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  • -高圧ガス充填装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162000
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】高圧ガス充填装置
(51)【国際特許分類】
   F17C 5/06 20060101AFI20241114BHJP
   F17C 13/00 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
F17C5/06
F17C13/00 302
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077117
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神谷 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠人
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA01
3E172BD03
3E172DA90
3E172EA02
3E172EA35
3E172KA03
(57)【要約】
【課題】高圧ガスタンクの高圧ガス充填時の温度上昇を抑制しつつ、車両の重量の増加およびコストの増加を抑制することが可能な高圧ガス充填装置を提供する。
【解決手段】高圧ガス充填装置3は、高圧ガスを通過させて高圧ガスタンク4に充填させる高圧ガス充填系31を備える。高圧ガス充填系31は、第1充填経路311と、その第1充填経路311よりも圧力損失が大きく第1充填経路311の少なくとも一部を迂回する第2充填経路312と、第1充填経路311と第2充填経路312とを切り換える電磁弁313と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された高圧ガスタンクに高圧ガスを充填する高圧ガス充填装置であって、
前記高圧ガスを通過させて前記高圧ガスタンクに充填させる高圧ガス充填系を備え、
前記高圧ガス充填系は、第1充填経路と、前記第1充填経路よりも圧力損失が大きく前記第1充填経路の少なくとも一部を迂回する第2充填経路と、前記第1充填経路と前記第2充填経路とを切り換える電磁弁と、を有することを特徴とする高圧ガス充填装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に搭載された高圧ガスタンクに高圧ガスを充填する高圧ガス充填装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から高圧ガス貯蔵タンクに貯蔵されている高圧ガスを被充填タンクに充填するための高圧ガス充填方法、高圧ガス充填装置およびこの高圧ガス充填装置を搭載した車両に関する発明が知られている(下記特許文献1を参照)。特許文献1は、車両に搭載される水素充填装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-309375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された水素充填装置は、水素充填ステーションから供給されてボルテックスチューブで分離された高温ガスを、車体フレームおよびクーラントと熱交換させて冷却する熱交換器を備えている。そのため、水素充填装置が搭載される車両全体での重量が増加するとともに、車両のコストが増加するおそれがある。
【0005】
本開示は、高圧ガスタンクの高圧ガス充填時の温度上昇を抑制しつつ、車両の重量の増加およびコストの増加を抑制することが可能な高圧ガス充填装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、車両に搭載された高圧ガスタンクに高圧ガスを充填する高圧ガス充填装置であって、前記高圧ガスを通過させて前記高圧ガスタンクに充填させる高圧ガス充填系を備え、前記高圧ガス充填系は、第1充填経路と、前記第1充填経路よりも圧力損失が大きく前記第1充填経路の少なくとも一部を迂回する第2充填経路と、前記第1充填経路と前記第2充填経路とを切り換える電磁弁と、を有することを特徴とする高圧ガス充填装置である。
【発明の効果】
【0007】
本開示の上記一態様によれば、高圧ガスタンクの高圧ガス充填時の温度上昇を抑制しつつ、車両の重量の増加およびコストの増加を抑制することが可能な高圧ガス充填装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示に係る高圧ガス充填装置の実施形態を示す概略的な構成図。
図2図1に示す高圧ガス充填装置による高圧ガス充填時のフロー図。
図3】高圧ガスタンクの温度と第2充填経路の内径との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本開示に係る高圧ガス充填装置の実施形態を説明する。
【0010】
図1は、本開示に係る高圧ガス充填装置の実施形態を示す概略的な構成図である。本実施形態の高圧ガス充填装置3は、たとえば、燃料電池自動車(FCV)などの車両1に搭載される。車両1は、たとえば、レセプタクル2と、高圧ガス充填装置3と、高圧ガスタンク4と、ガス供給系5と、を備えている。車両1は、たとえば、複数の高圧ガスタンク4を備えている。また、図示は省略するが、車両1は、たとえば、燃料電池と、モータを含む駆動系と、制御装置と、を備えている。
