(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024162004
(43)【公開日】2024-11-21
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/01 20060101AFI20241114BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20241114BHJP
【FI】
G08G1/01 E
G08G1/09 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077121
(22)【出願日】2023-05-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森本 清誠
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB05
5H181CC12
5H181DD02
5H181DD03
5H181DD04
5H181FF04
5H181FF05
5H181MC14
5H181MC27
(57)【要約】
【課題】右折又は左折の専用車線から車両がはみ出ることにより渋滞が発生したことをより正確に検出する。
【解決手段】渋滞が発生していることに応答して、右折又は左折の専用車線の範囲の上流端を取得することと、専用車線の範囲の上流端よりも上流側において、所定の第一割合以上の車両が専用車線から離れる方向に進路を変更したことに応答して、専用車線からはみ出した車両に起因する渋滞が発生していることに関する情報を出力することと、を実行するように構成された制御部を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
渋滞が発生していることに応答して、右折又は左折の専用車線の範囲の上流端を取得することと、
前記専用車線の範囲の上流端よりも上流側において、所定の第一割合以上の車両が前記専用車線から離れる方向に進路を変更したことに応答して、前記専用車線からはみ出した車両に起因する渋滞が発生していることに関する情報を出力することと、
を実行するように構成された制御部を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、
所定の第二割合以上の前記車両が前記専用車線に近付く方向へ進路を変更した第一区間を、前記専用車線の範囲の上流端とする、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記専用車線の範囲の上流端よりも上流側において、前記所定の第一割合以上の車両が前記専用車線から離れる方向に進路を変更した第二区間を取得することと、
前記第二区間を、前記専用車線からはみ出した車両に起因する渋滞の末尾として出力することと、
をさらに実行するように構成される、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記専用車線の範囲の上流端よりも上流側において、前記所定の第一割合以上の車両が、所定の速度以下で前記専用車線から離れる方向に進路を変更したことに応答して、前記専用車線からはみ出した車両に起因する渋滞が発生していることに関する情報を出力する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、
さらに、前記専用車線の範囲の上流端よりも上流側において、所定の速度以下の状態が所定の時間以上継続した車両が存在する場合に、前記専用車線からはみ出した車両に起因する渋滞が発生していることに関する情報を出力する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、右折専用路を占める車両の割合が第1の所定の割合以上であり、右折専用路以外の走行路を占める車両の割合が第2の所定の割合以下である場合に、右折を原因とする渋滞が発生していると判断することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、右折又は左折の専用車線から車両がはみ出ることにより渋滞が発生したことをより正確に検出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様の一つは、渋滞が発生していることに応答して、右折又は左折の専用車線の範囲の上流端を取得することと、前記専用車線の範囲の上流端よりも上流側において、所定の第一割合以上の車両が前記専用車線から離れる方向に進路を変更したことに応答して、前記専用車線からはみ出した車両に起因する渋滞が発生していることに関する情報を出力することと、を実行するように構成された制御部を備える情報処理装置である。
