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特開2024-161976シート製造装置、及び、シート製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161976
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】シート製造装置、及び、シート製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/732 20120101AFI20241114BHJP
【FI】
D04H1/732
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077087
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】宮内 敬輔
【テーマコード(参考)】
4L047
【Fターム(参考)】
4L047AA08
4L047AB02
4L047AB06
4L047EA01
(57)【要約】
【課題】ウェブの水分の計測の精度が低下するおそれがある。
【解決手段】繊維を含む材料からシートを製造するシート製造装置であって、繊維を含む材料を気流によって堆積させてウェブを形成する堆積部と、ウェブの一方面と接触して当該ウェブを保持する搬送ベルトを有するウェブ搬送部と、搬送ベルトの一方の面と対向するように設けられ、ウェブの他方面側から水分を付与する加湿部と、水分が付与されたウェブに対して加熱を行う加熱ローラーと、加熱ローラーと加湿部との間に配置された水分計と、水分計に付着した異物を除去する異物除去機構と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維を含む材料からシートを製造するシート製造装置であって、
前記繊維を含む材料を気流によって堆積させてウェブを形成する堆積部と、
前記ウェブの一方面と接触して当該ウェブを保持する搬送ベルトを有するウェブ搬送部と、
前記搬送ベルトの一方の面と対向するように設けられ、前記ウェブの他方面側から水分を付与する加湿部と、
前記水分が付与された前記ウェブに対して加熱を行う加熱ローラーと、
前記加熱ローラーと前記加湿部との間に配置された水分計と、
前記水分計に付着した異物を除去する異物除去機構と、を備えるシート製造装置。
【請求項2】
前記加湿部、前記水分計、及び、前記異物除去機構は、前記搬送ベルトの前記一方の面側に配置される、請求項1に記載のシート製造装置。
【請求項3】
下方に向いている前記搬送ベルトの前記一方の面は、前記ウェブを保持することが可能であり、
前記加湿部は前記搬送ベルトの下方に配置される、請求項2に記載のシート製造装置。
【請求項4】
前記水分計、及び、前記異物除去機構は、前記搬送ベルトの下方に配置される、請求項3に記載のシート製造装置。
【請求項5】
前記異物除去機構は、エアコンプレッサーと、圧縮空気を噴射するノズルとを有する、請求項1に記載のシート製造装置。
【請求項6】
前記ノズルは斜め下向きである、請求項5に記載のシート製造装置。
【請求項7】
前記異物除去機構は、ワイパー機構を有する、請求項1に記載のシート製造装置。
【請求項8】
前記水分計、及び、前記異物除去機構は、前記加湿部に対して隣り合う位置に配置される、請求項1に記載のシート製造装置。
【請求項9】
前記水分計は赤外線水分計である請求項1に記載のシート製造装置。
【請求項10】
前記圧縮空気を噴射するタイミングを制御するコントローラーを備え、
前記ウェブの先端が前記加熱ローラーに到達した時点で、前記コントローラーが前記エアコンプレッサーを作動させることで、前記ノズルから前記圧縮空気が噴射される、請求項5に記載のシート製造装置。
【請求項11】
少なくとも、水分計、及び、異物除去機構を備えるシート製造装置のシート製造方法であって、
繊維を含む材料を気流によって堆積させてウェブを形成し、
前記ウェブの一方面と接触して当該ウェブを保持しつつ搬送し、
前記ウェブの他方面側から、前記水分計により前記ウェブに含まれる水分を検出して、水分を付与し、
前記異物除去機構により前記水分計に付着した異物を除去し、
前記水分が付与された前記ウェブに対して加熱ローラーにより加熱を行う、シート製造方法。
【請求項12】
前記ウェブの先端が前記加熱ローラーに到達した時点で、前記異物除去機構により前記水分計に付着した前記異物を除去する、請求項11に記載のシート製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート製造装置、及び、シート製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、計測部によりウェブの水分を計測して、シートを製造するシート製造装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-208923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のシート製造装置では、計測部に異物が付着すると、計測の精度が低下するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
繊維を含む材料からシートを製造するシート製造装置であって、前記繊維を含む材料を気流によって堆積させてウェブを形成する堆積部と、前記ウェブの一方面と接触して当該ウェブを保持する搬送ベルトを有するウェブ搬送部と、前記搬送ベルトの一方の面と対向するように設けられ、前記ウェブの他方面側から水分を付与する加湿部と、前記水分が付与された前記ウェブに対して加熱を行う加熱ローラーと、前記加熱ローラーと前記加湿部との間に配置された水分計と、前記水分計に付着した異物を除去する異物除去機構と、を備える。
【0006】
少なくとも、水分計、及び、異物除去機構を備えるシート製造装置のシート製造方法であって、繊維を含む材料を気流によって堆積させてウェブを形成し、前記ウェブの一方面と接触して当該ウェブを保持しつつ搬送し、前記ウェブの他方面側から、前記水分計により前記ウェブに含まれる水分を検出して、水分を付与し、前記異物除去機構により前記水分計に付着した異物を除去し、前記水分が付与された前記ウェブに対して加熱ローラーにより加熱を行う。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】シート製造装置の構成を示す模式図。
図2】水分計、異物除去機構を中心に示す模式図。
図3】異物除去機構の一例を示す斜視図。
図4】異物除去機構の一例を示す模式図。
図5】異物除去機構の別の例を示す模式図。
