IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

2024-161977液体吐出装置及び液体吐出装置の制御方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161977
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】液体吐出装置及び液体吐出装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241114BHJP
   B41J 11/02 20060101ALI20241114BHJP
   B41J 11/42 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J11/02
B41J11/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077088
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】塩原 浩
(72)【発明者】
【氏名】小口 武
(72)【発明者】
【氏名】細川 達也
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 知明
【テーマコード(参考)】
2C056
2C058
【Fターム(参考)】
2C056EB13
2C056EC12
2C056EC28
2C056EC34
2C056HA29
2C058AB16
2C058AB18
2C058AC07
2C058AE02
2C058AF20
2C058AF23
2C058AF31
2C058DA13
2C058DA38
2C058GA13
2C058GE00
(57)【要約】
【課題】媒体の搬送が停止した場合に、媒体に吐出された液体が媒体から流れ落ちることを抑制可能な液体吐出装置、及び液体吐出装置の制御方法を提供する。
【解決手段】プリンターは、用紙Pにインクを吐出するラインヘッド10と、用紙Pを支持するベルト搬送部20と、用紙Pをベルト搬送部20に搬送する上流側搬送ローラー対21と、用紙Pをベルト搬送部20から搬送する下流側搬送ローラー対22と、制御部と、を備え、ベルト搬送部20は、回動することにより、ラインヘッド10と対向する第1位置と、第1位置よりもラインヘッド10から離間した第2位置とに変位可能であり、制御部は、搬送が停止した場合に、ベルト搬送部20を第2位置に変位させるとともに、用紙Pが鉛直方向下方に凸となる湾曲を形成するように、ベルト搬送部20、上流側搬送ローラー対21、及び下流側搬送ローラー対22を制御する。
【選択図】図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に液体を吐出することによって記録を行う記録部と、
前記媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部を制御する制御部と、を備え、
前記搬送部は、
前記記録部と対向し、前記液体が吐出される前記媒体を支持する支持部と、
前記媒体の搬送方向において、前記支持部よりも上流に位置し、前記媒体を前記支持部に搬送する上流側搬送部と、
前記搬送方向において、前記支持部よりも下流に位置し、前記媒体を前記支持部から搬送する下流側搬送部と、を有し、
前記支持部は、前記搬送方向と交差する幅方向に沿う軸を回動軸として回動することにより、前記記録部と対向する第1位置と、前記第1位置よりも前記記録部から離間した第2位置とに変位可能であり、
前記制御部は、前記媒体の少なくとも一部が前記支持部に支持された状態で搬送が停止した場合に、前記支持部を前記第2位置に変位させるとともに、前記媒体が鉛直方向下方に凸となる湾曲を形成するように、前記搬送部を制御することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出装置であって、
前記回動軸は、前記支持部の前記搬送方向における中央よりも前記搬送方向における上流に位置し、
前記第2位置は、前記支持部の前記搬送方向における下流側が鉛直方向下方に移動することによって前記支持部が傾斜する位置であり、
前記媒体は、前記下流側搬送部及び前記第2位置に位置する前記支持部によって支持されることにより、前記湾曲を形成することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の液体吐出装置であって、
前記下流側搬送部よりも前記搬送方向の下流において前記媒体を検出する検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記搬送が停止した場合には、前記検出部が前記媒体を検出した状態で前記媒体が前記湾曲を形成するように、前記搬送部を制御することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の液体吐出装置であって、
前記制御部は、前記搬送が停止したときに前記検出部が前記媒体を検出していない場合には、前記検出部が前記媒体を検出できるまで、前記搬送部に前記媒体を前記搬送方向へ搬送させることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項5】
請求項3に記載の液体吐出装置であって、
前記制御部は、前記搬送が停止したときに前記検出部が前記媒体を検出している場合には、前記検出部が前記媒体を検出できる範囲で、前記搬送部に前記媒体を前記搬送方向と反対の方向へ搬送させることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項6】
請求項1に記載の液体吐出装置であって、
前記回動軸は、前記支持部の前記搬送方向における中央よりも前記搬送方向における下流に位置し、
前記第2位置は、前記支持部の前記搬送方向における上流側が鉛直方向下方に移動することによって前記支持部が傾斜する位置であり、
前記媒体は、前記上流側搬送部及び前記第2位置に位置する前記支持部によって支持されることにより、前記湾曲を形成することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項7】
請求項6に記載の液体吐出装置であって、
前記上流側搬送部よりも前記搬送方向の上流において前記媒体を検出する検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記搬送が停止した場合には、前記検出部が前記媒体を検出した状態で前記媒体が前記湾曲を形成するように、前記搬送部を制御することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項8】
請求項7に記載の液体吐出装置であって、
前記制御部は、前記搬送が停止したときに前記検出部が前記媒体を検出していない場合には、前記検出部が前記媒体を検出できるまで、前記搬送部に前記媒体を前記搬送方向と反対の方向へ搬送させることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項9】
請求項7に記載の液体吐出装置であって、
前記制御部は、前記搬送が停止したときに前記検出部が前記媒体を検出している場合には、前記検出部が前記媒体を検出できる範囲で、前記搬送部に前記媒体を前記搬送方向へ搬送させることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の液体吐出装置であって、
前記支持部は、前記媒体を吸着して搬送する搬送ベルトを備え、
前記制御部は、前記湾曲を形成する際に、前記搬送ベルトを制御することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載の液体吐出装置であって、
前記制御部は、
前記媒体の少なくとも一部が前記支持部に支持された状態で前記搬送が停止した場合に、前記媒体が前記湾曲を形成するように前記搬送部を制御する第1モードと、
前記媒体の少なくとも一部が前記支持部に支持された状態で前記搬送が停止した場合に、前記媒体が前記湾曲を形成するように前記搬送部を制御しない第2モードと、
を選択可能であることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか一項に記載の液体吐出装置であって、
前記制御部は、前記媒体が前記湾曲を形成した後に、異常の発生を報知することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか一項に記載の液体吐出装置であって、
前記支持部は、前記第2位置よりも前記記録部から離間した第3位置に変位可能であることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項14】
媒体に液体を吐出することによって記録を行う記録部と、前記記録部と対向し、前記液体が吐出される前記媒体を支持する支持部と、前記媒体の搬送方向において、前記支持部よりも上流に位置し、前記媒体を前記支持部に搬送する上流側搬送部と、前記搬送方向において、前記支持部よりも下流に位置し、前記媒体を前記支持部から搬送する下流側搬送部と、前記搬送方向において、前記下流側搬送部よりも下流において前記媒体を検出する検出部と、を有する液体吐出装置の制御方法であって、
前記媒体の少なくとも一部が前記支持部に支持された状態で搬送が停止したときに前記検出部が前記媒体を検出していない場合には、前記検出部が前記媒体を検出できるまで、前記媒体を前記搬送方向へ搬送させ、
前記媒体の少なくとも一部が前記支持部に支持された状態で前記搬送が停止したときに前記検出部が前記媒体を検出している場合には、前記検出部が前記媒体を検出できる範囲で、前記媒体を前記搬送方向と反対の方向へ搬送させ、
前記支持部を、前記支持部の前記搬送方向における中央よりも前記搬送方向における上流に位置する回動軸を中心に回動させることによって前記記録部から離間させ、
前記媒体が、前記下流側搬送部及び前記支持部によって支持されることによって鉛直方向下方に凸となる湾曲を形成するように、前記上流側搬送部及び前記下流側搬送部を制御することを特徴とする液体吐出装置の制御方法。
【請求項15】
媒体に液体を吐出することによって記録を行う記録部と、前記記録部と対向し、前記液体が吐出される前記媒体を支持する支持部と、前記媒体の搬送方向において、前記支持部よりも上流に位置し、前記媒体を前記支持部に搬送する上流側搬送部と、前記搬送方向において、前記支持部よりも下流に位置し、前記媒体を前記支持部から搬送する下流側搬送部と、前記搬送方向において、前記上流側搬送部よりも上流において前記媒体を検出する検出部と、を有する液体吐出装置の制御方法であって、
