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  • 特開-緩衝器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161981
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】緩衝器
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/516 20060101AFI20241114BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20241114BHJP
   F16F 9/58 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
F16F9/516
F16F9/32 N
F16F9/58 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077094
(22)【出願日】2023-05-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-09-04
(71)【出願人】
【識別番号】514241869
【氏名又は名称】カヤバモーターサイクルサスペンション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】秋本 政信
(72)【発明者】
【氏名】陣内 孝彦
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA53
3J069CC01
3J069CC06
3J069CC15
3J069EE06
3J069EE27
3J069EE54
3J069EE65
(57)【要約】
【課題】減衰力調整を可能としつつもストロークエンド近傍で大きな減衰力の発生が可能な緩衝器を提供する。
【解決手段】本発明の緩衝器Dは、シリンダ1と、ピストンロッド2と、シリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン3と、ピストンロッド2に設けられて伸側減衰バルブ7と圧側減衰バルブ8とを迂回するバイパス路40と、バイパス路40に設けられた減衰力調整バルブ41と、シリンダ1内の圧側室R2内に収容されて液圧ロック室Lと補償室Rとを形成するサブシリンダ4と、液圧ロック室L内に挿入されるロックピース31と、ピストンロッド2の先端に設けられた閉塞体6とを備え、補償室Rは、気室Gと圧側室R2に連通される液室Aとを有し、バイパス路40は、ピストンロッド2の先端から開口する縦孔2dを含んで形成されており、閉塞体6は、ピストンロッド2の縦孔2dの開口を閉塞する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
前記シリンダ内に軸方向へ移動可能に挿入されるピストンロッドと、
前記ピストンロッドに連結されて前記シリンダ内に軸方向へ移動可能に挿入されるとともに前記シリンダ内を伸側室と圧側室とに区画するピストンと、
前記伸側室から前記圧側室へ向かう液体の流れに抵抗を与える伸側減衰バルブと、
前記圧側室から前記伸側室へ向かう液体の流れに抵抗を与える圧側減衰バルブと、
前記ピストンロッドに設けられて前記伸側減衰バルブと前記圧側減衰バルブを迂回して前記伸側室と前記圧側室とを連通するバイパス路と、
前記バイパス路に設けられた減衰力調整バルブと、
前記シリンダ内の前記圧側室内に収容されるサブシリンダと、
前記サブシリンダ内を液圧ロック室と前記液圧ロック室の反ピストン側の補償室とに区画する隔壁と、
孔を有して前記サブシリンダ内であって前記液圧ロック室内に軸方向へ移動可能に挿入されるロックピースと、
前記ピストンロッドの先端に設けられて前記ロックピースに当接すると前記孔を閉塞する閉塞体とを備え、
前記補償室は、気室と前記圧側室に連通される液室とを有し、
前記バイパス路は、前記ピストンロッドの先端から開口する縦孔と、前記ピストンロッドの側方から開口して前記圧側室を前記縦孔に連通する第1横孔と、前記ピストンロッドの側方から開口して前記伸側室を前記縦孔に連通する第2横孔と含んで形成されており、
前記閉塞体は、前記ピストンロッドの前記縦孔の開口を閉塞する
ことを特徴とする緩衝器。
【請求項2】
前記ピストンは、環状であって前記ピストンロッドの外周に装着されるとともに前記伸側室と前記圧側室とを連通する伸側通路と圧側通路とを有し、
前記伸側減衰バルブは、環状であって内周が前記ピストンロッドの外周に固定されて前記ピストンの圧側室側端に重ねられて前記伸側通路を開閉するリーフバルブであり、
前記圧側減衰バルブは、環状であって内周が前記ピストンロッドの外周に固定されて前記ピストンの伸側室側端に重ねられて前記伸側通路を開閉するリーフバルブであり、
前記ピストンロッドの外周に螺子結合されて前記ピストン、前記伸側リーフバルブおよび前記圧側リーフバルブを前記ピストンロッドの外周に固定するピストンナットを備え、
前記閉塞体は、前記ピストンナットから離間している
ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項3】
前記閉塞体は、前記縦孔内であって前記ピストンナットと径方向で対向する位置に圧入されている
ことを特徴とする請求項2に記載の緩衝器。
【請求項4】
前記ロックピースは、前記サブシリンダの内周に摺接する筒部と、前記筒部のピストンロッド側端から内周側へ傾斜しつつピストンロッド側へ向けて突出する環状の傾斜部と、前記傾斜部の内周から内側へ向けて延びて前記閉塞体に離着座する環状のシート部とを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項5】
前記閉塞体は、前記縦孔内に挿入される挿入軸と、挿入軸の先端に設けられて前記ピストンロッドの先端に当接する頭部とを備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項6】
前記サブシリンダは、有底筒状であって底部を前記隔壁として前記液圧ロック室を形成する有底筒状の第1筒と、前記第1筒の底部側端の外周に嵌合されるとともに前記第1筒を保持して前記補償室を形成する第2筒とを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
緩衝器は、たとえば、シリンダと、シリンダ内に移動可能に挿入されるピストンロッドと、ピストンロッドに連結されてシリンダ内に移動可能に挿入されるとともにシリンダ内を作動油が充填される伸側室と圧側室とに区画するピストンと、シリンダ内に移動可能に挿入されるとともにピストンに連結されるピストンロッドと、シリンダ内に軸方向へ移動可能に挿入されるとともにシリンダ内に圧側室に対向する気室を形成するフリーピストンと、ピストンに設けられた伸側通路を開閉する伸側リーフバルブと、ピストンに設けられた圧側通路を開閉する圧側リーフバルブとを備えて、鞍乗型車両の車体と後輪との間に介装されて伸縮時に車体の振動を抑制する減衰力を発生する(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