図6】シート製造方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.シート製造装置の構成
本実施形態に係るシート製造装置1の構成について、図1図5を参照しながら説明する。
なお、各図における方向を、三次元座標系を用いて説明する。説明の便宜上、Z軸の正方向を上方向又は単に上と称し負方向を下方向又は単に下と称し、X軸の正方向を後方向又は単に後と称し負方向を前方向又は単に前と称し、Y軸の正方向を右方向又は単に右と称し負方向を左方向又は単に左と称して説明する。
【0009】
図1に示すように、本実施形態に係るシート製造装置1は、いわゆる乾式にて、繊維等を含む材料である原料Cから、ウェブWを形成し、単票形状のシートSを製造する装置である。本実施形態において乾式とは、シート製造において、液体中で実施されずに、大気などの気中で実施されることをいうものとする。なお、シート製造装置1は、乾式であることに限定されず、いわゆる湿式であってもよい。
また、以下では、原料Cは、ウェブW、シートSと、順次形態を変えながら、上流から下流へ移動するものとして説明する。
【0010】
シート製造装置1は、上流から下流へ向かって、供給部5、粗砕部10、解繊部30、混合部60、堆積部105、ウェブ形成部70、ウェブ搬送部80、加湿部90、水分計40、異物除去機構である異物除去部50、空気噴射部150、シート形成部110、切断部120が配置されるように、構成される。
さらに、シート製造装置1は、コントローラーであって、上記の各部を統括的に制御する制御部140を備える。制御部140は、プロセッサー及びメモリーを含む。プロセッサーは、メモリーに記憶されているファームウェアなどのプログラムを読み出して実行し、シート製造装置1の各部を制御することができる。
【0011】
供給部5は粗砕部10に原料Cを供給する。供給部5は、自動送り機構6を備え、粗砕部10に原料Cを連続的かつ自動的に投入する。原料Cは、各種繊維又は各種繊維の材料を含む。
各種繊維は、特に限定されず、広範な繊維を用いることができる。例えば、繊維としては、天然繊維(動物繊維、植物繊維)、化学繊維(有機繊維、無機繊維、有機無機複合繊維)などが含まれる。更に詳しくは、セルロース、絹、羊毛、綿、大麻、ケナフ、亜麻、ラミー、黄麻、マニラ麻、サイザル麻、針葉樹、広葉樹等からなる繊維等が挙げられ、これらを単独で用いてもよいし、適宜混合して用いてもよいし、精製などを行った再生繊維として用いてもよい。
【0012】
繊維の材料としては、例えば、パルプ、古紙、古布等が挙げられる。また、繊維は、各種の表面処理がされていてもよい。また、繊維の材質は、純物質であってもよいし、不純物及びその他の成分など、複数の成分を含む材質であってもよい。また、繊維としては、古紙やパルプシートなどを乾式で解繊した解繊物を用いてもよい。
【0013】
繊維の長さは、特に限定されないが、独立した1本の繊維で、その繊維の長手方向に沿った長さが、1μm以上5mm以下、好ましくは、2μm以上3mm以下、より好ましくは3μm以上2mm以下である。
【0014】
シート製造装置1では、後述のように、加湿部90においてウェブWに水分を付与するので、フィブリル(Fibril)間の水素結合を形成する能力のある繊維を用いると、形成されるシートSの機械的強度を高めることができる。そのような繊維の例としては、セルロースが挙げられる。なお、以下では、加湿部90がウェブWに水分を付与することを加湿とも称する。
【0015】
なお、シートSにおける繊維の含有量は、例えば、50質量%以上99.9質量%以下、好ましくは、60質量%以上99質量%以下、より好ましくは70質量%以上99質量%以下である。後述のように、混合部60において混合物を形成する際に所定の配合を行うことで、このような含有量とすることができる。
【0016】
粗砕部10は、供給部5によって供給された原料Cを、大気などの気中で、乾式にて裁断して細片にする。細片の形状や大きさは、例えば、数cm角の細片である。粗砕部10は、粗砕刃11を有し、粗砕刃11によって、投入された原料Cを裁断することができる。
粗砕部10としては、例えば、シュレッダーを用いることができる。粗砕部10によって裁断された原料Cの細片は、定量供給部15へ搬送される。
【0017】
定量供給部15は、原料Cの細片を計量してホッパー12へ定量供給する。定量供給部15は、例えば、振動フィーダーである。ホッパー12に供給された原料Cの細片は、管20内を搬送されて解繊部30の導入口31に至る。
【0018】
解繊部30は、原料Cの細片を乾式にて解繊する。解繊部30は、導入口31、排出口32、ステーター33、ローター34を備える。
ステーター33は円筒形状を有する。ローター34は、ステーター33の円筒形状の内側面に沿って回転する。ステーター33、及び、ローター34は、いわゆるインペラーミルを構成する。導入口31から導入された原料Cの細片は、ステーター33とローター34との間に挟まれて回転し、これらの間に生じるせん断力によって解繊される。解繊部30により、絡まった繊維が解きほぐされて、解繊物が生成される。
【0019】
さらに、解繊部30は、ローター34の回転により、原料Cの細片を吸引し、解繊物を排出するような気流を発生させることができる。これにより、解繊部30は、自ら発生する気流によって、導入口31から原料Cの細片を気流と共に吸引し、解繊処理して、解繊物を排出口32へと排出することができる。
解繊部30で解繊処理された解繊物は、排出口32から管67を介して、堆積部105へ搬送される。なお、解繊部30から堆積部105へ解繊物を搬送させるための気流は、解繊部30が発生させる気流を利用してもよいし、別途、ブロアー等の気流発生装置(図示省略)を設け、その気流を利用してもよい。
【0020】
管67は管68に連通する。管67は、解繊部30の内部に連通し、管68は堆積部105の内部に連通する。解繊部30と堆積部105との間であって、管67と管68との間には、混合部60が配置される。
混合部60は、大気などの気中で、解繊物に結着剤などを混合して混合物を生成する。混合部60は、ホッパー13,14、供給管61,62、バルブ65,66を含んで構成される。
なお、ホッパー13,14は、スクリューフィーダー(図示省略)やディスクフィーダー(図示省略)などを含んで構成されてもよい。
【0021】
ホッパー13は、供給管61を介して管67の内部に連通する。供給管61において、バルブ65はホッパー13と管67との間に設けられる。ホッパー13は結着剤を管67内へ供給する。バルブ65は、ホッパー13から管67に供給される結着剤の重量を調整する。これにより、解繊物と結着剤との混合比が調整される。
【0022】