前記媒体の少なくとも一部が前記支持部に支持された状態で搬送が停止したときに前記検出部が前記媒体を検出していない場合には、前記検出部が前記媒体を検出できるまで、前記媒体を前記搬送方向と反対の方向へ搬送させ、
前記媒体の少なくとも一部が前記支持部に支持された状態で前記搬送が停止したときに前記検出部が前記媒体を検出している場合には、前記検出部が前記媒体を検出できる範囲で、前記媒体を前記搬送方向へ搬送させ、
前記支持部を、前記支持部の前記搬送方向における中央よりも前記搬送方向における下流に位置する回動軸を中心に回動させることによって前記記録部から離間させ、
前記媒体が、前記上流側搬送部及び前記支持部によって支持されることによって鉛直方向下方に凸となる湾曲を形成するように、前記上流側搬送部及び前記下流側搬送部を制御することを特徴とする液体吐出装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体に液体を吐出する液体吐出装置及び液体吐出装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、上流側搬送手段から中間搬送手段に媒体を搬送し、中間搬送手段上で印字手段により印字を行い、印字後の媒体を中間搬送手段から下流側搬送手段に搬送する画像形成装置が記載されている。この画像形成装置は、上流側搬送手段と下流側搬送手段の両方が媒体を保持する状態で、用紙詰まり等によって媒体の搬送が停止した場合に、例えば、下流側搬送手段に、中間搬送手段に向けて媒体を進行させるとともに、中間搬送手段を印字手段から離間させる。この結果、印字手段と中間搬送手段との間隔が拡大するとともに、媒体の下流側端部が中間搬送手段上に垂れ下がった状態となるため、媒体を取り除く際に、媒体が印字手段に接触することを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-115791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、印字手段から媒体に液体を吐出することによって画像を形成する液体吐出装置では、印字途中の媒体の一端が垂れ下がった状態になると、吐出されて間もない液体が媒体から流れ落ち、装置の内部を汚損してしまう恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
液体吐出装置は、媒体に液体を吐出することによって記録を行う記録部と、前記媒体を搬送する搬送部と、前記搬送部を制御する制御部と、を備え、前記搬送部は、前記記録部と対向し、前記液体が吐出される前記媒体を支持する支持部と、前記媒体の搬送方向において、前記支持部よりも上流に位置し、前記媒体を前記支持部に搬送する上流側搬送部と、前記搬送方向において、前記支持部よりも下流に位置し、前記媒体を前記支持部から搬送する下流側搬送部と、を有し、前記支持部は、前記搬送方向と交差する幅方向に沿う軸を回動軸として回動することにより、前記記録部と対向する第1位置と、前記第1位置よりも前記記録部から離間した第2位置とに変位可能であり、前記制御部は、前記媒体の少なくとも一部が前記支持部に支持された状態で搬送が停止した場合に、前記支持部を前記第2位置に変位させるとともに、前記媒体が鉛直方向下方に凸となる湾曲を形成するように、前記搬送部を制御する。
【0006】
液体吐出装置の制御方法は、媒体に液体を吐出することによって記録を行う記録部と、前記記録部と対向し、前記液体が吐出される前記媒体を支持する支持部と、前記媒体の搬送方向において、前記支持部よりも上流に位置し、前記媒体を前記支持部に搬送する上流側搬送部と、前記搬送方向において、前記支持部よりも下流に位置し、前記媒体を前記支持部から搬送する下流側搬送部と、前記搬送方向において、前記下流側搬送部よりも下流において前記媒体を検出する検出部と、を有する液体吐出装置の制御方法であって、前記媒体の少なくとも一部が前記支持部に支持された状態で搬送が停止したときに前記検出部が前記媒体を検出していない場合には、前記検出部が前記媒体を検出できるまで、前記媒体を前記搬送方向へ搬送させ、前記媒体の少なくとも一部が前記支持部に支持された状態で前記搬送が停止したときに前記検出部が前記媒体を検出している場合には、前記検出部が前記媒体を検出できる範囲で、前記媒体を前記搬送方向と反対の方向へ搬送させ、前記支持部を、前記支持部の前記搬送方向における中央よりも前記搬送方向における上流に位置する回動軸を中心に回動させることによって前記記録部から離間させ、前記媒体が、前記下流側搬送部及び前記支持部によって支持されることによって鉛直方向下方に凸となる湾曲を形成するように、前記上流側搬送部及び前記下流側搬送部を制御する。
【0007】
液体吐出装置の制御方法は、媒体に液体を吐出することによって記録を行う記録部と、前記記録部と対向し、前記液体が吐出される前記媒体を支持する支持部と、前記媒体の搬送方向において、前記支持部よりも上流に位置し、前記媒体を前記支持部に搬送する上流側搬送部と、前記搬送方向において、前記支持部よりも下流に位置し、前記媒体を前記支持部から搬送する下流側搬送部と、前記搬送方向において、前記上流側搬送部よりも上流において前記媒体を検出する検出部と、を有する液体吐出装置の制御方法であって、前記媒体の少なくとも一部が前記支持部に支持された状態で搬送が停止したときに前記検出部が前記媒体を検出していない場合には、前記検出部が前記媒体を検出できるまで、前記媒体を前記搬送方向と反対の方向へ搬送させ、前記媒体の少なくとも一部が前記支持部に支持された状態で前記搬送が停止したときに前記検出部が前記媒体を検出している場合には、前記検出部が前記媒体を検出できる範囲で、前記媒体を前記搬送方向へ搬送させ、前記支持部を、前記支持部の前記搬送方向における中央よりも前記搬送方向における下流に位置する回動軸を中心に回動させることによって前記記録部から離間させ、前記媒体が、前記上流側搬送部及び前記支持部によって支持されることによって鉛直方向下方に凸となる湾曲を形成するように、前記上流側搬送部及び前記下流側搬送部を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】プリンターの外観を示す斜視図。
図2】プリンターにおける用紙の搬送経路を示す概略図。
図3】ベルト搬送部の概略構成を示す側面図。
図4】ベルト搬送部の姿勢について説明する図であり、第1姿勢を示す図。
図5】ベルト搬送部の姿勢について説明する図であり、第2姿勢を示す図。
図6】ベルト搬送部の姿勢について説明する図であり、第3姿勢を示す図。
図7】第1姿勢のベルト搬送部及び姿勢切替部を示す斜視図。
図8】プリンターの制御系の構成を示すブロック図。
図9】搬送異常が生じた場合のプリンターの動作を示すフローチャート。
図10】ベルト搬送部及び用紙の状態を示す側面図。
図11】ベルト搬送部及び用紙の状態を示す側面図。
図12】ベルト搬送部及び用紙の状態を示す側面図。
図13】ベルト搬送部及び用紙の状態を示す側面図。
図14】ベルト搬送部及び用紙の状態を示す側面図。
図15】ベルト搬送部及び用紙の状態を示す側面図。
図16】ベルト搬送部及び用紙の状態を示す側面図。
図17】ベルト搬送部及び用紙の状態を示す側面図。
図18】第2実施形態に係るベルト搬送部の概略構成を示す側面図。
図19】第2実施形態において、搬送異常が生じた場合のプリンターの動作を示すフローチャート。
図20】ベルト搬送部及び用紙の状態を示す側面図。
図21】ベルト搬送部及び用紙の状態を示す側面図。
図22】ベルト搬送部及び用紙の状態を示す側面図。
図23】ベルト搬送部及び用紙の状態を示す側面図。
図24】ベルト搬送部及び用紙の状態を示す側面図。
図25】ベルト搬送部及び用紙の状態を示す側面図。
図26】ベルト搬送部及び用紙の状態を示す側面図。
図27】ベルト搬送部及び用紙の状態を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.第1実施形態
以下、第1実施形態のプリンター1について、図面を参照して説明する。
プリンター1は、搬送される媒体に対して液体を吐出することにより、媒体に画像を記録するインクジェット式プリンターである。プリンター1は、液体吐出装置の一例である。
【0010】
各図には、互いに交差するX軸、Y軸及びZ軸が示されている。典型的には、X軸、Y軸及びZ軸は、互いに直交する。X軸に平行な±X方向は、プリンター1の設置面に平行であり、プリンター1の前後方向に対応する。また、±X方向は、プリンター1内の搬送経路における媒体の幅方向にも対応する。Y軸に平行な±Y方向は、プリンター1の設置面に平行であり、プリンター1の左右方向に対応する。Z軸に平行な±Z方向は、プリンター1の設置面に垂直であり、プリンター1の上下方向に対応する。また、各図において、+X方向は、プリンター1の前面から背面に向かう方向であり、+Y方向は、プリンター1の前面に向かって左方向であり、+Z方向は、上方向、即ち鉛直方向上方である。
【0011】
図1は、プリンター1の外観を示す斜視図である。
図1に示すように、プリンター1は、装置本体2と、スキャナーユニット3とを備える複合機として構成されている。スキャナーユニット3は、装置本体2の上方に配置されている。装置本体2は、媒体としての用紙P(図2参照)を収容する複数の用紙収容カセット4を備えている。各用紙収容カセット4は、装置本体2の下側に配置されており、装置本体2の前面側から着脱可能に取り付けられている。用紙Pは、例えば、普通紙や厚紙、写真用紙等の用紙である。
【0012】
装置本体2の用紙収容カセット4の上方には、記録が実行された用紙Pを排出する排出部7と、排出部7から排出された用紙Pが載置される媒体載置部5が設けられている。また、装置本体2の前面側には、操作パネル6が設けられている。操作パネル6には、液晶パネル等の表示手段と、プリンター1に対して各種指示等を入力するための入力手段とが含まれる。
【0013】
装置本体2の前面には、用紙収容カセット4の上方に、開閉が可能な前面カバー8が配置されている。前面カバー8は、例えば、用紙詰まり等の搬送異常が発生した場合に、使用不能となった用紙Pを除去する際に開放される。
【0014】
図2は、プリンター1における用紙Pの搬送経路11を示す概略図である。
