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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162003
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/00 20060101AFI20241114BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20241114BHJP
【FI】
B60W50/00
B60W60/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077120
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小栗 春紀
(72)【発明者】
【氏名】山田 健一
(72)【発明者】
【氏名】井出 裕人
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA00
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC11
3D241CC17
3D241CE05
3D241DA23Z
3D241DA52Z
3D241DB05Z
3D241DC31Z
(57)【要約】
【課題】自動運転が開始されるときに車両が不動車化することの回避。
【解決手段】車両制御装置は、自動運転システムと、自動運転システムからの指令に従って自動運転を行う車両プラットフォームとの間に接続される車両制御装置であって、プログラムが格納されたメモリと、プログラムを実行することによって自動運転システムと車両プラットフォームとの間のインターフェースを行うプロセッサとを備える。プロセッサは、不明ステートにおいて手動操作による起動指令を受けると、ピュアマニュアルステートに遷移し、不明ステートにおいて自動運転システムから起動指令を受けると、プレスタンバイステートに遷移し、プレスタンバイステートにおいてスタンバイモードへの移行条件が成立すると、スタンバイモードに遷移し、プレスタンバイステートにおいて運転者の運転意思が検知されると、ピュアマニュアルステートに遷移する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転システムと、前記自動運転システムからの指令に従って自動運転を行う車両プラットフォームとの間に接続される車両制御装置であって、
信号ごとに定義された所定のAPIを含むプログラムが格納されたメモリと、
前記プログラムを実行することによって前記自動運転システムと前記車両プラットフォームとの間のインターフェースを行うプロセッサとを備え、
前記車両制御装置は、車両モードとして、手動運転モードと、自動運転モードと、スタンバイモードとを有し、
前記手動運転モードは、アンノウンステートと、ピュアマニュアルステートと、プレスタンバイステートとを含み、
前記車両プラットフォームは、
前記手動運転モードにおいて手動による運転操作を受付可能であり、
前記スタンバイモードにおいて手動による運転操作のうちシフトレンジのパーキングレンジへの操作を受付可能であり、
前記自動運転モードにおいて前記自動運転システムからの運転指令を受付可能であり、
前記プロセッサは、
前記アンノウンステートにおいて手動操作による起動指令を受けたことを条件として、前記ピュアマニュアルステートに遷移し、
前記アンノウンステートにおいて前記自動運転システムから起動指令を受けたことを条件として、前記プレスタンバイステートに遷移し、
前記プレスタンバイステートにおいて前記スタンバイモードへの移行条件が成立したことを条件として、前記スタンバイモードに遷移し、
前記プレスタンバイステートにおいて運転者の運転意思が検知されたことを条件として、前記ピュアマニュアルステートに遷移する、車両制御装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記スタンバイモードにおいて前記自動運転システムから自動運転遷移指令を受け、かつ、前記シフトレンジが前記パーキングレンジであることを条件として、前記自動運転モードに遷移し、