また、ホッパー14は、供給管62を介して管67の内部に連通する。供給管62において、バルブ66はホッパー14と管67との間に設けられる。ホッパー14は、結着剤以外の添加剤を管67内へ供給する。バルブ66は、ホッパー14から管67に供給される添加剤の重量を調整する。これにより、解繊物と添加剤との混合比が調整される。
結着剤、添加剤は、管67に連通する管68内を搬送されながら、解繊物と混合されて混合物となる。混合物は管68から堆積部105へ搬送される。
【0023】
なお、別途、ブロアー等の気流発生装置(図示省略)を設け、その気流を利用して、管68内で、添加剤、結着剤、及び、解繊物を混合するようにしてもよい。また、別途、混合する機構を設けてもよい。例えば、混合する機構としては、高速回転する羽根により攪拌する機構(図示省略)であってもよいし、V型ミキサー(図示省略)のように容器の回転を利用する機構であってもよい。
【0024】
結着剤は、例えば、澱粉またはデキストリンである。澱粉は、複数のα-グルコース分子がグリコシド結合によって重合した高分子である。澱粉は、直鎖状であってもよいし、分岐を含んでもよい。
澱粉は、各種植物由来のものを用いることができる。澱粉の原料としては、トウモロコシ、小麦、米等の穀類、ソラマメ、緑豆、小豆等の豆類、ジャガイモ、サツマイモ、タピオカ等のイモ類、カタクリ、ワラビ、葛等の野草類、サゴヤシ等のヤシ類が挙げられる。
【0025】
また、澱粉として加工澱粉、変性澱粉を用いてもよい。加工澱粉としては、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化澱粉、酸化澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、ヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、リン酸化澱粉、リン酸物エステル化リン酸架橋澱粉、尿素リン酸化エステル化澱粉、澱粉グリコール酸ナトリウム、高アミロースコーンスターチ等が挙げられる。また、変性澱粉としてのデキストリンは、澱粉を加工又は変性して得られるものを好適に用いることができる。
【0026】
シート製造装置1において、結着剤として澱粉またはデキストリンを用いることにより、後述のように、加湿部90でウェブWに水分が付与された後にシート形成部110で加圧加熱されることで、結着剤の糊化、及び、繊維のフィブリル間の水素結合の少なくとも一方が生じ、製造されるシートSに十分な強度を持たせることができる。
一方、繊維のフィブリル間の水素結合のみでシートSに十分な強度を持たせることができる場合は、結着剤を用いずにシートSを製造することもできる。なお、結着剤を用いずにシートSを製造する場合、シート製造装置1はホッパー13等を備えなくてもよい。
【0027】
シートSにおける澱粉またはデキストリンの含有量は、例えば、0.1質量%以上50質量%以下、好ましくは、1質量%以上40質量%以下、より好ましくは1質量%以上30質量%以下である。混合部60のバルブ65の調整により、このような含有量とすることができる。
【0028】
ホッパー14から供給管62を介して管67に供給される添加剤には、製造されるシートSの種類に応じて、繊維を着色するための着色剤や、繊維の凝集や結着剤の凝集を抑制するための凝集抑制剤、繊維等を燃え難くするための難燃剤などが含まれていてもよい。
なお、添加剤は必須の成分ではない。添加剤を用いない場合、ホッパー14等を備えなくてもよい。
【0029】
堆積部105は、例えば、ドラム部106と、ドラム部106を収容するハウジング部107と、ウェブ形成部70とを含んで構成される。
混合部60で混合された混合物は、管68を介して、堆積部105へ搬送される。ドラム部106は、混合物を導入し、絡み合った繊維等をほぐして、大気などの気中で分散させながらウェブ形成部70に降らせる。これにより、ドラム部106は、ウェブ形成部70に、混合物を均一性よく堆積させることができる。
【0030】
ドラム部106としては、例えば、回転可能な円筒の篩を用いる。混合物は、管68からドラム部106の円筒の篩の内側に導入される。
ドラム部106は、円筒の篩である網を有する。ドラム部106は、混合物に含まれる、網の目開きの大きさより小さい繊維又は粒子を、モーター(図示省略)により回転する円筒の網の内側から外側へ通過させて、ウェブ形成部70に降らせる。
なお、ドラム部106の「篩」は、特定の対象物を選別する機能を有していなくてもよい。すなわち、ドラム部106として用いられる「篩」とは、網を備えたもの、という意味であり、ドラム部106は、ドラム部106に導入された混合物の全てを降らしてもよい。
【0031】
ウェブ形成部70は、ドラム部106から降る混合物を堆積して、ウェブWを形成する。ウェブ形成部70は、例えば、第1メッシュベルト72と、複数の張架ローラー74と、第1サクション機構76と、を含んで構成される。
第1メッシュベルト72上には、ドラム部106の網を通過した混合物が堆積される。第1メッシュベルト72は、張架ローラー74によって張架され、混合物を通し難く空気を通し易い構成である。第1メッシュベルト72は、いわゆる無端ベルトであり、モーター(図示省略)により張架ローラー74が自転することによって、時計回りに周回する。第1メッシュベルト72が連続的に移動しながら、ドラム部106から混合物が連続的に降り積もることにより、第1メッシュベルト72上にウェブWが形成される。
【0032】
第1サクション機構76は、第1メッシュベルト72の下方に設けられる。第1サクション機構76は、下方に向く気流を発生させることができる。第1サクション機構76によって、ドラム部106により空気中に分散された混合物を、第1メッシュベルト72上に吸引することができる。また、第1サクション機構76により、堆積部105からの混合物の排出速度を速くすることができる。
さらに、第1サクション機構76によって、混合物の落下経路にダウンフローを形成することができ、落下中に繊維や結着剤などが絡み合うことを防ぐことができる。
【0033】
このように、堆積部105は、繊維を含む混合物を気流によって堆積させてウェブWを形成することができる。堆積部105を経ることにより、さらに繊維に結着剤等が混合され、空気を多く含み柔らかく膨らんだ状態のウェブWが形成される。
【0034】
第1メッシュベルト72上におけるウェブWの下流には、ウェブ搬送部80が配置される。ウェブ搬送部80は、第1メッシュベルト72上のウェブWを、搬送方向Tへ向かって搬送する。
具体的には、ウェブ搬送部80は、ウェブWを第1メッシュベルト72から剥がしてシート形成部110に向けて搬送する。なお、図1において、搬送方向Tは右方向であり、搬送方向の反対方向は左方向である。
【0035】