また、従来の緩衝器は、伸縮時に発生する減衰力の調整を可能とするために、圧側室に臨むピストンロッドの先端から開口して伸側室へ通じて伸側通路と圧側通とを迂回するバイパス路と、バイパス路に設けられて流路面制を調整可能なニードルバルブとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-215040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の緩衝器では、シリンダに対してピストンが圧側室を圧縮する方向へ移動する収縮作動を呈すると、ピストンに設けた圧側通路を開閉する圧側リーフバルブが開弁して圧側室から伸側室へ作動油が移動するので、圧側室の圧力と伸側室の圧力とに差が生じて収縮作動を抑制する圧側の減衰力を発生できる。
【0006】
このような従来の緩衝器では、圧側の減衰力を発生でき車体の振動を抑制できるが、道路の整備が進まない地域等で悪路の走行を余儀なくされる場合に緩衝器がストロークエンド近傍まで収縮する際に、緩衝器に対して従前よりも大きな圧側の減衰力の発生が要望される場合がある。
【0007】
このような要望に応えるには、緩衝器の収縮作動時に圧側室の圧力を大きくすればよいのであるが、従来の緩衝器の構造では、気室がフリーピストンを介して圧側室に対面しており、圧側室の圧力を気室の圧力以上に昇圧することができないために、圧側の減衰力を大きくしようとしても限界がある。また、ニードルバルブの開度は一般的にユーザの手動操作によって調整されるのが通常であって、従来の緩衝器では。ストロークエンドまで収縮する時にだけ圧側の減衰力を大きくすることはできない。
【0008】
そこで、本発明は、減衰力の調整が可能であっても、ストロークエンド近傍で大きな減衰力の発生が可能な緩衝器の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明の緩衝器は、シリンダと、シリンダ内に軸方向へ移動可能に挿入されるピストンロッドと、ピストンロッドに連結されてシリンダ内に軸方向へ移動可能に挿入されるとともにシリンダ内を伸側室と圧側室とに区画するピストンと、伸側室から圧側室へ向かう液体の流れに抵抗を与える伸側減衰バルブと、圧側室から伸側室へ向かう液体の流れに抵抗を与える圧側減衰バルブと、ピストンロッドに設けられて伸側減衰バルブと圧側減衰バルブを迂回して伸側室と圧側室とを連通するバイパス路と、バイパス路に設けられた減衰力調整バルブと、シリンダ内の圧側室内に収容されるサブシリンダと、サブシリンダ内を液圧ロック室と液圧ロック室の反ピストン側の補償室とに区画する隔壁と、孔を有してサブシリンダ内であって液圧ロック室内に軸方向へ移動可能に挿入されるロックピースと、ピストンロッドの先端に設けられてロックピースに当接すると孔を閉塞する閉塞体とを備え、補償室は、気室と圧側室に連通される液室とを有し、バイパス路は、ピストンロッドの先端から開口する縦孔と、ピストンロッドの側方から開口して圧側室を縦孔に連通する第1横孔と、ピストンロッドの側方から開口して伸側室を縦孔に連通する第2横孔と含んで形成されており、閉塞体は、ピストンロッドの縦孔の開口を閉塞する。
【0010】
このように構成された緩衝器では、収縮作動を呈して、ピストンロッドが収縮方向へ移動して閉塞体がロックピースに当接するとロックピースの孔が閉塞体に閉塞されるとともに、ロックピースが液圧ロック室内へ押し込まれるので、液圧ロック室の圧力が上昇して、ピストンロッドの移動を抑制する抵抗力を収縮作動時の減衰力に付加することができる。
【0011】
また、ピストンが環状であってピストンロッドの外周に装着されるとともに伸側室と圧側室とを連通する伸側通路と圧側通路とを有し、伸側減衰バルブは、環状であって内周がピストンロッドの外周に固定されてピストンの圧側室側端に重ねられて伸側通路を開閉するリーフバルブであり、圧側減衰バルブは、環状であって内周がピストンロッドの外周に固定されてピストンの伸側室側端に重ねられて伸側通路を開閉するリーフバルブであり、ピストンロッドの外周に螺子結合されてピストン、伸側リーフバルブおよび圧側リーフバルブをピスロッドの外周に固定するピストンナットを備え、閉塞体は、ピストンナットから離間していてもよい。
【0012】
このように構成された緩衝器によれば、ピストンロッドに閉塞体を設けても、圧側リーフバルブ、ピストンおよび伸側リーフバルブに液圧ロック室Lの圧力によって受ける軸方向の荷重が作用しないので、圧側リーフバルブ、ピストンおよび伸側リーフバルブの劣化を防止できるとともに、設計通りに伸側および圧側の減衰力を発生できる。
【0013】
また、緩衝器における閉塞体は、縦孔内であってピストンナットと径方向で対向する位置に圧入されてもよい。このように構成された緩衝器によれば、閉塞体の縦孔内への圧入によってピストンナットの弛みを防止でき、ピストンナットの回り止めのための部品や加工を必要としないので、緩衝器の製造コストを低減できる。
【0014】
また、緩衝器におけるロックピースは、サブシリンダの内周に摺接する筒部と、筒部のピストンロッド側端から内周側へ傾斜しつつピストンロッド側へ向けて突出する環状の傾斜部と、傾斜部の内周から内側へ向けて延びて閉塞体に離着座する環状のシート部とを備えてもよい。このように構成された緩衝器によれば、閉塞体がシート部に当接した際に受ける荷重によってロックピースの内部に生じる応力を低減でき、長期間の使用によってもロックピースの疲労を抑制できる。
【0015】
さらに、緩衝器における閉塞体は、縦孔内に挿入される挿入軸と、挿入軸の先端に設けられてピストンロッドの先端に当接する頭部とを備えてもよい。このように構成された緩衝器によれば、液圧ロック室の圧力の作用によって閉塞体に大きな荷重が作用しても頭部がピストンロッドに当接するとそれ以上に閉塞体がピストンロッドに接近する方向への移動が規制されるので、閉塞体からの荷重がピストンナットに伝達するのを確実に阻止できる。
【0016】
また、本実施の形態における緩衝器におけるサブシリンダは、有底筒状であって底部を隔壁として液圧ロック室を形成する有底筒状の第1筒と、第1筒の底部側端の外周に嵌合されるとともに第1筒を保持して補償室を形成する第2筒とを備えてもよい。