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特開2024-16200キメラ抗原受容体療法のT細胞の増殖動態及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016200
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】キメラ抗原受容体療法のT細胞の増殖動態及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20240130BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240130BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240130BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240130BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240130BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20240130BHJP
   C07K 14/47 20060101ALN20240130BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
C12Q1/06
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/04
A61K47/68
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K35/17
C07K19/00
C07K14/47
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023190807
(22)【出願日】2023-11-08
(62)【分割の表示】P 2021505310の分割
【原出願日】2019-08-01
(31)【優先権主張番号】62/713,994
(32)【優先日】2018-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/756,391
(32)【優先日】2018-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514266932
【氏名又は名称】カイト ファーマ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Kite Pharma, Inc
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロッシ ジョン エム.
(72)【発明者】
【氏名】ボット エイドリアン アイ.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】有効用量のキメラ抗原受容体が遺伝子改変されたT細胞を製造する方法を提供する。
【解決手段】有効用量の操作されたT細胞を製造する方法であって、(a)キメラ抗原受容体(CAR)を含む操作されたT細胞の集団を準備することと、(b)前記集団のT細胞増殖能力を測定することと、(c)前記集団の前記T細胞増殖能力に基づいて、悪性腫瘍の治療を必要とする患者における悪性腫瘍を治療するための有効用量の操作されたT細胞を準備することと、を含む、方法である。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効用量の操作されたT細胞を製造する方法であって、
(a)キメラ抗原受容体(CAR)を含む操作されたT細胞の集団を準備することと、
(b)前記集団のT細胞増殖能力を測定することと、
(c)前記集団の前記T細胞増殖能力に基づいて、悪性腫瘍の治療を必要とする患者における悪性腫瘍を治療するための有効用量の操作されたT細胞を準備することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記T細胞増殖能力は、製造過程の間に測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記T細胞増殖能力は、倍加時間の測定によって決定される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記倍加時間は、約1日~4.7日、約1.8日~4.7日、約1日~1.5日、約1.3日未満、又は約1.5日未満である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
操作されたT細胞を製造する方法であって、
(a)キメラ抗原受容体(CAR)を含む操作されたT細胞をIL-2の存在下で増殖させることと、
(b)集団の倍加時間を増殖過程の間に測定することと、
(c)前記操作されたT細胞を増殖後に採取することと、
(d)前記操作されたT細胞の前記倍加時間に基づいて、有効用量の操作されたT細胞を準備することと、
を含む、方法。
【請求項6】
前記操作されたT細胞は、IL-2の存在下で約2日~7日にわたって増殖される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記倍加時間は、前記操作されたT細胞の増殖開始時及び採取時の総生存細胞の数を決定することによって測定される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
患者における悪性腫瘍を治療する方法であって、
(a)キメラ抗原受容体(CAR)を含む操作されたT細胞の集団における1つ以上の属性のレベルを測定することと、
(b)参照レベルと比較した前記測定された1つ以上の属性のレベルに基づいて、前記操作されたT細胞による治療に対する患者の奏効を決定することと、
(c)治療的有効用量の前記操作されたT細胞を前記患者に投与することと、
を含む、方法。
【請求項9】
前記1つ以上の属性は、倍加時間又はT細胞表現型である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記T細胞表現型は、CCR7及びCD45RA二重陽性細胞のパーセンテージによって決定される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記倍加時間は、約1日~4.7日、約1.8日~4.7日、約1日~1.5日の間、又は約1.5日未満である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記キメラ抗原受容体は、腫瘍抗原を標的とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記キメラ抗原受容体は、腫瘍関連表面抗原、例えば5T4、アルファフェトプロテイン(AFP)、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、BCMA、B-ヒト絨毛膜性生殖腺刺激ホルモン、CA-125、癌胚抗原(CEA)、CD123、CD133、CD138、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD25、CD30、CD33、CD34、CD4、CD40、CD44、CD56、CD8、CLL-1、c-Met、CMV特異抗原、CS-1、CSPG4、CTLA-4、DLL3、ジシアロガングリオシドGD2、膵管上皮ムチン、EBV特異抗原、EGFR変異体III(EGFRvIII)、ELF2M、エンドグリン、エフリンB2、上皮増殖因子受容体(EGFR)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、上皮性腫瘍抗原、ErbB2(HER2/neu)、線維芽細胞関連タンパク質(fap)、FLT3、葉酸結合タンパク質、GD2、GD3、神経膠腫関連抗原、スフィンゴ糖脂質、gp36、HBV特異抗原、HCV特異抗原、HER1-HER2、HER2-HER3の組み合わせ、HERV-K、高分子量黒色腫関連抗原(HMW-MAA)、HIV-1型エンベロープ糖タンパク質gp41、HPV特異抗原、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、IGFI受容体、IGF-II、IL-11Rα、IL-13R-a2、インフルエンザウイルス特異抗原、CD38、インスリン増殖因子(IGFI)-1、腸カルボキシルエステラーゼ、κ鎖、LAGA-1a、λ鎖、ラッサ熱ウイルス特異抗原、レクチン反応性AFP、系譜特異又は組織特異抗原、例えばCD3、MAGE、MAGE-A1、主要組織適合性複合体(MHC)分子、腫瘍特異的ペプチドエピトープを提示する主要組織適合性複合体(MHC)分子、M-CSF、黒色腫関連抗原、メソテリン、MN-CA IX、MUC-1、mut hsp70-2、変異p53、変異ras、好中球エラスターゼ、NKG2D、Nkp30、NY-ESO-1、p53、PAP、プロスターゼ、前立腺特異抗原(PSA)、前立腺癌腫瘍抗原-1(PCTA-1)、前立腺特異抗原タンパク質、STEAP1、STEAP2、PSMA、RAGE-1、ROR1、RU1、RU2(AS)、表面接着分子、サバイビン及びテロメラーゼ、TAG-72、フィブロネクチンのエクストラドメインA(EDA)及びエクストラドメインB(EDB)、並びにテネイシンCのA1ドメイン(TnC
A1)、サイログロブリン、腫瘍間質抗原、血管内皮増殖因子受容体-2(VEGFR2)、ウイルス特異表面抗原、例えばHIV特異抗原(例えば、HIV gp120)、並びにこれらの表面抗原の任意の誘導体又は変異体から選択される腫瘍抗原を標的とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記悪性腫瘍は、固形腫瘍、肉腫、癌腫、リンパ腫、多発性骨髄腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(NHL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBC)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、形質転換後濾胞性リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫(SMZL)、慢性若しくは急性の白血病、急性骨髄白血病、慢性骨髄白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)(非T細胞ALLを含む)、慢性リンパ性白血病(CLL)、T細胞リンパ腫、1つ以上のB細胞急性リンパ性白血病(「BALL」)、T細胞急性リンパ性白血病(「TALL」)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、B細胞前リンパ球性白血病、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、毛様細胞白血病、小細胞型若しくは大細胞型濾胞性リンパ腫、悪性リンパ増殖性状態、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、骨髄異形成及び骨髄異形成症候群、形質芽球性リンパ腫、形質細胞様樹状細胞腫瘍、ワルデンストレームマクログロブリン血症、形質細胞増殖性障害(例えば、無症候性骨髄腫(くすぶり型多発性骨髄腫又は無痛性骨髄腫))、意義不明の単クローン性γグロブリン血症(MGUS)、形質細胞腫(例えば、形質細胞異常増殖症、孤在性骨髄腫、孤在性形質細胞腫、髄外性形質細胞腫、及び多発性形質細胞腫)、全身性アミロイド軽鎖アミロイドーシス、POEMS症候群(Crow-Fukase症候群、高月病、及びPEP症候群としても知られる)、又はそれらの組み合わせである、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記治療的有効用量は、75×10個~200×10個の操作されたT細胞である、請求項8~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
操作されたT細胞の集団を製造する又は操作されたT細胞の集団の質を決定する方法であって、
(a)キメラ抗原受容体(CAR)を含む操作されたT細胞の集団を準備することと、
(b)前記集団の1つ以上の属性のレベルを測定することと、
(c)参照レベルと比較した前記測定された1つ以上の属性のレベルに基づいて、前記集団が、悪性腫瘍の治療を必要とする患者における悪性腫瘍を治療するのに適切であるかどうかを決定することと、
を含む、方法。
【請求項17】
有効用量の操作されたT細胞を製造する方法であって、
(a)キメラ抗原受容体(CAR)を含む操作されたT細胞の集団を準備することと、
(b)前記集団の1つ以上の属性のレベルを測定することと、
(c)参照レベルと比較した前記測定された1つ以上の属性のレベルに基づいて、悪性腫瘍の治療を必要とする患者における悪性腫瘍を治療するための有効用量の操作されたT細胞を準備することと、
を含む、方法。
【請求項18】
有効用量の操作されたT細胞を製造する方法であって、
(a)細胞の集団における1つ以上の表現型マーカーの量を測定することと、
(b)前記測定された1つ以上の表現型マーカーの量に基づいて、癌の治療を必要とする患者における癌を治療するための有効用量の操作されたT細胞を準備することと、
を含む、方法。
【請求項19】
前記1つ以上の表現型マーカーは、CCR7又はCD45RAである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
CARを発現するように前記T細胞の集団を操作することを更に含む、請求項18又は19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年8月2日付で出願された米国仮特許出願第62/713,994号及び2018年11月6日付で出願された米国仮特許出願第62/756,391号に対する優先権を主張し、これら各々の全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
【0002】
[配列表]
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出された配列表を含み、その全体が引用することにより本明細書の一部をなす。2019年7月22日付けで作製された上記ASCIIコピーの名前はK-1066_P2F_SL.txtであり、8キロバイトのサイズである。
【背景技術】
【0003】
ヒト癌は、元は正常細胞で構成され、この正常細胞が遺伝的又はエピジェネティックな変換を受けて異常な癌細胞となる。そうすることで、癌細胞は、正常細胞によって発現されるものとは明確に異なるタンパク質及び他の抗原を発現し始める。これらの異常な腫瘍抗原は、身体の自然免疫系によって、癌細胞を特異的に標的とし死滅させるのに使用され得る。しかしながら、癌細胞は、Tリンパ球及びBリンパ球等の免疫細胞が癌細胞を標的とすることに成功しないように様々な機構を利用する。
【0004】
ヒトT細胞療法は、患者において癌細胞を標的とし、死滅させるために富化又は改変されたヒトT細胞に頼っている。T細胞が特定の癌細胞を標的とし死滅させる能力を増加するため、特定の標的癌細胞へとT細胞を方向づけるコンストラクトを発現するようT細胞を操作する方法が開発された。特定の腫瘍抗原と相互作用することができる結合ドメインを含む、キメラ抗原受容体(CAR)は、T細胞が特定の腫瘍抗原を発現する癌細胞を標的とし、死滅させることを可能とする。
【0005】
CAR陽性T細胞の属性(例えば、増殖動態)が臨床転帰とどのように相関するかを理解することが求められている。
【発明の概要】
【0006】
一態様では、本開示は、有効用量の操作されたT細胞を製造する方法であって、(a)キメラ抗原受容体(CAR)を含む操作されたT細胞の集団を準備することと、(b)集団のT細胞増殖能力を測定することと、(c)集団のT細胞増殖能力に基づいて、悪性腫瘍の治療を必要とする患者における悪性腫瘍を治療するための有効用量の操作されたT細胞を準備することとを含む、方法を提供する。
【0007】
幾つかの実施の形態では、T細胞増殖能力は、製造過程の間に測定される。
【0008】
幾つかの実施の形態では、T細胞増殖能力は、倍加時間の測定によって決定される。
【0009】
幾つかの実施の形態では、倍加時間は、約1日~4.7日、約1.8日~4.7日、約1日~1.5日又は約1.5日未満である。
【0010】
幾つかの実施の形態では、倍加時間は、約1.3日、約1.5日、又は約1.8日である。
【0011】
別の態様では、本開示は、操作されたT細胞を製造する方法であって、(a)操作されたT細胞をIL-2の存在下で増殖させることと、ここで、操作されたT細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)を含む;(b)集団の倍加時間を増殖過程の間に測定することと、(c)操作されたT細胞を増殖後に採取することと、(d)操作されたT細胞の倍加時間に基づいて、有効用量の操作されたT細胞を準備することとを含む、方法を提供する。
【0012】
幾つかの実施の形態では、操作されたT細胞を、IL-2の存在下で約2日~7日にわたって増殖させる。
【0013】
幾つかの実施の形態では、倍加時間は、操作されたT細胞の増殖開始時及び採取時の総生存細胞の数を決定することによって測定される。
【0014】
別の態様では、本開示は、患者における悪性腫瘍を治療する方法であって、(a)キメラ抗原受容体(CAR)を含む操作されたT細胞の集団における1つ以上の属性のレベルを測定することと、(b)参照レベルと比較した測定された1つ以上の属性のレベルに基づいて、操作されたT細胞による治療に対する患者の奏効を決定することと、(c)治療的有効用量の操作されたT細胞を前記患者に投与することとを含む、方法を提供する。
【0015】
幾つかの実施の形態では、1つ以上の属性は、倍加時間又はT細胞表現型である。
【0016】
幾つかの実施の形態では、T細胞表現型は、CCR7及びCD45RA二重陽性細胞のパーセンテージによって決定される。
【0017】
幾つかの実施の形態では、倍加時間は、約1日~4.7日、約1.8日~4.7日、約1日~1.5日の間、又は約1.5日未満である。
【0018】
幾つかの実施の形態では、キメラ抗原受容体は、腫瘍抗原を標的とする。
【0019】