本実施形態のプリンター1は、ラインヘッド10と搬送経路11とを備えている。ラインヘッド10は、外部の装置等から入力される印刷データに基づいて、液体の一例であるインクを用紙Pに吐出することにより、印刷データに基づく画像を用紙Pに記録する。ラインヘッド10は、記録部の一例である。
【0015】
搬送経路11は、用紙Pが搬送される経路であり、上流側から順に、給送経路12と、ストレート経路13と、フェイスダウン排出経路14とを備えている。給送経路12は、用紙収容カセット4から用紙Pをピックアップしてラインヘッド10に向けて搬送する経路である。ストレート経路13は、給送経路12に接続され、ラインヘッド10によって記録が行われる経路である。フェイスダウン排出経路14は、ストレート経路13に接続され、記録が実行された用紙Pを排出部7まで搬送する経路である。用紙Pの搬送は、搬送駆動部61(図8参照)が備えるモーター等の駆動源によって駆動される。なお、搬送経路11の上流側から下流側に向かって用紙Pが搬送される方向のことを、搬送方向とも呼ぶ。
【0016】
プリンター1は、用紙Pの両面への記録、所謂、両面記録を実行可能である。具体的には、プリンター1は、ラインヘッド10の下流側においてストレート経路13から分岐するスイッチバック経路15と、スイッチバック経路15に接続され、用紙Pの表裏を反転させる反転経路16とを備えている。反転経路16は、ラインヘッド10の上流側において、用紙Pをストレート経路13に戻す。両面記録を行う場合、一方の面に記録が行われた用紙Pは、スイッチバック経路15及び反転経路16を経由して、ストレート経路13に戻され、反対の面への記録が行われる。
【0017】
給送経路12には、用紙Pの搬送方向に沿って順に、給送ローラー17と、複数枚の用紙Pを1枚に分離する分離ローラー対18とが設けられている。給送ローラー17は、搬送駆動部61により回転駆動される。分離ローラー対18は、リタードローラーとも呼ばれ、ストレート経路13に向けて用紙Pを送る駆動ローラー18aと、駆動ローラー18aとの間で用紙Pをニップする従動ローラー18bと、を備えて構成されている。駆動ローラー18aは、搬送駆動部61により回転駆動される。
【0018】
用紙収容カセット4に収容された複数の用紙Pのうち、一番上の用紙Pは、給送ローラー17によりピックアップされて搬送方向の下流側に搬送される。この際、一番上の用紙Pとともに2番目以降の用紙Pもピックアップされる場合があるが、分離ローラー対18により一番上の用紙Pと2番目以降の用紙Pとが分離され、一番上の用紙Pのみが下流側に送られる。
【0019】
ストレート経路13は、直線状に延びる経路として構成され、ストレート経路13において、用紙Pは、+Y方向に搬送される。つまり、ストレート経路13における用紙Pの搬送方向は、+Y方向である。ストレート経路13には、ベルト搬送部20、上流側搬送ローラー対21、下流側搬送ローラー対22、上流側用紙センサー23、下流側用紙センサー24、及びラインヘッド10が配置されている。ストレート経路13は、ラインヘッド10によって記録が行われる記録領域を含み、記録領域からラインヘッド10の+Y側及び-Y側に延びる経路である。ストレート経路13において用紙Pを搬送するベルト搬送部20、上流側搬送ローラー対21、及び下流側搬送ローラー対22は、搬送部に相当する。
【0020】
ベルト搬送部20は、ラインヘッド10の下方に配置されている。ラインヘッド10の下面であるノズル面には、インクを吐出する複数のノズルが形成されており、ベルト搬送部20は、ラインヘッド10のノズル面に対向するように配置されている。ベルト搬送部20は、インクの吐出を受ける用紙Pを、インクが吐出される記録面の反対側から支持する。ベルト搬送部20は、支持部の一例である。ベルト搬送部20の構成については後述する。
【0021】
ラインヘッド10は、ベルト搬送部20上を搬送される用紙Pの記録面にインクを吐出して記録を実行する。ラインヘッド10は、複数のノズルが用紙Pの全幅をカバーするように構成された記録ヘッドであり、用紙Pの幅方向への移動を伴わないで用紙Pの幅全体に記録が可能である。なお、本実施形態のプリンター1は、ラインヘッド10を備えているが、キャリッジに搭載されて、用紙Pの幅方向に往復移動しながら用紙Pにインクを吐出して記録を行うシリアル型の記録ヘッドを備えていてもよい。
【0022】
上流側搬送ローラー対21は、ラインヘッド10及びベルト搬送部20よりも、搬送方向の上流に位置しており、給送経路12から給送された用紙Pをベルト搬送部20に搬送する。下流側搬送ローラー対22は、ラインヘッド10及びベルト搬送部20よりも、搬送方向の下流に位置しており、記録が実行された用紙Pをベルト搬送部20からフェイスダウン排出経路14又はスイッチバック経路15に搬送する。上流側搬送ローラー対21及び下流側搬送ローラー対22のそれぞれは、搬送駆動部61によって回転駆動される駆動ローラーと、駆動ローラーに従動して回転する従動ローラーとを備え、駆動ローラー及び従動ローラーによって用紙Pをニップして+Y方向に搬送する。上流側搬送ローラー対21及び下流側搬送ローラー対22の駆動ローラーは、搬送駆動部61により個別に駆動され得る。上流側搬送ローラー対21は、上流側搬送部の一例であり、下流側搬送ローラー対22は、下流側搬送部の一例である。
【0023】
上流側用紙センサー23は、上流側搬送ローラー対21の上流側の近傍に配置され、下流側用紙センサー24は、下流側搬送ローラー対22の下流側の近傍に配置されている。上流側用紙センサー23及び下流側用紙センサー24は、例えば、光学式のセンサーによって構成され、搬送される用紙Pの有無を検出することができる。つまり、上流側用紙センサー23は、上流側搬送ローラー対21よりも搬送方向の上流において用紙Pを検出し、下流側用紙センサー24は、下流側搬送ローラー対22よりも搬送方向の下流において用紙Pを検出する。なお、図示は省略しているが、用紙Pの有無を検出するセンサーは、上流側用紙センサー23及び下流側用紙センサー24以外にも、搬送経路11の途中に複数配置されている。これらのセンサーによる検出結果は、用紙詰まり等、用紙Pの搬送異常の発生を検出したり、搬送異常が生じた位置を特定したりする際に利用され得る。上流側用紙センサー23及び下流側用紙センサー24は、検出部の一例である。
【0024】
フェイスダウン排出経路14は、湾曲する経路であり、ラインヘッド10によって記録された用紙Pの記録面を下にして排出部7から排出されるように用紙Pを搬送する。フェイスダウン排出経路14に入った用紙Pは、複数の搬送ローラー対30により搬送され、排出部7から排出されるとともに、記録面を下にして媒体載置部5に載置される。複数の搬送ローラー対30のそれぞれは、搬送駆動部61によって回転駆動される駆動ローラーと、駆動ローラーに従動して回転する従動ローラーとを備え、駆動ローラー及び従動ローラーによって用紙Pをニップして搬送する。
【0025】
搬送経路11に沿って配置される複数の駆動ローラーの回転は、搬送駆動部61に備わるモーター等の駆動源によって駆動される。搬送駆動部61は、複数の駆動源を有しており、複数の駆動ローラーを連動させて駆動したり、複数の駆動ローラーを個別に駆動したりすることができる。上述したように、ストレート経路13に備わる上流側搬送ローラー対21及び下流側搬送ローラー対22の駆動ローラーは、搬送駆動部61により個別に駆動され得る。つまり、搬送駆動部61は、上流側搬送ローラー対21の駆動ローラーを駆動する駆動源として、上流側ローラー駆動部62(図8参照)を備え、さらに、下流側搬送ローラー対22の駆動ローラーを駆動する駆動源として、下流側ローラー駆動部63(図8参照)を備える。
【0026】
図3は、ベルト搬送部20の概略構成を示す側面図である。また、図4図6は、ベルト搬送部20の姿勢について説明する図であり、図4は、第1姿勢を示す図、図5は、第2姿勢を示す図、図6は、第3姿勢を示す図である。
図3に示すように、ベルト搬送部20は、無端状の搬送ベルト25と、搬送ベルト25が掛け回される上流側プーリー26及び下流側プーリー27と、を備えている。ベルト搬送部20は、用紙Pを搬送ベルト25のベルト外面25aに吸着させて+Y方向に搬送する。下流側プーリー27は、上流側プーリー26よりも搬送方向の下流側、即ち+Y側に配置されている。上流側プーリー26及び下流側プーリー27は、それぞれ±X方向に沿う軸を回転軸として回転可能である。
【0027】
搬送駆動部61は、モーター等の駆動源を含むベルト駆動部28(図7及び図8参照)を備えており、ベルト駆動部28は、上流側プーリー26を回転駆動することにより、搬送ベルト25を周回移動させる。その際、下流側プーリー27は、周回移動する搬送ベルト25に従動して回転する。
【0028】
ベルト駆動部28は、搬送ベルト25を、+C方向と、その反対方向である-C方向に周回移動させることが可能に構成されている。+C方向は、用紙Pを+Y方向に搬送する際の周回方向である。これ以降、搬送ベルト25のベルト外面25aのうち、搬送ベルト25が+C方向に周回するときに+Y方向に進む面のことを、搬送面とも呼ぶ。
【0029】
ベルト搬送部20は、±X方向に沿う上流側プーリー26の駆動軸26aを回動軸として、+R方向と、その反対方向である-R方向とに回動可能に構成されている。つまり、回動軸は、ベルト搬送部20の搬送方向における中央よりも搬送方向における上流に位置している。そして、ベルト搬送部20は、駆動軸26aを回動軸として回動することにより、ラインヘッド10の下方において搬送ベルト25の搬送面が略水平となる第1姿勢(図4参照)と、搬送ベルト25の搬送面が斜めに傾斜する第2姿勢(図5参照)と、搬送ベルト25の搬送面が鉛直方向に略平行となる第3姿勢(図6参照)とに姿勢を切り替えることができる。第1姿勢は、ラインヘッド10によって記録を行うときに設定される姿勢であり、ラインヘッド10のノズル面に対向しつつ用紙Pを+Y方向に搬送可能な姿勢である。第2姿勢は、搬送異常等が生じた際に、記録途中の用紙Pを取り除くために設定される姿勢である。第2姿勢において、搬送ベルト25の搬送面は、搬送方向の上流側に比べて下流側が下方に位置するように傾く。第3姿勢は、後述するメンテナンス部50によりラインヘッド10のメンテナンス等を行う際に設定される姿勢である。
【0030】
