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2024-161983ポリウレタン樹脂組成物および弾性舗装材
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  • -ポリウレタン樹脂組成物および弾性舗装材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024161983
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】ポリウレタン樹脂組成物および弾性舗装材
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/66 20060101AFI20241114BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20241114BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20241114BHJP
   C08G 18/50 20060101ALI20241114BHJP
   E01C 7/26 20060101ALI20241114BHJP
   E04F 15/12 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
C08G18/66 081
C08G18/10
C08G18/32 037
C08G18/50 021
E01C7/26
E04F15/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077096
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003812
【氏名又は名称】弁理士法人いくみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 康彦
(72)【発明者】
【氏名】川那部 恒
【テーマコード(参考)】
2D051
2E220
4J034
【Fターム(参考)】
2D051AB04
2D051AG13
2D051CA02
2D051EA01
2D051EA06
2E220AA45
2E220BB05
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2E220GA27X
2E220GA30X
2E220GA35X
2E220GB01X
2E220GB05X
2E220GB12X
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2E220GB32X
2E220GB37X
2E220GB39X
2E220GB43X
2E220GB48X
4J034BA08
4J034CA04
4J034CA15
4J034CB03
4J034CB04
4J034CB05
4J034CB07
4J034CC03
4J034CC08
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4J034CC62
4J034CC65
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4J034JA01
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4J034QB13
4J034QB14
4J034QB15
4J034RA05
4J034RA10
(57)【要約】
【課題】優れたポットライフおよび優れた山立ち性を有するポリウレタン樹脂組成物、および、そのポリウレタン樹脂組成物から得られる弾性舗装材を提供する。
【解決手段】ポリウレタン樹脂組成物は、ポリイソシアネート成分と活性水素基含有成分とを含有する。ポリイソシアネート成分は、イソシアネート基末端プレポリマーを含有する。活性水素基含有成分は、ジエチルトルエンポリアミンと、ポリオキシアルキレンポリアミンとを含有する。ジエチルトルエンポリアミンに由来するアミノ基の含有割合が、ポリオキシアルキレンポリアミンに由来するアミノ基1モルに対して、6モルを超過する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート成分と活性水素基含有成分とを含有し、
前記ポリイソシアネート成分は、イソシアネート基末端プレポリマーを含有し、
前記活性水素基含有成分は、
ジエチルトルエンポリアミンと、ポリオキシアルキレンポリアミンとを含有し、
ジエチルトルエンポリアミンに由来するアミノ基の含有割合が、ポリオキシアルキレンポリアミンに由来するアミノ基1モルに対して、6モルを超過する、ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
ジエチルトルエンポリアミンに由来するアミノ基の含有割合が、ポリオキシアルキレンポリアミンに由来するアミノ基1モルに対して、9モル以上40モル以下である、請求項1に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記イソシアネート基末端プレポリマーは、原料ポリイソシアネートと原料ポリオールとの反応生成物を含有し、
前記原料ポリイソシアネートが、脂環族ポリイソシアネートを含有する、請求項1に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1に記載のポリウレタン樹脂組成物の硬化物を含有する、弾性舗装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン樹脂組成物および弾性舗装材に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ポリウレタン樹脂組成物の硬化物(樹脂硬化物)を含む床材および舗装材が、知られている。ポリウレタン樹脂組成物としては、例えば、2液硬化型ポリウレタン樹脂組成物が、知られている。2液硬化型樹脂組成物は、主剤および硬化剤を備える。主剤および硬化剤は、使用時に混合され、硬化物を生成させる。硬化物は、床材および/または舗装材として、使用される。
【0003】
ポリウレタン樹脂組成物の硬化物(樹脂硬化物)として、より具体的には、2液硬化型ウレア防水材が、提案されている。この2液硬化型ウレア防水材は、例えば、以下のA液および以下のB液を反応させることにより、得られる。A液は、ウレタンプレポリマーを含有する。B液は、活性水素基含有化合物を含有する。そして、A液は、カルボジイミド変性4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートとポリプロピレングリコールとの反応により得られるウレタンプレポリマーを含有する。また、B液は、平均分子量2000のポリオキシアルキレンポリアミン100質量部と、平均分子量5000のポリオキシアルキレンポリアミン17.1質量部と、ジエチルトルエンジアミン25.7質量部とを含有する(例えば、特許文献1(実施例)参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-166201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の2液硬化型ウレア防水材において、A液およびB液の混合物は、十分なポットライフを有していない場合がある。