幾つかの実施の形態では、キメラ抗原受容体は、腫瘍関連表面抗原、例えば5T4、アルファフェトプロテイン(AFP)、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、BCMA、B-ヒト絨毛膜性生殖腺刺激ホルモン、CA-125、癌胚抗原(CEA)、癌胚抗原(CEA)、CD123、CD133、CD138、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD25、CD30、CD33、CD34、CD4、CD40、CD44、CD56、CD8、CLL-1、c-Met、CMV特異抗原、CS-1、CSPG4、CTLA-4、DLL3、ジシアロガングリオシドGD2、膵管上皮ムチン、EBV特異抗原、EGFR変異体III(EGFRvIII)、ELF2M、エンドグリン、エフリンB2、上皮増殖因子受容体(EGFR)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、上皮性腫瘍抗原、ErbB2(HER2/neu)、線維芽細胞関連タンパク質(fap)、FLT3、葉酸結合タンパク質、GD2、GD3、神経膠腫関連抗原、スフィンゴ糖脂質、gp36、HBV特異抗原、HCV特異抗原、HER1-HER2、HER2-HER3の組み合わせ、HERV-K、高分子量黒色腫関連抗原(HMW-MAA)、HIV-1型エンベロープ糖タンパク質gp41、HPV特異抗原、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、IGFI受容体、IGF-II、IL-11Rアルファ、IL-13R-a2、インフルエンザウイルス特異抗原、CD38、インスリン増殖因子(IGFI)-1、腸カルボキシルエステラーゼ、κ鎖、LAGA-1a、λ鎖、ラッサ熱ウイルス特異抗原、レクチン反応性AFP、系譜特異又は組織特異抗原、例えばCD3、MAGE、MAGE-A1、主要組織適合性複合体(MHC)分子、腫瘍特異的ペプチドエピトープを提示する主要組織適合性複合体(MHC)分子、M-CSF、黒色腫関連抗原、メソテリン、MN-CA IX、MUC-1、mut hsp70-2、変異p53、変異ras、好中球エラスターゼ、NKG2D、Nkp30、NY-ESO-1、p53、PAP、プロ
スターゼ、前立腺特異抗原(PSA)、前立腺癌腫瘍抗原-1(PCTA-1)、前立腺特異抗原タンパク質、STEAP1、STEAP2、PSMA、RAGE-1、ROR1、RU1、RU2(AS)、表面接着分子、サバイビング(surviving)及びテロメラー
ゼ、TAG-72、フィブロネクチンのエクストラドメインA(EDA)及びエクストラドメインB(EDB)、並びにテネイシンCのA1ドメイン(TnC A1)、サイログロブリン、腫瘍間質抗原、血管内皮増殖因子受容体-2(VEGFR2)、ウイルス特異表面抗原、例えばHIV特異抗原(例えば、HIV gp120)、並びにこれらの表面抗原の任意の誘導体又は変異体から選択される腫瘍抗原を標的とする。
【0020】
幾つかの実施の形態では、悪性腫瘍は、固形腫瘍、肉腫、癌腫、リンパ腫、多発性骨髄腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(NHL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBC:primary mediastinal large B cell lymphoma)、びまん性大細胞型B細胞リ
ンパ腫(DLBCL:diffuse large B cell lymphoma)、濾胞性リンパ腫(FL)、形
質転換後濾胞性リンパ腫(transformed follicular lymphoma)、脾辺縁帯リンパ腫(S
MZL:splenic marginal zone lymphoma)、慢性若しくは急性の白血病、急性骨髄白血病、慢性骨髄白血病(chronic myeloid leukemia)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)(非T細胞ALLを含む)、慢性リンパ性白血病(CLL)、T細胞リンパ腫、1つ以上のB細胞急性リンパ性白血病(「BALL」)、T細胞急性リンパ性白血病(「TALL」)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、B細胞前リンパ球性白血病、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、毛様細胞白血病、小細胞型若しくは大細胞型濾胞性リンパ腫、悪性リンパ増殖性状態、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、骨髄異形成及び骨髄異形成症候群、形質芽球性リンパ腫、形質細胞様樹状細胞腫瘍、ワルデンストレームマクログロブリン血症、形質細胞増殖性障害(例えば、無症候性骨髄腫(くすぶり型多発性骨髄腫又は無痛性骨髄腫))、意義不明の単クローン性γグロブリン血症(MGUS)、形質細胞腫(例えば、形質細胞異常増殖症、孤在性骨髄腫、孤在性形質細胞腫、髄外性形質細胞腫、及び多発性形質細胞腫)、全身性アミロイド軽鎖アミロイドーシス、POEMS症候群(Crow-Fukase症候群、高月病、及びPEP症候群としても知られる)、又はそれらの組み合わせである。
【0021】
幾つかの実施の形態では、治療的有効用量は、75×10個~200×10個の操作されたT細胞である。
【0022】
幾つかの実施の形態では、奏効は、操作されたT細胞の投与後、約1ヶ月、約3ヶ月、約6ヶ月、約9ヶ月、又は約12ヶ月以内に測定される。
【0023】
幾つかの実施の形態では、1つ以上の属性は、操作されたT細胞の投与の前に測定される。
【0024】
幾つかの実施の形態では、操作されたT細胞は、自己T細胞又は同種異系T細胞である。
【0025】
更に別の態様では、本開示は、操作されたT細胞の集団を製造する又は操作されたT細胞の集団の質を決定する方法であって、(a)キメラ抗原受容体(CAR)を含む操作されたT細胞の集団を準備することと、(b)集団の1つ以上の属性のレベルを測定することと、(c)参照レベルと比較した測定された1つ以上の属性のレベルに基づいて、集団が、悪性腫瘍の治療を必要とする患者における悪性腫瘍を治療するのに適切であるかどうかを決定することとを含む、方法を提供する。
【0026】
別の態様では、本開示は、有効用量の操作されたT細胞を製造する方法であって、(a
)キメラ抗原受容体(CAR)を含む操作されたT細胞の集団を準備することと、(b)集団の1つ以上の属性のレベルを測定することと、(c)参照レベルと比較した測定された1つ以上の属性のレベルに基づいて、悪性腫瘍の治療を必要とする患者における悪性腫瘍を治療するための有効用量の操作されたT細胞を準備することとを含む、方法を提供する。
【0027】
更に更に別の態様では、本開示は、有効用量の操作されたT細胞を製造する方法であって、(a)細胞の集団における1つ以上の表現型マーカーの量を測定することと、(b)測定された1つ以上の表現型マーカーの量に基づいて、癌の治療を必要とする患者における癌を治療するための有効用量の操作されたT細胞を準備することとを含む、方法を提供する。
【0028】
幾つかの実施の形態では、1つの表現型マーカーは、CCR7又はCD45RAである。
【0029】
幾つかの実施の形態では、T細胞の集団は、アフェレーシス材料から得られる。
【0030】
幾つかの実施の形態では、上記方法は、CARを発現するようにT細胞の集団を操作することを更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1A及び図1Bは、客観的奏効率(ORR)がより短い倍加時間と関連性を有したことを示す図である。図1Aは、四分位分析により、ORRがより短い倍加時間と関連性を有したことを裏付ける棒グラフを示している。図1Bは、ロジスティック回帰によるモデリングを使用して、ORRがより短い倍加時間と関連性を有したことを示している。
図2図2A及び図2Bは、四分位分析(図2A)及びロジスティック回帰によるモデリング(図2B)による奏効持続(1年以上)及び培養物における倍加時間(DT)を示す図である。
図3図3A及び図3Bは、四分位分析(図3A)及びロジスティック回帰によるモデリング(図3B)によるグレード3以上の神経学的事象及び培養物における倍加時間(DT)を示す図である。
図4図4A及び図4Bは、四分位分析(図4A)及び線形単回帰(図4B)により、in vivoでのCAR T細胞生着の増加がより短い倍加時間(DT)と関連性を有し得ることを示す図である。図4C及び図4Dは、四分位分析(図4C)及び線形単回帰(図4D)により、AUC0-28が倍加時間と関連性を有し得ることを示す図である。AUC0-28は、倍加時間が長くなるほど低くなった(スピアマン分析、r=-0.29;SLR、P=0.06)。
図5図5A図5Dは、線形単回帰により、注入前に測定された培養物における倍加時間がCCR7CD45RA細胞(図5A)、CCR7細胞(図5B)のパーセンテージと関連性を有し得るが、CCR7CD45RAT細胞(図5C)又は生成物中のCD4:CD8比(図5D)とは関連性を有し得ないことを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本開示は、操作されたCAR T細胞の注入前属性(例えば、T細胞適応性)が臨床有効性及び毒性と関連性を有し得るという驚くべき知見に部分的に基づいている。幾つかの実施形態では、操作されたCAR T細胞のT細胞適応性は、in vivoでのCAR
T細胞増殖速度によって測定される。さらに、本開示は、臨床有効性及び毒性と関連性を有し得る患者から測定された免疫性因子の治療前特性を提供する。
【0033】
定義
本開示がより容易に理解されるように、まず或る特定の用語を以下に定義する。以下の用語及び他の用語に対する更なる定義は、本明細書を通して記載される。
【0034】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される、数量を特定していないもの(the singular forms "a," "an" and "the")は、文脈より別段の明確な指示がない限り複数の指示対象を含む。
【0035】
具体的に述べられない又は文脈より明らかでない限り、本明細書で使用される「又は」の用語は「又は」と「及び」の両方を含み、それらを包含すると理解される。
【0036】
本明細書において使用される場合、「及び/又は」の用語は、2つの指定される特徴又は成分の各々ともう一方とを含む、又はもう一方を含まない具体的な開示として理解される。したがって、本明細書において「A及び/又はB」等の句で使用される「及び/又は」の用語は、A及びB;A又はB;A(単独);並びにB(単独)を含むことが意図される。同様に、「A、B、及び/又はC」等の句において使用される「及び/又は」の用語は、A、B及びC;A、B又はC;A又はC;A又はB;B又はC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);並びにC(単独)の態様の各々を包含することが意図される。
【0037】
本明細書で使用される「例えば」及び「すなわち」の用語は、限定を意図せずに例として使用されるにすぎず、本明細書において明らかに列挙されるそれらの項目のみを指すものと解釈されるべきではない。
【0038】
「以上」、「少なくとも」、「それよりも多く」等の用語、例えば「少なくとも1つ」は、限定されないが、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149又は150、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000、又は示される値よりも多い値を含むと理解される。また、任意のより大きな数、又はその間の分数も含まれる。
【0039】
逆に、「以下」の用語は示される値よりも小さい各値を含む。例えば、「100ヌクレオチド以下」は、100個、99個、98個、97個、96個、95個、94個、93個、92個、91個、90個、89個、88個、87個、86個、85個、84個、83個、82個、81個、80個、79個、78個、77個、76個、75個、74個、73個、72個、71個、70個、69個、68個、67個、66個、65個、64個、63個、62個、61個、60個、59個、58個、57個、56個、55個、54個、53個、52個、51個、50個、49個、48個、47個、46個、45個、44個、43個、42個、41個、40個、39個、38個、37個、36個、35個、34個、33個
、32個、31個、30個、29個、28個、27個、26個、25個、24個、23個、22個、21個、20個、19個、18個、17個、16個、15個、14個、13個、12個、11個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個、1個及び0個のヌクレオチドを含む。また、任意のより小さな数、又はその間の分数も含まれる。
【0040】
「複数」、「少なくとも2つ」、「2以上」、「少なくとも第2の」等の用語は、限定されないが、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149又は150、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000、4000、5000以上を含むと理解される。また、任意のより大きな数、又はその間の分数も含まれる。
【0041】
本明細書を通して、「含んでいる、含む(comprising)」の文言、又は「含む(comprises)」若しくは「含んでいる(comprising)」等の変化形は、示される要素、整数若し
くは工程、又は要素、整数若しくは工程の群を含むことを含意するが、任意の他の要素、整数若しくは工程、又は要素、整数若しくは工程の群を排除しないと理解される。本明細書において「含んでいる、含む」の言葉と共に態様が記載される場合はいつでも、「からなる」及び/又は「から本質的になる」の用語で記載される他の類似の態様も提供されると理解される。
【0042】
具体的に述べられておらず又は文脈より明らかでない限り、本明細書で使用される「約」の用語は、当業者によって決定される特定の値又は組成に対する許容可能な誤差範囲に含まれる値又は組成を指し、その値又は組成がどのように測定され又は決定されるのか、すなわち測定システムの制限に部分的に依存する。例えば、「約」又は「およそ」は、当該技術分野における1回の実施当たりの1以上の標準偏差の範囲内を意味し得る。「約」又は「およそ」は、最大10%(すなわち±10%)の範囲を意味し得る。したがって、「約」は、示される値よりも10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、0.01%、又は0.001%大きい又は小さい範囲に含まれると理解され得る。例えば、約5mgは、4.5mg~5.5mgの間の任意の量を含み得る。さらに、特に生物学的なシステム又はプロセスに関して、上記用語は、或る値の最大10倍(up to an order of magnitude)又は最大5倍を意味する場
合がある。特定の値又は組成が本開示で提供される場合、別段の指示がない限り、「約」又は「およそ」の意味は、その特定の値又は組成に対する許容可能な誤差の範囲に含まれるとされる。
【0043】
本明細書に記載されるように、任意の濃度範囲、パーセンテージの範囲、比率範囲、又は整数の範囲は、別段の指示がない限り、述べられる範囲に含まれる任意の整数、また適切な場合には、その分数(或る整数の10分の1、及び100分の1等)の値を含むものと理解される。
【0044】
本明細書で使用される単位、接頭辞及び記号は、それらの国際単位系(SI:Systeme International de Unites)の容認される形態を用いて提示される。数値範囲は、その範
囲を規定する数値を含む。
【0045】
別段の規定がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、この開示が関係する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。例えば、Juo, "The Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology", 2nd ed., (2001), CRC Press、"The Dictionary of Cell & Molecular Biology", 5th ed., (2013),
Academic Press、及び"The Oxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology", Cammack et al. eds., 2nd ed, (2006), Oxford University Pressは、この開示で使用される多くの用語の一般的な辞書を当業者に提供する。
【0046】
「投与すること、投与する(Administering)」は、当業者に知られている様々な方法
及び送達システムのいずれかを使用する、被験体に対する薬剤の物理的な導入を指す。本明細書に開示される製剤のための例示的な投与経路には、例えば注射又は点滴による、静脈内投与経路、筋肉内投与経路、皮下投与経路、腹腔内投与経路、脊髄投与経路、又は他の非経口(parenteral:腸管外)投与経路が含まれる。本明細書に開示される組成物のための例示的な投与経路には、例えば注射又は点滴による、静脈内投与経路、筋肉内投与経路、皮下投与経路、腹腔内投与経路、脊髄投与経路、又は他の非経口投与経路が含まれる。本明細書で使用される「非経口投与」の句は、経腸及び局所の投与以外の、通常は注射による投与様式を意味し、限定されないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、リンパ管内、病巣内、関節腔内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、関節腔下、クモ膜下、脊髄内、硬膜外、及び胸骨内の注射及び点滴、また同様にin vivo電気穿孔を含む。幾つかの実施形態では、上記製剤は、非経口的ではない経路、例えば経口で投与される。他の非経口的ではない経路として、局所、表皮、又は粘膜の投与経路、例えば、鼻腔内、経膣的、直腸、舌下又は局所的なものが挙げられる。また、投与は、例えば1回、複数回、及び/又は1以上の延長された期間に亘って行われ得る。
【0047】