なお、ベルト搬送部20が姿勢を変えることは、ベルト搬送部20が位置を変えることと言い換えることができる。この場合、ベルト搬送部20は、第1姿勢に対応する第1位置と、第2姿勢に対応する第2位置と、第3姿勢に対応する第3位置とに変位可能である。ここで、第1位置は、ラインヘッド10のノズル面に対向する位置であり、ベルト搬送部20が水平方向に沿う位置である。また、第2位置は、第1位置よりもラインヘッド10から離間した位置であり、ベルト搬送部20の搬送方向における下流側が鉛直方向下方に移動することによってベルト搬送部20が傾斜する位置である。また、第3位置は、第2位置よりもラインヘッド10から離間した位置であり、ベルト搬送部20が鉛直方向に沿う位置である。
【0031】
本実施形態において搬送ベルト25は、ベルト外面25aに用紙Pを静電吸着して搬送するベルトであり、ベルト搬送部20には、搬送ベルト25を帯電させる帯電ローラー31と、搬送ベルト25によって搬送される用紙Pの表面の電荷を除去する除電ブラシ32とが設けられている。
【0032】
帯電ローラー31は、除電ブラシ32に対して搬送方向の上流側に設けられるとともに、ストレート経路13よりも下方において上流側プーリー26に対向する位置に設けられている。帯電ローラー31は、ベルト外面25aに接触し、ベルト外面25aに、正の電荷を付与する。上流側プーリー26及び下流側プーリー27が回転して搬送ベルト25が+C方向に周回移動すると、帯電ローラー31が接触した後の帯電したベルト外面25aが搬送面を形成する。よって、搬送ベルト25の搬送面における用紙Pの吸着性が高まり、より効果的に用紙Pを搬送ベルト25に吸着させることができる。
【0033】
ラインヘッド10の上流側には、用紙Pに接触する除電ブラシ32が設けられており、この除電ブラシ32によって用紙Pの上面、或いはベルト外面25aの電荷が除去される。より詳しくは、帯電ローラー31によって搬送ベルト25のベルト外面25aに正の電荷が付与されると、ベルト外面25aに接する用紙Pには、ベルト外面25aと接する面に負の電荷が生じ、その反対面である記録面には、正の電荷が生じる。この記録面側の電荷は、除電ブラシ32により除去される。このため、用紙Pには、搬送ベルト25と接する側の電荷だけが残り、その結果としてベルト外面25aに対して用紙Pが吸着される。除電ブラシ32は、用紙P及び搬送ベルト25から電荷を除去できる材質であればどの様なものでも良く、例えば導電性ナイロンなどの樹脂材料で形成することができる。
【0034】
また、ベルト搬送部20は、上流側プーリー26と下流側プーリー27との間において、搬送ベルト25の少なくとも一部を内面側から支持するバックアッププレート29を備えている。
【0035】
また、ベルト搬送部20は、ベルト搬送部20の姿勢を、第1姿勢と、第2姿勢と、第3姿勢との間で切り替える姿勢切替部40(図4図6参照)を備えている。姿勢切替部40は、上流側プーリー26の駆動軸26aを回動軸として、ベルト搬送部20を±R方向に回動させることにより、ベルト搬送部20の姿勢を切り替える。
【0036】
姿勢切替部40は、モーター等の駆動源を含む姿勢切替駆動部41(図7及び図8参照)と、姿勢切替駆動部41の駆動によって動作するリンク部材42とを備えている。リンク部材42は、第1リンク板43と第2リンク板44とを備えて構成されている。
【0037】
姿勢切替駆動部41の駆動により、リンク部材42が、第1姿勢のベルト搬送部20を、駆動軸26aを回動軸として+R方向に所定の角度だけ回動させると、ベルト搬送部20は、第2姿勢となる。さらに、リンク部材42が、第2姿勢のベルト搬送部20を、駆動軸26aを回動軸として+R方向に所定の角度だけ回動させると、ベルト搬送部20は、第3姿勢となる。なお、姿勢切替部40は、ベルト搬送部20の姿勢を、第1姿勢、第2姿勢、及び第3姿勢に加えて、第1姿勢と第2姿勢との間の姿勢、或いは第2姿勢と第3姿勢との間の姿勢に切り替え可能であってもよい。
【0038】
図7は、第1姿勢のベルト搬送部20及び姿勢切替部40を示す斜視図である。
図7に示すように、姿勢切替部40は、ウォーム45と、ウォームホイール46と、軸部47と、基体48とを備えている。ウォーム45は、姿勢切替駆動部41の図示しないモーター軸に固定されている。軸部47は、±X方向に延在する部材であり、その一端には、ウォーム45と噛み合うウォームホイール46が固定されている。つまり、軸部47は、姿勢切替駆動部41の駆動により、自らの中心軸を回転軸として回転する。軸部47には、±X方向に離れた2か所に、第1リンク板43の一端が固定されており、第1リンク板43のそれぞれの他端には、第2リンク板44の一端が回転可能に取り付けられている。また、第2リンク板44の他端は、上流側プーリー26及び下流側プーリー27を回転可能に支持する基体48に取り付けられている。
【0039】
ベルト搬送部20が第1姿勢であるときに、姿勢切替駆動部41の駆動によって、軸部47が-X側から見て反時計回りに回転すると、リンク部材42は、第1リンク板43と第2リンク板44とが互いに近づくように折り畳まれ、ベルト搬送部20は、+R方向に回動して第2姿勢となる。そして、ベルト搬送部20が第2姿勢であるときに、姿勢切替駆動部41の駆動によって、軸部47が-X側から見てさらに反時計回りに回転すると、ベルト搬送部20は、+R方向に回動して第3姿勢となる。
【0040】
また、ベルト搬送部20が第3姿勢であるときに、姿勢切替駆動部41の駆動によって、軸部47が逆回転、即ち-X側から見て時計回りに回転すると、リンク部材42は、第1リンク板43と第2リンク板44とが遠ざかるように開き、ベルト搬送部20は、-R方向に回動して第2姿勢となる。そして、ベルト搬送部20が第2姿勢であるときに、姿勢切替駆動部41の駆動によって、軸部47が-X側から見てさらに時計回りに回転すると、ベルト搬送部20は、-R方向に回動して第1姿勢となる。
【0041】
図2に戻って、プリンター1は、ラインヘッド10のメンテナンスを行うメンテナンス部50を備えている。メンテナンス部50は、ノズルの目詰まりや、ノズル面への異物の付着等に起因して生じる吐出不良の予防又は解消のために、フラッシング、キャッピング、及び吸引クリーニング等のメンテナンス動作を行う。メンテナンス部50は、キャップ51と、廃液流路52と、廃液流路52の途中に設けられた吸引ポンプ53と、移動機構54と、廃液収容体55とを備える。
【0042】
移動機構54は、キャップ51を、ラインヘッド10のノズル面に接触可能なキャッピング位置と、キャッピング位置から退避した退避位置との間で移動させる。なお、キャップ51が退避位置からキャッピング位置に移動する際には、ベルト搬送部20は、第1姿勢から第3姿勢に切り替えられる。
【0043】
キャッピングとは、キャップ51をキャッピング位置に移動させて、キャップ51でラインヘッド10のノズル面を覆う動作である。インクの吐出を行わないときには、キャッピングを行うことにより、ノズルの乾燥が抑制されるため、吐出不良の発生を予防することができる。
【0044】
フラッシングとは、画像の形成とは無関係にノズルからインクを強制的に吐出させることにより、吐出不良の原因となる異物、気泡、又は変質したインクを排出する動作である。フラッシングにより廃液として排出されたインクは、キャップ51によって受容されてもよいし、別途設けられた図示しないフラッシングボックスによって受容されてもよい。
【0045】
吸引クリーニングとは、キャップ51をキャッピング位置に配置した状態で吸引ポンプ53を駆動することにより、ノズルに負圧を作用させ、その負圧によってノズルからインクを排出させる動作である。吸引クリーニングによってノズルから排出されたインクは、廃液として、廃液流路52を通じて廃液収容体55に収容される。また、フラッシングによって排出された廃液がキャップ51で受容された場合には、キャップ51をラインヘッド10のノズル面から離した状態で吸引ポンプ53を駆動することにより、キャップ51で受容された廃液を廃液収容体55に収容することができる。なお、プリンター1の使用開始時には、吸引クリーニングを実行することにより、ノズル内にインクが充填する。
【0046】
図8は、プリンター1の制御系の構成を示すブロック図である。
図8に示すように、プリンター1は、制御部60を有している。制御部60は、CPU(Central Processing Unit)等の図示しないプロセッサーと、メモリー等の図示しない記憶装置と、各種インターフェイスとを含み、プリンター1の各種動作を制御する。制御部60は、記憶装置に記憶されている制御プログラムに従って、ラインヘッド10と、搬送駆動部61と、姿勢切替駆動部41と、メンテナンス部50と、操作パネル6とを制御する。そして、制御部60は、姿勢切替駆動部41及び搬送駆動部61を介して、上述した搬送部を構成するベルト搬送部20、上流側搬送ローラー対21、及び下流側搬送ローラー対22を制御することができる。具体的には、制御部60は、姿勢切替駆動部41により、ベルト搬送部20の姿勢切替部40を制御し、搬送駆動部61に含まれるベルト駆動部28により、ベルト搬送部20の搬送ベルト25を制御する。また、制御部60は、搬送駆動部61に含まれる上流側ローラー駆動部62により、上流側搬送ローラー対21の駆動ローラーを制御し、搬送駆動部61に含まれる下流側ローラー駆動部63により、下流側搬送ローラー対22の駆動ローラーを制御する。また、制御部60には、上述した上流側用紙センサー23及び下流側用紙センサー24を含む複数の用紙センサーの検出結果が入力される。
【0047】
本実施形態の制御部60は、複数の用紙センサーの検出結果等に基づいて、用紙詰まり等の搬送異常を検出することができる。搬送異常は、ストレート経路13に限らず、給送経路12、フェイスダウン排出経路14、スイッチバック経路15、或いは反転経路16でも生じ得る。また、複数枚の用紙Pに連続して記録を行う場合には、複数枚の用紙Pが同時に搬送経路11内に存在することがあり、いずれの用紙Pにも搬送異常が生じ得る。制御部60は、上流側用紙センサー23及び下流側用紙センサー24を含む複数の用紙センサーの検出結果に基づいて、搬送異常となった用紙Pや搬送異常が生じた場所を特定することができる。
【0048】
いずれの場所で搬送異常が生じた場合でも、制御部60は、搬送経路11の全体で搬送を停止するとともに、ラインヘッド10による記録を停止する。つまり、ベルト搬送部20で搬送されている用紙P以外の用紙Pに搬送異常が生じた場合であっても、ベルト搬送部20上の用紙Pへの記録が途中で停止してしまう。このため、いずれの場所で搬送異常が生じた場合でも、ユーザーは、ベルト搬送部20上の用紙Pを除去する必要がある。なお、搬送異常が生じた場所よりも搬送方向の下流側に位置する用紙Pについては、搬送を継続してもよい。しかし、その場合でも、ベルト搬送部20で搬送されている用紙Pよりも下流の用紙Pに搬送異常が生じた場合には、ベルト搬送部20上の用紙Pへの記録が途中で停止してしまう。