【0006】
また、本発明の他の態様は、上記の情報処理をコンピュータに実行させる情報処理方法、この情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム、及びこのプログラムを非一時的に記憶したコンピュータ可読記憶媒体である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、右折又は左折の専用車線から車両がはみ出ることにより渋滞が発生したことをより正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係るシステムの概略構成を示す図である。
【
図2】実施形態に係るシステムを構成する車両及びサーバのそれぞれの構成の一例を概略的に示すブロック図である。
【
図3】走行情報DBのテーブル構成を例示した図である。
【
図4】第1実施形態におけるサーバにおいて右折渋滞が発生しているか否か判定する処理を示したフローチャートである。
【
図5】第2実施形態におけるサーバにおいて右折渋滞が発生しているか否か判定する処理を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
複数の車線を有する道路において一部の車線が渋滞する場合がある。例えば、右折するための専用車線である右折専用車線または左折するための専用車線である左折専用車線で渋滞が発生していても、直進車線では渋滞が発生していない場合がある。そして、どの車線でどのような原因で渋滞が発生しているかによって対策方法が異なるため、どの車線で
どのような原因で渋滞が発生しているのかを把握することが求められる。例えば、右折専用車線に車両が集中すると、右折専用車線に車両が入り切らなくなり、直進車線に車両がはみ出ることがある。そうすると、複数の直進車線がある場合、右側の直進車線だけに渋滞が発生し得る。
【0010】
ここで、例えば車両に搭載されるGPS装置を利用して車両の位置を特定することにより、渋滞が発生している車線を特定することも考えられる。しかし、車両に搭載されているGPS装置では位置を検出する精度が低いために、車両が走行している車線を特定することは困難な場合がある。また、車両から画像データを取得して渋滞している車線を特定することも考えられる。しかし、車両で撮像される画像データを常時取得しようとすると、通信量が膨大になるため現実的ではない。
【0011】
かかる問題を解決するために、本開示の態様の一つである情報処理装置は、渋滞が発生していることに応答して、右折又は左折の専用車線の範囲の上流端を取得することと、専用車線の範囲の上流端よりも上流側において、所定の第一割合以上の車両が専用車線から離れる方向に進路を変更したことに応答して、専用車線からはみ出した車両に起因する渋滞が発生していることに関する情報を出力することと、を実行するように構成された制御部を備える。
【0012】
例えば、各車両の位置情報及び速度情報に基づいて渋滞が発生している区間を特定することができる。例えば対象区間を走行する車両の速度の平均値が、渋滞に対応する速度の場合に、渋滞が発生していると判定することができる。しかし、渋滞が発生していることは特定できても、渋滞が発生している車線までは特定できない。そこで、制御部は、右折又は左折の専用車線の範囲の上流端を取得する。専用車線は、右折又は左折をするための車両が走行するための車線である。専用車線の範囲は、専用車線の長さとしてもよい。専用車線の範囲の上流端は、専用車線が始まる箇所である。専用車線の範囲の上流端は、例えば、車両の挙動に基づいて特定することもできるし、地図情報に基づいて特定することもできる。例えば、右折専用車線に車両が入るときには、運転者はステアリングを右に切る。そして、車両が右折専用車線に入るときの操舵角は特定の範囲内になる。したがって、操舵角に基づいて右折専用車線の上流端を特定することができる。上流端はある程度の幅を持った区間として特定してもよい。
【0013】
ここで、専用車線に車両が入り切らなくなって専用車線から直進車線に車両がはみ出すと、直進車線を走行している車両は、専用車線からはみ出した車両を避けるように進行方向を変える場合がある。すなわち、自車が渋滞に巻き込まれることを回避しようとして、避走を行うことがある。このときには、車両が専用車線から離れる方向に進路変更される。そして、専用車線から車両がはみ出している場合には、専用車線の範囲の上流端よりも上流側において、避走が行われる。したがって、専用車線の範囲の上流端よりも上流側において、所定の第一割合以上の車両が専用車線から離れる方向に進路を変更した場合に、専用車線からはみ出した車両に起因する渋滞が発生していると判断できる。所定の第一割合は、専用車線から車両がはみ出していることに起因した渋滞が発生している場合に、避走を行う車両の割合の下限値である。この場合、制御部は、専用車線からはみ出した車両に起因する渋滞が発生していることに関する情報を出力する。これにより、右折又は左折待ちの車両に起因する渋滞が発生していることを把握できる。したがって、わざわざ現地に行かなくても、渋滞の原因を把握することができる。