このように構成された緩衝器によれば、第1筒と第2筒とを溶接せずに済むので溶接による歪が生じず、第1筒と第2筒の内周面の後加工が不要となるので安価かつ容易にサブシリンダを製造できるともに、有底筒状の第1筒で液圧ロック室を形成しているので、液圧ロック機能の発揮時に液圧ロック室内から第1筒とロックピースとの間以外を介して液体が圧側室内へ漏洩する心配もないので、液圧ロック機能を安定して発揮できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の緩衝器によれば、減衰力の調整が可能であっても、ストロークエンド近傍で大きな減衰力を発生できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、一実施の形態における緩衝器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1に示すように、一実施の形態における緩衝器Dは、シリンダ1と、シリンダ1内に軸方向へ移動可能に挿入されるピストンロッド2と、ピストンロッド2に連結されてシリンダ1内に軸方向へ移動可能に挿入されるとともにシリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン3と、伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れに抵抗を与える伸側減衰バルブとしての伸側リーフバルブ7と、圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れに抵抗を与える圧側減衰バルブとしての圧側リーフバルブ8と、ピストンロッド2に設けられて伸側リーフバルブ7と圧側リーフバルブ8を迂回して伸側室R1と圧側室R2とを連通するバイパス路40と、バイパス路40に設けられた減衰力調整バルブとしてのニードルバルブ41と、シリンダ1内の圧側室R2内に収容されるサブシリンダ4と、サブシリンダ4内を液圧ロック室Lと液圧ロック室Lの反ピストン側の補償室Rとに区画する隔壁4a1と、液圧ロック室L内に軸方向へ移動可能に挿入されるロックピース31と、ロックピース31と隔壁4a1との間に介装されてロックピース31をピストン側へ向けて付勢するばね32と、ピストンロッド2の先端に設けられた閉塞体6とを備えている。緩衝器Dは、図示はしないが、たとえば、自動二輪車等の鞍乗型車両における車体と後輪との間に介装されて伸縮時に減衰力を発生して車体の振動を抑制する。なお、緩衝器Dは、鞍乗型車両以外の車両に利用されてもよいし、車両以外の機器や建築物等に利用されてもよい。
【0020】
以下、緩衝器Dの各部について説明する。シリンダ1は、筒状であって図1中上端に装着されたキャップ10によって上端開口部が閉塞されている。キャップ10は、シリンダ1の上端開口部を閉塞するとともに鞍乗型車両の車体への連結を可能とするブラケット10aを備えている。また、シリンダ1の図1中下端の内周には、環状であってピストンロッド2が挿通されるロッドガイド11が嵌合され、シリンダ1の図1中下端の開口端には、環状のバンプストッパ12が装着されている。ロッドガイド11は、シリンダ1の内周に装着されたストップリング13によってシリンダ1内から外方となる図1中下方へ向けての移動が規制されており、シリンダ1内の液体の圧力によって図1中下方へ押圧されてストップリング13に当接する位置に位置決めされている。また、ロッドガイド11の内周には、ピストンロッド2の外周に摺接する筒状のブッシュ14とピストンロッド2の外周に摺接してピストンロッド2の外周をシールするシールリング15とが装着され、ロッドガイド11の外周には、シリンダ1の内周に密着してシリンダ1とロッドガイド11との間をシールするシールリング16が装着されている。
【0021】
また、シリンダ1の図1中上方の外周には、環状の上方ばね受25が螺着されている。上方ばね受25は、シリンダ1に対して回転操作されるとシリンダ1に対して軸方向となる図1中上下方向へ変位できる。
【0022】
ピストンロッド2は、バンプストッパ12およびロッドガイド11の内周を介してシリンダ1内に軸方向へ移動可能に挿入されており、先端には、シリンダ1内に軸方向へ移動可能に挿入されるピストン3が連結されている。ピストンロッド2は、先端となる図1中上端に設けられて外周にピストン3が装着される小径部2aと、小径部2aの上端の外周に設けられた螺子部2bと、小径部2aと小径部2aより下方との間に形成される段部2cと、先端から開口して基端へ通じる縦孔2dと、小径部2aの側方から開口して縦孔2dに通じる第1横孔2eと、段部2cよりも下方から開口して縦孔2dに通じる第2横孔2fとを備えている。
【0023】
ピストンロッド2は、本実施の形態の緩衝器Dでは、全長に渡って縦孔2dが設けられて筒状とされている。また、ピストンロッド2の縦孔2d内の第2横孔2fの開口より少し先端側となる上方側には、筒状の弁座部材42が取り付けられている。
【0024】
また、ピストンロッド2の図1中下端には、ピストンロッド2を図外の鞍乗型車両の後輪を指示するスイングアームに連結可能なブラケット17が装着され、ピストンロッド2の下端の外周にはブラケット17の上方に載置されるバンプクッションラバー18が嵌合されている。バンプクッションラバー18は、シリンダ1の図1中下端に装着されたバンプストッパ12と軸方向で対向しており、緩衝器Dが収縮側へストロークエンド近傍までストロークするとバンプストッパ12に当接して圧縮され、緩衝器Dのそれ以上の収縮方向へのストロークを抑制する弾発力を発揮して緩衝器Dの最収縮時の衝撃を緩和する。
【0025】
ブラケット17は、外周に下方ばね受17aを備えており、下方ばね受17aとシリンダ1の外周に装着される上方ばね受25との間にコイルばねでなる懸架ばね26が介装されている。懸架ばね26は、シリンダ1とピストンロッド2とを軸方向で離間させる方向、つまり、緩衝器Dを伸長させる方向へ向けて付勢しており、緩衝器Dを鞍乗型車両の車体と後輪との間に介装する弾発力を発揮して車体を弾性支持する。なお、上方ばね受25のシリンダ1に対する設置位置を軸方向で変更できるので、懸架ばね26に与える初期荷重を変更して鞍乗型車両の車高を調整できる。
【0026】
ピストンロッド2の小径部2aには、バルブストッパ9、環状の圧側リーフバルブ8、環状のピストン3、環状の伸側リーフバルブ7およびカラー20が順に組み付けられる。圧側リーフバルブ8、ピストン3および伸側リーフバルブ7は、小径部2aの先端の螺子部2bに螺着されるピストンナット27とピストンロッド2の段部2cとによって挟持されてピストンロッド2の小径部2aに固定される。
【0027】
ピストン3は、外周にシリンダ1の内周に摺接するピストンリング3aを備えており、シリンダ1内を液体が充填される伸側室R1と圧側室R2とに区画している。また、ピストン3は、伸側室R1と圧側室R2とを連通する伸側通路3bと圧側通路3cとを備えている。なお、伸側室R1と圧側室R2とに充填される液体は、たとえば、作動油とされるが、作動油以外にも液体の利用も可能である。
【0028】
圧側減衰バルブとしての圧側リーフバルブ8は、複数の環状板を積層して形成される積層リーフバルブとされ、内周がピストンロッド2に固定されて外周側の撓みが許容されてピストン3の図1中下端に積層されている。圧側リーフバルブ8は、ピストン3に積層されると圧側通路3cを閉塞して、圧側通路3cを介して作用する圧側室R2の圧力を受けて撓むと圧側通路3cを開放する。バルブストッパ9は、圧側リーフバルブ8が大きく撓むと圧側リーフバルブ8の背面に当接して圧側リーフバルブ8がそれ以上撓むのを規制して圧側リーフバルブ8を保護する。なお、圧側減衰バルブは、圧側リーフバルブ8以外にも圧側通路3cを通過する液体の流れに抵抗を与えることが可能なバルブであればよく、圧側通路3cを開閉可能なバルブ以外にもオリフィスやチョークとされてもよい。
【0029】
他方、伸側減衰バルブとしての伸側リーフバルブ7は、複数の環状板を積層して形成される積層リーフバルブとされ、内周がピストンロッド2に固定されて外周側の撓みが許容されてピストン3の図1中上端に積層されている。伸側リーフバルブ7は、ピストン3に積層されると伸側通路3bを閉塞して、伸側通路3bを介して作用する伸側室R1の圧力を受けて撓むと伸側通路3bを開放する。なお、伸側減衰バルブは、伸側リーフバルブ7以外にも伸側通路3bを通過する液体の流れに抵抗を与えることが可能なバルブであればよく、伸側通路3bを開閉可能なバルブ以外にもオリフィスやチョークとされてもよい。