ここで、ウェブ搬送部80、及び、加湿部90について説明する。図2に示すように、ウェブ搬送部80は、ウェブWを搬送する搬送ベルトである第2メッシュベルト81と、第2メッシュベルト81を移動させる複数のローラー82と、ウェブWを吸引する吸引部としての第2サクション機構83と、を有する。
第2メッシュベルト81は、複数のローラー82によって張架され、後述の加湿空気MAを通すことができる構成となっている。第2メッシュベルト81は、無端ベルトであり、モーター(図示省略)によるローラー82の自転により、時計回りに周回可能に構成される。
【0036】
第2サクション機構83は、第2メッシュベルト81を挟んでウェブWに対して上方から対向する位置に配置される。第2サクション機構83は、複数の吸気ファン86を備え、吸気ファン86の吸引力によって、ウェブWに接触する第2メッシュベルト81に上向きの気流を発生させる。気流の方向はウェブWの厚み方向でもある。この気流によって、第2メッシュベルト81を介してウェブWを上方から吸引し、第2メッシュベルト81の下方にウェブWを保持することができる。
【0037】
さらに詳細には、第2サクション機構83は、後述の加湿空気MAを吸引するための複数の吸引口84を有する。また、第2サクション機構83は、複数の吸引口84にそれぞれ接続された吸引ダクト85を有する。
吸引ダクト85は、吸引口84を形成する壁部によって区画される。複数の吸引口84にそれぞれ接続された吸引ダクト85により、ウェブWに対する吸引量を安定させることができる。
【0038】
ウェブ搬送部80により、ウェブWを第1メッシュベルト72から剥がして、第2メッシュベルト81へ移し、搬送方向Tへ搬送することができる。ウェブWの上面である一方面Waは、第2メッシュベルト81に接触する一方、ウェブWの下面である他方面Wbは、第2メッシュベルト81に接触しない。
すなわち、ウェブWの一方面Waは、第1メッシュベルト72には接触していなかったが、第2メッシュベルト81には接触するようになる。ウェブWの他方面Wbは、第1メッシュベルト72には接触していたが、第2メッシュベルト81には接触しないようになる。
このように、ウェブWは、第1メッシュベルト72から第2メッシュベルト81へ搬送される際、それぞれに接触する面が他方面Wbから一方面Waへ切り替わることとなる。
【0039】
また、以下では、ウェブWの一方面Waに接触する第2メッシュベルト81の外側の面であって外周の面を一方の面と称し、ウェブWに接触しない内側の面であって内周の面を他方の面と称する。
ウェブWは、第2メッシュベルト81の一方の面が下方に向いているとき、第2サクション機構83により吸引されて、第2メッシュベルト81の一方の面に吸着される。すなわち、下方に向いている第2メッシュベルト81の一方の面は、ウェブWを重力に逆らって保持することが可能である。このような第2メッシュベルト81を、背面搬送ベルトともいう。
【0040】
このように、ウェブWは、第2メッシュベルト81の下方において、第2メッシュベルト81の一方の面に一方面Waが接触した状態で、搬送方向Tへ搬送される。
このとき、第2サクション機構83は、第2メッシュベルト81の他方の面から、ウェブWを安定的に吸引することができる。ウェブWは、下方から支持するものがない状態となっているが、第2メッシュベルト81に吸着され、剥がれて落下することがない。
【0041】
ところで、シート製造装置1の構成は同じではあるが、説明の便宜上、図1に対して図2は、Y軸の正方向を逆にして示している。すなわち、図1はシート製造装置1を前から見た図であるのに対し、図2はシート製造装置1の加湿部90を後から見た図となっている。例えば、図1ではウェブWの搬送方向Tが図に向かって右を示しているのに対し、図2では搬送方向Tが図に向かって左を示すように表示される。
【0042】
図2に示すように、加湿部90、水分計40、異物除去部50は、ウェブ搬送部80の第2メッシュベルト81の一方の面側に配置される。すなわち、加湿部90、水分計40、異物除去部50は、第2メッシュベルト81の下方に配置される。また、水分計40、異物除去部50は、加湿部90の下流の位置に、加湿部90と隣り合うように配置される。
加湿部90、水分計40は、下方から第2メッシュベルト81に対向するように配置される。
【0043】
加湿部90は、下部がケース99で覆われ、上部はダクト91で覆われている。加湿部90は、吸気口である空気吸気口95a、タンク96、ミスト生成部97、ダクト91を含んで構成される。ダクト91は、排気口93aを有する。
図2を参照しながら、流路Fの上流から下流に従って、加湿部90の構成について説明する。なお、加湿部90における流路Fに沿った空気A等の流れは、加湿部90の上方向に位置する第2サクション機構83による吸引力に基づき発生する。また、流路Fは、上流から下流へ向かって、空気流路F1、第1流路F2、第2流路F3を含んでいる。
【0044】
空気ダクト95は、空気Aを空気吸気口95aから取り入れ、ウェブWの搬送方向Tに対して反対方向へ向かう空気流路F1に沿って流し、空気排気口95bから排気する。
空気吸気口95aは、空気Aを搬送方向Tの反対方向へスムーズに流せるように、ケース99の右の面に開口されている。
【0045】
タンク96は、水Lを貯留可能である。空気排気口95bから排気された空気Aは、タンク96に貯留された水Lの水面へ向かって流れる。空気排気口95bは、空気Aを、タンク96の水Lの水面へ向かってスムーズに流せるように、空気ダクト95の左下に開口されている。
【0046】
タンク96の底部には、水LからミストMを生成するミスト生成部97が配置される。ミスト生成部は、例えば、圧電振動子である。圧電振動子が駆動されて振動し、水L中に超音波が発生して水LからミストMが生成される。生成されたミストMは、タンク96の水Lの水面から立ち昇る。なお、ミストMを生成する具体的な構成は、圧電振動子のような超音波方式でなくてもよく、例えば、スチーム式、気化式、温風気化式などでもよい。 タンク96の水Lの水面から立ち昇るミストMは、空気排気口95bから水Lの水面へ向かって流される空気Aに乗り、空気A及びミストMが含まれた状態となる。以下では、空気A及びミストMが含まれたものを、加湿空気MAと称する。
【0047】
タンク96及び排気口93aとの間に、加湿空気MAが通過するダクト91が設けられる。ダクト91は、第1流路F2を形成する第1ダクト92、第2流路F3を形成する第2ダクト93、及び、第3流路F4を形成する第3ダクト94を含んで構成される。
第1ダクト92は、タンク96の上方に設けられ、第2ダクト93は、ウェブWの搬送方向Tへ延在する。第3ダクト94は、第2ダクト93と排気口93aとの間に設けられ、ウェブWの搬送方向Tと交わる方向へ延在する。なお、ウェブWの搬送方向T、及び、搬送方向Tの反対方向は、例えば、水平方向である。ウェブWの搬送方向Tと交わる方向は、例えば、鉛直方向である。