「抗体」(Ab)の用語は、限定されず、抗原に特異的に結合する糖タンパク質免疫グロブリンを含む。一般に、抗体は、ジスルフィド結合によって相互に連結された少なくとも2本の重(H)鎖及び2本の軽(L)鎖、又はそれらの抗原結合分子を含み得る。各H鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略記する)及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つの定常ドメイン、すなわちCH1、CH2及びCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略記する)及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つの定常ドメイン、すなわちCLを含む。VH領域及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存される領域が介在する、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域に更に細分され得る。VH及びVLはそれぞれ、アミノ末端からカルボキシ末端にFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4の順で並ぶ、3つのCDR及び4つのFRを含む。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。Abの定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクター細胞)及び古典的補体系の第1成分(C1q)を含む、宿主の組織又は因子に対する免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0048】
抗体として、例えば、モノクローナル抗体、組み換えにより生成された抗体、単一特異的抗体、多重特異的抗体(二重特異的抗体を含む)、ヒト抗体、操作された抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、免疫グロブリン、合成抗体、2本の重鎖分子及び2本の軽鎖分子を含む四量体抗体、抗体軽鎖単量体、抗体重鎖単量体、抗体軽鎖二量体、抗体重鎖二量体、抗体軽鎖-抗体重鎖対、イントラボディ(intrabodies)、抗体融合体(本明細書では「抗
体コンジュゲート」と称されることがある)、ヘテロコンジュゲート抗体、単一ドメイン
抗体、一価抗体、単鎖抗体又は単鎖Fv(scFv)、ラクダ化抗体、アフィボディ(affybodies)、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、ジスルフィド連結Fv(sdFv)、抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば抗-抗-Id抗体を含む)、ミニボディ(minibodies)、ドメイン抗体、合成抗体(本明細書では「抗体模倣物」と称されることがある)、及び上記のいずれかの抗原結合フラグメントが挙げられ得る。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される抗体は、ポリクローナル抗体集団を指す。
【0049】
「抗原結合分子」、「抗原結合部分」又は「抗体フラグメント」は、抗体の抗原結合部(例えばCDR)を含む任意の分子を指し、この分子は該抗体に由来する。抗原結合分子は、抗原相補性決定領域(CDR)を含み得る。抗体フラグメントの例として、限定されないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFvフラグメント、dAb、直鎖抗体、scFv抗体、並びに抗原結合分子から形成される多重特異性抗体が挙げられる。ペプチボディ(Peptibodies)(すなわち、ペプチド結合ドメインを含むFc融合分子)は、
好適な抗原結合分子の別の例である。幾つかの実施形態では、抗原結合分子は腫瘍細胞上の抗原に結合する。幾つかの実施形態では、抗原結合分子は、過剰増殖性疾患(hyperproliferative disease)に関与する細胞上の抗原、又はウイルス若しくは細菌の抗原に結合する。幾つかの実施形態では、抗原結合分子はCD19に結合する。更なる実施形態では、抗原結合分子は、その1以上の相補性決定領域(CDR)を含む、抗原に特異的に結合する抗体フラグメントである。更なる実施形態では、抗原結合分子は単鎖可変フラグメント(scFv)である。幾つかの実施形態では、抗原結合分子は、アビマー(avimers)
を含む、又はそれからなる。
【0050】
「抗原」は、免疫応答を誘発する、又は抗体若しくは抗原結合分子によって結合されることが可能な任意の分子を指す。免疫応答は、抗体産生若しくは特定の免疫適格細胞(immunologically-competent cells)の活性化のいずれか、又はそれらの両方を含み得る。
当業者は、実質的に全てのタンパク質又はペプチドを含む任意の高分子が抗原としての役割を果たし得ることを容易に理解する。抗原は内因性に発現され得て、すなわちゲノムDNAによって発現され得るか、又は組み換えによって発現され得る。抗原は、癌細胞等の或る特定の組織に特異的となり得るか、又は広く発現され得る。さらに、より大きな分子のフラグメントが抗原として作用し得る。幾つかの実施形態では、抗原は腫瘍抗原である。
【0051】
「中和する、中和すること」の用語は、リガンドに結合し、そのリガンドの生物学的効果を妨げる又は減少させる抗原結合分子、scFv、抗体、又はそのフラグメントを指す。幾つかの実施形態では、抗原結合分子、scFv、抗体、又はそのフラグメントは、リガンド上の結合部位を直接遮断する、或いは間接的な手段(リガンドの構造の又はエネルギーの変更等)によってリガンドの結合能を変更する。幾つかの実施形態では、抗原結合分子、scFv、抗体、又はそのフラグメントは、結合されるタンパク質が生体機能を実施するのを妨げる。
【0052】
「自己」の用語は、後に再導入されることになっているのと同じ個体に由来する任意の材料を指す。例えば、本明細書に記載される操作された自己細胞療法(eACT(商標))は、患者からのリンパ球の収集を含み、該リンパ球は、その後、例えばCARコンストラクトを発現するように操作した後、同じ患者に戻される(administered back)。
【0053】
「同種異系」の用語は、一個体に由来する任意の材料を指し、該材料はその後、同種の別の個体に導入される(例えば同種異系T細胞移植)。
【0054】
「形質導入」及び「形質導入された」の用語は、外来DNAがウイルスベクターによって細胞へと導入されるプロセスを指す(Jones et al., "Genetics: principles and anal
ysis," Boston: Jones & Bartlett Publ. (1998)を参照されたい)。幾つかの実施形態では、ベクターは、レトロウイルスベクター、DNAベクター、RNAベクター、アデノウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、エプスタイン-バールウイルスベクター、パポバウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、アデノウイルス随伴ベクター、レンチウイルスベクター、又はそれらの任意の組み合わせである。
【0055】
「癌」は、身体における異常な細胞の制御されていない成長を特徴とする、幅広い各種疾患のグループを指す。制御されていない細胞の分裂及び成長は、隣接する組織に侵入して、またリンパ系又は血流によって身体の離れた部分へと転移し得る、悪性腫瘍の形成をもたらす。「癌」又は「癌組織」は、腫瘍を含む場合がある。本明細書に開示される方法によって治療され得る癌の例として、限定されないが、リンパ腫、白血病、骨髄腫、及び他の白血球の悪性腫瘍(leukocyte malignancies)を含む免疫系の癌が挙げられる。幾つかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、例えば、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頚部癌、皮膚又は眼内の悪性黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門部の癌、胃癌、精巣癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頚癌、膣癌、外陰癌、多発性骨髄腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(NHL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBC)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、形質転換後濾胞性リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫(SMZL)、食道癌、小腸癌、内分泌系の癌、甲状腺癌、副甲状腺の癌、副腎の癌、軟組織の肉腫、尿道癌、陰茎癌、慢性又は急性の白血病、急性骨髄白血病、慢性骨髄白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)(非T細胞ALLを含む)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、幼少期の固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓又は尿管の癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄軸腫瘍(spinal axis tumor)、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カ
ポジ肉腫、類表皮癌、扁平上皮癌、T細胞リンパ腫、石綿によって誘導されるものを含む、環境によって誘導される癌、他のB細胞悪性腫瘍、及び上記癌の組み合わせに由来する腫瘍の腫瘍サイズを減少するため使用され得る。幾つかの実施形態では、癌は多発性骨髄腫である。特定の癌は、化学療法又は放射線療法に反応性となり得るが、そうでなければその癌は難治性となり得る。難治性癌は、外科的処置に適用できない癌を指し、その癌は最初に化学療法若しくは放射線療法に無反応であるか、又はその癌は経時的に無反応となるかのいずれかである。
【0056】
本明細書に使用される「抗腫瘍効果」は、腫瘍体積の減少、腫瘍細胞数の減少、腫瘍細胞増殖の減少、転移の数の減少、全体生存期間若しくは無増悪生存期間の増加、平均余命の増加、又は腫瘍と関係する様々な生理学的症状の改善として提示され得る、生物学的効果を指す。また、抗腫瘍効果は、腫瘍の発生の未然防止、例えばワクチンを指す場合がある。
【0057】
本明細書で使用される「サイトカイン」は、特異抗原との接触に反応して1つの細胞によって放出される非抗体タンパク質を指し、ここで、サイトカインは第2の細胞と相互作用して、第2の細胞における反応を媒介する。本明細書で使用される「サイトカイン」は、細胞間メディエーターとして別の細胞に対して作用する、1つの細胞集団によって放出されるタンパク質を指すことを意味する。サイトカインは、細胞によって内因性に発現され得るか、又は被験体に投与され得る。サイトカインは、マクロファージ、B細胞、T細胞、及び肥満細胞を含む免疫細胞によって放出されて、免疫応答を伝播し得る。サイトカインは、レシピエント細胞において様々な反応を誘導し得る。サイトカインは、ホメオスタシスサイトカイン(homeostatic cytokines)、ケモカイン、炎症誘発性サイトカイン
、エフェクター及び急性期タンパク質を含み得る。例えば、インターロイキン(IL)7及びIL-15を含むホメオスタシスサイトカインは、免疫細胞の生存及び増殖を促進し、炎症誘発性サイトカインは炎症反応を促進し得る。ホメオスタシスサイトカインの例と
して、限定されないが、IL-2、IL-4、IL-5、IL-7、IL-10、IL-12p40、IL-12p70、IL-15及びインターフェロン(IFN)γが挙げられる。炎症誘発性サイトカインの例として、限定されないが、IL-1a、IL-1b、IL-6、IL-13、IL-17a、腫瘍壊死因子(TNF)-アルファ、TNF-β、線維芽細胞成長因子(FGF)2、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、可溶性細胞間接着分子1(sICAM-1)、可溶性血管接着分子1(sVCAM-1)、血管内皮増殖因子(VEGF)、VEGF-C、VEGF-D及び胎盤増殖因子(PLGF)が挙げられる。エフェクターの例として、限定されないが、グランザイムA、グランザイムB、可溶性Fasリガンド(sFasL)及びパーフォリンが挙げられる。急性期タンパク質の例として、限定されないが、C反応性タンパク質(CRP)及び血清アミロイドA(SAA)が挙げられる。
【0058】
「ケモカイン」は細胞走化性又は指向性運動を媒介するサイトカインの一種である。ケモカインの例として、限定されないが、IL-8、IL-16、エオタキシン、エオタキシン-3、マクロファージ由来ケモカイン(MDC又はCCL22)、単球走化性タンパク質1(MCP-1又はCCL2)、MCP-4、マクロファージ炎症性タンパク質1α(MIP-1α、MIP-1a)、MIP-1β(MIP-1b)、ガンマ誘導性タンパク質10(IP-10)、並びに胸腺及び活性化制御ケモカイン(TARC又はCCL17)が挙げられる。
【0059】
本明細書で使用される場合に、「キメラ受容体」は、特定の分子を認識することが可能な操作された表面発現される分子を指す。特定の腫瘍抗原と相互作用することができる結合ドメインを含む、キメラ抗原受容体(CAR)及び操作されたT細胞受容体(TCR)は、T細胞が特定の腫瘍抗原を発現する癌細胞を標的とし、死滅させることを可能とする。
【0060】
「治療的有効量」、「有効用量」、「有効量」又は「治療的に有効な投薬量」の治療剤、例えば操作されたCAR T細胞は、単独で又は別の治療剤と組み合わせて使用された場合に、疾患の発症から被験体を保護する、又は疾患症状の重症度の減少、疾患症状のない期間の頻度及び持続期間の増加、若しくは疾患の罹患に起因する機能障害若しくは身体障害の未然防止によって明示される疾患の退縮を促進する、任意の量である。かかる用語は区別なく使用することができる。治療剤の疾患の退縮を促進する能力は、熟練した医師に知られている様々な方法を使用して、例えば、臨床試験中のヒト被験体において、ヒトにおける効能を予測する動物モデル系において、又はin vitroアッセイにおいて薬剤の活性をアッセイすることによって評価され得る。
【0061】
本明細書で使用される「リンパ球」の用語は、ナチュラルキラー(NK:natural killer)細胞、T細胞、又はB細胞を含む。NK細胞は、生得免疫系の主な成分を占める細胞傷害性(細胞毒性)リンパ球の一種である。NK細胞は腫瘍及びウイルスによって感染された細胞を拒絶する。NK細胞は、アポトーシス又はプログラム細胞死のプロセスによって作用する。NK細胞は、細胞を死滅させるために活性化を必要としないことから、「ナチュラルキラー」と名付けられた。T細胞は、細胞媒介免疫(抗体が関与しない)において主な役割を果たす。そのT細胞受容体(TCR)は、他の種類のリンパ球からそれら自体を分化させる。免疫系の特殊化された器官である胸腺は、主としてT細胞の成熟を担う。6種類のT細胞、すなわち、ヘルパーT細胞(例えばCD4細胞)、細胞傷害性T細胞(TC、細胞傷害性Tリンパ球、CTL、Tキラー細胞、細胞溶解性T細胞、CD8T細胞又はキラーT細胞としても知られる)、メモリーT細胞((i)ナイーブ細胞のようなステムメモリーTSCM細胞は、CD45RO、CCR7、CD45RA、CD62L(L-セレクチン)、CD27、CD28及びIL-7Rαであるが、それらは、大量のCD95、IL-2Rβ、CXCR3及びLFA-1も発現し、メモリ
ー細胞に特有の多数の機能的な属性を示す;(ii)セントラルメモリーTCM細胞は、L-セレクチン及びCCR7を発現し、IFNγ又はIL-4ではなくIL-2を分泌する;並びに(iii)エフェクターメモリーTEM細胞はL-セレクチンもCCR7も発現しないものの、IFNγ及びIL-4のようなエフェクターサイトカインを産生する)、制御性T細胞(Treg、サプレッサーT細胞又はCD4CD25制御性T細胞)、ナチュラルキラーT細胞(NKT)及びγδT細胞が存在する。一方、B細胞は、液性免疫(抗体が関与する)で最も重要な役割を果たす。B細胞は抗体及び抗原を作製し、抗原提示細胞(APC)の役割を行い、抗原の相互作用による活性化の後、メモリーB細胞となる。哺乳動物では、未成熟B細胞は、その名前が由来する骨髄で形成される。
【0062】
「遺伝子操作された」又は「操作された」の用語は、限定されないが、コーディング領域若しくは非コーディング領域、若しくはそれらの一部分の欠失、又はコーディング領域若しくはその一部分の挿入を含む、細胞のゲノムを改変する方法を指す。幾つかの実施形態では、改変される細胞はリンパ球、例えば、患者又はドナーのいずれかから得ることができるT細胞である。T細胞は、例えば、細胞のゲノムに組み込まれる、キメラ抗原受容体(CAR)又はT細胞受容体(TCR)等の外来コンストラクトを発現するように改変され得る。
【0063】
「免疫応答」は、侵入病原体、病原体に感染した細胞若しくは組織、癌性若しくは他の異常な細胞、又は自己免疫若しくは病理学的炎症の場合、正常なヒトの細胞若しくは組織の選択的な標的化、それらへの結合、それらに対する損傷、それらの破壊、及び/又は脊椎動物の身体からのそれらの排除をもたらす、免疫系の細胞(例えばTリンパ球、Bリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、好酸球、肥満細胞、樹状細胞、及び好中球)及びこれらの細胞のいずれか又は肝臓によって産生される可溶性高分子(Ab、サイトカイン、及び補体を含む)の作用を指す。
【0064】
「免疫療法」の用語は、免疫応答を誘導する、増強する、抑制する、或いは緩和することを含む方法による、疾患に冒された、又は疾患にかかる若しくは疾患の再発を患うリスクがある被験体の治療を指す。免疫療法の例として、限定されないが、T細胞療法が挙げられる。T細胞療法は、養子T細胞療法(adoptive T cell therapy)、腫瘍浸潤リンパ
球(TIL)免疫療法、自己細胞治療、操作された自己細胞療法(eACT(商標))、及び同種異系T細胞移植を含み得る。しかしながら、当業者は、本明細書に開示されるコンディショニング法(conditioning methods)が任意の移植T細胞療法の有効性を増強し得ることを認識するであろう。T細胞療法の例は、米国特許出願公開第2014/0154228号及び同第2002/0006409号、米国特許第7,741,465号、米国特許第6,319,494号、米国特許第5,728,388号及び国際公開第2008/081035号に記載される。
【0065】