【0030】
カラー20は、環状であってピストンロッド2の小径部2aの外周に嵌合されており、図1中で下方側の内径が小径部2aの外径より大径な拡径部20aと、拡径部20aの肉厚を径方向に貫く切欠20bとを備えている。
【0031】
そして、カラー20は、バルブストッパ9、圧側リーフバルブ8、ピストン3および伸側リーフバルブ7とともにピストンロッド2の小径部2aに組み付けられると、拡径部20aの内周を第1横孔2eに対向させて、切欠20bを介して第1横孔2eを圧側室R2に連通させる。
【0032】
なお、ピストンロッド2の小径部2aの外周に下から順に組み付けられたバルブストッパ9、圧側リーフバルブ8、ピストン3、伸側リーフバルブ7およびカラー20の各部品は、螺子部2bに螺子結合されるピストンナット27と段部2cとで挟持されてピストンロッド2の小径部2aに固定される。このように、ピストンロッド2にピストン3を始めとする小径部2aに組み付けられる各部品をピストンナット27で固定する状態で、ピストンナット27は、ピストンロッド2に対し、ピストンロッド2の先端となる上端よりも反サブシリンダ側となる下方に離間した位置に螺子結合される。
【0033】
また、ピストンロッド2における縦孔2d内には、閉塞体6が圧入されている。閉塞体6は、縦孔2d内に圧入される円柱状の挿入軸6aと、挿入軸6aのサブシリンダ側に挿入軸6aより大径な円盤状の頭部6bとを備えている。閉塞体6は、頭部6bの図1中下端がピストンロッド2の先端面に当接するまで挿入軸6aがピストンロッド2の縦孔2d内に圧入されると、縦孔2dの図1中上端を閉塞するとともに、挿入軸6aが縦孔2d内でピストンナット27と径方向で対向する位置に配置され、ピストンロッド2に固定される。よって、閉塞体6における挿入軸6aは、螺子部2bにおけるピストンナット27が螺子結合される部分の外径を拡径させるため、螺子部2bに螺子結合されるピストンナット27の弛みが防止される。このように、閉塞体6は、縦孔2dの上端の開口部を閉塞するともにピストンナット27の弛み止めとしても機能する。挿入軸6aの長さは、頭部6bがピストンロッド2の先端に当接した状態で第1横孔2eを閉塞しないが、ピストンナット27と径方向で対向できるように設定される。
【0034】
なお、閉塞体6における頭部6bがピストンロッド2のサブシリンダ側端となる上端に当接しているので、頭部6bの下端面は、ピストンナット27の上端面との間には隙間を空けて対向するので、ピストンナット27に干渉しない。閉塞体6の図1中上端面の後述するロックピース31のシート部31cに当接する面は平坦な面一の平面となっている。
【0035】
また、ピストンロッド2の縦孔2dは、第1横孔2eと第2横孔2fとによって伸側室R1と圧側室R2とに連通されており、第1横孔2eおよび第2横孔2fとともに、ピストンロッド2の小径部2aの外周に固定されたピストン3における伸側通路3bおよび圧側通路3cを迂回して伸側室R1と圧側室R2とを連通するバイパス路40を形成している。なお、ロッドガイド11には、ピストンロッド2の側面に摺接して緩衝器Dがストロークエンドの近傍まで伸長作動すると、第2横孔2fを閉塞するシャッタ50と、バルブストッパ9に当接する環状のクッション51が設けられており、緩衝器Dの最伸長時にはバイパス路40をシャッタ50で閉塞しつつクッション51の内側の空隙を閉鎖して当該空隙内の圧力を上昇させて緩衝器Dのそれ以上の伸長を抑制できる。
【0036】
そして、ピストンロッド2の縦孔2d内であって弁座部材42よりも図1中下方には、ニードルバルブ41が軸方向へ移動可能に収容されている。ニードルバルブ41は、ピストンロッド2内に摺動自在に挿入されており、図1中上端に弁座部材42内に出入り可能な円錐形の弁頭41aを備えている。
【0037】
ニードルバルブ41は、弁頭41aを弁座部材42の下端の内周に着座させるとバイパス路40を遮断し、弁頭41aを弁座部材42から離間させるとバイパス路40を開くとともにニードルバルブ41の弁座部材42に対して遠近させることで弁座部材42との間の流路の面積を大小調整し得る。なお、ニードルバルブ41の後端となる下端は、円錐形状となっており、ピストンロッド2の基端の縦孔2dの開口から下方へ突出して、ブラケット17の内部に設けられた孔17b内に突出している。
【0038】
また、ブラケット17は、側方から開口して孔17bに通じるとともに軸線がニードルバルブ41の軸線と直交する螺子孔17cを備えており、螺子孔17cには、ニードルバルブ41の後端に当接する円錐形の先端を持つ調整ボルト43が取り付けられている。よって、調整ボルト43を回転操作して調整ボルト43の先端を孔17b内へ侵入する方向へ移動させるとニードルバルブ41が調整ボルト43の先端に押されてピストンロッド2内を図1中上方へ移動するので、弁頭41aが弁座部材42に接近して前記流路面積を減少させ得る。反対に、調整ボルト43を回転操作して調整ボルト43の先端を孔17b内から退出する方向へ移動させると、ニードルバルブ41がピストンロッド2に対して図1中下方へ移動して弁頭41aが弁座部材42から離間して前記流路面積を増大させ得る。
【0039】
このように、ニードルバルブ41は、調整ボルト43の操作によってピストンロッド2の縦孔2d内で上下方向へ移動でき、バイパス路40の開閉と、開弁時における流路面積を大小調整し得る。なお、減衰力調整バルブは、ニードルバルブ41以外にもポペットバルブその他の減衰力調整が可能なバルブであればよい。
【0040】
つづいて、サブシリンダ4は、筒状であってキャップ10の図1中下端に設けられた環状の突条10bの外周に嵌合されたうえで溶接によってキャップ10に固定されており、シリンダ1内で圧側室R2内に収容されている。このようにサブシリンダ4の上端は、キャップ10によって閉塞されており、また、サブシリンダ4の外径は、シリンダ1の内径よりも小径とされており、サブシリンダ4とシリンダ1との間に環状隙間Sが形成されている。
【0041】
さらに、サブシリンダ4の内周には円盤状の隔壁4a1が設けられており、サブシリンダ4内が隔壁4a1によって、液圧ロック室Lと液圧ロック室Lの反ピストン側の補償室Rとに区画されている。本実施の形態では、サブシリンダ4は、2つの軸方向に重ねて連結された第1筒4aと第2筒4bで形成されている。具体的には、サブシリンダ4は、図1に示すように、底部を隔壁4a1として液圧ロック室Lを形成する有底筒状の第1筒4aと、第1筒4aの底部側端の外周に嵌合されるとともに、外周側から加締められることによって第1筒4aを保持して補償室Rを形成する第2筒4bとで形成されている。
【0042】
第1筒4aは、円盤状の底部で形成される隔壁4a1と、外径が隔壁4a1の外径より小径であって隔壁4a1からピストン側へ向けて垂下される筒部4a2とを備えており、シリンダ1内で圧側室R2内に収容されるとともに、内部で液圧ロック室Lを形成している。
【0043】