前記スタンバイモードにおいて前記自動運転システムから前記自動運転遷移指令を受け、かつ、前記シフトレンジが前記パーキングレンジでないことを条件として、エラー状態に遷移する、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記ピュアマニュアルステートにおいて自動運転遷移指令を受けたことを条件として、前記自動運転モードに遷移する、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記スタンバイモードにおいて前記自動運転システムからスタンバイモード停止指令を受けたことを条件として、前記ピュアマニュアルステートに遷移する、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記自動運転モードにおいて前記自動運転システムから自動運転停止指令を受けたことを条件として、前記ピュアマニュアルステートに遷移する、請求項1から請求項4のいずれかに記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、車両制御装置に関し、特に、自動運転システムと、自動運転システムからの指令に従って自動運転を行う車両プラットフォームとの間に接続される車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の自動運転技術の開発が進められている。たとえば特開2019-177807号公報(特許文献1)に開示された車両制御システムでは、車両と情報処理装置とが協働して自動運転を実行する。情報処理装置は、自動運転制御ソフトウェアによって制御情報を自動的に生成し、車両へ送信する。車両は、受信した制御情報に基づき自動運転を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-177807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動運転システムを車両本体(後述する車両プラットフォーム)に外付けすることが考えられる。車両プラットフォームが自動運転システムからの指令に従って車両を制御することによって自動運転が実現される。車両プラットフォームは、車両モードとして、運転者の制御下にある手動運転モードと、自動運転システムの制御下にある自動運転モードと、基本的に運転者の制御が不能であり自動運転システムによる制御の開始を待つスタンバイモードとを有する。
【0005】
この車両を乗客を乗せて運搬するサービスに用いる場合、通常は、自動運転によって運用することが考えられる。自動運転システムによる車両プラットフォームの起動後、手動運転モードから何らかの原因でスタンバイモードに中々、遷移しない場合に、車両のオペレータが、自動運転が開始されないので、手動運転モードであると思い込み、手動運転を開始してしまうことが考えられる。手動運転の開始後に、スタンバイモードへの遷移条件が成立して、スタンバイモードに遷移したときに、シフトレンジがパーキングレンジでないと、自動運転システムから自動運転モードへ遷移する指令が送信されてきたとしても、自動運転モードに遷移しない。この状況において、シフトレンジがパーキングレンジに切替えられると、スタンバイモードであるため、オペレータによる他のシフトレンジへの切替え操作が受付けられず、また、自動運転モードに遷移していないため、自動運転システムからの指示も受付けられないため、車両が不動車になってしまう可能性がある。
【0006】
この開示は、上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、自動運転が開始されるときに車両が不動車となってしまうことを回避することが可能な車両制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この開示に係る車両制御装置は、自動運転システムと、自動運転システムからの指令に従って自動運転を行う車両プラットフォームとの間に接続される車両制御装置であって、信号ごとに定義された所定のAPIを含むプログラムが格納されたメモリと、プログラムを実行することによって自動運転システムと車両プラットフォームとの間のインターフェースを行うプロセッサとを備える。車両制御装置は、車両モードとして、手動運転モードと、自動運転モードと、スタンバイモードとを有する。手動運転モードは、アンノウンステートと、ピュアマニュアルステートと、プレスタンバイステートとを含む。車両プラットフォームは、手動運転モードにおいて手動による運転操作を受付可能であり、スタンバイモードにおいて手動による運転操作のうちシフトレンジのパーキングレンジへの操作を受付可能であり、自動運転モードにおいて自動運転システムからの運転指令を受付可能である。プロセッサは、アンノウンステートにおいて手動操作による起動指令を受けたことを条件として、ピュアマニュアルステートに遷移し、アンノウンステートにおいて自動運転システムから起動指令を受けたことを条件として、プレスタンバイステートに遷移し、プレスタンバイステートにおいてスタンバイモードへの移行条件が成立したことを条件として、スタンバイモードに遷移し、プレスタンバイステートにおいて運転者の運転意思が検知されたことを条件として、ピュアマニュアルステートに遷移する。