免疫療法のT細胞は、当該技術分野において知られている任意の供給源に由来し得る。例えば、T細胞は、造血幹細胞集団からin vitroで分化されてもよく、又はT細胞は被験体から得られてもよい。T細胞を、例えば末梢血単核細胞(PBMC)、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位に由来する組織、腹水、胸水、脾臓組織及び腫瘍から得ることができる。さらに、T細胞は、当該技術分野において利用可能な1以上のT細胞株に由来してもよい。また、T細胞は、FICOLL(商標)分離及び/又はアフェレーシス(apheresis)等の当業者に知られている任意の多くの技術を使用して被験
体から収集された血液単位から得ることもできる。T細胞療法用のT細胞を単離する更なる方法は、米国特許出願公開第2013/0287748号に開示され、その全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
【0066】
養子細胞移植としても知られる「操作された自己細胞療法」、すなわち「eACT(商
標)」の用語は、患者自身のT細胞を収集し、その後、1以上の特定の腫瘍細胞又は悪性腫瘍の細胞表面上に発現される1以上の抗原を認識し、標的とするように遺伝的に変更するプロセスである。T細胞は、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように操作され得る。CAR陽性(+)T細胞は、少なくとも1つの共刺激ドメイン及び少なくとも1つの活性化ドメインを含む細胞内シグナル伝達部に連結された特定の腫瘍抗原に対する特異性を有する細胞外単鎖可変フラグメント(scFv)を発現するように操作される。CAR scFvは、例えば、全ての正常なB細胞と、限定されるものではないが、非特異型びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、高悪性度B細胞リンパ腫、及び濾胞性リンパ腫から生ずるDLBCL、NHL、CLL、及び非T細胞ALLを含むB細胞悪性腫瘍とを含むB細胞系譜における細胞により発現される膜貫通タンパク質であるCD19を標的とするように設計することができる。CAR T細胞療法及びコンストラクトの例は、米国特許出願公開第2013/0287748号、同第2014/0227237号、同第2014/0099309号、及び同第2014/0050708号に記載され、これらの引用文献はそれらの全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
【0067】
本明細書で使用される「患者」は、癌(例えばリンパ腫又は白血病)に冒された任意のヒトを含む。「被験体」及び「患者」の用語は、本明細書では区別なく使用される。
【0068】
本明細書で使用される「in vitro細胞」の用語は、ex vivoで培養される任意の細胞を指す。特に、in vitro細胞はT細胞を含み得る。
【0069】
「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「タンパク質」の用語は区別なく使用され、ペプチド結合によって共有結合的に連結されたアミノ酸残基で構成される化合物を指す。タンパク質又はペプチドは、少なくとも2個のアミノ酸を含み、タンパク質又はペプチドの配列を含み得るアミノ酸の最大数に制限はない。ポリペプチドは、ペプチド結合によって互いにつながれた2個以上のアミノ酸を含む任意のペプチド又はタンパク質を含む。本明細書で使用されるように、上記用語はまた、当該技術分野において、例えばペプチド、オリゴペプチド及びオリゴマーと一般的に称される短い鎖と、当該技術分野において一般的にはタンパク質と称され、多くの種類が存在する、より長い鎖の両方を指す。「ポリペプチド」として、例えば、特に、生物学的に活性なフラグメント、実質的に相同性のポリペプチド、オリゴペプチド、ホモダイマー、ヘテロダイマー、ポリペプチドの変異体、改変ポリペプチド、誘導体、類縁体、融合タンパク質が挙げられる。ポリペプチドは、天然ペプチド、組み換えペプチド、合成ペプチド、又はそれらの組み合わせを含む。
【0070】
本明細書で使用される「刺激」は、その同族のリガンドと刺激分子を結合することによって誘導される一次応答を指し、ここで、その結合はシグナル伝達事象を媒介する。「刺激分子」は、T細胞上の分子、例えば、抗原提示細胞上に存在する同族の刺激リガンドと特異的に結合するT細胞受容体(TCR)/CD3複合体を指す。「刺激リガンド」は、抗原提示細胞(例えば、APC、樹状細胞、B細胞等)上に存在する場合、T細胞上の刺激分子と特異的に結合することができ、それによって、限定されないがT細胞の活性化、免疫応答の開始、増殖等を含むT細胞による一次応答を媒介するリガンドである。刺激リガンドとして、限定されないが、抗CD3抗体、ペプチドで充填されたMHCクラスI分子、スーパーアゴニスト抗CD2抗体、及びスーパーアゴニスト抗CD28抗体が挙げられる。
【0071】
本明細書で使用される「共刺激シグナル」は、TCR/CD3ライゲーション等の一次シグナルと組み合わせて、限定されないがT細胞の増殖及び/又は主要な分子の上方制御若しくは下方制御等のT細胞の応答をもたらすシグナルを指す。
【0072】
本明細書で使用される「共刺激リガンド」は、T細胞上の同族の共刺激分子を特異的に結合する抗原提示細胞上の分子を含む。共刺激リガンドの結合は、限定されないが、T細胞の増殖、活性化、分化等を含むT細胞応答を媒介するシグナルを提供する。共刺激リガンドは、一次シグナルに加えて、刺激分子によって、例えば、ペプチドがロードされた主要組織適合複合体(MHC)分子とのT細胞受容体(TCR)/CD3複合体の結合によって提供されるシグナルを誘導する。共刺激リガンドとして、限定されないが、3/TR6、4-1BBリガンド、Tollリガンド受容体に結合するアゴニスト又は抗体、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、CD30リガンド、CD40、CD7、CD70、CD83、ヘルペスウイルスエントリーメディエーター(HVEM:herpes virus
entry mediator)、ヒト白血球抗原G(HLA-G)、ILT4、免疫グロブリン様転
写物(ILT:immunoglobulin-like transcript)3、誘導性共刺激リガンド(ICOS-L)、細胞間接着分子(ICAM)、B7-H3と特異的に結合するリガンド、リンフォトキシンβ受容体、MHCクラスI鎖関連タンパク質A(MICA)、MHCクラスI鎖関連タンパク質B(MICB)、OX40リガンド、PD-L2、又はプログラム細胞死(PD)L1が挙げられ得る。或る特定の実施形態では、共刺激リガンドとして、限定されないが、4-1BB、B7-H3、CD2、CD27、CD28、CD30、CD40、CD7、ICOS、CD83と特異的に結合するリガンド、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、ナチュラルキラー細胞受容体C(NKG2C)、OX40、PD-1、又は腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー14(TNFSF14又はLIGHT)等のT細胞上に存在する共刺激分子と特異的に結合する抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
「共刺激分子」は、共刺激リガンドと特異的に結合することにより、限定されないがT細胞の増殖等のT細胞による共刺激応答を媒介する、T細胞上の同族の結合パートナーである。共刺激分子として、限定されないが、4-1BB/CD137、B7-H3、BAFFR、BLAME(SLAMF8)、BTLA、CD33、CD45、CD100(SEMA4D)、CD103、CD134、CD137、CD154、CD16、CD160(BY55)、CD18、CD19、CD19a、CD2、CD22、CD247、CD27、CD276(B7-H3)、CD28、CD29、CD3(α;β;δ;ε;γ;ζ)、CD30、CD37、CD4、CD4、CD40、CD49a、CD49D、CD49f、CD5、CD64、CD69、CD7、CD80、CD83リガンド、CD84、CD86、CD8アルファ、CD8β、CD9、CD96(Tactile)、CD11a、CD11b、CD11c、CD11d、CDS、CEACAM1、CRT AM、DAP-10、DNAM1(CD226)、Fcγ受容体、GADS、GITR、HVEM(LIGHTR)、IA4、ICAM-1、ICOS、Igアルファ(CD79a)、IL2Rβ、IL2Rγ、IL7Rアルファ、インテグリン、ITGA4、ITGA6、ITGAD、ITGAE、ITGAL、ITGAM、ITGAX、ITGB2、ITGB7、ITGBl、KIRDS2、LAT、LFA-1、LIGHT、LIGHT(腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー14;TNFSF14)、LTBR、Ly9(CD229)、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1(CD11a/CD18))、MHCクラスI分子、NKG2C、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80(KLRF1)、OX40、PAG/Cbp、PD-1、PSGL1、SELPLG(CD162)、シグナル伝達リンパ球活性化分子、SLAM(SLAMF1;CD150;IPO-3)、SLAMF4(CD244;2B4)、SLAMF6(NTB-A;Ly108)、SLAMF7、SLP-76、TNF、TNFr、TNFR2、Tollリガンド受容体、TRANCE/RANKL、VLA1若しくはVLA-6、又はそれらのフラグメント、短縮形(truncations)、若しくは組み合わせが挙げられる。
【0074】
「減少する、減少させる(reducing)」及び「減じる(decreasing)」の用語は、本明細書において区別なく使用され、本来よりも少ない、あらゆる変化を示す。「減少する、
減少させる」及び「減じる」は測定前と測定後の比較を必要とする、相対的な用語である。「減少する、減少させる」及び「減じる」は完全な枯渇を含む。
【0075】
被験体の「治療(Treatment)」又は被験体を「治療する、治療すること(treating)
」は、症状、合併症若しくは病状の発症、進行、発現、重症度若しくは再発、又は疾患と関連する生化学的指標の転換、緩和、改善、阻害、遅延又は未然防止の目的で、被験体に対して行われる任意の種類の処置若しくはプロセス、又は被験体に対する活性剤の投与を指す。幾つかの実施形態では、「治療」又は「治療する、治療すること」は部分寛解を含む。別の実施形態では、「治療」又は「治療する、治療すること」は完全寛解を含む。
【0076】
本明細書で使用される場合に、「多機能性T細胞」の用語は、産生される各タンパク質の量(すなわち、分泌されたタンパク質の数と強さの程度との組み合わせ)と一緒に、事前に特定されたパネルから1つの細胞当たり少なくとも2種のタンパク質を同時分泌する細胞を指す。幾つかの実施形態では、単一細胞の機能的プロファイルは、操作されたT細胞の各々の評価可能な集団について決定される。プロファイルは、エフェクター(グランザイムB、IFN-γ、MIP-1α、パーフォリン、TNF-α、TNF-β)群、刺激性(GM-CSF、IL-2、IL-5、IL-7、IL-8、IL-9、IL-12、IL-15、IL-21)群、制御性(IL-4、IL-10、IL-13、IL-22、TGF-β1、sCD137、sCD40L)群、化学誘引性(CCL-11、IP-10、MIP-1β、RANTES)群、及び炎症性(IL-1b、IL-6、IL-17A、IL-17F、MCP-1、MCP-4)群に分類され得る。幾つかの実施形態では、各細胞の機能的プロファイルは、細胞の多機能性による各試料の内訳(すなわち、非分泌細胞又は単機能性細胞に対して、何パーセントの細胞が多数のサイトカインを分泌しているか)、及び機能性群による試料の内訳(すなわち、どの単機能性群及び多機能性群が、試料中で細胞により分泌されているか、及びそれらの度数)を含むその他の評価指標の計算を可能にする。
【0077】
本開示の様々な態様は、以下のサブセクションに更に詳細に記載される。
【0078】
治療前属性
操作された細胞の治療前属性(T細胞属性)及び患者の試料から測定された患者の免疫性因子の治療前属性を使用して、奏効及び毒性を含む臨床転帰の確率を評価することができる。臨床転帰と関連性を有する属性は、腫瘍関連パラメーター(例えば、腫瘍負荷量、低酸素/細胞死マーカーとしての血清LDH、腫瘍負荷量と関連性を有する炎症マーカー、及び骨髄細胞活性)、T細胞属性(例えば、T細胞適応性、機能性、特にT1関連IFNg産生、及び注入されたCD8 T細胞の総数)及び早期時点での血中のピークCAR
T細胞レベルによって測定されたCAR T細胞生着である。
【0079】
T細胞属性及び患者の治療前属性から予測された情報を使用して、悪性腫瘍(例えば、癌)の治療に適した治療的有効用量を決定、改良、又は準備することができる。さらに、幾つかのT細胞属性及び患者の治療前属性を使用して、操作されたキメラ抗原受容体(CAR)免疫療法による治療後に患者が有害事象(例えば、神経毒性(NT)、サイトカイン放出症候群(CRS))を発生するかどうかを決定することができる。したがって、効果的な有害事象管理戦略を決定することができる(例えば、測定された1つ以上の属性のレベルに基づく毒性予防のためのトシリズマブ、コルチコステロイド療法薬、又は抗痙攣薬の投与)。
【0080】
幾つかの実施形態では、治療前属性は、1つ以上のキメラ抗原受容体を含む操作されたT細胞の属性である。幾つかの実施形態では、治療前属性は、T細胞形質導入率、主要なT細胞表現型、CAR T細胞及びT細胞サブセットの数、CAR T細胞適応性、T細
胞機能性、T細胞多機能性、分化したCARCD8T細胞の数である。
【0081】
幾つかの実施形態では、治療前属性は、患者から得られた試料(例えば、脳脊髄液(CSF)、血液、血清、又は組織生検試料)から測定される。幾つかの実施形態では、1つ以上の治療前属性は、腫瘍負荷量、IL-6のレベル、又はLDHのレベルである。
【0082】
T細胞適応性
T細胞適応性は、細胞が急速に増殖する能力である。操作されたT細胞の文脈では、T細胞適応性は、操作されたT細胞集団が治療前にどれだけ速く増殖するかの測定値である。本明細書に記載されるように、T細胞適応性は、臨床転帰と関連性を有する操作されたT細胞の属性である。幾つかの実施形態では、T細胞適応性は、倍加時間又は増殖速度によって測定される。製造過程の間のT細胞集団の倍加時間(DT)として測定されるT細胞「適応性」の例示的な導出を以下に示す。
倍加時間=ln(2)×期間/ln(採取時の総生存細胞/3日目の総生存細胞)
【0083】
組換えIL-2を使用して、目標用量の達成に向けたポリクローナルT細胞の増殖が促進される。DTが短いほど、操作されたT細胞の適応性は高くなる。増殖速度は、以下の式を使用して計算することができる。
増殖速度=ln(2)/倍加時間
【0084】
上記の場合には、増殖速度は「速度/日」又は「/日」の単位で示される。
【0085】
一態様では、本開示は、キメラ抗原受容体(CAR)を含む操作されたT細胞の集団における倍加時間(DT)を測定することを含む、患者における悪性腫瘍を治療する方法を提供する。幾つかの実施形態では、上記方法は、参照レベルと比較した測定された倍加時間に基づいて、患者がキメラ抗原受容体治療に奏効を示すかどうかを決定することを更に含む。幾つかの実施形態では、倍加時間は製造過程の間に測定される。幾つかの実施形態では、倍加時間の参照レベルは1.5日である。幾つかの実施形態では、倍加時間の参照レベルは2日である。幾つかの実施形態では、倍加時間の参照レベルは2.5日である。幾つかの実施形態では、倍加時間の参照レベルは、約1日、約1.1日、約1.2日、約1.3日、約1.4日、約1.5日、約1.6日、約1.7日、約1.8日、約1.9日、約2日、約2.1日、約2.2日、約2.3日、約2.4日、約2.5日、約2.6日、約2.7日、約2.8日、約2.9日、約3日、約3.1日、約3.2日、約3.3日、約3.4日、約3.5日、約3.6日、約3.7日、約3.8日、約3.9日、約4日、約4.1日、約4.2日、約4.3日、約4.4日、約4.5日、約4.6日、約4.7日、約4.8日、約4.9日、約5日、約6日、又は約7日である。
【0086】
幾つかの実施形態では、倍加時間の参照レベルは、約1日未満、約1.1日、約1.2日、約1.3日、約1.4日、約1.5日、約1.6日、約1.7日、約1.8日、約1.9日、約2日、約2.1日、約2.2日、約2.3日、約2.4日、約2.5日、約2.6日、約2.7日、約2.8日、約2.9日、約3日、約3.1日、約3.2日、約3.3日、約3.4日、約3.5日、約3.6日、約3.7日、約3.8日、約3.9日、約4日、約4.1日、約4.2日、約4.3日、約4.4日、約4.5日、約4.6日、約4.7日、約4.8日、約4.9日、約5日、約6日、又は約7日未満である。
【0087】
幾つかの実施形態では、倍加時間の参照レベルは、約1日、約1.1日、約1.2日、約1.3日、約1.4日、約1.5日、約1.6日、約1.7日、約1.8日、約1.9日、約2日、約2.1日、約2.2日、約2.3日、約2.4日、約2.5日、約2.6日、約2.7日、約2.8日、約2.9日、約3日、約3.1日、約3.2日、約3.3日、約3.4日、約3.5日、約3.6日、約3.7日、約3.8日、約3.9日、約4
日、約4.1日、約4.2日、約4.3日、約4.4日、約4.5日、約4.6日、約4.7日、約4.8日、約4.9日、約5日、約6日、又は約7日より大きい。
【0088】
幾つかの実施形態では、約1.5日、約1.6日、約1.7日、約1.8日、約1.9日、又は約2日より長い倍加時間(DT)を有する操作された細胞は、一次治療の失敗を引き起こす。幾つかの実施形態では、約1.2日、1.3日、1.4日、1.5日、約1.6日、約1.7日、約1.8日、約1.9日、又は約2日より短い倍加時間(DT)を有する操作されたCAR T細胞は、高い腫瘍負荷量を伴う患者において客観的奏効をもたらす。
【0089】
別の態様では、本開示は、キメラ抗原受容体(CAR)を含む操作されたT細胞の集団の増殖速度を測定することを含む、患者における悪性腫瘍を治療する方法を提供する。幾つかの実施形態では、上記方法は、参照レベルと比較した測定された増殖速度に基づいて、患者がキメラ抗原受容体治療に奏効を示し得るかどうかを決定することを更に含む。幾つかの実施形態では、増殖速度は製造過程の間に測定される。幾つかの実施形態では、増殖速度の参照レベルは、0.4/日、0.45/日、又は0.5/日である。幾つかの実施形態では、増殖速度の参照レベルは、0.3/日、0.35/日、又は0.4/日である。幾つかの実施形態では、増殖速度の参照レベルは0.28/日である。幾つかの実施形態では、増殖速度の参照レベルは、約0.7/日、約0.65/日、約0.6/日、約0.55/日、約0.5/日、約0.45/日、約0.4/日、約0.35/日、約0.3/日、約0.25/日、約0.2/日、約0.15/日、又は約0.1/日である。