【0006】
また、ポリウレタン樹脂組成物の硬化物が、弾性舗装材として使用される場合、弾性舗装材は、表面に凹凸形状を要求される場合がある。つまり、ポリウレタン樹脂組成物には、優れた山立ち性(凹凸成形性)が要求される。
【0007】
本発明は、優れたポットライフおよび優れた山立ち性を有するポリウレタン樹脂組成物、および、そのポリウレタン樹脂組成物から得られる弾性舗装材である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明[1]は、ポリイソシアネート成分と活性水素基含有成分とを含有し、前記ポリイソシアネート成分は、イソシアネート基末端プレポリマーを含有し、前記活性水素基含有成分は、ジエチルトルエンポリアミンと、ポリオキシアルキレンポリアミンとを含有し、ジエチルトルエンポリアミンに由来するアミノ基の含有割合が、ポリオキシアルキレンポリアミンに由来するアミノ基1モルに対して、6モルを超過する、ポリウレタン樹脂組成物を、含んでいる。
【0009】
本発明[2]は、ジエチルトルエンポリアミンに由来するアミノ基の含有割合が、ポリオキシアルキレンポリアミンに由来するアミノ基1モルに対して、9モル以上40モル以下である、上記[1]に記載のポリウレタン樹脂組成物を、含んでいる。
【0010】
本発明[3]は、前記イソシアネート基末端プレポリマーは、原料ポリイソシアネートと原料ポリオールとの反応生成物を含有し、前記原料ポリイソシアネートが、脂環族ポリイソシアネートを含有する、上記[1]または[2]に記載のポリウレタン樹脂組成物を、含んでいる。
【0011】
本発明[4]は、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載のポリウレタン樹脂組成物の硬化物を含有する、弾性舗装材を、含んでいる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポリウレタン樹脂組成物において、活性水素基含有成分は、ジエチルトルエンポリアミンと、ポリオキシアルキレンポリアミンとを含有する。また、ジエチルトルエンポリアミンと、ポリオキシアルキレンポリアミンとの含有割合が、調整されている。そのため、ポリウレタン樹脂組成物は、優れたポットライフおよび優れた山立ち性を有する。
【0013】
本発明の弾性舗装材は、上記のポリウレタン樹脂組成物の硬化物を含有する。そのため、本発明の弾性舗装材は、優れたポットライフに由来して生産性よく製造され、また、優れた山立ち性に由来して、優れた凹凸形状を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、比較例1の硬化物(山立ち性×)、実施例2の硬化物(山立ち性○)、および、実施例1の硬化物(山立ち性△)を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.ポリウレタン樹脂組成物
ポリウレタン樹脂組成物は、ポリイソシアネート成分と、活性水素基含有成分とを含有する。ポリウレタン樹脂組成物は、詳しくは後述するように、ポリイソシアネート成分と活性水素基含有成分との反応により、硬化物(樹脂硬化物)を生成させる。
【0016】
(1)ポリイソシアネート成分
ポリイソシアネート成分は、分子中に2つ以上のイソシアネート基を含有する成分である。ポリイソシアネート成分は、イソシアネート基末端プレポリマーを含有する。
【0017】
イソシアネート基末端プレポリマーは、少なくとも2つのイソシアネート基を分子末端に有するウレタンプレポリマーである。イソシアネート基末端プレポリマーは、例えば、原料ポリイソシアネートと原料ポリオールとの反応生成物を含有する。好ましくは、イソシアネート基末端プレポリマーは、原料ポリイソシアネートと原料ポリオールとの反応生成物である。
【0018】
原料ポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートおよび芳香脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。
【0019】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、鎖状脂肪族ポリイソシアネート、および、脂環族ポリイソシアネートが挙げられる。
【0020】
鎖状脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、鎖状脂肪族ポリイソシアネート単量体および鎖状脂肪族ポリイソシアネート誘導体が挙げられる。鎖状脂肪族ポリイソシアネート単量体としては、例えば、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)およびヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が挙げられる。鎖状脂肪族ポリイソシアネート誘導体としては、鎖状脂肪族ポリイソシアネート単量体を公知の方法で変性した変成体が、挙げられる。変性体としては、例えば、ウレトジオン変性体、イソシアヌレート変成体、アロファネート変性体、ポリオール変性体、ビウレット変性体、ウレア変性体、オキサジアジントリオン変性体およびカルボジイミド変性体が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0021】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、脂環族ポリイソシアネート単量体および脂環族ポリイソシアネート誘導体が挙げられる。脂環族ポリイソシアネート単量体としては、例えば、脂環族ジイソシアネートが挙げられる。脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)、および、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)が挙げられる。脂環族ポリイソシアネート誘導体としては、例えば、脂環族ポリイソシアネート単量体の上記変成体が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0022】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ポリイソシアネート単量体および芳香族ポリイソシアネート誘導体が挙げられる。芳香族ポリイソシアネート単量体としては、例えば、芳香族ジイソシアネートが挙げられる。芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、トルイジンジイソシアネート(TODI)、パラフェニレンジイソシアネート、および、ナフタレンジイソシアネート(NDI)が挙げられる。芳香族ポリイソシアネート誘導体としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート単量体の上記変成体が挙げられる。また、芳香族ポリイソシアネート誘導体として、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートも挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0023】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、芳香脂肪族ポリイソシアネート単量体および芳香脂肪族ポリイソシアネート誘導体が挙げられる。芳香脂肪族ポリイソシアネート単量体としては、例えば、芳香脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート(XDI)、および、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)が挙げられる。芳香脂肪族ポリイソシアネート誘導体としては、芳香脂肪族ポリイソシアネート単量体の上記変成体が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0024】
原料ポリイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用できる。機械物性の向上を図る観点から、原料ポリイソシアネートとして、好ましくは、脂環族ポリイソシアネートおよび芳香族ポリイソシアネートが挙げられ、ポットライフの向上を図る観点から、より好ましくは、脂環族ポリイソシアネートが挙げられ、さらに好ましくは、脂環族ポリイソシアネート単量体が挙げられ、より好ましくは、脂環族ジイソシアネートが挙げられ、とりわけ好ましくは、イソホロンジイソシアネート(IPDI)が挙げられる。
【0025】
原料ポリイソシアネートの平均イソシアネート基数は、例えば、2以上である。また、原料ポリイソシアネートの平均イソシアネート基数は、例えば、4以下、好ましくは、3以下、より好ましくは、2.5以下、さらに好ましくは、2.2以下である。
【0026】
原料ポリオールとしては、例えば、高分子量ポリオールおよび低分子量ポリオールが挙げられる。
【0027】
高分子量ポリオールは、分子中に水酸基を2つ以上有し、比較的高分子量の有機化合物である。高分子量ポリオールの数平均分子量は、例えば、400を超過し、例えば、20000以下である。なお、数平均分子量は、水酸基当量および平均水酸基数から、公知の方法で算出できる。また、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより、ポリスチレン換算分子量として測定できる(以下同様)。
【0028】
高分子量ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオールおよびビニルモノマー変性ポリオールが挙げられる。これら高分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。高分子量ポリオールとして、好ましくは、ポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0029】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシアルキレン(C2-3)ポリオール、および、ポリテトラメチレンエーテルポリオールが挙げられる。ポリオキシアルキレン(C2-3)ポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシトリエチレンポリオール、および、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンポリオール(ランダムまたはブロック共重合体)が挙げられる。ポリテトラメチレンエーテルポリオールとしては、例えば、結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコール、および、非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。ポリエーテルポリオールとして、好ましくは、ポリオキシアルキレン(C2-3)ポリオールが挙げられ、より好ましくは、ポリオキシプロピレンポリオールが挙げられる。
【0030】
高分子量ポリオールの数平均分子量は、例えば、400を超過し、好ましくは、500以上、より好ましくは、1000以上、さらに好ましくは、1500以上である。また、高分子量ポリオールの数平均分子量は、例えば、20000以下、好ましくは、15000以下、より好ましくは、10000以下、さらに好ましくは、5000以下である。
【0031】
高分子量ポリオールの平均水酸基数は、例えば、2以上、好ましくは、2を超過し、より好ましくは、2.1以上である。また、高分子量ポリオールの平均水酸基数は、例えば、4以下、好ましくは、3以下、より好ましくは、3未満、さらに好ましくは、2.9以下である。
【0032】
高分子量ポリオールとして、とりわけ好ましくは、平均水酸基数2のポリエーテルポリオール、および、平均水酸基数3のポリエーテルポリオールの併用が挙げられる。なお、これらの併用割合は、目的および用途に応じて、適宜調整される。
【0033】
低分子量ポリオールは、分子中に水酸基を2つ以上有し、比較的低分子量の有機化合物である。低分子量ポリオールの分子量は、例えば、40以上、例えば、400以下である。
【0034】
低分子量ポリオールとしては、例えば、2価アルコール、3価アルコール、および、4価以上のアルコールが挙げられる。2価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびジプロピレングリコールが挙げられる。3価アルコールとしては、例えば、グリセリンおよびトリメチロールプロパンが挙げられる。4価以上のアルコールとしては、例えば、ペンタエリスリトールおよびジグリセリンが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0035】
原料ポリオールは、単独使用または2種類以上併用できる。原料ポリオールとして、好ましくは、高分子量ポリオールの単独使用が挙げられる。
【0036】
原料ポリオールの平均水酸基数は、例えば、2以上、好ましくは、2を超過し、より好ましくは、2.2以上である。また、原料ポリオールの平均水酸基数は、例えば、4以下、好ましくは、3以下、より好ましくは、3未満、さらに好ましくは、2.8以下である。
【0037】