【0014】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本発明は実施形態の構成に限定されない。また、以下の実施形態は可能な限り組み合わせることができる。
【0015】
<第1実施形態>
図1は、実施形態に係るシステム1の概略を示す図である。
図1の例では、システム1は、複数の車両10及びサーバ30を含む。車両10及びサーバ30は、ネットワークN1によって相互に接続されている。なお、ネットワークN1は、例えば、インターネット等の世界規模の公衆通信網でありWAN(Wide Area Network)やその他の通信網が採用されてもよい。また、ネットワークN1は、携帯電話等の電話通信網、Wi-Fi(登録商標)等の無線通信網を含んでもよい。
【0016】
図1に示した例は、第一直進車線51、第二直進車線52、及び右折専用車線53を有する道路において、右折専用車線53に複数の車両10が並んでしまい、第二直進車線52にはみ出して渋滞を引き起こしている状態を示している。なお、渋滞の先頭の車両10を第一車両10Aとし、第二直進車線52から右折専用車線53への進路変更を開始した車両10を第二車両10Bとし、渋滞の最後尾の車両10を第三車両10Cとし、第三車両10Cに後方(すなわち上流側)から接近する車両10であって第二直進車線52を走行している車両10を第四車両10Dとする。なお、車両を特定しない場合には、単に車両10という。
【0017】
各車両10は、所定の時間毎にサーバ30へ、速度に関する情報(以下、速度情報ともいう。)、位置に関する情報(以下、位置情報ともいう。)、及び舵角に関する情報(以下、舵角情報ともいう。)を、車両ID及び時刻情報と共に送信する。車両IDは、車両10に固有な識別子である。なお、車両10からサーバ30へ送信される、速度情報、位置情報、舵角情報、時刻情報、及び車両IDをまとめて走行情報という。サーバ30では、走行情報に基づいて、右折専用車線53から第二直進車線52に車両10がはみ出したことに起因する渋滞(以下、右折渋滞という。)が発生しているか否か判定する。
【0018】
次に、
図2に基づいて、車両10及びサーバ30のハードウェア及びソフトウェアの構成について説明する。
図2は、本実施形態に係るシステム1を構成する車両10及びサーバ30のそれぞれの構成の一例を概略的に示すブロック図である。サーバ30は、制御部31、記憶部32、通信モジュール33、及び入出力装置34を有する。
【0019】
サーバ30は、プロセッサ(CPU、GPU等)、主記憶装置(RAM、ROM等)、補助記憶装置(EPROM、ハードディスクドライブ、リムーバブルメディア等)を有するコンピュータとして構成することができる。補助記憶装置には、オペレーティングシステム(OS)、各種プログラム、各種テーブル等が格納され、そこに格納されたプログラムを実行することによって、後述するような、所定の目的に合致した各機能(ソフトウェアモジュール)を実現することができる。ただし、一部または全部のモジュールは、例えば、ASIC、FPGA等のハードウェア回路によってハードウェアモジュールとして実現されてもよい。
【0020】
制御部31は、所定のプログラムを実行することで、サーバ30の各種機能を実現する演算ユニットである。制御部31は、例えば、CPU等のハードウェアプロセッサによって実現することができる。また、制御部31は、RAM、ROM(Read Only Memory)、キャッシュメモリ等を含んで構成されてもよい。制御部31の詳細については後述する。
【0021】
記憶部32は、情報を記憶する手段であり、RAM、磁気ディスクやフラッシュメモリなどの記憶媒体により構成される。記憶部32には、制御部31にて実行されるプログラム、当該プログラムが利用するデータ等が記憶される。また、記憶部32には、データベース(走行情報DB321及び地図情報DB322)が構築されており、当該データベースに、各車両10から収集した走行情報及び地図情報が記憶される。
【0022】