【0090】
幾つかの実施形態では、増殖速度の参照レベルは、約0.7/日、約0.65/日、約0.6/日、約0.55/日、約0.5/日、約0.45/日、約0.4/日、約0.35/日、約0.3/日、約0.25/日、約0.2/日、約0.15/日、又は約0.1/日未満である。
【0091】
幾つかの実施形態では、増殖速度の参照レベルは、約0.7/日、約0.65/日、約0.6/日、約0.55/日、約0.5/日、約0.45/日、約0.4/日、約0.35/日、約0.3/日、約0.25/日、約0.2/日、約0.15/日、又は約0.1/日より大きい。
【0092】
幾つかの実施形態では、約0.45/日、約0.44/日、約0.43/日、約0.42/日、約0.41/日、約0.40/日、約0.39/日、約0.38/日、約0.37/日、約0.36/日、又は約0.35/日未満の増殖速度を有する操作されたT細胞は、一次治療の失敗を引き起こす。幾つかの実施形態では、約0.45/日、約0.44/日、約0.43/日、約0.42/日、約0.41/日、約0.40/日、約0.39/日、約0.38/日、約0.37/日、約0.36/日、又は約0.35/日より大きい増殖速度を有する操作されたCAR T細胞は、高い腫瘍負荷量を伴う患者において客観的奏効をもたらす。
【0093】
T細胞表現型
一態様では、本開示は、患者から得られたT細胞の集団(例えば、アフェレーシス材料)におけるT細胞表現型を測定することを含む、患者における悪性腫瘍を治療する方法を提供する。幾つかの実施形態では、上記方法は、測定された特定のT細胞型のパーセンテージに基づいて、患者がキメラ抗原受容体治療に奏効を示すかどうかを決定することを更に含む。幾つかの実施形態では、T細胞表現型は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように細胞(例えば、アフェレーシス材料)を操作する前に測定される。幾つかの実施形態では、T細胞表現型は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように細胞(例えば、CARを含む操作されたT細胞)を操作した後に測定される。
【0094】
本明細書に記載されるように、出発材料の製造(アフェレーシス)におけるT細胞表現型は、T細胞適応性(DT)と関連性を有し得る。Tn様細胞及びTcm細胞(CCR7細胞)の総%は、DTと逆の関係にある。Tem(CCR7CD45RA)細胞の%は、DTと直接的な関連性を有する。したがって、幾つかの実施形態では、治療前属性は、Tn様細胞及びTcm細胞の%である。幾つかの実施形態では、Tn様細胞及びTcm細胞の%は、CCR7細胞のパーセンテージによって決定される。幾つかの実施形態では、CCR7細胞のパーセンテージは、フローサイトメトリーによって測定される。
【0095】
幾つかの実施形態では、治療前属性は、Tem(CCR7CD45RA)細胞の%である。幾つかの実施形態では、Tem細胞の%は、CCR7CD45RA細胞のパーセンテージによって決定される。幾つかの実施形態では、CCR7CD45RA細胞のパーセンテージは、フローサイトメトリーによって測定される。
【0096】
T1機能性
操作されたT細胞は、それらの免疫機能特性によって特徴付けられ得る。本開示の方法は、ex vivoでのサイトカイン産生のレベルの測定を提供する。幾つかの実施形態では、サイトカインは、IFNg、TNFa、IL-12、MIP1β、MIP1α、IL-2、IL-4、IL-5、及びIL-13からなる群から選択される。幾つかの実施形態では、T細胞機能性は、Th1サイトカインのレベルによって測定される。
【0097】
幾つかの実施形態では、Th1サイトカインは、IFNg、TNFa、及びIL-12からなる群から選択される。幾つかの実施形態では、T細胞機能性は、IFNg産生のレベルによって測定される。幾つかの実施形態では、過剰なT細胞IFNγ(治療前属性)及び治療後のT1活性は、患者が有害事象(例えば、神経毒性)を発生するかどうかを決定するために使用され得る属性である。幾つかの実施形態では、操作されたCAR T細胞により産生されるIFNγレベルは、操作されたCAR T細胞の投与前に共培養によって測定される。
【0098】
幾つかの実施形態では、より低い共培養IFNgを有する操作されたCAR T細胞は、良好な臨床有効性の結果及びグレード3+の神経毒性の低下をもたらす。一態様では、本開示は、キメラ抗原受容体(CAR)を含む操作されたT細胞の集団により産生されるIFNgのレベルを測定することを含む、患者における悪性腫瘍を治療する方法を提供する。幾つかの実施形態では、上記方法は、参照レベルと比較した測定されたIFNgのレベルに基づいて、患者がキメラ抗原受容体治療に奏効を示すかどうかを決定することを更に含む。幾つかの実施形態では、参照レベルは、約1ng/ml、約2ng/ml、約3ng/ml、約4ng/ml、約5ng/ml、約6ng/ml、約7ng/ml、又は約8ng/ml未満である。
【0099】
幾つかの実施形態では、過剰なIFNg産生を伴う操作されたCAR T細胞は、グレード3+の神経毒性の急速な上昇速度及び客観的奏効率の低下を示す。一態様では、本開示は、キメラ抗原受容体(CAR)を含む操作されたT細胞の集団により産生されるIFNgのレベルを測定することを含む、患者における悪性腫瘍を治療する方法を提供する。幾つかの実施形態では、上記方法は、参照レベルと比較した測定されたIFNgのレベルに基づいて、患者がキメラ抗原受容体治療に対して有害事象を発生するかどうかを決定することを更に含む。幾つかの実施形態では、参照レベルは、約5ng/ml、約6ng/ml、約7ng/ml、又は約8ng/ml、約9ng/ml、約10ng/ml、又は約11ng/mlより大きい。
【0100】
本明細書に記載されるように、CAR T細胞注入後の血清中のIFNγの早期上昇と
グレード3+の毒性の割合との直接的な関連性がある。幾つかの実施形態では、CAR T細胞注入後の血清中のIFNγの上昇(1日目/0日目の倍率変化)が測定される。幾つかの実施形態では、約25より大きな1日目/0日目の血清IFNγの倍率変化は、グレード3+の神経毒性をもたらす。幾つかの実施形態では、約30、約35、約40、約45、又は約50より大きな1日目/0日目の血清IFNγの倍率変化は、グレード3+の神経毒性をもたらす。
【0101】
CAR T細胞注入後の血清中のIFNγ関連CXCL10(IP-10)上昇の早期上昇とグレード3+の毒性の割合との直接的な関連性がある。幾つかの実施形態では、CAR T細胞注入後の血清中のIFNγ関連CXCL10(IP-10)上昇(1日目/0日目の倍率変化)が測定される。幾つかの実施形態では、約2.5より大きな1日目/0日目の血清IFNγ関連CXCL10(IP-10)の倍率変化は、グレード3+の神経毒性をもたらす。幾つかの実施形態では、約3.0、約3.5、約4.0、約4.5、又は約5.0より大きな1日目/0日目の血清IFNγ関連CXCL10(IP-10)の倍率変化は、グレード3+の神経毒性をもたらす。
【0102】
腫瘍負荷量
腫瘍関連パラメーター(例えば、腫瘍負荷量、低酸素/細胞死マーカーとしての血清LDH、腫瘍負荷量と関連性を有する炎症マーカー、及び骨髄細胞活性)は、臨床転帰と関連性を有し得る。一態様では、本開示は、キメラ抗原受容体治療薬の投与前に患者における腫瘍負荷量を測定することを含む、患者における悪性腫瘍を治療する方法を提供する。幾つかの実施形態では、上記方法は、参照レベルと比較した腫瘍負荷量のレベルに基づいて、患者がキメラ抗原受容体治療に奏効を示すかどうかを決定することを更に含む。幾つかの実施形態では、参照レベルは、約1000mm、約2000mm、約3000mm、約4000mm未満である。
【0103】
本明細書に記載されるように、腫瘍負荷量が高いほど、ORを達成した被験体において治療後1年以内に再燃する確率が高くなり、グレード3+の神経毒性の確率が高くなる。幾つかの実施形態では、治療前腫瘍負荷量が約4000mm、約5000mm、約6000mm、約7000mm、又は約8000mmより大きい場合に、腫瘍負荷量を使用して、奏効を示す患者における再燃の確率を評価することができる。
【0104】
奏効の測定
幾つかの実施形態では、本明細書に記載される方法は、被験体に臨床的便益を提供し得る。幾つかの実施形態では、患者の少なくとも1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%は、臨床的便益を達成する。臨床的便益は、15.6ヶ月の中央追跡期間での奏効持続として定義される客観的奏効又は持続的臨床奏効であり得る。幾つかの実施形態では、奏効、血中のCAR T細胞のレベル、又は免疫関連因子は、操作されたCAR T細胞の投与後の約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、又は約7日で追跡によって決定される。幾つかの実施形態では、奏効、血中のCAR T細胞のレベル、又は免疫関連因子は、操作されたCAR T細胞の投与後の約1週間、約2週間、約3週間、又は約4週間で追跡によって決定される。幾つかの実施形態では、奏効、血中のCAR T細胞のレベル、及び/又は免疫関連因子は、操作されたCAR T細胞の投与後の約1ヶ月、約2ヶ月、約3ヶ月、約4ヶ月、約5ヶ月、約6ヶ月、約7ヶ月、約8ヶ月、約9ヶ月、約10ヶ月、約11ヶ月、約12ヶ月、約13ヶ月、約14ヶ月、約15ヶ月、約16ヶ月、約17ヶ月、約18ヶ月、約19ヶ月、約20ヶ月、約21ヶ月、約22ヶ月、約23ヶ月、又は約24ヶ月で追跡によって決定される。幾つかの実施形態では、奏効、血中のCAR
T細胞のレベル、及び/又は免疫関連因子は、操作されたCAR T細胞の投与後の約
1年、約1.5年、約2年、約2.5年、約3年、約4年、又は約5年で追跡によって決定される。
【0105】
幾つかの実施形態では、客観的奏効(OR)は、改定された悪性リンパ腫のためのIWG応答基準(Cheson, 2007)に従って決定されると共に、悪性リンパ腫のためのIWG応答基準(Cheson et al. Journal of Clinical Oncology 32, no. 27 (September 2014) 3059-3067)によって決定される。奏効の期間が評価される。Luganoの奏効分類基準に従う研究者評価による無憎悪生存率(PFS)が評価される。
【0106】
キメラ抗原受容体
キメラ抗原受容体(CAR又はCAR-T)は、遺伝子操作された受容体である。これらの操作された受容体は、当該技術分野で知られている技術によりT細胞を含む免疫細胞に容易に挿入され得て、その細胞によって発現され得る。CARにより、単一の受容体は、特異抗原を認識するとともに、その抗原に結合した場合に免疫細胞を活性化させてその抗原を持っている細胞を攻撃して破壊するよう、プログラム化され得る。これらの抗原が腫瘍細胞上に存在する場合、CARを発現する免疫細胞は、腫瘍細胞を標的とし、死滅させることができる。キメラ抗原受容体は、共刺激(シグナル伝達)ドメインを含むことで、それらの効力が高められ得る。米国特許第7,741,465号及び同第6,319,494号、並びにKrause et al.及びFinney et al.(上記参照)、Song et al., Blood 119:696-706 (2012)、Kalos et al., Sci. Transl. Med. 3:95 (2011)、Porter et al., N. Engl. J. Med. 365:725-33 (2011)、及びGross et al., Annu. Rev. Pharmacol. Toxicol. 56:59-83 (2016)を参照のこと。
【0107】
幾つかの実施形態では、短縮ヒンジドメイン(「THD」)を含む共刺激ドメインは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgD、IgE、IgM、又はそれらのフラグメント等の免疫グロブリンファミリーのメンバーの幾つか又は全てを更に含む。
【0108】
幾つかの実施形態では、THDは、ヒト完全ヒンジドメイン(「CHD」)に由来する。その他の実施形態では、THDは、共刺激タンパク質の齧歯類、マウス、又は霊長類(例えば、非ヒト霊長類)CHDに由来する。幾つかの実施形態では、THDは、共刺激タンパク質のキメラCHDに由来する。
【0109】
本開示のCARのための共刺激ドメインは、膜貫通ドメイン及び/又は細胞内シグナル伝達ドメインを更に含み得る。膜貫通ドメインは、CARの細胞外ドメインに融合され得る。共刺激ドメインは、同様にCARの細胞内ドメインに融合され得る。幾つかの実施形態では、CAR中のドメインの1つと本来関連性がある膜貫通ドメインが使用される。幾つかの場合では、膜貫通ドメインは、そのようなドメインが同じ又は異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインに結合することを避けることで、受容体複合体のその他のメンバーとの相互作用を最小限にするように、選択されるか、又はアミノ酸置換により改変される。膜貫通ドメインは、天然源又は合成源のいずれかに由来し得る。その起源が天然である場合に、上記ドメインは、任意の膜結合タンパク質又は膜貫通タンパク質に由来し得る。本開示の特定の使用の膜貫通領域は、4-1BB/CD137、活性化NK細胞受容体、免疫グロブリンタンパク質、B7-H3、BAFFR、BLAME(SLAMF8)、BTLA、CD100(SEMA4D)、CD103、CD160(BY55)、CD18、CD19、CD19a、CD2、CD247、CD27、CD276(B7-H3)、CD28、CD29、CD3δ、CD3ε、CD3γ、CD3ζ、CD30、CD4、CD40、CD49a、CD49D、CD49f、CD69、CD7、CD84、CD8、CD8α、CD8β、CD96(Tactile)、CD11a、CD11b、CD11c、CD11d、CDS、CEACAM1、CRT AM、サイトカイン受容体、DAP
-10、DNAM1(CD226)、Fcγ受容体、GADS、GITR、HVEM(LIGHTR)、IA4、ICAM-1、Igα(CD79a)、IL-2Rβ、IL-2Rγ、IL-7Rα、誘導性T細胞共刺激分子(ICOS)、インテグリン、ITGA4、ITGA6、ITGAD、ITGAE、ITGAL、ITGAM、ITGAX、ITGB2、ITGB7、ITGBl、KIRDS2、LAT、LFA-1、CD83と特異的に結合するリガンド、LIGHT、LTBR、Ly9(CD229)、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1;CD11a/CD18)、MHCクラス1分子、NKG2C、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80(KLRF1)、OX-40、PAG/Cbp、プログラム細胞死-1(PD-1)、PSGL1、SELPLG(CD162)、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、SLAM(SLAMF1;CD150;IPO-3)、SLAMF4(CD244;2B4)、SLAMF6(NTB-A;Ly108)、SLAMF7、SLP-76、TNF受容体タンパク質、TNFR2、TNFSF14、Tollリガンド受容体、TRANCE/RANKL、VLA1、若しくはVLA-6、又はそれらのフラグメント、短縮形、若しくはそれらの組み合わせに由来し(すなわち含み)得る。
【0110】
任意に、短いリンカーは、CARの細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞内ドメインのいずれか又は幾つかの間で結合を形成し得る。幾つかの実施形態では、リンカーは、グリシン-グリシン-グリシン-グリシン-セリンの繰り返し(配列番号2)(G4S)n又はGSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号1)に由来し得る。幾つかの実施形態では、リンカーは、3個~20個のアミノ酸、及びGSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号1)と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一のアミノ酸配列を有する。
【0111】
本明細書に記載されるリンカーは、ペプチドタグとしても使用され得る。リンカーペプチド配列は、対象となる1つ以上のタンパク質を結合するための任意の適切な長さの配列であり得て、好ましくは、連結するペプチドの一方又は両方の適切な折り畳み及び/又は機能及び/又は活性を可能にするように十分に柔軟となるように設計される。したがって、リンカーペプチドは、10個以下、11個以下、12個以下、13個以下、14個以下、15個以下、16個以下、17個以下、18個以下、19個以下、又は20個以下のアミノ酸の長さを有する。幾つかの実施形態では、リンカーペプチドは、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個、少なくとも19個、又は少なくとも20個のアミノ酸の長さを有し得る。幾つかの実施形態では、リンカーは、少なくとも7個かつ20個以下のアミノ酸、少なくとも7個かつ19個以下のアミノ酸、少なくとも7個かつ18個以下のアミノ酸、少なくとも7個かつ17個以下のアミノ酸、少なくとも7個かつ16個以下のアミノ酸、少なくとも7個かつ15個以下のアミノ酸、少なくとも7個かつ14個以下のアミノ酸、少なくとも7個かつ13個以下のアミノ酸、少なくとも7個かつ12個以下のアミノ酸、又は少なくとも7個かつ11個以下のアミノ酸を有する。或る特定の実施形態では、リンカーは、15個~17個のアミノ酸を有し、特定の実施形態では、16個のアミノ酸を有する。幾つかの実施形態では、リンカーは、10個~20個のアミノ酸を有する。幾つかの実施形態では、リンカーは、14個~19個のアミノ酸を有する。幾つかの実施形態では、リンカーは、15個~17個のアミノ酸を有する。幾つかの実施形態では、リンカーは、15個又は16個のアミノ酸を有する。幾つかの実施形態では、リンカーは、16個のアミノ酸を有する。幾つかの実施形態では、リンカーは、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、又は20個のアミノ酸を有する。
【0112】
幾つかの実施形態では、スペーサードメインが使用される。幾つかの実施形態では、スペーサードメインは、CD4、CD8a、CD8b、CD28、CD28T、4-1BB、又は本明細書に記載されるその他の分子に由来する。幾つかの実施形態では、スペーサードメインは、小分子の添加に際して発現を制御するために、化学的に誘導されたダイマライザーを含み得る。幾つかの実施形態では、スペーサーは使用されない。