【0048】
第1ダクト92は、第1流路F2の上流では、タンク96の上方において膨らむような形状をし、第1流路F2の下流では、ウェブWの搬送方向Tである第2ダクト93へ向かう形状をしている。そして、第1ダクト92は、第2ダクト93へ向かって、高さが低くなるような形状をしている。このような形状により、第1ダクト92は、タンク96の上方にチャンバーCを形成する。
【0049】
加湿空気MAは、タンク96の水Lの水面から第1ダクト92の壁に沿って上方へ向かった後、第1ダクト92のチャンバーC内で渦状に巻きながら屈曲し、搬送方向Tへ向かう第1流路F2に沿って、流される。加湿空気MAは、チャンバーCで渦状に巻かれるとき、特に流速が速くなる。
この結果、加湿空気MAの空気A及びミストMは、より均一に混ぜられる。加湿空気MAは、より均一にウェブWを加湿することができる。
このように、少なくとも第1ダクト92の第1流路F2の一部の方向は、搬送方向Tであって、空気流路F1の方向に対して反対方向となる。
【0050】
次に、加湿空気MAは、第1ダクト92に連通する第2ダクト93により、搬送方向Tへ向かう第2流路F3に沿って流される。そして、加湿空気MAは、第2ダクト93に連通する第3ダクト94により、第2流路F3から、搬送方向Tと交わる方向である上方へ向かう第3流路F4に沿って、方向を変えながら流される。
加湿空気MAは、第3ダクト94の上方に形成された排気口93aから、上方のウェブWへ向かって排気される。
【0051】
加湿部90は、下方からウェブ搬送部80に対向するように配置される。具体的には、加湿部90の排気口93aは、ウェブ搬送部80の第2メッシュベルト81の一方の面と対向するように配置される。第2メッシュベルト81の一方の面には、ウェブWの上面である一方面Waが接触する。
加湿部90は、排気口93aから、第2メッシュベルト81のウェブWの下面である他方面Wbへ向かって加湿空気MAを排気し、加湿することができる。
【0052】
排気口93aは、矩形形状をしている。排気口93aは、搬送方向Tと交わる方向の辺がウェブWの幅より長く、搬送されるウェブWの幅全体に加湿空気MAを排気することができる。排気口93aにはアルミニウムなどの金網で構成されたメッシュ面で覆われる。排気口93aは、メッシュ面により、加湿空気MAを通過させつつ、排気口93aへの繊維等の異物の進入を抑制することができる。
また、加湿部90は、第3ダクト94の下部に位置するトレイ98を有する。排気口93aから落下して加湿部90内に進入してくる繊維等の異物は、第3ダクト94を通過してトレイ98で受け取られ、捕捉されることができる。
【0053】
上述のように、ウェブ搬送部80の下方に位置する加湿部90は、第3ダクト94の上端に形成された排気口93aにより、ウェブWの下方から加湿空気MAを排気して加湿することができる。このため、加湿部90やその付近に結露が発生した場合でも、水滴がウェブWに落下することがない。
この結果、ウェブWに対する加湿が不均一となることを抑制することができ、シートSの品質に影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0054】
ここで、第2サクション機構83と加湿部90との構成について、より詳しく説明する。
第2サクション機構83は、第2メッシュベルト81の他方の面側であって、第2メッシュベルト81を挟んで加湿部90と対向する位置に配置される。具体的には、第2サクション機構83の吸引口84と加湿部90の排気口93aとが、第2メッシュベルト81を挟んで、互いに対向するように配置される。
そして、加湿部90の排気口93aから排気された加湿空気MAを、ウェブWの厚み方向に、吸引ダクト85が吸引することができる。
【0055】
このようにして、排気口93aから排気された加湿空気MAは、第2メッシュベルト81を介し、排気口93aに対面する吸引口84から吸引ダクト85を通じて吸引される。そして、加湿空気MAは、第2メッシュベルト81の一方の面に接触しているウェブWの厚み方向へ向かって、通過することができる。
この結果、加湿空気MAは、ウェブWの厚み方向における水分量がより均一になるように、加湿することができる。
【0056】
複数の吸引口84は、それぞれ対応する吸引ダクト85に接続されており、それぞれ独立して機能することができる。第2サクション機構83は、排気口93aの直上のウェブWを通過する加湿空気MAの風量を一定とすることができる。これにより、搬送されるウェブWに付与される水分量がより均一化され、シートSの強度のばらつきを抑え、シートSの品質を確保することができる。
【0057】
上述のように、第2サクション機構83の吸引ダクト85は、吸気によってウェブWを第2メッシュベルト81に吸着させることができる。
従って、ウェブWを、ウェブ形成部70の第1メッシュベルト72からウェブ搬送部80の第2メッシュベルト81へ移す際、第2サクション機構83は、ウェブWを第1メッシュベルト72から剥がして第2メッシュベルト81に吸着させることができる。
【0058】
次に、水分計40について説明する。水分計40は、加湿部90により加湿されたウェブWに含まれる水分を計測する。なお、以下では、水分計40がウェブWに含まれる水分を計測することを検出とも称する。
加湿部90の排気口93a及び第3ダクト94と、シート形成部110との間には、水分計40及び異物除去部50が配置される。
具体的には、加湿部90の排気口93a及び第3ダクト94の搬送方向Tの下流であって、シート形成部110の搬送方向Tの上流に、水分計40及び異物除去部50が配置される。異物除去部50は、水分計40に対して斜め上向きの位置に配置される。
ウェブWに含まれる水分の検出に際して、水分計40とウェブWとの間に何も介在しないように、水分計40はウェブWの下方に配置される。水分計40は、第2メッシュベルト81等が介在しない下方から、ウェブWを検出することができる。
【0059】
水分計40は、例えば、非接触で計測可能な赤外線水分計である。この場合、水分計40は、赤外線をウェブWの他方面Wbから照射し、戻ってきた赤外線を受光して、ウェブWに含まれる水分を計測することができる。水分計40は、赤外線の他、例えば、マイクロ波を用いたものでもよい。
制御部140は、水分計40によりウェブWの含水率を取得し、ウェブWが規定の含水率になるように、加湿部90のミスト生成部97を制御し、加湿空気MAに含まれるミストMの発生量を調整することができる。
【0060】
ウェブWの含水率は、好ましくは12質量%以上40質量%以下である。制御部140は、このような規定の範囲のウェブWの含水率になるように、水分計40によりウェブWの含水率を取得しつつ、ミスト生成部97を制御する。