図3は、走行情報DB321のテーブル構成を例示した図である。走行情報テーブルは、車両ID、車速、位置、操舵角、及び時刻の各フィールドを有する。車両IDフィールドには、車両10を特定するための識別情報が入力される。車速フィールドには、車両10の速度に関する情報が入力される。車両10の速度に関する情報には、車速センサ16の検出値に関する情報が含まれる。位置フィールドには、車両10の位置に関する情報が入力される。車両10の位置に関する情報には、位置情報センサ15の検出値に関する情報が含まれる。操舵角フィールドには、車両10の操舵角に関する情報が入力される。車両10の操舵角に関する情報には、操舵角センサ14の検出値に関する情報が含まれる。時刻フィールドには、車両10において車速、位置、及び操舵角が取得された時刻に関する情報が入力される。なお、別法として、時刻フィールドには、車両10から走行情報を受信した時刻が入力されてもよい。
【0023】
また、地図情報DB322には、地図情報として、例えば、道路(リンク)に関するリンクデータ、ノード点に関するノードデータ、各交差点に関する交差点データ、経路を探索するための探索データ、区間に関する区間データ、及び、車線数に関する車線データ等が格納されている。また、他の一例として、地図情報DB322には、右折専用車線の範囲に関する情報、右折専用車線の範囲の上流端に関する情報が格納されていてもよい。
【0024】
通信モジュール33は、サーバ30をネットワークN1に接続するための通信インタフェースである。通信モジュール33は、例えば、ネットワークインタフェースボード、無線通信のための無線通信インタフェース等を含むように構成されてよい。サーバ30は、通信モジュール33を介して、各車両10との間でデータ通信を行うことができる。
【0025】
入出力装置34は、オペレータが行った入力操作を受け付け、オペレータに対して情報を提示する手段である。具体的には、入出力装置34は、マウス、キーボード等の入力を行うための装置、及びディスプレイ、スピーカ等の出力を行うための装置を含む。入出力装置34は、例えば、タッチパネルディスプレイ等により一体的に構成されてもよい。
【0026】
なお、サーバ30の具体的なハードウェア構成は、実施形態に応じて、適宜、構成要素の省略、置換及び追加が可能である。
【0027】
次に、車両10について説明する。車両10は、制御部11、記憶部12、通信モジュール13、操舵角センサ14、位置情報センサ15、及び車速センサ16を含んで構成される。制御部11は、所定のプログラムを実行することで、車両10の各種機能を実現する演算ユニットである。制御部11は、例えば、CPU等のハードウェアプロセッサによって実現することができる。また、制御部11は、RAM、ROM(Read Only Memory)、キャッシュメモリ等を含んで構成されてもよい。
【0028】
記憶部12は、情報を記憶する手段であり、RAM、磁気ディスクやフラッシュメモリなどの記憶媒体により構成される。記憶部12には、制御部11にて実行されるプログラム、当該プログラムが利用するデータ等が記憶される。記憶部12には、各種センサの検出値が記憶されている。
【0029】
通信モジュール13は、車両10をネットワークN1に接続するための通信手段である。本実施形態では、車両10は、3G、LTE、5G、6G等の移動体通信サービスを利用して、ネットワークN1経由で他の装置(例えば、サーバ30)と通信を行うことができる。
【0030】
操舵角センサ14、は、ステアリング操作によって得られた舵角を検出するセンサである。操舵角センサ14は、例えば、ステアリングホイールの角度を検出する。なお、本実
施形態は、操舵角として、ステアリングホイールの角度を検出しているが、タイヤの切れ角を直接的に又は間接的に表す値を用いてもよい。
【0031】
位置情報センサ15は、所定の周期で、車両10の位置情報(例えば緯度、経度)を取得する。位置情報センサ15は、例えば、GPS(Global Positioning System)受信部
、無線通信部等である。車速センサ16は、車両10の速度を検出するセンサである。
【0032】
車両10の制御部11は、所定の時間毎に、操舵角センサ14、位置情報センサ15、及び車速センサ16の夫々の検出値を、車両ID及び時刻情報と共にサーバ30へ送信する。すなわち、車両10の制御部11は、所定の時間毎に、走行情報をサーバ30へ送信している。
【0033】
次に、サーバ30の制御部31について詳述する。サーバ30の制御部31は、各車両10から取得した走行情報に基づいて、渋滞が発生している箇所を特定する。制御部31は、対象区間ごとに車両10の平均速度を算出し、平均速度が第一車速(例えば20km/h)以下であれば渋滞が発生していると判定する。このときには、どの車線で渋滞が発生しているのかまでは特定しない。
【0034】
次に、サーバ30の制御部31は、各車両10から取得した走行情報に基づいて、