【0113】
本開示の操作されたT細胞の細胞内(シグナル伝達)ドメインは、活性化ドメインへのシグナル伝達をもたらし得て、次いでそれは免疫細胞の正常なエフェクター機能の少なくとも1つを活性化する。T細胞のエフェクター機能は、例えば、サイトカインの分泌を含む細胞溶解活性又はヘルパー活性であり得る。
【0114】
或る特定の実施形態では、好適な細胞内シグナル伝達ドメインは、4-1BB/CD137、活性化NK細胞受容体、免疫グロブリンタンパク質、B7-H3、BAFFR、BLAME(SLAMF8)、BTLA、CD100(SEMA4D)、CD103、CD160(BY55)、CD18、CD19、CD19a、CD2、CD247、CD27、CD276(B7-H3)、CD28、CD29、CD3δ、CD3ε、CD3γ、CD30、CD4、CD40、CD49a、CD49D、CD49f、CD69、CD7、CD84、CD8、CD8α、CD8β、CD96(Tactile)、CD11a、CD11b、CD11c、CD11d、CDS、CEACAM1、CRT AM、サイトカイン受容体、DAP-10、DNAM1(CD226)、Fcγ受容体、GADS、GITR、HVEM(LIGHTR)、IA4、ICAM-1、Igα(CD79a)、IL-2Rβ、IL-2Rγ、IL-7Rα、誘導性T細胞共刺激分子(ICOS)、インテグリン、ITGA4、ITGA6、ITGAD、ITGAE、ITGAL、ITGAM、ITGAX、ITGB2、ITGB7、ITGBl、KIRDS2、LAT、CD83と特異的に結合するリガンド、LIGHT、LTBR、Ly9(CD229)、Ly108)、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1;CD11a/CD18)、MHCクラス1分子、NKG2C、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80(KLRF1)、OX-40、PAG/Cbp、プログラム細胞死-1(PD-1)、PSGL1、SELPLG(CD162)、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、SLAM(SLAMF1;CD150;IPO-3)、SLAMF4(CD244;2B4)、SLAMF6(NTB-A、SLAMF7、SLP-76、TNF受容体タンパク質、TNFR2、TNFSF14、Tollリガンド受容体、TRANCE/RANKL、VLA1、若しくはVLA-6、又はそれらのフラグメント、短縮形、若しくはそれらの組み合わせを包含する(すなわち含む)が、それらに限定されない。
【0115】
抗原結合分子
適切なCARは、その標的となる抗原と相互作用する抗原結合分子を導入することによって抗原(例えば、細胞表面抗原)に結合し得る。幾つかの実施形態では、抗原結合分子は、その抗体フラグメント、例えば1種以上の単鎖抗体フラグメント(「scFv」)である。scFvは、互いに連結された抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域を有する単鎖抗体フラグメントである。米国特許第7,741,465号及び同第6,319,494号、並びにEshhar et al., Cancer Immunol Immunotherapy (1997) 45: 131-136を参照のこと。scFvは、親抗体の標的抗原と特異的に相互作用する能力を維持している。scFvは、キメラ抗原受容体において有用である。それというのも、scFvは、その他のCAR成分と一緒に単鎖の一部として発現されるように操作され得るからである。同上。Krause
et al., J. Exp. Med., Volume 188, No. 4, 1998 (619-626)、Finney et al., Journal
of Immunology, 1998, 161: 2791-2797も参照のこと。抗原結合分子は、典型的には、対象となる抗原を認識して結合することができるようにCARの細胞外部分の範囲内に含まれることを理解されたい。対象となる2つ以上の標的に特異性を有する二重特異性及び多
重特異性のCARが、本発明の範囲内で考慮される。
【0116】
幾つかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、本発明のTHDと、標的抗原に特異的に結合する抗原結合分子とを含むCARをコードする。幾つかの実施形態では、標的抗原は、腫瘍抗原である。幾つかの実施形態では、抗原は、腫瘍関連表面抗原、例えば5T4、アルファフェトプロテイン(AFP)、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、BCMA、B-ヒト絨毛膜性生殖腺刺激ホルモン、CA-125、癌胚抗原(CEA)、CD123、CD133、CD138、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD25、CD30、CD33、CD34、CD4、CD40、CD44、CD56、CD8、CLL-1、c-Met、CMV特異抗原、CS-1、CSPG4、CTLA-4、DLL3、ジシアロガングリオシドGD2、膵管上皮ムチン、EBV特異抗原、EGFR変異体III(EGFRvIII)、ELF2M、エンドグリン、エフリンB2、上皮増殖因子受容体(EGFR)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、上皮性腫瘍抗原、ErbB2(HER2/neu)、線維芽細胞関連タンパク質(fap)、FLT3、葉酸結合タンパク質、GD2、GD3、神経膠腫関連抗原、スフィンゴ糖脂質、gp36、HBV特異抗原、HCV特異抗原、HER1-HER2、HER2-HER3の組み合わせ、HERV-K、高分子量黒色腫関連抗原(HMW-MAA)、HIV-1型エンベロープ糖タンパク質gp41、HPV特異抗原、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、IGFI受容体、IGF-II、IL-11Rα、IL-13R-a2、インフルエンザウイルス特異抗原、CD38、インスリン増殖因子(IGFI)-1、腸カルボキシルエステラーゼ、κ鎖、LAGA-1a、λ鎖、ラッサ熱ウイルス特異抗原、レクチン反応性AFP、系譜特異又は組織特異抗原、例えばCD3、MAGE、MAGE-A1、主要組織適合性複合体(MHC)分子、腫瘍特異的ペプチドエピトープを提示する主要組織適合性複合体(MHC)分子、M-CSF、黒色腫関連抗原、メソテリン、MN-CA IX、MUC-1、mut hsp70-2、変異p53、変異ras、好中球エラスターゼ、NKG2D、Nkp30、NY-ESO-1、p53、PAP、プロスターゼ、前立腺特異抗原(PSA)、前立腺癌腫瘍抗原-1(PCTA-1)、前立腺特異抗原タンパク質、STEAP1、STEAP2、PSMA、RAGE-1、ROR1、RU1、RU2(AS)、表面接着分子、サバイビング及びテロメラーゼ、TAG-72、フィブロネクチンのエクストラドメインA(EDA)及びエクストラドメインB(EDB)、並びにテネイシンCのA1ドメイン(TnC A1)、サイログロブリン、腫瘍間質抗原、血管内皮増殖因子受容体-2(VEGFR2)、ウイルス特異表面抗原、例えばHIV特異抗原(例えば、HIV gp120)、並びにこれらの表面抗原の任意の誘導体又は変異体から選択される。
【0117】
操作されたT細胞及び使用
本開示の細胞は、被験体から得られるT細胞を通じて得ることができる。T細胞は、例えば末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位に由来する組織、腹水、胸水、脾臓組織、及び腫瘍から得られてもよい。さらに、T細胞は、当該技術分野において利用可能な1以上のT細胞株に由来し得る。また、T細胞は、FICOLL(商標)分離及び/又はアフェレーシス等の当業者に知られている任意の多くの技術を使用して被験体から収集された血液単位から得られてもよい。幾つかの実施形態では、アフェレーシスによって収集された細胞を洗浄して血漿画分を除去し、後の処理に適切なバッファー又は培地に入れる。幾つかの実施形態では、細胞をPBSで洗浄する。理解されるように、洗浄工程は、例えばCobe(商標)2991細胞処理装置、Baxter CytoMate(商標)等の半自動フロースルー遠心分離機等を使用することによって使用され得る。幾つかの実施形態では、洗浄された細胞を1以上の生体適合性のバッファー、又はバッファーを含む若しくは含まない他の生理食塩水溶液に再懸濁する。幾つかの実施形態では、アフェレーシス試料の望ましくない成分が除去される。T細胞療法用にT細胞を単離する追加の方法は、米国特許出願公開第2013/0287748号に開示され、
その全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
【0118】
幾つかの実施形態では、T細胞は、例えば赤血球の溶解及びPERCOLL(商標)勾配による遠心分離を使用することによる単球の枯渇によってPBMCから単離される。幾つかの実施形態では、CD4、CD8、CD28、CD45RA及びCD45ROのT細胞等のT細胞の特定の亜集団は、当該技術分野において知られている正又は負の選択技術によって更に単離される。例えば、負の選択によるT細胞集団の富化は、負に選択される細胞に特有の表面マーカーに対する抗体の組み合わせによって遂行され得る。幾つかの実施形態では、負に選択される細胞に存在する細胞表面マーカーに対するモノクローナル抗体のカクテルを使用する負の磁気免疫付着(negative magnetic immunoadherence)又はフローサイトメトリーによる細胞の選別及び/又は選択を使用することができ
る。例えば、負の選択によってCD4細胞を富化するため、モノクローナル抗体カクテルは、典型的には、CD8、CD11b、CD14、CD16、CD20及びHLA-DRに対する抗体を含む。幾つかの実施形態では、フローサイトメトリー及び細胞選別は、本開示における使用に対する目的の細胞集団を単離するために使用される。
【0119】
幾つかの実施形態では、PBMCは、本明細書に記載される方法を使用して、免疫細胞(CAR等)により遺伝子改変に直接使用される。幾つかの実施形態では、PBMCを単離した後、Tリンパ球を更に単離し、遺伝子改変及び/又は増殖の前又は後のいずれかに、細胞傷害性Tリンパ球とヘルパーTリンパ球の両方を、ナイーブ、メモリー、及びエフェクターのT細胞亜集団へと選別する。
【0120】
幾つかの実施形態では、CD8細胞は、これら各種のCD8細胞と関連する細胞表面抗原を同定することによって、ナイーブ細胞、セントラルメモリー細胞、及びエフェクター細胞へと更に選別される。幾つかの実施形態では、セントラルメモリーT細胞の表現型マーカーの発現は、CCR7、CD3、CD28、CD45RO、CD62L、及びCD127の発現を含み、グランザイムBに対して陰性である。幾つかの実施形態では、セントラルメモリーT細胞は、CD8、CD45RO及びCD62LのT細胞である。幾つかの実施形態では、エフェクターT細胞は、CCR7、CD28、CD62L及びCD127に対して陰性であり、グランザイムB及びパーフォリンに対して陽性である。幾つかの実施形態では、CD4T細胞は亜集団へと更に選別される。例えば、CD4ヘルパーT細胞は、細胞表面抗原を有する細胞集団を同定することによって、ナイーブ細胞、セントラルメモリー細胞及びエフェクター細胞へと選別され得る。
【0121】
幾つかの実施形態では、免疫細胞、例えばT細胞は、既知の方法を使用した単離に続いて、遺伝子改変されるか、又は遺伝子改変に先だってin vitroで免疫細胞が活性化され、増殖される(又は、前駆細胞の場合、分化される)。別の実施形態では、免疫細胞、例えばT細胞は、本明細書に記載されるキメラ抗原受容体によって遺伝子改変され(例えば、CARをコードする1以上のヌクレオチド配列を含むウイルスベクターによって形質導入される)、次いでin vitroで活性化及び/又は増殖される。T細胞を活性化及び増殖する方法は当該技術分野において知られており、例えば米国特許第6,905,874号、同第6,867,041号、及び同第6,797,514号、並びにPCT公報である国際公開第2012/079000号に記載され、それらの内容は、それらの全体が引用することにより本明細書の一部をなす。一般的には、かかる方法は、PBMC又は単離されたT細胞と、一般的にはビーズ又は他の表面に付着された抗CD3抗体及び抗CD28抗体等の刺激物質及び共刺激物質とを、IL-2等の適切なサイトカインを含む培養培地中で接触させることを含む。同じビーズに付着された抗CD3抗体及び抗CD28抗体は、「代理」抗原提示細胞(APC)としての役割を果たす。一例は、ヒトT細胞の生理学的な活性化に対するCD3/CD28活性化因子/刺激因子システムである、Dynabeads(商標)システムである。他の実施形態では、米国特許第6,04
0,177号及び同第5,827,642号、並びにPCT公報である国際公開第2012/129514号(それらの内容は、それらの全体が引用することにより本明細書の一部をなす)に記載されるような方法を使用して、フィーダー細胞、並びに適切な抗体及びサイトカインによって、T細胞は活性化され、刺激されて増殖する。
【0122】
幾つかの実施形態では、T細胞はドナー被験体から得られる。幾つかの実施形態では、ドナー被験体は、癌又は腫瘍に冒されたヒト患者である。幾つかの実施形態では、ドナー被験体は癌又は腫瘍に冒されていないヒト患者である。
【0123】
幾つかの実施形態では、操作されたT細胞を含む組成物は、薬学的に許容可能な担体、希釈剤、可溶化剤、乳化剤、防腐剤、及び/又はアジュバントを含む。幾つかの実施形態では、上記組成物は賦形剤を含む。
【0124】
幾つかの実施形態では、上記組成物は、非経口的な送達に対し、吸入に対し、又は経口等の消化管による送達に対して選択される。かかる薬学的に許容可能な組成物の作製は、当業者の能力の範囲に含まれる。幾つかの実施形態では、バッファーを使用して上記組成物を生理学的pH又はわずかに低いpH、典型的には約5~約8の範囲のpHに維持する。幾つかの実施形態では、非経口投与が検討される場合、上記組成物は、薬学的に許容可能なビヒクル中、追加の治療剤と共に又はそれを伴わずに、本明細書に記載される組成物を含む、パイロジェンフリー(pyrogen-free)の非経口的に許容可能な水溶液の形態である。幾つかの実施形態では、非経口注射用のビヒクルは滅菌蒸留水であり、該蒸留水中において、少なくとも1つの追加の治療剤と共に又はそれを伴わずに、本明細書に記載される組成物が適切に保存される無菌の等張液として製剤化される。幾つかの実施形態では、上記作製は、所望の分子と、製品の制御放出又は持続放出を提供する、高分子化合物(ポリ乳酸又はポリグリコール酸等)、ビーズ、又はリポソームとの製剤化を含み、その後、デポー注射によって送達される。幾つかの実施形態では、所望の分子を導入するために、埋め込み可能な薬物送達デバイスが使用される。
【0125】
幾つかの実施形態では、癌の治療を必要とする被験体において癌を治療する方法は、T細胞療法を含む。幾つかの実施形態では、本明細書に開示されるT細胞療法は操作された自己細胞療法(eACT(商標))である。この実施形態によれば、上記方法は、患者から血液細胞を収集することを含み得る。単離された血液細胞(例えばT細胞)は、その後、本明細書に開示されるCARを発現するように操作され得る。特定の実施形態では、CAR T細胞は患者に投与される。幾つかの実施形態では、CAR T細胞は、患者において腫瘍又は癌を治療する。幾つかの実施形態では、CAR T細胞は、腫瘍又は癌のサイズを減少する。
【0126】
幾つかの実施形態では、T細胞療法において使用されるドナーT細胞は、(例えば自己T細胞療法に対しては)患者から得られる。他の実施形態では、T細胞療法において使用されるドナーT細胞は、患者でない被験体から得られる。
【0127】
幾つかの実施形態では、操作されたT細胞は治療的有効量で投与される。例えば、操作されたT細胞の治療的有効量は、少なくとも約10個の細胞、少なくとも約10個の細胞、少なくとも約10個の細胞、少なくとも約10個の細胞、少なくとも約10個の細胞、少なくとも約10個の細胞、又は少なくとも約1010個の細胞となり得る。別の実施形態では、T細胞の治療的有効量は、約10個の細胞、約10個の細胞、約10個の細胞、約10個の細胞、又は約10個の細胞である。幾つかの実施形態では、T細胞の治療的有効量は、約2×10細胞/kg、約3×10細胞/kg、約4×10細胞/kg、約5×10細胞/kg、約6×10細胞/kg、約7×10細胞/kg、約8×10細胞/kg、約9×10細胞/kg、約1×10細胞/
kg、約2×10細胞/kg、約3×10細胞/kg、約4×10細胞/kg、約5×10細胞/kg、約6×10細胞/kg、約7×10細胞/kg、約8×10細胞/kg、又は約9×10細胞/kgである。
【0128】
幾つかの実施形態では、治療的有効量の操作された生存T細胞は、最大用量約1×10個の操作された生存T細胞までの、体重1kg当たり約1×10個から約2×10個の間の操作された生存T細胞である。
【0129】
治療方法
本明細書に開示される方法は、被験体において癌を治療するため、腫瘍のサイズを減少させるため、腫瘍細胞を死滅させるため、腫瘍細胞増殖を未然防止するため、腫瘍の成長を未然防止するため、患者から腫瘍を排除するため、腫瘍の再燃を未然防止するため、腫瘍転移を未然防止するため、患者において寛解を誘導するため、又はそれらの任意の組み合わせに使用され得る。幾つかの実施形態では、上記方法は完全奏効を誘導する。他の実施形態では、上記方法は部分奏効を誘導する。
【0130】