この結果、制御部140は、ウェブWの繊維のフィブリル間の水素結合を効果的に形成することができ、シートSの強度を増加させることができる。
【0061】
図3を参照しながら、水分計40、異物除去部50について詳細を説明する。なお、図3では、説明の便宜上、第2メッシュベルト81等は省略している。
また、図3では、ウェブWのウェブ先端Wtは、加圧加熱部114、加熱ローラー対116の位置に到達していないものとする。加熱ローラー対116は加熱ローラーの1本のみを表示している。後述のように、シート形成部110は、加熱ローラー対116で構成される加圧加熱部114を有する。なお、加熱ローラー対116は単に加熱ローラー116とも称する。
【0062】
加湿部90は、メッシュ面である排気口93aから加湿空気MAを排出する。第2サクション機構83により、加湿空気MAは、ウェブWの下面である他方面Wbから上面である一方面Waへ向かう方向に流れて、ウェブWの厚み方向へ加湿する。
水分計40は、加熱ローラー対116と加湿部90との間に配置され、加湿部90により加湿されたウェブWに含まれる水分を検出することができる。
【0063】
水分計40は、赤外線水分計であり、水分計本体40a、導光部40b、カバー40cを含んで構成される。
水分計本体40aで発生した赤外線は、導光部40bを通過して、導光部40bの先端を封止したガラスであるカバー40cから、ウェブWに向かって照射される。ウェブWにより反射された赤外線は、カバー40cから入射し、導光部40bを通過して、水分計本体40aで受光される。
水分計40は、照射した赤外線と受光した赤外線とに基づき、ウェブWに含まれる水分を計測することができる。
【0064】
異物除去部50は、エアコンプレッサー50a、圧縮空気流路50b、圧縮空気噴射口50cを含んで構成される。
エアコンプレッサー50aは、圧縮空気Jを生成し、圧縮空気Jの排出口を開閉可能なバルブを有する。圧縮空気流路50bは、圧縮空気Jを噴射するノズルである。そして、圧縮空気噴射口50cは、圧縮空気Jを噴射するノズルの先端である。
異物除去部50は、エアコンプレッサー50aのバルブを開いて、圧縮空気Jを圧縮空気噴射口50cから噴射することができる。
制御部140は、エアコンプレッサー50aのバルブの開閉を制御することができる。すなわち、制御部140は、異物除去部50により、圧縮空気噴射口50cから圧縮空気Jを噴射するタイミングを制御することができる。
【0065】
ウェブWは、第2サクション機構83により上方から吸引されつつ、第2メッシュベルト81に保持されながら、ウェブ搬送部80により搬送方向Tへ搬送される。このとき、ウェブWは、下方から支持するものがない状態となっている。
ウェブWは、シート形成部110により加圧又は加熱されるなどの圧着される前の状態であり、空気を多く含み柔らかく膨らんだ状態である。このため、繊維等がウェブWから分離し、落下や浮遊することがある。以下では、このような繊維等を異物と称する。なお、異物には、シート製造装置1の内部で発生する粉塵等も含まれる。
【0066】
ウェブWから落下や浮遊などして発生した異物は、ウェブWの下方に位置する水分計本体40aに付着することがある。カバー40cは、水分計40の上部を構成し、ウェブWに対向する位置となるので、異物が付着し易い。
水分計40において、照射する赤外線、及び、入射する赤外線は、カバー40cを通過する。この際、赤外線は、カバー40cに付着した異物に吸収されたり、異物に反射や遮蔽されたりすることがある。この結果、水分計40は、ウェブWに含まれる水分の計測の精度が低下する場合がある。
【0067】
異物除去部50は、水分計40に向けて圧縮空気Jを噴射し、異物を除去することができる。このとき、異物除去部50は、水分計40のカバー40cの部位も通過するように、圧縮空気Jを噴射する。異物除去部50の圧縮空気Jにより、水分計40のカバー40cに付着した異物も吹き飛ばして除去することができる。
この結果、水分計40において照射又は入射する赤外線は、カバー40cに付着した異物の影響を受けることが抑制される。水分計40は、ウェブWに含まれる水分の計測の精度の低下を抑制することができる。
【0068】
ところで、ウェブWの搬送方向Tの先端であるウェブ先端Wtは、繊維等が絡まっていない端の部分であり、他の部分に比べて、異物が落下したり浮遊し易い。
さらに、後述のように、第2サクション機構83の搬送方向Tの下流端部と出口側ローラー82aとの間に配置される空気噴射部150は、圧縮空気を噴射して、第2メッシュベルト81に対して、ウェブWのウェブ先端Wtから効率よく剥がすように構成される。このとき、ウェブWの特にウェブ先端Wtから、異物が落下や浮遊し易い。
従って、ウェブ先端Wtが、加湿部90の位置を過ぎ、加圧加熱部114、加熱ローラー対116の位置に到達するとき、特に水分計40に異物が付着し易い。
【0069】
そこで、制御部140は、異物除去部50から圧縮空気Jを噴射するタイミングを制御し、少なくとも、ウェブWのウェブ先端Wtが加熱ローラー対116に到達した時点で、エアコンプレッサー50aを作動させ、圧縮空気噴射口50cから圧縮空気Jを噴射するようにする。
具体的には、制御部140は、少なくとも、ウェブ先端Wtが、加圧加熱部114、加熱ローラー対116の位置に到達した時点で、異物除去部50のエアコンプレッサー50aのバルブを開いて作動させ、圧縮空気Jを圧縮空気噴射口50cから水分計40に向かって噴射する。
水分計40に異物が付着し易いタイミングで、制御部140は、異物除去部50により、水分計40に付着した異物を除去することができる。
【0070】
なお、制御部140は、ウェブ搬送部80の複数のローラー82を駆動する際、第2メッシュベルト81により搬送されるウェブWの搬送量を算出することができる。この結果、制御部140は、ウェブ先端Wtの位置を取得することができる。すなわち、制御部140は、ウェブ先端Wtが、加圧加熱部114、加熱ローラー対116の位置に到達した時点を取得することができる。
同様に、制御部140は、ウェブWの後端が水分計40の位置を越えた時点も取得することができる。制御部140は、ウェブWの後端が水分計40の位置を越えた時点で、次のウェブWの製造に備えて、異物除去部50により圧縮空気Jを噴射し、水分計40に付着した異物を除去するようにしてもよい。
【0071】
図4を参照しながら、異物除去部50が、水分計40に圧縮空気Jを噴射する方向について詳しく説明する。
上述のように、ウェブWは、第2メッシュベルト81に一方面Waが接触しながら保持され、搬送方向Tへ搬送される。このとき、ウェブWは、下方から支持するものがない状態となっている。加湿空気MAは、加湿部90の排気口93aから排気されて、搬送されるウェブWの幅全体に亘って加湿する。
【0072】