図1に示した右折専用車線53の範囲の上流端を特定する。ここでは、後述の事象が渋滞の最後尾よりも上流側で発生しているのか否かを判定するために、右折専用車線53の範囲の上流端を特定する。この上流端は、右折専用車線53が始まる箇所である。右折専用車線53の範囲の上流端は、車両10において運転者が行ったステアリング操作に基づいて特定する。右折する車両10には、第二直進車線52から右折専用車線53に入るときに、右側に進路を変更する挙動が現れる。そのため、ステアリングを右に切ることが頻発する箇所は、右折専用車線53が始まる箇所であると判断できる。制御部31は、例えば操舵角センサ14により検出される操舵角が、第一範囲(例えば5~20deg)の車両10の割合が、所定の第二割合以上になる区間を、右折専用車線53の開始区間(第一区間)であると判定する。なお、操舵角は、ステアリングを右に切った場合を正の値とし、左に切った場合を負の値とする。操舵角の第一範囲(例えば5~20deg)は、右折専用車線53に車両10が進入するときの操舵角である。なお、右折専用車線53の範囲の上流端は、一定の幅を持った区間として特定してもよい。例えば、対象区間を複数の区間に分割し、分割した各区間において、操舵角センサ14により検出される操舵角が第一範囲の車両10の割合が、所定の第二割合以上の場合に、その区間を右折専用車線53の範囲の上流端として特定してもよい。また、他の一例として、制御部31は、地図情報DB322に格納されている情報に基づいて、右折専用車線53の開始区間を特定してもよい。
【0035】
さらに、サーバ30の制御部31は、右折渋滞が発生しているか否か判定する。ここで、右折専用車線53から車両10がはみ出して停車している場合、後続の第四車両10Dには、右折渋滞で停車している第三車両10Cを避けて通る挙動(以下、避走挙動ともいう。)が現れる。この避走挙動を検出することにより、第三車両10Cの位置を特定できると共に、右折渋滞が発生していると判定できる。制御部31は、第三車両10Cの位置を、対象区間に位置する車両10におけるステアリング操作に基づいて特定する。第三車両10Cを避けて走行する第四車両10Dには、左側に進路を変更する挙動が現れる。そのため、ステアリングを左に切ることが頻発する箇所は、右折渋滞の最後尾の車両10(すなわち第三車両10C)が存在する位置であると判断できる。制御部31は、操舵角センサ14により検出される操舵角が、第二範囲(例えば0~-20deg)の車両10の割合が、所定の第一割合以上になる区間を、第三車両10Cが存在する区間であると判定する。操舵角の第二範囲(例えば0~-20deg)は、第二直進車線52から第一直進車線51側へ車両10が進路変更するときの操舵角である。なお、第三車両10Cが存在
する位置は、一定の幅を持った区間として特定してもよい。例えば、対象区間を複数の区間に分割し、分割した各区間において、操舵角センサ14により検出される操舵角が第二範囲の車両10の割合が、所定の第一割合以上の場合に、その区間を第三車両10Cが存在する位置として特定してもよい。なお、第三車両10Cが存在する位置は、所定の第一割合以上の車両10が右折専用車線53から離れる方向に進路を変更した第二区間としてもよい。
【0036】
右折渋滞の最後尾である第三車両10Cが存在する場合に、制御部31は、右折渋滞が発生していると判断する。そうすると、制御部31は、右折渋滞が発生していることを示す渋滞情報を出力する。このときに、制御部31は、入出力装置34に含まれるディスプレイに、例えば右折渋滞が発生している場所及び右折渋滞の長さについて表示させる。なお、他の一例として、渋滞情報を車両10に提供してもよい。
【0037】
次に、サーバ30において右折渋滞が発生しているか否か判定する処理について説明する。
図4は、第1実施形態におけるサーバ30において右折渋滞が発生しているか否か判定する処理を示したフローチャートである。
図4に示したフローチャートは、各対象区間について、所定の時間毎にサーバ30において実行される。なお、走行情報DB321には、複数の車両10に対応する走行情報が格納されているものとして説明する。
【0038】
ステップS101において、制御部31は、対象区間の走行情報を抽出する。対象区間は、右折渋滞が発生しているか否かを判定する対象となる区間である。対象区間は、地図情報DB322に格納されているリンクに対応していてもよい。また、対象区間はオペレータが入出力装置34を介して指定してもよい。制御部31は、走行情報DB321に格納されている位置情報と、地図情報DB322に格納されている各区間の位置に関する情報とに基づいて、所定の期間に対象区間を走行した車両10の走行情報を抽出する。所定の期間は、現時点の対象区間の状況を表していると考え得る期間である。これにより、現時点の対象区間の状況を表していると考えられる走行情報のみを利用する。次に、ステップS102において、制御部31は、上記の所定の期間に対象区間に存在する車両10の平均車速を算出する。すなわち、制御部31は、ステップS101において抽出した走行情報の車速フィールドに格納されている車速の平均値を算出する。