【0008】
このような構成によれば、アンノウンステートにおいて自動運転システムからの起動指令を受けたことを条件として、プレスタンバイステートに遷移され、プレスタンバイステートにおいて運転者の運転意思が検知されたことを条件として、ピュアマニュアルステートに遷移される。このため、スタンバイモードに遷移される前に運転意思が検知された場合は、スタンバイモードに遷移させられない。その結果、自動運転が開始されるときに車両が不動車となってしまうことを回避することが可能な車両制御装置を提供することができる。
【0009】
プロセッサは、スタンバイモードにおいて自動運転システムから自動運転遷移指令を受け、かつ、シフトレンジがパーキングレンジであることを条件として、自動運転モードに遷移し、スタンバイモードにおいて自動運転システムから自動運転遷移指令を受け、かつ、シフトレンジがパーキングレンジでないことを条件として、エラー状態に遷移するようにしてもよい。
【0010】
このような構成によれば、スタンバイモードにおいてシフトレンジがパーキングレンジでないまま、自動運転が開始されるという望ましくない状況を回避することができる。
【0011】
プロセッサは、ピュアマニュアルステートにおいて自動運転遷移指令を受けたことを条件として、自動運転モードに遷移するようにしてもよい。
【0012】
このような構成によれば、手動運転が可能な状態から自動運転が可能な状態に移行させることができる。
【0013】
プロセッサは、スタンバイモードにおいて自動運転システムからスタンバイモード停止指令を受けたことを条件として、ピュアマニュアルステートに遷移するようにしてもよい。
【0014】
このような構成によれば、スタンバイモードに遷移した場合であっても、自動運転システムから停止指令があれば、手動運転が可能な状態とすることができる。
【0015】
プロセッサは、自動運転モードにおいて自動運転システムから自動運転停止指令を受けたことを条件として、ピュアマニュアルステートに遷移するようにしてもよい。
【0016】
このような構成によれば、自動運転モードに遷移した場合であっても、自動運転システムから停止指令があれば、手動運転が可能な状態とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】この開示の実施の形態に係る車両の概要を示す図である。
図2】ADK、VCIBおよびVPの構成をより詳細に示す図である。
図3】この実施の形態における車両モードを説明するための状態遷移図である。
図4】手動運転モードの不明ステートからプレスタンバイステートへの遷移を説明するためのタイムチャートである。
図5】手動運転モードのプレスタンバイステートからスタンバイモードへの遷移を説明するためのタイムチャートである。
図6】手動モードの不明ステートからプレスタンバイステートへ遷移した後のピュアマニュアルステートへの遷移を説明するためのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、この開示の実施の形態に係る車両の概要を示す図である。車両1は、運転主体がシステムである高度な自動運転(たとえば、いわゆる自動運転レベル4または5に分類される自動運転)が可能に構成されている。この例では、車両1が乗客を運搬するサービスなどの自動運転関連のモビリティサービスに利用される状況を想定する。
【0019】
車両1は、自動運転キット(ADK:Autonomous Driving Kit)10と、車両制御インターフェース(VCIB:Vehicle Control Interface Box)20と、車両プラットフォーム(VP:Vehicle Platform)30とを備える。ADK10は、VP30(VP30のルーフトップなど)に取り付けたり、VP30から取り外したりすることができる。ADK10とVP30とは、CAN(Controller Area Network)などの通信規格に従って、VCIB20を介して相互に通信可能に接続されている。
【0020】
ADK10は、車両1の自動運転を行うための自動運転システム(ADS:Autonomous Driving System)11を含む。ADK10(ADS11)は、車両1の走行計画を作成する。ADK10は、走行計画に従って車両1を走行させるための各種指令(制御要求)を、制御要求毎に定義されたAPI(Application Program Interface)に従ってVP30に出力する。また、ADK10は、車両状態(VP30の状態)を示す各種信号を、信号ごとに定義されたAPIに従ってVP30から受ける。そして、ADK10は、車両状態を走行計画に反映する。
【0021】