水分計本体40aは、ウェブWに対して下方から赤外線を照射し、ウェブWに反射した赤外線を入射して、ウェブWに含まれる水分を計測する。なお、水分計40は、ウェブWに照射した赤外線が全反射しないように、ウェブW及び第2メッシュベルト81に対して傾いた姿勢となっている。
異物除去部50は、水分計本体40aの赤外線の光路を遮らないように、水分計本体40aに対して、搬送方向Tに交わる方向であってウェブWの幅方向にずらして配置される。
異物除去部50の圧縮空気流路50bは、斜め下向きとなっている。異物除去部50の圧縮空気Jは、搬送方向と交わる方向であるウェブWの幅方向であって、やや下方へ向かって、水分計40のカバー40cの部位に当たるように噴射される。
【0073】
ところで、ウェブWは、シート形成部110により加圧又は加熱されるなどの圧着される前の状態であり、空気を多く含み柔らかく膨らんだ状態となっている。
異物除去部50の圧縮空気Jが、このようなウェブWに向かって噴射されると、ウェブWは、含まれている繊維等が飛散してしまい、形状が崩れてしまうおそれがある。この結果、製造されるシートSの品質が劣化してしまうおそれがある。
【0074】
そこで、異物除去部50は、噴射する圧縮空気JがウェブWへ向かわないようにする。そのため、圧縮空気噴射口50cは、第2メッシュベルト81の下方であって、第2メッシュベルト81に接触するウェブWの下方に位置する。また、異物除去部50の圧縮空気流路50bは、斜め下向きとなっている。
【0075】
具体的には、異物除去部50は、圧縮空気噴射口50cから圧縮空気Jが噴射される方向、及び、水分計40のカバー40cの間の角度が、鋭角である角度θとなるように構成する。すなわち、異物除去部50は、圧縮空気流路50bの延びる方向、及び、水分計40のカバー40cの間の角度が、鋭角である角度θとなるように構成する。角度θは、5度以上20度以下が好ましい。
このような配置や向きにすることにより、異物除去部50は、噴射する圧縮空気JがウェブWへ向かわないようにすることができる。
【0076】
図5には、異物除去機構の別の例として、ワイパー機構である払拭部51を示す。払拭部51は、ワイパー駆動部51a、ワイパー51bを含んで構成される。
ワイパー駆動部51aは、モーターなどのアクチュエーターを有し、ワイパー51bを矢印方向へ往復移動可能である。ワイパー51bは、水分計40のカバー40cに接触可能である。ワイパー51bは、カバー40cに接触する部位に、可撓性の材料であるゴムなどの樹脂をエッジ状に形成する。ワイパー51bは、カバー40cの表面に接触しながら移動し、カバー40c上の異物を払拭し除去することができる。
ワイパー51bは、ウェブWに接触しないように、第2メッシュベルト81の下方であって、第2メッシュベルト81に接触するウェブWの下方に位置する。
【0077】
次に、ウェブ搬送部80におけるシート形成部110側に位置する端部に、空気噴射部150が配置される。空気噴射部150は、第2メッシュベルト81を介して、ウェブWの一方面Waに圧縮空気を噴射する。
図2に示すように、空気噴射部150は、ウェブ搬送部80における複数のローラー82の中でシート形成部110に最も近い位置に設けられた出口側ローラー82aに隣接する位置に設けられる。さらに詳細には、空気噴射部150は、第2サクション機構83の搬送方向Tの下流端部と出口側ローラー82aとの間に配置される。
【0078】
空気噴射部150は、空気を圧縮するエアコンプレッサーなどの圧縮部(図示省略)と、圧縮された空気を排気する開口151とを有する。開口151は、出口側ローラー82aに隣接する位置であって、第2メッシュベルト81の他方の面と対面する位置に設けられる。
なお、異物除去部50のエアコンプレッサー50aが、空気噴射部150の圧縮部の機能を備えるように構成してもよい。
開口151は、細長の矩形の形状を有する。開口151は、ウェブWの第2メッシュベルト81に接触している一方面Waの全幅に亘って圧縮空気を噴射することができる。
このようにして、空気噴射部150は、第2メッシュベルト81に接触しているウェブWを、ウェブ先端Wtから効率よく剥がすことができる。
【0079】
ウェブWは、加湿部90によって加湿されるので、第2メッシュベルト81に対する粘着力が高まり、第2メッシュベルト81に張り付いてしまうことがある。そして、第2メッシュベルト81から重力のみでウェブWが剥がれない場合、ウェブWがシート形成部110に円滑に搬送されず、ウェブWの搬送不良やウェブWに損傷が発生してしまうことがある。
空気噴射部150により、シート形成部110に到達する手前でウェブWに向けて圧縮空気を噴射することで、第2メッシュベルト81は下方に向けて押し圧される。この結果、ウェブWは、第2メッシュベルト81から滑らかに剥離され、円滑にシート形成部110に引き渡される。従って、ウェブWの搬送不良やウェブの損傷を抑制することができる。
【0080】
次に、図1図2に示すように、ウェブ搬送部80及び加湿部90の搬送方向Tの下流には、シート形成部110が配置される。加湿されたウェブWは、シート形成部110へと搬送される。
第2メッシュベルト81から剥がされたウェブWは、上流のウェブWに繋がっている。上流のウェブWは第2メッシュベルト81により搬送されているので、剥がされたウェブWも上流のウェブWに押されて、引き続き、搬送方向Tへ搬送される。そして、第2メッシュベルト81から剥がされたウェブWは、シート形成部110に到達することができる。
【0081】
シート形成部110は、例えば、ウェブWを加圧すると同時に加熱するように構成されるとする。シート形成部110により、加湿されたウェブWに含まれる水分が温度上昇した後に蒸発するとともに、ウェブWの厚さが薄くなって繊維密度を高めることができる。
熱により水分と結着剤とが温度上昇し、圧力により繊維密度が高まることにより、結着剤が糊化し、その後水分が蒸発することにより糊化した結着剤を介して複数の繊維同士が結着する。さらに、熱により水分が蒸発し、圧力により繊維密度が高まることにより、フィブリル間の水素結合によって複数の繊維が結着する。これにより、機械的強度が強く、良好な品質のシートSを形成することができる。
【0082】
この場合、シート形成部110は、具体的には、ウェブWを加圧加熱する加圧加熱部114を有する。加圧加熱部114は、例えば、加熱ローラー、又は、熱プレス成形機などを用いて構成することができる。ここでは、加圧加熱部114は、加熱ローラー対116で構成されるものとする。
加熱ローラー対116によるウェブWの加熱は、ウェブWの温度が、60℃以上100℃以下となるようにすることが好ましい。
【0083】
また、加熱ローラー対116によるウェブWへの圧力は、好ましくは0.1Mpa以上15MPa以下、より好ましくは0.2Mpa以上10MPa以下、さらに好ましくは0.4Mpa以上8MPa以下である。