治療され得る癌は、血管新生化されていない、まだ実質的に血管新生化されていない、又は血管新生化された腫瘍を含む。また、癌は固形腫瘍又は非固形腫瘍を含み得る。幾つかの実施形態では、癌は血液の癌である。幾つかの実施形態では、癌は白血球の癌である。他の実施形態では、癌は形質細胞の癌である。幾つかの実施形態では、癌は白血病、リンパ腫又は骨髄腫である。幾つかの実施形態では、上記癌は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)(非T細胞ALLを含む)、急性リンパ性白血病(ALL)、及び血球貪食リンパ組織球増多症(HLH))、B細胞前リンパ球性白血病、B細胞急性リンパ性白血病(「BALL」)、芽球性形質細胞様樹状細胞新生物、バーキットリンパ腫、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄白血病(CML)、慢性若しくは急性の肉芽腫性疾患、慢性若しくは急性の白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫、濾胞性リンパ腫(FL)、毛様細胞性白血病、血球貪食症候群(マクロファージ活性化症候群(MAS))、ホジキン病、巨細胞肉芽腫(large cell granuloma)、白血球接着不全症、悪性リンパ増殖性状態、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、意義不明の単クローン性γグロブリン血症(MGUS)、多発性骨髄腫、脊髄形成異常及び骨髄異形成症候群(MDS)、限定されないが急性骨髄白血病(AML)を含む骨髄疾患、非ホジキンリンパ腫(NHL)、形質細胞増殖性障害(例えば、無症候性骨髄腫(くすぶり型多発性骨髄腫又は無痛性骨髄腫))、形質芽球性リンパ腫、形質細胞様樹状細胞新生物、形質細胞腫(例えば、形質細胞異常増殖症;孤立性骨髄腫;孤立性形質細胞腫;髄外性形質細胞腫;及び多発性形質細胞腫)、POEMS症候群(Crow-Fukase症候群、高月病、及びPEP症候群)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBC)、小細胞若しくは大細胞濾胞性リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫(SMZL)、全身性アミロイド軽鎖アミロイドーシス、T細胞急性リンパ性白血病(「TALL」)、T細胞リンパ腫、形質転換後濾胞性リンパ腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、又はそれらの組み合わせである。
【0131】
幾つかの実施形態では、癌は骨髄腫である。幾つかの実施形態では、癌は多発性骨髄腫である。幾つかの実施形態では、癌は白血病である。幾つかの実施形態では、癌は急性骨髄白血病である。
【0132】
幾つかの実施形態では、上記方法は化学療法剤を投与することを更に含む。幾つかの実施形態では、選択される化学療法剤は、リンパ枯渇(lymphodepleting)(プレコンディ
ショニング)化学療法剤である。有益なプレコンディショニング治療のレジメンは、相関的な有益なバイオマーカーと共に、米国仮特許出願第62/262,143号及び同第6
2/167,750号に記載され、それらの全体が引用することにより本明細書の一部をなす。これらは、例えば、指定される有益な用量のシクロホスファミド(200mg/m/日~2000mg/m/日)及び指定される用量のフルダラビン(20mg/m/日~900mg/m/日)を患者に投与することを含むT細胞療法を必要とする患者をコンディショニングする方法を記載する。或る一つのかかる投薬レジメンは、治療的有効量の操作されたT細胞の患者への投与の前に、約500mg/m/日のシクロホスファミド及び約60mg/m/日のフルダラビンを3日間毎日患者に投与することを含む、患者を治療することを含む。
【0133】
幾つかの実施形態では、抗原結合分子、形質導入された(或いは操作された)細胞(CAR等)、及び化学療法剤は、各々、被験体における疾患又は状態を治療するのに有効な量で投与される。
【0134】
幾つかの実施形態では、本明細書に開示されるCARを発現する免疫エフェクター細胞を含む組成物は、任意の数の化学療法剤と併せて投与され得る。化学療法剤の例として、チオテパ及びシクロホスファミド(CYTOXAN(商標))等のアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファン等のアルキルスルホン酸塩;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa)等のアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド(triethylenethiophosphaoramide)、及びトリメチロ
ロールメラミンを含む、エチレンイミン及びメチラメラミン(methylamelamines);クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、ノベムビチン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロホスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタード等のナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン(ranimustine)等のニトロソウレア;アクラシノマイシン(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリチアマイシン、カラビシン(carabicin)、カルミノ
マイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorubicin)、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビ
シン、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マルセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシ
ン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプ
トゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン(zorubicin)等の
抗生物質;メトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU)等の代謝拮抗薬;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート等の葉酸類縁体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン(thiamiprine)、チオグアニン等
のプリン類縁体;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5-FU等のピリミジン類縁体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン等のアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン等の抗副腎剤;フロリン酸(frolinic acid)等の葉酸補液;ア
セグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル(bestrabucil);ビスアントレン;エダトラキサート(edatraxate);デフォ
ファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジコン;エルフォルミチン(elformithine);酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキウレア;レンティナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン(nitracrine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ポドフィリン酸;
2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;多糖類K(PSK);ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えばパクリタキセル(TAXOL(商標)、Bristol-Myers Squibb)及びドセタキセル(TAXOTERE(商標)、Rhone-Poulenc Rorer);クロラムブチル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチン及びカルボプラチン等の白金類縁体;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロン酸;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオミチン(DMFO);Targretin(商標)(ベキサロテン)、Panretin(商標)(アリトレチノイン)等のレチノイン酸誘導体;ONTAK(商標)(デニロイキンジフチトクス);エスペラミシン;カペシタビン;並びに上記のいずれかの薬学的に許容可能な塩、酸又は誘導体が挙げられる。幾つかの実施形態では、本明細書に開示されるCARを発現する免疫エフェクター細胞を含む組成物は、腫瘍に対するホルモンの作用を調節又は阻害するように作用する抗ホルモン剤、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害4(5)-イミダゾール、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オ
ナプリストン、及びトレミフェン(フェアストン)を含む抗エストロゲン薬;並びにフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、リュープロリド及びゴセレリン等の抗アンドロゲン薬;並びに上記のいずれかの薬学的に許容可能な塩、酸又は誘導体と併せて投与され得る。また適切な場合には、限定されないが、CHOP、すなわち、シクロホスファミド(Cytoxan(商標))、ドキソルビシン(ヒドロキシドキソルビシン)、ビンクリスチン(Oncovin(商標))及びプレドニゾンを含む化学療法剤の組み合わせが投与される。
【0135】
幾つかの実施形態では、化学療法剤は、操作された細胞又は核酸の投与と同時に又は投与の1週以内に投与される。他の実施形態では、化学療法剤は、操作された細胞又は核酸の投与の後、1週間~4週間、すなわち1週間~1ヶ月、1週間~2ヶ月、1週間~3ヶ月、1週間~6ヶ月、1週間~9ヶ月、又は1週間~12ヶ月投与される。幾つかの実施形態では、化学療法剤は、細胞又は核酸を投与する少なくとも1ヶ月前に投与される。幾つかの実施形態では、上記方法は、2以上の化学療法剤を投与することを更に含む。
【0136】
様々な追加の治療剤が、本明細書に記載される組成物と併せて使用され得る。例えば、有用な可能性がある追加の治療剤として、ニボルマブ(OPDIVO(商標))、ペンブロリズマブ(KEYTRUDA(商標))、ピディリズマブ(CureTech)、及びアテゾリズマブ(Roche)等のPD-1阻害剤が挙げられる。
【0137】
本明細書に開示される組成物及び方法との併用に適している追加の治療剤として、限定されないが、イブルチニブ(IMBRUVICA(商標))、オファツムマブ(ARZERRA(商標))、リツキシマブ(RITUXAN(商標))、ベバシズマブ(AVASTIN(商標))、トラスツズマブ(HERCEPTIN(商標))、トラスツズマブエムタンシン(KADCYLA(商標))、イマチニブ(GLEEVEC(商標))、セツキシマブ(ERBITUX(商標))、パニツムマブ(VECTIBIX(商標))、カツマキソマブ、イブリツモマブ、オファツムマブ、トシツモマブ、ブレンツキシマブ、アレムツズマブ、ゲムツズマブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、バンデタニブ、アファチニブ、ラパチニブ、ネラチニブ、アキシチニブ、マシチニブ、パゾパニブ、スニチニブ、ソラフェニブ、トセラニブ、レスタウルチニブ、アキシチニブ、セジラニブ、レンバチニブ
、ニンテダニブ、パゾパニブ、レゴラフェニブ、セマクサニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、チボザニブ、トセラニブ、バンデタニブ、エントレクチニブ、カボザンチニブ、イマチニブ、ダサチニブ、ニロチニブ、ポナチニブ、ラドチニブ(radotinib)、ボスチニブ
、レスタウルチニブ、ルキソリチニブ、パクリチニブ、コビメチニブ、セルメチニブ、トラメチニブ、ビニメチニブ、アレクチニブ、セリチニブ、クリゾチニブ、アフリベルセプト、アジポチド、デニロイキンジフチトクス、エベロリムス及びテムシロリムス等のmTOR阻害剤、ソニデギブ及びビスモデギブ等のヘッジホッグ阻害剤、及びCDK阻害剤(パルボシクリブ)等のCDK阻害剤が挙げられる。
【0138】
幾つかの実施形態では、操作されたCAR T細胞を有する組成物は、抗炎症剤と共に投与される。抗炎症剤又は抗炎症薬として、限定されないが、ステロイド及びグルココルチコイド(ベタメタゾン、ブデソニド、デキサメタゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロンを含む)、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、メトトレキサート、スルファサラジン、レフルノミド、抗TNF薬、シクロホスファミド、及びミコフェノール酸(mycophenolate)を含む非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)が挙げら
れる。例示的なNSAIDとして、イブプロフェン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、Cox-2阻害剤、及びシアリレート(sialylates)が挙げられる。例示的な鎮痛剤として、アセトアミノフェン、オキシコドン、塩酸プロポキシフェンのトラマドールが挙げられる。例示的なグルココルチコイドとして、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、又はプレドニゾンが挙げられる。例示的な生物学的応答修飾物質として、細胞表面マーカー(例えばCD4、CD5等)に対する分子、サイトカイン阻害剤、例えば、TNFアンタゴニスト(例えば、エタネルセプト(ENBREL(商標))、アダリムマブ(HUMIRA(商標))及びインフリキシマブ(REMICADE(商標)))、ケモカイン阻害剤、及び接着分子阻害剤が挙げられる。生物学的応答修飾物質は、分子の組み換え形態と並んで、モノクローナル抗体も含む。例示的なDMARDとして、アザチオプリン、シクロホスファミド、シクロスポリン、メトトレキサート、ペニシラミン、レフルノミド、スルファサラジン、ヒドロキシクロロキン、金(経口(オーラノフィン)及び筋肉内)、及びミノサイクリンが挙げられる。
【0139】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、サイトカインと併せて投与される。サイトカインの例は、リンホカイン、モノカイン及び従来のポリペプチドホルモンである。サイトカインの中でも、ヒト成長ホルモン、N-メチオニルヒト成長ホルモン及びウシ成長ホルモン等の成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラキシン;プロリラキシン;卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)及び黄体形成ホルモン(LH)等の糖タンパク質ホルモン;肝臓増殖因子(HGF);線維芽細胞成長因子(FGF);プロラクチン;胎盤性ラクトゲン;ミューラー管阻害物質;マウス性腺刺激ホルモン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮細胞増殖因子;インテグリン;トロンボポエチン(TPO);NGF-β等の神経成長因子(NGF);血小板増殖因子;TGF-α及びTGF-β等のトランスフォーミング増殖因子(TGF);インスリン様増殖因子I及びII;エリスロポエチン(EPO、Epogen(商標)、Procrit(商標));骨誘導因子;インターフェロン-α、β及びγ等のインターフェロン;マクロファージ-CSF(M-CSF);顆粒球マクロファージ-CSF(GM-CSF);及び顆粒球-CSF(G-CSF)等のコロニー刺激因子(CSF);IL-1、IL-1α、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12;IL-15等のインターロイキン(IL)、TNF-α又はTNF-β等の腫瘍壊死因子;並びにLIF及びkitリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子が挙げられる。本明細書で使用されるサイトカインの用語は、天然起源の又は組み換え細胞培養物由来
のタンパク質、及び本来の配列のサイトカインの生物学的に活性な等価物を含む。
【0140】
モニタリング
幾つかの実施形態では、キメラ受容体T細胞免疫療法薬の投与は、認可された医療機関で行われる。
【0141】
幾つかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、患者を、注入後に少なくとも毎日7日間にわたり認可された医療機関で、CRS及び神経毒性の徴候及び症候についてモニタリングすることを含む。
【0142】
幾つかの実施形態では、患者は、認可された医療機関の近くに注入後に少なくとも4週間にわたって留まるよう指示される。
【0143】
重篤な有害反応の未然防止又は管理
幾つかの実施形態では、本開示は、1つ以上の属性のレベルに基づいて、有害反応の発生を未然防止する又は有害反応の重症度を軽減する方法を提供する。この点において、開示された方法は、毒性予防のために「予防的有効量」のトシリズマブ、コルチコステロイド療法薬、又は抗痙攣薬を投与することを含み得る。薬理学的効果及び/又は生理学的効果は予防的であり得る。すなわち、該効果は、疾患又はその症状を完全に又は部分的に未然防止する。「予防的有効な量」は、必要な投与量で必要な時間にわたって、所望の予防的結果(例えば、有害反応の発症の未然防止)を達成するのに有効な量を指し得る。
【0144】
幾つかの実施形態では、上記方法は、有害反応の管理を含む。幾つかの実施形態では、有害反応は、サイトカイン放出症候群(CRS)、神経毒性、過敏反応、重症感染、血球減少症、及び低ガンマグロブリン血症からなる群から選択される。
【0145】
幾つかの実施形態では、有害反応の徴候及び症候は、発熱、低血圧症、頻脈、低酸素症、及び悪寒からなる群から選択され、心不整脈(心房性細動及び心室頻拍を含む)、心停止、心不全、腎不全、毛細血管漏出症候群、低血圧症、低酸素症、臓器毒性、血球貪食性リンパ組織球症/マクロファージ活性化症候群(HLH/MAS)、発作、脳症、頭痛、振戦、眩暈、失語症、せん妄、不眠症、不安症、アナフィラキシー、発熱性好中球減少症、血小板減少症、好中球減少症、及び貧血症を含む。
【0146】
サイトカイン放出症候群(CRS)
幾つかの実施形態では、上記方法は、キメラ受容体治療においてCRSを未然防止する又はCRSの重症度を軽減することを含む。幾つかの実施形態では、操作されたCAR T細胞は、患者に投与した後に不活化される。
【0147】
