連結部14の切断痕である。
【0048】
連結部14は、第2部分13の第2外周面131(縮流部9d)において切断される。第2切断痕32は、第2部分13の第2外周面131で切断された連結部14の切断痕である。
【0049】
樹脂構造体1の製造方法は、樹脂構造体1の意図しない変形を防止することができる。なお、樹脂構造体1の意図しない変形は、冷却工程に限らず、工場内または倉庫内での製品ハンドリング時にも生じ得る。例えば、樹脂構造体1は工場内または倉庫内での保管時に自重により変形し得る。あるいは、樹脂構造体1は、工場内または倉庫内でのコンベアへの置き方により変形し得る。製品ハンドリング時の変形を防止するため、切断工程は、工場出荷直前に実施されてもよい。
【0050】
本実施形態では、連結部14に表出したウェルドラインは、連結部14ごと、中間成形品11から除去される。この結果、樹脂構造体1の製造方法は、ウェルドラインが表出しない美観のよい樹脂構造体1を形成することができる。
【0051】
本実施形態では、樹脂原料が第1外周面121に到達する時期と樹脂原料が第2外周面131に到達する時期とに時間差があるものの、第2射出工程の開始時期の調整により、ウェルドラインが連結部14に形成される。本実施形態の樹脂構造体1の製造方法は、第2射出工程が上記の時間差の発生を許容し、ひいては、ゲートGの配置に高い設計自由度を提供する。
本実施形態では、連結部14は、ランナー部9cよりも小さな断面積を有する縮流部9dで切断される。そのため、(1)縮流部9dの断面積が小さいため連結部14の切断が容易である(作業性の確保)、(2)第1切断痕22および第2切断痕32が小さいため、これらを目立ちにくくすることができる(外観品質の確保)、および、(3)シートベルトがスリットSに挿通される際にシートベルトが第1切断痕22および第2切断痕32から傷を受けにくい(危害性への考慮)、というような効果を奏する。
【0052】
以上説明した通り、本開示によれば、意図しない変形を防止できるとともに、ウェルドラインが製品上に表れないことによる外観品質の確保ができる、新規の樹脂構造体および樹脂構造体の製造方法を提供できる。
【0053】
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0054】
本実施形態では、第1部分2と第2部分3に1つずつ切断痕が形成される樹脂構造体1を例に説明したが、本開示はこれに限定されない。すなわち、第1部分2と第2部分3に形成される切断痕の数は、1つ、2つ、またはそれ以上であってもよい。
【0055】
さらに、本実施形態では、第1部分2の第1外周面21に第1切断痕22が形成され、第2部分3の第2外周面31に第2切断痕32が形成される樹脂構造体1を例に説明したが、本開示はこれに限定されない。すなわち、第1切断痕22と第2切断痕32は、第1部分2の第1内周面23と第2部分3の第2内周面33にそれぞれ形成されてもよい。
【0056】
言い換えると、第1切断痕22および第2切断痕32は、樹脂構造体1の外側の端面(例えば、第1外周面21および第2外周面31)に形成されてもよく、スリットSの内側の端面(例えば、第1内周面23および第2内周面33)に形成されてもよい。スリットSに挿入される物体がスリットS内で摺動する場合(例えば、物体がシートベルトである場合)、第1切断痕22および第2切断痕32は、スリットSの内周面を避けて、樹脂構造体1の外周面に設けられてもよい。物体が第1切断痕22および第2切断痕32からダメージを受けることが防止され得る。一方、樹脂構造体1の外周面が利用者の目に触れる位置に置かれる場合、第1切断痕22および第2切断痕32は、樹脂構造体1の外周面を避けて、スリットSの内周面に設けられてもよい。
【0057】
第1切断痕22および第2切断痕32がスリットSの内周面に位置する場合、第1部分2の第1内周面23の一部は、樹脂構造体1の厚み方向(
図1の矢印Z方向)に縦壁として延びてもよい。さらに、第1切断痕22は、当該縦壁に形成されてもよい。同様に、第2部分3の第2内周面33の一部も、厚み方向に縦壁として延びてもよい。第2切断痕32は、当該縦壁に形成されてもよい。また、第1切断痕22および第2切断痕32は、それぞれスリットSに面して形成されてもよい。
【0058】
また、本実施形態では、樹脂構造体1の製造方法においてU字形状の連結部14を形成する例を用いて説明したが、本開示はこれに限定されない。すなわち、連結部14は、中間成形品11のスリットS1を挟んで第1部分12と第2部分13を連結すればよい。
【0059】
例えば、連結部14は、第1部分12の第1外周面121の二箇所と第2部分13の第2外周面131を連結するE字形状であってもよい。連結部14は、クランク形状であってもよい。また、連結部14は、第1部分12の第1内周面123(
図3および
図4を参照)と第2部分13の第2内周面133とを連結する直線形状であってもよい。この場合、連結部14は、第1部分12の第1内周面123の第1外周面121付近と、第2部分13の第2内周面133の第2外周面131付近とを連結することが望ましい。
【0060】
さらに、本実施形態では、樹脂構造体1の製造方法において1つの連結部14を形成する例を用いて説明したが、本開示はこれに限定されない。すなわち、連結部14は、中間成形品11のスリットS1を挟んで第1部分12と第2部分13の間に複数個設けられてもよい。
【0061】
本実施形態では、連結部14はコアバック法により形成されているが、本開示はこれに限定されない。例えば、樹脂原料が第1外周面121および第2外周面131にほぼ同時に到達する場合、第2キャビティ9bは、第1キャビティ9aに常時連通していてもよい。例えば、
図3の例では、第1経路12aは第2経路13aと異なる長さを有する。しかし、ゲートGの位置によっては、第1経路12aが第2経路13aとほぼ同じ長さになり得る。このような場合に、樹脂原料が第1外周面121および第2外周面131にほぼ同時に到達し得る。あるいは、ウェルドラインが樹脂構造体1に表出することが許容される場合、第2キャビティ9bは、第1キャビティ9aに常時連通していてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 :樹脂構造体
2 :第1部分
21 :第1外周面
22 :第1切断痕
23 :第1内周面
3 :第2部分
31 :第2外周面
32 :第2切断痕
33 :第2内周面
S :スリット
11 :中間成形品
12 :第1部分
13 :第2部分
14 :連結部
S1 :スリット