VCIB20は、信号ごとに定義された所定のAPIを実行することにより、ADK10から各種制御要求を受信したり、車両状態をADK10に出力したりする。VCIB20は、ADK10から制御要求を受信すると、その制御要求に対応する制御指令を統合制御マネージャ41を介して、その制御指令に対応するシステムに出力する。また、VCIB20は、VP30の各種情報を各種システムから統合制御マネージャ41を介して取得し、VP30の各種情報を車両状態としてADK10に出力する。
【0022】
VP30は、ADK10が取り付けられている場合、ADK10からの制御要求に従って、自動運転モードによる自動運転制御を実行ができる。なお、ADK10が取り外されている場合には、VP30は、手動運転モードによる走行制御を実行する。
【0023】
VP30はベース車両40を含む。ベース車両40は、ADK10からの制御要求に従って各種車両制御を実行する。ベース車両40は、たとえば、統合制御マネージャ41と、ブレーキシステム42と、ステアリングシステム43と、パワートレーンシステム44と、アクティブセーフティシステム45と、その他システム46(図2参照)と、車輪速センサ51,52と、ピニオン角センサ53と、カメラ54と、レーダセンサ55,56と、パワースイッチ60とを含む。
【0024】
統合制御マネージャ41は、プロセッサおよびメモリを含み、車両1の動作に関わる上記の各システムを統合して制御する。
【0025】
ブレーキシステム42は、ベース車両40の各車輪に設けられた制動装置を制御する。ブレーキシステム42には車輪速センサ51,52が接続されている。車輪速センサ51,52は、それぞれ、ベース車両40の前輪,後輪の回転速度を検出し、ブレーキシステム42に出力する。ブレーキシステム42は、各車輪の回転速度を車両状態に含まれる情報の一つとしてVCIB20に出力する。統合制御マネージャ41は、各車輪の回転速度に基づいて車両1の速度(車速)を算出する。また、ブレーキシステム42は、ADK10からVCIB20および統合制御マネージャ41を介して出力される所定の制御要求に従って、制動装置に対する制動指令を生成する。ブレーキシステム42は、生成された制動指令を用いて制動装置を制御する。
【0026】
ステアリングシステム43は、車両1の操舵輪の操舵角を操舵装置を用いて制御する。ステアリングシステム43にはピニオン角センサ53が接続されている。ピニオン角センサ53は、アクチュエータの回転軸に連結されたピニオンギヤの回転角(ピニオン角)を検出し、ステアリングシステム43に出力する。ステアリングシステム43は、ピニオン角を車両状態に含まれる情報の一つとしてVCIB20に出力する。また、ステアリングシステム43は、ADK10からVCIB20および統合制御マネージャ41を介して出力される所定の制御要求に従って、操舵装置に対する操舵指令を生成する。ステアリングシステム43は、生成された操舵指令を用いて操舵装置を制御する。
【0027】
パワートレーンシステム44は、複数の車輪のうちの少なくとも1つに設けられた電動パーキングブレーキ(EPB:Electric Parking Brake)システム441と、車両1のトラッスミッションに設けられたパーキングロック(P-Lock)システム442と、シフト位置を選択可能に構成されたシフト装置を含む推進システム443とを制御する。
【0028】
アクティブセーフティシステム45は、カメラ54/レーダセンサ55,56を用いて前方または後方の障害物(歩行者、自転車、駐車車両、電柱など)を検出する。アクティブセーフティシステム45は、車両1と障害物との間の距離、および、車両1の移動方向に基づいて、車両1が障害物と衝突する可能性があるかどうかを判定する。アクティブセーフティシステム45は、衝突の可能性があると判定した場合、制動力が増加するように、統合制御マネージャ41を介してブレーキシステム42に制動指令を出力する。
【0029】
パワースイッチ60は、車両1の電源ポジションを選択するユーザの操作を受け付ける。電源ポジションは、イグニッションオフ(IG-OFF)ポジションと、アクセサリ(ACC)ポジションと、イグニッションオン(IG-ON)ポジションと、起動ポジションと、ReadyONポジションとを含む。
【0030】
IG-OFFポジションは、車両1の電源オフ状態に相当する。IG-OFFポジションでは、車両1に搭載された各機器への電源供給が遮断される。ACCポジションでは、空調装置、オーディオ類などのアクセサリ機器に対して給電される。IG-ONポジションでは、アクセサリ機器に加えて車両1の走行に必要なシステムに対しても給電される。起動ポジションが選択されると、車両1を走行可能な状態とするようにVP30が起動される。VP30の起動後には、VP30に対する初期診断(イニシャルチェック)が実施される。初期診断とは、VP30内の各システムが正常であることを確認するための診断である。初期診断の結果、VP30が正常であることが確認されると、起動ポジションからReadyONポジションへ遷移する。