イソシアネート基末端プレポリマーの調製方法としては、公知の方法が採用される。例えば、原料ポリイソシアネートと原料ポリオールとを、所定の当量比で、ウレタン化反応させる。例えば、原料ポリオールの水酸基に対する、原料ポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が、例えば、1を超過し、好ましくは、1.5以上であり、例えば、50以下である。なお、原料ポリイソシアネートと原料ポリオールとの反応条件は、適宜設定される。これにより、原料ポリイソシアネートと原料ポリオールとの反応生成物として、イソシアネート基末端プレポリマーが得られる。なお、必要により、イソシアネート基末端プレポリマーは、公知の精製方法によって精製される。精製方法としては、例えば、抽出法および蒸留法が挙げられる。
【0038】
ポリイソシアネート成分は、必要に応じて、その他のポリイソシアネート化合物を含有できる。その他のポリイソシアネート化合物は、イソシアネート基末端プレポリマーを除くポリイソシアネート化合物である。その他のポリイソシアネート化合物としては、例えば、公知のポリイソシアネート単量体および公知のポリイソシアネート誘導体挙げられる。
【0039】
その他のポリイソシアネート化合物の含有割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。より具体的には、その他のポリイソシアネート化合物の含有割合は、ポリイソシアネート成分の総量に対して、例えば、50質量%以下、好ましくは、30質量%以下、より好ましくは、10質量%以下、とりわけ好ましくは、0質量%である。
【0040】
すなわち、イソシアネート基末端プレポリマーの含有割合が、ポリイソシアネート成分の総量に対して、例えば、50質量%以上、好ましくは、70質量%以上、より好ましくは、90質量%以下、とりわけ好ましくは、100質量%である。換言すると、ポリイソシアネート成分は、好ましくは、イソシアネート基末端プレポリマーからなる。
【0041】
ポリイソシアネート成分のイソシアネート基含有率は、例えば、1.0質量%以上、好ましくは、3.0質量%以上である。また、ポリイソシアネート成分のイソシアネート基含有率は、例えば、20質量%以下、好ましくは、10質量%以下、より好ましくは、5.0質量%以下である。なお、イソシアネート基含有率は、JIS K 7301(1995)に記載のイソシアネート基含有率試験によって、測定される。
【0042】
(2)活性水素基含有成分
活性水素基含有成分は、分子中に1つ以上の活性水素基(水酸基および/またはアミノ基)を含有する成分である。活性水素基含有成分は、ジエチルトルエンポリアミンと、ポリオキシアルキレンポリアミンとを含有する。
【0043】
ジエチルトルエンポリアミンは、2つ以上のアミノ基を有するジエチルトルエンである。アミノ基としては、1級アミノ基および/または2級アミノ基が挙げられ、好ましくは、1級アミノ基が挙げられる(以下同様)。より具体的には、ジエチルトルエンポリアミンとしては、例えば、ジエチルトルエンジアミンおよびジエチルトルエントリアミンが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。好ましくは、ジエチルトルエンジアミンが挙げられる。ジエチルトルエンジアミンとしては、例えば、2,4-ジエチルトルエンジアミンおよび2,6-ジエチルトルエンジアミンが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。ジエチルトルエンポリアミンは、市販品として入手可能である。市販品としては、例えば、エタキュア100(2,4-ジエチルトルエンジアミンおよび2,6-ジエチルトルエンジアミンの混合物、アルベマール社製)が挙げられる。
【0044】
ポリオキシアルキレンポリアミンは、分子末端に2つ以上のアミノ基を有するポリエーテルポリアミンである。より具体的には、ポリオキシアルキレンポリアミンとしては、例えば、ポリオキシエチレンポリアミン、ポリオキシプロピレンポリアミン、ポリオキシテトラメチレンポリアミン、および、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンポリアミンが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。好ましくは、ポリオキシプロピレンポリアミンが挙げられる。ポリオキシプロピレンポリアミンとしては、例えば、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシプロピレントリアミン、および、ポリオキシプロピレンテトラアミンが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。好ましくは、ポリオキシプロピレンジアミンが挙げられる。ポリオキシアルキレンポリアミンは、市販品として入手可能である。市販品としては、例えば、ジェファーミンシリーズ(ハンツマン製)が挙げられ、より具体的には、ジェファーミンD-230、ジェファーミンD-400、ジェファーミンD-2000、ジェファーミンT-403、および、ジェファーミンT-3000(商品名、いずれもハンツマン製)が挙げられる。
【0045】
ポリオキシアルキレンポリアミンの数平均分子量は、機械物性(とりわけ、伸び)の観点から、例えば、200以上、好ましくは、500以上、より好ましくは、1000以上、さらに好ましくは、1500以上である。また、ポリオキシアルキレンポリアミンの数平均分子量は、機械物性(とりわけ、硬度および強度)の観点から、例えば、20000以下、好ましくは、15000以下、より好ましくは、10000以下、さらに好ましくは、5000以下である。
【0046】
ポリオキシアルキレンポリアミンの平均アミノ基数は、機械物性(とりわけ、硬度および強度)の観点から、例えば、2以上である。また、ポリオキシアルキレンポリアミンの平均アミノ基数は、機械物性(とりわけ、伸び)の観点から、例えば、4以下、好ましくは、3以下、より好ましくは、2.5以下である。
【0047】
ジエチルトルエンポリアミンと、ポリオキシアルキレンポリアミンとの含有割合は、アミノ基のモル比として、調整される。
【0048】
より具体的には、ポットライフ、機械物性および山立ち性の観点から、ジエチルトルエンポリアミンに由来するアミノ基の含有割合が、ポリオキシアルキレンポリアミンに由来するアミノ基1モルに対して、6モルを超過し、好ましくは、7モル以上、より好ましくは、9モル以上、さらに好ましくは、10モル以上、とりわけ好ましくは、15モル以上である。
【0049】
また、ポットライフ、機械物性および山立ち性の観点から、ジエチルトルエンポリアミンに由来するアミノ基の含有割合が、ポリオキシアルキレンポリアミンに由来するアミノ基1モルに対して、例えば、80モル以下、好ましくは、60モル以下、より好ましくは、40モル以下、さらに好ましくは、30モル以下、とりわけ好ましくは、25モル以下である。