【0011】
レセプタクル2は、たとえば、水素ステーションなどの高圧ガス供給施設において、水素などの高圧ガスを供給する高圧ガスノズルを接続させる。高圧ガス充填装置3は、たとえば、高圧ガスノズルからレセプタクル2を介して供給される高圧ガスを通過させて高圧ガスタンク4に充填させる高圧ガス充填系31を備えている。高圧ガス充填系31は、たとえば、第1充填経路311と、第2充填経路312と、電磁弁313と、を有している。
【0012】
高圧ガス充填系31の第1充填経路311は、たとえば、レセプタクル2に接続される上流配管311aと、上流配管311aの下流側の端部に接続されるマニホールド311bと、そのマニホールド311bと各々の高圧ガスタンク4とを接続する下流配管311cとを含む。また、第1充填経路311は、たとえば、上流配管311aとマニホールド311bとの間に、マニホールド311bから上流配管311aへの高圧ガスの逆流を防止する逆止弁311dを有している。
【0013】
高圧ガス充填系31の第2充填経路312は、たとえば、第1充填経路311よりも圧力損失が大きく、第1充填経路311の少なくとも一部を迂回している。より具体的には、たとえば、第2充填経路312を構成する配管312aの内径が、第1充填経路311を構成する上流配管311a、マニホールド311b、下流配管311c、および逆止弁311dの内径よりも小さいことで、第2充填経路312の圧力損失が第1充填経路311の圧力損失よりも大きくなっている。
【0014】
また、第2充填経路312は、たとえば、第2充填経路312を構成する配管312aが第1充填経路311の上流配管311aの上流部から分岐してマニホールド311bに接続されることで、第1充填経路311の一部を迂回している。また、第2充填経路312は、第2充填経路312を構成する配管312aとマニホールド311bとの間に、マニホールド311bから配管312aへの高圧ガスの逆流を防止する逆止弁312bを有している。
【0015】
高圧ガス充填系31の電磁弁313は、たとえば、第1充填経路311と第2充填経路312との分岐点に設けられている。電磁弁313は、たとえば、車両1の制御装置によって制御され、高圧ガス充填系31の第1充填経路311と第2充填経路312とを切り換える。すなわち、電磁弁313は、たとえば、車両1の制御装置によって制御され、高圧ガスが第1充填経路311のみを通過する第1充填状態と、高圧ガスが第2充填経路312を通過して第1充填経路311の少なくとも一部を迂回する第2充填状態とを切り換える。
【0016】
第1充填状態は、高圧ガスノズルからレセプタクル2を介して供給される高圧ガスが、上流配管311a、逆止弁311d、マニホールド311b、および下流配管311cを含む第1充填経路311のみを通過して、高圧ガスタンク4に供給される状態である。この第1充填状態において、電磁弁313は、たとえば、第1充填経路311の上流配管311aを開閉する弁を開き、第2充填経路312の配管312aを開閉する弁を閉じる。
【0017】
第2充填状態は、高圧ガスノズルからレセプタクル2を介して供給される高圧ガスが、第2充填経路312を通過することで、第1充填経路311の少なくとも一部を迂回して、高圧ガスタンク4に供給される状態である。この第2充填状態において、電磁弁313は、たとえば、第1充填経路311の上流配管311aを開閉する弁を閉じ、第2充填経路312の配管312aを開閉する弁を開く。
【0018】
高圧ガスタンク4は、高圧ガスノズルから高圧ガス充填装置3を介して供給される高圧ガスによって充填される。高圧ガスタンク4は、たとえば、開閉弁、逆止弁、切換弁、および安全弁などを含む。また、高圧ガスタンク4は、たとえば、充填された高圧ガスを、開閉弁、逆止弁、および切換弁を介して、ガス供給系5へ供給する。
【0019】
ガス供給系5は、たとえば、高圧ガスタンク4から供給される高圧ガスを減圧し、その減圧されたガスを燃料電池などのガスを消費する装置へ供給する。ガス供給系5は、たとえば、上流配管51と、マニホールド52と、下流配管53と、減圧弁54とを有している。
【0020】
上流配管51は、各々の高圧ガスタンク4とマニホールド52とを接続している。マニホールド52には、各々の上流配管51の下流側の端部と、下流配管53の上流側の端部が接続されている。下流配管53は、マニホールド52とガスを消費する装置とを接続する。減圧弁54は、下流配管53に設けられ、高圧ガスタンク4から供給される高圧ガスを減圧する。
【0021】
図2は、図1に示す高圧ガス充填装置3による高圧ガス充填時のフロー図である。車両1の制御装置は、図2に示す処理フローが開始されると、高圧ガス充填ステーションに到着したか否かを判定する処理P1を実行する。
【0022】
この処理P1において、制御装置は、たとえば、車両1の位置情報または車両1の乗員による情報入力に基いて、ステーションに到着していないこと(NO)を判定すると、この処理P1を繰り返す。一方、処理P1において、制御装置は、車両1が高圧ガス充填ステーションに到着したこと(YES)を判定すると、充填速度を選択する処理P2を実行する。
【0023】
この処理P2において、制御装置は、たとえば、通信装置を介して高圧ガス充填ステーションと通信できた場合に高速充填を選択し、通信できなかった場合に低速充填を選択する。また、制御装置は、たとえば、車両1の乗員が高圧ガスの充填速度を選択可能なスイッチの切り替え状態に応じて高速充填と低速充填を選択してもよい。制御装置は、その後、処理P3を実行する。