第1筒4a内には、ロックピース31が軸方向へ移動可能に挿入されており、ロックピース31と隔壁4a1との間に円錐コイルばねであるばね32が介装されている。また、筒部4a2の図1中下端の内周には、ストップリング4a3が装着されており、ストップリング4a3によってロックピース31の液圧ロック室Lからの抜けが防止されている。ロックピース31は、ピストンロッド2の閉塞体6と離間した状態ではばね32によって付勢されてストップリング4a3に当接する位置に位置決められる。
【0044】
ロックピース31は、サブシリンダ4における第1筒4aの筒部4a2の内周に摺接する筒部31aと、筒部31aのピストンロッド側端となる図1中下端から内周側へ一定の角度で傾斜しつつピストンロッド側へ向けて突出する環状の傾斜部31bと、傾斜部31bの内周から内側へ向けて延びて閉塞体6の図1中上端に離着座する環状のシート部31cとを備えて、第1筒4a内で軸方向へ移動可能とされている。
【0045】
また、ロックピース31の傾斜部31bの内側と第1筒4aの隔壁4a1との間にはばね32が介装されており、ロックピース31は、ピストンロッド2の閉塞体6と離間した状態ではばね32によって付勢されてストップリング4a3に当接する位置に位置決められる。ばね32は、円錐コイルばねとされていて、大径な下端がロックピース31の内周に周方向に沿って設けられた環状溝(符示せず)内に嵌合されて、小径な上端が隔壁4a1の下面に当接して、ロックピース31と隔壁4a1との間に圧縮状態で介装されている。よって、ばね32は、ロックピース31に対して径方向に位置決めされており、常時、ロックピース31を液圧ロック室Lから退出させる方向へ付勢している。また、ばね32は、円錐コイルばねとされているので、円筒状のコイルばねに比較して最圧縮時の全長が短いために、ロックピース31の液圧ロック室L内でのストローク長を確保できるとともに液圧ロック室Lの軸方向長さを短くすることができる。このことは、ばね32を円筒状のコイルばねとすることを妨げない。また、ばね32は、コイルばね以外にもロックピース31を付勢できればよいのでウェーブワッシャや皿ばね、ゴム等の弾性体とされてもよい。
【0046】
ロックピース31の筒部31aの外径は、サブシリンダ4の液圧ロック室Lを形成する部分、つまり、第1筒4aの筒部4a2の内径よりも少し小さく、液体は、抵抗を受けつつもロックピース31の外周と筒部4a2の内周との隙間を通過できるようになっている。
【0047】
また、ロックピース31は、ピストンロッド2の先端に取り付けられた閉塞体6に対して軸方向で対向しており、シート部31cの孔となる内周の開口31c1の内径が閉塞体6の図1中上端面で閉塞可能な径となっている。よって、閉塞体6とロックピース31とが当接しない状態では、液圧ロック室Lと圧側室R2とはロックピース31のシート部31cの内周とロックピース31の外周と第1筒4aの筒部4a2の内周との間の隙間とを介して連通されるが、ピストンロッド2がシリンダ1に対して図1中上方へ移動して閉塞体6の図1中上端面にシート部31cが当接するとシート部31cの内周側の開口31c1が閉塞体6によって閉塞されて、シート部31cの内周側を介しての圧側室R2と液圧ロック室Lとの連通が断たれ、液圧ロック室L内と圧側室R2とがロックピース31の外周と第1筒4aの筒部4a2の内周との間の狭い隙間のみを介して連通されることになる。
【0048】
なお、本実施の形態のロックピース31は、筒部31aとシート部31cとの間に傾斜部31bを備えており、閉塞体6がシート部31cに当接した際に受ける荷重によって内部に生じる応力を低減させている。傾斜部31bがなく筒部31aの内周にシート部31cが直接接続される構造の場合、筒部31aとシート部31cとの接続部分の形状変化が傾斜部31bを設ける場合と比較して大きくなるため、前述のように傾斜部31bをもうけることよってロックピース31に生じる応力を低減して、長期間の使用によってもロックピース31の疲労を抑制できる。また、シート部31cの内径を小さくして、シート部31cの内径とロックピース31の外径との差を大きくする場合であっても、傾斜部31bを設けることによって疲労を軽減でき、閉塞体6の外径を小型化できる。なお、閉塞体6は、前述した通り、シート部31cに当接してシート部31cの内周の開口31c1を閉塞できる限りにおいて、頭部6bの外周形状や図1中上端面の形状は設計変更できる。
【0049】
つづいて、第2筒4bは、円筒状であってキャップ10の図2中下端に設けられた環状の突条10bの外周に嵌合されたうえで溶接によってキャップ10に固定されており、シリンダ1内で圧側室R2内に収容されて、内部で補償室Rを形成している。また、第2筒4bの図2中の下端の内径が上方よりも大径となっており、内周に段部4b1を備えるとともに段部4b1より反ピストン側に肉厚を径方向に貫くオリフィス4b2を備えている。第2筒4bの下端の内径は、第1筒4aの隔壁4a1が挿入可能な径に設定されている。第2筒4bの内径が大径な部分4b3の軸方向長さは、第1筒4aの隔壁4a1の軸方向長さよりも長くなっている。
【0050】
このように構成された第1筒4aと第2筒4bとを連結するには、第1筒4aの隔壁側端を第2筒4bの下端の内方に挿入して、第1筒4aの隔壁4a1を第2筒4bの段部4b1に当接させる。この状態で、第2筒4bの下端の内径が大径な部分4b3を加締部として外周側から加締めて隔壁4a1を把持するように塑性変形させることにより、第2筒4bと第1筒4aとを連結する。このように、液圧ロック室Lを形成する有底筒状の第1筒4aと、第1筒4aの隔壁側端の外周に嵌合されるとともに、外周側から加締められることによって第1筒4aを保持して補償室Rを形成する第2筒4bとでサブシリンダ4を形成すると、第1筒4aと第2筒4bとに溶接による歪が生じず、第1筒4aと第2筒4bの内周面の後加工が不要となるので安価かつ容易にサブシリンダ4を製造できるともに、有底筒状の第1筒4aで液圧ロック室Lを形成しているので、液圧ロック機能の発揮時に液圧ロック室L内から筒部4a2とロックピース31との間以外を介して液体が圧側室R2内へ漏洩する心配もないので、液圧ロック機能を安定して発揮できる。また、このように隔壁4a1を有する第1筒4aと、第2筒4bとでサブシリンダ4を形成することにより、シール部材を設けずとも液圧ロック室Lと補償室Rとを液密に仕切ることができる。
【0051】
また、サブシリンダ4の内周であって補償室Rを形成する第2筒4b内には、第2筒4bの内周に摺接して軸方向へ移動可能であって補償室R内を気室Gと液室Aとの区画するフリーピストン30が挿入されている。フリーピストン30は、外周にサブシリンダ4内に摺接するシールリング30aを備えており、気室Gと液室Aとの間をシールしている。気室G内には、圧縮気体が充填されており、液室A内には伸側室R1と圧側室R2とに充填された液体と同じ液体が充填されている。なお、本実施の形態の緩衝器Dでは、補償室R内を気室Gと液室Aとに区画するのにフリーピストン30を用いているが、ブラダ、ダイヤフラム、ベローズといった気室Gと液室Aの容積配分を変更可能な弾性隔壁を用いてもよい。
【0052】