【0050】
なお、ジエチルトルエンポリアミンと、ポリオキシアルキレンポリアミンとの質量基準における含有割合は、ポリオキシアルキレンポリアミンの分子量に応じて、適宜設定される。
【0051】
活性水素基含有成分は、必要に応じて、その他の活性水素化合物を含有できる。その他の活性水素化合物は、ジエチルトルエンポリアミンおよびポリオキシアルキレンポリアミンを除く活性水素化合物である。その他の活性水素化合物としては、例えば、公知のポリアミン(ジエチルトルエンポリアミンおよびポリオキシアルキレンポリアミンを除く。)および上記低分子量ポリオールが挙げられる。
【0052】
その他の活性水素化合物の含有割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。より具体的には、その他の活性水素化合物の含有割合は、活性水素基含有成分の総量に対して、例えば、50質量%以下、好ましくは、30質量%以下、より好ましくは、10質量%以下、とりわけ好ましくは、0質量%である。
【0053】
すなわち、ジエチルトルエンポリアミンの含有割合およびポリオキシアルキレンポリアミンの含有割合の総量が、活性水素基含有成分の総量に対して、例えば、50質量%以上、好ましくは、70質量%以上、より好ましくは、90質量%以下、とりわけ好ましくは、100質量%である。換言すると、活性水素基含有成分は、好ましくは、ジエチルトルエンポリアミンと、ポリオキシアルキレンポリアミンとからなる。
【0054】
(3)その他の成分
ポリウレタン樹脂組成物は、その他の成分を含有できる。その他の成分は、上記のポリイソシアネート成分および上記の活性水素基含有成分を除く成分である。その他の成分としては、例えば、添加剤が挙げられる。
【0055】
添加剤としては、例えば、溶剤、充填材、可塑剤、顔料、消泡剤、触媒、ブロッキング防止剤、分散剤、沈降防止剤、耐熱安定剤、耐光安定剤、酸化防止剤、離型剤、染料、滑剤および加水分解防止剤が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。添加剤として、好ましくは、溶剤、充填材および可塑剤が挙げられる。
【0056】
溶剤としては、例えば、ケトン、ニトリル、アルキルエステル、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素、エーテル、グリコールエーテルエステル、ハロゲン化脂肪族炭化水素、および、極性非プロトンが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。溶剤として、好ましくは、アルキルエステルが挙げられる。アルキルエステルとしては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、および、酢酸イソブチルが挙げられ、好ましくは、酢酸ブチルが挙げられる。
【0057】
充填材としては、例えば、無機充填材および有機充填材が挙げられる。無機充填材としては、例えば、粒状充填材、繊維状充填材およびバルーン状充填材が挙げられる。粒状充填材としては、例えば、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、含水塩基性炭酸マグネシウム、カオリナイト、ハロイサイト、アロフェン、パイロフィライト、タルク、セリサイト、イライト、雲母、モンモリロナイト、パイデライト、アメサイト、シャモサイト、焼成クレー、アスベスト、マイカ、ベントナイト、ケイ酸カルシウム、ゼオライト、軽石粉、スレート粉、ケイ藻土、ケイ砂、ケイ石粉、ジブサイト、ベーマイト、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、金属粉、湿式シリカおよび乾式シリカが挙げられる。繊維状充填材としては、例えば、ガラス繊維および炭素繊維が挙げられる。バルーン状充填材としては、例えば、ガラスバルーン、シラスバルーン、シリカバルーンおよびセラミックバルーンが挙げられる。有機充填材としては、例えば、木粉、パルプ粉、木綿チップ、ゴム粉末、熱可塑性樹脂粉末および熱硬化性樹脂粉末が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。好ましくは、無機充填材が挙げられ、より好ましくは、粒状充填材が挙げられ、さらに好ましくは、炭酸カルシウムが挙げられる。
【0058】
可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤、脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤、グリコールエステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤およびエポキシ系可塑剤が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。可塑剤として、好ましくは、フタル酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤が挙げられる。フタル酸エステル系可塑剤としては、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジへプチルフタレート、ジn-オクチルフタレート、ジイソオクチルフタレート、ジ2-エチルへキシルフタレート、ジノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ジブチルペンチルフタレートおよびジシクロヘキシルフタレートが挙げられる。アジピン酸エステル系可塑剤としては、例えば、ジメチルアジペート、ジエチルアジペート、ジブチルアジペート、ジヘプチルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジn-オクチルアジペート、ジイソオクチルアジペート、ジ2-エチルへキシルアジペート、ジノニルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジブチルペンチルアジペートおよびジシクロヘキシルアジペートが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。好ましくは、フタル酸エステル系可塑剤が挙げられ、より好ましくは、ジイソノニルフタレート(DINP)が挙げられる。
【0059】
なお、添加剤の配合量および配合タイミングは、目的および用途に応じて、適宜設定される。例えば、後述する2液型樹脂組成物において、添加剤は、後述するA液に含有されていてもよく、また、後述するB液に含有されていてもよい。好ましくは、添加剤は、後述するA液および後述するB液の両方に含有される。
【0060】
(4)ポリウレタン樹脂組成物の製造方法
ポリウレタン樹脂組成物は、例えば、2液型樹脂組成物であってもよく、1液型樹脂組成物であってもよい。好ましくは、ポリウレタン樹脂組成物は、2液型樹脂組成物である。