【0039】
ステップS103において、制御部31は、ステップS102で算出した平均車速が第一車速以下であるか否か判定する。第一車速は、渋滞が発生しているときの車速の上限値として記憶部32に記憶されている。第一車速は、例えば20km/hである。ステップS103で肯定判定された場合にはステップS104へ進み、否定判定された場合にはステップS105へ進む。ステップS104において、制御部31は、対象区間で渋滞が発生していると判定する。一方、ステップS105において、制御部31は、対象区間で渋滞が発生していないと判定する。
【0040】
ステップS106において、制御部31は、ステップS101で走行情報を抽出した車両10のうち、操舵角が第一範囲の車両10の走行情報を抽出する。第一範囲は、第二直進車線52から右折専用車線53へ進路変更するときの操舵角の範囲であり、例えば5~20degである。第一範囲は記憶部32に記憶させておく。ステップS107において、制御部31は、右折専用車線53が始まる区間(すなわち、右折専用車線53の範囲の上流端)である第一区間を特定する。ここで、制御部31は、操舵角が第一範囲の車両10が頻繁に出現する区間を、第一区間と判定する。例えば、ステップS101で走行情報を抽出した車両10の数に対する、ステップS106で走行情報を抽出した車両10の数の割合が、所定の第二割合以上の区間が存在する場合に、制御部31は、その区間を第一区間として特定する。所定の第二割合は、右折専用車線53が始まる区間に対応する値として予め記憶部32に記憶させておく。
【0041】
ステップS108において、制御部31は、第一区間を特定したか否か判定する。ステップS107において第一区間が特定されなかった場合には、右折専用車線53に入る車両10がほとんど存在しなかったといえる。この場合、右折渋滞でははく、他の要因により渋滞が発生していると考えられる。ステップS108で肯定判定された場合にはステップS109へ進み、否定判定された場合にはステップS114へ進む。
【0042】
ステップS109において、制御部31は、ステップS101で走行情報を抽出した車両10のうち、操舵角が第二範囲の車両10の走行情報を抽出する。第二範囲は、第二直進車線52から第一直進車線51に進路変更するときの操舵角の範囲であり、例えば0~-20degである。第二範囲は記憶部32に記憶させておく。ステップS110において、制御部31は、第一区間よりも上流側で避走挙動が検出される区間である第二区間を特定する。ここで、制御部31は、操舵角が第二範囲の車両10が頻繁に出現する区間を、第二区間と判定する。例えば、ステップS101で走行情報を抽出した車両10の数に対する、ステップS109で走行情報を抽出した車両10の数の割合が、所定の第一割合以上の区間が存在する場合に、制御部31は、その区間を第二区間として特定する。ここでいう所定の第一割合は、避走挙動に対応する値として予め記憶部32に記憶させておく。なお、避走挙動として速度に関する条件を加えてもよい。ここで、右折渋滞が発生している場合には、第二直進車線52を走行する車両10の速度が低下する。したがって、所定の速度以下、且つ操舵角が第二範囲の車両10を避走挙動が現れた車両10として扱い、ステップS109において走行情報を抽出してもよい。
【0043】
ステップS111において、制御部31は、第二区間を特定したか否か判定する。ステップS111において第二区間が特定されなかった場合には、避走挙動が現れた車両10がほとんど存在しなかったといえる。この場合、右折渋滞でははく、他の要因により渋滞が発生していると考えられる。ステップS111で肯定判定された場合にはステップS112へ進み、否定判定された場合にはステップS114へ進む。
【0044】
ステップS112において、制御部31は、右折専用車線53からはみ出した車両10に起因する渋滞(すなわち、右折渋滞)であると判定する。そして、ステップS113において、制御部31は、対象区間で右折渋滞が発生したこと、及び右折渋滞の末尾区間である第二区間を出力する。一方、ステップS114において、制御部31は、右折専用車線53からはみ出した車両10に起因する渋滞(すなわち、右折渋滞)ではないと判定する。そして、ステップS115において、制御部31は、渋滞が発生したこと、及び渋滞が発生している対象区間を出力する。
【0045】