第2筒4bに設けられたオリフィス4b2は、フリーピストン30の移動範囲よりも図1中下方に設けられており、圧側室R2と補償室Rの液室Aとを連通して、圧側室R2と液室Aとを行き来する液体の流れに抵抗を与える。なお、本実施の形態では、オリフィス4b2の開口面積よりサブシリンダ4とシリンダ1との間の環状隙間Sの断面積を大きくしており、オリフィス4b2がオリフィス4b2を通過する液体の流れに与える抵抗より環状隙間Sが当該環状隙間Sを通過する液体の流れに与える抵抗が大きくならないようにしている。本実施の形態では、オリフィス4b2で圧側室R2と補償室Rの液室Aとを行き来する液体の流れに抵抗を与えているが、前記環状隙間Sの流路面積を小さくして当該環状隙間Sを通過して圧側室R2と補償室Rの液室Aとを行き来する液体の流れに抵抗を与えるようにし、当該環状隙間Sを制限流路として利用してもよい。その場合、サブシリンダ4における第2筒4bにオリフィス4b2の代わりに通過する液体の流れに抵抗を殆ど与えない孔を設けて液室Aを環状隙間Sを介して圧側室R2に連通すればよい。
【0053】
なお、補償室R内の液体が第1筒4aと第2筒4bの加締部となる下端の部分4b3との間から圧側室R2へ漏洩することがあっても、第1筒4aと第2筒4bの接合部分は液室Aのみが面しており、液室Aと圧側室R2とは常時連通状態におかれるので何ら問題は生じず、液圧ロック室Lが有底筒状の第1筒4a内によって形成されているので、液圧ロック室Lにも何ら影響を与えることがない。
【0054】
また、第2筒4bによる第1筒4aの保持は、第1筒4aの外周に第2筒4bを嵌合させることによって保持状態を保つことができれば嵌合によって第2筒4bが第1筒4aを保持してもよい。
【0055】
緩衝器Dは、以上のように構成されており、以下に緩衝器Dの作動を説明する。まず、緩衝器Dが伸長作動する場合の作動を説明する。シリンダ1に対してピストンロッド2が図1中下方へ移動して緩衝器Dが伸長作動を呈すると、ピストン3によって縮小される伸側室R1内の液体は、伸側通路3bを通過して伸側リーフバルブ7を押し開いて拡大される圧側室R2へ移動する。この液体の流れに対して伸側リーフバルブ7が抵抗を与えるので、伸側室R1内の圧力が上昇して伸側室R1内の圧力と圧側室R2内の圧力とに差が生じ、緩衝器Dは伸長作動を妨げる伸側の減衰力を発生する。緩衝器Dの伸長作動時には、ピストンロッド2がシリンダ1内から退出するため、ピストンロッド2のシリンダ1内から退出する体積分の液体が圧側室R2内で不足するが、不足分の液体は、フリーピストン30がサブシリンダ4内で気室Gを拡大させる方向へ変位して、液室A内から圧側室R2内へ供給される。また、ニードルバルブ41の開弁時には、バイパス路40を通じても伸側室R1から圧側室R2へ液体が移動できる。よって、ニードルバルブ41を最大限に開弁させてバイパス路40の流路面積を最大にすれば、緩衝器Dの伸長作動時の減衰力が最小となり、ニードルバルブ41を閉弁させてバイパス路40を遮断すれば伸側リーフバルブ7のみによって減衰力を発生して緩衝器Dの伸長作動時の減衰力が最大となる。このように減衰力調整バルブとしてのニードルバルブ41の開度の調整によって緩衝器Dの伸長作動時の減衰力を最小から最大までの間で調整できる。
【0056】
反対に、緩衝器Dが収縮作動する場合の作動を説明する。シリンダ1に対してピストンロッド2が図1中上方へ移動して緩衝器Dが収縮作動を呈すると、ピストン3によって縮小される圧側室R2内の液体は、圧側通路3cを通過して圧側リーフバルブ8を押し開いて拡大される伸側室R1へ移動する。この液体の流れに対して圧側リーフバルブ8が抵抗を与えるので、圧側室R2内の圧力が上昇して圧側室R2内の圧力と伸側室R1内の圧力とに差が生じ、緩衝器Dは収縮作動を妨げる圧側の減衰力を発生する。緩衝器Dの収縮作動時には、ピストンロッド2がシリンダ1内へ侵入するため、ピストンロッド2のシリンダ1内へ侵入する体積分の液体が圧側室R2内で過剰となるが、過剰分の液体は、オリフィス4b2を介して補償室Rの液室A内に流入してフリーピストン30がサブシリンダ4内で気室Gを収縮させる方向へ変位する。なお、補償室Rは、オリフィス4b2を介して圧側室R2と液室Aとを連通しており、圧側室R2内の圧力は液室A内の圧力を超えて上昇できるので、緩衝器Dは、従来の単筒型緩衝器と比較して大きな圧側の減衰力を発生できる。
【0057】
また、ニードルバルブ41の開弁時には、バイパス路40を通じても圧側室R2から伸側室R1へ液体が移動できる。よって、ニードルバルブ41を最大限に開弁させてバイパス路40の流路面積を最大にすれば、緩衝器Dの収縮作動時の減衰力が最小となり、ニードルバルブ41を閉弁させてバイパス路40を遮断すれば圧側リーフバルブ8およびオリフィス4b2によって減衰力を発生して緩衝器Dの収縮作動時の減衰力が最大となる。このように減衰力調整バルブとしてのニードルバルブ41の開度の調整によって緩衝器Dの収縮作動時の減衰力を最小から最大までの間で調整できる。
【0058】
緩衝器Dの収縮作動時では、ピストンロッド2がシリンダ1に対して図1中上方へ移動していくと、やがて、ピストンロッド2の先端に装着された閉塞体6が液圧ロック室L内のロックピース31のシート部31cに当接するようになる。このように閉塞体6がロックピース31に当接すると、ロックピース31のシート部31cの開口31c1が閉塞体6によって閉塞されて、シート部31cの内周の開口31c1による液圧ロック室Lと圧側室R2との連通が断たれる。この状態からさらにピストンロッド2がシリンダ1に対して図1中上方へ移動して緩衝器Dが収縮すると、ロックピース31が閉塞体6によって押圧されて液圧ロック室L内を圧縮する方向へ移動し、連結部材としての閉塞体6が液圧ロック室L内に挿入される。閉塞体6がロックピース31のシート部31cに当接した状態では、液圧ロック室Lと圧側室R2とがロックピース31とサブシリンダ4との間の隙間のみによって連通される状態となるため、ピストンロッド2のシリンダ1に対する収縮方向への移動によってピストンロッド2が液圧ロック室L内に侵入し、閉塞体6によって押されたロックピース31が液圧ロック室Lを縮小すると、液圧ロック室L内の液体は前記隙間を抵抗を受けながら圧側室R2へ移動する。よって、液圧ロック室L内の圧力が圧側室R2以上に上昇して、ピストンロッド2がロックピース31とともに液圧ロック室L内の圧力の作用によって図1中下方へ押圧されるようになる。
【0059】
このように緩衝器Dが収縮側にストロークエンド近傍まで変位すると、閉塞体6がロックピース31に当接して液圧ロック室L内の圧力を上昇させて、液圧ロック機能を発揮するので、緩衝器Dは、圧側リーフバルブ8による減衰力に液圧ロック室L内の圧力上昇による抵抗力を付加してより大きな圧側の減衰力を発生できる。また、閉塞体6がピストンロッド2の縦孔2dを閉塞しているので、液圧ロック室L内の圧力がバイパス路40を通じて伸側室R1へ逃げることもないので、減衰力調整を可能でありつつも、ストロークエンド近傍まで収縮すると液圧ロック機能を発揮して緩衝器Dのそれ以上の収縮を抑制できる。
【0060】
緩衝器Dがストロークエンド近傍まで収縮作動した後に伸長作動に転じると、ピストンロッド2が液圧ロック室L内から退出するとともに、ロックピース31はばね32に付勢されて液圧ロック室Lを圧縮する前のストップリング4a3に当接する初期位置に復帰できる。
【0061】