【0061】
ポリウレタン樹脂組成物が、2液型樹脂組成物である場合、ポリウレタン樹脂組成物は、例えば、ポリイソシアネート成分を含有するA液と、活性水素基含有成分を含有するB液とを、個別に準備することによって、製造される。
【0062】
A液は、例えば、必須成分として、上記のポリイソシアネート成分を含有する。また、A液は、例えば、任意成分として、上記の添加剤を含有し、好ましくは、上記の溶剤を含有する。とりわけ好ましくは、A液は、ポリイソシアネート成分および溶剤からなる。このような場合、A液は、例えば、ポリイソシアネート成分および溶剤を、公知の方法で混合することにより、調製される。なお、A液において、各成分の含有割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0063】
例えば、ポリイソシアネート成分の含有割合が、ポリイソシアネート成分と溶剤との総量に対して、例えば、50質量%以上、好ましくは、70質量%以上、より好ましくは、90質量%以上である。また、ポリイソシアネート成分の含有割合が、ポリイソシアネート成分と溶剤との総量に対して、例えば、99.9質量%以下、好ましくは、99質量%以下、より好ましくは、98質量%以下である。
【0064】
また、溶剤の含有割合が、ポリイソシアネート成分と溶剤との総量に対して、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、1質量%以上、より好ましくは、2質量%以上である。また、溶剤の含有割合が、ポリイソシアネート成分と溶剤との総量に対して、例えば、50質量%以下、好ましくは、30質量%以下、より好ましくは、10質量%以下である。
【0065】
また、溶剤の含有割合が、ポリイソシアネート成分100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、1質量部以上、より好ましくは、2質量部以上である。また、ポリイソシアネート成分100質量部に対して、溶剤の含有割合が、例えば、50質量部以下、好ましくは、30質量部以下、より好ましくは、10質量部以下である。
【0066】
B液は、例えば、必須成分として、上記の活性水素基含有成分を含有する。また、B液は、例えば、任意成分として、上記の添加剤を含有し、好ましくは、上記の無機充填材、上記の可塑剤、および、上記の溶剤を含有する。とりわけ好ましくは、B液は、活性水素基含有成分、無機充填材、可塑剤および溶剤からなる。このような場合、B液は、例えば、活性水素基含有成分、無機充填材、可塑剤および溶剤を、公知の方法で混合することにより、調製される。なお、B液において、各成分の含有割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0067】
例えば、活性水素基含有成分の含有割合が、活性水素基含有成分、無機充填材、可塑剤および溶剤の総量に対して、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、1質量%以上、より好ましくは、2質量%以上である。また、活性水素基含有成分の含有割合が、活性水素基含有成分、無機充填材、可塑剤および溶剤の総量に対して、例えば、50質量%以下、好ましくは、30質量%以下、より好ましくは、10質量%以下である。
【0068】
また、例えば、無機充填材の含有割合が、活性水素基含有成分、無機充填材、可塑剤および溶剤の総量に対して、例えば、40質量%以上、好ましくは、50質量%以上、より好ましくは、60質量%以上である。また、無機充填材の含有割合が、活性水素基含有成分、無機充填材、可塑剤および溶剤の総量に対して、例えば、90質量%以下、好ましくは、80質量%以下、より好ましくは、70質量%以下である。
【0069】
また、例えば、可塑剤の含有割合が、活性水素基含有成分、無機充填材、可塑剤および溶剤の総量に対して、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上、より好ましくは、10質量%以上である。また、可塑剤の含有割合が、活性水素基含有成分、無機充填材、可塑剤および溶剤の総量に対して、例えば、60質量%以下、好ましくは、40質量%以下、より好ましくは、20質量%以下である。
【0070】
また、例えば、溶剤の含有割合が、活性水素基含有成分、無機充填材、可塑剤および溶剤の総量に対して、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上、より好ましくは、10質量%以上である。また、溶剤の含有割合が、活性水素基含有成分、無機充填材、可塑剤および溶剤の総量に対して、例えば、60質量%以下、好ましくは、40質量%以下、より好ましくは、20質量%以下である。
【0071】
また、無機充填材の含有割合が、活性水素基含有成分100質量部に対して、例えば、500質量部以上、好ましくは、900質量部以上、より好ましくは、1000質量部以上である。また、無機充填材の含有割合が、活性水素基含有成分100質量部に対して、例えば、4000質量部以下、好ましくは、2000質量部以下、より好ましくは、1500質量部以下である。
【0072】
また、可塑剤の含有割合が、活性水素基含有成分100質量部に対して、例えば、100質量部以上、好ましくは、200質量部以上、より好ましくは、250質量部質量部以上である。また、可塑剤の含有割合が、活性水素基含有成分100質量部に対して、例えば、1000質量部以下、好ましくは、500質量部以下、より好ましくは、300質量部以下である。
【0073】
また、溶剤の含有割合が、活性水素基含有成分100質量部に対して、例えば、50質量部以上、好ましくは、100質量部以上、より好ましくは、150質量部質量部以上である。また、溶剤の含有割合が、活性水素基含有成分100質量部に対して、例えば、500質量部以下、好ましくは、300質量部以下、より好ましくは、200質量部以下である。
【0074】
(5)樹脂硬化物
ポリウレタン樹脂組成物は、ポリイソシアネート成分と活性水素基含有成分との反応によって、硬化する。より具体的には、ポリウレタン樹脂組成物が、2液型樹脂組成物である場合には、ポリウレタン樹脂組成物の使用時に、A液およびB液が混合される。これにより、ポリイソシアネート成分と活性水素基含有成分とがウレタン化反応し、ポリウレタン樹脂組成物が硬化する。
【0075】
A液およびB液の混合割合は、例えば、A液中のポリイソシアネート成分中のイソシアネート基と、B液中の活性水素基含有成分中の活性水素基(好ましくは、アミノ基)とのモル比に応じて、設定される。
【0076】