【0031】
図2は、ADK10、VCIB20およびVP30の構成をより詳細に示す図である。図2に示すように、ADK10(ADS11)は、コンピュータ111と、HMI(Human Machine Interface)112と、認識用センサ113と、姿勢用センサ114と、センサクリーナ115とを含む。
【0032】
コンピュータ111は、車両1の自動運転時に各種センサを用いて車両1の環境、ならびに、車両1の姿勢、挙動および位置を取得し、VP30からVCIB20を経由して車両状態を取得して車両1の次の動作(加速、減速、曲がる等)を設定する。そして、コンピュータ111は、次の動作を実現するための各種指令をVCIB20に出力する。コンピュータ111は、通信モジュール111A,111Bを含む。
【0033】
HMI112は、自動運転時、ユーザ操作を要する運転時、自動運転と手動運転との間の移行時などに、ユーザに情報を提示したりユーザ操作を受付けたりする。
【0034】
認識用センサ113は、車両1の環境を認識するためのセンサである。認識用センサ113は、たとえばLIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)と、ミリ波レーダと、カメラとのうちの少なくとも1つを含む。
【0035】
姿勢用センサ114は、車両1の姿勢、挙動、位置を検出するためのセンサである。姿勢用センサ114は、たとえば、IMU(Inertial Measurement Unit)と、GPS(Global Positioning System)とを含む。センサクリーナ115は、洗浄液、ワイパー等を用いて、車両1の走行中に上記の各種センサ(カメラのレンズ、レーザ光の照射部など)に付着する汚れを除去するように構成される。
【0036】
VCIB20は、メインのVCIB21と、サブのVCIB22とを含む。VCIB21は、プロセッサ211と、メモリ212とを含む。VCIB22は、プロセッサ221と、メモリ222とを含む。メモリ212,222の各々は、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などを含み、信号ごとに定義された所定のAPIを含むプログラムを記憶する。プロセッサ221,221の各々は、CPU(Central Processing Unit)などを含み、上記のプログラムを実行することによってADK10とVP30との間のインターフェースを行う。
【0037】
VCIB21と通信モジュール111Aとは相互に通信可能に接続されている。VCIB22と通信モジュール111Bとは相互に通信可能に接続されている。さらに、VCIB21とVCIB22とは相互に通信可能に接続されている。VCIB21,22の各々は、ADK10とVP30との間で制御要求および車両情報を中継する。具体的には、VCIB21は、APIを用いて、ADK10からの制御要求から制御指令を生成する。そして、VCIB21は、生成された制御指令を、VP30に含まれる複数のシステムのうちの対応するシステムに出力する。また、VCIB21は、APIを用いて、VP30の各システムからの車両情報から車両状態を示す情報を生成する。VCIB21は、生成された車両状態を示す情報をADK10に出力する。VCIB22についても同様である。
【0038】
EPBシステム441は、ADK10からVCIB21を介して出力される制御要求に従ってEPBを制御する。EPBは、制動装置(ディスクブレーキシステムなど)とは別に設けられ、アクチュエータの動作によって車輪を固定する。P-Lockシステム442は、ADK10からVCIB21を介して出力される制御要求に従ってP-Lock装置を制御する。P-Lockシステム442は、制御要求がシフト位置をパーキング位置(Pレンジ)にする制御要求を含む場合にP-Lock装置を作動させ、制御要求がシフト位置をパーキング位置以外にする制御要求を含む場合にP-Lock装置の作動を解除する。P-Lock装置は、トランスミッションの出力軸の回転を固定し、車輪を固定する。
【0039】
推進システム443は、ADK10からVCIB21を介して出力される制御要求に従って、シフト装置(図示せず)のシフト位置を切り替えたり、駆動源(モータジェネレータ、エンジンなど)からの駆動力を制御したりする。シフト位置は、パーキング位置に加えて、たとえば、ニュートラル位置(Nレンジ)と、前進走行位置(Dレンジ)と、後進走行位置(Rレンジ)と、ブレーキ位置(Bレンジ)とを含む。
【0040】