以上、本実施の形態の緩衝器Dは、シリンダ1と、シリンダ1内に軸方向へ移動可能に挿入されるピストンロッド2と、ピストンロッド2に連結されてシリンダ1内に軸方向へ移動可能に挿入されるとともにシリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン3と、伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れに抵抗を与える伸側リーフバルブ(伸側減衰バルブ)7と、圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れに抵抗を与える圧側リーフバルブ(圧側減衰バルブ)8と、ピストンロッド2に設けられて伸側リーフバルブ(伸側減衰バルブ)7と圧側リーフバルブ(圧側減衰バルブ)8を迂回して伸側室R1と圧側室R2とを連通するバイパス路40と、バイパス路40に設けられたニードルバルブ(減衰力調整バルブ)41と、シリンダ1内の圧側室R2内に収容されるサブシリンダ4と、サブシリンダ4内を液圧ロック室Lと液圧ロック室Lの反ピストン側の補償室Rとに区画する隔壁4a1と、開口(孔)31c1を有してサブシリンダ4内であって液圧ロック室L内に軸方向へ移動可能に挿入されるロックピース31と、ピストンロッド2の先端に設けられてロックピース31に当接すると開口(孔)31c1を閉塞する閉塞体6とを備え、補償室Rは、気室Gと圧側室R2に連通される液室Aとを有し、バイパス路40は、ピストンロッド2の先端から開口する縦孔2dと、ピストンロッド2の側方から開口して圧側室R2を縦孔2dに連通する第1横孔2eと、ピストンロッド2の側方から開口して伸側室R1を縦孔2dに連通する第2横孔2fと含んで形成されており、閉塞体6は、ピストンロッド2の縦孔2dの開口を閉塞する。
【0062】
このように構成された本実施の形態の緩衝器Dでは、収縮作動を呈して、ピストンロッド2が収縮方向へ移動して閉塞体6がロックピース31に当接するとロックピース31の開口(孔)31c1が閉塞体6に閉塞されるとともに、ロックピース31が液圧ロック室L内へ押し込まれるので、液圧ロック室Lの圧力が上昇して、ピストンロッド2の移動を抑制する抵抗力を収縮作動時の減衰力に付加することができる。また、閉塞体6がピストンロッド2の縦孔2dを閉塞しているので、液圧ロック室L内の圧力がバイパス路40を通じて伸側室R1へ逃げることもないので、減衰力調整を可能でありつつも、ストロークエンド近傍まで収縮すると液圧ロック機能を発揮して緩衝器Dのそれ以上の収縮を抑制できる。よって、本実施の形態の緩衝器Dによれば、減衰力調整を可能としつつも、ストロークエンド近傍まで収縮する際に、従来の緩衝器よりも大きな減衰力を発生できる。そして、このように構成された緩衝器Dを鞍乗型車両の車体と車輪との間に介装して使用すれば、鞍乗型車両の悪路走行時においてストロークエンドまで収縮してしまう所謂底付きを抑制できる。
【0063】
また、本実施の形態の緩衝器Dは、ストロークエンド近傍まで収縮すると大きな減衰力を発生できるから、バンプクッションラバー18で大きな弾発力を発生しなくても最収縮時の衝撃を緩和できるようになり、バンプクッションラバー18の小型化および軽量化も可能となる。また、本実施の形態の緩衝器Dは、ストロークエンド近傍まで収縮すると大きな減衰力を発生できるから、懸架ばね26の圧縮が進むとばね定数を変化させて減衰力不足を補う必要がないので、懸架ばね26の構造が簡単になって生産性も向上する。
【0064】
さらに、本実施の形態の緩衝器Dでは、開口(孔)31bを有してサブシリンダ4内であって液圧ロック室L内に軸方向へ移動可能に挿入されるロックピース31と、ロックピース31と隔壁4a1との間に介装されてロックピース31をピストン側へ向けて付勢するばね32と、ピストンロッド2の先端に設けられてロックピース31に当接すると開口(孔)31c1を閉塞する閉塞体6とを備えている。
【0065】
このように構成された緩衝器Dによれば、ピストンロッド2がサブシリンダ4に接近して、ピストンロッド2側に設けられた閉塞体6で液圧ロック室Lを圧縮するロックピース31の開口(孔)31c1を閉塞して、ピストンロッド2、閉塞体6およびロックピース31によって液圧ロック室Lを圧縮できるので、ピストンロッド2とサブシリンダ4との軸線にずれがあっても液圧ロック室Lを圧縮して液圧ロック室L内の圧力を上昇させてストロークエンド近傍で所望する大きな圧側の減衰力を得ることができる。
【0066】
また、本実施の形態の緩衝器Dでは、液圧ロック室Lを圧縮する際に液圧ロック室Lから圧側室R2へ向かう液体がロックピース31とサブシリンダ4との間の隙間を通過し、当該隙間にて液体の流れに抵抗を与えて液圧ロック室L内の圧力を上昇させているが、ロックピース31をサブシリンダ4の内周に摺接させて当該隙間の代わりにロックピース31或いは閉塞体6或いはロックピースと閉塞体6との間、或いはピストンロッド2にオリフィスやチョークとして機能する通路を形成して、液体に当該通路を通過させることによって液圧ロック室L内の圧力を上昇させるようにしてもよい。さらには、サブシリンダ4に液圧ロック室Lと圧側室R2とを連通するオリフィスやチョークを設けてもよい。また、閉塞体6の頭部6bの形状は円盤状とされているが、前述したように、ロックピース31と当接した際にロックピース31の開口(孔)31c1を閉塞して、ピストンロッド2が液圧ロック室L内へ侵入した際に、液圧ロック室Lをロックピース31とともに圧縮できる限りにおいて形状および構造について適宜設計変更できる。なお、閉塞体6或いはロックピース31の互いの当接面の一方或いは両方に溝を設けて、当該溝を液圧ロック室L内の圧力を上昇させるためのオリフィスやチョークとして機能させる場合であっても、閉塞体6がロックピース31に当接した状態で開口(孔)31c1が完全に閉塞されないが、このような場合も液圧ロック室Lの機能を実現できる限りにおいて閉塞体6が開口(孔)31c1を閉塞するとの概念に含まれる。
【0067】
なお、ロックピース31は、金属製であってもよいが、樹脂製であると閉塞体6との当接時の打音を小さくすることできるとともに、サブシリンダ4内での移動時にサブシリンダ4内の内周面を傷めるのを抑制できる。
【0068】
また、本実施の形態の緩衝器Dでは、サブシリンダ4が側方に圧側室R2を液室Aに連通するオリフィス4b2を備えているので、緩衝器Dの収縮作動時に補償室R内の圧力よりも圧側室R2内の圧力を高くすることができるため、収縮作動時の圧側の減衰力を大きくすることができる。よって、このように構成された緩衝器Dを鞍乗型車両の車体と車輪との間に介装して使用すれば、鞍乗型車両の悪路走行時において底付きをより一層抑制できる。
【0069】
さらに、本実施の形態の緩衝器Dでは、ピストン3が環状であってピストンロッド2の外周に装着されるとともに伸側室R1と圧側室R2とを連通する伸側通路3bと圧側通路3cとを有し、伸側減衰バルブが環状であって内周がピストンロッド2の外周に固定されてピストン3の圧側室側端に重ねられて伸側通路3bを開閉する伸側リーフバルブ7であって、圧側減衰バルブが環状であって内周がピストンロッド2の外周に固定されてピストン3の伸側室側端に重ねられて圧側通路3cを開閉する圧側リーフバルブ8であり、ピストンロッド2の外周に螺子結合されてピストン3、伸側リーフバルブ7および圧側リーフバルブ8をピストンロッド2の外周に固定するピストンナット27を備え、閉塞体6は、ピストンナット27から離間している。