幾つかの実施形態では、上記方法は、CRSを臨床症状に基づき特定することを含む。幾つかの実施形態では、上記方法は、発熱、低酸素症、及び低血圧症のその他の原因を評価し、治療することを含む。グレード2以上のCRS(例えば、輸液反応性でない低血圧症又は酸素補給を必要とする低酸素症)を経験している患者は、連続的な心電図遠隔測定法及びパルスオキシメトリーを用いてモニタリングされるべきである。幾つかの実施形態では、重度のCRSを経験している患者については、心機能の評価のために心エコー図を実施することが検討される。重度又は生命を脅かすCRSについては、集中治療の支持療法が検討される場合がある。
【0148】
幾つかの実施形態では、上記方法は、患者を注入後に少なくとも毎日7日間にわたり認可された医療機関で、CRSの徴候及び症候についてモニタリングすることを含む。幾つかの実施形態では、上記方法は、患者を注入後4週間にわたりCRSの徴候又は症候につ
いてモニタリングすることを含む。幾つかの実施形態では、上記方法は、CRSの徴候又は症候が万一起こったらいつでも、直ちに医師の診察を受けるように患者に助言することを含む。幾つかの実施形態では、上記方法は、CRSの最初の徴候が見られた時点で、示されたように支持療法、トシリズマブ又はトシリズマブ及びコルチコステロイドによる治療を開始することを含む。
【0149】
神経毒性(NT)
幾つかの実施形態では、上記方法は、患者を神経毒性の徴候及び症候についてモニタリングすることを含む。幾つかの実施形態では、上記方法は、神経症状のその他の原因を除外することを含む。グレード2以上の神経毒性を経験している患者は、連続的な心電図遠隔測定法及びパルスオキシメトリーを用いてモニタリングされるべきである。重度又は生命を脅かす神経毒性の場合には集中治療の支援療法が提供される。
【0150】
幾つかの実施形態では、上記方法は、患者を注入後に少なくとも毎日7日間にわたり認可された医療機関で、神経毒性の徴候及び症候についてモニタリングすることを含む。幾つかの実施形態では、上記方法は、患者を注入後4週間にわたり神経毒性の徴候又は症候についてモニタリングすることを含む。
【0151】
二次性悪性腫瘍
幾つかの実施形態では、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法で治療された患者は、二次性悪性腫瘍を発症する場合がある。或る特定の実施形態では、CD19指向性遺伝子改変自己T細胞免疫療法で治療された患者は、二次性悪性腫瘍を発症する場合がある。幾つかの実施形態では、上記方法は、二次性悪性腫瘍について生涯にわたりモニタリングすることを含む。
【0152】
本明細書で挙げられる全ての出版物、特許、及び特許出願は、それぞれの個々の出版物、特許、又は特許出願が、引用することにより本明細書の一部をなすと具体的に個別に示されるのと同じ程度で、引用することにより本明細書の一部をなす。しかしながら、本明細書における参考文献の引用は、そのような参考文献が本開示の先行技術であることの承認として解釈されるべきではない。引用することにより本明細書の一部をなす参考文献に示される定義又は用語のいずれかが、本明細書に示される用語及び考察と異なる限りにおいては、本発明の用語及び定義が優先される。
【0153】
本開示を、以下の実施例によって更に説明するが、実施例は、更なる限定として解釈されるべきではない。本出願全体を通して引用される全ての参考文献の内容は、引用することにより明確に本明細書の一部をなす。
【実施例0154】
実施例1:注入前のT細胞増殖動態はCAR T細胞増殖及び臨床転帰と関連性を有し得る
この研究では、客観的奏効率(ORR)及びCAR T細胞レベル(ピーク及び0日目~28日目の曲線下面積(AUC0-28))を、産物T細胞の増殖動態の尺度である産物の細胞集団の倍加時間(DT)について調べた。製造の3日目から最終日の間に測定されたDTは、組換えインターロイキン(IL)-2が補充された培地中でインキュベートしている間の細胞増殖及び細胞死の割合に依存していた。T細胞の表現型をフローサイトメトリーによって評価した。ロジスティック回帰(P値)及びペアワイズスピアマン分析(r値)を使用して関連性を評価し、四分位分析の棒グラフ及びロジスティック回帰の予測確率曲線を使用して視覚化した。
【0155】
自己抗CD19キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法薬であるアキシカブタゲン・シ
ロロイセルで治療された患者は、より短い産物細胞集団のDTを示し、より高いORR(P=0.025)を有した。最低の産物のDTの四分位(DT≦1.33日)を有する患者は、100%のORRを有した。最高の産物のDTの四分位(DT≧1.79日)を有する患者は、73%のORRを有した。DTは、注入後のより大きなCAR T細胞増殖とも相関又は関連していた(ピークCAR T細胞レベル、r=-0.27;AUC0-28d、r=-0.29;四分位分析)。17人のノンレスポンダーのうち、12人がDT>1.5日を示した。最低のDT及び最大のCAR T細胞増殖又はORRを達成するために、1:1の特定のCD4/CD8 T細胞比は必要とされなかった。
【0156】
IL-2が補充された培地の存在下での製造の間にDTによって測定される、注入前の産物T細胞の増殖動態は、治療された患者においてORR及びin vivoでのCAR
T細胞増殖と相関又は関連し得る。産物のDTの低下は、in vivoでCAR T細胞の増殖を限定し得る。T細胞適応性の構成要素である産物のDTに関連する指標は、製造の最適化及び/又は組み合わせアプローチの利用を通じて、CAR T細胞療法薬の臨床性能及び最適化を予測するのに適切であり得る。
【0157】
実施例2:キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法薬の製造
アフェレーシス材料を、製造過程の開始時にT細胞について濃縮した。T細胞を、IL-2の存在下で抗CD3モノクローナル抗体(OKT3)により2日間刺激することにより活性化させた。活性化されたT細胞をレトロウイルス形質導入によって形質導入して、CAR遺伝子を導入した。CAR陽性細胞の所望の用量を達成するために、形質導入されたT細胞をインターロイキン2(IL-2)の存在下で4日間~6日間増殖させた。形質導入されたT細胞を組換えIL-2を含む培地で成長させた場合に、T細胞の倍加時間を3日目から製造過程の終わりまで測定した。CAR陽性T細胞の治療前の増殖動態を、以下のように倍加時間によって特徴づけた:
倍加時間=ln(2)×期間/ln(採取時の総生存細胞/3日目の総生存細胞)
【0158】
主要T細胞の表現型をフローサイトメトリーによって評価した。nanostring及び事前に特定されたImmunosign21インデックスを利用して、腫瘍免疫微小環境を治療前に評価した。客観的奏効率(ORR)(CR+PR)を、悪性リンパ腫の応答基準の国際ワーキンググループ(International Working Group Response Criteria for Malignant Lymphoma)(Cheson BD, et al. J Clin Oncol. 2007;25:579-586、Neelapu
SS, Locke FL, et al. N Engl J Med. 2017;377:2531-2544)を使用して評価した。血中CAR T細胞レベル(ピーク及び0日目~28日目の曲線下面積(AUC0-28))を、記載されるポリメラーゼ連鎖反応を使用して血中で測定した(Neelapu SS, Locke FL, et al. N Engl J Med. 2017;377:2531-2544、Neelapu SS, Locke FL, et al. ASH 2017. Abstract #578)。
【0159】
関連性を、ペアワイズスピアマン分析(r値)及び統計学的に有意であるとみなされる名目P値<0.05(多重性調整されていない)でのロジスティック回帰を使用して評価した。関連性を、四分位分析の棒グラフ及びロジスティック回帰の予測確率曲線を使用して視覚化した。表1に示される分析には、アキシカブタゲン・シロロイセルで治療された91人の患者からのアキシカブタゲン・シロロイセルによる治療前に測定されたCAR陽性T細胞の倍加時間が含まれた。
【0160】
【表1】
【0161】
倍加時間の低下を伴うCAR陽性T細胞産物で治療された患者では、ORRが増加した(P=0.025;図1A及び図1B)。1.33日以下の倍加時間(Q1)での患者は100%のORRを有し、1.79日以上の倍加時間(Q3)での患者は75%未満のORRを有した(図1A)。治療に奏効を示さなかった患者の71%(12人/17人)は、1.5日より長い産物の倍加時間を有していた。図2A及び図2Bは、四分位分析(図2A)及びロジスティック回帰によるモデリング(図2B)による奏効持続(1年以上)及び製造過程の間の培養物における倍加時間を示している。図3A及び図3Bは、四分位分析(図3A)及びロジスティック回帰によるモデリング(図3B)によるグレード3以上の神経学的事象(%)及び培養物における倍加時間を示している。
【0162】
治療前に測定された培養物における倍加時間(DT)に基づく臨床転帰群の間の統計的比較を表2に示す。
【0163】
【表2】
【0164】
結果は、四分位分析(図4A)及び線形単回帰(図4B)により、in vivoでのCAR T細胞生着の増加が倍加時間の低下と関連性を有し得ることを示唆した。図4C
及び図4Dは、四分位分析(図4C)及び線形単回帰(図4D)により、AUC0-28が倍加時間と関連性を有したことを示している。倍加時間の増加に伴ってAUC0-28が減少した(スピアマン分析、r=-0.29;SLR、P=0.06)。結果は、それぞれ図5A及び図5Bに示されるように、注入前に測定された培養物における倍加時間がCCR7CD45RA及びCCR7のパーセンテージと関連性を有し得ることを示唆した。図5C及び図5Dは、線形単回帰による倍加時間及びCAR陽性T細胞産物におけるCCR7CD45RAT細胞のパーセンテージ(図5C)又はCD4:CD8比(図5D)の分析を示している。
【0165】
まとめると、この研究により、治療前に測定された本来のT細胞適応性がCAR T細胞産物のin vivo増殖及び臨床転帰と関連性を有し得ることが示された。製造過程の間のポリクローナル刺激下での細胞集団の倍加時間として定量化された産物T細胞の増殖速度は、治療後に測定されたCAR T細胞の増殖と関連性を有し得る。この研究により、治療前に測定された産物T細胞の倍加時間(DT)が臨床客観的奏効と関連性を有し得ることも示された。治療失敗は、治療前に測定された1.5日より長い倍加時間を有する産物と関連性を有し得る。治療前に測定された産物T細胞の増殖速度は、産物細胞におけるCCR7 CD45RA二重陽性細胞のパーセントと関連性を有し得る。産物におけるCCR7T細胞及びCCR7CD45RAナイーブT細胞のレベルの増加は、培養物における増殖速度の増加及び倍加時間の低下と関連性を有し得る。T細胞増殖の動態を含む産物T細胞適応性に関連する指標は、CAR T細胞産物を特徴付け、治療法の最適化を導くのに有用であり得る。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
【配列表】
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【手続補正書】
【提出日】2023-12-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
悪性腫瘍を治療するための有効用量の操作されたT細胞を製造する方法であって、
(a)キメラ抗原受容体(CAR)を含む操作されたT細胞の集団を準備することと、
(b)前記集団の倍加時間を測定することと、
(c)IL-2の存在下での操作後、約2~7日間増殖したときの倍加時間が1.5日以下である操作されたT細胞の集団を選択することと、
を含む、
方法。
【請求項2】
前記倍加時間は、製造過程の間に測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記倍加時間は、1日~1.5日、1.3日未満、又は1.5日未満である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
悪性腫瘍を治療するための有効用量の操作されたT細胞を製造する方法であって、
(a)キメラ抗原受容体(CAR)を含む操作されたT細胞をIL-2の存在下で増殖させることと、
(b)集団の倍加時間を増殖過程の間に測定することと、
(c)前記操作されたT細胞を増殖後に採取することと、
(d)IL-2の存在下での操作後、約2~7日間増殖したときの倍加時間が1.5日以下である操作されたT細胞の集団を選択することにより、悪性腫瘍の治療のための有効用量の操作されたT細胞を準備することと、
を含む、
方法。
【請求項5】
前記倍加時間は、前記操作されたT細胞の増殖開始時及び採取時の総生存細胞の数を決定することによって測定される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記キメラ抗原受容体は、腫瘍抗原を標的とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記キメラ抗原受容体は、腫瘍関連表面抗原、5T4、アルファフェトプロテイン(AFP)、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、BCMA、B-ヒト絨毛膜性生殖腺刺激ホルモン、CA-125、癌胚抗原(CEA)、CD123、CD133、CD138、CD19、CD20、CD22、CD23、CD24、CD25、CD30、CD33、CD34、CD4、CD40、CD44、CD56、CD8、CLL-1、c-Met、CMV特異抗原、CS-1、CSPG4、CTLA-4、DLL3、ジシアロガングリオシドGD2、膵管上皮ムチン、EBV特異抗原、EGFR変異体III(EGFRvIII)、ELF2M、エンドグリン、エフリンB2、上皮増殖因子受容体(EGFR)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、上皮性腫瘍抗原、ErbB2(HER2/neu)、線維芽細胞関連タンパク質(fap)、FLT3、葉酸結合タンパク質、GD2、GD3、神経膠腫関連抗原、スフィンゴ糖脂質、gp36、HBV特異抗原、HCV特異抗原、HER1-HER2、HER2-HER3の組み合わせ、HERV-K、高分子量黒色腫関連抗原(HMW-MAA)、HIV-1型エンベロープ糖タンパク質gp41、HPV特異抗原、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、IGFI受容体、IGF-II、IL-11Rα、IL-13R-a2、インフルエンザウイルス特異抗原、CD38、インスリン増殖因子(IGFI)-1、腸カルボキシルエステラーゼ、κ鎖、LAGA-1a、λ鎖、ラッサ熱ウイルス特異抗原、レクチン反応性AFP、系譜特異又は組織特異抗原、MAGE、MAGE-A1、主要組織適合性複合体(MHC)分子、腫瘍特異的ペプチドエピトープを提示する主要組織適合性複合体(MHC)分子、M-CSF、黒色腫関連抗原、メソテリン、MN-CA IX、MUC-1、mut hsp70-2、変異p53、変異ras、好中球エラスターゼ、NKG2D、Nkp30、NY-ESO-1、p53、PAP、プロスターゼ、前立腺特異抗原(PSA)、前立腺癌腫瘍抗原-1(PCTA-1)、前立腺特異抗原タンパク質、STEAP1、STEAP2、PSMA、RAGE-1、ROR1、RU1、RU2(AS)、表面接着分子、サバイビン及びテロメラーゼ、TAG-72、フィブロネクチンのエクストラドメインA(EDA)及びエクストラドメインB(EDB)、並びにテネイシンCのA1ドメイン(TnC A1)、サイログロブリン、腫瘍間質抗原、血管内皮増殖因子受容体-2(VEGFR2)、ウイルス特異表面抗原、並びにこれらの表面抗原の任意の誘導体又は変異体から選択される腫瘍抗原を標的とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記悪性腫瘍は、固形腫瘍、肉腫、癌腫、リンパ腫、多発性骨髄腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(NHL)、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫(PMBC)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、形質転換後濾胞性リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫(SMZL)、慢性若しくは急性の白血病、急性骨髄白血病、慢性骨髄白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)(非T細胞ALLを含む)、慢性リンパ性白血病(CLL)、T細胞リンパ腫、1つ以上のB細胞急性リンパ性白血病(「BALL」)、T細胞急性リンパ性白血病(「TALL」)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、B細胞前リンパ球性白血病、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、毛様細胞白血病、小細胞型若しくは大細胞型濾胞性リンパ腫、悪性リンパ増殖性状態、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、骨髄異形成及び骨髄異形成症候群、形質芽球性リンパ腫、形質細胞様樹状細胞腫瘍、ワルデンストレームマクログロブリン血症、形質細胞増殖性障害、意義不明の単クローン性γグロブリン血症(MGUS)、形質細胞腫、全身性アミロイド軽鎖アミロイドーシス、POEMS症候群(Crow-Fukase症候群、高月病、及びPEP症候群としても知られる)、又はそれらの組み合わせである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記有効用量は、75×10個~200×10個の操作されたT細胞である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
悪性腫瘍を治療するための操作されたT細胞の集団の質を決定する方法であって、
(a)キメラ抗原受容体(CAR)を含む操作されたT細胞の集団を準備することと、
(b)前記集団の倍加時間を測定することと、
(c)参照レベルと比較した前記測定された倍加時間に基づいて、前記集団が、悪性腫瘍の治療を必要とする患者における悪性腫瘍の治療に適切であるかどうかを決定することと、を含み、
前記参照レベルが1.5日であり、
前記集団の倍加時間が1.5日以下である場合、前記集団は悪性腫瘍の治療に適している、
方法。
【外国語明細書】