【0049】
また、搬送異常が生じた場合には、ベルト搬送部20上の用紙Pの除去を容易にするために、ベルト搬送部20の姿勢を第2姿勢、又は第3姿勢にして、ラインヘッド10の下方に大きな空間を形成することが望ましい。ただし、用紙Pの端部が、その空間に垂れ下がってしまうと、ラインヘッド10から用紙Pに吐出された直後のインクが流れ落ちて、プリンター1の内部が汚損してしまう恐れがある。特に、用紙Pの搬送が停止した状態でインクが吐出された場合には、用紙Pの一部分に多量のインクが滞留することになるため、インクが流れ落ちる可能性が高まる。また、流れ落ちたインクがプリンター1内の各種部材に付着することにより、プリンター1が故障してしまう恐れもある。
【0050】
このため、本実施形態の制御部60は、用紙Pの少なくとも一部がベルト搬送部20に支持された状態で、搬送異常等により搬送が停止した場合には、搬送駆動部61及び姿勢切替駆動部41を制御して、用紙Pの端部が垂れ下がらないように、用紙Pを所定の姿勢で保持する。具体的には、制御部60は、用紙Pが鉛直方向下方に凸となる湾曲を形成するように、ベルト搬送部20、上流側搬送ローラー対21、及び下流側搬送ローラー対22を制御する。
【0051】
図9は、搬送異常が生じた場合のプリンター1の動作を示すフローチャートである。また、図10図17は、ベルト搬送部20及び用紙Pの状態を示す側面図である。
プリンター1の制御部60は、上流側用紙センサー23及び下流側用紙センサー24を含む複数の用紙センサーの検出結果に基づいて、用紙詰まり等の搬送異常の発生を検知すると、図9に示すフローに従って動作する。具体的には、制御部60は、搬送経路11上にある用紙Pのうち、1枚の用紙Pの少なくとも一部がベルト搬送部20に支持された状態で、搬送経路11上のいずれかの用紙Pに搬送異常が発生した場合に、図9に示すフローに従って動作する。なお、これ以降、ストレート経路13における用紙Pの本来の搬送方向である+Y方向を順方向とも呼び、その反対の方向である-Y方向を逆方向とも呼ぶ。また、ベルト搬送部20が搬送ベルト25を+C方向に周回移動させることは、ベルト搬送部20が用紙Pを順方向に搬送することと同義であり、ベルト搬送部20が搬送ベルト25を-C方向に周回移動させることは、ベルト搬送部20が用紙Pを逆方向に搬送することと同義である。
【0052】
図9に示すように、まず、ステップS110では、搬送異常が発生したことを受けて、制御部60は、搬送駆動部61による用紙Pの搬送と、ラインヘッド10による用紙Pへの記録を停止させる。これにより、上流側ローラー駆動部62による上流側搬送ローラー対21の駆動、下流側ローラー駆動部63による下流側搬送ローラー対22の駆動、及びベルト駆動部28によるベルト搬送部20の駆動が停止する。
【0053】
ステップS120では、制御部60は、用紙Pの搬送が停止した状態において、下流側用紙センサー24が用紙Pを検出しているか否かを判断する。例えば、図10及び図11に示すように、下流側用紙センサー24が用紙Pを検出している場合には、用紙Pは、下流側搬送ローラー対22によってニップされていることが想定される。なお、図10は、上流側搬送ローラー対21及び下流側搬送ローラー対22の双方がベルト搬送部20上の用紙Pをニップしている状態を示している。また、図11は、下流側搬送ローラー対22が用紙Pをニップし、上流側搬送ローラー対21が用紙Pをニップしていない状態を示している。制御部60は、下流側用紙センサー24が用紙Pを検出している場合(ステップS120:YES)にはステップS130に処理を移し、用紙Pを検出していない場合(ステップS120:NO)にはステップS140に処理を移す。
【0054】
下流側用紙センサー24が用紙Pを検出していてステップS130に処理が移行した場合には、制御部60は、搬送駆動部61を制御して、ベルト搬送部20、上流側搬送ローラー対21、及び下流側搬送ローラー対22により、ベルト搬送部20上の用紙Pを、逆方向である-Y方向に搬送させる。そして、制御部60は、用紙Pの+Y側の端部が下流側用紙センサー24の直下を通り過ぎる直前、即ち下流側用紙センサー24が用紙Pを検出できなくなる直前に逆方向への搬送を停止する。つまり、制御部60は、下流側用紙センサー24が用紙Pを検出できる範囲で、用紙Pを逆方向に搬送させる。これにより、用紙Pは、図12に示すように、+Y側の端部の近傍が下流側搬送ローラー対22によってニップされた状態となる。
【0055】
なお、制御部60は、用紙Pの給送を開始したタイミングや、用紙Pが上流側用紙センサー23を通過したタイミング等に基づいて、用紙Pの位置を把握可能である。このため、制御部60は、下流側用紙センサー24の検出結果を利用することなく、下流側用紙センサー24が用紙Pを検出できなくなる直前の位置で逆方向への搬送を停止させることができる。ただし、制御部60は、下流側用紙センサー24の検出結果に基づいて逆方向への搬送を停止させてもよい。この場合、逆方向に搬送される用紙Pの+Y側の端部が、下流側用紙センサー24の直下を通り過ぎて、下流側用紙センサー24が用紙Pを検出できなくなった後、下流側用紙センサー24で検出されるように、用紙Pを順方向に所定量だけ搬送させる必要がある。
【0056】
一方、搬送異常が生じて用紙Pの搬送が停止した状態において、下流側用紙センサー24が用紙Pを検出しておらず、ステップS140に処理が移行した場合には、制御部60は、搬送異常が生じた位置がストレート経路13であるか否かを判断する。下流側用紙センサー24が用紙Pを検出していない状況としては、例えば、図13に示すように、用紙Pの+Y側の端部が下流側搬送ローラー対22に達していない場合の他に、図14に示すように、下流側搬送ローラー対22で用紙詰まりが生じている場合等が考えられる。このため、制御部60は、用紙Pの+Y側の端部が下流側用紙センサー24を通過しているべきタイミングであるにも拘らず、下流側用紙センサー24が用紙Pを検出していない場合には、ストレート経路13で用紙詰まり等の搬送異常が生じていると判断する。制御部60は、ストレート経路13以外で搬送異常が生じた場合(ステップS140:NO)にはステップS150に処理を移し、ストレート経路13で搬送異常が生じた場合(ステップS140:YES)にはステップS200に処理を移す。
【0057】
搬送異常が生じた位置がストレート経路13以外であってステップS150に処理が移行した場合には、制御部60は、搬送駆動部61を制御して、用紙Pを順方向である+Y方向に搬送させる。そして、制御部60は、用紙Pの+Y側の端部が下流側用紙センサー24の直下を通り過ぎた直後、即ち下流側用紙センサー24が用紙Pを検出可能となった直後に順方向への搬送を停止する。つまり、制御部60は、下流側用紙センサー24が用紙Pを検出できるまで、用紙Pを順方向に搬送させる。これにより、用紙Pは、上述した図12に示す状態と同じ状態、即ち+Y側の端部の近傍が下流側搬送ローラー対22によってニップされた状態となる。この後、制御部60は、ステップS160に処理を移す。
【0058】
なお、図14に示すように、ストレート経路13で搬送異常が生じている状況で、順方向に用紙Pを搬送してしまうと、用紙Pがラインヘッド10のノズル面に接触してしまう恐れがある。このため、ストレート経路13で搬送異常が生じた場合(ステップS140:YES)には、ステップS150の動作、及び後述するステップS160~S190の動作を行うことなくステップS200に処理を移す。
【0059】
ステップS130又はステップS150を経て、用紙Pの+Y側の端部の近傍が下流側搬送ローラー対22によってニップされた状態となった後、ステップS160では、制御部60は、ベルト搬送部20の姿勢を第1姿勢から第2姿勢にするために、姿勢切替駆動部41を制御して、ベルト搬送部20の+R方向への回動を開始させる。
【0060】
また、ステップS170では、制御部60は、ベルト駆動部28を制御して、ベルト搬送部20の搬送ベルト25を+C方向に周回移動させ、用紙Pを順方向に搬送させる。
【0061】
また、ステップS180では、制御部60は、上流側ローラー駆動部62を制御して、上流側搬送ローラー対21により、用紙Pを順方向に搬送させる。ベルト搬送部20及び上流側搬送ローラー対21が用紙Pを順方向に搬送させる間、下流側搬送ローラー対22の回転は停止したままである。
【0062】
ここで、ステップS160,S170,S180の厳密な開始順序は問わないが、これらは、ほぼ同時に並行して実施されることが好ましい。つまり、ベルト搬送部20が+R方向へ回動しつつ、上流側搬送ローラー対21及びベルト搬送部20が用紙Pを順方向に搬送することが好ましい。また、これらのステップは、ステップS130又はステップS150と同時に実施されてもよい。
【0063】
これは、ベルト搬送部20の+R方向への回動よりも、上流側搬送ローラー対21及びベルト搬送部20による搬送が大きく先行してしまうと、用紙Pが波打ってラインヘッド10のノズル面に接触してしまう恐れがあるためである。また、上流側搬送ローラー対21及びベルト搬送部20による搬送よりも、ベルト搬送部20の+R方向への回動が大きく先行してしまうと、用紙Pの吸着が外れてしまい、用紙Pを適切に搬送できなくなる恐れがあるためである。
【0064】
図15に示すように、ベルト搬送部20を+R方向へ回動しつつ、ベルト搬送部20及び上流側搬送ローラー対21で用紙Pを順方向に搬送すると、用紙Pは、徐々に鉛直方向下方に凸となる湾曲を形成し始める。そして、図16に示すように、ベルト搬送部20の姿勢が第2姿勢となり、さらに、用紙Pの-Y側の端部が上流側搬送ローラー対21を通過してベルト搬送部20上に達すると、用紙Pは、大きく湾曲した形状となる。
【0065】
ステップS190では、制御部60は、姿勢切替駆動部41及び搬送駆動部61を制御して、ベルト搬送部20の回動と、上流側搬送ローラー対21及びベルト搬送部20による搬送とを停止する。具体的には、制御部60は、ベルト搬送部20の姿勢が第2姿勢となった場合に、姿勢切替駆動部41を制御して、ベルト搬送部20の回動を停止する。また、制御部60は、用紙Pの-Y側の端部が上流側搬送ローラー対21を通過してベルト搬送部20上に達した場合に、搬送駆動部61を制御して、上流側搬送ローラー対21及びベルト搬送部20による搬送を停止する。このとき、用紙Pは、搬送方向における下流側の端部が下流側搬送ローラー対22に支持され、搬送方向における上流側の端部が第2姿勢のベルト搬送部20に支持されることにより、鉛直方向下方に凸となる湾曲を形成する。このように、本実施形態において、制御部60は、搬送異常等によって用紙Pの搬送が停止した場合に、下流側用紙センサー24が用紙Pを検出した状態で用紙Pが湾曲を形成するように、ベルト搬送部20、上流側搬送ローラー対21、及び下流側搬送ローラー対22を制御する。