アクティブセーフティシステム45は、ブレーキシステム421と通信可能に接続されている。アクティブセーフティシステム45は、前述のとおり、カメラ54および/またはレーダセンサ55を用いて前方の障害物を検出し、衝突の可能性があると判定した場合に制動力が増加するようにブレーキシステム421に制動指令を出力する。その他システム46は、ボディシステム、空調装置、オーディオ類などを含む。ボディシステムは、ADK10からの制御要求に従って、方向指令器、ホーン、ワイパー等の部品を制御する。
【0041】
車両1においては、たとえばユーザのHMI112に対する操作によって自動運転モードが選択された場合に自動運転が実行される。前述したように、ADK10は、自動運転中には、まず走行計画を作成する。走行計画の例としては、たとえば、直進を継続する計画、予め定められた走行経路の途中の所定の交差点で左折/右折する計画、走行車線を変更する計画などが挙げられる。ADK10は、作成された走行計画に従って、車両1が動作するために必要な制御的な物理量(加速度、減速度、タイヤ切れ角など)を算出する。ADK10は、APIの実行周期毎の物理量を分割する。ADK10は、APIを用いて、分割された物理量を表す制御要求をVCIB20に出力する。さらに、ADK10は、VP30から車両状態(車両1の実際の移動方向、車両の固定化の状態など)を取得し、取得された車両状態を反映した走行計画を再作成する。このようにして、ADK10は、車両1の自動運転を可能とする。
【0042】
図3は、この実施の形態における車両モードを説明するための状態遷移図である。VCIB20は、手動運転モードおよび自動運転モードに加えて、スタンバイモードを有する。また、手動運転モードは、不明(Unknown)ステートと、ピュアマニュアル(Pure Manual)ステートと、プレスタンバイ(Pre Standby)ステートとを含む。
【0043】
不明ステートにおいてユーザの手動操作によるReadyON指令を受けたことを条件に、VCIB20は、ピュアマニュアルステートへと遷移する(E1参照)。ピュアマニュアルステートにおいては、統合制御マネージャ41(または他のECU)が初期診断を実施する。
【0044】
初期診断の実施後にピュアマニュアルステートにおいてADK10から自動運転遷移指令を受けたことを条件に、VCIB20は、自動運転モード(自律ステート)へと遷移する(E3参照)。自動運転モードでは、統合制御マネージャ41がADK10からの要求に従ってVP30を制御することによって自動運転が実現される。
【0045】
自動運転モードにおいて、ADK10からの自動運転停止指令を受けたことを条件に、VCIB20は、ピュアマニュアルステートへと遷移する(E6参照)。
【0046】
一方、不明ステートにおいてADK10からReadyON指令を受けたことを条件に、VCIB20は、プレスタンバイステートへと遷移する(E2参照)。プレスタンバイステートにおいても、統合制御マネージャ41(または他のECU)が初期診断を実施する。スタンバイモードへの移行条件(たとえば、初期診断の実施済み/実施中との条件を含む)が成立したことを条件に、VCIB20は、手動運転モード(プレスタンバイステート)からスタンバイモード(スタンバイステート)へとさらに遷移する(E4参照)。プレスタンバイステートにおいて、シフト位置をPレンジに変更する手動操作以外の手動操作(たとえば、車両1を動かすための所定操作、具体的には、D,R,Bレンジに変更する操作)を受けたことを条件に、VCIB20は、ピュアマニュアルステートへと遷移する(E10参照)。
【0047】
なお、この実施の形態では、運転者の運転意思が、シフト位置をPレンジに変更する手動操作以外の手動操作が受付けられることで検知されるようにした。しかし、これに限定されず、運転者の運転意思は、手動運転のための操作部(たとえば、アクセルペダル,ブレーキペダル,ステアリングホイール,パーキングブレーキ)の操作が受付けられることで検知されるようにしてもよいし、車速が0以外となったことが検知されることで検知されるようにしてもよい。
【0048】
また、この実施の形態では、運転意思が検出されたことを条件に、ピュアマニュアルステートへと遷移するようにした。しかし、ピュアマニュアルステートに遷移する条件は、たとえば、プレスタンバイステートに移行してから所定期間(たとえば、8秒)が経過してもスタンバイモードに遷移していないとの条件であってもよいし、この条件と運転意思が検出されたとの条件とのアンド条件であってもよい。
【0049】
スタンバイモードにおいては、VP30が受け付ける手動操作が抑制されている。より具体的には、統合制御マネージャ41(推進システム443内のECUであってもよい)は、推進システム443のシフト装置に対するシフト操作(Pレンジ以外のシフト位置への切替操作)を受け付けない。また、統合制御マネージャ41は、アクセル操作(アクセルペダルの踏み込み操作)を受け付けない。さらに、統合制御マネージャ41(EPBシステム441内のECUであってもよい)は、EPBシステム441のEPB解除操作を受け付けない。