より具体的には、B液中の活性水素基含有成分の活性水素基に対する、A液中のポリイソシアネート成分のイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/活性水素基)が、例えば、0.5以上、好ましくは、0.7以上、より好ましくは、0.9以上、さらに好ましくは、1.0以上、さらに好ましくは、1.0を超過、とりわけ好ましくは、1.1以上である。また、B液中の活性水素基含有成分の活性水素基に対する、A液中のポリイソシアネート成分のイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/活性水素基)が、例えば、5.0以下、好ましくは、3.0以下、より好ましくは、2.0以下である。
【0077】
A液およびB液の混合物は、必要により脱泡される。そして、混合物は、必要に応じて、所定の型内に注入され、硬化反応(ウレタン硬化)する。
【0078】
硬化条件は、特に制限されない。例えば、硬化温度が、例えば、0℃以上、好ましくは、5℃以上である。また、硬化温度が、例えば、80℃以下、好ましくは、40℃以下である。また、硬化時間が、例えば、10時間以上、好ましくは、24時間以上である。また、硬化時間が、例えば、20日以下、好ましくは、10日以下である。
【0079】
これにより、ポリウレタン樹脂組成物の硬化物(樹脂硬化物)が得られる。ポリウレタン樹脂組成物の硬化物は、必要に応じて、エージングされる。
【0080】
エージング条件は、特に制限されない。例えば、エージング温度が、例えば、0℃以上、好ましくは、5℃以上である。また、エージング温度が、例えば、40℃以下、好ましくは、30℃以下である。また、エージング時間が、例えば、1時間以上、好ましくは、2時間以上である。また、エージング時間が、例えば、5日以下、好ましくは、3日以下である。
【0081】
(6)作用効果
上記のポリウレタン樹脂組成物において、活性水素基含有成分は、ジエチルトルエンポリアミンと、ポリオキシアルキレンポリアミンとを含有する。また、ジエチルトルエンポリアミンと、ポリオキシアルキレンポリアミンとの含有割合が、所定範囲に調整されている。そのため、ポリウレタン樹脂組成物は、優れたポットライフおよび優れた山立ち性を有する。
【0082】
すなわち、特許文献1に記載の2液硬化型ウレア防水材は、十分なポットライフを有していない。より具体的には、B液において、ジエチルトルエンジアミンに由来するアミノ基([25.7質量部×官能基数2/分子量178]=0.29モル部)の含有割合が、ポリオキシアルキレンポリアミンに由来するアミノ基の含有割合([100質量部×官能基数2/分子量2000]+[17.1質量部×官能基数3/分子量5000]=0.11モル部)に対して、2.6倍程度である。そのため、特許文献1に記載の2液硬化型ウレア防水材において、A液およびB液の混合物のポットライフが、十分ではないという不具合がある。
【0083】
これに対して、上記のポリウレタン樹脂組成物において、活性水素基含有成分は、ジエチルトルエンポリアミンと、ポリオキシアルキレンポリアミンとを含有する。また、ジエチルトルエンポリアミンと、ポリオキシアルキレンポリアミンとの含有割合が、上記の通り、調整されている。そのため、上記のポリウレタン樹脂組成物は、優れたポットライフを有する。さらに、上記のポリウレタン樹脂組成物は、優れた山立ち性を有する。
【0084】
とりわけ、上記のポリウレタン樹脂組成物において、イソシアネート基末端プレポリマーの原料ポリイソシアネートが脂環族ポリイソシアネートを含有していれば、原料ポリイソシアネートが芳香族ポリイソシアネートである場合に比べて、とりわけ優れたポットライフが得られる。
【0085】
一方、イソシアネート基末端プレポリマーの原料ポリイソシアネートが、脂環族ポリイソシアネートを含有している場合、原料ポリイソシアネートが芳香族ポリイソシアネートである場合に比べて、山立ち性が低下する場合がある。
【0086】
しかし、上記のポリウレタン樹脂組成物では、ジエチルトルエンポリアミンと、ポリオキシアルキレンポリアミンとの含有割合が、上記の通り、調整されている。そのため、イソシアネート基末端プレポリマーの原料ポリイソシアネートが脂環族ポリイソシアネートを含有している場合であっても、優れた山立ち性が得られる。
【0087】
そのため、上記のポリウレタン樹脂組成物は、ポットライフおよび山立ち性が要求される各種産業分野において、好適に使用される。より具体的には、上記のポリウレタン樹脂組成物は、弾性舗装材の分野において、好適に使用される。
【0088】
2.弾性舗装材
弾性舗装材は、上記のポリウレタン樹脂組成物の硬化物を含有する。すなわち、好ましくは、上記のポリウレタン樹脂組成物の硬化物が、弾性舗装材として使用される。
【0089】
上記のポリウレタン樹脂組成物の硬化物を弾性舗装材として使用する場合、例えば、上記したポリウレタン樹脂組成物を、公知の施工方法によって、任意の場所に施工する。
【0090】
この方法では、好ましくは、硬化物の表面に凹凸形状が形成されるように、ポリウレタン樹脂組成物を施工する。施工方法としては、例えば、ローラーエンボス法およびスプレーエンボス法が挙げられる。
【0091】
ローラーエンボス法では、例えば、まず、任意の場所を素地調整し、下地を形成する。次いで、下地に、プライマーを均一塗布する。なお、塗工方法は、特に制限されず、公知の方法が採用される。次いで、ポリウレタン樹脂組成物の表面(平坦面)を、エンボスローラー処理する。これにより、ポリウレタン樹脂組成物の表面に、凹凸形状を形成する。その後、ポリウレタン樹脂組成物を、上記の方法で硬化させる。これにより、下地の上において、ポリウレタン樹脂組成物の硬化物を形成できる。必要に応じて、ポリウレタン樹脂組成物の硬化物の表面(凹凸面)を、トップコート処理する。
【0092】
このようなポリウレタン樹脂組成物の硬化物は、表面に凹凸形状を有する。そのため、ポリウレタン樹脂組成物の硬化物を、表面に凹凸形状を有する弾性舗装材として、使用できる。
【0093】
スプレーエンボス法では、上記と同様、まず、任意の場所を素地調整し、下地を形成する。次いで、下地に、プライマーを塗布する。次いで、プライマー上に、ポリウレタン樹脂組成物を、スプレー法により塗布する。これにより、ポリウレタン樹脂組成物を塗布するとともに、凹凸形状を形成する。その後、ポリウレタン樹脂組成物を、上記の方法で硬化させる。これにより、下地の上において、ポリウレタン樹脂組成物の硬化物を形成できる。必要に応じて、ポリウレタン樹脂組成物の硬化物の表面(凹凸面)を、トップコート処理する。
【0094】
このようなポリウレタン樹脂組成物の硬化物も、表面に凹凸形状を有する。そのため、ポリウレタン樹脂組成物の硬化物を、表面に凹凸形状を有する弾性舗装材として、使用できる。
【0095】
そして、上記の弾性舗装材は、上記のポリウレタン樹脂組成物の硬化物を含有する。そのため、上記の弾性舗装材は、優れたポットライフに由来して生産性よく製造され、また、優れた山立ち性に由来して、優れた凹凸形状を有する。
【実施例0096】
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメ-タなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメ-タなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0097】