【0024】
この処理P3において、制御装置は、前の処理P2で低速充填が選択されたか否かを判定する。この処理P3において、制御装置は、前の処理P2で低速充填が選択されたこと(YES)を判定すると、第1充填経路311の一部を第2充填経路312に切り換える処理P4を実行する。
【0025】
この処理P4において、制御装置は、たとえば、電磁弁313を制御して、高圧ガス充填系31における高圧ガスの充填経路の一部を、第1充填経路311から第2充填経路312に切り換える。すなわち、制御装置は、電磁弁313において、第1充填経路311を開閉する弁を閉じ、第2充填経路312を開閉する弁を開く。その後、制御装置は、充填リッドを開く処理P5を実行する。
【0026】
一方、処理P3において、制御装置は、前の処理P2で高速充填が選択されたこと(NO)を判定すると、電磁弁313において、第1充填経路311を開閉する弁が開き、第2充填経路312を開閉する弁が閉じた状態を維持する。これにより、第1充填経路311を迂回する第2充填経路312が閉鎖され、高圧ガス充填系31の高圧ガスの充填経路の全体が第1充填経路311のみによって構成される。その後、制御装置は、充填リッドを開く処理P5を実行する。
【0027】
処理P5において、制御装置は、車両1の充填リッドを開く。その後、車両1の乗員は、たとえば、高圧ガス充填ステーションの高圧ガスノズルを車両1のレセプタクル2に接続し(工程P6)、高圧ガスの充填を開始する(工程P7)。その後、高圧ガス充填ステーションは、たとえば、所定の条件が満たされた場合に、高圧ガスの充填を終了させる処理P8を実行することで、図2に示す処理フローが終了する。
【0028】
以下、前述の特許文献1に記載された従来の水素充填装置との対比に基いて、本実施形態の高圧ガス充填装置3の作用を説明する。
【0029】
上記特許文献1に記載された水素充填装置は、水素充填ステーションから供給されてボルテックスチューブで分離された高温ガスを、車体フレームおよびクーラントと熱交換させて冷却する熱交換器を備えている。そのため、水素充填装置が搭載される車両全体での重量が増加するとともに、車両のコストが増加するおそれがある。
【0030】
また、車両1の高圧ガスタンク4に水素などの高圧ガスを充填する際には、高圧ガス充填ステーションが、車両1から高圧ガスタンク4の温度や圧力などの情報を受信しながら高圧ガスの供給を制御して、高圧ガスタンク4の温度を所定の温度以下に維持する。しかし、車両1と高圧ガス充填ステーションとの通信が確立できない場合、高圧ガスの充填時に高圧ガスタンク4の温度が所定の温度を超えるおそれがある。
【0031】
これに対し、本実施形態の高圧ガス充填装置3は、車両1に搭載された高圧ガスタンク4に高圧ガスを充填する装置であって、高圧ガスを通過させて高圧ガスタンク4に充填させる高圧ガス充填系31を備えている。高圧ガス充填系31は、第1充填経路311と、その第1充填経路311よりも圧力損失が大きく第1充填経路311の少なくとも一部を迂回する第2充填経路312と、第1充填経路311と第2充填経路312とを切り換える電磁弁313と、を有する。
【0032】
このような構成により、本実施形態の高圧ガス充填装置3は、たとえば、車両1と高圧ガス充填ステーションとの通信が確立できない場合に、電磁弁313によって第1充填経路311の少なくとも一部を、第2充填経路312に切り換えることができる。これにより、高圧ガスタンク4への高圧ガスの充填時に、第1充填経路311のみを使用する場合と比較して高圧ガス充填系31の圧力損失が増加し、高圧ガスタンク4に対する高圧ガスの充填速度が低下する。
【0033】
その結果、高圧ガス充填時の高圧ガスタンク4の温度上昇が抑制され、車両1と高圧ガス充填ステーションとの通信が確立できない場合でも、高圧ガスタンク4の温度を所定の温度以下に維持することができる。また、本実施形態の高圧ガス充填装置3は、熱交換器を必要しないため、車両1の重量の増加およびコストの増加を抑制することができる。
【0034】
また、車両1と高圧ガス充填ステーションとの通信が確立できた場合には、第1充填経路311のみを用いて高圧ガスタンク4に高圧ガスを充填することで、充填速度を低下させず、高圧ガスタンク4に対する高圧ガスの十分な充填量を確保することができる。なお、第1充填経路311を構成する配管としては、たとえば、70MPa用の配管を使用することができ、第2充填経路312を構成する配管としては、70MPa用の配管よりも内径が小さい35MPa用の配管を使用することができる。
【0035】
図3は、高圧ガス充填時の高圧ガスタンク4の温度と第2充填経路312の内径との関係の一例を示すグラフである。たとえば、図3に示すように、第2充填経路312の内径を1mm以下にすることで、高圧ガス充填時の高圧ガスタンク4の温度を85℃以下に抑制することができる。
【0036】
以上、図面を用いて本開示に係る高圧ガス充填装置の実施形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本開示に含まれるものである。
【符号の説明】
【0037】
1 車両
3 高圧ガス充填装置
4 高圧ガスタンク
31 高圧ガス充填系
311 第1充填経路
312 第2充填経路
313 電磁弁
図1
図2
図3