【0066】
ステップS140又はステップS190を経てステップS200に処理が移行すると、制御部60は、操作パネル6にメッセージを表示することにより、搬送異常が発生したことと、ストレート経路13に残留する用紙Pを除去するための準備が整ったこととをユーザーに報知し、処理を終了する。ユーザーは、このメッセージが表示されると、装置本体2の前面カバー8を開放して、用紙Pを除去する。このとき、制御部60は、ストレート経路13で搬送異常が生じた場合を除き、下流側用紙センサー24の検出結果に基づいて、用紙Pの除去が済んだか否かを検知することができる。
【0067】
なお、搬送異常が発生したことと、用紙Pを除去するための準備が整ったこととを異なるタイミングで報知してもよい。また、制御部60の制御によって前面カバー8の開閉を制限するロック機構をプリンター1に設けてもよい。この場合、制御部60は、用紙Pが湾曲を形成するまでは前面カバー8を開放不能にするとともに、用紙Pが湾曲を形成した後にロックを解除して、前面カバー8を開放可能としてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、ストレート経路13で搬送異常が生じた場合(ステップS140:YES)には、下流側搬送ローラー対22が用紙Pを支持することができず、用紙Pに湾曲を形成することができないため、ステップS160~S190の動作を省略している。しかしながら、図14に示すように、ストレート経路13で用紙詰まり等の搬送異常が生じた場合には、用紙Pの下流側の部位に幅方向に沿って1つ以上の折り目が形成されていることが想定される。この場合、用紙Pをある程度傾けても、用紙Pに吐出された直後のインクは、用紙Pの折れ曲がった部位にせき止められるため、下方に流れ落ちにくい。このため、図17に示すように、ストレート経路13で搬送異常が生じた場合には、ベルト搬送部20を+R方向に所定量だけ回動させるようにしてもよい。これにより、ベルト搬送部20を回動させない場合に比べて、ラインヘッド10の下方の空間が広がるため、用紙Pの除去が容易になる。この場合のベルト搬送部20の姿勢は、第2姿勢と同じであってもよいし、第2姿勢よりも傾斜が緩やかな姿勢であってもよい。
【0069】
以上説明したように、本実施形態のプリンター1によれば、以下の効果を得ることができる。
【0070】
本実施形態のプリンター1において、制御部60は、用紙Pの少なくとも一部がベルト搬送部20に支持された状態で搬送が停止した場合に、ベルト搬送部20を第2姿勢にすることにより、ベルト搬送部20をラインヘッド10から離間させるとともに、用紙Pが鉛直方向下方に凸となる湾曲を形成するように、ベルト搬送部20、上流側搬送ローラー対21、及び下流側搬送ローラー対22を制御する。
【0071】
この構成によれば、用紙Pが下方に凸となる湾曲を形成するため、用紙Pに吐出されたインクを湾曲部に留めることが可能となる。つまり、用紙Pに吐出されたインクが用紙Pから流れ落ちて、プリンター1の内部を汚損してしまうことを抑制できる。
【0072】
また、本実施形態のプリンター1において、ベルト搬送部20は、ベルト搬送部20の搬送方向における中央よりも上流に位置する駆動軸26aを回動軸にして回動することによって第1姿勢から第2姿勢へと切り替わる。つまり、ベルト搬送部20の搬送面は、搬送方向における下流側が鉛直方向下方に移動することによって傾斜する。そして、用紙Pは、下流側搬送ローラー対22及び第2姿勢のベルト搬送部20によって支持されることにより、湾曲を形成する。
【0073】
この構成によれば、ベルト搬送部20の回動軸が上流側にある場合に、傾斜するベルト搬送部20と下流側搬送ローラー対22によって用紙Pを支持することで、容易に下に凸の湾曲を形成できる。また、この状態では、インクが吐出されていない可能性が高い用紙Pの上流側端部が上流側搬送ローラー対21を過ぎてベルト搬送部20上に位置しているため、用紙Pを除去する際には、この端部を持つことにより、手が汚れてしまうことを抑制できる。
【0074】
また、本実施形態のプリンター1は、下流側搬送ローラー対22よりも搬送方向の下流において用紙Pを検出する下流側用紙センサー24をさらに備え、制御部60は、搬送が停止した場合に、下流側用紙センサー24が用紙Pを検出した状態で用紙Pが湾曲を形成するように、ベルト搬送部20、上流側搬送ローラー対21、及び下流側搬送ローラー対22を制御する。
【0075】
この構成によれば、下流側用紙センサー24が用紙Pを検出した状態で湾曲を形成することで、下流側搬送ローラー対22とベルト搬送部20とで用紙Pを支持した状態とすることができる。また、下流側用紙センサー24が用紙Pを検出した状態にしておくことで、用紙Pが除去されたことを検知することができる。
【0076】
また、本実施形態のプリンター1において、制御部60は、搬送が停止したときに下流側用紙センサー24が用紙Pを検出していない場合には、下流側用紙センサー24が用紙Pを検出できるまで、ベルト搬送部20、上流側搬送ローラー対21、及び下流側搬送ローラー対22に用紙Pを搬送方向へ搬送させる。
【0077】
この構成によれば、下流側用紙センサー24が用紙Pを検出していない場合に、下流側用紙センサー24が用紙Pを検出できるまで用紙Pを搬送方向に搬送することで、下流側搬送ローラー対22で用紙Pを支持した状態とすることができる。
【0078】
また、本実施形態のプリンター1において、制御部60は、搬送が停止したときに下流側用紙センサー24が用紙Pを検出している場合には、下流側用紙センサー24が用紙Pを検出できる範囲で、ベルト搬送部20、上流側搬送ローラー対21、及び下流側搬送ローラー対22に用紙Pを搬送方向と反対の方向へ搬送させる。
【0079】
この構成によれば、下流側搬送ローラー対22が用紙Pの下流側端部を支持することになるため、短い用紙Pであっても湾曲を形成することができる。
【0080】
また、本実施形態のプリンター1において、ベルト搬送部20は、用紙Pを吸着して搬送する搬送ベルト25を備え、制御部60は、湾曲を形成する際に搬送ベルト25を制御する。
【0081】
この構成によれば、搬送ベルト25を制御することで、より容易に湾曲を形成することができる。
【0082】
また、本実施形態のプリンター1において、制御部60は、用紙Pが湾曲を形成した後に、異常の発生を報知する。
【0083】
この構成によれば、用紙Pが湾曲を形成した後に報知を行うことで、ユーザーは、用紙Pの除去が可能になったことを知ることができる。
【0084】
また、本実施形態のプリンター1において、ベルト搬送部20は、第2姿勢よりもラインヘッド10から離間した第3姿勢に切り替え可能である。
【0085】
この構成によれば、ベルト搬送部20をラインヘッド10から大きく離間させることで、ラインヘッド10のメンテナンス等を行う際に、ベルト搬送部20が邪魔になることを抑制できる。
【0086】
また、本実施形態のプリンター1の制御方法は、用紙Pの少なくとも一部がベルト搬送部20に支持された状態で搬送が停止したときに下流側用紙センサー24が用紙Pを検出していない場合には、下流側用紙センサー24が用紙Pを検出できるまで、用紙Pを搬送方向へ搬送させる。一方、用紙Pの少なくとも一部がベルト搬送部20に支持された状態で搬送が停止したときに下流側用紙センサー24が用紙Pを検出している場合には、下流側用紙センサー24が用紙Pを検出できる範囲で、用紙Pを搬送方向と反対の方向へ搬送させる。そして、ベルト搬送部20を、ベルト搬送部20の搬送方向における中央よりも搬送方向における上流に位置する回動軸を中心に回動させることによってラインヘッド10から離間させ、用紙Pが、下流側搬送ローラー対22及びベルト搬送部20によって支持されることによって鉛直方向下方に凸となる湾曲を形成するように、上流側搬送ローラー対21及び下流側搬送ローラー対22を制御する。
【0087】
この制御方法によれば、用紙Pが下方に凸となる湾曲を形成するため、用紙Pに吐出されたインクを湾曲部に留めることが可能となる。つまり、用紙Pに吐出されたインクが用紙Pから流れ落ちて、プリンター1の内部を汚損してしまうことを抑制できる。
【0088】
2.第2実施形態
以下、第2実施形態のプリンター1について、図面を参照して説明する。
図18は、第2実施形態に係るベルト搬送部20の概略構成を示す側面図である。
図18に示すように、本実施形態のベルト搬送部20は、下流側プーリー27がベルト駆動部28により回転駆動される点で第1実施形態と異なっている。さらに、本実施形態のベルト搬送部20は、第1実施形態と異なり、下流側プーリー27の駆動軸27aを回動軸として、+S方向と、その反対方向である-S方向とに回動可能に構成されている。つまり、本実施形態の回動軸は、ベルト搬送部20の搬送方向における中央よりも搬送方向における下流に位置している。そして、ベルト搬送部20は、第1実施形態と同様、ラインヘッド10の下方において搬送ベルト25の搬送面が略水平となる第1姿勢(図20参照)と、搬送ベルト25の搬送面が斜めに傾斜する第2姿勢(図26参照)と、搬送ベルト25の搬送面が鉛直方向に略平行となる第3姿勢(図示省略)とに姿勢を切り替えることができる。第1姿勢は、ラインヘッド10によって記録を行うときに設定される姿勢であり、用紙Pを+Y方向に搬送可能な姿勢である。第2姿勢は、搬送異常等が生じた際に、記録途中の用紙Pを取り除くために設定される姿勢である。第2姿勢において、搬送ベルト25の搬送面は、搬送方向の下流側に比べて上流側が下方に位置するように傾く。第3姿勢は、メンテナンス部50によりラインヘッド10のメンテナンス等を行う際に設定される姿勢である。
【0089】