【0070】
このように構成された緩衝器Dでは、緩衝器Dがストロークエンドの近傍まで収縮作動を呈すると、ピストンロッド2に設けられた閉塞体6がロックピース31に当接してロックピース31とともに液圧ロック室Lを圧縮して液圧ロック室L内の圧力を上昇させる。液圧ロック室L内の圧力は、閉塞体6をピストンロッド2に対してピストン3側へ向けて押圧するが、閉塞体6がピストンナット27から離間しているので、閉塞体6が液圧ロック室Lの圧力によって受ける軸方向の荷重がピストンロッド2によって直接受け止められてピストンナット27を介して圧側リーフバルブ8、ピストン3および伸側リーフバルブ7に作用することがない。よって、このように構成された本実施の形態の緩衝器Dによれば、ピストンロッド2に閉塞体6を設けても、圧側リーフバルブ8、ピストン3および伸側リーフバルブ7に液圧ロック室Lの圧力によって受ける軸方向の荷重が作用しないので、圧側リーフバルブ8、ピストン3および伸側リーフバルブ7の劣化を防止できるとともに、設計通りに伸側および圧側の減衰力を発生できる。
【0071】
さらに、本実施の形態の緩衝器Dでは、閉塞体6が縦孔2d内であってピストンナット27と径方向で対向する位置に圧入されている。このように構成された緩衝器Dによれば、閉塞体6の圧入によって、ピストンナット27が螺子締結されるピストンロッド2の螺子部2bが拡径されて、ピストンナット27が螺子部2bに対して回転して弛むこともなく、ピストンナット27の回り止めのための部品や加工を必要としないので、緩衝器Dの製造コストを低減できる。
【0072】
本実施の形態では、閉塞体6がピストンロッド2の縦孔2d内に圧入される挿入軸6aと、挿入軸6aの先端に設けられてピストンロッド2の先端に当接する頭部6bとを備えているので、液圧ロック室Lの圧力の作用によって閉塞体6に大きな荷重が作用しても頭部6bがピストンロッド2に当接するとそれ以上に閉塞体6がピストンロッド2に接近する方向への移動が規制される。よって、ピストンナット27をピストンロッド2の先端から反サブシリンダ側へ離間した位置に螺子結合するようにすれば、閉塞体6からの荷重がピストンナット27に伝達するのを確実に阻止できる。
【0073】
閉塞体6は、ロックピース31に当接するとシート部31cの開口(孔)31c1を閉塞できればよいので、頭部6bを備えていなくてもよいが、その場合、ピストンロッド2の縦孔2dに閉塞体6の反サブシリンダ側端に当接可能な段部を設けて段部で閉塞体6のピストンロッド2に対する侵入を規制して、液圧ロック室Lの圧力の作用による荷重を受けた際に閉塞体6全体がピストンロッド2内に押し込まれることの無いようにすればよい。
【0074】
さらに、本実施の形態の緩衝器では、ロックピース31は、サブシリンダ4の内周に摺接する筒部31aと、筒部31aのピストンロッド側端から内周側へ傾斜しつつピストンロッド側へ向けて突出する環状の傾斜部31bと、傾斜部31bの内周から内側へ向けて延びて閉塞体6に離着座する環状のシート部31cとを備えている。このように構成された緩衝器Dによれば、閉塞体6がシート部31cに当接した際に受ける荷重によってロックピース31の内部に生じる応力を低減でき、長期間の使用によってもロックピース31の疲労を抑制できる。なお、傾斜部31bは、前述したところでは、筒部31aに対して一定の角度で傾斜しているが、筒部31aに対して段階的に角度が変化して傾斜していてもよいし、湾曲して傾斜していてもよい。
【0075】
また、本実施の形態の緩衝器Dにおけるサブシリンダ4は、有底筒状であって底部を隔壁4a1として液圧ロック室Lを形成する有底筒状の第1筒4aと、第1筒4aの底部側端の外周に嵌合されるとともに第1筒4aを保持して補償室Rを形成する第2筒4bとを備えている。このように構成された緩衝器Dによれば、、第1筒4aと第2筒4bとを溶接せずに済むので溶接による歪が生じず、第1筒4aと第2筒4bの内周面の後加工が不要となるので安価かつ容易にサブシリンダ4を製造できるともに、有底筒状の第1筒4aで液圧ロック室Lを形成しているので、液圧ロック機能の発揮時に液圧ロック室L内から第1筒4aとロックピース31との間以外を介して液体が圧側室R2内へ漏洩する心配もないので、液圧ロック機能を安定して発揮できる。
【0076】
なお、補償室Rにおける気室Gと液室Aとの上下の配置を図1に示したところとは逆にしてもよい。また、本実施の形態の緩衝器Dでは、サブシリンダ4に液室Aと圧側室R2とを連通するオリフィス4b2を設けて収縮作動時の圧側室R2内の圧力上昇を助勢しているが、オリフィスとしては機能できない孔で液室Aと圧側室R2とを連通してシリンダ1とサブシリンダ4との間の隙間で液体の流れに抵抗を与える制限流路を設けて収縮作動時の圧側室R2内の圧力上昇を助勢してもよい。ただし、面積の管理が容易なオリフィス4b2によって収縮作動時の圧側室R2内の圧力上昇を助勢する場合、圧側室R2内の圧力と液室A内の圧力との調整がしやすくなるという利点を享受できる。
【0077】
さらに、本実施の形態の緩衝器Dでは、サブシリンダ4がキャップ10に保持されているので、サブシリンダ4に組み付けられる各部品をサブシリンダ4とともにキャップ10に組み付けてサブシリンダ組立体を形成することができ、緩衝器Dの組立が容易となる。ただし、サブシリンダ4のシリンダ1内への収容および固定の構造については図1に示したところに限定されるものではなく適宜設計変更可能である。
【0078】
また、液圧ロック室Lを形成する第1筒を円筒状として、キャップ10に連結されて補償室Rを形成する第2筒を有底筒状として、第2筒の底部側端の外周に第1筒を嵌合して第1筒を第2筒の底部に向けて外周側から加締めることによって、第1筒と第2筒とを連結してサブシリンダ4を形成することも可能である。
【0079】
さらに、サブシリンダ4は、有底筒状の第1筒4aと筒状の第2筒4bとが加締め加工によって連結されて構成されているが、たとえば、2つの筒と各筒間で挟持される隔壁とを溶接によって連結してサブシリンダ4を形成してもよく、サブシリンダ4の構造は適宜設計変更可能である。
【0080】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0081】
1・・・シリンダ、2・・・ピストンロッド、2d・・・縦孔、2e・・・第1横孔、2f・・・第2横孔、3・・・ピストン、3b・・・伸側通路、3c・・・圧側通路、4・・・サブシリンダ、4a・・・第1筒、4a1・・・隔壁、4b・・・第2筒、6・・・閉塞体、6a・・・挿入軸、6b・・・頭部、7・・・伸側リーフバルブ(伸側減衰バルブ)、8・・・圧側リーフバルブ(圧側減衰バルブ)、27・・・ピストンナット、31・・・ロックピース、31a・・・筒部、31b・・・傾斜部、31c・・・シート部、31c1・・・開口(孔)、32・・・ばね、40・・・バイパス路、41・・・ニードルバルブ(減衰力調整バルブ)、A・・・液室、D・・・緩衝器、G・・・気室、L・・・液圧ロック室、R・・・補償室、R1・・・伸側室、R2・・・圧側室
図1