<ポリイソシアネート成分>
製造例1
172.7質量部のイソホロンジイソシアネート(エボニックジャパン製)と、619.9質量部のポリエーテルポリオール(三井化学SKCポリウレタン製、商品名アクトコールDiol2000、数平均分子量2000、平均水酸基数2)と、207.4質量部のポリエーテルポリオール(三井化学SKCポリウレタン製、商品名アクトコールTriol3000、数平均分子量3000、平均水酸基数3)とを、窒素雰囲気下、95℃で4時間加熱混合した。これにより、イソシアネート基末端プレポリマーとしてのIPDI系プレポリマーを得た。IPDI系プレポリマーのイソシアネート基含有率(JIS K 7301(1995)に準拠)は、3.05質量%であった。
【0098】
製造例2
191.9質量部の4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(東ソー製)と、605.5質量部のポリエーテルポリオール(三井化学SKCポリウレタン製、商品名アクトコールDiol2000、数平均分子量2000、平均水酸基数2)と、202.6質量部のポリエーテルポリオール(三井化学SKCポリウレタン製、商品名アクトコールTriol3000、数平均分子量3000、平均水酸基数3)とを、窒素雰囲気下、95℃で4時間加熱混合した。これにより、イソシアネート基末端プレポリマーとしてのMDI系プレポリマーを得た。MDI系プレポリマーのイソシアネート基含有率(JIS K 7301(1995)に準拠)は、3.05質量%であった。
【0099】
<活性水素基含有成分>
準備例1
ジエチルトルエンポリアミンとして、商品名エタキュア100(三井化学製、アミノ基数2)を準備した。
【0100】
準備例2
ポリオキシアルキレンポリアミンとして、商品名ジェファーミンD-2000(ポリオキシプロピレンジアミン、ハンツマン製、数平均分子量2000、平均アミノ基数2)を準備した。
【0101】
準備例3
ポリオキシアルキレンポリアミンとして、商品名ジェファーミンD-230(ポリオキシプロピレンジアミン、ハンツマン製、数平均分子量230、平均アミノ基数2)を準備した。
【0102】
準備例4
ポリオキシアルキレンポリアミンとして、商品名ジェファーミンT-403(ポリオキシプロピレントリアミン、ハンツマン製、数平均分子量440、平均アミノ基数3)を準備した。
【0103】
<ポリウレタン樹脂組成物>
実施例1~6および比較例1~2
表1に記載の処方に従って、ポリイソシアネート成分と、溶剤とを混合し、A液を調製した。
【0104】
また、表1に記載の処方に従って、ジエチルトルエンポリアミンおよびポリオキシプロピレンポリアミンと、無機充填材(商品名シーレッツ200、炭酸カルシウム、丸尾カルシウム製)、可塑剤(ジイソノニルフタレート、DINP)および溶剤(酢酸ブチル)とを混合し、活性水素基含有成分(B液)を調製した。
【0105】
これにより、A液およびB液を備えるポリウレタン樹脂組成物(2液硬化型ポリウレタン樹脂)を得た。
【0106】
次いで、表1に記載の処方に従って、A液およびB液を混合し、混合物を得た。なお、B液中の活性水素基含有成分のアミノ基に対する、A液中のポリイソシアネート成分のイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/アミノ基)が1.14となる割合で、A液およびB液を混合した。
【0107】
混合物を脱泡し、後述の評価方法に応じた所定の型に流し込み、23℃において相対湿度55%で7日間硬化させた。これにより、硬化物を得た。その後、硬化物を脱型し、23℃において相対湿度55%で2日間エージングした。
【0108】
<評価>
(1)ポットライフ
表1に記載の処方に従って、A液を撹拌容器に計り取った。次いで、表1に記載の処方に従って、撹拌容器に、B液を加え、A液およびB液を常温で3分間撹拌混合した。そして、A液およびB液の混合物の粘度を測定した。
【0109】
より具体的には、上記の混合物100gを100mL容器に入れ、混合物の粘度を、25℃の恒温水槽中で、B-8M型回転粘度計を使用して測定した。なお、No.4のローターを使用した。また、回転数は6rpmであった。粘度は、1分毎に測定された。
【0110】
そして、A液およびB液の混合後、混合物の粘度(25℃)が10万mPa・sに到達するまでの時間を、ポットライフ(可使時間)として測定した。その結果を表中に示す。
【0111】
(2)機械物性
表1に記載の処方に従って、A液を撹拌容器に計り取った。次いで、表1に記載の処方に従って、撹拌容器に、B液を加え、A液およびB液を常温で3分間撹拌混合した。そして、A液およびB液の混合物を、脱泡および硬化させて、硬化物からなるシートを得た。
【0112】
より具体的には、JIS A6021(2011年)『「屋根用塗膜防水材」のウレタンゴム系』に記載の方法に準拠して、テフロン(登録商標)でコーティングした型に、混合物を流し込み、約2mm厚のシートを作製した。
【0113】
なお、シートの作成では、上記の混合物を、23℃、相対湿度50%の条件で7日硬化させた後、脱型し、裏面を上にして、23℃、相対湿度50%の条件で2日間養生した。
【0114】
そして、得られたシートについて、JIS K6253(2012)に準拠して、ショアA硬度(HsA)を測定した。また、JIS A6021(2011)に準拠して、引張強度(TS)、破断伸び(EL)および引裂強度(TR)を、それぞれ測定した。その結果を表中に示す。
【0115】
(3)山立ち性
表1に記載の処方に従って、A液を撹拌容器に計り取った。次いで、表1に記載の処方に従って、撹拌容器に、B液を加え、A液およびB液を常温で3分間撹拌混合した。そして、A液およびB液の混合物の山立ち性を評価した。
【0116】
より具体的には、上記の混合物100gを100mL容器に入れ、25℃の恒温水槽中で、温度調整した。次いで、上記の混合物80gを、A4サイズ(210mm×297mm)のポリプロピレン板に均一に塗工した。その後、塗工された混合物の上に、ハンドローラー(エンボスローラー)を1往復させ、混合物の表面に、凹凸形状を付与した。
【0117】
その後、上記の混合物を、23℃、相対湿度50%の条件で7日硬化させた後、23℃、相対湿度50%の条件で2日間養生した。これにより、硬化物を得た。
【0118】
硬化物の表面の凹凸形状を、目視で評価した。その結果を表中に示す。また、評価の基準を下記する。
【0119】
○;凹凸形状の高低差が大きく、頂点が尖っていた。
△;凹凸形状の高低差が中程度であり、頂点がわずかに尖っていた。
×;凹凸形状の高低差が小さく、頂点が尖っていなかった。
【0120】
図1は、比較例1の硬化物(山立ち性×)、実施例2の硬化物(山立ち性○)、および、実施例1の硬化物(山立ち性△)を示す写真である。
【0121】
【表1】
図1