このような圧力の範囲であれば、繊維の劣化を抑制することができ、製造したシートSを解繊した解繊物を原料にして、再び強度の良好なシートSを製造することができる。
【0084】
なお、シート形成部110は、加熱及び加圧のうち少なくとも一方の処理を行うように構成してもよい。シート形成部110は、加熱及び加圧のうち少なくとも一方の処理を行うことにより、シートSを形成することができる。
シート形成部110は、加熱及び加圧のうち少なくとも一方の処理を行うことにより、結着剤を介して複数の繊維同士を結着させ、シート状に圧縮したシートSを形成することができる。
【0085】
また、加熱ローラー対116の数は、複数でもよく、特に限定されない。また、加熱ローラー対116により、ウェブWに対して加圧及び加熱を同時に行うようにすることもでき、一方のみを行うようにすることもできる。
さらに、シート形成部110は、加圧ローラーや搬送ベルト(例えば、メッシュベルト)を含む構成であってもよい。
【0086】
シート形成部110により形成されたシートSは、連続したシート状となっている。図1に示すように、切断部120は、連続したシート状のシートSを切断する。
切断部120は、シートSの搬送方向Tと交差する方向である幅方向にシートSを切断する第1切断部122と、搬送方向Tに平行な方向である長さ方向にシートSを切断する第2切断部124と、を有する。第1切断部122がシートSを幅方向に切断した後、第2切断部124がシートSを長さ方向に切断する。
以上により、所定のサイズの単票形状のシートSが製造される。切断された単票形状のシートSは、排出受け部130に排出される。
【0087】
2.シート製造方法
次に、本実施形態に係るシート製造装置1によるシート製造方法について、図6のフローチャートに示す工程を参照しながら説明する。なお、当該シート製造方法を実施するシート製造装置1の構成については、図1図5を用いて説明した、上述の通りである。また、制御部140が各部を制御することにより各工程が実行される。
【0088】
シート製造装置1において、供給部5により繊維等の原料Cを供給する(S110)。シート製造装置1は、供給された原料Cを、粗砕部10により裁断し、解繊部30により解繊し、混合部60により結着剤等と混合し、堆積部105の第1サクション機構76の気流を用いて混合物を堆積し、ウェブ形成部70でウェブWを形成する(S111)。
ウェブ搬送部80は、第2メッシュベルト81を介して、第2サクション機構83により上方からウェブWを吸引しつつ、複数のローラー82により搬送方向Tへ搬送する(S112)。
【0089】
水分計40はウェブWに含まれる水分を検出する(S113)。具体的には、制御部140は、水分計40によりウェブWの含水率を取得する。そして、制御部140は、ウェブWが規定の含水率になるように、加湿部90のミスト生成部97を制御し、加湿空気MAに含まれるミストMの発生量を調整して、ウェブWを加湿する(S114)。
なお、加湿を開始する際、ウェブWは水分計40の位置に至っていない。制御部140のメモリーには、ウェブWの含水率の初期値、又は、前回のウェブWを製造したときのウェブWの含水率が記憶されている。制御部140は、加湿を開始する際、これらのいずれかを用いて加湿部90を制御し、ウェブWを加湿することができる。
【0090】
ウェブ搬送部80により、さらにウェブWが搬送され、ウェブ先端Wtが、加圧加熱部114、加熱ローラー対116の位置に到達する(S115)。
制御部140は、少なくとも、ウェブ先端Wtが、加圧加熱部114、加熱ローラー対116の位置に到達した時点で、異物除去部50を制御して作動させる。異物除去部50は、圧縮空気Jを水分計40に向かって噴射することにより、水分計40に付着した異物を除去することができる(S116)。
【0091】
次に、シート形成部110により、加湿部90で加湿されたウェブWに対して加熱加圧の処理を行い(S117)、シートSを形成する。なお、シート形成部110は、ウェブWに対して加熱及び加圧のうち少なくとも一方の処理を行い、シートSを形成するようにしてもよい。このとき、シートSは連続したシート状に形成される。
切断部120により、連続したシート状のシートSを切断し、所定のサイズの単票形状のシートSが製造される(S118)。
【0092】
上述のように、少なくとも、水分計40、及び、異物除去部50を備えるシート製造装置1のシートSの製造方法において、繊維を含む材料等の原料Cを気流によって堆積させてウェブWを形成し、ウェブ搬送部80によりウェブWの一方面Waと接触してウェブWを保持しつつ搬送する。
さらに、シート製造装置1のシートSの製造方法において、ウェブWの他方面Wb側から、水分計40によりウェブWに含まれる水分を検出して、ウェブWに水分を付与し、異物除去部50により水分計40に付着した異物を除去し、水分が付与されたウェブWに対してシート形成部110の加熱ローラー対116により加熱を行う。
また、シート製造装置1のシートSの製造方法において、ウェブWのウェブ先端Wtが加熱ローラー対116に到達した時点で、異物除去部50により水分計40に付着した異物を除去することが好ましい。
【0093】
上述のように、シート製造装置1は、水分計40によりウェブWに含まれる水分を検出して、加湿部90によりウェブWに水分を付与する。シート製造装置1において、水分計40に異物が付着することがあるが、異物除去部50により異物を除去することができる。水分計40は、ウェブWに含まれる水分の計測の精度の低下を抑制することができる。
この結果、シート製造装置1は、ウェブWの含水率を規定の範囲内にすることができ、ウェブWの繊維のフィブリル間の水素結合を効果的に形成して、シートSの強度を増加させることができる。
【0094】
以上、これら実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない限り、変更、置換、削除等されてもよい。
【符号の説明】
【0095】
1…シート製造装置、40…水分計、40a…水分計本体、40b…導光部、40c…カバー、50…異物除去部、50a…エアコンプレッサー、50b…圧縮空気流路、50c…圧縮空気噴射口、51…払拭部、51a…ワイパー駆動部、51b…ワイパー、80…ウェブ搬送部、81…第2メッシュベルト、82…ローラー、83…サクション機構、90…加湿部、93a…排気口、97…ミスト生成部、105…堆積部、110…シート形成部、114…加圧加熱部、116…加熱ローラー対、140…制御部、L…水、M…ミスト、MA…加湿空気、T…搬送方向、W…ウェブ、Wa…一方面、Wb…他方面、Wt…ウェブ先端、S…シート。
図1
図2
図3
図4
図5
図6