第1実施形態と同様、ベルト搬送部20が姿勢を変えることは、ベルト搬送部20が位置を変えることと言い換えることができる。つまり、ベルト搬送部20は、第1姿勢に対応する第1位置と、第2姿勢に対応する第2位置と、第3姿勢に対応する第3位置とに変位可能である。ここで、第1位置は、ラインヘッド10のノズル面に対向する位置であり、ベルト搬送部20が水平方向に沿う位置である。また、第2位置は、第1位置よりもラインヘッド10から離間した位置であり、ベルト搬送部20の搬送方向における上流側が鉛直方向下方に移動することによってベルト搬送部20が傾斜する位置である。また、第3位置は、第2位置よりもラインヘッド10から離間した位置であり、ベルト搬送部20が鉛直方向に沿う位置である。
【0090】
図19は、第2実施形態において、搬送異常が生じた場合のプリンター1の動作を示すフローチャートである。また、図20図27は、ベルト搬送部20及び用紙Pの状態を示す側面図である。
プリンター1の制御部60は、上流側用紙センサー23及び下流側用紙センサー24を含む複数の用紙センサーの検出結果に基づいて、用紙詰まり等の搬送異常の発生を検知すると、図19に示すフローに従って動作する。
【0091】
図19に示すように、まず、ステップS310では、搬送異常が発生したことを受けて、制御部60は、搬送駆動部61による用紙Pの搬送と、ラインヘッド10による用紙Pへの記録を停止させる。これにより、上流側ローラー駆動部62による上流側搬送ローラー対21の駆動、下流側ローラー駆動部63による下流側搬送ローラー対22の駆動、及びベルト駆動部28によるベルト搬送部20の駆動が停止する。
【0092】
ステップS320では、制御部60は、用紙Pの搬送が停止した状態において、上流側用紙センサー23が用紙Pを検出しているか否かを判断する。例えば、図20及び図21に示すように、上流側用紙センサー23が用紙Pを検出している場合には、用紙Pは、上流側搬送ローラー対21によってニップされていることが想定される。なお、図20は、上流側搬送ローラー対21及び下流側搬送ローラー対22の双方がベルト搬送部20上の用紙Pをニップしている状態を示している。また、図21は、上流側搬送ローラー対21が用紙Pをニップし、下流側搬送ローラー対22が用紙Pをニップしていない状態を示している。制御部60は、上流側用紙センサー23が用紙Pを検出している場合(ステップS320:YES)にはステップS340に処理を移す。一方、図22に示すように、上流側用紙センサー23が用紙Pを検出していない場合(ステップS320:NO)には、制御部60は、ステップS330に処理を移す。
【0093】
上流側用紙センサー23が用紙Pを検出しておらず、ステップS330に処理が移行した場合には、制御部60は、搬送駆動部61を制御して、用紙Pを逆方向である-Y方向に搬送させる。そして、制御部60は、用紙Pの-Y側の端部が上流側用紙センサー23の直下を通り過ぎた直後、即ち上流側用紙センサー23が用紙Pを検出可能となった直後に逆方向への搬送を停止する。つまり、制御部60は、上流側用紙センサー23が用紙Pを検出できるまで、用紙Pを逆方向に搬送させる。これにより、用紙Pは、図23に示すように、-Y側の端部の近傍が上流側搬送ローラー対21によってニップされた状態となる。この後、制御部60は、ステップS360に処理を移す。
【0094】
一方、搬送異常が生じて用紙Pの搬送が停止した状態において、上流側用紙センサー23が用紙Pを検出していてステップS340に処理が移行した場合には、制御部60は、搬送異常が生じた位置がストレート経路13であるか否かを判断する。上流側用紙センサー23が用紙Pを検出している状況としては、図20及び図21に示す場合の他に、例えば、図24に示すように、下流側搬送ローラー対22で用紙詰まりが生じている場合等が考えられる。このため、制御部60は、用紙Pの+Y側の端部が下流側用紙センサー24を通過しているべきタイミングであるにも拘らず、下流側用紙センサー24が用紙Pを検出していない場合には、ストレート経路13で用紙詰まり等の搬送異常が生じていると判断する。制御部60は、ストレート経路13以外で搬送異常が生じた場合(ステップS340:NO)にはステップS350に処理を移し、ストレート経路13で搬送異常が生じた場合(ステップS340:YES)にはステップS410に処理を移す。
【0095】
搬送異常が生じた位置がストレート経路13以外であってステップS350に処理が移行した場合には、制御部60は、搬送駆動部61を制御して、ベルト搬送部20、上流側搬送ローラー対21、及び下流側搬送ローラー対22により、ベルト搬送部20上の用紙Pを、順方向である+Y方向に搬送させる。そして、制御部60は、用紙Pの-Y側の端部が上流側用紙センサー23の直下を通り過ぎる直前、即ち上流側用紙センサー23が用紙Pを検出できなくなる直前に順方向への搬送を停止する。つまり、制御部60は、上流側用紙センサー23が用紙Pを検出できる範囲で、用紙Pを順方向に搬送させる。これにより、用紙Pは、上述した図23に示す状態と同じ状態、即ち-Y側の端部の近傍が上流側搬送ローラー対21によってニップされた状態となる。
【0096】
ステップS330又はステップS350を経て、用紙Pの-Y側の端部の近傍が上流側搬送ローラー対21によってニップされた状態となった後、ステップS360では、制御部60は、ベルト搬送部20の姿勢を第1姿勢から第2姿勢にするために、姿勢切替駆動部41を制御して、ベルト搬送部20の+S方向への回動を開始させる。
【0097】
また、ステップS370では、制御部60は、ベルト駆動部28を制御して、ベルト搬送部20の搬送ベルト25を-C方向に周回移動させ、用紙Pを逆方向に搬送させる。
【0098】
また、ステップS380では、制御部60は、下流側ローラー駆動部63を制御して、下流側搬送ローラー対22により、用紙Pを逆方向に搬送させる。ベルト搬送部20及び下流側搬送ローラー対22が用紙Pを逆方向に搬送させる間、上流側搬送ローラー対21の回転は停止したままでである。
【0099】
ここで、ステップS360,S370,S380の厳密な開始順序は問わないが、これらは、ほぼ同時に並行して実施されることが好ましい。つまり、ベルト搬送部20が+S方向へ回動しつつ、下流側搬送ローラー対22及びベルト搬送部20が用紙Pを逆方向に搬送することが好ましい。
【0100】
図25に示すように、ベルト搬送部20を+S方向へ回動しつつ、ベルト搬送部20及び下流側搬送ローラー対22で用紙Pを逆方向に搬送すると、用紙Pは、徐々に鉛直方向下方に凸となる湾曲を形成し始める。そして、図26に示すように、ベルト搬送部20の姿勢が第2姿勢となり、さらに、用紙Pの+Y側の端部が下流側搬送ローラー対22を通過してベルト搬送部20上に達すると、用紙Pは、大きく湾曲した形状となる。
【0101】
ステップS390では、制御部60は、姿勢切替駆動部41及び搬送駆動部61を制御して、ベルト搬送部20の回動と、下流側搬送ローラー対22及びベルト搬送部20による搬送とを停止する。具体的には、制御部60は、ベルト搬送部20の姿勢が第2姿勢となった場合に、姿勢切替駆動部41を制御して、ベルト搬送部20の回動を停止する。また、制御部60は、用紙Pの+Y側の端部が下流側搬送ローラー対22を通過してベルト搬送部20上に達した場合に、搬送駆動部61を制御して、下流側搬送ローラー対22及びベルト搬送部20による搬送を停止する。このとき、用紙Pは、搬送方向における上流側の端部が上流側搬送ローラー対21に支持され、搬送方向における下流側の端部が第2姿勢のベルト搬送部20に支持されることにより、鉛直方向下方に凸となる湾曲を形成する。このように、本実施形態において、制御部60は、搬送異常等によって用紙Pの搬送が停止した場合に、上流側用紙センサー23が用紙Pを検出した状態で用紙Pが湾曲を形成するように、ベルト搬送部20、上流側搬送ローラー対21、及び下流側搬送ローラー対22を制御する。
【0102】
ステップS400では、制御部60は、搬送異常が発生したことと、ストレート経路13に残留する用紙Pを除去するための準備が整ったこととを報知するメッセージを操作パネル6に表示し、処理を終了する。
【0103】
また、ステップS340において、搬送異常が生じた位置がストレート経路13であってステップS410に処理が移行した場合には、制御部60は、ステップS360と同様、ベルト搬送部20の姿勢を第1姿勢から第2姿勢にするために、姿勢切替駆動部41を制御して、ベルト搬送部20の+S方向への回動を開始する。
【0104】
また、ステップS420では、制御部60は、ステップS370と同様、ベルト駆動部28を制御して、ベルト搬送部20の搬送ベルト25を-C方向に周回移動させ、用紙Pを逆方向に搬送させる。ただし、ステップS340において、搬送異常が生じた位置がストレート経路13であってステップS410に処理が移行した場合には、用紙Pの搬送方向における下流側の端部は、下流側搬送ローラー対22に支持されておらず、既にベルト搬送部20によって支持されている。このため、制御部60は、ステップS420におけるベルト搬送部20による逆方向への搬送を実行しないようにしてもよい。
【0105】
そして、ステップS430では、制御部60は、ステップS380とは異なり、上流側ローラー駆動部62を制御して、上流側搬送ローラー対21により、用紙Pを順方向に搬送させる。その後、制御部60は、ステップS390に処理を移す。
【0106】
ここで、ステップS410,S420,S430の厳密な開始順序は問わないが、これらは、ほぼ同時に並行して実施されることが好ましい。つまり、図27に示すように、ベルト搬送部20の+S方向への回動と、ベルト搬送部20による用紙Pの逆方向への搬送と、上流側搬送ローラー対21による用紙Pの順方向への搬送とが並行して実施されることが好ましい。この場合、ステップS390において、制御部60は、ベルト搬送部20の姿勢が第2姿勢となった場合に、姿勢切替駆動部41を制御して、ベルト搬送部20の回動を停止する。また、制御部60は、用紙Pの-Y側の端部が上流側用紙センサー23の直下を通り過ぎる直前、即ち上流側用紙センサー23が用紙Pを検出できなくなる直前に搬送駆動部61を制御して、上流側搬送ローラー対21による順方向への搬送を停止する。また、制御部60は、ベルト搬送部20が用紙Pの下流側を支持できる位置で、ベルト搬送部20による用紙Pの逆方向への搬送を停止する。これにより、用紙Pは、鉛直方向下方に凸となる湾曲を形成する。
【0107】
以上説明したように、本実施形態のプリンター1によれば、以下の効果を得ることができる。
【0108】
本実施形態のプリンター1において、ベルト搬送部20は、ベルト搬送部20の搬送方向における中央よりも下流に位置する駆動軸27aを回動軸にして回動することによって第1姿勢から第2姿勢へと切り替わる。つまり、ベルト搬送部20の搬送面は、搬送方向における上流側が鉛直方向下方に移動することによって傾斜する。そして、用紙Pは、上流側搬送ローラー対21及び第2姿勢のベルト搬送部20によって支持されることにより、湾曲を形成する。