以上説明したように本実施形態によれば、右折渋滞が発生した場合に、右折渋滞の発生を検出し且つ右折渋滞の末尾の区間を特定することができる。したがって、渋滞の原因を調べるために現場まで行く必要がなくなる。
【0046】
<第2実施形態>
第2実施形態では、右折渋滞が発生したことを検出する精度をさらに高めるために、車両10の速度をさらに利用して右折渋滞が発生しているか否か判定する。ここで、右折渋滞が発生した場合には、第一区間よりも上流側において、車両10が停車したり低速で移動したりする。したがって、第一区間よりも上流側において車両10の速度が断続的に所定の速度以下となる場合に限り、右折渋滞が発生していると判定する。ここでいう所定の速度は、右折渋滞が発生している場合の速度であり、例えば0km/hであってもよい。
【0047】
次に、サーバ30において右折渋滞が発生しているか否か判定する処理について説明する。
図5は、第2実施形態におけるサーバ30において右折渋滞が発生しているか否か判
定する処理を示したフローチャートである。
図4に示したフローチャートを同じ処理が実行されるステップについては説明を省略する。また、ステップS111よりも前の処理については、
図4に示したフローチャートと同じため、図示を省略する。
【0048】
図5に示したフローチャートでは、ステップS111で肯定判定されるとステップS201へ進む。ステップS201において、制御部31は、第一区間よりも上流側に位置する車両10の走行情報を抽出する。なお、抽出するのは、第二区間に位置する車両10又は第二区間から所定の範囲内に位置する車両10の走行情報に限ってもよい。ステップS202において、制御部31は、ステップS201で抽出した車両10の走行情報に基づいて、所定の速度以下の状態が所定時間継続した車両10が存在するか否か判定する。所定時間は、右折渋滞発生時の停車時間として記憶部32に記憶されている。ステップS202で肯定判定された場合にはステップS112へ進み、否定判定された場合にはステップS114へ進む。
【0049】
以上説明したように本実施形態によれば、右折渋滞が発生したことを検出する精度を高めることができる。
【0050】
<その他の実施形態>
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本発明はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。本開示において説明した処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。また、1つの装置が行うものとして説明した処理が、複数の装置によって分担して実行されてもよい。あるいは、異なる装置が行うものとして説明した処理が、1つの装置によって実行されても構わない。コンピュータシステムにおいて、各機能をどのようなハードウェア構成(サーバ構成)によって実現するかは柔軟に変更可能である。また、上記の実施形態では、右折専用車線を例に挙げて説明したが、左折専用車線についても同様に適用可能である。この場合、渋滞の末尾に接近する第四車両10Dには、右側の車線に向かって避走を行う挙動が現れる。また、上記の実施形態では、第三車両10Cを避けるために、第四車両10Dが第二直進車線52から第一直進車線51へ進路変更することを例に挙げて説明したが、第四車両10Dの避走挙動はこれに限らず、例えば、第二直進車線52内で左側に避けて走行する挙動も含む。
【0051】
本発明は、上記の実施形態で説明した機能を実装したコンピュータプログラムをコンピュータに供給し、当該コンピュータが有する1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。このようなコンピュータプログラムは、コンピュータのシステムバスに接続可能な非一時的なコンピュータ可読記憶媒体によってコンピュータに提供されてもよいし、ネットワークを介してコンピュータに提供されてもよい。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、例えば、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクドライブ(HDD)等)、光ディスク(CD-ROM、DVDディスク、ブルーレイディスク等)など任意のタイプのディスク、読み込み専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カード、フラッシュメモリ、光学式カード、電子的命令を格納するために適した任意のタイプの媒体を含む。
【符号の説明】
【0052】
1 システム
10 車両
30 サーバ
31 制御部
32 記憶部
33 通信モジュール
34 入出力装置