【0050】
スタンバイモードにおいて、ADK10から自動運転遷移指令を受け、かつ、シフトレンジがPレンジであることを条件に、VCIB20は、自動運転モード(自律ステート)へと遷移する(E5参照)。スタンバイモードにおいて、ADK10から自動運転遷移指令を受け、かつ、シフトレンジがPレンジでないことを条件に、VCIB20は、エラー状態に遷移する。
【0051】
自動運転モードにおいてADK10からスタンバイモード停止指令を受けたことを条件に、VCIB20は、手動運転モード(ピュアマニュアル・ステート)へと遷移する(E8参照)。
【0052】
ピュアマニュアルステートにおいて、IG-OFF操作(典型的にはパワースイッチ60のオフ操作)が行われたことを条件に、VCIB20は、不明ステートに遷移する(E7参照)。
【0053】
図4は、手動運転モードの不明ステートからプレスタンバイステートへの遷移(E2参照)を説明するためのタイムチャートである。図4には上から順に、VP30の電源ポジション、VCIB20の電力モード、内部ステート、ADK10からの電源ON要求、ADK10からの電力モード指令、VCIB20における車両電源処理、VP30(車両1)におけるReadyON処理、車両モードが示されている。電力モードは、ウェークモードとドライビングモードとを含む。ウェークモードとは、VP30の補機バッテリからの給電によりVCIB20が起動している状態のモードである。ドライビングモードとは、ReadyON状態に相当するモードであり、VCIB20およびすべてのECUが起動しており、高圧バッテリから各システムへの給電が行われる。
【0054】
不明ステートにおいて、ADK10から、電力モードのドライビングモードへの遷移指令が出力される。そうすると、VCIB20において、ADK10からの電源ON要求がON状態とされ、車両電源処理が実行され、VP30においてReadyON処理が実行される。その結果、VP30の電源ポジションがReadyONポジションに遷移する。さらに、VCIB20の電力モードがウェークモードからドライビングモードへと遷移し、内部ステートが不明ステートからプレスタンバイステートへと遷移し、ADK10からの電源ON要求がOFF状態とされる。
【0055】
図5は、手動運転モードのプレスタンバイステートからスタンバイモードへの遷移(E4参照)を説明するためのタイムチャートである。図5には、図4にて説明した項目に加えて、ADK10からの車両モード指令、スタンバイモード準備、自動運転モード準備、車速、シフト位置が示されている。
【0056】
手動運転モードのプレスタンバイステートにおいて、初期診断が終了すると、スタンバイモード準備が完了している(たとえば、車速=0)ことを条件に、内部ステートがプレスタンバイステートからスタンバイステートへと遷移する。これに伴い、車両モードも手動運転モードからスタンバイモードへと遷移する。
【0057】
図6は、手動モードの不明ステートからプレスタンバイステートへ遷移した後のピュアマニュアルステートへの遷移(E10参照)を説明するためのタイムチャートである。図4で説明したプレスタンバイステートへの遷移の後、スタンバイモードへ遷移する前に、シフト位置がPレンジ以外、たとえば、R,D,Bレンジに切替えられると、内部ステートがプレスタンバイステートからピュアマニュアルステートへと遷移する。
【0058】
なお、上述したモードおよびステートの遷移の条件は、上述した条件以外の他の条件を含むようにしてもよい。今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。この開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0059】
1 車両、10 ADK、11 ADS、111 コンピュータ、111A,111B 通信モジュール、113 認識用センサ、114 姿勢用センサ、115 センサクリーナ、20~22 VCIB、211,221 プロセッサ、212,222 メモリ、30 VP、40 ベース車両、41 統合制御マネージャ、42,421,422 ブレーキシステム、43,431,432 ステアリングシステム、44 パワートレーンシステム、441 EPBシステム、442 P-Lockシステム、443 推進システム、45 アクティブセーフティシステム、46 ボディシステム、51,52 車輪速センサ、53 ピニオン角センサ、54 カメラ、55,56 レーダセンサ、60 パワースイッチ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6