【0109】
この構成によれば、ベルト搬送部20の回動軸が下流側にある場合に、傾斜するベルト搬送部20と上流側搬送ローラー対21によって用紙Pを支持することで、容易に下に凸の湾曲を形成できる。また、この構成によれば、ベルト搬送部20上の用紙Pに搬送異常が生じて、この用紙Pが下流側搬送ローラー対22を通過できない状況であっても、用紙Pに湾曲を形成させることができる。
【0110】
また、本実施形態のプリンター1は、上流側搬送ローラー対21よりも搬送方向の上流において用紙Pを検出する上流側用紙センサー23をさらに備え、制御部60は、搬送が停止した場合に、上流側用紙センサー23が用紙Pを検出した状態で用紙Pが湾曲を形成するように、ベルト搬送部20、上流側搬送ローラー対21、及び下流側搬送ローラー対22を制御する。
【0111】
この構成によれば、上流側用紙センサー23が用紙Pを検出した状態で湾曲を形成することで、上流側搬送ローラー対21とベルト搬送部20とで用紙Pを支持した状態とすることができる。また、上流側用紙センサー23が用紙Pを検出した状態にしておくことで、用紙Pが除去されたことを検知することができる。
【0112】
また、本実施形態のプリンター1において、制御部60は、搬送が停止したときに上流側用紙センサー23が用紙Pを検出していない場合には、上流側用紙センサー23が用紙Pを検出できるまで、ベルト搬送部20、上流側搬送ローラー対21、及び下流側搬送ローラー対22に用紙Pを搬送方向と反対の方向へ搬送させる。
【0113】
この構成によれば、上流側用紙センサー23が用紙Pを検出していない場合に、上流側用紙センサー23が用紙Pを検出できるまで用紙Pを搬送方向と反対の方向に搬送することで、上流側搬送ローラー対21で用紙Pを支持した状態とすることができる。
【0114】
また、本実施形態のプリンター1において、制御部60は、搬送が停止したときに上流側用紙センサー23が用紙Pを検出している場合には、上流側用紙センサー23が用紙Pを検出できる範囲で、ベルト搬送部20、上流側搬送ローラー対21、及び下流側搬送ローラー対22に用紙Pを搬送方向へ搬送させる。
【0115】
この構成によれば、上流側搬送ローラー対21が用紙Pの上流側端部を支持することになるため、短い用紙Pであっても湾曲を形成することができる。
【0116】
また、本実施形態のプリンター1の制御方法は、用紙Pの少なくとも一部がベルト搬送部20に支持された状態で搬送が停止したときに上流側用紙センサー23が用紙Pを検出していない場合には、上流側用紙センサー23が用紙Pを検出できるまで、用紙Pを搬送方向と反対の方向へ搬送させる。一方、用紙Pの少なくとも一部がベルト搬送部20に支持された状態で搬送が停止したときに上流側用紙センサー23が用紙Pを検出している場合には、上流側用紙センサー23が用紙Pを検出できる範囲で、用紙Pを搬送方向へ搬送させる。そして、ベルト搬送部20を、ベルト搬送部20の搬送方向における中央よりも搬送方向における下流に位置する回動軸を中心に回動させることによってラインヘッド10から離間させ、用紙Pが、上流側搬送ローラー対21及びベルト搬送部20によって支持されることによって鉛直方向下方に凸となる湾曲を形成するように、上流側搬送ローラー対21及び下流側搬送ローラー対22を制御する。
【0117】
この制御方法によれば、用紙Pが下方に凸となる湾曲を形成するため、用紙Pに吐出されたインクを湾曲部に留めることが可能となる。つまり、用紙Pに吐出されたインクが用紙Pから流れ落ちて、プリンター1の内部を汚損してしまうことを抑制できる。
【0118】
上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
【0119】
上記実施形態において、搬送異常等によって用紙Pの搬送が停止した場合であっても、ベルト搬送部20上の用紙Pに吐出されたインクの量が少量の場合等、吐出されたインクが流れ落ちる可能性が小さい場合には、用紙Pに湾曲を形成させなくてもよい。つまり、制御部60は、吐出されたインク量等に基づいて、用紙Pが湾曲を形成するように制御する第1モードと、用紙Pが湾曲を形成するように制御しない第2モードとを選択可能であってもよい。吐出されたインク量は、例えば、印刷データに基づいて推定可能である。また、ベルト搬送部20上の用紙Pに対してインクの吐出を開始してから、インクの吐出を停止するまでの時間に基づいて、インク量を推定してもよい。また、ベルト搬送部20上の用紙Pよりも搬送方向における上流に位置する用紙Pの搬送異常により搬送が停止した場合、ベルト搬送部20の姿勢を切り替えることなく、ベルト搬送部20上の用紙Pを下流に搬送して、排出部7等から排出させてもよい。このような構成にすることで、不必要に湾曲が形成されることが抑制されるため、用紙Pの除去を迅速に行うことが可能になる。
【0120】
上記実施形態では、ラインヘッド10に対向する位置で用紙Pを支持する支持部として、搬送ベルト25によって用紙Pを搬送可能なベルト搬送部20を用いているが、支持部は、用紙Pを搬送する機能を有さない部材であってもよい。
【0121】
上記第1実施形態では、ベルト搬送部20を回動させる際の回動軸を、上流側プーリー26の駆動軸26aとしているが、駆動軸26aとは異なる軸を回動軸としてもよい。ただし、第1実施形態における回動軸は、ベルト搬送部20の搬送方向における中央よりも搬送方向における上流に位置していることが望ましい。
【0122】
同様に、上記第2実施形態では、ベルト搬送部20を回動させる際の回動軸を、下流側プーリー27の駆動軸27aとしているが、駆動軸27aとは異なる軸を回動軸としてもよい。ただし、第2実施形態における回動軸は、ベルト搬送部20の搬送方向における中央よりも搬送方向における下流に位置していることが望ましい。
【0123】
上記第1実施形態において、プリンター1は、上流側用紙センサー23を備えていなくてもよい。また、上記第2実施形態において、プリンター1は、下流側用紙センサー24を備えていなくてもよい。
【0124】
上記第1実施形態では、制御部60は、ステップS110で用紙Pの搬送を停止した状態で、ステップS120及びステップS140を実行しているが、ステップS110で搬送を停止することなく、後続のステップS130又はステップS150を実行するまで搬送を継続させてもよい。ここで、ステップS150の動作は、本来の搬送方向である順方向への用紙Pの搬送であるため、ステップS150に処理が移行した場合には、制御部60は、順方向への搬送を継続させればよい。同様に、上記第2実施形態では、制御部60は、ステップS310で用紙Pの搬送を停止した状態で、ステップS320及びステップS340を実行しているが、ステップS310で搬送を停止することなく、後続のステップS330、ステップS350、又はステップS420を実行するまで搬送を継続させてもよい。ここで、ステップS350の動作は、本来の搬送方向である順方向への用紙Pの搬送であるため、ステップS350に処理が移行した場合には、制御部60は、順方向への搬送を継続させればよい。
【0125】
上記実施形態において、上流側用紙センサー23及び下流側用紙センサー24は、接触式のセンサー等、光学式以外のセンサーによって用紙Pを検出する構成であってもよい。また、上流側用紙センサー23及び下流側用紙センサー24が光学式のセンサーによって構成される場合、これらは、透過型のセンサーであってもよいし、反射型のセンサーであってもよい。
【0126】
上記実施形態では、ベルト搬送部20は、用紙Pを静電吸着により搬送ベルト25に吸着させているが、この態様に限定されない。例えば、空気の吸引により用紙Pを吸着させる態様であってもよい。
【0127】
上記実施形態では、制御部60は、上流側用紙センサー23及び下流側用紙センサー24等、複数の用紙センサーの検出結果に基づいて、用紙詰まり等の搬送異常を検出しているが、この構成に限定されない。例えば、制御部60は、搬送駆動部61における負荷の上昇等に基づいて搬送異常を検出してもよい。
【0128】
上記実施形態では、制御部60は、操作パネル6にメッセージを表示することにより、搬送異常が発生したことと、用紙Pを除去するための準備が整ったこととをユーザーに報知しているが、この態様に限定されない。例えば、発光ダイオードの点灯や点滅によって報知してもよいし、音声によって報知する態様であってもよい。
【0129】
上記実施形態において、ラインヘッド10が吐出する液体はインクに限定されない。例えば、ラインヘッド10は、各種ディスプレイの製造に用いられる電極材又は色材等の材料が、分散又は溶解した状態で含有されている液状体を吐出してもよい。つまり、液体吐出装置は、プリンター1に限定されず、各種ディスプレイ等を製造する製造装置であってもよい。
【0130】
上記実施形態では、媒体として用紙Pが用いられているが、媒体の材質については特に限定されず、布や織物等のテキスタイル、塩化ビニル樹脂等、湾曲を形成可能な種々の材質、言い換えれば、可撓性を有する種々の材質が採用され得る。
【符号の説明】
【0131】
1…プリンター、2…装置本体、3…スキャナーユニット、4…用紙収容カセット、5…媒体載置部、6…操作パネル、7…排出部、8…前面カバー、10…ラインヘッド、11…搬送経路、12…給送経路、13…ストレート経路、14…フェイスダウン排出経路、15…スイッチバック経路、16…反転経路、17…給送ローラー、18…分離ローラー対、18a…駆動ローラー、18b…従動ローラー、20…ベルト搬送部、21…上流側搬送ローラー対、22…下流側搬送ローラー対、23…上流側用紙センサー、24…下流側用紙センサー、25…搬送ベルト、25a…ベルト外面、26…上流側プーリー、26a…駆動軸、27…下流側プーリー、27a…駆動軸、28…ベルト駆動部、29…バックアッププレート、30…搬送ローラー対、31…帯電ローラー、32…除電ブラシ、40…姿勢切替部、41…姿勢切替駆動部、42…リンク部材、43…第1リンク板、44…第2リンク板、45…ウォーム、46…ウォームホイール、47…軸部、48…基体、50…メンテナンス部、51…キャップ、52…廃液流路、53…吸引ポンプ、54…移動機構、55…廃液収容体、60…制御部、61…搬送駆動部、62…上流側ローラー駆動部、63…下流側ローラー駆動部、P…用紙。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27